説明

新規化合物、重合体および感放射線性樹脂組成物

【課題】放射線に対する透明性が高く、しかも感度、解像度、ドライエッチング耐性、パターン形状等のレジストとしての基本物性に優れ、解像性能が高く、パターンのラインエッジラフネスが小さい感放射線性樹脂組成物、その組成物に利用できる重合体およびこの重合体合成に用いられる新規化合物を提供する。
【解決手段】アルカリ不溶性またはアルカリ難溶性であって酸の作用によりアルカリ易溶性となる酸解離性基含有樹脂と、感放射線性酸発生剤とを含有する感放射線性樹脂組成物であって、上記酸解離性基含有樹脂が式(2)で表される基を分子末端に含み、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算重量平均分子量が2,000〜100,000である
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規化合物、重合体および感放射線性樹脂組成物に関し、特にKrFエキシマレーザーあるいはArFエキシマレーザー等の遠紫外線、シンクロトロン放射線等のX線、電子線等の荷電粒子線の如き各種の放射線を使用する微細加工に有用な化学増幅型レジストとして好適に使用できる感放射線性樹脂組成物、その組成物に利用できる重合体およびこの重合体合成に用いられる新規化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路素子の製造に代表される微細加工の分野においては、より高い集積度を得るために、最近ではArFエキシマレーザー(波長193nm)、F2エキシマレーザー(波長157nm)等を用いた200nm程度以下のレベルでの微細加工が可能なリソグラフィー技術が必要とされている。このようなエキシマレーザーによる照射に適した感放射線性樹脂組成物として、酸解離性官能基を有する成分と放射線の照射により酸を発生する成分である酸発生剤とによる化学増幅効果を利用した化学増幅型感放射線性組成物が数多く提案されている。例えば、樹脂成分として、ノルボルナン環誘導体を有する単量体ユニットを含む特定の構造を樹脂成分とするフォトレジスト用高分子化合物が知られている(特許文献1、特許文献2)。
【特許文献1】特開2002−201232号公報
【特許文献2】特開2002−145955号公報
【0003】
樹脂成分は、ラジカル重合により合成され、その重合度を制御するために連鎖移動剤が用いられる場合がある。連鎖移動剤としては、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)などが知られている。
【0004】
しかしながら、半導体分野において、より高い集積度が求められるようになると、レジストである感放射線性樹脂組成物はより優れた解像度が必要とされるようになってきた。また、同時により微細化が進むにつれて、パターンのラインエッジラフネスを低減する要求もますます強めてきた。また微細化に伴い、プロセス条件に対するマージンの低減も要求された。半導体産業の微細化の進歩につれ、このような解像度の優れる、パターンラインエッジラフネスの小さい、並びにパターン粗密依存性の小さいような条件を満たす感放射線性樹脂組成物の開発が急務になっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、放射線に対する透明性が高く、しかも感度、解像度、ドライエッチング耐性、パターン形状等のレジストとしての基本物性に優れ、解像性能が高く、パターンのラインエッジラフネスが小さい感放射線性樹脂組成物、その組成物に利用できる重合体およびこの重合体合成に用いられる新規化合物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の新規化合物は、下記式(1)で表されることを特徴とする。
【化4】

式(1)において、Aは2価の有機基を、pは1〜3の整数をそれぞれ表す。
また、上記式(1)で表される新規化合物が連鎖移動剤であることを特徴とする。
【0007】
本発明の重合体は、下記式(2)で表される基を含み、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算重量平均分子量が2,000〜100,000であることを特徴とする。
【化5】

式(2)において、Aおよびpは式(1)におけるAおよびpと同一である。
また、上記重合体は酸解離性基を有する繰返し単位を含有することを特徴とする。
【0008】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、アルカリ不溶性またはアルカリ難溶性であって酸の作用によりアルカリ易溶性となる酸解離性基含有樹脂と、感放射線性酸発生剤とを含有する感放射線性樹脂組成物であって、上記酸解離性基含有樹脂が上記本発明の重合体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の感放射線性樹脂組成物は活性放射線、特に、ArFエキシマレーザー(波長193nm)に代表される遠紫外線に感応する化学増幅型レジストとして、放射線に対する透明性が高く、ドライエッチング耐性、パターン形状も良好であるレジストとしての基本的性能を有しているだけでなく、第一に、解像性能を高めることが可能で、第二に、現像後のパターンラインエッジラフネスを低減することができる。特に樹脂成分として式(2)で表される基を含む重合体を用いることにより、上記効果がより向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は式(1)で表される新規化合物をラジカル重合の連鎖移動剤として、通常の連鎖移動剤量よりも多量に用いることにより、連鎖移動機構で導入される式(2)で表される末端基を有する酸解離性基含有重合体が得られ、この重合体を用いることにより、レジストとしての基本物性に優れ、解像性能が高く、パターンのラインエッジラフネスが小さい感放射線性樹脂組成物が得られるとの知見に基づくものである。
【0011】
式(1)および式(2)において、Aは2価の有機基を表す。2価の有機基としては、例えば、置換もしくは非置換の2価の炭化水素基、主鎖にヘテロ原子を有する2価の基等を挙げることができる。
上記非置換の2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン基;1,1−エチレン基、1,2−エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の炭素数2〜8のアルキレン基;1,3−シクロペンチレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基等の炭素数3〜10のシクロアルキレン基;1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、メチル−1,4−フェニレン基、1,4−フェニレンメチレン基等の炭素数6〜14のアリーレン基等を挙げることができる。
【0012】
Aで表される2価の炭化水素基に対する置換基のうち、メチレン基およびアルキレン基に対するものとしては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、炭素数1〜4のアルコキシル基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基等)、炭素数2〜5のアルキルカルボニルオキシ基(例えば、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、t−ブチルカルボニルオキシ基等)、炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等)、炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルコキシ基(例えば、メトキシカルボニルメトキシ基、エトキシカルボニルメトキシ基、t−ブトキシカルボニルメトキシ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子等)等の1個以上あるいは1種以上を挙げることができる。
【0013】
Aで表される2価の炭化水素基に対する置換基のうち、シクロアルキレン基およびアリーレン基に対するものとしては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、オキソ基(=O)、炭素数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等)、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基(例えば、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等)、炭素数1〜4のアルコキシル基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基等)、シアノ基、炭素数2〜5のシアノアルキル基(例えば、シアノメチル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基、4−シアノブチル基等)、炭素数2〜5のアルキルカルボニルオキシ基(例えば、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、t−ブチルカルボニルオキシ基等)、炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等)、炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルコキシ基(例えば、メトキシカルボニルメトキシ基、エトキシカルボニルメトキシ基、t−ブトキシカルボニルメトキシ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子等)、炭素数1〜4のフルオロアルキル基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等)等の1個以上あるいは1種以上を挙げることができる。
【0014】
Aで表される主鎖にヘテロ原子を有する2価の基としては、例えば、上記置換もしくは非置換の2価の炭化水素基の一方の結合手が―O−に結合した基、上記置換もしくは非置換の2価の炭化水素基の一方の結合手が―S−に結合した基、上記置換もしくは非置換の2価の炭化水素基の両方の結合手が―O−に結合した基、上記置換もしくは非置換の2価の炭化水素基の両方の結合手が―S−に結合した基、上記置換もしくは非置換の2価の炭化水素基の一方の結合手が―O−に、他方の結合手が―S−に結合した基や、−O−、−S−、−SO2−、−SO−、−SO2O−、−CO−、−COO−、−OCOO−、−NR−、−NRCO−、−OCH2CONR−、−O(CH22CONR−、−SCH2CONR−、−S(CH22CONR−等を挙げることができる。ただし、上記窒素原子に結合する各Rは相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基または炭素数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基を示す。
【0015】
Rで表される非置換の炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜18、さらに好ましくは1〜15、特に好ましくは1〜12であり、Rの非置換の1価の脂環式炭化水素基の炭素数は、好ましくは3〜18、さらに好ましくは3〜12、特に好ましくは3〜8であり、Rのアルケニル基の炭素数は、好ましくは2〜18、さらに好ましくは2〜15、特に好ましくは2〜12である。
【0016】
Rで表される非置換の炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、t−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基等を挙げることができる。
【0017】
Rの上記アルキル基に対する置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、炭素数1〜4のアルコキシル基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基等)、炭素数2〜5のアルキルカルボニルオキシ基(例えば、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、t−ブチルカルボニルオキシ基等)、炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等)、炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルコキシ基(例えば、メトキシカルボニルメトキシ基、エトキシカルボニルメトキシ基、t−ブトキシカルボニルメトキシ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子等)等の1個以上あるいは1種以上を挙げることができる。
【0018】
また、Rで表される非置換の炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基、アダマンチル基、メチルアダマンチル基、エチルアダマンチル基、n−ブチルアダマンチル基等の有橋脂環式炭化水素基等を挙げることができる。
さらに、Rの炭素数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基としては、ビニル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基等を挙げることができる。
【0019】
Rの上記脂環式炭化水素基に対する置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、オキソ基(=O)、炭素数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等)、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基(例えば、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等)、炭素数1〜4のアルコキシル基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基等)、シアノ基、炭素数2〜5のシアノアルキル基(例えば、シアノメチル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基、4−シアノブチル基等)、炭素数2〜5のアルキルカルボニルオキシ基(例えば、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、t−ブチルカルボニルオキシ基等)、炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等)、炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルコキシ基(例えば、メトキシカルボニルメトキシ基、エトキシカルボニルメトキシ基、t−ブトキシカルボニルメトキシ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子等)、炭素数1〜4のフルオロアルキル基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等)等の1個以上あるいは1種以上を挙げることができる。
【0020】
式(1)において、好ましいAの具体例としては、メチレン基、1,2−エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ジフルオロメチレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−フェニレン基、1,4−フェニレンメチレン基、フルオロ−1,4−フェニレン基、1,1,2,2−テトラフルオロペンタメチレン基、−CH2O−、−(CH22O−、−(CH23O−、−(CH24O−、−(CH25O−、1,4−シクロヘキシレンオキシ基、1,4−フェニレンオキシ基、−CH2CO−、−(CH22CO−、−(CH23)CO−、−CH2COO−、−(CH22COO−、−(CH23COO−、−OCH2COO−、−O(CH22COO−、−O(CH23COO−、−CH2SO2−、−(CH22SO2−、−(CH23SO2−、−OCH2SO2−、−O(CH22SO2−、−O(CH23SO2−、−CH2S−、−(CH22S−、−(CH23S−、−(CH24S−、−(CH25S−、1,4−シクロヘキシレンチオ基、1,4−フェニレンチオ基、−OCH2CONR−、−O(CH22CONR−、−S(CH22CONR−等を挙げることができる。
式(1)において、pは1から3の整数であるが、原料の供給面等からpは1であることが好ましい。
【0021】
式(1)で表される新規化合物の好ましい例としては、化合物(1−1)〜(1−3)が挙げられる。
【化6】

【0022】
式(1)で表される新規化合物は、下記反応式に示すように、オレフィン化合物(1a)とチオ酢酸(1b)とを反応させることにより対応する前駆チオエステル化合物(1c)を合成した後、さらに、その前駆体を塩基で処理することにより合成することができる。(1−1)〜(1−3)の前駆体であるオレフィン化合物(1a)は、例えば式(1−4)と、シクロペンタジエン、フラン、または、チオフェンとのディールスアルダー反応により合成することができる。
【化7】

【0023】
上記反応において、オレフィン化合物(1a)のチオ酢酸(1b)に対するモル比は、通常、1〜100、好ましくは1.0〜10である。
この反応は、通常、無溶媒条件で実施する。
反応温度は、通常、−40〜+50℃、好ましくは−20〜+30℃であり、反応時間は、通常、0.1〜72時間、好ましくは0.5〜3時間である。
【0024】
上記反応において、前駆チオエステル化合物(1c)の塩基に対するモル比は、通常、1〜100、好ましくは1.0〜10である。
この反応は通常、トルエン、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、ピリジン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール等の有機溶媒中で行なわれ、好ましくはメタノール、エタノール中で実施される。
反応温度は、通常、−40〜+50℃、好ましくは−20〜+30℃であり、反応時間は、通常、0.1〜72時間、好ましくは0.5〜3時間である。
反応に使用される塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等を挙げることができ、好ましくは、トリエチルアミン、ピリジン等である。
【0025】
本発明の重合体は、式(2)で表される基を分子末端に含む重合体であり、この重合体は式(1)で表される新規化合物をラジカル重合の連鎖移動剤として用いることにより得られる。また、本発明の重合体は酸解離性基を有する繰り返し単位を含有することが好ましい。
上記酸解離性基とは、例えば、フェノール性水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基等の酸性官能基中の水素原子を置換した基であり、酸の存在下で解離する基を意味する。
このような酸解離性基としては、例えば、置換メチル基、1−置換エチル基、1−置換−n−プロピル基、1−分岐アルキル基、アルコキシカルボニル基、環式酸解離性基等を挙げることができる。
【0026】
上記置換メチル基としては、例えば、メトキシメチル基、シクロプロピルメチル基、メトキシカルボニルメチル基、t−ブトキシカルボニルメチル基等を挙げることができる。 上記1−置換エチル基としては、例えば、1−メトキシエチル基、1−シクロプロピルオキシエチル基、1−シクロヘキシルオキシエチル基、1−t−ブトキシカルボニルエチル基等を挙げることができる。
上記1−置換−n−プロピル基としては、例えば、1−メトキシ−n−プロピル基、1−エトキシ−n−プロピル基等を挙げることができる。
上記1−分岐アルキル基としては、例えば、t−ブチル基、1,1−ジメチルプロピル基等を挙げることができる。
上記アルコキシカルボニル基としては、例えば、t−ブトキシカルボニル基等を挙げることができる。
上記環式酸解離性基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、4−メトキシシクロヘキシル基等を挙げることができる。
【0027】
上記酸解離性基のうち、ベンジル基、t−ブトキシカルボニルメチル基、1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、1−シクロヘキシルオキシエチル基、1−エトキシ−n−プロピル基、t−ブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、t−ブトキシカルボニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、テトラヒドロチオフラニル基等が好ましい。
【0028】
また、式(3)で表される基を酸解離性基として用いることができる。
【化8】

式(3)において、R1は相互に独立に炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基または炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基もしくはその置換誘導体を表すか、あるいは何れか2つのR1が相互に結合して、それぞれが結合している炭素原子とともに炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基もしくはその置換誘導体を形成し、残りの1つのR1が炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基または炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基もしくはその置換誘導体を表す。
【0029】
1の炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等を挙げることができる。これらのアルキル基のうち、メチル基、エチル基等が好ましい。
また、R1の炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基および何れか2つのR1が相互に結合してそれぞれが結合している炭素原子と共に形成した炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のシクロアルカン類に由来する基;アダマンタン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン等の有橋式炭化水素類に由来する基等を挙げることができる。
これらの1価の脂環式炭化水素基および2価の脂環式炭化水素基のうち、シクロペンタン、シクロヘキサン、アダマンタン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等に由来する基が好ましい。
また、上記1価または2価の脂環式炭化水素基の置換誘導体における置換基としては、例えば、上記R1の2価の直鎖状もしくは分岐状の炭化水素基および2価の脂環式炭化水素に対する置換基について例示したものと同様の置換基を挙げることができる。
これらの置換基のうち、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ヒドロキシメチル基、シアノ基、シアノメチル基等が好ましい。これら置換基は、各置換誘導体中に1個以上あるいは1種以上存在することができる。
【0030】
式(3)において、−C(R13に相当する構造としては、例えば、t−ブチル基、2−メチル−2−ブチル基、2−エチル−2−ブチル基、3−メチル−3−ブチル基、3−エチル−3−ブチル基、3−メチル−3−ペンチル基等のトリアルキルメチル基;
1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基、1−n−プロピルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−n−プロピルシクロヘキシル基等の1−アルキルシクロアルキル基;
2−メチルアダマンタン−2−イル基、2−メチル−3−ヒドロキシアダマンタン−2−イル基、2−エチルアダマンタン−2−イル基、2−エチル−3−ヒドロキシアダマンタン−2−イル基、2−n−プロピルアダマンタン−2−イル基、2−n−ブチルアダマンタン−2−イル基、2−メトキシメチルアダマンタン−2−イル基、2−メトキシメチル−3−ヒドロキシアダマンタン−2−イル基、2−エトキシメチルアダマンタン−2−イル基、2−n−プロポキシメチルアダマンタン−2−イル基、2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル基、2−メチル−5−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル基、2−メチル−6−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル基、2−メチル−5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル基、2−メチル−6−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル基、2−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル基、2−エチル−5−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル基、2−エチル−6−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル基、4−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]−4−イル基、4−メチル−9−ヒドロキシテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イル基、4−メチル−10−ヒドロキシテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イル基、4−メチル−9−シアノテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イル基、4−メチル−10−シアノテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イル基、4−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イル基、4−エチル−9−ヒドロキシテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イル基、4−エチル−10−ヒドロキシテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イル基、8−メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基、8−メチル−4−ヒドロキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基、8−メチル−4−シアノトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基、8−エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基、8−エチル−4−ヒドロキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基等のアルキル置換有橋式炭化水素基;
【0031】
1−メチル−1−シクロペンチルエチル基、1−メチル−1−(2−ヒドロキシシクロペンチル)エチル基、1−メチル−1−(3−ヒドロキシシクロペンチル)エチル基、1−メチル−1−シクロヘキシルエチル基、1−メチル−1−(3−ヒドロキシシクロヘキシル)エチル基、1−メチル−1−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)エチル基、1−メチル−1−シクロへプチルエチル基、1−メチル−1−(3−ヒドロキシシクロへプチル)エチル基、1−メチル−1−(4−ヒドロキシシクロへプチル)エチル基等のジアルキル・シクロアルキルメチル基;
1−メチル−1−(アダマンタン−1−イル)エチル基、1−メチル−1−(3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル)エチル基、1−メチル−1−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)エチル基、1−メチル−1−(5−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)エチル基、1−メチル−1−(6−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)エチル基、1−メチル−1−(テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イル)エチル基、1−メチル−1−(9−ヒドロキシテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イル)エチル基、1−メチル−1−(10−ヒドロキシテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イル)エチル基、1−メチル−1−(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル)エチル基、1−メチル−1−(4−ヒドロキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル)エチル基等のアルキル置換・有橋式炭化水素基置換メチル基;
1,1−ジシクロペンチルエチル基、1,1−ジ(2−ヒドロキシシクロペンチル)エチル基、1,1−ジ(3−ヒドロキシシクロペンチル)エチル基、1,1−ジシクロヘキシルエチル基、1,1−ジ(3−ヒドロキシシクロヘキシル)エチル基、1,1−ジ(4−ヒドロキシシクロヘキシル)エチル基、1,1−ジシクロへプチルエチル基、1,1−ジ(3−ヒドロキシシクロへプチル)エチル基、1,1−ジ(4−ヒドロキシシクロへプチル)エチル基等のアルキル・ジシクロアルキルメチル基;
1,1−ジ(アダマンタン−1−イル)エチル基、1,1−ジ(3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル)エチル基、1,1−ジ(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)エチル基、1,1−ジ(5−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)エチル基、1,1−ジ(6−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)エチル基、1,1−ジ(テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イル)エチル基、1,1−ジ(9−ヒドロキシテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イル)エチル基、1,1−ジ(10−ヒドロキシテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イル)エチル基、1,1−ジ(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル)エチル基、1,1−ジ(4−ヒドロキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル)エチル基等のアルキル置換・ジ(有橋式炭化水素基)置換メチル基等を挙げることができる。
【0032】
これらの−C(R13に相当する構造のうち、特に、t−ブチル基、1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、2−メチルアダマンタン−2−イル基、2−エチルアダマンタン−2−イル基、2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル基、2−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル基、1−メチル−1−(アダマンタン−1−イル)エチル基、1−メチル−1−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)エチル基等が好ましい。
【0033】
本発明の重合体において酸解離性基を有する繰返し単位は、上記酸解離性基を側鎖に有するアクリル酸誘導体を単量体として用いて重合させることにより重合体中に導入できる。
本発明に好適な単量体を以下に式(3−1)〜式(3−5)として例示する。
【化9】

上記各式においてRは、水素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基を表す。
【0034】
本発明の重合体は酸解離性基を有する繰返し単位とともに下記式(4)で表されるラクトンユニット含有繰り返し単位を含むことができる。
【化10】

上記式においてR’は、水素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基を表し、R2は置換基を表す。
ラクトン骨格として5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナンを有する脂環式炭化水素基を側鎖の一部に有する。またこのラクトン骨格は、R2で表される、炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基、アルコキシ基、またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよい。
炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられ、炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。炭素数1〜4の直鎖状あるいは分岐状のフッ素化アルキル基としては、上記アルキル基の水素の一部または全部をフッ素原子で置換した基が挙げられる。
上記ラクトンユニット含有繰り返し単位は、該クトンユニットを側鎖に有するアクリル酸誘導体を単量体として用いて重合させることにより重合体中に導入できる。
【0035】
本発明の重合体は、酸解離性基を有する繰返し単位、ラクトンユニット含有繰り返し単位とともに式(5)で表される繰り返し単位を含むことができる。
【化11】

上記式においてR''は、水素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基を表し、Xは1価の有機基を表す。
1価の有機基としては、炭素数7〜20の極性基を含まない炭素および水素のみからなる多環型脂環式炭化水素基が好ましく、このような多環型脂環式炭化水素基としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、テトラシクロ[4.4.0.12,6.17,10]ドデカン、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン等のシクロアルカン類に由来する脂環族環からなる炭化水素基が挙げられる。
また、これらのシクロアルカン由来の脂環族環は、置換基を有していてもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基の1種以上あるいは1個以上で置換した骨格等が挙げられる。これらは単独でも、2種以上を混合して用いることができる。
式(5)で表される繰り返し単位は、Xを側鎖に有するアクリル酸誘導体を単量体として用いて重合させることにより重合体中に導入できる。
【0036】
本発明の重合体は、酸解離性基を有する繰返し単位(以下、繰返し単位Iという)、ラクトンユニット含有繰り返し単位(以下、繰返し単位IIという)、式(5)で表される繰り返し単位(以下、繰返し単位IIIという)を含むことが好ましく、その割合は、重合体全体に対して、繰返し単位Iが5〜80モル%、好ましくは10〜70モル%、繰返し単位IIが5〜60モル%、好ましくは10〜55モル%、繰返し単位IIIが0〜50モル%、好ましくは5〜40モル%である。
繰返し単位Iが5モル%未満であると、解像度不足であり、80モル%をこえると耐エッチング不足である。繰返し単位IIが5モル%未満であると、解像度不足であり、60モル%をこえると溶剤に対して溶解性が低下する。繰返し単位IIIが50モル%をこえると解像度不足である。
【0037】
本発明の重合体は、使用する放射線の種類に応じて種々選定することができる。例えば、上記繰返し単位I、繰返し単位II、繰返し単位IIIを含有する重合体は、ArFエキシマレーザーを用いる感放射線性樹脂組成物に好適な酸解離性基含有樹脂として使用することができる。またこの樹脂は、KrFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、電子線等の他の放射線を用いる感放射線性樹脂組成物にも好適に使用することができる。
一方、KrFエキシマレーザーを用いる感放射線性樹脂組成物に特に好適な酸解離性基含有樹脂としては、例えば、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)またはその誘導体中のフェノール性水酸基の水素原子の一部または全部を酸解離性基で置換した樹脂、p−ヒドロキシスチレンおよび/またはp−ヒドロキシ−α−メチルスチレンと(メタ)アクリル酸との共重合体中のフェノール性水酸基の水素原子および/またはカルボキシル基の水素原子の一部または全部を酸解離性基で置換した樹脂等を好ましく用いることができる。なお、この樹脂は、ArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、電子線等の他の放射線を使用する感放射線性樹脂組成物にも好適に使用することができる。
【0038】
本発明の重合体は通常、ラジカル重合により製造することができ、ラジカル重合開始剤に加えて式(1)に表される化合物を連鎖移動剤として用いるラジカル重合することにより、分子鎖末端に式(2)の基を有する重合体が得られる。この式(2)で表される基は連鎖移動機構で付加されるので、分子鎖の片方の末端に付加されることが多い。
分子鎖末端に式(2)の基を有する重合体は、全重合体数の30〜70%であることが好ましい。30%未満であると効果がみられず、70%をこえると低重合度となる。
ラジカル重合開始剤量と連鎖移動剤量とのモル比率は、(1:1)〜(0.005:1)である。好ましくは(1:1)〜(0.1:1)である。
【0039】
本発明に用いられる連鎖移動剤はラジカル重合開始剤と併用できる。
本発明で使用できるラジカル重合開始剤は、熱重合開始剤、レドックス重合開始剤、光重合開始剤が挙げられる。例えばパーオキシドやアゾ化合物等の重合開始剤が挙げられる。特に限定しないが、具体的なラジカル重合開始剤としては、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート(MAIB)等が挙げられる。
【0040】
重合操作については通常のバッチ重合、滴下重合などの方法で合成できる。例えば、必要な単量体量を有機溶媒に溶解させ、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤の存在下で重合することにより酸解離性基含有重合体が得られる。
重合溶媒は単量体、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤を溶解できる有機溶剤が用いられる。有機溶剤としてケトン系溶剤、エーテル系溶剤、非プロトン系極性溶剤、エステル系溶剤、芳香族系溶剤、線状または環状脂肪族系溶剤が挙げられる。ケトン系溶剤としては、メチルエチルケトン、アセトンなどが挙げられる。エーテル系溶剤としてはアルコキシアルキルエーテル、例えば、メトキシメチルエーテル、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどが挙げられる。非プロトン系極性溶剤はジメチルホルムアミド、ジメチルスルホオキサイドなどが挙げられる。エステル系溶剤は酢酸アルキル、例えば酢酸エチル、酢酸メチルなどが挙げられる。芳香族系溶剤はアルキルアリール溶剤、例えばトルエン、キシレン、およびハロゲン化芳香族溶剤、例えばクロロベンゼンなどが挙げられる。脂肪族系溶剤はヘキサン、シクロヘキサンなどが挙げられる。
重合温度は20〜120℃、好ましくは50〜110℃、さらに好ましくは60〜100℃である。通常の大気雰囲気でも重合できる場合もあるが、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下での重合が好ましい。重合体の分子量は単量体量と連鎖移動剤量との比率を制御することで調整できる。
重合時間は一般に0.5〜144時間、好ましくは1〜72時間、より好ましくは2〜24時間である。
【0041】
本発明の重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」ともいう)が2,000〜100,000、好ましくは2,000〜60,000、特に好ましくは2,000〜40,000である。Mwと、GPCで測定したポリスチレン換算数平均分子量(以下、「Mn」ともいう)との比(Mw/Mn)は、通常、1〜5である。
本発明の重合体は、アルカリ不溶性またはアルカリ難溶性であって酸の作用によりアルカリ易溶性となる酸解離性基含有樹脂として使用することができる。
【0042】
上記酸解離性基含有樹脂とともに使用できる感放射線性酸発生剤(以下、「酸発生剤」という)としては、スルホンイミド化合物、オニウム塩化合物等が挙げられる。
スルホンイミド化合物としては、例えば、下記式(6)で表される。
【化12】

上記式(6)において、R4は1価の有機基を表し、R3は2価の有機基を表す。
1価の有機基としては、置換もしくは非置換の直鎖または分岐アルキル基、置換もしくは非置換の環式アルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、パーフルオロアルキル基等が、2価の有機基としては、置換もしくは非置換のアルキレン基、置換もしくは非置換のアルケニレン基、置換もしくは非置換のフェニレン基等が挙げられる。
【0043】
スルホンイミド化合物の具体例としては、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(p−トルエンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(p−トルエンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(4−トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(パーフルオロベンゼンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(パーフルオロベンゼンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ノナフルオロブチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(ノナフルオロブチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(パーフルオロオクタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(パーフルオロオクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ベンゼンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(ベンゼンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ベンゼンスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−{(5−メチル−5−カルボキシメタンビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル)スルホニルオキシ}スクシンイミド等が挙げられる。
【0044】
上記スルホンイミドの中で、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(p−トルエンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(ノナフルオロブチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ベンゼンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−{(5−メチル−5−カルボキシメタンビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル)スルホニルオキシ}スクシンイミドが好ましい。
【0045】
オニウム塩化合物としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。
オニウム塩化合物としては、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロオクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムp−トルエンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム10−カンファースルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロオクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムp−トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウム10−カンファースルホネート、ジフェニルヨードニウム4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロベンゼンスルホネート、ビス(p−フルオロフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(p−フルオロフェニル)ヨードニウムノナフルオロメタンスルホネート、ビス(p−フルオロフェニル)ヨードニウムカンファースルホネート、(p−フルオロフェニル)(フェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、
【0046】
トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロオクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウムベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウム10−カンファースルホネート、トリフェニルスルホニウム4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロベンゼンスルホネート、4−ヒドロキシフェニル・ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリ(p−メトキシフェニル)スルホニウムノナフルオロブタンスルホネート、トリ(p−メトキシフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリ(p−メトキシフェニル)スルホニウムパーフルオロオクタンスルホネート、トリ(p−メトキシフェニル)スルホニウムp−トルエンスルホネート、トリ(p−メトキシフェニル)スルホニウムベンゼンスルホネート、トリ(p−メトキシフェニル)スルホニウム10−カンファースルホネート、トリス(p−フルオロフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(p−フルオロフェニル)スルホニウムp−トルエンスルホネート、(p−フルオロフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート等が挙げられる。
【0047】
本発明において、酸発生剤の使用量は、樹脂成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、さらに好ましくは0.5〜15重量部である。また本発明において酸発生剤は2種以上を混合して用いることができる。
【0048】
本発明の感放射線性樹脂組成物には、酸拡散制御剤、その他の添加剤を配合できる。
酸拡散制御剤は、露光により酸発生剤から生じた酸のレジスト被膜中における拡散現象を制御し、非露光領域での好ましくない化学反応を抑制する作用を有する。このような酸拡散制御剤を使用することにより、組成物の貯蔵安定性が向上し、またレジストとして解像度が向上するとともに、PEDの変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れたものとなる。
酸拡散制御剤としては、レジストパターンの形成工程中の露光や加熱処理により塩基性が変化しない含窒素有機化合物が好ましい。
このような含窒素有機化合物としては、例えば、下記式(7)で表される化合物(以下、「含窒素化合物(I)」という。)、アミド基含有化合物、含窒素複素環化合物等が挙げられる。
【化13】

式中、R5は、相互に同一でも異なってもよく、水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す(アルキル基、アリール基、アラルキル基等の水素原子が、例えば、ヒドロキシ基など、官能基で置換されている場合を含む)。
【0049】
含窒素化合物(I)としては、例えば、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン等のモノアルキルアミン類;ジ−n−ブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、ジ−n−ヘキシルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジ−n−ノニルアミン、ジ−n−デシルアミン等のジアルキルアミン類;トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デシルアミン等のトリアルキルアミン類;アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、1−ナフチルアミン等の芳香族アミン類等が挙げられる。
【0050】
アミド基含有化合物としては、例えば、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
含窒素複素環化合物としては、例えば、イミダゾール、ベンズイミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニルベンズイミダゾール等のイミダゾール類;ピリジン、2−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−エチルピリジン、4−エチルピリジン、2−フェニルピリジン、4−フェニルピリジン、N−メチル−4−フェニルピリジン、ニコチン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、キノリン、8−オキシキノリン、アクリジン等のピリジン類のほか、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、キノザリン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、4−メチルモルホリン、ピペラジン、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0051】
また酸拡散制御剤として、酸解離性基を持つ塩基前駆体を用いることもできる。具体的にはN−(t−ブトキシカルボニル)ピペリジン、N−(t−ブトキシカルボニル)イミダゾール、N−(t−ブトキシカルボニル)ベンズイミダゾール、N−(t−ブトキシカルボニル)2−フェニルベンズイミダゾール、N−(t−ブトキシカルボニル)ジオクチルアミン、N−(t−ブトキシカルボニル)ジエタノールアミン、N−(t−ブトキシカルボニル)ジシクロヘキシルアミン、N−(t−ブトキシカルボニル)ジフェニルアミン等が挙げられる。
【0052】
これらの含窒素有機化合物のうち、含窒素化合物(I)、含窒素複素環化合物等が好ましい。また、含窒素化合物(I)の中では、トリアルキルアミン類が特に好ましく、含窒素複素環化合物の中では、イミダゾール類が特に好ましい。
酸拡散制御剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
酸拡散制御剤の配合量は、樹脂100重量部に対して、15重量部以下、好ましくは0.001〜10重量部、さらに好ましくは0.005〜5重量部である。この場合、酸拡散制御剤の配合量が15重量部をこえると、レジストとしての感度や露光部の現像性が低下する傾向がある。なお、酸拡散制御剤の配合量が0.001重量部未満では、プロセス条件によっては、レジストとしてのパターン形状や寸法忠実度が低下するおそれがある。
【0053】
本発明の感放射線性樹脂組成物には、組成物の塗布性やストリエーション、レジストとしての現像性等を改良する作用を示す界面活性剤を配合することができる。
このような界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等を挙げることができ、また市販品としては、例えば、エフトップEF301、EF303,EF352(トーケムプロダクツ社製)、メガファックス F171、F173(大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製)、KP341(信越化学工業(株)製)、ポリフローNo.75、No.95(共栄社化学(株)製)等が挙げられる。
界面活性剤の配合量は、酸解離性基含有樹脂100重量部に対して、好ましくは2重量部以下である。
また、その他の増感剤を配合することができる。好ましい増感剤の例としては、カルバゾール類、ベンゾフェノン類、ローズベンガル類、アントラセン類等が挙げられる。
増感剤の配合量は、酸解離性基含有樹脂100重量部に対して、好ましくは50重量部以下である。
【0054】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、その使用に際して、全固形分の濃度が、例えば0.〜50重量%、好ましくは1〜40重量%になるように、溶剤に均一に溶解したのち、例えば孔径200nm程度のフィルターでろ過することにより、組成物溶液として調製される。
上記組成物溶液の調製に使用される溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸i−プロピル等の乳酸エステル類;ぎ酸n−アミル、ぎ酸i−アミル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸n−アミル、酢酸i−アミル、プロピオン酸i−プロピル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−ブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸メチル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メチル−3−メトキシブチルブチレート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;γ−ブチロラクン等のラクトン類が挙げられる。
【0055】
これらの溶剤のうち、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、2−ヘプタノン、乳酸エステル類、2−ヒドロキシプロピオン酸エステル類、3−アルコキシプロピオン酸エステル類等が、塗布時の膜面内均一性が良好となるの点で好ましい。
これらの溶剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0056】
本発明の感放射線性樹脂組成物からレジストパターンを形成する際には、前述したようにして調製された組成物溶液を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の塗布手段によって、例えば、シリコンウエハー、アルミニウムで被覆されたウエハー等の基板上に塗布することにより、レジスト被膜を形成し、場合により予め70℃〜160℃程度の温度で加熱処理(以下、「PB」という)を行なった後、所定のマスクパターンを介して露光する。その際に使用される放射線として、酸発生剤の種類に応じ、例えば、F2エキシマレーザー(波長157nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)やKrFエキシマレーザー(波長248nm)等の遠紫外線、シンクロトロン放射線等のX線、電子線等の荷電粒子線を適宜選択し使用する。また、露光量等の露光条件は、感放射線性樹脂組成物の配合組成、各添加剤の種類等に応じて、適宜選定される。本発明においては、KrFエキシマレーザー(波長248nm)等の遠紫外線が好適に用いられる。
【0057】
本発明においては、高精度の微細パターンを安定して形成するために、露光後に、70℃〜160℃の温度で30秒以上加熱処理(以下、「PEB」という)を行なうことが好ましい。この場合、露光後ベークの温度が70℃未満では、基板の種類による感度のばらつきが広がるおそれがある。
その後、アルカリ現像液で10℃〜50℃、10秒〜200秒、好ましくは15℃〜30℃、15秒〜100秒、特に好ましくは20℃〜25℃、15秒〜90秒の条件で現像することにより所定のレジストパターンを形成させる。
アルカリ現像液としては、例えば、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド類などのアルカリ性化合物を、通常、1重量%〜10重量%、好ましくは1重量%〜5重量%、特に好ましくは1〜3重量%の濃度となるよう溶解したアルカリ性水溶液が使用される。
また、上記アルカリ性水溶液からなる現像液には、例えばメタノール、エタノール等の水溶性有機溶剤や界面活性剤を適宜添加することもできる。なお、レジストパターンの形成に際しては、環境雰囲気中に含まれる塩基性不純物等の影響を防止するため、レジスト被膜上に保護膜を設けることもできる。
【実施例】
【0058】
実施例1
2−ビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2−イルメチル−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール120gを1リットルのナスフラスコに入れて、10℃まで冷却して、チオ酢酸35gをゆっくりと滴下した。滴下後、40℃まで昇温させ、1時間攪拌させた。その後、クロロホルム300mlに溶かし、5%炭酸水素ナトリウム水溶液100gで洗浄を3回行なった。その後、クロロホルムを除去して、中間体1を得た。その中間体1をメタノール500mlに溶かし、ナトリウムエトキシド36gのメタノール溶液(100ml)を加え、室温で3時間攪拌した。反応終了後、水100mlを加え、メタノールを除去した水溶液に2N塩酸を酸性になるまで加え、その後MIBKで抽出した。その後、MIBKを除去し、減圧蒸留(120℃、6mmHg)により1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロー2−(6−メルカプト−ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプチルメチル)−プロパノール(以下、α−1という)80gを得た。
【0059】
得られたα−1について、日本電子(株)製「JMS−AX505W型質量分析計」を用いて、下記の条件で分子量分析を行なった。得られた結果は308の親イオンピークであり、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(6−メルカプトービシクロ[2.2.1]−2−ヘプチルメチル)−プロパノールであることが確認された。
エミッター電流 :5mA(使用ガス:Xe)
加速電圧 :3.0kV
10N MULTI:1.3
イオン化法 :高速原子衝撃法(FAB)
検出イオン :カチオン(+)
測定質量範囲 :20〜1500m/z
スキャン :30sec
分解能 :1500
マトリックス :3−ニトロベンジルアルコール
また、α−1について、日本電子(株)製「JNM−EX270」を用いて、1H−NMR分析(測定溶媒:重水素化クロロホルム)を行なった結果、得られたケミカルシフトは0.62−2.16(8H,m),2.65−2.98(2H,m),3.11−3.21(2H,m)であり、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロー2−(6−メルカプトービシクロ[2.2.1]−2−ヘプチルメチル)−プロパノールであることが確認された。
【0060】
実施例2
1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロ−3−ブテン−2−オール120gを1リットルのナスフラスコに入れて、10℃まで冷却して、チオ酢酸46gをゆっくりと滴下した。滴下後、40℃まで昇温させ、1時間攪拌させた。その後、クロロホルム300mlに溶かし、5%炭酸水素ナトリウム水溶液100gで洗浄を3回行なった。その後、クロロホルムを除去して、中間体2を得た。その中間体2をメタノール500mlに溶かし、ナトリウムエトキシド47gのメタノール溶液(100ml)を加え、室温で3時間攪拌した。反応終了後、水100mlを加え、メタノールを除去した水溶液に2N塩酸を酸性になるまで加え、その後MIBKで抽出した。その後、MIBKを除去し、減圧蒸留(79℃、21mmHg)により1,1,1−トリフルオロ−4−メルカプト−2−トリフルオロメチル−2−ブタノール(以下、α−2という)80gを得た。
得られたα−2について、実施例1と同一の条件で分子量分析の結果は242の親イオンであり、1H−NMR分析を行なった結果、得られたケミカルシフトは1.37−1.43(1H,t、J=8.4Hz,SH),1.81−1.92(2H,m,CH2),2.03−2.09(2H,m,CH2)、2.53−2.61(2H,m,CH2),3.12(1H,br,OH)であり、1,1,1−トリフルオロ−4−メルカプト−2−トリフルオロメチル−2−ブタノールであることが確認された。
【0061】
実施例3
【化14】

化合物(E1−1)53.92g(50モル%)、化合物(E1−2)10.69g(10モル%)、化合物(E1−3)35.38g(40モル%)を2−ブタノン187gに溶かし、さらにジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)2.24g、(α―1)5.98gを投入した単量体溶液を準備し、100gの2−ブタノンを投入した1000mlの三口フラスコを30分窒素パージする。窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別する。
ろ別された白色粉末を2度400gのメタノールにてスラリー上で洗浄した後、ろ別し、50℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体を得た(72g、収率72%)。この重合体はMwが7,400であり、13C-NMR分析の結果、化合物(E1−1)、化合物(E1−2)、化合物(E1−3)で表される繰り返し単位、各繰り返し単位の含有率が52.2:8.6:39.2(モル%)の共重合体であった。この重合体を重合体(A−1)とする。IR測定を行なった結果、3300cm-1吸収が確認されたことから式(2)で表される基は分子末端に付加していると考えられる。
【0062】
実施例4
【化15】

化合物(E2−1)24.31g(50モル%)、化合物(E2−2)7.75g(15モル%)、化合物(E2−3)17.94g(35モル%)を2−ブタノン150gに溶かし、さらにジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)1.01g、(α―1)2.70gを投入した単量体溶液を準備し、100gの2−ブタノンを投入した1000mlの三口フラスコを30分窒素パージする。窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別する。
ろ別された白色粉末を2度400gのメタノールにてスラリー上で洗浄した後、ろ別し、50℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体を得た(38g、収率88%)。この重合体はMwが7,200であり、13C-NMR分析の結果、化合物(E2−1)、化合物(E2−2)、化合物(E2−3)で表される繰り返し単位、各繰り返し単位の含有率が52.1:13.6:34.3(モル%)の共重合体であった。この重合体を重合体(A−2)とする。IR測定を行なった結果、3300cm-1吸収が確認されたことから式(2)で表される基は分子末端に付加していると考えられる。
【0063】
実施例5
【化16】

化合物(E3−1)24.62g(50モル%)、化合物(E3−2)5.77g(37モル%)、化合物(E3−3)19.61g(13モル%)を2−ブタノン150gに溶かし、さらにジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)1.04g、(α−1)2.79gを投入した単量体溶液を準備し、100gの2−ブタノンを投入した1000mlの三口フラスコを30分窒素パージする。窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別する。
ろ別された白色粉末を2度2000gのイソプロピルアルコールにてスラリー上で洗浄した後、ろ別し、60℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体を得た(85g、収率85%)。この重合体はMwが6,200であり、13C-NMR分析の結果、化合物(E3−1)、化合物(E3−2)、化合物(E3−3)で表される繰り返し単位、各繰り返し単位の含有率が54.1:31.9:13.9(モル%)の共重合体であった。この重合体を重合体(A−3)とする。IR測定を行なった結果、3300cm-1吸収が確認されたことから式(2)で表される基は分子末端に付加していると考えられる。
【0064】
実施例6
【化17】

化合物(E1−1)26.96g(50モル%)、化合物(E1−2)5.35g(10モル%)、化合物(E1−3)17.69g(40モル%)を2−ブタノン150gに溶かし、さらにジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)1.12g、(α−2)2.35gを投入した単量体溶液を準備し、100gの2−ブタノンを投入した1000mlの三口フラスコを30分窒素パージする。窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別する。
ろ別された白色粉末を2度400gのメタノールにてスラリー上で洗浄した後、ろ別し、50℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体を得た(41g、収率82%)。この重合体はMwが6,800であり、13C-NMR分析の結果、化合物(E1−1)、化合物(E1−2)、化合物(E1−3)で表される繰り返し単位、各繰り返し単位の含有率が52.2:9.1:38.7(モル%)の共重合体であった。この重合体を重合体(A−4)とする。IR測定を行なった結果、3300cm-1吸収が確認されたことから式(2)で表される基は分子末端に付加していると考えられる。
【0065】
実施例7
【化18】

化合物(E2−1)24.31g(50モル%)、化合物(E2−2)7.75g(15モル%)、化合物(E2−3)17.94g(35モル%)を2−ブタノン150gに溶かし、さらにジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)1.01g、(α−2)2.12gを投入した単量体溶液を準備し、100gの2−ブタノンを投入した1000mlの三口フラスコを30分窒素パージする。窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別する。
ろ別された白色粉末を2度400gのメタノールにてスラリー上で洗浄した後、ろ別し、50℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体を得た(38g、収率88%)。この重合体はMwが6,800であり、13C-NMR分析の結果、化合物(E2−1)、化合物(E2−2)、化合物(E2−3)で表される繰り返し単位、各繰り返し単位の含有率が52.1:14.1:33.8(モル%)の共重合体であった。この重合体を重合体(A−5)とする。
【0066】
実施例8
【化19】

化合物(E3−1)24.62g(50モル%)、化合物(E3−2)5.77g(37モル%)、化合物(E3−3)19.61g(13モル%)を2−ブタノン150gに溶かし、さらにジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)1.04g、(α−2)2.19gを投入した単量体溶液を準備し、100gの2−ブタノンを投入した1000mlの三口フラスコを30分窒素パージする。窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別する。
ろ別された白色粉末を2度2000gのイソプロピルアルコールにてスラリー上で洗浄した後、ろ別し、60℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体を得た(85g、収率85%)。この重合体はMwが6,400であり、13C-NMR分析の結果、化合物(E3−1)、化合物(E3−2)、化合物(E3−3)で表される繰り返し単位、各繰り返し単位の含有率が53.8:31.9:14.2(モル%)の共重合体であった。この重合体を重合体(A−6)とする。IR測定を行なった結果、3300cm-1吸収が確認されたことから式(2)で表される基は分子末端に付加していると考えられる。
【0067】
比較例1
【化20】

化合物(E1−1)53.92g(50モル%)、化合物(E1−2)10.69g(10モル%)、化合物(E1−3)35.38g(40モル%)を2−ブタノン187gに溶かし、さらにジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)2.24gを投入した単量体溶液を準備し、100gの2−ブタノンを投入した1000mlの三口フラスコを30分窒素パージする。窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別する。
ろ別された白色粉末を2度400gのメタノールにてスラリー上で洗浄した後、ろ別し、50℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体を得た(72g、収率72%)。この重合体はMwが8,500であり、13C-NMR分析の結果、化合物(E1−1)、化合物(E1−2)、化合物(E1−3)で表される繰り返し単位、各繰り返し単位の含有率が52.2:8.0:39.8(モル%)の共重合体であった。この重合体を重合体(A'−1)とする。
【0068】
比較例2
【化21】

化合物(E2−1)24.31g(50モル%)、化合物(E2−2)7.75g(15モル%)、化合物(E2−3)17.94g(35モル%)を2−ブタノン150gに溶かし、さらにジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)1.01g単量体溶液を準備し、100gの2−ブタノンを投入した1000mlの三口フラスコを30分窒素パージする。窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別する。
ろ別された白色粉末を2度400gのメタノールにてスラリー上で洗浄した後、ろ別し、50℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体を得た(38g、収率88%)。この重合体はMwが8,200であり、13C-NMR分析の結果、化合物(E2−1)、化合物(E2−2)、化合物(E2−3)で表される繰り返し単位、各繰り返し単位の含有率が52.1:13.6:34.3(モル%)の共重合体であった。この重合体を重合体(A'−2)とする。
【0069】
比較例3
【化22】

化合物(E3−1)24.62g(50モル%)、化合物(E3−2)5.77g(37モル%)、化合物(E3−3)19.61g(13モル%)を2−ブタノン150gに溶解させ、さらにジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)1.04gを投入した単量体溶液を準備し、100gの2−ブタノンを投入した1000mlの三口フラスコを30分窒素パージする。窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別する。
ろ別された白色粉末を2度2000gのイソプロピルアルコールにてスラリー上で洗浄した後、ろ別し、60℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体を得た(85g、収率85%)。この重合体はMwが6,100であり、13C-NMR分析の結果、化合物(E3−1)、化合物(E3−2)、化合物(E3−3)で表される繰り返し単位、各繰り返し単位の含有率が54.1:32.3:13.6(モル%)の共重合体であった。この重合体を重合体(A'−3)とする。
【0070】
実施例9〜実施例14、比較例4〜比較例6
実施例3〜実施例8および比較例1〜比較例3で得られた各重合体と、以下に示す酸発生剤と、他の成分とを表1に示す割合で混合して均一溶液としたのち、孔径200nmのメンブランフィルターでろ過して、各感放射線性樹脂組成物溶液を得た。
得られた感放射線性樹脂組成物溶液を表2に示す条件にて露光して各種評価を行なった。評価結果を表2に示す。ここで、部は、特記しない限り重量基準である。
酸発生剤(B)
(B−1):トリフェニルスルホニウム・ノナフルオロ−n−ブタンスルホネート
酸拡散制御剤(C)
(C−1):2−フェニルベンズイミダゾール
溶剤(D)
(D−1):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
(D−2):シクロヘキサノン
【0071】
ここで、各レジストの評価は下記の要領で実施した。
(1)感度:
ArF光源にて露光を行なう場合、ウエハー表面に膜厚770オングストロームのARC29((Brewer Science)社製)膜を形成したシリコンウエハー(ARC29)を用い、各組成物溶液を、基板上にスピンコートにより塗布し、ホットプレート上にて、表1に示す条件でPBを行なって形成した膜厚250nmのレジスト被膜に、ニコン製ArFエキシマレーザー露光装置(開口数0.75)を用い、マスクパターンを介して露光した。その後、表1に示す条件でPEBを行なったのち、2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により、25℃で60秒間現像し、水洗し、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。このとき、線幅110nmのライン・アンド・スペースパターン(1L1S)を1対1の線幅に形成する露光量を最適露光量とし、この最適露光量を感度とした。
(2)解像度:
最適露光量で解像される最小のライン・アンド・スペースパターンの寸法を解像度とした。
(3)パターンプロファイル:
線幅 160nmのライン・アンド・スペースパターン(1L1S)の方形状断面の下辺寸法L1と上下辺寸法L2とを走査型電子顕微鏡により測定し、0.85≦L2/L1≦1を満足し、かつパターンプロファイルが裾を引いていない場合を、パターンプロファイルが"良好"であるとした。
(4)ラインエッジラフネス(LER):
設計線幅110nmのライン・アンド・スペースパターン(1L1S)のラインパターンを走査型電子顕微鏡にて観察した。図1にパターンの模式図を示す(凹凸は実際よりも誇張されている)。図1(a)は平面図を、図1(b)はシリコンウエハー1上に形成されたパターン2の断面図をそれぞれ示す。
各実施例および比較例において観察された形状について、該ラインパターンの横側面2aに沿って生じた凹凸の最も著しい箇所における線幅と設計線幅110nmとの差△CDを測定した。該測定をn=10で行ない、その測定ばらつきを3σで評価した。
【0072】
【表1】

【表2】

【0073】
表2の各実施例に示すように、レジスト基本性能である解像度、パターンファイル、ラインエッジラフネス(LER)特性に優れた感放射線性樹脂組成物が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、ラインエッジラフネス(LER)特性に優れているので、これからさらに微細化が進行すると予想される半導体デバイス製造用の化学増幅型レジストとして極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】LER測定用ラインパターンの模式図である。
【符号の説明】
【0076】
1 基板
2 レジストパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される新規化合物。
【化1】

(式(1)において、Aは2価の有機基を、pは1〜3の整数をそれぞれ表す。)
【請求項2】
下記式(2)で表される基を含み、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算重量平均分子量が2,000〜100,000である重合体。
【化2】

(式(2)において、Aは2価の有機基を、pは1〜3の整数をそれぞれ表す。)
【請求項3】
前記重合体が酸解離性基を有する繰返し単位を含有することを特徴とする請求項2記載の重合体。
【請求項4】
アルカリ不溶性またはアルカリ難溶性であって酸の作用によりアルカリ易溶性となる酸解離性基含有樹脂と、感放射線性酸発生剤とを含有する感放射線性樹脂組成物であって、 前記酸解離性基含有樹脂が請求項3記載の重合体であることを特徴とする感放射線性樹脂組成物。
【請求項5】
下記式(1)で表される連鎖移動剤。
【化3】

(式(1)において、Aは2価の有機基を、pは1〜3の整数をそれぞれ表す。)

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−63016(P2006−63016A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−247676(P2004−247676)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】