説明

文書改ざん検証システム及びファイルサーバ

【課題】給紙ローラの回転開始時の、地紋のトナー剥離による文書の汚れを防止できる文書改ざん検証システム及び、このシステムで用いるファイルサーバを提供する。
【解決手段】文書改ざん検証システムは、用紙に地紋を背景として文字情報を印刷する印刷装置3と、自動給紙機構4を備え、自動給紙機構4に文書dをセットして連続的に画像情報を読み取るスキャナ5と、スキャナ5で読み取った画像情報から地紋の秘匿情報を抽出し、これを印刷時に埋め込まれた秘匿情報と照合して文書dの改ざんを検証する改ざん検証装置6とを備えている。改ざん検証装置6は、用紙の送り方向側の端部で、ADF4の給紙ローラの初期当接箇所の付近に文字情報の改ざんを検出した場合、給紙ローラの初期当接箇所を含むように用紙の端部に余白を設定して地紋の印刷を行うべく印刷装置3を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地紋(電子透かし)を背景に有する印刷文書の改ざんを検証する文書改ざん検証システム、及びこのシステムで用いるファイルサーバに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷文書の原本性を確保するため、地紋を背景として文字情報を用紙に印刷し、この文書をスキャナで読み取って地紋の秘匿情報を抽出し、印刷時に地紋に埋め込んだ秘匿情報と照合して文書の改ざんを検証することが行われている。(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−343523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記方法において、大量の印刷文書を検証する場合、自動給紙機構を備えたスキャナを用いるのが能率的である。しかし、プリンタで印刷された地紋は非常に微細であり、文字に比べて用紙への定着性が悪いため、スキャナの自動給紙機構に印刷文書をセットして読み取りを行った場合、図3(a)に示すように、自動給紙機構の給紙ローラaが回転し始める際、用紙bに印刷された地紋cが給紙ローラaにより擦られ、その摩擦で地紋cのトナーが給紙ローラaに付着し、これが用紙bの表面に転写して汚れを生じ易い。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑み、給紙ローラが地紋のトナーを剥離して印刷文書を汚すことを防止できる文書改ざん検証システムと、このシステムで用いるファイルサーバとを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明は、用紙に地紋を背景として文字情報を印刷する印刷装置と、自動給紙機構を備え、該自動給紙機構に印刷文書をセットして画像情報を読み取る読取装置と、該読取装置で読み取った画像情報から前記地紋の秘匿情報を抽出し、抽出された地紋秘匿情報を印刷時に埋め込まれた秘匿情報と照合して前記印刷文書の改ざんを検証する改ざん検証装置とを備えてなる文書改ざん検証システムにおいて、前記改ざん検証装置は、用紙の送り方向側の端部で、前記自動給紙機構の給紙ローラの初期当接箇所の付近に前記文字情報の改ざんを検出した場合、前記給紙ローラの初期当接箇所を避けて前記地紋を印刷すべく前記印刷装置を制御することを特徴とする。
【0006】
前記印刷装置と前記改ざん検証装置をネットワークを介して接続するとともに、該ネットワーク上にファイルサーバを設け、前記改ざん検証装置は変更した地紋印刷範囲に関する情報を前記ファイルサーバに格納しておき、前記印刷装置はファイルサーバの格納情報を参照して前記地紋の印刷を実行するのが好ましい。
【0007】
前記印刷装置は地紋に埋め込んだ秘匿情報を前記ファイルサーバに格納しておき、前記改ざん検証装置は、改ざんの検証に際し、抽出された地紋秘匿情報を前記ファイルサーバの格納情報と照合するのが好ましい。
【0008】
前記課題を解決するための本発明は、用紙に地紋を背景として文字情報を印刷する印刷装置と、自動給紙機構を備え、該自動給紙機構に印刷文書をセットして画像情報を読み取る読取装置とを接続するネットワーク上に設けられるファイルサーバであって、前記読取装置で読み取った画像情報から前記地紋の秘匿情報を抽出し、抽出された地紋秘匿情報を印刷時に埋め込まれた秘匿情報と照合して前記印刷文書の改ざんを検証する改ざん検証部と、用紙の送り方向側の端部で、前記自動給紙機構の給紙ローラの初期当接箇所の付近に前記文字情報の改ざんを検出した場合、前記給紙ローラの初期当接箇所を避けて前記地紋を印刷すべく前記印刷装置を制御する地紋印刷制御部と、該地紋印刷制御部で変更した地紋印刷範囲に関する情報を格納しておく記憶部とを備えたことを特徴とする。
【0009】
前記印刷装置が地紋に埋め込んだ前記秘匿情報を格納しておく記憶部を備えているのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、用紙の送り方向側の端部で、自動給紙機構の給紙ローラの初期当接箇所の付近に文字情報の改ざんが検出されると、この改ざんをトナーの付着によるものと見做し、それ以降、地紋が給紙ローラの初期当接箇所を避けて印刷されるので、給紙ローラが回転し始める際に地紋を擦らなくなり、地紋のトナー剥離による文書の汚れが生じなくなる。この結果、トナー付着による改ざん誤検出が減少し、システムの信頼性の向上に役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は文書改ざん検証システムのシステム構成を示す図であり、図2は同システムにおける地紋印刷範囲の変更手順を説明する図であり、図3は地紋の余白の設定状態を説明する図であって、(a)は余白設定前の状態を示す図であり、(b)は余白設定後の状態を示す図であり、図4は用紙表面に対する地紋の印刷状態を示す図であって、(a)(b)はそれぞれ図3(a)(b)に対応する図である。
【0012】
本実施形態に係る文書改ざん検証システムは、図1に示すように、パソコン1とレーザプリンタ2からなる印刷装置3と、自動給紙機構(以下、ADFという)4を備え、印刷装置3で印刷した文書dをADF4にセットして連続的に画像情報を読み取るスキャナ(読取装置)5と、スキャナ5で読み取った画像情報に基づいて、文書dの改ざんの有無を検証すべくパソコン6aで構成した改ざん検証装置6と、印刷装置3と改ざん検証装置6のパソコン6aを接続するネットワーク7上に設けたファイルサーバ8とからなる。ファイルサーバ8は、地紋の印刷範囲を定義した地紋印刷制御情報を格納する記憶部9と、地紋に埋め込まれた秘匿情報を印刷セキュリティ情報として格納する記憶部10とを備えている。
【0013】
印刷装置3は、文書dの印刷依頼が来ると、ファイルサーバ8の記憶部9から地紋印刷制御情報を取り出し、用紙に対する地紋の印刷範囲を決定し、印刷依頼された文書dに対応する秘匿情報を埋め込んだ地紋cの画像情報を作成する。そして、作成した地紋の画像情報と、印刷依頼された文書情報とを合成して印刷画像情報を作成し、これをレーザプリンタ2に出力して文書dを印刷させる。同時に、地紋に埋め込んだ秘匿情報を印刷セキュリティ情報としてファイルサーバ8の記憶部10に格納する。なお、地紋に秘匿情報を埋め込む技術は、例えば、特開2003−101762号公報より既に公知であるので、詳細な説明は省略する。
【0014】
スキャナ5は、文書dを画像情報として読み取り、これを改ざん検証装置であるパソコン6に出力する。改ざん検証装置6は、スキャナ5で読み取った画像情報から地紋の秘匿情報を抽出し、これをファイルサーバ8の記憶部10の印刷セキュリティ情報(秘匿情報)と照合して文書dの改ざんの有無を検証する。つまり、文書dを細かな領域に区画し、その各領域について秘匿情報の照合を行い、秘匿情報の異なる領域で文字情報の改ざんがあったものと認定し、その結果をパソコン6の画面6aに表示する。また、パソコン6は文書dの改ざん検証結果に基づいて地紋の印刷範囲を変更し、これを地紋印刷制御情報としてファイルサーバ8の記憶部10に格納する。なお、地紋から秘匿情報を抽出する技術についても、前記公報より既に公知であるので、詳細な説明は省略する。
【0015】
ファイルサーバ8の記憶部10には、印刷セキュリティ情報として、印刷した人のログイン情報や印刷端末、印刷時刻などの情報、地紋に埋め込めなかった罫線等を含む情報(印刷画像情報等)などを暗号化して記憶してある。
【0016】
次に、この改ざん検証システムにおける地紋印刷範囲の変更手順について、図2を参照しながら説明する。
まず、文書dの印刷依頼が来ると、印刷装置3は地紋印刷範囲の初期化処理を実行する(S1)。つまり、地紋が用紙全域に印刷されるように印刷範囲を設定し、その値を地紋印刷制御情報としてファイルサーバ8の記憶部9に格納する。この結果、図3(a)に示すように地紋cが用紙bの全域に印刷されることになる。なお、この処理は最初の印刷依頼時にのみ実行される。
【0017】
次いで、印刷装置3は印刷画像生成処理を実行する(S2)。つまり、ファイルサーバ8の記憶部9から地紋印刷制御情報を取り出し、用紙bに対する地紋cの印刷範囲を決定し、印刷依頼された文書dに対応する秘匿情報を埋め込んだ地紋cの画像情報を作成する。そして、作成した地紋cの画像情報と、印刷依頼された文書情報とを合成して印刷画像情報を作成する。そして、印刷画像情報をレーザプリンタ2に出力して文書dを印刷させるとともに、地紋cに埋め込んだ秘匿情報を印刷セキュリティ情報としてファイルサーバ8の記憶部10に格納する(S3)。
【0018】
改ざん検証装置6では、文書dの画像情報をスキャナ5で読み取り(S4)、この画像情報から地紋cの秘匿情報を抽出し、これをファイルサーバ8の記憶部10の印刷セキュリティ情報と照合して文書dの改ざんの有無を検証する(S5)。次いで、改ざん検証装置6は、文書dの改ざん箇所が用紙bの送り方向側の端部で、ADF4の給紙ローラaの初期当接箇所の付近にあるか否かを判断する(S6)。改ざん箇所が給紙ローラaの初期当接箇所の付近にない場合、S1で設定した地紋印刷範囲の変更は行わず、地紋cを用紙全域に印刷する地紋印刷範囲の維持処理が行われる(S7)。
【0019】
一方、改ざん箇所がADF4の給紙ローラbの初期当接箇所の付近にある場合には、地紋印刷範囲の再設定処理が行われる(S8)。つまり、図3(b)に示すように、改ざん検証装置6は、地紋cを給紙ローラaの初期当接箇所を避けて用紙bに印刷するため、地紋cの印刷範囲を小さくして用紙bの端部に余白Wを形成し、変更後の地紋印刷範囲に関する情報をファイルサーバ8の記憶部9に格納する。これ以降、地紋cが給紙ローラaの初期当接箇所を避けて印刷されるので、給紙ローラaが回転し始める際に地紋cを擦らなくなり、地紋cのトナー剥離による文書dの汚れが生じなくなる。
【0020】
この文書改ざん検証システムでは、当初は用紙bの全域に亘って地紋cを印刷しているので、給紙ローラaが回転し始める際に地紋cを擦り、地紋cのトナー剥離による汚れPが用紙bの端部に生じ易い(図4(a)参照)。また、この箇所の地紋cから正確な秘匿情報を抽出することができないため、文字情報の改ざんがあったと認識される。そこで、改ざん箇所が用紙bの送り方向側の端部にある場合、その改ざんはトナー剥離による汚れPによるものと見做し、用紙bの送り方向側の端部に余白Wを設定している(図4(b)参照)。
【0021】
このような余白Wを設定すると、トナー剥離による汚れPが生じなくなり、改ざんの誤認も生じなくなる。ただし、余白Wでの改ざん検出ができなくなるため、システムの信頼性に問題を生じるが、余白Wに重要な文字情報を配置するのを避けると、実用上の支障は然程でもない。
【0022】
ところで、地紋cを形成するトナーの定着性は印刷経過時間や文書dの保存環境などによって変化し、定着性が良くなると、トナー剥離による汚れPは生じなくなる。このため、S6で用紙bの端部の改ざん(汚れPによる)が検出されるまでS7の地紋印刷範囲の維持処理を繰り返すことで、用紙全域に対する改ざんの検出を可能にし、システムの信頼性の向上を図っている。
【0023】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
例えば、以上の実施形態では、改ざん検証装置6において改ざんの検証と地紋印刷範囲の変更を行っているが、図5に示すように、これらの機能はファイルサーバ20に移してもよい。
すなわち、このファイルサーバ20には、スキャナ5で読み取った画像情報から地紋cの秘匿情報を抽出し、抽出された秘匿情報を印刷時に埋め込まれた秘匿情報と照合して印刷文書の改ざんを検証する改ざん検証部21と、用紙bの送り方向側の端部で、ADF4の給紙ローラaの初期当接箇所の付近に文字情報の改ざんを検出した場合、給紙ローラaの初期当接箇所を避けて地紋cを印刷すべく印刷装置3を制御する地紋印刷制御部22と、地紋印刷制御部22で変更した地紋印刷範囲に関する情報を格納しておく記憶部23と、印刷装置3が地紋cに埋め込んだ秘匿情報を格納しておく記憶部24を備えている。
【0024】
さらに、以上の実施形態では、印刷装置3と改ざん検証装置6をネットワーク7で接続し、離れた場所で文書dの印刷と改ざん検証を行っているが、印刷装置3と改ざん検証装置6は同じ筐体に組み込むようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】文書改ざん検証システムのシステム構成を示す図である。
【図2】同システムにおける地紋印刷範囲の変更手順を説明する図である。
【図3】地紋の余白の設定状態を説明する図で、(a)は余白設定前の状態を示す図、(b)は余白設定後の状態を示す図である。
【図4】用紙表面に対する地紋の印刷状態を示す図で、(a)(b)はそれぞれ図3(a)(b)に対応する図である。
【図5】図1の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1 パソコン
2 レーザプリンタ
3 印刷装置
4 自動給紙機構
5 スキャナ(読取装置)
6 パソコン(改ざん検証装置)
7 ネットワーク
8 ファイルサーバ
9 記憶部
10 記憶部
20 ファイルサーバ
21 改ざん検証部
22 地紋印刷制御部
23 記憶部
24 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙に地紋を背景として文字情報を印刷する印刷装置と、
自動給紙機構を備え、該自動給紙機構に印刷文書をセットして画像情報を読み取る読取装置と、
該読取装置で読み取った画像情報から前記地紋の秘匿情報を抽出し、抽出された地紋秘匿情報を印刷時に埋め込まれた秘匿情報と照合して前記印刷文書の改ざんを検証する改ざん検証装置と、
を備えてなる文書改ざん検証システムにおいて、
前記改ざん検証装置は、用紙の送り方向側の端部で、前記自動給紙機構の給紙ローラの初期当接箇所の付近に前記文字情報の改ざんを検出した場合、前記給紙ローラの初期当接箇所を避けて前記地紋を印刷すべく前記印刷装置を制御することを特徴とする文書改ざん検証システム。
【請求項2】
前記印刷装置と前記改ざん検証装置をネットワークを介して接続するとともに、該ネットワーク上にファイルサーバを設け、前記改ざん検証装置は変更した地紋印刷範囲に関する情報を前記ファイルサーバに格納しておき、前記印刷装置はファイルサーバの格納情報を参照して前記地紋の印刷を実行することを特徴とする請求項1に記載の文書改ざん検証システム。
【請求項3】
前記印刷装置は地紋に埋め込んだ秘匿情報を前記ファイルサーバに格納しておき、前記改ざん検証装置は、改ざんの検証に際し、抽出された地紋秘匿情報を前記ファイルサーバの格納情報と照合することを特徴とする請求項2に記載の文書改ざん検証システム。
【請求項4】
用紙に地紋を背景として文字情報を印刷する印刷装置と、自動給紙機構を備え、該自動給紙機構に印刷文書をセットして画像情報を読み取る読取装置とを接続するネットワーク上に設けられるファイルサーバであって、
前記読取装置で読み取った画像情報から前記地紋の秘匿情報を抽出し、抽出された地紋秘匿情報を印刷時に埋め込まれた秘匿情報と照合して前記印刷文書の改ざんを検証する改ざん検証部と、
用紙の送り方向側の端部で、前記自動給紙機構の給紙ローラの初期当接箇所の付近に前記文字情報の改ざんを検出した場合、前記給紙ローラの初期当接箇所を避けて前記地紋を印刷すべく前記印刷装置を制御する地紋印刷制御部と、
該地紋印刷制御部で変更した地紋印刷範囲に関する情報を格納しておく記憶部と、
を備えたことを特徴とするファイルサーバ。
【請求項5】
前記印刷装置が地紋に埋め込んだ前記秘匿情報を格納しておく記憶部を備えたことを特徴とする請求項4に記載のファイルサーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−34619(P2010−34619A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191562(P2008−191562)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】