説明

断熱パネル

【課題】 断熱系ボードと空気の流通空間を備え、釘打ちに対する強度を確保して、厚みを増大させることなく壁面を構成できるようにした断熱パネルを提供する。
【解決手段】 断熱ボード部(11)は厚み方向の強度を有する強度構造部(11A)と、断熱機能を有する断熱部(11B)とから構成され、空気流通部(12)は本体(12A)と閉鎖板(12B)とから構成され、空気流通部の本体は断熱ボード部の一面に固定され、第1の方向に延びる断面コ字状が第1の方向と直交する第2の方向に繰り返されて厚み方向の強度を有する断面形状をなし、本体の断熱ボード部と反対側の面には閉鎖板(12B)が固定されて断面コ字状の開口が閉鎖されることにより、空気流通部の本体には第1の方向に延びる閉断面形状の空気の流通空間が構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は断熱パネルに関し、特に木造家屋などの外壁や屋根の野地板に最適なパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
最近の家屋などでは省エネルギーの点から、外断熱形の外壁構造が採用されることが多くなった。従来この種の外断熱パネルでは発泡プラスチック系や繊維系のボードからなる断熱パネルが広く使用されていた。
【0003】
しかし、発泡プラスチック系や繊維系ボードの断熱パネルではボード内部に結露が発生し、黴が発生し、白蟻を誘引するおそれがあった。
【0004】
これに対し、発泡プラスチック系や繊維系のボードの一面に空気の流通空間を形成し、結露を抑制し軽減するようにした断熱パネルが提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【0005】
【特許文献1】特開平11−101475号公報
【特許文献2】特開2003−293471号公報
【特許文献3】実用新案登録第3041925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1〜3記載の断熱パネルでは発泡プラスチック系や繊維系のボードに釘を打ち込むと、打ち込んだ部位が凹んでしまい、断熱パネルの位置ずれが起こることがあるので、発泡プラスチック系や繊維系のボード内に桟木を入れ周囲をフレームで囲んで補強し、桟木やフレームによって外装パネルや内装パネルを受けて釘で固定する必要があり、2面が厚くなってしまうという問題があった。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑み、断熱系ボードと空気の流通空間を備えるとともに、釘打ちに対する強度を確保して、厚みを増大させることなく壁面を構成できるようにした断熱パネルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明に係る断熱パネルは、断熱ボード部と空気流通部とからなり、壁面又は屋根の野地板に用いられる断熱パネルにおいて、上記断熱ボード部は厚み方向の強度を有する強度構造部と、断熱機能を有する断熱部とから構成され、上記空気流通部は本体と閉鎖板とから構成され、上記空気流通部の本体は上記断熱ボード部の一面に固定され、第1の方向に延びる断面コ字状が上記第1の方向と直交する第2の方向に繰り返されて厚み方向の強度を有する断面形状をなし、上記本体の断熱ボード部と反対側の面には上記閉鎖板が固定されて上記断面コ字状の開口が閉鎖されることにより、上記空気流通部の本体には上記第1の方向に延びる閉断面形状の空気の流通空間が構成されている、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の特徴の1つは強度構造部と断熱部とから断熱ボード部を構成し、空気流通部を断面コ字状を繰り返した閉断面形状に形成するようにした点にある。
【0010】
これにより、断熱ボード部及び空気流通部に厚み方向の強度を付与することができるので、断熱パネルに釘を打ち込んでも断熱パネルが凹んで経時的に位置ずれが起こるおそれはなく、厚みを増大させることなく壁面、例えば外壁を構築することができる。
【0011】
また、本発明に係る断熱パネルは構造的に厚くならないので、屋根の野地板にも利用することができる。
【0012】
具体的には、断熱ボード部の強度構造部は硬質の合成樹脂材料又は低発泡樹脂材料を用いて複数の多角形筒を繰り返し並べた蜂の巣形状に形成して構成することができる。また、断熱ボード部の強度構造部はパルプ材料を用いて複数の多角形筒を繰り返し並べた蜂の巣形状を製作しこの蜂の巣形状の部分を板紙又は段ボールの間に挟んで構成することができる。
【0013】
また、断熱ボードの断熱部は高発泡樹脂材料を強度構造部の多角形筒内に充填して構成されることができ、又強度構造部の多角形筒内のエアーによって構成することもできる。
【0014】
また、断熱ボード部は、硬質の合成樹脂材料又は低発泡樹脂材料を用いて形成された複数の柱状の強度構造部と高発泡樹脂材料からなる複数の柱状の断熱部とを相互に隣接して並べて構成されることもできる。この場合、強度が要求される場合には柱状の強度構造部の数を多くし、断熱性が求められる場合には柱状の断熱部の数を多くすればよい。
【0015】
上述のように合成樹脂材料を用いて断熱ボード部を構成する場合、空気流通部も合成樹脂材料を用いて製作するのがよい。即ち、空気流通部の本体は硬質の合成樹脂材料又は低発泡樹脂材料を用いて構成し、閉鎖板は木質系ボードを用いて構成できる。
【0016】
さらに、断熱ボード部と空気流通部との間に、公知の遮熱シートを介在させると、断熱性をさらに向上させることができる。
【0017】
また、合成樹脂材料を用いると、断熱パネルのリサイクルが難しい。他方、板紙、段ボールやパルプ材料を用いて断熱パネルを構成することもできる。
【0018】
この場合、空気流通部はパルプ材料を用いて断面コ字状を繰り返した断面形状に製作して構成されるのがよく、又閉鎖板も段ボールやパルプ材料で製作されるのがよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1及び図2は本発明に係る断熱パネルの好ましい実施形態を示す。本例の断熱パネル10は断熱ボード部11と空気流通部12とから構成され、断熱ボード部11は厚み方向の強度を有する強度構造部11Aと、断熱機能を有する断熱部11Bとから構成されている。
【0020】
断熱ボード部11の強度構造部11Aは硬質の合成樹脂材料(又は低発泡樹脂材料)を用いて複数の六角形筒を繰り返し並べた蜂の巣形状に形成され、断熱ボード11の断熱部11Bは強度構造部11Aの多角形筒内に高発泡樹脂材料を充填して構成されている。
【0021】
空気流通部12は本体12Aと閉鎖板12Bとから構成され、空気流通部12の本体12Aは断熱ボード部11の一面に接着剤などを用いて固定され、硬質の合成樹脂材料(又は低発泡樹脂材料)を用い、長手方向である縦方向(第1の方向)に延びる断面コ字状を横方向(第1の方向と直交する第2の方向)に繰り返して厚み方向の強度を有する断面形状に製作されている。
【0022】
なお、空気流通部22の断面コ字状の延びる方向は縦方向でもよく横方向でもよい。例えば、外壁面の素材として用いる場合には縦方向に延びるのがよく、屋根の野地板に用いる場合には横方向に延びるのがよい。
【0023】
閉鎖板12Bは木質系ボード、例えば配向性ストランドボードOSBを用いて製作され、空気流通部12の本体12Aの断熱ボード部11と反対側の面に接着剤などを用いて固定されて断面コ字状の開口が閉鎖されることにより、空気流通部12の本体12Aには縦方向に延びる閉断面形状の空気の流通空間が構成されている。
【0024】
本例の断熱パネル10を用いて壁面を構成する場合、図2に示されるように、断熱ボード10の表裏両面に壁面素材(外壁面素材又は内壁面素材)15、16を重ね、釘17を打ち込むと、壁面素材15、16を断熱ボード10に固定することができる。
【0025】
このとき、断熱ボード部11は強度構造部11Aによって厚み方向の強度が確保され、空気流通部12は断面コ字状の本体12Aによって厚み方向の強度が確保されているので、壁面素材15、16を断熱パネル10に確実に固定することができ、経時的に位置ずれを起こすことはない。
【0026】
また、断熱ボード部11内に強度構造部11Aを内蔵させ、空気流通部12の本体12A自体を高強度の構造とし、従来のように桟木をボード内に挿入する必要がないので、厚くすることなく必要な強度が確保することができ、壁面や屋根の野地板の施工を容易に行うことができる。
【0027】
なお、断熱ボード部11と空気流通部12との間にアルミニウム製の遮熱シートを介在させると、断熱性を更にアップできる。
【0028】
図3は第2の実施形態を示し、図において図1及び図2と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例の断熱ボード部11’では、強度構造部11A’を硬質の合成樹脂材料(又は低発泡樹脂材料)を用いて円柱状に形成し、断熱部11B’は高発泡樹脂材料を用いて円柱状に形成し、複数の強度構造部11A’と断熱部11B’を相互に隣接して並べて断熱ボード部11’を構成している。
【0029】
図4は第3の実施形態を示し、図において図1及び図2と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例では断熱ボード部11に木枠18を取付け、壁面の構築時などに木枠18に釘打ちを行えるようにしている。
【0030】
図5は第4の実施形態を示す。図において、断熱パネル20は断熱ボード部21と空気流通部22とから構成されている。断熱ボード部21は強度構造部21Aと断熱部21Bとから構成され、強度構造部21Aはパルプ材料(又は段ボール)を用いて複数の多角形筒を繰り返し並べた蜂の巣形状を製作しこの蜂の巣形状の部分21Cを板紙21Dの間に挟んで構成されている。
【0031】
断熱ボード部21の断熱部21Bは強度構造部21Aの多角形筒内を中空のままとし、内部のエアーによって断熱機能を付与している。
【0032】
空気流通部22は本体22Aと閉鎖板22Bとから構成され、本体22Aはパルプ材料を用いて断面コ字状を繰り返した断面形状に製作され、閉鎖板22Bはパルプ材料で製作され、本体22Aの断熱ボード部21と反対側の面に接着剤などを用いて固定されて断面コ字状の開口を閉鎖することにより、空気流通部22の本体22Aには縦方向に延びる閉断面形状の空気の流通空間が構成されている。空気流通部22の断面コ字状の延びる方向は縦方向でもよく横方向でもよい。
【0033】
本例では板紙やパルプ材料を用いているので、使い終わった断熱パネルを回収してリサイクルすることができる。
【0034】
また、断熱ボード部21は厚みを薄くしこれを厚み方向に複数段積層した構造を採用すると、断熱性を更に向上することができる。また、断熱ボード部及び空気流通部はいずれを外方、例えば室外側に設定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る断熱パネルの好ましい実施形態を示す図である。
【図2】上記実施形態における使用方法を模式的に示す図である。
【図3】第2の実施形態を示す図である。
【図4】第3の実施形態を示す図である
【図5】第4の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
10 断熱パネル
11、11’ 断熱ボード部
11A、11A’ 強度構造部
11B、11B’ 断熱部
12 空気流通部
12A 本体
12B 閉鎖板
20 断熱パネル
21 断熱ボード部
21A 強度構造部
21B 断熱部
22 空気流通部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱ボード部と空気流通部とからなり、壁面又は屋根の野地板に用いられる断熱パネルにおいて、
上記断熱ボード部は厚み方向の強度を有する強度構造部と、断熱機能を有する断熱部とから構成され、
上記空気流通部は本体と閉鎖板とから構成され、上記空気流通部の本体は上記断熱ボード部の一面に固定され、第1の方向に延びる断面コ字状が上記第1の方向と直交する第2の方向に繰り返されて厚み方向の強度を有する断面形状をなし、
上記本体の断熱ボード部と反対側の面には上記閉鎖板が固定されて上記断面コ字状の開口が閉鎖されることにより、上記空気流通部の本体には上記第1の方向に延びる閉断面形状の空気の流通空間が構成されている、
ことを特徴とする断熱パネル。
【請求項2】
上記断熱ボード部の強度構造部は硬質の合成樹脂材料又は低発泡樹脂材料を用いて複数の多角形筒を繰り返し並べた蜂の巣形状に形成されている請求項1記載の断熱パネル。
【請求項3】
上記断熱ボード部の強度構造部は、パルプ材料又は段ボールを用いて複数の多角形筒を繰り返し並べた蜂の巣形状を製作しこの蜂の巣形状の部分を板紙又は段ボールの間に挟んで構成されている請求項1記載の断熱パネル。
【請求項4】
上記断熱ボードの断熱部は高発泡樹脂材料を上記強度構造部の多角形筒内に充填して構成されている請求項2又は3記載の断熱パネル。
【請求項5】
上記断熱ボード部は、硬質の合成樹脂材料又は低発泡樹脂材料を用いて形成された複数の柱状の強度構造部と高発泡樹脂材料からなる複数の柱状の断熱部とを相互に隣接して並べて構成されている請求項1記載の断熱パネル。
【請求項6】
上記空気流通部の本体は硬質の合成樹脂材料又は低発泡樹脂材料で構成され、上記閉鎖板は木質系ボードで構成されている請求項1記載の断熱パネル。
【請求項7】
上記断熱ボード部と空気流通部との間には遮熱シートが介在されている請求項1ないし4のいずれかに記載の断熱パネル。
【請求項8】
上記断熱ボード部の断熱部は強度構造部の多角形筒内のエアーによって構成されている請求項2又は3記載の断熱パネル。
【請求項9】
上記空気流通部はパルプ材料を用いて断面コ字状を繰り返した断面形状に製作して構成されている請求項1記載の断熱パネル。
【請求項10】
上記閉鎖板がパルプ材料で製作されている請求項1記載の断熱パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−1699(P2010−1699A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163135(P2008−163135)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(508189382)
【Fターム(参考)】