説明

新規なアントラセン化合物、その製造方法およびその用途

【課題】 新規な9−(2−(メタ)アクリルオキシアルコキシ)アントラセン化合物、その製造方法、およびその用途を提供すること。
【解決手段】 第一発明は、次の構造式(1)で表される9−(2−(メタ)アクリルオキシアルコキシ)アントラセン化合物を要旨とし、第二発明は、その製造方法を要旨とし、第三発明は、第一発明に係る化合物を有効成分とすることを特徴とする光重合増感剤を要旨とし、第四発明は、第三発明に係る光重合増感剤を含む光重合性組成物を要旨とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアントラセン化合物、その製造方法およびその用途に関する。さらに詳しくは、光重合増感剤として有用な新規なアントラセン化合物、その製造方法、およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から光ラジカル重合または光カチオン重合において、9,10−ジアルコキシアントラセンが増感剤として機能することは知られている。例えば、光ラジカル重合の用途では、テトラエチレングリコールジメタクリレートに対し、増感剤として9,10−ジエトキシアントラセンが使用されており(特許文献1参照)、また、光カチオン重合の用途では、脂環式エポキシ化合物(ダウ社製、商品名:UVR6110)に対し、増感剤として2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセンを使用する例が記載されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平06−059380
【特許文献2】特開平11―279212
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のジアルコキシアントラセンは、ポリマーに対する溶解度が低く、揮発(昇華)性が高く、基材表面への塗膜形成中に揮発(昇華)して、基材表面にアントラセン化合物が染み出すという問題があった。また、アントラセン化合物は有機溶剤に溶け易いので、塗膜形成後に塗膜が有機溶剤と接触すると、アントラセン化合物が有機溶媒によって抽出される恐れがあり、より移行性の少ない増感剤が求められていた。そのため、本発明者らは、アントラセン骨格にアクリル基やグリシジル基の導入を試みたが、得られたアクリル基が導入されたアントラセン化合物は重合性能に乏しく、また、グリシジル基が導入されたアントラセン化合物もまた、光重合性モノマーに対する溶解度が低く、満足できるものではなかった。
【0004】
本発明者は、上記欠点を排除した技術を提供すべく、アルコキシアントラセン化合物の構造、特性、物性などに関して鋭意検討した結果、本発明を完成したものである。すなわち、本発明の目的は、次のとおりである。
1.光増感性能に優れた新規な化合物を提供すること。
2.上記化合物を光重合増感剤として含む光硬化性組成物を提供すること。
3.上記化合物を光重合増感剤として含み、光硬化させる際の加熱工程や、硬化させた後に時間が経過しても、染み出しや揮発が少ない光硬化性組成物を提供すること。
4.上記化合物を光重合増感剤として含む光硬化性組成物を、光硬化させた塗膜に有機溶媒を接触させても、アントラセン化合物が抽出され難い光硬化性組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、第一発明では、次の構造式(1)で表される9−(2−(メタ)アクリルオキシアルコキシ)アントラセン化合物を提供する。
【0006】
【化1】

【0007】
{構造式(1)において、R1は水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシメチル基、アリルオキシメチル基、アリールオキシメチル基のいずれかを表し、R2は水素原子またはメチル基を表し、X、Yは同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アルキルチオ基、チオアリールオキシ基、カルボキシル基、スルホン酸基のいずれかを表す。}
【0008】
また第二発明では、9−ヒドロキシアントラセン化合物に、酸化アルキレンまたはハロゲン化アルコール(ハロヒドリン)を付加反応させて9−(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物とし、ついで、この化合物に塩化アクリロイル化合物または塩化メタアクリロイル化合物を反応させることを特徴とする、9−(2−(メタ)アクリルオキシアルコキシ)アントラセン化合物の製造方法を提供する。
【0009】
さらに第三発明では、第一発明に係る9−(2−(メタ)アクリルオキシアルコキシ)アントラセン化合物を有効成分として含有することを特徴とする、光重合増感剤を提供する。
【0010】
さらにまた第四発明では、第三発明に係る光重合増感剤、光重合開始剤、および光重合性モノマーを含有することを特徴とする光硬化性組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以下詳細に説明するとおりであり、次のような特別に有利な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
1.本発明に係る9−(2−(メタ)アクリルオキシアルコキシ)アントラセン化合物は、新規な化合物であり、ジアルコキシアントラセン化合物に比べて光重合性モノマーに対する溶解度が高い。
2.本発明に係る9−(2−(メタ)アクリルオキシアルコキシ)アントラセン化合物は、光増感剤として機能し、光重合性モノマーの光重合を促進させ、光硬化性組成物を効果的に硬化させる。
3.本発明に係る9−(2−(メタ)アクリルオキシアルコキシ)アントラセン化合物は、光ラジカル重合、光カチオン重合において光増感剤として使用した際に、優れた効果を発揮する。
4.本発明に係る9−(2−(メタ)アクリルオキシアルコキシ)アントラセン化合物を光重合増感剤として含む光硬化性組成物は、光硬化させる際の加熱工程や、光硬化させた後にアントラセン化合物が揮発(昇華)することがなく、光硬化させた塗膜に有機溶媒を接触させても、アントラセン化合物が抽出され難い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の第一発明に係る化合物は、上記構造式(1)によって表される、9−(2−(メタ)アクリルオキシアルコキシ)アントラセン化合物である。
【0013】
構造式(1)において、R1で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基などが挙げられ、R1で表されるアリール基としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−メトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、ナフチル基が挙げられ、R1で表されるアルコキシメチル基としては、メトキシメチル基、ブトキシメチル基、2−エチルヘキシルオキシメチル基、2−オクチルオキシメチル基などが挙げられ、R1で表されるアリルオキシメチル基としては、メタリルオキシメチル基などが挙げられ、また、R1で表されるアリールオキシメチル基としては、フェノキシメチル基などが挙げられる。
【0014】
構造式(1)において、XまたはYで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、アミル基、2−エチルヘキシル基、4−メチルペンチル、4−メチル−3−ペンテニル基などが挙げられる。また、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。さらに、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、フェノキシ基などが挙げられる。アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ヘキシルチオ基などが挙げられる。アリールチオ基としては、フェニルチオ基、o−トリルチオ基、m−トリルチオ碁、p−トリルチオ基、p−ヒドロキシフェニルチオ基などが挙げられる。
【0015】
構造式(1)で表される9−(2−(メタ)アクリルオキシアルコキシ)アントラセン化合物の具体例としては、次のような化合物が挙げられる。すなわち、9−(2−アクリルオキシエトキシ)アントラセン、9−(2−メタクリルオキシエトキシ)アントラセン、9−(2−アクリルオキシプロポキシ)アントラセン、9−(2−メタクリルオキシプロポキシ)アントラセン、9−(2−アクリルオキシブトキシ)アントラセン、9−(2−メタクリルオキシブトキシ)アントラセン、9−(2−アクリルオキシヘプチルオキシ)アントラセン、9−(2−メタクリルオキシヘプチルオキシ)アントラセン、9−(2−アクリルオキシオクチルオキシ)アントラセン、9−(2−メタクリルオキシオクチルオキシ)アントラセン、9−(2−アクリルオキシ−2−フェニルエトキシ)アントラセン、9−(2−メタクリルオキシ−2−フェニルエトキシ)アントラセン、9−(2−アクリルオキシ−3−メトキシプロポキシ)アントラセン、9−(2−メタクリルオキシ−3−メトキシプロポキシ)アントラセン、9−(2−アクリルオキシ−3−ブトキシプロポキシ))アントラセン、9−(2−メタクリルオキシ−3−ブトキシプロポキシ)アントラセン、9−(2−アクリルオキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン、9−(2−メタクリルオキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン、9−(2−アクリルオキシ−3−(2−エチル)ヘキシルオキシプロポキシ)アントラセン、9−(2−メタクリルオキシ−3−(2−エチル)ヘキシルオキシプロポキシ)アントラセン、9−(2−アクリルオキシ−3−ステアリルオキシプロポキシ)アントラセン、9−(2−メタクリルオキシ−3−ステアリルオキシプロポキシ)アントラセン、9−(2−アクリルオキシ−3−フェノキシプロポキシ)アントラセン、9−(2−メタクリルオキシ−3−フェノキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−アクリルオキシエトキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−メタクリルオキシエトキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−アクリルオキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−メタクリルオキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−アクリルオキシブトキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−メタクリルオキシブトキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−アクリルオキシヘプチルオキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−メタクリルオキシヘプチルオキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−アクリルオキシオクチルオキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−メタクリルオキシオクチルオキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−アクリルオキシ−2−フェニルエトキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−メタクリルオキシ−2−フェニルエトキシ)アントラセンなどが挙げられる。
【0016】
また、2−メチル−9−(2−アクリルオキシ−3−メトキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−メタクリルオキシ−3−メトキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−アクリルオキシ−3−ブトキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−メタクリルオキシ−3−ブトキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−アクリルオキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−メタクリルオキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−アクリルオキシ−3−(2−エチル)ヘキシルオキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−メタクリルオキシ−3−(2−エチル)ヘキシルオキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−アクリルオキシ−3−ステアリルオキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−メタクリルオキシ−3−ステアリルオキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−アクリルオキシ−3−フェノキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−メタクリルオキシ−3−フェノキシプロポキシ)アントラセンなどが挙げられる。
【0017】
さらに、2−クロロ−9−(2−アクリルオキシエトキシ)アントラセン、2−クロロ−9−(2−メタクリルオキシエトキシ)アントラセン、2−クロロ−9−(2−アクリルオキシプロポキシ)アントラセン、2−クロロ−9−(2−メタクリルオキシプロポキシ)アントラセン、2−クロロ−9−(2−アクリルオキシブトキシ)アントラセン、2−クロロ−9−(2−メタクリルオキシブトキシ)アントラセン、2−クロロ−9−(2−アクリルオキシヘプチルオキシ)アントラセン、2−クロロ−9−(2−メタクリルオキシヘプチルオキシ)アントラセン、2−クロロ−9−(2−アクリルオキシオクチルオキシ)アントラセン、2−クロロ−9−(2−メタクリルオキシオクチルオキシ)アントラセン、2−クロロ−9−(2−アクリルオキシ−2−フェニルエトキシ)アントラセン、2−クロロ−9−(2−メタクリルオキシ−2−フェニルエトキシ)アントラセン、2−クロロ−9−(2−アクリルオキシ−3−メトキシプロポキシ)アントラセン、2−クロロ−9−(2−メタクリルオキシ−3−メトキシプロポキシ)アントラセン、2−クロロ−9−(2−アクリルオキシ−3−ブトキシプロポキシ)アントラセン、2−クロロ−9−(2−メタクリルオキシ−3−ブトキシプロポキシ)アントラセン、2−クロロ−9−(2−アクリルオキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン、2−クロロ−9−(2−メタクリルオキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン、2−クロロ−9−(2−アクリルオキシ−3−(2−エチル)ヘキシルオキシプロポキシ)アントラセン、2−クロロ−9−(2−メタクリルオキシ−3−(2−エチル)ヘキシルオキシプロポキシ)アントラセン、2−クロロ−9−(2−アクリルオキシ−3−ステアリルオキシプロポキシ)アントラセン、2−クロロ−9−(2−メタクリルオキシ−3−ステアリルオキシプロポキシ)アントラセン、2−クロロ−9−(2−アクリルオキシ−3−フェノキシプロポキシ)アントラセン、2−クロロ−9−(2−メタクリルオキシ−3−フェノキシプロポキシ)アントラセンなどが挙げられる。
【0018】
さらにまた、2−フェノキシ−9−(2−アクリルオキシエトキシ)アントラセン、2−フェノキシ−9−(2−メタクリルオキシエトキシ)アントラセン、2−フェノキシ−9−(2−アクリルオキシプロポキシ)アントラセン、2−フェノキシ−9−(2−メタクリルオキシプロポキシ)アントラセン、2−フェノキシ−9−(2−アクリルオキシブトキシ)アントラセン、2−フェノキシ−9−(2−メタクリルオキシブトキシ)アントラセン、2−フェノキシ−9−(2−アクリルオキシヘプチルオキシ)アントラセン、2−フェノキシ−9−(2−メタクリルオキシヘプチルオキシ)アントラセン、2−フェノキシ−9−(2−アクリルオキシオクチルオキシ)アントラセン、2−フェノキシ−9−(2−メタクリルオキシオクチルオキシ)アントラセン、2−フェノキシ−9−(2−アクリルオキシ−2−フェニルエトキシ)アントラセン、2−フェノキシ−9−(2−メタクリルオキシ−2−フェニルエトキシ)アントラセン、2−フェノキシ−9−(2−アクリルオキシ−3−メトキシプロポキシ)アントラセン、2−フェノキシ−9−(2−メタクリルオキシ−3−メトキシプロポキシ)アントラセン、2−フェノキシ−9−(2−アクリルオキシ−3−ブトキシプロポキシ)アントラセン、2−フェノキシ−9−(2−メタクリルオキシ−3−ブトキシプロポキシ)アントラセン、2−フェノキシ−9−(2−アクリルオキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン、2−フェノキシ−9−(2−メタクリルオキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン、2−フェノキシ−9−(2−アクリルオキシ−3−(2−エチル)ヘキシルオキシプロポキシ)アントラセン、2−フェノキシ−9−(2−メタクリルオキシ−3−(2−エチル)ヘキシルオキシプロポキシ)アントラセン、2−フェノキシ−9−(2−アクリルオキシ−3−ステアリルオキシプロポキシ)アントラセン、2−フェノキシ−9−(2−メタクリルオキシ−3−ステアリルオキシプロポキシ)アントラセン、2−フェノキシ−9−(2−アクリルオキシ−3−フェノキシプロポキシ)アントラセン、2−フェノキシ−9−(2−メタクリルオキシ−3−フェノキシプロポキシ)アントラセンなどが挙げられる。
【0019】
またさらに、2−フェニルチオ−9−(2−アクリルオキシエトキシ)アントラセン、2−フェニルチオ−9−(2−メタクリルオキシエトキシ)アントラセン、2−フェニルチオ−9−(2−アクリルオキシプロポキシ)アントラセン、2−フェニルチオ−9−(2−メタクリルオキシプロポキシ)アントラセン、2−フェニルチオ−9−(2−アクリルオキシブトキシ)アントラセン、2−フェニルチオ−9−(2−メタクリルオキシブトキシ)アントラセン、2−フェニルチオ−9−(2−アクリルオキシヘプチルオキシ)アントラセン、2−フェニルチオ−9−(2−メタクリルオキシヘプチルオキシ)アントラセン、2−フェニルチオ−9−(2−アクリルオキシオクチルオキシ)アントラセン、2−フェニルチオ−9−(2−メタクリルオキシオクチルオキシ)アントラセン、2−フェニルチオ−9−(2−アクリルオキシ−2−フェニルエトキシ)アントラセン、2−フェニルチオ−9−(2−メタクリルオキシ−2−フェニルエトキシ)アントラセン、2−フェニルチオ−9−(2−アクリルオキシ−3−メトキシプロポキシ)アントラセン、2−フェニルチオ−9−(2−メタクリルオキシ−3−メトキシプロポキシ)アントラセン、2−フェニルチオ−9−(2−アクリルオキシ−3−ブトキシプロポキシ)アントラセン、2−フェニルチオ−9−(2−メタクリルオキシ−3−ブトキシプロポキシ)アントラセン、2−フェニルチオ−9−(2−アクリルオキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン、2−フェニルチオ−9−(2−メタクリルオキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン、2−フェニルチオ−9−(2−アクリルオキシ−3−(2−エチル)ヘキシルオキシプロポキシ)アントラセン、2−フェニルチオ−9−(2−メタクリルオキシ−3−(2−エチル)ヘキシルオキシプロポキシ)アントラセン、2−フェニルチオ−9−(2−アクリルオキシ−3−ステアリルオキシプロポキシ)アントラセン、2−フェニルチオ−9−(2−メタクリルオキシ−3−ステアリルオキシ)プロポキシアントラセン、2−フェニルチオ−9−(2−アクリルオキシ−3−フェノキシプロポキシ)アントラセン、2−フェニルチオ−9−(2−メタクリルオキシ−3−フェノキシプロポキシ)アントラセンなどが挙げられる。
【0020】
さらに、9−(2−アクリルオキシエトキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−メタクリルオキシエトキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−アクリルオキシプロポキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−メタクリルオキシプロポキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−アクリルオキシブトキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−メタクリルオキシブトキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−アクリルオキシヘプチルオキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−メタクリルオキシヘプチルオキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−アクリルオキシオクチルオキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−メタクリルオキシオクチルオキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−アクリルオキシ−2−フェニルエトキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−メタクリルオキシ−2−フェニルエトキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−アクリルオキシ−3−メトキシプロポキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−メタクリルオキシ−3−メトキシプロポキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−アクリルオキシ−3−ブトキシプロポキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−メタクリルオキシ−3−ブトキシプロポキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−アクリルオキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−メタクリルオキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−アクリルオキシ−3−(2−エチル)ヘキシルオキシプロポキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−メタクリルオキシ−3−(2−エチル)ヘキシルオキシプロポキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−アクリルオキシ−3−ステアリルオキシプロポキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−メタクリルオキシ−3−ステアリルオキシプロポキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−アクリルオキシ−3−フェノキシプロポキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−メタクリルオキシ−3−フェノキシプロポキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−アクリルオキシエトキシ)アントラセン−2−スルホン酸、9−(2−メタクリルオキシエトキシ)アントラセン−2−スルホン酸、9−(2−アクリルオキシプロポキシ)アントラセン−2−スルホン酸、9−(2−メタクリルオキシプロポキシ)アントラセン−2−スルホン酸、9−(2−アクリルオキシブトキシ)アントラセン−2−スルホン酸、9−(2−メタクリルオキシブトキシ)アントラセン−2−スルホン酸、9−(2−アクリルオキシヘプチルオキシ)アントラセン−2−スルホン酸、9−(2−メタクリルオキシヘプチルオキシ)アントラセン−2−スルホン酸、9−(2−アクリルオキシオクチルオキシ)アントラセン−2−スルホン酸、9−(2−メタクリルオキシオクチルオキシ)アントラセン−2−スルホン酸、9−(2−アクリルオキシ−2−フェニルエトキシ)アントラセン−2−スルホン酸、9−(2−メタクリルオキシ−2−フェニルエトキシ)アントラセ−2−スルホン酸、9−(2−アクリルオキシ−3−メトキシプロポキシ)アントラセン−2−スルホン酸、9−(2−メタクリルオキシ−3−メトキシプロポキシ)アントラセン−2−スルホン酸、9−(2−アクリルオキシ−3−ブトキシプロポキシ)アントラセン−2−スルホン酸、9−(2−メタクリルオキシ−3−ブトキシプロポキシ)アントラセン−2−スルホン酸、9−(2−アクリルオキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン−2−スルホン酸、9−(2−メタクリルオキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン−2−スルホン酸、9−(2−アクリルオキシ−3−(2−エチル)ヘキシルオキシプロポキシ)アントラセン−2−スルホン酸、9−(2−メタクリルオキシ−3−(2−エチル)ヘキシルオキシプロポキシ)アントラセン−2−スルホン酸、9−(2−アクリルオキシ−(3−ステアリルオキシ)プロポキシ)アントラセン−2−スルホン酸、9−(2−メタクリルオキシ−3−ステアリルオキシプロポキシ)アントラセン−2−スルホン酸、9−(2−アクリルオキシ−3−フェノキシプロポキシ)アントラセン−2−スルホン酸、9−(2−メタクリルオキシ−3−フェノキシプロポキシ)アントラセン−2−スルホン酸などが挙げられる。
【0021】
前記構造式(1)で表される9−(2−(メタ)アクリルオキシアルコキシ)アントラセン化合物の代表的なものは、以下の構造式(2)〜構造式(35)で表されるものである。なお、以下の構造式において、nBuはノルマルブチル基、Phはフェニル基を、それぞれ意味する。
【0022】
【化2】

【0023】
【化3】

【0024】
【化4】

【0025】
【化5】

【0026】
【化6】

【0027】
【化7】

【0028】
【化8】

【0029】
【化9】

【0030】
【化10】

【0031】
【化11】

【0032】
【化12】

【0033】
【化13】

【0034】
【化14】

【0035】
【化15】

【0036】
【化16】

【0037】
【化17】

【0038】
【化18】

【0039】
【化19】

【0040】
【化20】

【0041】
【化21】

【0042】
【化22】

【0043】
【化23】

【0044】
【化24】

【0045】
【化25】

【0046】
【化26】

【0047】
【化27】

【0048】
【化28】

【0049】
【化29】

【0050】
【化30】

【0051】
【化31】

【0052】
【化32】

【0053】
【化33】

【0054】
【化34】

【0055】
【化35】

【0056】
<第二発明(製造方法)>
第一発明に係る9−(2−(メタ)アクリルオキシアルコキシ)アントラセン化合物は、まず、第一反応によって、9−ヒドロキシアントラセン化合物と、酸化アルキレンまたはハロゲン化アルコール(ハロヒドリン)とを、塩基の存在下または非存在下に、付加反応させることによって、9−(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物とし、ついで、第二反応によって、塩基の存在下または非存在下、塩化アクリロイルまたは塩化メタアクリロイルと反応させて、(メタ)アクリル化することによって得られる。
【0057】
付加反応の第一反応を遂行する際に使用できる9−ヒドロキシアントラセン化合物としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。すなわち、9−ヒドロキシアントラセン、2−メチル−9−ヒドロキシアントラセン、2−エチル−9−ヒドロキシアントラセン、2−(t−ブチル)−9−ヒドロキシアントラセン、2−(4−メチル−3−ペンテニル)−9−ヒドロキシアントラセン、2−(4−メチルペンチル)−9−ヒドロキシアントラセン、2−クロル−9−ヒドロキシアントラセン、2−エトキシー9−ヒドロキシアントラセン、2−フェノキシ−9−ヒドロキシアントラセン、2−エチルチオー9−ヒドロキシアントラセン、2−フェニルチオ−9−ヒドロキシアントラセン、9−ヒドロキシアントラセン−2−カルボン酸、9−ヒドロキシアントラセン−2−スルホン酸などである。なお、これら9−ヒドロキシアントラセン化合物(アントラノール化合物)は、その互変異性体のアントロン化合物を使用することによって、異性化反応を経て反応系に供与できる。
【0058】
付加反応の第一反応を遂行する際に使用できる酸化アルキレンとしては、例えば、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化ブチレン、1−ヘキセンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、メチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、2−メチルオクチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0059】
付加反応の第一反応を遂行する際に使用できるハロゲン化アルコール(ハロヒドリン)としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。すなわち、2−ブロモエタノール、2−ヨードエタノール、1−クロロ−2−プロパノール、1−ブロモ−2−プロパノール、2−クロロシクロヘキサノール、1−クロロ−3−メトキシ−2−プロパノールなどである。
【0060】
付加反応の第一反応を遂行する際の酸化アルキレンまたはハロゲン化アルコール(ハロヒドリン)の添加量は、9−ヒドロキシアントラセン化合物1.0モルに対し、酸化アルキレンまたはハロゲン化アルコール(ハロヒドリン)を、1.0〜5.0モル倍の範囲で選ぶのが好ましい。1.0モル倍未満では、未反応の9−ヒドロキシアントラセンが残留し、生成物の純度が低下し、また、5.0モル倍以上では反応液から生成物の結晶が析出しにくくなる場合があり、いずれも好ましくない。上記範囲でより好ましいのは、1.1〜2.5モル倍の範囲である。
【0061】
付加反応の第一反応を遂行する際に、塩基としてアルカリ性化合物を使用する場合には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムのような無機化合物が好適である。これら無機のアルカリ性化合物は、通常水溶液として使用される。またトリエチルアミン、ピリジンなどの有機塩基を使用することもできる。使用する塩基性化合物は、通常、9−ヒドロキシアントラセンと等モル程度とするのが好ましい。
【0062】
付加反応の第一反応を遂行する際に、溶媒を使用する場合の溶媒としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、アミド系溶媒、アミン系溶媒、ニトリル系溶媒などが挙げられる。アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどが挙げられ、ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられ、エーテル系溶媒としては、テトラヒドフラン、1,4−ジオキサンなどが挙げられ、アミド系溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられ、アミン系溶媒としては、ピリジン、ピペリジンなどが挙げられ、ニトリル系溶媒としては、アセトニトリル、プロピオニトリルなどが挙げられる。
【0063】
付加反応の第一反応を遂行する際の温度は、通常、室温が採用される。付加反応の進行が遅い場合は、50〜100℃の範囲で加熱することもできる。付加反応は、窒素雰囲気下で遂行することが好ましい。空気中では、9−ヒドロキシアントラセンが酸化され易く、アントロンまたはアントラキノン化合物が生成する。付加反応終了後、反応液を冷却し、析出した結晶を濾別・乾燥することによって、相当する9−(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物を得ることができる。
【0064】
本発明に係る9−(2−(メタ)アクリルオキシアルコキシ)アントラセン化合物は、上記付加反応の第一反応によって得られた9−(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物を、第二反応によって、塩基の存在下または非存在下、塩化アクリロイルまたは塩化メタアクリロイルと反応させて、(メタ)アクリル化することによって、相当する9−(2−(メタ)アクリルオキシアルコキシ)アントラセン化合物が得られる。
【0065】
第二反応の原料として使用される9−(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物としては、次のものが挙げられる。すなわち、9−(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン、9−(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン、9−(2−ヒドロキシブトキシ)アントラセン、9−(2−ヒドロキシヘプチルオキシ)アントラセン、9−(2−ヒドロキシオクチルオキシ)アントラセン、9−(2−ヒドロキシ−2−フェニルエトキシ)アントラセン、9−(2−ヒドロキシ−3−メトキシプロポキシ)アントラセン、9−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロポキシ)アントラセン、9−(2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン、9−(2−ヒドロキシ−3−(2−エチル)ヘキシルオキシプロポキシ)アントラセン、9−(2−ヒドロキシ−3−ステアリルオキシプロポキシ)アントラセン、9−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−ヒドロキシブトキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−ヒドロキシヘプチルオキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−ヒドロキシオクチルオキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−ヒドロキシ−2−フェニルエトキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−ヒドロキシ−3−メトキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−ヒドロキシ−3ブトキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−ヒドロキシ−3−(2−エチル)ヘキシルオキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−ヒドロキシ−3−ステアリルオキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル−9−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロポキシ)アントラセン、2−クロロ−9−(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン、2−クロロ−9−(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセンなどが挙げられる。
【0066】
さらに、2−クロロ−9−(2−ヒドロキシブトキシ)アントラセン、2−クロロ−9−(2−ヒドロキシヘプチルオキシ)アントラセン、2−クロロ−9−(2−ヒドロキシオクチルオキシ)アントラセン、2−クロロ−9−(2−ヒドロキシ−2−フェニルエトキシ)アントラセン、2−クロロ−9−(2−ヒドロキシ−3−メトキシプロポキシ)アントラセン、2−クロロ−9−(2−ヒドロキシ−3ブトキシプロポキシ)アントラセン、2−クロロ−9−(2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン、2−クロロ−9−(2−ヒドロキシ−3−(2−エチル)ヘキシルオキシプロポキシ)アントラセン2−クロロ−、9−(2−ヒドロキシ−3−ステアリルオキシプロポキシ)アントラセン、2−クロロ−9−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロポキシ)アントラセンなどが挙げられる。
【0067】
また、2−フェノキシ−9−(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン、2−フェノキシ−9−(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン、2−フェノキシ−9−(2−ヒドロキシブトキシ)アントラセン、9−(2−ヒドロキシヘプチルオキシ)アントラセン、2−フェノキシ−9−(2−ヒドロキシオクチルオキシ)アントラセン、2−フェノキシ−9−(2−ヒドロキシ−2−フェニルエトキシ)アントラセン、2−フェノキシ−9−(2−ヒドロキシ−3−メトキシプロポキシ)アントラセン、2−フェノキシ−9−(2−ヒドロキシ−3ブトキシ)プロポキシアントラセン、2−フェノキシ−9−(2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン、2−フェノキシ−9−(2−ヒドロキシ−3−(2−エチル)ヘキシルオキシプロポキシ)アントラセン、2−フェノキシ−9−(2−ヒドロキシ−3−ステアリルオキシ)プロポキシアントラセン、2−フェノキシ−9−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロポキシ)アントラセンなどが挙げられる。
【0068】
またさらに、2−フェニルチオ−9−(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン、2−フェニルチオ−9−(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン、2−フェニルチオ−9−(2−ヒドロキシブトキシ)アントラセン、2−フェニルチオ−9−(2−ヒドロキシヘプチルオキシ)アントラセン、2−フェニルチオ−9−(2−ヒドロキシオクチルオキシ)アントラセン、2−フェニルチオ−9−(2−ヒドロキシ−2−フェニルエトキシ)アントラセン、2−フェニルチオ−9−(2−ヒドロキシ−3−メトキシプロポキシ)アントラセン、2−フェニルチオ−9−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロポキシ)アントラセン、2−フェニルチオ−9−(2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン、2−フェニルチオ−9−(2−ヒドロキシ−3−(2−エチル)ヘキシルオキシプロポキシ)アントラセン、2−フェニルチオ−9−(2−ヒドロキシ−3−ステアリルオキシプロポキシ)アントラセン、2−フェニルチオ−9−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロポキシ)アントラセンなどが挙げられる。
【0069】
さらにまた、9−(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−ヒドロキシブトキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−ヒドロキシヘプチルオキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−ヒドロキシオクチルオキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−ヒドロキシ−2−フェニルエトキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−ヒドロキシ−3−メトキシプロポキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロポキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−ヒドロキシ−3−(2−エチル)ヘキシルオキシプロポキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−ヒドロキシ−3−ステアリルオキシプロポキシ)アントラセン−2−カルボン酸、9−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシ)プロポキシアントラセン−2−カルボン酸、9−(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン−2−スルホン酸、9−(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン−2−スルホン酸、9−(2−ヒドロキシブトキシ)アントラセン−2−スルホン酸、9−(2−ヒドロキシヘプチルオキシ)アントラセン−2−スルホン酸、9−(2−ヒドロキシオクチルオキシ)アントラセン−2−スルホン酸、9−(2−ヒドロキシ−2−フェニルエトキシ)アントラセン−2−スルホン酸、9−(2−ヒドロキシ−3−メトキシプロポキシ)アントラセン−2−スルホン酸、9−(2−ヒドロキシ−3ブトキシプロポキシ)アントラセン−2−スルホン酸、9−(2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロポキシ)アントラセン−2−スルホン酸、9−(2−ヒドロキシ−3−(2−エチル)ヘキシルオキシプロポキシ)アントラセン−2−スルホン酸、9−(2−ヒドロキシ−3−ステアリルオキシプロポキシ)アントラセン−2−スルホン酸、9−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロポキシ)アントラセン−2−スルホン酸などが挙げられる。
【0070】
第二反応において使用できる塩基としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ピペリジン、ピリジン、α−ピコリン、γ−ピコリンのような有機塩基、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムのような無機塩基などが挙げられる。無機塩基は、通常、水溶液として使用される。
【0071】
第二反応を遂行する際、9−(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物1モルに対する、塩化アクリロイルまたは塩化メタアクリロイルの添加モル比率は、1.0〜5.0の範囲で選ばれる。前者に対する後者のモル比率が1.0未満では、未反応のアントラセン化合物が残り、また添加モル比率が5.0を超えると、第二反応で使用した塩化アクリロイルまたは塩化メタアクリロイル自体が重合するため、目的物の純度が低下し、目的物である9−(2−(メタ)アクリルオキシアルコキシ)アントラセン化合物の分離が困難となり、好ましくない。9−(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物1モルに対する、塩化アクリロイルまたは塩化メタアクリロイルの好ましい添加モル比率は1.1〜3.0であり、特に好ましいモル比率は1.1〜1.5である。
【0072】
第二反応で溶媒を使用する場合の溶媒としては、塩化アクリロイルまたは塩化メタアクリロイルと反応しないものであればよく、特に種類を選ばない。具体的には、芳香族系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、アミド系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒などが挙げられる。芳香族系溶媒としては、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、エチルベンゼン、i−プロピルベンゼン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼン、メチルナフタレン、クロルナフタレンなどが挙げられる。ハロゲン化炭化水素系溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロルエタン、1,2−ジクロロエチレンなどが挙げられ、アミド系溶媒としては、メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられ、エーテル系溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどが挙げられ、ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられ、ニトリル系溶媒としては、アセトニトリル、プロピオニトリルなどが挙げられる。溶媒に対する反応物の濃度は、特に制限がなく、溶媒に溶解しない場合は、スラリー状態で反応させることもできる。
【0073】
第二反応を遂行する際の温度は、0℃〜80℃の範囲で選ぶのが好ましい。反応温度が0℃未満では、反応速度が遅く、時間がかかりすぎ、80℃を超えると、塩化アクリロイルまたは塩化メタアクリロイル自体が重合するため、目的物の純度が低下し、目的物の9−(2−(メタ)アクリルオキシアルコキシ)アントラセン化合物の分離が困難となり、いずれも好ましくない。より好ましい反応温度は、20℃〜50℃範囲である。
【0074】
得られた反応生成物は、赤外スペクトル分析法、マススペクトル分析法、H−NMRスペクトル分析法などによって、これらの化合物が9−(2−(メタ)アクリルオキシアルコキシ)アントラセンであることを確認することができる。いずれの化合物も、赤外スペクトル分析法では、1720cm−1付近にエステル基に帰因する強いCO伸縮振動を示し、H−NMRスペクトル分析法では、ABX型のアクリル基特有のスペクトルを示すので、容易に確認することができる。
【0075】
<化合物の用途>
上記反応によって得られる第一発明に係る化合物、すなわち、9−(2−(メタ)アクリルオキシアルコキシ)アントラセン化合物は、新規化合物である。この第一発明に係る化合物は、光重合性モノマーをカチオン重合およびラジカル重合させる際に、光増感剤として使用できるほか、この化合物を配合して光硬化性組成物を調製することができる。
【0076】
第一発明に係る化合物を光増感剤として使用する場合には、第一発明に係る化合物を、光重合性モノマーに光重合開始剤とともに配合して光硬化性組成物を調製する。この光硬化性組成物は、紫外領域の光線の照射によって容易に硬化させることができる。
【0077】
光重合性モノマーとしては、カチオン重合性モノマー、ラジカル重合性モノマーのいずれでもよく、これらの混合物であってもよい。光重合性のカチオン重合性モノマーとしては、エポキシ化合物類、ビニルエーテル類が挙げられる。エポキシ化合物類として一般的なものは、脂環式エポキシ化合物、エポキシ変性シリコーン、芳香族のグリシジルエーテルなどである。脂環式エポキシ化合物としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペートが挙げられる。市販されている製品としては、例えば、ダウ・ケミカル社製、商品名:UV6105、商品名:UVR6110などが挙げられる。エポキシ変性シリコーンとしては、例えば、東芝GEシリコーン社製、商品名:UV−9300などが挙げられる。芳香族グリシジル化合物としては、2,2’−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパンなどが挙げられ、ビニルエーテルとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0078】
光重合性のラジカル重合性モノマーの具体例としては、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、ポリオールアクリレート、ポリエーテルアクリレート、シリコーン樹脂アクリレート、イミドアクリレートなどが挙げられる。これらラジカル重合性モノマーは、一種でも二種以上の混合物であってもよい。
【0079】
光硬化性組成物に配合される光重合開始剤としては、オニウム塩が挙げられる。オニウム塩としては、スルホニウム塩またはヨードニウム塩が挙げられる。前者のスルホニウム塩としては、S,S,S’、S’−テトラフェニル−S,S’−(4、4’−チオジフェニル)ジスルホニウムビスヘキサフルオロフォスフェート、ジフェニル−4−フェニルチオフェニルスルホニウムヘキサフルオロフォスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロフォスフェートが挙げられ、市販されている製品として、例えば、ダウ・ケミカル社製、商品名:UVI6992がある。後者のヨードニウム塩としては、4−イソブチルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−イソプロピルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートが挙げられ、市販されている製品として、例えば、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名:イルガキュア250、ローディア社製、銘柄名:2074などが挙げられる。
【0080】
第一発明に係る9−(2−(メタ)アクリルオキシアルコキシ)アントラセン化合物を、光硬化性組成物の増感剤として使用する際の添加量は、光重合性モノマーに対して0.01〜5.0重量%の範囲で選ぶのが好ましい。光重合性モノマーに対する添加量が0.01重量%未満では、光硬化性組成物の硬化速度が遅くなり、5.0重量%を越えると硬化物の物性が悪化し、いずれも好ましくない。増感剤として使用する際のより好ましい添加量は、0.05〜2.0重量%であり、特に好ましいのは0.1〜1.5重量%である。
【0081】
本発明の第四発明に係る光硬化性組成物は、第一発明に係る化合物(光増感剤)、前記光重合性モノマー、上記光重合開始剤より構成されるが、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、希釈剤、着色剤、有機および/または無機充填剤、レベリング剤、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、難燃剤、酸化防止剤、安定剤、滑剤、可塑剤などの各種樹脂添加剤を、通常の使用範囲で配合することができる。
【0082】
希釈剤としては、エポキシアクリレートなどのようなエポキシ系希釈剤、オキサシクロブタンなどのオキセタン系希釈剤、ビニルエーテル系希釈剤、(メタ)アクリル単量体系希釈剤などが挙げられる。着色剤としては、青色顔料、赤色顔料、白色顔料、黒色顔料などが挙げられる。黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、アニリンブラックなどが挙げられる。黄色顔料としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキなどが挙げられる。
【0083】
赤色顔料としては、例えば、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、レーキレッドDブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bなどが挙げられる。青色顔料としては、例えば、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBCなどが挙げられる。白色顔料としては、例えば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛などが挙げられる。その他の顔料としては、例えば、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイトなどが挙げられる。
【0084】
本発明の第四発明に係る光硬化性組成物は、これを基材上に塗布したのち、この塗布膜に紫外領域の光線を照射することにより硬化させることができる。塗布方法は、光硬化性組成物を基材表面に塗布できる方法であれば特に制限はなく、バーコート法、スプレーコート法などによることができる。基材は、鋼板、印刷製版、フィルム、紙、アルミニウム箔などの外観が平面を呈するもののほか、曲面を呈するもの、立体状を呈するものなど、いずれであってもよい。基材表面に塗布した光硬化性組成物は、特に波長領域300〜400nmの光線を照射することにより、速やかに硬化させることができる。この場合の光源としては、波長領域300〜400nmに含まれる光線を発光できる光源であれば特に制限はなく、例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、太陽光、メタルハライドランプ、キセノンランプ、紫外線(UV)LEDランプ、フュージョン社製のHランプ、Dランプなどが挙げられる。
【0085】
光照射は、酸素非存在下で行うのが好ましい。酸素存在下で光を照射すると、酸素により光重合反応の進行が阻害され、硬化膜の表面のタック(ベタツキ)が解消されず、開始剤を大量添加する必要がある。酸素非存在下での光硬化方法としては、窒素ガス、ヘリウムガスなどの不活性ガス雰囲気下で行う方法が挙げられる。また、酸素非過性の膜によって被覆し、膜の上方から光を照射する方法を採用することもできる。なお、光硬化完了の確認は、タック(ベタツキ)・フリー・テスト(指触テスト)によって行うことができる。このタック・フリー・テストは、フィルムなどの基材表面の硬化膜を指先で触り、タックを確認し、硬化膜のタックがなくなるまでの時間を硬化時間(タック・フリー・タイム)とし、この時間の長短で硬化反応の遅速を判定することができる。硬化時間が短いほど、硬化速度が速いことを意味する。
【0086】
本発明の第四発明に係る光硬化性組成物は、例えば、フィルムなどの基材表面に塗布し、塗布面を硬化させるが、その手順は次のようにされる。すなわち、まず、基材表面に、光硬化性組成物をバーコート法などにより塗布する。基材がフィルムの場合、その厚さが通常30〜100μm程度のものに、塗布膜の厚さが数μm〜数十μmになるようなロッドナンバーのバーコーターを使用して塗布する。次に、このようにして得られた塗布膜に、上記した光源からの光を照射することにより、光重合性モノマーを含む光重合性組成物を、速やかに硬化させることができる。
【実施例】
【0087】
以下、本発明を、実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、以下の記載例に限定されるものではない。
【0088】
得られた生成物についての諸特性の確認は、次のようにして行った。(1)生成物が固体の場合には、融点測定装置(JIS K0064に準拠した、ゲレンキャンプ社製の融点測定装置、型式:MFB−595)による融点、(2)赤外線(IR)分光光度計(日本分光社製、型式:IR−810)によるIRスペクトル、(3)核磁気共鳴装置(NMR)(日本電子社製、型式:GSX FT NMR Spectrometer)によるH−NMR分析、(4)Massスペクトル(島津製作所社製、質量分析計、型式:GCMS−QP5000を使用)、などの特性を測定した。なお、以下の記載で、試料の特性について(1)融点を測定しないものは、これを欠番とした。
【0089】
[実施例1]
<9−(2−アクリルオキシエトキシ)アントラセンの合成>
(第一反応)
攪拌機、温度計を装備した容量が100mlの三口フラスコに、9−アントロン12.5g(64.4ミリモル)、炭酸カリウム10.5g(78.1ミリモル)、N,N−ジメチルホルムアミド100mlを仕込み、室温で、フラスコの内容物を攪拌・混合した後、ブロモエタノール20g(160ミリモル)を添加し、80℃に昇温しこの温度で6時間攪拌を継続した。不溶分を濾別した反応液に、純水200mlを加えて結晶を析出させた。析出した結晶を濾別し、得られた結晶を純水20mlとメタノール20mlとによって洗浄し、引き続き減圧乾燥し、薄橙色結晶の9−(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン14.1g(59.2ミリモル)を得た。生成物の9−アントロンに対する収率は、92モル%であった。
【0090】
生成物について、上記した特性測定を行った結果は次のとおりであり、生成物は、9−(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセンであることが確認された。
(1)融点:115〜116℃。
(2)IRスペクトル(KBr,cm−1):722、835、879、1065、1334、1410、3225などの波長に吸収が認められた。
(3)H−NMR(CDCl,ppm):δ=2.42−2.50(t,1H,OH基)4.15−4.2(m,2H,メチレン),4.31−4.35(m,2H,メチレン),7.40−7.63(m,4H,アントラセン環),7.68−8.34(m,5H,アントラセン環)。
(4)マススペクトル:(EI−MS)m/z=238(M)。
【0091】
(第二反応)
第一反応で使用したのと同じ容量が100mlの三口フラスコに、上記第一反応によって得られた9−(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン2.0g(8.4ミリモル)、アセトニトリル40ml、トリエチルアミン2.3g(22.7ミリモル)を仕込み、室温で、フラスコの内容物を攪拌・混合した後、塩化アクリロイル1.9g(21.0ミリモル)をアセトニトリル10mlに溶解した溶液を添加し、室温で1時間攪拌を継続した。このフラスコに純水10mlを加え、10分間攪拌を継続した後、さらに飽和食塩水10ml、酢酸エチル40mlを加えた。得られた反応生成物に純水10mlを加えて洗浄し、この洗浄操作を3回繰り返した。純水によって洗浄した後の液から有機層を分離した。分離した有機層を濃縮して得られた油状物質を、ヘキサン、酢酸エチルを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィー法によって精製し、橙色油状の9−(2−アクリルオキシエトキシ)アントラセン1.5g(5.1ミリモル)を得た。生成物の9−(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセンに対する収率は、61mol%であった。
【0092】
生成物について、上記した特性測定を行った結果は次のとおりであり、生成物は、9−(2−アクリルオキシエトキシ)アントラセンであることが確認された。
(2)IRスペクトル(neat,cm−1):730、1060、1094、1161、1188、1265、1290、1335、1402、1720などの波長に吸収が認められた。
(3)H−NMR(CDCl,ppm):δ=4.44−4.47(m,2H,メチレン)、4.66−4.68(m,2H,メチレン)、5.92(dd,1H,ビニル基)、6.26(dd,1H,ビニル基)、6.48(dd,1H,ビニル基)、7.38−7.54(m,4H,アントラセン環)、7.90−8.36(m,5H,アントラセン環)。
(4)Massスペクトル:(EI−MS)m/z=292(M)。
【0093】
[実施例2]
<9−(2−メタクリルオキシエトキシ)アントラセンの合成>
実施例1で使用したのと同じ容量が100mlの三口フラスコに、上記実施例1の第一反応によって得られた、9−(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン2.0g(8.4ミリモル)、アセトニトリル40ml、トリエチルアミン2.3g(22.7ミリモル)を仕込み、室温で、フラスコの内容物を混合した後、塩化アクリロイル2.2g(21.0ミリモル)をアセトニトリル10mlに溶解した溶液を添加し、1時間攪拌を継続した。このフラスコに純水10mlを加え、10分間攪拌を継続した後、さらに飽和食塩水10ml、酢酸エチル40mlを加えた。得られた反応生成物に純水10mlを加えて洗浄し、この洗浄操作を3回繰り返した。純水によって洗浄した後の液から有機層を分離した。分離した有機層を濃縮して得られた油状物質を、ヘキサン、酢酸エチルを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィー法によって精製し、黄色結晶の9−(2−メタクリルオキシエトキシ)アントラセン1.3g(4.1ミリモル)を得た。生成物の9−(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセンに対する収率は、50mol%であった。
【0094】
得られた生成物について、上記(1)〜(4)の特性測定を行った結果は次のとおりであり、9−(2−メタクリルオキシエトキシ)アントラセンであることが確認された。
(1)融点:48〜50℃。
(2)IRスペクトル(KBr,cm−1):731、1085、1155、1292、1318、1339、1383、1715などの波長に吸収が認められた。
(3)H−NMR(CDCl,ppm):δ=2.04(s,3H,メチル基)、4.43−4.50(m,2H,メチレン)、4.66−4.69(m,2H,メチレン),5.66−5.82(m,1H,ビニル基)、6.19−6.26(m,1H,ビニル基),7.39−7.54(m,4H,アントラセン環)、7.77−8.37(m,5H,アントラセン環)。
(4)Massスペクトル:(EI−MS)m/z=306(M)。
【0095】
[実施例3]
<9−(2−アクリルオキシプロポキシ)アントラセンの合成>
(第一反応)
実施例の第一反応で使用したのと同じ容量が100mlの三口フラスコに、9−アントロン12.5g(64.4ミリモル)、炭酸カリウム10.5g(78.1ミリモル)、N,N−ジメチルホルムアミド100mlを仕込み、室温で、フラスコの内容物を攪拌・混合した後、酸化プロピレン9.4g(162ミリモル)を添加し、80℃に昇温しこの温度で6時間攪拌を継続した。不溶分を濾別した反応液に、純水200mlを加えて結晶を析出させた。析出した結晶を濾別し、得られた結晶を純水20mlとメタノール20mlとによって洗浄し、引き続き減圧乾燥し、薄橙色結晶の9−(2−ヒドロキシエトキシプロポキシ)アントラセン11.4g(45.2ミリモル)を得た。生成物の−アントロンに対する収率は、70モル%であった。
【0096】
生成物について、上記した特性測定を行った結果は次のとおりであり、生成物は、9−(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセンであることが確認された。
(1)融点:122〜123℃。
(2)IRスペクトル(KBr,cm−1):731、840、878、1080、1330、1402、3340などの波長に吸収が認められた。
(3)H−NMR(CDCl,ppm):δ=1.36−1.39(d,3H,メチル),2.82−2.83(d,1H,OH基)4.01−4.17(m,2H,メチレン),4.46−4.58(m,1H,メチン),7.40−7.54(m,4H,アントラセン環),7.96−8.40(m,5H,アントラセン環)
(4)Massスペクトル:(EI−MS)m/z=252(M)。
【0097】
(第二反応)
実施例1で使用したのと同じ100mlの三口フラスコに、上記第一反応で得られた9−(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン2.0g(7.9ミリモル)とアセトニトリル40ml、トリエチルアミン2.2g(21.3ミリモル)を仕込み、室温で、フラスコの内容物を混合した後、塩化アクリロイル1.8g(19.9ミリモル)をアセトニトリル10mlに溶解した溶液を添加し、1時間攪拌を継続した。このフラスコに純水10mlを加え、10分間攪拌を継続した後、さらに飽和食塩水10ml、酢酸エチル40mlを加えた。得られた反応生成物に純水10mlを加えて洗浄し、この洗浄操作を3回繰り返した。純水によって洗浄した後の液から有機層を分離した。分離した有機層を濃縮して得られた油状物質を、ヘキサン、酢酸エチルを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィー法によって精製し、橙色油状の9−(2−アクリルオキシプロポキシ)アントラセン1.3g(4.2ミリモル)を得た。生成物の9−(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセンに対する収率は、53mol%であった。
【0098】
得られた生成物について、上記(1)〜(4)の特性測定を行った結果は次のとおりであり、9−(2−メタクリルオキシエトキシ)アントラセンであることが確認された。
(2)IRスペクトル(neat,cm−1):732、1090、1195、1342、1405、1720などの波長に吸収が認められた。
(3)H−NMR(CDCl,ppm):δ=1.56(d,3H,メチル基)、4.16−4.34(m,2H,CHCHO)、5.53−5.64(m,1H,CHCH)、5.90(dd,1H,ビニル基)、6.25(dd,1H,ビニル基)、6.50(dd,1H,ビニル基)、7.39−7.50(m,4H,アントラセン環)、7.93−8.36(m,5H,アントラセン環)。
(4)Massスペクトル:(EI−MS)m/z=306(M)。
【0099】
[実施例4]
<9−(2−メタクリルオキシプロポキシ)アントラセンの合成>
実施例1で使用したのと同じ100mlの三口フラスコに、上記実施例3の第一反応で得られた、9−(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン2.0g(7.9ミリモル)、アセトニトリル40ml、トリエチルアミン2.2g(21.3ミリモル)を仕込み、室温で、フラスコ内容物を混合した後、塩化メタクリロイル1.8g(19.9ミリモル)をアセトニトリル10mlに溶解した溶液を添加し、1時間攪拌を継続した。このフラスコに純水10mlを加え、10分間攪拌を継続した後、さらに飽和食塩水10ml、酢酸エチル40mlを加えた。得られた反応生成物に純水10mlを加えて洗浄し、この洗浄操作を3回繰り返した。純水によって洗浄した後の液から有機層を分離した。分離した有機層を濃縮して得られた油状物質を、ヘキサン、酢酸エチルを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィー法によって精製し、橙色油状の9−(2−メタクリルオキシプロポキシ)アントラセン1.3g(4.1ミリモル)を得た。生成物の9−(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセンに対する収率は、52mol%であった。
【0100】
得られた生成物について、上記(1)〜(4)の特性測定を行った結果は次のとおりであり、9−(2−メタクリルオキシプロポキシ)アントラセンであることが確認された。
(2)IRスペクトル(neat,cm−1):732,1085,1160,1340,1712などの波長に吸収が認められた。
(3)H−NMR(CDCl、ppm):δ=1.55(d,3H,CHCH),2.00(s,3H,メチル基),4.23−4.38(m,2H,CHCHO),5.52−5.62(m,1H,CHCH),5.64−5.81(m,1H,ビニル基),6.22−6.24(m,1H,ビニル基),7.38−7.50(m,4H,アントラセン環),7.92−8.37(m,5H,アントラセン環)。
(4)Massスペクトル:(EI−MS)m/z=320(M)。
【0101】
<硬化性組成物としての用途−光重合増感剤としての用途>
[評価例1]
モノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート100重量部に、トリル−i−ブチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(チバ・スペシャリティー社製、商品名:イルガキュア250、以下同じ。)を重量部2部、実施例1に記載の方法で合成した9−(2−アクリルオキシエトキシ)アントラセン0.5重量部を加え、均一な光硬化性組成物とした。この光硬化性組成物を、バーコーターによってポリエステルフィルム(東レ社製、商品名:ルミラー、厚さ100μm、以下同じ。)表面に、膜厚が12μmになるように塗布した。ついで、窒素雰囲気下、紫外線LED(サンダー社製、商品名:SDL−10M3CUV、波長が395nmで最も強い光線を発する光源である。以下同じ。)を使用し、照射強度を3mW/cm2として照射した。塗布膜にタック(ベタツキ)がなくなるまでの時間{硬化時間(タック・フリー・タイム)}は、144秒であった。
【0102】
[評価例2]
モノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート100重量部に、トリル−i−ブチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェートを2重量部、実施例2に記載の方法で合成した9−(2−メタクリルオキシエトキシ)アントラセン0.5重量部を加え、均一な硬化性組成物とした。この硬化性組成物を、バーコーターによってポリエステルフィルム(上に同じ)の表面に、膜厚が12μmになるように塗布した。ついで窒素雰囲気下、紫外線LED(上に同じ)を使用し、照射強度を3mW/cm2として照射した。塗布膜にタック(ベタツキ)がなくなるまでの硬化時間は、90秒であった。
【0103】
[評価例3]
モノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート100重量部に、トリル−i−ブチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェートを2重量部、実施例3に記載の方法で合成した9−(2−アクリルオキシプロポキシ)アントラセン0.5重量部を加え、均一な硬化性組成物とした。この硬化性組成物を、バーコーターによってポリエステルフィルム(上に同じ)の表面に、膜厚が12μmになるように塗布した。ついで窒素雰囲気下、紫外線LED(上に同じ)を使用し、照射強度を3mW/cm2として照射した。塗布膜にタック(ベタツキ)がなくなるまでの硬化時間は、90秒であった。
【0104】
[評価例4]
モノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート100重量部に、トリル−i−ブチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェートを2重量部、実施例4に記載の方法で合成した9−(2−メタクリルオキシプロポキシ)アントラセン0.5重量部を加え、均一な硬化性組成物とした。この硬化性組成物を、バーコーターによってポリエステルフィルム(上に同じ)の表面に、膜厚が12μmになるように塗布した。ついで窒素雰囲気下、紫外線LED(上に同じ)を使用し、照射強度を3mW/cm2として照射した。塗布膜にタック(ベタツキ)がなくなるまでの硬化時間は、162秒であった。
【0105】
[評価比較例1]
評価例1に記載の例において、9−(2−アクリルオキシエトキシ)アントラセンを添加しなかった外は、評価例1におけると同様の手順で光硬化組成物を調製し、ポリエステルフィルム(上に同じ)の表面に、膜厚が12μmになるように塗布し、紫外線LED(上に同じ)で、同じ照射強度で照射した。塗布膜に1800秒照射しても、タック(ベタツキ)は改善されず硬化しなかった。上記の評価例1〜評価例4、および、評価比較例1の結果を、表−1にまとめて示した。
【0106】
【表1】

【0107】
表−1より、次のことが明らかとなる。
1.本発明の第一発明に係る化合物を光重合増感剤として使用した評価例1〜評価例4の光硬化性組成物は、光重合性モノマーの光重合が促進されて、硬化時間(タック・フリー・タイム)が短い。
2.これに対して、本発明の第一発明に係る化合物を光重合増感剤として使用しない評価比較例1の光硬化性組成物は、光重合性モノマーの光重合が促進されないので、硬化時間が極端に長くなる。
【0108】
[評価例5]
モノマーとしてエポキシ変性シリコーン(東芝GEシリコーン社製、商品名:UV−9300)100重量部に対し、4−イソプロピルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート(ローディア社製、銘柄名:2074)0.5重量部、実施例1に記載の方法で合成した9−(2−アクリルオキシエトキシ)アントラセン0.5重量部を混合し、光硬化組成物を調製した。この光硬化性組成物を、ポリエステルフィルム(上に同じ)の表面に、バーコーターによって、膜厚が12μmになるように塗布した。ついで、表面から紫外線LED(上に同じ)を使用し、照射強度を3mW/cm2として光照射した。塗布膜にタック(ベタツキ)がなくなるまでの硬化時間は、13秒であった。
【0109】
[評価例6]
モノマーとしてエポキシ変性シリコーン(評価例5で使用したものに同じ)100重量部に対し、4−イソプロピルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート(上に同じ)0.5重量部、実施例2に記載の方法で合成した9−(2−メタクリルオキシエトキシ)アントラセン0.5重量部を混合し、光硬化組成物を調製した。この光硬化性組成物を、ポリエステルフィルム(上に同じ)の表面に、バーコーターによって、膜厚が12μmになるように塗布した。ついで、表面から紫外線LED(上に同じ)を使用して照射した。塗布膜にタック(ベタツキ)がなくなるまでの硬化時間は、13秒であった。
【0110】
[評価例7]
モノマーとしてエポキシ変性シリコーン(上に同じ)100重量部に対し、4−イソプロピルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート(上に同じ)0.5重量部、実施例3に記載の方法で合成した9−(2−アクリルオキシプロポキシ)アントラセン0.5重量部を混合し、光硬化組成物を調製した。この光硬化性組成物を、ポリエステルフィルム(上に同じ)の表面に、バーコーターによって、膜厚が12μmになるように塗布した。ついで、表面から紫外線LED(上に同じ)を使用して照射した。塗布膜にタック(ベタツキ)がなくなるまでの硬化時間は、8秒であった。
【0111】
[評価例8]
モノマーとしてエポキシ変性シリコーン(上に同じ)100重量部に対し、4−イソプロピルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート(上に同じ)0.5重量部、実施例4に記載の方法で合成した9−(2−メタクリルオキシプロポキシ)アントラセン0.5重量部を混合し、光硬化組成物を調製した。この光硬化性組成物を、ポリエステルフィルム(上に同じ)の表面に、バーコーターによって、膜厚が12μmになるように塗布した。ついで、表面からサンダー社製紫外線LEDを用いて光照射した。塗布膜にタック(ベタツキ)がなくなるまでの硬化時間は、13秒であった。
【0112】
[評価比較例2]
評価例5に記載の例において、9−(2−アクリルオキシエトキシ)アントラセンを添加しなかった外は、評価例5におけると同様の手順で光硬化組成物を調製し、ポリエステルフィルム(上に同じ)の表面に、膜厚が12μmになるように塗布し、紫外線LED(上に同じ)で、同じ照射強度で照射した。塗布膜に600秒照射しても、タック(ベタツキ)は改善されず硬化しなかった。上記の評価例5〜評価例8、および、評価比較例2の結果を、表−2にまとめて示した。
【0113】
【表2】

【0114】
表−2より、次のことが明らかとなる。
1.本発明の第一発明に係る化合物を光重合増感剤として使用した評価例5〜評価例8の光硬化性組成物は、光重合性モノマーの光重合が促進されて、硬化時間(タック・フリー・タイム)が短い。
2.これに対して、本発明の第一発明に係る化合物を光重合増感剤として使用しない評価比較例2の光硬化性組成物は、光重合性モノマーの光重合が促進されないので、硬化時間が極端に長くなる。
【0115】
[昇華試験例]
評価例2に記載の例おいて調製した、光硬化性組成物の塗布膜を有するポリエステルフィルムを、180℃に温度調節したオーブン中で加熱した。ポリエステルフィルムを一定時間ごとにオーブンから取り出して、9−(2−(メタ)アクリルオキシエトキシ)アントラセンに起因するUVスペクトルのうち、波長が403nm付近の吸収ピーク高さを、紫外・可視分光光度計(島津製作所製、型式:UV2200)によって測定した。加熱前と、波長が403nm付近の吸収ピークにつき、加熱前の吸収ピーク高さと加熱後にピーク高さの低下割合を調べて、9−(2−(メタ)アクリルオキシエトキシ)アントラセンの昇華の程度を判定した。その結果、10分後に加熱前より8%低下していたので、8%昇華していると判明した。
【0116】
[昇華試験比較例]
評価例2に記載の例おいて、9−(2−(メタ)アクリルオキシエトキシ)アントラセンの代わりに、9,10−ジエトキシアントラセンを使用した外は評価例2におけると同様の手順で調製した、光硬化性組成物の塗布膜を有するポリエステルフィルムを準備した。このポリエステルフィルムを上の昇華試験例におけると同様に、180℃に温度調節したオーブン中で加熱し、9,10−ジエトキシアントラセンに起因するUVスペクトルのうち、波長が406nm付近の吸収ピーク高さを測定した。加熱前の吸収ピーク高さと加熱後にピーク高さの低下割合を調べて、9,10−ジエトキシアントラセンの昇華の程度を判定した。その結果、10分後に加熱前より63%低下していたので、63%昇華していると判明した。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の第一発明に係る9−(2−(メタ)アクリルオキシアルコキシ)アントラセン化合物は、新規な化合物であり、この化合物は光重合性モノマー、および光重合開始剤よりなる光重合性組成物に配合して、光重合増感剤として活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】昇華試験における加熱前の試料のUVスペクトルである。
【図2】昇華試験における加熱後の試料のUVスペクトルである。
【図3】昇華試験比較例における加熱前の試料のUVスペクトルである。
【図4】昇華試験比較例における加熱後の試料のUVスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の構造式(1)で表される9−(2−(メタ)アクリルオキシアルコキシ)アントラセン化合物。

{構造式(1)において、R1は水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシメチル基、アリルオキシメチル基、アリールオキシメチル基のいずれかを表し、R2は水素原子またはメチル基を表し、X、Yは同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アルキルチオ基、チオアリールオキシ基、カルボキシル基、スルホン酸基のいずれかを表す。}
【請求項2】
9−ヒドロキシアントラセン化合物に、酸化アルキレンまたはハロゲン化アルコール(ハロヒドリン)を付加反応させて9−(2−ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物とし、ついで、この化合物に塩化アクリロイル化合物または塩化メタアクリロイル化合物を反応させることを特徴とする、9−(2−(メタ)アクリルオキシアルコキシ)アントラセン化合物の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の9−(2−(メタ)アクリルオキシアルコキシ)アントラセン化合物を有効成分として含有することを特徴とする、光重合増感剤。
【請求項4】
光硬化性組成物において、請求項3に記載の光重合増感剤、光重合開始剤、および光重合性モノマーを含有することを特徴とする、光硬化性組成物。
【請求項5】
光重合開始剤が、オニウム塩である請求項4に記載の光硬化組成物。













【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−88132(P2008−88132A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273311(P2006−273311)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(000199795)川崎化成工業株式会社 (133)
【Fターム(参考)】