説明

故障検出回路付き振動型センサー回路

【課題】振動型センサーの故障を検出する。
【解決手段】圧電振動子10と、圧電振動子10を発振させるための直列に接続されたn段(nは3以上の奇数)の増幅器21〜23を含み、1段目の増幅器21の入力端子と圧電振動子10の一方の端子とが接続され、n段目の増幅器23の出力端子と圧電振動子10の他方の端子とが接続された発振回路100と、1段目の増幅器21の入力端子と接続され、圧電振動子の一方の端子からの信号aに基づき圧電振動子10が故障しているか否かを検出する故障検出回路200と、を含む故障検出回路付き振動型センサー回路1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、故障検出回路付き振動型センサー回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の特許文献1に示すような振動型センサー回路は、圧電振動子を奇数段のインバーターなどで構成された発振回路で発振させることにより、短時間での起動と、高いゲインを実現している。しかしながら、このような振動型センサー回路では、圧電振動子が故障しても発振回路のゲインが高いため自励発振してしまい、圧電振動子が正常動作しているか否かを判断することができないという課題がある。
【0003】
この問題を解決するために、例えば特許文献2には、PLL回路の出力端子に表示変換回路部を接続して、PLL回路の出力信号から故障を判定する方法が記載されている。図3に、特許文献2に示す表示変換回路部を故障検出回路300として発振回路103の出力信号OUTに接続した構成を示す。図4(A)は、圧電振動子10が正常動作している時の発振回路103の出力信号OUTの波形であり、図4(B)は、圧電振動子10が故障した時の発振回路103の出力信号OUTの波形である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−163633号公報(図1)
【特許文献2】実開平1−67544号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の方法では、例えば発振回路103によりゲインが高い構成のものを適用した場合、圧電振動子10が故障しても発振回路103のゲインが高いため、図4(B)に示すように自励発振してしまい、圧電振動子10が正常動作しているか否かを故障検出回路300で判定することができないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
圧電振動子と、前記圧電振動子を発振させるための直列に接続されたn段(nは3以上の奇数)の増幅器を含み、前記1段目の増幅器の入力端子と前記圧電振動子の一方の端子とが接続され、前記n段目の増幅器の出力端子と前記圧電振動子の他方の端子とが接続された発振回路と、前記1段目の増幅器の入力端子と接続され、前記圧電振動子の一方の端子からの信号に基づき前記圧電振動子が故障しているか否かを検出する故障検出回路と、を含む、ことを特徴とする故障検出回路付き振動型センサー回路。
【0008】
この構成によれば、n段の増幅器により発振された圧電振動子の一方の端子から出力される信号を故障検出回路で解析することにより圧電振動子が故障しているか否かを検出できる。
【0009】
[適用例2]
上記に記載の故障検出回路付き振動型センサー回路において、前記故障検出回路は、前記圧電振動子の一方の端子からの信号の直流成分を取り除くフィルター回路と、前記フィルター回路の出力を半波整流する整流回路と、前記整流回路の出力を積分した積分信号を出力する積分回路と、前記積分信号の電位と所定の電位とを比較する比較回路と、を含み、前記積分信号の電位が前記所定の電位よりも低い場合に前記圧電振動子が故障していると判断する、ことを特徴とする故障検出回路付き振動型センサー回路。
【0010】
この構成によれば、n段の増幅器により発振された圧電振動子の一方の端子から出力される信号を故障検出回路で解析することにより圧電振動子が故障しているか否かを検出でき、複雑な回路を用いずに安価な故障検出回路で構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態に係る故障検出回路付き振動型センサー回路の構成を示す回路図。
【図2】第1実施形態に係る故障検出回路付き振動型センサー回路の動作を示すグラフ。
【図3】従来の故障検出回路付き振動型センサー回路の構成を示す回路図。
【図4】従来の故障検出回路付き振動型センサー回路の動作を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、故障検出回路付き振動型センサー回路の実施形態について図面に従って説明する。
【0013】
(第1実施形態)
<故障検出回路付き振動型センサー回路の構成>
先ず、第1実施形態に係る故障検出回路付き振動型センサー回路の構成について、図1を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る故障検出回路付き振動型センサー回路の構成を示す回路図である。
【0014】
図1に示すように、故障検出回路付き振動型センサー回路1は、圧電振動子10と、n段の増幅器(nは3以上の奇数)を備えた発振回路100と、故障検出回路200と、から構成されている。
【0015】
発振回路100は、n=3段の増幅器であるインバーター21,22,23と、抵抗RAと抵抗RB及び抵抗RCと順に直列に接続した回路から成る抵抗R1と、コンデンサーC1,C2と、から構成されている。インバーター21,22,23は、圧電振動子10の両端の間に直列に接続されている。1段目のインバーター21は、入力端子が圧電振動子10の一方の端子に接続され、出力端子が2段目のインバーター22の入力端子に接続されている。2段目のインバーター22は、出力端子が3段目のインバーター23の入力端子に接続されている。3段目のインバーター23は、出力端子が圧電振動子10の他方の端子に接続されている。抵抗R1は、圧電振動子10の両端の間に接続されている。そして抵抗R1の一方の端子である抵抗RAの端子は、インバーター21の入力端子に接続している。抵抗R1の他方の端子である抵抗RCの端子は、インバーター23の出力端子に接続している。抵抗RAと抵抗RBとの接続中点は、インバーター21の出力端子と接続している。抵抗RBと抵抗RCとの接続中点は、インバーター22の出力端子と接続している。コンデンサーC1は、インバーター21の入力端子と接地電位との間に接続されている。コンデンサーC2は、インバーター23の出力端子と接地電位との間に接続されている。発振回路100は、圧電振動子10を発振させた発振信号OUTをインバーター23の出力端子から出力する。
【0016】
故障検出回路200は、発振回路100の1段目のインバーター21の入力端子と接続されている。故障検出回路200は、フィルター回路210と、整流回路220と、積分回路230と、比較回路250と、所定の電位である定電圧Vrefを出力する定電圧回路240と、から構成されている。
【0017】
フィルター回路210は、圧電振動子10の一方の端子から出力される信号aの直流成分を取り除いた信号bを出力する。フィルター回路210は、コンデンサーC3と抵抗R3とから構成されている。コンデンサーC3は、一方の端子がインバーター21の入力端子及び圧電振動子10の一方の端子に接続され、他方の端子が整流回路220の入力端子に接続されている。抵抗R3は、コンデンサーC3の他方の端子と接地電位との間に接続されている。
【0018】
整流回路220は、フィルター回路210が出力した信号bを半波整流した信号cを出力する。
【0019】
積分回路230は、整流回路220が出力した信号cを積分した積分信号dを出力する。積分回路230は、抵抗R4とコンデンサーC4とから構成されている。抵抗R4は、一方の端子が整流回路220の出力端子と接続され、他方の端子が比較回路250の−端子と接続されている。コンデンサーC4は、抵抗R4の他方の端子と接地電位との間に接続されている。
【0020】
定電圧回路240は、電源電位Vccと接地電位との間に直列に接続された抵抗R5,R6で構成され、電源電位Vccを抵抗R5,R6で抵抗分割して定電圧Vrefを出力する。
【0021】
比較回路250は、電源電位Vccで動作し、+端子に定電圧Vrefが入力され、−端子に入力された積分信号dの電位と定電圧Vrefの電位とを比較し、積分信号dの電位が定電圧Vrefの電位よりも大きければ、Lレベルの出力信号ARTを出力し、積分信号dの電位が定電圧Vrefの電位よりも小さければ、Hレベルの出力信号ARTを出力する。
【0022】
<故障検出回路付き振動型センサー回路の動作>
次に、故障検出回路付き振動型センサー回路の動作について図2を参照して説明する。図2は、故障検出回路付き振動型センサー回路の動作を示すグラフである。
【0023】
図2(A)は、圧電振動子10が正常に動作している場合の圧電振動子10の一方の端子から出力される信号aの電圧の時間遷移を示すグラフである。信号aは、直流成分が重畳された交流信号である。信号aは、電圧Vpp1の振幅を持つ。
【0024】
図2(B)は、フィルター回路210により信号aの直流成分を取り除いた信号bの電圧の時間遷移を示すグラフである。
【0025】
図2(C)は、整流回路220により信号bの正側の信号だけを半波整流した信号cの電圧の時間遷移を示すグラフである。
【0026】
図2(D)は、積分回路230により信号cを積分した積分信号dの電位と定電圧Vrefの電位との関係を示すグラフである。図2(D)では、積分信号dの電位が定電圧Vrefの電位よりも大きいので、比較回路250はLレベルの出力信号ARTを出力する。出力信号ARTがLレベルの場合は、圧電振動子10が正常に動作していることを示す。
【0027】
一方、図2(E)は、圧電振動子10が故障している場合の圧電振動子10の一方の端子から出力される信号aの電圧の時間遷移を示すグラフである。信号aは、電圧Vpp1よりも小さい電圧Vpp2の振幅を持つ。
【0028】
図2(F)は、圧電振動子10が故障している場合の積分信号dの電位と定電圧Vrefの電位との関係を示すグラフである。図2(F)では、積分信号dの電位が定電圧Vrefの電位よりも小さいので、比較回路250はHレベルの出力信号ARTを出力する。出力信号ARTがHレベルの場合は、圧電振動子10が故障していることを示す。
【0029】
以上に述べた本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0030】
本実施形態では、n=3段のインバーター21,22,23により発振された圧電振動子10の一方の端子から出力される信号aを故障検出回路200で解析することにより圧電振動子10が故障しているか否かを検出でき、複雑な回路を用いずに安価な故障検出回路200で構成することができる。
【0031】
以上、故障検出回路付き振動型センサー回路の実施形態を説明したが、こうした実施の形態に何ら限定されるものではなく、趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることができる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0032】
(変形例1)故障検出回路付き振動型センサー回路の変形例1について説明する。前記第1実施形態では、n=3段のインバーター21,22,23の場合について説明したが、n>3の奇数段、すなわち、5段、7段などでもよい。このように構成すれば、発振回路100は、より高いゲインと、より短時間での起動を実現することができる。
【0033】
(変形例2)故障検出回路付き振動型センサー回路の変形例2について説明する。故障検出回路付き振動型センサー回路1は、発振回路100の換わりに図3に示すような構成の発振回路103を適用しても良い。ただし図3に示す発振回路構成よりも図1に示すような構成の発振回路103は、増幅器のゲインを高く設定することが可能である為、故障検出回路200を用いての故障を検出する必要性がより高いものである。
【符号の説明】
【0034】
1…振動型センサー回路、10…圧電振動子、21,22,23…インバーター、100…発振回路、200…故障検出回路、210…フィルター回路、220…整流回路、230…積分回路、240…定電圧回路、250…比較回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動子と、
前記圧電振動子を発振させるための直列に接続されたn段(nは3以上の奇数)の増幅器を含み、前記1段目の増幅器の入力端子と前記圧電振動子の一方の端子とが接続され、前記n段目の増幅器の出力端子と前記圧電振動子の他方の端子とが接続された発振回路と、
前記1段目の増幅器の入力端子と接続され、前記圧電振動子の一方の端子からの信号に基づき前記圧電振動子が故障しているか否かを検出する故障検出回路と、
を含む、
ことを特徴とする故障検出回路付き振動型センサー回路。
【請求項2】
請求項1に記載の故障検出回路付き振動型センサー回路において、
前記故障検出回路は、
前記圧電振動子の一方の端子からの信号の直流成分を取り除くフィルター回路と、
前記フィルター回路の出力を半波整流する整流回路と、
前記整流回路の出力を積分した積分信号を出力する積分回路と、
前記積分信号の電位と所定の電位とを比較する比較回路と、
を含み、
前記積分信号の電位が前記所定の電位よりも低い場合に前記圧電振動子が故障していると判断する、
ことを特徴とする故障検出回路付き振動型センサー回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−203939(P2010−203939A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50299(P2009−50299)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】