説明

易剥離性フィルム、現像剤収納容器およびプロセスカートリッジ

【課題】現像剤収納容器用蓋材として用いるのに良好なシール性、易剥離性、剥離外観、耐熱性および耐カール性に優れる易剥離性フィルムを提供する。
【解決手段】シール層と、前記シール層と隣接して積層されてなる隣接層とを有し、前記シール層が一方の表層である易剥離性フィルムにおいて、前記シール層が、エチレン・不飽和エステル共重合体成分(C)100重量部と、粘着付与樹脂(D)を5〜40重量部含有する熱可塑性樹脂組成物(A)から形成され、かつ、前記隣接層が、結晶性プロピレン系樹脂(E)50〜99重量%と、エチレン系樹脂(F)および/またはスチレン系樹脂(G)1〜50重量%を含有する熱可塑性樹脂組成物(B)から形成される易剥離性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易剥離性フィルム、該易剥離性フィルムを蓋材として用いた現像剤収納容器、および該現像剤収納容器を有するプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真記録装置がプリンタや複写機等に使用されているが、コンピュータ、ファクシミリ、CAD等の情報機器の端末装置のプリンタに使用されるプロセスカートリッジにおいては、当該プロセスカートリッジをプリンタ本体に一度装着すると、これに内蔵された現像剤を使い切るまで、現像剤撹拌装置を作動させることによって、該カートリッジ内に設けられた現像剤収納部から現像剤を徐々に現像スリーブ及び感光ドラム側に排出させている。
【0003】
一方、複写機等に現像剤を補給する現像剤供給容器は、内蔵された現像剤の全量を複写機本体内の現像剤受入容器に一度に供給するいわゆる補給型容器と、複写機本体に当該容器を装着した後、そのまま該容器を複写機本体内に据え置きし、プロセスカートリッジと同様に現像剤を使い切るまで現像剤撹拌装置を作動させることで現像剤を徐々に現像器側に排出させていくいわゆる据え置き型容器とに大別される。
【0004】
ところで、主にプロセスカートリッジをシールし、本体へ現像剤を排出する際には、該シール部材を外部から引き抜き除去して開封する操作を行なうことにより、容器内に収納されている現像剤を、開封された容器開口部から現像器本体内へ流出させて補給するために、一般的に易剥離性フィルムと呼ばれるシール部材が用いられている。
【0005】
上記易剥離性フィルムの特性としては、現像剤収納容器内の現像剤を排出するとき、即ち、シール部材を開封するときのみ容易に開口し、それ以外のときには開口せず、常に中身である現像剤を保護できるものでなければならない。
【0006】
易剥離性フィルムとしては、フィルムを脆弱化させて凝集剥離する凝集剥離タイプと、被着体とフィルムとの界面で剥離する界面剥離タイプとに分けられる。現像剤収納容器のシール部材としては、容器内に凝集剥離後に発生するフィルム屑等が混入すると重大な画像不良原因になるため、被着体とフィルムとの界面できれいに剥離する界面剥離タイプの易剥離性フィルムが用いられている。このような現像剤収納容器に用いられる易剥離性フィルムとして、ポリエステル層とナイロン層とが積層されたフィルムが知られている。しかしながらこのようなフィルムは、カールが発生しやすいという問題があった。現像剤収納容器のシール部材として用いる場合にカールが発生すると、感光ドラム等を搭載したドラム容器との合体の際に合体作業が阻害され、フィルム噛み込みトラブルが発生する原因となる。カールの発生の少ない易剥離性フィルムとして、厚さ30〜50μmのポリエステルフィルムと、厚さ10〜30μmのポリエステル層および厚さ30〜50μmのエチレン・酢酸ビニル共重合体層とが積層された易剥離性フィルムが特許文献1に開示されている。しかしながら前記易剥離性フィルムをシール部材として用いた場合には、シールした現像剤収納容器を保管している間に、フィルムが剥離してしまうことがあった。これは、前記易剥離性フィルムの耐熱性が不足しているためである。また、カール抑制の点においても、さらなる改良が求められている。
【0007】
【特許文献1】特開平6−308783号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、現像剤収納容器用蓋材として用いるのに良好なシール性、易剥離性、剥離外観、耐熱性および耐カール性に優れる易剥離性フィルムを提供することである。さらに本発明の目的は、前記易剥離性フィルムにより開口部がシールされた、操作性が良好な現像剤収納容器、および該現像剤収納容器を有するプロセスカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、シール層と、前記シール層と隣接して積層されてなる隣接層とを有し、前記シール層が一方の表層である易剥離性フィルムにおいて、前記シール層が、不飽和エステル化合物に由来する構成単位を5〜13重量%含有するエチレン・不飽和エステル共重合体(C−1)と、不飽和エステル化合物に由来する構成単位を18〜25重量%含有するエチレン・不飽和エステル共重合体(C−2)との混合物であるエチレン・不飽和エステル共重合体成分(C)100重量部と、該成分(C)100重量部に対し粘着付与樹脂(D)を5〜40重量部含有する熱可塑性樹脂組成物(A)から形成され、かつ、前記隣接層が、結晶性プロピレン系樹脂(E)50〜99重量%と、エチレン系樹脂(F)および/またはスチレン系樹脂(G)1〜50重量%を含有する熱可塑性樹脂組成物(B)から形成されることを特徴とする易剥離性フィルムである。
さらに本発明は、内部に現像剤を保有する容器であって、その開口部が前記易剥離性フィルムでシールされてなる現像剤収納容器である。
また本発明は、少なくとも像担持体と現像器を含んで構成され、画像形成装置本体に対して着脱自在なプロセスカートリッジにおいて、前記現像剤収納容器を有してなるプロセスカートリッジである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の易剥離性フィルムは、シール性、易剥離性、剥離外観、耐熱性および耐カール性に優れる。本発明の現像剤収納容器、およびプロセスカートリッジは、操作性が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の易剥離性フィルムは、シール層と、前記シール層と隣接して積層されてなる隣接層とを有し、前記シール層が一方の表層である。前記シール層は、熱可塑性樹脂組成物(A)から形成される。本発明の易剥離性フィルムを被着体の蓋材として使用する場合には、該シール層が被着体と接するようにして用いる。前記隣接層は、本発明の易剥離性フィルムの他方の表層であってもよく、前記二層以外の層を有する場合には中間層となる。
【0012】
前記シール層を形成する熱可塑性樹脂組成物(A)は、不飽和エステル化合物に由来する構成単位を5〜13重量%含有するエチレン・不飽和エステル共重合体(C−1)と、不飽和エステル化合物に由来する構成単位を18〜25重量%含有するエチレン・不飽和エステル共重合体(C−2)との混合物であるエチレン・不飽和エステル共重合体成分(C)100重量部と、該成分100重量部に対し粘着付与樹脂(D)を5〜40重量部含有する組成物である。
【0013】
熱可塑性樹脂組成物(A)に含まれるエチレン・不飽和エステル共重合体成分(C)とは、エチレンと不飽和エステル化合物とを共重合して得られる重合体である。前記不飽和エステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル化合物や、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルのような不飽和カルボン酸エステル化合物があげられる。中でも、不飽和カルボン酸エステル化合物であることが好ましく、アクリル酸メチル共重合体、アクリル酸エチル共重合体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルから選ばれる不飽和カルボン酸エステル化合物であることが特に好ましい。
【0014】
前記エチレン・不飽和エステル共重合体成分(C)は、不飽和エステル化合物に由来する構成単位を5〜13重量%含有するエチレン・不飽和エステル共重合体(C−1)と、不飽和エステル化合物に由来する構成単位を18〜25重量%含有するエチレン/不飽和エステル共重合体(C−2)との混合物である。エチレン・不飽和エステル共重合体成分(C)として、エチレン・不飽和エステル共重合体(C−1)のみを含む場合には、被着体とのシール性が不足したり、剥離時のスリップスティック(ジッパリング)現象(一般的に剥離強度の強弱を伴いながら剥離される現象をいう)が発生して剥離しにくくなる。一方、エチレン・不飽和エステル共重合体(C−2)のみを含む場合には、耐熱性が不十分であり、該易剥離性フィルムをシール部材として用いた場合に、シールした現像剤収納容器を保管している間に、フィルムが剥離してしまうおそれがあるため、好ましくない。なお、エチレン・不飽和エステル共重合体(C−1)およびエチレン・不飽和エステル共重合体(C−2)における不飽和エステル化合物に由来する構成単位の含有量とは、各エチレン・不飽和エステル共重合体の重量を100%としたときの値である。
【0015】
前記エチレン・不飽和エステル共重合体成分(C)は、エチレン・不飽和エステル共重合体(C−1)30〜70重量%と、前記エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(C−2)70〜30重量%との混合物であることが好ましい。また、前記共重合体(C−1)及び(C−2)として、それぞれ2種以上の共重合体を用いてもよい。
【0016】
シール層を形成する熱可塑性樹脂組成物(A)に含まれる粘着付与樹脂(D)としては、脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、テルペン系樹脂、ロジン類などの通常のホットメルト接着剤分野で利用されている樹脂が挙げられる。
具体的には、脂肪族炭化水素としては、炭素原子数4〜5のオレフィンやジエンなどを主成分モノマーとして重合して得られる重合体を挙げることができる。脂環族炭化水素樹脂としては、C4やC5留分を環化2量化後重合させて得られる樹脂、シクロペンタジエンなどを重合させて得られる樹脂またはその水素添加物、芳香族炭化水素樹脂や脂肪族・芳香族共重合炭化水素樹脂を核内水素添加した樹脂などが挙げられる。またテルペン系樹脂としては、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテンなどの重合体、テルペン・フェノール共重合体樹脂あるいはそれらの水素添加された樹脂などが挙げられる。さらにロジン類としてはトールロジン、ガムロジン、ウッドロジンなどのロジンおよびその変性物、変性としては水素添加、不均化、二量化、エステル化などが挙げられる。本発明の易剥離性フィルムを蓋材として用いた場合の密封性と易剥離性のバランスの観点から、粘着付与樹脂としては、水素添加した樹脂を用いることが好ましく、水素添加テルペン系樹脂がより好ましい。熱可塑性樹脂組成物(A)は、エチレン・不飽和エステル共重合体成分(C)100重量部と、該成分(C)に対し粘着付与樹脂(D)を5〜40重量部含有する。シール性、剥離外観、フィルム加工性の観点から、熱可塑性樹脂組成物(A)中の粘着付与樹脂(B)の割合は、5〜35重量部であることが好ましい。
【0017】
シール層を形成する熱可塑性樹脂組成物(A)は、本発明の効果を阻害しない範囲で、エチレン・不飽和エステル共重合体(C)以外のエチレン系樹脂や、プロピレン系樹脂、スチレン系樹脂、エステル系樹脂、ワックスなどを含んでいてもよい。また、相溶化剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、防曇剤、帯電防止材などを含んでいてもよい。
【0018】
本発明の易剥離性フィルムは、シール層と隣接して積層されてなる隣接層を有する。該隣接層は、結晶性プロピレン系樹脂(E)50〜99重量%と、エチレン系樹脂(F)および/またはスチレン系樹脂(G)1〜50重量%との混合物である熱可塑性樹脂組成物(B)から形成される。なお、前記樹脂(E)、樹脂(F)、樹脂(G)の割合は、熱可塑性樹脂組成物(B)に含まれる前記3種類の樹脂の合計を100%とするときの値である。熱可塑性樹脂組成物(B)に含まれる前記各樹脂の割合は、結晶性プロピレン系樹脂(E)60〜90重量%、エチレン系樹脂(F)および/またはスチレン系樹脂(G)10〜40重量%であることがより好ましい。
【0019】
前記結晶性プロピレン系樹脂(E)としては、プロピレン単独重合体、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体などのプロピレン・α−オレフィン共重合体およびこれらの混合物が挙げられる。プロピレン・α−オレフィン共重合体は、プロピレンに由来する構成単位を80重量%以上含有することが好ましい。プロピレンと共重合するα−オレフィンとしては、エチレン及び/又はブテン−1等が挙げられる。
なお、本発明における結晶性プロピレン系樹脂(E)とは、以下の方法によって結晶化ピークまたは融解ピークが観測される樹脂である。
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製DSC220C)を用い以下の条件で樹脂の融解挙動を測定する。各工程において横軸に時間、縦軸に融解熱量をプロットして融解曲線を得、(ii)の工程において観測されるピークを結晶化ピーク、(iii)の工程において観測されるピークを融解ピークとする。
(i)試料約5mgを室温から30℃/分の速度で200℃まで昇温し、昇温完了後、5分間保持する。
(ii)次いで、200℃から10℃/分の速度で−100℃まで降温し、降温完了後、5分間、保持する。
(iii)次いで、−100℃から10℃/分の速度で200℃まで昇温する。
易剥離性フィルムの耐カール性の観点から、結晶性プロピレン系樹脂(E)は、前記工程(iii)で観測されるDSC曲線において125℃以上に融解ピーク温度を有する樹脂であることが好ましい。
【0020】
熱可塑性樹脂組成物(B)は、エチレン系樹脂(F)および/またはスチレン系樹脂(G)を含む。前記エチレン系樹脂(F)としては、低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレン等のポリエチレン、エチレン/ブテン−1共重合体やエチレン/ヘキセン−1共重合体等のエチレン/α−オレフィン共重合体、エチレン/不飽和エステル共重合体や、これらのマレイン酸グラフト重合体等が挙げられる。スチレン系樹脂(G)としては、GPPS(general purpose polystyrene)、HIPS(high impact polystyrene)、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重体又はその水素添加物、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体又はその水素添加物、これらのマレイン酸グラフト重合体等が挙げられる。
【0021】
隣接層を形成する熱可塑性樹脂組成物(B)は、本発明の効果を阻害しない範囲で、相溶化剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、防曇剤、帯電防止材などを含んでいてもよい。
【0022】
本発明の易剥離性フィルムは、前記隣接層上に、結晶性プロピレン系樹脂(H)または結晶性プロピレン系樹脂(H)を主成分とする熱可塑性樹脂組成物(I)から形成される基材層が隣接して積層されてなることが好ましい。この場合本発明の易剥離性フィルムの層構成は、シール層/隣接層/基材層となる。
【0023】
基材層を形成する結晶性プロピレン系樹脂(H)としては、前記した熱可塑性樹脂組成物(B)に含まれる結晶性プロピレン系樹脂(E)として例示した樹脂を用いることができる。基材層は、前記結晶性プロピレン系樹脂(H)を主成分とする熱可塑性樹脂組成物(I)から形成されていてもよい。熱可塑性樹脂組成物(I)に含まれる結晶性プロピレン系樹脂(H)以外の成分としては、エチレン系樹脂、スチレン系樹脂、エステル系樹脂、ワックス等が挙げられる。ただし熱可塑性樹脂組成物(I)に含まれる前記樹脂(H)の割合は、50重量%以上であり、80重量%以上であることが好ましい。基材層には、相溶化剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、防曇剤、帯電防止材などが含まれていてもよい。
【0024】
本発明の易剥離性フィルムの厚みは、通常10〜200μmである。本発明の易剥離性フィルムがシール層と隣接層から構成される場合、シール層の厚みは通常3〜140μmであり、10〜100μmであることが好ましく、15〜80μmであることがより好ましい。隣接層の厚みは通常3〜140μmであり、10〜100μmであることが好ましく、15〜80μmであることがより好ましい。本発明の易剥離性フィルムが基材層を有する場合、シール層の厚みは通常3〜140μmであり、10〜100μmであることが好ましく、20〜80μmであることがより好ましい。隣接層の厚みは通常3〜100μmであり、5〜80μmであることが好ましく、10〜40μmであることがより好ましく、基材層の厚みは通常3〜100μmであり、5〜80μmであることが好ましく、10〜40μmであることがより好ましい。
【0025】
本発明の易剥離性フィルムは、公知の方法によって製造することができる。例えば共押出インフレーション成形法、共押出Tダイキャスト成形法、共押出ラミネート成形法等によって製造することができる。生産性の観点から、共押出Tダイキャスト成形法または共押出インフレーション成形法により製造することが好ましい。
【0026】
本発明の易剥離性フィルムは、種々の容器等の蓋材として好適に用いることができる。易剥離性フィルムと蓋材として使用する場合には、易剥離性フィルムのシール層が被着体と接するようにしてヒートシールする。そのため易剥離性フィルムのシール層とは異なる表層は、ヒートシールに耐えうる耐熱性が求められる。したがって本発明の易剥離性フィルムを蓋材として使用する際には、シール層とは異なる表層が保護層から形成されてなることが好ましい。具体的には、シール層/隣接層/保護層(構成1)、シール層/隣接層/基材層/保護層(構成2)のような構成が挙げられる。また、構成1の場合には隣接層と保護層との間、構成2の場合には基材層と保護層との間に、他の層を有していてもよい。
【0027】
保護層は、シール層や隣接層等と共に共押出によって設けてもよいし、押出ラミネート成形法によって、構成1の場合には隣接層上に、構成2の場合には基材層上に積層してもよい。予め成形されたフィルムを、ドライラミネート成形法などの方法で、構成1の場合には隣接層上に、構成2の場合には基材層上に積層してもよい。保護層として用いることができる予め成形されたフィルムとしては、二軸延伸ポリエステルフィルム、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルムなどの熱可塑性樹脂からなるフィルムや、熱可塑性樹脂からなるフィルムに印刷層、塗工層、蒸着層を設けたフィルム、紙などが挙げられる。例えば二軸延伸ポリエステルフィルムを保護層として積層する場合には、易剥離性フィルムのシール層とは異なる表層面にコロナ処理などの表面処理を施しておき、二軸延伸ポリエステルフィルムの片面には接着剤を塗布しておく。そしてコロナ処理面と二軸延伸ポリエステルフィルムの接着剤面とをドライラミネーターにて圧着した後、エージングすることにより、構成1の場合には隣接層上に、構成2の場合には基材層上に保護層を積層することができる。
【0028】
本発明の易剥離性フィルムは、シール性、易剥離性、剥離外観、耐カール性および耐熱性に優れるため、種々の容器用蓋材として好適であり、特に内部に現像剤を保有する現像剤収納容器用として好適である。内部に現像剤を保有する容器であって、その開口部が本発明の易剥離性フィルムでシールされてなる現像剤収納容器は、カールがほとんど発生しないため、感光ドラム等を搭載したドラム容器との合体作業が容易であり、フィルム噛み込みトラブルがないため操作性が良好である。このような現像剤収納容器は、少なくとも像担持体と現像器を含んで構成され、画像形成装置本体に対して着脱自在なプロセスカートリッジに適用できる。
【0029】
次に、図1に示すような本発明のプロセスカートリッジ及び画像形成装置について説明する。図1に示す画像形成装置においては、先ず、不図示のコントローラから送られるビデオ信号はレーザ走査光学系ユニット45に入力される。尚、レーザ走査光学系ユニット45は半導体レーザ、コリメータレンズ、ポリゴンミラー、f−θレンズ、倒れ補正レンズ等から構成されている。
【0030】
そして、ビデオ信号は半導体レーザに印加され、その発散するレーザ光はコリメータレンズで平行光とされ、平行光は高速で回転するポリゴンミラーに照射され、レーザ光が反射ミラー46を介して像担持体である感光ドラム30の露光部31に走査される。このとき、半導体レーザが感光ドラム30の感光面を走査するタイミング、即ち、ビデオ信号の送出タイミングを検知するため、レーザ光の感光ドラム30の感光面走査前の所定位置にレーザ光を検出する不図示のビームディテクタが配置されており、生成されたBD信号に同期してビデオ信号が送られる。
【0031】
ところで、プロセスカートリッジZは、前記感光ドラム30と、これの周囲に配される帯電ローラ33、現像器34、転写ローラ35及びクリーナ36を一体に組み込んでユニットとして構成され、これは画像形成装置本体100に対して着脱自在とされる。
【0032】
そして、カセット37に積載された転写材は、不図示のCPUからの信号によって駆動される給紙ローラ38により給紙され、レジストローラ39により転写部への搬送のタイミングを制御されて感光ドラム30上の現像剤画像を転写され、搬送ガイド40を介して定着ローラ41により定着され、搬送ガイド42、排紙ローラ43を経て排紙部44に排紙される。
【0033】
以上のような画像形成方法にて画像形成を行なうプロセスカートリッジZについてさらに詳しく説明する。
【0034】
図2に示すように、プロセスカートリッジZの現像剤収納容器Yは、撹拌板1、撹拌軸2及び撹拌アーム4から成る現像剤撹拌部材と、充填口10と、現像剤排出部12と、撹拌軸稼動部7と、撹拌軸2の先端部の軸摺動部2’と、軸受部5で構成されている。そして、該現像剤収納容器Yは、図3に示すように、当該現像剤収納容器Yに撹拌部材を組み込んだ後に封止する蓋13と現像剤排出部12を封止するイージーピールフィルムXにて完全に封止される。
【0035】
この後、感光ドラム30等を搭載したドラム容器と超音波溶着等により合体されることによって、プロセスカートリッジZが作製される。
【0036】
そして、プロセスカートリッジZを画像形成装置本体100に装着した後、現像剤tを感光ドラム30側に排出できるように、本発明に係る易剥離性フィルムXを開封する。この際、図4に示すように、現像剤収納容器Yの易剥離性フィルムXの引き出し部Hには、開封後にトナー漏れを防止するようにドラム容器の先端部200と現像剤収納容器Yの先端部300との間のドラム容器側に発泡ポリウレタン等からなる端部シールMを貼着する。尚、この端部シールMは、通常、2mm〜5mm程度の厚さから、ドラム容器を合体後には約1/2〜1/3程度に圧縮され、これにより開封後のトナー漏れを防いでいる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例で用いた樹脂の物性の測定方法は、以下のとおりである。
(1)融解ピークおよび結晶化ピークの測定
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製DSC220C)を用い、以下の条件で樹脂の融解挙動を測定した。各工程において横軸に時間、縦軸に融解熱量をプロットして融解曲線を得、(ii)の工程において観測されるピークを結晶化ピーク、(iii)の工程において観測されるピークを融解ピークとした。
(i)試料約5mgを室温から30℃/分の速度で200℃まで昇温し、昇温完了後、5分間保持する。
(ii)次いで、200℃から10℃/分の速度で−100℃まで降温し、降温完了後、5分間、保持する。
(iii)次いで、−100℃から10℃/分の速度で200℃まで昇温する。
(2)メルトフローレート
JIS K7210に従い、測定した。
【0038】
[実施例1]
エチレン・不飽和エステル共重合体成分(C)として、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体(C−1)(住友化学(株)製 商品名アクリフト:WH206、メタクリル酸メチル由来の構成単位の含有量20重量%,メルトフローレート(190℃、2.16kgf)=2g/10分)40重量%、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体(C−2)(住友化学(株)製 商品名アクリフト:WD201、メタクリル酸メチル由来の構成単位の含有量10重量%,メルトフローレート(190℃、2.16kgf)=2g/10分)37重量%、粘着付与樹脂(B)としてテルペン樹脂(ヤルハラケミカル(株)製 商品名クリアロン:P−135、軟化点135℃)18重量%、耐衝撃性ポリスチレン(日本ポリスチレン(株)製 H550)5重量%を、シリンダー温度およびダイス温度を200℃に設定した同方向45mmΦ2軸押出機を用いて溶融混合し、熱可塑性樹脂組成物(A)のペレットを得た。シール層を形成する材料として、該熱可塑性樹脂組成物(A)を用いた。
隣接層には、結晶性プロピレン系樹脂(E)としてエチレン・プロピレン共重合体(メルトフローレート(230℃、2.16kgf)=6g/10分、エチレン由来の構成単位含有量=4重量%、融解ピーク温度142℃)80重量%、エチレン系樹脂(F)として線状低密度ポリエチレン(メルトフローレート(190℃、2.16kgf)=4g/10分、密度=0.901)20重量%をペレットブレンドした熱可塑性樹脂組成物(B)を用いた。
基材層には結晶性プロピレン系樹脂(H)として、中間層で用いたエチレン・プロピレン共重合体を用いた。
上記材料を用い、3種3層共押出Tダイキャスト加工機(押出機A:40mmφ、押出機B:50mmφ、押出機C:40mmφ、層構成=押出機A/押出機B/押出機C)を用い、押出機Aに基材層用樹脂(H)、押出機Bに隣接層用熱可塑性樹脂組成物(B)、押出機Cにシール層用熱可塑性樹脂組成物(A)を投入し、押出温度220℃で成形し、基材層、隣接層、シール層が順に積層されてなる積層フィルムを製造した。さらに該積層フィルムの基材層側に、濡れ張力45dyn/cmとなるようにコロナ放電処理を行った。得られた積層フィルムのシール層厚みは40μm、隣接層厚みは20μm、基材層厚みは20μm、全体厚みは80μmであった。
【0039】
[実施例2]
シール層を形成する材料として実施例1で用いた熱可塑性樹脂組成物(A)、隣接層を形成する材料として実施例1で用いた隣接層用熱可塑性樹脂組成物(B)を用い、2種2層の積層フィルムを得た。実施例1で用いた3種3層共押出Tダイキャスト加工機を用い、押出機Aに隣接層用熱可塑性樹脂組成物(B)、押出機BおよびCにシール層用熱可塑性樹脂組成物(A)を投入し、押出温度220℃で成形し、隣接層/シール層が順に積層されてなる積層フィルムを製造した。さらに該積層フィルムの隣接層側に、濡れ張力45dyn/cmとなるようにコロナ放電処理を行った。得られた積層フィルムのシール層厚みは60μm、隣接層厚みは20μm、全体厚みは80μmであった。
【0040】
[実施例3]
実施例1で用いた隣接層及び基材層に含まれる結晶性プロピレン系樹脂(H)をプロピレン単独重合体(230℃、2.16kgf)=2g/10分、融解ピーク温度158℃)に変更した以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムのシール層厚みは30μm、隣接層厚みは15μm、基材層厚みは15μm、全体厚みは60μmであった。
【0041】
[比較例1]
基材層に実施例3で使用したプロピレン単独重合体(230℃、2.16kgf)=2g/10分、融解ピーク温度158℃)を用い、実施例2と同様にして隣接層/シール層からなる積層フィルムを得た。得られた積層フィルムのシール層厚みは30μm、隣接層厚みは30μm、全体厚みは60μmであった。
[比較例2]
隣接層に線状低密度ポリエチレン(メルトフローレート(190℃、2.16kgf)=4g/10分、密度=0.923)を用い、実施例2と同様にして隣接層/シール層からなる積層フィルムを得た。得られた積層フィルムのシール層厚みは30μm、隣接層厚みは30μm、全体厚みは60μmであった。
[比較例3]
隣接層に高密度ポリエチレン(メルトフローレート(190℃、2.16kgf)=1g/10分、密度=0.954)を用い、実施例2と同様にして隣接層/シール層からなる積層フィルムを得た。得られた積層フィルムのシール層厚みは30μm、隣接層厚みは30μm、全体厚みは60μmであった。
【0042】
[比較例4]
隣接層に実施例1で用いたエチレン・メタクリル酸メチル共重合体(C−1)を用い、実施例2と同様にして隣接層/シール層からなる積層フィルムを得た。得られた積層フィルムのシール層厚みは30μm、隣接層厚みは30μm、全体厚みは60μmであった。
[比較例5]
実施例1で用いたエチレン・メタクリル酸メチル共重合体(C−1)72重量%、テルペン樹脂20重量%、耐衝撃性ポリスチレン8重量%を、実施例1と同様に2軸押出機を用いて溶融混合し、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得、シール層用として用いた。隣接層には比較例2で用いた線状低密度ポリエチレンを用い、実施例2と同様にして、隣接層/シール層からなる積層フィルムを作製した。得られた積層フィルムのシール層厚みは40μm、隣接層厚みは30μm、全体厚みは70μmであった。
[比較例6]
実施例1で用いたエチレン/メタクリル酸メチル共重合体(C−2)73重量%、テルペン樹脂21重量%、耐衝撃性ポリスチレン6重量%を、実施例1と同様に2軸押出機を用いて溶融混合し、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得、シール層用として用いた。隣接層には比較例2で用いた線状低密度ポリエチレンを用い、実施例2と同様にして、隣接層/シール層からなる積層フィルムを作製した。得られた積層フィルムのシール層厚みは50μm、隣接層厚みは30μm、全体厚みは80μmであった。
【0043】
実施例1〜3および比較例1〜6で得られた積層フィルムを、下記の方法により評価した。結果を表1に示した。
(1)易剥離性
康井精機(株)製コーターを用い、脂肪族エステル系コート剤(主剤=三井武田ケミカル(株)「タケラックA−515」、硬化剤=三井武田ケミカル(株)「タケネートA−50」、酢酸エチルをそれぞれ10対1対15の重量比で配合し十分に混合したもの)をポリエステルフィルム(ユニチカ(株)製、商品名「PTMX」、厚さ25μm、幅330mm)に塗布し、上記実施例および比較例で得られた各積層フィルムのコロナ処理面と圧着させた後、40℃のオーブンにて24時間加熱し、評価用フィルムを得た。通常現像剤収納容器は耐衝撃性ポリスチレン製であるため、被着体として、耐衝撃性ポリスチレン(日本ポリスチレン(株)製:H550、厚み=300μm)を70×90mmに切り出したものを用い、該被着体と得られた易剥離性フィルムのシール層とを密着させ、圧力3kg/cm2、時間1秒及び表1に示した各温度条件にて巾20mmの帯状(被着体の90mm長さと平行方向に)にヒートシールした。この帯状のシール部分と垂直に、該シール部分を含むように15mm巾間隔に切り出し15mm×70mmの試験片を作製した。東洋精機(株)オートグラフAGS500D型引張試験機を使用し、23℃雰囲気下、300mm/分の引張速度で180度剥離させたときの剥離強度を測定した。易剥離性は、剥離強度が5〜30N/15mm幅であれば、容器とのシール強度と剥離時のバランスに優れると判断して〇とし、剥離強度測定時、スリップスティック(ジッパリング)現象(一般的に剥離強度の強弱を伴いながら剥離される現象をいう)が発生し滑らかな剥離にならない場合は×とした。
【0044】
(2)剥離外観
剥離外観は、上記(1)易剥離性の評価において、剥離強度測定後の被着体表面を観察し、被着体への評価用フィルムの樹脂残り有無で判断した。樹脂残りがないものは、剥離外観に優れ〇、樹脂残りのあるものは×とした。
【0045】
(3)耐熱性
耐熱性は、上記(1)易剥離性の評価において被着体にヒートシールされた評価用フィルムを、雰囲気温度60℃に加熱されたオーブンに24時間保管し、易剥離性フィルムのヒートシール部分が被着体から剥離しているか否かで判断した。評価用フィルムが被着体から剥れた場合は×、剥れていない場合を〇、とした。
【0046】
(4)カール性
カール性は、ポリエステルフィルムと接着する前の積層フィルムのカール高さ(mm)を測定し、評価した。まず積層フィルムをTダイキャスト成形機のフィルム巻取り方向に平行な方向(MD方向)が長手方向になるよう短冊状(長手方向150mm,巾15mm)MD試験片を切出し、また前記MD方向と垂直な方向(TD方向)が長手方向となるよう短冊状TD試験片を切出した。そして、該試験片をカール側が上面に向くように水平な台上に置き、該試験片の長手方向120mm・巾15mmの面積を固定した。カール高さ(mm)は、固定されていない積層フィルム(長手方向30mm・巾15mm部分)の水平な台から最も高い位置を測定した。カール性は、MD試験片とTD試験片のカール高さの合計が10mm未満の場合を〇、10mm以上の場合を×とした。
【0047】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】画像形成装置の縦断面図である。
【図2】本発明の現像剤収納容器の斜視図である。
【図3】本発明の現像剤収納容器の断面図である。
【図4】フィルム引出し部の断面図である。
【符号の説明】
【0049】
t:現像剤
X:易剥離性フィルム
Y:現像剤収納容器
Z:プロセスカートリッジ
100:画像形成装置本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール層と、前記シール層と隣接して積層されてなる隣接層とを有し、前記シール層が一方の表層である易剥離性フィルムにおいて、
前記シール層が、不飽和エステル化合物に由来する構成単位を5〜13重量%含有するエチレン・不飽和エステル共重合体(C−1)と、不飽和エステル化合物に由来する構成単位を18〜25重量%含有するエチレン・不飽和エステル共重合体(C−2)との混合物であるエチレン・不飽和エステル共重合体成分(C)100重量部と、該成分(C)100重量部に対し粘着付与樹脂(D)を5〜40重量部含有する熱可塑性樹脂組成物(A)から形成され、かつ、
前記隣接層が、結晶性プロピレン系樹脂(E)50〜99重量%と、エチレン系樹脂(F)および/またはスチレン系樹脂(G)1〜50重量%を含有する熱可塑性樹脂組成物(B)から形成されることを特徴とする易剥離性フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の易剥離性フィルムにおいて、前記隣接層上に、結晶性プロピレン系樹脂(H)または結晶性プロピレン系樹脂(H)を主成分とする熱可塑性樹脂組成物(I)から形成される基材層が隣接して積層されてなることを特徴とする易剥離性フィルム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の易剥離性フィルムにおいて、シール層とは異なる表層が、二軸延伸ポリエステルフィルムからなることを特徴とする易剥離性フィルム。
【請求項4】
現像剤収納容器用蓋材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の易剥離性フィルム。
【請求項5】
内部に現像剤を保有する容器であって、その開口部が請求項1〜3のいずれかに記載の易剥離性フィルムでシールされてなることを特徴とする現像剤収納容器。
【請求項6】
少なくとも像担持体と現像器を含んで構成され、画像形成装置本体に対して着脱自在なプロセスカートリッジにおいて、請求項5記載の現像剤収納容器を有してなることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−137305(P2008−137305A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−326651(P2006−326651)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】