説明

易接着白色ポリプロピレンフィルム

【課題】 高温湿熱下での接着性や印字・印刷適性に優れるだけでなく、従来にない薄膜での隠蔽性を有するICカードなどのカード類の外装材として好適な易接着白色ポリプロピレンフィルムを提供すること。
【解決手段】 基材の少なくとも片面に高分子結着剤、架橋結合剤および滑剤を含む受容層を設けてなり、前記基材が空隙を有する中間層と、その両面に表面層を配置してなる積層体である易接着白色ポリプロピレンフィルムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印字・印刷・接着等の後加工が可能な易接着白色ポリプロピレンフィルムに関する。さらに詳しくは、高湿熱易接着性、UV印刷適性、転写印字適性、耐ブロッキング性などに優れるとともに、隠蔽性にも優れた易接着白色ポリプロピレンフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
印字・印刷用受容体として、従来、紙支持体が支配的であったが、近年ポリオレフィンフィルムやポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルムが支持体として多く使用され始めている。特にポリオレフィンフィルムの中でもポリプロピレンフィルムは優れた機械特性、熱特性、電気特性、光学特性により、工業材料用途、包装材料用途、光学材料用途、電機材料用途など多様な用途で使われている。しかしながら、ポリプロピレンはその分子構造から官能基として極性基を有していないことから、表面の濡れ性に劣り、各種塗料などに対する接着性に乏しく、フィルム表面に易接着処理を施す必要がある。フィルムに易接着性を付与する方法としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理などを挙げることができるが、これらの方法では経時的に特性が変化し、接着性が低下する場合がある。また、水系塗剤を塗布する方法の提案もなされているが(たとえば、特許文献1参照)、水系であるとポリオレフィンには塗布が難しいだけでなく、高温湿熱下での接着性、耐ブロッキング性、印字・印刷適性などが不十分である。
【0003】
そこで、有機溶剤系塗剤を塗布することにより、高温湿熱下での接着性、耐ブロッキング性、耐水性、機械特性などに優れた易接着フィルムの提案がなされている(たとえば、特許文献2、3参照)。しかしながら、これらの提案で用いられているポリエステルフィルムでは接着性には優れていても、基材の光学特性が不十分であり、ICカードのような被接着物を隠蔽する必要のある場合には要求特性を満足できないという問題があった。
【特許文献1】特開2000−229394号公報
【特許文献2】特開平11−10814号公報
【特許文献3】特開2007−21862号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は上記した問題点を解決することにある。すなわち、本発明の目的は、高温湿熱下での接着性や印字・印刷適性に優れるだけでなく、従来にない薄膜での隠蔽性を有する易接着白色ポリプロピレンフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題は、基材の少なくとも片面に高分子結着剤、架橋結合剤および滑剤を含む受容層を設けてなり、前記基材が空隙を有する中間層と、その両面に表面層を配置してなる積層体である易接着白色ポリプロピレンフィルムによって達成することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明による易接着白色ポリプロピレンフィルムは高温湿熱下での接着性や印字・印刷適性に優れるだけでなく、優れた隠蔽性を有していることから、ICカードなどのカード類の外装材として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の易接着白色ポリプロピレンフィルムの基材は、ポリプロピレン樹脂から構成され、空隙を有する中間層と、その両面に表面層を配置してなる積層体であることを特徴とする。中間層に空隙を形成する方法としては、特に限定されるものではないが、ポリプロピレン樹脂にポリプロピレンの結晶多型であるβ型結晶(以下、β晶と略記)を好ましくは全結晶に対して40〜90%の割合で形成せしめ、二軸延伸工程において、より安定なα型結晶(以下、α晶と略記)に結晶転移させて、α晶とβ晶の結晶密度差を利用して空隙を形成する方法を特に好ましく用いることができる。なお、ここでα晶とβ晶の存在割合は、示差走査熱量計を用いて昇温速度20℃/分で室温から加熱した際に、145〜157℃の温度範囲で観察されるβ晶の融解ピークと158℃以上に観察されるα晶の融解ピークの融解熱量比率から算出する値である。
【0008】
ここで、β晶をポリプロピレン樹脂中で多量に生成させるには、β晶核剤と呼ばれる添加剤を使用することが好ましい。β晶核剤としては公知の顔料系化合物やアミド系化合物などを挙げることができるが、特に特開平5−310665号公報で開示されているアミド系化合物が空隙を形成させる観点から好ましく用いることができる。β晶核剤の添加量としては、中間層全体を100質量%として、0.05〜0.5質量%であることが好ましい。
【0009】
また、基材の中間層には、中間層全体を100質量%として、無機粒子を5〜25質量%含有させることが好ましい。粒子含有量が5質量%未満であれば隠蔽性が不十分な場合があり、逆に25質量%を超える場合は、粒子を添加した効果が飽和するだけでなく、基材の製膜時の製膜安定性が低下する場合がある。中間層に対する無機粒子の含有量はより好ましくは7〜22質量%であり、さらに好ましくは8〜19質量%である。
【0010】
ここで、中間層に含有させる好ましい無機粒子としては、中間層に形成する空隙の数、大きさの観点、ひいては隠蔽性の点で、平均粒子径が0.05〜0.5μmであることが好ましい。使用する無機粒子の平均粒子径が0.05μm未満であると、粒子の樹脂中への均一分散が難しくなり、樹脂中で凝集し粗大化してしまい特性を損ねる場合がある。一方、平均粒子径が0.5μmを超えると、粒子の比表面積が小さくなるために発生する空隙数が減少し、隠蔽性が劣ってしまうことがある。平均粒子径としては0.08〜0.4μmであればより好ましく、0.1〜0.3μmであれば特に好ましい。ここで、無機粒子の平均粒子径は透過型電子顕微鏡写真を用いて評価することが可能であり、具体的には、清野学著「酸化チタン 物性と応用技術」(技報堂出版 1991年)の82〜84頁に記載されているように測定することができ、平均粒子径としては重量平均径を使用する。さらに具体的には、倍率30,000倍で撮影した透過型電子顕微鏡写真から個々の粒子について円相当径を測定して粒子径とする。1,000個の粒子について粒子径を評価し、粒子径を0.05μm間隔でグループ分けして粒子個数の粒度分布を求める。各グループの中間値をグループ代表径d(添え字のiは、i番目のグループを示す)とし、グループに含まれるの粒子の個数をnとすると、平均粒子径d(重量平均径)は以下の式で求めることができる。
【0011】
【数1】

【0012】
本発明で好ましく使用できる無機粒子としては、コロイダルシリカや凝集シリカ、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどを挙げることができるが、粒子自体の光反射性の観点から、フィルムを白色化する顔料としての効果が高い酸化チタン、硫酸バリウムや炭酸カルシウムなどをより好ましく用いることができる。中でもルチル型酸化チタン粒子、アナターゼ型酸化チタン粒子が反射率向上効果および空隙形成数の観点から特に好ましい。
【0013】
本発明において基材中に粒子を添加して含有せしめる方法としては、特に限定されるものではなく、基材製造時に所定量の無機粒子をポリプロピレン樹脂に直接添加、混合し溶融押出を行ってもよいが、微粒子の飛散による工程汚染を防止する観点や、粒子の分散性、最終的なフィルムの特性の均一性、生産性などの観点から、予めポリプロピレン樹脂に無機粒子を最終フィルムよりも高濃度で添加、混合し二軸押出機を使用してコンパウンドしたマスターバッチを準備して、基材製造時に粒子未添加の樹脂を用いて所定の濃度に希釈して製造するマスターバッチ法を採用することが好ましい。ここで、マスターバッチ中の粒子濃度としては、30〜70質量%が好ましく、45〜65質量%であれば、粒子の分散性、経済性の点で特に好ましい。
【0014】
本発明のポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂には、高溶融張力ポリプロピレン樹脂を0.2〜5質量%(基材全体を100質量%として)添加することは、製膜工程の安定などの観点から好ましいことである。さらに、基材全体を100質量%としたときに、高溶融張力ポリプロピレン樹脂を0.3〜3質量%添加するとより好ましい。ここで、高溶融張力ポリプロピレン樹脂とは高分子量成分や分岐構造を有する成分をポリプロピレン樹脂に混合したり、ポリプロピレンに長鎖分岐構造を共重合させることにより、溶融状態での張力を高めたポリプロピレン樹脂であるが、中でも長鎖分岐構造を共重合させたポリプロピレン樹脂を用いることが好ましい。なお、これらのポリプロピレン樹脂、共重合ポリプロピレン樹脂、高溶融張力ポリプロピレン樹脂は市販されているもの、たとえば高溶融張力PP樹脂としては、Basell社製ポリプロピレン樹脂PF−814、PF−633、PF−611やBorealis社製ポリプロピレン樹脂WB130HMS、Dow社製ポリプロピレン樹脂D114、D206などを用いることができる。
【0015】
本発明の基材を構成するポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(以下、MFRと表記する、測定条件は230℃、2.16kg)は2〜30g/10分の範囲のアイソタクチックポリプロピレン樹脂を用いることができる。高反射率を得るという観点からは、MFRが5〜20g/10分であればより好ましい。ここで、MFRとはJIS K 7210(1995年制定)で規定されている樹脂の溶融粘度を示す指標であり、ポリオレフィン樹脂の特徴を示す物性値として一般的に知られているものである。ポリプロピレン樹脂の場合、条件M、温度230℃、荷重2.16kgで測定する。また、アイソタクチックポリプロピレン樹脂のアイソタクチックインデックスは90〜99.9%の範囲であれば好ましい。アイソタクチックインデックスが90%未満の場合、樹脂の結晶性が低くなってしまい、隠蔽性の高いフィルムが得られない場合がある。
【0016】
本発明のフィルムを構成する基材はホモポリプロピレンを用いることができることはもちろんのこと、製膜工程での安定性や造膜性、物性の均一性の観点から、ポリプロピレンにエチレン成分やブテン、ヘキセン、オクテンなどのα−オレフィン成分を5質量%以下の範囲で共重合してもよい。なお、ポリプロピレンへのコモノマーの導入形態としては、ランダム共重合体でもブロック共重合体でもいずれでもよい。
【0017】
本発明の基材を構成する中間層の厚みは30〜125μmであることが好ましい。厚みが30μm未満であると、隠蔽性が不足する場合があるだけでなく、フィルムの取扱い性が難しくなる場合がある。一方、厚みが125μmを超えると隠蔽性が飽和してしまう。中間層の厚みは35〜100μmであればより好ましく、40〜80μmであれば特に好ましい。
【0018】
本発明のポリプロピレンフィルムの基材は空隙を有する中間層の両面に表面層を配置してなる積層体である。
【0019】
表面層の厚みは0.5〜5μmであることが好ましい。厚みが0.5μm未満であると、積層した効果が発現しない場合がある。一方、層Bの厚みが5μmを超えても表面層を積層する効果が飽和してしまう。表面層の厚みは1〜4μmであればより好ましい。
【0020】
本発明の基材は中間層の両面に表面層を積層するが、その際、中間層の両面に同一の表面層を積層してもよいし、異なる表面層を積層してもよい。また、表面層の厚みは表裏で同一でも異なってもよい。
【0021】
本発明において、基材の表面層にはフィルムの取扱い性、滑り性を改善させる目的で平均粒子径1〜4μmの粒子を0.05〜0.5質量%添加することが好ましい。表面層に添加する粒子としては、たとえば、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカ、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウムなどの無機粒子やスチレン、シリコーン、アクリル酸、メタクリル酸、ジビニルベンゼンなどを構成成分とし、架橋させた有機粒子などを用いることができる。
【0022】
本発明の易接着フィルムの基材は、軽量化や隠蔽性の点で比重が0.4〜0.8であることが好ましい。より好ましくは0.45〜0.7であり、0.5〜0.7であれば特に好ましい。比重が0.4未満となると、シワが発生しやすくなり、外観を損ねる場合があり、逆に0.8を超えると、隠蔽性が十分でないことがある。基材の比重を0.4〜0.8の範囲とする方法は、基材の中間層の空隙の割合(空隙率)を調整することと、中間層と表面層との積層割合で調整することができる。特に前者の空隙率の制御は、β晶法の場合、添加するβ晶核剤量、未延伸フィルムを得る際のキャスト条件などによりβ晶の形成割合を調整し、逐次二軸延伸での空隙形成を制御することで達成できる。
【0023】
本発明の易接着白色ポリプロピレンフィルムは、基材の少なくとも片面に、高分子結着剤、架橋結合剤および滑剤を含む受容層を設けてなるフィルムである。かかる受容層は、高分子結着剤を主剤として、これに架橋結合剤および滑剤を含有して構成されたものであり、これを易接着層として、該基材表面に塗設し、本発明の易接着フィルムとするものである。かかる易接着層の塗設は、前記基材となるフィルムを製膜した後にオフラインでコーティングするオフラインコーティング手段により達成できる。
【0024】
本発明の高分子結着剤としては、ポリエステル系、アクリル系、ポリウレタン系等の樹脂が使用できるが、中でも、極性基含有ポリエステル樹脂や不飽和結合を有する化合物をグラフト化させた共重合ポリエステル樹脂などの変性ポリエステル樹脂が好ましく使用できる。
【0025】
前記極性基含有ポリエステル樹脂とは、分子中に親水性基あるいは親水性成分、たとえば、水酸基、カルボシル基、カルボニル基、シアノ基、アミノ基、メチルカルボニル基、カルボン酸基、ポリエチレングリコール基、リン酸エステル塩、第四級アンモニウム塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩等の少なくとも1種を導入したポリエステル共重合体である。中でも、代表的なポリエステル共重合体としては以下の組成のものが有用である。すなわち、芳香族ジカルボン酸および/または非芳香族ジカルボン酸およびエステル形成性スルホン酸アルカリ金属塩化合物とグリコールの重縮合物が用いられる。具体的には、芳香族ジカルボン酸としては、たとえば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタンp,p’−ジカルボン酸およびそれらのエステル形成性誘導体があり、非芳香族ジカルボン酸には、たとえば、修酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸およびそれらのエステル形成性誘導体がある。これらのうちで芳香族ジカルボン酸および/またはそのエステルエステル形成性誘導体が全ジカルボン酸成分に対し40モル%以上占めることが樹脂の耐熱性や皮膜強度、耐水性の点で好ましく、その範囲内で、1種以上のジカルボン酸を併用してもよい。
【0026】
かかるエステル形成性スルホン酸アルカリ金属塩化合物としては、たとえば、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホフタル酸、4−スルホナフタレン2,7−ジカルボン酸、スルホ−p−キシリレングリコール、2−スルホ−1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどのアルカリ金属塩(スルホン酸のアルカリ金属塩)およびこれらのエステル形成性誘導体が用いられ、5−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸のナトリウムおよびこれらのエステル形成性誘導体を使用することがより好ましい。
【0027】
次に、グリコール成分としては、炭素数2〜8個の脂肪族または炭素数6〜12個の脂環族グリコールであり、たとえば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、p−キシリレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等が好ましく使用できる。場合によっては、ポリエーテルを共重合してもよい。ここでいうポリエーテルとはエーテル結合を主要結合鎖とする親水性高分子のことであり、特に好ましいのは脂肪族ポリエーテルであり、たとえば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンエーテル、ポリエチレングリコールエーテルなどが好ましく使用できる。
【0028】
かかる極性基含有ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、易接着性、耐水性、耐湿熱性、耐アルカリ性等の点で0〜80℃であれば好ましく、30〜60℃の範囲であればより好ましい。
【0029】
また、かかる極性基含有ポリエステル樹脂は、通常のポリエステル製造技術で製造することができる。すなわち、前記した酸成分およびグリコール成分をエステル化或いはエステル交換触媒、重合触媒等の反応触媒を用いて溶融重縮合し、所望のポリマーを得ることができる。また、溶液重縮合を適用してもよい。いずれの場合にもグラフト化反応に悪影響を及ぼさない範囲で種々の改質剤、安定剤等を添加してもよい。かかる極性基含有ポリエステル樹脂の分子量は、易接着性の点で、1〜5万であれば好ましく、1〜2万の範囲であればより好ましい。
【0030】
また、前記不飽和結合を有する化合物をグラフト化した共重合ポリエステル樹脂とは、不飽和結合を有する化合物、具体的には、ビニルエステル類として、たとえば、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、高級第3級ビニルエステル、塩化ビニル、酢酸ビニル、臭化ビニル、また不飽和カルボン酸エステル類として、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、マレイン酸ブチル、マレイン酸オクチル、フマル酸ブチル、フマル酸オクチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、エチレングリコールジメタクリル酸エステル、エチレングリコールジアクリル酸エステル、ポリエチレングリコールジメタクリル酸エステル、ポリエチレングリコールジアクリル酸エステル、不飽和カルボン酸アミド類として、たとえば、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチロールアクリルアミド、ブトキシメチロールアクリルアミド、不飽和ニトリル類として、たとえば、アクリロニトリル、不飽和カルボン酸類として、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸酸性エステル、フマル酸酸性エステル、イタコン酸酸性エステル、アクリル化合物として、たとえば、酢酸アリル、アリルグリシジルエーテル、メタクリル酸アリル、アクリル酸アリル、イタコン酸ジアリル、含窒素化合物として、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、炭化水素類として、たとえば、エチレン、プロピレン、ヘキセン、オクテン、スチレン、ビニルトルエン、ブタジエン、ビニルシラン化合物として、たとえば、ジメチルビニルメトキシシラン、ジメチルエチルエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等、これらの中から選ばれた少なくとも1種を前記の極性基含有ポリエステル樹脂にグラフト化させて得られるものである。
【0031】
極性基含有ポリエステル樹脂への、かかる不飽和結合を有する化合物のグラフト化率は、好ましくは0.5〜600%、より好ましくは5〜300%、特に好ましくは10〜100%の範囲であるのがよい。グラフト化率が0.5%未満では、耐水性が悪化しやすく、また、グラフト化率が600%を超えると、塗工性が悪化したり、易接着層と基材ベース間の界面力が低下したりする場合がある。ここでのグラフト化率とは、次式(1)で算出できる値である。
【0032】
グラフト化率(%)=
(グラフト化前の化合物質量/グラフト化後の化合物質量)×100 ・・・(1)
本発明においては、上記した高分子結着剤に架橋結合剤および滑剤を含有させて受容層を構成するものである。
【0033】
かかる架橋結合剤としては、前記変性ポリエステル樹脂に存在する官能基、たとえば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、グリシジル基、アミド基等と熱架橋反応して、最終的には三次元網状構造を有する易接着層とするための架橋剤である。かかる架橋結合剤としては、イソシアネート系化合物、メラミン系化合物、尿素系化合物およびエポキシ系化合物から少なくとも1種を選択して用いることが、架橋効果を大きくできるので好ましい。
【0034】
かかるエポキシ系化合物としては、具体的にはポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物、モノエポキシ化合物等が用いられ、ポリエポキシ化合物としては、たとえば、ソルビトール、ポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジエポキシ化合物としては、たとえば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、モノエポキシ化合物としては、たとえば、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルなどが用いられる。
【0035】
前記尿素系化合物としては、たとえば、ジメチロール尿素、ジメチロールエチレン尿素、ジメチロールプロピレン尿素、テトラメチロールアセチレン尿素、4−メトキシ−5−ジメチルプロピレン尿素ジメチロール等を用いることができる。
【0036】
前記メラミン系化合物としては、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロールメラミン誘導体に低級アルコールとしてメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等を反応させてエーテル化した化合物およびそれらの混合物が好ましい。メチロールメラミン誘導体としては、たとえば、モノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等が用いられる。
【0037】
前記イソシアネート系化合物としては、無黄変型ポリイソシアネートであることが好ましい。中でも、脂肪族または脂環式のイソシアネートから誘導されたポリイソシアネートが好ましい。このようなイソシアネートとしては、たとえば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、1,6−ジイソシアネートヘキサン、トリレンジイソシアネートとヘキサントリオールの付加物、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、ポリオール変性ジフェニルメタン−4、4’−ジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3’−ビトリレン−4,4’ジイソシアネート、3,3’ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート等が用いられるが、塗膜の黄変防止、反応性、毒性、コスト面等からみて特にメタキシリレンジイソシアネートが用いるのが好ましい。
【0038】
これらの架橋結合剤は単独か、場合によっては2種以上併用してもよい。かかる架橋結合剤の配合比率は、高分子結着剤に対して固形分質量比で0.5〜10質量%、好ましくは3〜10質量%の範囲がよい。
【0039】
また、前記高分子結着剤に含有させる滑剤としては、架橋型の高分子粒子、たとえば、アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマー、スチレン・アクリル共重合体ポリマー、エポキシ樹脂の架橋物等が好ましく用いられるが、中でもアクリルポリマー系の架橋物がより好ましく、その中でもポリメチルメタクリレート系の架橋物を用いるのが特に好ましい。
【0040】
かかる滑剤の平均粒子径は、0.05〜2μmの範囲であることが好ましい。平均粒子径が、0.05μm未満では塗膜表面が平滑すぎて滑り効果が不十分となる場合があり、2μmを超えると塗膜表面の凹凸が大きすぎて、印字・印刷工程で白粉が発生したり、光沢不良が起こったりする問題などが懸念される。
【0041】
より好ましくは、滑剤として、平均粒子径0.05〜2μmの架橋型アクリル系樹脂、スチレン系樹脂およびスチレン・アクリル系樹脂からなる群から選択される樹脂で構成されているものを用いるとよい。
【0042】
かかる滑剤の配合比率は、高分子結着剤に対して固形分質量比で0.1〜5質量%、好ましくは0.5〜3質量%がよい。0.1%未満では耐ブロッキング性や滑り効果が不十分となる場合があり、5質量%を超えると塗膜の密着性や透明性が悪くなる場合がある。
【0043】
また、受容層の厚みとしては、0.1〜2μmが好ましく、より好ましくは0.5〜1μmである。0.1μm未満では、該受容層を含む基材と後工程でのインキの密着性に劣り、2μmを超えるとブロッキングを起こす場合がある。
【0044】
本発明の易接着フィルムはICカードの外装材に好適に使用するために、厚み50μm換算時の光学濃度が1.0〜2.0であることが好ましい。光学濃度は1.1〜1.8であればより好ましく、1.2〜1.7であれば特に好ましい。光学能が1.0未満では隠蔽性に劣り、2.0を超えると空隙の生成が多くなりすぎて、比重が低くなり過ぎ、シワが発生しやすくなる場合がある。
【0045】
光学濃度を1.0〜2.0の範囲内にする方法としては、基材中間層中の空隙率の制御、中間層に添加する粒子の添加量、粒子径により制御することができる。
【0046】
上記した本発明の易接着白色ポリプロピレンフィルムは、高い隠蔽性と、易接着性さらには、印刷・印字適性に優れる受容層を有していることから、熱硬化性樹脂層からなるシートの両面に接着してカードとして好ましく用いることができる。中でも、ICおよびこのICに接続されたアンテナが熱硬化性樹脂層中に挟み込まれるように設置され、この両面に本発明のフィルムを接着したカード(ICカード)として用いることが特に好ましい。本発明の易接着白色ポリプロピレンフィルムは優れた接着性、耐湿熱接着性、隠蔽性、印刷・印字適性からICカードの外装用フィルムなどとして好適に使用することができる。
【実施例】
【0047】
以下に、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、特性は以下の方法により、測定、評価を行った。
【0048】
(1)受容層と基材との密着性
23℃、相対湿度65%の雰囲気下において、本発明の易接着フィルムの受容層側に、1mm幅で縦横に切れ目を入れて100個の升目を作り、その上にニチバン製No.405、幅18mmのセロハン粘着テープを手で強く圧着し、30秒放置した。その後、該セロハン粘着テープを、45°方向へ急速にはがし受容層の塗膜残存率を目視確認した。塗膜残存率が100%のものを「◎」、塗膜残存率が90%以上100%未満のものを「○」、90%未満のものを「×」とした。
【0049】
(2)受容層と基材との耐湿密着性
本発明の易接着フィルムを60℃、相対湿度90%の雰囲気下に3日間放置した。その後、該易接着フィルムの受容層側に、1mm幅で縦横に切れ目を入れて100個の升目を作り、その上にニチバン製No.405、幅18mmのセロハン粘着テープを手で強く圧着し、30秒放置した。その後、該セロハン粘着テープを、45°方向へ急速にはがし易接着層の塗膜残存率を目視確認した。塗膜残存率が100%のものを「◎」、塗膜残存率が90%以上100%未満のものを「○」、90%未満のものを「×」とした。
【0050】
(3)耐ブロッキング性
本発明の易接着フィルムを10cm×10cmの正方形に切り、受容層側同士を重ね合わせて60℃、相対湿度90%の雰囲気下で200g/cmの荷重をかけながら3日間放置した。その後、あわせ面のはく離強度を測定した。はく離強度が10g/cm未満のものを「◎」、はく離強度が10g/cm以上15g/cm未満のものを「○」、はく離強度が15g/cm以上のものを「×」とした。
【0051】
(4)易接着フィルムと接着剤との密着性
23℃、相対湿度65%の雰囲気下において、易接着フィルムの受容層側に、ポリエステル系接着剤を10μm塗布し、120℃で1分間乾燥させて接着剤被膜を製膜した。次に、23℃、相対湿度65%の雰囲気下において、この被膜面に1mm幅で縦横に切れ目を入れて100個の升目を作り、その上にニチバン製No.405、幅18mmのセロハン粘着テープを手で強く圧着し、30秒放置した。その後、該セロハン粘着テープを、45°方向へ急速にはがし、はく離状況から易接着フィルムと接着剤との密着性を評価した。塗膜残存率が100%のものを「◎」、塗膜残存率が90%以上100%未満のものを「○」、90%未満のものを「×」とした。
【0052】
(5)光学濃度
フィルムの厚みをダイヤルゲージで測定し、厚みを測定した場所について光学濃度計(Macbeth TR−927)にて光学濃度を測定した。フィルム厚みが50μmでない場合は以下の式で換算して、厚み50μm換算の光学濃度を算出した。
【0053】
50μm換算光学濃度 = OD×(50/T)
ここで、OD:フィルムの実測光学濃度、T:フィルムの厚み。
【0054】
(6)比重
基材を30mm×40mmの大きさに切取り試料とし、電子比重計(ミラージュ貿易(株)製 SD−120L)を用いて、室温23℃、相対湿度65%の雰囲気にて測定を行った。測定は3回行い平均値をその基材の比重とした。
【0055】
(実施例1)
主たるポリプロピレン樹脂として住友化学(株)製ホモポリプロピレンFSX80E4(以下、PP−1と表記)を87.8質量部、高溶融張力ポリプロピレン樹脂であるBasell製ポリプロピレンPF−814(以下、HMS−PPと表記)を2質量部、平均粒子径0.2μmのアナターゼ型酸化チタン粒子を10質量部、β晶核剤である、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製、NU−100、以下、単にβ晶核剤と表記する)を0.2質量部、加えて酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.15、0.1質量部(以下、単に酸防剤と表記し、特に記載のない限り3:2の質量比)を、この比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、300℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、20℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットして中間層用の組成物を得た。
【0056】
また、PP−1を97.8質量部、HMS−PPを2質量部に平均粒子径2μmの架橋ポリメチルメタクリレート粒子(日本触媒製、M1002、以下架橋PMMAと表記する)を0.2質量部を計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、280℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、20℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットして表層用の組成物を得た。
【0057】
これらの組成物を別々の単軸押出機に供給し、各々220℃で溶融押出を行った。ポリマー管途中に設置したフィルターにて異物を除去後、マルチマニホールド型のB/A/B型3層複合Tダイにて積層し、そのまま表面温度85℃の金属ロール上に吐出し、エアナイフを用いて90℃のエアーを吹き付けながらロール上にて徐冷し、未延伸シートを得た。ついでこの未延伸シートを130℃に加熱した金属ロールを使用して予熱し、フィルム長手方向に5倍延伸した。引き続いて、テンター式横延伸機に導入して、145℃にて幅方向に機械倍率で9倍の延伸を行い、引き続き幅方向への弛緩率5%で160℃で5秒間の熱固定を行い、巻取る前にコロナ放電処理により表面処理を両面に行い、トータル厚み50μm、表面層/中間層/中間層の積層厚み比2:46:2の二軸配向白色ポリプロピレンフィルムを得た。
【0058】
上記のようにして得られた白色ポリプロピレンフィルムを基材とし、該基材フィルムの片面に、日本化工塗料(株)製の変性ポリエステル高分子結着剤TR−5改3(固形分質量比20質量%)、イソシアネート系架橋結合剤TD硬化剤及び綜研化学(株)製の滑剤MR−2Gからなる塗剤を、下記の組成Aにてグラビアロール(#200,斜線タイプ)を用いて塗工し、100℃のオーブンにて30秒乾燥、熱硬化させ易接着フィルムを得た。さらに、得られた易接着フィルムを50℃で3日間エージング処理を施した。
【0059】
評価結果を表1に示したが、受容層とポリプロピレン基材との密着性、耐湿密着性、耐ブロッキング性、易接着フィルムと接着剤との密着性のいずれも極めて良好であった。
組成A
TR−5改3 : 100質量部
TD硬化剤 : 1.7質量部
MR−2G : 0.1質量部
トルエン : 40質量部
メチルエチルケトン : 10質量部
(実施例2)
PP−1を81.8質量部、HMS−PPを3質量部、平均粒子径0.23μmのアナターゼ型酸化チタン粒子を15質量部、β晶核剤を0.2質量部、加えて酸防剤0.25質量部を混合し、二軸押出機にて300℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、20℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットして中間層用の組成物を得た。また、表面層は実施例1と同じ組成物を使用した。
【0060】
これらの組成物を別々の単軸押出機に供給し、220℃で溶融押出を行った。ポリマー管途中に設置したフィルターにて異物を除去後、マルチマニホールド型のB/A/B型3層複合Tダイにて積層し、表面温度80℃の金属ロール上に吐出、密着させて徐冷し、未延伸シートを得た。ついでこの未延伸シートを130℃に加熱した金属ロールを使用して予熱し、フィルム長手方向に4.8倍に延伸した。引き続いて、テンター式横延伸機に導入して、140℃にて幅方向に機械倍率で8倍の延伸を行い、引き続き幅方向への弛緩率5%で160℃で5秒間の熱固定を行い、トータル厚み60μm、表面層/中間層/中間層の積層厚み比2:56:2の二軸配向白色ポリプロピレンフィルムを得た。
【0061】
上記のようにして得た白色フィルムを基材として、該基材の片面に下記の組成Bの塗剤を実施例1と同様に塗工した。
【0062】
評価結果を表1に示したが、易接着層とポリプロピレンフィルム基材との密着性、耐湿密着性、耐ブロッキング性、易接着フィルムと接着剤との密着性のいずれも極めて良好であった。
【0063】
組成B
TR−5改3 : 100質量部
TD硬化剤 : 1.7質量部
MR−2G : 0.5質量部
トルエン : 40質量部
メチルエチルケトン : 10質量部
(実施例3)
白色ポリプロピレンフィルム基材については、縦延伸温度を127℃、幅方向延伸温度を137℃とし、トータル厚みを50μm(積層比率、表面層/中間層/表面層=2/46/2)とする以外は実施例2と同様にして基材を得た。
【0064】
また、受容層は塗剤を下記の組成Cにする以外は実施例1と同様の方法にて易接着フィルムを得た。評価結果を表1に示したが、易接着層とフィルム基材との密着性、易接着フィルムと接着剤との密着性に若干劣っていたが、実用上問題ないレベルであった。
【0065】
組成C
TR−5改3 : 100質量部
TD硬化剤 : 1.7質量部
MR−2G : 0.8質量部
トルエン : 40質量部
メチルエチルケトン : 10質量部
(実施例4)
PP−1を76.8質量部、HMS−PPを3質量部、平均粒子径0.23μmのアナターゼ型酸化チタン粒子を20質量部、β晶核剤を0.2質量部、加えて酸防剤0.25質量部を混合し、二軸押出機にて300℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、20℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットして中間層用の組成物を得た。また、表面層は実施例1と同じ組成物を使用した。
【0066】
これらの組成物を別々の単軸押出機に供給し、220℃で溶融押出を行った。ポリマー管途中に設置したフィルターにて異物を除去後、マルチマニホールド型のB/A/B型3層複合Tダイにて積層し、表面温度80℃の金属ロール上に吐出、密着させて徐冷し、未延伸シートを得た。ついでこの未延伸シートを130℃に加熱した金属ロールを使用して予熱し、フィルム長手方向に4.8倍に延伸した。引き続いて、テンター式横延伸機に導入して、140℃にて幅方向に機械倍率で8倍の延伸を行い、引き続き幅方向への弛緩率5%で160℃、5秒間の熱固定を行い、トータル厚み50μm、表面層/中間層/中間層の積層厚み比3:44:3の二軸配向白色ポリプロピレンフィルムを得た。
【0067】
上記のようにして得た白色フィルムを基材として、該基材の片面に下記の組成Dの塗剤を実施例1と同様に塗工した。
【0068】
評価結果を表1に示したが、耐ブロッキング性に若干劣っていたが、実用上問題ないレベルであった。
【0069】
組成D
TR−5改3 : 100質量部
TD硬化剤 : 1.7質量部
MR−2G :0.02質量部
トルエン : 40質量部
メチルエチルケトン : 10質量部
(比較例1)
塗剤を下記の組成Eにする以外は実施例1と同様の方法にて易接着フィルムを得た。評価結果を表1に示したが、耐ブロッキング性に劣っていた。
【0070】
組成E
TR−5改3 : 100質量部
TD硬化剤 : 1.7質量部
MR−2G : 0質量部
トルエン : 40質量部
メチルエチルケトン : 10質量部
(比較例2)
PP−1を91.8質量部、HMS−PPを3質量部、平均粒子径0.20μmのアナターゼ型酸化チタン粒子を5質量部、β晶核剤を0.2質量部、加えて酸防剤0.25質量部を混合し、二軸押出機にて300℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、20℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットして中間層用の組成物を得た。
【0071】
この組成物を単軸押出機に供給し、220℃で溶融押出を行った。ポリマー管途中に設置したフィルターにて異物を除去後、Tダイにて積層し、表面温度80℃の金属ロール上に吐出、密着させて徐冷し、未延伸シートを得た。ついでこの未延伸シートを135℃に加熱した金属ロールを使用して予熱し、フィルム長手方向に4.8倍に延伸した。引き続いて、テンター式横延伸機に導入して、145℃にて幅方向に機械倍率で8倍の延伸を行い、引き続き幅方向への弛緩率5%で160℃、5秒間の熱固定を行い、トータル厚み50μmの中間層のみからなる二軸配向白色ポリプロピレンフィルムを得た。
【0072】
上記のようにして得た白色フィルムを基材として、該基材の片面に下記の組成Fにする以外は実施例1と同様の方法にて易接着フィルムを得た。
【0073】
評価結果を表1に示したが、基材が空隙を有する層のみであることから、受容層の塗布が困難となり、受容層との密着性、耐湿密着性、易接着フィルムと接着剤との密着性に劣っていた。また、光学濃度が1未満であり、隠蔽性に劣っていた。
【0074】
組成F
TR−5改3 : 100質量部
TD硬化剤 : 1.7質量部
MR−2G : 1.0質量部
トルエン : 40質量部
メチルエチルケトン : 10質量部
【0075】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の易接着フィルムにおいては、基材に塗布する易接着層を特定のものから構成することにより、高温高湿下での基材との密着性、耐ブロッキング性、後加工での塗料との密着性、接着剤との接着性等がともに向上でき、かつ、透明性や光沢性に優れた易接着層を有する易接着フィルムを得ることができるため、たとえばICカード、電子材料、グラフィック材料などに好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも片面に高分子結着剤、架橋結合剤および滑剤を含む受容層を設けてなり、前記基材が、空隙を有する中間層と、その両面に表面層を配置してなる積層体である易接着白色ポリプロピレンフィルム。
【請求項2】
高分子結着剤が、変性ポリエステル樹脂である、請求項1に記載の易接着白色ポリプロピレンフィルム。
【請求項3】
架橋結合剤が、無黄変型ポリイソシアネートである、請求項1または2に記載の易接着白色ポリプロピレンフィルム。
【請求項4】
滑剤が、平均粒子径0.05〜2μmの架橋型アクリル系樹脂、スチレン系樹脂およびスチレン・アクリル系樹脂からなる群から選択される樹脂で構成されている、請求項1〜3のいずれかに記載の易接着白色ポリプロピレンフィルム。
【請求項5】
受容層の厚みが0.1〜2μmである、請求項1〜4のいずれかに記載の易接着白色ポリプロピレンフィルム。
【請求項6】
フィルム厚み50μm換算での光学濃度が1.0〜2.0である、請求項1〜5のいずれかに記載の易接着白色ポリプロピレンフィルム。
【請求項7】
基材の比重が0.4〜0.8である、請求項1〜6のいずれかに記載の易接着白色ポリプロピレンフィルム。
【請求項8】
熱硬化性樹脂層からなるシートの両表面に、請求項1〜7のいずれかに記載の易接着白色ポリプロピレンフィルムを接着してなるカード。
【請求項9】
熱硬化性樹脂層中に、ICおよびこのICに接続されたアンテナが挟み込まれるように設置された、請求項8に記載のカード。

【公開番号】特開2008−213306(P2008−213306A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−53928(P2007−53928)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】