説明

施設データ更新システム及びプログラム

【課題】新たな施設を追加する場合に、更新データの容量を小さくする。
【解決手段】配信センタから車載機へ更新施設データを配信するシステムにおいて、前記配信センタ(10)は、更新する施設データと類似する元施設データを抽出する類似施設データ抽出手段(12)と、抽出した元施設データと更新する施設データとの差分データを作成する差分データ作成手段(13)と、元施設の識別情報と差分データとを配信する通信手段(14)とを備え、前記車載機(21)は、配信されるデータを受信する通信手段(23)と、受信した元施設の識別情報から元施設データを抽出する元施設データ抽出手段(24)と、抽出した元施設データを差分データで更新して更新施設データを作成し、更新施設データに基づいて施設データを更新する更新手段(25)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は既存データを利用して変更点情報のみ配信することで施設データの更新を行うようにしたシステム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配信センタから配信される更新地図データにより車両のナビゲーション装置が持つ地図データを更新する際、ナビゲーション装置が実行した所定の処理における項目ごとの処理頻度に基づいて、更新地図データにおける更新対象を決定することにより、更新する必要のない地図データまでも更新されるのを防ぐようにした地図更新システムが提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−162270
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1のシステムにおいては、更新する必要のない地図データまで更新されることがないようにはしているが、新たな施設を追加するような更新処理の場合には、追加する施設の全データを更新する必要があり、更新データの容量が大きくなってしまうことになる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記課題を解決しようとするもので、新たな施設を追加する場合に、更新データの容量を小さくすることを目的とする。
本発明は、配信センタから車載機へ更新施設データを配信するシステムにおいて、前記配信センタは、更新する施設データと類似する元施設データを抽出する類似施設データ抽出手段と、抽出した元施設データと更新する施設データとの差分データを作成する差分データ作成手段と、元施設の識別情報と差分データとを配信する通信手段とを備え、 前記車載機は、配信されるデータを受信する通信手段と、受信した元施設の識別情報から元施設データを抽出する元施設データ抽出手段と、抽出した元施設データを差分データで更新して更新施設データを作成し、更新施設データに基づいて施設データを更新する更新手段とを備えたことを特徴とする。
また、本発明は、配信センタから車載機へ更新施設データを配信するシステムにおいて、前記配信センタは、更新する施設データと類似する元施設データを抽出する類似施設データ抽出手段と、抽出した元施設データと更新する施設データとの差分データを作成する差分データ作成手段と、元施設の識別情報と差分データとを記憶する記憶手段とを備え、前記車載機は、前記記憶手段に記憶されているデータを読み出す読み出し手段と、読み出した元施設の識別情報から元施設データを抽出する元施設データ抽出手段と、抽出した元施設データを差分データで更新して更新施設データを作成し、更新施設データに基づいて施設データを更新する更新手段とを備えたことを特徴とする。
また、本発明は、配信センタから車載機へ更新施設データを配信するシステムを制御するプログラムにおいて、更新する施設データと類似する元施設データを抽出するステップ、抽出した元施設データと更新する施設データとの差分データを作成するステップ、元施設の識別情報と差分データとを配信するステップをコンピュータに実行させることを特徴とする。
また、本発明は、配信センタから受信したデータにより車載機の施設データを更新するシステムを制御するプログラムにおいて、元施設の識別情報と差分データとを受信するステップ、受信した元施設の識別情報から元施設データを抽出するステップ、抽出した元施設データを差分データで更新して更新施設データを作成し、更新施設データに基づいて施設データを更新するステップをコンピュータに実行させることを特徴とする。
また、本発明は、配信センタから車載機へ更新施設データを配信するシステムを制御するプログラムにおいて、更新する施設データと類似する元施設データを抽出するステップ、抽出した元施設データと更新する施設データとの差分データを作成するステップ、元施設の識別情報と差分データとを記憶するステップをコンピュータに実行させることを特徴とする。
また、本発明は、配信されたデータにより車載機の施設データを更新するシステムを制御するプログラムにおいて、記憶手段より元施設の識別情報と差分データとを読み出すステップ、読み出した元施設の識別情報から元施設データを抽出するステップ、抽出した元施設データを差分データで更新して更新施設データを作成し、更新施設データに基づいて施設データを更新するステップをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、追加する施設データと既存の元施設データとを比較し、既存の元施設データとの変更点のみを更新することで、更新データの容量を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は本実施の形態に係る施設データ更新システムの例を説明する図である。本システムでは、配信センタ10は車両20に搭載されたナビゲーション装置21(車載機)から移動通信ネットワーク30を介した施設データの要求を通信手段14で受信すると、要求のあった車載機へ更新施設データを配信する。配信センタ10は、ハードディスク11にデータバージョン毎の施設データを格納しており、類似施設データ抽出手段12は新バージョンの施設データに追加する施設データと最も類似している旧バージョンの施設データを検索し、変更元の施設データ(元施設データ)として抽出する。施設データは遊興施設、公園、飲食店、デパート等ジャンル毎に分かれて格納され、各施設固有の識別情報、名称、住所(緯度・経度)、電話番号、営業時間等の項目からなっていて、ジャンルや各項目ごとに追加する施設と比較して最も類似する元施設データを抽出する。このとき、例えば元施設データの各項目において追加する施設と一致する項目数の多いデータや、同一項目内で一致する部分が多いデータが追加する施設と類似する元施設データとして判断される。差分データ作成手段13は、追加する施設データと元施設データとを比較して差異を検出して差分データを作成する。差分データは複数存在する任意の旧バージョンデータから新バージョンデータへ更新することを可能とするために、それぞれのバージョンの組み合わせ数だけ作成される。車両が施設データの更新要求及び車載機の施設データバージョンを配信センタへ送信すると、通信手段14は、車載機の施設データのバージョンに対応した元施設の識別情報、差分データを移動通信ネットワーク30を介して要求のあった車両20へ送信する。車載機では、ナビゲーションに必要な施設データをハードディスク22に格納しており、通信手段23で元施設の識別情報、差分データを受信すると、元施設抽出手段24は、識別情報から元施設データを抽出する。こうして元施設データが抽出されると、更新手段25は差分データを元施設データに反映(上書き)することで追加する施設データが得られ、新たにハードディスク22に格納される。なお、移動通信を使わずに車載機の施設データを更新する場合は、配信センタ側で作成した差分データをメモリカード等の記憶媒体に記憶しておき、ユーザは保有している施設データバージョンからの差分データが記憶されている記憶媒体を車載機へ読み込ませ施設データを更新する。
【0007】
次に、図2、図3により施設データの更新について詳細に説明する。
図2はデパートに新しいテナントが登録されたような場合の施設データの更新を説明する図である。
図2(a)に示すように、新たに追加する施設データが、例えば、「名称:○△シューズ、住所:東京都台東区□□、電話:04−xx、営業時間am10:00〜pm6:30……」であった場合を想定する。従来は、このデータをそのまま配信するためデータ容量が大きくなってしまう。本実施形態では、類似施設データ抽出手段12により、各項目を比較して一致する項目数が最も多い施設データを類似する元施設データとして抽出する。この例では、図2(b)に示すように、名称と電話番号のみ異なる既存の元施設「名称:子供服の××、住所:東京都台東区□□、電話:04−zz、営業時間am10:00〜pm6:30……」が抽出されている。同じデパートであるため、住所や営業時間が同じケースである。差分データ作成手段13は、追加する施設データ(図2(a))と元施設データ(図2(b))とを比較し、図2(c)に示すように、「元施設:子供服の××、電話:04−zz」を差分データとして作成する。このとき、元施設の識別情報も付加される。こうして、この差分データのみ配信するためデータ容量を格段に小さくすることができる。この差分データが配信された車載機側では、元施設の識別情報から元施設データを抽出し、これに差分データを反映(上書き)することで、追加する施設データを得ることができる。
【0008】
図3は東京ディズニーシーを新たに追加する場合を示している。
この例では、追加する施設が「名称:東京ディズニーシー、住所:千葉県浦安市○○、電話042−xx、営業時間:am9:00〜pm9:30……」((図3(a))であった場合を想定する。各項目を比較して一致する項目数が最も多い類似する既存の元施設として「名称:東京ディズニーランド、住所:千葉県浦安市○○、電話042−zz、営業時間:am9:00〜pm9:30……」(図3(b))が抽出されている。ここでは、名称と電話番号のみ異なるものと仮定すると、差分データとして図3(c)に示すように「元施設:東京ディズニーランド、名称:東京ディズニーシー、電話042−zz」が作成され、識別情報とともに車載機に配信され、同様にして東京ディズニーシーが新たに追加される。
【0009】
なお、上記の例では、既存の元施設として1つの施設データのみ参照するようにしたが、施設データの名称、住所、電話番号、営業時間等項目ごとに別の元施設を参照するようにしてもよい。また、図3の例の場合、名称について「東京ディズニーシー」を差分データとしたが、例えば、「8文字目〜最後を「シー」に変更」のように部分的な差分データとしてもよい。
【0010】
図4は配信センタにおける更新データの作成処理を説明する図である。
まず、追加する施設に対して最も類似した既存の元施設データを抽出し(ステップS1)、次いで、追加施設データと元施設データとの比較から差分データを作成し(ステップS2)、全ての更新データに対してこれらの処理をしたか否か判断し(ステップS3)、全ての更新データの処理が終了していなければステップS1に戻り、全ての更新データの処理が終了するまで同様の処理を行う。
【0011】
図5は車載機における新たな施設データの作成処理を説明する図である。
配信センタから配信された元施設の識別情報から既存の元施設データを抽出し、全ての元施設データを抽出したか否か判断し(ステップS11、12)、全ての元施設データを抽出すると、これに差分データを反映(上書き)する(ステップS13)。ついで、全ての更新データについて処理が行われたか否か判断し(ステップS14)、全ての更新データについての処理が終わっていない場合、ステップS11に戻って全ての更新データの処理が終了するまで同様の処理を行う。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態に係る施設データ更新システムの例を説明する図である。
【図2】施設データの更新を説明する図である。
【図3】施設データの更新を説明する図である。
【図4】配信センタにおける更新データの作成処理を説明する図である。
【図5】車載機における新たな施設データの作成処理を説明する図である。
【符号の説明】
【0013】
10…配信センタ、11…ハードディスク、12…類似施設データ抽出手段、13…差分データ作成手段、14…通信手段、20…車両、21…ナビゲーション装置、22…ハードディスク、23…通信手段、24…元施設データ抽出手段、25…更新手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配信センタから車載機へ更新施設データを配信するシステムにおいて、 前記配信センタは、更新する施設データと類似する元施設データを抽出する類似施設データ抽出手段と、抽出した元施設データと更新する施設データとの差分データを作成する差分データ作成手段と、元施設の識別情報と差分データとを配信する通信手段とを備え、 前記車載機は、配信されるデータを受信する通信手段と、受信した元施設の識別情報から元施設データを抽出する元施設データ抽出手段と、抽出した元施設データを差分データで更新して更新施設データを作成し、更新施設データに基づいて施設データを更新する更新手段とを備え、
たことを特徴とする施設データ更新システム。
【請求項2】
配信センタから車載機へ更新施設データを配信するシステムにおいて、 前記配信センタは、更新する施設データと類似する元施設データを抽出する類似施設データ抽出手段と、抽出した元施設データと更新する施設データとの差分データを作成する差分データ作成手段と、元施設の識別情報と差分データとを記憶する記憶手段とを備え、 前記車載機は、前記記憶手段に記憶されているデータを読み出す読み出し手段と、読み出した元施設の識別情報から元施設データを抽出する元施設データ抽出手段と、抽出した元施設データを差分データで更新して更新施設データを作成し、更新施設データに基づいて施設データを更新する更新手段とを備え、
たことを特徴とする施設データ更新システム。
【請求項3】
施設データは複数の項目を有し、前記類似施設データ抽出手段は、更新する施設データと元施設データの各項目を比較して一致する項目数が最も多い元施設データを、類似する元施設データとして抽出することを特徴とする請求項1又は2記載の施設データ更新システム。
【請求項4】
類似する元施設データの抽出を施設データの項目毎に行い、項目毎に差分データを作成することを特徴とする請求項1又は2記載の施設データ配信システム。
【請求項5】
差分データは、更新する項目の部分差分データであることを特徴とする請求項1又は2記載の施設データ更新システム。
【請求項6】
配信センタから車載機へ更新施設データを配信するシステムを制御するプログラムにおいて、
更新する施設データと類似する元施設データを抽出するステップ、
抽出した元施設データと更新する施設データとの差分データを作成するステップ、
元施設の識別情報と差分データとを配信するステップ、
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項7】
配信センタから受信したデータにより車載機の施設データを更新するシステムを制御するプログラムにおいて、
元施設の識別情報と差分データとを受信するステップ、
受信した元施設の識別情報から元施設データを抽出するステップ、
抽出した元施設データを差分データで更新して更新施設データを作成し、更新施設データに基づいて施設データを更新するステップ、
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項8】
配信センタから車載機へ更新施設データを配信するシステムを制御するプログラムにおいて、
更新する施設データと類似する元施設データを抽出するステップ、
抽出した元施設データと更新する施設データとの差分データを作成するステップ、
元施設の識別情報と差分データとを記憶するステップ、
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項9】
配信されたデータにより車載機の施設データを更新するシステムを制御するプログラムにおいて、
記憶手段より元施設の識別情報と差分データとを読み出すステップ、
読み出した元施設の識別情報から元施設データを抽出するステップ、
抽出した元施設データを差分データで更新して更新施設データを作成し、更新施設データに基づいて施設データを更新するステップ、
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−92494(P2009−92494A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262917(P2007−262917)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】