説明

方法

炭水化物エステル、タンパク質エステル、タンパク質サブユニットエステル又はヒドロキシ酸エステルの1種類又は複数を生成する方法であって、リン脂質、リゾリン脂質、トリアシルグリセリド、ジグリセリド、糖脂質又はリゾ糖脂質からなる群の1種類又は複数から選択される脂質基質であるアシル供与体と、炭水化物、タンパク質、タンパク質サブユニット又はヒドロキシ酸からなる群の1種類又は複数から選択されるアシル受容体と、水とを混合して、5〜98%の水を含む高水分環境を作るステップと、脂質アシルトランスフェラーゼが以下の反応、すなわち、アルコール分解若しくはエステル転移の一方又は両方を触媒するように前記混合物を前記脂質アシルトランスフェラーゼと接触させるステップとを含む、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂質アシルトランスフェラーゼを使用することによって脂質を生物変換して、炭水化物エステル、及び/又はタンパク質エステル、及び/又はタンパク質サブユニットエステル、及び/又はヒドロキシ酸エステルを製造する方法に関する。
【0002】
本発明は、さらに、以下、すなわち、炭水化物エステル、及び/又はタンパク質、及び/又はタンパク質サブユニットエステル、及び/又は及び/又はヒドロキシ酸エステルの1種類若しくは複数に脂質を生物変換するための脂質アシルトランスフェラーゼの使用にも関する。
【0003】
本発明は、さらに、本明細書に定義する固定化脂質アシルトランスフェラーゼの使用にも関する。この固定化脂質アシルトランスフェラーゼは、炭水化物エステル、及び/又はタンパク質エステル、及び/又はタンパク質サブユニットエステル、及び/又はヒドロキシ酸エステルの1種類若しくは複数を生成するために、高水分環境(high water environment)における脂質の生物変換において使用することができる。
【0004】
本発明は、さらに、固定化脂質アシルトランスフェラーゼにも関する。
【背景技術】
【0005】
以下の関連出願、すなわち、1999年7月20日に出願された米国特許出願第09/750,990号、及び米国特許出願第10/409,391号を参照されたい。これらの出願の各々、及びこれらの出願の各々において引用された文書の各々(「出願引用文書」)、及びその出願引用文書において参照又は引用された各文書(明細書中でも、又はこれらの出願の手続き中でも)、並びにそのような手続き中に提出された特許性を支持するすべての意見書(argument)を参照により本明細書に援用する。様々な文書が本明細書でも引用されている(「本願引用文書」)。本願引用文書の各々、及び本願引用文書中で引用又は参照された各文書を参照により本明細書に援用する。
【0006】
リパーゼは、脂質を生物変換して、食品及び/又は飼料産業、化粧品及び/又はスキンケア産業、油化学工業及び医薬産業を含めて広範な産業において使用される高価な生成物、例えば、糖エステルを製造するために広範に使用されてきた。
【0007】
生物変換プロセスが脂質基質の加水分解を必要とするときには、脂肪分解酵素を高水分環境において使用することができる。しかし、生物変換プロセスがアルコール分解などによるエステル交換又はエステル転移反応を必要とするときには、高水分環境においてリパーゼを使用することは、望ましくない加水分解反応によって、望ましくないバイオ生成物がもたらされ、且つ/又は生物変換生成物が低収率になるために有害な場合がある。
【0008】
一般に、エステル交換及び/又はエステル転移を必要とする生物変換プロセスは、油系、及び/又はブタノール、メタノール、へキサンなどの有機溶媒系などの非水環境においてリパーゼを利用してきた。このような系は、極性受容体分子と脂質供与体分子の両方を少なくとも部分的に可溶化することができ、リパーゼが十分な酵素活性を有する環境を提供する。どんな酵素活性でも少量の水を必要とするが、酵素の加水分解活性を回避するために水量は低レベルに厳密に維持される。
【0009】
従来、糖エステル、タンパク質エステル又はヒドロキシ酸エステルは、無機触媒を用いた化学合成によって製造されてきた。糖エステル又はヒドロキシ酸エステルを製造する従来の生物変換プロセスは、(あったとしても)少量の水しか存在しない有機溶媒環境又は超臨界流体においてリパーゼを利用している。
【0010】
Lecointe et al Biotechnology Letters, Vol 18., No. 8 (August), pp869-874は、メタノール及びブタノールからのそれぞれメチルエステル又はブチルエステルの製造に対するいくつかのリパーゼ酵素、及び水性媒体におけるそれらの活性の研究について開示している。Lecointe等は、メタノール又はブタノール濃度が増加するにつれ加水分解活性が低下し、酵素のメチルエステル及びブチルエステル生成能力が増大するカンジダ パラプシロシス(Candida parapsilosis)由来のリパーゼ/アシルトランスフェラーゼを教示している。脂肪ヒドロキサム酸(fatty hydroxamic acid)の製造にC.パラプシロシス由来のリパーゼ/アシルトランスフェラーゼを使用することは、Vaysse et al J. of Biotechnology 53 (1997) 41-46に教示されている。
【0011】
リパーゼ:コレステロールアシルトランスフェラーゼは、かねてから知られている(例えば、Balcao V.M., Paiva A.L., Malcata F.X., Enzyme Microb Technol. 1996 May 1;18(6):392-416を参照されたい)。特に、植物及び/又は哺乳動物のレシチン:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)のように、ホスファチジルコリンとコレステロールの間の脂肪酸の移動を触媒するグリセロリン脂質:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(GCATとも呼ばれる)が見出されている。
【0012】
Retz M.T., Jaeger K.E. Chem Phys Lipids. 1998 Jun;93(1-2):3-14及びBornscheuer U.T., Bessler C, Srinivas R, Krishna S.H. Trends Biotechnol. 2002 Oct;20(10):433-7は、水性媒体中でアルコール受容体へのアシル転移を起こすことができる、アエロモナス ヒドロフィラ(Aeromonas hydrophila)由来のリパーゼ/アシルトランスフェラーゼを教示している。
【非特許文献1】Lecointe et al Biotechnology Letters, Vol 18., No. 8 (August), pp869-874
【非特許文献2】Vaysse et al J. of Biotechnology 53 (1997) 41-46
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、炭水化物エステル、タンパク質エステル、タンパク質サブユニットエステル又はヒドロキシ酸エステルの1種類若しくは複数を生成する方法が提供される。この方法は、リン脂質、リゾリン脂質、トリアシルグリセリド、ジグリセリド、糖脂質又はリゾ糖脂質からなる群の1種類若しくは複数から選択される脂質基質であるアシル供与体と、炭水化物、タンパク質、タンパク質サブユニット又はヒドロキシ酸からなる群の1種類若しくは複数から選択されるアシル受容体と、水とを混合して、5〜98%の水を含む高水分環境を作るステップと、脂質アシルトランスフェラーゼが以下の反応、すなわち、アルコール分解又はエステル転移の一方若しくは両方を触媒するようにその混合物を前記脂質アシルトランスフェラーゼと接触させるステップとを含む。
【0014】
別の態様においては本発明は、アシル供与体、アシル受容体及び水の混合物においてアルコール分解又はエステル転移の一方若しくは両方の触媒作用によって、炭水化物エステル、タンパク質エステル、タンパク質サブユニットエステル又はヒドロキシ酸エステルの1種類若しくは複数を生成するための脂質アシルトランスフェラーゼの使用を提供する。この混合物は、5〜98%の水を含み、前記アシル供与体は、リン脂質、リゾリン脂質、トリアシルグリセリド、ジグリセリド、糖脂質又はリゾ糖脂質からなる群の1種類若しくは複数から選択される脂質基質であり、前記アシル受容体は、炭水化物、タンパク質、タンパク質サブユニット又はヒドロキシ酸からなる群の1種類若しくは複数から選択される。
【0015】
本発明の別の態様によれば、本発明による方法によって生成される炭水化物エステル、タンパク質エステル、タンパク質サブユニットエステル又はヒドロキシ酸エステルが提供される。
【0016】
本発明の別の態様によれば、本発明による方法によって生成される炭水化物エステル、タンパク質エステル、タンパク質サブユニットエステル又はヒドロキシ酸エステルを含む医薬品、化粧品、食料品、飼料、塗料が提供される。
【0017】
別の態様によれば、本発明は、本明細書に定義する固定化脂質アシルトランスフェラーゼを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本明細書において使用される「脂質アシルトランスフェラーゼ」という用語は、リパーゼ活性(一般に、国際生化学分子生物学連合の命名委員会の酵素命名法推奨(1992)に従ってE.C.3.1.1.xに分類される)を有するとともに、アシルトランスフェラーゼ活性(一般に、E.C.2.3.1.xに分類される)も有する酵素を意味し、それによってこの酵素は、脂質から、以下の1種類又は複数の受容体基質、すなわち、炭水化物;タンパク質;タンパク質サブユニット又はヒドロキシ酸にアシル基を転移させることが可能である。
【0019】
本発明による「アシル受容体」は水ではないことが好ましい。
【0020】
一態様においては、酵素は、脂質基質から炭水化物にアシル基を転移させることが可能であることが好ましい。
【0021】
炭水化物アシル受容体は、以下、すなわち、単糖、二糖、オリゴ糖又は多糖の1種類若しくは複数とすることができる。炭水化物は、以下、すなわち、グルコース、フルクトース、無水フルクトース、マルトース、ラクトース、スクロース、ガラクトース、キシロース、キシロオリゴ糖、アラビノース、マルトオリゴ糖、タガトース、ミクロセシン(microthecin)、アスコピロン(ascopyrone)P、アスコピロンT又はコータルセロン(cortalcerone)の1種類若しくは複数であることが好ましい。
【0022】
炭水化物エステルは、例えば食料品中の貴重な乳化剤として機能することができる。
【0023】
一態様においては、酵素は、脂質基質からタンパク質及び/又はタンパク質サブユニットにアシル基を転移させることが可能であることが好ましい。
【0024】
好ましくは、タンパク質サブユニットは、以下、すなわち、アミノ酸、タンパク水解物、ペプチド、ジペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチドの1種類又は複数とする。
【0025】
好適には、タンパク質は、以下、すなわち、食料製品中、例えば、乳製品及び/又は肉製品中に存在するタンパク質の1種類若しくは複数とすることができる。単なる例として、適切なタンパク質は、ラクトグロブリンなどの凝乳又は乳清中に存在するタンパク質とすることができる。他の適切なタンパク質としては、(卵からの)卵白アルブミン、グリアジン、グルテニン、プロインドリン、コムギタンパク質、穀物由来の脂質転移タンパク質、肉のミオシン、以下の乳タンパク質、すなわち、カゼイン、ラクトアルブミン及びラクトフェリンなどが挙げられる。
【0026】
好適には、タンパク質又はタンパク質サブユニットにおいては、アシル受容体は、タンパク質又はタンパク質サブユニットの以下の構成物質、すなわち、セリン、トレオニン、チロシン又はシステインの1種類又は複数とすることができる。
【0027】
タンパク質サブユニットがアミノ酸であるときには、好適には、アミノ酸は、任意のアミノ酸とすることができる。好ましくは、アミノ酸は、例えば、セリン、トレオニン、チロシン又はシステインの1種類又は複数とする。
【0028】
一態様においては、酵素は、脂質基質からヒドロキシ酸にアシル基を転移させることが可能であることが好ましい。
【0029】
好適には、ヒドロキシ酸は、以下の酸、すなわち、クエン酸、酒石酸、乳酸、アスコルビン酸、グリコール酸、リンゴ酸、α−ヒドロキシエタン酸、α−ヒドロキシオクタン酸、α−ヒドロキシカプリル酸、ヒドロキシカプリル酸、グルコン酸、ラクトビオン酸又はマルトビオン酸の1種類若しくは複数とすることができる。
【0030】
好適には、ヒドロキシ酸は、フルーツ酸、例えば、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、クエン酸又はグリコール酸の1種類若しくは複数とすることができる。
【0031】
一実施形態においては、ヒドロキシ酸は、以下の酸、すなわち、クエン酸、乳酸、酒石酸又はリンゴ酸の1種類若しくは複数であることが好ましい。
【0032】
本明細書において使用される「ヒドロキシ酸」という用語は、アルキル基の1個若しくは複数の水素原子がヒドロキシル基で置換されたカルボン酸を意味する。
【0033】
一態様においては、脂質アシルトランスフェラーゼは、アシル基を脂質基質から炭水化物、タンパク質、タンパク質サブユニット又はヒドロキシ酸の1種類若しくは複数に転移させることができるとともに、脂質アシルトランスフェラーゼはさらに、アシル基を脂質から以下、すなわち、ステロール及び/又はスタノール、特に植物ステロール及び/又はフィトスタノールの1種類若しくは複数に転移させることができる。
【0034】
脂質基質がリン脂質である場合は、レシチン、例えばホスファチジルコリンであることができることが好適である。本明細書において使用されるレシチンという用語は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン及びホスファチジルグリセロールを包含する。
【0035】
好適には、脂質基質がリゾリン脂質であるときには、脂質基質はリゾレシチン、例えばリゾホスファチジルコリンとすることができる。本明細書において使用されるリゾホスファチジルコリンという用語は、リゾレシチンという用語と同義であり、これらの用語は、本明細書では区別なく使用することができる。
【0036】
適切には、脂質基質が糖脂質であるときには、脂質基質は例えばジガラクトシルジグリセリド(DGDG)とすることができる。
【0037】
脂質基質は、本明細書では「脂質アシル供与体」又は「アシル供与体」と呼ぶことができる。これらの用語は、本明細書では区別なく使用される。
【0038】
一部の態様では、脂質アシルトランスフェラーゼが作用する脂質基質は、レシチン、例えばホスファチジルコリンなどのリン脂質であることが好ましい。
【0039】
一部の態様では、脂質基質は、例えばDGDGなどの糖脂質であることが好ましい。
【0040】
一部の態様では、脂質基質は、食品脂質、すなわち食料品の脂質成分であることができる。
【0041】
一部の態様では、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、トリグリセリド、及び/又は1−モノグリセリド、及び/又は2−モノグリセリドに対して作用することができない、或いは実質的に作用することができないことがある。
【0042】
好適には、脂質基質又は脂質アシル供与体は、以下の基質、すなわち、ラード、タロー及びバター脂肪を含めた脂肪;パーム油、ヒマワリ油、大豆油、サフラワー油、綿実油、落花生油、コーン油、オリーブ油、落花生油、ヤシ油及びなたね油から抽出される、又は誘導される油を含めた油の1種類又は複数の中に存在する1種類又は複数の脂質とすることができる。大豆、アブラナ又は卵黄から得られるレシチンも、適切な脂質基質である。脂質基質は、オートムギ脂質、又はガラクト脂質を含む他の植物系材料とすることができる。
【0043】
本発明の一部の態様では、脂質は、8〜22個の炭素の脂肪酸鎖長を有する脂質から選択することができる。
【0044】
本発明の一部の態様では、脂質は、16〜22個の炭素、より好ましくは16〜20個の炭素の脂肪酸鎖長を有する脂質から選択することができる。
【0045】
本発明の一部の態様では、脂質は、14個以下の炭素の脂肪酸鎖長を有する脂質、好適には4〜14個の炭素、好適には4〜10個の炭素、好適には4〜8個の炭素の脂肪酸鎖長を有する脂質から選択することができる。
【0046】
アシル供与体は、遊離脂肪酸ではないことが好ましい。
【0047】
アシル供与体は、炭水化物(糖)エステルではないことが好ましい。
【0048】
本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、以下のリパーゼ活性、すなわち、グリコリパーゼ活性(E.C.3.1.1.26)、トリアシルグリセロールリパーゼ活性(E.C.3.1.1.3)、ホスホリパーゼA2活性(E.C.3.1.1.4)又はホスホリパーゼA1活性(E.C.3.1.1.32)の1つ又は複数を示すことができることが好適である。本明細書において使用される「グリコリパーゼ活性」という用語は、「ガラクトリパーゼ活性」を包含する。
【0049】
好適には、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、以下の活性、すなわち、グリコリパーゼ活性(E.C.3.1.1.26)、及び/又はホスホリパーゼA1活性(E.C.3.1.1.32)、及び/又はホスホリパーゼA2活性(E.C.3.1.1.4)の少なくとも1つ又は複数を有することができる。
【0050】
一部の態様では、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、少なくともグリコリパーゼ活性(E.C.3.1.1.26)を有することができる。
【0051】
一部の態様では、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、糖脂質及び/又はリン脂質から、以下の受容体基質、すなわち、炭水化物、タンパク質、タンパク質サブユニット、ヒドロキシ酸の1種類又は複数にアシル基を転移させることができることが好適である。
【0052】
一部の態様では、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、糖脂質及び/又はリン脂質から炭水化物にアシル基を転移させて、少なくとも炭水化物エステルを形成できることが好ましい。
【0053】
一部の態様では、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、糖脂質及び/又はリン脂質からタンパク質又はタンパク質サブユニットにアシル基を転移させて、少なくともタンパク質エステル(又はタンパク質脂肪酸縮合物)又はタンパク質サブユニットエステルを形成できることが好ましい。
【0054】
本明細書において使用される「タンパク質サブユニットエステル」という用語は、例えば、ジペプチドエステル、オリゴペプチドエステル、ポリペプチドエステル、タンパク水解物エステルなどの任意のタンパク質サブユニットから形成されるエステルを意味する。
【0055】
一部の態様では、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、トリアシルグリセロールリパーゼ活性(E.C.3.1.1.3)を示さないことが好ましい。
【0056】
本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、以下の判定基準、すなわち、
(i)脂質アシル供与体の最初のエステル結合のアシル部分が炭水化物、タンパク質、タンパク質サブユニット又はヒドロキシ酸アシル受容体の1種類若しくは複数に転移して新しいエステル、すなわち、炭水化物エステル、及び/又はタンパク質エステル、及び/又はタンパク質サブユニットエステル、及び/又はヒドロキシ酸エステルを形成するエステル転移活性として定義することができるアシルトランスフェラーゼ活性を酵素が有し、
(ii)酵素が、Xが以下のアミノ酸残基L、A、V、I、F、Y、H、Q、T、N、M又はSの1個若しくは複数であるアミノ酸配列モチーフGDSXを含む
を用いて特徴づけできることが好ましい。
【0057】
GDSXモチーフのXはLであることが好ましい。すなわち、本発明による酵素は、アミノ酸配列モチーフGSDLを含むことが好ましい。
【0058】
GDSXモチーフは、4個の保存アミノ酸からなる。モチーフ内のセリンは、脂質アシルトランスフェラーゼの触媒作用性セリンであることが好ましい。GDSXモチーフのセリンは、Brumlik & Buckley (Journal of Bacteriology Apr. 1996, Vol. 178, No. 7, p 2060-2064)に教示されたアエロモナス ヒドロフィラ脂肪分解酵素中のSer−16に対応する位置にあることが好適である。
【0059】
タンパク質が本発明によるGDSXモチーフを有するかどうかを決定するために、配列は、pfamデータベースの隠れマルコフモデルプロファイル(HMMプロファイル)と比較されることが好ましい。
【0060】
Pfamは、タンパク質ドメインファミリーのデータベースである。Pfamは、各ファミリーに対して検証された(curated)複数の配列アラインメント、並びに新しい配列中のこれらのドメインを特定するためのプロファイル隠れマルコフモデル(プロファイルHMM)を含む。Pfamの概論は、Bateman A et al. (2002) Nucleic Acids Res. 30; 276-280にある。隠れマルコフモデルは、タンパク質を分類するためのいくつかのデータベースにおいて使用されている。総説として、Bateman A and Haft DH(2002)Brief Bioinform 3; 236-245を参照されたい。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=PubMed&list_uids=12230032&dopt=Abstract
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=PubMed&list_uids=11752314&dopt=Abstract
【0061】
隠れマルコフモデルの詳細な説明、及びそのモデルをPfamデータベースに適用する方法については、Durbin R, Eddy S, and Krogh A (1998) Biological sequence analysis; probabilistic models of proteins and nucleic acids. Cambridge University Press, ISBN 0-521-62041-4を参照されたい。Hammerソフトウェアパッケージは、Washington University、St Louis、USAから入手することができる。
【0062】
或いは、GDSXモチーフは、Hammerソフトウェアパッケージによって特定することができる。その説明は、Durbin R, Eddy S, and Krogh A (1998) Biological sequence analysis; probabilistic models of proteins and nucleic acids. Cambridge University Press, ISBN 0-521-62041-4及びその中の参考文献にある。HMMER2プロファイルは、本明細書中にある。
【0063】
PFAMデータベースは、例えば、現在、以下のウェブサイトにあるいくつかのサーバを介して接続することができる。
http://www.sanger.ac.uk/Software/Pfam/index.shtml
http://pfam.wustl.edu/
http://pfam.jouy.inra.fr/
http://pfam.cgb.ki.se/
【0064】
このデータベースは、タンパク質配列を入力することができる検索機能を提供している。タンパク質配列は、データベースのデフォルトパラメータを用いて、Pfamドメインの有無について解析される。GDSXドメインは、データベースにおいて確立されたドメインであり、したがって任意の問い合わせ配列中でその有無が確認される。データベースは、問い合わせ配列に対してPfam00657コンセンサス配列のアラインメントを返す。
【0065】
アエロモナス サルモニシダ(Aeromonas salmonicida)又はアエロモナス ヒドロフィラを含めた複数のアラインメントは、
a)マニュアル
上記手順に従って、Pfam00657コンセンサス配列を含む目的タンパク質のアラインメント、及びPfam00657コンセンサス配列を含むP10480のアラインメントを得る;
或いは
b)データベース経由
Pfam00657コンセンサス配列を特定した後に、データベースは、問い合わせ配列のアラインメントをPfam00657コンセンサス配列のシードアラインメント(seed alignment)に示す選択肢を提供する。P10480はこのシードアラインメントの一部であり、GCAT_AERHYで示される。問い合わせ配列とP10480の両方を同じ枠内に示す
によって得ることができる。
【0066】
アエロモナス ヒドロフィラ基準配列:
アエロモナス ヒドロフィラGDSXリパーゼの残基は、NCBIファイルP10480中で番号付けされている。このテキスト中の番号は、好ましい実施形態において本発明の脂質アシルトランスフェラーゼ中に存在する特定のアミノ酸残基を求めるために本発明において使用するファイル中の番号である。
【0067】
Pfamアラインメントを実施した(図33及び34)。
【0068】
以下の保存残基は認識することができ、好ましい実施形態においては、本発明の組成物及び方法に使用される酵素中に存在することができる。
ブロック1−GDSXブロック
hid hid hid hid Gly Asp Ser hid
28 29 30 31 32 33 34 35
ブロック2−GANDYブロック
hid Gly hid Asn Asp hid
130 131 132 133 134 135
ブロック3−HPTブロック
His
309
【0069】
ここで、「hid」は、Met、Ile、Leu、Val、Ala、Gly、Cys、His、Lys、Trp、Tyr、Phe選択される疎水性残基を意味する。
【0070】
本発明の組成物/方法に使用される脂質アシルトランスフェラーゼは、Pfam00657コンセンサス配列を用いて整列させることができることが好ましい。
【0071】
pfam00657ドメインファミリーの隠れマルコフモデルプロファイル(HMMプロファイル)との正の一致(positive match)は、本発明によるGDSL又はGDSXドメインの存在を示すことが好ましい。
【0072】
好ましくは、Pfam00657コンセンサス配列と整列させたときに、本発明の組成物/方法に使用される脂質アシルトランスフェラーゼは、以下のGDSxブロック、GANDYブロック、HPTブロックの少なくとも1個、好ましくは2個以上、好ましくは3個以上を有する。好適には、脂質アシルトランスフェラーゼは、GDSxブロック及びGANDYブロックを有することができる。或いは、この酵素は、GDSxブロック及びHPTブロックを有することができる。この酵素は、少なくともGDSxブロックを含むことが好ましい。
【0073】
好ましくは、Pfam00657コンセンサス配列と整列させたときに、本発明の組成物/方法に使用される酵素は、基準A.ヒドロフィラポリペプチド配列、すなわち配列番号32:28hid、29hid、30hid、31hid、32gly、33Asp、34Ser、35hid、130hid、131Gly、132Hid、133Asn、134Asp、135hid、309Hisと比較したときに、以下のアミノ酸残基の少なくとも1個、好ましくは2個以上、好ましくは3個以上、好ましくは4個以上、好ましくは5個以上、好ましくは6個以上、好ましくは7個以上、好ましくは8個以上、好ましくは9個以上、好ましくは10個以上、好ましくは11個以上、好ましくは12個以上、好ましくは13個以上、好ましくは14個以上、好ましくは15個以上を有する。
【0074】
pfam00657 GDSXドメインは、このドメインを有するタンパク質を他の酵素から識別する一意的な識別子である。
【0075】
pfam00657コンセンサス配列を図1に配列番号1で示す。この配列は、本明細書ではpfam00657.6とも呼ばれるpfamファミリー00657、データベースバージョン6の識別子から誘導される。
【0076】
このコンセンサス配列は、今後公開されるpfamデータベースを使用して更新することができる。
【0077】
例えば、図33及び34に、本明細書ではpfam00657.11とも呼ばれる、データベースバージョン11からのファミリー00657のpfamアラインメントを示す。
【0078】
GDSx、GANDY及びHPTブロックは、公開された両方のデータベースのpfamファミリー00657に存在する。将来公開されるpfamデータベースを使用して、pfamファミリー00657を特定することができる。
【0079】
本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、以下の判定基準、すなわち、
(i)脂質アシル供与体の最初のエステル結合のアシル部分が炭水化物、タンパク質、タンパク質サブユニット又はヒドロキシ酸アシル受容体の1種類若しくは複数に転移して新しいエステル、すなわち、炭水化物エステル、及び/又はタンパク質エステル、及び/又はタンパク質サブユニットエステル、及び/又はヒドロキシ酸エステルを形成するエステル転移活性として定義することができるアシルトランスフェラーゼ活性を酵素が有し、
(ii)酵素がアミノ酸配列モチーフGDSXを含むこと(ここで、Xは、以下のアミノ酸残基L、A、V、I、F、Y、H、Q、T、N、M又はSの1個若しくは複数である)、
(iii)酵素がHis−309を含み、又は図2(配列番号2又は配列番号32)に示すアエロモナス ヒドロフィラ脂肪分解酵素中のHis−309に対応する位置にヒスチジン残基を含むこと
によって特徴づけできることが好ましい。
【0080】
GDSXモチーフのアミノ酸残基はLであることが好ましい。
【0081】
配列番号2又は配列番号32においては、第1の18アミノ酸残基は、シグナル配列を形成する。完全長配列、すなわち、シグナル配列を含むタンパク質のHis−309は、タンパク質の成熟部分、すなわち、シグナル配列を含まない配列のHis−291に一致する。
【0082】
好ましくは、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、以下の触媒作用の3つ組、すなわち、Ser−34、Asp−134及びHis−309を含み、又は図2(配列番号2)若しくは図28(配列番号32)に示すアエロモナス ヒドロフィラ脂肪分解酵素中のSer−34、Asp−134及びHis−309に対応する位置のそれぞれセリン残基、アスパラギン酸残基及びヒスチジン残基を含む。上述したように、配列番号2又は配列番号32に示す配列において、第1の18アミノ酸残基はシグナル配列を形成する。完全長配列、すなわち、シグナル配列を含むタンパク質のSer−34、Asp−134及びHis−309は、タンパク質の成熟部分、すなわち、シグナル配列を含まない配列のSer−16、Asp−116及びHis−291に一致する。pfam00657コンセンサス配列においては、図1(配列番号1)に示すように、活性部位残基は、Ser−7、Asp−157及びHis−348に対応する。
【0083】
本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、以下の判定基準、すなわち、
(i)第1の脂質アシル供与体の最初のエステル結合のアシル部分が炭水化物、タンパク質、タンパク質サブユニット又はヒドロキシ酸アシル受容体の1種類若しくは複数に転移して新しいエステル、すなわち、炭水化物エステル、及び/又はタンパク質エステル、及び/又はタンパク質サブユニットエステル、及び/又はヒドロキシ酸エステルを形成するエステル転移活性として定義することができるアシルトランスフェラーゼ活性を酵素が有し、
(ii)酵素が少なくともGly−32、Asp−33、Ser−34、Asp−134及びHis−309を含み、又は図2(配列番号2)若しくは図28(配列番号32)に示すアエロモナス ヒドロフィラ脂肪分解酵素中のそれぞれGly−32、Asp−33、Ser−34、Asp−134及びHis−309に対応する位置のグリシン、アスパラギン酸、セリン、アスパラギン酸及びヒスチジン残基を含むこと
によって特徴づけできることが好ましい。
【0084】
好適には、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、以下の属、すなわち、アエロモナス(Aeromonas)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、サッカロミセス(Saccharomyces)、ラクトコッカス(Lactococcus)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、デサルフィトバクテリウム(Desulfitobacterium)、バチルス(Bacillus)、カンピロバクター(Campylobacter)、ビブリオナシエ(Vibrionaceae)、キシレラ(Xylella)、スルフォロブス(Sulfolobus)、アスペルギルス(Aspergillus)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、リステリア(Listeria)、ナイセリア(Neisseria)、メソルヒゾビウム(Mesorhizobium)、ラルストニア(Ralstonia)、ザントモナス(Xanthomonas)及びカンジダ(Candida)の1種類若しくは複数由来の生物から得ることができ、好ましくは得られる。
【0085】
好適には、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、以下の生物、すなわち、アエロモナス ヒドロフィラ、アエロモナス サルモニシダ、ストレプトマイセス コエリコラー(Streptomyces coelicolor)、ストレプトマイセス リモサス(Streptomyces rimosus)、マイコバクテリウム、ストレプトコッカス ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、ラクトコッカス ラクチス(Lactococcus lactis)、ストレプトコッカス ピオゲネス、ストレプトコッカス サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、ラクトバチルス ヘルベティクス(Lactobacillus helveticus)、デサルフィトバクテリウム デハロゲナンス(Desulfitobacterium dehalogenans)、バチルスsp、カンピロバクター ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、ビブリオナシエ、キシレラ ファスチジオサ(Xylella fastidiosa)、スルフォロブス ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus)、サッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、アスペルギルス テレウス(Aspergillus terreus)、シゾサッカロミセス ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、リステリア イノキュア(Listeria innocua)、リステリア モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、ナイセリア メニンジティディス(Neisseria meningitidis)、メソルヒゾビウム ロティ(Mesorhizobium loti)、ラルストニア ソラナセアルム(Ralstonia solanacearum)、ザントモナス カンペストリス(Xanthomonas campestris)、ザントモナス アクソノポディス(Xanthomonas axonopodis)及びカンジダ パラプシロシス(Candida parapsilosis)の1種類若しくは複数から得ることができ、好ましくは得られる。
【0086】
一態様においては、好ましくは、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、アエロモナス ヒドロフィラ又はアエロモナス サルモニシダの1種類又は複数から得ることができ、好ましくは得られる。
【0087】
本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、以下のアミノ酸配列、すなわち、
(i)配列番号2で示されるアミノ酸配列(図2参照)
(ii)配列番号3で示されるアミノ酸配列(図3参照)
(iii)配列番号4で示されるアミノ酸配列(図4参照)
(iv)配列番号5で示されるアミノ酸配列(図5参照)
(v)配列番号6で示されるアミノ酸配列(図6参照)
(vi)配列番号12で示されるアミノ酸配列(図14参照)
(vii)配列番号20で示されるアミノ酸配列(図16参照)
(viii)配列番号22で示されるアミノ酸配列(図18参照)
(ix)配列番号24で示されるアミノ酸配列(図20参照)
(x)配列番号26で示されるアミノ酸配列(図22参照)
(xi)配列番号28で示されるアミノ酸配列(図24参照)
(xii)配列番号30で示されるアミノ酸配列(図26参照)
(xiii)配列番号32で示されるアミノ酸配列(図28参照)
(xiv)配列番号34(図30)で示されるアミノ酸配列、又は配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号12、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32若しくは配列番号34で示される配列のいずれか1つと75%以上同一であるアミノ酸配列
の1つ若しくは複数を含むことが好適である。
【0088】
本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、配列番号2、配列番号3、配列番号32、又は配列番号34で示されるアミノ酸配列を含み、或いは配列番号2で示されるアミノ酸配列、配列番号3で示されるアミノ酸配列、配列番号32で示されるアミノ酸配列、又は配列番号34で示されるアミノ酸配列と75%以上、好ましくは80%以上、好ましくは85%以上、好ましくは90%以上、好ましくは95%以上同一であるアミノ酸配列を含むことが好適である。
【0089】
本発明では、同一性の程度は、同じ配列要素の数に基づく。本発明による同一性の程度は、GCGプログラムパッケージ(Program Manual for the Wisconsin Package, Version 8, August 1994, Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, Wisconsin, US53711)(Needleman & Wunsch (1970), J. of Molecular Biology 48, 443-45)に備わったGAPなどの当分野で公知のコンピュータプログラムによって、以下のポリペプチド配列比較の設定、すなわち、GAPクリエーションペナルティー(creation penalty)3.0及びGAPエクステンションペナルティー(extension penalty)0.1を用いて、適切に決定することができる。
【0090】
本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号12、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32又は配列番号34で示される配列のいずれか1つと80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上同一であるアミノ酸配列を含むことが好適である。
【0091】
本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、以下のアミノ酸配列、すなわち、
(a)配列番号2又は配列番号32のアミノ酸残基1〜100で示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号2又は配列番号32のアミノ酸残基101〜200で示されるアミノ酸配列、
(c)配列番号2又は配列番号32のアミノ酸残基201〜300で示されるアミノ酸配列、或いは
(d)上記(a)〜(c)に定義されたアミノ酸配列のいずれか1つと75%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上同一であるアミノ酸配列
の1つ若しくは複数を含むことが好適である。
【0092】
本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、以下のアミノ酸配列、すなわち、
(a)配列番号2又は配列番号32のアミノ酸残基28〜39で示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号2又は配列番号32のアミノ酸残基77〜88で示されるアミノ酸配列、
(c)配列番号2又は配列番号32のアミノ酸残基126〜136で示されるアミノ酸配列、
(d)配列番号2又は配列番号32のアミノ酸残基163〜175で示されるアミノ酸配列、
(e)配列番号2又は配列番号32のアミノ酸残基304〜311で示されるアミノ酸配列、
(f)上記(a)〜(e)に定義されたアミノ酸配列のいずれか1つと75%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上同一であるアミノ酸配列
の1つ若しくは複数を含むことが好適である。
【0093】
好適には、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、以下のヌクレオチド配列、すなわち、
(a)配列番号7で示されるヌクレオチド配列(図9参照)、
(b)配列番号8で示されるヌクレオチド配列(図10参照)、
(c)配列番号9で示されるヌクレオチド配列(図11参照)、
(d)配列番号10で示されるヌクレオチド配列(図12参照)、
(e)配列番号11で示されるヌクレオチド配列(図13参照)、
(f)配列番号13で示されるヌクレオチド配列(図15参照)、
(g)配列番号21で示されるヌクレオチド配列(図17参照)、
(h)配列番号23で示されるヌクレオチド配列(図19参照)、
(i)配列番号25で示されるヌクレオチド配列(図21参照)、
(j)配列番号27で示されるヌクレオチド配列(図23参照)、
(k)配列番号29で示されるヌクレオチド配列(図25参照)、
(l)配列番号31で示されるヌクレオチド配列(図27参照)、
(m)配列番号33で示されるヌクレオチド配列(図29参照)、
(n)配列番号35で示されるヌクレオチド配列(図31参照)、
(o)或いは
配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号13、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33又は配列番号35で示される配列のいずれか1つと75%以上同一であるヌクレオチド配列の発現によって産生されるアミノ酸配列、或いはこれらのヌクレオチド配列の1種類若しくは複数を含むことができる。
【0094】
好適には、ヌクレオチド配列は、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号13、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33又は配列番号35で示される配列のいずれか1つと80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上同一とすることができる。
【0095】
一態様においては、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、レシチン:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)、又はその変異体(例えば、分子進化によって造られた変異体)とすることができる。
【0096】
適切なLCATは、当分野で公知であり、例えば以下の生物、すなわち、哺乳動物、ラット、マウス、ヒヨコ、キイロショウジョウバエ、アラビドプシス(Arabidopsis)及びオリザ サティバ(Oryza sativa)を含めた植物、線虫、真菌及び酵母の1種類若しくは複数から得ることができる。
【0097】
一実施形態においては、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、Langebrogade 1、DK−1001 Copenhagen K、DenmarkのDanisco A/Sによって、特許手続き上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約に基づき、National Collection of Industrial、Marine and Food Bacteria(NCIMB)23 St.Machar Street、Aberdeen Scotland、GBにおいて2003年12月22日にそれぞれアクセッション番号NICMB 41204及びNCIMB 41205として寄託されたpPet12aAhydro及びpPet12aASalmoを収容する大腸菌(E. coli)系統TOP 10から得ることができ、好ましくは得られる脂質アシルトランスフェラーゼとすることができる。
【0098】
本明細書において使用される「トランスフェラーゼ」という用語は、「脂質アシルトランスフェラーゼ」という用語と区別なく使用される。
【0099】
本明細書に定義する脂質アシルトランスフェラーゼは、以下の反応、すなわち、エステル交換、アルコール分解の1種類若しくは両方を触媒することが好適である。
【0100】
したがって、本発明によれば、以下の有利な諸特性の1つ若しくは複数を実現することができる。すなわち、炭水化物エステル、タンパク質エステル、タンパク質サブユニットエステル又はヒドロキシ酸エステルの1種類若しくは複数を形成する脂質の生物変換が、有機溶媒を含まない、又は従来の生物変換プロセスよりも有機溶媒が少ない高水分環境において起こることができる。
【0101】
本明細書において使用される「生物変換」という用語は、酵素触媒作用による、ある有機化合物から別の有機化合物を生成する改変、及び/又は他の有機化合物からの有機化合物の合成を意味する。
【0102】
本明細書において使用される「エステル転移」という用語は、(遊離脂肪酸以外の)脂質供与体から(水以外の)アシル受容体への、酵素によって触媒されたアシル基の転移を意味する。不確かさを回避するために、本明細書において使用される「エステル転移」という用語の使用は、脂質供与体から、例えば、−OH基でも−SH基でもよい適切な化学基を含む(水以外の)アシル受容体へのアシル基の転移を含む。
【0103】
本明細書において使用される「アルコール分解」という用語は、生成物の一方がアルコール基のHと結合し、もう一方の生成物がアルコール基のOR基と結合するような、アルコール基ROHとの反応による酸誘導体の共有結合の酵素による切断を意味する。
【0104】
本明細書において使用される「加水分解」という用語は、脂質から水分子のOH基への、酵素によって触媒されたアシル基の転移を指す。加水分解から生じるアシル転移には、水分子の分離が必要である。
【0105】
「エステル交換」という用語は、酵素によって触媒された、脂質供与体と脂質受容体の間のアシル基転移を意味する。ここで、脂質供与体は遊離アシル基ではない。換言すれば、「エステル交換」は、2個の脂質分子間の脂肪酸の交換を指す。
【0106】
一態様においては、本明細書に定義する脂質アシルトランスフェラーゼはエステル交換を触媒する。
【0107】
好適には、本発明による方法又は使用は、さらに、以下のステップ、すなわち、アシル受容体を水に溶解するステップ;溶解したアシル受容体に脂質アシル供与体を添加して2相系又はエマルジョンを形成するステップ;反応混合物を撹拌又は超音波処理するステップ;反応混合物を加熱して、例えば、酵素を変性するステップ;脂肪/乳化剤相から、例えば溶媒抽出、水蒸発などの標準分離技術によって水相を分離するステップ;脂肪相を疎水性相互作用クロマトグラフィー、結晶化又は高真空蒸留によって分画するステップの1つ若しくは複数も含むことができる。好適には、加熱ステップ、分離ステップ又は分画ステップの1つ若しくは複数は、反応が平衡に達した後に実施することができる。
【0108】
一実施形態においては、本発明の方法に使用されるリパーゼアシルトランスフェラーゼは固定することができる。酵素が固定されている場合には、アシル供与体、アシル受容体及び水を含む混合物を、例えば、固定化酵素を含むカラムに通した。酵素を固定することによって、酵素を容易に再使用することができる。
【0109】
好適には、固定化酵素は、水に溶解されたアシル受容体と脂質アシル供与体を2相系又はエマルジョンとして含む反応混合物を含む流通反応装置又は回分式反応装置において使用することができる。反応混合物は、場合によっては撹拌又は超音波処理されていてもよい。例えば、反応が平衡に達した後に、反応混合物と固定化酵素を分離することができる。好適には、反応生成物は、例えば、疎水性相互作用クロマトグラフィー、結晶化又は高真空蒸留によって分画することができる。
【0110】
固定化脂質アシルトランスフェラーゼは、当分野で既知の固定化技術を用いて調製することができる。固定化酵素を調製する方法は多数あり、それらは当業者には明らかである(例えば、欧州特許第0 746 608号;又はBalcao V.M., Paiva A.L., Malcata F.X., Enzyme Microb Technol. 1996 May 1;18(6):392-416;又はRetz M.T., Jaeger K.E. Chem Phys Lipids. 1998 Jun;93(1-2):3-14;Bornscheuer U.T., Bessler C, Srinivas R, Krishna S.H. Trends Biotechnol. 2002 Oct;20(10):433-7;Plou et al, J. Biotechnology 92 (2002) 55-66;Warmuth et al., 1992. Bio Forum 9, 282-283;Ferrer et al., 2000. J. Chem. Technol. Biotechnol. 75, 1-8;又はChristensen et al., 1998. Nachwachsende Rohstoff 10, 98-105; Petersen and Christenen, 2000, Applied Biocatalysis. Harwood Academic Publishers, Amsterdamに記載の技術(これらの各々を参照により本明細書に援用する)。本明細書に使用することができる技術としては、例えば、Eupergit Cへの共有結合性カップリング、ポリプロピレンへの吸着、及びシリカ造粒(silica−granulation)が挙げられる。
【0111】
本明細書において使用される「高水分環境」という用語は、有機溶媒が少ない又はない、好ましくは極性有機溶媒が少ない又はない環境を意味することが好ましい。本明細書において使用される有機溶媒という用語は、脂質基質として使用されるときには食用油を包含せず、例えば非極性脂質が多い食用油を好ましくは包含しないことが好ましい。好適には、本発明による高水分環境は、50体積%未満の有機溶媒、30体積%未満の有機溶媒、より好ましくは15体積%未満の有機溶媒、より好ましくは5%未満、より好ましくは1%未満、より好ましくは0.5体積%未満の有機溶媒、より好ましくは0体積%の有機溶媒を含むことができる。
【0112】
炭水化物エステルが本発明によって生成される場合には、その炭水化物エステルは、オリゴ糖エステル、単糖エステル又は二糖エステルであることが好ましい。
【0113】
好適には、炭水化物エステルは、本発明によって生成されるときには、以下、すなわち、グルコースエステル、フルクトースエステル、無水フルクトースエステル、マルトースエステル、ラクトースエステル、ガラクトースエステル、キシロースエステル、キシロオリゴ糖エステル、アラビノースエステル、マルトオリゴ糖エステル、タガトースエステル、スクロースエステル、ミクロセシンエステル、アスコピロンPエステル、アスコピロンTエステル又はコータルセロンエステルの1種類若しくは複数とすることができる。
【0114】
炭水化物エステルは、本発明によって生成されるときには、以下、すなわち、炭水化物モノ−エステル、糖モノ−エステル、オリゴ糖モノ−エステル、三糖モノ−エステル、二糖モノ−エステル、単糖モノ−エステル、グルコースモノ−エステル、フルクトースモノ−エステル、無水フルクトースモノ−エステル、マルトースモノ−エステル、ラクトースモノ−エステル、ガラクトースモノ−−エステル、キシロースモノ−エステル、キシロオリゴ糖モノ−エステル、アラビノースモノ−エステル、マルトオリゴ糖モノ−エステル、タガトースモノ−エステル、スクロースモノ−エステル、ミクロセシンエステル、アスコピロンPエステル、アスコピロンTエステル又はコータルセロンエステルの1種類若しくは複数であることが好ましい。
【0115】
一実施形態においては、ミクロセシンエステル、アスコピロンPエステル、アスコピロンTエステル及び/又はコータルセロンエステルは、抗菌剤として機能することができる。これとは別に、又はこれに加えて、ミクロセシンエステル、アスコピロンPエステル、アスコピロンTエステル及び/又はコータルセロンエステルは、酸化防止剤及び/又は乳化剤の一方若しくは両方として機能することができる。
【0116】
本発明による炭水化物エステルの形成は(もしあれば)、UDP−グルコースとは無関係であることが好ましい。
【0117】
本発明による食料品は、UDP−グルコースを含まず、又は重要でない量のUDP−グルコースしか含まないことが好ましい。
【0118】
本発明の組成物及び方法において使用される脂質アシルトランスフェラーゼは、かなりの水の存在下でも脂質から水以外の受容体へのアシル基の転移を顕著に優先させる点で、脂肪分解酵素と比較したときに独特の諸特性を有することが見出された。従来技術の酵素と比較して、本発明に使用される脂質アシルトランスフェラーゼは、6%水分、54%水分、73%水分、89%水分及び約95%の存在下で高い相対トランスフェラーゼ活性を有することが見出された。試験した脂肪分解酵素は、これらの水濃度においては意味のある相対トランスフェラーゼ活性を実質的に持たなかった。
【0119】
%トランスフェラーゼ活性(すなわち、全酵素活性の百分率としてのトランスフェラーゼ活性)は、以下のプロトコルによって求めることができる。
【0120】
%アシルトランスフェラーゼ活性を求めるプロトコル:
本発明による脂質アシルトランスフェラーゼが添加される基質は、以下の詳細な手順に従って、酵素反応後にCHCl:CHOH 2:1で抽出し、脂質材料を含む有機相を単離し、GLC及びHPLCによって分析することができる。GLC及びHPLC分析から、遊離脂肪酸、及び炭水化物エステル、タンパク質エステル;タンパク質サブユニットエステル;ヒドロキシ酸エステルの1種類又は複数の量が求められる。本発明による酵素が添加されない対照基質も同様に分析される。
計算:
GLC及びHPLC分析の結果から、遊離脂肪酸、並びに炭水化物エステル、及び/又はタンパク質エステル、及び/又はタンパク質サブユニットエステル、及び/又はヒドロキシ酸の増加量を計算することができる。
Δ%脂肪酸=%脂肪酸(酵素)−%脂肪酸(対照);Mv脂肪酸=脂肪酸の平均分子量;
A=Δ%タンパク質エステル/Mvタンパク質エステル(ここで、Δ%タンパク質エステル=%タンパク質エステル(酵素)−%タンパク質エステル(対照)及びMvタンパク質エステル=タンパク質エステルの平均分子量)−アシル受容体がタンパク質である場合に適用可能;
B=Δ%炭水化物エステル/Mv炭水化物エステル(ここで、Δ%炭水化物エステル=%炭水化物エステル(酵素)−%炭水化物エステル(対照)及びMv炭水化物エステル=炭水化物エステルの平均分子量)−アシル受容体が炭水化物である場合に適用可能;
C=Δ%タンパク質サブユニットエステル/Mvタンパク質サブユニットエステル(ここで、Δ%タンパク質サブユニットエステル=%タンパク質サブユニットエステル(酵素)−%タンパク質サブユニットエステル(対照)及びMvタンパク質サブユニットエステル=タンパク質サブユニットエステルの平均分子量)−アシル受容体がタンパク質サブユニットである場合に適用可能;並びに
D=Δ%ヒドロキシ酸エステル/Mvヒドロキシ酸エステル(ここで、Δ%ヒドロキシ酸エステル=%ヒドロキシ酸エステル(酵素)−%ヒドロキシ酸エステル(対照)、及びMvヒドロキシ酸エステル=ヒドロキシ酸エステルの平均分子量)−アシル受容体がヒドロキシ酸である場合に適用可能。
【0121】
トランスフェラーゼ活性は、全酵素活性の百分率として計算される。
【0122】
【数1】

【0123】
リパーゼ、及び酵素のアシルトランスフェラーゼ活性は、以下のアッセイによって評価することができる。このようにして、本明細書に定義される酵素特性を有する脂質アシルトランスフェラーゼを得ること/特定することができる。
【0124】
緩衝基質におけるトランスフェラーゼアッセイ(実施例6参照)
本発明の組成物及び方法に使用される脂質アシルトランスフェラーゼとして機能する酵素は、本明細書の実施例6に教示するアッセイによって常法に従って特定することができる。このアッセイを以後「緩衝基質におけるトランスフェラーゼアッセイ」と称する。実施例6においては、本発明によるアエロモナス サルモニシダ由来の脂質アシルトランスフェラーゼを分析し、本発明によって包含されないある範囲の脂肪分解酵素と比較した。脂肪分解酵素のうちLIPOPAN(登録商標)F(Novozymes、Denmark)のみがトランスフェラーゼ活性を有するが、極めて低レベル(1.3%)にすぎないことがわかった。
【0125】
本発明の組成物及び方法に使用するのに適切な酵素は、緩衝基質におけるトランスフェラーゼアッセイによって常法に従って特定することができる。極めて高含水量(約95%)であるこのアッセイによって、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、少なくとも2%のアシルトランスフェラーゼ活性(相対トランスフェラーゼ活性)、好ましくは少なくとも5%の相対トランスフェラーゼ活性、好ましくは少なくとも10%の相対トランスフェラーゼ活性、好ましくは少なくとも15%、20%、25% 26%、28%、30%、40% 50%、60%又は75%の相対トランスフェラーゼ活性を有する脂質アシルトランスフェラーゼである。好適には、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、28%未満、30%未満、好ましくは40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%未満のアシルトランスフェラーゼ活性を有することができる。
【0126】
低水分環境におけるトランスフェラーゼアッセイ
「緩衝基質におけるトランスフェラーゼアッセイ」を使用するのとは別に(又はその使用に加えて)、本発明によって使用される脂質アシルトランスフェラーゼは、「低水分環境におけるトランスフェラーゼアッセイ」によって特定することができる。
【0127】
ある酵素が本発明による脂質アシルトランスフェラーゼであるかどうかを明らかにするために、「低水分環境におけるトランスフェラーゼアッセイ」を、すなわち、実施例9において教示される6%の水を含む油状環境において実施することができる。この実施例は、従来技術の脂肪分解酵素が加水分解活性を有する含水量6%の油状環境において、本発明の脂質アシルトランスフェラーゼが高い相対トランスフェラーゼ活性を有することを示している。
【0128】
一実施形態においては、本発明による方法及び/又は使用において使用するのに適切な脂質アシルトランスフェラーゼは、「低水分環境におけるトランスフェラーゼアッセイ」によって試験し、30、20又は120分から選択される時間後に測定したときに、少なくとも1%、好ましくは少なくとも2%、好ましくは少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%の相対トランスフェラーゼ活性を有する。好適には、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、10、20、30又は120分後に「低水分環境におけるトランスフェラーゼアッセイ」によって測定したときに、30%、40%、50%、60%、70%又は80%未満の活性を有することができる。
【0129】
上述したように、本発明のリパーゼアシルトランスフェラーゼは、「緩衝基質におけるトランスフェラーゼアッセイ」、又はアシル受容体としてコレステロールを用いた「低水分環境におけるトランスフェラーゼアッセイ」によって特定することができる。「緩衝基質におけるトランスフェラーゼアッセイ」又は「低水分環境におけるトランスフェラーゼアッセイ」は、これらの分析方法に明らかな修正を加えて、あらゆる脂質アシル供与体又はあらゆるアシル受容体の組み合わせの脂質アシルトランスフェラーゼ活性を求めるために使用できることを当業者が容易に認識できることは言うまでもない。当業者は、必要に応じて、アシル供与体基質(例えばリン脂質)を別のアシル供与体基質(例えば糖脂質、トリアシルグリセリド)と簡単に置換し、且つ/又はアシル受容体(例えばコレステロール)を別のアシル受容体基質(例えば炭水化物、タンパク質、タンパク質サブユニット、又はヒドロキシ酸)と置換することができる(例えば実施例10〜13参照)。
【0130】
本明細書において使用される「高水分環境」という用語は、5〜98%の水を含むあらゆる環境を意味する。好ましくは、この環境は、含水量が6%を超え、好ましくは7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%を超える。好適には、高水分環境は、20〜98%、好適には50〜98%、好適には70〜98%、好適には75〜98%の水を含むことができる。
【0131】
一実施形態においては、混合物において、水に対する、添加される脂質アシルトランスフェラーゼの量の比は、重量基準で測定して少なくとも1:700、好ましくは1:10,000である。
【0132】
本明細書において使用される「低水分」という用語は、含水量が5%未満、好ましくは4%、3%、2%、1%又は0.5%未満のあらゆる基質又は食料品を意味する。
【0133】
本発明による方法及び/又は使用は、15〜60℃、好ましくは20〜60℃、好ましくは20〜50℃、好ましくは20〜45℃、好ましくは20〜40℃の温度で実施できることが好ましい。
【0134】
本発明による方法又は使用は、さらなるステップ、或いは反応生成物、すなわち、炭水化物エステルタンパク質エステル、タンパク質サブユニットエステル又はヒドロキシ酸エステルの1種類若しくは複数を精製及び/又は単離するステップを含むことが好適である。したがって、反応生成物は、精製された形、及び/又は単離された形であることが好ましい。
【0135】
エステルを精製する多数の方法が当業者に知られている。単なる例として示すと、本明細書に教示する方法/使用によって生成されるエステルは、疎水性相互作用などのクロマトグラフィー、ろ過、遠心分離、溶媒抽出/蒸留又は結晶化によって精製することができる。適切な方法は、Ulmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry (2002) by Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KgaAによって教示されている。
【0136】
本発明の脂質アシルトランスフェラーゼは、任意の適切な発現宿主中で発現させることができる。例えば、本発明の脂質アシルトランスフェラーゼは、バチルス サブチリス(Bacillus subtilis)中で発現させることができ、限外ろ過、及び/又はエタノール中の沈殿、及び/又は遠心分離によって精製することができ、続いて酵素の担体としてデンプン(マルトデキストリン)を用いて噴霧乾燥することができる。噴霧乾燥された酵素は、粉末担体をさらに添加することによって指定のPLU活性に規格化することができる。関係する技術は、当分野では十分に確立されており、日常的なものである。
【0137】
一実施形態においては、本発明による方法は、in vitroプロセスである。この方法は、好適には、連続又はバッチプロセスとすることができる。
【0138】
本発明による酵素は、1種類若しくは複数のさらなる酵素と併用することができる。したがって、本発明の酵素に加えて、少なくとも1種類のさらなる酵素と混合物を接触させることは、本発明の範囲内にある。このようなさらなる酵素としては、エンド又はエキソアミラーゼなどのデンプン分解酵素、プルラナーゼ、枝切り酵素、キシラナーゼを含めたヘミセルラーゼ、セルラーゼ、オキシドレダクターゼ、例えばグルコースオキシダーゼ、又はマルトースを酸化する酵素、例えば、ヘキソースオキシダーゼ(HOX)などの炭水化物オキシダーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ及びヘキソースオキシダーゼ、プロテアーゼなどが挙げられる。混合物は、本発明の酵素、及び少なくとも1種類のさらなる酵素と同時に又は逐次的に接触させることができる。
【0139】
一実施形態においては、脂質アシルトランスフェラーゼは、以下のリパーゼ活性、すなわち、グリコリパーゼ活性(E.C.3.1.1.26、トリアシルグリセロールリパーゼ活性(E.C.3.1.1.3)、ホスホリパーゼA2活性(E.C.3.1.1.4)又はホスホリパーゼA1活性(E.C.3.1.1.32)の1つ若しくは複数を有するリパーゼと併用される。好適なリパーゼ酵素は当技術分野で周知であり、例として、以下のリパーゼ、すなわち、LIPOPAN(登録商標)F及び/又はLECITASE(登録商標)ULTRA(Novozymes A/S、Denmark)、ホスホリパーゼA2(例えば、Biocatalysts製LIPOMOD(商標)22L、Genecor製LIPOMAX(商標)からのホスホリパーゼA2)、LIPOLASE(登録商標)(Novozymes A/S、Denmark)、国際公開第03/97835号、欧州特許第0 977 869号又は欧州特許第1 193 314号に教示されたリパーゼなどが挙げられる。
【0140】
用途
したがって、本発明による方法によって、炭水化物エステル、タンパク質エステル、タンパク質サブユニットエステル、ヒドロキシ酸エステルの1種類若しくは複数が生成される。これらのエステルの多くが有用な乳化剤である。単なる例として示すと、例えば、アミノ酸エステル、ペプチドエステル、タンパク質エステル、炭水化物エステル及び(酒石酸エステルなどの)ヒドロキシ酸エステルは機能的に重要な乳化剤である。乳化剤は、例えば、食品産業、飼料産業、化粧品産業(例えば、コスメティックベース)、医薬産業(例えば医薬品合成及び処方)、塗料工業などの広範な産業において有用である。乳化剤は、湿潤剤、食品成分及び活性成分として機能することができる。
【0141】
また、タンパク質脂肪酸縮合物は、生理学的特性が優れているために、例えば、化粧品、及び個人衛生製品に使用するのに適している。例えば、タンパク質エステルは、シャワー剤及び浴剤、並びにシャンプー及び体用洗剤に使用することができる。タンパク質脂肪酸縮合物は、薬剤組成物、例えば、基剤としても有用な場合がある。
【0142】
タンパク質脂肪酸縮合物は、化粧品産業における応用例が良く知られている。従来、これらの製品は、水を溶媒として用いてショッテン−バウマン条件下でタンパク水解物を脂肪酸塩化物と反応させることによって製造されている。(http://www.scf-online.com/english/26_e/rawmaterials26_e_.htm#5)。
【0143】
タンパク質−脂肪酸縮合物の開発においては、(植物油から得られる)再生可能資源の脂肪酸と、動物の廃棄物(革)並びに多数の植物から得ることができるタンパク質とを組み合わせて、疎水性(脂肪酸)及び親水性(タンパク質)部分を有する界面活性剤構造を構築することが可能である。このプロセスにおいては、脂肪酸塩化物は、アミノ酸のアミン基と反応し、タンパク質脂肪酸縮合物を形成する(図49参照)。皮膚適合性に優れ、さらに洗浄効果が良好な生成物が得られる。
【0144】
アシル化タンパク水解物を少量添加しても、他の界面活性剤の皮膚適合性に対して相乗効果を有するということは、技術的な処方の観点からは極めて重要である。この保護作用は、生成物の両性的挙動によって説明することができる。タンパク質−脂肪酸縮合物と皮膚コラーゲンの間には相互作用がある。これによって、保護層が形成され、この保護層が、皮膚上層に対する界面活性剤の過剰な攻撃を抑制し、その強力な脱脂効果を弱め、イオン性界面活性剤と皮膚との直接相互作用を弱める。
【0145】
化粧品部門では、タンパク質を主体とする界面活性剤は、刺激の少ないシャワー及び浴用製品、刺激の少ないシャンプー、界面活性剤を主体とする顔用洗剤、コールドパーマ剤及び定着剤、又は乳児用界面活性剤に主として使用される。
【0146】
タンパク水解物脂肪酸縮合物は、薬剤、例えば、皮膚への局所用活性成分を含むクリーム及び軟膏剤の基剤としても有用である。
【0147】
本発明は、脂肪酸塩化物を使用せずにタンパク質脂肪酸縮合物を生成する新しい方法を提供する。本発明による反応を図50に示す。この反応は、廃棄物を形成せずに、水系又は緩衝系において低温で実施することができる。
【0148】
本明細書において使用される「タンパク質脂肪酸縮合物」という用語は、以下のタンパク質エステル、すなわち、ポリペプチドエステル、ジペプチドエステル、オリゴペプチドエステル、ペプチドエステル及びアミノ酸エステルのすべてを包含する。
【0149】
当業者はすぐにわかるように、炭水化物エステル(特に糖エステル)は、食品産業において広範な用途を有する。他の応用分野としては、化粧品、口腔ケア製品、医薬品などが挙げられる。また、これらの化合物は、抗生物質、抗腫瘍剤、殺真菌剤及び殺虫剤としても使用することができる。本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、高水分環境においてグルコースエステルの形成を触媒することができる(図51)。
【0150】
本発明によって生成されるエステルは、以下の分野で使用される。
【0151】
化粧品:精油エマルジョン(o/w、HLB 16〜18)パラフィン油エマルジョン、o/w、HLB 10〜14;ステアリン酸エマルジョン;ワックスエマルジョン、o/w、HLB 14〜16;ラノリンエマルジョン、o/w、HLB 12〜14;シリコーンエマルジョン;練り歯磨き、o/w;泡沫浴、o/w、HLB 14〜18;ヘアローションを含めて。
【0152】
薬剤:薬物エマルジョン;軟膏基剤;坐剤化合物、w/o;カプセル封入(encapsulation);注射薬剤を含めて。
【0153】
農業:土壌改良における;肥料添加剤として;汎用洗浄剤として;果実及び野菜用洗浄剤;かく乳器用洗浄剤を含めて。
【0154】
農作物保護:天然の殺虫剤において;塩素化炭化水素、及び140;リン酸エステルo/w、HLB 10〜14;殺真菌剤、o/w;除草剤、o/wを含めて。
【0155】
食品産業:パン及びケーキにおいて;マーガリン;チョコレート;ファットブルーム防止、w/o、HLB 5〜10;糖衣、o/w、HLB 14〜16;キャラメル及びチューインガム用軟化剤、w/o、HLB 2〜4;粘着防止、w/o、HLB 2〜4;アイスクリーム添加剤 w/o、HLB 4〜6;粉乳及びふくらし粉の湿潤化、w/o、HLB 9〜11;粉末カスタード、w/o、HLB 2〜4;飲料産業において;果実及び野菜において;香味料において、w/o及びo/w、HLB 10〜12;肉、サラダ、又は他の香味ソース、o/w;食品色素において、w/o、HLB 2〜4;o/w、HLB 8〜18;抑泡剤においてを含めて。
【0156】
本発明によって生成されたタンパク質脂肪酸エステル、ヒドロキシ酸エステル及び炭水化物エステルを食品用途において乳化剤として使用する利点は、これらが、例えばエトキシル化脂肪酸エステルのような従来使用されている他の乳化剤よりも容易に生分解される無害な食品適合成分であることである。したがって、これらの乳化剤は、食品産業と非食品産業の両方において使用するのに環境負荷がより少ない。
【0157】
一実施形態においては、ミクロセシンエステル、アスコピロンPエステル、アスコピロンTエステル及び/又はコータルセロンエステルは、抗菌剤として機能することができる。これとは別に、又はこれに加えて、ミクロセシンエステル、アスコピロンPエステル、アスコピロンTエステル及び/又はコータルセロンエステルは、酸化防止剤及び/又は乳化剤の一方若しくは両方として機能することができる。
【0158】
一実施形態においては、本発明の方法又は使用は、製剤、特に活性成分の制御放出製剤の製造に使用される乳化剤を製造するために使用することができる。この活性成分は、脂質アシルトランスフェラーゼによってアシル化されている。このような徐放性製剤は、消化管中でエステルが徐々に加水分解されて活性成分が徐々に送達される経口投与薬剤組成物に特に有用である。このようなアシル化組成物は、さらに、皮下製剤又は静脈内製剤にも使用することができる。
【0159】
別の実施形態においては、本発明の方法又は使用は、例えば有機反応において、有機溶媒の溶液中に塩を移動させる相間移動触媒を製造するために使用することができる。例えば、ヒドロキシ酸(クエン酸)などの適切な陽イオン性受容体へのアシル基の転移によって、或いはヒドロキシ−アミンなどの陰イオン性受容体基を用いて、塩を有機溶媒溶液中に移動させる相間移動触媒を製造することができる。
【0160】
別の実施形態においては、本発明の方法は、生物学的利用能が低い、及び/又は溶解性が低い、薬剤化合物のエステルプロドラッグ、例えば、アシクロビル及びガングアシクロビル(gangaciclovir)のような抗ウイルス薬を製造するために使用することができる。本方法は、さらに、遊離ヒドロキシ基、例えば、第一級、第二級又は第三級ヒドロキシ基を有する他の薬用化合物に使用することもできる。
【0161】
本発明によって生成されるエステルは、薬剤に使用されることが好ましい。
【0162】
本発明によって生成されるエステルは、化粧品及び/又は個人衛生製品に使用されることが好ましい。
【0163】
本発明によって生成されるエステルは、食料品及び/又は飼料に使用されることが好ましい。
【0164】
本発明による方法は、医薬品、化粧品、個人衛生製品食料品又は飼料の1種類若しくは複数の製造プロセスにおける一段階とすることができる。
【0165】
利点
本発明による方法の1つの利点は、有機溶媒を使用せずに、炭水化物エステル、タンパク質エステル、タンパク質サブユニットエステル、又はヒドロキシ酸エステルの1種類若しくは複数を生成することである。したがって、本発明は、有機溶媒の使用を削減し、又はなくすことができる。これは、例えば、製造コストの削減、有機溶媒へのヒト及び/又は環境の暴露の抑制、製造プロセスの単純化など多数の利点を有する。
【0166】
食品用エステルの製造においては、脂肪酸よりも脂質を使用することが特に有利である。というのは、過剰の脂質は、反応生成物が使用される食品の一部を形成することができるので、除去する必要がないからである。一方、過剰の遊離脂肪酸は、ほとんどの食料製品に有害であるので除去しなければならない。
【0167】
単離
一態様においては、本発明に使用されるポリペプチド又はタンパク質は、単離された形であることが好ましい。「単離された」という用語は、配列が、その配列が本来天然に付随し、天然に存在する少なくとも1種類の他の成分から少なくとも実質的に遊離していることを意味する。
【0168】
一態様においては、本発明による生物変換生成物、例えば、炭水化物エステル、及び/又はタンパク質エステル、及び/又はタンパク質サブユニットエステル、及び/又はヒドロキシ酸エステルは、反応混合物から単離されることが好ましい。「単離された」という用語は、生物変換生成物が、生物変換反応中に生物変換生成物に付随する少なくとも1種類の他の成分から少なくとも実質的に遊離していることを意味する。
【0169】
精製
一態様においては、本発明に使用されるポリペプチド又はタンパク質は、精製された形であることが好ましい。「精製された」という用語は、配列が比較的純粋な状態、例えば少なくとも純度約51%、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも純度約90%、又は少なくとも純度約95%、又は少なくとも純度約98%であることを意味する。
【0170】
一態様においては、本発明によって生成される生物変換生成物、例えば、炭水化物エステル、及び/又はタンパク質エステル、及び/又はタンパク質サブユニットエステル、及び/又はヒドロキシ酸エステルは、反応混合物から精製され、したがって、精製された形であることが好ましい。「精製された」という用語は、生物変換生成物が比較的純粋な状態、例えば少なくとも純度約51%、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも純度約90%、又は少なくとも純度約95%、又は少なくとも純度約98%であることを意味する。
【0171】
薬剤組成物
本発明は、本発明の生成物、及び薬剤として許容される担体、希釈剤又は賦形剤(それらの組み合せを含めて)を含む薬剤組成物も提供する。
【0172】
この薬剤組成物は、ヒトの医学及び獣医学においてヒト又は動物に使用することができ、一般に、薬剤として許容される希釈剤、担体又は賦形剤のいずれか1種類若しくは複数を含む。治療用に許容される担体又は希釈剤は、薬剤技術においては周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R. Gennaro edit. 1985)に記載されている。薬剤担体、賦形剤又は希釈剤は、意図する投与経路、及び製薬上の標準的実務に照らして選択することができる。薬剤組成物は、担体、賦形剤又は希釈剤として、又はそれらに加えて、任意の適切なバインダー、潤滑剤、懸濁剤、コーティング剤、可溶化剤を含むことができる。
【0173】
防腐剤、安定剤、色素、さらには香味料も薬剤組成物中に入れることができる。防腐剤の例としては、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸及びp−ヒドロキシ安息香酸エステルが挙げられる。酸化防止剤及び懸濁剤も使用することもできる。
【0174】
異なる送達系に応じて様々な組成/処方要件があり得る。例として示すと、本発明の薬剤組成物は、ミニポンプを用いて、又は粘膜経路によって、例えば、点鼻薬又は吸入用エアゾール剤又は摂取可能な溶液として、或いは、例えば、静脈内、筋肉内又は皮下経路による送達用に、組成物が注射用剤形によって処方される非経口で投与されるように処方することができる。或いは、製剤は、いくつかの経路によって投与されるように設計することができる。
【0175】
薬剤が胃腸管粘膜を経由して投与される場合には、薬剤は、消化管を通過する間、安定なままでいることができるようにすべきである。例えば、薬剤はタンパク質分解に抵抗性であり、酸pHにおいて安定であり、胆汁の洗浄効果に抵抗性とすべきである。
【0176】
適切な場合には、薬剤組成物は、吸入によって、坐剤又はペッサリーの形で、ローション、溶液、クリーム、軟膏又は散布粉の剤形で局所的に、皮膚貼付薬を使用して、デンプン、ラクトースなどの賦形剤を含む錠剤の形で経口で、或いはカプセル剤又は膣坐剤を単独又は賦形剤との混合物で、或いは香味料若しくは着色剤を含むエリキシル剤、溶液又は懸濁液の剤形で投与することができ、或いは、非経口、例えば、静脈内、筋肉内又は皮下注射することができる。非経口投与の場合には、組成物は、他の物質、例えば、溶液を血液と等張にするのに十分な塩又は単糖を含むことができる無菌水溶液の剤形で最適に使用することができる。頬又は舌下投与の場合には、組成物は、従来の方法で処方することができる錠剤又は舐剤の形で投与することができる。
【0177】
本発明によるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列のクローニング
本明細書に定義する具体的諸特性を有するポリペプチド、又は改変に適切なポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、前記ポリペプチドを産生するあらゆる細胞又は生物から単離することができる。ヌクレオチド配列を単離する様々な方法が当技術分野で周知である。
【0178】
例えば、ゲノムDNA及び/又はcDNAライブラリは、ポリペプチドを産生する生物から得られる染色体DNA又はメッセンジャーRNAを用いて構築することができる。ポリペプチドのアミノ酸配列が知られている場合には、標識オリゴヌクレオチドプローブを合成し、使用して、ポリペプチドをコードするクローンを、生物から調製されるゲノムライブラリから特定することができる。或いは、別の既知のポリペプチド遺伝子と相同の配列を含む標識オリゴヌクレオチドプローブを使用して、ポリペプチドをコードするクローンを特定することができる。後者の場合には、厳密性の低いハイブリッド形成条件及び洗浄条件が使用される。
【0179】
或いは、ポリペプチドをコードするクローンは、ゲノムDNAの断片を、プラスミドなどの発現ベクター中に挿入し、得られたゲノムDNAライブラリで酵素陰性細菌を形質転換し、次いでポリペプチドによって阻害される酵素を含む寒天上に形質転換細菌を播くことによって特定することができ、それによってポリペプチドを発現するクローンを特定することができる。
【0180】
さらなる別法においては、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、確立された標準方法、例えば、Beucage S.L. et al (1981) Tetrahedron Letters 22, p 1859-1869に記載されたホスホラミダイト法、又はMatthes et al (1984) EMBO J. 3, p 801-805によって記載された方法によって合成的に調製することができる。ホスホラミダイト法においては、オリゴヌクレオチドは、例えば自動DNA合成装置中で合成され、精製され、アニールされ、連結され、適切なベクターにクローン化される。
【0181】
ヌクレオチド配列は、標準技術に従って合成、ゲノム又はcDNA起源の断片を(適宜)連結することによって調製された混合ゲノム・合成起源、混合合成・cDNA起源、又は混合ゲノム・cDNA起源とすることができる。連結された各断片は、ヌクレオチド配列全体の様々な部分に対応する。DNA配列は、例えば、米国特許第4,683,202号又はSaiki R K et al (Science (1988) 239, pp 487-491)に記載された、特異的プライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)によって調製することもできる。
【0182】
ヌクレオチド配列
本発明は、本明細書に定義する具体的な諸特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列も包含する。本明細書において使用される「ヌクレオチド配列」という用語は、オリゴヌクレオチド配列又はポリヌクレオチド配列、及び変異体、相同体、(その部分などの)その断片及び誘導体を意味する。ヌクレオチド配列は、センス鎖であろうとアンチセンス鎖であろうと、2本鎖でも1本鎖でもよい、ゲノム起源、合成起源又は組換え起源とすることができる。
【0183】
本発明に関係する「ヌクレオチド配列」という用語は、ゲノムDNA、cDNA、合成DNA及びRNAを含む。この用語は、コード配列のDNA、より好ましくはcDNAを意味することが好ましい。
【0184】
好ましい実施形態においては、本明細書に定義する具体的諸特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列自体は、やはりその天然環境にあるその天然に付随する配列に連結されているときに、その天然環境における未変性ヌクレオチド配列を包含しない。参照を容易にするために、本発明者らはこの好ましい実施形態を「変性(non−native)ヌクレオチド配列」と称する。この点で、「未変性ヌクレオチド配列」という用語は、その固有の環境にあるヌクレオチド配列全体を意味し、それが天然に付随するプロモーター全体に動作可能に連結されるときには、そのプロモーターもその固有の環境にある。したがって、本発明のポリペプチドは、その固有の生物におけるヌクレオチド配列によって発現することができるが、そのヌクレオチド配列は、その生物中で天然に付随するプロモーターの制御下にはない。
【0185】
ポリペプチドは、未変性ポリペプチドではないことが好ましい。この点で、「未変性ポリペプチド」という用語は、その固有の環境にあり、その未変性ヌクレオチド配列によって発現されたときの、ポリペプチド全体を意味する。
【0186】
一般に、本明細書に定義する具体的諸特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、組換えDNA技術を用いて調製される(すなわち、組換えDNA)。しかし、本発明の別の実施形態においては、このヌクレオチド配列は、当分野で周知の化学的方法によって全体的又は部分的に合成することができる(Caruthers MH et al (1980) Nuc Acids Res Symp Ser 215-23及びHorn T et al (1980) Nuc Acids Res Symp Ser 225-232参照)。
【0187】
分子進化
酵素をコードするヌクレオチド配列が単離された後に、又は酵素をコードする推定ヌクレオチド配列が特定された後に、選択されたヌクレオチド配列を改変することが望ましいこともあり、例えば、本発明による酵素を調製するためにその配列を突然変異させることが望ましいこともある。
【0188】
突然変異は、合成オリゴヌクレオチドを用いて導入することができる。これらのオリゴヌクレオチドは、所望の突然変異部位に隣接するヌクレオチド配列を含む。
【0189】
適切な方法は、Morinaga et al (Biotechnology (1984) 2, p646-649)に開示されている。酵素をコードするヌクレオチド配列に突然変異を導入する別の方法は、Nelson and Long (Analytical Biochemistry (1989), 180, p 147-151)に記載されている。
【0190】
上述したものなどの部位特異的突然変異誘発の代わりに、例えば、Stratagene製GeneMorph PCR突然変異誘発キット、Clontech製Diversify PCRランダム突然変異誘発キットなどの市販キットを用いて、突然変異をランダムに導入することができる。欧州特許第0 583 265号は、欧州特許第0 866 796号に記載されたものなどの突然変異原性DNAアナログと併用することもできる、PCRに基づく突然変異誘発を最適化する方法について言及している。誤りを犯しやすいPCR技術は、好ましい諸特性を有する脂質アシルトランスフェラーゼの変異体の生成に適している。国際公開第0206457号は、リパーゼの分子進化について言及している。
【0191】
新規配列を得る第3の方法は、任意の数のDnase Iなどの制限酵素又は酵素を用いて、異なるヌクレオチド配列を断片化し、機能タンパク質をコードする完全なヌクレオチド配列を再び組み立てることである。或いは、完全ヌクレオチド配列の再組み立て中に、1種類又は複数の異なるヌクレオチド配列を用い、突然変異を導入することができる。DNAシャフリング及びファミリーシャフリング技術は、好ましい諸特性を有する脂質アシルトランスフェラーゼの変異体を生成するのに適している。「シャフリング」を実施する適切な方法は、欧州特許第0 752 008号、欧州特許第1 138 763号、欧州特許第1 103 606号にある。シャフリングは、米国特許第6,180,406号及び国際公開第01/34835号に記載された別の形のDNA突然変異誘発と組み合わせることもできる。
【0192】
したがって、多数の部位特異的又はランダムな突然変異をヌクレオチド配列中にin vivo又はin vitroで生成し、続いて、コードされたポリペプチドの機能が改善されたかどうかを様々な手段によってスクリーニングすることができる。コンピュータ及びエキソ媒介(exo mediated)組換え方法(国際公開第00/58517号、米国特許第6,344,328号、米国特許第6,361,974号参照)を用いて、例えば、既知の酵素又はタンパク質に対して生成される変異体が極めて低い相同性を有する分子進化を行うことができる。それによって得られるこのような変異体は、既知のトランスフェラーゼに構造がかなり類似しているが、極めて低いアミノ酸配列相同性を有することができる。
【0193】
また、非限定的な例として、ポリヌクレオチド配列の突然変異体又は自然変異体は、野生型又は他の突然変異体又は自然変異体と組み換えて新しい変異体を生成することができる。このような新しい変異体も、コードされたポリペプチドの機能が改善されたかどうかでスクリーニングすることができる。
【0194】
上述及び類似の分子進化方法を適用することによって、タンパク質構造又は機能の予備知識なしに、好ましい諸特性を有する本発明の酵素の変異体を特定し、選択することができ、予測不可能であるが有益な突然変異体又は変異体を生成することができる。当分野では、酵素活性を最適化し、又は変更するために分子進化を適用した多数の例がある。このような例としては、以下、すなわち、宿主細胞中又はin vitroで最適化された発現及び/又は活性、酵素活性の増大、基質及び/又は生成物特異性の変化、酵素又は構造安定性の増大又は低下、好ましい環境条件、例えば温度、pH、基質における酵素活性/特異性の変化の1つ又は複数が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0195】
当業者には明らかなように、分子進化ツールを使用して、酵素を変化させて酵素の機能を改善することができる。
【0196】
本発明において使用される脂質アシルトランスフェラーゼは、変異体とすることができ、すなわち、親酵素と比較したときに少なくとも1個のアミノ酸置換、欠失又は付加を含むことができることが好適である。変異体酵素は、親酵素と少なくとも1%、2%、3%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、99%の相同性を保持する。適切な親酵素は、エステラーゼ又はリパーゼ活性を有する任意の酵素を含むことができる。親酵素は、pfam00657コンセンサス配列と整合していることが好ましい。
【0197】
好ましい実施形態においては、変異体脂質アシルトランスフェラーゼは、GDSx、GANDY及びHPTブロック中のpfam00657コンセンサス配列アミノ酸残基の少なくとも1種類若しくは複数を保持し、又は含む。
【0198】
水系環境において脂質アシルトランスフェラーゼ活性がない、又は低いリパーゼなどの酵素は、分子進化ツールを用いて突然変異させて、トランスフェラーゼ活性を導入し、又は高めることができ、それによって本発明の組成物及び方法に使用するのに適切なかなりのトランスフェラーゼ活性を有する脂質アシルトランスフェラーゼが生成される。
【0199】
好適には、本発明において使用される脂質アシルトランスフェラーゼは、極性脂質、好ましくはリン脂質及び/又は糖脂質に対する酵素活性が親酵素よりも高い変異体とすることができる。このような変異体は、リゾ極性脂質に対しても低い活性を有するか、又は活性を持たないことが好ましい。極性脂質、リン脂質及び/又は糖脂質に対する高い活性は、加水分解及び/又はトランスフェラーゼ活性、或いはそれらの組み合わせの結果であり得る。
【0200】
本発明に使用される変異体脂質アシルトランスフェラーゼは、トリグリセリド、及び/又はモノグリセリド、及び/又はジグリセリドに対する活性が親酵素より低くともよい。
【0201】
変異体酵素は、トリグリセリド、及び/又はモノグリセリド、及び/又はジグリセリドに対して活性を持たないことが好適である。
【0202】
或いは、本発明に使用される変異体酵素は、トリグリセリドに対して高い活性を有することができ、且つ/又は以下、すなわち、極性脂質、リン脂質、レシチン、ホスファチジルコリン、糖脂質、ジガラクトシルモノグリセリド、モノガラクトシルモノグリセリドの1種類又は複数に対しても高い活性を有することができる。
【0203】
脂質アシルトランスフェラーゼの変異体は公知であり、このような変異体の1種類又は複数は、本発明の方法及び使用で使用するのに適切なことがある。例えば、脂質アシルトランスフェラーゼの変異体は、以下の参考文献に記載されている。
【0204】
Hilton S, Buckley JT. Studies on the reaction mechanism of a microbial lipase/acyltransferase using chemical modification and site-directed mutagenesis. J Biol Chem. 1991 Jan 15; 266(2): 997-1000.
【0205】
Robertson DL, Hilton S, Wong KR, Koepke A, Buckley JT. Influence of active site and tyrosine modification on the secretion and activity of the Aeromonas hydrophila lipase/acyltransferase. J Biol Chem. 1994 Jan 21; 269(3): 2146-50.
【0206】
Brumlik MJ, Buckley JT. Identification of the catalytic triad of the lipase/acyltransferase from Aeromonas hydrophila. J Bacteriol. 1996 Apr; 178(7): 2060-4.
【0207】
Peelman F, Vinaimont N, Verhee A, Vanloo B, Verschelde JL, Labeur C, Seguret-Mace S, Duverger N, Hutchinson G, Vandekerckhove J, Tavernier J, Rosseneu M. A proposed architecture for lecithin cholesterol acyl transferase (LCAT): identification of the catalytic triad and molecular modeling. Protein Sci. 1998 Mar; 7(3): 587-99.
【0208】
アミノ酸配列
本発明は、本明細書に定義する具体的な諸特性を有するポリペプチドをコードするアミノ酸配列も包含する。
【0209】
本明細書において使用される「アミノ酸配列」という用語は、「ポリペプチド」という用語及び/又は「タンパク質」という用語と同義である。「アミノ酸配列」という用語は、「ペプチド」という用語と同義である場合もある。
【0210】
アミノ酸配列は、適切な出所から調製/単離することができ、又は合成することができ、又は組換えDNA技術を用いて調製することができる。
【0211】
好適には、アミノ酸配列は、本明細書に教示される単離ポリペプチドから標準技術によって得ることができる。
【0212】
単離ポリペプチドからアミノ酸配列を決定するのに適切な一方法は以下のとおりである。
【0213】
精製ポリペプチドは凍結乾燥させることができ、その凍結乾燥材料100μgを8Mウレアと0.4M炭酸水素アンモニウム、pH8.4の混合物50μlに溶解させることができる。溶解したタンパク質を変性し、窒素で覆い、45mMジチオスレイトール5μlを添加した後に、15分間50℃で還元することができる。室温に冷却後、100mMヨードアセトアミド5μlを添加し、窒素下、暗所において室温で15分間システイン残基を誘導体化することができる。
【0214】
水135μl、及びエンドプロテアーゼLys−C 5μgの5μl水溶液を上記反応混合物に添加し、窒素下37℃で24時間消化することができる。
【0215】
得られたペプチドは、逆相HPLCによって、VYDAC C18カラム(0.46x15cm;10μm;The Separation Group、California、USA)上で、溶媒A:0.1%TFA水溶液、及び溶媒B:0.1%TFAのアセトニトリル溶液を用いて分離することができる。選択されたペプチドは、N末端の配列決定前に、Develosil C18 カラム上で同じ溶媒系を用いて、再度クロマトグラフにかけることができる。配列決定は、Applied Biosystems 476A配列決定装置を用いて、製造者(Applied Biosystems、California、USA)の指示に従ってパルス液体高速サイクル(pulsed liquid fast cycles)によって実施することができる。
【0216】
配列同一性又は配列相同性
本発明は、本明細書に定義する具体的諸特性を有するポリペプチドのアミノ酸配列とある程度の配列同一性又は配列相同性を有する配列、或いはそのようなポリペプチドをコードする任意のヌクレオチド配列の使用も包含する(以後、「相同配列」と称する)。ここで、「相同体」という用語は、対象アミノ酸配列及び対象ヌクレオチド配列とある相同性を有する実体を意味する。ここで、「相同性」という用語は、「同一性」と等しく扱うことができる。
【0217】
相同アミノ酸配列及び/又はヌクレオチド配列は、機能活性を保持し、且つ/又は酵素の活性を高めるポリペプチドを提供及び/又はコードすべきである。
【0218】
本明細書において、相同配列は、対象配列に少なくとも75、85又は90%同一、好ましくは少なくとも95又は98%同一であり得るアミノ酸配列を含むと解釈される。一般に、相同体は、対象アミノ酸配列と同じ活性部位を含む。相同性は、類似性の面からも考えることができるが(すなわち、類似の化学特性/機能を有するアミノ酸残基)、本発明では、配列同一性の面から相同性を表現することが好ましい。
【0219】
本明細書において、相同配列は、本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(対象配列)に少なくとも75、85又は90%同一、好ましくは少なくとも95又は98%同一であり得るヌクレオチド配列を含むと解釈される。一般に、相同体は、対象配列と同じ、活性部位などをコードする配列を含む。相同性は、類似性の面からも考えることができるが(すなわち、類似の化学特性/機能を有するアミノ酸残基)、本発明では、配列同一性の面から相同性を表現することが好ましい。
【0220】
相同性比較は、目視によって、又はより一般的には、容易に利用可能な配列比較プログラムを利用して実施することができる。これらの市販コンピュータプログラムは、2個以上の配列間の%相同性を計算することができる。
【0221】
%相同性は、隣接配列にわたって計算することができる。すなわち、一方の配列がもう一方の配列と並べられ、一方の配列中の各アミノ酸がもう一方の配列中の対応するアミノ酸と、1回に1個の残基が直接に比較される。これは、「ギャップのない(ungapped)」アラインメントと呼ばれる。一般に、このようなギャップのないアラインメントは、比較的少数の残基にわたってのみ実施される。
【0222】
これは極めて単純で一貫した方法ではあるが、例えば、それ以外は同一である配列対において、1つの挿入又は欠失によって、後続のアミノ酸残基がアラインメントから排除され、したがって、全体的なアラインメントを実施したときに、%相同性が大きく低下する可能性があることを考慮していない。その結果、ほとんどの配列比較方法は、全体の相同性スコアを不当に減少させずに、起こり得る挿入及び欠失を考慮する最適なアラインメントとなるように設計されている。これは、「ギャップ」を配列アラインメントに挿入して局所的相同性が最大限になるようにすることによって実施される。
【0223】
しかし、これらのより複雑な方法は、同数の同一アミノ酸に対して、2個の比較配列間の高い関連性を反映して、ギャップができるだけ少ない配列アラインメントが、ギャップが多い配列アラインメントよりも高いスコアが得られるように、アラインメント中に存在する各ギャップに「ギャップペナルティ(gap penalties)」を割り当てる。ギャップの存在に対しては比較的高いコストを課し、ギャップにおける各後続残基に対してはペナルティを減少させる「アフィンギャップコスト」が一般に使用される。これは、最も一般的に使用されているギャップスコアリングシステムである。高いギャップペナルティが、ギャップのより少ない最適なアラインメントを生じることは言うまでもない。ほとんどのアラインメントプログラムは、ギャップペナルティを変更することができる。しかし、このようなソフトウエアを配列比較に用いるときには、デフォルト値を使用することが好ましい。例えば、GCG Wisconsin Bestfitパッケージを使用するときには、アミノ酸配列のデフォルトのギャップペナルティは、ギャップに対しては−12であり、各伸張に対しては−4である。
【0224】
したがって、最大%相同性を計算するには、まず、ギャップペナルティを考慮して、最適なアラインメントを作成する必要がある。このようなアラインメントを実行するのに適切なコンピュータプログラムは、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(Devereux et al 1984 Nuc. Acids Research 12 p387)である。配列比較を行うことができる他のソフトウエアの例としては、BLASTパッケージ(Ausubel et al 1999 Short Protocols in Molecular Biology, 4th Ed-Chapter 18参照)、FASTA(Altschul et al 1990 J. Mol. Biol. 403-410)GENEWORKS比較ツールスイートなどが挙げられるが、これらだけに限定されない。BLASTとFASTAの両方ともオフライン及びオンライン検索で利用可能である(Ausubel et al 1999, pages 7-58 to 7-60参照)。しかし、一部の適用例では、GCG Bestfitプログラムを使用することが好ましい。BLAST 2 Sequencesと呼ばれる新しいツールは、タンパク質及びヌクレオチド配列を比較することもできる(FEMS Microbiol Lett 1999 174(2): 247-50; FEMS Microbiol Lett 1999 177(1): 187-8及びtatiana@ncbi.nlm.nih.gov参照)。
【0225】
最終%相同性は、同一性の面から測定することができるが、アラインメントプロセス自体は、一般に、全か無かの対比較に基づいてはいない。その代わり、化学的類似度又は進化距離に基づいて各対ごとの比較に対してスコアが割り当てられるスケールド類似度スコアマトリックス(scaled similarity score matrix)が一般に使用される。通常使用されるこのようなマトリックスの例は、BLASTプログラムスイートのデフォルトマトリックスであるBLOSUM62マトリックスである。GCG Wisconsinプログラムは、公開デフォルト値、又はもし提供されていれば個別のシンボル比較表(symbol comparison table)を一般に使用する(さらなる詳細については利用者マニュアルを参照されたい)。一部の適用例では、GCGパッケージの場合には公開デフォルト値を、他のソフトウエアの場合には、BLOSUM62などのデフォルトマトリックスを使用することが好ましい。
【0226】
或いは、相同性百分率は、CLUSTAL(Higgins DG & Sharp PM (1988), Gene 73(1), 237-244)に類似したアルゴリズムに基づくDNASIS(商標)(Hitachi Software)の複数のアラインメント機能を用いて計算することができる。
【0227】
このソフトウエアが最適なアラインメントを作成した後に、%相同性、好ましくは%配列同一性を計算することが可能になる。このソフトウエアは、一般に、配列比較の一部としてこれを実行し、数値結果を生成する。
【0228】
配列は、サイレントな変化をもたらし機能的に等価な物質を生じるアミノ酸残基の欠失、挿入又は置換を含むこともある。物質の第2の結合活性が保持される限り、残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性及び/又は両親媒性における類似性に基づいて、計画的なアミノ酸置換を実施することができる。例えば、負に帯電したアミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などがあり、正に帯電したアミノ酸としては、リジン、アルギニンなどがあり、親水性の類似した値を有する非帯電極性頭部基を含むアミノ酸としては、ロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシンなどがある。
【0229】
保存的置換は、例えば下表に従って実施することができる。第2のカラムの同じブロック、及び好ましくは第3のカラムの同じ行のアミノ酸を互いに置換することができる。
【0230】
[表]

【0231】
本発明は、起こり得る相同置換(置換と交換は、本明細書ではともに、既存のアミノ酸残基と別の残基を取り替えることを意味する)、すなわち、塩基性残基と塩基性残基、酸性残基と酸性残基、極性残基と極性残基などの同種(like−for−like)置換も包含する。非相同置換、すなわち、1クラスの残基から別のクラスの残基への非相同置換、或いはオルニチン(以後、Zと称する)、ジアミノ酪酸オルニチン(以後、Bと称する)、ノルロイシンオルニチン(以後、Oと称する)、ピリイルアラニン(pyriylalanine)、チエニルアラニン、ナフチルアラニン、フェニルグリシンなどの非天然アミノ酸の介在も含む非相同置換も起こることがある。
【0232】
交換は、非天然アミノ酸によっても成されうる。
【0233】
変異体アミノ酸配列は、グリシン、β−アラニン残基などのアミノ酸スペーサーに加えて、メチル、エチル、プロピル基などのアルキル基を含めて、配列の任意の2個のアミノ酸残基の間に挿入することができる適切なスペーサー基を含むことができる。さらに別の形の変異は、1個若しくは複数のペプトイド型アミノ酸残基を含み、当業者には十分知られている。不確かさを回避するために、「ペプトイド型」は、α−炭素置換基が、残基のα炭素ではなく窒素原子上にある変異体アミノ酸残基を意味するために使用される。ペプトイド型ペプチドを調製する方法は、当分野で公知であり、例えば、Simon RJ et al., PNAS (1992) 89(20), 9367-9371及びHorwell DC, Trends Biotechnol. (1995) 13(4), 132-134にある。
【0234】
本発明に使用されるヌクレオチド配列、又は本明細書に定義する具体的諸特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、合成又は改変ヌクレオチドをその中に含むことができる。オリゴヌクレオチドに対するいくつかの異なるタイプの改変が当分野で知られている。これらの改変は、メチルホスホネート骨格及びホスホロチオエート骨格、並びに/或いは分子の3’及び/又は5’末端におけるアクリジン鎖又はポリリジン鎖の付加を含む。本発明では、本明細書に記載するヌクレオチド配列は、当分野で利用可能な任意の方法によって改変できることを理解されたい。このような改変は、ヌクレオチド配列のin vivoでの活性を高め、又は寿命を延ばすために実施することができる。
【0235】
本発明は、本明細書に考察する配列、又は任意の誘導体、その断片若しくは誘導体に相補的であるヌクレオチド配列の使用も包含する。配列がその断片に相補的である場合には、その配列をプローブとして使用して他の生物などにおける類似のコード配列を特定することができる。
【0236】
本発明の配列に100%相同ではないが、本発明の範囲内にあるポリヌクレオチドは、いくつかの方法で得ることができる。本明細書に記載する配列の他の変異体は、例えば、ある範囲の個体、例えば、異なる集団からの個体でできているDNAライブラリを探索することによって得ることができる。また、他のウイルス/細菌又は細胞の相同体、特に哺乳動物の細胞(例えばラット、マウス、ウシ及び霊長類細胞)中にある細胞の相同体を得ることができ、このような相同体及びその断片は、一般に、本明細書の配列リストに示す配列と選択的にハイブリッド形成することができる。このような配列は、他の動物種から作製されたcDNAライブラリ、又は他の動物種からのゲノムDNAライブラリを探索することによって、また、添付した配列リスト中の配列のいずれか1つの全部又は一部を含むプローブを用いて、厳密性が中程度〜高い条件下でこのようなライブラリを探索することによって得ることができる。本発明のポリペプチド又はヌクレオチド配列の種相同体及び対立遺伝子変異体を得るために、類似の考察が適用される。
【0237】
変異体及び系統/種相同体は、本発明の配列内の保存アミノ酸配列をコードする、変異体及び相同体内の配列を標的にするように設計されたプライマーを使用した縮重PCRによって得ることもできる。保存配列は、例えば、いくつかの変異体/相同体から得られるアミノ酸配列を整列させることによって予測することができる。配列アラインメントは、当分野で既知のコンピュータソフトウエアを使用して実施することができる。例えば、GCG Wisconsin PileUpプログラムが広く用いられている。
【0238】
縮重PCRに使用されるプライマーは、1個又は複数の縮重位置を含み、既知の配列に対して単一の配列プライマーを用いて配列をクローニングするために使用される厳密性よりも低い厳密性の条件で使用される。
【0239】
或いは、このようなポリヌクレオチドは、特徴の明らかな配列の部位特異的突然変異誘発によって得ることができる。これは、例えば、ポリヌクレオチド配列が発現される特定の宿主細胞に対してコドン優先度を最適化するために、サイレントなコドン配列変化が必要な場合に有用なことがある。制限ポリペプチド認識部位を導入するために、或いはポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの特性又は機能を変えるために別の配列変化が望まれる場合もある。
【0240】
本発明のポリヌクレオチド(ヌクレオチド配列)を使用して、プライマー、例えばPCRプライマー、選択的増幅反応用プライマー、プローブ、例えば放射性又は非放射性標識を用いて従来の手段によって明示用標識(revealing label)で標識されたプローブを作製することができ、或いはこのポリヌクレオチドをベクターにクローン化することができる。このようなプライマー、プローブ及び他の断片は、少なくとも15、好ましくは少なくとも20、例えば、少なくとも25、30又は40ヌクレオチド長であり、本明細書において使用される本発明のポリヌクレオチドという用語によってやはり包含される。
【0241】
本発明によるDNAポリヌクレオチドなどのポリヌクレオチド及びプローブは、組換え、合成、又は当業者に利用可能なあらゆる手段によって作製することができる。これらは、標準技術によってクローン化することもできる。
【0242】
一般に、プライマーは、1回に1個のヌクレオチドの所望の核酸配列の段階的な製造を含めた合成手段によって作製される。自動化技術を用いてこれを実施する技術を当分野では容易に利用することができる。
【0243】
より長鎖のポリヌクレオチドは、一般に、組換え手段、例えば、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応法)クローニング技術を用いて作製される。PCRクローニング技術は、クローン化が必要な脂質ターゲティング配列領域に隣接する1対のプライマー(例えば、約15〜30ヌクレオチド)を作製し、そのプライマーを動物又はヒト細胞から得られるmRNA又はcDNAと接触させ、所望の領域の増幅をもたらす条件下でポリメラーゼ連鎖反応を実施し、増幅された断片を単離し(例えば、アガロースゲル上で反応混合物を精製することによって)、増幅されたDNAを回収するものである。プライマーは、増幅されたDNAが適切なクローニングベクターにクローン化されるように、適切な制限酵素認識部位を含むように設計することができる。
【0244】
ハイブリッド形成法
本発明は、本発明の配列、又は本発明の配列若しくはそれに相補的な配列とハイブリッド形成可能である配列に相補的な配列も包含する。
【0245】
本明細書において使用される「ハイブリッド形成法」という用語は、「核酸の鎖が塩基対形成によって相補鎖と連結されるプロセス」、並びにポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)技術において実行される増幅プロセスを含むものとする。
【0246】
本発明は、本明細書に考察する対象配列、又は任意の誘導体、その断片若しくは誘導体に相補的である配列とハイブリッド形成可能なヌクレオチド配列の使用も包含する。
【0247】
本発明は、本明細書で考察するヌクレオチド配列とハイブリッド形成可能な配列に相補的である配列も包含する。
【0248】
ハイブリッド形成条件は、Berger and Kimmel(1987、Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology, Vol. 152, Academic Press, San Diego CA)に教示されたようにヌクレオチド結合複合体の融解温度(Tm)に基づき、以下に説明する規定の「厳密性」を与えるものである。
【0249】
最大の厳密性は、一般に、約Tm−5℃(プローブのTmよりも5℃低温)で得られ、高い厳密性は、Tmよりも約5℃〜10℃低温;中程度の厳密性はTmよりも約10℃〜20℃低温;及び低い厳密性はTmよりも約20℃〜25℃低温で得られる。当業者には理解されるように、最大の厳密性のハイブリッド形成法は、同一のヌクレオチド配列を特定又は検出するために使用され、一方、中程度の(又は低い)厳密性のハイブリッド形成法は、類似又は関係するポリヌクレオチド配列を特定又は検出するために使用される。
【0250】
本発明は、厳密性の高い条件、又は中程度の厳密性の条件下で、本明細書に定義する具体的諸特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列とハイブリッド形成することができる配列に相補的である配列を包含することが好ましい。
【0251】
より好ましくは、本発明は、厳密性の高い条件下(例えば、65℃及び0.1xSSC{1xSSC=0.15M NaCl、0.015Mクエン酸Na pH7.0})で、本明細書に定義する具体的諸特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列とハイブリッド形成することができる配列に相補的である配列を包含する。
【0252】
本発明は、(本明細書で考察するヌクレオチド配列の相補的配列も含めて)本明細書で考察するヌクレオチド配列とハイブリッド形成することができるヌクレオチド配列にも関する。
【0253】
本発明は、(本明細書で考察するヌクレオチド配列の相補的配列も含めて)本明細書で考察するヌクレオチド配列とハイブリッド形成することができる配列に相補的であるヌクレオチド配列にも関する。
【0254】
厳密性が中間〜最大である条件下で、本明細書で考察するヌクレオチド配列とハイブリッド形成することができるポリヌクレオチド配列も本発明の範囲内に含まれる。
【0255】
好ましい態様においては、本発明は、厳密な条件下(例えば、50℃及び0.2xSSC)で、本明細書で考察するヌクレオチド配列又はその補体(complement)とハイブリッド形成することができるヌクレオチド配列を包含する。
【0256】
より好ましい態様においては、本発明は、厳密性の高い条件下(例えば、65℃及び0.1xSSC)で、本明細書で考察するヌクレオチド配列又はその補体とハイブリッド形成することができるヌクレオチド配列を包含する。
【0257】
ポリペプチドの発現
本発明に使用されるヌクレオチド配列、又は本明細書に定義する具体的諸特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、複製可能な組換えベクターに組み込むことができる。このベクターを使用して、適合した宿主細胞中で、且つ/又は宿主細胞から、ヌクレオチド配列を複製し、ポリペプチドの形で発現させることができる。発現は、プロモーター/エンハンサー及び他の発現調節シグナルを含む調節配列を用いて制御することができる。原核生物プロモーター、及び真核細胞中で機能するプロモーターを使用することができる。組織特異的又は刺激特異的プロモーターを使用することができる。上述した2種類以上の異なるプロモーターに由来する配列要素を含むキメラプロモーターも使用することができる。
【0258】
ヌクレオチド配列の発現によって宿主組換え細胞によって生成されるポリペプチドは、使用する配列及び/又はベクターに応じて、分泌されても、細胞内に含まれてもよい。コード配列は、特定の原核細胞膜又は真核細胞膜を通って物質コード配列(substance coding sequence)の分泌を誘導するシグナル配列を用いて設計することができる。
【0259】
発現ベクター
「発現ベクター」という用語は、in vivo又はin vitroでの発現が可能な構築体を意味する。
【0260】
発現ベクターは、生物のゲノム中に組み込まれることが好ましい。「組み込む」という用語は、ゲノム中への安定な組み込みを好ましくは包含する。
【0261】
本発明のヌクレオチド配列、又は本明細書に定義する具体的諸特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、適切な宿主生物によるヌクレオチド配列の発現を制御配列がもたらすことができるように、ヌクレオチド配列が制御配列に作動可能に結合されたベクター中に存在することができる。すなわち、ベクターは発現ベクターである。
【0262】
本発明のベクターは、以下に示す適切な宿主細胞に形質転換して、本明細書に定義する具体的諸特性を有するポリペプチドを発現することができる。
【0263】
ベクター、例えばプラスミド、コスミド、ウイルス又はファージベクターの選択は、それが導入される宿主細胞によって決まることが多い。
【0264】
ベクターは、抗生物質抵抗性、例えばアンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール又はテトラサイクリン抵抗性を与える遺伝子などの1種類又は複数の選択可能な標識遺伝子を含むことができる。或いは、選択は、(国際公開第91/17243号に記載された)同時形質転換によって実施することができる。
【0265】
ベクターは、in vitroで、例えばRNAの生成用に使用することができ、又は宿主細胞に形質移入し、又は宿主細胞を形質転換するのに使用することができる。
【0266】
したがって、さらなる実施形態においては、本発明は、複製可能なベクター中にヌクレオチド配列を導入し、そのベクターを適合性宿主細胞に導入し、そのベクターの複製をもたらす諸条件下でその宿主細胞を増殖させることによって、本発明のヌクレオチド配列、又は本明細書に定義する具体的諸特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を作製する方法を提供する。
【0267】
ベクターは、さらに、当該宿主細胞中でベクターを複製することができるヌクレオチド配列を含むことができる。このような配列の例は、プラスミドpUC19、pACYC177、pUB110、pE194、pAMB1及びpIJ702の複製開始点である。
【0268】
制御配列
一部の適用例においては、本発明に使用されるヌクレオチド配列、又は本明細書に定義する具体的諸特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、選択された宿主細胞などによって、ヌクレオチド配列の発現を可能にする制御配列に作動可能に結合することができる。例として、本発明は、このような制御配列に作動可能に結合した本発明のヌクレオチド配列を含むベクターを包含する。すなわち、このベクターは、発現ベクターである。
【0269】
「作動可能に結合」という用語は、記述した成分が意図したように機能できる関係にある近位を指す。コード配列に「作動可能に結合され」た制御配列は、調節配列に適合した条件下でコード配列が発現されるように連結されている。
【0270】
「制御配列」という用語は、プロモーター、エンハンサー、及び他の発現調節シグナルを含む。
【0271】
「プロモーター」という用語は、当技術分野の通常の意味で使用され、例えばRNAポリメラーゼ結合部位である。
【0272】
本明細書に定義する具体的諸特性を有する酵素をコードするヌクレオチド配列の発現の増大は、異種調節領域、例えばプロモーター領域、分泌リーダー領域及びターミネーター領域を選択することによって達成することもできる。
【0273】
本発明のヌクレオチド配列は、少なくともプロモーターに作動可能に結合できることが好ましい。
【0274】
細菌、真菌又は酵母宿主中でヌクレオチド配列の転写を誘導するのに適切なプロモーターの例は、当分野で周知である。
【0275】
構築体
「抱合体」、「カセット」、「ハイブリッド」などの用語と同義である「構築体」という用語は、プロモーターに直接又は間接的に結合した、本発明によって使用される、本明細書に定義する具体的諸特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。間接的な結合の例は、プロモーターと本発明のヌクレオチド配列に介在するSh1−イントロン、ADHイントロンなどのイントロン配列などの適切なスペーサー基の提供である。直接又は間接的結合を含む、本発明に関係する「融合」という用語でも同じことが当てはまる。これらの用語は、野生型遺伝子プロモーターを通常伴うタンパク質をコードするヌクレオチド配列の天然の組み合わせを、それらがどちらも天然環境にあるときに包含しない場合もある。
【0276】
構築体は、さらに、遺伝子構築体の選択を可能にするマーカーを含み、又は発現させることもできる。
【0277】
一部の適用例では、構築体は、プロモーターに作動可能に結合された、少なくとも本発明のヌクレオチド配列、又は本明細書に定義する具体的諸特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むことが好ましい。
【0278】
宿主細胞
本発明に関係する「宿主細胞」という用語は、本明細書に定義する具体的諸特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又は本明細書に定義する具体的諸特性を有するポリペプチドの組換え生成において使用される上述した発現ベクターのどちらかを含む任意の細胞を含む。
【0279】
したがって、本発明の別の実施形態は、本発明のヌクレオチド配列、又は本明細書に定義する具体的諸特性を有するポリペプチドを発現するヌクレオチド配列を形質転換又は形質移入した宿主細胞を提供する。これらの細胞は、前記ベクターに適合するように選択され、例えば、原核(例えば、細菌)細胞、真菌細胞、酵母細胞又は植物細胞とすることができる。宿主細胞は、ヒト細胞ではないことが好ましい。
【0280】
適切な細菌宿主生物の例はグラム陰性菌又はグラム陽性菌である。
【0281】
本明細書に定義する具体的諸特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の性質、及び/又は発現タンパク質のさらなるプロセシングの望ましさに応じて、酵母、他の真菌などの真核生物宿主が好ましいことがある。一般に、酵母細胞は、操作が容易であるので、真菌細胞よりも好ましい。しかし、一部のタンパク質は、酵母細胞からうまく分泌されず、適切に処理されない場合もある(例えば、酵母における過剰糖鎖形成(hyperglycosylation))。この場合には、異なる真菌宿主生物を選択すべきである。
【0282】
酵母、真菌、植物宿主細胞などの適切な宿主細胞を使用すると、本発明の組換え発現産物に対して最適な生物活性を付与するために必要となることがある翻訳後修飾(例えばミリストイル化、グリコシル化、切断、ラピデーション(lapidation)、及びチロシン、セリン又はトレオニンリン酸化)が可能になる。
【0283】
宿主細胞は、プロテアーゼ欠乏、又はプロテアーゼマイナス系統とすることができる。
【0284】
生物
本発明に関係する「生物」という用語は、本発明によるヌクレオチド配列、又は本明細書に定義する具体的諸特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、及び/又はそれらから得られる生成物を含むことができるあらゆる生物を含む。
【0285】
適切な生物としては、原核生物、真菌、酵母又は植物が挙げられる。
【0286】
本発明に関係する「トランスジェニック生物」という用語は、本明細書に定義する具体的諸特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、及び/又はそれから得られる生成物を含み、且つ/又はプロモーターによって、本明細書に定義する具体的諸特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列のその生物内での発現が可能になる、あらゆる生物を含む。ヌクレオチド配列は、生物のゲノム中に組み込まれることが好ましい。
【0287】
「トランスジェニック生物」という用語は、その天然環境にあるその未変性プロモーターの制御下にあるときに、やはりその天然環境にある未変性ヌクレオチドコード配列を包含しない。
【0288】
したがって、本発明のトランスジェニック生物としては、本明細書に定義する具体的諸特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、本明細書に定義する構築体、本明細書に定義するベクター、本明細書に定義するプラスミド、本明細書に定義する細胞、又はそれらの産物のいずれか1種類若しくは組み合わせを含む生物が挙げられる。例えば、トランスジェニック生物は、異種プロモーターの制御下にある、本明細書に定義する具体的諸特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むこともできる。
【0289】
宿主細胞/生物の形質転換
先に示したように、宿主生物は、原核生物又は真核生物とすることができる。適切な原核生物宿主の例としては、大腸菌及びバチルス サチリスが挙げられる。
【0290】
原核生物宿主の形質転換に関する教示は、当分野ではこれまでたくさん書かれており、例えば、Sambrook et al (Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd edition, 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Press)を参照されたい。原核生物宿主が使用される場合には、ヌクレオチド配列は、イントロンの除去などによって形質転換前に適切に改変する必要があることがある。
【0291】
別の実施形態においては、トランスジェニック生物は酵母とすることができる。
【0292】
糸状菌細胞は、既知の方法によるプロトプラスト形成、及びプロトプラストの形質転換、それに続く細胞壁の再生を含むプロセスなどの当分野で既知の様々な方法を用いて形質転換することができる。宿主微生物としてアスペルギルスを使用することは、欧州特許第0 238 023号に記載されている。
【0293】
別の宿主生物は植物とすることができる。植物を形質転換するのに使用される一般技術の総説は、Potrykus (Annu Rev Plant Physiol Plant Mol Biol [1991] 42: 205-225)及びChristou (Agro-Food-Industry Hi-Tech March/April 1994 17-27)の論文にある。植物の形質転換に関するさらなる教示は、欧州特許公開第0449375号にある。
【0294】
真菌、酵母及び植物の形質転換に関する全般的な教示を以下のセクションに示す。
【0295】
形質転換真菌
宿主生物は、糸状菌などの真菌とすることができる。適切なこのような宿主の例としては、サーモマイセス(Thermomyces)属、アクレモニウム(Acremonium)属、アスペルギルス属、ペニシリウム(Penicillium)属、ムコール(Mucor)属、ニューロスポラ(Neurospora)属、トリコデルマ(Trichoderma)属などに属するあらゆるメンバーが挙げられる。
【0296】
糸状真菌を形質転換することに関する教示は、糸状真菌を形質転換する標準技術、及び真菌の培養が当分野で周知であることを述べている米国特許第5741665号に概説されている。N クラッサ(N. crassa)に適用された技術の広範な総説は、例えば、Davis and de Serres, Methods Enzymol (1971) 17A: 79-143にある。
【0297】
糸状菌を形質転換することに関するさらなる教示は、米国特許第5674707号に概説されている。
【0298】
一態様においては、宿主生物は、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)などのアスペルギルス属とすることができる。
【0299】
本発明によるトランスジェニックアスペルギルスは、例えば、Turner G. 1994 (Vectors for genetic manipulation. In: Martinelli S. D., Kinghorn J.R. (Editors) Aspergillus: 50 years on. Progress in industrial microbiology vol 29. Elsevier Amsterdam 1994. pp. 641-666)の教示に従って調製することもできる。
【0300】
糸状菌における遺伝子発現は、Punt et al. (2002) Trends Biotechnol 2002 May; 20(5): 200-6, Archer & Peberdy Crit Rev Biotechnol (1997) 17(4): 273-306に概説されている。
【0301】
形質転換酵母
別の実施形態においては、トランスジェニック生物は酵母とすることができる。
【0302】
酵母における異種遺伝子発現の原理の総説は、例えば、Methods Mol Biol (1995), 49: 341-54、及びCurr Opin Biotechnol (1997) Oct; 8(5): 554-60にある。
【0303】
この点で、サッカロミセス セレビシ(Saccharomyces cerevisi)種又はピキア パストリス(Pichia pastoris)種(FEMS Microbiol Rev (2000 24(1): 45-66参照)などの酵母は、異種遺伝子発現用ビヒクルとして使用することができる。
【0304】
サッカロミセス セレビシエにおける異種遺伝子発現、及び遺伝子産物の分泌の原理の総説は、E Hinchcliffe E Kenny (1993, "Yeast as a vehicle for the expression of heterologous genes", Yeasts, Vol 5, Anthony H Rose and J Stuart Harrison, eds, 2nd edition, Academic Press Ltd.)にある。
【0305】
酵母の形質転換の場合には、いくつかの形質転換プロトコルが開発されている。例えば、本発明によるトランスジェニックサッカロミセスは、Hinnen et al., (1978, Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA 75,1929)、Beggs, J D (1978, Nature, London, 275, 104)、及びIto, H et al (1983, J Bacteriology 153, 163-168)の教示に従って調製することができる。
【0306】
適切な酵母宿主生物は、ピキア(Pichia)種、ハンゼヌラ(Hansenula)種又はクルイベロミセス(Kluyveromyces)、ヤロウィニア(Yarrowinia)種、又はサッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)を含めたサッカロミセス(Saccharomyces)種、又は例えば、S.ポンベ(S. pombe)種などのシゾサッカロミセ(Schizosaccharomyce)に属する種などの酵母種など、ただしこれらだけに限定されない生物工学的に関連する酵母種から選択することができる。
【0307】
メチロトローフの酵母種ピキア パストリス(Pichia pastoris)の系統を宿主生物として使用することができる。
【0308】
一実施形態においては、宿主生物は、(国際公開第01/38544号に記載された)ハンゼヌラ ポリモルファ(Hansenula polymorpha)などのハンゼヌラ種である。
【0309】
形質転換酵母細胞は、栄養要求性マーカー優性抗生物質抵抗性マーカーなどの様々な選択マーカーを使用して選択することができる。
【0310】
形質転換植物/植物細胞
本発明に適切な宿主生物が植物の場合もある。一般技術の総説は、Potrykus (Annu Rev Plant Physiol Plant Mol Biol [1991] 42: 205-225)及びChristou (Agro-Food-Industry Hi-Tech March/April 1994 17-27)の論文、又は国際公開第01/16308号にある。トランスジェニック植物は、例えば、高レベルの植物ステロールエステル及びフィトスタノールエステルを生成することができる。
【0311】
したがって、本発明は、本明細書に定義する脂質アシルトランスフェラーゼを用いて(特に、本明細書に定義する脂質アシルトランスフェラーゼを含む発現ベクター又は構築体を用いて)植物細胞を形質転換するステップと、その形質転換された植物細胞から植物を成長させるステップとを含む、高レベルの植物ステロールエステル及びフィトスタノールエステルを含むトランスジェニック植物を生成する方法にも関する。
【0312】
分泌
ポリペプチドは、発現宿主から、酵素をより容易に回収することができる培地中に分泌されることが望ましいことが多い。本発明によれば、分泌リーダー配列は、所望の発現宿主に基づいて選択することができる。ハイブリッドシグナル配列は、本発明の状況でも使用することができる。
【0313】
異種分泌リーダー配列の典型的な例は、真菌のアミログルコシダーゼ(AG)遺伝子(例えば、アスペルギルス由来のglaA−18及び24アミノ酸型)、a因子遺伝子(酵母、例えばサッカロミセス、クルイベロミセス及びハンゼヌラ)又はα−アミラーゼ遺伝子(バチルス)に由来する分泌リーダー配列である。
【0314】
検出
アミノ酸配列の発現を検出し、測定する様々なプロトコルが当分野で知られている。例としては、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、放射性免疫測定法(RIA)及び蛍光活性化細胞選別法(FACS)が挙げられる。
【0315】
多種多様な標識及び抱合(conjugation)技術が当業者に知られており、様々な核酸及びアミノ酸アッセイに使用することができる。
【0316】
Pharmacia Biotech(Piscataway、NJ)、Promega(Madison、WI)、US Biochemical Corp(Cleveland、OH)などのいくつかの会社が、これらの手順用の市販キット及びプロトコルを提供している。
【0317】
適切なレポーター分子又は標識としては、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤又は色素生産剤、並びに基質、補因子、阻害剤、磁性粒子などが挙げられる。このような標識の使用を教示している特許としては、米国特許第3,817,837号、同第3,850,752号、同第3,939,350号、同第3,996,345号、同第4,277,437号、同第4,275,149号及び同第4,366,241号が挙げられる。
【0318】
また、組換え免疫グロブリンは、米国特許第4,816,567号に示したように生成することができる。
【0319】
融合タンパク質
本明細書に定義する具体的諸特性を有するポリペプチドは、融合タンパク質として生成して、例えば、その抽出及び精製に役立てることができる。融合タンパク質パートナーの例としては、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、6xHis、GAL4(DNA結合及び/又は転写活性化ドメイン)、β−ガラクトシダーゼなどが挙げられる。融合タンパク質パートナーと目的タンパク質配列の間にタンパク質分解性切断部位を入れて、融合タンパク質配列の除去を可能にすることが好都合な場合もある。融合タンパク質は、タンパク質配列の活性を妨げないことが好ましい。
【0320】
大腸菌の遺伝子融合発現系は、Curr. Opin. Biotechnol. (1995) 6(5): 501-6に概説されている。
【0321】
本発明の別の実施形態においては、本明細書に定義する具体的諸特性を有するポリペプチドのアミノ酸配列を異種配列に連結して、融合タンパク質をコードすることができる。例えば、物質活性に影響を及ぼすことができる薬剤をペプチドライブラリからスクリーニングするために、市販抗体によって認識される異種エピトープを発現するキメラ物質をコードすることが有用な場合がある。
【0322】
以下の図及び実施例を単なる例として参照して、本発明を以下に説明する。
【実施例1】
【0323】
アエロモナス サルモニシダ亜種由来のトランスフェラーゼのクローニング、配列決定及び異種発現
使用したサルモニシダ系統:
アエロモナス サルモニシダ亜種。サルモニシダ(ATCC 14174)をATCCから入手し、Luria−Bertani培地(LB)中で終夜30℃で増殖させた。この細胞を遠心分離し、Qiagen Ltd.のゲノムDNA単離手順によって単離した。ゲノムDNA緩衝剤セット(cat.19060)、プロテアーゼK(cat.19131)及びRNAse A(cat.19101)はすべてQiagen Ltd.(Boundary court Gatwick Court,West Sussex,RH10 2AX)から入手した。
【0324】
宿主細菌系統BL21(DE3)pLysS(Novagen)を、組換えアエロモナス酵素の産生に使用した。コンピテントなBL21(DE3)pLysS細胞を、発現ベクターpet12−AsalGCAT=pSMの形質転換用宿主として使用した。適切なプラスミドを含む形質転換体を100−ugアンピシリン/mlを含むLB寒天培地中で37℃で増殖させた。
【0325】
発現ベクターpet12−AsalGCAT−pSMの構築:
アエロモナス由来のトランスフェラーゼ遺伝子のすべてのDNA増幅では、ゲノムDNA(0.2〜1ul)をテンプレートとして用い、pfu DNAポリメラーゼ(2.5単位)を10x pfu緩衝剤10ul、各プライマー1ul(50pmol/ul)、200uMdNTPとともに総反応体積100ulで使用した。プログラム可能なサーマルサイクラー中で以下の条件によってPCR反応を実施した:95℃30秒、(95℃30秒、60℃1分間及び68℃2分間)を30サイクル。追加の伸張を72℃で5分間行った。
【0326】
A.サルモニシダ由来のトランスフェラーゼ遺伝子のPCR増幅を2つの別個のPCR反応で実施した。PCR反応1をプライマー対、as1USNEW(5’AGCATATGAAAA AATGGTTTGT TTGTTTATTG GGG 3’[配列番号36])とas1s950new(5’GTG ATG GTG GGC GAG GAA CTC GTA CTG3’[配列番号37])を用いて実施した。第2のPCR反応を、第1の反応のPCR産物及びプライマー:as1USNEW(5’AGCATATGAAAA AATGGTTTGT TTGTTTATTG GGG 3’[配列番号38])及びAHLS1001(5’TTGGATCC GAATTCAT CAATG GTG ATG GTG ATG GTG GGC3’[配列番号39])を用いて実施して、C末端ヒスチジンタグを組み込んだ。第2の反応から得られたPCR産物を精製し、制限酵素Nde1及びBamHIで消化した。pET 12aベクターDNA 2ugも制限酵素Nde1及びBamHIで消化し、ホスファターゼで処理した。制限酵素で処理したpet12aと反応2のPCR産物を精製し、Rapid Ligation Kit(Roche、Switzerland)を用いて連結した。この連結混合物を使用して大腸菌TOP10細胞を形質転換した。形質転換体を、100ug/mlアンピシリンを含むLB寒天培地に播いた。
【0327】
T7プロモータープライマー(5’TAATACGACTCACTATAG3’[配列番号40])及びT7ターミネータープライマー(5’CTAGTTATTGCTCAGCGG3’[配列番号41])を使用して、pET12aベクター中のクローン化されたトランスフェラーゼ遺伝子の配列及び配向を検証した。ABI Prism(登録商標)BigDye(商標)Terminators Cycle配列決定キットを用いて、プラスミドDNA 500ngをテンプレートとして、T7プロモーター及びターミネータープライマー3.2pmolを使用してDNA配列を決定した。
【0328】
図35に示す構築体を用いて、コンピテントな細菌宿主系統BL21(DE3)pLysS(Novagen)を形質転換し、アンピシリン耐性形質転換体を選択して発現分析に使用した。
【0329】
組換えアエロモナス サルモニシダ脂質アシルトランスフェラーゼの発現
レシチンに対する細胞抽出物の酵素活性をNon−Esterified Fatty Acid(NEFA)キット(Roche、Switzerland)を用いて定量した。
【0330】
図36において、発現ベクターpet12−AsalGCAT=pSMを収容するBL21(DE3)pLysSをLB培地+アンピシリン100ug/ml中で増殖させ、OD600=0.6〜1.0になるまで振とうしながら37℃でインキュベートした。次いで、IPTG(0.4mM)を用いて培養物を誘導し、さらに3時間インキュベーションを続けた。IPTG誘導後0時間、1、2及び3時間に試料を採取した。NEFAキットを用いレシチンを基質として酵素活性を試験した。
【0331】
より活性な酵素を産生するための増殖最適化
発現ベクターpet12−AsalGCAT=pSMを収容するBL21(DE3)pLysSをLB培地+アンピシリン100ug/ml中で増殖させ、異なる増殖温度(37℃、30℃&20℃)で振とうしながらインキュベートした。活性脂質アシルトランスフェラーゼを産生する最適条件は、図37に示すように、培養物が30℃で増殖されるときであった。
【0332】
組換えアエロモナス サルモニシダトランスフェラーゼの部分精製
発現ベクターpet12−AsalGCAT=pSMを収容する系統BL21(DE3)pLysSを37℃で増殖させ、粗製細胞抽出物を超音波処理によって調製した。Qiagen製Ni−NTAスピンキットを用いて、超音波処理した粗製細胞抽出物から組換え酵素をさらに精製した。NEFAキットを用い、レシチンを基質としたホスホリパーゼ活性。活性トランスフェラーゼを発現するBL21(DE3)pLysSから得られる粗製細胞抽出物を基質レシチンとともにインキュベートし、反応混合物を薄層クロマトグラフィーによって分析した。分解生成物が存在することがわかった(図38参照)。
【0333】
組換えアエロモナス サルモニシダトランスフェラーゼの部分精製。発現ベクターpet12−AsalGCAT=pSMを収容する系統BL21(DE3)pLysSを37℃で増殖させ、粗製細胞抽出体を超音波処理によって調製した。Qiagen製Ni−NTAスピンキットを用いて、超音波処理した粗製細胞抽出体から組換え酵素をさらに精製した。NEFAキットを用い、レシチンを基質としてホスホリパーゼ活性を試験した(図39参照)。
【実施例2】
【0334】
大腸菌中でのアエロモナス ヒドロフィラトランスフェラーゼのクローニング及び発現
アエロモナス ヒドロフィラ(ATCC #7965)をATCCから入手し、Luria−Bertani培地(LB)中で終夜30℃で増殖させた。この細胞を遠心分離し、Qiagen Ltd.のゲノムDNA単離手順によって単離した。ゲノムDNA緩衝剤セット(cat.19060)、プロテアーゼK(cat.19131)及びRNAse A(cat.19101)はすべてQiagen Ltd.(Boundary court Gatwick Court,West Sussex,RH10 2AX)から入手した。
【0335】
宿主細菌系統BL21(DE3)pLysS(Novagen)を、組換えアエロモナス酵素の産生に使用した。コンピテントなBL21(DE3)pLysS細胞を、発現ベクターpet12−A.h.GCAT=pSMaの形質転換用宿主として使用した。適切なプラスミドを含む形質転換体を、100−ugアンピシリン/mlを含むLB寒天培地中で37℃で増殖させた。
【0336】
発現ベクターpet12−A.h.GCAT−pSMaの構築:
アエロモナス由来のトランスフェラーゼ遺伝子のすべてのDNA増幅では、ゲノムDNA(0.2〜1ul)をテンプレートとして用い、pfu DNAポリメラーゼ(2.5単位)を10x pfu緩衝剤10ul、各プライマー1ul(50pmol/ul)、200uMdNTPとともに総反応体積100ulで使用した。プログラム可能なサーマルサイクラー中で以下の条件によってPCR反応を実施した:95℃30秒、(95℃30秒、60℃1分間及び68℃2分間)を30サイクル。追加の伸張を72℃で5分間行った。
【0337】
A.ハイドロフィラ(ATCC #7965)由来のトランスフェラーゼ遺伝子のPCR増幅を2つの別個のPCR反応で実施した。
【0338】
PCR反応1をプライマー対、AHUS1(5’GTCATATGAAAAAATGGTTTGTGTGTTTATTGGGATTGGTC3’、配列番号42)及びahls950(5’ATGGTGATGGTGGGCGAGGAACTCGTACTG3’、配列番号43)を用いて実施した。
【0339】
第2のPCR反応を、第1の反応から得られるPCR産物、及びプライマー対:
AHUS1(5’GTCATATGAAAAAATGGTTTGTGTGTTTATTGGGATTGGTC3’配列番号44)及びAHLS1001(5’TTGGATCCGAATTCATCAATGGTGATGGTGATGGTGGGC3’配列番号45)
を用いて実施して、C末端ヒスチジンタグを組み込んだ。
【0340】
第2の反応から得られたPCR産物を精製し、制限酵素Nde1及びBamHIで消化した。pET 12aベクターDNA 2ugも制限酵素Nde1及びBamHIで消化し、ホスファターゼで処理した。制限酵素で処理したpet12aと反応2のPCR産物を精製し、Rapid Ligation Kit(Roche、Switzerland)を用いて連結した。この連結混合物を使用して大腸菌TOP10細胞を形質転換した。形質転換体を、100ug/mlアンピシリンを含むLB寒天培地に播いた。
【0341】
T7プロモータープライマー(5’TAATACGACTCACTATAG3’)及びT7ターミネータープライマー(5’CTAGTTATTGCTCAGCGG3’)を使用して、pET12aベクター中のクローン化されたGCAT遺伝子の配列及び配向を検証した。ABI Prism(登録商標)BigDye(商標)Terminators Cycle配列決定キットを用いて、プラスミドDNA 500ngをテンプレートとして、T7プロモーター及びターミネータープライマー3.2pmolを使用してDNA配列を決定した。
【0342】
図40に示す構築体を用いて、コンピテントな細菌宿主系統BL21(DE3)pLysS(Novagen)を形質転換し、アンピシリン耐性形質転換体を選択して発現分析に使用した。
【0343】
BL21(DE3)pLysS中でのアエロモナス ヒドロフィラトランスフェラーゼの発現
発現ベクターpet12a−A.h.GCAT=pSMaを収容する大腸菌系統BL21(DE3)pLysSをLB培地+アンピシリン100ug/ml中で増殖させ、OD600=0.6〜1.0になるまで振とうしながら37℃でインキュベートした。次いで、IPTG(0.4mM)を用いて培養物を誘導し、さらに3時間インキュベーションを続けた。IPTG誘導後0時間、1、2及び3時間に試料を採取した。NEFAキットを用いレシチンを基質として酵素活性を試験した(図41)。
【0344】
より活性な酵素を産生するための増殖最適化
発現ベクターpet12−A.h.GCAT=pSMaを収容するBL21(DE3)pLysSをLB培地+アンピシリン100ug/ml中で増殖させ、異なる増殖温度(37℃、30℃&20℃)で振とうしながらインキュベートした。活性GCAT酵素を産生する最適条件は、図42に示すように、培養物が30℃で増殖されるときであった。
【0345】
組換えA.ヒドロフィラトランスフェラーゼ(GCAT)の部分精製
発現ベクターpet12−A.h.GCAT=pSMaを収容する系統BL21(DE3)pLysSを37℃で増殖させ、粗製細胞抽出体を超音波処理によって調製した。Qiagen製Ni−NTAスピンキットを用いて、超音波処理した粗製細胞抽出体から組換え酵素をさらに精製した。NEFAキットを用い、レシチンを基質としたホスホリパーゼ活性アッセイ。(図43)。
【実施例3】
【0346】
バチルス サチリス163中でのアエロモナストランスフェラーゼの発現
プラスミド構築
2種類の異なるバチルス サチリス発現ベクター(pUB 110&pBE5)を、バチルス サチリス中でのアエロモナス遺伝子の異種発現に使用した。pUB 110ベクターはαアミラーゼプロモーターを含み、一方、pBEベクターは融合アエロモナス遺伝子の発現調節領域としてP32プロモーターを有する。pUB 110においては、アエロモナスの成熟GCAT遺伝子の最初のアミノ酸は、バチルス サチリスのキシラナーゼシグナルペプチド配列の最後のアミノ酸と、制限酵素切断部位Nhe1を介してインフレームで融合し、成熟タンパク質の前に追加の2個のアミノ酸が生成された。pBE5は、組換えタンパク質を培養ろ液中に分泌する、Nco1部位におけるcgtaseシグナル配列融合を含む。
【0347】
pUB 110及びpBE5ベクターのシグナル配列にインフレームで融合したアエロモナス遺伝子を得るためにPCR反応を実施した。A.ヒドロフィラ遺伝子に対して以下のプライマー対を用いてPCRを実施した。
【0348】
PCR反応1:usAHncol(5’ATGCCATGGCCGACAGCCGTCCCGCC3’、配列番号46)及び1sAH(5’TTGGATCCGAATTCATCAATGGTGATG3’、配列番号47)
【0349】
PCR反応2:US−AhnheI(5’TTGCTAGCGCCGACAGCCGTCCCGCC3’、配列番号48)及び1sAH(5’TTGGATCCGAATTCATCAATGGTGATG3、配列番号49)
【0350】
A.サルモニシダ遺伝子に対して以下のプライマー対を用いてPCRを実施した。
【0351】
PCR反応3:US−Asncol(5’TTGCCATGGCCGACACTCGCCCCGCC3’、配列番号50)及び1sAH(5’TTGGATCCGAATTCATCAATGGTGATG3’、配列番号51)
【0352】
PCR反応4:US−ASnhel(5’TTGCTAGCGCCGACACTCGCCCCGCC3’、配列番号52)及び1sAH(5’TTGGATCCGAATTCATCAATGGTGATG3’、配列番号53)
【0353】
すべてのPCR産物は、PCR blunt II(TOPOベクター)にクローン化され、逆方向&順方向配列決定プライマーを用いて配列決定された。
【0354】
PCR反応1&3から得られたクローンは、Nco1&Bam HIで切断され、Nco1/BamH1/ホスファターゼで切断されたpBE5ベクターを連結する挿入断片として使用された。PCR反応2&4から得られたクローンは、Nhe1&Bam H1で切断され、Nhe1/BamH1/ホスファターゼで切断されたpUBベクターを連結する挿入断片として使用された。
【0355】
バチルス サチリス中でのアエロモナストランスフェラーゼ遺伝子の発現、及びその酵素活性のキャラクタリゼーション
2種類のアエロモナス種に由来するアシルトランスフェラーゼは、大腸菌中で首尾良く発現した(上記結果)。バチルスpUB110&pBE5遺伝子融合構築体を使用してバチルス サチリスを形質転換し、カナマイシンプレート上に播くことによって形質転換体を選択した。単離され2xYT中で増殖されたカナマイシン耐性形質転換体は、バチルス中でアエロモナス遺伝子を異種発現することができる。その培養ろ液は、アシルトランスフェラーゼ活性とホスホリパーゼ活性の両方に加えて、ジガラクトシルジアシルグリセロール(DGDG)ガラクトリパーゼ活性を有する。ジガラクトシルジアシルグリセロール(DGDG)に対する活性を、培養上清を基質の小麦粉由来のDGDG(Sigmaから入手可能)とともに60分間インキュベーションした後に、図44に示すようにレシチンに対する活性と同様に測定した。バチルスは、培地中で終夜(20〜24時間)〜48時間培養した後に、分泌タンパク質として酵素を産生した。アエロモナス遺伝子の発現は、バチルス&大腸菌における細胞生存能力及び増殖を妨げる場合があることが判明した。したがって、発現系統を慎重に選択し、増殖条件を最適化して確実に発現するようにする必要がある。例えば、いくつかのバチルス宿主系統(B.s 163、DB104及びOS 21)は、増殖比較のために発現ベクターで形質転換された。B.s163は、2種類のアエロモナス遺伝子で形質転換することができ、活性タンパク質を発現することができる。DB104は、すべての構築体で形質転換することができるが、A.サルモニシダトランスフェラーゼしか発現することができない。
【実施例4】
【0356】
大腸菌中で産生されるアエロモナス脂質アシルトランスフェラーゼの発酵及び精製
大腸菌発酵:
微生物
2系統のエシェリキア コリ(Eschericia coli)、アエロモナス ヒドロフィラ(実施例2)脂質アシルトランスフェラーゼを含む1つと、アエロモナス サルモニシダ脂質アシルトランスフェラーゼ、(実施例1)を含む2つをこの試験に使用した。
【0357】
A.ヒドロフィラ遺伝子を含む大腸菌系統はDIDK0124と命名され、A.サルモニシダ遺伝子を含む大腸菌系統はDIDK0125と命名された。DIDK0124による発酵はHYDRO0303と命名され、DIDK0125による発酵はSAL0302と命名された。HYDRO025から得られる精製タンパク質はREF#138と命名された。HYDRO0303から得られる精製タンパク質はREF#135と命名された。
【0358】
増殖培地及び培養条件
LB寒天
系統を維持するために使用されたLB寒天板は、トリプトン10g/L、酵母抽出物5g/L、NaCl 5g/L、寒天15g/L、アンピシリン100mg/L及びクロラムフェニコール35mg/Lを含んだ。寒天板は30℃でインキュベートされた。
【0359】
LB振とうフラスコ
バイオリアクター培養用接種材料の生成に使用されるLB培地(50mL/振とうフラスコ)は、トリプトン10g/L、酵母抽出物5g/L、NaCl 5g/L、アンピシリン100mg/L及びクロラムフェニコール35mg/Lを含んだ。振とうフラスコにLB寒天板から接種して、30℃、200rpmでインキュベートした。
【0360】
バイオリアクター培養
バイオリアクター培養は、トリプトン10g/L、酵母抽出物5g/L、NaCl 5g/L、KHPO 8g/L、MgSO,7HO 0.9g/L、グルコース一水和物40g/L、ADD APT(登録商標)Foamstop Sin 260(ADD APT Chemicals AG、Helmond、The Netherlands)0.4mL/、(NHFe(SO6HO 10mg/L、CuSO5HO 0.7mg/L、ZnSO7HO 3mg/L、MnSOO 3mg/L、EDTA 10mg/L、NiSO6HO 0.1mg/L、CoCl 0.1mg/L、HBO 0.1mg/L、KI 0.1mg/L、NaMoO2HO 0.1mg/L、アンピシリン1g/L及びクロラムフェニコール35mg/Lを含む培地4Lを充填した6L社内組み立てバイオリアクター中で実施された。
【0361】
(最大比増殖速度0.6h−1、LB振とうフラスコのOD600、及びバイオリアクターにおける最終OD600 約20から計算して)約20時間培養した後に増殖が確実に終了する量のLB培養物をバイオリアクターに接種した。
【0362】
SAL0302にLB培養物10mLを接種し、HYDRO0303にLB培養物4mLを接種した。
【0363】
バイオリアクターを以下の条件で運転した:温度30℃、(実験に応じて)撹拌800〜1000rpm、通気5L/min、pH6.9、pH調整8.75%(w/v)NH−水及び2M HSO。誘導は、イソプロピルβ−D−チオガラクトシドを最終濃度0.6mMまで添加することによって実施され、それぞれ0.4mol(HYDRO0303)及び0.7molのCOが生成した。
【0364】
収集
バイオマスの収集及び均質化に以下の手順を使用した。
1)発酵物からの発酵ブロスを5000xgで4℃で10分間遠心分離し、上清を排出した。バイオマスを使用するまで−20℃で貯蔵した。バイオマスを解凍し、20mM NaHPO、pH7.4、500mM NaCl、10mMイミダゾール及び完全(EDTAなし)プロテアーゼ阻害剤(Roche、Germany)の500mLに再懸濁させた。
2)懸濁バイオマスをConstant Systems Ltd(Warwick、UK)製細胞粉砕機を用いて2kbar、4℃でホモジナイズした。
3)10.000xg、4℃で30分間遠心分離することによって細胞片を除去し、続いて上清を収集した。
4)13.700xg、4℃で60分間遠心分離することによって上清をさらに精製し、続いて上清を収集した。
5)0.2μM Vacu Capフィルター(Pall Life Sciences、UK)を通して上清をろ過し、ろ液を収集してすぐにクロマトグラフィー精製にかけた。
【0365】
トランスフェラーゼのクロマトグラフィー精製
(製造者Amersham Biosciencesによって記載された方法に従って)カラム(2.5x10cm)にChelating Sepharose ff.ゲル50mlを詰め、硫酸Niを充填した。20mM NaHPO、pH7.4、500mM NaCl、10mMイミダゾールの200mlでカラムを平衡にした。粗製物400mlを流量5ml/minでカラムにかけた。次いで、20mM NaHPO、pH7.4、500mM NaCl、10mMイミダゾールを用いて、UV280がベースラインに達するまでカラムを洗浄した。次いで、20mM NaHPO、pH7.4、500mM NaCl及び500mMイミダゾールの40mlを用いてGCATを溶出させた。
【実施例5】
【0366】
バチルス サチリス中で産生されるアエロモナス脂質アシルトランスフェラーゼの発酵及び精製
発酵
BAC0318−19、BAC0323−24
微生物
この試験に使用される微生物はバチルス サチリス宿主系統#163の形質転換から生じ、アエロモナス サルモニシダトランスフェラーゼをコードする遺伝子を含むプラスミドがベクターpUB110OISに挿入されている。この遺伝子の発現は、α−アミラーゼプロモーターによって制御され、トランスフェラーゼの分泌は、B.サチリスキシラナーゼシグナル配列によって媒介される(実施例3)。これらの系統は、DIDK0138(発酵BAC0318−19)及びDIDK0153(発酵BAC0323−24)と命名された。
【0367】
増殖培地及び培養条件
前培養培地
振とうフラスコ(総容積500mL、バッフル付き)に、
NaCl 5g/L
HPO 10g/L
大豆粉 20g/L
酵母抽出物、BioSpringer 106 20g/L
消泡剤、SIN260 5mL/L
を含む培地100mLを添加した。
【0368】
pHは高圧蒸気殺菌前に7.0に調節された。
【0369】
高圧蒸気殺菌後に、50%(w/w)Nutriose 6mL/フラスコを添加した。高圧蒸気殺菌後、カナマイシンを濃度50mg/Lで添加した。
【0370】
接種
25%(w/v)グリセリン貯蔵物から凍結培養物を前培養振とうフラスコに直接接種した。振とうフラスコを33℃、175rpmで約16時間インキュベートし、発酵槽に接種するのに50mLを使用した。
【0371】
発酵
6L社内組み立て発酵槽中で発酵を実施した。
バッチ培地(3L)は、
コーンスティープリカー(50%dw) 40g/L
酵母抽出物 BioSpringer 153(50%dw)10g/L
NaCl 5g/L
CaCl,2HO 0.25g/L
Mn(NO,HO 0.2g/L
消泡剤 SIN260 1mL/L
カナマイシン(高圧蒸気殺菌後、発酵槽にフィルター滅菌 50mg/L
を含んだ。
【0372】
供給原料は、
グルコース一水和物 540g/kg

MgSO,7HO 4.8g/kg
Antofoam SIN260 4mL/kg
酵母抽出物、BioSpringer 153(50%dw)150g/kg
(別個に高圧蒸気滅菌)
を含んだ。
【0373】
発酵BAC0318及びBAC0323における供給は、以下の式に従って、蓄積したCOに基づいて開始された。
供給−流量[g/h]=0、AcCO<0.15
供給−流量[g/h]=2.85+t・1.54、AcCO≧0.15及びt<12
供給−流量[g/h]=21.3、t>12
t:蓄積CO(AcCO)が0.15モルに達した時点からの時間(h)
【0374】
発酵BAC0319及びBAC0324における供給は、以下の式に従って、蓄積したCOに基づいて開始された。
供給−流量[g/h]=0、AcCO<0.15
供給−流量[g/h]=2.0+t・1.08、AcCO≧0.15及びt<12
供給−流量[g/h]=15、t>12
t:蓄積CO(AcCO)が0.15モルに達した時点からの時間(h)
【0375】
pHは、12.5%(w/v)NH−水又は2Mリン酸を添加することによって7.0に制御された。
通気は1vvmに相当する3L/minであった。
温度は33℃であった。
発酵槽は、10cmの距離で配置された2個の8cmφRushton回転翼を備えた。
【0376】
収集
バイオマスは、16,000xgで10分間室温で遠心分離することによって除去された。上清をフィルター滅菌し、ろ液を精製及び応用試験に使用した。
【実施例6】
【0377】
酵素のアシルトランスフェラーゼ活性を測定するための「緩衝基質におけるトランスフェラーゼアッセイ」
脂質アシルトランスフェラーゼをアエロモナス サルモニシダから単離し、バチルス サチリス中で発現させた。この酵素は、コレステロールエステルの形成中にレシチンからコレステロールに脂肪酸を転移させるのに極めて効率的である。この酵素は、遊離脂肪酸の形成によって認められるいくらかの加水分解活性を有することも判明した。在来のホスホリパーゼ(EC3.1.1.4及びEC3.1.1.32)は、遊離脂肪酸及びリゾレシチンの形成中にレシチンを加水分解する能力を有し、これらの酵素ではトランスフェラーゼ反応は報告されていない。
【0378】
本発明者らは、本明細書において、酵素のトランスフェラーゼ活性と加水分解活性の両方を測定し、したがって本発明による脂質アシルトランスフェラーゼを特定することができるアッセイを詳述する。このアッセイは、レシチン及びコレステロールを含む基質を使用する。この研究においては、緩衝剤中に散在するホスファチジルコリン及びコレステロールを主体とする基質を使用した。反応生成物の定量は、基質から脂質を抽出し、その後その脂質成分をGLC分析することによって行われた。
【0379】
手順
材料
L−α−ホスファチジルコリン95%(植物)Avanti no.441601
コレステロール:Sigma cat.C 8503
パルミチン酸コレステリル、Sigma C 6072
ステアリン酸コレステリル、Sigma C 3549
HEPES緩衝剤 Sigmaカタログ番号H 3375
クロロホルム、分析グレード
【0380】
酵素
A.サルモニシダ由来の精製GCAT#178−9
【0381】
TLC分析。
TLC−プレートを加熱カップボード(110℃)中で1/2時間活性化させた。
泳動緩衝剤100mlを蓋付きのクロマトグラフィーチャンバーに注いだ。チャンバーを溶媒蒸気で飽和させるために、チャンバー壁をろ紙(Whatman 2)で覆った。
TLC−プレートを枠内に配置し、試料を底部から2cmのTLCプレート上に付けた。次いで、TLCプレートを、泳動緩衝剤を含むTLCチャンバー中に置いた。泳動緩衝剤がプレート底部から14cmに達したときに、TLCプレートを取り出し、蒸発板(fume board)中で乾燥させ、次いで110℃の加熱カップボード中に10分間置いた。
次いで、TLC−プレートを展開試薬に浸漬し、加熱カップボード中で110℃で15分間乾燥させた。
【0382】
泳動緩衝剤:
Nr.IV:クロロホルム:メタノール:HO(65:25:4)
Nr.I:P−エーテル:MTBE:酢酸(60:40:1)
【0383】
展開緩衝剤(バナデート−緩衝剤):
NaCO 32gをHO 300mlに加える(1M)
五酸化バナデート(vanadate pentoxide)(V)18.2gを添加し、軽く加熱しながら溶解させる。
その溶液を周囲(ambient)まで冷却する。
2.5M HSO 460ml(HO 460ml+HSO 61ml)を慎重に添加する。
水を1000mlまで添加する。
【0384】
GLC分析
WCOT溶融シリカカラム12.5m x 0.25mmID x 0.1μフィルム厚5%フェニル−メチル−シリコーン(Chrompack製CP Sil 8 CB)を備えたパーキンエルマーAutosystem 9000キャピラリーガスクロマトグラフ。
キャリアガス:ヘリウム。
インジェクター:PSSIコールドスプリット注入(初期温度50℃ 385℃に昇温)、体積1.0μl
検出器 FID:395℃
乾燥器プログラム: 1 2 3
乾燥器温度、℃ 90 280 350
等温、時間、min 1 0 10
昇温速度、℃/min 15 4
【0385】
試料調製:試料30mgを、内部標準ヘプタデカン0.5mg/mlを含むヘプタン:ピリジン2:1 9mlに溶解した。試料溶液300μlをクリンプバイアルに移し、MSTFA(N−メチル−N−トリメチルシリル−トリフルオロアセアミド(trifluoraceamid))300μlを添加し、60℃で20分間反応させた。
【0386】
計算:モノ−ジ−トリグリセリド及び遊離脂肪酸の応答係数を標準2(モノ−ジ−トリグリセリド)から求める。コレステロール、パルミチン酸コレステリル及びステアリン酸コレステリルの応答係数を純粋な基準材料から求めた。
【0387】
結果:ホスファチジルコリン及びコレステロールを基質としたトランスフェラーゼアッセイ
以下において、ホスファチジルコリン及びコレステロールを主体とする基質において、以下の手順に従ってトランスフェラーゼのトランスフェラーゼ活性を試験した。
【0388】
ホスファチジルコリン(>95%PC Avanti製品番号441601)450mg及びコレステロール50mgをクロロホルムに溶解し、減圧下で蒸発乾固させた。コレステロール/ホスファチジルコリン混合物300mgをWheatonガラスに移し、50mM HEPES緩衝剤pH7 15mlを添加した。撹拌しながら脂質を緩衝剤に分散させた。
マグネチックスターラで混合しながら基質を35℃に加熱し、酵素溶液0.25mlを添加した。これは、水分約95%の極めて高い水分環境である。
【0389】
試料2mlを反応時間0、5、10、15、25、40及び60分後に取り出した。すぐに4M HCl 25μlを添加して、遊離脂肪酸を酸性化し、酵素反応を停止させた。クロロホルム3.00mlを添加し、Whirley上で試料を30秒間激しく振とうさせた。試料を遠心分離し、クロロホルム相2mlを単離し、0.45μmフィルターを通して、風袋を量った10ml Dramガラスにろ過した。クロロホルムを窒素気流下で60℃で蒸発させ、試料を再度計量した。抽出された脂質をGLCによって分析した。
【0390】
GLC分析の結果を表1に示す。結果は、抽出された脂質に対して計算された%で表されている。時間の関数として形成される脂肪酸及びコレステロールエステルの量を図45に示す。図45から、酵素反応は、初期に高い加水分解活性とトランスフェラーゼ活性の両方が認められるので、時間の関数として線形ではないと結論付けることができる。約10分後、且つ約60分まで、反応は、時間の関数として、脂肪酸及びコレステロールエステル形成のほぼ線形応答を示す。したがって、この時間間隔において酵素反応を考察することにした。
【0391】
[表1]

【0392】
反応混合物中の脂質量、及び添加酵素量についての情報から、μmol/ml酵素で表される脂肪酸及びコレステロールエステルの形成を計算することができた(表2及び図46)。
【0393】
[表2]

【0394】
表2の結果、及び図46の曲線の傾斜から、μmol/min/ml酵素で表される脂肪酸及びコレステロールエステルの量を時間の関数として計算することができた。
【0395】
加水分解活性及びトランスフェラーゼ活性の計算を表3に示す。相対トランスフェラーゼ活性は、本明細書に記載する%アシルトランスフェラーゼ活性を求めるプロトコルを用いて求められた。
【0396】
[表3]

【0397】
トランスフェラーゼ活性による他の酵素のスクリーニング
上記方法を使用して、様々な脂肪分解酵素をトランスフェラーゼ活性及び加水分解活性についてスクリーニングした。表4に示すように酵素を試験した。
【0398】
[表4]

【0399】
HEPES緩衝剤pH7.0 50mM中に散在するホスファチジルコリン/コレステロール300mgを含む基質を撹拌しながら35℃に加熱した。酵素溶液を添加し、試料を撹拌しながら35℃に維持した。試料を規則的な間隔で取り出し、クロロホルムで抽出した。単離した脂質をGLCによって分析した。結果を表5に示す。
【0400】
[表5]

【0401】
GLC分析から、脂質アシルトランスフェラーゼ(178−9)のみがかなりの量のコレステロールエステル及び脂肪酸を生成したことが観測された。フザリウム オキシスポラム由来のホスホリパーゼでも遊離脂肪酸が着実に増加したが、初期に少量のコレステロールエステルのみが形成され、経時的なコレステロールエステルの増加は認められなかった。
【0402】
脂質基質量及びGLC分析についての情報に基づいて、反応時間10〜60分の結果から相対トランスフェラーゼ活性及び相対加水分解活性を計算することができた。トランスフェラーゼ178−9及びフザリウム オキシスポラムリパーゼの結果を表6に示す。試験したその他の酵素は活性を示さなかった。
【0403】
[表6]

【0404】
表6に示した結果によれば、脂質アシルトランスフェラーゼ(試料178−9)由来のかなりのトランスフェラーゼ活性が確認される。相対トランスフェラーゼ活性が表3に示した実験に良く一致していることも認められる。
【0405】
しかし、フザリウム オキシスポラムホスホリパーゼ由来のトランスフェラーゼ活性は極めて低かった。このトランスフェラーゼレベルは、あまりにも低く、分析の不確実性の範囲内である。予想したとおり、フザリウム オキシスポラムホスホリパーゼは、かなりの加水分解活性を有する。
【0406】
結論。
精製ホスファチジルコリン及びコレステロールを主体とする人工基質を基質として使用して、アエロモナス サルモニシダ由来のトランスフェラーゼの活性を測定した。反応時間10分〜60分において、アッセイは、時間の関数として遊離脂肪酸及びコレステロールエステルをほぼ線形で形成した。反応時間10〜60分の活性に基づいて、加水分解活性及びトランスフェラーゼ活性を計算した。
【0407】
緩衝剤中のホスファチジルコリン/コレステロールの人工基質における、アエロモナス サルモニシダ由来の脂質アシルトランスフェラーゼ(この場合はGCAT)のアッセイ結果に基づいて、この酵素が極めて高含水量の系においても極めて良好なトランスフェラーゼ活性を有すると結論される。
緩衝剤中のホスファチジルコリン/コレステロールアッセイを使用して、酵素のトランスフェラーゼ活性及び加水分解活性を測定することができる。緩衝剤中のホスファチジルコリン/コレステロールはある制限時間内でのみ線形である。
【実施例7】
【0408】
アエロモナス サルモニシダ由来の脂質アシルトランスフェラーゼの固定化
A.サルモニシダ由来の脂質アシルトランスフェラーゼ(この場合はGCAT)をアセトン沈殿によってセライト535 535(Fluka製)上に固定した。20mM TEA緩衝剤pH7中の酵素溶液10mlをセライト535 535(Fluka製)0.1グラムとともに室温で2時間ゆっくり撹拌した。
連続撹拌しながら冷アセトン50mlを添加した。
5000gで1分間遠心分離することによって沈殿物を単離した。
沈殿物を冷アセトン20mlで2回洗浄した。
セライトを周囲温度で約1時間試みた。
【0409】
この酵素は、高含水量(6〜89%)水環境の環境において高い活性を有することも判明した。したがって、本発明に使用されるこのトランスフェラーゼ、及び他のトランスフェラーゼは、かなりの含水量の固定化酵素用途において使用することもできる。これによって、トランスフェラーゼを用いた脂質の生物変換において、現行の固定化リパーゼによって使用される溶媒の交換が可能になる。
【実施例8】
【0410】
アエロモナス ヒドロフィラ由来の脂質アシルトランスフェラーゼの変異体(Ahyd2)(配列番号36(図47参照))
突然変異は、Stratagene、La Jolla、CA 92037、USA製QuikChange(登録商標)Multi−Site Directed Mutagenesisキットを用いて、Stratageneによって提供される指示に従って導入された。
【0411】
Tyr256における変異は、リン脂質に対する活性を増大させた。
【0412】
Tyr256及びTyr260における変異は、ガラクト脂質に対する活性を増大させた。
【0413】
Tyr265における変異は、アシル供与体としてガラクト脂質とともにトランスフェラーゼ活性を増大させる。
【0414】
これらの数値は、以下の配列、すなわち、そのアミノ酸配列が図47の配列番号36として示されるアエロモナス ヒドロフィラ由来の酵素(下線を引いたアミノ酸は、キシラナーゼシグナルペプチドである)上の位置を示す。ヌクレオチド配列を図72の配列番号48として示す。
【実施例9】
【0415】
「低水分環境におけるアッセイ」
低水分環境における脂肪分解酵素のトランスフェラーゼ反応。
手順
材料。
コレステロールSigma cat.C 8503
L−α−ホスファチジルコリン95%(植物)Avanti #441601
大豆油、Aarhus United、DK。
クロロホルム、分析グレード
【0416】
酵素。
#179、A.サルモニシダ由来のGCAT
#2427 フザリウム オキシスポラム由来のホスホリパーゼA1。Novozymes、Denmark製LIPOPAN(登録商標)F
#1991 すい臓からのホスホリパーゼA2、Biocatalysts、UK製LIPOMOD 22L
#2373、カンジダ アントアークチカ(Candida Antarctica)リパーゼ、Novozymes Denmark製Novozyme 525L。
【0417】
酵素アッセイ
レシチン13.1%及びコレステロール6.6%を、撹拌しながら60℃に加熱することによって大豆油に溶解した。
基質を20ml Wheatonガラスに計量し、46℃に加熱した。
水と酵素溶液を添加し、ストップウォッチをスタートさせる。
規則的な間隔で試料50mgを10ml Dramガラスに移し、凍結させた。
単離された脂質をGLCによって分析した。
【0418】
GLC分析
GLC分析のプロトコルについては、実施例6参照。
【0419】
結果
実験を表8に示すように組み立てた。
レシチン13.1%及びコレステロール6.6%を含む大豆油を主体とする基質を46℃に加熱した。酵素溶液を添加し、ストップウォッチをスタートさせた。
反応時間30、60及び120分後に、GLC分析用試料を取り出した。
【0420】
[表8]

【0421】
GLC分析の結果を表9に示す。結果は、試料全組成に対する百分率で表わしてある。このGLCの結果に基づいて、酵素が添加されていない対照試料と比較して、酵素反応によって製造された脂肪酸及びコレステロールエステルの量を計算することができた。これらの実験条件下では、全酵素活性は、遊離脂肪酸形成として測定される加水分解活性として推定され、トランスフェラーゼ活性はコレステロールエステル形成として推定された。これらの結果、並びに脂肪酸及びコレステロールエステルの分子量についての情報から、表10に示すように相対モル加水分解活性及び相対モルトランスフェラーゼ活性を計算することができた。
【0422】
[表9]

【0423】
[表10]

【0424】
結論
これらの実験においては、脂肪酸量が増加したので、すべての試験酵素が加水分解活性を示すことが認められた。しかし、トランスフェラーゼ活性を示した唯一の酵素はA.サルモニシダ由来のGCATであった。したがって、水6%を含むレシチン及びコレステロールの油系においては、フザリウム オキシスポラム由来のホスホリパーゼA1、すい臓からのホスホリパーゼA2、及びカンジダ アントアークチカ由来のリパーゼのみが加水分解活性を示したと結論される。
【実施例10】
【0425】
本発明による固定化脂質アシルトランスフェラーゼを用いた炭水化物エステルの生成
スクロースエステル及びグルコースエステルのような脂肪酸の炭水化物エステルは、従来、高温における脂肪酸又は脂肪酸石けんと炭水化物の反応によって生成されている(Journal of the Americal Oil Chemists' Society (1978) 55; 4; 398-401)しかし、この手順は、副反応及び着色副生物が形成される欠点がある。
【0426】
本発明においては、脂肪酸の炭水化物エステルは、レシチンを脂肪酸供与体として、グルコースのような炭水化物を受容体分子として用いたトランスフェラーゼ反応によって生成される。
【0427】
この反応は、脂質アシルトランスフェラーゼが固体担体上に固定された流通反応装置中で実施される。
【0428】
手順。
グルコース100グラムを撹拌しながら水1000mlに溶解する。次いで、ホスファチジルコリン200グラムを撹拌しながら水相に分散させ、40℃に加熱する。
pHをpH6.5に調節する。
流通反応装置に、固体担体上に固定されたA.サルモニシダ由来の脂質アシルトランスフェラーゼ100gを充填する。
流通反応装置を40℃の加熱キャビネット中に置く。
反応混合物をカラムに2ml/minでポンプ注入する。
反応生成物を収集する。
反応生成物中の水を薄膜真空蒸発によって除去し、脂質を単離する。
グルコースエステルを溶媒分画によって他の脂質から分離する。
【0429】
炭水化物エステルは、食品及び非食品産業において効率的乳化剤など多数の用途に使用することができる。
【実施例11】
【0430】
本発明による脂質アシルトランスフェラーゼを用いたタンパク質エステル生成
本発明においては、アミノ酸、ペプチド又はタンパク質の脂肪酸縮合物がトランスフェラーゼ反応によって生成される。この反応においては、ホスファチジルコリンは、エステル化に利用可能な遊離ヒドロキシル基を有する(チロシン、セリン、トレオニンなどの)アミノ酸の遊離ヒドロキシル基に脂肪酸を転移する供与体として使用される。
【0431】
手順1。
1−チロシン(又はセリン若しくはトレオニン)50グラムを撹拌しながら水1000mlに溶解する。次いで、ホスファチジルコリン200グラムを撹拌しながら水相に分散させ、40℃に加熱する。
NaOH又はHClを用いてpHをpH7に調節し、このpHに維持する。
A.サルモニシダ由来の脂質アシルトランスフェラーゼ50mlを添加し、撹拌しながら40℃で反応を続ける。
試料を規則的な間隔で取り出し、TLC及びHPLCによって分析する。
反応時間20時間後に、反応は平衡に達し、停止される。
チロシン脂肪酸縮合物、レシチン及びリゾレシチンを、標準方法に従い遠心分離によって反応媒体から単離する("Centrifiges, Filtering" in Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry、例えば、(2002) by Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KgaA参照)。
【0432】
チロシン脂肪酸縮合物を疎水性相互作用カラムクロマトグラフィーによってさらに精製し、チロシン脂肪酸縮合物を含む画分を単離し、溶媒を蒸発によって除去する。('Basic Principles of Chromatography' in Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry (2002) by Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA参照)
【0433】
手順2。
以下において、ホスファチジルコリン及び1−チロシンを主体とする基質において、以下の手順に従って脂質アシルトランスフェラーゼのトランスフェラーゼ活性を試験する。
【0434】
ホスファチジルコリン(>95% PC Avanti製品番号441601)450mg及び1−チロシン50mgをWheatonガラスに計量し、50mM HEPES緩衝剤pH7 15mlを添加する。撹拌しながら脂質を緩衝剤に分散させる。
【0435】
マグネチックスターラで混合しながら基質を35℃に加熱し、トランスフェラーゼ10PLU/ml 0.25mlを添加する。
【0436】
試料2mlを反応時間0、5、10、15、25、40及び60分後に取り出す。
【0437】
すぐに4M HCl 25μlを添加して遊離脂肪酸を酸性化し、酵素反応を停止させる。クロロホルム3.00mlを添加し、Whirley上で試料を30秒間激しく振とうさせる。試料を遠心分離し、クロロホルム相2mlを単離し、0.45μmフィルターを通して、風袋を計量した10ml Dramガラスにろ過する。
【0438】
クロロホルムを窒素蒸気下で60℃で蒸発させ、試料を再度計量する。抽出された脂質をTLCによって分析する。
【実施例12】
【0439】
本発明による脂質アシルトランスフェラーゼを用いたヒドロキシ酸エステル(特に乳酸エステル)生成
脂肪酸のヒドロキシエステルは、従来、無機塩又は金属イオンを触媒として用いた、高温における脂肪酸とヒドロキシ酸の反応によって生成される(例えば、Bailey's Industrial Oil and Fat Products, Fifth edition, Volume 3. Edible Oil and Fat Products: Products and Application Technology, page 502-511参照)。しかし、この手順は、副反応及び着色副生物が形成される欠点がある。
【0440】
本発明においては、脂肪酸のヒドロキシ酸エステルは、レシチンを脂肪酸供与体として、ヒドロキシ酸(特に乳酸)を受容体分子として用いたトランスフェラーゼ反応によって生成される。
【0441】
手順。
乳酸(lactic)50グラムを撹拌しながら水1000mlに溶解する。次いで、ホスファチジルコリン200グラムを撹拌しながら水相に分散させ、40℃に加熱する。
【0442】
NaOH又はHClを用いてpHをpH6.5に調節し、このpHに維持する。
【0443】
A.サルモニシダ由来の脂質アシルトランスフェラーゼ50mlを添加し、撹拌しながら40℃で反応を続ける。
【0444】
試料を規則的な間隔で取り出し、TLC及びGLCによって分析する。
【0445】
反応時間20時間後に、反応は平衡に達し、停止される。
【0446】
乳酸エステル、レシチン及びリゾレシチンを、標準方法に従い遠心分離によって反応媒体から単離する("Centrifiges, Filtering" in Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry、例えば、(2002) by Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KgaA参照)。
【0447】
乳酸エステルを分子蒸留によってさらに精製して、脂肪酸の乳酸エステルが高純度で得られる。
【実施例13】
【0448】
本発明による脂質アシルトランスフェラーゼを用いたクエン酸エステル生成
基質としてホスファチジルコリン及びクエン酸を使用するトランスフェラーゼアッセイ
以下において、ホスファチジルコリン及びクエン酸を主体とする基質において、以下の手順に従ってA.サルモニシダ由来の脂質アシルトランスフェラーゼのトランスフェラーゼ活性を試験する。
【0449】
ホスファチジルコリン(>95% PC Avanti製品番号441601)450mg及びクエン酸50mgをWheatonガラスに計量し、50mM HEPES緩衝剤pH7 15mlを添加する。撹拌しながら脂質を緩衝剤に分散させる。
【0450】
マグネチックスターラで混合しながら基質を35℃に加熱し、A.サルモニシダ由来の脂質アシルトランスフェラーゼ10PLU/ml 0.25mlを添加する。
【0451】
試料2mlを反応時間0、5、10、15、25、40及び60分後に取り出す。
【0452】
すぐに4M HCl 25μlを添加して遊離脂肪酸を酸性化し、酵素反応を停止させる。クロロホルム3.00mlを添加し、Whirley上で試料を30秒間激しく振とうする。試料を遠心分離し、クロロホルム相2mlを単離し、0.45μmフィルターを通して、風袋を計量した10ml Dramガラスにろ過する。
【0453】
クロロホルムを窒素蒸気下で60℃で蒸発させ、試料を再度計量する。抽出された脂質をTLCによって分析する。
【0454】
上記明細書に述べたすべての出版物を参照により本明細書に援用する。本発明に記載の方法及びシステムの様々な改変形態及び変更形態が、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく当業者には明らかである。本発明を具体的な好ましい実施形態と関連して説明したが、特許請求する本発明をそのような具体的実施形態に不当に限定すべきでないことを理解すべきである。実際、生化学及びバイオテクノロジー又は関連分野の当業者に明白である本発明の記載された実施形態の様々な変形形態が以下の特許請求の範囲内にあるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0455】
【図1】データベースバージョン6からのpfam00657コンセンサス配列(配列番号1)を示す図である。
【図2】生物アエロモナス ヒドロフィラ(P10480;GI:121051)から得られるアミノ酸配列(配列番号2)を示す図である。
【図3】生物アエロモナス サルモニシダ(AAG098404;GI:9964017)から得られるアミノ酸配列(配列番号3)を示す図である。
【図4】生物ストレプトマイセス コエリコラーA3(2)から得られるアミノ酸配列(配列番号4)(Genbankアクセッション番号NP_631558)を示す図である。
【図5】生物ストレプトマイセス コエリコラーA3(2)から得られるアミノ酸配列(配列番号5)(Genbankアクセッション番号CAC42140)を示す図である。
【図6】生物サッカロミセス セレビシエから得られるアミノ酸配列(配列番号6)(Genbankアクセッション番号P41734)を示す図である。
【図7】pfam00657コンセンサス配列に対する選択配列のアラインメントを示す図である。
【図8】アミノ酸配列同一性が93%である配列番号3と配列番号2の対ごとのアラインメントを示す図である。下線を引いたのはシグナル配列である。+は相違を示す。活性部位セリン16を含むGDSXモチーフ、及び活性部位アスパラギン酸116及びヒスチジン291を強調表示する(陰影付きの領域を参照)。アミノ酸の後ろの番号は、シグナル配列を引いたものである。
【図9】生物アエロモナス ヒドロフィラから得られる、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列(配列番号7)を示す図である。
【図10】生物アエロモナス サルモニシダから得られる、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列(配列番号8)を示す図である。
【図11】生物ストレプトマイセス コエリコラーA3(2)から得られる、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列(配列番号9)(Genbankアクセッション番号Nc_003888.1:8327480..8328367)を示す図である。
【図12】生物ストレプトマイセス コエリコラーA3(2)から得られる、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列(配列番号10)(Genbankアクセッション番号AL939131.1:265480..266367)を示す図である。
【図13】生物サッカロミセス セレビシエから得られる、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列(配列番号11)(Genbankアクセッション番号Z75034)を示す図である。
【図14】生物ラルストニアから得られるアミノ酸配列(配列番号12)(Genbankアクセッション番号AL646052)を示す図である。
【図15】生物ラルストニアから得られる、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列(配列番号13)を示す図である。
【図16】配列番号20.Scoe1 NCBIタンパク質アクセッションコードCAB39707.1 GI:4539178の保存された仮定上のタンパク質[ストレプトマイセス コエリコラーA3(2)]を示す図である。
【図17】NCBIタンパク質アクセッションコードCAB39707.1 GI:4539178の保存された仮定上のタンパク質をコードする配列番号21のヌクレオチド配列[ストレプトマイセス コエリコラーA3(2)]を示す図である。
【図18】配列番号22のアミノ酸.Scoe2 NCBIタンパク質アクセッションコードCAC01477.1 GI:9716139の保存された仮定上のタンパク質[ストレプトマイセス コエリコラーA3(2)]を示す図である。
【図19】Scoe2 NCBIタンパク質アクセッションコードCAC01477.1 GI:9716139の保存された仮定上のタンパク質をコードする配列番号23のヌクレオチド配列[ストレプトマイセス コエリコラーA3(2)]を示す図である。
【図20】アミノ酸配列(配列番号24)Scoe3 NCBIタンパク質アクセッションコードCAB88833.1 GI:7635996の推定分泌タンパク質[ストレプトマイセス コエリコラーA3(2)]を示す図である。
【図21】Scoe3 NCBIタンパク質アクセッションコードCAB88833.1 GI:7635996の推定分泌タンパク質をコードする配列番号25のヌクレオチド配列[ストレプトマイセス コエリコラーA3(2)]を示す図である。
【図22】アミノ酸配列(配列番号26)Scoe4 NCBIタンパク質アクセッションコードCAB89450.1 GI:7672261の推定分泌タンパク質[ストレプトマイセス コエリコラーA3(2)]を示す図である。
【図23】Scoe4 NCBIタンパク質アクセッションコードCAB89450.1 GI:7672261の推定分泌タンパク質をコードする配列番号27のヌクレオチド配列[ストレプトマイセス コエリコラーA3(2)]を示す図である。
【図24】アミノ酸配列(配列番号28)Scoe5 NCBIタンパク質アクセッションコードCAB62724.1 GI:6562793の推定リポタンパク質[ストレプトマイセス コエリコラーA3(2)]を示す図である。
【図25】Scoe5 NCBIタンパク質アクセッションコードCAB62724.1 GI:6562793の推定リポタンパク質をコードする配列番号29のヌクレオチド配列[ストレプトマイセス コエリコラーA3(2)]を示す図である。
【図26】アミノ酸配列(配列番号30)Srim1 NCBIタンパク質アクセッションコードAAK84028.1 GI:15082088 GDSL−リパーゼ[ストレプトマイセス リモサス]を示す図である。
【図27】Srim1 NCBIタンパク質アクセッションコードAAK84028.1 GI:15082088 GDSL−リパーゼをコードする配列番号31のヌクレオチド配列[ストレプトマイセス リモサス]を示す図である。
【図28】アエロモナス ヒドロフィラ(ATCC #7965)由来のアミノ酸配列(配列番号32)脂質アシルトランスフェラーゼを示す図である。
【図29】アエロモナス ヒドロフィラ(ATCC #7965)由来の脂質アシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列(配列番号33)を示す図である。
【図30】アエロモナス サルモニシダ亜種サルモニシダ(Salmonicida)(ATCC#14174)由来の脂質アシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列(配列番号34)を示す図である。
【図31】アエロモナス サルモニシダ亜種サルモニシダ(ATCC#14174)由来の脂質アシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列(配列番号35)を示す図である。
【図32】アエロモナス遺伝子の相同体は、National Center for Biotechnology Information、NIH、MD、USAの基本的な局所的アラインメント検索ツールサービス、及び完全ゲノムデータベースを用いて特定できることを示す図である。GDSXモチーフがデータベース検索に使用され、脂肪分解活性を有する酵素を潜在的にコードするいくつかの配列/遺伝子が特定された。遺伝子は、ストレプトマイセス属、ザントモナス属及びラルストニア属から特定された。以下の例として、ラルストニア ソラナセアルムがアエロモナス サルモニシダ(satA)遺伝子と並べられた。対ごとのアラインメントによって、同一性は23%であることが判明した。活性部位セリンはアミノ末端に存在し、触媒作用性残基ヒスチジン及びアスパラギン酸を特定することができる。
【図33】Pfam00657.11[ファミリー00657、データベースバージョン11]コンセンサス配列(以後、Pfamコンセンサスと呼ぶ)及び様々な配列とPfamコンセンサス配列のアラインメントを示す図である。各矢印は活性部位残基を示し、下線を引いたボックスは[Upton C and Buckley JT (1995) Trends Biochem Sci 20; 179-179]によって示された相同性ボックスのうちの3個を示す。Pfamコンセンサス中の大文字は、多数のファミリーメンバーにおいて保存されている残基を示す。−記号は、Pfamコンセンサスの隠れマルコフモデルによって残基が存在すると予想されたが存在せず、ギャップが挿入される位置を示す。.記号は、Pfamコンセンサス中に対応する残基がない残基を示す。これらの配列は、図16、18、20、22、24、26、28及び30に記載されたアミノ酸配列である。
【図34】Pfam00657.11[ファミリー00657、データベースバージョン11]コンセンサス配列(以後、Pfamコンセンサスと呼ぶ)及び様々な配列とPfamコンセンサス配列のアラインメントを示す図である。各矢印は活性部位残基を示し、下線を引いたボックスは[Upton C and Buckley JT (1995) Trends Biochem Sci 20; 179-179]によって示された相同性ボックスのうちの3個を示す。Pfamコンセンサス中の大文字は、多数のファミリーメンバーにおいて保存されている残基を示す。−記号は、Pfamコンセンサスの隠れマルコフモデルによって残基が存在すると予想されたが存在せず、ギャップが挿入される位置を示す。.記号は、Pfamコンセンサス中に対応する残基がない残基を示す。これらの配列は、図2、16、18、20、26、28及び30に記載されたアミノ酸配列である。これらのタンパク質すべては、脂質基質に対して活性であることが判明した。
【図35】C末端Hisタグ付きアエロモナス サルモニシダ脂質アシルトランスフェラーゼ遺伝子を含む発現ベクターpet12−AsalGCAT=pSMを示す図である。
【図36】NEFAキットアッセイにおいて細胞抽出物を試験した結果を示す図である。組換えA.サルモニシダ脂質アシルトランスフェラーゼのレシチンに対する活性を示す。各ウェルは、左から右に、正の対照、負の対照(すなわち、空のプラスミドからの抽出物)、並びにIPTG誘導から0、1、2及び3時間培養後に収集された試料である。
【図37】発現ベクターpet12−AsalGCAT=pSMを収容するBL21(DE3)pLysSの増殖最適化を示す図である。30℃での培養によって、レシチンに対して高い活性を有する酵素が産生されることが示されている。細胞抽出物のホスホリパーゼ活性を、NEFAキットアッセイによって試験した。各ウェルは、左から右に、正の対照、負の対照、20℃、30℃である。
【図38】基質レシチンとともにインキュベートされた、活性脂質アシルトランスフェラーゼを発現するBL21(DE3)pLysSから得られる粗製細胞抽出物を示す図である。反応混合物は、薄層クロマトグラフィーによって分析され、分解生成物が存在することが示された。レーン:1.酵素なし;2.+A. sal −10ul 37℃;3.+A. sal −20ul 37℃;4.+A. sal −10ul 24℃;5.+A. sal −20u 24℃。
【図39】アエロモナス サルモニシダアシルトランスフェラーゼの部分精製を示す図である。ホスホリパーゼ活性が精製Hisタグタンパク質と関連することが示されている。SE=超音波処理抽出物、His=Qiagen製Ni−NTAスピンキットを用いて精製。
【図40】C末端Hisタグ付きアエロモナス ヒドロフィラグリセロ脂質アシルトランスフェラーゼ(GCAT)遺伝子を含む発現ベクターpet12−A.h.GCAT=pSMaを使用して大腸菌系統BL21(DE3)pLysSを形質転換した図である。
【図41】組換えアエロモナス ヒドロフィラGCAT酵素を含む粗製抽出物(5&10ul)のレシチンに対する活性をNon−Esterified Fatty Acid(NEFA)キット(Roche、Switzerland)を用いて試験した図である。リン脂質レシチンに対して活性な酵素が存在することを示す。
【図42】発現ベクターpet12−AsalGCAT=pSMを収容するBL21(DE3)pLysSの増殖最適化を示す図である。30℃での培養によって、レシチンに対して高い活性を有する酵素が産生されることが示されている。細胞抽出物のホスホリパーゼ活性を、NEFAキットアッセイによって試験した。
【図43】アエロモナス ヒドロフィラ&A.サルモニシダアシルトランスフェラーゼの部分精製を示す図である。ホスホリパーゼ活性が精製Hisタグタンパク質と関連することが示されている。SE=超音波処理抽出物、His=Qiagen製Ni−NTAスピンキットを用いて精製)。
【図44】レシチンとDGDGの両方に対して活性な分泌酵素が産生されたことを示す、バチルス サチリス163におけるアエロモナス遺伝子の発現を示す図である。pUB−AH=A.ヒドロフィラ遺伝子を含む構築体、及びpUB−AS、A.サルモニシダ遺伝子を有する構築体、培養ろ液は、基質とともに60分間インキュベートされた。
【図45】脂肪酸及びコレステロールエステルを時間の関数として示すグラフである。グラフは、緩衝剤中のレシチン及びコレステロールを基質として用いた食料品中のアシルトランスフェラーゼ活性を測定するためのアッセイにおいて、GLC分析で得られた結果を示す。
【図46】脂肪酸及びコレステロールエステルを時間の関数として示すグラフである。グラフは、緩衝剤中のレシチン及びコレステロールを基質として用いた食料品中のアシルトランスフェラーゼ活性を測定するためのアッセイにおいて、GLC分析で得られた結果を示す。
【図47】実施例17においてアエロモナス ヒドロフィラ脂質アシルトランスフェラーゼ遺伝子の突然変異誘発に使用された融合構築体のアミノ酸配列(配列番号36)を示す図である。下線を引いたアミノ酸は、キシラナーゼシグナルペプチドである。
【図48】キシラナーゼシグナルペプチドを含むアエロモナス ヒドロフィラ由来の酵素をコードするヌクレオチド配列(配列番号45)を示す図である。
【図49】アミノ酸のタンパク質−脂肪酸縮合物の構造を示す図である。
【図50】エステル化に利用可能な遊離ヒドロキシル基を有するアミノ酸、例えばチロシン又はセリンの遊離ヒドロキシル基に転移するときのホスファチジルコリン由来の脂肪酸との反応を模式的に示す図である。
【図51】脂質アシルトランスフェラーゼによって触媒されたときのDGDGとグルコースの反応を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭水化物エステル、タンパク質エステル、タンパク質サブユニットエステル、ヒドロキシ酸エステルの1種類若しくは複数を生成する方法であって、リン脂質、リゾリン脂質、トリアシルグリセリド、ジグリセリド、糖脂質又はリゾ糖脂質からなる群の1種類若しくは複数から選択される脂質基質であるアシル供与体と、炭水化物、タンパク質、タンパク質サブユニット又はヒドロキシ酸からなる群の1種類若しくは複数から選択されるアシル受容体と、水とを混合して、5〜98%の水を含む高水分環境を作るステップと、脂質アシルトランスフェラーゼアルコール分解又はエステル転移の一方若しくは両方の反応を触媒するように前記混合物を前記脂質アシルトランスフェラーゼと接触させるステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記脂質アシルトランスフェラーゼが固定化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、炭水化物エステル、タンパク質エステル、タンパク質サブユニットエステル、ヒドロキシ酸エステルを精製するステップを含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記脂質アシルトランスフェラーゼが、アシルトランスフェラーゼ活性を有し、アミノ酸配列モチーフGDSX(式中、Xはアミノ酸残基L、A、V、I、F、Y、H、Q、T、N、M又はSの1種類又は複数である)を含む酵素であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記脂質アシルトランスフェラーゼが、H−309を含む、或いは配列番号2又は配列番号32で示されるアエロモナスヒドロフィラ脂肪分解酵素のアミノ酸配列中のHis−309に対応する位置にヒスチジン残基を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記脂質アシルトランスフェラーゼが、以下の属、すなわち、アエロモナス、ストレプトマイセス、サッカロミセス、ラクトコッカス、マイコバクテリウム、ストレプトコッカス、ラクトバチルス、デサルフィトバクテリウム、バチルス、カンピロバクター、ビブリオナシエ、キシレラ、スルフォロブス、アスペルギルス、シゾサッカロミセス、リステリア、ナイセリア、メソルヒゾビウム、ラルストニア、ザントモナス及びカンジダの1種類若しくは複数に由来する生物から得ることができる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記脂質アシルトランスフェラーゼが、以下のアミノ酸配列、すなわち、(i)配列番号2で示されるアミノ酸配列;(ii)配列番号3で示されるアミノ酸配列;(iii)配列番号4で示されるアミノ酸配列;(iv)配列番号5で示されるアミノ酸配列;(v)配列番号6で示されるアミノ酸配列;(vi)配列番号12で示されるアミノ酸配列、(vii)配列番号20で示されるアミノ酸配列、(viii)配列番号22で示されるアミノ酸配列、(ix)配列番号24で示されるアミノ酸配列、(x)配列番号26で示されるアミノ酸配列、(xi)配列番号28で示されるアミノ酸配列、(xii)配列番号30で示されるアミノ酸配列、(xiii)配列番号32で示されるアミノ酸配列、(xiv)配列番号34で示されるアミノ酸配列、又は配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号12、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32若しくは配列番号34で示される配列のいずれか1つと75%以上の同一性を有するアミノ酸配列、の1つ又は複数を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
リン脂質、リゾリン脂質、トリアシルグリセリド、ジグリセリド、糖脂質又はリゾ糖脂質からなる群の1種類又は複数から選択される脂質基質であるアシル供与体と、炭水化物、タンパク質、タンパク質サブユニット又はヒドロキシ酸からなる群の1種類又は複数から選択されるアシル受容体と、水との混合物であって、5〜98%の水を含む混合物において、アルコール分解若しくはエステル転移の一方又は両方の触媒作用によって、炭水化物エステル、タンパク質エステル、タンパク質サブユニットエステル又はヒドロキシ酸エステルの1種類又は複数を生成するための脂質アシルトランスフェラーゼの使用。
【請求項9】
前記脂質アシルトランスフェラーゼが固定化されている、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記炭水化物エステル、タンパク質エステル、タンパク質サブユニットエステル又はヒドロキシ酸エステルが精製される、請求項8に記載の使用。
【請求項11】
アシルトランスフェラーゼ活性を有し、アミノ酸配列モチーフGDSX(式中、Xはアミノ酸残基L、A、V、I、F、Y、H、Q、T、N、M又はSの1種類又は複数である)を含む酵素として前記脂質アシルトランスフェラーゼが特徴づけられる、請求項8から10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記脂質アシルトランスフェラーゼが、H−309を含む、或いは配列番号2又は配列番号32で示されるアエロモナスヒドロフィラ脂肪分解酵素のアミノ酸配列中のHis−309に対応する位置にヒスチジン残基を含む、請求項8から11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記脂質アシルトランスフェラーゼが、以下の属、すなわち、アエロモナス、ストレプトマイセス、サッカロミセス、ラクトコッカス、マイコバクテリウム、ストレプトコッカス、ラクトバチルス、デサルフィトバクテリウム、バチルス、カンピロバクター、ビブリオナシエ、キシレラ、スルフォロブス、アスペルギルス、シゾサッカロミセス、リステリア、ナイセリア、メソルヒゾビウム、ラルストニア、ザントモナス及びカンジダの1種類若しくは複数に由来する生物から得ることができる、請求項8から12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
前記脂質アシルトランスフェラーゼが、以下のアミノ酸配列、すなわち、(i)配列番号2で示されるアミノ酸配列;(ii)配列番号3で示されるアミノ酸配列;(iii)配列番号4で示されるアミノ酸配列;(iv)配列番号5で示されるアミノ酸配列;(v)配列番号6で示されるアミノ酸配列;(vi)配列番号12で示されるアミノ酸配列、(vii)配列番号20で示されるアミノ酸配列、(viii)配列番号22で示されるアミノ酸配列、(ix)配列番号24で示されるアミノ酸配列、(x)配列番号26で示されるアミノ酸配列、(xi)配列番号28で示されるアミノ酸配列、(xii)配列番号30で示されるアミノ酸配列、(xiii)配列番号32で示されるアミノ酸配列、(xiv)配列番号34で示されるアミノ酸配列、又は配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号12、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32若しくは配列番号34で示される配列のいずれか1つと75%以上の同一性を有するアミノ酸配列、の1つ又は複数を含む、請求項8から13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法によって生成される炭水化物エステル。
【請求項16】
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法によって生成されるタンパク質エステル。
【請求項17】
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法によって生成されるタンパク質サブユニットエステル。
【請求項18】
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法によって生成されるヒドロキシ酸エステル。
【請求項19】
固定化脂質アシルトランスフェラーゼ酵素。
【請求項20】
アシルトランスフェラーゼ活性を有し、アミノ酸配列モチーフGDSX(式中、Xはアミノ酸残基L、A、V、I、F、Y、H、Q、T、N、M又はSの1種類又は複数である)を含む酵素として前記脂質アシルトランスフェラーゼが特徴づけられる、請求項19に記載の固定化脂質アシルトランスフェラーゼ。
【請求項21】
前記脂質アシルトランスフェラーゼが、H−309を含むか、或いは配列番号2又は配列番号32で示されるアエロモナスヒドロフィラ脂肪分解酵素のアミノ酸配列中のHis−309に対応する位置にヒスチジン残基を含む、請求項19又は請求項20に記載の固定化脂質アシルトランスフェラーゼ。
【請求項22】
前記脂質アシルトランスフェラーゼが、以下の属、すなわち、アエロモナス、ストレプトマイセス、サッカロミセス、ラクトコッカス、マイコバクテリウム、ストレプトコッカス、ラクトバチルス、デサルフィトバクテリウム、バチルス、カンピロバクター、ビブリオナシエ、キシレラ、スルフォロブス、アスペルギルス、シゾサッカロミセス、リステリア、ナイセリア、メソルヒゾビウム、ラルストニア、ザントモナス及びカンジダの1種類若しくは複数に由来する生物から得ることができる、請求項19から21のいずれか一項に記載の固定化脂質アシルトランスフェラーゼ。
【請求項23】
前記脂質アシルトランスフェラーゼが、以下のアミノ酸配列、すなわち、(i)配列番号2で示されるアミノ酸配列;(ii)配列番号3で示されるアミノ酸配列;(iii)配列番号4で示されるアミノ酸配列;(iv)配列番号5で示されるアミノ酸配列;(v)配列番号6で示されるアミノ酸配列;(vi)配列番号12で示されるアミノ酸配列、(vii)配列番号20で示されるアミノ酸配列、(viii)配列番号22で示されるアミノ酸配列、(ix)配列番号24で示されるアミノ酸配列、(x)配列番号26で示されるアミノ酸配列、(xi)配列番号28で示されるアミノ酸配列、(xii)配列番号30で示されるアミノ酸配列、(xiii)配列番号32で示されるアミノ酸配列、(xiv)配列番号34で示されるアミノ酸配列、又は配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号12、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32若しくは配列番号34で示される配列のいずれか1つと75%以上の同一性を有するアミノ酸配列、の1つ又は複数を含む、請求項19から22のいずれか一項に記載の固定化脂質アシルトランスフェラーゼ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭水化物エステル、タンパク質エステル、タンパク質サブユニットエステル、ヒドロキシ酸エステルの1種類若しくは複数を生成する方法であって、リン脂質、リゾリン脂質、トリアシルグリセリド、ジグリセリド、糖脂質又はリゾ糖脂質からなる群の1種類若しくは複数から選択される脂質基質であるアシル供与体と、炭水化物、タンパク質、タンパク質サブユニット又はヒドロキシ酸からなる群の1種類若しくは複数から選択されるアシル受容体と、水とを混合して、5〜98%の水を含む高水分環境を作るステップと、脂質アシルトランスフェラーゼが、アルコール分解又はエステル転移の一方若しくは両方の反応を触媒するように前記混合物を前記脂質アシルトランスフェラーゼと接触させるステップとを含み、前記脂質アシルトランスフェラーゼがアシルトランスフェラーゼ活性を有し、アミノ酸配列モチーフGDSX(式中、Xはアミノ酸残基L、A、V、I、F、Y、H、Q、T、N、M又はSの1種類又は複数である)を含む酵素として特徴づけられる方法。
【請求項2】
前記脂質アシルトランスフェラーゼが固定化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、炭水化物エステル、タンパク質エステル、タンパク質サブユニットエステル、ヒドロキシ酸エステルを精製するステップを含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記脂質アシルトランスフェラーゼが、H−309を含む、或いは配列番号2又は配列番号32で示されるアエロモナス ヒドロフィラ脂肪分解酵素のアミノ酸配列中のHis−309に対応する位置にヒスチジン残基を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記脂質アシルトランスフェラーゼが、以下の属、すなわち、アエロモナス、ストレプトマイセス、サッカロミセス、ラクトコッカス、マイコバクテリウム、ストレプトコッカス、ラクトバチルス、デサルフィトバクテリウム、バチルス、カンピロバクター、ビブリオナシエ、キシレラ、スルフォロブス、アスペルギルス、シゾサッカロミセス、リステリア、ナイセリア、メソルヒゾビウム、ラルストニア、ザントモナス及びカンジダの1種類若しくは複数に由来する生物から得ることができる、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記脂質アシルトランスフェラーゼが、以下のアミノ酸配列、すなわち、(i)配列番号2で示されるアミノ酸配列;(ii)配列番号3で示されるアミノ酸配列;(iii)配列番号4で示されるアミノ酸配列;(iv)配列番号5で示されるアミノ酸配列;(v)配列番号6で示されるアミノ酸配列;(vi)配列番号12で示されるアミノ酸配列、(vii)配列番号20で示されるアミノ酸配列、(viii)配列番号22で示されるアミノ酸配列、(ix)配列番号24で示されるアミノ酸配列、(x)配列番号26で示されるアミノ酸配列、(xi)配列番号28で示されるアミノ酸配列、(xii)配列番号30で示されるアミノ酸配列、(xiii)配列番号32で示されるアミノ酸配列、(xiv)配列番号34で示されるアミノ酸配列、又は配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号12、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32若しくは配列番号34で示される配列のいずれか1つと75%以上同一であるアミノ酸配列、の1つ又は複数を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
リン脂質、リゾリン脂質、トリアシルグリセリド、ジグリセリド、糖脂質又はリゾ糖脂質からなる群の1種類又は複数から選択される脂質基質であるアシル供与体と、炭水化物、タンパク質、タンパク質サブユニット又はヒドロキシ酸からなる群の1種類又は複数から選択されるアシル受容体と、水との混合物であって、5〜98%の水を含む混合物において、アルコール分解若しくはエステル転移の一方又は両方の触媒作用によって、炭水化物エステル、タンパク質エステル、タンパク質サブユニットエステル又はヒドロキシ酸エステルの1種類又は複数を生成するための脂質アシルトランスフェラーゼの使用であって、前記脂質アシルトランスフェラーゼが、アシルトランスフェラーゼ活性を有し、アミノ酸配列モチーフGDSX(式中、Xはアミノ酸残基L、A、V、I、F、Y、H、Q、T、N、M又はSの1種類又は複数である)を含む酵素として特徴づけられる使用
【請求項8】
前記脂質アシルトランスフェラーゼが固定化されている、請求項に記載の使用。
【請求項9】
前記炭水化物エステル、タンパク質エステル、タンパク質サブユニットエステル又はヒドロキシ酸エステルが精製される、請求項に記載の使用。
【請求項10】
前記脂質アシルトランスフェラーゼが、H−309を含む、或いは配列番号2又は配列番号32で示されるアエロモナス ヒドロフィラ脂肪分解酵素のアミノ酸配列中のHis−309に対応する位置にヒスチジン残基を含む、請求項からのいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記脂質アシルトランスフェラーゼが、以下の属、すなわち、アエロモナス、ストレプトマイセス、サッカロミセス、ラクトコッカス、マイコバクテリウム、ストレプトコッカス、ラクトバチルス、デサルフィトバクテリウム、バチルス、カンピロバクター、ビブリオナシエ、キシレラ、スルフォロブス、アスペルギルス、シゾサッカロミセス、リステリア、ナイセリア、メソルヒゾビウム、ラルストニア、ザントモナス及びカンジダの1種類若しくは複数に由来する生物から得ることができる、請求項から10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記脂質アシルトランスフェラーゼが、以下のアミノ酸配列、すなわち、(i)配列番号2で示されるアミノ酸配列;(ii)配列番号3で示されるアミノ酸配列;(iii)配列番号4で示されるアミノ酸配列;(iv)配列番号5で示されるアミノ酸配列;(v)配列番号6で示されるアミノ酸配列;(vi)配列番号12で示されるアミノ酸配列、(vii)配列番号20で示されるアミノ酸配列、(viii)配列番号22で示されるアミノ酸配列、(ix)配列番号24で示されるアミノ酸配列、(x)配列番号26で示されるアミノ酸配列、(xi)配列番号28で示されるアミノ酸配列、(xii)配列番号30で示されるアミノ酸配列、(xiii)配列番号32で示されるアミノ酸配列、(xiv)配列番号34で示されるアミノ酸配列、又は配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号12、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32若しくは配列番号34で示される配列のいずれか1つと75%以上の同一性を有するアミノ酸配列、の1つ又は複数を含む、請求項から11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
請求項1からのいずれか一項に記載の方法によって生成される炭水化物エステル。
【請求項14】
請求項1からのいずれか一項に記載の方法によって生成されるタンパク質エステル。
【請求項15】
請求項1からのいずれか一項に記載の方法によって生成されるタンパク質サブユニットエステル。
【請求項16】
請求項1からのいずれか一項に記載の方法によって生成されるヒドロキシ酸エステル。
【請求項17】
固定化脂質アシルトランスフェラーゼであって、前記脂質アシルトランスフェラーゼが、アシルトランスフェラーゼ活性を有し、アミノ酸配列モチーフGDSX(式中、Xはアミノ酸残基L、A、V、I、F、Y、H、Q、T、N、M又はSの1種類又は複数である)を含む酵素として特徴づけられる酵素
【請求項18】
前記脂質アシルトランスフェラーゼが、H−309を含む、或いは配列番号2又は配列番号32で示されるアエロモナス ヒドロフィラ脂肪分解酵素のアミノ酸配列中のHis−309に対応する位置にヒスチジン残基を含む、請求項17に記載の固定化脂質アシルトランスフェラーゼ。
【請求項19】
前記脂質アシルトランスフェラーゼが、以下の属、すなわち、アエロモナス、ストレプトマイセス、サッカロミセス、ラクトコッカス、マイコバクテリウム、ストレプトコッカス、ラクトバチルス、デサルフィトバクテリウム、バチルス、カンピロバクター、ビブリオナシエ、キシレラ、スルフォロブス、アスペルギルス、シゾサッカロミセス、リステリア、ナイセリア、メソルヒゾビウム、ラルストニア、ザントモナス及びカンジダの1種類若しくは複数に由来する生物から得ることができる、請求項17から18のいずれか一項に記載の固定化脂質アシルトランスフェラーゼ。
【請求項20】
前記脂質アシルトランスフェラーゼが、以下のアミノ酸配列、すなわち、(i)配列番号2で示されるアミノ酸配列;(ii)配列番号3で示されるアミノ酸配列;(iii)配列番号4で示されるアミノ酸配列;(iv)配列番号5で示されるアミノ酸配列;(v)配列番号6で示されるアミノ酸配列;(vi)配列番号12で示されるアミノ酸配列、(vii)配列番号20で示されるアミノ酸配列、(viii)配列番号22で示されるアミノ酸配列、(ix)配列番号24で示されるアミノ酸配列、(x)配列番号26で示されるアミノ酸配列、(xi)配列番号28で示されるアミノ酸配列、(xii)配列番号30で示されるアミノ酸配列、(xiii)配列番号32で示されるアミノ酸配列、(xiv)配列番号34で示されるアミノ酸配列、又は配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号12、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32若しくは配列番号34で示される配列のいずれか1つと75%以上の同一性を有するアミノ酸配列、の1つ又は複数を含む、請求項17から19のいずれか一項に記載の固定化脂質アシルトランスフェラーゼ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【公表番号】特表2006−524037(P2006−524037A)
【公表日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500327(P2006−500327)
【出願日】平成16年1月15日(2004.1.15)
【国際出願番号】PCT/IB2004/000575
【国際公開番号】WO2004/064987
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(397060588)ダニスコ エイ/エス (67)
【Fターム(参考)】