説明

新規セレノヒドロキシ酸およびそれらの誘導体、栄養品、化粧品および薬品における用途

本発明の目的は、新規なセレノヒドロキシ酸化合物およびそれらの誘導体、それらの調製方法、化粧品および薬品中のヒトまたは動物栄養分におけるL(+)−セレノメチオニンの前駆体および/またはセレン源としての前記新規化合物の用途、およびこれらを含む栄養組成物、化粧品組成物および医薬組成物である。本発明の主題である新規化合物は、一般式(I)(式中、n=0、1または2であり、R1=OH、OCOR3、OPO32、OPO(OR4)(OR5)またはOR6であり、R2=OH、R3またはNHR7であり、R3は、特に、アルコキシル(C1−C26)、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6aおよび6b、S−システイニル、S−グルタチオニル、カルニトイル、脂質類、ポリオール類であり、OR4=OR5は、特に、アルコキシル(C1−C26)、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6aおよび6b、S−システイニル、S−グルタチオニル、カルニトイル、脂質類、ポリオール類であり、OR6=ピルビン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、パルミトレイン酸塩、オレイン酸塩、リノール酸塩、天然脂肪酸類、または13−cisレチノイン酸塩であり、R7=H、アルキル、天然アミノ酸類または天然アミン類である)を満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的とするものは、
−新規なセレノヒドロキシ酸化合物およびそれらの誘導体、
−それらの調製方法、
−ヒトまたは動物用の栄養品、化粧品および薬品における、L(+)−セレノメチオニンの前駆体および/またはセレン源としてのそれらの用途、および
−これらを含む栄養組成物、化粧品組成物および医薬組成物である。
【背景技術】
【0002】
技術水準
本発明は、新規なセレノヒドロキシ酸(SHA)およびそれらの誘導体、それらの調製、および栄養品、化粧品および薬品におけるそれらの用途に関する。特に、本発明は、動物またはヒト起源の酵素を使用するバイオミメティックアプローチによる、2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸、およびセレノメチオニン前駆体、特にL(+)−セレノメチオニン前駆体として、2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸から誘導される、その塩類、エステル類およびアミド類の合成に関する。
【0003】
セレンは、特にヒトおよび哺乳動物にとって、微量栄養素必須成分である(Wendel,A.;Phosphorus、Sulfur Silicon Relat Elem.;1992;67、1−4、405−415)。セレンは、セレノタンパク質の生合成、たとえば、グルタチオン過酸化酵素、およびチオレドキシン還元酵素とセレノタンパク質との生合成に、L(+)−セレノシステインまたはL(+)−セレノメチオニンの形で関与する(Muller,S.ら;Arch.Microbiol.、1997;168;421)。FDA−RDAs、第10編、1989(Selenium:its molecular biology and role in human health;Hatfield,D.L.編;2003;Kluwer Acad.出版;改訂版;299−31)によれば、ヒトが1日に必要とするセレンの量は、子供で10〜30μg、青年期成人で40〜70μgの間でばらついており、特に、これらの割合は、妊娠中(65μg/日)および授乳中(75μg/日)の女性では、より高くなる。授乳中の女性に関して、L(+)−セレノメチオニンの追加量(セレンに換算して2.7μモル)は、乳汁中のセレン濃度を顕著に増加させる(McGuire,M.K.ら;Am.J.Clin.Nutr.;1993;58;5;649)。
【0004】
ヒトはL(+)−セレノメチオニンに関して栄養要求性であり、このことは、ヒトはそれを合成することができないということを意味する。したがって、それを摂取する唯一の手段は、食料を介してである。理想的には、セレンをその自然な形で、換言すると有機体の形で吸収すべきである。しかし、セレンの数種の形態、すなわち、セレン酸ナトリウムのような無機セレン、およびL(+)−セレノメチオニンのような有機セレンが、補助食品としても使用可能である。植物(特に、コムギ、コーンおよびマメ)中の全有機セレンの80%を超える割合が、L(+)−セレノメチオニンで構成されていることが知られているので、このアミノ酸が、最も適正で最も毒性のないセレンの形態であり、動物またはヒト補助食品としてはセレン酸ナトリウムより優れている(Schrauzer,G.N.;J.Am.Coll.Nutrit.;2001;20;1;1−4)。L(+)−セレノメチオニンの生体利用性は良好であり、セレン酸ナトリウムより非常に優れた耐性を示す(Mony,MCら;J.of Trace Elem.Exp.Med.;2000;13;367−380)。
【0005】
L(+)−セレノメチオニンは、その分子構造において、セレンの存在に起因する抗酸化特性を有する(Tapiero Hら;Biomed.Pharmacother.;2003;57;3−4;134−144)。L(+)−セレノメチオニンは、有害作用が細胞死を起こす、炎症疾患状況の全てで生成する、過酸化亜硝酸および非常に毒性のある代謝物を極めて効果的に捕捉することが示されている(Assman,A.ら;Arch.Biochem.Biophys.;1998;349;201−203)。
【0006】
セレン補助食品は、多くの状況(栄養欠乏症、疾患、放射線曝露、その他)で非常に好都合であることが証明された。フェニルケトン尿症や高フェニルアラニン血症のような遺伝子病を患う子供達は低タンパク食を取っているので、このことは、特にこれらの子供達に当てはまる(Reilly,C.ら;Am.J.Clin.Nutr.;1990;52;150−165)。ビタミン類に関連するL(+)−セレノメチオニンのような有機形態のセレンは、ヒトへのUV放射に関し、保護効果を有する(La Rucheら;Photodermtol.Photoimmunol.Photomed.;1991;8;6;232−235)。L(+)−セレノメチオニンは、高エネルギー電離放射線の有害な生物学的影響から保護する(Kennedy,ARら;Free Rad.Biol.Med.;2004;36;2;259−266)。
【0007】
さらに、数種の有機セレン誘導体は、ヒトのあるタイプの癌の予防に効果的である。この点に関して、L(+)−セレノメチオニンは、p53腫瘍抑制因子に媒介されるDNA修復系の活性を起こし、その結果、体細胞における突然変異の蓄積を減少させる(Seo,YRら;PNAS;2002、89;22;14548)ことが示されている。ヒトに200μg/Se/日までのL(+)−セレノメチオニンを補うことによって、肺癌、大腸癌、および前立腺癌のような癌の発症率を極めて大幅に減少させることも示されている。癌の発症率におけるセレンの効果を評価した試験では、合計八人の患者のうち七人の患者が肯定的な結果を得た(Whanger、PD;Br.J.Nutr.;2004;91、1、11−28)。これは、動物で行われた多くの研究で確認されている。
【0008】
いくつかの数少ないセレノヒドロキシ酸誘導体は、すでに、有機誘導体の製造において、合成中間体として記載されている。それらは殆どアリールセレノヒドロキシ酸誘導体である。たとえば、これは、2−ヒドロキシ−4−フェニルセレノ酪酸のメチルエステルに関する事例である(J.−G.Boiteau、Organic Letters、2001、3(17)、1737−2740)。さらに、2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸のセレンオキシドも、L(+)−セレノメチオニンの酸化分解の中間体として提案されている(Gammelgaard,B.ら;Talenta;2003;59;1165−1171)。
【0009】
驚くべきことに、2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸それ自身、その塩、そのエステル、およびアミド誘導体は公知ではない。アリールセレノヒドロキシ酸誘導体とは異なり、これら後者の化合物は、セレノメチオニンの可能性のある前駆体を代表するかもしれない。酵素的または化学的変換の後、2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸、その塩、そのエステル、およびアミド誘導体は、以下の変換によって、最終的に加水分解して、セレノメチオニンになりうる。
【0010】
【化1】

【0011】
さらに、2−ヒドロキシ−4−メチルスルホ酪酸は、食品用のメチオニン前駆体としても公知である(国際公開第96/36598号パンフレット;1996年11月21日)。
【0012】
本発明の目的の一つは、セレンを含む新規な化合物であって、ヒトまたは動物に投与した後、セレノメチオニンの前駆体になり得、したがって、生物体のためのセレン源になり得る化合物を創造することである。本発明による化合物は、組織または細胞の内部に浸透し、生物学的変換してセレノメチオニンまたは誘導体となり、セレンが生物体のタンパク質に入り込むことになる。
【0013】
これらの目的は、動物またはヒト細胞中に存在する酵素によって生物学的変換され、セレノメチオニンを産生する、新規なセレノヒドロキシ酸誘導体、それらのエステル類およびアミド類の設計に基づく本発明によって達成される。このことは、本出願人により、例示されたものである。
【特許文献1】国際公開第96/36598号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、
1)セレノメチオニン前駆体として、新規なセレノヒドロキシ酸類、エステルおよびアミド誘導体を提供し、栄養組成物、化粧品組成物および医薬組成物の活性構成成分を形成することで、新しい技術的問題を解決すること、
2)これらの新規な誘導体を調製する方法を含む解決手段を使用する、新規な技術的問題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記技術的問題は、本発明によって、非常に簡単で経済的な方法で、初めて同時に解決され、前記新規な誘導体の製造方法は、高収率で、非常に簡便に実施される。
【0016】
本発明の第一態様によれば、その目的とするものは、一般式(I):
【0017】
【化2】

【0018】
(式中、
n=0、1または2であり、
1=OH、OCOR3、OPO32、OPO(OR4)(OR5)またはOR6であり、
2=OH、R3またはNHR7であり、
3=アルコキシル(C1−C26)、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6aおよび6b、S−システイニルまたはS−グルタチオニル、または、
【0019】
【化3】

【0020】
であり、
OR4=アルコキシル(C1−C26)、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6aまたは6b、
【0021】
【化4】

【0022】
であり、
OR5=アルコキシル(C1−C26)、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6aまたは6b、
【0023】
【化5】

【0024】
であり、
OR6=ピルビン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、パルミトレイン酸塩、オレイン酸塩、リノール酸塩、天然脂肪酸または13−cisレチノイン酸塩であり、
7=H、アルキル、天然アミノ酸類または天然アミン類であり、
ただし、n=1およびR2=OHの場合、R1はOHではない)で表される、新規なセレノヒドロキシ酸類である。
【0025】
本発明は、全ての、特にR1基を有するセレンおよび炭素原子に関する、およびラジカルR1〜R7に関する、位置異性体、幾何異性体、立体異性体、ジアステレオ異性体およびエナンチオマーを包含し、本発明によって記載されたセレノヒドロキシ酸誘導体の二個または数個の分子の間で、アルコール官能基およびカルボン酸官能基との間のエステル化反応によって得られる、オリゴマー(二量体、三量体その他)および直鎖または分岐状の、非環状または環状ポリマーの全てを包含し、これらは個別にまたは混合物として存在してもよい。
【0026】
また、本発明は、一般式(I)で表される前記化合物の、医薬的に許容し得る酸および塩基の付加塩の全て、特にナトリウム塩、カルシウム塩、およびマグネシウム塩を包含する。
【0027】
一般式(I)で表される化合物の中でも、本発明は、特に、一般式(I)で表される以下に記載の化合物を対象とする。
−nが0であることを特徴とする化合物、
−R1が、OH、OCOR3、OR6を表すことを特徴とする化合物、
−R2が、OH、NHR7、グリセロイル、モノアシルグリセロイル、ジアシルグリセロイル、コエンザイムQ、レチノイル、コレステロイル、α−トコフェロイル、カルニチノイル、スフィンガニン、スフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6aおよび6b、アスコルビン酸塩、S−システイニルおよびS−グルタチオニルからなる群から選択され、R7は、上記に規定のとおりであることを特徴とする化合物、
−実験室で調製された化合物、特に(D,L)−、L−およびD−2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸。
【0028】
医薬的に許容し得る酸として、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、酒石酸、またはリン酸のような鉱酸;ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、シュウ酸、グリオキシル酸またはアスパラギン酸のような有機酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸およびエタンスルホン酸のようなアルカンスルホン酸;ベンゼンスルホン酸およびパラトルエンスルホン酸のようなアリールスルホン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
医薬的に許容し得る塩基として、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アンモニウムまたは水酸化亜鉛のような鉱物塩基;ナトリウム、リチウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、アンモニウムまたは亜鉛の炭酸塩および炭酸水素塩のようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩;メチルアミン、プロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、エタノールアミン、ピリジン、ピコリン、ジシクロヘキシルアミン、モルホリン、プロセイン、リジン、アルギニン、ヒスチジンおよびN−メチルグルカミンのような有機塩基;またはアルキルホスホニウム塩類、アリールホスホニウム塩類、アルキル−アリールホスホニウム塩類、アルケニル−アリールホスホニウム塩類のようなホスホニウム塩類;またはテトラ−n−ブチルアンモニウム塩のような第四級アンモニウム塩類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
前記式(I)において、
−アルキルとは、1〜26個の直鎖または環状、場合によっては分岐状の、フッ素化あるいはポリフッ素化されてもよい炭素原子を含む基であって、一個または数個の二重炭素−炭素結合を含んでもよい基を言い、たとえば、メチル、エチル、イソプロピル、トリフルオロメチル、リノレイル、リノレニル、パルミトイルが挙げられ、
−アルコキシルとは、1〜26個の直鎖または環状、場合によっては分岐状の、フッ素化あるいはポリフッ素化されてもよい炭素原子を含む第一、第二、第三アルコールから誘導される基であって、一個または数個の二重炭素−炭素結合を含んでもよい基を言い、たとえば、メトキシル、エトキシル、イソプロポキシル、トリフルオロメトキシル、リノレオキシル、リノレノキシル、パルミトキシルが挙げられ、
−セラミド型ラジカル構造とは、特に、「Cosmetic Lipids及びthe Skin Barrier」Thomas Forster編、2002、Marcel Dekker社、第2頁、図2に記載されているものであり、
−天然とは、動植物界からの有機体の代謝およびヒトにおいて存在する任意の対応化合物(Steglich W.、Rompp Encyclopedia Natural Products、G.Thiemne編)を言い、
−オリゴマーとは、連続した2〜15個のモノマーが、エステル型結合を介して互いに結合して構成される任意の化合物を言い、
−ポリマーとは、連続した15個を超えるモノマーが、エステル型結合を介して互いに結合して構成される任意の化合物を言う。
【0031】
本発明の他の目的とするものは、添付の図1に記載の、一般式(I)で表される、新規なセレノヒドロキシ酸、およびそれらのエステルおよびアミド誘導体を調製する方法であって、以下に記載の工程、
【0032】
1)(D,L)−2−R1−ブチロラクトンまたはそのエナンチオマー(DまたはL)のいずれか一つ(式中、R1は上記に規定のとおりである)と、
【0033】
−式(IIa)
CH3−Se-+ (IIa)
(式中、Mはアルカリ金属原子を表す)で表されるアルカリ性メチルセレノラート塩との反応により、アルカリ塩の形態の式(Ia):
【0034】
【化6】

【0035】
(式中、MおよびR1は上記に規定のとおりである)で表される化合物を得る;または
−式(IIb)
HSe-+ (IIb)
(式中、Mはアルカリ金属原子を表す)で表されるアルカリ性セレン試薬との反応により、アルカリ塩の形態の式(III):
【0036】
【化7】

【0037】
(式中、MおよびR1は上記に規定のとおりである)で表される化合物を得る;または
−式(IIc)
MSeX (IIc)
(式中、Mは先に規定するとおりであり、XはCNラジカル、SO3Mまたはアリール−SO2Mを表す)で表されるアルカリ性セレン試薬との反応により、アルカリ塩の形態の式(IIIa):
【0038】
【化8】

【0039】
(式中、M、R1およびXは上記に規定のとおりである)で表される化合物を得る;あるいは
−式(IId)
MSeSeM (IId)
(式中、Mは上記に規定のとおりである)で表されるアルカリ性セレン試薬との反応により、アルカリ塩の形態の式(IIIb):
【0040】
【化9】

【0041】
で表される化合物を得;
式(IIIa)または(IIIb)で表される中間化合物を還元剤で処理して、式(III)
【0042】
【化10】

【0043】
で表される化合物を得;
次いで、式(III)で表される化合物を、式(IV):
CH3−Y (IV)
(式中、Yは、ハロゲン原子、またはOSO2CH3、OSO2−p−トリルあるいはOCO2CH3基を表す)で表されるメチル化剤で処理して、前記式(Ia)
【0044】
【化11】

【0045】
で表される化合物を得る工程と、
2)必要に応じて、以下に記載の反応:
−反応媒体の酸性化により、式(I)に対応する酸を得ること、
−式(I)で表される酸、または式(Ia)で表されるアルカリ塩と、アルコールまたはアルキルハライドとのエステル化により、一般式(I)(式中、R2=R3であり、上記に規定したとおりである)で表される化合物を得ること、
−式(I)で表される酸または式(Ia)で表されるアルカリ塩と、式R7NH2(式中、R7は上記に規定したとおりである)で表される適切なアミンとのアミド化により、式(I)(式中R2=NHR7であり、上記に規定したとおりである)で表される化合物を得ること、
−R1=OHの時、適切な酸による水酸基のエステル化により、一般式(I)(式中、R1はOH基ではない基である)で表される化合物を得ること、
−酸化反応により、セレンオキシドまたはセレノン誘導体とし、一般式(I)(式中、nは1または2である)で表される化合物を得ること、
−酸または塩基により塩にすること
の一つまたはいくつかの反応、または連続した反応工程
の少なくとも一つを含むことを特徴とする方法である。
【0046】
本発明による方法の好ましい実施形態の一つによれば、求核セレン試薬は以下の化合物
*その場で生成しうるメチルセレノラート塩、
*たとえばテトラヒドロフラン(THF)のような非プロトン性溶媒中でセレン金属Se(0)およびアルキル塩から生成しうるメチルセレノラート塩、
*たとえばTHFのような非プロトン性溶媒中、たとえば水素化ホウ素ナトリウムのような還元剤の存在下、ジメチルジセレニド(CH3Se)2から生成しうるメチルセレノラート塩、
*その場で生成しうる、セレノシアン酸カリウムのようなセレノシアン酸塩、
*セレン金属Se(0)と、たとえばシアン化カリウムのようなシアン化塩とから生成しうるセレノシアン酸塩、
*そのような溶媒に加えられたセレノシアン酸塩、
*たとえばナトリウムまたはリチウムセレニドまたはリチウムジセレニドのようなセレニド塩またはジセレニド塩、
*たとえばセレノ硫酸ナトリウムのようなセレノ硫酸塩
のいずれかである。
【0047】
非プロトン性極性溶媒として、たとえばTHFが使用される。
【0048】
式(IIIa)または(IIIb)で表される化合物と反応させる還元剤として、アルカリ性ホウ水素化物が好ましい。
【0049】
酸性化、エステル化、アミド化、酸化または塩化である、式(I)で表される異なる化合物に導く後続の反応は、当業者に公知の条件下で行われる。
【0050】
特に、本発明の目的とするものは、2−ヒドロキシブチロラクトンを出発点とすることを特徴とする、上記に規定した方法である。
【0051】
2−R1−ブチロラクトンは、当業者に公知の条件下で、2−ヒドロキシブチロラクトンのエステル化によって得る。
【0052】
上記に規定した、式(III)、(IlIa)および(IIIb)で表される中間化合物は、新規であり、したがって本発明に含まれる。
【0053】
本発明の他の目的とするものは、前記方法に記載された式(I)で表される2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ−酪酸、または式(Ia)で表されるそのアルカリ塩類の一つから出発する、L−(+)−セレノメチオニンの調製方法である。この態様を通して、出願人は、一般式(I)で表される化合物の、L−(+)−セレノメチオニンの前駆体として作用する能力を、直接的にまたは酵素的または非酵素的加水分解後に示す。
【0054】
この新規な方法の革新的本質は、該方法の第一部の合成的化学的アプローチと、第二部の、酵素、もし可能なら特に哺乳動物酵素を使用するバイオミメティックアプローチとの組み合わせからなる。
【0055】
該方法は、以下の必須の工程を含む。
1)前記方法に記載された、式(I)で表される2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ−酪酸または式(Ia)で表されるそのアルカリ塩の一つを、たとえばアルコール脱水素酵素のような酸化−還元酵素型酵素による酸化処理、または適切な酸化試薬による作用に基づく化学的方法による酸化処理により、式(V):
【0056】
【化12】

【0057】
で表される、対応するケト酸を得る工程;
2)アミノ酸トランスアミナーゼのような、トランスアミナーゼを使用する酵素的方法による、または還元アミノ化条件下での化学的な方法による式(V)で表される化合物のアミノ基転移反応によって、L−(+)−セレノメチオニンを得る工程。
【0058】
これら二種の酵素反応は、式(V)で表される中間化合物の単離が可能なら、これを分離してもよいし、あるいはL−(+)−セレノメチオニンを直接「ワンポット」で得てもよい。特に酸化−還元酵素型の酵素は、アルコール脱水素酵素でもよい。特に、トランスアミナーゼはアミノ酸トランスアミナーゼである。この目的に特に重要な、L(+)−セレノメチオニンの分解反応によって得られる、2−ケト−4−メチルセレノ酪酸のアミノ基転移反応は、C.Blarzinoらによって記載され、ウシの肝臓を出発成分とする精製グルタミントランスアミナーゼを使用する(Biochem.Mol.Biol.Int.;1994;32、1、79−86)。
【0059】
2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸の化学的酸化は、特に、スルホニウムジメチル塩酸塩型の試薬[(Me)2ClS+,Cl-]を使用して行われ、式(V)で表される化合物のアミノ基転移反応は、当業者に周知の還元アミノ化条件下で化学的に行われる。
【0060】
本発明の別の目的とするものは、ヒトまたは動物における、一般式Iで表される化合物、およびそれらの塩のセレノメチオニン、特にL(+)セレノメチオニンおよび/またはセレン源としての用途である。
【0061】
特に、これは、一般式(I)で表される前記化合物の、以下に示す用途を意味する。
−直接的にまたはインビボ酵素加水分解後のL−(+)−セレノメチオニン前駆体;
−セレンの部分的なまたは全体的な欠乏を補足するためのセレン源;
−ヒトまたは動物(特に、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコ、および家禽類)食品用の栄養組成物を製造するための補助食品または添加物;
−化粧品組成物を製造するための成分;
−全ての生理病理学的状態を予防および治療するために特に適用される医薬組成物であって、L−(+)−セレノメチオニン単独または抗癌剤とともに投与される補足物が、好都合であることが証明されている医薬組成物を製造するための活性構成成分であって、特に、以下を含む。
*前立腺癌、肺癌、大腸癌、および皮膚癌のような癌の予防および治療;
*UVまたは放射線照射の影響の予防および治療;
*特に炎症性病変の場合のような、過酸化亜硝酸、非常に毒性の強い一酸化窒素NOの代謝物の産生過剰に関連する病変の予防および治療;
さらに、
−たとえば、特に、毒性抗腫瘍剤を使用する場合のような、その毒性および/または治療効果を調整するための薬品活性構成成分への添加剤。
【0062】
本発明の特定の目的とするものは、先に記載した用途であって、一般式(I)で表される化合物またはその塩が、ヒトまたは動物の食品用の補助食品または添加物の形態で存在することを特徴とする用途である。
【0063】
本発明の別の目的とするものは、一般式(I)で表される化合物およびそれらの医薬的に許容し得る塩類の、医薬組成物を製造するための活性構成成分としての用途、または一般式(I)で表される化合物およびそれらの塩類の、化粧品組成物を製造するための成分としての用途であって、使用される前記化合物が、一般式(I)に対応する一般式(I’)
(式中、
n=0、1または2であり、
1=OCOR3、OPO32、OPO(OR4)(OR5)またはOR6であり、
2=R3またはNHR7であり、
3=セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6aおよび6b、S−システイニルまたはS−グルタチオニル、または
【0064】
【化13】

【0065】
であり、
OR4=アルコキシル(C1−C26)、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6aまたは6b、
【0066】
【化14】

【0067】
であり、
OR5=アルコキシル(C1−C26)、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6aまたは6b、
【0068】
【化15】

【0069】
であり、
OR6=ピルビン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、パルミトレイン酸塩、オレイン酸塩、リノール酸塩、天然脂肪酸または13−cisレチノイン酸塩であり、
7=H、アルキル、天然アミノ酸類または天然アミン類である)に属することを特徴とする用途である。
【0070】
また、一般式(I’)で表される前記化合物も本発明の対象の一つである。
【0071】
本発明の別の特定の目的とするものは、一般式(I)で表される化合物およびそれらの塩類の、栄養組成物を製造するための成分として用途であり、使用される前記化合物が、一般式(I)に対応する一般式(I’’)
(式中、
n=0、1または2であり、
1はOHであり、
2=OHまたはR3であり、
3はアルコキシル(C1−C26)であり、
ただし、nが1でありR1がOHの場合、R2はOHではない)に属することを特徴とする用途である。
【0072】
また、一般式(I’’)で表される前記化合物も本発明の目的の一つである。
【0073】
本発明の別の目的とするものは、一般式(I)で表される化合物を、活性構成成分または添加物、補足物として含む、栄養組成物および/または化粧品組成物および/または医薬組成物である。
【0074】
本発明のこの態様によれば、一般式(I)で表される化合物を、0.0001と0.1重量%との間で変化する量で使用するのが好ましい。
【0075】
さらに有利には、本発明のこの態様によれば、栄養組成物においては、一般式(I)で表される化合物を、製剤の0.0001〜0.01重量%の量で使用するのが好ましい。
【0076】
さらに有利には、本発明のこの態様によれば、化粧品組成物においては、一般式(I)で表される化合物を、製剤の0.001〜0.1重量%の量で使用するのが好ましい。
【0077】
さらに有利には、本発明のこの態様によれば、医薬組成物においては、一般式(I)で表される化合物を、製剤の0.001〜0.1重量%の量で使用するのが好ましい。
【0078】
本発明のこの態様によれば、栄養組成物、化粧品組成物および医薬組成物は、一般式(I)で表される化合物の少なくとも一種と、それぞれ、栄養学的に、化粧料上、および医薬的に許容し得る媒体とを含む。特に、これらの媒体は以下のものからなる。
*水溶液またはアルコール溶液、油剤
*水/油または油/水乳化剤、マイクロエマルジョン
*水性ゲル
*小胞、マイクロカプセル、マイクロ−またはナノ−粒子の分散物
*ビタミン類、天然の抗酸化剤、鉱物塩類、単糖類、二糖類または、多糖類、特に、葉酸、ビタミンB6、EまたはC、ラクトース、デンプンの中から選択されてもよい、一種または数種の賦形剤から構成される固形媒体(一種または数種の、上記に規定した賦形剤で構成され、一般式(I)で表される化合物の少なくとも一種を含むこの固形媒体は、カプセル、錠剤または粉剤の形で処方されてもよい。)
【0079】
これらの媒体は、単に説明の目的で提供したもので、限定的な例示ではなく、したがって、本発明の範囲をいかなる方法でも限定するものではなく、また、たとえば、食用ミルク、フルーツジュース、シロップ、また乳幼児用ミルクのような栄養液体、非経口溶液、食卓塩、セレンを調整した補足物を含む任意の一般的な食品であってもよい。
【0080】
本発明のこの態様によれば、活性構成成分、補足物または添加物として、一般式(I)で表される化合物の少なくとも一種を含む栄養組成物、化粧品組成物および医薬組成物は、病状に合わせて、経口的に、非経口的に、局所的に(経皮的、経鼻的、経眼的を含む)、または吸入によって投与してもよい。一般式(I)で表される化合物以外のこれらの組成の異なる構成成分の量は、記載した用途に通常使用される量でよい。
【0081】
特に、本発明の目的とするものの一つは、前記一般式(I’)で表される化合物の少なくとも一種を、活性構成成分または添加物、補足物として含む化粧品組成物および医薬組成物である。
【0082】
最後に、本発明の別の対象は、前記一般式(I’’)で表される化合物の少なくとも一種を、活性構成成分として含む栄養組成物である。
【0083】
以下に記載する実施例および添付の本発明による方法のスキームは、単なる説明のためにあげたものであり、いかなる方法においても本発明の範囲を限定するものではない。
【0084】
別段の記載がない限り、全ての反応は、不活性アルゴンガス雰囲気下で行う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0085】
実施例1:L−2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸の調製
メチルリチウムのエーテル(1.6M)溶液5.6mL(9mmol)を、0℃で、645mg(8.2mmol)のセレンを含む30mLの無水THF懸濁液に滴下する。懸濁液は、先ず、暗褐色になり、続いて赤みを帯び、添加の終了時には透明の均質な無色溶液が得られる。0℃で15分撹拌後、0.77mL(1.0g、9.8mmol)のS−(−)−α−ヒドロキシブチロラクトンを加える。白色沈殿物が素早く形成する。0℃で15分撹拌を続け、次いで、反応混合物を周囲温度まで暖める。周囲温度で24時間、40℃で24時間放置後、該均質混合物を5℃まで冷却する。沈殿物をろ過し、次いで、25mLのジエチルエーテルで4回洗浄する。1.05gの白色粉末を得る。この化合物を、20mLのNaOHに溶解し、得られた溶液を25mLのジエチルエーテルで4回洗浄する。次いで、水相を濃HClでpH=1に酸性化し、次いで、25mLのジクロロメタンで10回抽出する。乾燥(Na2SO4)、ろ過、蒸発の後、所望の化合物を、890mg(55%)、純度約90〜95%(1H−RMN,CDCl3)で、冷却すると結晶となる無色油状物として得る。粗生成物を5mLのトルエンで再結晶し、L−2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸を、636mg(40%)、純度約93〜95%(1H−RMN,CDCl3)で、無色粉末状として得る。
1H−RMN(CDCl3,300MHz):
((ppm)=2.02(s,3H);2.08(m,1H);2.22(m,1H);2.70(m(sym.),2H);4.41(dd,J=8Hz,J=4Hz,1H,(−H)。
低強度シグナルは、((ppm)=2.60(m);4.25(m);4.50(m)で測定する。
f(SiO2,シクロヘキサン/酢酸エチル,50/50+1% CF3COOH):0.26。
【0086】
【化16】

【0087】
実施例2:L−2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ−酪酸ジシクロヘキシルアンモニウムの調製
実施例1で記載した先の化合物、600mg(3mmol)を、4mLのジエチルエーテルに溶解し、1.2mL(6mmol)のジシクロヘキシルアミンを滴下する。無色沈殿物が直ちに形成し、それをろ過し、20mLのジエチルエーテルで2回洗浄した。5mLの酢酸エチル/シクロヘキサン混合物(50/50)による再結晶の後、所望の化合物を、750mg(66%)、純度>98%(1H−RMN,CDCl3)で、無色結晶の形で得る。
1H−RMN(CDCl3,300MHz):
((ppm)=1.18−2.20(m,22H);2.00(s,3H,SeCH3);2.38(m,2H);2.97(m,2H);3.94(dd,J=8Hz,J=4Hz,1H,(−H)。
13C−RMN(CDCl3,75.5MHz):
((ppm)=3.9;21.5;24.7;25.1;29.2;30.9;36.2;52.7;71.6;178.6。
MS(エレクトロスプレー):m/z(%)=182(NH2(シクロ−ヘキシル)2+
m/z(%)=197(CH3SeCH2CH2CHOHCO2-)。
【0088】
【化17】

【0089】
実施例3:L−2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸の調製
750mg(2mmol)の実施例2で記載された先の化合物を10mLの水に可溶化し、濃HClでpH=1まで酸性化し、20mLのジエチルエーテルで8回抽出することによって、L−2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸を無色結晶の形で得る。乾燥(Na2SO4)、ろ過および蒸発後、365mgの所望の化合物を無色結晶の形で、純度>98%(1H−RMN,CDCl3)で得る。
pF(℃):47.4−48.0。
1H−RMN(CDCl3,300MHz):
((ppm)=2.02(s,3H,SeCH3);2.08(m,1H);2.22(m,1H);2.70(m(sym.),2H);4.43(dd,J=8Hz,J=4Hz,1H,α−H)。
13C−RMN(CDCl3,75.5MHz):
((ppm)=4.1;20.3;33.9;69.9;177.3。
MS(エレクトロスプレー):m/z(%)=197(CH3SeCH2CH2CHOHCO2-)。
f(SiO2,シクロヘキサン/酢酸エチル,50/50+1% CF3COOH):0.26。
[(]D=−20.5+/−1(c=1,EtOH)。
【0090】
【化18】

【0091】
実施例4:D−2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸の調製
リチオメチルセレノラートの溶液に0.76mL(1.0g、9.8mmol)のR−(+)−α−ヒドロキシブチロラクトンを加えた以外は、無色結晶の形で、収率57%の「L」エナンチオマーを得た実施例1に記載の方法を使用して、D−2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸を得る。
pF(℃):46.0−47.0℃。
1H−RMN(CDCl3,300MHz):
δ(ppm)=2.02(s,3H,SeCH3);2.08(m,1H);2.22(m,1H);2.70(m(sym.),2H);4.41(dd,J=8Hz,J=4Hz,1H,(−H)。
13C−RMN(CDCl3,75.5MHz):
((ppm)=4.1;20.3;34.0;69.9;178.6。
MS(エレクトロスプレー):m/z(%)=197(CH3SeCH2CH2CHOHCO2-)。
[(]D=18.9+/−1(c=1,EtOH)。
【0092】
【化19】

【0093】
実施例5:D,L−2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸の調製
0.76mL(1.0g、9.8mmol)のラセミα−ヒドロキシブチロラクトンを、リチオメチルセレノラートの溶液に加えた以外は、実施例1に記載の方法を使用して、D,L−2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸を得る。粗生成物をトルエンで再結晶して、D,L−2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸を、純度>98%(1H−RMN,CDCl3)で、ややベージュがかった粉末の形態で得る。
pF(℃):49.3−49.9。
1H−RMN(CDCl3,300MHz):
((ppm)=2.02(s,3H,SeCH3);2.08(m,1H);2.22(m,1H);2.70(m(sym.),2H);4.41(dd,J=8Hz,J=4Hz,1H,(−H)。
13C−RMN(CDCl3,75.5MHz):
((ppm)=4.1;20.3;34.0;69.9;178.6。
MS(EI,70eV):m/z(%)=198(M+,80);123(40);103(60);103(60)。
f(SiO2,シクロヘキサン/酢酸エチル,50/50+1% CF3COOH):0.26。
【0094】
【化20】

【0095】
実施例6:D,L−2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸(10g−スケール)の合成
メチルリチウム(1.6M;60ml)のエーテル性溶液を、氷−塩浴中、アルゴン雰囲気下で−6℃(内部温度)に冷却された、セレン(6.45g、81.7mmol)を含む黒色の無水テトラヒドロフラン(300ml)懸濁液に、40分かけて滴下した。添加中、内部温度は、0℃未満に保たれていた。少量の白色沈殿物がフラスコの側面に析出し、それを追加の無水THF(30ml)を使用して洗浄した。20分後、2−ヒドロキシブチロラクトン(7.64ml、98.0mmol)を加えると、沈殿が起こり、ミルク状の黄色混合物を形成した。さらに10分後、氷浴を取り除き、反応容器を密閉した。室温で22時間撹拌後、反応混合物を35℃(内部温度)まで加熱し、さらに23時間撹拌した。反応物を室温まで放冷し、ついで、さらに氷浴で冷却した。混合物をろ過し、固体をTBME(3×100ml)で洗浄した。黄色固体を水(500ml)に溶解し、溶液のpHを水酸化ナトリウムの水溶液(2N;約1ml)を使用して、pH=10に調整した。水相をTBME(200ml)で洗浄し、次いで濃塩酸を使用して、酸性化(pH=1)した。有機物質をTBME(4×200ml)で抽出し、有機抽出物を集め、乾燥(Na2SO4)し、ろ過し、溶媒を減圧下除去すると、D,L−2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸(12.14g、75%)が黄色油状物として残り、これを冷却して凝固し、薄黄色固体とした。1H−NMR(CDCl3)は、先の実施例5で得られたものと一致している。
【0096】
【化21】

【0097】
実施例7:D,L−2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ−酪酸ナトリウムの合成
アルゴン雰囲気で撹拌した水素化ナトリウム(84.6mg;鉱物油中60%)と無水THF(2.0ml)との混合物に、D,L−2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸(0.4244g、2.15mmol)を含む無水THF(2.0ml)溶液を5分かけて滴下した。滴下中、溶液を激しく泡立たせた。添加の終点で、少量の白色沈殿物とともに黄色溶液を得た。混合物を氷浴中で冷却し、これにシクロヘキサン(3ml)を加えると、黄色沈殿物が形成された。該黄色固体を集め、シクロヘキサン(3ml)およびTBME(3×3ml)で洗浄し、減圧下乾燥すると、酸(0.3780g、1.73mmol、82%)のナトリウム塩が残った。
1H−NMR(D2O,300MHz):
((ppm)=1.80−2.07(m,5H);2.45−2.60(m,2H);4.00(dd,J=4Hz及び8Hz,1H;(−H)。
追加シグナル:1.12(s);3.12(s)。
13C−NMR(D2O,75.5MHz):
((ppm)=3.3;20.3(CH2);34.7(CH2);72.0;180.9(C=O)。
【0098】
【化22】

【0099】
実施例8:D,L−2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ−酪酸カルシウムの合成
D,L−2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸(0.4540g、2.30mmol)を含む薄黄色の水(0.9ml)溶液に、水酸化カルシウム(81mg、1.09mmol)を加えた。添加後、大量の未溶解物質が存在した。該混合物を水(1.1ml)で希釈し、ろ過によって固体を集め、水(3×2ml)およびジエチルエーテル(3×2ml)で続けて洗浄した。固体を減圧下に乾燥すると、所望のカルシウム塩(87.7mg、0.20mmol、19%)が白色固体として残った。
1H−NMR(D2O,300MHz):
((ppm)=1.88−2.13(m,5H);2.50−2.68(m,2H);4.11(dd,J=4Hz及び7Hz,1H;(−H)。
追加シグナル:1.12(s);3.12(s)。
【0100】
【化23】

【0101】
実施例9:D,L−2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸エチルの合成
ホウ酸(21.1mg、0.34mmol)を、アルゴン雰囲気で撹拌したD,L−2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸(0.3225g、1.64mmol)を含む無色の無水エタノール(6.5ml)溶液に加えた。室温で25時間撹拌した後、反応混合物を加熱し、還流させながらさらに20時間撹拌した。TLCが、反応が完了していないことを示し、追加のホウ酸(20.9mg、0.34mmol)を加え、反応物を還流しながらさらに4日間撹拌した。反応混合物を室温まで放冷し、溶媒を減圧下除去すると、薄黄色液体が残った。炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液(20ml)および水(20ml)を加え、有機物質をジエチルエーテル(3×40ml)で抽出した。抽出物を集め、乾燥(Na2SO4)し、ろ過し、溶媒を減圧下除去すると、所望のエチルエステル(0.3340g、1.48mmol、91%)が薄黄色液体として残った。
1H−NMR(CDCl3,300MHz):
((ppm)=1.30(t,J=7Hz,3H,CH2CH3);オーバーラッピング 2.02(s,3H,SeCH3)及び1.92−2.08(m,1H);2.08−2.22(m,1H);2.59−2.76(m,2H);2.86(d,J=5Hz,1H,OH);オーバーラッピング 4.25(q,J=7Hz,2H,CH2CH3)及び4.22−4.32(m,1H,(−H)。
13C−NMR(CDCl3,75.5MHz):
((ppm)=4.1;14.2;20.3;34.7;61.9;69.9;174.8。
MS(EI,70eV):m/z(%)=226(M+,23);181(8);153(7);131(40);123(9);109(23);103(27);85(21);76(17);57(100);41(13)。
f(SiO2,酢酸エチル/シクロヘキサン,50/50+1% CF3CO2H):0.61(リンモリブデン酸で染色)。
【0102】
【化24】

【0103】
実施例10:D,L−2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸イソプロピルの合成
ホウ酸(42.9mg、0.69mmol)を、アルゴン雰囲気下で撹拌したD,L−2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸(0.3284g、1.67mmol)を含む無色の無水エタノール(7ml)溶液に加えた。反応混合物を加熱し、還流させながら3日間撹拌した。TLCが、反応が完了していないことを示し、追加のホウ酸(23.4mg、0.38mmol)を加え、反応物を還流させながら、さらに16時間撹拌した。反応混合物を室温まで放冷し、溶媒を減圧下除去すると、薄黄色液体(0.38g)が残った。炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液(20ml)および水(20ml)を加え、有機物質をジエチルエーテル(3×30ml)で抽出した。抽出物を集め、乾燥(Na2SO4)し、ろ過し、減圧下溶媒を除去すると、所望のイソプロピルエステル(0.3384g、1.41mmol、85%)が薄黄色液体として残った。
1H−NMR(CDCl3,300MHz):
((ppm)=オーバーラッピング 1.28[d,J=6Hz,3H,CH(CH32]及び1.28[d,J=6Hz,3H,CH(CH32];オーバーラッピング 2.01(s,3H,SeCH3)及び1.90−2.07(m,1H);2.07−2.21(m,1H);2.57−2.74(m,2H);2.87(d,J=5Hz,1H,OH);4.21−4.27(m,1H,(−H);5,10[septet,J=6Hz,1H,CH(CH32]。
13C−NMR(CDCl3,75.5MHz):
((ppm)=4.2;20.3;21.7;21.8;34.8;69.8;70.0;174.3。
MS(EI,7OeV):m/z(%)=240(M+,10);103(28);87(22);71(62);57(73);43(100)。
f(SiO2,酢酸エチル/シクロヘキサン,50/50+1% CF3CO2H):0.63(リンモリブデン酸で染色)。
【0104】
【化25】

【0105】
実施例11:D,L−2−アセトキシ−4−メチルセレノ酪酸の合成
無水酢酸(0.62ml、6.57mmol)を、アルゴン雰囲気で撹拌したD,L−2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸(0.3222g、1.63mmol)を含む無色の無水ジクロロメタン(27ml)溶液に加え、続けて触媒量のDMAPを加えた。6時間後、追加の無水酢酸(0.62ml、6.57mmol)を加え、反応物を一晩撹拌した。TLCが、反応が完了したことを示し、水(10ml)を加え、ジクロロメタンを減圧下除去した。塩化アンモニウム(40ml)の飽和水溶液を加え、有機物質をジエチルエーテル(3×40ml)で抽出した。抽出物を集め、乾燥(Na2SO4)し、ろ過し、溶媒を減圧下除去すると、粗薄黄色油状物(0.2954g)が残った。粗油状物を、酢酸エチル:シクロヘキサン(3:7)混合物と1%TFAとを溶離液として使用し、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製し、所望の酢酸塩(0.1436g、0.64mmol、40%)を無色の液体として、および該酢酸塩の純粋でない画分[0.1068g、TLCによる2スポット:Rf(SiO2、酢酸エチル/シクロヘキサン、50/50+1% CF3CO2H):0.52および0.65および追加ピーク、1H−NMR(CDCl3,300MHz):((ppm)=2.17(pseudo d);5.14−5.22(m)]を得た。
1H−NMR(CDCl3,300MHz):
((ppm)=2.01(s,3H);2.16(s,3H);2.19−2.27(m,2H);2.54−2.69(m,2H);5.16(t,J=6Hz,1H;(−H)。
13C−NMR(CDCl3,75.5MHz):
((ppm)=4.1;19.9;20.5;31.4;71.3;170.4及び175.1。
MS(EI,70eV):m/z(%)=240(M+,7);145(8);103(7);85(10);57(10);43(100)。
f(SiO2,酢酸エチル/シクロヘキサン,50/50+1% CF3CO2H):0.52(リンモリブデン酸で染色)。
【0106】
【化26】

【0107】
実施例12:D,L−2−リノレイルオキシ−4−メチルセレノ酪酸の合成
1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.1745g、1.29mmol)を、アルゴン雰囲気で撹拌したリノール酸(0.40ml、1.28mmol)を含む無色の無水DMF(27ml)溶液に加え、続けてHCTU(0.5322g、1.29mmol)を加えた。1時間後、D,L−2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸(0.2545g、1.29mmol)を含む無水DMF(2.4ml)溶液を加え、続けてDIEA(0.44ml、2.54mmol)を加えた。16時間後、反応は、完了したと判断された。溶媒を減圧下除去すると、オレンジ色の油状物(1.827g)が残った。粗油状物を、炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液(25ml)とジエチルエーテル(40ml)との間で分割した。層を分離し、水相をさらに、ジエチルエーテル(2×40ml)で洗浄した。エーテル性抽出物を集め、乾燥(Na2SO4)し、ろ過し、溶媒を減圧下で除去すると、粗白色ワックス状固体(0.719g)が残った。粗物質を、酢酸エチル/シクロヘキサン(3/7)混合物と0.1%TFAとを溶離液として使用し、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製し、リノール酸塩(0.0813g、0.18mmol、14%)を、赤みがかったオレンジ色油状物として得た。
1H−NMR(DMSO,300MHz):
((ppm)=0.83(t,J=7Hz,3H);1.16−1.36(m,15H);1.42−1.59(m;2H);オーバーラッピング 1.93(s,3H,SeCH3)及び1.91−2.10(m,6H);2.28−2.36(m,2H);2.47−2.59(m,2H);2.69−2.78(m,2H);4.91(dd,J=6Hz及び7Hz,1H,(−H);5.21−5.39(m,4H)。
13C−NMR(DMSO,75.5MHz):
((ppm)=3.4;13.9;19.8;21.9;24.3;25.2;26.6;28.3;28.4;28.7;28.9;30.8;31.1;33.2;71.1;127.7;129.7;170.9;172.4。
MS(IC,NH3):m/z=478(M+NH4+
f(SiO2,酢酸エチル/シクロヘキサン,30/70+1% CF3CO2H):0.53(KMnO4で染色)。
【0108】
【化27】

【0109】
実施例13:ジ−D,L−2−ヒドロキシ−4−酪酸ジセレニドの合成
乾燥した三口丸底フラスコに、アルゴン雰囲気下、温度計およびコンデンサーを取りつけ、セレン(1.3984g;17.7mmol)および水素化ホウ素ナトリウム(0.4606g;12.2mmol)を充填した。フラスコを氷浴で冷却し、無水エタノール(30ml)を加えると、添加中に激しいバブリングを伴って発熱反応が起こった。15分後、氷浴を取り除き、赤みがかった茶色の混合物を、針を介してアルゴンで脱ガスした。20分後、脱ガスを止め、混合物を還流しながら加熱した。2時間還流した後、2−ヒドロキシブチロラクトン(1.66ml;21.3mmol)を加え、混合物をさらに39時間還流し続けた。オレンジ色の溶液を室温まで放冷し、次いで氷浴で冷却すると、黄色沈殿物が形成した。ジエチルエーテル(20ml)を加えると更なる沈殿を得た。黄色固体をろ過し、ジエチルエーテル(2×50ml)で洗浄した。固体を水(50ml)に溶解し、溶液のpHを、水酸化ナトリウム水溶液(4N)を使用して、pH=10に調整した。少量の黒色固体が溶解しないまま残った。混合物をろ過し、水相をジエチルエーテル(2×20ml)で洗浄し、濃塩酸を使用して酸性化(pH=10)した。有機物質をジエチルエーテル(6×30ml)で抽出し、画分を集め、乾燥(Na2SO4)し、ろ過し、溶媒を減圧下除去すると、ジセレニド[1.40g、65%、純度約95%]が黄色油状物として残った。
1H−NMR(D2O,300MHz):
((ppm)=1.98−2.22(m,2H);2.82−2.98(m,2H);4.28(dd,J=4Hz及び8Hz,1H;α−H)。
追加シグナル:1.04(Et2O);1.15(t);3.43(Et2O);4.10(q)。
f(SiO2,酢酸エチル+1% CF3CO2H):0.57(リンモリブデン酸で染色)。
【0110】
【化28】

【0111】
実施例14:本発明による組成物の調製
以下の組成でカプセルを調製した。
L−2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸 0.2mg
賦形剤*および外皮** 500mgのカプセルとする
*コーンスターチ、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム
**ゼラチン、二酸化チタン、着色剤)
【0112】
以下の組成でカプセルを調製した。
L−2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸 0.05mg
賦形剤*および外皮** 500mgのカプセルとする
*コーンスターチ、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム
**ゼラチン、二酸化チタン、着色剤)
【0113】
以下の組成でカプセルを調製した。
L−2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸 0.1mg
賦形剤*および外皮** 500mgのカプセルとする
*コーンスターチ、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、香料
**ゼラチン、二酸化チタン、着色剤)
【0114】
以下の組成でカプセルを調製した。
L−2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸ジシクロヘキシルアンモニウム 0.15mg
賦形剤* 1gのカプセルとする
*コーンスターチ、タルク、ステアリン酸マグネシウム)
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】2−ヒドロキシブチロラクトンを出発物質とする本発明の方法を示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

(式中、n=0、1または2であり、
1=OH、OCOR3、OPO32、OPO(OR4)(OR5)またはOR6であり、
2=OH、R3またはNHR7であり、
3=アルコキシル(C1−C26)、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6aおよび6b、S−システイニルまたはS−グルタチオニル、または
【化2】

であり、
OR4=アルコキシル(C1−C26)、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6aまたは6b、または
【化3】

であり、
OR5=アルコキシル(C1−C26)、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6aまたは6b、または
【化4】

であり、
OR6=ピルビン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、パルミトレイン酸塩、オレイン酸塩、リノール酸塩、天然脂肪酸または13−cisレチノイン酸塩であり、
7=H、アルキル(C1−C26)、天然アミノ酸類または天然アミン類であって、
ただし、n=1およびR2=OHである場合は、R1はOHではなく、
該化合物の異なる形態として、位置異性体、幾何異性体、立体異性体、ジアステレオ異性体およびエナンチオマーを含み、該化合物は個別にまたは混合物として存在し、および直鎖または分岐状の、非環状または環状オリゴマーまたはポリマーの全てを含む。)
で表される有機セレン化合物およびその医薬的に許容し得る酸または塩基塩。
【請求項2】
nが0である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
1が、OH、OCOR3、OR6であり、R3およびR6は請求項1に規定するとおりである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
1がOHである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項5】
2が、OH、NHR7、グリセロイル、モノアシルグリセロイル、ジアシルグリセロイル、コエンザイムQ、レチノイル、コレステロイル、α−トコフェロイル、カルニチノイル、スフィンガニン、スフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6aおよび6b、アスコルビン酸塩、S−システイニルおよびS−グルタチオニルからなる群から選択され、R7は、請求項1に規定するとおりである、請求項1〜4のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項6】
2がOHである、請求項1〜5のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項7】
一般式(I)
(式中、n=0、1または2であり、
1=OCOR3、OPO32、OPO(OR4)(OR5)またはOR6であり、
2=R3またはNHR7であり、
3=セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6aおよび6b、S−システイニルまたはS−グルタチオニル、または
【化5】

であり、
OR4=アルコキシル(C1−C26)、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6aまたは6b、または
【化6】

であり、
OR5=アルコキシル(C1−C26)、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6aまたは6b、または
【化7】

であり、
OR6=ピルビン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、パルミトレイン酸塩、オレイン酸塩、リノール酸塩、天然脂肪酸または13−cisレチノイン酸塩であり、
7=H、アルキル、天然アミノ酸類または天然アミン類である。)
に対応する式(I’)で表される、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
一般式(I)
(式中、n=0、1または2であり、
1=OHであり、
2=OHまたはR3であり、
3=アルコキシル(C1−C26)であり、
ただし、n=1でR1=OHの場合、R2はOHではない。)
に対応する式(I’’)で表される、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
以下の名前:
−L−2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸、
−D−2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸、
−DL−2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸、
−L−2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸ジシクロヘキシルアンモニウム
を有する、請求項1に記載の一般式Iで表される化合物のいずれか一つである化合物。
【請求項10】
ナトリウム塩、カルシウム塩またはマグネシウム塩の形態である、請求項1〜7のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項11】
請求項1に規定する一般式(I)で表される有機セレン化合物の調製方法であって、以下の工程:
1)(D,L)−2−R1−ブチロラクトンまたはそのエナンチオマー(DまたはL)のいずれか一つ(式中、R1は請求項1に規定のとおりである)と、
−式(IIa)
CH3−Se-+ (IIa)
(式中、Mはアルカリ金属原子を表す)で表されるアルカリ性メチルセレノラート塩との反応により、アルカリ塩の形態の式(Ia):
【化8】

(式中、MおよびR1は上記に規定のとおりである)で表される化合物を得る;または
−式(IIb)
HSe-+ (IIb)
(式中、Mはアルカリ金属原子を表す)で表されるアルカリ性セレン試薬との反応により、アルカリ塩の形態の式(III):
【化9】

(式中、MおよびR1は上記に規定のとおりである)で表される化合物を得る;または
−式(IIc)
MSeX (IIc)
(式中、Mは先に規定するとおりであり、XはCNラジカル、SO3Mまたはアリール−SO2Mを表す)で表されるアルカリ性セレン試薬との反応により、アルカリ塩の形態の式(IIIa):
【化10】

(式中、M、R1およびXは上記に規定のとおりである)で表される化合物を得る;あるいは
−式(IId)
MSeSeM (IId)
(式中、Mは上記に規定のとおりである)で表されるアルカリ性セレン試薬との反応により、アルカリ塩の形態の式(IIIb):
【化11】

で表される化合物を得;
式(IIIa)または(IIIb)で表される中間化合物を還元剤で処理して、式(III)
【化12】

で表される化合物を得;
次いで、式(III)で表される化合物を、式(IV):
CH3−Y (IV)
(式中、Yは、ハロゲン原子、またはOSO2CH3、OSO2−p−トリルあるいはOCO2CH3基を表す)で表されるメチル化剤で処理して、前記式(Ia)
【化13】

で表される化合物を得る工程と、
2)必要に応じて、以下に記載の反応:
−反応媒体の酸性化により、式(I)に対応する酸を得ること、
−式(I)で表される酸、または式(Ia)で表されるアルカリ塩と、アルコールまたはアルキルハライドとのエステル化により、一般式(I)(式中、R2=R3であり、上記に規定したとおりである)で表される化合物を得ること、
−式(I)で表される酸または式(Ia)で表されるアルカリ塩と、式R7NH2(式中、R7は上記に規定したとおりである)で表される適切なアミンとのアミド化により、一般式(I)(式中R2=NHR7であり、上記に規定したとおりである)で表される化合物を得ること、
−R1=OHの時、適切な酸による水酸基のエステル化により、一般式(I)(式中、R1はOH基ではない基である)で表される化合物を得ること、
−酸化反応により、セレンオキシドまたはセレノン誘導体とし、一般式(I)(式中、nは1または2である)で表される化合物を得ること、
−酸または塩基により塩にすること
の一つまたはいくつかの反応、または連続した反応工程
の少なくとも一つを含む方法。
【請求項12】
求核セレン試薬が、
*その場で生成しうるメチルセレノラート塩、
*たとえばテトラヒドロフラン(THF)のような非プロトン性溶媒中でセレン金属Se(0)およびアルキル塩から生成しうるメチルセレノラート塩、
*たとえばTHFのような非プロトン性溶媒中、たとえば水素化ホウ素ナトリウムのような還元剤の存在下、ジメチルジセレニド(CH3Se)2から生成しうるメチルセレノラート塩、
*その場で生成しうる、セレノシアン酸カリウムのようなセレノシアン酸塩、
*セレン金属Se(0)と、たとえばシアン化カリウムのようなシアン化塩とから生成しうるセレノシアン酸塩、
*そのような溶媒に加えられたセレノシアン酸塩、
*たとえばナトリウムまたはリチウムセレニドまたはジセレニドのようなセレニド塩またはジセレニド塩、
*たとえばセレノ硫酸ナトリウムのようなセレノ硫酸塩
のいずれかである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
求核セレン試薬が、リチウムメチルセレノラートまたはセレノシアン酸カリウムである、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】

【化14】

(式中、MおよびR1は、請求項11および1に規定のとおりである)、
式:
【化15】

(式中、M、R1およびXは、請求項11および1に規定のとおりである)、
式:
【化16】

(式中、MおよびR1は、請求項11および1に規定のとおりである)で表される新規な工業用化合物。
【請求項15】
請求項1に規定する式(I)で表される2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸、または式(Ia)で表されるそのアルカリ塩の一つを出発原料とするL−(+)−セレノメチオニンの調製方法であって、以下の工程
1)式(I)で表される2−ヒドロキシ−4−メチルセレノ酪酸または式(Ia)で表されるそのアルカリ塩の一つを、緩衝液中の中性pHでの酸化−還元酵素型酵素による酸化処理、または適切な酸化試薬による作用に基づく化学的方法による酸化処理により、式(V):
【化17】

で表される、対応するケト酸を得る工程;
2)トランスアミナーゼを使用する酵素的方法による、または還元アミノ化条件下での化学的な方法による式(V)で表される化合物のアミノ基転移反応によって、L−(+)−セレノメチオニンを得る工程
を必須として含む方法。
【請求項16】
請求項1で規定される一般式(I)で表される化合物、およびそれらの医薬的に許容し得る酸および塩基との塩の、ヒトまたは動物における、セレノメチオニン、特にL(+)セレノメチオニン、および/またはセレン源としての用途。
【請求項17】
一般式(I)で表される化合物が、請求項2〜10のいずれか一つに規定されているものである、請求項16に記載の用途。
【請求項18】
一般式(I)で表される化合物またはそれらの塩が、ヒトまたは動物用食品の補助食品または食品添加物の形で存在する、請求項16または17に記載の用途。
【請求項19】
一般式(I)で表される化合物またはそれらの塩が、化粧品用の補助物または添加物として存在する、請求項16または17に記載の用途。
【請求項20】
使用される化合物が、請求項7で規定される一般式(I’)に対応する請求項19に記載の用途。
【請求項21】
一般式(I)で表される化合物またはそれらの塩が、薬として存在する、請求項16または17に記載の用途。
【請求項22】
使用される化合物が、請求項7で規定される一般式(I’)に対応する、請求項21に記載の用途。
【請求項23】
使用される化合物が、請求項8で規定される一般式(I’’)に属する、請求項18に記載の用途。
【請求項24】
請求項1〜10のいずれか一つに規定される式(I)で表される化合物の少なくとも一つを活性構成成分または添加物として含む栄養組成物。
【請求項25】
請求項8に規定する式(I’’)で表される化合物の少なくとも一つ、またはそれらのナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩の少なくとも一つを、活性構成成分または添加物として含む栄養組成物。
【請求項26】
請求項1〜10のいずれか一つに規定する式(I)で表される化合物の少なくとも一つを、活性構成成分または添加物として含む化粧品組成物。
【請求項27】
請求項7に規定する式(I’)で表される化合物の少なくとも一つを、活性構成成分または添加物として含む化粧品組成物。
【請求項28】
請求項1〜10のいずれか一つに規定される式(I)で表される化合物の少なくとも一つを、活性構成成分または添加物として含む医薬組成物。
【請求項29】
請求項7に規定する式(I’)で表される化合物の少なくとも一つを、活性構成成分または添加物として含む医薬組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2008−507490(P2008−507490A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521918(P2007−521918)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【国際出願番号】PCT/EP2005/008746
【国際公開番号】WO2006/008190
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(507022330)
【氏名又は名称原語表記】TETRAHEDRON
【Fターム(参考)】