説明

新規化合物、化粧品用途および薬用化粧品用途におけるその使用、および該化合物を含む組成物

式(I)で表される化合物、そのラセミ化合物、鏡像異性体、およびジアステレオ異性体からなる群より選ばれる少なくとも1種またはその塩。
R−A−Gly−His−B−R' (I)
但し、式中:AとBの各々は、相互に独立的に、L−リシン残基、D−リシン残基、およびL−またはD−リシン残基(但し側鎖のNH2基が(i)水素置換、(ii)アセチル化、(iii)ベンゾイル化または(iv)パルミトイル化されることにより変性されている)からなる群より選ばれる1種であり;Glyはグリシン残基であり;HisはL−またはD−ヒスチジン残基であり;Rは式 CH3−(CH2n−CO−(但し n = 2、3、4、5、6、7または8)で表され;R’は式(II)で表される基である:
N(Z)(Z') (II)
但し、式中:ZとZ’の各々は水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、ヘキシル基、デシル基またはヘキサデシル基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧品組成物、皮膚科学的組成物、および医薬組成物、並びに補助食品に関する。より詳細には、本発明は、皮膚の疾患を治療/予防するための化合物、組成物および方法に関し、たとえば、皮膚老化の兆候(皺や細線など)や皮膚の張りや弾力性の喪失を予防または治療するための化合物、組成物および方法に関する。
【0002】
関連出願への参照
本願は、35 U.S.C.§119(e)に基づき米国仮出願番号第60/947,144号(2007年6月29日出願)と米国仮出願番号第60/984,136号(2007年10月31日出願)からの優先権を主張している。これら基礎出願をここに言及することによりこれら基礎出願の全内容は本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
基底膜により相互に隔てられる表皮と真皮は皮下組織を覆う皮膚組織を構成する。表皮は皮膚の最上層であり、皮膚の抵抗性と不透過性を提供する。
【0004】
表皮には複数種類の細胞が共存するが、ケラチン生成細胞が表皮層の主な構成要素であり、皮膚粘膜バリアが提供する抵抗性に寄与している。ケラチン生成細胞の中心的働きはケラチンの合成であり、ケラチンは表皮中の総タンパク質の90%近くを占めている。
【0005】
皮膚の内層である真皮は、細胞外マトリックス(ECM)と呼ばれる複雑な媒体中に分散する細胞(実質的に繊維芽細胞)からなる結合組織である。この細胞外マトリックスは、コラーゲン繊維、エラスチン繊維、糖タンパク質(フィブロネクチンとラミニン)およびプロテオグリカンからなる。細胞外マトリックスは細胞を支持するための構造体として機能し、多細胞生物において細胞が組織や器官としてまとまることを可能にする。
【0006】
表皮の細胞と真皮の繊維との間の相互作用は、細胞挙動の制御(たとえば治癒)に重要な役割を担うだけではなく、表皮を真皮に係留して保護バリアを形成する真皮−表皮接合(DEJ)に安定性を与える役割も有する。DEJはいくつかのレベルで機能する。第1に、DEJは機械的な支持体として機能し、具体的には、IV型コラーゲン ネットワークを用いて、表皮を真皮に強固に係留する。また、DEJは表皮の基底細胞と直接的な関連を確立することにより、生物学的役割を担う。さらに、DEJは成長因子のための重要な貯留部として機能する。最後に、DEJは治癒の過程でケラチン生成細胞を支持する。
【0007】
DEJは2つの板状構造体(laminae)((A)基底層と(B)網状層)からなる。
表皮細胞が接着する基底層(basal lamina)(A)については、以下の通りである。基底層は、透明層(lamina lucida)と緻密層(lamina densa)の2つの層からなる。基底層には、IV型コラーゲン、プロテオグリカンおよび糖たんぱく質といった成分、すなわち、板状構造体を形成する係留繊維(anchoring filaments)を構成する成分が存在する。ラミニンはケラチン生成細胞の基底層への接着を可能にする糖タンパク質である。ラミニン類の多くが基底層に存在し、そのうち最も一般的なのがラミニン−5、ラミニン−6、ラミニン−7およびラミニン−1である。ラミニン−5(ラミニン−332とも呼ばれる)は多目的なマトリックス タンパク質であり、皮膚の基底膜で最も多く見られるラミニンである。ラミニン−5は、表皮の細胞にとって最も一般的な接着タンパク質である。ラミニン−5には2つの働きがあり、その1つは、強力で戦略的な細胞接着を誘導することであり、もう1つは、細胞移動のための弱い一時的な接着を行なうことである。ラミニン−5が、表皮を係留する機能を有するだけでなく、皮膚の治癒の過程でケラチン生成細胞の移動においても機能するという点で、上記2つの働きを示すというラミニン−5の特性は皮膚でよく発揮されている。皮膚の治癒に関するin vivoの研究では、傷の細胞移動増殖ゾーン(colonization zone)に存在するケラチン生成細胞のECMで前駆体型ラミニン−5の発現が増加することが示されており、前駆体型ラミニン−5のタンパク質分解的成熟が起きないことで細胞移動が促進されることを示唆している。さらにラミニン−5は、細胞再構成と瘢痕形成に重要な役割を持つ。
【0008】
網状層(reticular lamina)(B)については、以下の通りである。網状層は緻密下層(sub-lamina densa)とも呼ばれ、真皮に結合されており、VII型コラーゲン繊維、III型コラーゲン繊維、I型コラーゲン繊維および塩基性物質を構成成分の一部とする緻密なマトリックスである。VII型コラーゲンは主にケラチン生成細胞で合成され、緻密下層の主成分であり、代表的な必須の係留繊維である。係留繊維タンパク質であるこのVII型コラーゲンは、緻密層のラミニン−5またはIV型コラーゲンに結合しており、また、下方の細胞外マトリックスの中まで届いている。係留繊維は強固な構造体を形成し、その機能は、緻密層を乳頭層に係留することであり、係留部分で真皮のI型コラーゲン繊維、III型コラーゲン繊維およびV型コラーゲン繊維に付着している。VII型コラーゲンの各3重螺旋のN末端には、球状のNC1ドメインが隣接している。これらのVII型コラ-ゲン繊維の鎖の2本が各C末端部分で互いに結合して2量体を形成している。これらの2量体は縞模様のある短い繊維であり、互いの側面が結合して係留繊維を形成する。VII型コラーゲンのNC1ドメインはラミニン−5に付着して基底膜を真皮に係留しており、VII型コラーゲンはNC1ドメインを通じて細胞外マトリックスの他の成分と相互作用する。真皮において、VII型コラーゲンは他の型のコラーゲン(I型およびIII型)に結合している。特定の遺伝的または孤立的な疾患は、VII型コラーゲンの欠損に起因する可能性があるように見受けられる。基底層および/または網状層のいずれの分子(たとえばコラーゲン、プロテオグリカン、およびラミニンを含む糖タンパク質)も、ここではDEJ分子と称する。
【0009】
皮膚の加齢は2つの過程に起因する。(1)1つは内在的過程で、年齢によるものであり、(2)もう1つは、外的要因による過程で、主に、太陽光線や環境汚染への暴露という有害な影響に起因するものである。
【0010】
加齢においては真皮の結合成分に大きな変化が見られる。具体的には、コラーゲンの規則的な繊維束状外観が緩むと同時に、細胞間物質が増え、弾性物質が減り、線維芽細胞数の変動が止まる。また、皮膚加齢の過程では、DEJの機械的機能を発揮する能力の減少が進み、表皮−真皮の界面が弱くなる。結果として生じる皮膚加齢の内容は個人によって異なり、遺伝的背景や種々の攻撃への暴露程度に関連する。
【0011】
化粧品科学の研究の1つの目的は、皮膚加齢を制御または予防することである。ケラチン生成細胞の供給と線維芽細胞の代謝に基づく従来のアプローチは、特にDEJに関する最近のデータに鑑みて適切ではないことが、今や知られている。
【0012】
したがって、皮膚の加齢などの皮膚疾患を予防および/または治療するための新たなアプローチの開発が必要とされている。
【0013】
より詳細には、本発明においては、式I(配列番号5)で表される化合物、そのラセミ化合物、鏡像異性体、およびジアステレオ異性体からなる群より選ばれる少なくとも1種またはその塩が提供される。

R−A−Gly−His−B−R' (I)

但し、式中:
AとBの各々は、相互に独立的に、L−リシン残基、D−リシン残基、およびL−またはD−リシン残基(但し側鎖のNH2基が(i)水素置換、(ii)アセチル化、(iii)ベンゾイル化または(iv)パルミトイル化されることにより変性されている)からなる群より選ばれる1種であり;
Glyはグリシン残基であり;
HisはL−またはD−ヒスチジン残基であり;
Rは式 CH3−(CH2n−CO−(但し n = 2、3、4、5、6、7または8)で表されるアミノ末端変性基であり;
R’は式(II)で表される基である:

N(Z)(Z') (II)

但し、式中:
ZとZ’の各々は、相互に独立的に、水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、ヘキシル基、デシル基またはヘキサデシル基である。
【0014】
本発明の化合物の1つの具体的態様においては、n = 4、5または6である。本発明の化合物の他の1つの具体的態様においては、ZとZ’がいずれも水素原子である。本発明の化合物の他の1つの具体的態様においては、AとBの各々が、相互に独立的に、L−リシン残基またはD−リシン残基である。本発明の化合物の他の1つの具体的態様においては、リシン残基とヒスチジン残基がL型である。本発明の化合物の他の1つの具体的態様においては、該化合物は、CH3−(CH24−CO−Lys−Gly−His−Lys−NH2(配列番号1)またはCH3−(CH26−CO−Lys−Gly−His−Lys−NH2(配列番号2)で表される。本発明の化合物の他の1つの具体的態様においては、該化合物は、CH3−(CH24−CO−Lys−Gly−His−Lys−NH2(配列番号1)で表される。配列番号1〜4においては、−Lys−NH2は、リシン残基のカルボキシル基のアミド化(すなわち−CONH2)を意味する。
【0015】
本発明の他の1つの態様においては、本発明の化合物の有効量と、局所用に、化粧品用にまたは薬学的に許容される賦形剤または担体とを含むことを特徴とする組成物が提供される。
【0016】
本発明の他の1つの態様においては、患者の皮膚疾患を予防、減少、減速または治療するための組成物であって、本発明の化合物と、局所用に、化粧品用に、または薬学的に許容される賦形剤または担体とを含むことを特徴とする組成物が提供される。
【0017】
本発明の他の1つの態様においては、生物システムにおいて少なくとも1種の真皮表皮接合(DEJ)分子の生産を誘導または増加するための組成物であって、本発明の化合物と、局所用に、化粧品用に、または薬学的に許容される賦形剤または担体とを含むことを特徴とする組成物が提供される。
【0018】
本発明の他の1つの態様においては、患者の皮膚疾患を予防、減少、減速または治療するために用いられることを特徴とする本発明の化合物が提供される。
【0019】
本発明の他の1つの態様においては、生物システムにおいて少なくとも1種の真皮表皮接合(DEJ)分子の生産を誘導または増加するために用いられることを特徴とする本発明の化合物が提供される。
【0020】
本発明の組成物の1つの具体的態様においては、有効量が約10-8M〜約10-2Mの範囲である。本発明の組成物の他の1つの具体的態様においては、有効量が約10-6M〜約10-5Mの範囲である。本発明の組成物の他の1つの具体的態様においては、該組成物は局所用組成物である。本発明の組成物の他の1つの具体的態様においては、該組成物は水溶液、クリーム、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、ゲル、スプレー、軟膏、ローション、またはペーストである。本発明の組成物の他の1つの具体的態様においては、該組成物は少なくとも1種の追加の有効成分をさらに含む。
【0021】
本発明の他の1つの態様においては、本発明の化合物または本発明の組成物の、皮膚疾患を予防、減少、減速または治療することへの使用が提供される。
【0022】
本発明の1つの具体的態様においては、本発明の化合物または本発明の組成物の、皮膚疾患を予防、減少、減速または治療するための薬剤の製造への使用が提供される。
【0023】
本発明の他の1つの具体的態様においては、皮膚疾患が加齢関連の皮膚疾患である。本発明の他の1つの具体的態様においては、加齢関連の皮膚疾患が、(a)皮膚の皺、(b)皮膚の細線、または(c)皮膚の皺(a)と皮膚の細線(b)の両方の発生または存在である。本発明の他の1つの具体的態様においては、皮膚疾患が皮膚の損傷である。本発明の他の1つの具体的態様においては、皮膚の損傷が、外科治療、皮膚擦傷法、レーザー治療またはピーリングに関連する。
【0024】
本発明の他の1つの具体的態様においては、生物システムにおける少なくとも1種の真皮表皮接合(DEJ)分子の生産の誘導または増加のための、本発明の化合物または本発明の組成物の使用が提供される。
【0025】
本発明の他の1つの具体的態様においては、該少なくとも1種のDEJ分子が、(a)ラミニン−5、(b)VII型コラーゲン、または(c)ラミニン−5(a)とVII型コラーゲン(b)の両方である。本発明の他の1つの具体的態様においては、生物システムが細胞、組織、または器官である。本発明の他の1つの具体的態様においては、細胞が皮膚細胞である。本発明の他の1つの具体的態様においては、器官が皮膚である。
【0026】
本発明の他の1つの態様においては、患者の皮膚疾患を予防、減少、減速または治療するための方法であって、本発明の化合物の有効量または本発明の組成物の有効量を患者に投与することを含むことを特徴とする方法が提供される。本発明の方法の1つの具体的態様においては、皮膚疾患が加齢関連の皮膚疾患である。本発明の方法の他の1つの具体的態様においては、加齢関連の皮膚疾患が、(a)皮膚の皺、(b)皮膚の細線、または(c)皮膚の皺(a)と皮膚の細線(b)の両方の発生または存在である。本発明の方法の他の1つの具体的態様においては、皮膚疾患が皮膚の損傷である。本発明の方法の他の1つの具体的態様においては、皮膚の損傷が、外科治療、皮膚擦傷法、レーザー治療またはピーリングに関連する。本発明の方法の他の1つの具体的態様においては、投与が局所投与である。本発明の方法の他の1つの具体的態様においては、有効量が約10-8M〜約10-2Mの範囲である。本発明の方法の他の1つの具体的態様においては、有効量が約10-6M〜約10-5Mの範囲である。
【0027】
本発明の他の1つの態様においては、生物システムにおいて少なくとも1種の真皮表皮接合(DEJ)分子の生産を誘導または増加するための方法であって、該生物システムに本発明の化合物または本発明の組成物を接触させることを含むことを特徴とする方法が提供される。本発明の方法の1つの具体的態様においては、該少なくとも1種のDEJ分子が、(a)ラミニン−5、(b)VII型コラーゲン、または(c)ラミニン−5(a)とVII型コラーゲン(b)の両方である。本発明の方法の他の1つの具体的態様においては、生物システムが細胞、組織、または器官である。本発明の方法の他の1つの具体的態様においては、細胞が皮膚細胞である。本発明の方法の他の1つの具体的態様においては、器官が皮膚である。
【0028】
本発明の他の1つの態様においては、本発明の化合物または本発明の組成物と、患者の皮膚疾患を予防、減少、減速または治療するための指示とを含むことを特徴とするキットまたはパッケージが提供される。
【0029】
本発明の他の1つの態様においては、本発明の化合物または本発明の組成物と、容器とを含むことを特徴とするキットまたはパッケージが提供される。
【0030】
本発明のその他の諸目的、諸利益並びに諸特徴は、添付の図面を参照しながら述べる以下の具体的態様の記載から明らかになるが、以下の具体的態様は例示であって、本発明を制限するものではない。
【0031】
発明の詳細な説明
本出願人は、一群の化合物、より詳細には下記式(I)の化合物が、皮膚疾患の処置、たとえば加齢の皮膚への影響を予防、減速、減少または治療するために有用であることを見出した。
【0032】
したがって、本発明によると、式(I)(配列番号5)で表される化合物、そのラセミ化合物、鏡像異性体、およびジアステレオ異性体からなる群より選ばれる少なくとも1種またはその塩が提供される。

R−A−Gly−His−B−R' (I)
【0033】
但し、式中:
AとBの各々は、相互に独立的に、L−リシン残基、D−リシン残基、およびL−またはD−リシン残基(但し側鎖のNH2基が(i)水素置換などの脱アミノ化、(ii)アセチル化、(iii)ベンゾイル化または(iv)パルミトイル化されることにより変性されている)からなる群より選ばれる1種であり;
【0034】
Glyはグリシン残基であり;
HisはL−またはD−ヒスチジン残基であり;
Rは式 CH3−(CH2n−CO−(但し n = 2、3、4、5、6、7または8)で表されるアミノ末端変性基であり;
R’は式(II)で表される基である:

N(Z)(Z') (II)
【0035】
但し、式中:
ZとZ’の各々は、相互に独立的に、水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、ヘキシル基、デシル基またはヘキサデシル基である。
【0036】
1つの具体的態様においては、上記リシン残基の変性基は、リシンの側基/側鎖のアミン官能性を保護するための保護基である。
【0037】
具体的態様においては、上記アミノ末端変性基Rは、皮膚に浸透しやすい有用な親水性/親油性バランスを提供する。
【0038】
式(I)で表される化合物は、鏡像異性体またはジアステレオ異性体として、1個または2個以上の不斉炭素原子を有してもよい。したがって、本発明の化合物は、式(I)で表される化合物の鏡像異性体およびジアステレオ異性体からなる群より選ばれる少なくとも1種でもよく、そのラセミ混合物でもよい。
【0039】
ある態様においては、本発明の化合物は、CH3−(CH24−CO−Lys−Gly−His−Lys−NH2(配列番号1)またはCH3−(CH26−CO−Lys−Gly−His−Lys−NH2(配列番号2)で表される。さらなる1つの態様においては、本発明の化合物は、CH3−(CH24−CO−Lys−Gly−His−Lys−NH2(配列番号1)で表される。
【0040】
本発明の化合物におけるアミノ酸は、天然のL型、非天然のD型、またはそれらのラセミ混合物(DL型)のいずれでもよい。
【0041】
本発明の化合物の1つの具体的態様においては、リシン残基とヒスチジン残基がL型である。
【0042】
式(I)で表される本発明の化合物は、古典的な化学合成法または酵素による合成法を用いる、当業者に周知の方法で製造できる。
【0043】
本発明においては、式(I)で表される化合物を、下記の化学合成法により溶液中でまたは固体担体上(たとえば樹脂担体上)で製造することができる。この目的に使用できる樹脂としては、Rink樹脂(すなわち4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmoc−アミノメチル)−フェノキシ樹脂)(H. Rink, Tetrahedron Let., 1987, 28, 3787)とMBHA樹脂(すなわち4−メチル−ベンズヒドリルアミン樹脂)(G.R. Matsueda et al., Peptides, 1981, 2, 45)が挙げられる。
【0044】
得られる初期生成物は、通常、保護されたアミノ酸である。保護基としては、アセチル(Ac)基または9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)基(1級アミノ官能性を保護する)、tert−ブチロキシカルボニル(Boc)基、トリチル(Trt)基、および2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル(Pmc)基(側鎖官能性を保護する)などが挙げられる。アミノ酸/ペプチドを洗浄、カップリングおよび脱保護する方法は当業界に周知である。こうして得られたペプチドを当業界に周知の方法(たとえば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)やで質量分析法)で分析してもよい。
【0045】
本発明の化合物は、当業界に周知の方法で変性することにより、たとえば、安定性および/または吸収性/吸着性および/または他のいかなる所望の特徴や特性を向上させてもよい。たとえば、本発明の化合物を環化させることができ、また、化合物の電荷を中和させてもよいし、他の化学物質に結合させてもよい。
【0046】
本発明の化合物は、生理学的に許容される有機酸または無機酸を用いて得られる塩の形態でもよい。1つの態様においては、本発明の化合物を塩の形態とすることにより、化合物が安定化され、また、肌への適合性が向上する。1つの態様においては、該塩は酢酸塩である。
【0047】
本発明の他の1つの態様においては、式(I)で表される化合物またはその塩を含む組成物(たとえば化粧品組成物、皮膚科学的組成物および医薬組成物)または補助食品が提供される。
【0048】
本発明には、本発明の化合物の有効量を患者に投与して所望の結果を得る方法も含まれる。本発明の化合物が、たとえば局所投与される場合は、本発明の組成物における式(I)で表される化合物の濃度は約10-8M〜約10-2Mの範囲である。さらなる1つの態様においては、本発明の組成物における式(I)で表される化合物の濃度は約10-6M〜約10-5Mの範囲である。他の1つの態様においては、本発明の組成物における式(I)で表される化合物の濃度は約0.5mg/kg〜約50mg/kg(すなわち0.5〜50ppm、言い換えれば0.88×10-6M〜0.88×10-4M)の範囲である。
【0049】
式(I)で表される本発明の化合物は、局所的に適用可能な化粧品組成物(たとえば局所用処方剤)として処方されてもよい。局所的に適用可能な組成物の例としては、以下に列挙するものを挙げることができるが、これらに限定されない。スキンケアクリーム、クレンジングクリーム、軟膏、スキンケアローション、スキンケアゲル、スキンケアフォーム、サンケア組成物、メイクアップ除去クリーム、メイクアップ除去ローション、ファンデーションクリーム、液状ファンデーション、バス・シャワー用調製剤、デオドラント組成物、制汗用組成物、髭剃り用組成物、アフターシェービングゲルまたはローション、美容補助組成物、脱毛剤クリーム、石鹸組成物、ハンドクリーナー組成物、クレンジングバー、ベビーケア、ヘアーケア、シャンプー、セッティングローション、トリートメントローション、ヘアークリーム、ヘアーゲル、カラーリング組成物、再構成用組成物、パーマネント用組成物、抜け毛防止用組成物、その他の美容用の局所適用に適合した全ての組成物。
【0050】
医薬処方剤と薬用化粧品処方剤の分野では周知のように、クリームは、高粘度の液体、または半固体のエマルジョン(水中油型または油中水型)である。クリームの基剤は水で洗い流せるものであり、油相、乳化剤および水相を含む。油相は「内」相とも呼ばれ、一般にペトロラタムと脂肪アルコール(セチルアルコールやステアリルアルコールなど)からなる。水相は通常(必ずではないが)油相よりも容積が大きく、一般に湿潤剤(humectant)を含む。クリーム処方剤中の乳化剤は、一般に、非イオン性、アニオン性、カチオン性または両性の界面活性剤である。
【0051】
ローションは、皮膚の表面に滑らかに適用される調製剤であり、典型的には液体または半液体の調製剤であり、有効成分を含む個体粒子が水またはアルコール媒体中に存在する構成を有する。ローションは通常、固体成分の懸濁体であり、本発明においては、好ましくは、水中油型の液状油性エマルジョンである。ローションは流動性が高いので塗りやすく、広い体表面に適用するのに好ましい処方である。一般に、ローション中の不溶成分は微細化していることが必要である。ローションには、典型的には懸濁剤が含まれて分散状態を向上し、また、有効成分を皮膚に局在させ保持するのに有用な化合物(たとえばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど)も含まれる。
【0052】
溶液は、1種または2種以上の化学物質(溶質)を液体中に溶解して、溶解した化学物質の分子を溶媒分子の間に分散させて得られる均一な混合物である。溶液は、薬用化粧品用に許容される他の化学物質を含有して、溶質に対する緩衝効果、安定効果、保存効果を発揮させてもよい。溶液を調製するための溶媒の代表例は、エタノール、水、プロピレングリコールであり、また、薬用化粧品用に許容されるその他のいかなる溶媒も使用できる。
【0053】
ゲルは、半固体の懸濁体型の系である。単相ゲルは、典型的に水性の液状担体に実質的に均一に分散した巨大有機分子を含み、また、好ましくはさらにアルコールと、所望により油を含有する。「巨大有機分子」、すなわちゲル化剤は、「カルボマー」類のポリマーなどの架橋アクリル酸ポリマーであり、「カルボマー」類としては、たとえば、Carbopol(登録商標)の名称で市販されるカルボキシポリアルキレンが挙げられる。ゲル化剤の他の例としては、ポリエチレンオキサイド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、およびポリビニルアルコールなどの親水性ポリマー;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびメチルセルロースなどのセルロース系ポリマー;トラガカントおよびキサンタンガムなどのガム;アルギン酸ナトリウム;およびゼラチンが挙げられる。均一なゲルを製造するためには、アルコールやグリセリンなどの分散剤を添加することができ、または、ゲル化剤を粉砕、機械的混合、撹拌またはこれらの組み合わせにより分散させることができる。
【0054】
軟膏は、典型的にはペトロラタムやその他の石油誘導体に基づく半固体の調製剤である。当業者が適切と考える軟膏基材の具体例は、多くの望ましい特性(たとえば皮膚軟化作用)を有するものである。他の担体やベヒクルの場合と同様に、軟膏基材は不活性で、安定で、非刺激性で、非感作性であることが必要である。Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th Ed. (Easton, Pa.: Mack Publishing Co., 1995), p. 1399 - 1404 に述べられるように、軟膏基材は以下の4種類に分類できる:油性基材;乳化性基材;乳化基材;および水溶性基材。油性軟膏基材の例としては、植物油、動物由来の脂肪、および石油由来の半固体の炭化水素などが挙げられる。乳化性軟膏基材は吸収性軟膏基材とも呼ばれ、水をほとんどまたは全く含まず、例としては、硫酸ヒドロキシステアリン、無水ラノリン、および親水性ペトロラタムが挙げられる。乳化軟膏基材は油中水(W/O)エマルジョンまたは水中油(O/W)エマルジョンであり、例としては、セチルアルコール、グリセリルモノステアレート、ラノリン、ステアリン酸が挙げられる。好ましい水溶性軟膏基材は種々の分子量のポリエチレングリコールから製造される。更なる情報については、上記のRemington: The Science and Practice of Pharmacyを参照されたい。
【0055】
ペーストは半固体の投与形態であり、有効成分が適切な基材に懸濁している。基材の特性に応じて、ペーストは、脂肪ペーストと、単相水性ゲルから得られるペーストとに分けられる。脂肪ペーストの基材は、通常、ペトロラタム、親水性ペトロラタムなどである。単相水性ゲルから得られるペーストは、一般に、カルボキシメチルセルロースなどを基材として含んでいる。
【0056】
処方剤は、リポソーム、ミセル、およびマイクロスフィアから製造することもできる。リポソームは、脂質二重層を含む脂質壁を有する顕微鏡的な小胞であり、本発明においては、抗加齢処方剤の1種または2種以上の成分を封入する。リポソームからなる調製剤には、カチオン性(プラスの荷電)の調製剤、アニオン性(マイナスの荷電)の調製剤、および中性の調製剤がある。カチオン性リポソームは容易に入手できる。たとえば、N[1−2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウム(DOTMA)リポソームは、Lipofectin(登録商標)(ニューヨーク州、グランドアイランド、GIBCO BRL 社製)の名称で市販されている。同様に、アニオン性リポソームと中性リポソームは、たとえばAvanti Polar Lipids 社(アラバマ州、バーミンガム)から市販されており、また、入手容易な原料から容易に製造できる。そのような原料の例としては、フォスファチジルコリン、コレステロール、フォスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルフォスファチジルコリン(DOPC)、ジオレオイルフォスファチジルグリセロール(DOPG)、およびジオレオイルフォスファチジルエタノールアミン(DOPE)が挙げられる。これらの原料はDOTMAと適当な比率で混合してもよい。これらの原料を用いてリポソームを製造する方法は当業界に周知である。
【0057】
ミセルは、界面活性剤の分子が配列して、分子の極性頭部が外側の球状シェルを形成し、分子の疎水性炭化水素鎖が球状シェルの中心に配向してコアを形成することにより構成されるものであることが当業界で知られている。ミセルは、ミセルが自然に形成されるのに充分な高濃度の界面活性剤を含む水溶液中で形成する。ミセル形成に有用な界面活性剤の例としては以下に列挙するものが挙げられるが、これらに限定されない。ラウリル酸カリウム、オクタンスルホン酸ナトリウム、デカンスルホン酸ナトリウム、ドデカンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム、ドクサートナトリウム、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルアンモニウムクロリド、ポリオキシ−8ドデシルエーテル、ポリオキシ−12ドデシルエーテル、ノノキシノール10、およびノノキシノール30。
【0058】
同様に、マイクロスフィアも本発明の処方剤に用いることができる。リポソームやミセルのように、マイクロスフィアも本発明の処方剤の1種または2種以上の成分を封入することができる。マイクロスフィアは一般に(必ずではないが)脂質、好ましくは電荷を有する脂質(たとえばリン脂質)から形成される。脂質性マイクロスフィアの製造は当業界に周知であり、関連の教科書や文献に記載されている。
【0059】
本発明の1つの態様においては、本発明の組成物は少なくとも1種の追加の有効成分/薬剤をさらに含む。本発明のさらなる1つの態様においては、上記少なくとも1種の追加の有効成分は、細胞分化、細胞代謝性活性、細胞構造、細胞増殖、細胞外の過程、および色素形成からなる群より選ばれる少なくとも1種を調節する。
【0060】
本発明の組成物は、以下に列挙する薬剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の薬剤をさらに含んでもよい。細胞分化または細胞増殖を調節する薬剤、緩和剤(anesthesic agent)、抗アクネ剤、抗加齢剤、抗菌剤、抗セルライト剤、抗真菌剤、抗炎症剤、抗刺激剤、抗酸化剤、抗寄生虫剤、抗汚染剤、抗掻痒剤、抗しゅさ性アクネ剤(antirosacea agent)、抗脂漏症剤、抗ストレス剤、抗毛細管拡張症剤、抗ウイルス剤、皺予防剤、ベビーケア剤、バス・ボディ剤、カーミング剤(calming agent)、クレンジング剤、コラーゲン合成剤、エラスターゼ阻害剤、剥離剤(exfoliant agent)、フェイシャルピーリング剤、皮膚引き締め剤(firming agent)、フットケア剤、フリーラジカル消去剤、免疫機能調節剤、角質溶解剤、皺伸ばし剤(lift agent)、メイクアップ除去剤、メラニン形成刺激剤、ヘアーケア剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、保湿剤(moisturizing agent)、油吸収剤、浸透圧調節剤、光老化予防剤、保護剤(protecting agent)、リジュビネーティング剤(rejuvenating agent)、再生剤(regenerating agent)、再構成剤(restructuring agent)、敏感肌用剤(sensitive skin agent)、髭剃り用剤、皮膚防御強化剤(skin defense enhancer agent)、透明美肌化剤(skin clarifier agent)、皮膚修復剤、スリミング剤(slimming agent)、スムージング剤(smoothing agent)、柔軟化剤、スージング剤(soothing agent)、サンケア剤、サンレスタンニング剤、緊張化剤(tensing agent)、ホワイトニング剤、および、化粧品組成物を局所適用することを含む美容施法における使用に適したその他のあらゆる薬剤であって、本発明の化合物の効果を補完または補充するもの。
【0061】
細胞分化または細胞増殖を調節する薬剤の例としては以下に列挙するものが挙げられるが、これらに限定されない。植物抽出物、藻類抽出物、果物抽出物、野菜抽出物、豆科植物抽出物、発酵体、プロテアーゼ加水分解物、ペプチド、酵母抽出物およびその誘導体、微生物抽出物、動物由来抽出物、および合成化合物。更に詳しい例としては、レチノイン酸およびその誘導体(レチノール、レチンアルデヒド、パルミチン酸レチニル、トランスレチノイン酸、13−シスレチノイン酸、9−シスレチノイン酸、レチノイルグルクロニド、トレチノイン、イソトレチノイン、エトレチナート、アシトレチン、タザロテン、アダパレン、β−カロテン、レチニルエステル)、ビタミンDおよびその誘導体(コレカルシフェロール、エルゴカルシフェロール、25−ヒドロキシコレカルシフェロール)、成長因子、およびエストラジオール誘導体が挙げられる。
【0062】
緩和剤の例としては以下に列挙するものが挙げられるが、これらに限定されない。植物抽出物、藻類抽出物、果物抽出物、野菜抽出物、豆科植物抽出物、発酵体、プロテアーゼ加水分解物、ペプチド、酵母抽出物およびその誘導体、微生物抽出物、動物由来抽出物、および合成化合物。更に詳しい例としては、リドカインクロロハイドレートおよびその誘導体が挙げられる。
【0063】
抗アクネ剤の例としては以下に列挙するものが挙げられるが、これらに限定されない。植物抽出物、藻類抽出物、果物抽出物、野菜抽出物、豆科植物抽出物、発酵体、プロテアーゼ加水分解物、ペプチド、酵母抽出物およびその誘導体、微生物抽出物、動物由来抽出物、および合成化合物。更に詳しい例としては、過酸化ベンゾイル、レチノイン酸およびその誘導体(レチノール、レチンアルデヒド、パルミチン酸レチニル、トランスレチノイン酸、13−シスレチノイン酸、9−シスレチノイン酸、レチノイルグルクロニド、トレチノイン、イソトレチノイン、エトレチナート、アシトレチン、タザロテン、アダパレン、β−カロテン、レチニルエステル)、サリチル酸、硫黄、硫化石灰、アルコール、およびアセトンが挙げられる。
【0064】
抗加齢剤と皺予防剤の例としては以下に列挙するものが挙げられるが、これらに限定されない。植物抽出物、藻類抽出物、果物抽出物、野菜抽出物、豆科植物抽出物、発酵体、プロテアーゼ加水分解物、ペプチド、酵母抽出物およびその誘導体、微生物抽出物、動物由来抽出物、および合成化合物。更に詳しい例としては、ヒアルロン酸、2−ピロリドンカルボン酸ナトリウム、グリコサミノグリカン、カイネチン、レチノイン酸およびその誘導体(レチノール、レチンアルデヒド、パルミチン酸レチニル、トランスレチノイン酸、13−シスレチノイン酸、9−シスレチノイン酸、レチノイルグルクロニド、トレチノイン、イソトレチノイン、エトレチナート、アシトレチン、タザロテン、アダパレン、β−カロテン、レチニルエステル)、上皮細胞増殖因子、セラミド、エチルビスイミノメチルグアイアコールマンガンクロリド、糖化反応阻害剤(glycation inhibitor)、シマカンギク(chrysanthemum indicum)抽出物、およびブルーグリーンアルジー(aphanizomenon flos aquae)抽出物が挙げられる。
【0065】
抗菌剤の例としては以下に列挙するものが挙げられるが、これらに限定されない。植物抽出物、藻類抽出物、果物抽出物、野菜抽出物、豆科植物抽出物、発酵体、プロテアーゼ加水分解物、ペプチド、酵母抽出物およびその誘導体、微生物抽出物、動物由来抽出物、および合成化合物。更に詳しい例としては、ユーカリ抽出物、リン酸クリンダマイシン、カルバクロール、エリスロマイシン、およびテトラサイクリン類に属する抗生物質が挙げられる。
【0066】
抗真菌剤の例としては以下に列挙するものが挙げられるが、これらに限定されない。植物抽出物、藻類抽出物、果物抽出物、野菜抽出物、豆科植物抽出物、発酵体、プロテアーゼ加水分解物、ペプチド、酵母抽出物およびその誘導体、微生物抽出物、動物由来抽出物、および合成化合物。更に詳しい例としては、エコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、アンフォテリシンB、テルビナフィン、およびオクトピロックスが挙げられる。
【0067】
抗炎症剤の例としては以下に列挙するものが挙げられるが、これらに限定されない。植物抽出物、藻類抽出物、果物抽出物、野菜抽出物、豆科植物抽出物、発酵体、プロテアーゼ加水分解物、ペプチド、酵母抽出物およびその誘導体、微生物抽出物、動物由来抽出物、および合成化合物。更に詳しい例としては、アラントイン、ビタミンEおよびその誘導体(α−トコフェロール、δ−トコフェロール、γ−トコフェロール)、カモミル油、イチョウ油、およびチャノキ(camellia sinensis)抽出物が挙げられる。
【0068】
抗刺激剤/スージング剤/スムージング剤/カーミング剤の例としては以下に列挙するものが挙げられるが、これらに限定されない。植物抽出物、藻類抽出物、果物抽出物、野菜抽出物、豆科植物抽出物、発酵体、プロテアーゼ加水分解物、ペプチド、酵母抽出物およびその誘導体、微生物抽出物、動物由来抽出物、および合成化合物。更に詳しい例としては、アラントイン、チャノキ(camellia sinensis)抽出物、ラベンダー油、アロエベラ、リンデン抽出物、ヤナギラン(epilobium angustifolium)抽出物、シマカンギク(chrysanthemum indicum)抽出物、コラノキ(cola nitida)抽出物、およびアルテロモナス(alteromonas)発酵抽出物が挙げられる。
【0069】
抗酸化剤の例としては以下に列挙するものが挙げられるが、これらに限定されない。植物抽出物、藻類抽出物、果物抽出物、野菜抽出物、豆科植物抽出物、発酵体、プロテアーゼ加水分解物、ペプチド、酵母抽出物およびその誘導体、微生物抽出物、動物由来抽出物、および合成化合物。更に詳しい例としては、フルフリルアデニン、パンテノール、リポ酸、ユビキノン、ナイアシンアミド、メラトニン、カタラーゼ、グルタチオン、スーパーオキシドジスムターゼ、ポリフェノール、システイン、アラントイン、カイネチン、ビタミンCおよびその誘導体(パルミチン酸アスコルビル、リン酸アスコルビルマグネシウム、リン酸アスコルビルナトリウム)、ビタミンEおよびその誘導体(α−トコフェロール、δ−トコフェロール、γ−トコフェロール)、グレープシード抽出物、およびチャノキ(camellia sinensis)抽出物が挙げられる。
【0070】
抗掻痒剤の例としては以下に列挙するものが挙げられるが、これらに限定されない。植物抽出物、藻類抽出物、果物抽出物、野菜抽出物、豆科植物抽出物、発酵体、プロテアーゼ加水分解物、ペプチド、酵母抽出物およびその誘導体、微生物抽出物、動物由来抽出物、および合成化合物。更に詳しい例としては、テナルジン、トリメプラジン、およびシプロヘプタジンが挙げられる。
【0071】
抗しゅさ性アクネ剤(antirosacea agent)と抗毛細管拡張症剤の例としては以下に列挙するものが挙げられるが、これらに限定されない。植物抽出物、藻類抽出物、果物抽出物、野菜抽出物、豆科植物抽出物、発酵体、プロテアーゼ加水分解物、ペプチド、酵母抽出物およびその誘導体、微生物抽出物、動物由来抽出物、および合成化合物。更に詳しい例としては、メトロニダゾール、血管収縮剤、過酸化ベンゾイル、アゼライン酸、硫黄、大豆タンパク質、およびグリコサミノグリカンが挙げられる。
【0072】
抗脂漏症剤の例としては以下に列挙するものが挙げられるが、これらに限定されない。植物抽出物、藻類抽出物、果物抽出物、野菜抽出物、豆科植物抽出物、発酵体、プロテアーゼ加水分解物、ペプチド、酵母抽出物およびその誘導体、微生物抽出物、動物由来抽出物、および合成化合物。更に詳しい例としては、プロゲステロン誘導体、イソリュートロール、およびヒノキチオールが挙げられる。
【0073】
敏感肌用剤の例としては以下に列挙するものが挙げられるが、これらに限定されない。植物抽出物、藻類抽出物、果物抽出物、野菜抽出物、豆科植物抽出物、発酵体、プロテアーゼ加水分解物、ペプチド、酵母抽出物およびその誘導体、微生物抽出物、動物由来抽出物、および合成化合物。更に詳しい例としては、ローズ油、およびジャスミン油が挙げられる。
【0074】
クレンジング剤の例としては以下に列挙するものが挙げられるが、これらに限定されない。植物抽出物、藻類抽出物、果物抽出物、野菜抽出物、豆科植物抽出物、発酵体、プロテアーゼ加水分解物、ペプチド、酵母抽出物およびその誘導体、微生物抽出物、動物由来抽出物、および合成化合物。更に詳しい例としては、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウレス硫酸アンモニウム、コカミドMEA、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ステアリン酸ナトリウム、およびイラクサ葉抽出物が挙げられる。
【0075】
コラーゲン合成剤の例としては以下に列挙するものが挙げられるが、これらに限定されない。植物抽出物、藻類抽出物、果物抽出物、野菜抽出物、豆科植物抽出物、発酵体、プロテアーゼ加水分解物、ペプチド、酵母抽出物およびその誘導体、微生物抽出物、動物由来抽出物、および合成化合物。更に詳しい例としては、レチノイン酸およびその誘導体(レチノール、レチンアルデヒド、パルミチン酸レチニル、トランスレチノイン酸、13−シスレチノイン酸、9−シスレチノイン酸、レチノイルグルクロニド、トレチノイン、イソトレチノイン、エトレチナート、アシトレチン、タザロテン、アダパレン、β−カロテン、レチニルエステル)、ビタミンCおよびその誘導体(パルミチン酸アスコルビル、リン酸アスコルビルマグネシウム、リン酸アスコルビルナトリウム)、および成長因子およびその誘導体が挙げられる。
【0076】
剥離剤(exfoliant agent)の例としては以下に列挙するものが挙げられるが、これらに限定されない。植物抽出物、藻類抽出物、果物抽出物、野菜抽出物、豆科植物抽出物、発酵体、プロテアーゼ加水分解物、ペプチド、酵母抽出物およびその誘導体、微生物抽出物、動物由来抽出物、および合成化合物。更に詳しい例としては、α/β−ヒロドキシ酸、サリチル酸、グリコール酸、乳酸、クエン酸(citrus acid)、およびクルミ殻粉が挙げられる。
【0077】
フェイシャルピーリング剤の例としては以下に列挙するものが挙げられるが、これらに限定されない。植物抽出物、藻類抽出物、果物抽出物、野菜抽出物、豆科植物抽出物、発酵体、プロテアーゼ加水分解物、ペプチド、酵母抽出物およびその誘導体、微生物抽出物、動物由来抽出物、および合成化合物。更に詳しい例としては、グリコール酸、乳酸、トリクロロ酢酸、およびフェノールが挙げられる。
【0078】
皮膚引き締め剤(firming agent)と緊張化剤(tensing agent)の例としては以下に列挙するものが挙げられるが、これらに限定されない。植物抽出物、藻類抽出物、果物抽出物、野菜抽出物、豆科植物抽出物、発酵体、プロテアーゼ加水分解物、ペプチド、酵母抽出物およびその誘導体、微生物抽出物、動物由来抽出物、および合成化合物。更に詳しい例としては、ジメチルアミノエタノール、向神経美容活性成分(neurocosmetic active)(Botox(登録商標)様成分)、キトサン、アルニカ抽出物、フェンネルスイート油、およびパパイヤ抽出物が挙げられる。
【0079】
フリーラジカル消去剤/抗汚染剤/抗ストレス剤の例としては以下に列挙するものが挙げられるが、これらに限定されない。植物抽出物、藻類抽出物、果物抽出物、野菜抽出物、豆科植物抽出物、発酵体、プロテアーゼ加水分解物、ペプチド、酵母抽出物およびその誘導体、微生物抽出物、動物由来抽出物、および合成化合物。更に詳しい例としては、グレープシード抽出物、α−トコフェロールおよびそのエステル、スーパーオキシドジスムターゼ、金属のキレート剤、およびビタミンCおよびその誘導体(パルミチン酸アスコルビル、リン酸アスコルビルマグネシウム、リン酸アスコルビルナトリウム)が挙げられる。
【0080】
ヘアーケア剤の例としては以下に列挙するものが挙げられるが、これらに限定されない。植物抽出物、藻類抽出物、果物抽出物、野菜抽出物、豆科植物抽出物、発酵体、プロテアーゼ加水分解物、ペプチド、酵母抽出物およびその誘導体、微生物抽出物、動物由来抽出物、および合成化合物。更に詳しい例としては、ポリ−D−グルコサミン、ポリ−N−アセチル−D−グルコサミン、ステアラルコニウムクロリド、およびラウリル硫酸トリエタノールアミンが挙げられる。
【0081】
マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤の例としては以下に列挙するものが挙げられるが、これらに限定されない。植物抽出物、藻類抽出物、果物抽出物、野菜抽出物、豆科植物抽出物、発酵体、プロテアーゼ加水分解物、ペプチド、酵母抽出物およびその誘導体、微生物抽出物、動物由来抽出物、および合成化合物。更に詳しい例としては、チャノキ(camellia sinensis)抽出物、ポリフェノール、ケイケットウ(spatholobi caulis)抽出物、ニシキギ(euonymus alatus)抽出物、キョウカツ(rhizoma notopterygii)抽出物、ケルセチン、グリコサミノグリカン、ポリメトキシフラボノイド、N−アセチル−システイン、2−フリルジオキシム、イソフラボン、ビタミンCおよびその誘導体(パルミチン酸アスコルビル、リン酸アスコルビルマグネシウム、リン酸アスコルビルナトリウム)、レチノイン酸およびその誘導体(レチノール、レチンアルデヒド、パルミチン酸レチニル、トランスレチノイン酸、13−シスレチノイン酸、9−シスレチノイン酸、レチノイルグルクロニド、トレチノイン、イソトレチノイン、エトレチナート、アシトレチン、タザロテン、アダパレン、β−カロテン、レチニルエステル)、およびヒドロキサム酸エステル誘導体が挙げられる。
【0082】
保湿剤(moisturizing agent)の例としては以下に列挙するものが挙げられるが、これらに限定されない。植物抽出物、藻類抽出物、果物抽出物、野菜抽出物、豆科植物抽出物、発酵体、プロテアーゼ加水分解物、ペプチド、酵母抽出物およびその誘導体、微生物抽出物、動物由来抽出物、および合成化合物。更に詳しい例としては、キュウリ抽出物、2−ピロリドンカルボン酸ナトリウム、PCAナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、キチンおよびその誘導体、α−ヒロドキシ酸、ヒアルロン酸、および加水分解コムギタンパク質が挙げられる。
【0083】
浸透圧調節剤の例としては以下に列挙するものが挙げられるが、これらに限定されない。植物抽出物、藻類抽出物、果物抽出物、野菜抽出物、豆科植物抽出物、発酵体、プロテアーゼ加水分解物、ペプチド、酵母抽出物およびその誘導体、微生物抽出物、動物由来抽出物、および合成化合物。更に詳しい例としては、マンニトール、ズルシトール、およびベタインが挙げられる。
【0084】
保護剤(protecting agent)の例としては以下に列挙するものが挙げられるが、これらに限定されない。植物抽出物、藻類抽出物、果物抽出物、野菜抽出物、豆科植物抽出物、発酵体、プロテアーゼ加水分解物、ペプチド、酵母抽出物およびその誘導体、微生物抽出物、動物由来抽出物、および合成化合物。更に詳しい例としては、ポリ−N−アセチル−D−グルコサミン、ポリ−D−グルコサミン、アルキロアミド、キトサン、シマカンギク(chrysanthemum indicum)抽出物、チャノキ(camellia sinensis)抽出物、およびアルテロモナス(alteromonas)発酵抽出物が挙げられる。
【0085】
リジュビネーティング剤(rejuvenating agent)の例としては以下に列挙するものが挙げられるが、これらに限定されない。植物抽出物、藻類抽出物、果物抽出物、野菜抽出物、豆科植物抽出物、発酵体、プロテアーゼ加水分解物、ペプチド、酵母抽出物およびその誘導体、微生物抽出物、動物由来抽出物、および合成化合物。更に詳しい例としては、ローズマリー抽出物、ローズウッド抽出物、ゼラニウム抽出物、およびビタミンEおよびその誘導体(α−トコフェロール、δ−トコフェロール、γ−トコフェロール)が挙げられる。
【0086】
皮膚修復剤の例としては以下に列挙するものが挙げられるが、これらに限定されない。植物抽出物、藻類抽出物、果物抽出物、野菜抽出物、豆科植物抽出物、発酵体、プロテアーゼ加水分解物、ペプチド、酵母抽出物およびその誘導体、微生物抽出物、動物由来抽出物、および合成化合物。更に詳しい例としては、レチノイン酸およびその誘導体(レチノール、レチンアルデヒド、パルミチン酸レチニル、トランスレチノイン酸、13−シスレチノイン酸、9−シスレチノイン酸、レチノイルグルクロニド、トレチノイン、イソトレチノイン、エトレチナート、アシトレチン、タザロテン、アダパレン、β−カロテン、レチニルエステル)、アラントイン、ユーカリ抽出物、ラベンダー油、ローズ油、コラーゲン合成に対する活性化剤、および皮膚の細胞外マトリックスの成分に対する活性化剤。
【0087】
スリミング剤(slimming agent)と抗セルライト剤の例としては以下に列挙するものが挙げられるが、これらに限定されない。植物抽出物、藻類抽出物、果物抽出物、野菜抽出物、豆科植物抽出物、発酵体、プロテアーゼ加水分解物、ペプチド、酵母抽出物およびその誘導体、微生物抽出物、動物由来抽出物、および合成化合物。更に詳しい例としては、シマカンギク(chrysanthemum indicum)抽出物、ジヒドロミリセチン、テオブロミン、テオフィリン、アミノフィリン、カフェイン、塩酸イソプロピルアルテレノール、エピネフリン、α−MSHアゴニスト、アデニル酸シクラーゼ活性化剤、およびホスホジエステラーゼ阻害剤が挙げられる。
【0088】
サンケア剤と光老化予防剤の例としては以下に列挙するものが挙げられるが、これらに限定されない。植物抽出物、藻類抽出物、果物抽出物、野菜抽出物、豆科植物抽出物、発酵体、プロテアーゼ加水分解物、ペプチド、酵母抽出物およびその誘導体、微生物抽出物、動物由来抽出物、および合成化合物。更に詳しい例としては、PABA(p−アミノベンゾイン酸)およびその誘導体、グルコノラクトン、サリチラート、シンナマート、ベンゾフェノン、ジベンゾイルメタン、オキシベンゾン、ビタミンEおよびその誘導体(α−トコフェロール、δ−トコフェロール、γ−トコフェロール)、エチルビスイミノメチルグアイアコール、塩化マンガン、グリコサミノグリカン、レチノイン酸およびその誘導体(レチノール、レチンアルデヒド、パルミチン酸レチニル、トランスレチノイン酸、13−シスレチノイン酸、9−シスレチノイン酸、レチノイルグルクロニド、トレチノイン、イソトレチノイン、エトレチナート、アシトレチン、タザロテン、アダパレン、β−カロテン、レチニルエステル)、二酸化チタン、メトキシ桂皮酸オクチル、ベンゾフェノン、サリチル酸オクチル、ヤナギラン(epilobium angustifolium)抽出物、ルメックス オクシデンタリス(rumex occidentalis)抽出物、シマカンギク(chrysanthemum indicum)抽出物、チャノキ(camellia sinensis)抽出物、およびアルテロモナス(alteromonas)発酵抽出物が挙げられる。
【0089】
サンレスタンニング剤とメラニン形成刺激剤の例としては以下に列挙するものが挙げられるが、これらに限定されない。植物抽出物、藻類抽出物、果物抽出物、野菜抽出物、豆科植物抽出物、発酵体、プロテアーゼ加水分解物、ペプチド、酵母抽出物およびその誘導体、微生物抽出物、動物由来抽出物、および合成化合物。更に詳しい例としては、α−MSHアゴニスト、アデニル酸シクラーゼ活性化剤、およびホスホジエステラーゼ阻害剤が挙げられる。
【0090】
色調節剤(toning agent)の例としては以下に列挙するものが挙げられるが、これらに限定されない。植物抽出物、藻類抽出物、果物抽出物、野菜抽出物、豆科植物抽出物、発酵体、プロテアーゼ加水分解物、ペプチド、酵母抽出物およびその誘導体、微生物抽出物、動物由来抽出物、および合成化合物。更に詳しい例としては、イラクサ抽出物、オレンジの花抽出物、ローズウッド抽出物、およびハシバミ(witch hazel)抽出物が挙げられる。
【0091】
ホワイトニング剤と色素化剤の例としては以下に列挙するものが挙げられるが、これらに限定されない。植物抽出物、藻類抽出物、果物抽出物、野菜抽出物、豆科植物抽出物、発酵体、プロテアーゼ加水分解物、ペプチド、酵母抽出物およびその誘導体、微生物抽出物、動物由来抽出物、および合成化合物。更に詳しい例としては、アルブチン、アゼライン酸(azealeic acid)、ビタミンCおよびその誘導体(パルミチン酸アスコルビル、リン酸アスコルビルマグネシウム、リン酸アスコルビルナトリウム)、ヒドロキノン、N−アセチル−4−S−システアニミルフェノール、コウジ酸、メラノスタット(メラノスタチン)、トレチノイン、レチノイン酸およびその誘導体(レチノール、レチンアルデヒド、パルミチン酸レチニル、トランスレチノイン酸、13−シスレチノイン酸、9−シスレチノイン酸、レチノイルグルクロニド、トレチノイン、イソトレチノイン、エトレチナート、アシトレチン、タザロテン、アダパレン、β−カロテン、レチニルエステル)、ルメックス オクシデンタリス(rumex occidentalis)抽出物、カンゾウ、桑、クマコケモモ(arctostaphylos uva-ursi)、チロシナーゼ阻害剤、メラノソーム転移阻害剤、およびメラニン捕捉剤が挙げられる。
【0092】
本発明の1つの態様において、本発明の組成物はさらに、薬学的に許容される局所用担体、ベヒクル、賦形剤または添加剤(すなわち、局所用に、化粧品用に許容される担体、ベヒクル、賦形剤または添加剤)を含む。そのような担体、ベヒクル、賦形剤または添加剤は当業界で周知であり、使用目的は、たとえば、有効成分の官能的性質、皮膚浸透性および利用性に関して最終処方を向上することにある。担体、ベヒクル、賦形剤の例としては以下のものが挙げられる。バッファー剤、担体用剤、キレート剤、コンディショナー剤、着色剤、粘着防止剤、皮膚軟化剤、乳化剤、膜形成剤、発泡剤、湿潤剤(humectant agent)、ラクチラート剤、親油性剤、潤滑剤、中和剤、油剤、乳白剤、保存剤、可溶化剤、溶剤、安定化剤、界面活性剤、増粘剤、粘度調節剤、水分吸収剤、濡らし剤(wetting agent)、香料、および温泉水。
【0093】
本発明の組成物は、特殊に制御された送達システムを構成するように処方されていてもよい。そのような送達システムの例としては以下に列挙するものが挙げられるが、これらに限定されない。徐放性送達システム、速放性送達システム、即放性送達システム、遅放性送達システム、ゼロ次送達システム、および2段または多段速度送達システム。そのよな制御された送達システムは、化学的送達システム、多重エマルジョン、マイクロエマルジョン、ナノエマルジョン、カプセル化技術(たとえばリポソーム、マイクロスフィア、ナノスフィア、マイクロスポンジ、ビーズ、およびシクロデキストリン)、高分子マトリックス、複合高分子型化粧品成分(polymeric cosmetic conjugate)、油体オレオシン(oil body/oleosin)、油溶性分子膜、皮膚用パッチ、および単位投与、などの特定の処方により達成できる。
【0094】
バッファー剤の例としては、塩基や酸の塩であって皮膚の性質とpHに適合するものが挙げられるが、これに限定されない。屡々用いられるバッファー剤の1例は酢酸ナトリウムである。
【0095】
担体剤は、有効成分の適用を助けることのできる成分であるが、これに限定されない。屡々用いられる担体剤の1例はイソヘキサデカンである。
【0096】
キレート剤は、一価または二価のカチオンを結合することのできる成分(たとえばEDTA4ナトリウムやEDTA2ナトリウム)であるが、これに限定されない。
【0097】
コンディショナー剤は、潤滑作用と水和作用を有する成分であるが、これに限定されない。コンディショナー剤の例としては以下に列挙するものが挙げられる。塩化セトリモニウム、塩化ジセチルジモニウム、トリデセス−12、クアテルニウム−27、クアテルニウム−18、ポリクアテルニウム−10、ベヘントリモニウムメトサルフェート、セテアリルアルコール(cetearyl alcohol)、ステアラミドプロピルジメチルアミン、トリメチルシリルアモジメチコン、イソラウレス−6、オクトキシノール−4、ジメチコン、ジメチコノール、シクロペンタシロキサン、パレス−7、パレス−9、リノール酸、およびグリセリン。
【0098】
粘着防止剤は、粘着性材料の表面に吸着して粘着性を減少させることのできる成分であるが、これに限定されない。粘着防止剤の例としては以下に列挙するものが挙げられる。シクロペンタシロキサン、ジメチコン、ビニルジメチコン、フェニルトリメチコン、イソプロピルエステル、イソステアレートエステル、ジメチルセバケート、およびジプロピルセバケート。
【0099】
皮膚軟化剤(emollient agent)は、潤滑作用と水和作用を有する成分であるが、これに限定されない。皮膚軟化剤の例としては以下に列挙するものが挙げられる。パルミチン酸イソプロピル、ひまわり種子油、鉱物油、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、ラノリン、カプリリック、カプリン酸トリグリセリド、シクロペンタシロキサン、ジメチコン、ビニルジメチコン、ビス−フェニルプロピルジメチコン、アルキルジメチコン、ステアリン酸ソルビタン、ジステアリン酸スクロース、ミリスチルアルコール、乳酸ミリスチル、酢酸セチル、ジカプリリルエーテル、フローラエステル−20、マレイン酸化ダイズ油、シクロメチコン、シアバター、水素添加ココナツ油、パルミチン酸イソプロピル、ジイソステアロイルトリメチロールプロパンシロキシシリケート、およびアルキル安息香酸。
【0100】
乳化剤は、乳液中で不混和性物質の分離を防ぎ、物質同士が混ざり合うのを助け、きめ細かさ、均質性、均一性および安定性を向上することのできる成分であるが、これに限定されない。乳化剤の例としては以下に列挙するものが挙げられる。セテアリルアルコール、ステアリン酸グリセリル、アクリル酸アルキル クロスポリマー、ステアリン酸、乳化性ワックス、オレイン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート、ポリエチレングリコポリソルベート、トリエタノールアミン、シクロペンタシロキサン、ジメチコンコポリオール、ジポリヒドロキシステアリン酸PEG−30、ジステアリン酸スクロース、ステアリン酸PEG−100、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、イソパラフィン、ラウレス−7、リン酸セチル、リン酸セチルDEA、ステアリン酸グリコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ベヘントリモニウムメトサルフェート、およびセテアレス−2。
【0101】
膜形成剤は、寸法が安定した連続膜を形成してべたつきを最小にすることのできる成分であるが、これに限定されない。膜形成剤の例としては以下に列挙するものが挙げられる。小麦タンパク質、エイコセン共重合体、パーフルオロメチルイソプロピルエーテル、ジイソステアロイルトリメチロールプロパンシロキシシリケート、トリメチルシロキシシリケート、ジメチコン、ビニルジメチコン、およびシクロペンタシロキサン。
【0102】
発泡剤は、製品中の空気の量を調節することのできる成分であるが、これに限定されない。発泡剤の例としては以下に列挙するものが挙げられる。ラウラミドDEA、コカミドMEA、スルホコハク酸ラウレス2ナトリウム、スルホコハク酸N−オクタデシル2ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、および2−エチルヘキシル硫酸ナトリウム。
【0103】
湿潤剤(humectant agent)は、一定の湿度を維持して水分を保持することのできる成分であるが、これに限定されない。湿潤剤の例としては、グリセリン、PEG−8、ブチレングリコール、およびプロピレングリコールが挙げられる。
【0104】
潤滑剤は、滑り性を与え、摩擦を減らして適用性を向上することのできる成分であるが、これに限定されない。潤滑剤の例としては、ジメチコンおよびジメチコンコポリオールが挙げられる。
【0105】
中和剤は、酸−アルカリのバランスを変えることのできる成分であるが、これに限定されない。中和剤の例としては、トリエタノールアミンおよび水酸化ナトリウムが挙げられる。
【0106】
乳白剤は、透明や半透明の製品外観をよりクリーム状やよりパール状に変えることのできる成分であるが、これに限定されない。乳白剤の例としては、ステアリン酸グリセリルおよびステアリン酸PEG−100が挙げられる。
【0107】
保存剤は、微生物劣化や化学劣化を遅らせるか防いで変色を防止することのできる成分であるが、これに限定されない。保存剤の例としては以下に列挙するものが挙げられる。
DMDMヒダントイン、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェノキシエタノール、エチルパラベン、ブチルパラベン、イミダゾリジニルウレア、ジアゾリジニルウレア、クアテルニウム−8、クアテルニウム−14、クアテルニウム−15、プロピレングリコール、デヒドロ酢酸、メチルクロロイソチアゾリノン、メチルイソチアゾリノン、およびゲルマベン。
【0108】
可溶化剤は、溶解性の低い成分を均一溶液中に溶解させることのできる成分であるが、これに限定されない。可溶化剤の例としては、ポリソルベート、セテアレス、およびPEGが挙げられる。
【0109】
安定化剤は、加工中と加工後の物理・化学的特性を維持し、製品寿命中の物性の変化を防止または低減することのできる成分であるが、これに限定されない。安定化剤の例としては以下に列挙するものが挙げられる。ポリエチレン、塩化ナトリウム、ステアリルアルコール、キサンタンガム、EDTA4ナトリウム、およびジメチコンコポリオール。
【0110】
界面活性剤は、水または水溶液の表面張力を減少させ、2つの液体または液体と固体の間の界面張力を減少させることのできる成分であるが、これに限定されない。界面活性剤の例としては以下に列挙するものが挙げられる。ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、オクトキシノール−40、イソラウレス−6、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリルアルコール、ラウラミドEDA、およびコカミドプロピルベタイン。
【0111】
増粘剤は、水を吸収して粘度を上げ、均一性またはきめ細かさを向上し、エマルジョンを安定させることのできる成分であるが、これに限定されない。増粘剤の例としては以下に列挙するものが挙げられる。ステアリン酸、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、カルボマー、アクリル酸アルキル クロスポリマー、ポリアクリルアミド、イソパラフィン、ラウレス−7、セチルアルコール、キサンタンガム、アルキルジメチコン、ヒドロキシエチルセルロース、ステアリン酸グリセリル、テトラステアリン酸ペンタエリスリチル、ステアリルアルコール、およびポリクアテルニウム−10。
【0112】
粘度調節剤は、流動性および流動への内部抵抗を調節することのできる成分であるが、これに限定されない。粘度調節剤の例としては、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、カプリリルグリコール、およびミリスチルアルコールが挙げられる。
【0113】
水分吸収剤は、製品の水を吸収して水分を維持することのできる成分であるが、これに限定されない。水分吸収剤の例としては以下に列挙するものが挙げられる。カルボキシビニルポリマー、アクリル酸共重合体、ポリアクリルアミド、多糖類、天然ガム、粘土、機能性粘度(modified clay)、金属塩、および脂肪酸。
【0114】
濡らし剤(wetting agent)は、水の表面張力を減少させて浸透性や表面での延びを向上させることのできる成分であるが、これに限定されない。濡らし剤の例としては以下に列挙するものが挙げられる。カプリラート、カプリリルグリコール、カプリン酸グリセリル、カプリン酸ポリグリセリル−2、ポリグリセリル−6、ラウリン酸ポリグリセリル−3、およびラウレス硫酸TEA。
【0115】
本発明の化合物または組成物はいかなる適切な方法でも包装することができる。たとえば、公知の方法で、広口瓶、ボトル、チューブ、スティック、ローラーボールアプリケーター、エアロゾルスプレー装置などに収容することができるが、これらに限定されない。本発明の化合物または組成物は、2つまたは3つ以上の独立したコンパートメントを含むキットとして包装してもよく、1つのコンパートメントには有効成分を収容し、他の1つのコンパートメントには局所用に、皮膚科学的に許容されるベヒクルを収容し、使用前の特定の時点でこれらを混ぜ合わせるようにしてもよい。たとえば、クリーム、粉末、錠剤、カプセルまたは液体の有効成分を1回分のパックに封入し、また、局所用に許容されるベヒクルの所定量を1回分のパックに封入し、前者と後者を開封して混ぜ合わせてもよい。あるいは、有効成分と局所用に許容されるベヒクルとをそれぞれ多めの量で用意しておき、そこから、種々の計量装置を用いて必要な量を抜き出すことができる。計量装置の例としては、固体を抜き出すためには、計量スプーンやカップを挙げることができ、液体を抜き出すためには、目盛りつきのバイアルやスポイトを挙げることができる。本発明の化合物または組成物は支持体上に塗り広げてから包装してもよい。適切な支持体の例としては、包帯テープを含む包帯や、絆創膏を挙げることができる。1つの態様においては、キットまたはパッケージは、患者の皮膚疾患を予防、減少、減速または治療するための指示を含んでもよい。
【0116】
本発明の他の1つの態様においては、式(I)の化合物の、患者の皮膚疾患を予防、減少、減速または治療することへの使用(たとえば美容または治療のための)が提供される。
【0117】
本発明の他の1つの態様は、式(I)の化合物の、真皮の均質性を改善して真皮の均一性と厚みを向上することへの使用に関する。
【0118】
本発明の他の1つの態様は、式(I)の化合物の、生物システムにおける真皮表皮接合(DEJ)分子の生産の誘導および/または増加のための使用(たとえば美容のための)に関する。さらなる1つの態様においては、上記DEJ分子はラミニン−5および/またはVII型コラーゲンである。
【0119】
本発明の他の1つの態様は、式(I)の化合物の、真皮表皮接合(DEJ)の強化のための使用に関する。
【0120】
本発明の他の1つの態様においては、式(I)の化合物の、皮膚疾患を予防、減少または治療するための薬剤の製造への使用が提供される。
【0121】
本発明の他の1つの態様においては、式(I)の化合物の、真皮の均質性を改善して真皮の均一性と厚みを向上するための薬剤の製造への使用が提供される。
【0122】
本発明の他の1つの態様は、式(I)の化合物の、生物システムにおける少なくとも1種の真皮表皮接合(DEJ)分子の生産の誘導および/または増加のための薬剤の製造への使用に関する。さらなる1つの態様においては、上記少なくとも1種のDEJ分子はラミニン−5およびVII型コラーゲンである。
【0123】
本発明の他の1つの態様は、式(I)の化合物の、真皮表皮接合(DEJ)の強化のための薬剤の製造への使用に関する。
【0124】
本発明の1つの態様においては、皮膚疾患が加齢関連の皮膚疾患(たとえば内因的加齢)である。加齢関連の皮膚疾患の例としては、以下に列挙するものが挙げられる。皺、皮膚の細線、老人斑、太陽光線による損傷(特にUV光線により誘導された酸化ストレス)、吹き出物、色素沈着過度、老人斑、皮膚厚の増加、皮膚の弾性とコラーゲン量の低下、乾燥肌、ほくろ、黒皮症、およびこれらの組み合わせ。1つの態様においては、加齢関連の皮膚疾患が、(a)皮膚の皺、(b)皮膚の細線、または(c)皮膚の皺(a)と皮膚の細線(b)の両方の発生または存在である。
【0125】
本発明の他の1つの態様においては、皮膚疾患が、美容的処置または治療的処置によるものかまたは怪我による皮膚の損傷である。皮膚の損傷の例としては、皮膚に関する外科治療的介入、皮膚のレーザー治療、皮膚擦傷法、またはピーリング(たとえば治癒過程を補助するための)に関連するものが挙げられる。
【0126】
本発明の1つの態様においては、該生物システムが1個または複数の細胞、組織、器官または患者である。さらなる1つの態様においては、該細胞が、繊維芽細胞などの皮膚細胞であるか、または、繊維芽細胞を含む複数種の細胞の組み合わせである。他の1つの態様においては、該器官が皮膚である。
【0127】
本発明の化合物または組成物を送達する方法の例は様々であり得るが、通常は、加齢関連の皮膚疾患(たとえば内因的加齢および/または外因的加齢に関連するか、起因するか影響を受けた皮膚の症状または異常)を発症しやすいか発症した皮膚の部位に適用する操作が含まれる。加齢関連の皮膚疾患の例としては、以下に列挙するものが挙げられる。皺、皮膚の細線、老人斑、太陽光線による損傷(たとえば、UV光線により誘導された酸化ストレス)、吹き出物、色素沈着過度、皮膚厚の増加、皮膚の弾性とコラーゲン量の低下、乾燥肌、ほくろ、黒皮症、およびこれらの組み合わせ。
【0128】
クリーム、ローション、ゲル、軟膏、ペーストなどを疾患部位に塗り広げて、静かにすり込む。溶液を同様にして適用してもよいが、より典型的にはスポイトや綿棒などを用いて、注意深く疾患部位に適用する。
【0129】
適用方法は、容易に決定できる多くの要因(疾患の重症度や初期治療への応答度など)に依存するが、通常は、1日1回または2回以上の頻度で継続的に適用する。当業者は、本発明の処方剤の最適な投与量、投与方法および投与頻度を容易に決定できる。一般に、本発明の処方剤は、1週間に1回または2回〜1日に1回または2回の範囲内の頻度で適用することが考えられる。
【0130】
本発明の1つの態様においては、患者は哺乳動物である。さらなる1つの態様においては、該哺乳動物はヒトである。
【0131】
以下の実施例に参照して本発明を更に詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0132】
CH3−(CH24−CO−Lys−Gly−His−Lys−NH2 (ペプチドI、配列番号1)の合成

ペプチドIの合成を固体支持体上で行なった。固体支持体としてはRinkアミド樹脂(官能性は0.3〜0.6mmole/樹脂1g)を用いた。Rinkアミド樹脂をまずジメチルホルムアミド(DMF)で洗浄(2回)し、次に下記のような脱保護工程を行なった。カップリングする各アミノ酸について、以下の工程を繰り返した: アミノ酸をカップリングし、樹脂を洗浄し、主鎖のアミノ官能性を脱保護し、そして樹脂を再度洗浄する。得られたペプチドに含まれる4つのアミノ酸残基はL型であった。
【0133】
カップリング: ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスファート(BOP)(または2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスファート(HBTU))の2つの等価物、ジイソプロピルアミン(DIEA)(またはN−メチルモルフォリン(NMM)の2つの等価物、そして、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)−AA−OHの2つの等価物を用いて、DMF中で2時間反応を行なう。
【0134】
洗浄: DMFで2回洗浄し、メタノールで1回洗浄し、ジクロロメタンで2回洗浄し、そしてDMFで1回洗浄する。
【0135】
脱保護: 80/20比率のDMF/ピペリジン混合物に2%エタンジオール(ラジカル捕捉のため)を添加したものを用いて、まず3分間行い、次に7分間行なう。
洗浄: 上記と同様に行なう。
【0136】
全てのアミノ酸をカップリングした後、アミノ酸と同様に酸をN末端官能基にカップリングし、次に、50/50比率のトリフルオロ酢酸(TFA)/ジクロロメタン混合物に2%エタンジオールを添加したものを用いて90分間反応させることにより、得られたペプチドを樹脂から切り離した。
【0137】
ジクロロメタンとTFAを窒素流通下で蒸発させてから、ジエチルエーテルで沈殿させ、逆相C18カラムを用いる分取液体クロマトグラフィーで精製した。
【0138】
CH3−(CH24−CO−Lys−Gly−His−Lys−NH2 (ペプチドI)の合成には、保護アミノ酸としてFmoc−His(Trt)−OH、Fmoc−Lys(Boc)−OH、およびFmoc−Gly−OHを用い、ヘキサン酸をN末端官能基にカップリングさせた。
【実施例2】
【0139】
CH3−(CH26−CO−Lys−Gly−His−Lys−NH2 (ペプチドII、配列番号2)の合成

最初のリシン残基のN末端官能基にカップリングさせる酸として、ヘキサン酸の代わりにオクタン酸を用いる他は実施例1と同様の操作を行ない、ペプチドIIを合成した。得られたペプチドに含まれる4つのアミノ酸残基はL型であった。
【実施例3】
【0140】
CH3−(CH22−CO−Lys−Gly−His−Lys−NH2 (ペプチドIII、配列番号3)の合成

最初のリシン残基のN末端官能基にカップリングさせる酸として、ヘキサン酸の代わりにブタン酸を用いる他は実施例1と同様の操作を行ない、ペプチドIIIを合成した。得られたペプチドに含まれる4つのアミノ酸残基はL型であった。
【実施例4】
【0141】
CH3−(CH28−CO−Lys−Gly−His−Lys−NH2 (ペプチドIV、配列番号4)の合成

最初のリシン残基のN末端官能基にカップリングさせる酸として、ヘキサン酸の代わりにデカン酸を用いる他は実施例1と同様の操作を行ない、ペプチドIVを合成した。得られたペプチドに含まれる4つのアミノ酸残基はL型であった。
【実施例5】
【0142】
正常ヒト繊維芽細胞モデルにおけるラミニンの新合成に対するペプチドIの効果

トランスフォーミング成長因子(TGF)−β(濃度50ng/ml)またはペプチドI(濃度は以下の2種類:10-6Mと10-7M)の不存在下または存在下で、正常ヒト皮膚繊維芽細胞を48時間インキュベートした。インキュベーション終了時点で、E.I.A. Enzyme Immuno Assay キットを用いてラミニンを定量した。細胞溶解物に含まれるタンパク質も、ブラッドフォード法による分光比色法で定量した。TGF−βとペプチドIについて、繊維芽細胞における容量−応答の関係を調べた。
【0143】
下記の表1に、TGF−βまたはペプチドIの存在下におけるヒト皮膚繊維芽細胞単層培養物におけるラミニンの合成の増加の、未処理細胞(コントロール)と比較した相対値のデータを示す。
【0144】
【表1】

【0145】
これらの結果は、ペプチドIがヒト皮膚繊維芽細胞におけるラミニン合成を増加させることを示している。
【実施例6】
【0146】
ヒト皮膚モデルにおけるVII型コラーゲンの合成に対するペプチドIの効果

正常ヒト皮膚の断片サンプルを、皮膚コルチコステロイド(濃度:0.05% w/v)とペプチドI(濃度:10-7M)の存在下で処理するかまたは処理しなかった。皮膚コルチコステロイドは細胞の代謝を変えることが知られている。これらヒト皮膚のサンプルを3日目に凍結させて、VII型コラーゲンの免疫組織化学的分析を行なった。VII型コラーゲンに特異的な1次抗体を用いる3層コート間接イムノペルオキシダーゼ法により、免疫検出を行なった(Vector laboratories社製、ABC Peroxidase キット)。
【0147】
下記の表2に示す半定量的スコアを用いて、VII型コラーゲンの標識の定量を行なった。
【0148】
【表2】

【0149】
下記の表3に示す結果は、ペプチドIがヒト皮膚モデルにおけるVII型コラーゲンの合成を増加させることを示している。
【0150】
【表3】

【実施例7】
【0151】
ヒト皮膚モデルにおけるラミニン−5の合成に対するペプチドIの効果

正常ヒト皮膚の断片サンプルを、皮膚コルチコステロイド(濃度:0.05% w/v)とペプチドI(濃度:10-7M)の存在下で処理するかまたは処理しなかった。これらヒト皮膚のサンプルを3日目に凍結させて、ラミニン−5の免疫組織化学的分析を行なった。ラミニン−5に特異的な1次抗体を用いる3層コート間接イムノペルオキシダーゼ法により、免疫検出を行なった(Vector laboratories社製、BC Peroxidase キット)。
【0152】
下記の表4に示す半定量的スコアを用いて、ラミニン−5の標識の定量を行なった。
【0153】
【表4】

【0154】
下記の表5に示す結果は、ペプチドIがヒト皮膚モデルにおけるラミニン−5の合成を増加させることを示している。
【0155】
【表5】

【実施例8】
【0156】
In vivo でのペプチドIの皺防止活性

組み入れ基準/除外基準に基づいて選択された30人(+10%)の被験者について、下記表6に示す処方を用いて、ペプチドIをプラセボと比較した。
【0157】
【表6】

【0158】
ペプチドIは5ppm(0.88×10-5M)の濃度で用いた。
【0159】
試験は、上記組成物を最初に適用してから56日間続けた。被験者は、1日に2回、組成物を目尻の皺に任意に適用した。
【0160】
試験方法は単純なブラインドテストである。具体的には、ペプチドIを含む組成物をある部位に適用して得られた結果と、プラセボを他の部位に適用して得られた結果とを比較した。
【0161】
ペプチドIを含む処方剤の効果の評価は、(a)目尻の皺の詳細なデジタル写真と、(b)目尻の皺のシリコーンゴム製の複製(皺と皮膚のきめ(skin network)をフリンジ投影法で分析)を用いて行なった。
【0162】
ペプチドIを含む処方剤の適用開始から0日目と28日目の被験者の1人の目尻の皺の写真を図1に示す。
【0163】
In vitro でのフリンジ投影法 − トポメトリー(topometry) − 皺の分析
皮膚の起伏(relief)を、シリコーンゴム複製で再現(in vitro)した。全てのシリコーンゴム複製をフリンジ投影法で分析して、皮膚の起伏を観察した。以下のパラメーターを測定した。(a)SPa:平均粗さ; (b)SPq:起伏の変化の平均分散; (c)SPt:起伏の最大振幅; (d)SDev:展開表面(Developed Surface)。これらの実験の結果を図2に示す。
【0164】
In vitro でのフリンジ投影法 − 皮膚のきめの分析
全てのシリコーンゴム複製をフリンジ投影法で分析して、皮膚のきめを観察した。以下のパラメーターを測定した。(a)SRa:平均粗さ(mm); (b)SRq:二乗平均値(mm)。これらの実験の結果を図3に示す。
【0165】
これらのデータは、ペプチドIが、適用開始から28日後と56日後に、皺の減少、ならびに目尻の皺や皮膚のきめの粗さの減少に優れた効果を発揮することを示している。
【実施例9】
【0166】
ペプチドIの in vivo での長期の老化防止活性

組み入れ基準/除外基準に基づいて選択された27人の被験者について、上記表6に示す処方を用いて、ペプチドIをプラセボと比較した。
【0167】
ペプチドIは5ppm(0.88×10-5M)の濃度で用いた。試験方法は単純なブラインドテストである。具体的には、ペプチドIを含む組成物をある部位に適用して得られた結果と、プラセボを含む組成物を他の部位に適用して得られた結果とを比較した。
【0168】
ペプチドIまたはプラセボを、目尻の皺に168日(6ヶ月)に渡って適用し、0日目と168日目に真皮の状態を高解像度超音波(20MHz)で分析した。皮膚のきめの分析には、2次統計の手法を用いた: 同時生起行列法。2つの同時生起パラメーターを計算した: 同時生起行列のエントロピーと均一性。エントロピーは、皮膚の粗さについての人間の視覚認識に対応する。均一性は、皮膚のきめの均一性に対応する。
【0169】
表7に、平均値から計算されたパラメーターの変動((168日目の値−0日目の値)/0日目の値)の平均%を示す。
【0170】
【表7】

【0171】
ペプチドIを用いた処理により得られた結果の統計的分析により、調べた2つのパラメーターは有意に増加したことが、以下のように示された。
【0172】
同時生起エントロピー: +1.3%(p=3.00×10-3、ウィルコクソン試験、両側検定、対のグループについて、5%)。
【0173】
同時生起均一性: +2.1%(p=3.60×10-2、ウィルコクソン試験、両側検定、対のグループについて、5%)。
【0174】
超音波画像に基づく真皮の分析を図4に示す。
【実施例10】
【0175】


【0176】
本発明を具体的態様により説明したが、請求の範囲に定義される本発明の精神と性質から逸脱することなく本発明を改変することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】ペプチドIを含む組成物の適用開始から0日目と28日目の被験者の目尻の皺の写真である。
【図2】ペプチドIを含む組成物の適用開始から28日目と56日目の目尻の皺の粗さの平均的変化を示すグラフである。
【図3】ペプチドIを含む組成物の適用開始から28日目と56日目の目尻の皺の皮膚のきめの粗さの平均的変化を示すグラフである。
【図4】ペプチドIを含む組成物またはプラセボの適用開始から0日目と168日目の真皮のきめを示す高解像度超音波画像(20MHz)である。
【配列表フリーテキスト】
【0178】
配列番号1: 合成ペプチドである。アミノ末端基がCH3−CH2−CH2−CH2−CH2−CO基で変性されている。カルボキシル末端基がアミド化されている。
配列番号2: 合成ペプチドである。アミノ末端基がCH3−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CO基で変性されている。カルボキシル末端基がアミド化されている。
配列番号3: 合成ペプチドである。アミノ末端基がCH3−CH2−CH2−CO基で変性されている。カルボキシル末端基がアミド化されている。
配列番号4: 合成ペプチドである。アミノ末端基がCH3−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CO基で変性されている。カルボキシル末端基がアミド化されている。
配列番号5: 合成ペプチドである。1位のXaaはL−リシン残基、D−リシン残基、およびL−またはD−リシン残基(但し側鎖のNH2基が水素置換(脱アミノ化)、アセチル化、ベンゾイル化またはパルミトイル化されることにより変性されている)からなる群より選ばれる1種である。アミノ末端基がCH3−(CH2n−CO−基(但し n = 2、3、4、5、6、7または8)で変性されている。3位のXaaはL−またはD−ヒスチジン残基である。4位のXaaはL−リシン残基、D−リシン残基、およびL−またはD−リシン残基(但し側鎖のNH2基が水素置換(脱アミノ化)、アセチル化、ベンゾイル化またはパルミトイル化されることにより変性されている)からなる群より選ばれる1種である。カルボキシル末端基がN(Z)(Z')基(但し、ZとZ’の各々は、相互に独立的に、水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、ヘキシル基、デシル基またはヘキサデシル基である)で変性されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)(配列番号5)で表される化合物、そのラセミ化合物、鏡像異性体、およびジアステレオ異性体からなる群より選ばれる少なくとも1種またはその塩。

R−A−Gly−His−B−R' (I)

但し、式中:
AとBの各々は、相互に独立的に、L−リシン残基、D−リシン残基、およびL−またはD−リシン残基(但し側鎖のNH2基が(i)水素置換、(ii)アセチル化、(iii)ベンゾイル化または(iv)パルミトイル化されることにより変性されている)からなる群より選ばれる1種であり;
Glyはグリシン残基であり;
HisはL−またはD−ヒスチジン残基であり;
Rは式 CH3−(CH2n−CO−(但し n = 2、3、4、5、6、7または8)で表されるアミノ末端変性基であり;
R’は式(II)で表される基である:

N(Z)(Z') (II)

但し、式中:
ZとZ’の各々は、相互に独立的に、水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、ヘキシル基、デシル基またはヘキサデシル基である。
【請求項2】
n = 4、5または6であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
ZとZ’がいずれも水素原子であることを特徴とする請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
AとBの各々が、相互に独立的に、L−リシン残基またはD−リシン残基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
リシン残基とヒスチジン残基がL型であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
CH3−(CH24−CO−Lys−Gly−His−Lys−NH2(配列番号1)またはCH3−(CH26−CO−Lys−Gly−His−Lys−NH2(配列番号2)で表されることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
CH3−(CH24−CO−Lys−Gly−His−Lys−NH2(配列番号1)で表されることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかの化合物の有効量と、局所用に、化粧品用にまたは薬学的に許容される賦形剤または担体とを含むことを特徴とする組成物。
【請求項9】
有効量が約10-8M〜約10-2Mの範囲であることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
有効量が約10-6M〜約10-5Mの範囲であることを特徴とする請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
局所用組成物であることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
水溶液、クリーム、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、ゲル、スプレー、軟膏、ローション、またはペーストであることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも1種の追加の有効成分をさらに含むことを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
請求項1〜7のいずれかの化合物または請求項8〜13のいずれかの組成物の、皮膚疾患を予防、減少、減速または治療することへの使用。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれかの化合物または請求項8〜13のいずれかの組成物の、皮膚疾患を予防、減少、減速または治療するための薬剤の製造への使用。
【請求項16】
皮膚疾患が加齢関連の皮膚疾患であることを特徴とする請求項14または15に記載の使用。
【請求項17】
加齢関連の皮膚疾患が、(a)皮膚の皺、(b)皮膚の細線、または(c)皮膚の皺(a)と皮膚の細線(b)の両方の発生または存在であることを特徴とする請求項16に記載の使用。
【請求項18】
皮膚疾患が皮膚の損傷であることを特徴とする請求項14または15に記載の使用。
【請求項19】
皮膚の損傷が、外科治療、皮膚擦傷法、レーザー治療またはピーリングに関連することを特徴とする請求項18に記載の使用。
【請求項20】
生物システムにおける少なくとも1種の真皮表皮接合(DEJ)分子の生産の誘導または増加のための、請求項1〜7のいずれかの化合物または請求項8〜13のいずれかの組成物の使用。
【請求項21】
該少なくとも1種のDEJ分子が、(a)ラミニン−5、(b)VII型コラーゲン、または(c)ラミニン−5(a)とVII型コラーゲン(b)の両方であることを特徴とする請求項20に記載の使用。
【請求項22】
生物システムが細胞、組織、または器官であることを特徴とする請求項20または21に記載の使用。
【請求項23】
細胞が皮膚細胞であることを特徴とする請求項22に記載の使用。
【請求項24】
器官が皮膚であることを特徴とする請求項22に記載の使用。
【請求項25】
患者の皮膚疾患を予防、減少、減速または治療するための方法であって、請求項1〜7のいずれかの化合物の有効量または請求項8〜13のいずれかの組成物の有効量を患者に投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
皮膚疾患が加齢関連の皮膚疾患であることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
加齢関連の皮膚疾患が、(a)皮膚の皺、(b)皮膚の細線、または(c)皮膚の皺(a)と皮膚の細線(b)の両方の発生または存在であることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
皮膚疾患が皮膚の損傷であることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項29】
皮膚の損傷が、外科治療、皮膚擦傷法、レーザー治療またはピーリングに関連することを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
投与が局所投与であることを特徴とする請求項25〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
有効量が約10-8M〜約10-2Mの範囲であることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項32】
有効量が約10-6M〜約10-5Mの範囲であることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
生物システムにおいて少なくとも1種の真皮表皮接合(DEJ)分子の生産を誘導または増加するための方法であって、該生物システムに請求項1〜7のいずれかの化合物または請求項8〜13のいずれかの組成物を接触させることを含むことを特徴とする方法。
【請求項34】
該少なくとも1種のDEJ分子が、(a)ラミニン−5、(b)VII型コラーゲン、または(c)ラミニン−5(a)とVII型コラーゲン(b)の両方であることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項35】
生物システムが細胞、組織、または器官であることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項36】
細胞が皮膚細胞であることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
器官が皮膚であることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項38】
請求項1〜7のいずれかの化合物または請求項8〜13のいずれかの組成物と、患者の皮膚疾患を予防、減少、減速または治療するための指示とを含むことを特徴とするキットまたはパッケージ。
【請求項39】
請求項1〜7のいずれかの化合物または請求項8〜13のいずれかの組成物と、容器とを含むことを特徴とするキットまたはパッケージ。
【請求項40】
患者の皮膚疾患を予防、減少、減速または治療するための組成物であって、請求項1〜7のいずれかの化合物と、局所用に、化粧品用に、または薬学的に許容される賦形剤または担体とを含むことを特徴とする組成物。
【請求項41】
生物システムにおいて少なくとも1種の真皮表皮接合(DEJ)分子の生産を誘導または増加するための組成物であって、請求項1〜7のいずれかの化合物と、局所用に、化粧品用に、または薬学的に許容される賦形剤または担体とを含むことを特徴とする組成物。
【請求項42】
患者の皮膚疾患を予防、減少、減速または治療するために用いられることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の化合物。
【請求項43】
生物システムにおいて少なくとも1種の真皮表皮接合(DEJ)分子の生産を誘導または増加するために用いられることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−531815(P2010−531815A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513593(P2010−513593)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【国際出願番号】PCT/CA2008/001226
【国際公開番号】WO2009/003283
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(510000275)イノーバクティブ インク. (1)
【氏名又は名称原語表記】INNOVACTIV INC.
【Fターム(参考)】