説明

方法

本発明は、反応容器中で粒子状炭素生成物を製造する方法であって、ガス入口とガス排出口との間のガス流により、該反応容器内の触媒を含む粒子状物質からなる床を浮遊させ、生成物をその床より落下させて、該粒子状炭素生成物を該反応容器から排出することにより炭素生成物を製造する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は方法および反応器に関するものであり、とりわけ、炭素ナノ繊維(CNF)および水素などの製品を連続製造するために好適な方法および反応器に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素ガスと金属表面との相互作用により脱水素化が起こり、金属表面で炭素「ウィスカー」が成長することは従来から知られている。また近年になり、このような炭素ウィスカーは、直径が3〜100nm、長さが0.1〜1000μmの中空炭素繊維であるが、例えば水素吸蔵のための貯留容器としての能力を有するように、興味深く潜在的に有用な性質を持つことが明らかにされている(例えば、Chambers等 J. Phys. Chem. B 102: 4253-4256 (1998) および Fan等 Carbon37 : 1649-1652 (1999) を参照)。
【0003】
いままで、何人かの研究者により、炭素ナノ繊維の製造について研究され、またその構造、特性、潜在的な用途について研究が進められてきており、これらの研究は、De Jong 等 らによりCatal. Rev.-Sci. Eng. 42: 481-510 (2000) に総説として記述されているが、その中で、CNFのコストはまだ比較的高い(約 US$50/kg以上)と指摘されている。したがって、CNFをより効率的に製造するための製造方法が必要とされている。
【0004】
De Jong ら(上記参照)によって、また J.Mater. Res. 8: 3233- 3250 (1993) に掲載されたRodriguez による追加的総説記事の中で記載されているように、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、バナジウム、モリブデンなどの遷移金属、およびそれらの合金は、メタン、一酸化炭素、合成ガス(すなわちH2/CO)、エチン、およびエテンなどのガスか
らCNFが生成することに対して触媒作用がある。この反応では、これら金属の形態は、平坦な表面、ミクロ粒子(典型的には、約100nmの大きさ)、または例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、または炭素などの不活性な担体材料に担持されたナノ粒子(典型的には1−20nmの大きさ)である。そのような触媒金属は、炭素を分解、すなわち、カーバイドを形成できるものでなければならない。
【0005】
De Jong ら(上記参照)、および Rodriguez (上記参照)は、炭素の吸着およびCN
Fの成長は、触媒金属の特定の結晶表面において良好に進行すると説明している。
炭素ナノ繊維などの少量の炭素生成物を製造する方法はその技術分野において知られているが、効率よく大量に、しかも信頼のできる品質で製造する方法は、従来は特に工業的規模ではその実現が困難であった。
【0006】
炭素ナノ繊維(CNF)などの生成物を合成する既存の技術としては、放電、レーザーアブレーション、および化学蒸着が挙げられる。一般的に、これらの技術は昇温条件下で炭素電極を気化することが必要とされる。例えば、レーザーアブレーションの手法では、レーザーを用いて炉中で黒鉛ターゲットを気化することが必要とされる。アーク放電の手法では、その端と端を対向して配置して不活性ガス中で気化させる炭素ロッドが必要とされる。
【0007】
これら技術の多くはバッチプロセスであり、大量に製造した際には、炭素生成物について信頼できる均一な品質を維持することはできない。例えば、アーク放電による製造方法では、不ぞろいな大きさの分布をもつCNF生成物しか得られないため、十分な精製工程が必要である。一方、レーザーアブレーションの手法では、高出力の電源および高価なレーザー装置が必要であり、この手法で供給される製品の単価が高くなる。
【0008】
流動床型反応器は、炭素およびこれらの粒子状生成物の合成に関するこれらの問題を多少なりとも解決する手段であると考えられてきた。しかし、炭素製品、特に均一な製品サイズおよび品質を有するCNF製品を、従来の反応器を用いて大規模製産することは困難であった。流動床型の反応器は、流動領域から合成した生成物を採取することが困難であり、特に反応領域から効率よく特定の大きさの生成物を採取することはできなかった。一般的に、採取された製品は種々の品質のものが混ざり合っている。一部のものは他のものより流動床で長時間反応している。このため、このような反応器では品質の高い製品を提供することができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そのため、連続運転が可能であり、効率的に品質の高い粒子状炭素製品を製造する方法および反応器が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明の第一の態様は、反応容器中で粒子状の炭素生成物を製造する方法であって、ガス入口とガス排出口の間のガス流により、該反応容器中の触媒を含む粒子物質床を浮遊させ、該粒子状炭素生成物をその床より落下させることにより、該反応容器から、例えば該触媒床の下側に配置された粒子状生成物排出口を通じて排出して炭素製品を製造する方法を提供するものである。
【0011】
本発明の第二の態様は、ガス入口、ガス排出口、および粒子状生成物排出口を有する容器を含む反応器であって、該ガス入口は、該入口からの使用ガス流が、該容器中の触媒を含む粒子状物質床を浮遊させ、さらに、粒子状生成物が該床から落下して、反応容器から、例えば該粒子状生成物排出口を通じて、排出されるように配置した反応器を提供するものである。
【0012】
従来の固定床型、または流動床型反応器とは異なり、機械的な支持がなくても反応容器中で反応床あるいは反応領域が形成され、反応床から粒子状生成物が落ちると、すぐに粒子状生成物が採取できるので、事実上「逆」固定床型または「逆」流動床型の反応器とみなすことができる。
【0013】
反応床は流動床であってもよく、またそれに代え固定床であってもよく、あるいは、単に、粒子が同伴してガスが流れている領域であってもよい。反応床の性質は、ガス流の速度、および、ガスを透過するけれども実質的には粒子は透過しない遮断材を介してガスが流れるかどうかに依存している。そのような遮断材がある場合、ガス流が十分に高速のときに固定反応床が遮断材の下側に形成される。
【0014】
反応器は、粒子状生成物および/または触媒が、ガス排出口を通じて反応器から排出されることを妨げる手段を備えていてもよい。反応器はガスを排出して、生成物および/または触媒は反応器内に留まらせることができる手段を備えていることが好ましい。それゆえ、この手段は上述した遮断装置として機能する。
【0015】
あるいは、生成物および/または触媒がガス排出口を通って反応容器から排出される場合には、反応器は生成物および/または触媒を反応容器に戻す手段を備えていてもよい。例えば、反応器は、排出ガスを供給して排出ガスから粒子状生成物および/または触媒を取り除くことができるサイクロンあるいはラディクロン(radiclone)を備えていてもよい。さらにまた、生成物および/または触媒を反応床に戻す手段を備えていてもよい。
【0016】
反応器は、フィルターあるいはガス透過性の遮断材を備えており、遮断材を通る排出ガスは、生成物および/または触媒をフィルターまたは遮断材の上流に残したまま流れることが好ましい。
【0017】
ガス透過性の遮断材は、ガス排出管、または反応器の導管、あるいは反応容器自体の内部に備えられていてもよい。反応容器の内部に設置している場合には、ガス透過性の遮断材は、ガス排出口とガス入口との間で、反応領域がガス透過性遮断材の下面よりも下で形成されるように設置することができる。
【0018】
ガス透過性の遮断材は、反応容器の頂部側に位置していることが好ましく、反応容器の頂部に位置することがより好ましい。このような配置とする場合、ガス透過性遮断材を反応容器断面全体にわたって拡げることができ、それによりろ過面を最大とし、遮断材を通過するガス速度、および遮断材を通る際の圧損を減少させることができる。
【0019】
触媒および粒子状の生成物は、反応容器を通るガス流により支持されて、反応容器中および反応領域中で浮遊している。そのため、ガス流の速度を制御することにより、反応領域および反応容器から排出される生成物の大きさを変化させることができる。
【0020】
ガスの流速は、反応領域とガス透過性遮断材との間に、ほとんど、あるいは全く粒子状物質が存在しない領域、すなわち、反応がほとんど起こらないかあるいは全く起こらない領域を備えるように選択することが好ましい。その結果、ガスによる流動床あるいは反応領域が、上述したように生成される。
【0021】
あるいは、反応床あるいは反応領域がガス遮断材に接触するようにガス流をより高く設定してもよい。それにより、逆固定反応床あるいは逆反応領域が形成できる。
遮断材の透過性、すなわち、ガスが遮断材を通るガス流路の、細孔の大きさ、開口サイズ、あるいは最小直径は、反応領域中の粒子状物質が遮断材を通過しないように選択することが好ましい。特に、運転前あるいは運転中に反応容器に供給された触媒を含む粒子が遮断材を通過しないように選択することが好ましい。
【0022】
遮断材は有孔性の金属であってもよいが、多孔性のセラミックが好ましい。あるいは、遮断材は炭素ナノ繊維あるいはガラス繊維から形成されたフィルターであってもよい。
詰まった孔あるいは開口部から、詰まりを除去するために、ガス透過性の遮断材あるいはフィルターにガスを逆流させるための逆圧を与える手段を備えていてもよい。一般的に、これは、加圧ガスを容器に導入するガス入口を反応器の頂部に備え、加圧ガスがガス透過性遮断材を逆方向に流れるようにすること、すなわち、反応器における通常運転時のガス流とは逆方向に流れるようにすることで達成される。反応器の運転中にガスを脈動的に逆流させるか、あるいは、反応を停止してガスを逆流させることで逆圧をかけることができる。
【0023】
反応容器は、二つ以上のガス入口および二つ以上のガス排出口を備えていることが好ましい。
触媒の不活性化を最小限にするために、注入ガス(あるいは供給ガス)は、反応領域近傍の複数の位置から反応器および反応領域に供給されることが好ましい。反応領域のガス入口は、反応容器の内面に対して接線方向に配置され、角度をつけて反応床にガスを導入し、反応床を高速回転あるいは循環するようにしてもよい。あるいは、反応領域のガス入口は、容器の内面に対して様々な角度で配置し、反応領域を攪拌するようにしてもよい。さらにこれらの入口は、反応容器内壁から離れた容器中心部に向う位置、あるいは容器中心部に配置してもよい。このようにして、ガスが反応床の内部に導入される。このような
配置を採用した場合、反応容器内に伸びるガス導管は、表面の腐食を減らすために、セラミック材料でできているか、あるいはセラミック材料でコートされていることが好ましい。
【0024】
粒子状の触媒は、ガス入口から容器内に導入されてもよい。あるいは、容器に、触媒を導入できる1つ以上の触媒入口を備えてもよい。
触媒が反応領域に分散するように、触媒は、触媒入口から反応容器中の反応領域の近傍に導入されることが好ましい。あるいは、触媒は反応容器内の低温および/または低圧領域に導入してもよい。触媒はガスを用いて粉末状で反応器内に導入してもよく、あるいは反応容器内に液体として、または液体を用いて導入してもよい。
【0025】
触媒は連続方式で導入してもよいし、バッチ方式で導入してもよい。
触媒は炭素源供給ガスに同伴して反応容器内に導入してもよい。しかしながら、供給ライン内の炭素の析出を減らすために、触媒とは反応しないガスあるいは液体の搬送媒体を用いるのが好ましい。したがって、窒素はこのような観点から搬送媒体として用いることができる。
【0026】
容器には二つ以上の生成物排出口を備えてもよいが、一般的には一つで十分と思われる。
容器は、反応器の底部に配置される生成物回収領域を有していてもよく、さらに反応器または生成物回収領域から生成物を取り出すための手段を有していてもよい。
【0027】
生成物排出口は、例えば反応器からの回収容器を取り外し、回収容器からの生成物の取り出しができるようにするために(例えば、回収容器の生成物取り出し口を通じて)、反応容器から分離可能な粒子状生成物回収容器に接続していることが特に好ましい。回収容器は冷却手段、例えば冷却ジャケットを備えていることが好ましい。冷却手段としては、熱が生成物から供給ガスへ移動する熱交換器が特に好ましい。
【0028】
反応領域から回収領域に落下することによって粒子状生成物を反応容器から排出することができるように、反応領域の下側に粒子状生成物の排出口が設置されているのであれば、反応器はどのような角度で配置してもよい。反応器は、粒子状生成物の排出口が反応領域の直下に位置するように配置することが好ましい。
【0029】
反応容器は、反応容器を覆いこれを支持する外筒により覆われていてもよい。
外筒、ガス入口、ガス排出口、および生成物排出口(さらに、付随する導管)は、耐熱鋼(high temperature steel)により製造されていてもよい。
【0030】
ガス入口および排出口、ならびに粒子排出口(さらに、付随する導管)は、シリコン含有量が1.8%〜2.3%、かつクロム含有量が30%を超えている鋼により製造されていることが好ましい。また、2.5%を超えるアルミニウムを含む高性能材料、例えばAPM、APMt(Sandviks社製)、またはMA956(Special Metals社製)を用いてもよい。金属表面の鉄の割合を減らすために、従来のクロムベースの配管を用いることもでき、それにより、配管または導管の表面上でのダスティングすなわち炭素析出の傾向を少なくすることができる。また、反応容器は同様の材料により製造してもよい。しかし、反応器は、例えば、ノルウェーのElkem ASA社製のCeramite(登録商標)などのような高温耐性のキャスト成形可能なセラミック材料により製造あるいはライニングされていることが好ましい。
【0031】
反応容器中の反応は、常温常圧条件下でも開始する。しかし、反応器は、昇温昇圧条件下で運転することが好ましい。反応器は2から25barで運転することが好ましく、よ
り好ましくは5から20barである。最も好ましくは、5〜15barの運転である。反応器は、通常、最高1000℃までの温度で運転する。反応器は400℃から900℃で運転することが好ましく、550℃から900℃までがより好ましい。これに関連する記載においては、温度および圧力は反応床での温度および圧力を意味する。
【0032】
外筒は反応容器の内部圧力と等しくなるように内部を加圧してもよい。この操作は、特にセラミック容器を用いた場合に有効である。反応器の内壁と外壁との圧力を等しくすることにより、反応器内の反応が昇圧条件で起こった場合のセラミック材料内部の応力を減少させることができる。さらに、外筒は反応容器の外壁と外筒との間に断熱層を備えていてもよい。断熱材は、例えば断熱性のミネラルウール、あるいはその他の適切な断熱材でもよい。
【0033】
反応容器内で吸熱反応が起こる場合は、反応容器内に反応領域および/またはガスを加熱するための手段を備えていてもよい。加熱手段は、例えば加熱コイルであり、反応容器の壁の内部に組み込まれていてもよい。加熱手段は、例えば、セラミック反応容器内部の空隙あるいは開口部に配置されていてもよい。
【0034】
あるいは、加熱コイルは容器の外周または反応容器の内部に配置してもよい。
反応が吸熱である場合、供給ガスを昇温して反応容器に導入することにより、反応領域に熱を供給することも好ましい。このような方法で、触媒が不活性化する危険性を減らすことができるように、必要とされる供給ガスの注入温度を下げることができるので、この点において、反応領域の前だけでなく反応領域の内部にも供給ガスを導入することが特に好ましい。供給ガスを構成するガスの一つが、昇温条件下で鉄金属と反応する場合、例えば一酸化炭素が使用された場合には、一般的にそのガスは、他のガスを用いるときよりも低温で導入することが望ましい。
【0035】
上述したように、反応器にはさらに反応容器から取り出される粒子状生成物を冷却する手段を設けてもよい。例えば、反応器は、粒子状生成物の排出口の周り、あるいは生成物排出口の近傍に、冷却用空隙あるいは冷却ジャケットを備えていてもよい。冷却用空隙には、反応容器から出てゆく生成物の温度を下げるための水または原料ガスなどの冷却媒体を連続的な流れとして供給してもよい。他の冷却媒体も同様に、生成物を冷却するための冷却用空隙に使用できる。
【0036】
本発明に係る反応器は炭素製品の製造、特に炭素ナノ繊維(CNF)などの炭素製品の製造に特に有利である。
したがって、別の態様として、本発明は、ガス入口、ガス排出口、および粒子状生成物排出口を有する容器を含む、炭素ナノ繊維を製造する反応器であって、該ガス入口が、使用の際に、そこからのガス流れにより該容器中の触媒を含む粒子状物質床を浮遊させ、さらに、粒子状生成物が該床から落下することにより、反応容器から排出、例えば粒子状生成物の排出口を通じて排出されるように配置されている反応器を提供することである。
【0037】
反応器は、数千キログラムにおよぶ総生成物を内容物とすることができるように、通常体積は、10〜100m3であり、好ましくは50〜70m3である。連続運転のためには、一般的には、吸入ガスの供給速度は500〜2000kg/hourの範囲、例えば1000〜1500kg/hourであり、生成物の取り出し速度は200〜2000kg/hourの範囲、例えば750〜1250kg/hourである。炭素を製造するために、反応器の運転に必要とされるエネルギー供給量は、一般的に百kWの単位である。具体的には、100〜1000kW、より一般的には500〜750kWである。別の表現をすると、エネルギー必要量は、一般的に1〜5kW/kgC.hour-1の範囲であり、例えば、2〜3.5kW/kgC.hour-1である。
【0038】
CNFを製造する際には、炭素を分解できるかあるいはカーバイドを生成でき、しかも反応器内部のガス流の中に浮遊させることができるものであれば、どのような触媒でも使用できる。
【0039】
触媒は、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、バナジウム、モリブデン、またはその他これらの合金などの遷移金属であってもよい。触媒としては、FeNi触媒が好ましい。触媒は、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、または炭素などの不活性な担体材料に担持していてもよい。
【0040】
使用する触媒としては、例えば、WO 03/097910に記載される遷移金属またはそれらの合金を含む多孔性の金属触媒がより好ましい。その記載内容は本参照により本明細書を構成する。WO 03/097910に記載されたラネー金属触媒、特にその中で述べられているAmperkat(登録商標)触媒が特に好ましい。
【0041】
触媒粒子が特定の空気力学的な条件を満たすように、触媒に対する抵抗を増加させることを目的に、反応容器に入れる前に触媒を前処理してもよい。
また、触媒は炭素の生成速度および炭素の収量を増加させるために前処理をしてもよく、この処理はどのような炭素製造用触媒、例えば多孔性金属触媒ではない触媒でも行うことができる。前処理は、主となる炭素製造段階の反応温度よりも低い温度において、水素が低減された、あるいは水素を含有していない原料ガスに一定時間接触させることで行うことができる。このような前処理は、主となる炭素製造段階と比べて、触媒の炭素に対する活性がより大きくなっているプロセス条件下で行うこと(すなわち反応器)が好ましい。したがって、この工程は、第一の段階において、炭素製造触媒を、第一の炭化水素含有ガスと第一の温度で第一の時間接触させ、続いて、該触媒を、第二の炭化水素含有ガスと第二の温度で第二の時間接触させるものであって、該第一のガスは上記第二のガスと比べ水素(H2)のモルパーセントが低いこと、該第一の温度は上記第二の温度よりも低こと
、該第一の時間は該第二の時間よりも短いことを特徴とするものである。もし、炭素製品の黒鉛含量を高めたい場合には、第一の温度を低く、および/または第二の温度を高くすればよい。
【0042】
第一の時間における温度は、好ましくは400〜600℃の範囲であり、より好ましくは450〜550℃、さらに好ましくは460〜500℃である。第一の時間における水素のモルパーセントは、好ましくは0〜2モル%であり、より好ましくは0〜1モル%、さらに好ましくは0〜0.25モル%、特に好ましくは0〜0.05モル%である。第一の時間における圧力は、好ましくは5〜15barであり、特に6〜9barである。第一の時間の持続時間は、好ましくは1〜60分であり、より好ましくは2〜40分、特に好ましくは5〜15分である。第二の時間における温度、圧力、ガス組成は、反応容器について上述したものが好ましい。
【0043】
触媒に前処理または開始反応を施すことにより、触媒を、炭素を表面に有する炭素含有金属の粒子からなる触媒/炭素の凝集物とすることができる。この前処理を行う前に、必要に応じて、例えば表面の酸化物を減少させるために、昇温条件下において触媒を水素で処理してもよい。
【0044】
ガス入口からガス排出口へ流れるガスは、反応領域で反応を維持するのに好適であればどのようなガスであってもよい。CNFを製造する場合には、ガスは、メタン、エテン、エタン、プロパン、プロペン、エチン、一酸化炭素、もしくは天然ガスなどの炭素数が1〜3の炭化水素、またはそれらの混合物であってもよい。あるいは、ガスは芳香族炭化水素、またはナフテンであってもよい。
【0045】
注入ガスは、触媒金属の炭素に対する活性、すなわち金属による炭素の吸収速度を低下させるために、水素をある割合で含んでいてもよい。ガスは、一般的に1〜20モル%の水素を含んでいる。2〜10モル%の水素を含んでいることが好ましい。
【0046】
注入ガスは一酸化炭素を含んでいてもよい。しかし、例えば、400℃を超える温度で起こる可能性のある、鉄金属製の供給ラインのダスティングを避けるために、一酸化炭素はより低温(例えば、<300℃)で、例えば別の供給ラインから導入することが好ましい。一酸化炭素は、例えば、炭素を生成する反応がメタンの場合の反応より吸熱なので、原料ガスに好適な成分である。
【0047】
一酸化炭素を別の供給ラインから反応容器内に導入する場合には、それに対応して、反応器中で混合して混合物ガスが適切な温度となるように、主たる供給ガスの入口温度はより高温としてもよい。
【0048】
供給ガスが金属のパイプあるいは導管(鉄、またはクロムをベースとする金属、または合金)を通過するところでは、含酸素化合物(例えば、水またはCO2)を少量供給ガス
に導入することで、パイプまたは導管表面の酸化物層(金属を保護する役割を有する)は保持される。
【0049】
注入ガスあるいは原料ガスは、ガス排出口からガス入口へ全面的に、あるいは部分的に再循環してもよい。あるいは、ガスは反応器を一度通過するだけでもよい。より好ましくは、容器内でガスの一部を内部循環させてもよい。反応器内部のガスの内部循環(あるいは逆混合)は反応器内部の水素含有量を制御するために用いられ、その結果、反応容器内部へ導入する水素の必要量を減らすことができる。
【0050】
反応容器から出たガスは分離器に通し、水素を金属水素化物とすることにより除去することが好ましい。カラム中の金属水素化物のペレットは生成した水素を低温で吸着し、吸着した水素はカラムの温度を上昇させることで回収することができる。
【0051】
あるいは、過剰の水素は、膜、高分子膜、圧力スイング吸着材(PSA)にガスを通して除去する。膜としては、例えば、パラジウム膜がある。このようにして回収された水素は、炭素製造反応の目的生成物であってもよく、あるいは燃焼してエネルギーとしてもよく、例えば供給ガスを加熱してもよい。
【0052】
小規模の場合には、反応器への熱の供給は反応容器への外部からの加熱、あるいは熱源に接続した加熱手段、あるいは熱交換手段を反応器内にもつことにより達成することができる。加熱手段としては、例えば電力加熱コイルがあり、反応容器の壁に内蔵してもよい。加熱手段は、セラミック材内部の空隙あるいは開口部に配置してもよい。
【0053】
しかし、反応器のサイズが大きくなるに従い、反応容器に供給する注入ガスまたは原料ガスを加熱する必要性が高くなる。
ガスは、反応器に入る前に、その一部あるいはすべてを予備加熱して反応器の運転温度にもよい。好ましくは、ガスを反応器に入れる前に部分的に予備加熱して、さらに反応器内部で反応容器の内部を加熱手段によって運転温度まで加熱する。ガスは、反応容器から出る排出ガス流との熱交換により予備加熱してもよい。
【0054】
反応容器内に再循環されないガス排出口からのガス流は、焼却処分してもよいし、あるいは水素濃度が許容できるものであれば、炭化水素ガス流に供給して燃料ガスまたは販売用ガスとしてもよい。
【0055】
反応器中で製造される炭素は、反応容器から取り出した後に、例えば触媒物質を除去したり、非晶性物質から炭素繊維を分離したり、添加剤を混合したり、あるいは圧縮したりしてもよい。触媒の除去としては、典型的には酸処理あるいは塩基処理を挙げることができる。炭素繊維の分離は、例えば液に分散して沈降(例えば、遠心分離)させる方法、場合によってはそれに磁気選別などの他の方法を組み合わせた方法が挙げられる。添加剤の処理としては、例えば、炭素上に触媒として活性な物質をさらに沈着させることが挙げられ、それにより炭素は、触媒担体の働きをしたり炭素内に水素を吸着したりする。さらに、圧縮は、成形した炭素製品、例えばペレット、ロッドなどを製造する際に行われる。
【0056】
炭素製品中の触媒含有量を減少するための処理は、例えば1000℃より高い温度、好ましくは2000℃より高い温度、例えば、2200〜3000℃の温度に加熱することにより行う。また、この処理を行うことにより、全灰分量を著しく低減することができる。
【0057】
また、炭素製品から触媒を除去するための処理は、好ましくは昇温、昇圧条件で、例えば少なくとも50℃、かつ少なくとも20barの条件、好ましくは、50〜200℃、かつ30〜60barの条件で、一酸化炭素の流れに接触させても行うことができる。COガス流は、昇温条件、例えば230〜400℃の条件で、同伴する金属カルボニルを析出させた後再循環させてもよい。
【0058】
このような温度処理、および/または一酸化炭素処理をした結果、特に金属含有量の低い炭素、例えば0.2重量%より低い金属含有量の炭素、とりわけ0.1重量%より低い金属含有量の炭素、好ましくは0.05重量%より低い金属含有量の炭素、より好ましくは0.01重量%wより低い、例えば0.001重量%まで低い金属含有量の炭素を製造できる。
【0059】
中間部の断面積が小さい部分でガス速度を大きくし、上部の断面積が大きい部分でガス速度が小さくなるように、円錐形の下部、円筒形の中間部、および逆円錐形の上部からなる垂直方向に配置された反応容器が好ましい。このようにすることにより、粒子が上部から出てゆくことを抑制することができる。この「胴のくびれた」装置は、それ自体、新規であり、発明といえるものである。
【0060】
したがって、さらに別の態様として、本発明は、ガス入口を有し粒子状生成物の排出口により特徴づけられる下部、ガス排出口を有し反応床により特徴づけられる上部、および該下部と該上部とを接合する中間部を有している容器を含む反応器であって、該下部から該中間部を通って該上部への使用ガスの流れにより、該床中の触媒を含む粒子状物質床を浮遊させ、さらに粒子状生成物が該床から落下することにより、該容器から排出される反応器を提供する。
【0061】
中間部は、上部および下部と比較して、断面積がより小さいことが好ましい。そして、下部が円錐形であり、中間部が円筒形であり、上部が逆円錐形であることがより好ましい。したがって、要するに、反応器の内部は「胴のくびれた」あるいは「砂時計」の形状である。好ましい態様として、円錐部分はその両端で円柱部分に接続していてもよい。
【0062】
したがって、反応器を通過するガスの流速は反応器から排出される粒子の重量を制御するのに用いることができる。
複数の水平に配列された反応床を含む反応器でも、生成物排出口を適切に配置することで、反応器から生成物を回収するのに重力を利用することが可能である。
【0063】
したがって、さらに本明細書で開示する発明は、ガス入口およびガス排出口を有し、さらに複数の反応面をもつ容器を含む反応器であって、使用の際、生成物が各々の反応面で合成され、該反応面から落下することにより、該容器から排出される反応器を提供するものである。
【0064】
反応面という語は、触媒により触媒作用を受けたガスが、その上あるいは中で反応を起こす、表面、領域または床を意味している。
反応器は単一のガス入口を備えていてもよいが、ガスを反応面各々に直接供給するために、反応面それぞれが、個別にガス入口を備えていることがより好ましい。
【0065】
反応面は実質的に水平であってもよく、上部表面から落下した生成物が、続く下部面上に落下し最終的には反応器の底部に落下するような、階段状の配置で構成されていてもよい。
【0066】
反応面は、生成物が、上部の反応表面から下部の反応表面に向かって、滝のように落下することができるように、反応器の底部に向かうにしたがって、大きさが増加していてもよい。あるいはまた、反応面各々は同じ大きさであり、穴あるいは開口部を備えていてもよい。生成物は、そこを通って下の反応面上に落ちるか、あるいは、反応面の縁部から落下することにより直接反応器の底部に落下する。
【0067】
触媒は、上で述べた反応器について記載したのと同様の方法で反応器に導入することができる。
上述したように、反応領域あるいは反応床内で吸熱反応が起こる場合には、特に反応領域を加熱できるようにすることが重要である。それゆえ、加熱した供給ガスを反応領域に導入できる多数のガス入口を反応器に備えていることが望ましい。
【0068】
このことは、上述した以外の反応容器であって、複数のガス入口、あるいはオリフィスを備えている反応器においてもあてはまる。
したがって、本明細書で開示するさらなる発明は、複数のガス入口、ガス排出口、および生成物排出口を有する容器を含む反応器であって、使用の際、触媒を含有する粒子状物質床を含む該容器中で反応床が形成され、該ガス入口が注入ガスを直接反応床に導入するように配置されている反応器を提供するものである。
【0069】
ガスは、例えば反応領域に伸びた導管を用いて、反応床に直接導入されていてもよく、あるいはガスを反応容器の壁に設けた反応床に最も近い入口を通じて導入してもよい。ガスは、反応領域にどのような角度で導入してもよい。
【0070】
反応容器はどのような角度で配置されていてもよい。反応容器としては、水平方向に配置されていることが好ましく、水平方向から45°までの角度で配置されていてもよい。
反応容器にはガス入口を設置し、入口から入ったガスの流れにより該容器中の触媒を含む粒子床を浮遊させ、粒子生成物が上記床から落下することにより、1つまたはそれ以上の粒子生成物排出口を通じて、反応容器から排出するようにしてもよい。
【0071】
生成物排出口は容器の基部に沿った床の移動方向に設置し、上記床から落下することにより、粒子生成物が反応器から捕集されるようにしてもよい。あるいは、ガス排出口および粒子排出口は反応容器の下流端に位置する共通の排出口であってもよい。
【0072】
さらに、反応器は、反応床の上部および/または反応床に沿って、ガス入口および/またはガス排出口を備えてもよい
容器はさらに、ガスの流方向にその断面積が増加するように設計してもよい。容器とし
ては円筒状あるいは、円錐状の形状がより好ましい。
【0073】
上述した反応器において、反応床を攪拌し、あるいは回転するように、ガス入口を反応容器に対して接線方向に配置してもよい。例えば、ガス入口は反応容器の壁に対して45°の角度で配置されていてもよい。
【0074】
反応容器は固定式であってもよく、あるいは反応床を攪拌するために回転するようにしてもよい。このような設計の場合、反応容器の内部には、反応容器内部に接続された攪拌部材または攪拌手段を備え、反応器が回転することによって、反応床が攪拌、かき回されるようにしてもよい。このような配置とすることで、上記床の温度分布を改善すること、および/または生成物の物理的磨耗により、製品の大きさを変化させることができる。
【0075】
その結果、ガスが反応領域の長さ方向に沿って供給され、それにより反応効率が改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0076】
本発明の好ましい態様をほんの一例として、添付図面を参照しながら述べる。
図1は、第一の態様に係る反応器の模式図を示す。
図2は、反応容器の断面図を示す。
【0077】
図3は、反応容器の簡略化した図、および反応容器の好ましい態様である3つの区分を示す。
図4は、複数反応器の直列の配置を示す。
【0078】
図5は、階段形の反応器の配置を示す。
図6は、水平型反応器の配置を示す。
図7は、垂直型反応器の配置における、ガス入口を示す。
【0079】
図1は、反応器の主たる構成要素の概略図である。反応器は、内層セラミック反応器コアすなわち容器1、ガス透過性遮断材2、ガス入口(原料ガス用)3、ガス排出口(排ガス用)4、および生成物排出口5から構成されている。好ましい態様としては、FeNi触媒(例えば、H. C. Starck, GmbH & CO. AG, ゴスラル, ドイツにより、商品名Amperkat(登録商標)として販売されるタイプのラネー金属触媒)を、反応領域7内にある触媒入口6を通じて、反応器内に導入する。
【0080】
反応器コア1はCeramite(登録商標)(キャスト成形が可能な高温耐性のセラミック材料)により製造されていることが好ましく、反応器コア1は、好ましくは耐熱鋼により製造された外筒8により囲われていてもよい。
【0081】
外筒と反応器コアとの間の空隙9は、ミネラルウールの断熱材によって充填し、ステンレス鋼ケーシング8をセラミックの反応器コアから断熱している。
運転の際には、外筒シを加圧して、反応器コア内部の圧力と等しくする。セラミックの反応器コアの内外壁における圧力が等しくなるので、セラミック材料内部の応力が低減する。外筒は、さらに、炭素質ガス入口、触媒入口、生成物排出口、およびガス排出口との接続部を備えていてもよい。
【0082】
セラミック製のガス透過性遮断材2は、反応器の頂部に配置されており、反応器コアの断面全体に拡がっている。遮断材は複数の孔または開口部を有しており、ガスが遮断材を通って反応器から排出されるように製造されている。生成物の大きさが1.5mmから8mmの範囲として、触媒の大きさが0.1mmでCNFの製造する場合には、遮断材の孔
は十分に小さく、触媒および生成物は遮断材を通り抜けない。
【0083】
反応器の経済性は使用した触媒に対する堆積した炭素の割合(D)、および平均の炭素堆積速度(Hm)に関連をしている。なぜならば、炭素の最終生成物の純度、および触媒
コストがDとともに上昇するからである。反応器の容量および複雑さの程度は、D/Hm
とともに上昇する。
【0084】
一般的に、生成速度R(Ton/Hr)の場合、反応容積Vr(m3)は
r=D・R/(2Kv・Hm・σ)
で与えられる。
ここで、
r 反応器の容積 (m3
D 炭素の触媒への堆積割合(kg触媒あたりの炭素kg数)
R 炭素生成速度(Ton/Hr)
vvは補正係数である。
m 炭素の触媒への平均堆積速度(kg触媒あたり時間あたりの炭素kg数)
σ 幾何密度(geometric density)
である。
【0085】
補正係数Kvを1と設定すると、生成速度Rの場合の理論的に最小の反応器の容積が与
えられる。この状態は、反応器が詰まるまで、あるいは触媒が完全に失活するまで、すなわちもはやメタンが転換しなくなるまで、反応器をバッチ方式で運転を行うときに実現する。工業スケールの反応器では、反応器では連続的に製造が行われることが好ましく、触媒が失活する前に炭素を反応器から取り出す必要がある。もし、そうしなければ、Hm
ゼロになるので、反応容積が不必要に大きくなる。工業的な反応器(例えば、kv=0.
5)のCNFの製造速度を20トン/時間とすると、典型的な触媒の値を選択した場合(例えば、D=200kg炭素/kg触媒、Hm=45kg炭素/kg触媒・時間、および
幾何密度σ=0.5)、反応器の容積は、典型的には150〜200m3である。製造速
度が20トン/時間の場合、kv=0.5である反応器の総容積は、現実的には約400
2である。このようにして、D=200の場合、触媒の使用量R/D=100kg/時
間となり、反応床中の炭素はR・D/2Hm=44トンとなる。実際には、20トン/時
間の製造速度の場合は、一般的にいくつかの反応器に分割される。
【0086】
運転の際には、10barの炭素質ガス(例えば、メタン90モル%、および水素10モル% )を、反応器のガス入口3に導入する。さらに、図1に示されている複数の入口3のうち、もう1つの入口は、原料メタンと比較してより低温の原料一酸化炭素用である。ガスは反応器を垂直方向に流れて、ガス排出口4から排出される。
【0087】
FeNi触媒は入口6を通じて反応器内に導入され、分散ノズル24(図2に示)を通って、反応領域7の断面全体に均等に分散されてガス流に導入される。所定の大きさの反応器では、ガス入口とガス排出口との間のガス流速を選択して、ガス透過性遮断材2の下部の反応領域7において触媒が浮遊するようにする。遮断材の孔あるいは開口部は、触媒とCNF生成物がガス透過性の遮断材通り抜けない程度に十分に小さいが、ガスは遮断材を通過する。
【0088】
CNFを製造反応装置内で起こる反応は、メタンが炭素および水素へ分解する反応、すなわち
CH4 → C + 2H2
である。
【0089】
その反応は副生成物として水素を生じる吸熱反応で、一般的には、反応領域を少なくとも650℃まで加熱することが必要である。炭素生成物はFeNi触媒上で成長し、実験によれば、成長比率は1:200である。成長した炭素がFeNi触媒に対するメタンの供給を妨げるようになると、炭素の成長は停止することになる。
【0090】
炭素ナノ繊維は、反応領域で浮遊するFeNi触媒の表面上で成長する。図1、2および3に示される反応器では、その繊維が重くなってガス流で浮遊できなくなるまで成長し、その後、反応器の底部に落下して粒子生成物排出口5を通じて取り出される。
【0091】
排出口4を通って反応器から出たガスの一部は再循環され、入口3を通じて反応器に返される。注入ガス中にあまりに多量の水素が含まれていると、炭素の生成速度が減少するため、パラジウム膜(図示せず)を用いて、再利用する排出ガスから水素を分離する。
【0092】
運転中、ガスが流れる遮断材2中の開口部は、反応工程中で生成する炭素粒子が詰まってしまう可能性がある。断続的に反応器の頂部でガスを逆流させると、ガス透過性遮断材2中の孔がきれいになる。
【0093】
図2は、セラミックの反応器壁に電熱コイル21を組み込んでいる反応器コア1の断面図を示している。
反応器に入る前に、まず、ガスを熱交換器(図示せず)に通すことにより予備加熱する。熱交換器の使用により、排出ガスと熱交換することにより、電熱コイル21による加熱の必要量は低減される。その後、電熱コイル21によりガス温度をCNF製造の運転温度まで上昇させる。
【0094】
図2に示すように、反応容器とCNF生成物の処理装置(図示せず)との間に冷却部22が備えられている。冷却部22には、生成物が冷却部22を通過するときに、生成物を冷却するために冷却液を流す冷却用の空隙23を設けている。
【0095】
冷却された炭素は、車輪式供給器(ホイールフィーダー)によりロックチャンバ(lock−chamber)を充填する生成物処理設備(図示せず)に入る。ホイールフィーダーは圧力差ゼロで運転されるため、ロックチャンバは、反応器と同じ圧力で運転される。ロックチャンバの下流には、さらに、バルブで分離されたチャンバが備えられている。第二のチャンバは、製造設備から排出する前に、減圧してフラッシングするために用いられる。
【0096】
図3は、反応器の好ましい態様である3つの区分を示している。第一区分すなわち下部31は反応器の底部に配置され、円錐形であり、かつ反応領域7の垂直方向真下に生成物排出口5を設けたことにより特徴づけられる。注入ガスは下部31の近傍に設けられた複数のオリフィス34を通じて反応器内に供給される。
【0097】
ガス入口3およびオリフィス34を通って断面積が減少した中間部分32を流れ、ここで加熱コイル21(図2に示される)により加熱される。
つづいて、ガスは、逆円錐形でかつ反応領域7により特徴づけられ、風篩(ウインドシーブ)の役割を有する第三区分、すなわち上部33に流れこむ。第3区分33の上端は、第3領域の断面全体に拡がるガス透過性の遮断材2によって特徴づけられている。
【0098】
CNFは反応領域7で生成し、重力により、中間部32、下部31に落下し、生成物排出口5を通じて反応器の外に出る。
円錐形の下部31、円柱状の中間部32、および逆円錐形の上部33の配置構成とすると、反応器の円柱状中間部32においてガス流速を大きくすることにより、炭素生成物お
よび触媒を上部33に保持することができる。中間部の断面積が減少していることによって、ガス速度が上昇する。これにより、触媒粒子上に堆積した炭素のために中間部32を流れるガスの上昇流ではもはや粒子を支持できない程度に触媒粒子の重さが増加するまでは、上部に炭素生成物を保持できる。それゆえに、上部33と組み合わされた中間部32は、特定の重さの粒子のみが中間部を通過して下部31へと到ることができる風篩(ウインドスクリーン)の役割を果たす。炭素が堆積した触媒粒子が中間部を通過し下部に入った場合には、下部でのガス速度がより小さいため、粒子が生成物排出口5に落下する。中間部32のガス速度を調整することで、上部の反応領域7から出てゆく粒子の重さを調整することが可能となる。
【0099】
本反応器は、炭素ナノ繊維を製造する連続流通工程を提供する。触媒は、バッチ供給式触媒予備調製装置(図示せず)を用いて、反応器内部に導入することができる。
反応器を通過するガス流を制御することで、反応器中に浮遊する触媒および生成物の程度、さらに排出される生成物の大きさおよび重さの程度を制御することができる。
【0100】
反応器は、ガス流速を制御することで逆流動床型反応器としても使用できるし、逆固定床型反応器としても使用できる。
逆流動床方式で運転する場合には、ガス透過性の遮断材の下部であって、反応領域とガス透過性遮断材との間に、反応が起こらない領域(またはウィンドシーブ)を伴った反応領域が形成される。ガスの流速が増大すると、反応領域は、ガス透過性遮断材によって動かなくなるまで、ガス透過性遮断材の方向に移動する。逆固定床型の反応領域は、その中で生成物が成長できて、もはやガス流により支えられなくなる大きさまで生成物が成長したときには、生成物が排出口5から排出されるように形成される。
【0101】
生成物排出口5(図3に図示)は生成物取り出し設備(図示せず)につながっている。反応器の底に取り出し設備があると、炭素生成物を反応器から安全に取り出すことが可能になる。取り出し設備は、反応器が加圧されているので、取り出し工程においては反応器内の圧を保持している。それに加えて、炭素を取り囲んでいる爆発性雰囲気を開放し、炭素が取り出し設備から出る前に窒素によるパージをしなければならない。
【0102】
図4には反応器の直列配置が示されている。複数の反応器は、第一反応器からの排出ガスを、必要に応じて水素を除去した後に、注入ガスとしてそれに続く反応器へ供給できるように配置されていると有利である。
【0103】
反応器41、42、43は、それぞれ、ガス排出口44、45、46を有している。ガス排出口44は、熱交換器47を経由して、第二反応器42のガス入口48にガスを送り込む。熱交換器47は、ガスが各反応器に適切な温度で入るように、次の反応器に入る前にガスを予備加熱する役割がある。同様に、第二反応器42のガス排出口45は、熱交換器47を経由して、第三反応器43のガス入口49に流れる。第三反応器43のガス排出口46は排ガス処理設備(図示せず)に送り込まれ、第一反応器41のガス入口50に戻される。水素除去設備は図示していない。
【0104】
最初の反応器から出るガスの圧力が、それに続く反応器内で反応領域を浮遊させるのに十分であるならば、反応器をいくつでも直列に配置できる。個々の反応器内の反応条件、すなわち、順に並んだ各々の反応器の温度および圧力を制御して、順に並んだ各々の反応器の排出口51、52、53から一定範囲の大きさの生成物を製造する場合に、この配置を利用するのが好都合である。
【0105】
CNFなどの粒子状生成物を製造するための別の反応器を、図5に示す。
図5はカスケード配置の反応器の好ましい態様を示したものである。反応器は、3つの
反応面56、57、58を取り囲む外側容器55をもち、注入ガスは入口導管59、60、61を通じて各々の反応面上に導入される。ガスは、反応面上に配置されたノズル62を用いて、反応面上に拡散される。
【0106】
ガスは反応器のガス排出口63から除かれ、粒子状生成物は反応器の底の生成物排出口64から取り出される。
運転の際には、FeNi触媒は触媒入口(図示せず)から反応器内に導入し、水平な反応面56、57、58上で注入ガス(例えばメタン)と反応する。粒子状生成物が成長するにしたがって、生成物は上部の反応面を覆うようになり、下の反応面に落下する(図5に示されているように、下の反応面は上の反応面と比べて面積が大きい)。
【0107】
粒子状生成物は、各々の反応面の縁から滝のように落下し、最終的には反応面58の縁を越え、生成物排出口64を通って反応器の外へ滝のように落下する。
したがって、粒子状生成物は、生成物が反応面の縁に到達すると重力により回収され、反応器の底から生成物回収領域または生成物回収区域内に取り出される。
【0108】
CNFなどの粒子状生成物を製造するための、さらに別の反応器は図6に示されるが、反応床へのガスはその長さ方向に沿って供給される。
図6は、ガス入口66およびガス排出口67を有する水平型の反応容器65の概略図を示したものである。
【0109】
反応器は、また、容器の長さ方向に沿って配置された複数のガス入口68、69、70、71を有しており、そのガス入口を通じて、メタンなどの注入ガスが図7に示す反応床72に導入される。
【0110】
反応触媒は、ガス入口66、あるいは反応床72またはその近傍に配置された別の触媒入口あるいはノズル(図示せず)から導入される。
図7は図6に示される反応容器の断面図を示したものである。図7は、ガス入口が、引用符号68−71で示されるように反応器の長さ方向に沿って配置されているだけでなく(図6)、引用符号681−689で示されるように反応器の外周に配置されていること(図7)を図示したものである。
【0111】
反応器外周にそったガス入口は反応床72を支持しており、さらに反応のためのガスを供給している。それゆえ、図7に示される外周のガス入口、特に反応床72の下に配置されるガス入口を通るガスの流速を制御することにより、反応器は固定床型反応器として、あるいは流動床型反応器として運転することができる。
【0112】
運転の際には、加熱したメタンガスをガス入口66から反応器内に供給する。さらに、上述したように、メタンガスは、反応器壁中の孔68、69、70、71から反応床の長さ方向に沿って、そして、さらに図7に示されるように反応器の外周から導入される。
【0113】
このような配置の反応器では、反応床72が圧縮されると、炭素の生成が遅くなる。それゆえ、反応器は触媒床を攪拌する手段を設けてもよい。反応床にガスを流すことによって、このような攪拌(図7に示す)を行ってもよいし、反応器には、触媒床の開始端より下流(図示せず)に動的ミキサーあるいは静的ミキサーを設けてもよい。生成物は、ガス入口66とガス排出口67との間のガス流により反応器から取り出され、好ましくは、反応器から出るガス流に設けたフィルターまたはサイクロンにより回収される。
【0114】
あるいは、生成物のうちの一部、そして実際に排出ガスの一部は、入口よりもむしろ排出口として機能するように配置された開口部(例えば、図7の681〜689)から、反
応器の長さ方向に沿って取り出される。
【0115】
反応器をバッチ方式で運転する場合には、触媒/炭素床が圧縮されることにより、あるいは積極的にまたは自然に、触媒/炭素床がそれ自体を反応器中の反応区域の終端部に向かって圧縮するので、各バッチの終わり頃には、炭素の生成プロセスが遅くなるかあるいは停止する。
【0116】
1つの反応器の設計について取り上げて本明細書で開示した様々な記載事項は、他の反応器関する各々の設計に対しても同様に適用可能である。例えば、第一の反応器に関連して検討した触媒については、図5、6、および7に示される反応器に対しても同様に適用可能である。
【0117】
また、本明細書に図面を参照して説明した反応器は、ポリマー、なかでもエチレン性不飽和炭化水素のポリマー、特にオレフィンポリマーの製造に用いることができる。それゆえ、反応器は、プラスチックを製造用の重合反応器として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】図1は、第一の態様に係る反応器の模式図を示す。
【図2】図2は、反応容器の断面図を示す。
【図3】図3は、反応容器の簡略化した図、および反応容器の好ましい態様の3つの区分を示す。
【図4】図4は、複数反応器の直列の配置を示す。
【図5】図5は、階段形の反応器の配置を示す。
【図6】図6は、水平型反応器の配置を示す。
【図7】図7は、垂直型反応器の配置におけるガス入口を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器中で粒子状の炭素生成物を製造する方法であって、ガス入口とガス排出口の間のガス流により、該反応容器中の触媒を含む粒子物質床を浮遊させ、該床より落下させることにより、該粒子状炭素生成物を該反応容器から排出して炭素生成物を製造する方法。
【請求項2】
ガス透過性の遮断材を用いることにより、上記粒子状炭素生成物がガス排出口を通過しないようにした請求項1の方法。
【請求項3】
ガス入口とガス排出口の間のガス流によって上記床が流動床となるようにした請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ガス入口とガス排出口との間のガス流によって上記床が固定床となるようにした請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
触媒がガス入口から反応容器内に導入されている前記請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
注入ガスが炭素質ガスであって触媒がその中に同伴されている請求項5に記載の方法。
【請求項7】
触媒が遷移金属である前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
触媒が反応容器中の上記床の下側に導入される前記請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
触媒が反応容器中の上記床の近傍に導入される前記請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
上記床の温度が400から900℃の間である前記請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
上記床の温度が550から900℃の間である請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
上記床の圧力が2から25barである前記請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
上記床の圧力が5から20barである請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
上記床の圧力が5から15barである請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
注入ガスが昇温されて上記反応容器中に導入される前記請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
複数のガス入口から反応容器中に注入ガスを導入する前記請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
注入ガスが異なる温度で反応容器中に導入される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
粒子状炭素生成物が、上記床の下側に配置される生成物排出口を通じて排出される前記
請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
ガス入口、ガス排出口、および粒子状生成物排出口を有する容器を含む反応器であって、該ガス入口は、該入口からの使用ガス流が、該容器中の触媒を含む粒子状物質床を浮遊させ、さらに、粒子状生成物が該床から落下して、反応容器から排出されるように配置されている反応器。
【請求項20】
ガス入口、ガス排出口、および粒子状生成物排出口を有する容器を含む、炭素ナノ繊維を製造するように構成された反応器であって、該ガス入口は、該入口からの使用ガス流が、上記容器中の触媒を含む粒子状物質床を浮遊させ、さらに、粒子状生成物が該床から落下して、反応容器から排出されるように配置されている反応器。
【請求項21】
ガス入口を有し粒子状生成物の排出口により特徴づけられる下部、ガス排出口を有し反応床により特徴づけられる上部、および該下部と該上部を接合する中間部を有している容器を含む反応器であって、該下部から該中間部を通って、該上部へ流れている使用ガス流により、該反応床中の触媒を含む粒子状物質床を浮遊させ、さらに粒子状生成物が該反応床から落下することにより、該容器から排出する反応器。
【請求項22】
使用の際に粒子状炭素生成物がガス排出口を通過しないように、ガス排出口と上記床との間にさらにガス透過性の遮断材を含んでいる請求項19〜21のいずれか1項に記載の反応器。
【請求項23】
反応容器の頂部に上記ガス透過性遮断材を設けたことを特徴とする請求項22に記載の反応器。
【請求項24】
上記ガス透過性遮断材が多孔性のセラミックフィルターである請求項22または23に記載の反応器。
【請求項25】
さらに上記床を加熱するように配置した加熱手段を含む請求項19〜24のいずれか1項に記載の反応器。
【請求項26】
反応容器が複数のガス入口を備えている請求項19〜25のいずれか1項に記載の反応器。
【請求項27】
ガス入口からの使用ガスのガス流が上記床を攪拌するようにガス入口が配置されている請求項26に記載の反応器。
【請求項28】
さらに触媒入口を含む請求項19〜27のいずれか1項に記載の反応器。
【請求項29】
使用触媒が上記床の近傍に導入されるように上記触媒入口が配置されている請求項28に記載の反応器。
【請求項30】
上記中間部が上記上部および下部よりも小さな断面積を有する請求項21に記載の反応器。
【請求項31】
ガス入口およびガス排出口を有し、さらに複数の反応面を含んでいる容器を含む反応器であって、使用の際、生成物が該反応面の各々において合成され、該反応面から落下することにより、該容器から排出される反応器。
【請求項32】
上記反応面が実質的に水平な表面である請求項31に記載の反応器。
【請求項33】
上記反応面の面積が上記反応器の底部に向かって増加する請求項32に記載の反応器。
【請求項34】
さらに複数のガス入口を含む請求項31〜33のいずれか1項に記載の反応器。
【請求項35】
上記注入ガスが上記反応面それぞれに供給されるように、ガス入口が配置されている請求項34に記載の反応器。
【請求項36】
上記反応面の下側に、さらに生成物排出口が配置されている請求項31〜35のいずれか1項に記載の反応器。
【請求項37】
複数のガス入口、ガス排出口、および生成物排出口を有する容器を含む反応器であって、使用の際、反応床が触媒を含有する粒子状物質床を含む該容器中で形成され、該ガス入口が注入ガスを直接該反応床に導入するように配置されている反応器。
【請求項38】
使用注入ガスが上記床をかき混ぜる役割を果たすように、ガス入口が上記容器に対し斜めに配置されている、請求項37に記載の反応器。
【請求項39】
上記容器が水平方向に配置されている請求項37または38に記載の反応器。
【請求項40】
容器の長さ方向に沿って複数の生成物排出口が配置されていることを特徴とする請求項39に記載の反応器。
【請求項41】
使用の際上記床をかき混ぜる目的で上記容器を回転できるように、さらに容器回転手段を有する請求項37〜40のいずれか1項に記載の反応器。
【請求項42】
さらに、上記容器の内部表面に接続した攪拌手段を有する請求項41に記載の反応器。
【請求項43】
上記反応容器の内部がセラミック材料でライニングされている請求項19〜42のいずれか1項に記載の反応器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−519592(P2007−519592A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540598(P2006−540598)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【国際出願番号】PCT/GB2004/004920
【国際公開番号】WO2005/052229
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(506172986)スタットオイル エイエスエイ (7)
【Fターム(参考)】