説明

新規な遷移金属化合物、オレフィン重合用触媒およびオレフィン重合体の製造方法

【課題】 あらゆる構造のオレフィン重合体に末端ビニル構造を効率的に導入するためのオレフィン重合用触媒、およびその触媒の合成に用いる遷移金属化合物、ならびに該オレフィン重合用触媒を用いて末端ビニル構造を持つオレフィン(共)重合体の製造。
【解決手段】 一般式:MmLx−m−1H を有する新規な遷移金属化合物。
[式中、Mは周期表4族の遷移金属、Lは電子吸引性基を持つインデニル基、Lは非置換インデニル基を表し、xは遷移金属Mの原子価であり、mは1≦m≦3であり、Lが複数個の場合、それぞれ同一でも異なってもよい。]
該遷移金属化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物および/または該遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物とからなるオレフィン重合用触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な遷移金属化合物およびオレフィン重合用触媒およびポリオレフィンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周期表4族遷移金属化合物を中心金属とし、その配位子としてシクロペンタジエニル配位子、置換シクロペンタジエニル配位子、インデニル配位子、置換インデニル配位子を有する化合物が数多く合成され、重合触媒として用いられていることは周知のとおりである(たとえば、非特許文献1、特許文献1などをあげることができる)。また、シクロペンタジエニル配位子、インデニル配位子に置換基を導入することでオレフィン共重合におけるポリマーの分子量や密度が変化するとされている(特許文献2など)。
【特許文献1】特開昭58−19309号公報
【特許文献2】特公平7−37488号公報
【非特許文献1】SYNTHESIS,January 1988,1−19
【0003】
これまでにいくつかのトリスシクロペンタジエニル化合物、トリス置換シクロペンタジエニル化合物が報告されている。たとえば、CpZrCl(非特許文献2)、CpZrMe(非特許文献3)、(MeCp)ZrCl(非特許文献2)、(MeSiCp)ZrCl(非特許文献4)、IndMCl(M=Zr、Hf)(非特許文献5)などが報告されているが、その数は少ない。
【非特許文献2】Bul.Chem.Soc.Fr.,1978,II−292
【非特許文献3】Organometallics 1997,16,531
【非特許文献4】Acta.Cryst.,1995,C51 10
【非特許文献5】J.Organomet.Chem.,1997,544,139
【0004】
さらにトリスシクロペンタジエニルメタルヒドリド化合物、トリス置換シクロペンタジエニルメタルヒドリド化合物(メタルは4族遷移金属)については、これまで報告されているのはCpZrHのみである(IR分析法とRaman分析法による構造解析は、非特許文献6に記載され、X線回折法による構造解析は、非特許文献7に記載されている)。
【非特許文献6】J.Organomet.Chem.,1982,235,69
【非特許文献7】Organometallics,1999,18,3170
【0005】
また、これまでにいくつかのトリスインデニル化合物、トリス置換インデニル化合物が報告されている(特許文献3)。たとえばトリスインデニルジルコニウムヒドリド、トリスベンゾインデニルジルコニウムヒドリド、トリスジベンゾインデニルジルコニウムヒドリドが報告されているが、これらの化合物を用いたエチレン重合において、エチレン重合体の末端ビニル構造について記載されていない。
【特許文献3】特開2004−161760号公報
【0006】
末端にビニル構造を持つオレフィン重合体はビスシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド(特許文献4)、ジメチルシリレンビスシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド(特許文献5)などを用いたエチレン重合において比較的高い選択率で得られることが報告されているが、得られるオレフィン重合体の分子量が低く、オレフィン重合体の分子量と末端ビニルの選択率向上の両立が望まれている。
【特許文献4】特開2004−346304号公報
【特許文献5】特開2006−96909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
末端にビニル構造を持つオレフィン重合体は、オレフィン重合体への長鎖分岐の導入、オレフィン重合体の化学修飾、オレフィンブロックポリマーの合成などに有用である。遷移金属化合物を用いて得られるあらゆる構造のオレフィン重合体に末端ビニル構造を効率的に導入することは、未だ達成されていない課題というべきである。
本願発明はこれらの課題の解決を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、新規な遷移金属化合物を提供するもので、遷移金属化合物を形成する1つの水素原子と3つのインデニル基のうち、少なくとも1つのインデニル基に電子吸引性基を導入した周期表第4族遷移金属化合物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は従来知られていない新規な遷移金属化合物を提供するものである。該遷移金属化合物は、配位子であるインデニル基に電子吸引性基を導入することでオレフィン重合体の分子量が低下するとともに、末端にビニル構造を持つポリマー鎖の割合が増加する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細な説明を行なう。
本発明の第1の新規な遷移金属化合物は、以下の一般式(1)で表される。
mLx−m−1H (1)
[式中、Mは周期表4族の遷移金属を表す。Lは電子吸引性基を置換基として持つインデニル基、Lは置換基を持たないインデニル基を表し、xは遷移金属Mの原子価であり、mは1≦m≦3であり、Lが複数個の場合、それぞれ同一でも異なってもよい。]
【0011】
本発明の第2の遷移金属化合物は、以下の一般式(2)で表される。
mLx−m−1H (2)
[式中、Mは周期表4族の遷移金属を表す。Lは下記の化合物(3)で示される置換インデニル基を表し、R、R、R、Rのうち少なくとも1つの置換基は電子吸引性基であり、電子吸引性基が複数個ある場合、それぞれ同一でも異なってもよい。Lは置換基を持たないインデニル基を表し、xは遷移金属Mの原子価であり、mは1≦m≦3であり、Lが複数個の場合、それぞれ同一でも異なってもよい。]
【化3】

【0012】
本発明の第3の遷移金属化合物は、上記の一般式(1)または(2)で表され、電子吸引性基がハロゲン原子またはハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基である遷移金属化合物である。
【0013】
本発明の第4の遷移金属化合物は、上記の一般式(1)または(2)で表され、周期表4族の遷移金属がジルコニウムである遷移金属化合物である。
【0014】
本発明の第1のオレフィン重合用触媒は、上記第1から4のいずれかに記載の遷移金属化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物および/または該遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物とからなるオレフィン重合用触媒である。
本発明の第2のオレフィン重合用触媒は、上記第1のオレフィン重合用触媒の有機アルミニウムオキシ化合物がメチルアルミノキサンであるオレフィン重合用触媒である。
本発明の第3のオレフィン重合用触媒は、上記第1または2のいずれかに記載の触媒が担体に担持された固体触媒であるオレフィン重合用触媒である。
本発明の第4のオレフィン重合用触媒は、上記第1から4のいずれかに記載の遷移金属化合物が層状珪酸塩に担持された固体触媒であるオレフィン重合用触媒である。
【0015】
本発明のポリオレフィンの製造方法は、上記のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒の存在下にオレフィンを重合することからなるポリオレフィンの製造方法である。
本発明の第2のポリオレフィンの製造方法は、上記のオレフィンの重合が、エチレンの単独重合またはエチレンとα−オレフィン共重合であるポリオレフィンの製造方法である。
以下、本発明の遷移金属化合物について詳細な説明を行なう。
【0016】
本発明の遷移金属化合物(一般式(1))において、Lは電子吸引性基を置換基として持つインデニル基を表し、Lの電子吸引性の置換基は共鳴効果や誘起効果によってインデニル基から電子をひきつける原子団をいい、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェノキシ基、シアノ基、ホルミル基、カルバモイル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、アセチル基、ニトロ基、カルボキシル基、トリフルオロメチルスルファニル基、スルファモイル基などが挙げられる。
【0017】
好ましい具体例としては、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェノキシ基、シアノ基が挙げられる。これらの化合物の中でもフルオロ、クロロ、ブロモ、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ペンタフルオロフェニル基が特に好ましい。
は置換基を持たないインデニル基を表す。
また、Mは周期表4族の遷移金属を表す。
【0018】
本発明の遷移金属化合物(一般式(2))において、Lは下記の化合物(3)で示される置換インデニル基を表す。化合物(3)において、R、R、RおよびRのうち少なくとも1つの置換基は電子吸引性基であり、電子吸引性基が複数個ある場合、それぞれ同一でも異なってもよい。
【化3】

、R、RおよびRは前述の遷移金属化合物(一般式(1))の説明で示した電子吸引性基と同様な構造を選択することができる。
は置換基を持たないインデニル基を表す。
【0019】
本発明の遷移金属化合物の周期表4族の遷移金属は、具体的には、Ti、Zr、Hfが例示される。これらの中で、好ましくはTi、Zrであり、特に好ましくはZrである。
本発明の遷移金属化合物の具体例を以下に示すが、これらに限定するものではない。
【0020】
トリス(4−フルオロインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,7−ジフルオロインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,5,6,7−テトラフルオロインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4−クロロインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,7−ジクロロインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,5,6,7−テトラクロロインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4−ブロモインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,7−ジブロモインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,5,6,7−テトラブロモインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4−ヨードインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,7−ジヨードインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,5,6,7−テトラヨードインデニル)ジルコニウムヒドリド、
【0021】
トリス(4−トリフルオロメチルインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,7−ビストリフルオロメチルインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,5,6,7−テトラキストリフルオロメチルインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4−トリクロロメチルインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,7−ビストリクロロメチルインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,5,6,7−テトラキストリクロロメチルインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4−トリフルオロメトキシインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,7−ビストリフルオロメトキシインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,5,6,7−テトラキストリフルオロメトキシインデニル)ジルコニウムヒドリド、
【0022】
トリス(4−ペンタフルオロフェニルインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,7−ビスペンタフルオロフェニルインデニル)ジルコニウムヒドリド、
トリス(4−シアノインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,7−ビスシアノインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,5,6,7−テトラシアノインデニル)ジルコニウムヒドリド、
【0023】
ビス(4−フルオロインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ジフルオロインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,5,6,7−テトラフルオロインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4−クロロインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ジクロロインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,5,6,7−テトラクロロインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4−ブロモインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ジブロモインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,5,6,7−テトラブロモインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4−ヨードインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ジヨードインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,5,6,7−テトラヨードインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、
【0024】
ビス(4−トリフルオロメチルインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ビストリフルオロメチルインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,5,6,7−テトラキストリフルオロメチルインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4−トリクロロメチルインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ビストリクロロメチルインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,5,6,7−テトラキストリクロロメチルインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4−トリフルオロメトキシインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ビストリフルオロメトキシインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,5,6,7−テトラキストリフルオロメトキシインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、
ビス(4−ペンタフルオロフェニルインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ビスペンタフルオロフェニルインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、
【0025】
ビス(4−シアノインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ビスシアノインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,5,6,7−テトラシアノインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、
(4−フルオロインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,7−ジフルオロインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,5,6,7−テトラフルオロインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4−クロロインデニル)(ビスインデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,7−ジクロロインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,5,6,7−テトラクロロインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4−ブロモインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,7−ジブロモインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,5,6,7−テトラブロモインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4−ヨードインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,7−ジヨードインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,5,6,7−テトラヨードインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、
【0026】
(4−トリフルオロメチルインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,7−ビストリフルオロメチルインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,5,6,7−テトラキストリフルオロメチルインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4−トリクロロメチルインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,7−ビストリクロロメチルインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,5,6,7−テトラキストリクロロメチルインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4−トリフルオロメトキシインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,7−ビストリフルオロメトキシインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,5,6,7−テトラキストリフルオロメトキシインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、
【0027】
(4−ペンタフルオロフェニルインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,7−ビスペンタフルオロフェニルインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、
(4−シアノインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,7−ビスシアノインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,5,6,7−テトラシアノインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、
【0028】
トリス(4−ホルミルインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,7−ジホルミルインデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4−ホルミルインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ジホルミルインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4−ホルミルインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,7−ジホルミルインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、
トリス(4−カルバモイルインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,7−ジカルバモイルインデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4−カルバモイルインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ジカルバモイルインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4−カルバモイルインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,7−ジカルバモイルインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、
【0029】
トリス(4−エトキシカルボニルインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,7−ジエトキシカルボニルインデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4−エトキシカルボニルインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ジエトキシカルボニルインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4−エトキシカルボニルインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,7−ジエトキシカルボニルインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、
【0030】
トリス(4−アセチルインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,7−ジアセチルインデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4−アセチルインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ジアセチルインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4−アセチルインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,7−ジアセチルインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、
【0031】
トリス(4−ニトロインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,7−ジニトロインデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4−ニトロインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ジニトロインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4−ニトロインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,7−ジニトロインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、
【0032】
ビス(4,7−ジフルオロインデニル)(4,5,6,7−テトラフルオロインデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ジフルオロインデニル)(4−フルオロインデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ジフルオロインデニル)(4,5,6,7−テトラクロロインデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ジフルオロインデニル)(4,7−ジクロロインデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ジフルオロインデニル)(4−クロロインデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ジフルオロインデニル)(4,5,6,7−テトラブロモインデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ジフルオロインデニル)(4−ブロモインデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ジフルオロインデニル)(4,5,6,7−テトラヨードインデニル)ジルコニウムヒドリド、
ビス(4,7−ジフルオロインデニル)(4,7−ジヨードインデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ジフルオロインデニル)(4−ヨードインデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ジフルオロインデニル)(4,5,6,7−テトラキストリフルオロメチルインデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ジフルオロインデニル)(4,7−ビストリフルオロメチルインデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ジフルオロインデニル)(4−トリフルオロメチルインデニル)ジルコニウムヒドリド、
ビス(4,7−ジフルオロインデニル)(4,7−ビスペンタフルオロフェニルインデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ジフルオロインデニル)(4−ペンタフルオロフェニルインデニル)ジルコニウムヒドリド、
【0033】
(4,5,6,7−テトラフルオロインデニル)(4,5,6,7−テトラブロモインデニル)(4,5,6,7−テトラクロロインデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,7−ジフルオロインデニル)(4,7−ジブロモインデニル)(4,7−ジクロロインデニル)ジルコニウムヒドリド、(4−フルオロインデニル)(4−ブロモインデニル)(4−クロロインデニル)ジルコニウムヒドリド、
(4,5,6,7−テトラフルオロインデニル)(4,7−ジフルオロインデニル)(4−フルオロインデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,5,6,7−テトラクロロインデニル)(4,7−ジクロロインデニル)(4−クロロインデニル)ジルコニウムヒドリド、
(4,5,6,7−テトラブロモインデニル)(4,7−ジブロモインデニル)(4−ブロモインデニル)ジルコニウムヒドリド、
【0034】
(4,7−ビストリフルオロメチルインデニル)(4−トリフルオロメチルインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,7−ビスペンタフルオロフェニルインデニル)(4−ペンタフルオロフェニルインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、
上記化合物のジルコニウムをチタニウムおよびハフニウムに代えた化合物、等が挙げられる。
【0035】
これらの化合物をオレフィン重合用触媒成分として用いるに際しては2種以上用いることも可能である。
上に例示した具体的化合物の中にあって、オレフィン重合用触媒成分として好ましいものを以下に示す。
すなわち、
【0036】
トリス(4−フルオロインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,7−ジフルオロインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,5,6,7−テトラフルオロインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4−クロロインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,7−ジクロロインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,5,6,7−テトラクロロインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4−ブロモインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,7−ジブロモインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,5,6,7−テトラブロモインデニル)ジルコニウムヒドリド、
トリス(4−トリフルオロメチルインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,7−ビストリフルオロメチルインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,5,6,7−テトラキストリフルオロメチルインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4−トリクロロメチルインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,7−ビストリクロロメチルインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,5,6,7−テトラキストリクロロメチルインデニル)ジルコニウムヒドリド、
トリス(4−ペンタフルオロフェニルインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,7−ビスペンタフルオロフェニルインデニル)ジルコニウムヒドリド、
【0037】
ビス(4−フルオロインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ジフルオロインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,5,6,7−テトラフルオロインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4−クロロインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ジクロロインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,5,6,7−テトラクロロインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4−ブロモインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ジブロモインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,5,6,7−テトラブロモインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、
【0038】
ビス(4−トリフルオロメチルインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ビストリフルオロメチルインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4−トリクロロメチルインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ビストリクロロメチルインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4−ペンタフルオロフェニルインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ビスペンタフルオロフェニルインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、
【0039】
(4−フルオロインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,7−ジフルオロインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,5,6,7−テトラフルオロインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4−クロロインデニル)(ビスインデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,7−ジクロロインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,5,6,7−テトラクロロインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4−ブロモインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,7−ジブロモインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,5,6,7−テトラブロモインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、
【0040】
(4−トリフルオロメチルインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,7−ビストリフルオロメチルインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド
(4−トリクロロメチルインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,7−ビストリクロロメチルインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、
(4−ペンタフルオロフェニルインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,7−ビスペンタフルオロフェニルインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、
【0041】
ビス(4,7−ジフルオロインデニル)(4,5,6,7−テトラフルオロインデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ジフルオロインデニル)(4−フルオロインデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ジフルオロインデニル)(4,5,6,7−テトラクロロインデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ジフルオロインデニル)(4,7−ジクロロインデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ジフルオロインデニル)(4−クロロインデニル)ジルコニウムヒドリド、
ビス(4,7−ジフルオロインデニル)(4−ブロモインデニル)ジルコニウムヒドリド、
【0042】
(4,7−ジフルオロインデニル)(4,7−ジブロモインデニル)(4,7−ジクロロインデニル)ジルコニウムヒドリド、(4−フルオロインデニル)(4−ブロモインデニル)(4−クロロインデニル)ジルコニウムヒドリド、上記化合物のジルコニウムをチタニウムおよびハフニウムに代えた化合物、等があげられる。
上に例示した具体的化合物の中にあって、オレフィン重合用触媒成分として特に好ましいものを以下に示す。
【0043】
トリス(4−フルオロインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,7−ジフルオロインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,5,6,7−テトラフルオロインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4−クロロインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,7−ジクロロインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,5,6,7−テトラクロロインデニル)ジルコニウムヒドリド、
【0044】
トリス(4−トリフルオロメチルインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,7−ビストリフルオロメチルインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,5,6,7−テトラキストリフルオロメチルインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4−トリクロロメチルインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,7−ビストリクロロメチルインデニル)ジルコニウムヒドリド、
トリス(4−ペンタフルオロフェニルインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,7−ビスペンタフルオロフェニルインデニル)ジルコニウムヒドリド、
【0045】
ビス(4−フルオロインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ジフルオロインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,5,6,7−テトラフルオロインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4−クロロインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ジクロロインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,5,6,7−テトラクロロインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、
ビス(4−トリフルオロメチルインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ビストリフルオロメチルインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、
ビス(4−トリクロロメチルインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ビストリクロロメチルインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、
ビス(4−ペンタフルオロフェニルインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ビスペンタフルオロフェニルインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、
【0046】
(4−フルオロインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,7−ジフルオロインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,5,6,7−テトラフルオロインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4−クロロインデニル)(ビスインデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,7−ジクロロインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,5,6,7−テトラクロロインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、
(4−トリフルオロメチルインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,7−ビストリフルオロメチルインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド
(4−トリクロロメチルインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,7−ビストリクロロメチルインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、
(4−ペンタフルオロフェニルインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,7−ビスペンタフルオロフェニルインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、等があげられる。
本発明の具体的化合物の中にあって、オレフィン重合用触媒成分として特に好ましく好適なものを以下に示す。
【0047】
トリス(4−フルオロインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,7−ジフルオロインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,5,6,7−テトラフルオロインデニル)ジルコニウムヒドリド、
トリス(4−トリフルオロメチルインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,7−ビストリフルオロメチルインデニル)ジルコニウムヒドリド、
トリス(4−ペンタフルオロフェニルインデニル)ジルコニウムヒドリド、トリス(4,7−ビスペンタフルオロフェニルインデニル)ジルコニウムヒドリド、
【0048】
ビス(4−フルオロインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ジフルオロインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,5,6,7−テトラフルオロインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、
ビス(4−トリフルオロメチルインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ビストリフルオロメチルインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、
ビス(4−ペンタフルオロフェニルインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、ビス(4,7−ビスペンタフルオロフェニルインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド、
【0049】
(4−フルオロインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,7−ジフルオロインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,5,6,7−テトラフルオロインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、
(4−トリフルオロメチルインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,7−ビストリフルオロメチルインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド
(4−ペンタフルオロフェニルインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、(4,7−ビスペンタフルオロフェニルインデニル)ビス(インデニル)ジルコニウムヒドリド、
【0050】
本発明の新規な遷移金属化合物の合成例を以下に合成方法1および2として示すが、これらの合成方法に限らない。
<合成方法1>
1)下記の化合物a)、b)およびc)を相互に接触させることにより製造する。
a)LnL2−nZrX
b)L
c)LiR
ここで、式中のLはインデニル基、Lは電子吸引性基で置換されたインデニル基を表す。nは0≦n≦2であり、n=0の場合、2つのLは同一でも異なってもよい。LHはインデン、あるいは、電子吸引性基で置換されたインデンを表すが、n=2の場合、LHは電子吸引性基で置換されたインデンを表す。Xはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を表す。2つのXは同一でも異なってもよい。好ましくは塩素か臭素であり、特に好ましくは塩素である。Rはエチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基などのアルキル基を表す。これらは分岐があってもよい。好ましくはn−ブチル基である。
【0051】
化合物a)、b)およびc)を接触させる場合は、通常窒素またはアルゴンなどの不活性雰囲気中、一般にベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ヘプタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサンなどの脂肪族あるいは脂環族炭化水素等の液状不活性炭化水素、あるいはジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどの含酸素炭化水素溶媒の存在下、撹拌下または非撹拌下で行われる。
【0052】
接触順序には特に制限はなく、具体的には以下の順序で行なうことが望ましい。
化合物a)とc)を接触させた後、b)を接触させる。
接触に際しては、各成分を一度に添加してもよいし、一定時間をかけて添加してもよいし、分割して添加してもよい。また各成分の接触を複数回行なってもよい。
化合物a)とc)の接触は通常−100〜0℃、好ましくは−80〜−40℃の温度にて、5分〜24時間、好ましくは30分〜3時間行うことが望ましい。その後、−30℃〜30℃、好ましくは0℃〜10℃付近まで昇温した後、生じたLiCl等のハロゲン化アルカリ金属をろ過によって除く。さらに化合物b)を接触させた後0℃〜150℃、好ましくは20℃〜80℃の温度にて5分〜3日、好ましくは1時間〜24時間撹拌する。反応溶液中の溶媒を除いた後、ペンタンやヘキサンなどの脂肪族炭化水素で洗浄後、本発明の新規な遷移金属化合物を得ることができる。
【0053】
化合物a)、b)、c)を接触させ加熱撹拌した後、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ヘプタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサンなどの脂肪族あるいは脂環族炭化水素等の液状不活性炭化水素溶液からろ過することによりLiClを反応溶液から除くこともできる。あるいは、反応溶液から溶媒を除いた後、テトラヒドロフランなどの含酸素炭化水素溶媒で洗浄してLiClを除くこともできる。
【0054】
化合物a)〜c)の使用割合は、化合物a)1モルに対して化合物b)を1〜50モル、好ましくは2〜8モルの割合で、化合物c)を通常2モルの割合で用いることができる。
【0055】
<合成方法2>
1)下記化合物d)とe)を相互に接触させることにより製造する。
d)IndZrH
e)L
ここで、LHは電子吸引性基で置換されたインデンを表す。
化合物d)とe)を接触させる場合は、通常窒素またはアルゴンなどの不活性雰囲気中、一般にベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ヘプタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサンなどの脂肪族あるいは脂環族炭化水素等の液状不活性炭化水素、あるいはジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどの含酸素炭化水素溶媒の存在下、撹拌下または非撹拌下で行われる。
【0056】
化合物d)とe)の接触は通常−80〜150℃、好ましくは0〜50℃の温度にて、1分〜3時間、好ましくは10分〜1時間行うことが望ましい。その後、0℃〜150℃、好ましくは20℃〜110℃付近まで昇温し、5分〜3日、好ましくは1時間〜24時間撹拌する。反応溶液中の溶媒を除いた後、ペンタンやヘキサンなどの脂肪族炭化水素で洗浄後、新規な遷移金属化合物を得ることができる。
【0057】
化合物d)、e)の使用割合は、化合物d)1モルに対して化合物e)を1〜50モル、好ましくは2〜8モルの割合で用いることができる。
なお、化合物d)のIndZrHは特許文献3(特開2004−161760)に記載の方法により得ることができる。
【0058】
本発明が提案する新規な遷移金属化合物は、次に示す有機アルミニウムオキシ化合物、該新規な遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物、またこれらの混合物との組み合わせで、オレフィン重合用触媒として使用することができる。
有機アルミニウムオキシ化合物は、分子中にAl−O−Al結合を有し、その結合数は通常1〜100、好ましくは1〜50個の範囲にある。このような有機アルミニウムオキシ化合物は、通常有機アルミニウム化合物と水とを反応させて得られる生成物である。有機アルミニウムと水との反応は、通常不活性炭化水素中で行われる。不活性炭化水素としてはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素及び芳香族炭化水素が使用できるが、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素を使用することが好ましい。
【0059】
有機アルミニウムオキシ化合物の調製に用いる有機アルミニウム化合物は、下記一般式(7)で表される化合物がいずれも使用可能であるが、好ましくはトリアルキルアルミニウムが使用される。
tAlX3−t・・・式(7)
(式中、Rは炭素数1〜18、好ましくは1〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等の炭化水素基、Xは水素原子又はハロゲン原子を示し、tは1≦t≦3の整数を示す。)
トリアルキルアルミニウムのアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等のいずれでも差し支えないが、メチル基であることが特に好ましい。
上記有機アルミニウム化合物は、2種以上混合して使用することもできる。
【0060】
水と有機アルミニウム化合物との反応比(水/Alモル比)は、0.25/1〜1.2/1、特に、0.5/1〜1/1であることが好ましく、反応温度は通常−70〜100℃、好ましくは−20〜20℃の範囲にある。反応時間は通常5分〜24時間、好ましくは10分〜5時間の範囲で選ばれる。反応に要する水として、単なる水のみならず、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物等に含まれる結晶水や反応系中に水が生成しうる成分も利用することもできる。
なお、上記した有機アルミニウムオキシ化合物のうち、アルキルアルミニウムと水とを反応させて得られるものは、通常アルミノキサンと呼ばれ、特にメチルアルミノキサン(実質的にメチルアルミノキサン(MAO)からなるものを含む)は、有機アルミニウムオキシ化合物として好適である。
もちろん、有機アルミニウムオキシ化合物として、上記した各有機アルミニウムオキシ化合物の2種以上を組み合わせて使用することもでき、また前記有機アルミニウムオキシ化合物を前述の不活性炭化水素溶媒に溶液または分散させた溶液としたものを用いても良い。
【0061】
また、新規な遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物の具体例を摘記すると、ボラン化合物やボレート化合物が挙げられる。
ボラン化合物をより具体的に表すと、トリフェニルボラン、トリ(o−トリル)ボラン、トリ(p−トリル)ボラン、トリ(m−トリル)ボラン、トリ(o−フルオロフェニル)ボラン、トリス(p−フルオロフェニル)ボラン、トリス(m−フルオロフェニル)ボラン、トリス(2,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(4−トリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(3,5―ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)、トリス(パーフルオロアントリル)ボラン、トリス(パーフルオロビナフチル)ボランが挙げられる。
【0062】
これらの中でも、トリス(3,5―ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロアントリル)ボラン、トリス(パーフルオロビナフチル)ボランがより好ましく、さらに好ましくはトリス(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)ボランが例示される。
【0063】
ボレート化合物を具体的に表すと第1の例は、次の一般式(8)で示される化合物である。
[L−H][BR・・・式(8)
式中Lは中性ルイス塩基、Hは水素原子、[L−H]はアンモニウム、アニリニウム、ホスフォニウム等のブレンステッド酸である。アンモニウムとしては、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、トリ(n−ブチル)アンモニウムなどのトリアルキル置換アンモニウム、ジ(n−プロピル)アンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウムなどのジアルキルアンモニウムが例示できる。
【0064】
アニリウムとしては、N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムなどのN,N−ジアルキルアニリニウムが例示できる。また、ホスフォニウムとしてはトリフェニルホスフォニウム、トリブチルホスホニウム、トリ(メチルフェニル)ホスフォニウム、トリ(ジメチルフェニル)ホスフォニウムなどのトリアリールホスフォニウム、トリアルキルホスフォニウムが挙げられる。
【0065】
およびRは6〜20、好ましくは6〜16の炭素原子を含む、同じか又は異なる芳香族又は置換芳香族炭化水素基で、架橋基によって互いに連結されていてもよく、置換芳香族炭化水素基の置換基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等に代表されるアルキル基やフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲンが好ましい。
及びXはハイドライド基、ハライド基、1〜20の炭素原子を含むヒドロカルビル(炭化水素)基、1個以上の水素原子がハロゲン原子によって置換された1〜20の炭素原子を含む置換ヒドロカルビル(炭化水素)基である。
【0066】
上記一般式(8)で表される化合物の具体例としては、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、ジ(1−プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボレートなどを例示することができる。
【0067】
これらの中でもトリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレートが特に好ましい。
【0068】
ボレート化合物の第2の例は、次の一般式(9)で表わされる。
[L10][BR] ・・・式(9)
式中L10はカルボカチオン、メチルカチオン、エチルカチオン、プロピルカチオン、イソプロピルカチオン、ブチルカチオン、イソブチルカチオン、tert−ブチルカチオン、ペンチルカチオン、トロピニウムカチオン、ベンジルカチオン、トリチルカチオン、ナトリウムカチオン、プロトン等が挙げられる。R、R、X及びXは前記一般式(8)におけるR、R、X及びXの定義と同じである。
【0069】
上記化合物の具体例としては、トリチルテトラフェニルボレート、トリチルテトラ(o−トリル)ボレート、トリチルテトラ(p−トリル)ボレート、トリチルテトラ(m−トリル)ボレート、トリチルテトラ(o−フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(p−フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(m−フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5−ジフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トロピニウムテトラフェニルボレート、トロピニウムテトラ(o−トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(p−トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(m−トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(o−フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(p−フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(m−フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5−ジフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、NaBPh、NaB(o−CH−Ph)、NaB(p−CH−Ph)、NaB(m−CH−Ph)、NaB(o−F−Ph)、NaB(p−F−Ph)、NaB(m−F−Ph)、NaB(3,5−F−Ph)、NaB(C、NaB(2,6−(CF−Ph)、NaB(3,5−(CF−Ph)、NaB(C10、HBPh・2ジエチルエーテル、HB(3,5−F−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(C・2ジエチルエーテル、HB(2,6−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(3,5−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(C10・2ジエチルエーテルを例示することができる。
【0070】
これらの中でもトリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トロピニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、NaB(C、NaB(2,6−(CF−Ph)、NaB(3,5−(CF−Ph)、NaB(C10、HB(C・2ジエチルエーテル、HB(2,6−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(3,5−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(C10・2ジエチルエーテルが好ましい。
【0071】
さらに好ましくは、これらの中でもトリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、NaB(C、NaB(2,6−(CF−Ph)、HB(C・2ジエチルエーテル、HB(2,6−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(3,5−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(C10・2ジエチルエーテルが挙げられる。
【0072】
本発明の新規な遷移金属化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物、該新規な遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物またはこれらの混合物からなるオレフィン重合用触媒は、担体に担持させて固体触媒として使用することができる。
【0073】
担体としては、無機物担体、粒子状ポリマー担体またはこれらの混合物が使用される。無機物担体は、金属、金属酸化物、金属塩化物、金属炭酸塩、炭素物質、またはこれらの混合物が使用可能である。
無機物担体に用いることができる好適な金属としては、例えば鉄、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられる。
【0074】
また、金属酸化物としては周期律表1〜14族の元素の単独酸化物または複酸化物が挙げられ、例えばSiO、Al、MgO、CaO、B、TiO、ZrO、Fe、Al・MgO、Al・CaO、Al・SiO、Al・MgO・CaO、Al・MgO・SiO、Al・CuO、Al・Fe、Al・NiO、SiO・MgOなどの天然または合成の各種複酸化物を例示することができる。ここで上記の式は分子式ではなく、組成のみを表すものであって、本発明において用いられる複酸化物の構造および成分比率は特に限定されるものではない。
また、本発明において用いる金属酸化物は、少量の水分を吸収していても差し支えなく、少量の不純物を含有していても差し支えない。
【0075】
金属塩化物としては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属の塩化物が好ましく、具体的にはMgCl、CaClなどが特に好適である。
金属炭酸塩としてはアルカリ金属、アルカリ土類金属の炭酸塩が好ましく、具体的には、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどが挙げられる。
炭素質物としては例えばカーボンブラック、活性炭などが挙げられる。以上の無機物担体はいずれも本発明に好適に用いることができるが、特に金属酸化物、シリカ、アルミナなどの使用が好ましい。
【0076】
これら無機物担体は通常200〜800℃、好ましくは400〜600℃で空気中または窒素、アルゴン等の不活性ガス中で焼成して、表面水酸基の量を0.8〜1.5mmol/gに調節して用いるのが好ましい。
これら無機物担体の性状としては特に制限はないが、通常平均粒径は5〜200μm、好ましくは10〜150μm、比表面積は150〜1000m/g、好ましくは200〜500m/g、細孔容積は0.3〜2.5cm/g、好ましくは0.5〜2.0cm/g、見掛比重は0.20〜0.50g/cm、好ましくは0.25〜0.45g/cmをもった無機物担体を用いるのが好ましい。
【0077】
上記した無機物担体はもちろんそのまま用いることもできるが、予備処理としてこれらの担体をトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどの有機アルミニウム化合物やAl−O−Al結合を含む有機アルミニウムオキシ化合物に接触させた後、用いることができる。
【0078】
本発明の新規な遷移金属化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物、新規な遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物またはこれらの混合物と担体からオレフィン類重合用触媒を得る際の各成分の接触方法は、特に限定されず、例えば、以下の方法が任意に採用可能である。
【0079】
(I)新規な遷移金属化合物と有機アルミニウムオキシ化合物、該新規な遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物またはこれらの混合物を接触させた後、担体と接触させる。
(II)該新規な遷移金属化合物と担体を接触させた後、有機アルミニウムオキシ化合物、該新規な遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物またはこれらの混合物と接触させる。
(III)有機アルミニウムオキシ化合物、該新規な遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物またはこれらの混合物と担体を接触させた後、該新規な遷移金属化合物と接触させる。
【0080】
これらの接触方法の中で特に(I)と(III)が好ましい。いずれの接触方法においても、通常は窒素またはアルゴンなどの不活性雰囲気中、一般にベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素(通常炭素数は6〜12)、ヘプタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサンなどの脂肪族あるいは脂環族炭化水素(通常炭素数5〜12)等の液状不活性炭化水素の存在下、撹拌下または非撹拌下に各成分を接触させる方法が採用される。
この接触は、通常−100℃〜200℃、好ましくは−50℃〜100℃の温度にて、10分〜50時間、好ましくは1時間〜24時間行うことが望ましい。
【0081】
また、新規な遷移金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、該新規な遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物またはこれらの混合物と担体の接触に際しては、上記した通り、ある種の成分が可溶ないしは難溶な芳香族炭化水素溶媒と、ある種の成分が不溶ないしは難溶な脂肪族または脂環族炭化水素溶媒とがいずれも使用可能である。
【0082】
各成分同士の接触反応を段階的に行う場合にあっては、前段で用いた溶媒などを除去することなく、これをそのまま後段の接触反応の溶媒に用いてもよい。また、可溶性溶媒を使用した前段の接触反応後、ある種の成分が不溶もしくは難溶な液状不活性炭化水素(例えば、ペンタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素あるいは芳香族炭化水素)を添加して、所望生成物を固形物として回収した後に、あるいは一旦可溶性溶媒の一部または全部を、乾燥等の手段により除去して所望生成物を固形物として取り出した後に、この所望生成物の後段の接触反応を、上記した不活性炭化水素溶媒のいずれかを使用して実施することもできる。本発明では各成分の接触反応を複数回行うことを妨げない。
【0083】
本発明の新規な遷移金属化合物と有機アルミニウムオキシ化合物、新規な遷移金属化合物と、該新規な遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物、担体の使用割合は、特に限定されないが、以下の範囲が好ましい。
【0084】
有機アルミニウムオキシ化合物を用いる場合、該新規な遷移金属化合物中の遷移金属(M)に対する有機アルミニウムオキシ化合物のアルミニウムの原子比(Al/M)は、通常1〜100,000、好ましくは5〜1000、さらに好ましくは50〜200の範囲が望ましく、該新規な遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物を用いる場合、該新規な遷移金属化合物の遷移金属に対する、ホウ素の原子比(B/M)は、通常0.01〜100モル、好ましくは0.1〜50モル、さらに好ましくは0.2〜10モルの範囲で選択することが望ましい。有機アルミニウムオキシ化合物と、該新規な遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物との混合物を用いる場合にあっては、混合物における各化合物について、遷移金属(M)に対して上記と同様な使用割合で選択することが望ましい。
【0085】
担体の使用量は、該新規な遷移金属化合物中の遷移金属0.0001〜5ミリモル当たり、好ましくは0.001〜0.5ミリモル当たり、さらに好ましくは0.01〜0.1ミリモル当たり1gである。
【0086】
該新規な遷移金属化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物、該新規な遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物またはこれらの混合物と担体を前記接触方法(I)〜(III)のいずれかで相互に接触させ、しかる後、溶媒を除去することで、オレフィン類重合用触媒を固体触媒として得ることができる。溶媒の除去は、常圧下または減圧下、0〜200℃、好ましくは20〜150℃で1分〜50時間、好ましくは10分〜10時間で行うことが望ましい。
【0087】
なお、オレフィン類重合用触媒は、以下の方法によっても得ることができる。
(IV)該新規な遷移金属化合物と担体を接触させて溶媒を除去し、これを固体触媒成分とし、重合条件下で有機アルミニウムオキシ化合物、該新規な遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物またはこれらの混合物と接触させる。
(V)有機アルミニウムオキシ化合物、該新規な遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物またはこれらの混合物と担体を接触させて溶媒を除去し、これを固体触媒成分とし、重合条件下で新規触媒成分と接触させる。
上記(IV)、(V)の接触方法の場合も成分比、接触条件および溶媒除去条件は前記と同様の条件が使用できる。
【0088】
また本発明の新規な遷移金属化合物は、層状珪酸塩に担持することで触媒とすることもできる。
層状珪酸塩とは、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる珪酸塩化合物である。
大部分の層状珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出するが、これら、層状珪酸塩は特に天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。
【0089】
これらの中では、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライト等のスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族が好ましい。
【0090】
一般に、天然品は、非イオン交換性(非膨潤性)であることが多く、その場合は好ましいイオン交換性(ないし膨潤性)を有するものとするために、イオン交換性(ないし膨潤性)を付与するための処理を行うことが好ましい。そのような処理のうちで特に好ましいものとしては次のような化学処理があげられる。ここで化学処理とは、表面に付着している不純物を除去する表面処理と層状珪酸塩の結晶構造、化学組成に影響を与える処理のいずれをも用いることができる。具体的には、(イ)塩酸、硫酸等を用いて行う酸処理、(ロ)NaOH、KOH、NH等を用いて行うアルカリ処理、(ハ)周期表第2族から第14族から選ばれた少なくとも1種の原子を含む陽イオンとハロゲン原子または無機酸由来の陰イオンからなる群より選ばれた少なくとも1種の陰イオンからなる塩類を用いた塩類処理、(ニ)アルコール、炭化水素化合物、ホルムアミド、アニリン等の有機物処理等が挙げられる。これらの処理は単独で行ってもよいし、2つ以上の処理を組み合わせてもよい。
【0091】
前記層状珪酸塩は、全ての工程の前、間、後のいずれの時点においても、粉砕、造粒、分粒、分別等によって粒子性状を制御することができる。その方法は合目的的な任意のものであり得る。特に造粒法について示せば、例えば噴霧造粒法、転動造粒法、圧縮造粒法、撹拌造粒法、ブリケッティング法、コンパクティング法、押出造粒法、流動層造粒法、乳化造粒法および液中造粒法等が挙げられる。特に好ましい造粒法は、上記の内、噴霧造粒法、転動造粒法および圧縮造粒法である。
【0092】
上記した層状珪酸塩はもちろんそのまま用いることもできるが、これらの層状珪酸塩をトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどの有機アルミニウム化合物やAl−O−Al結合を含む有機アルミニウムオキシ化合物と組み合わせて用いることができる。
【0093】
本発明の新規な遷移金属化合物を層状珪酸塩に担持するには、遷移金属化合物と層状珪酸塩を相互に接触させる、あるいは遷移金属化合物、有機アルミニウム化合物、層状珪酸塩を相互に接触させてもよい。各成分の接触方法は、特に限定されず、例えば、以下の方法が任意に採用可能である。
(VI)新規な遷移金属化合物と有機アルミニウム化合物を接触させた後、層状珪酸塩担体と接触させる。
(VII)該新規な遷移金属化合物と担体を接触させた後、有機アルミニウム化合物と接触させる。
(VIII)有機アルミニウムオキシ化合物と担体を接触させた後、該新規な遷移金属化合物と接触させる。
【0094】
これらの接触方法の中で特に(VI)と(VIII)が好ましい。いずれの接触方法においても、通常は窒素またはアルゴンなどの不活性雰囲気中、一般にベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素(通常炭素数は6〜12)、ヘプタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサンなどの脂肪族あるいは脂環族炭化水素(通常炭素数5〜12)等の液状不活性炭化水素の存在下、撹拌下または非撹拌下に各成分を接触させる方法が採用される。
【0095】
新規な遷移金属化合物と、有機アルミニウム化合物、担体の使用割合は、特に限定されないが、以下の範囲が好ましい。
新規な遷移金属化合物の担持量は、層状珪酸塩1gあたり、0.0001〜5ミリモル、好ましくは0.001〜0.5ミリモル、さらに好ましくは0.01〜0.1ミリモルである。
また有機アルミニウム化合物を用いる場合のAl担持量は、0.01〜100モル、好ましくは0.1〜50モル、さらに好ましくは0.2〜10モルの範囲であることが望ましい。
【0096】
担持および溶媒除去の方法は、前記の無機物担体と同様の条件が使用できる。
こうして得られるオレフィン類重合用触媒は、必要に応じてモノマーの予備重合を行った後に使用しても差し支えない。
【0097】
上記した重合用触媒は、オレフィン類の単独重合又は共重合に使用可能である。ここでいうオレフィン類には、α−オレフィン類、環状オレフィン類、ジエン類、トリエン類、スチレン類似体および極性基含有オレフィン類が包含される。
【0098】
α−オレフィン類には、炭素数2〜12、好ましくは2〜8のものが包含され、具体的
には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等が例示される。α−オレフィン類は、本発明の触媒成分を使用して単独重合させることができる他、2種類以上のα−オレフィンを共重合させることも可能であり、その共重合は交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合のいずれであっても差し支えない。α−オレフィン類の共重合には、エチレンとプロピレン、エチレンと1−ブテン、エチレンと1−ヘキセン、エチレンと4−メチル−1−ペンテンのように、エチレンと炭素数3〜12、好ましくは3〜8のα−オレフィンとを共重合する場合、プロピレンと1−ブテン、プロピレンと4−メチル−1−ペンテン、プロピレンと1−ヘキセン、プロピレンと1−オクテンのように、プロピレンと炭素数3〜12、好ましくは3〜8のα−オレフィンとを共重合する場合が含まれる。エチレン又はプロピレンと他のα−オレフィンとを共重合させる場合、当該他のα−オレフィンの量は全モノマーの90モル%以下の範囲で任意に選ぶことができるが、一般的には、エチレン共重合体にあっては、40モル%以下、好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは20モル%以下であり、プロピレン共重合体にあっては、1〜90モル%、好ましくは5〜90モル%、さらに好ましくは10〜70モル%の範囲で選ばれる。
【0099】
環状オレフィンとしては、炭素数3〜24、好ましくは3〜18のものが本発明で使用可能であり、これには例えば、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3−メチルシクロヘキセン、シクロオクテン、シクロデセン、シクロドデセン、テトラシクロデセン、オクタシクロデセン、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−イソブチル−2−ノルボルネン、5,6−ジメチル−2−ノルボルネン、5,5,6−トリメチル−2−ノルボルネン、エチリデンノルボルネンなどが包含される。環状オレフィンは前記のα−オレフィンと共重合せしめるのが通例であるが、その場合、環状オレフィンの量は共重合体の50モル%以下、通常は1〜50モル%、好ましくは2〜50モル%の範囲にある。
【0100】
本発明で使用可能なジエン類及びトリエン類は、炭素数4〜24、好ましくは4〜18のものが使用可能であり、具体的には、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,9−デカジエン、1,13−テトラデカジエン、2,6−ジメチル−1,5−ヘプタジエン、2−メチル−2,7−オクタジエン、2,7−ジメチル−2,6−オクタジエン、1,5,9−デカトリエンなどが例示される。本発明で鎖式ジエン又はトリエンを使用する場合、通常は上記したα−オレフィンと共重合させるのが通例であるが、その共重合体中の鎖式ジエン及び/又はトリエンの含有量は、一般に、0.1〜50モル%、好ましくは0.2〜10モル%の範囲にある。
【0101】
本発明で使用可能なスチレン類似体は、スチレン及びスチレン誘導体であって、その誘導体としては、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレンなどを例示することができる。
【0102】
重合反応は前記した触媒の存在下、スラリー重合、溶液重合、又は気相重合にて行うことができる。特にスラリー重合又は気相重合が好ましく、実質的に酸素、水等を断った状態で、イソブタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等から選ばれる不活性炭化水素溶媒の存在下または不存在下で、オレフィンを重合させる。この時の重合条件は温度20〜200℃、好ましくは50〜100℃、圧力は常圧〜7MPa、好ましくは常圧〜3MPaの範囲にあり、重合時間としては5分〜10時間、好ましくは5分〜5時間が採用されるのが普通である。
【0103】
生成重合体の分子量は、重合温度、触媒のモル比等の重合条件を変えることによってもある程度調節可能であるが、重合反応系に水素を添加することでより効果的に分子量調節
を行うことができる。
また、重合系中に、水分除去を目的とした成分、いわゆるスカベンジャーを加えても何ら支障なく実施することができる。なお、かかるスカベンジャーとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物、前記有機アルミニウムオキシ化合物、分岐アルキルを含有する変性有機アルミニウム化合物、ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛などの有機亜鉛化合物、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、エチルブチルマグネシウムなどの有機マグネシウム化合物、エチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムクロリドなどのグリニヤ化合物などが使用される。これらのなかでは、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、エチルブチルマグネシウムが好ましく、トリエチルアルミニウムが特に好ましい。
水素濃度、モノマー量、重合圧力、重合温度等の重合条件が互いに異なる2段階以上の多段階重合方式にも、支障なく適用することができる。
【0104】
以下に、本発明のオレフィン重合用触媒を調整することが出来る仕様を例示する。
[触媒仕様の実施態様例]
触媒成分 遷移金属化合物 有機Alオキシ化合物 イオン対形成化合物
1 4−F−IndZrH メチルアルミノキサン
2 4,7−F−IndZrH メチルアルミノキサン
3 4−F−IndIndZrH メチルアルミノキサン
4 4−CF−IndIndZrH メチルアルミノキサン
5 4,7−F−IndZrH メチルアルミノキサン F−Ph
6 4,7−F−IndZrH F−Ph
7 4,7−F−IndZrH F−Ph・NBu
8 4,7−F−IndTiH メチルアルミノキサン
9 4,7−F−IndHfH メチルアルミノキサン

以上の触媒仕様の実施態様例示すように、遷移金属化合物,有機Alオキシ化合物および/またはイオン対形成化合物の範疇に属する各種化合物を、任意に組み合わせることにより、本発明のオレフィン重合用触媒を調製することができる。勿論、本願発明はこの触媒仕様の化合物および組み合わせに限定されるものではないが、遷移金属化合物,有機Alオキシ化合物および/またはイオン対形成化合物の範疇に属する各種化合物を万遍に使用して、接触処理をすれば、本発明の重合用触媒の調製が出来るとともに、触媒活性を確認することができる。
【実施例】
【0105】
以下に、本発明を実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例において使用した評価方法は以下のとおりであり、以下の触媒合成工程および重合工程はすべて精製窒素雰囲気下で行い、また、使用した溶媒はモレキュラーシーブ−4Aで脱水精製したものを用いた。
<メルトインデックス(MI)>
ASTM D 1238−57T 190℃、2.16kg荷重に基づき測定した。
<赤外吸収スペクトル(IR)>
末端ビニル基の定量は約0.5mmのプレス板を作製し、赤外吸収スペクトル(IR)を島津製作所のFTIR−8300型の装置を用いて910cm-1のピークの吸光度より次式から算出した。
末端ビニル基(個/1000個の炭素)=1.14×ΔA910/t×ρ
ΔA910:910cm−1の吸光度、t:プレス板の厚み、ρ:密度
[実施例1]
(遷移金属化合物の製造例1)
【0106】
窒素雰囲気下、100mlナス型フラスコにビスインデニルジルコニウムジクロライド(IndZrCl)の1mmol(0.39g)をトルエン30mlにけん濁し、寒剤(ドライアイス−エタノール)で−78℃に冷却し、n−ブチルリチウム(n−BuLi)を2mmol加えた。この混合溶液を寒剤から出して温度をゆっくり上げ、0℃付近でインデンを4mmol加えた。さらに室温まで温度を上げ30分反応させた。反応後析出したリチウムクロライド(LiCl)をろ別した。ろ液をさらに50℃で12時間反応させ析出した沈殿をn−ヘキサンで洗浄し、トリスインデニルジルコニウムヒドリド(IndZrH)を収率64%で得た。この化合物の構造はH−NMR、13C−NMRにより決定した。
【0107】
代表的なNMRピーク
H−NMR(THF−d,MeSi):δ(ppm)2.03(t,3H)、2.95(s,1H)、5.79(br,6H)、6.97(m,6H)、7.34(m,6H);13C−NMR(THF−d,MeSi)δ(ppm)90.12、115.77、123.51、124.37、131.36
(遷移金属化合物の製造例2)
【0108】
窒素雰囲気下、200mlナス型フラスコにトリスインデニルジルコニウムヒドリド(IndZrH)4.57mmol(2.00g)を入れ、トルエン46mlにけん濁した。室温のけん濁液を撹拌し、4,7−ジフルオロインデン(4,7−F−IndH)17.8mmol(2.71g)を加えた。黄色けん濁液を室温で5時間撹拌し、さらに90℃のオイルバスにつけて3時間撹拌した。室温で溶媒を減圧留去したのち、フラスコに残った赤色固体をヘプタン50mlで洗浄、減圧乾燥することで茶色粉末を粗生成物として得た。粗生成物をトルエンで再結晶してビス(4,7−ジフルオロインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド((4,7−F−Ind)(Ind)ZrH)を微結晶として1.2g得た。
【0109】
代表的なNMRピーク
H−NMR(Toluene−d):δ(ppm)2.13(t,3H)、3.42(t,1H)、5.94(br,6H)、6.72(m,6H)、7.17(m,2H)
(固体触媒の製造例1)
【0110】
窒素雰囲気下、200ml二口フラスコにメチルアルミノキサンが担持されたシリカ(シリカ:650℃で5時間焼成、メチルアルミノキサン担持量5.0mmol−Al/g−シリカ)2gを入れ、トルエン5.0mlでスラリー化した。実施例2で得られビス(4,7−ジフルオロインデニル)(インデニル)ジルコニウムヒドリド((4,7−F−Ind)(Ind)ZrH)の微結晶41mgをトルエン20mlで溶解した溶液を室温で加え、30分間撹拌した。溶媒を減圧留去することで固体触媒を得た。
(重合体の製造例1)
【0111】
攪拌および温度制御装置を有する内容積1リットルのステンレス鋼製オートクレーブに、充分脱水および脱酸素した粒径850μmから2000μmのポリエチレンを80グラム、トリエチルアルミニウムを33ミリグラム、水素を0.76mmol導入し撹拌しながら80℃へ昇温した。1−ヘキセン10重量%を含むエチレンを、分圧が2.0MPaになるまで導入した後、実施例3で得られた固体触媒50ミリグラムをアルゴンガスで圧入して90分間重合を行った。その結果、16.1グラムのポリエチレンが生成した。重合結果は表1にまとめた。
[実施例2]
(重合体の製造例2)
【0112】
上記実施例1の重合体の製造例1において、水素を導入せず、重合時間を60分間とした以外は重合体の製造1と同様にエチレン重合を行なった。その結果、19.8グラムのポリエチレンが生成した。重合結果は表1にまとめた。
[比較例1]
(固体触媒の製造例2)
【0113】
窒素雰囲気下、200ml二口フラスコにメチルアルミノキサンが担持されたシリカ(シリカ:650℃で5時間焼成、メチルアルミノキサン担持量5.0mmol−Al/g−シリカ)2gを入れ、トルエン5.0mlでスラリー化した。上記遷移金属化合物の製造例1で得られトリスインデニルジルコニウムヒドリド(IndZrH)33mgをトルエン20mlで溶解した溶液を室温で加え、30分間撹拌した。溶媒を減圧留去することで固体触媒を得た。
(重合体の製造例3)
【0114】
上記重合体の製造例1において、固体触媒の製造例1で得られた固体触媒の代わりに固体触媒の製造例2で得られた固体触媒を50ミリグラム用い、重合時間を53分間とした以外は重合体の製造例1と同様にエチレン重合を行なった。その結果、45.1グラムのポリエチレンが生成した。重合結果は表1にまとめた。
[実施例3]
(固体触媒の製造例3)
【0115】
上記固体触媒の製造例1における、メチルアルミノキサンをトリス(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボランに代えても、同様に固体触媒がえられた。
【0116】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の遷移金属化合物はオレフィン重合触媒成分として用いることにより、末端にビニル構造を有するオレフィン重合体が得られ、それらはオレフィン重合体への長鎖分岐の導入、オレフィン重合体の化学修飾、オレフィンブロックポリマーの合成などに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式(1)に示す構造を有する新規な遷移金属化合物。
mLx−m−1H (1)
[式中、Mは周期表4族の遷移金属を表す。Lは電子吸引性基を置換基として持つインデニル基、Lは置換基を持たないインデニル基を表し、xは遷移金属Mの原子価であり、mは1≦m≦3であり、Lが複数個の場合、それぞれ同一でも異なってもよい。]
【請求項2】
以下の一般式(2)に示す構造を有する請求項1記載の遷移金属化合物。
mLx−m−1H (2)
[式中、Mは周期表4族の遷移金属を表す。Lは下記の化合物(3)で示される置換インデニル基を表し、R、R、R、Rのうち少なくとも1つは水素原子以外の置換基であり、R、R、R、Rのうち少なくとも1つの置換基は電子吸引性基である。電子吸引性基が複数個ある場合、それぞれ同一でも異なってもよい。Lは置換基を持たないインデニル基を表し、xは遷移金属Mの原子価であり、mは1≦m≦3であり、Lが複数個の場合、それぞれ同一でも異なってもよい。]
【化3】

【請求項3】
電子吸引性基がハロゲン原子またはハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基である請求項1および2のいずれかに記載の遷移金属化合物。
【請求項4】
周期表4族の遷移金属がジルコニウムである請求項1から3のいずれかに記載の遷移金属化合物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の遷移金属化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物および/または該遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物とからなるオレフィン重合用触媒。
【請求項6】
有機アルミニウムオキシ化合物がメチルアルミノキサンである請求項5記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項7】
請求項5または6に記載の触媒が担体に担持された固体触媒であるオレフィン重合用触媒。
【請求項8】
請求項1から4のいずれかに記載の遷移金属化合物が層状珪酸塩に担持された固体触媒であるオレフィン重合用触媒。
【請求項9】
請求項5から8のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒の存在下にオレフィンを重合することからなるポリオレフィンの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のオレフィンの重合が、エチレンの単独重合またはエチレンとα−オレフィンとの共重合であるポリオレフィンの製造方法。


【公開番号】特開2009−149569(P2009−149569A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329737(P2007−329737)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【出願人】(303060664)日本ポリエチレン株式会社 (233)
【Fターム(参考)】