説明

数値制御工作機械

【課題】回転送り軸を有する工作機械の位置と姿勢の誤差を精度良く補正することができる数値制御工作機械を提供する。
【解決手段】直線送り軸及び回転送り軸を有し、計測された誤差データに基づいて移動指令を補正する機能を有する数値制御工作機械であって、誤差データは位置誤差と姿勢誤差とを含む多次元のデータであり、直線送り軸及び回転送り軸の位置及び回転角度に対応した多数の誤差データを収集して作成されたデータテーブルを記憶する誤差データ記憶手段25と、直線送り軸及び前記回転送り軸に対する指令位置と誤差データ記憶手段に記憶された誤差データとから、移動指令を補正する補正データを演算する補正データ演算手段26と、を具備し、姿勢誤差の補正は、姿勢誤差と工具寸法とから工具先端位置の3次元座標値のずれ量を演算し、演算した3次元座標値のずれ量に基づいて回転送り軸を回転させることなく直線送り軸の移動指令を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直線送り軸及び回転送り軸を有する数値制御工作機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、多軸の工作機械において、送り軸の位置や姿勢を所定の位置や姿勢に正確に位置決めすることは難しく、位置や姿勢の誤差が発生する。このため、高精度の加工が必要とされる場合には、位置や姿勢の誤差に応じて送り軸を補正することが行われている。このような送り軸の誤差を補正する従来の一例として、特許文献1〜3に開示されているものが知られている。
【0003】
特許文献1では、互いに直交するA軸とB軸の2つの回転送り軸を有する工作機械の2つの回転送り軸の軸ずれ(軸中心の位置ずれ)を予め計測しておき、この軸ずれを加味して2つの回転送り軸の座標を求めることが開示されている。計測された軸ずれは数値制御装置などの記憶手段に予め記憶され、ワークの加工基準点が変更になって新しい加工基準点が求められるときに記憶手段から読み出され、新しい加工基準点を正確に求めることができるようになっている。
【0004】
特許文献2では、互いに直交するA軸とC軸の2つの回転送り軸を有する工作機械の機械位置を、1)C軸に関する位置誤差及び姿勢誤差と、2)A軸に関する位置誤差及び姿勢誤差と、3)旋回中心としての主軸に関する位置誤差及び姿勢誤差とに基づいて計算により求める方法が開示されている。C軸、A軸及び主軸に関するそれぞれの位置誤差及び姿勢誤差は、ワークの加工面に対して回転工具が所定の位置関係にある場合の予め求められた誤差である。
【0005】
特許文献3では、パラレルリンク機構の工作機械の工具ユニットの誤差を誤差マップに基づいて補正する方法が開示されている。誤差マップは、工具ユニット先端の作業空間の格子点に対応して、工具ユニット先端の位置及び姿勢の指令値と検出値との差から演算により算出された誤差データを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平6−88192号公報
【特許文献2】特開2004−272887号公報
【特許文献3】特開平9−237112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1で開示されている補正方法は、A軸とB軸の2つの回転送り軸の軸ずれ(位置誤差)を補正するものであり、姿勢誤差を補正するものではない。このため、加工精度を高める上で限界があった。
【0008】
特許文献2で開示されている補正方法は、各軸に関する位置誤差及び姿勢誤差が予め分かっている場合に、位置誤差及び姿勢誤差に基づいて工作機械の機械位置を求める方法であるため、位置誤差及び姿勢誤差が分かっていない場合には、工作機械の機械位置を正確に求めることができない。このため、実際の加工中においては、工作機械の機械位置を求めることができず、機械位置には各軸の位置誤差及び姿勢誤差が含まれたものとなり、精度の高い3次元の曲面加工を行うことができないという問題があった。
【0009】
特許文献3で開示されている誤差マップは、パラレルリンク機構によって駆動される工具ユニット先端の位置及び姿勢の誤差をテーブルデータとしたものであり、直交3軸の直線送り軸と回転送り軸を有する工作機械に直接的に適用できるものではなかった。
【0010】
本発明は、回転送り軸を有する工作機械の位置と姿勢の誤差を精度良く補正することができる数値制御工作機械及び数値制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の数値制御工作機械は、 直線送り軸及び回転送り軸を有し、主軸とワークテーブルとの相対位置及び相対姿勢の誤差を、予め前記直線送り軸及び前記回転送り軸を所定の位置及び姿勢に位置決めして計測し、計測された誤差データに基づいて移動指令を補正する機能を有する数値制御工作機械であって、
前記誤差データは位置誤差と姿勢誤差とを含む多次元のデータであり、前記直線送り軸及び前記回転送り軸の位置及び回転角度に対応した多数の前記誤差データを収集して作成されたデータテーブルを記憶する誤差データ記憶手段と、
前記直線送り軸及び前記回転送り軸に対する指令位置と前記誤差データ記憶手段に記憶された前記誤差データとから、前記移動指令を補正する補正データを演算する補正データ演算手段とを具備し、
前記姿勢誤差の補正は、前記姿勢誤差と工具寸法とから工具先端位置の3次元座標値のずれ量を演算し、演算した3次元座標値のずれ量に基づいて前記回転送り軸を回転させることなく前記直線送り軸の移動指令を補正することを特徴とする。
【0012】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の数値制御工作機械において、前記位置誤差は、前記主軸と前記ワークテーブルとの相対位置の誤差であって、前記回転送り軸が所定の回転角度に位置決めされたときに3次元座標値で表される誤差であり、前記姿勢誤差は、前記主軸と前記ワークテーブルとの相対姿勢の誤差であって、互いに直交する第1の回転送り軸と第2の回転送り軸が所定の回転角度に位置決めされたときの傾き角度で表される誤差であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項3の発明は、請求項2に記載の数値制御工作機械において、前記第1の回転送り軸及び前記第2の回転送り軸における前記回転角度の計測間隔は、隣り合う計測点における前記姿勢誤差の差分が所定値になるように設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上の如く、本発明の数値制御工作機械によれば、誤差データ記憶手段に記憶されるテータテーブルは、回転送り軸が動作することによって発生する誤差である位置誤差及び姿勢誤差の双方を含む誤差データを含んでいるため、この誤差データに基づいて移動指令を補正することで、工作機械を目標位置に高精度に位置決めすることができる。
【0015】
また、姿勢誤差を計測する計測点の計測間隔を隣り合う計測点における姿勢誤差の差分が所定値になるように設定するため、差分が少ない場合は計測間隔を広げることができる。このため、補正の精度を保持しつつデータ量を削減することができ、メモリの負担を減らすことができる。
【0016】
また、X,Y,Zの直線送り軸と、A,Cの回転送り軸とを有する5軸の工作機械で、B軸方向の姿勢誤差をA、C軸を回転させることにより補正しようとすると、補正のたびに回転送り軸を大きく旋回させなければならず、加工に悪影響を与えることになるが、工具先端位置のずれ量を3次元座標値の移動指令で移動先へ移動させることで、B軸方向の姿勢誤差の補正を回転送り軸を回転させることなく行うことができる。これにより、いわゆる特異点問題を回避することができる。
【0017】
また、本発明の数値制御工作機械によれば、回転送り軸を動作させることによって発生する主軸とワークテーブルとの相対姿勢及び相対位置の誤差を確実に補正することができ、精度の高い加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る数値制御装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】図1の数値制御装置が適用されるマシニングセンタの側面図である。
【図3】図2のマシニングセンタの座標系を示す説明図である。
【図4】3次元座標空間の格子点を示す説明図である。
【図5】図4の各格子点に関係付けられる2次元のデータシートを示す説明図である。
【図6】図3の3次元座標系をA視によって見た2次元座標系を表す説明図である。
【図7】図3の3次元座標系をB視によって見た2次元座標系を表す説明図である。
【図8】図3の3次元座標系をC視によって見た2次元座標系を表す説明図である。
【図9】エラーマップを用いた補正方法の一例を示すフローチャートである。
【図10】図9の補正方法を説明する説明図である。
【図11】図10の角度補正ベクトルについて説明する説明図であり、(a)はX−Y平面の図、(b)はX−Z平面の図、(c)はY−Z平面の図である。
【図12】図10の位置補正ベクトルについて説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態の具体例を図面を用いて詳細に説明する。図1は、一例として、主軸ヘッドが傾斜する5軸の横形マシニングセンタ(数値制御工作機械)に適用される本発明に係る数値制御装置の一実施形態を示すものである。図1では、本実施形態の数値制御装置の機能的な構成がブロック線図で示されている。また、図2ではマシニングセンタの基本的構成が示され、図3で直交3軸の直線送り軸X,Y,Zと2軸の回転送り軸A,Cが示されている。なお、図3において、回転送り軸B軸は示されていないが、C軸を90゜回転させることによりA軸はB軸として機能するようになっている。
【0020】
図2を参照すると、マシニングセンタ1は、フロア上に設置されているベース2と、ベース2上でZ軸方向に直動可能に立設されたコラム3と、コラム3に鉛直方向であるY軸方向に直動可能な主軸台5とを備えている。主軸台5には、Z軸に平行な軸回りのC軸方向にサーボモータ30(図1参照)により回転送り可能にブラケット5aが設けられている。ブラケット5aには、主軸ヘッド4がX軸に平行な軸回りでのA軸方向にサーボモータ30(図1参照)により回転送り可能に設けられている。
【0021】
また、マシニングセンタ1は、ベース2上で主軸ヘッド4に対向する位置に立設され、紙面に垂直な方向であるX軸方向に直動可能なワークテーブル6を備えている。ワークテーブル6にはイケール8を介してワーク7が保持されている。
【0022】
図3を参照すると、図2で示されている直交3軸の座標系と共にC軸及びA軸が示されている。A軸はX軸に平行な軸回りの回転送りのことであり、主軸ヘッド4がブラケット5aに対してA軸方向に回転可能になっている。図示例では、工具が装着される位置に位置及び角度を計測するための接触式の測定プローブ9が装着されている。測定プローブ9は、一般的なものであり、例えば差動トランスでなるトランスデューサーと、セラミックス製の接触子10を有している。接触子10は互いに直交する3軸方向に変位可能になっている。接触子10の各軸方向の変位は、各トランスデューサーにより検出され、電気信号に変換されるようになっている。なお、送り軸の位置や角度を計測する測定器や測定方法は、特に制限されるものではなく、レーザ測長器や他の測定器を用いて測定することも可能である。
【0023】
図1に示すように、上記マシニングセンタ1を制御する本実施形態の数値制御装置20は、5軸の送り軸の位置誤差及び姿勢誤差を補正する機能を備えたものであり、加工プログラム21を解読して各送り軸の移動指令を演算する前処理演算手段22と、各送り軸X,Y,Z,A,Cにおける送りを直線補間したり円弧補間したりするために移動指令に基づいて補間パルスを演算する補間手段23と、補間パルスを取得することにより各送り軸X,Y,Z,A,Cの移動先の位置である指令位置を認識する指令位置認識手段24と、位置誤差と姿勢誤差とを含み、回転送り軸A,Cの位置及び姿勢に関係付けられた多数の誤差データ34を集めて作成されたエラーマップ(データテーブル)32を記憶する誤差データ記憶手段25と、指令位置と誤差データ記憶手段25から読み出された誤差データ34とから、指令位置を補正する補正データを演算する補正データ演算手段26と、補正データに基づいて指令位置を補正して補正パルスを求める補正パルス演算手段27と、補間パルスと補正パルスとを加えたパルスをサーボアンプ29に出力する加算手段28と、備えている。各送り軸X,Y,Z,A,Cのサーボモータ30は、サーボアンプ29によって増幅された駆動電流によって駆動し、各送り軸X,Y,Z,A,Cを移動させるようになっている。
【0024】
次に、エラーマップ32について説明する。エラーマップ32は、図4に示すように、直交座標系の各格子点31に関連付けされている。すなわち、直線送り軸X,Y,Zの各軸方向の所定の位置に関連付けされている。直交座標系の各格子点31には、図5に示すような、マトリックス状の2次元配列データシート33が関連付けされている。エラーマップ32は、直交座標系の各格子点31に関連付けされた多数の2次元配列データシート33から構成されている。
【0025】
各2次元配列データシート33は、横軸がA軸であり、縦軸がC軸であり、A軸とC軸の任意の角度の交差する点において計測された多数の誤差データ34から構成されている。誤差データ34は、位置誤差35aと姿勢誤差35bとから構成されている。位置誤差35aは、回転送り軸A,Cが所定の位置に位置決めされたときに生じる3次元座標値で表される位置の誤差であり、姿勢誤差35bは、主軸ヘッド4とワークテーブル6との相対姿勢の誤差であって、互いに直交する回転送り軸A,Cが所定の回転角度に位置決めされたときに生じる傾き角度で表される誤差である。
【0026】
ここで、第1の回転送り軸であるA軸及び第2の回転送り軸であるC軸における回転角度の計測間隔は、隣り合う計測点における姿勢誤差35bの差分が所定値になるように設定されている。言い換えると、隣り合う計測点における姿勢誤差35bの差分が少ない場合は計測間隔を広げ、差分が大きく変わる場合は計測間隔を狭める。誤差の差分の少ない部分の計測間隔を広げることでデータ量を削減してメモリの負担を減らすことができ、誤差の差分の大きく変わる部分の計測間隔を狭めることで補正の精度を保持することができる。
【0027】
図6〜8の各図は、それぞれの矢視方向からみた位置誤差35aと姿勢誤差35bを示す図である。図6は、図3のA視によってみた図であり、位置誤差35a(X,Y)と姿勢誤差35b(K)が示されている。図7は、図3のB視によってみた図であり、位置誤差35a(Y,Z)と姿勢誤差35b(I)が示されている。図8は、図3のC視によってみた図であり、位置誤差35a(X,Z)と姿勢誤差35b(J)が示されている。
【0028】
このように、誤差データ34には、回転送り軸A,Cが動作することによって発生する誤差である位置誤差35a及び姿勢誤差35bの双方を含んでいるため、この誤差データ34に基づいて移動指令を正しい値に補正することで、工具先端を目標位置に高精度に位置決めすることができる。
【0029】
次に、上述したエラーマップ32を用いた移動指令の補正方法について説明する。
先ず、加工プログラム21の移動指令を前処理演算手段22で解読し、所定の補間周期での各送り軸X,Y,Z,A,Cの移動ベクトルを求める。続いて、指令位置認識手段24において、この移動ベクトルを現在位置に加算して所定の補間周期での各送り軸X,Y,Z,A,Cの指令位置を認識する。指令位置における回転送り軸A,Cの角度が2次元配列データシート33のA軸及びC軸の計測点の場合は誤差データ34をそのまま取得する。指令位置における回転送り軸A,Cの角度が2次元配列データシート33のA軸及び/又はC軸において隣接する計測点の間の角度に相当する場合(計測点の中間位置の場合)、内挿法などの補間により誤差データを演算する。
【0030】
移動先の位置である指令位置において、取得した誤差データ34に基づいて補正データを演算する(補正データ演算手段26)。求めた補正データを誤差の含まれている指令位置に加算して、補間周期毎の新たな指令位置とする。最後に、求めた補正データを、同じように現在位置において求めた補正データと比較し、その差分量を所定の補間周期での各送り軸の移動ベクトルに加算する。このようにして、誤差が含まれている移動指令が補正されて、各送り軸の位置を正確に求めることができる。
【0031】
次に、補正データ演算手段26で演算する補正値を3次元座標値で表し、移動指令を補正する方法について説明する。この方法は、C軸が0゜であるとき、機械が本来有しないB軸方向に姿勢誤差がある場合に、このB軸方向の姿勢誤差を補正するために回転送り軸を大きく回転させるという問題、いわゆる”特異点”の問題を回避できる補正方法を提供する。なお、B軸はY軸に平行な軸回りの回転送り軸である。
【0032】
図9には、この補正方法のフローチャートが示されている。数1には、この方法で、工具40の姿勢及び姿勢誤差、工具40の位置及び位置誤差、工具40の突き出し長に基づいて位置補正ベクトルを求めるための計算式が示されている。
【0033】
【数1】

【0034】
先ず、ステップS0において、加工プログラムの移動指令から指令位置を認識する。ステップS1では、指令位置に対応する誤差データ34をエラーマップ32から取得する。ステップS2では、誤差データ34の位置誤差35aから位置の補正ベクトルを算出する。位置の補正ベクトルは、図12に示すように、主軸ヘッドに保持されている工具40を移動先へ平行移動させるベクトルである。一方、誤差データ34の姿勢誤差35bからは、ステップS5において姿勢補正値を算出する。ステップS6では、ステップS5で求めた姿勢補正値は、ステップS3において求めた指令姿勢に加算して補正後の姿勢を求める。ステップS7では、補正後の姿勢と工具40の突き出し長から補正後の指令位置を求める。
【0035】
ステップS4では、ステップS3で求めた指令姿勢と工具40の突き出し長から補正前の指令位置を求める。ステップS8では、ステップS7で求めた補正後の指令位置からステップS4で求めた補正前の指令位置を減算して姿勢の補正ベクトルを算出する。姿勢の補正ベクトルは、図11に示すように、主軸に保持されている工具40を基端を支点として、移動先へ回転させるベクトルである。最後に、ステップS9において、図10に示すように、ステップS8で求めた姿勢ベクトルとステップS2で求めた位置補正ベクトルを加算する。
【0036】
このようにして、工具先端位置を3次元座標値の移動指令、すなわち、位置補正ベクトルで移動先へ移動させることで、B軸方向の姿勢誤差35bの補正を回転送り軸を回転させることなく行うことができ、主軸ヘッドに保持されている工具40のいわゆる特異点問題を回避することができる。
【0037】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態では、所定の補間周期毎にエラーマップ32を参照して移動指令を補正する方法を説明しているが、補間を行わない場合、例えば、早送りで各送り軸X,Y,Z,A,Cを移動する場合、すなわち、始点と終点を指令する場合にもエラーマップ32を参照して補正することができる。この場合は、図1において、加工プログラムの移動指令を前処理演算手段22で解読し、所定の周期での各送り軸の移動ベクトルを求めた後、補間手段23で補間を行わず、指令位置認識手段24にて、この移動ベクトルを現在位置に加算して各送り軸X,Y,Z,A,Cの指令位置を認識する。指令位置における誤差データ34をエラーマップ32から取得し、取得した誤差データ34に基づいて補正データを演算し、この補正データを移動指令の終点に加算して新たな指令位置とする。最後に、求めた補正データを所定の周期での各送り軸の移動ベクトルに加算する。
【0038】
また、本実施形態のエラーマップ32は回転送り軸A,Cを動作させたときに誤差データ34をデータベース化したものであるが、直線送り軸X,Y,Zを動作させたときの位置誤差と姿勢誤差からなる誤差データをデータベース化してエラーマップを作成することも可能である。
【0039】
また、本実施形態では、主軸側がA、C軸に回転する例を挙げて説明したが、ワークテーブル側が回転するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 マシニングセンタ
20 数値制御装置
22 前処理演算手段
23 補間手段
24 指令位置認識手段
25 誤差データ記憶手段
26 補正データ演算手段
27 補正パルス演算手段
31 格子点
32 エラーマップ
33 2次元配列データシート
34 誤差データ
35a 位置誤差
35b 姿勢誤差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線送り軸及び回転送り軸を有し、主軸とワークテーブルとの相対位置及び相対姿勢の誤差を、予め前記直線送り軸及び前記回転送り軸を所定の位置及び姿勢に位置決めして計測し、計測された誤差データに基づいて移動指令を補正する機能を有する数値制御工作機械であって、
前記誤差データは、位置誤差と姿勢誤差とを含む多次元のデータであり、前記直線送り軸及び前記回転送り軸の位置及び回転角度に対応した多数の前記誤差データを収集して作成されたデータテーブルを記憶する誤差データ記憶手段と、
前記直線送り軸及び前記回転送り軸に対する指令位置と前記誤差データ記憶手段に記憶された前記誤差データとから、前記移動指令を補正する補正データを演算する補正データ演算手段とを具備し、
前記姿勢誤差の補正は、前記姿勢誤差と工具寸法とから工具先端位置の3次元座標値のずれ量を演算し、演算した3次元座標値のずれ量に基づいて前記回転送り軸を回転させることなく前記直線送り軸の移動指令を補正することを特徴とする数値制御工作機械。
【請求項2】
前記位置誤差は、前記主軸と前記ワークテーブルとの相対位置の誤差であって、前記回転送り軸が所定の回転角度に位置決めされたときに3次元座標値で表される誤差であり、
前記姿勢誤差は、前記主軸と前記ワークテーブルとの相対姿勢の誤差であって、互いに直交する第1の回転送り軸と第2の回転送り軸が所定の回転角度に位置決めされたときの傾き角度で表される誤差である請求項1に記載の数値制御工作機械。
【請求項3】
前記第1の回転送り軸及び前記第2の回転送り軸における前記回転角度の計測間隔は、隣り合う計測点における前記姿勢誤差の差分が所定値になるように設定されている請求項2に記載の数値制御工作機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−33203(P2012−33203A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248954(P2011−248954)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【分割の表示】特願2007−111806(P2007−111806)の分割
【原出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000154990)株式会社牧野フライス製作所 (116)
【Fターム(参考)】