説明

新規トリアリールメタン化合物およびローダミン化合物、ならびにそれらを用いた光学フィルタ、色変換フィルタおよび色変換発光デバイス

【課題】 優れた耐光性を有する新規トリアリールメタン化合物およびローダミン化合物の提供、ならびにそれら化合物を用いて、パターニング性を損なうことなく、活性分子との反応による色変換色素の分解を起こすことなく、優れた色変換効率および耐光性を有する色変換層、色変換フィルタ、有機ELディスプレイの提供。
【解決手段】 トリアリールメタン構造を有するカチオンと、特定のアニオンとから形成される新規トリアリールメタン化合物およびローダミン化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐久性に優れる新規なトリアリールメタン化合物およびローダミン化合物に関する。また、本発明は該化合物を含有してなる薄膜および該薄膜を用いた画像表示用光学フィルタに関する。より詳細には、本発明は、高精細で高輝度高効率および生産性に優れた多色表示を可能にする色変換フィルタに関する。本発明は、イメージセンサ、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、オーディオ、ビデオ、カーナビゲーション、電話機、携帯端末機ならびに産業用計測器などの表示用の色変換フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ローダミンB、ローダミンG、ローダミン6G、ローダミン3B、ローダミンF、ローダミン101、ローダミン110、ローダミン116、ベーシックバイオレット11、ベーシックバイオレット2等に代表されるローダミン化合物は、500nm〜600nmの範囲に強度の大きい吸収を示すこと、オレンジ〜赤紫色を呈することから、光吸収剤、光学記録材料等の光学要素や色素として用いられている。また、ディスプレイ用の色変換膜用途で効率の高いローダミン化合物が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、一般的なローダミン化合物は可視光暴露や150℃以上の高温加熱によって機能が失活する問題を有しており、例えばディスプレイ用色変換膜のように高効率の蛍光変換を長期間安定して行うような用途への適用は難しい。
【0004】
一方、近年、有機EL発光素子(OLED)は実用化に向けての研究開発が活発に行われている。有機EL発光素子は低電圧で高い電流密度が実現できるため、無機EL等に比較して高い発光輝度および発光効率を実現することが期待され、特に薄型軽量のフラットパネルディスプレイへの応用が期待されている。車載用途の緑色単色有機ELディスプレイがパイオニア社により1997年11月に既に製品化されているが、今後は多様化する社会のニーズに答えるべく、高輝度で高精細なフルカラー表示が可能で長期安定性および高速応答性を有する有機ELカラーディスプレイの実用化が急がれている。
【0005】
有機ELディスプレイのカラー化の方法の一例として、有機EL発光素子の発光を吸収し、その波長分布を変換して可視光域の蛍光を発する蛍光材料をフィルタとして用いる色変換方式が検討されてきている(特許文献2および3参照)。有機EL発光素子の発光色は白色に限定されないため、より輝度の高い有機EL発光素子を光源に適用することができる。青色発光の有機EL発光素子を用いた色変換方式においては、青色光を波長変換して緑色光および赤色光を得ている。特に、波長変換により赤色光を得るための色素として、ローダミン化合物が検討されてきている。このような色変換色素を含む色素変換膜を高精細にパターニングすれば、有機EL素子の近紫外光ないし可視光のような弱いエネルギー線を用いても、フルカラーの発光型ディスプレイを構築できる。
【0006】
カラーディスプレイの実用上の重要課題は、精細な多色表示機能、高い色変換効率を有することに加えて、色再現性を含めた長期的な安定性を有する色変換フィルタを提供することである。
【0007】
色変換フィルタの長期安定性を向上させる上での主な問題点は色変換色素の分解であり、一重項励起状態の色変換色素が蛍光を放射して基底状態へと遷移するのではなく、三重項励起状態を経由して該色素の分解を起こすという経路が知られている。したがって、初期段階で色変換効率の最適化を行っても、使用するにつれて急激に色変換効率が低下してしまう。この問題に関しては、分解反応を起こすことなしに、三重項励起状態の色変換色素を基底状態へと遷移させるためのクエンチャーを混合することが検討されている(特許文献4参照)。
【0008】
また、色変換色素を分解する要因として紫外線を挙げることができる。具体的には、色変換色素に有害な紫外線によって色変換色素が容易にその機能を消失し、色変換効率の低下を招いてしまうという問題が生じ、色変換色素の性能を生かしきれないというものである。この問題に関しては、色変換層に紫外光を吸収する光安定剤を添加する方法が検討されている(特許文献5参照)。
【0009】
赤色を発光する色変換色素は、緑の波長域に強い光吸収を持つことが多く、青の波長域における光吸収強度は緑と比較すると強くない。色変換層は、効率をよく励起光を吸収して変換した蛍光を発するためには、色変換層における光吸収量をできるかぎり多くしなければならない。そのためには、色変換層の膜厚を厚くするか、または励起波長域での蛍光色素濃度を高くする等して、可能な限り多くの励起光を捕捉する必要がある。しかしながら、色変換層の膜厚には限度があり、プロセス上の要請からはなるべく薄くする要請がある。また色変換層中に含むことのできる色変換色素の濃度にも限界があって、ある程度以上に上げることはできない。色変換色素の濃度を高くすると、色素分子同士の相互作用により蛍光収率が減少する、いわゆる濃度消光が発生し、色変換の効率が低下することが知られている。この問題に関しては、たとえば嵩高い置換基を赤色変換色素分子に導入することによって濃度消光を防止することが検討されてきている(特許文献6〜8参照)。
【0010】
また、色変換色素のアニオン成分によって、色素に安定性を付与することが報告されている。例えば、ローダミン色素のアニオン成分にアミノベンゼンスルホン酸アニオンを使用すると耐光安定性が向上する(特許文献9参照)。
【0011】
【特許文献1】特開2000−103975号公報
【特許文献2】特開平8−279394号公報
【特許文献3】特開平8−286033号公報
【特許文献4】特開2002−231450号公報
【特許文献5】特開2002−184576号公報
【特許文献6】特開平11−279426号公報
【特許文献7】特開2000−44824号公報
【特許文献8】特開2001−164245号公報
【特許文献9】特開2005−2290号公報
【特許文献10】米国特許第2,681,294号明細書
【特許文献11】特開昭57−34526号公報
【特許文献12】特開平3−130103号公報
【特許文献13】特開平6−115023号公報
【特許文献14】特開平8−313702号公報
【特許文献15】特開平7−168004号公報
【特許文献16】特開平5−208811号公報
【特許文献17】特開平6−299091号公報
【特許文献18】特開平7−168003号公報
【特許文献19】特公昭60−59250号公報
【特許文献20】特開平5−13021号公報
【特許文献21】特開平6−56478号公報
【特許文献22】特開平7−92306号公報
【特許文献23】特開平9−288201号公報
【特許文献24】米国特許第2,761,791号明細書
【特許文献25】米国特許第2,941,898号明細書
【特許文献26】米国特許第3,508,974号明細書
【特許文献27】米国特許第3,526,528号明細書
【非特許文献1】原崎勇次著「コーティング工学」253頁(1973年、朝倉書店)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献4または5のように光安定性の高い色変換膜を提供する方法として、色素分散膜中に光安定剤またはラジカル捕捉剤を添加する方法があるが、別途添加した添加剤が蛍光色素の保護に有効な位置にいるとは限らないため、効果を発現させるためには多量添加する必要があった。しかし、多量の光安定剤・ラジカル補足剤は光重合反応の抑止剤となり得るため、フォトリソグラフ法による高精細なパターニングが困難となってしまうという問題を生じてしまう。
【0013】
そこで、上記課題を鑑み、鋭意研究した結果、光安定剤・ラジカル捕捉剤を色変換色素の対イオンに導入することにより、光安定剤・ラジカル捕捉剤を蛍光色素の近傍に効果的に配置することができ、色素分散膜のパターニング性を損なうことなく、色素の耐光性を向上できることがわかった。
【0014】
したがって、本発明においては、光安定剤・ラジカル捕捉剤を色素の対イオンに導入することにより優れた耐光性を有するローダミン化合物ならびにトリアリールメタン化合物を提供することを目的とする。さらに、青色ないし青緑色から赤色への色変換において、分解に対する安定性が高く、かつパターニング性を損なうことがない色変換色素を含む色変換層を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の実施形態は、下記化学式(I)で表される化合物である。
【0016】
【化1】

【0017】
(式中、Arはアリーレン基を示し;環Aはベンゼン環又はナフタレン環を表し;Xは水素原子又はNRR’基を表し;R、R’は各々独立に酸素原子、硫黄原子、NH或いはNRで中断されていてもよく、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、水酸基で置換されていてもよく、RとR’が結合して環構造を形成してもよい炭素数1〜30の炭化水素基、自己が結合する窒素原子が結合する環と連結して環構造を形成してもよい炭素数2〜8の炭化水素基又は水素原子を表し;Rは、炭素数1〜6の炭化水素基を表し;Yは、ハロゲン基、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基又は−COODを表し;Dは、酸素原子或いは硫黄原子で中断されていてもよくハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜30の炭化水素基又は水素原子を表し;R〜Rは、各々独立に酸素原子、硫黄原子、NH或いはNRで中断されていてもよく、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、水酸基で置換されていてもよく、RとR或いはRとRが結合して環構造を形成してもよい炭素数1〜30の炭化水素基、自己が結合する窒素原子が結合する芳香環と連結して環構造を形成してもよい炭素数2〜8の炭化水素基又は水素原子を表し;Rは炭素数1〜6の炭化水素基を表し;Rは、ハロゲン原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表し;Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表し、R62は、水素原子を表し、RとR62が一緒になって酸素原子または硫黄原子を表してもよく;Rは、ハロゲン原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表し;Rはh、水酸基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基を表し;p、p’は、各々独立に0〜3の整数を表し;qは0〜3の整数を表し;Anは下記一般式(1)、(2)、(3)、(4)から選択されるアニオンを表す。)
【0018】
【化2】

【0019】
(式中、Eは芳香環に結合する基であり、−GCOO又は−SOを表し、Gは単結合又は炭素数1〜4のアルキレン基を表し、R10〜R13は、水酸基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜18のアルコキシ基を表し、R14〜R16は、水酸基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜18のエーテル基、炭素数1〜8のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、炭素数2〜18のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜18のアリールアルキル基、炭素数6〜18のアリールオキシ基、炭素数7〜18のアリールアルキルオキシ基又は炭素数7〜18のアリールカルボニルオキシ基を表し、R17、R18は、一方は炭素数1〜8のアルキル基、他方は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表し、R19は炭素数1〜8のアルキル基を表し、r、r’、r”は0〜4の整数を表し、x、x’は、0又は1を表し、yは0〜2の整数を表し、r、r’、r”、yが2以上の場合、R10〜R16及びR19は同一でも異なってもよい。)
【0020】
好ましくは一般式(I)において、R、R’、R〜Rが各々独立に炭素数1〜18の炭化水素基又は自己が結合する窒素原子が結合する芳香環と連結して環構造を形成してもよい炭素数2〜8の炭化水素基であってもよく、Anで表されるアニオンが一般式(1)または(4)であってもよい。
【0021】
ここで、該化合物は、下記化学式(II)で表される構造を有してもよい。
【0022】
【化3】

【0023】
(式中、環Aは、ベンゼン環又はナフタレン環を表し;Zは酸素原子又は硫黄原子を表し、R〜Rは、酸素原子、硫黄原子、NH或いはNRで中断されていてもよく、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、水酸基で置換されていてもよく、RとR或いはRとRが結合して環構造を形成してもよい炭素数1〜30の炭化水素基、自己が結合する窒素原子が結合する芳香環と連結して環構造を形成してもよい炭素数2〜8の炭化水素基又は水素原子を表し;Rは炭素数1〜6の炭化水素基を表し;R、Rは、各々独立にハロゲン原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表し;Rhは、水酸基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基を表し;Rは、酸素原子或いは硫黄原子で中断されていてもよくハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜30の炭化水素基又は水素原子を表し;p、p’は、各々独立に0〜3の整数を表し;qは0〜3の整数を表し;Anは一般式(I)の化合物と同様に、一般式(1)、(2)、(3)、(4)から選択されるアニオンを表す。)
【0024】
好ましくは一般式(II)において、R〜Rが各々独立に炭素数1〜18の炭化水素基又は自己が結合する窒素原子が結合する芳香環と連結して環構造を形成してもよい炭素数2〜8の炭化水素基であってもよく、一般式(II)のAがベンゼン環であってもよく、一般式(II)のZが酸素原子であってもよく、Anで表されるアニオンが一般式(1)または(4)であってもよい。
【0025】
本発明の第2の実施形態は、第1の実施形態の化合物を含有してなるフィルムである。
【0026】
本発明の第3の実施形態は、第2の実施形態のフィルムを用いた光学フィルタである。
【0027】
本発明の第4の実施形態の色変換フィルタは、透明基板と1つまたは複数の色変換層とを含み、前記色変換層の少なくとも1つは、第1の実施形態に記載のローダミン化合物とバインダーとを含有することを特徴とする。
【0028】
本発明の第5の実施形態の色変換発光デバイスは、発光部と、第4の実施形態に記載の色変換フィルタとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
以上の構成を採ることによって、本発明は、光学要素や色素として有用な耐光性に優れた新規化合物を提供する。さらに本発明の新規化合物を色変換色素として用いることにより、パターニング性を損なうことなく、活性分子との反応による色変換色素の分解を起こすことなく、優れた色変換効率および耐光性を有する色変換層、該色変換層を用いた色変換フィルタおよび色変換発光デバイスを実現することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の第1の実施形態は、下記一般式(I)で表されるトリアリールメタン化合物である。該化合物は有機ELカラーディスプレイの光変換膜の色変換色素として耐光性が優れる。
【0031】
【化4】

【0032】
(式中、Arはアリーレン基を示し;環Aはベンゼン環又はナフタレン環を表し;Xは水素原子又はNRR’基を表し;R、R’は各々独立に酸素原子、硫黄原子、NH或いはNRで中断されていてもよく、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、水酸基で置換されていてもよく、RとR’が結合して環構造を形成してもよい炭素数1〜30の炭化水素基、自己が結合する窒素原子が結合する環と連結して環構造を形成してもよい炭素数2〜8の炭化水素基又は水素原子を表し;Rは、炭素数1〜6の炭化水素基を表し;Yは、ハロゲン基、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基又は−COODを表し;Dは、酸素原子或いは硫黄原子で中断されていてもよくハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜30の炭化水素基又は水素原子を表し;R〜Rは、各々独立に酸素原子、硫黄原子、NH或いはNRで中断されていてもよく、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、水酸基で置換されていてもよく、RとR或いはRとRが結合して環構造を形成してもよい炭素数1〜30の炭化水素基、自己が結合する窒素原子が結合する芳香環と連結して環構造を形成してもよい炭素数2〜8の炭化水素基又は水素原子を表し;Rは炭素数1〜6の炭化水素基を表し;Rは、ハロゲン原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表し;Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表し、R62は、水素原子を表し、RとR62が一緒になって酸素原子または硫黄原子を表してもよく;Rは、ハロゲン原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表し;Rはh、水酸基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基を表し;p、p’は、各々独立に0〜3の整数を表し;qは0〜3の整数を表し;Anは下記一般式(1)、(2)、(3)、(4)から選択されるアニオンを表す。)
【0033】
【化5】

【0034】
(式中、Eは芳香環に結合する基であり、−GCOO又は−SOを表し;Gは単結合又は炭素数1〜4のアルキレン基を表し;R10〜R13は、水酸基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜18のアルコキシ基を表し;R14〜R16は、水酸基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜18のエーテル基、炭素数1〜8のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、炭素数2〜18のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜18のアリールアルキル基、炭素数6〜18のアリールオキシ基、炭素数7〜18のアリールアルキルオキシ基又は炭素数7〜18のアリールカルボニルオキシ基を表し;R17、R18は、一方は炭素数1〜8のアルキル基、他方は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表し;R19は炭素数1〜8のアルキル基を表し;r、r’、r”は0〜4の整数を表し;x、x’は、0又は1を表し;yは0〜2の整数を表し;r、r’、r”、yが2以上の場合、R10〜R16及びR19は同一でも異なってもよい。)
【0035】
上記一般式(I)において、R、R’における、酸素原子、硫黄原子、NH或いはNRで中断されていてもよく、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、水酸基で置換されていてもよく、RとR’は結合して環構造を形成してもよい炭素数1〜30の炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ペプタデシル、オクタデシル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル、3−シクロヘキシルプロピル、4−シクロヘキシルブチル、5−シクロヘキシルペンチル、6−シクロヘキシルヘキシル等のアルキル基;ビニル、2−プロペニル、1−プロペニル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、デセニル、ぺンタデセニル、3−フェニルプロペン−1−イル等のアルケニル基;フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、4−ビニルフェニル、3−イソプロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−イソブチルフェニル、4−第三ブチルフェニル、4−ヘキシルフェニル、4−シクロヘキシルフェニル、4−オクチルフェニル、4−(2−エチルヘキシル)フェニル、4−ステアリルフェニル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、2,4−ジ第三ブチルフェニル、2−メチル−4−第三ブチルフェニル、2−第三ブチル−6−メチルフェニル、4−ノニルフェニル、シクロヘキシルフェニル等のアルキルアリール基が挙げられ、Rにおける炭素数1〜6の炭化水素としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、フェニルが挙げられる。また、これらが酸素原子で中断されたものとしては、例えば、2−メトキシエチル、3−メトキシプロピル、4−メトキシブチル、2−ブトキシエチル、メトキシエトキシエチル、メトキシエトキシエトキシエチル、3−メトキシブチル、4−メトキシフェニル、2−メトキシフェニル、3−メトキシフェニル、4−エトキシフェニル、4−ブトキシフェニル、4−(2−メトキシエトキシ)フェニルが挙げられ、RとR’が結合して形成する環構造としては、ピロリジン環、イミダゾリジン環、ピラゾリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルフォリン環が挙げられる。さらに、これらの基は、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)基、水酸基で任意の位置を置換されていてもよい。
【0036】
また、R、R’において、自己が結合する窒素原子が結合する芳香環と結合して環構造を形成する基としては、エチレン、トリメチレン、プロピレン、テトラメチレン、1−メチル−トリメチレン、1,2−ジメチル−トリメチレン、1,3−ジメチル−トリメチレン、1−メチル−テトラメチレン、2−メチル−テトラメチレン、3−メチル−テトラメチレン、4−メチル−テトラメチレン、2,4−ジメチル−テトラメチレン、1,3−ジメチル−テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン等が挙げられる。
【0037】
また、上記一般式(I)において、Yにおける炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシルが挙げられ、Dにおける、酸素原子或いは硫黄原子で中断されていてもよくハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜30の炭化水素基としては、上記Rで例示した基で該当するものが挙げられる。
【0038】
また、上記一般式(I)において、R〜Rの選択肢中のそれぞれの基の例としては、上記Rで例示した対応する基が挙げられ、RとしてはRで例示の基が挙げられる。
【0039】
また、上記一般式(I)において、R〜Rにおける炭素数1〜8のアルキル基としては、上記Yで例示した基が挙げられ、Rにおける炭素数1〜8のアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、第二ブトキシ、第三ブトキシ、イソブトキシ、アミロキシ、イソアミロキシ、第三アミロキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、イソヘプチルオキシ、第三ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、イソオクチルオキシ、第三オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシが挙げられる。
【0040】
上記、一般式(I)で表される化合物の中でも、特に下記一般式(II)で表されるローダミン化合物が、青ないし青緑色から赤色への光変換の用途として光学特性が適合するのでより好ましい。一般式(II)で表されるローダミン化合物は、一般式(I)において、Arが置換フェニレン基であり、Rがトリアリールメタン中心炭素に対してオルト位に位置し、RとR62とが一緒になって6員環構造を採った場合の化合物である。
【0041】
【化6】

【0042】
(式中、環Aは、ベンゼン環又はナフタレン環を表し;Zは酸素原子又は硫黄原子を表し、R〜Rは、酸素原子、硫黄原子、NH或いはNRで中断されていてもよく、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、水酸基で置換されていてもよく、RとR或いはRとRが結合して環構造を形成してもよい炭素数1〜30の炭化水素基、自己が結合する窒素原子が結合する芳香環と連結して環構造を形成してもよい炭素数2〜8の炭化水素基又は水素原子を表し;Rは炭素数1〜6の炭化水素基を表し;R、Rは、各々独立にハロゲン原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表し;Rhは、水酸基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基を表し;Rは、酸素原子或いは硫黄原子で中断されていてもよくハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜30の炭化水素基又は水素原子を表し;p、p’は、各々独立に0〜3の整数を表し;qは0〜3の整数を表し;Anは、化合物(I)と同様に、一般式(1)、(2)、(3)、(4)から選択されるアニオンを表す。)
【0043】
上記一般式(II)において、R〜Rは、上記一般式(I)と同様の基であり、Rの選択肢中のそれぞれの基の例としては、上記Rで例示した対応する基で該当するものが挙げられ、Rとしては、Rで例示した基が挙げられる。
【0044】
また、上記一般式(I)において、R、R’、R〜Rが各々独立に炭素数1〜18の炭化水素基であるもの又は自己が結合する窒素原子が結合する芳香環と連結して環構造を形成してもよい炭素数2〜8の炭化水素基であるものが好ましく、上記一般式(II)において、R〜Rが各々独立に炭素数1〜18の炭化水素基又は自己が結合する窒素原子が結合する芳香環と連結して環構造を形成してもよい炭素数2〜8の炭化水素基であるものが更に好ましい。
【0045】
上記の炭素数1〜18の炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、デシル、ステアリル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル、3−シクロヘキシルプロピル、4−シクロヘキシルブチル、5−シクロヘキシルペンチル、6−シクロヘキシルヘキシルが挙げられる。
【0046】
本発明のこれらの化合物のカチオンの具体例としては、以下に示す化合物No.1〜No.63が挙げられる。
【0047】
【化7】

【0048】
【化8】

【0049】
【化9】

【0050】
【化10】

【0051】
【化11】

【0052】
前記一般式(I)、(II)のAnで表され有機アニオンを表す一般式(1)〜(4)において、Gで表される炭素数1〜4のアルキレン基としては、メチレン、エチレン、エチリデン、トリメチレン、プロピレン、プロピリデン、イソプロピリデン、テトラメチレン、3−メチルトリメチレン、1,2−ジメチルエチレン、ブチリデン、1−メチルプロピリデンが挙げられる。
【0053】
また、R10〜R13において:ハロゲン基としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ;炭素数1〜18のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ペプタデシル、オクタデシル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル、3−シクロヘキシルプロピル、4−シクロヘキシルブチル、5−シクロヘキシルペンチル、6−シクロヘキシルヘキシルが挙げられ;炭素数1〜18のアルコキシ基としては、メチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、第2ブチルオキシ、第3ブチルオキシ、イソブチルオキシ、アミルオキシ、イソアミルオキシ、第3アミルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、イソヘプチルオキシ、第3ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ、イソオクチルオキシ、第3オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ、トリデシルオキシ、テトラデシルオキシ、ペンタデシルオキシ、ヘキサデシルオキシ、ペプタデシルオキシ、オクタデシルオキシ、シクロヘキシルメチルオキシ等が挙げられる。
【0054】
また、R14〜R16において:炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基としては上記のR10〜R13で例示された対応する基が挙げられ;炭素数2〜18のエーテル基(エーテル結合(−O−)を含むアルキル基)としては、2−メトキシエチル、2−ブトキシエチル、2−(2−メトキシエトキシ)エチル、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル等が挙げられ;ジアルキルアミノ基が有する炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシルが挙げられる。
【0055】
14〜R16における炭素数2〜18のアルキルカルボニルオキシ基は、R14〜R16が水酸基である化合物と炭素数2〜18の脂肪族カルボン酸から誘導される基であり、該基を誘導する脂肪族カルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、シクロヘキサンカルボン酸、3−メチルシクロヘキサンカルボン酸、4−メチルシクロヘキサンカルボン酸、2,4−ジメチルシクロヘキサンカルボン酸等が挙げられる。
【0056】
14〜R16における炭素数6〜18のアリール基としては、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、4−ビニルフェニル、3−イソプロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−イソブチルフェニル、4−第三ブチルフェニル、4−ヘキシルフェニル、4−シクロヘキシルフェニル、4−オクチルフェニル、4−(2−エチルヘキシル)フェニル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、2,4−ジ第三ブチルフェニル、2,5−ジ第三ブチルフェニル、2,6−ジ−第三ブチルフェニル、2,4−ジ第三ペンチルフェニル、2,5−ジ第三アミルフェニル、2,5−ジ第三オクチルフェニル、ビフェニル、2,4,5−トリメチルフェニル等が挙げられ、炭素数7〜18のアリールアルキル基としては、ベンジル、フェネチル、2−フェニルプロパン−2−イル、ジフェニルメチル等が挙げられる。
【0057】
14〜R16において:炭素数6〜18のアリールオキシ基としては、フェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシ、2−メチルフェニルオキシ、3−メチルフェニルオキシ、4−メチルフェニルオキシ、4−ビニルフェニルオキシ、4−イソプロピルフェニルオキシ、4−ブチルフェニルオキシ、4−イソブチルフェニルオキシ、4−第三ブチルフェニルオキシ、4−ヘキシルフェニルオキシ、4−シクロヘキシルフェニルオキシ、4−オクチルフェニルオキシ、4−(2−エチルヘキシル)フェニルオキシ、2,3−ジメチルフェニルオキシ、2,4−ジメチルフェニルオキシ、2,5−ジメチルフェニルオキシ、2,6−ジメチルフェニルオキシ、3,4−ジメチルフェニルオキシ、3,5−ジメチルフェニルオキシ、2,4−ジ第三ブチルフェニルオキシ、2,5−ジ第三ブチルフェニルオキシ、2,6−ジ−第三ブチルフェニルオキシ、2,4−ジ第三ペンチルフェニルオキシ、2,5−ジ第三アミルフェニルオキシ、2,5−ジ第三オクチルフェニルオキシ、ビフェニルオキシ、2,4,5−トリメチルフェニルオキシ等が挙げられ;アリールアルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ、フェネチルオキシ、2−フェニルプロパン−2−イルオキシ、ジフェニルメチルオキシ等が挙げられる。
【0058】
14〜R16における炭素数7〜18のアリールカルボニルオキシ基は、R14〜R16が水酸基である化合物と炭素数7〜18の有機カルボン酸から誘導される基であり、これを誘導する有機カルボン酸としては、安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、ナフトエ酸、4−メチル安息香酸、4−第三ブチル安息香酸、4−オクチル安息香酸等が挙げられる。
【0059】
また、R17〜R19における炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシルが挙げられる。
【0060】
上記一般式(1)〜(4)で表される有機アニオンの中でも、(1)および(4)は、特に優れた耐光性を示すので好ましい。
【0061】
これら好ましい有機アニオンの具体例としては、以下に示す化合物No.64〜No.93が挙げられる。
【0062】
【化12】

【0063】
【化13】

【0064】
【化14】

【0065】
本発明の化合物は、その製造方法について特に制限を受けるものではない。例えば、本発明の化合物の好ましい形態である前記一般式(II)で表される化合物は、下記に示す反応によって製造してもよく、あるいは、対応するローダミン色素と、一般式(1)〜(4)で表されるアニオンのアルカリ金属塩との塩交換反応によって製造してもよい。
【0066】
【化15】

【0067】
さらに、本発明の化合物は、500nm〜600nmの範囲の光を波長分布変換してより長波長の光を放射する色変換色素としても有用である。色変換色素とは、光源から発せられる近紫外領域ないし可視領域の光を吸収して波長分布変換を行い、異なる波長の可視光を放射するものである。特に青色ないし青緑色領域の光を吸収することが好ましい。本実施形態の光を発光する光源を用いて、該光源からの光を単なる赤色カラーフィルタに通して赤色領域の光を得ようとすると、元々赤色領域の波長の光が少ないために極めて暗い出力光になってしまう。しかしながら、青色ないし青緑色の光を吸収する色変換色素によって赤色領域の光に変換することにより、十分な強度を有する赤色領域の光の出力が可能となる。
【0068】
本発明の第2の実施形態のフィルムは、前記一般式(I)で表される新規のトリアリールメタン化合物または(II)で表される新規のローダミン化合物からなるフィルム、ならびに該化合物とバインダー(マトリクス樹脂)とを含有してなるフィルムを含む。該バインダーとしては、例えば、ゼラチン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、アルギン酸等の天然高分子材料、あるいはポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、スチレン−ブタジエンコポリマー、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアミドなどの合成高分子材料が用いられる。本実施形態において、トリアリールメタン化合物またはローダミン化合物は、前記バインダーと相溶してもよいし、あるいは前記バインダー中に分散されていてもよい。本発明のフィルムの具体的応用例としては、該フィルムを支持体に施したDVD−Rの光学記録層、該フィルムからなる画像表示用光学フィルター、カラーフィルターに代表される各種フィルターを挙げることができる。
【0069】
あるいはまた、ウェットエッチングを伴うパターニングの必要がある用途に本発明の第2の実施形態のフィルムを使用する場合には、本発明のフィルムは、一般式(I)または(II)で表される新規化合物と光硬化性または光熱併用型硬化性樹脂(レジスト)とを含むことが好ましい。この場合には、光硬化性または光熱併用型硬化性樹脂(レジスト)の硬化物が、パターニング後のフィルムのバインダーとして機能する。また、パターニングを円滑に行うために、該光硬化性または光熱併用型硬化性樹脂は、未露光の状態において有機溶媒またはアルカリ溶液に可溶性であることが望ましい。用いることができる光硬化性または光熱併用型硬化性樹脂(レジスト)は、具体的には、(1)アクロイル基やメタクロイル基を複数有するアクリル系多官能モノマーおよびオリゴマーと、光または熱重合開始剤とからなる組成物、(2)ボリビニル桂皮酸エステルと増感剤とからなる組成物、(3)鎖状または環状オレフィンとビスアジドとからなる組成物(ナイトレンが発生して、オレフィンを架橋させる)、および(4)エポキシ基を有するモノマーと酸発生剤とからなる組成物などを含む。特に、(1)のアクリル系多官能モノマーおよびオリゴマーと光または熱重合開始剤とからなる組成物を用いることが好ましい。なぜなら、該組成物は高精細なパターニングが可能であり、および重合して硬化した後は耐溶剤性、耐熱性等の信頼性が高いからである。
【0070】
本発明のフィルムは、新規化合物または新規化合物とバインダーとを含む混合物を、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法あるいはエクストルージョンコート法(特許文献10参照)によって恒久支持体または一時支持体上に塗布することにより形成することができる。本発明のフィルムは自立性であってもよく、その場合には上記の方法にて塗布したフィルムを一時支持体から剥離することによって自立フィルムを得ることができる。
【0071】
あるいはまた、新規化合物と高分子材料とを含む混合物を押出成形、キャスト成形またはロール成形して、直接的に自立フィルムを形成してもよい。用いることのできる高分子材料は、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース等のセルロースエステル;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリスチレン;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリエーテルイミド;ポリオキシエチレン;ノルボルネン樹脂などを含む。
【0072】
本発明の第3の実施形態は、第1の実施形態の新規化合物を含有してなる光学フィルターである。例えば、画像表示用に用いられる場合、本実施形態の光学フィルターは、通常、独立して制御できる複数の発光部を有する発光素子の前面に配置される。用いることができる発光素子は、液晶装置(透過型および反射型を含む)、プラズマ発光素子、EL発光素子(無機および有機を含む)、陰極管発光装置、蛍光表示管、電界発光素子などを含む。例えば、光学フィルターを発光素子の表面に直接貼り付けてもよく、発光素子の前に前面板が設けられている場合は、前面板の表側(外側)または裏側(発光素子側)に本発明の第2の実施形態のフィルムを貼り付けて、該前面板を光学フィルターとしてもよい。
【0073】
本実施形態の光学フィルターの構成例を図1に示した。光学フィルターは、透明支持体100と光学機能層120とを含み、必要に応じて下塗り層110、反射防止層130、ハードコート層140および/または潤滑層150を設けてもよい。図1(a)に示すように、透明支持体100の一方の表面上に、下塗り層110、光学機能層120、反射防止層130、ハードコート層140および潤滑層150を積層してもよい。あるいはまた、図1(b)に示すように、透明支持体の一方の表面上に下塗り層110、光学機能層120、ハードコート層140および潤滑層150を積層し、他方の表面上に下塗り層110、反射防止層130および潤滑層150を積層してもよい。あるいはまた、本発明の光学フィルターは、図1(c)に示すように、本発明のトリアリールメタン化合物またはローダミン化合物を含有する光学機能支持体105の表面上に下塗り層110、反射防止層130、ハードコート層140および潤滑層150を積層した構造であってもよい。
【0074】
透明支持体100の材料として、例えば、ガラスなどの無機材料;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース等のセルロースエステル;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリスチレン;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリエーテルイミド;ポリオキシエチレン;ノルボルネン樹脂などの高分子材料を用いることができる。透明支持体100は可視光に対して80%以上の透過率を有することが好ましく、86%以上の透過率を有することがさらに好ましい。透明支持体100のヘイズは、2%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。透明支持体100の屈折率は、1.45〜1.70であることが好ましい。
【0075】
透明支持体100中に、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、無機微粒子を添加してもよい。また、透明支持体100に各種の表面処理を施してもよい。用いることができる表面処理は、例えば、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理、オゾン酸化処理などを含む。
【0076】
図1(c)の構成で用いられる光学機能支持体105としては、自立フィルムの形態をとる本発明の第2の実施形態のフィルムを用いることができる。着色透明支持体105のヘイズは、2%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。光学機能支持体105の屈折率は、1.45〜1.70であることが好ましい。光学機能支持体105中に、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、無機微粒子を添加してもよい。また、光学機能支持体105に各種の表面処理を施してもよい。用いることができる表面処理は、例えば、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理、オゾン酸化処理などを含む。
【0077】
下塗り層110は、別の構成層(たとえば、光学機能層120および/または反射防止層)と透明支持体100または光学機能支持体105のいずれか(以下、支持体と総称する場合がある)との接着力を改善するために設けられる層である。下塗り層110は、−60〜60℃のガラス転移温度を有するポリマーを含む層であってもよいし、支持体と反対側の表面が粗面である層であってもよいし、支持体およびその上に形成される構成層の両方と親和性を有するポリマーを含む層であってもよい。あるいはまた、下塗り層110は、光学フィルターをディスプレイ(光源)に接着するための接着剤と光学フィルターとの親和性を改善するために設けてもよい。下塗り層の厚みは、2nm〜20μmが好ましく、5nm〜5μmがより好ましく、20nm〜2μmがさらに好ましく、50nm〜1μmがさらにまた好ましく、80nm〜300nmが最も好ましい。
【0078】
−60〜60℃のガラス転移温度を有するポリマーを含む下塗り層110は、該ポリマーの粘着性で、支持体とその上に形成される構成層とを接着する。−60〜60℃のガラス転移温度を有するポリマーは、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ブタジエン、ネオプレン、スチレン、クロロプレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリルまたはメチルビニルエーテルの重合または共重合により得ることができる。用いられるポリマーのガラス転移温度は、−60〜50℃であることが好ましく、−60〜40℃であることがより好ましく、−60〜30℃であることがさらに好ましく、−60〜25℃であることがさらにまた好ましく、−60〜20℃であることが最も好ましい。下塗り層の25℃における弾性率は、1〜1000MPaであることが好ましく、5〜800MPaであることがさらに好ましく、10〜500MPaであることが最も好ましい。
【0079】
支持体と反対側の表面が粗面である下塗り層110は、粗面による機械的作用によって、支持体とその上に形成される構成層とを接着する。表面が粗面である下塗り層110は、ポリマーラテックスの塗布により容易に形成することができる。ラテックスの平均粒径は、0.02〜3μmであることが好ましく、0.05〜1μmであることがさらに好ましい。
【0080】
あるいはまた、その上に構成される層のバインダーポリマーと親和性を有するポリマーを用いて、下塗り層110を形成してもよい。該ポリマーは、支持体とも親和性を有することが好ましい。たとえば、光学機能層120のバインダーポリマーと親和性を有するポリマーの例は、アクリル樹脂、セルロース誘導体、ゼラチン、カゼイン、澱粉、ポリビニルアルコール、可溶性ナイロンおよび高分子ラテックスを含む。2つ以上の下塗り層を設けてもよい。下塗り層に対して、透明支持体を膨潤させる溶剤、マット剤、界面活性剤、帯電防止剤、塗布助剤、または硬膜剤などを添加してもよい。
【0081】
光学機能層120は、本発明の第2の実施形態のフィルムから形成することができる。透明支持体100の表面上または透明支持体100上に形成された下塗り層110の表面上に、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法あるいはエクストルージョンコート法(特許文献10参照)を用いて光学機能層120を形成することができる。あるいはまた、下塗り層110または透明支持体100に対して、自立フィルムの形態のフィルムを接着することによって光学機能層120を形成してもよい。
【0082】
光学機能層120または光学機能支持体105は、第1の実施形態の化合物によって500nm〜600nmの範囲の光を吸収する光吸収層として機能することができる。この場合には、新規化合物が前述の波長域の光を吸収して発する蛍光を消光するために、光学機能層120中に消光剤を添加することが好ましい。また、光学機能層120中に、他の波長域の光を吸収する色素をさらに添加して、所望の色相を呈する光吸収層を形成することも可能である。
【0083】
光学機能層120を光吸収層として機能させる場合、第1の実施形態の化合物の使用量を、通常光学フィルターの単位面積当たり1〜1000mg/mの範囲内、好ましくは5〜100mg/mの範囲内とすることが望ましい。このような範囲の使用量とすることにより、充分な光吸収効果を発揮するとともに、適切な光学濃度を有して良好な表示品質および明度を実現することが可能となる。図1(c)の構成で用いられる光学機能支持体105を光吸収層として用いる場合も、同様の範囲内の使用量において第1の実施形態の化合物を用いることが好ましい。
【0084】
あるいはまた、光学機能層120または光学機能支持体105は、第1の実施形態の化合物を色変換色素として用いて、500nm〜600nmの範囲の光をより長波長の光(たとえば赤色光)に波長分布変換する色変換層として機能することができる。色変換層として用いられる光学機能層120は、第1の実施形態の化合物とバインダーとを含む第2の実施形態のフィルムから形成される。色変換を受けて放射される光の色相を調整することを目的として、本発明のローダミン系色素と、別種の色変換色素を組み合わせて用いてもよい。たとえば、シアニン系色素(たとえば、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(2−(p−ジメチルアミノフェニル)エテニル)−4H−ピランなど)、1−エチル−2−[4−(p−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル]−ピリジニウムパークロレート(ピリジン1)などのピリジン系色素、あるいはオキサジン系色素などを光学機能層120に添加してもよい。さらに、各種染料(直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料など)も蛍光性があれば使用することができる。
【0085】
さらに、光学機能層120に対して、より短波長(たとえば400〜500nm)の光を500nm〜600nmの範囲の光を変換する他の色変換色素を添加して、より短波長の光を色変換する層として機能させることも可能である。たとえば、本発明の化合物に加えて、例えば3−(2’−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノ−クマリン(クマリン6)、3−2’−ベンゾイミダゾリル)−7−ジエチルアミノ−クマリン(クマリン7)、3−2’−N−メチルベンゾイミダゾリル)−7−ジエチルアミノ−クマリン(クマリン30)、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−8−トリフルオロメチルキノリジン(9,9a,1−gh)クマリン(クマリン153)などのクマリン系色素、あるいはクマリン色素系染料であるベーシックイエロー51、さらにはソルベントイエロー11、ソルベントイエロー116などのナフタルイミド系色素を添加して、青色ないし青緑色光を赤色光に変換する色変換層を形成することが可能となる。
【0086】
本実施形態の光学機能層120において、本発明の新規化合物を形成するアニオン成分は、紫外線や接近する活性ラジカルが色素母核と反応することを防止する光安定化効果及びラジカル捕捉効果を呈する。そして、本発明の新規化合物の場合、アニオン成分は発色団を持たないので、たとえアニオン成分が活性ラジカルや紫外線と反応したとしても、新規色素母核の色変換機能をほとんど損なうことがないと考えている。
【0087】
さらに、アニオン成分が立体障害を有する構造である場合、すなわちアニオン成分における置換基が立体障害基としても機能する場合、色素同士の会合を阻害して濃度消光を防止する基としても機能し得る。この場合には、アニオン成分の立体障害により新規色素母核相互間の距離が増大し、色素が高濃度で添加される際の濃度消光を防止するものと考えられる。なぜなら、アニオン成分は静電引力によって常に新規色素母核の近傍に存在するので、新規色素全体として占める空間を増大させるからである。また、立体障害を有するアニオン成分は、新規色素母核への他の分子の接近を妨害するため、三重項励起状態の新規色素母核が基底状態へと遷移することを容易にし、他の分子と反応することを防止すると考えられる。
【0088】
光学機能層120を色変換層として機能させる場合、用いられる光学機能層のバインダー1g当たり0.2マイクロモル以上、好ましくは1〜20マイクロモル、より好ましくは3〜15マイクロモルの色変換色素を用いることが好ましい。本発明の新規化合物の場合には、前述の濃度範囲内で用いることにより高効率で色変換を行うと同時に、アニオン化合物が色素母核と紫外線及び活性ラジカルとの反応を抑制するので長期にわたって安定した色変換を行うことが可能である。あるいはまた、前述の立体障害を有するアニオンを用いる場合、マトリクス樹脂1g当たり20マイクロモル以上のような高濃度の色変換色素を用いても、濃度消光および駆動に伴う急激な劣化を伴うことなく高効率で色変換を行うことが可能となる場合がある。なぜなら、アニオン化合物が色変換色素間の相互作用ならびに色素母核と紫外線及び活性ラジカルとの反応を抑制する場合があるからである。図1(c)の構成で用いられる光学機能支持体105を色変換層として用いる場合も、同様の濃度範囲の色変換色素を用いることが好ましい。
【0089】
光学機能層120を色変換層として機能させる場合、光学機能層120は、5μm以上、好ましくは8〜15μmの膜厚を有する。このような膜厚を有することにより、所望の強度の色変換された出力光を得ることが可能となる。
【0090】
反射防止層130は、本態様の光学フィルターにおける反射を防止して光透過率を向上させるための同である。反射防止層130は、透明支持体100よりも低い屈折率を有する材料から形成される低屈折率層であってもよい。低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.55であることが好ましく、1.30〜1.50であることがさらに好ましい。低屈折率層の厚さは、50〜400nmであることが好ましく、50〜200nmであることがさらに好ましい。低屈折率層は、屈折率の低い含フッ素ポリマーからなる層(特許文献11〜15参照)、ゾルゲル法により得られる層(特許文献16〜18参照)、あるいは微粒子を含む層(特許文献19〜23参照)として形成することができる。微粒子を含む層では、微粒子間または微粒子内のミクロボイドとして、低屈折率層中に空隙を形成することができる。微粒子を含む層は、3〜50体積%の空隙率を有することが好ましく、5〜35体積%の空隙率を有することがさらに好ましい。
【0091】
反射防止層130を1つまたは複数の低屈折率層と1つまたは複数の中・高屈折率層との積層体から形成することによって、より広い波長領域の光反射を防止することができる。高屈折率層の屈折率は、1.65〜2.40であることが好ましく、1.70〜2.20であることがさらに好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との中間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.90であることが好ましく、1.55〜1.70であることがさらに好ましい。中・高屈折率層の厚さは、5nm〜100μmであることが好ましく、10nm〜10μmであることがさらに好ましく、30nm〜1μmであることが最も好ましい。中・高屈折率層のヘイズは、後述のアンチグレア機能を付与する場合を除いて、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。
【0092】
中・高屈折率層は、比較的高い屈折率を有するポリマーバインダーを用いて形成することができる。屈折率が高いポリマーの例には、ポリスチレン、スチレン共重合体、ポリカーボネート、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、および環状(脂環式または芳香族)イソシアネートとポリオールとの反応で得られるポリウレタンが含まれる。その他の環状(芳香族、複素環式、脂環式)基を有するポリマーや、フッ素以外のハロゲン原子を置換基として有するポリマーも、屈折率が高い。二重結合を導入してラジカル硬化を可能にしたモノマーの重合反応によりポリマーを形成してもよい。
【0093】
さらに高い屈折率を得るため、ポリマーバインダー中に無機微粒子を分散してもよい。分散させる無機微粒子の屈折率は、1.80〜2.80であることが好ましい。無機微粒子は、二酸化チタン(例、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造)、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムおよび硫化亜鉛のような金属の酸化物または硫化物から形成することが好ましい。酸化チタン、酸化錫および酸化インジウムが特に好ましい。無機微粒子は、これらの金属の酸化物または硫化物を主成分とし、さらに他の元素を含むことができる。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(重量%)が多い成分を意味する。他の元素の例には、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、PおよびSが含まれる。あるいはまた、被膜形成性で溶剤に分散し得るか、それ自身が液状である無機材料、例えば、各種元素のアルコキシド、有機酸の塩、配位性化合物と結合した配位化合物(例、キレート化合物)、活性無機ポリマーを用いて、中・高屈折率層を形成することもできる。
【0094】
反射防止層130は、その表面にアンチグレア機能(入射光を表面で散乱させて、膜周囲の景色が膜表面に移るのを防止する機能)を付与することができる。例えば、反射防止層130が形成される表面(たとえば、粗面化された下塗り層110など)に微細な凹凸を形成するか、あるいはエンボスロールなどにより反射防止層130表面に凹凸を形成することにより、アンチグレア機能を付与することができる。アンチグレア機能を有する反射防止層130は、一般に3〜30%のヘイズを有する。
【0095】
ハードコート層140は、その下に形成される層(光学機能層120および/または反射防止層130)を保護するための層であり、透明支持体100よりも高い硬度を有する材料から形成される。ハードコート層140は、架橋しているポリマーを含むことが好ましい。ハードコート層は、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系のポリマー、オリゴマーまたはモノマー(例、紫外線硬化型樹脂)を用いて形成することができる。シリカ系材料からハードコート層140を形成することもできる。
【0096】
本態様の光学フィルターの表面に潤滑層150を形成してもよい。潤滑層150は、光学フィルター表面に滑り性を付与し、耐傷性を改善する機能を有する。潤滑層150は、ポリオルガノシロキサン(例、シリコーンオイル)、天然ワックス、石油ワックス、高級脂肪酸金属塩、フッ素系潤滑剤またはその誘導体を用いて形成することができる。潤滑層150の厚さは、2〜20nmであることが好ましい。
【0097】
上記の下塗り層110、反射防止層130、ハードコート層140、および潤滑層150は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法およびエクストルージョンコート法(特許文献10参照)のような当該技術において知られている任意の塗布方法により形成することができる。シリカ系材料からハードコート層140を形成する際には、蒸着、スパッタ、CVD、レーザーアブレーションなどの当該技術において知られている任意の成膜技術を用いてハードコート層140を形成してもよい。
【0098】
光学フィルターの各構成層は、その積層順序に従って1層ずつ順次形成してもよいし、2つ以上の層を同時塗布法(特許文献23〜27および非特許文献1参照)により形成してもよい。
【0099】
本発明の第4の実施形態の色変換フィルタは、第3の実施形態の光学フィルターの変形であり、透明基板と1つまたは複数の色変換層とを含み、色変換層の少なくとも1つが第1の実施形態のローダミン化合物とバインダーとを含むものである。本実施形態の色変換フィルタは、青色変換層、緑色変換層などのように発光素子からの光を波長分布変換して特定波長域の光を放出する色変換層をさらに有してもよい。本実施形態において色変換層を用いる場合には、色変換層によって波長分布変換を受けた光の色純度を向上させることを目的として、色変換層の出力側にカラーフィルタ層(光吸収層)を積層してもよい。色変換層の出力する光に対応して、特定波長域の光を透過させる青色カラーフィルタ層、緑色カラーフィルタ層、赤色カラーフィルタ層などを設けることができる。
【0100】
図2に、本実施形態に係るカラーディスプレイ用の色変換フィルタの例を示す。図2に示した色変換フィルタは、透明支持体10の上に、赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタ層30R,30G,30Bが設けられている。これらのカラーフィルタ層は、色変換層により変換された光の色座標または色純度を最適化するために、必要に応じて設けられるものである。各色のカラーフィルタ層の上に赤、緑、青の色変換層20R、20G、および20Bが設けられており、それぞれの色変換層/カラーフィルタ層積層体(以下、総称として色変換フィルタ層と呼ぶ場合がある)の間に黒色のブラックマスク40が設けられている。このブラックマスク40は、コントラストの向上に有効である。光源となる発光素子は、色変換フィルタの色変換層側に設けられ、当該発光素子からの光は色変換層20、カラーフィルタ層30、透明支持体10の順に通過して外部に取り出される。
【0101】
ここで赤色変換層20Rが、本発明の新規化合物とバインダとを含む第2の実施形態のフィルタである。赤色変換層20Rは、色変換層として用いる第3の実施形態の光学機能層120と同様の色素濃度範囲および膜厚を有することが望ましい。
【0102】
青色変換層20Bおよび緑色変換層20Gは、それぞれ、近紫外ないし可視領域の光を吸収して青色領域の蛍光を発する蛍光色素、および、青色ないし青緑色領域の光を吸収して、緑色領域の蛍光を発する蛍光色素と、バインダとを含む層である。バインダとしては、第二の実施形態に記載の任意の物をふくむことができる。また、それぞれの色に於いて、外光の入射による視認性の低下を防止する観点から、励起波長と蛍光波長の差の大きな色変換色素を単独で用いることが好ましい。
【0103】
光源から発せられる青色ないし青緑色領域の光を吸収して、緑色領域の光を発する蛍光色素としては、たとえば3−(2’ベンゾリアゾリル)−7−ジエチルアミノ−クマリン(クマリン6)、3−(2’−ベンゾイミダゾリル)−7−ジエチルアミノ−クマリン(クマリン7)、3−(2’−N−メチルベンゾイミダゾイリル)−7−ジエチルアミノ−クマリン(クマリン30)、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−8−トリフルオロメチルキノジリン(9,9a,1−gh)クマリン(クマリン153)などのクマリン系色素、あるいはクマリン色素系染料であるベーシックイエロー51,さらにはソルベントイエロー11、ソルベントイエロー116などのナフタルイミド系色素等が上げられる。さらに、各種の蛍光性染料(直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料など)を使用してもよい。
【0104】
光源から発せられる近紫外ないし可視領域の光を吸収して、青色領域の蛍光を発する蛍光色素としては、たとえばクマリン466、クマリン47、クマリン2、およびクマリン102などのクマリン系色素が挙げられる。さらに、各種の蛍光性染料(直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料など)を使用してもよい。
【0105】
各色のカラーフィルタ層30は、所望される波長域の光のみを透過させる機能を持つ。カラーフィルタ層30は、色変換層20によって波長分布変換されなかった光源からの光を遮断し、また色変換層20によって波長分布変換された光の色純度を向上させることに対して有効である。カラーフィルタ層30は、たとえば液晶ディスプレイ用カラーフィルタ材料などを用いて形成してもよい。
【0106】
図2に示したRGBの色変換層を一組の画素として、複数の画素を基板10上にマトリックス状に配置することによって、カラーディスプレイ用の色変換フィルタを形成する事ができる。色変換フィルタ層の所望されるパターンは、使用される用途に依存する。赤、緑、および青の矩形または円形もしくはその中間の形状の区域を一組として、それをマトリックス状に透明支持体全面に作成してもよい。あるいはまた、微小の区域に分割された適当な面積比で配設される二種の色変換層を用いて、単独の色変換層では達成できない単一色を示すようにしてもよい。
【0107】
図2の例ではRGB各色の色変換層を設けた場合を示したが、青色から青緑色の光を放出する発光素子を光源として用いる場合には、青色に関して色変換層を用いずに、カラーフィルタ層のみを用いてもよい。さらに、該光源の発光が緑色領域の光を十分にふくむならば、緑色についても色変換層を用いること無しに、該光源からの光を単に緑色フィルタのみを通して出力してもよい。
【0108】
本発明の第5の実施形態の色変換発光デバイスは、発光部(光源)と色変換部とを有する。色変換部としては、前述の色変換フィルタまたは色変換層を用いることができる。発光部としては、近紫外から可視域、好ましくは青色から青緑色の光を発する任意の高原を用いることができる。そのような光源の例は、有機EL発光素子、プラズマ発光素子、冷陰極管、放電灯(高圧・超高圧水銀灯およびキセノンランプなど)、発光ダイオード等を含む。色変換部として図1に示される光学フィルタ(カラーフィルタ層を持たない)を用いる場合、発光部は光学フィルタのいずれかの側に配置されてもよい。色変換部として図2に示されるカラーフィルタ30を有する色変換フィルタを用いる場合、発光部は色変換層20の側に配置される。あるいはまた、色変換部として色変換層そのものを用いる場合、該変換層を光源の表面に直接積層してもよい。
【0109】
本発明の色変換デバイスの一例として、図2に示した色変換フィルタの貼り合わせによって形成されるトップエミッション方式の有機ELディスプレイを図3に示す。スイッチング素子としてTFT52があらかじめ形成されている基板50の上に、平坦化層54、下部電極56、有機EL層58、上部電極60およびパッシベーション層62からなる有機EL発光素子が形成される。下部電極56は複数の部分に分割され、それぞれの部分がTFT52と一対一で接続される反射性電極であり、上部電極60は全面に均一に形成される透明電極である。有機EL発光素子を形成する各層は、当該技術において知られている材料および方法を用いることができる。一方、透明基板10の上に、青色、緑色、および赤色のカラーフィルタ層30B,30Gおよび30Rと、青色、緑色、および赤色の色変換層20B,20G,20Rが形成されている。この場合にも赤色変換層20Rが本発明の新規化合物を含む層である。また、各色変換層の間にはブラックマスク40が形成されている。次に有機EL発光素子と色変換フィルタとを、それらの間に充填剤層64(任意選択的に設けてもよい層である)を形成しながら位置あわせをして張り合わせ、最後に周辺部分を外周封止層(接着剤)66を用いて封止し、有機ELディスプレイが得られる。図3にはアクティブマトリックス駆動型の有機ELディスプレイを示したが、パッシブマトリックス駆動型の有機ELディスプレイに本発明を用いてもよいことはもちろんである。
【0110】
前述の有機EL層58は、近紫外から可視光域の光、好ましくは青色から青緑色の波長領域の光を発する。その発光が色変換フィルタ層に入射して、所望する色を有する可視光へと波長変換される。有機EL層58は、少なくとも有機発光層を含み、必要に応じて、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層および/または電子注入層を設けた構造を有する。具体的には、下記のような層構成からなるものが採用される。
(1)有機発光層
(2)正孔注入層/有機発光層
(3)有機発光層/電子注入層
(4)正孔注入層/有機発光層/電子注入層
(5)正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子注入層
(6)正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層
(上記において、陽極は発光層または正孔注入層に接続され、陰極は有機発光層または電子注入層に接続される)
【0111】
上記各層の材料としては、公知のものが使用される。青色から青緑色の発光を得るためには、有機発光層中に、たとえばベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系などの蛍光増白剤、金属キレート化オキソニウム化合物、スチリルベンゼン系化合物、芳香族ジメチリディン系化合物などが好ましく使用される。また、正孔注入層としては銅フタロシアニンなどのフタロシアニン系化合物またはm−MTDATAのようなトリフェニルアミン誘導体などを用いることができ、正孔輸送層としては、TPD、α−NPDのようなビフェニルアミン誘導体などを用いることができる。一方、電子輸送層としては、PBDのようなオキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体などを用いることができ、電子注入層としてはアルミニウムのキノリノール錯体などを用いることができる。さらに、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはそれらを含む合金、アルカリ金属フッ素化合物などを電子注入層として用いることができる。
【実施例】
【0112】
以下、製造実施例、評価例、実施例および比較例をもって本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例などによって何ら制限を受けるものではない。
【0113】
[製造実施例1] 化合物No.7と化合物No.75との塩化合物の製造
反応用フラスコに38gのメタノール、0.01モルの原料化合物1(下記式)、0.012モルの原料化合物2(下記式)を仕込み、70℃で3時間攪拌した。メタノールを23g留去した後、酢酸エチル75gを加えて晶析を行った。生成した結晶を濾取し、酢酸エチルで洗浄した後、80℃、2時間真空乾燥を行い、目的物である緑色結晶6.1g(収率81%)を得た。
【0114】
【化16】

【0115】
上記で得た塩化合物について、下記分析を行った。
(1)H−NMR(重メタノール溶媒)
図4に示す。
(2)UV吸収測定(5.0×10−6モル/リットルメタノール溶媒)
吸収:λmax;544.5nm、ε;1.12×10
(3)示差熱分析(TG−DTA:サンプル2.99797mg、100ml/分窒素気流中、昇温10℃/分)
重量減少開始温度:243℃、10%質量減少温度:252℃
【0116】
[製造実施例2] 化合物No.7と化合物No.89との塩化合物の製造
反応用フラスコに21gのエタノール、0.01モルの原料化合物1、0.011モルの原料化合物3(下記式)を仕込み、75℃で4.5時間攪拌した。エタノールを留去した後、酢酸エチル21gを加えて、50℃まで加温して得た溶液を20℃に冷却して晶析を行った。生成した結晶を濾取し、酢酸エチルで洗浄した後、80℃、2時間真空乾燥を行い、目的物である緑色結晶0.3g(収率4.3%)を得た。
【0117】
【化17】

【0118】
上記で得た塩化合物について、下記分析を行った。
(1)H−NMR(重メタノール溶媒)
図5に示す。
(2)UV吸収スペクトル測定(5.0×10−6モル/リットルメタノール溶媒)
吸収:λmax;544.5nm、ε;1.09×10
(3)示差熱分析(TG−DTA:サンプル2.54051mg、100ml/分窒素気流中、昇温10℃/分)
重量減少開始温度:151℃、317℃、10%質量減少温度:159℃
【0119】
[製造実施例3] 化合物No.24と化合物No.89との塩化合物の製造
反応用フラスコに35gのクロロホルム、0.01モルのローダミン6G、0.012モルの原料化合物3、2質量%の水酸化ナトリウム水溶液を仕込み、50℃で1時間攪拌した。ここから水相を除去し0.001モルの原料化合物3と水30gを加え55℃で2時間攪拌した。再度水相を除去し水30gと酢酸エチル20gを加え、30分攪拌した後、系内の結晶を濾取した。結晶を30gのクロロホルムと15gの酢酸エチルの混合溶媒で洗浄した後、120℃、2時間真空乾燥を行い、目的物である茶色結晶5.5g(収率79%)を得た。
【0120】
上記で得た塩化合物について、下記分析を行った。
(1)H−NMR(重メタノール溶媒)
図6に示す。
(2)UV吸収スペクトル測定(5.0×10−6モル/リットルメタノール溶媒)
吸収:λmax;528.0nm、ε;1.04×10
(3)示差熱分析(TG−DTA:サンプル2.20953mg、100ml/分窒素気流中、昇温10℃/分)
重量減少開始温度:129℃、154℃、201℃、10%質量減少温度:166℃
【0121】
[製造実施例4] 化合物No.41と化合物No.75との塩化合物の製造
反応用フラスコに20gの酢酸エチル、20gの水、0.003モルの原料化合物4(下記式)、0.003モルの原料化合物3を仕込み、57℃で1.5時間攪拌した。20℃まで冷却した後、系内の結晶を濾取した。結晶を酢酸エチル、水、酢酸エチルの順で洗浄した後、120℃、2.5時間真空乾燥を行い、目的物である赤色結晶1.7g(収率75%)を得た。
【0122】
【化18】

【0123】
上記で得た塩化合物について、下記分析を行った。
(1)H−NMR(重メタノール溶媒)
図7に示す。
(2)UV吸収スペクトル測定(5.1×10−6モル/リットルメタノール溶媒)
吸収:λmax;525.0nm、ε;1.05×10
(3)示差熱分析(TG−DTA:サンプル2.21475mg、100ml/分窒素気流中、昇温10℃/分)
重量減少開始温度:247℃、10%質量減少温度:262℃
【0124】
[製造実施例5] 化合物No.43と化合物No.75との塩化合物の製造
反応用フラスコに3gのエタノール、0.005モルの原料化合物5(下記式)、0.0055モルの原料化合物3を仕込み、60℃で3.5時間攪拌した。これにクロロホルム30g、水30gを加え、5分攪拌した後、水相を除去してから、脱溶媒を行った。得られた残渣について、エタノール溶媒、シリカゲルのカラムクロマトグラフを用いて粗精製を行い得た粗結晶をメタノール1.1gに加熱溶解させた溶液を酢酸エチル11gに加えて晶析を行った。結晶を濾取し、3gのメタノールと18gの酢酸エチルとの混合溶媒で洗浄した後、150℃、2.5時間真空乾燥を行い、目的物である緑色結晶2.6g(収率62%)を得た。
【0125】
【化19】

【0126】
上記で得た塩化合物について、下記分析を行った。
(1)H−NMR(重メタノール溶媒)
図8に示す。
(2)UV吸収スペクトル測定(5.1×10−6モル/リットルメタノール溶媒)
吸収:λmax;572.0nm、ε;1.20×10
(3)示差熱分析(TG−DTA:サンプル5.21851mg、100ml/分窒素気流中、昇温10℃/分)
重量減少開始温度:255℃、10%質量減少温度:265℃
【0127】
[実施例1、2]
プロピレングリコールモノエチルアセテート(PGMEA)溶媒1g中に、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)1gおよび表に記載した製造実施例1、2で得た化合物それぞれを0.002モルを溶解させた。この溶液をCorning1394ノンアルカリガラス(50×50×0.7mm)上にスピンコート法によって塗布し、膜厚10μmの色変換層を有する色変換フィルタを得た。
【0128】
[比較例1]
製造実施例1で得た化合物に代えて、0.002モルのローダミンB(化合物No.7のカチオンとClイオンとからなる)と2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン0.002モルを用いたことを除いて実施例1と同様にして色変換フィルタを作成した。
【0129】
[比較例2]
製造実施例1で得た化合物に代えて、0.002モルのローダミンBと0.002モルの2,6−ジ第3ブチルフェノールを用いたことを除いて実施例1と同様にして色変換フィルタを作成した。
【0130】
[比較例3]
製造実施例1で得た化合物に代えて、化合物No.7のカチオンと化合物No.94のアニオンとから形成されるローダミン色素0.002モルを用いたことを除いて実施例1と同様にして色変換フィルタを作成した。
【0131】
【化20】

【0132】
[比較例4]
製造実施例1で得た化合物に代えて、0.002モルのローダミンBを用いたことを除いて実施例1と同様にして色変換フィルタを作成した。
【0133】
[比較例5]
2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン0.100モルを用いたことを除いて比較例1と同様にして色変換フィルタを作成した。
【0134】
[比較例6]
0.100モルの2,6−ジ第3ブチルフェノールを用いたことを除いて比較例2と同様にして色変換フィルタを作成した。
【0135】
[評価1]
実施例1、実施例2、比較例1〜4においてそれぞれ3つのサンプルを作成して評価を行った。色変換フィルタの色変換層側に光源を配置して、波長450〜510nmの光を照射した。さらに、色変換フィルタを通して出射した光を分光輝度計(コニカミノルタCS−1000)を用いて測定し、波長610nmの赤色光の出射光強度を測定した。比較例1の出射光強度を100とした相対値の評価結果を初期強度として第1表にまとめた。次に、上記光源を用いて1000時間の連続照射をおこなったのちに、波長610nmの赤色光の出射光度を再度測定した。実施例1および比較例1、比較例2、比較例3それぞれについて連続照射前の初期強度を100とした発光強度保持率を、耐久性として第1表にまとめた。また、フォトリソグラフ法を用いたパターニング性についても第1表にまとめた。
【0136】
【表1】

【0137】
[実施例3、4]
プロピレングリコールモノエチルアセテート(PGMEA)溶媒1g中に、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)1g、ならびに、それぞれ製造実施例4および5で得た新規化合物を0.0.002モルを溶解させた。この溶液をCorning1394ノンアルカリガラス(50×50×0.7mm)上にスピンコート法によって塗布し、膜厚10μmの色変換層を有する色変換フィルタを得た。
【0138】
[比較例7〜比較例10]
製造実施例4で得た新規化合物に代えて、第2表に示すようなローダミン色素0.002モルを用いたことを除いて実施例3と同様にして色変換フィルタを作成した。比較例7においては、化合物No.41のカチオンとClアニオンとから形成されるローダミン色素を用いた。比較例7においては、化合物No.43のカチオンとClアニオンとから形成されるローダミン色素を用いた。比較例9においては、化合物No.41のカチオンと化合物No.95のアニオンとから形成されるローダミン色素を用いた。比較例10においては、化合物No.43のカチオンと化合物No.95のアニオンとから形成されるローダミン色素を用いた。
【0139】
【化21】

【0140】
[評価2]
実施例3、実施例4、および比較例7〜10において、上記評価例1と同様に評価を行った。結果を第2表にまとめた。
【0141】
【表2】

【0142】
[評価3]
色変換フィルタを有機ELディスプレイに適用する際の封止内雰囲気がNとなることを想定し、同雰囲気下での耐光性を比較した。実験を露点−80℃窒素雰囲気のグローブボックス内で行った以外は評価1と同様にして行った。結果を第3表にまとめた。
【0143】
【表3】

【0144】
第1表、第2表および第3表より明らかであるが、本発明の規化合物を用いて作成した色変換フィルタの実施例1は初期において、周知のローダミン色素に同量の光安定剤を添加した比較例と同等の変換効率を示し、かつ比較例よりも優れた耐久性を示した。また、アミノベンゼンスルホン酸アニオンを用いた場合よりも優れた耐久性を示した。この結果は、本発明の化合物が優れた色変換効率の実現および色変換膜の光劣化の抑制に非常に有効であることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】本発明の第2の実施形態の光学フィルターを示す断面図であり、(a)〜(c)は各構成例を示す図である。
【図2】本発明の多色表示ディスプレイ用の色変換フィルタの概略断面図である。
【図3】本発明の色変換方式を用いたカラー有機ELディスプレイの概略断面図である。
【図4】製造実施例1で得られた化合物のH−NMRスペクトルである。
【図5】製造実施例2で得られた化合物のH−NMRスペクトルである。
【図6】製造実施例3で得られた化合物のH−NMRスペクトルである。
【図7】製造実施例4で得られた化合物のH−NMRスペクトルである。
【図8】製造実施例5で得られた化合物のH−NMRスペクトルである。
【符号の説明】
【0146】
10 透明基板
20R 赤色変換層
20G 緑色変換層
20B 青色変換層
30R 赤色フィルタ層
30G 緑色フィルタ層
30B 青色フィルタ層
40 ブラックマスク
50 基板
52 薄膜トランジスタ
54 平坦化層
56 第一電極
58 有機EL層
60 第二電極
62 パッシベーション層
64 充填剤層
66 外周封止層
100 透明支持体
105 光学機能支持体
110 下塗り層
120 光学機能層
130 反射防止層
140 ハードコート層
150 潤滑層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(I)で表される化合物。
【化1】

(式中、Arはアリーレン基を示し;環Aはベンゼン環又はナフタレン環を表し;Xは水素原子又はNRR’基を表し;R、R’は各々独立に酸素原子、硫黄原子、NH或いはNRで中断されていてもよく、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、水酸基で置換されていてもよく、RとR’が結合して環構造を形成してもよい炭素数1〜30の炭化水素基、自己が結合する窒素原子が結合する環と連結して環構造を形成してもよい炭素数2〜8の炭化水素基又は水素原子を表し;Rは、炭素数1〜6の炭化水素基を表し;Yは、ハロゲン基、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基又は−COODを表し;Dは、酸素原子或いは硫黄原子で中断されていてもよくハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜30の炭化水素基又は水素原子を表し;R〜Rは、各々独立に酸素原子、硫黄原子、NH或いはNRで中断されていてもよく、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、水酸基で置換されていてもよく、RとR或いはRとRが結合して環構造を形成してもよい炭素数1〜30の炭化水素基、自己が結合する窒素原子が結合する芳香環と連結して環構造を形成してもよい炭素数2〜8の炭化水素基又は水素原子を表し;Rは炭素数1〜6の炭化水素基を表し;Rは、ハロゲン原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表し;Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表し、R62は、水素原子を表し、RとR62が一緒になって酸素原子または硫黄原子を表してもよく;Rは、ハロゲン原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表し;Rはh、水酸基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基を表し;p、p’は、各々独立に0〜3の整数を表し;qは0〜3の整数を表し;Anは下記一般式(1)、(2)、(3)、(4)から選択されるアニオンを表す。)
【化2】

(式中、Eは芳香環に結合する基であり、−GCOO又は−SOを表し;Gは単結合又は炭素数1〜4のアルキレン基を表し;R10〜R13は、水酸基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜18のアルコキシ基を表し;R14〜R16は、水酸基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜18のエーテル基、炭素数1〜8のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、炭素数2〜18のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜18のアリールアルキル基、炭素数6〜18のアリールオキシ基、炭素数7〜18のアリールアルキルオキシ基又は炭素数7〜18のアリールカルボニルオキシ基を表し;R17、R18は、一方は炭素数1〜8のアルキル基、他方は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表し;R19は炭素数1〜8のアルキル基を表し;r、r’、r”は0〜4の整数を表し;x、x’は、0又は1を表し;yは0〜2の整数を表し;r、r’、r”、yが2以上の場合、R10〜R16及びR19は同一でも異なってもよい。)
【請求項2】
R、R’、R〜Rが各々独立に炭素数1〜18の炭化水素基又は自己が結合する窒素原子が結合する芳香環と連結して環構造を形成してもよい炭素数2〜8の炭化水素基であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
下記化学式(II)で表される化合物。
【化3】

(式中、環Aは、ベンゼン環又はナフタレン環を表し;Zは酸素原子又は硫黄原子を表し、R〜Rは、酸素原子、硫黄原子、NH或いはNRで中断されていてもよく、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、水酸基で置換されていてもよく、RとR或いはRとRが結合して環構造を形成してもよい炭素数1〜30の炭化水素基、自己が結合する窒素原子が結合する芳香環と連結して環構造を形成してもよい炭素数2〜8の炭化水素基又は水素原子を表し;Rは炭素数1〜6の炭化水素基を表し;R、Rは、各々独立にハロゲン原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表し;Rhは、水酸基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基を表し;Rは、酸素原子或いは硫黄原子で中断されていてもよくハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜30の炭化水素基又は水素原子を表し;p、p’は、各々独立に0〜3の整数を表し;qは0〜3の整数を表し;Anは下記一般式(1)、(2)、(3)、(4)から選択されるアニオンを表す。)
【化4】

(式中、Eは芳香環に結合する基であり、−GCOO又は−SOを表し;Gは単結合又は炭素数1〜4のアルキレン基を表し;R10〜R13は、水酸基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜18のアルコキシ基を表し;R14〜R16は、水酸基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜18のエーテル基、炭素数1〜8のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、炭素数2〜18のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜18のアリールアルキル基、炭素数6〜18のアリールオキシ基、炭素数7〜18のアリールアルキルオキシ基又は炭素数7〜18のアリールカルボニルオキシ基を表し;R17、R18は、一方は炭素数1〜8のアルキル基、他方は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表し;R19は炭素数1〜8のアルキル基を表し;r、r’、r”は0〜4の整数を表し;x、x’は、0又は1を表し;yは0〜2の整数を表し;r、r’、r”、yが2以上の場合、R10〜R16及びR19は同一でも異なってもよい。)
【請求項4】
〜Rが各々独立に炭素数1〜18の炭化水素基又は自己が結合する窒素原子が結合する芳香環と連結して環構造を形成してもよい炭素数2〜8の炭化水素基であることを特徴とする請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
Aがベンゼン環であることを特徴とする請求項3または4に記載の化合物。
【請求項6】
Zが酸素原子であることを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
Anが一般式(1)表されるアニオンである請求項1から6のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
Anが一般式(4)で表されるアニオンである請求項1から6のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の化合物を含有してなるフィルム。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の化合物を含有してなる光学フィルタ。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載の化合物とバインダを含有することを特徴とする色変換層。
【請求項12】
透明基板と、1つまたは複数の色変換層とを含み、前記色変換層の少なくとも1つは請求項11に記載の色変換層であることを特徴とする色変換フィルタ。
【請求項13】
発光部と、請求項12に記載の色変換フィルタとを含むことを特徴とする色変換発光デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−306933(P2006−306933A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−128253(P2005−128253)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】