説明

方向性珪素鋼板の製造方法およびその連続脱炭・窒化焼鈍設備

【課題】雰囲気ガスを安価に供給するとともに、皮膜性能および磁性の高位安定化を図ることのできる方向性珪素鋼板の製造方法及びその連続脱炭・窒化焼鈍設備を提供する。
【解決手段】Siを2.0〜4.8%含む所定厚の冷延鋼板に、脱炭工程を含む一次再結晶焼鈍及び窒化焼鈍を行い、焼鈍分離材を塗布して仕上焼鈍を施す方向性珪素鋼板の製造方法及びその製造設備において、窒化焼鈍を行う窒化帯または窒化帯の前後の雰囲気仕切り内から雰囲気ガスを回収・脱水し、H2、不活性ガスを主成分とし、NH3を1vol%(ドライガス換算)未満含む再生雰囲気ガスを生産し、供給後の窒化帯雰囲気がH2濃度:25vol%(ドライガス換算)以上、NH3:0.1〜10vol%(ドライガス換算)、露点:10℃以下、残部不活性ガスになるように、再生雰囲気ガスに、不活性ガス、NH3、H20を加えて成分調整してから窒化帯に供給することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄損が極めて低い方向性珪素鋼板の製造方法および方向性珪素鋼板の連続脱炭・窒化焼鈍設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
方向性珪素鋼板は、電気機器の磁気鉄心として多用され、エネルギーロスを少なくする鋼板自体の改善はもとより、鋼板の製造の安定性改善、製造コスト低減等が繰り返し研究されてきた。脱炭工程を含む一次再結晶焼鈍を行う脱炭焼鈍工程や窒化焼鈍工程も、例外ではなかった。
【0003】
脱炭・窒化焼鈍工程の主たる目的は、熱延工程でのγ相域確保等の理由で、鋼板に含まれている炭素(通常、5×10-2質量%程度)を、最終製品で磁性が時効劣化しない領域(15質量ppm未満)まで脱炭し、次いで、鋼板表面に適正な酸素付与を行って、FeおよびSi酸化物を形成させた後、鋼板に適正な窒素付与を行い、その後、次工程の仕上焼鈍で、表面に塗布したMgOを反応させてグラス皮膜を形成するとともに、2次再結晶させる前準備として、最適な結晶粒サイズに一次再結晶させることである。
【0004】
従来、この方向性珪素鋼板の脱炭焼鈍工程は連続焼鈍炉で行われ、炉内で鋼板が連続的に脱炭され、鋼板表面に酸素が付与されるとともに、雰囲気ガスも連続的に還元され、炉外に放散燃焼されていた。また、窒化焼鈍工程は、炉内で鋼板が連続的に窒化され、鋼板に窒素が付与されるとともに、雰囲気ガスも、連続的に、NH3分解および還元され、炉外に放散燃焼されていた。
【0005】
図3に、従来の連続脱炭・窒化焼鈍設備の一例を示す。炉2は、加熱・均熱帯3、還元帯4、窒化帯5、冷却帯6、および、それらの処理帯間の雰囲気仕切り7〜9から構成されている。
【0006】
加熱・均熱帯3の雰囲気ガスは、加熱・均熱帯3の後方の雰囲気ガス供給管20Aより供給され、鋼板1と対向しながら、大半は、炉2の前部に流れ、雰囲気ガス排出管11Aより放散燃焼されるが、一部は、炉入口から放散されるとともに、雰囲気仕切り7へ流出する。
【0007】
還元帯4の雰囲気ガスは、雰囲気ガス供給管20Bより供給され、雰囲気ガス排出管11Bより放散燃焼されるとともに、前後の雰囲気仕切り7、8へ流出する。窒化帯5の雰囲気ガスは、雰囲気ガス供給管20Cより供給され、雰囲気ガス排出管11Cより放散燃焼されるとともに、前後の雰囲気仕切り8、9へ流出する。
【0008】
冷却帯6の雰囲気ガスは、雰囲気ガス供給管20Dより供給され、前部の雰囲気仕切り9に流出するとともに、炉出口より放散される。
【0009】
また、各雰囲気仕切り7〜9からは、雰囲気ガス排出管11E〜Gを通して、雰囲気ガスが放散燃焼している。なお、各雰囲気仕切りの炉圧は、前後の処理帯より一定値だけ低くなるよう設定され、これを維持するよう、各雰囲気ガス排出管11A〜C、E〜Gから雰囲気ガスが放散燃焼されている。
【0010】
特許文献1には、連続脱炭・窒化焼鈍設備からガス回収することが開示されている。この場合、窒化炉およびその前後炉から回収された雰囲気ガスは、全量、NH3分解装置を通して残留NH3を分解し、さらに、雰囲気ガス生成装置で精製後、連続脱炭・窒化焼鈍設備に還流される。
【0011】
【特許文献1】特開平10−212527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図3に示す従来の方向性珪素鋼板の脱炭・窒化焼鈍工程では、使用された雰囲気ガスは炉外に放散燃焼されるので、高い雰囲気コストを余儀なくされている。雰囲気コスト削減のため、雰囲気ガス量の低減化が試みられたが、しばしば、窒化不良、または、磁性不良を招くとともに、これらの不良改善に、多大の時間と費用を費やさざるを得なかった。
【0013】
特許文献1で開示されている連続脱炭・窒化焼鈍設備は、窒化炉およびその前後炉から回収された雰囲気ガスが、全量、NH3分解装置を通り、残留NH3が熱分解された後、さらに、雰囲気ガス生成装置で精製され、連続脱炭・窒化焼鈍設備に雰囲気ガスが還流されるような大規模設備である。
【0014】
すなわち、特許文献1開示の連続脱炭・窒化焼鈍設備は、ガス回収・精製に必要な設備が巨大となり、設備費も非常に高価となり、巨大な熱処理設備にしか適用が困難なものである。
【0015】
そこで、本発明は、上述した従来の脱炭・窒化焼鈍工程が持っている課題に鑑み、大小すべての熱処理設備において、雰囲気ガスを安価に供給することができるとともに、高位に品質が安定した製品を供給することができる方向性珪素鋼板の製造方法および方向性珪素鋼板の連続脱炭・窒化焼鈍設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の要旨は、以下の(1)〜(4)の通りである。
【0017】
(1) Si:2.0〜4.8質量%、インヒビタ成分を含み、残部鉄および不可避的不純物からなる珪素鋼板の熱延鋼帯を、焼鈍するかまたは焼鈍することなく、その後、1回または中間焼鈍を含む2回以上の冷間圧延を行って所定の板厚とし、次いで、脱炭工程を含む一次再結晶焼鈍および窒化焼鈍を行い、さらに、焼鈍分離材を塗布して仕上焼鈍を施す、方向性珪素鋼板の製造方法において、
(i)前記脱炭工程を含む一次再結晶焼鈍および窒化焼鈍を行う際、窒化焼鈍を行う窒化帯または窒化帯の前後の雰囲気仕切り内から炉の雰囲気ガスを回収して脱水し、H2、不活性ガスを主成分とし、NH3を1vol%(ドライガス換算)未満含む再生雰囲気ガスを生産し、
(ii)該再生雰囲気ガスを供給した後の窒化帯の雰囲気が、H2濃度:25vol%(ドライガス換算)以上、NH3:0.1〜10vol%(ドライガス換算)、露点:10℃以下、残部不活性ガスになるように、前記再生雰囲気ガスに不活性ガス、NH3、H20を加えて成分調整してから、窒化帯に供給する
ことを特徴とする方向性珪素鋼板の製造方法。
【0018】
(2) 前記窒化帯に供給した後の残余の再生雰囲気ガスを、NH3熱分解・精整した後、H2含有ガス、不活性ガスおよびH2Oを加えて成分調整し、窒化帯を除く1個以上の処理帯に供給することを特徴とする上記(1)に記載の方向性珪素鋼板の製造方法。
【0019】
(3) 方向性珪素鋼板の連続脱炭・窒化焼鈍設備において、窒化焼鈍を行う窒化帯または窒化帯前後の雰囲気仕切り内から回収した使用済み雰囲気ガスを脱水し、NH3を1vol%(ドライガス換算)未満含む再生雰囲気ガスを生産する脱水装置を配設するとともに、再生雰囲気ガスにNH3、不活性ガスおよびH2Oを加えて成分調整する窒化帯向けの雰囲気ガス成分調整装置を配設したことを特徴とする方向性珪素鋼板の連続脱炭・窒化焼鈍設備。
【0020】
(4) 前記窒化帯に供給した後の残余の再生雰囲気ガス中のNH3を熱分解・精整するNH3熱分解・精整装置を配設し、熱分解・精製後にH2含有ガス、不活性ガスおよびH2Oを加えて成分調整する窒化帯を除く1個以上の処理帯向けの雰囲気ガス成分調整装置を配設したことを特徴とする上記(3)に記載の方向性珪素鋼板の連続脱炭・窒化焼鈍設備。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、雰囲気ガスを安価に供給することができるとともに、極めて安定して、方向性珪素鋼板を製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
雰囲気ガスの炉内でのガス濃度を詳細に調査したところ、窒化帯では、主に、NH3が分解して、H2とN2に変わり、一部H2が、鋼板の地鉄の酸化物を還元して、H2Oが若干増加することが判明した。なお、還元帯の雰囲気の露点は、窒化帯の露点より低くないのが一般的である。
【0023】
これらのH2、N2、H2O、NH3の内で、窒化帯での使用の障害となるガス成分は、残留H2Oのみである。また、加熱・均熱帯での使用の障害となるガス成分は、NH3のみであり、また、加熱・均熱帯および窒化帯以外の処理帯での使用の障害となるガス成分は、NH3、H2Oのみである。その他の雰囲気ガス成分は、使用済み雰囲気ガスの各組成の濃度を分析し、不足分を補充することで、再使用可能である。
【0024】
図1に、本発明の連続脱炭・窒化焼鈍設備の一例を示す。炉2は、加熱・均熱帯3、還元帯4、窒化帯5、冷却帯6、および、それらの処理帯間の雰囲気仕切り7〜9から構成されている。
【0025】
加熱・均熱帯3の後方の雰囲気ガス供給管20Aから炉内に供給された雰囲気ガスは、鋼板1と対向して進行し、大半は、炉の前部に至り、雰囲気ガス排出管11Aから炉外に排出されるが、一部は、炉入口から放散されるとともに、雰囲気仕切り7へ流出する。なお、雰囲気ガスが炉の前部に流れるにつれ、H2Oが消費されて減少するとともに、COxが増加する。
【0026】
還元帯4の雰囲気ガスは、雰囲気ガス供給管20Bより供給され、雰囲気ガス排出管11Bより排出されるとともに、前後の雰囲気仕切り7、8へ流出する。窒化帯5に雰囲気ガス供給管20Cから供給される雰囲気ガスは、雰囲気ガス排出管11Cから炉外に排出されるとともに、前後の雰囲気仕切り8、9へ流出する。
【0027】
冷却帯6の雰囲気ガスは、雰囲気ガス供給管20Dより供給され、前部の雰囲気仕切り9に流出するとともに、炉出口より放散される。また、各雰囲気仕切り7〜9からは、雰囲気ガス排出管11E〜Gを通して、雰囲気ガスが排出される。各雰囲気仕切りの炉圧は、前後の処理帯より一定値だけ低くなるよう設定され、これを維持するよう、各雰囲気ガス排出管11A〜C、E〜Gから雰囲気ガスが排出される。
【0028】
なお、窒化帯では、鋼帯の表面が若干還元され、それに伴い、雰囲気中のH2濃度は、若干減少するが、ごく微量であり、酸化ポテンシアル{P(H2O)/P(H2)}に影響を与えるほどではない。
【0029】
一方、排出管11Fから排出される雰囲気ガスは、NH3を含有するとともに、その露点は、一般的には、窒化帯の露点より高い。また、排出管11Gから排出される雰囲気ガスは、NH3を含有し、その露点は、一般的には、窒化帯の露点より低い。
【0030】
上記3系統の雰囲気ガス排出管11C、F、Gから排出されるNH3含有ガスは、集合された後、フィルタ21で、炉からの飛散物が除去され、脱水装置22に導かれ、H2Oが除去される。
【0031】
脱水に、特に難しい条件はなく、H2Oが除去され、窒化帯の雰囲気の露点より低ければよく、吸着方式でも、その他の方式でもよい。例えば、吸着方式の場合では、吸着剤としては、アルカリに反応しないものであれば、特に特定されるものではない。また、冷却方式の脱水装置でもかまわない。窒化帯の雰囲気の露点より、回収雰囲気温度を冷却してやればよい。また、圧力を上げる方法をとることで、回収雰囲気ガスの冷却温度を低減することも可能である。
【0032】
脱水装置22で脱水された再生雰囲気ガスは、ガス分析装置26でガス成分の濃度が分析され、雰囲気ガス成分調整装置19Cで、不足するNH3、H2O、および、必要に応じ不活性ガスが補充され、窒化帯5に供給される。また、余剰の再生ガスは、放散・燃焼される。なお、上記回路中には、雰囲気ガス循環装置13が配設され、雰囲気ガスの循環・脱水に必要な駆動力を付与している。
【0033】
本発明に使用するフィルタは、ステンレス等の非酸化性の金属を微細繊維としたものを織物とし、さらに、焼結して作られた素材を襞をもたせて加工したフィルタが、高温でも安全であることから、好ましいが、耐熱性とフィルタ能力のあるものであれば、他の構造のものでも支障はない。
【0034】
本発明に係る方向性珪素鋼板は、Si:2.0〜4.8質量%、さらに、方向性珪素鋼板製造に必要なインヒビタ成分を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなるものである。その他の成分は、特に規定しない。
【0035】
Siは、電気抵抗を高め鉄損を下げるうえで重要であるが、その含有量が4.8質量%超では、冷間圧延時に、割れが発生し易くなる。一方、2.0質量%未満では、電気抵抗が低く、鉄損を下げるうえで問題がある。
【0036】
インヒビタ成分としては、Mn、S、Al、N、Se、Sn、B、Bi、Nb、Ti、P、がある。
【0037】
Si:2.0〜4.8質量%、および、方向性珪素鋼板の製造に必要なインヒビタ成分を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる溶鋼を、通常の工程で、例えば、連続鋳造して、熱延鋼板または熱延鋼帯とする。この熱延鋼板または熱延鋼帯に、750〜1200℃の温度域で30秒〜30分間、磁束密度向上のための焼鈍を施し、または、施さず、次いで、これらの熱延鋼板または熱延鋼帯を冷間圧延する。
【0038】
冷間圧延は、最終冷間圧延率50%以上、望ましくは、特開2003−3215号公報に開示されているように、80%以上とする。冷間圧延後の材料を、連続脱炭・窒化焼鈍設備に入れる。
【0039】
まず、鋼板温度800〜850℃で脱炭焼鈍を行う。この時、炉に供給する雰囲気ガスの組成は、H2:25vol%(ドライガス換算)以上、望ましくは、75vol%(ドライガス換算)、露点:50〜75℃、残部不活性ガスとする。
【0040】
次に、鋼板温度:800〜850℃で還元焼鈍を行う。炉に供給する雰囲気ガスの組成は、H2:25vol%(ドライガス換算)以上、望ましくは、75vol%(ドライガス換算)、露点:45℃以下、残部不活性ガスとする。
【0041】
次いで、鋼板温度:700〜800℃で窒化焼鈍を行う。窒化帯の雰囲気は、NH3:0.1〜10vol%(ドライガス換算)、H2:25vol%(ドライガス換算)以上、望ましくは、65vol%(ドライガス換算)超、露点:10℃以下、残部不活性ガスの雰囲気とする。
【0042】
図2に、本発明の連続脱炭・窒化焼鈍設備の別の一例を示す。図1との違いは、窒化帯5に供給した残余の雰囲気ガスを放散燃焼させることなく、NH3分解・精整装置23で残存NH3を熱分解・精製し、分析装置27で雰囲気ガス成分を分析し、雰囲気成分調整装置19A、19Bで、不足するH2源ガス、不活性ガスおよびH2Oを調整し、加熱・均熱帯3および還元帯4に供給していることである。
【0043】
この例では、窒化帯、または、窒化帯の前後の雰囲気仕切りから流出するNH3を含む雰囲気ガスは、全て、回収・再使用されており、環境汚染の危惧は解消されている。
【0044】
こうして脱炭し、さらに、窒化した鋼板または鋼帯を、MgOを主成分とする焼鈍分離材を塗布して、仕上焼鈍炉に入れ、920〜1150℃に到達後、5時間以上保持して2次再結晶し、その後、純化のため1200℃まで昇温し、この温度に10時間以上保持する。仕上焼鈍終了後、必要に応じて磁区細分化処理を含む張力コーティングを行う。
【実施例】
【0045】
Si:3.2質量%、酸可溶性Al:0.029質量%、N:0.065質量%、Mn:0.12質量%、S:0.008質量%、C:0.05質量%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる珪素鋼板の熱延鋼帯を、1100℃で2分間焼鈍した後、冷延し、0.23mm厚とした。
【0046】
本発明例1では、窒素帯に、当初、アンモニア分解ガス(H2:75vol%、N2:25vol%、いずれもドライガス換算):200m3/hr、NH3:100m3/hrを、露点0℃として、ガス供給管から炉へ補給した。窒化帯および前後の雰囲気仕切りから雰囲気ガスを回収し、脱水装置で回収雰囲気ガスを冷却し、脱水し、露点0℃とした後、再び、NH3を加え調整後、窒素帯に循環させた。
【0047】
それに伴い、アンモニア分解ガスの供給を漸減し、最終的には、零とした。なお、加熱・均熱帯には、アンモニア分解ガス(H2:75vol%、N2:25vol%、いずれもドライガス換算)を、露点69℃として、ガス供給管から供給した。また、還元帯には、アンモニア分解ガス(H2:75vol%、N2:25vol%、いずれもドライガス換算)を、露点35℃として、ガス供給管から供給した。
【0048】
そのなかで鋼板を通板し、鋼板温度830℃で2分間焼鈍するとともに、還元帯で鋼板表面の処理を行い、最後に2次再結晶を安定させるために、アンモニア雰囲気中で窒化処理を行い、鋼板の窒素量の目標を200質量ppmとし、インヒビタを強化した後、アンモニア分解ガス雰囲気で冷却した。
【0049】
本発明例2では、回収し、脱水した雰囲気ガスを窒化帯に供給した後の残余のガスを、NH3分解・精製し、再利用した。雰囲気条件は、本発明例1と同じである。
【0050】
比較例11、12では、窒化帯にガス供給管から、各々、アンモニア分解ガス(H2:75vol%、N2:25vol%、いずれもドライガス換算):100、150m3/hrおよびNH3:70、60m3/hrを、露点0℃として、供給し、鋼板の窒素量の目標を200質量ppmとした。加熱・均熱帯、還元帯への雰囲気供給は、本発明例と同じである。
【0051】
その後、本発明例、比較例ともに、MgOを主成分とする焼鈍分離材を塗布し、高温焼鈍した。高温焼鈍では、1100℃まで、10vol%N2−90vol%H2雰囲気で、150℃/hrの昇温速度を保ちながら昇温し、1100℃到達後、その温度で、10時間保持した。
【0052】
その後、100vol%H2雰囲気とし、さらに、1200℃まで昇温し、この温度に10時間保持した。仕上焼鈍終了後、リン酸−クロム酸系の張力コーティング処理を行った。得られた特性および皮膜状況は表1の通りである。
【0053】
【表1】

【0054】
表1から明らかなように、本発明例では、雰囲気ガスを安価に、供給できるとともに、磁性および皮膜を含めて、製品品質が高位のレベルで安定した。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の連続脱炭・窒化焼鈍設備の一例を示す図である。
【図2】本発明の連続脱炭・窒化焼鈍設備の他の一例を示す図である。
【図3】従来の連続脱炭・窒化焼鈍設備の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1 鋼帯
2 炉
3 加熱・均熱帯
4 還元帯
5 窒化帯
6 冷却帯
7〜9 雰囲気仕切り
11A〜C、E〜G 雰囲気ガス排出管
12C、F 雰囲気ガス排出管バルブ
13 雰囲気ガス循環装置
18A〜B 回収雰囲気ガス供給管バルブ
19A〜C 雰囲気ガス成分調整装置
20A〜D 雰囲気ガス供給管
21 フィルタ
22 脱水装置
23 NH3熱分解・精整装置
26、27 ガス分析装置
33 H2源ガス供給管
34A〜D H2源ガス供給管バルブ
35 H2O源ガス供給管
36A、B H2O源ガス供給管バルブ
37 NH3ガス供給管
38 NH3ガス供給管バルブ
X 鋼板均熱温度到達点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si:2.0〜4.8質量%、インヒビタ成分を含み、残部鉄および不可避的不純物からなる珪素鋼板の熱延鋼帯を、焼鈍するかまたは焼鈍することなく、その後、1回または中間焼鈍を含む2回以上の冷間圧延を行って所定の板厚とし、次いで、脱炭工程を含む一次再結晶焼鈍および窒化焼鈍を行い、さらに、焼鈍分離材を塗布して仕上焼鈍を施す方向性珪素鋼板の製造方法において、
(i)前記脱炭工程を含む一次再結晶焼鈍および窒化焼鈍を行う際、窒化焼鈍を行う窒化帯または窒化帯の前後の雰囲気仕切り内から炉の雰囲気ガスを回収して脱水し、H2、不活性ガスを主成分とし、NH3を1vol%(ドライガス換算)未満含む再生雰囲気ガスを生産し、
(ii)該再生雰囲気ガスを供給した後の窒化帯の雰囲気が、H2濃度:25vol%(ドライガス換算)以上、NH3:0.1〜10vol%(ドライガス換算)、露点:10℃以下、残部不活性ガスの雰囲気になるように、前記再生雰囲気ガスに、不活性ガス、NH3、H20を加えて成分調整してから、窒化帯に供給する
ことを特徴とする方向性珪素鋼板の製造方法。
【請求項2】
前記窒化帯に供給した後の残余の再生雰囲気ガスを、NH3熱分解・精整した後、H2含有ガス、不活性ガスおよびH2Oを加えて成分調整し、窒化帯を除く1個以上の処理帯に供給することを特徴とする請求項1に記載の方向性珪素鋼板の製造方法。
【請求項3】
方向性珪素鋼板の連続脱炭・窒化焼鈍設備において、窒化焼鈍を行う窒化帯または窒化帯前後の雰囲気仕切り内から回収した使用済み雰囲気ガスを脱水し、NH3を1vol%(ドライガス換算)未満含む再生雰囲気ガスを生産する脱水装置を配設するとともに、再生雰囲気ガスにNH3、不活性ガスおよびH2Oを加えて成分調整する窒化帯向けの雰囲気ガス成分調整装置を配設したことを特徴とする方向性珪素鋼板の連続脱炭・窒化焼鈍設備。
【請求項4】
前記窒化帯に供給した後の残余の再生雰囲気ガス中のNH3を熱分解・精整するNH3熱分解・精整装置を配設し、熱分解・精製後にH2含有ガス、不活性ガスおよびH2Oを加えて成分調整する窒化帯を除く1個以上の処理帯向けの雰囲気ガス成分調整装置を配設したことを特徴とする請求項3に記載の方向性珪素鋼板の連続脱炭・窒化焼鈍設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−261033(P2008−261033A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−105914(P2007−105914)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】