説明

既存大型構造物の制振システム及び制振装置

【課題】強風時・長周期地震時に居住性を損なう程度の揺れを感じる既存大型構造物においてその現状を的確に把握した上で効果的に振動低減を図る制振システムの提供。
【解決手段】既存大型構造物に関する風速、風向、風に伴う振動の加速度の測定、既存大型構造物の解析モデル作成、既存大型構造物への理論的な風荷重の作成を行う各過程S1B、S1Cと、既存大型構造物の固有値を解析する過程S2と、固有値の解析結果と理論的な風荷重とに基づき既存大型構造物の模型を使用した風洞試験を行い、風による応答加速度を推定する過程S3と、推定した応答加速度に基づきアクティブ動吸振器(AMD)と制御装置の設計、製作を行う過程S4、S5と、AMD、制御装置の性能確認試験、設置現場への搬入、AMD、制御装置の設置、調整、現場性能試験を行う各過程S6〜S9とを含み、AMDの質量マスを駆動制御して既存大型構造物の制振を行う制振システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存大型構造物(特に高層・超高層ビル等)の強風時、長周期地震時の安全性、居住性を効果的に改善する既存大型構造物の制振システム、制振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、日本においては高層・超高層ビル等の新設大型構造物については地震時、強風時の安全性、居住性を効果的に改善・向上するために、構造物の設計当初から振動低減のため下記のような制振(震)装置(エネルギー吸収装置、マスダンバー)等が計画、検討されており、数多く設置もされている。
【0003】
制震装置(エネルギー吸収装置)は、原理的に粘性、粘弾性、弾塑性又は摩擦等を利用するものであり、また、制振装置(マスダンパー)は、パッシブ型、セミアクティブ型、アクティブ型等が存在する。
【0004】
通常、高層・超高層構造物は、地震荷重よりも風荷重で構造強度が決まってくるので、強風時の振動低減対策が重要となる。
【0005】
また、大都市の既存高層・超高層構造物は、深さ約数キロメートルの堆積層の上に建築されているため、遠隔地で大きな地震が発生した時、大都市では短周期成分は距離減衰で消滅し長周期成分しか残らなくなり、その振動が高層・超高層構造物に伝達されて居住者にとっては不快な揺れを与えることになる。
【0006】
例えば東京の例では、北海道の地震、鳥取の地震、最近では新潟県中越沖地震等の影響で既存の高層・超高層ビルが数秒の長周期地振動と共振し居住性を損なうという事態が起きている。
【0007】
このように既存の高層・超高層構造物の一部は強風時、長周期地震時には振動問題を抱えた状態で存在していることになる。
【0008】
上述の通り新設大型構造物の場合では、地震対策としての制震、強風対策としての制振装置は多く設置されているが、例えばエネルギー吸収装置である制震装置(質量数百キロ程度)を既存構造物内部に設置する場合には、室内空間確保のため壁の中に仕込むので改修、設置工事が大掛かりになる。
【0009】
また、建物外部に設置する場合には、大きな反力を受けるので基礎工事が十分にされることが必要となり敷地が狭い場合には施工が困難になる。
【0010】
上記の如く高層・超高層ビルでは地震荷重より風荷重が構造強度に影響を大きく与えるので、制震、制振装置は寿命や性能の観点から多くの場合風振動対策として積極的に採用されないことが多い。
【0011】
また、既存大型構造物に対してのパッシブ制振装置の場合には、可動マス質量の大きさは対象構造物の振動質量に対して質量比1%〜3%が性能上必要であり数十トンから数百トンになるため、居住者・周辺環境との関係から十分な施工計画の基で短期間で完了する必要が有ること、このように大きな質量のため設置する床の補強が十分検討されていること、更に一番重要なことであるが、非常に高い設置場所(通常は屋上付近)までの揚重が行われるため、装置の分割、組立が安全、かつ、容易に、しかも精度良くできること等が必要となる。
【0012】
通常、新設大型構造物については、例えば強風時の居住性を高めるための制振装置は構造物の設計段階の与条件で検討する。すなわち、必要となる制振装置の設計仕様の決定は対象物件の計画値で行うことになる。
【0013】
当然のことながら、制振装置は実際の構造物の振動特性が分かっていない時点での設計となるため、十分に効果を発揮するためには竣工後構造物の振動特性の把握は必ず必要となり、最終的には制振装置設置後、制振装置の再調整を行うことになる。
【0014】
また、設計時の装置仕様が竣工後に大概変わることから、装置の再製作、設置工事が必要となる点を考慮し、設計段階で予め装置の調整範囲を予想しており、予想外の調整範囲となった場合には更に制振装置の修正・改良や部品の追加手配等が必要となり、不経済である。
【0015】
更に、パッシブ制振装置の場合には、装置設置後の対象構造物付加減衰の大きさは約7%程度であり、この場合加速度低減率は1/2.65となる。
また、構造物の振動特性が分からないと装置の最適減衰や最適振動数を決めることができないので性能的には不安が残る。
【0016】
構造物頂上部付近に設置される装置施工は、上述の通り新設の場合には通常構造物の柱・梁等の施工時に使用する重機を使用することになるが、大部分は柱・梁サイズや大型設備機械で決められる重機の能力及び現場環境により装置の設計そのものが制限される。
【0017】
しかし、既存の超高層構造物の場合には特別の重機を使用する必要から、その分割方法や組立精度及び短期間での工事完了のため、格別の工夫と施工技術が必要になる。このように色々な問題(特に性能上・現場施工上・構造物の補強技術上等の諸問題)があり対策が困難となっており、実際の施工例は存在しない。
【0018】
上述のように、新築ではなく既存大型構造物(例えば高さ60m以上の高層・超高層ビル)の場合には、強風時、長周期地震動に対する振動低減対策がされた例が無く、多くの超高層構造物は問題・不安を抱えた状態である。
【0019】
すなわち、既存超高層ビルに対しては、上述したように強風時、最近話題になってきている長周期地震動に対しての対策手法も確立されてない等、居住性改善のための振動低減対策は実施されていない。
【0020】
特許文献1には、建物に対して相対移動可能な所定重量の付加質量体をアクチュエーターにより駆動させて建物に制御力を与えるアクティブ動吸振器を、建物の上層部と中層部にそれぞれ設置し、この上層部と下層部の相対運動をセンサーにより検出し、前記上層部と中層部のアクティブ動吸振器に前記相対運動に比例した逆位相の制御信号を入力することで建物の制振を行うように構成したアクティブ動吸振器による制振方法が提案されている。
【0021】
この制振方法の場合、アクティブ動吸振器を用いるものではあるが、既存建物の風等に対する振動応答性の解析、アクティブ動吸振器の設計、製作、搬入、組み立て、性能試験等の一連の過程までは配慮されていない。
【特許文献1】特開平7−26784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明が解決しようとする問題点は、強風時・長周期地震時に居住性を損なう程度の揺れを感じる既存大型構造物においてその現状を的確に把握した上で効果的に振動低減を図る制振システム、制振装置が従来存在しない点である。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、既存大型構造物の強風時、長周期地震時における制振を行う既存大型構造物の制振システムであって、既存大型構造物の現状測定としての風速、風向、風に伴う振動の加速度を測定する過程と、既存大型構造物の解析モデルを作成する過程と、既存大型構造物に関する理論的な風荷重を作成する過程と、測定した風速、風向、風に伴う振動の加速度と、作成した解析モデルとに基づき既存大型構造物に関する固有値を解析する過程と、固有値の解析結果と、理論的な風荷重とに基づき既存大型構造物の模型を使用した風洞試験を行い、既存大型構造物の風による応答加速度を推定する過程と、推定した応答加速度に基づき、アクティブ動吸振器、制御装置の仕様を決定し、質量マスを用いたアクティブ動吸振器、現代制御理論に基づくソフトを含む制御装置の設計、製作を行う過程と、製作したアクティブ動吸振器、制御装置の性能確認試験を行う過程と、製作したアクティブ動吸振器、制御装置を既存大型構造物の設置現場に搬入する過程と、設置現場にてアクティブ動吸振器、制御装置の設置、調整を行う過程と、設置したアクティブ動吸振器、制御装置の現場性能試験を行う過程と、を含み、前記制御装置によりアクティブ動吸振器の質量マスを駆動制御して既存大型構造物の制振を行うことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
請求項1乃至3記載の発明によれば、既存の大型構造物の現状測定としての風速、風向、風に伴う振動の加速度の測定結果と、既存大型構造物の解析モデルとに基づき既存大型構造物に関する固有値を解析し、この固有値の解析結果と、理論的な風荷重とに基づいて既存大型構造物の模型を使用した風洞試験を行って推定した応答加速度によるアクティブ動吸振器及び現代制御理論に基づくソフトを含む制御装置の設計、製作、工場試験、現場搬入、設置及び調整、現場性能試験からなる一連の過程を経て、既存の大型構造物に対する効果予測を経て、既存大型構造物の強風等に伴う振動低減を実現し、居住性改善を実現できる高性能な既存大型構造物の制振システムを提供できる。
【0025】
この場合に、風速風向計、加速度計による風速、風向、加速度の測定、既存大型構造物の設置現場の床に対する3次元有限要素法を利用した解析に基づく床補強、既存大型構造物の設置現場の床への2台のアクティブ動吸振器とフィードバック制御を行う制御装置の設置等の過程を採用して、既存大型構造物に最適の制振システムを提供できる。また、アクティブ動吸振器(AMD)は、TMDやHMDに比べ、質量は1/3程度で構成でき、制御系を効率的に設計することで、部品点数の削減、揚重、床補強の設計、施工の簡略化、工期の短縮化等によりトータルコストを低減でき、かつ、既存大型構造物の居住者の負担軽減をも図ることができる。
【0026】
請求項4乃至6記載の発明によれば、既存大型構造物の現状測定としての風速、風向、風に伴う振動の加速度の測定結果と、既存大型構造物の解析モデルとに基づき既存大型構造物に関する固有値を解析し、この固有値の解析結果と、理論的な風荷重とに基づいて既存大型構造物の模型を使用した風洞試験を行って推定した応答加速度によって仕様を決定し製作したアクティブ動吸振器及び現代制御理論に基づくソフトを含む制御装置によって、既存の大型構造物に対する効果予測を経て、既存大型構造物の強風等に伴う振動低減を実現し、居住性改善を実現できる既存大型構造物の制振装置を提供できる。
【0027】
この場合に、風速風向計、加速度計による風速、風向、加速度の測定、既存大型構造物の設置現場の床への2台のアクティブ動吸振器とフィードバック制御を行う制御装置の設置等の手段を通じて既存大型構造物に最適の既存大型構造物の制振装置を提供できる。また、アクティブ動吸振器(AMD)は、TMDやHMDに比べ、質量は1/3程度で構成でき、制御系を効率的に設計することで、部品点数の削減、揚重、床補強の設計、施工の簡略化、工期の短縮化等によりトータルコストを低減でき、かつ、既存大型構造物の居住者の負担軽減をも図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明は、強風時・長周期地震時に居住性を損なう程度の揺れを感じる既存大型構造物においてその現状を的確に把握した上で効果的に振動低減を図る制振システムを提供することを目的とする。
【0029】
本発明は、既存大型構造物の強風時、長周期地震時における制振を行う既存大型構造物の制振システムであって、既存大型構造物の現状測定としての風速、風向、風に伴う振動の加速度を風速風向計、加速度計を用いて測定する過程と、既存大型構造物の解析モデルを作成する過程と、既存大型構造物に関する理論的な風荷重を作成する過程と、測定した風速、風向、風に伴う振動の加速度と、作成した解析モデルとに基づき既存大型構造物に関する一次等価マス、一次固有値、等価減衰等の固有値を解析する過程と、固有値の解析結果と、理論的な風荷重とに基づき既存大型構造物の模型を使用した風洞試験を行い、既存大型構造物の風による応答加速度を推定する過程と、推定した応答加速度に基づき、アクティブ動吸振器、制御装置の仕様を決定し、質量マスを用いた2台のアクティブ動吸振器、現代制御理論に基づくソフトを含む制御装置の設計、製作を行う過程と、製作した2台のアクティブ動吸振器、制御装置の性能確認試験を行う過程と、既存大型構造物の設置現場の床に対する3次元有限要素法を利用した解析に基づく床補強を行う過程と、製作した2台のアクティブ動吸振器、制御装置を既存大型構造物の設置現場に揚重機器類を用いて搬入する過程と、設置現場にて補強した床上に2台のアクティブ動吸振器、制御装置を所定の配置で設置し、調整を行う過程と、設置した2台のアクティブ動吸振器、制御装置の現場性能試験を行う過程と、を含み、前記制御装置により2台のアクティブ動吸振器の質量マスを各々フィードバック制御により駆動制御して既存大型構造物の制振を行う構成により上記目的を実現した。
【実施例】
【0030】
以下に、本発明の実施例に係る既存大型構造物の制振システムについて図面を参照して詳細に説明する。
【0031】
本実施例の既存大型構造物の制振システムは、強風時・長周期地震時等において、高層・超高層構造物等の既存大型構造物の居住性を向上するための効果的な対策として、対象構造物に大きな負荷減衰を付与するものである。
【0032】
本実施例に係る既存大型構造物1の制振システムは、AMD11の質量は小さいが性能が良く、従って、床補強工事、装置の移動組み立て等が容易であり、短期間、かつ、高精度で既存高層・超高層構造物のような既存大型構造物1の強風等に伴う振動低減を図り居住性改善を実現できる制振システム、AMD11を提供するものである。
【0033】
すなわち、本実施例では、制振手段として、パッシブ制振装置ではなくAMD11(アクティブマスダンパー(アクティブ動吸振器))を使用して図18に示す既存大型構造物1の強風等に伴う振動低減を実現するものである。
【0034】
また、本実施例に係るAMD11は、質量比(=可動マス/振動質量)は0.6%程度なのでパッシブ制振装置に比較して質量は1/2乃至1/6程度で済む。更に付加減衰は16%から20%強になるので加速度低滅率も1/3.9乃至1/4.5となり、大きな振動低減効果を得ることができる利点がある。
【0035】
更に、本実施例に係るAMD11は、既存大型構造物1の現状測定としての詳細は後述する風速風向計2、加速度計3を用いた風速、風向、風に伴う振動の加速度の測定結果と、既存大型構造物1の解析モデルとに基づき既存大型構造物1に関する一次等価マス、一次固有値、等価減衰等の固有値を解析し、この固有値の解析結果と、理論的な風荷重とに基づいて既存大型構造物1の模型を使用した風洞試験を行って推定した応答加速度によって仕様を決定し製作されたものであり、実際の既存大型構造物1の強風等に伴う振動特性を反映させた高性能の振動低減機能を発揮するものである。
【0036】
一般的な既存高層・超高層ビルを想定した場合、制振装置(AMD:アクティブマスダンパー:アクティブ動吸振器)を使用して効果的に強風等による振動を低減するために必要な事項は概ね下記の通りである。
【0037】
(1)営業中・居住中を前提とした施工方法の構築(特に納期・振動・騒音に対して)
(2)建物振動特性の把握(既存構造物の加振試験、或いは常時微動測定による振動質量・振動数・減衰等(実測値による))
(3)その結果に基づく風洞試験を行うと同時に計算による設置後の結果推定
(4)上記(3)で得られた結果に基づく装置仕様確定・装置設計(無駄な設計を無くし経済性を向上)・装置製作
(5)現場補強のための解析技術と補強方法の検討
(6)現場における装置の搬入・揚重等の計画
(7)現場施工
(8)効果確認試験
【0038】
なお、既存超高層ビル等が振動対策されない理由は、構造物床の補強工事、補強部材の搬入、装置の揚重、設置(組立)等制約条件が多いことに起因すると思われる。逆に言うと、実施するには上述しただけの作業が必要と言うことである。
【0039】
以下に本実施例に係る既存大型構造物の制振システムについて具体的に説明する。本実施例においては、図1に示すように、以下の処理過程ステップS1A乃至S10により既存大型構造物に対する振動低減対策を実現するものである。
【0040】
すなわち、本実施例に係る既存大型構造物の制振システムは、
既存建物の現状測定(ステップS1A)
建物解析モデル作成(ステップS1B)
風荷重の作成(ステップS1C)
固有値解析(ステップS2)
建物風の応答解析(ステップS3)
制振装置設計(ステップS4)
制振装置製作(ステップS5)
工場試験(ステップS6)
解体・搬入(ステップS7)
現場設置・調整(ステップS8)
現場性能確認試験(ステップS9)
維持管理(ステップS10)
【0041】
以下に各処理過程について詳述する。
【0042】
まず、既存大型構造物の現状測定を実行する(ステップS1A)。
図2に示すように、既存大型構造物1の例えばヘリポート階上例えば3.5mの高さの位置に風速風向計2を設置し、この既存大型構造物1に対する最大風速(瞬間)、平均風速(10分)及び風向(度)を測定する。
【0043】
実際の測定結果を図3、図4に示す。図3は風速風向計2により測定した17時間分の最大風速(瞬間)(m/s)、平均風速(10分)(m/s)の測定結果を示すものである。図4は、同じく17時間分の風向き(度)の測定結果を示すものであり、風速風向計2により上述した場合と同様17時間にわたって計測した風向データ(10分毎に集計)である。
【0044】
また、既存大型構造物1の例えば屋上塔の隅部の測定点2箇所及び中央部に、図5、図6、図7に示すように、合計3個の加速度計3を設置し、既存大型構造物1のX方向、Y方向及びねじれ方向の各振動に伴う加速度を測定する。
【0045】
加速度計3の他に、図示しないがカットオフ周波数5Hzのローパスフィルタ、データロガーを使用し低周波数大域、微振動測定可能な仕様が選定される。
【0046】
また、加速度計3を使用して測定した大型構造物1の風による振動に伴うX方向、Y方向及びねじれ方向の各加速度データを図8、図9に示す。
【0047】
図8は、平均風速(10分)(m/s)に対応する既存大型構造物1における700(sec)分のセンターねじれX方向、隅X方向、隅Y方向の加速度の時間経過を示している。
【0048】
図9は、最大風速(瞬間)(m/s)に対応する既存大型構造物1における700(sec)分のセンターねじれX方向、隅X方向、隅Y方向の加速度の時間経過を示している。
【0049】
なお、後述する居住性評価は通常再現期間として一年間の最大加速度を用いるため、最低限一年の観測が必要である。
【0050】
図10は、図示しないスペクトラムアナライザーを用いて解析した既存大型構造物1のX方向、Y方向及びねじれ方向の4種類(ケース1乃至ケース4)の振動周波数データを、図11は、図10に示すケース1の場合の既存大型構造物1のセンターX方向、隅X方向及び隅Y方向の周波数−振幅特性を示すものである。
【0051】
次に、既存大型構造物1の解析モデルを作成する(ステップS1B)。すなわち、図12に示すような既存大型構造物1の力学的な解析モデルを作成する。
【0052】
この解析モデルは、X,Y方向の並進一次モードと、ねじれ一次モードとからなる三自由度系である。そして、この解析モデルの平面二箇所にAMDの二方向の制御力が作用するようにする。これにより、ねじれに対してはX,Y方向それぞれの制御力を同時に作用させることができる。
【0053】
次に、既存大型構造物1に対する理論的な風荷重の作成を行う(ステップS1C)。
具体的には、
基準風速の決定
粗度区分の選定
鉛直方向分布係数の決定
再現期間の決定
再現期間換算係数の算定
設計風速の算定
設計速度圧の算定
風力係数の決定
ガスト影響係数の決定
風荷重の算定
等の検討を行い、各々理論的な値を設定する。
【0054】
次に、既存大型構造物1の固有値解析を行う(ステップS2)。
【0055】
すなわち、上述したステップS1で実測した既存大型構造物1の風速、風向、加速度の各データと、ステップS1Bで作成した解析モデルを使用して、その固有値を解析する。
【0056】
この場合、既存大型構造物1の固有値解析に際しては、AMDの一次等価マス、一次固有値、等価減衰仮定、1質点系に置換(風荷重の場合)等について検討し解析する。
【0057】
次に、既存大型構造物1の建物風応答解析を行い、風による応答加速度の推定を行う(ステップS6)。
【0058】
この場合に、風に関しては上述したステップS2で解析した固有値のデータを用い、また、10分間平均風速、最大風速、1年期待値、5年期待値、50年期待値、100年期待値等の点を考慮して応答加速度の推定を行う。
【0059】
更に、AMDの設置有無による比較を行うために、既存大型構造物1の模型を作成して、その振動特性を考慮しての風応答の解析を行う。この場合、風洞試験を行うことで、既存大型構造物1のための精度の高い予測を得ることができ、正確な評価が可能となる。
【0060】
このようにして、既存の大型構造物1に設置するAMD、制御装置の装置仕様を決定する。
【0061】
次に、AMD、制御装置の設計を行う(ステップS4)。すなわち、上述のようにしてAMD、制御装置の装置仕様を決定した後、下記の点を考慮しつつ計画図面、製作図面の作成、設置場所のスペース検討等を行い、AMD、制御装置を設計する。
【0062】
すなわち、AMDの質量マスの大きさとしては、制御対象となる1次振動モードの一般化質量が建物質量の1/3程度と仮定すると、1次振動モードの一般化質量に対して凡そ0.6%程度の付加錘質量と推定される。
【0063】
また、質量マスのストロークの大きさや、制御系について検討する。
【0064】
更に、制御系の設計に関しては、下記数1の運動方程式、数2の特性式、更には、運動方程式を状態方程式に書き換える式、最適レギュレータを得るためのフィードバック制御系等について考慮する。
【0065】
【数1】

【0066】
【数2】

【0067】
次に、制振装置4を構成する2台のAMD11と、制御装置12の製作を行う(ステップS5)。この場合、必要電気容量、構造強度、稼動時の騒音等を考慮する。ここで、AMD11、制御装置12について図13乃至図16を参照して具体的に説明する。
【0068】
AMD11は、図13乃至図15に示すように、床面上に設置する基台20と、基台20上に設置したX方向架台21と、X方向架台12上に配置した平行一対構成のX方向レール22と、X方向架台21上に配置した2台のX方向モータ23と、X方向モータ23によりX方向架台12上でX方向に往復駆動されるX方向質量マス24と、X方向レール22の上方で、Y方向に沿って配置したY方向架台25と、Y方向架台25上に配置した平行一対構成のY方向レール26と、Y方向架台25上に配置した一台のY方向モータ27と、Y方向レール26上にY方向に移動可能に配置され、Y方向モータ27によりY方向に往復駆動されるY方向質量マス28と、加速度センサー29と、を有している。
【0069】
前記AMD11としては、例えばアクティブ式の例を挙げることができる。また、モータ制御のアクティブ式であれば、本機構に限定されず、パッシブ機構(ばね要素、減衰要素)を組み合わせたハイブリッド式でも可能である。
【0070】
制御装置12は、図16に示すように、前記加速度センサー29の検出信号をデジタル信号に変換するA/D変換器31と、制御ソフト(大概は現代制御理論に基づくソフト等)を格納したメモリ32と、前記加速度センサー29の検出信号と制御ソフトに基づいてX方向、Y方向の制御信号を生成する制御部30と、X方向の制御信号に基づき2台のX方向モータ23を往復駆動するX方向駆動部33と、Y方向の制御信号に基づきY方向モータ26を駆動するY方向駆動部34とを具備している。
【0071】
これらの基幹技術は、
1 制御対象構造物が強風等の外乱を受けて応答する(振動解析技術)
2 計測装置である加速度センサーがこの応答を計測し(一般には応答の一部、場合によっては外乱も応答とともに計測する(計測技術)
3 この情報が制御装置に送られる
4 制御装置は受け取った情報を元に予め設定されたアルゴリズム(現代制御理論に基づく:LQ制御、ロバスト制御等)に沿ってX方向駆動部、Y方向駆動部に制御指令を送る(フィードバック制御技術)
5 制御装置は制御のためのアクションをAMDに与える(起動技術)
等からなる。
【0072】
ここで、現代制御理論は、制御系を状態方程式で記述し、2次形式で表された評価関数を最小にする状態フィードバックゲインを決定する制御系設計理論であり、LQ制御理論等がある。
【0073】
このLQ制御理論を使用するには制御対象の内部構造が解明されていることが必要となる。すなわち、最適レギュレータ理論を適用するためには制御システム全体が線形な数学モデルに表現されることが前提となる。
【0074】
具体的には、
・制御対象の内部を明確にする対象構造物の運動方程式、可動質量の運動方程式
・状態フィードバックできるセンサーの配置
・重み係数の設計バラメータとしての位置付け
等が必要となる。
【0075】
例えば、
対象構造物の絶対速度のフィードバック係数 0.35tonf/kine
AMDのストローク変位のフィードバック係数 0.02tonf/cm
AMDのストローク速度のフィードバック係数 0.001tonf/kine
等の検討を要する。
【0076】
前記最適レギュレータ理論は、現代制御理論の基本であるレギュレータ問題として取り扱うことができる。すなわち、レギュレータとは、外乱によって平衡点からずれた出力信号を速やかに元に帰還するフィードバック制御システムであり、状態フィードバック制御、出力フィードバック制御の2通りが存在する。
【0077】
また、前記ロバスト制御(H∞制御など)は、古典制御と最適レギュレータ制御とが融合した技術であり、多入力多出力系、時間領域と周波数領域、評価関数の設定、制御対象のモデル化誤差評価等の諸点で極めて理論的であり、有用な制御技術として活用される。
【0078】
次に、各種測定機器類を用いて製作したAMD11、制御装置12の工場試験を行い(ステップS6)、その性能、稼動時の騒音チェックを行って、試験要領を作成する。
【0079】
次に、AMD11の解体を行い、既存大型構造物1へ搬入する(ステップS7)が、搬入に先立ち、既存大型構造物1の設置箇所の床補強の要否を検討する。床補強工事が必要な場合には、公知の3次元有限要素法を活用した補強方式等を検討し、具体的な補強方式を決定する。
【0080】
図17に既存大型構造物1の既存床40に対する床補強の一例を示す。この場合にはH形鋼を井桁状に組み込んで補強床41とし、この補強床41をスパン10mの梁42、43、梁44、45間に両端固定する。
【0081】
また、荷重条件は梁中央部分に30トンの静荷重がかかるとものした。この場合の応力、撓みの計算結果は各々750kgf/cm、8mmであった。
【0082】
なお、既存大型構造物1の既存床40に対して直接に床補強工事を施すことも勿論可能である。
【0083】
次に、AMD11、制御装置12の現場設置・調整を行う(ステップS8)。
【0084】
この場合には、AMD11の現地搬入及び揚重に際して、機械加工品等の精度確保した上での組立方法、分割方法、揚重方法に留意する。基本的には仮設クレーンを設置し、揚重する。高さ110m程度までの超高層ビルでは地上走行クレーン等の利用も考える。
【0085】
また、必要に応じて揚重用の各種工具等も使用し、更に、仮設、組み立て治具を活用した組立工事、レベリング等を施工上の品質管理を十分行いながら実行する。
【0086】
このようにして、図18に示すように既存大型構造物1の所定の階にAMD11を2台、制御装置12を一台設置する。
【0087】
次に、設置した2台のAMD11、制御装置12の現場性能確認試験を行う(ステップS9)。
【0088】
すなわち、この場合には、AMD11を利用した加振試験による実際の既存大型構造物1の振動特性を測定し、その結果を記録し試験要領を作成する。
【0089】
次に、設置したAMD11を2台、制御装置12に関して維持管理のための交換部品リスト作成、メンテナンス契約の締結等を行う(ステップS10)。
【0090】
図19に再現期間1年の風に対するAMD11を設置しない場合の既存大型構造物1の応答加速度(風向270度:1200秒)の想定される測定データを、図20にAMD11を設置した場合の既存大型構造物1の応答加速度(風向270度:1200秒)の想定される測定データを示す。
【0091】
図21に既存大型構造物1の居住性能指針であるX方向、Y方向及びねじれ方向の周波数−加速度特性を示す。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、上述した高層・超高層ビル等の他、鉄道、道路のための橋梁、電力送電用等の鉄塔、各種タワー等に広範に応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の実施例に係る既存大型構造物の制振システムを構築するための処理の流れを示すフローチャートである。
【図2】本実施例に係る既存大型構造物の制振システムを構築するために風速、風向を測定する風速風向計の設置状態を示す概略斜視図である。
【図3】本実施例に係る既存大型構造物の制振システムの風速風向計により測定した風速データを示すグラフである。
【図4】本実施例に係る既存大型構造物の制振システムの風速風向計により測定した風向データを示すグラフである。
【図5】本実施例に係る既存大型構造物の制振システムを構築するために加速度を測定する加速度計の設置状態を示す平面図である。
【図6】本実施例に係る既存大型構造物の制振システムのX方向、Y方向の加速度を測定する2個の加速度計を示す斜視図である。
【図7】本実施例に係る既存大型構造物の制振システムの加速度を測定する既存大型構造物の中央に配置する速度計を示す斜視図である。
【図8】本実施例に係る既存大型構造物の10分平均風速下における700秒にわたるX方向(センター)、X方向(隅)、Y方向(隅)の各振動加速度データの推移を示すグラフである。
【図9】本実施例に係る既存大型構造物の瞬間風速下における700秒にわたるX方向(センター)、X方向(隅)、Y方向(隅)の各振動加速度データの推移を示すグラフである。
【図10】本実施例に係る既存大型構造物のX方向、Y方向及びねじれ方向の4種類(ケース1乃至ケース4)の振動周波数データを示す表である。
【図11】本実施例に係る既存大型構造物における図10に示すケース1の場合のセンターX方向、隅X方向及び隅Y方向の周波数−振幅特性を示すグラフである。
【図12】本実施例に係る既存大型構造物の制振システムの力学的な解析モデルを示す説明図である。
【図13】本実施例に係る既存大型構造物の制振システムを構成するAMDの平面図である。
【図14】本実施例に係る既存大型構造物の制振システムを構成するAMDの正面図である。
【図15】本実施例に係る既存大型構造物の制振システムを構成するAMDの側面図である。
【図16】本実施例に係る既存大型構造物の制振システムを構成する制御装置の構成を示すブロック図である。
【図17】本実施例に係る既存大型構造物の制振システムにおける既存床に対する床補強の態様を示す概略平面図である。
【図18】本実施例に係る既存大型構造物の制振システムにおけるAMD、及び制御装置の設置態様を示す平面図である。
【図19】本実施例に係る既存大型構造物の制振システムにおける再現期間1年の風に対するAMDを設置しない場合の大型構造物の応答加速度(風向270度:1200秒)の想定される測定データを示すグラフである。
【図20】本実施例に係る既存大型構造物の制振システムにおける再現期間1年の風に対するAMDを設置した場合の大型構造物の応答加速度(風向270度:1200秒)の想定される測定データを示すグラフである。
【図21】本実施例に係る既存大型構造物の制振システムにおける居住性能指針であるX方向、Y方向及びねじれ方向の周波数−加速度特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0094】
1 既存大型構造物
2 風速風向計
3 加速度計
4 制振装置
11 AMD
12 制御装置
20 基台
21 X方向架台
22 X方向レール
23 X方向モータ
24 X方向質量マス
25 Y方向架台
26 Y方向レール
27 Y方向モータ
28 Y方向質量マス
29 加速度センサー
30 制御部
31 A/D変換器
32 メモリ
33 X方向駆動部
34 Y方向駆動部
40 既存床
41 補強床
42 梁
43 梁
44 梁
45 梁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存大型構造物の強風時、長周期地震時における制振を行う既存大型構造物の制振システムであって、
既存大型構造物の現状測定としての風速、風向、風に伴う振動の加速度を測定する過程と、
既存大型構造物の解析モデルを作成する過程と、
既存大型構造物に関する理論的な風荷重を作成する過程と、
測定した風速、風向、風に伴う振動の加速度と、作成した解析モデルとに基づき既存大型構造物に関する固有値を解析する過程と、
固有値の解析結果と、理論的な風荷重とに基づき既存大型構造物の模型を使用した風洞試験を行い、既存大型構造物の風による応答加速度を推定する過程と、
推定した応答加速度に基づき、アクティブ動吸振器、制御装置の仕様を決定し、質量マスを用いたアクティブ動吸振器、現代制御理論に基づくソフトを含む制御装置の設計、製作を行う過程と、
製作したアクティブ動吸振器、制御装置の性能確認試験を行う過程と、
製作したアクティブ動吸振器、制御装置を既存大型構造物の設置現場に搬入する過程と、
設置現場にてアクティブ動吸振器、制御装置の設置、調整を行う過程と、
設置したアクティブ動吸振器、制御装置の現場性能試験を行う過程と、
を含み、
前記制御装置によりアクティブ動吸振器の質量マスを駆動制御して既存大型構造物の制振を行うことを特徴とする既存大型構造物の制振システム。
【請求項2】
既存大型構造物の強風時、長周期地震時における制振を行う既存大型構造物の制振システムであって、
既存大型構造物の現状測定としての風速、風向、風に伴う振動の加速度を測定する過程と、
既存大型構造物の解析モデルを作成する過程と、
既存大型構造物に関する理論的な風荷重を作成する過程と、
測定した風速、風向、風に伴う振動の加速度と、作成した解析モデルとに基づき既存大型構造物に関する固有値を解析する過程と、
固有値の解析結果と、理論的な風荷重とに基づき既存大型構造物の模型を使用した風洞試験を行い、既存大型構造物の風による応答加速度を推定する過程と、
推定した応答加速度に基づき、アクティブ動吸振器、制御装置の仕様を決定し、質量マスを用いたアクティブ動吸振器、現代制御理論に基づくソフトを含む制御装置の設計、製作を行う過程と、
製作したアクティブ動吸振器、制御装置の性能確認試験を行う過程と、
既存大型構造物の設置現場の床に対する3次元有限要素法を利用した解析に基づく床補強を行う過程と、
製作したアクティブ動吸振器、制御装置を既存大型構造物の設置現場に揚重機器類を用いて搬入する過程と、
設置現場にて補強した床上にアクティブ動吸振器、制御装置の設置、調整を行う過程と、
設置したアクティブ動吸振器、制御装置の現場性能試験を行う過程と、
を含み、
前記制御装置によりアクティブ動吸振器の質量マスを駆動制御して既存大型構造物の制振を行うことを特徴とする既存大型構造物の制振システム。
【請求項3】
既存大型構造物の強風時、長周期地震時における制振を行う既存大型構造物の制振システムであって、
既存大型構造物の現状測定としての風速、風向、風に伴う振動の加速度を風速風向計、加速度計を用いて測定する過程と、
既存大型構造物の解析モデルを作成する過程と、
既存大型構造物に関する理論的な風荷重を作成する過程と、
測定した風速、風向、風に伴う振動の加速度と、作成した解析モデルとに基づき既存大型構造物に関する一次等価マス、一次固有値、等価減衰等の固有値を解析する過程と、
固有値の解析結果と、理論的な風荷重とに基づき既存大型構造物の模型を使用した風洞試験を行い、既存大型構造物の風による応答加速度を推定する過程と、
推定した応答加速度に基づき、アクティブ動吸振器、制御装置の仕様を決定し、質量マスを用いた2台のアクティブ動吸振器、現代制御理論に基づくソフトを含む制御装置の設計、製作を行う過程と、
製作した2台のアクティブ動吸振器、制御装置の性能確認試験を行う過程と、
既存大型構造物の設置現場の床に対する3次元有限要素法を利用した解析に基づく床補強を行う過程と、
製作した2台のアクティブ動吸振器、制御装置を既存大型構造物の設置現場に揚重機器類を用いて搬入する過程と、
設置現場にて補強した床上に2台のアクティブ動吸振器、制御装置を所定の配置で設置し、調整を行う過程と、
設置した2台のアクティブ動吸振器、制御装置の現場性能試験を行う過程と、
を含み、
前記制御装置により2台のアクティブ動吸振器の質量マスを各々フィードバック制御により駆動制御して既存大型構造物の制振を行うことを特徴とする既存大型構造物の制振システム。
【請求項4】
既存大型構造物の設置現場に設置された質量マスを用いたアクティブ動吸振器と、
このアクティブ動吸振器の質量マスを駆動制御する制御装置と、
を含み、既存大型構造物の強風時、長周期地震時における制振を行う既存大型構造物の制振装置であって、
前記アクティブ動吸振器は、既存大型構造物の現状測定としての風速、風向、風に伴う振動の加速度の測定結果と、既存大型構造物の解析モデルとに基づき既存大型構造物に関する固有値を解析し、この固有値の解析結果と、理論的な風荷重とに基づいて既存大型構造物の模型を使用した風洞試験を行って推定した応答加速度によって仕様を決定し製作されたものであり、
前記制御装置は、前記応答加速度によって仕様を決定し製作された現代制御理論に基づくソフトを含むものであること、
を特徴とする既存大型構造物の制振装置。
【請求項5】
既存大型構造物の設置現場に所定の配置で設置された2台の質量マスを用いたアクティブ動吸振器と、
この2台のアクティブ動吸振器の質量マスを各々駆動制御する制御装置と、
を含み、既存大型構造物の強風時、長周期地震時における制振を行う既存大型構造物の制振装置であって、
前記2台のアクティブ動吸振器は、既存大型構造物の現状測定としての風速風向計、加速度計を用いた風速、風向、風に伴う振動の加速度の測定結果と、既存大型構造物の解析モデルとに基づき既存大型構造物に関する一次等価マス、一次固有値、等価減衰等の固有値を解析し、この固有値の解析結果と、理論的な風荷重とに基づいて既存大型構造物の模型を使用した風洞試験を行って推定した応答加速度によって仕様を決定し製作されたものであり、
前記制御装置は、前記応答加速度によって仕様を決定し製作された現代制御理論に基づくソフトを含むものであること、
を特徴とする既存大型構造物の制振装置。
【請求項6】
既存大型構造物の設置現場に所定の配置で設置された2台の質量マスを用いたアクティブ動吸振器と、
この2台のアクティブ動吸振器の質量マスを各々駆動制御する制御装置と、
を含み、既存大型構造物の強風時、長周期地震時における制振を行う既存大型構造物の制振装置であって、
前記2台のアクティブ動吸振器は、既存大型構造物の現状測定としての風速風向計、加速度計を用いた風速、風向、風に伴う振動の加速度の測定結果と、既存大型構造物の解析モデルとに基づき既存大型構造物に関する一次等価マス、一次固有値、等価減衰等の固有値を解析し、この固有値の解析結果と、理論的な風荷重とに基づいて既存大型構造物の模型を使用した風洞試験を行って推定した応答加速度によって仕様を決定し製作されたものであって、床面上に設置する基台と、基台上に設置したX方向架台と、X方向架台上に配置した平行一対構成のX方向レールと、X方向架台上に配置した2台のX方向モータと、X方向モータによりX方向架台上でX方向に往復駆動されるX方向質量マスと、X方向レール上にY方向に沿って配置したY方向架台と、Y方向架台上に配置した平行一対構成のY方向レールと、Y方向架台上に配置した一台のY方向モータと、Y方向レール上にY方向に移動可能に配置され、Y方向モータによりY方向に往復駆動されるY方向質量マスと、加速度センサーと、を有し、
前記制御装置は、前記応答加速度によって仕様を決定し製作された現代制御理論に基づくソフトを含み、フィードバック制御により2台のアクティブ動吸振器のX方向質量マス、
Y方向質量マスを各々制御するものであること、
を特徴とする既存大型構造物の制振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−191961(P2009−191961A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33634(P2008−33634)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(503031695)ロッテ建設株式会社 (1)
【氏名又は名称原語表記】Lotte Engineering & Construction Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】50−2,Jamwondong,Seochogu,Seoul,Korea
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】