説明

断熱材及びその使用方法

【課題】施工時の配設厚みを数ミリ程度に抑えながら、十分な断熱効果を奏する断熱材を提供すること。
【解決手段】酸化カルシウムを主成分とする主材に、樹脂エマルジョンと、樹脂中空材とが配合されている断熱材とした。または、砂と水ガラスを主成分とする主材に、樹脂エマルジョンと、樹脂中空材とが配合され、ロール状に成形されている断熱材とした。また、前記樹脂中空材をアクリル中空材とし、この樹脂中空材の配合比を20重量%とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱材及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物は、冷房などにより空調していても、夏場など直射日光が照りつける炎天下では屋根の温度が上昇して建築物内部の空気を暖めてしまい、冷房効率が低下してしまう。
【0003】
特に、屋根裏部屋のような屋根直下の閉鎖空間では、例えば60℃を越すまで室温が上昇することもあり、この閉鎖空間内の熱せられた空気が長時間に亘って滞留すると、日没後であっても、同閉鎖空間に天井を介して接する部屋は長時間に亘り冷房効率が悪化することになる。
【0004】
屋根などの断熱構造として、例えば、屋根構造の垂木、壁構造の桟木または間柱、床構造の根太等の桟状構造材間に断熱材を配置する構造が知られているが、そこで用いられる断熱材としては、発泡スチロール樹脂、グラスウールなどが一般的であった(例えば、特許文献1を参照。)。また、断熱材として、発泡ポリウレタンや石膏ボードなども知られている。
【特許文献1】特開平8−128123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した発泡スチロール樹脂、グラスウール、発泡ポリウレタン、あるいは石膏ボードなどを断熱材として用いた場合、断熱効果を得るためにはその厚さを10〜30mmとする必要があり、建築物の限られた容積の中にあってはその厚み軽減が望まれるところであった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決することのできる断熱材、及びその使用方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る断熱材は、酸化カルシウムを主成分とする主材に、樹脂エマルジョンと、樹脂中空材とが配合されていることとした。
【0008】
(2)本発明に関する断熱材は、砂と水ガラスを主成分とする主材に、樹脂エマルジョンと、樹脂中空材とが配合され、ロール状に成形されていることとした。
【0009】
(3)本発明では、上記(1)又は(2)に記載の断熱材において、前記樹脂中空材を、アクリル中空材としたことを特徴とする。
【0010】
(4)本発明では、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の断熱材において、前記樹脂中空材の配合比を、20重量%としたことを特徴とする。
【0011】
(5)本発明に係る断熱材の使用方法は、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の断熱材を、屋根葺材の裏面及び/又は表面に担持させることとした。
【0012】
(6)本発明に係る断熱材の使用方法は、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の断熱材を、屋根を構成する野地板の表面及び/又は裏面に担持させることを特徴とする。
【0013】
(7)本発明に係る断熱材の使用方法は、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の断熱材を、建築物の壁材の内側面に担持させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、施工時の配設厚みを数ミリ程度に抑えながら、十分な断熱効果を奏する断熱材を提供することができ、建築物の限られた容積の有効利用が図れ、設計自由度を著しく高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本実施形態に係る断熱材1は、図1に示すように、酸化カルシウムを主成分とする主材11に、樹脂エマルジョン12と、樹脂中空材10とが配合されていることに特徴がある。
【0016】
酸化カルシウムを主成分とする主剤11としては、例えば、セメントやモルタルなどを好適に用いることができる。
【0017】
この主材11に混ぜる樹脂エマルジョン12としては、アクリル樹脂エマルジョンやアクリルスチレン樹脂エマルジョンが好適に用いられる。
【0018】
樹脂中空材10は、断熱効果を実質的に向上させるために有用な材料であり、アクリル中空材を好適に用いることができる。このアクリル中空材は、粒径が20〜100μm程度の高分子中空微小球であり、断熱材1を構成する成分の中で、少なくとも20重量%程度の配合比で含ませている。したがって、断熱材1中に十分な空気層が形成されることになり、断熱効果を著しく向上させることが可能となる。しかも、主体が樹脂なので、樹脂エマルジョン11中に混合したときの馴染みもよい。本実施形態では、樹脂中空材10の配合比を20〜25重量%としている。
【0019】
断熱材1の成分構成は以下の通りとし、各材料に規定した範囲の割合の中から選択して配合することができる。
【0020】
樹脂エマルジョン12 60〜65重量%
樹脂中空材10 20〜25重量%
主材11 10〜20重量%
上記範囲の中で、本実施形態では、以下の配分とした。
【0021】
樹脂エマルジョン12 64重量%
樹脂中空材10 20重量%
主材11 16重量%
そして、断熱材1を生成するための材料の配合手順としては、以下の方法がある。
(1)先ず、樹脂中空材10と主材11とを混合して混合物を生成し、その混合物を、樹脂エマルジョン12に混入して混練する。
(2)まず、樹脂中空材10を樹脂エマルジョン12と混合して混合物を生成し、その混合物中に主材11を混入して混練する。
(3)樹脂エマルジョン12に樹脂中空材10を混入し、次いで主材11を混入して混練する。
【0022】
こうして得た断熱材1について、図2に示すような実験を行った。
【0023】
図1において、2はヒータ、3は第1温度センサ、4は第2温度センサであり、断熱材1の厚みは3mmとした。そして、断熱材1の一側面をヒータ2により加熱し、第1温度センサ3が60℃になったときの、他側面の温度を第2ヒータ4により測定した。
【0024】
このとき、他側の温度は36℃であり、温度が断熱材1の一側から他側へ伝導されるときの低減率は40%であることが分かった。
【0025】
また、断熱材1の一側面をヒータ2により加熱し、第1温度センサ3が80℃になったときの、他側面の温度を第2ヒータ4により測定すると、他側の温度は40℃であり、温度が断熱材1の一側から他側へ伝導されるときの低減率は50%であることが分かった。
【0026】
一方、これと比較するために、石膏ボードからなる断熱材(厚み25mm)についても同様な実験をしてみたところ、熱の低減率は、15%と30%であった。
【0027】
このように、極めて薄い断熱材でありながら、大きな断熱効果を奏することが実験的に明らかになった。これは、樹脂中空材10により、断熱材1の内部に十分な容量の空気層が形成されているためであり、本実施形態では、かかる空気層をきわめて容易に形成することができる。
【0028】
ところで、上述の断熱材1の使用方法は、屋根葺材の裏面及び/又は表面に担持させることができる他、屋根を構成する野地板の表面及び/又は裏面に担持させることができる。さらには、かかる断熱材を建築物の壁材の内側面に担持させることもできる。
【0029】
本実施形態の断熱材1は、樹脂エマルジョン12が主体となっているため乳濁状となっており、上記屋根葺材や野地板などに、吹き付け、ローラ塗り、刷毛塗り、あるいはコテ塗りなどによって担持させることが容易である。しかも、厚みとしては、2〜5mm程度でも十分な断熱効果を得ることができる。しかも、断熱効果とともに、防水効果も奏することから、極めて良質の屋根葺材とすることができる。
【0030】
このように、上述した断熱材を使用することにより、施工時の配設厚みを数ミリ程度に抑えながら、十分な断熱効果を奏することができる。そして、建築物の限られた容積の有効利用を図ることができるとともに、設計自由度を著しく高めることができる。
【0031】
ところで、上述した断熱材を担持させる屋根葺材の材質としては特に限定されるものではない。例えば、粘土瓦、セメント瓦、石綿セメント瓦、金属瓦等を用いた瓦葺、天然スレート、石綿セメント板、アスファルトシングル、金属板、こけら、樹皮、ガラス等を用いる平板葺、金属波板、石綿セメント波板、プラスチック波板、ガラス波板等を用いる波板葺、金属板、亜鉛鉄板、アルミ板等から形成することができる。
【0032】
また、建築物の屋根の形状としても特に限定されるものではない。例えば、切妻屋根、入母屋屋根、寄棟屋根、片流屋根、方形屋根、のこぎり屋根、腰折れ屋根、マンサード屋根、かまぼこ屋根、越屋根、招き屋根、差掛屋根等の勾配屋根、屋根面に傾斜のない(または、僅かな傾斜の)略平坦な陸屋根のいずれであっても良い。
【0033】
また、本実施形態では、屋根葺材の概念として下葺材(ルーフィング)も含んでおり、かかる下葺材としても何ら限定するものではなく、アスファルトやゴム、合成樹脂、プラスチックなどによりシート状に形成し、耐水性を備えていればよい。
【0034】
断熱材の他の実施形態として、砂と水ガラス(珪酸ナトリウム水溶液)を主成分とする主材に、樹脂エマルジョンと、樹脂中空材とを配合し、ロール状に成形することができる(図示せず)。なお、この場合についても断熱材の厚さは2〜5mmとすることができる。
【0035】
このように、主材として水ガラスを含ませたことで、ロール状に加工することができるようになり、ハンドリング性を良好にすることができる。また、前述した屋根葺材や野地板、あるいは壁材などへの着設は、適宜な接着剤を用いて対象物に貼着すればよいため、断熱材の配設が極めて容易である。
【0036】
そして、本実施形態の断熱材であっても、上述した構成の断熱材と同様に、建築物における屋根葺材の裏面及び/又は表面、屋根を構成する野地板の表面及び/又は裏面、壁材の内側面に取り付けて用いることにより、やはり、施工時の配設厚みを数ミリ程度に抑えながら、十分な断熱効果を奏することができるとともに、建築物の限られた容積の有効利用を図ることができ、かつ設計自由度を著しく高めることができる。特に、この場合はルーフィングに適用するのに極めて利便性が高くなる。
【0037】
なお、ロール状に巻き取った形状とした場合、断熱材の表面には砂をまぶしておくことが好ましい。砂によって、断熱材をロール状に巻いた場合に断熱材同士が接着してしまい、解きほどき難くなるといった不具合を防止できる。
【0038】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、参考例として、樹脂中空材に代えてシラスバルーンを用いることもできる。中空材としての空隙率の関係上、樹脂中空材に比べると断熱効率は若干劣るものの、断熱材として使用することは十分可能である。
【0039】
また、樹脂中空材とシラスバルーンとを混合して使用することもできる。すなわち、本発明の酸化カルシウムを主成分とする主材に、樹脂エマルジョンと、樹脂中空材とが配合されているという構成は、中空部材として、樹脂中空材に他の中空部材が混合されている場合も含む概念である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本実施形態に係る断熱材の模式的断面図である。
【図2】断熱材の熱の低減率を測定するための実験概要を示す説明図である。
【符号の説明】
【0041】
1 断熱材
2 ヒータ
3 第1温度センサ
4 第2温度センサ
10 樹脂中空材
11 主材
12 樹脂エマルジョン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化カルシウムを主成分とする主材に、樹脂エマルジョンと、樹脂中空材とが配合されていることを特徴とする断熱材。
【請求項2】
砂と水ガラスを主成分とする主材に、樹脂エマルジョンと、樹脂中空材とが配合され、ロール状に成形されていることを特徴とする断熱材。
【請求項3】
前記樹脂中空材を、アクリル中空材としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の断熱材。
【請求項4】
前記樹脂中空材の配合比を、20重量%としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の断熱材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の断熱材を、屋根葺材の裏面及び/又は表面に担持させることを特徴とする断熱材の使用方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の断熱材を、屋根を構成する野地板の表面及び/又は裏面に担持させることを特徴とする断熱材の使用方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の断熱材を、建築物の壁材の内側面に担持させることを特徴とする断熱材の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−52222(P2009−52222A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218109(P2007−218109)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(507064097)
【Fターム(参考)】