映像表示装置およびヘッドマウントディスプレイ
【課題】接眼光学系4をコンパクトに構成しつつ、光学瞳Eの位置調整を容易に行う。
【解決手段】映像観察状態で光学瞳Eを通過する光の光束径をφViewとし、光学瞳Eの位置調整状態で光学瞳Eを通過する光の光束径をφAli としたときに、φView<φAli となるように、光源11から射出される光の光束径を切り替える光束径切り替え機構30を設ける。この光束径切り替え機構30は、例えば絞り31で構成される。絞り31による光束径の切り替えによって、φView<φAli とすることができるので、位置調整状態において、観察者は光学瞳Eの位置を確認しやすくなる。また、位置調整状態での接眼光学系4の有効光路領域は、映像観察状態での接眼光学系4の有効光路領域に含まれており、接眼光学系4を大きく構成することなく、φView<φAli を実現することができる。
【解決手段】映像観察状態で光学瞳Eを通過する光の光束径をφViewとし、光学瞳Eの位置調整状態で光学瞳Eを通過する光の光束径をφAli としたときに、φView<φAli となるように、光源11から射出される光の光束径を切り替える光束径切り替え機構30を設ける。この光束径切り替え機構30は、例えば絞り31で構成される。絞り31による光束径の切り替えによって、φView<φAli とすることができるので、位置調整状態において、観察者は光学瞳Eの位置を確認しやすくなる。また、位置調整状態での接眼光学系4の有効光路領域は、映像観察状態での接眼光学系4の有効光路領域に含まれており、接眼光学系4を大きく構成することなく、φView<φAli を実現することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示素子にて表示された映像を虚像として観察者に提供する映像表示装置と、その映像表示装置を備えたヘッドマウントディスプレイ(以下、HMDとも称する)とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
常時装着して映像を観察することができるHMDは、映像の視認性がよく、調整部分が少なく、小型軽量であることが望まれる。このようなHMDは、光学瞳(射出瞳)を通過する光の光束径が小さくなるような接眼光学系(極限はマクスウェル視となるもの)を用いることによって実現することが可能である。つまり、このような接眼光学系を用いることにより、焦点深度が深くなるため、対応視度が広くなり、視度補正等の調整なしで映像を観察することが可能となる。また、光学瞳を通過する光の光束径が小さいので、接眼光学系の有効光路領域を小さくすることができ、接眼光学系ひいてはHMDの小型軽量化を実現することができる。
【0003】
ところで、HMDでの映像の観察時には、観察者の瞳の位置と接眼光学系の光学瞳の位置とを合わせる必要があるが、接眼光学系の光学瞳が小さいと、観察者自身が位置合わせの目標位置(例えば光学瞳の中心位置)を確認しづらくなる。そこで、例えば特許文献1のHMDでは、観察者の眼球に投影する光束と観察者の眼球との間の位置関係を検出手段が検出し、検出された位置関係に応じて、移動手段が観察者の眼球に投影する光束を移動させている。これにより、観察者は、自身による位置調整を行うことなく、映像を観察することが可能となっている。
【0004】
しかし、特許文献1の構成では、位置関係の検出手段と光束の移動手段とを設けることによって、システム全体が大きくなり、重くなってしまう。したがって、そのような構成は、長時間装着するHMDに向いているとは言えない。
【0005】
一方、例えば特許文献2のHMDでは、複数の照明用点光源のうち、観察者の瞳孔位置と共役な位置にある点光源のみを選択して点灯するようにしている。これにより、上記のような機械的な手段を用いた位置合わせを不要としている。
【0006】
【特許文献1】特開平7−311361号公報
【特許文献2】特開平8−211325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献2のように照明用点光源を複数設ける構成では、位置合わせは容易である反面、接眼光学系において、映像を周辺まで観察するのに必要な有効光路領域を、全ての点光源に対して確保しなければならない。このため、本来の軸上に1点にのみ点光源を配置する構成に比べて、接眼光学系が大きくなってしまう。
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、接眼光学系をコンパクトに構成しつつ、光学瞳の位置調整を容易に行うことができる映像表示装置と、その映像表示装置を備えたHMDとを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の映像表示装置は、光源と、光源からの光を変調して映像を表示する表示素子と、表示素子からの映像光を光学瞳に導く接眼光学系とを備えた映像表示装置であって、観察者が光学瞳の位置で映像を観察する映像観察状態で、光学瞳を通過する光の光束径をφViewとし、光学瞳の位置を観察者の瞳位置に合わせるための位置調整状態で、光学瞳を通過する光の光束径をφAli としたときに、φView<φAli となるように、光源から射出される光の光束径を切り替える光束径切り替え手段をさらに備えており、位置調整状態での接眼光学系の有効光路領域は、映像観察状態での接眼光学系の有効光路領域に含まれていることを特徴としている。
【0010】
上記の構成によれば、光源からの光は、表示素子にて変調され、映像光として射出された後、接眼光学系によって光学瞳に導かれる。したがって、光学瞳の位置では、観察者は、表示素子の表示映像(虚像)を観察することができる。
【0011】
また、光束径切り替え手段による光源光の光束径の切り替えにより、光学瞳を通過する光の光束径が映像観察状態よりも位置調整状態で大きくなるので、位置調整状態において、観察者は、光学瞳の位置を確認しやすくなり、光学瞳の位置調整を容易に行うことができる。
【0012】
さらに、接眼光学系における位置調整状態での有効光路領域は、映像観察状態での有効光路領域に含まれているので、接眼光学系を大きく構成することなく、位置調整状態で光学瞳を通過する光の光束径を大きくすることができる。したがって、接眼光学系をコンパクトに構成しつつ、光学瞳の位置調整が容易な映像表示装置を実現することができる。
【0013】
本発明の映像表示装置においては、位置調整状態において、光学瞳を通過する光の瞳面内での照度は、中心位置で最大であることが望ましい。この場合、観察者は、位置調整時に光学瞳の中心を認識することが容易となり、位置調整を正確に行うことができる。
【0014】
本発明の映像表示装置においては、位置調整状態において、光学瞳を通過する光の瞳面内での周辺照度は、中心照度の1/2以下であることが望ましい。この場合、位置調整状態において、光学瞳の面内での中心照度と周辺照度との差が大きくなるので、観察者は、位置調整時に光学瞳の中心を認識することがさらに容易となり、位置調整をさらに正確に行うことができる。
【0015】
本発明の映像表示装置においては、位置調整状態において、光学瞳を通過する光の瞳面内での照度は、中心から周辺に向かって段階的に低下することが望ましい。この場合、光学瞳の面内における周辺から中心に向かう方向への位置調整が容易となる。
【0016】
本発明の映像表示装置において、光束径切り替え手段は、3φView≦φAli となるように、光源から射出される光の光束径を切り替えることが望ましい。このような光束径切り替え手段による光源光の光束径の切り替えにより、位置調整状態において光学瞳を通過する光の光束径が、映像観察状態において光学瞳を通過する光の光束径の3倍以上となるので、位置調整のスタート時に、観察者は光学瞳を見つけ出し易くなる。
【0017】
本発明の映像表示装置において、表示素子の映像表示領域は、映像観察状態よりも位置調整状態のほうが小さいことが望ましい。
【0018】
映像観察状態で発生する収差が補正されるように接眼光学系が設計されている場合、表示素子の映像表示領域を映像観察状態と位置調整状態とで同じ面積(全画素ON)としたまま、位置調整状態において光学瞳を通過する光の光束径を大きくすると、映像の周辺部に向かうほど収差が発生し、映像がぼやけるため、観察者は光学瞳の正確な中心位置を認識しにくくなる。
【0019】
これに対して、表示素子の映像表示領域を、映像観察状態よりも位置調整状態で小さくする(例えば中心部の画素のみONにする)ことにより、映像がはっきりと出る部分(映像の中心部)のみを光学瞳の位置調整に用いることができ、観察者は光学瞳の正確な中心位置をより認識し易くなる。
【0020】
本発明の映像表示装置において、光束径切り替え手段は、光学瞳とほぼ共役な位置に配置されていることが望ましい。この場合、光束径切り替え手段による光源光の光束径の切り替えにより、光学瞳を通過する光の光束径の切り替えを正確にかつ確実に行うことができる。
【0021】
本発明の映像表示装置において、光束径切り替え手段は、映像観察状態と位置調整状態とで開口部の面積を切り替える絞りを有して構成されていてもよい。例えば、映像観察状態で光学瞳を通過する光の光束径に対して光源の発光面積が大きい場合は、絞りによって光源光が通過する開口部の面積を切り替えることにより、光源光の光束径を、映像観察状態と位置調整状態とで簡単に切り替えることができる。
【0022】
本発明の映像表示装置において、光束径切り替え手段は、光源から射出される光の瞳面内での照度を調整するための照度調整フィルタをさらに有しており、照度調整フィルタは、中心部を透過する光の透過率よりも周辺部を透過する光の透過率を低下させることが望ましい。
【0023】
この構成では、絞りによる開口部の面積の切り替えにより、位置調整状態において、光学瞳を通過する光の瞳面内での照度を、中心から周辺に向かって低下させることができる。これにより、観察者は、光学瞳の面内における周辺から中心に向かう方向への位置調整がしやすくなる。
【0024】
本発明の映像表示装置において、照度調整フィルタは、周辺部を透過する光の透過率を少なくとも2段階で低下させることが望ましい。この場合、位置調整状態において、光学瞳を通過する光の瞳面内での照度を、中心から周辺に向かって少なくとも2段階で低下させることができる。これにより、観察者は、光学瞳の面内における周辺から中心に向かう方向への位置調整がさらにしやすくなる。
【0025】
本発明の映像表示装置において、光束径切り替え手段は、光源からの光を拡散させる拡散板と、位置調整状態のときに拡散板を光路中に配置する一方、映像観察状態のときに拡散板を光路中から取り除く駆動部とを有している構成であってもよい。
【0026】
例えば、映像観察状態で光学瞳を通過する光の光束径に対して光源の発光面積が小さい場合は、拡散板によって光源の発光面積を擬似的に大きくすることができるとともに、駆動部による拡散板の光路中への出し入れによって、光源から射出される光の光束径を、映像観察状態と位置調整状態とで簡単に切り替えることができる。
【0027】
本発明の映像表示装置において、光束径切り替え手段は、位置調整状態において、光源から射出される光の光束径を少なくとも2段階に切り替えるようにしてもよい。位置調整状態において、光源光の光束径を段階的に切り替えて、位置調整を段階的に行うことにより、観察者は、光学瞳の中心に自らの瞳の中心を合わせることが容易となる。
【0028】
本発明の映像表示装置において、接眼光学系は、体積位相型の反射型ホログラム光学素子を含んでおり、上記ホログラム光学素子は、表示素子からの映像光を回折反射させて光学瞳に導くと同時に、外光を透過させて光学瞳に導く構成であってもよい。
【0029】
体積位相型の反射型ホログラム光学素子は、反射波長域が狭く、外光の透過率が高い。したがって、映像観察状態において、観察者は、表示映像(虚像)を観察しながら、外界像をシースルーで観察することが可能となる。
【0030】
本発明のHMDは、上述した本発明の映像表示装置と、上記映像表示装置を観察者の眼前で支持する支持手段とを有していることを特徴としている。この構成では、映像表示装置が支持手段にて支持されるので、観察者は映像表示装置から提供される映像をハンズフリーで長時間安定して観察することができる。
【0031】
本発明のHMDにおいて、上記支持手段は、接眼光学系の光学瞳の位置を観察者の瞳位置に合わせる位置調整を行った後に、観察者の頭部に対する接眼光学系の相対位置を固定する固定手段を有していることが望ましい。この構成では、固定手段により、光学瞳の位置調整後に、観察者の頭部に対する接眼光学系の相対位置が固定されるので、観察者は、光学瞳の位置にて、良好な映像を確実に観察することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、光束径切り替え手段による光源光の光束径の切り替えにより、光学瞳を通過する光の光束径が映像観察状態よりも位置調整状態で大きくなるので、位置調整状態において、観察者は、光学瞳の位置を確認しやすくなり、光学瞳の位置調整を容易に行うことができる。また、接眼光学系における位置調整状態での有効光路領域は、映像観察状態での有効光路領域に含まれているので、接眼光学系を大きく構成することなく、位置調整状態で光学瞳を通過する光の光束径を大きくすることができる。したがって、接眼光学系をコンパクトに構成しつつ、光学瞳の位置調整が容易な映像表示装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0034】
(1.HMDの構成)
図2は、本実施形態に係るHMDの概略の構成を示す斜視図である。HMDは、映像表示装置1と、支持手段2とで構成されている。
【0035】
映像表示装置1は、観察者に外界像をシースルーで観察させるとともに、映像を表示して観察者にそれを虚像として提供するものである。この映像表示装置1は、後述する光源11や表示素子13(ともに図1(a)(b)参照)などを収容する筐体3に接眼光学系4を一体化させて構成されている。光源11や表示素子13を制御するための信号や各部の駆動電力は、筐体3を貫通するケーブル5を介して各部に供給される。接眼光学系4は、全体として眼鏡の一方のレンズ(図2では右眼用レンズ)のような形状をなしている。なお、眼鏡の左眼用レンズに相当するレンズ6は、ダミーレンズである。
【0036】
支持手段2は、映像表示装置1を観察者の眼前で支持する支持部材である。本実施形態では、支持手段2は、観察者の右眼に対応して1個の映像表示装置1を支持しているが、観察者の両眼に対応して2個の映像表示装置1を支持してもよい。この支持手段2は、眼鏡のフレームおよびテンプルに相当する部材と、固定機構7とを含んで構成されている。
【0037】
固定機構7は、接眼光学系4の光学瞳(射出瞳)の位置を観察者の瞳(瞳孔、虹彩)の位置に合わせる位置調整を行った後に、観察者の頭部に対する接眼光学系4の相対位置を固定する固定手段であり、観察者の鼻と当接して移動可能な右鼻当て7Rおよび左鼻当て7Lと、これらをロックするロック部とを有して構成されている。支持手段2が固定機構7を有していることにより、光学瞳Eの位置調整後、観察者は、光学瞳Eの位置にて、良好な映像を確実にかつ安定して観察することができる。なお、位置調整の詳細については後述する。
【0038】
(2.映像表示装置について)
次に、上述した映像表示装置1の詳細について説明する。なお、以下での説明の便宜上、観察者が光学瞳Eの位置に自分の瞳Pを合わせて映像を観察する状態を映像観察状態と称し、映像観察前に光学瞳Eの位置と観察者の瞳Pの位置とを合わせる位置調整を行う状態を位置調整状態と称することとする。
【0039】
図1(a)は、本実施形態の映像表示装置1の位置調整状態での構成を示す断面図であり、図1(b)は、映像表示装置1の映像観察状態での構成を示す断面図である。このように、映像表示装置1は、光源11と、照明光学系12と、表示素子13と、接眼光学系4と、光束径切り替え機構30(光束径切り替え手段)とを有している。
【0040】
なお、説明の便宜上、方向を以下のように定義しておく。まず、表示素子13の表示領域の中心と、接眼光学系4によって形成される光学瞳Eの中心とを光学的に結ぶ軸を光軸とする。そして、光源11から光学瞳Eまでの光路を展開したときの光軸方向をZ方向とする。また、接眼光学系4の後述するホログラム光学素子23の光軸入射面に垂直な方向をX方向とし、ZX平面に垂直な方向をY方向とする。なお、ホログラム光学素子23の光軸入射面とは、ホログラム光学素子23における入射光の光軸と反射光の光軸とを含む平面、すなわち、YZ平面を指す。なお、X、Y、Zの各方向の正負は問わないものとする。
【0041】
光源11は、例えば、RGBの3原色に対応する波長の光を出射するRGB一体型のLEDで構成されている。なお、光源11は、発光波長の広い白色LEDで構成されてもよい。
【0042】
照明光学系12は、光源11から射出された光を表示素子13に導くものであり、例えば入射光を反射してYZ平面でのみ集光するシリンドリカル凹面ミラーで構成されている。なお、照明光学系12は、平面の反射ミラーと、集光レンズとで構成されていてもよく、集光レンズのみで構成されていてもよい。
【0043】
表示素子13は、光源11から照明光学系12を介して入射する光を画像データに応じて変調して映像を表示するものであり、例えば複数の画素をマトリクス状に有する透過型のLCDで構成されている。表示素子13は、矩形の表示画面の長辺方向がX方向となり、短辺方向がY方向となるように配置されている。なお、表示素子13は、反射型の光変調素子で構成されてもよい。
【0044】
接眼光学系4は、表示素子13からの映像光を光学瞳Eに導くとともに、外界像の光(外光)を光学瞳Eに導く光学系であり、接眼プリズム21と、偏向プリズム22と、ホログラム光学素子23とを有して構成されている。
【0045】
接眼プリズム21は、表示素子13からの映像光を内部で全反射させてホログラム光学素子23に導くものであり、偏向プリズム22とともに、例えばアクリル系樹脂で構成されている。この接眼プリズム21は、平行平板の下端部を楔状にした形状で構成されている。接眼プリズム21の上端面は、映像光の入射面としての面21aとなっており、前後方向に位置する2面は、互いに平行な面21b・21cとなっている。
【0046】
偏向プリズム22は、平面視で略U字型の平行平板で構成されており(図2参照)、接眼プリズム21の下端部および両側面部(左右の各端面)と貼り合わされたときに、接眼プリズム21と一体となって略平行平板となるものである。偏向プリズム22は、ホログラム光学素子23を挟むように接眼プリズム21と接着して設けられている。これにより、接眼プリズム21の楔状の下端部を外光が透過するときの屈折を偏向プリズム22でキャンセルすることができ、シースルーで観察される外界像に歪みが生じるのを防止することができる。
【0047】
ホログラム光学素子23は、表示素子13からの映像光を回折反射させて光学瞳Eに導くと同時に、外光を透過させて光学瞳Eに導く体積位相型の反射型ホログラム光学素子であり、接眼プリズム21において偏向プリズム22との接合面に設けられている。体積位相型の反射型ホログラム光学素子は、反射波長域が狭く、外光の透過率が高いので、これをホログラム光学素子23として用いることにより、観察者は、表示映像(虚像)を観察しながら、外界像をシースルーで観察することが可能となる。また、ホログラム光学素子23は、軸非対称な正の光学的パワーを有しており、正の光学的パワーを持つ非球面凹面ミラーと同様の機能を持っている。これにより、装置を構成する各光学部材の配置の自由度を高めて装置を容易に小型化することができるとともに、良好に収差補正された映像を観察者に提供することができる。
【0048】
光束径切り替え機構30は、光源11から射出される光の光束径を位置調整状態と映像観察状態とで切り替えることにより、光学瞳Eを通過する光の光束径を位置調整状態と映像観察状態とで切り替えるものであるが、その詳細については後述する。
【0049】
次に、上記構成の映像表示装置1の動作について説明する。なお、以下で説明する動作は、基本的には図1(a)の位置調整状態および図1(b)の映像観察状態で同じである。ただし、表示素子13に表示させる映像は、位置調整状態では例えば白パターン(全画素ON)の映像であり、映像観察状態では通常のカラー映像(観察者に観察させる映像)である。
【0050】
光源11から射出された光は、光束径切り替え機構30および照明光学系12を介して表示素子13に入射し、そこで変調されて映像光として出射される。表示素子13からの映像光は、接眼光学系4の接眼プリズム21の内部に面21aから入射し、互いに対向する2つの面21b・21cで複数回全反射されて、ホログラム光学素子23に入射する。ホログラム光学素子23に入射した光は、そこで回折反射されて光学瞳Eに達する。したがって、光学瞳Eの位置では、観察者は表示素子13に表示された映像の拡大虚像を観察することができる。
【0051】
一方、接眼プリズム21、偏向プリズム22およびホログラム光学素子23は、外光をほとんど全て透過させるので、観察者は外界像を観察することができる。したがって、表示素子13に表示された映像の虚像は、外界像の一部に重なって観察されることになる。
【0052】
(3.光学瞳の位置調整について)
次に、光学瞳Eの位置調整について説明する。位置調整状態においては、上述した光束径切り替え機構30により、光源11から射出される光の光束径が切り替えられる。本実施形態では、図1(a)(b)に示すように、光束径切り替え機構30は、開口部を有する絞り31で構成されている。つまり、絞り31は、光源から射出された光が通過する開口部の面積を位置調整状態と映像観察状態とで切り替えることにより、光学瞳Eを通過する光の光束径を位置調整状態と映像観察状態とで切り替える。絞り31は、光学瞳Eとほぼ共役な位置に配置されており、光学瞳Eを通過する光の光束径を位置調整状態と映像観察状態とで正確にかつ確実に切り替えることが可能となっている。
【0053】
ここで、映像観察状態で光学瞳Eを通過する光の光束径をφViewとし、位置調整状態で光学瞳Eを通過する光の光束径をφAli とすると、本実施形態では、φView<φAli となるように、光源11から射出される光の光束径を絞り31によって切り替えている。すなわち、図1(a)(b)に示すように、位置調整状態での絞り31の開口部の面積は、映像観察状態での開口部の面積よりも広く、これによって、光学瞳Eを通過する光の光束径が、映像観察状態よりも位置調整状態で大きくなっている。
【0054】
ちなみに、本実施形態において、光学瞳Eを通過する光の光束径φViewおよびφAli は、表1の通りである。なお、映像観察状態での光学瞳Eの位置での画角θView、および位置調整状態での光学瞳Eの位置での画角θAli も併せて表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
このように、絞り31による光源光の光束径の切り替えにより、光学瞳Eを通過する光の光束径が映像観察状態よりも位置調整状態で大きくなるので、位置調整状態において、観察者は、光束径の大きな光に基づいて光学瞳Eの位置を認識、確認することが容易となり、光学瞳Eの位置調整を容易に行うことができる。つまり、観察者は、位置調整状態において、光学瞳Eの位置を容易に見つけて、その光学瞳Eと自分の瞳Pとを容易に合わせることができる。
【0057】
特に、本実施形態では、表1より、絞り31は、3φView=φAli となるように、光源11から射出される光の光束径を切り替えている。このような光束径の切り替えにより、位置調整状態においては、光学瞳Eを通過する光の光束径が十分に大きくなるので、観察者は、位置調整のスタート時に光学瞳Eをさらに容易に見つけることができ、その光学瞳Eと自分の瞳Pとをさらに容易に合わせることが可能となる。なお、この効果は、φAli がφViewの3倍よりも大きければ、確実に得ることができる。つまり、絞り31が3φView≦φAli となるように、光源11から射出される光の光束径を切り替えれば、上記の効果を得ることができる。
【0058】
また、本実施形態では、光束径切り替え機構30が、映像観察状態と位置調整状態とで開口部の面積を切り替える絞り31で構成されているので、光源11から射出される光の光束径を、映像観察状態と位置調整状態とで簡単に切り替えることができ、これによって、光学瞳Eを通過する光の光束径を、映像観察状態と位置調整状態とで簡単に切り替えることができる。このように光束径切り替え機構30として絞り31を用いる構成は、特に、映像観察状態で光学瞳Eを通過する光の光束径φViewに対して光源11の発光面積が大きい場合には有効である。
【0059】
ところで、本実施形態では、表示素子13の映像表示領域は、映像観察状態よりも位置調整状態で小さくなっている。つまり、図1(a)(b)のYZ面内において、位置調整状態での表示素子13の映像表示領域をR1とし、映像観察状態での表示素子13の映像表示領域をR2とすると、R1<R2となっている。なお、このような映像表示領域の切り替えは、例えば、映像観察状態では表示素子13の全画素をON(光透過状態)にする一方、位置調整状態では表示素子13の周辺部の画素をOFF(光遮光状態)とし、周辺部よりも内側(光軸側)の画素をON(光透過状態)とすることで実現可能である。
【0060】
接眼光学系4は、映像観察状態(光学瞳Eを通過する光の光束径は小さい)で発生する収差が補正されるように設計されているが、このような接眼光学系4を用いた場合、R1=R2の状態で、位置調整状態で光学瞳Eを通過する光の光束径を大きくすると、映像の周辺部に向かうほど収差が発生し、結像性能が劣化する(映像がぼやける)。位置調整状態では、光学瞳Eの位置のみを確認できればよいので、結像性能の劣化は特に問題とはならないが、本実施形態のように、R1<R2とすることにより、映像がはっきりと出る部分(映像の中心部)のみを光学瞳Eの位置調整に用いることが可能となる。この場合、観察者は光学瞳Eの正確な中心位置をより認識し易くなり、光学瞳Eの位置調整がさらに容易となる。
【0061】
また、上記のような映像表示領域の切り替えにより、位置調整状態での接眼光学系4の有効光路領域は、映像観察状態での接眼光学系4の有効光路領域に含まれることになる。なお、上記の有効光路領域とは、接眼光学系4において、明確に観察できる映像を作る光が通過する領域(範囲)を指す。より分かりやすく言うと、位置調整状態および映像観察状態での接眼光学系4の有効光路領域は、後述する実施の形態2の映像表示装置1における光路図を示す図3(a)(b)において、T1およびT2の範囲にそれぞれ相当する。
【0062】
一般に、光学瞳Eを通過する光の光束径を大きくすると、接眼光学系4の有効光路領域を確保するために、接眼光学系4を大きく構成せざるを得なくなる。しかし、本実施形態では、上記のように、位置調整状態での接眼光学系4の有効光路領域は、映像観察状態での接眼光学系4の有効光路領域に含まれるので、接眼光学系4を大きく構成することなく、φView<φAli を実現することができる。したがって、接眼光学系4をコンパクトに構成しつつ、光学瞳Eの位置調整が容易な映像表示装置1を実現することができる。また、コンパクトな接眼光学系4を用いることができるので、小型、軽量で、映像品位の高い、長時間使用可能なHMDを実現することが可能となる。
【0063】
また、本実施形態では、光学瞳Eを通過する光の光束径は、位置調整状態よりも映像観察状態で小さいので、映像観察状態での焦点深度は深くなり、対応視度が広くなる。つまり、映像観察状態においては、極度の近視や遠視でなければ、視度補正を行うことなく映像を観察することが可能となる。一方、位置調整状態での焦点深度は浅くなるので、位置調整状態では、光学瞳Eの面内方向だけでなく、光軸方向の位置調整を行うことも可能となる。つまり、光学瞳Eが光軸方向にずれると、映像がぼやけやすくなるので、これを利用して光軸方向における光学瞳Eの位置調整を行うことも可能となる。
【0064】
なお、以上では、表示素子13の映像表示領域の切り替え、および接眼光学系4の有効光路領域の設定について、上下方向(YZ平面内)で説明したが、左右方向(XY平面内)についても同様に考えることができる。
【0065】
なお、本実施形態では、θViewは±5.0°となっており、観察者の眼が大きく回旋しないような画角となっているが、θViewが観察者の眼が大きく回旋する画角(例えば±8°以上)となっている場合でも、上述した本実施形態の構成は有効である。この点は、以下の各実施の形態についても同様に言える。
【0066】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、以下での説明の便宜上、実施の形態1と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
【0067】
図3(a)(b)は、本実施形態の映像表示装置1の光路を展開して示す説明図であり、特に、図3(a)は位置調整状態においての説明図であり、図3(b)は映像観察状態においての説明図である。本実施形態の映像表示装置1は、光源11が集光レンズを先端部に有するLEDで構成されており、照明光学系12が集光レンズで構成されている点で、実施の形態1と異なっている。なお、図4は、光源11の発光特性を示している。ただし、図4の縦軸の発光輝度は、最大輝度(光軸位置の輝度)に対する相対的な値を示している。
【0068】
また、本実施形態では、光束径切り替え機構30が、絞り31の他にさらに照度調整フィルタ32を有している。照度調整フィルタ32は、光源11から射出される光の瞳面内での照度(照明輝度)を調整するためのフィルタであり、絞り31よりも光源11側に配置されている。この照度調整フィルタ32は、中心部32aと周辺部32bとで構成されている。中心部32aは、例えば孔で構成されており、周辺部32bは、例えば半透過膜で構成されている。
【0069】
図5は、照度調整フィルタ32の透過特性を示す説明図である。なお、図5の縦軸の透過率は、最大透過率(光軸位置の透過率)に対する相対的な値を示している。照度調整フィルタ32が上記の中心部32aおよび周辺部32bで構成されていることにより、中心部32aでは光の透過率が高く(例えば透過率100%)、周辺部32bでは光の透過率が低い(例えば透過率50%)。したがって、照度調整フィルタ32においては、周辺部32bを透過する光の透過率は、中心部32aを透過する光の透過率の例えば1/2に低下することとなる。
【0070】
本実施形態においても、φView<φAli となるように、光源11から射出される光の光束径を絞り31によって切り替えている。すなわち、図3(a)(b)に示すように、位置調整状態での絞り31の開口部の面積は、映像観察状態での開口部の面積よりも広く、かつ、照度調整フィルタ32の中心部32aの面積よりも広い。これによって、光学瞳Eを通過する光の光束径が、映像観察状態よりも位置調整状態で大きくなっている。
【0071】
ちなみに、本実施形態において、φViewおよびφAli は、表2の通りである。なお、θViewおよびθAli についても併せて表2に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
このように、本実施形態においても、実施の形態1と同様に、絞り31による光源光の光束径の切り替えにより、光学瞳Eを通過する光の光束径が映像観察状態よりも位置調整状態で大きくなる。これにより、位置調整状態において、観察者は、光学瞳Eの位置、すなわち、自分の瞳P内に光が入る場所を最初に見つけることが容易となり、光学瞳Eの位置調整を容易に行うことができる。
【0074】
また、図6は、光学瞳Eの瞳面での照明特性を示す説明図である。なお、図6の縦軸の照度は、最大照度(光軸位置の照度)に対する相対的な値を示している。図4の特性の光源11を用い、光源11からの光を、図5の特性を有する照度調整フィルタ32を介して光学瞳Eに導くと、上記した絞り31による光束径の切り替えにより、位置調整状態において、光学瞳Eの中心部では照度が高く、周辺部では照度が低くなる。特に、位置調整状態において、光学瞳Eを通過する光の瞳面内での周辺照度は、中心照度の1/2以下となっている。
【0075】
このように、光束径切り替え機構30が絞り31と照度調整フィルタ32とを有して構成されることにより、位置調整状態において、光学瞳Eを通過する光の瞳面内での照度を、中心から周辺に向かって低下させることができる。これにより、観察者は、光学瞳Eの面内における周辺から中心に向かう方向への位置調整がしやすくなる。
【0076】
つまり、観察者は、位置調整状態において、眼前に映像表示装置1を近づけ、まず、自分の瞳Pに光が入る場所を探し、瞳Pに光が入ったら、その周辺で映像表示装置1を移動させ、最も明るく、かつ、バランスよく照明光が瞳Pに入る場所に映像表示装置1を位置させた後、その位置を固定機構7(図2参照)によって固定すればよい。
【0077】
また、位置調整状態において、光学瞳Eを通過する光の瞳面内での照度は、中心位置で最大であるので、観察者は、位置調整時に光学瞳Eの中心を認識することが容易となり、位置調整を正確に行うことができる。
【0078】
特に、本実施形態では、位置調整状態において、光学瞳Eを通過する光の瞳面内での周辺照度は、中心照度の1/2以下であり、中心照度と周辺照度との差が大きいので、観察者は、位置調整時に光学瞳Eの中心を認識することがさらに容易となり、位置調整をさらに正確に行うことができる。
【0079】
また、本実施形態では、照度調整フィルタ32を用いることにより、位置調整状態において、光学瞳Eを通過する光の瞳面内での照度は、中心から周辺に向かって段階的に低下しているので、観察者は、光学瞳Eの中心を確実に認識することができ、光学瞳Eの面内における周辺から中心に向かう方向への位置調整がさらに容易となる。
【0080】
また、本実施形態においても、実施の形態1と同様に、表示素子13の映像表示領域は、映像観察状態よりも位置調整状態で小さく、この結果、図3(a)(b)に示すように、位置調整状態での接眼光学系4の有効光路領域T1は、映像観察状態での接眼光学系4の有効光路領域T2に含まれている(T1<T2)。したがって、実施の形態1と同様に、接眼光学系4を大きく構成することなくφView<φAli を実現して、光学瞳Eの位置調整が容易な映像表示装置1を実現することができる。
【0081】
なお、位置調整状態では、絞り31の開口部の面積が広く、φAli が大きいため、光学瞳Eの位置では、図6のBの範囲で照度を認識することができる。一方、映像観察状態では、絞り31の開口部の面積が狭く、φViewが小さいため、光学瞳Eの位置では、図6のBよりも狭いAの範囲で照度を認識することとなる。このとき、Aの範囲では全体的に照度が高いため、観察者は、映像観察状態において明るい映像を観察することができる。
【0082】
〔実施の形態3〕
本発明のさらに他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、以下での説明の便宜上、実施の形態1・2と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
【0083】
図7(a)(b)は、本実施形態の映像表示装置1の光路を展開して示す説明図であり、特に、図7(a)は位置調整状態においての説明図であり、図7(b)は映像観察状態においての説明図である。本実施形態の映像表示装置1は、光源11が発光面積の小さな表面実装タイプのLEDで構成されている点で、実施の形態1・2とは異なっている。ちなみに、光源11の発光部のサイズは、例えば0.6mm×0.6mmとなっている。
【0084】
また、本実施形態では、光束径切り替え機構30が、絞り31や照度調整フィルタ32の代わりに、拡散板33および駆動部34を有して構成されている。拡散板33は、光源11からの光を拡散させるものであり、光学瞳Eとほぼ共役な位置に配置されている。駆動部34は、位置調整状態のときには、図7(a)に示すように、拡散板33を光路中に配置する一方、映像観察状態のときには、図7(b)に示すように、拡散板33を光路中から取り除くものであり、例えば光軸と平行な回転軸を有し、拡散板33を回転させるモータで構成されている。なお、本実施形態では、表示素子13における映像表示領域の大きさは、位置調整状態と映像観察状態とで同じとなっている。
【0085】
映像観察状態において、駆動部34によって拡散板33を光路外に退避させることにより、光学瞳Eを通過する光の光束径を光源11のチップ面サイズまで、小さく絞ることができる。これにより、焦点深度が深くなり、映像観察状態においては、視度補正を行うことなく映像を観察することが可能となる。
【0086】
一方、位置調整状態では、駆動部34によって拡散板33が光路中に配置されるので、簡単に、光源11の発光面積を擬似的に大きくすることができる。したがって、φViewに対して光源11の発光面積が小さい場合でも、拡散板33の光路中への出し入れによって、光源光の光束径を、映像観察状態と位置調整状態とで簡単に切り替えて、φView<φAli を容易に実現することができる。
【0087】
ちなみに、本実施形態において、φViewおよびφAli は、表3の通りである。なお、θViewおよびθAli についても併せて表3に示す。
【0088】
【表3】
【0089】
このように、本実施形態においても、光束径切り替え機構30により、光学瞳Eを通過する光の光束径が映像観察状態よりも位置調整状態で大きくなるので、位置調整状態において、観察者は光学瞳Eの位置調整を容易に行うことができる。
【0090】
また、本実施形態では、表3より、θViewおよびθAli は、位置調整状態と映像観察状態とで同じであり、表示素子13の映像表示領域も、位置調整状態と映像観察状態とで同じであるので、接眼光学系4に入射する映像光のうち、表示素子13の周辺部から射出された映像光は、接眼光学系4の端部でけられ、表示素子13の中央部から射出された映像光のみが接眼光学系4を介して光学瞳Eに入射する。したがって、光学瞳Eの位置では、周辺部は暗く、中央部は明るい映像となる。なお、接眼光学系4の有効光路領域は、明確に観察できる映像を作る光が通過する領域を指すので、本実施形態での有効光路領域は、位置調整状態と映像観察状態とで同じと言える(T1=T2)。また、光学瞳Eが光軸方向にずれるほど、つまり、光軸方向における光学瞳Eの位置と観察者の瞳Pの位置とがずれるほど、表示素子13の表示映像の周辺部が欠けるため、位置調整状態において見える映像の範囲は小さくなる(表示映像の中心付近しか見えなくなる)。
【0091】
そこで、本実施形態では、位置調整状態において、観察者は、光束の位置を見つけたら、まず、その中心(光軸上)に自分の瞳Pが位置するように光学瞳Eを調整し、その後、光軸上で映像表示装置1との距離を調整すればよい。そして、映像が最も大きくなり、かつ、一番明るくなったところで(光学瞳Eの瞳面上に自分の瞳Pが位置したときに)、映像表示装置1の位置を固定すればよい。このような手法により、簡単に、光学瞳Eの3次元的な位置調整が可能になる。
【0092】
なお、位置調整状態において、表示素子13に表示させる映像は、白パターン(全画素白表示)であってもよいし、例えばチェックパターン(市松模様)であってもよい。特に後者の場合は、位置調整状態において、表示映像の大部分が見えているのか、中心付近だけが見えているのかの判断が容易となり、光軸方向の位置ずれの判断が容易となるので、その点では好ましいと言える。
【0093】
なお、本実施形態では、1種類の拡散板33を用いて、映像観察状態と位置調整状態とで光源光の光束径を切り替える構成としているが、映像観察状態および位置調整状態のそれぞれで光学瞳Eを通過する光の光束径に対応したサイズの拡散板を2つ設けて、これらを出し入れすることにより、光束径を切り替える構成としてもよい。つまり、光束径切り替え手段は、映像観察状態で光学瞳を通過する光の光束径に対応したサイズの第1の拡散板と、位置調整状態で光学瞳を通過する光の光束径に対応したサイズの第2の拡散板と、映像観察状態のときに第1の拡散板を光路中に配置する一方、位置調整状態のときに第2の拡散板を光路中に配置する駆動部とを有する構成としてもよい。
【0094】
〔実施の形態4〕
本発明のさらに他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、以下での説明の便宜上、実施の形態1〜3と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
【0095】
図8(a)(b)(c)は、本実施形態の映像表示装置1の光路を展開して示す説明図であり、特に、図8(a)は第1の位置調整状態においての説明図であり、図8(b)は第2の位置調整状態においての説明図であり、図8(c)は映像観察状態においての説明図である。本実施形態では、映像表示装置1の光束径切り替え機構30が、実施の形態1〜3で述べた絞り31、照度調整フィルタ32、拡散板33および駆動部34を全て有して構成されている。ただし、照度調整フィルタ32の構成は、実施の形態2のものとは若干異なっている。拡散板33、照度調整フィルタ32および絞り31は、光源11側からこの順で配置されている。なお、便宜上、図8(a)(b)(c)では、駆動部34の図示を省略しており、図8(c)では、さらに拡散板33の図示を省略している。
【0096】
図9は、光源11および拡散板33で1つの光源とみなしたときの発光特性を示している。なお、図9の縦軸の発光輝度は、最大輝度(光軸位置の輝度)に対する相対的な値を示している。同図に示すように、光源11からの光は拡散板33で拡散されるため、光軸に垂直な方向に比較的広範囲にわたって発光輝度の高い分布となっている。
【0097】
図8(a)(b)(c)に示した照度調整フィルタ32は、中心部32aと周辺部32bとで構成されているが、周辺部32bは、さらに第1周辺部32b1と第2周辺部32b2とで構成されている。中心部32aは、例えば孔で構成されており、周辺部32bは、例えば半透過膜で構成されている。
【0098】
周辺部32bにおいて、第2周辺部32b2は、第1周辺部32b1よりも外側に形成されており、透過率は第1周辺部32b1よりも低く設定されている。このような照度調整フィルタ32の構成により、周辺部32bを透過する光の照度は、中心部32aを透過する光の照度を基準として2段階で低下することになる。
【0099】
ここで、図10は、本実施形態の照度調整フィルタ32の透過特性を示す説明図である。なお、図10の縦軸の透過率は、最大透過率(光軸位置の透過率)に対する相対的な値を示している。照度調整フィルタ32が上記の中心部32aおよび周辺部32b(第1周辺部32b1+第2周辺部32b2)で構成されていることにより、中心部32aでは光の透過率が高く(例えば透過率100%)、第2周辺部32b2では光の透過率が低く(例えば透過率30%)、第1周辺部32b1ではそれらの間の透過率(例えば透過率60%)となっている。このように、照度調整フィルタ32においては、中心から周辺に向かって、透過率が段階的に低下している。
【0100】
本実施形態では、光束径切り替え機構30は、位置調整状態および映像観察状態において、光源11から射出される光の光束径を計3段階で切り替えるようにしている。
【0101】
より具体的には、第1の位置調整状態では、図8(a)に示すように、光源11からの光が照度調整フィルタの中心部32a、第1周辺部32b1および第2周辺部32b2の全てを透過して光学瞳Eに導かれるように、絞り31によって開口部の径(面積)を調整する。
【0102】
続いて、第2の位置調整状態では、図8(b)に示すように、光源11からの光が照度調整フィルタの中心部32aおよび第1周辺部32b1のみを透過して光学瞳Eに導かれるように、絞り31によって開口部の径を第1の位置調整状態のときよりも小さくする。
【0103】
一方、映像観察状態では、図8(c)に示すように、光源11からの光が照度調整フィルタの中心部32aのみを透過して光学瞳Eに導かれるように、絞り31によって開口部の径を第2の位置調整状態のときよりもさらに小さくする。
【0104】
なお、駆動部34により、第1および第2の位置調整状態では、拡散板33を光路中に配置し、映像観察状態では、拡散板33を光路中から退避させる。
【0105】
以上のように、光源11から射出される光の光束径を絞り31によって図8(a)(b)(c)のように切り替えることにより、本実施形態においても、φView<φAli を実現することができる。特に、第1の位置調整状態で光学瞳Eを通過する光の光束径をφAli-1 とし、第2の位置調整状態で光学瞳Eを通過する光の光束径をφAli-2 とすると、φView<φAli-2 <φAli-1 を実現することができる。
【0106】
ちなみに、本実施形態において、φView、φAli-1 およびφAli-2 は、表4の通りである。なお、映像観察状態での光学瞳Eの位置での画角θView、および第1および第2の位置調整状態での光学瞳Eの位置での画角θAli-1 およびθAli-2 も併せて表4に示す。
【0107】
【表4】
【0108】
このように、本実施形態においても、絞り31による光源光の光束径の切り替えにより、光学瞳Eを通過する光の光束径が映像観察状態よりも位置調整状態で大きくなるので、位置調整状態において、観察者は、光学瞳Eの位置の位置調整を容易に行うことができる。
【0109】
また、位置調整状態では、光束径切り替え機構30によって、光源光の光束径を2段階で切り替えて段階的に小さくするので、上述のように、光学瞳Eを通過する光の光束径を段階的に小さくして段階的な位置調整が可能となる。これにより、観察者は、光学瞳Eの中心と自らの瞳Pの中心とを段階的に合わせることが可能となり、互いの中心同士を合わせやすくなる。
【0110】
また、図11は、光学瞳Eの瞳面での照明特性を示す説明図である。なお、図11の縦軸の照度は、最大照度(光軸位置の照度)に対する相対的な値を示している。第1の位置調整状態では、光学瞳Eの中心部で照度が高く、周辺部で照度が2段階で低くなる(Cの範囲参照)。また、第2の位置調整状態では、光学瞳Eの中心部で照度が高く、周辺部で照度が低くなる(Bの範囲参照)。一方、映像観察状態では、光学瞳Eの中心部、すなわち、照度が高いAの範囲で映像を観察することが可能となる。
【0111】
このように、周辺部32を透過する光の透過率を2段階で低下させる照度調整フィルタ32を用い、絞り31によって光束径を切り替えることにより、第1の位置調整状態では、光学瞳Eを通過する光の瞳面内での照度を、中心から周辺に向かって2段階で低下させることができる。したがって、観察者は、光学瞳Eの面内における周辺から中心に向かう方向への位置調整がさらにしやすくなる。
【0112】
なお、本実施形態では、光束径切り替え機構30は、位置調整状態において、光源光の光束径を2段階で切り替える構成となっているが、照度調整フィルタ32の周辺部32bの透過率を3段階以上に設定して、絞り31で開口部の面積を調整することにより、位置調整状態において、光源光の光束径を3段階以上に切り替え、φAli を3段階以上に切り替えることも可能である。
【0113】
なお、本実施形態では、光束径切り替え機構30は、絞り31、照度調整フィルタ32、拡散板33および駆動部34で構成しているが、絞り31と照度調整フィルタ32のみで構成することも勿論可能である。
【0114】
なお、上述した各実施の形態の構成を適宜組み合わせて、映像表示装置1ひいてはHMDを構成したり、光学瞳Eの位置調整を行うことも勿論可能である。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、HMDに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】(a)は、本発明の実施の一形態に係る映像表示装置の位置調整状態での構成を示す断面図であり、(b)は、映像表示装置の映像観察状態での構成を示す断面図である。
【図2】上記映像表示装置を有するHMDの概略の構成を示す斜視図である。
【図3】(a)は、本発明の他の実施の形態に係る映像表示装置の位置調整状態での光路を展開して示す説明図であり、(b)は、映像表示装置の映像観察状態での光路を展開して示す説明図である。
【図4】上記映像表示装置の光源の発光特性を示す説明図である。
【図5】上記映像表示装置が有する光束径切り替え機構の照度調整フィルタの透過特性を示す説明図である。
【図6】光学瞳の瞳面での照明特性を示す説明図である。
【図7】(a)は、本発明のさらに他の実施の形態に係る映像表示装置の位置調整状態での光路を展開して示す説明図であり、(b)は、映像表示装置の映像観察状態での光路を展開して示す説明図である。
【図8】(a)は、本発明のさらに他の実施の形態に係る映像表示装置の第1の位置調整状態での光路を展開して示す説明図であり、(b)は、映像表示装置の第2の位置調整状態での光路を展開して示す説明図であり、(c)は、映像表示装置の映像観察状態での光路を展開して示す説明図である。
【図9】上記映像表示装置において、拡散板も考慮した光源の発光特性を示す説明図である。
【図10】上記映像表示装置が有する光束径切り替え機構の照度調整フィルタの透過特性を示す説明図である。
【図11】光学瞳の瞳面での照明特性を示す説明図である。
【符号の説明】
【0117】
1 映像表示装置
2 支持手段
4 接眼光学系
7 固定機構(固定手段)
11 光源
13 表示素子
23 ホログラム光学素子
30 光束径切り替え機構(光束径切り替え手段)
31 絞り
32 照度調整フィルタ
33 拡散板
34 駆動部
E 光学瞳
P 観察者の瞳
R1 映像表示領域
R2 映像表示領域
T1 有効光路領域
T2 有効光路領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示素子にて表示された映像を虚像として観察者に提供する映像表示装置と、その映像表示装置を備えたヘッドマウントディスプレイ(以下、HMDとも称する)とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
常時装着して映像を観察することができるHMDは、映像の視認性がよく、調整部分が少なく、小型軽量であることが望まれる。このようなHMDは、光学瞳(射出瞳)を通過する光の光束径が小さくなるような接眼光学系(極限はマクスウェル視となるもの)を用いることによって実現することが可能である。つまり、このような接眼光学系を用いることにより、焦点深度が深くなるため、対応視度が広くなり、視度補正等の調整なしで映像を観察することが可能となる。また、光学瞳を通過する光の光束径が小さいので、接眼光学系の有効光路領域を小さくすることができ、接眼光学系ひいてはHMDの小型軽量化を実現することができる。
【0003】
ところで、HMDでの映像の観察時には、観察者の瞳の位置と接眼光学系の光学瞳の位置とを合わせる必要があるが、接眼光学系の光学瞳が小さいと、観察者自身が位置合わせの目標位置(例えば光学瞳の中心位置)を確認しづらくなる。そこで、例えば特許文献1のHMDでは、観察者の眼球に投影する光束と観察者の眼球との間の位置関係を検出手段が検出し、検出された位置関係に応じて、移動手段が観察者の眼球に投影する光束を移動させている。これにより、観察者は、自身による位置調整を行うことなく、映像を観察することが可能となっている。
【0004】
しかし、特許文献1の構成では、位置関係の検出手段と光束の移動手段とを設けることによって、システム全体が大きくなり、重くなってしまう。したがって、そのような構成は、長時間装着するHMDに向いているとは言えない。
【0005】
一方、例えば特許文献2のHMDでは、複数の照明用点光源のうち、観察者の瞳孔位置と共役な位置にある点光源のみを選択して点灯するようにしている。これにより、上記のような機械的な手段を用いた位置合わせを不要としている。
【0006】
【特許文献1】特開平7−311361号公報
【特許文献2】特開平8−211325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献2のように照明用点光源を複数設ける構成では、位置合わせは容易である反面、接眼光学系において、映像を周辺まで観察するのに必要な有効光路領域を、全ての点光源に対して確保しなければならない。このため、本来の軸上に1点にのみ点光源を配置する構成に比べて、接眼光学系が大きくなってしまう。
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、接眼光学系をコンパクトに構成しつつ、光学瞳の位置調整を容易に行うことができる映像表示装置と、その映像表示装置を備えたHMDとを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の映像表示装置は、光源と、光源からの光を変調して映像を表示する表示素子と、表示素子からの映像光を光学瞳に導く接眼光学系とを備えた映像表示装置であって、観察者が光学瞳の位置で映像を観察する映像観察状態で、光学瞳を通過する光の光束径をφViewとし、光学瞳の位置を観察者の瞳位置に合わせるための位置調整状態で、光学瞳を通過する光の光束径をφAli としたときに、φView<φAli となるように、光源から射出される光の光束径を切り替える光束径切り替え手段をさらに備えており、位置調整状態での接眼光学系の有効光路領域は、映像観察状態での接眼光学系の有効光路領域に含まれていることを特徴としている。
【0010】
上記の構成によれば、光源からの光は、表示素子にて変調され、映像光として射出された後、接眼光学系によって光学瞳に導かれる。したがって、光学瞳の位置では、観察者は、表示素子の表示映像(虚像)を観察することができる。
【0011】
また、光束径切り替え手段による光源光の光束径の切り替えにより、光学瞳を通過する光の光束径が映像観察状態よりも位置調整状態で大きくなるので、位置調整状態において、観察者は、光学瞳の位置を確認しやすくなり、光学瞳の位置調整を容易に行うことができる。
【0012】
さらに、接眼光学系における位置調整状態での有効光路領域は、映像観察状態での有効光路領域に含まれているので、接眼光学系を大きく構成することなく、位置調整状態で光学瞳を通過する光の光束径を大きくすることができる。したがって、接眼光学系をコンパクトに構成しつつ、光学瞳の位置調整が容易な映像表示装置を実現することができる。
【0013】
本発明の映像表示装置においては、位置調整状態において、光学瞳を通過する光の瞳面内での照度は、中心位置で最大であることが望ましい。この場合、観察者は、位置調整時に光学瞳の中心を認識することが容易となり、位置調整を正確に行うことができる。
【0014】
本発明の映像表示装置においては、位置調整状態において、光学瞳を通過する光の瞳面内での周辺照度は、中心照度の1/2以下であることが望ましい。この場合、位置調整状態において、光学瞳の面内での中心照度と周辺照度との差が大きくなるので、観察者は、位置調整時に光学瞳の中心を認識することがさらに容易となり、位置調整をさらに正確に行うことができる。
【0015】
本発明の映像表示装置においては、位置調整状態において、光学瞳を通過する光の瞳面内での照度は、中心から周辺に向かって段階的に低下することが望ましい。この場合、光学瞳の面内における周辺から中心に向かう方向への位置調整が容易となる。
【0016】
本発明の映像表示装置において、光束径切り替え手段は、3φView≦φAli となるように、光源から射出される光の光束径を切り替えることが望ましい。このような光束径切り替え手段による光源光の光束径の切り替えにより、位置調整状態において光学瞳を通過する光の光束径が、映像観察状態において光学瞳を通過する光の光束径の3倍以上となるので、位置調整のスタート時に、観察者は光学瞳を見つけ出し易くなる。
【0017】
本発明の映像表示装置において、表示素子の映像表示領域は、映像観察状態よりも位置調整状態のほうが小さいことが望ましい。
【0018】
映像観察状態で発生する収差が補正されるように接眼光学系が設計されている場合、表示素子の映像表示領域を映像観察状態と位置調整状態とで同じ面積(全画素ON)としたまま、位置調整状態において光学瞳を通過する光の光束径を大きくすると、映像の周辺部に向かうほど収差が発生し、映像がぼやけるため、観察者は光学瞳の正確な中心位置を認識しにくくなる。
【0019】
これに対して、表示素子の映像表示領域を、映像観察状態よりも位置調整状態で小さくする(例えば中心部の画素のみONにする)ことにより、映像がはっきりと出る部分(映像の中心部)のみを光学瞳の位置調整に用いることができ、観察者は光学瞳の正確な中心位置をより認識し易くなる。
【0020】
本発明の映像表示装置において、光束径切り替え手段は、光学瞳とほぼ共役な位置に配置されていることが望ましい。この場合、光束径切り替え手段による光源光の光束径の切り替えにより、光学瞳を通過する光の光束径の切り替えを正確にかつ確実に行うことができる。
【0021】
本発明の映像表示装置において、光束径切り替え手段は、映像観察状態と位置調整状態とで開口部の面積を切り替える絞りを有して構成されていてもよい。例えば、映像観察状態で光学瞳を通過する光の光束径に対して光源の発光面積が大きい場合は、絞りによって光源光が通過する開口部の面積を切り替えることにより、光源光の光束径を、映像観察状態と位置調整状態とで簡単に切り替えることができる。
【0022】
本発明の映像表示装置において、光束径切り替え手段は、光源から射出される光の瞳面内での照度を調整するための照度調整フィルタをさらに有しており、照度調整フィルタは、中心部を透過する光の透過率よりも周辺部を透過する光の透過率を低下させることが望ましい。
【0023】
この構成では、絞りによる開口部の面積の切り替えにより、位置調整状態において、光学瞳を通過する光の瞳面内での照度を、中心から周辺に向かって低下させることができる。これにより、観察者は、光学瞳の面内における周辺から中心に向かう方向への位置調整がしやすくなる。
【0024】
本発明の映像表示装置において、照度調整フィルタは、周辺部を透過する光の透過率を少なくとも2段階で低下させることが望ましい。この場合、位置調整状態において、光学瞳を通過する光の瞳面内での照度を、中心から周辺に向かって少なくとも2段階で低下させることができる。これにより、観察者は、光学瞳の面内における周辺から中心に向かう方向への位置調整がさらにしやすくなる。
【0025】
本発明の映像表示装置において、光束径切り替え手段は、光源からの光を拡散させる拡散板と、位置調整状態のときに拡散板を光路中に配置する一方、映像観察状態のときに拡散板を光路中から取り除く駆動部とを有している構成であってもよい。
【0026】
例えば、映像観察状態で光学瞳を通過する光の光束径に対して光源の発光面積が小さい場合は、拡散板によって光源の発光面積を擬似的に大きくすることができるとともに、駆動部による拡散板の光路中への出し入れによって、光源から射出される光の光束径を、映像観察状態と位置調整状態とで簡単に切り替えることができる。
【0027】
本発明の映像表示装置において、光束径切り替え手段は、位置調整状態において、光源から射出される光の光束径を少なくとも2段階に切り替えるようにしてもよい。位置調整状態において、光源光の光束径を段階的に切り替えて、位置調整を段階的に行うことにより、観察者は、光学瞳の中心に自らの瞳の中心を合わせることが容易となる。
【0028】
本発明の映像表示装置において、接眼光学系は、体積位相型の反射型ホログラム光学素子を含んでおり、上記ホログラム光学素子は、表示素子からの映像光を回折反射させて光学瞳に導くと同時に、外光を透過させて光学瞳に導く構成であってもよい。
【0029】
体積位相型の反射型ホログラム光学素子は、反射波長域が狭く、外光の透過率が高い。したがって、映像観察状態において、観察者は、表示映像(虚像)を観察しながら、外界像をシースルーで観察することが可能となる。
【0030】
本発明のHMDは、上述した本発明の映像表示装置と、上記映像表示装置を観察者の眼前で支持する支持手段とを有していることを特徴としている。この構成では、映像表示装置が支持手段にて支持されるので、観察者は映像表示装置から提供される映像をハンズフリーで長時間安定して観察することができる。
【0031】
本発明のHMDにおいて、上記支持手段は、接眼光学系の光学瞳の位置を観察者の瞳位置に合わせる位置調整を行った後に、観察者の頭部に対する接眼光学系の相対位置を固定する固定手段を有していることが望ましい。この構成では、固定手段により、光学瞳の位置調整後に、観察者の頭部に対する接眼光学系の相対位置が固定されるので、観察者は、光学瞳の位置にて、良好な映像を確実に観察することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、光束径切り替え手段による光源光の光束径の切り替えにより、光学瞳を通過する光の光束径が映像観察状態よりも位置調整状態で大きくなるので、位置調整状態において、観察者は、光学瞳の位置を確認しやすくなり、光学瞳の位置調整を容易に行うことができる。また、接眼光学系における位置調整状態での有効光路領域は、映像観察状態での有効光路領域に含まれているので、接眼光学系を大きく構成することなく、位置調整状態で光学瞳を通過する光の光束径を大きくすることができる。したがって、接眼光学系をコンパクトに構成しつつ、光学瞳の位置調整が容易な映像表示装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0034】
(1.HMDの構成)
図2は、本実施形態に係るHMDの概略の構成を示す斜視図である。HMDは、映像表示装置1と、支持手段2とで構成されている。
【0035】
映像表示装置1は、観察者に外界像をシースルーで観察させるとともに、映像を表示して観察者にそれを虚像として提供するものである。この映像表示装置1は、後述する光源11や表示素子13(ともに図1(a)(b)参照)などを収容する筐体3に接眼光学系4を一体化させて構成されている。光源11や表示素子13を制御するための信号や各部の駆動電力は、筐体3を貫通するケーブル5を介して各部に供給される。接眼光学系4は、全体として眼鏡の一方のレンズ(図2では右眼用レンズ)のような形状をなしている。なお、眼鏡の左眼用レンズに相当するレンズ6は、ダミーレンズである。
【0036】
支持手段2は、映像表示装置1を観察者の眼前で支持する支持部材である。本実施形態では、支持手段2は、観察者の右眼に対応して1個の映像表示装置1を支持しているが、観察者の両眼に対応して2個の映像表示装置1を支持してもよい。この支持手段2は、眼鏡のフレームおよびテンプルに相当する部材と、固定機構7とを含んで構成されている。
【0037】
固定機構7は、接眼光学系4の光学瞳(射出瞳)の位置を観察者の瞳(瞳孔、虹彩)の位置に合わせる位置調整を行った後に、観察者の頭部に対する接眼光学系4の相対位置を固定する固定手段であり、観察者の鼻と当接して移動可能な右鼻当て7Rおよび左鼻当て7Lと、これらをロックするロック部とを有して構成されている。支持手段2が固定機構7を有していることにより、光学瞳Eの位置調整後、観察者は、光学瞳Eの位置にて、良好な映像を確実にかつ安定して観察することができる。なお、位置調整の詳細については後述する。
【0038】
(2.映像表示装置について)
次に、上述した映像表示装置1の詳細について説明する。なお、以下での説明の便宜上、観察者が光学瞳Eの位置に自分の瞳Pを合わせて映像を観察する状態を映像観察状態と称し、映像観察前に光学瞳Eの位置と観察者の瞳Pの位置とを合わせる位置調整を行う状態を位置調整状態と称することとする。
【0039】
図1(a)は、本実施形態の映像表示装置1の位置調整状態での構成を示す断面図であり、図1(b)は、映像表示装置1の映像観察状態での構成を示す断面図である。このように、映像表示装置1は、光源11と、照明光学系12と、表示素子13と、接眼光学系4と、光束径切り替え機構30(光束径切り替え手段)とを有している。
【0040】
なお、説明の便宜上、方向を以下のように定義しておく。まず、表示素子13の表示領域の中心と、接眼光学系4によって形成される光学瞳Eの中心とを光学的に結ぶ軸を光軸とする。そして、光源11から光学瞳Eまでの光路を展開したときの光軸方向をZ方向とする。また、接眼光学系4の後述するホログラム光学素子23の光軸入射面に垂直な方向をX方向とし、ZX平面に垂直な方向をY方向とする。なお、ホログラム光学素子23の光軸入射面とは、ホログラム光学素子23における入射光の光軸と反射光の光軸とを含む平面、すなわち、YZ平面を指す。なお、X、Y、Zの各方向の正負は問わないものとする。
【0041】
光源11は、例えば、RGBの3原色に対応する波長の光を出射するRGB一体型のLEDで構成されている。なお、光源11は、発光波長の広い白色LEDで構成されてもよい。
【0042】
照明光学系12は、光源11から射出された光を表示素子13に導くものであり、例えば入射光を反射してYZ平面でのみ集光するシリンドリカル凹面ミラーで構成されている。なお、照明光学系12は、平面の反射ミラーと、集光レンズとで構成されていてもよく、集光レンズのみで構成されていてもよい。
【0043】
表示素子13は、光源11から照明光学系12を介して入射する光を画像データに応じて変調して映像を表示するものであり、例えば複数の画素をマトリクス状に有する透過型のLCDで構成されている。表示素子13は、矩形の表示画面の長辺方向がX方向となり、短辺方向がY方向となるように配置されている。なお、表示素子13は、反射型の光変調素子で構成されてもよい。
【0044】
接眼光学系4は、表示素子13からの映像光を光学瞳Eに導くとともに、外界像の光(外光)を光学瞳Eに導く光学系であり、接眼プリズム21と、偏向プリズム22と、ホログラム光学素子23とを有して構成されている。
【0045】
接眼プリズム21は、表示素子13からの映像光を内部で全反射させてホログラム光学素子23に導くものであり、偏向プリズム22とともに、例えばアクリル系樹脂で構成されている。この接眼プリズム21は、平行平板の下端部を楔状にした形状で構成されている。接眼プリズム21の上端面は、映像光の入射面としての面21aとなっており、前後方向に位置する2面は、互いに平行な面21b・21cとなっている。
【0046】
偏向プリズム22は、平面視で略U字型の平行平板で構成されており(図2参照)、接眼プリズム21の下端部および両側面部(左右の各端面)と貼り合わされたときに、接眼プリズム21と一体となって略平行平板となるものである。偏向プリズム22は、ホログラム光学素子23を挟むように接眼プリズム21と接着して設けられている。これにより、接眼プリズム21の楔状の下端部を外光が透過するときの屈折を偏向プリズム22でキャンセルすることができ、シースルーで観察される外界像に歪みが生じるのを防止することができる。
【0047】
ホログラム光学素子23は、表示素子13からの映像光を回折反射させて光学瞳Eに導くと同時に、外光を透過させて光学瞳Eに導く体積位相型の反射型ホログラム光学素子であり、接眼プリズム21において偏向プリズム22との接合面に設けられている。体積位相型の反射型ホログラム光学素子は、反射波長域が狭く、外光の透過率が高いので、これをホログラム光学素子23として用いることにより、観察者は、表示映像(虚像)を観察しながら、外界像をシースルーで観察することが可能となる。また、ホログラム光学素子23は、軸非対称な正の光学的パワーを有しており、正の光学的パワーを持つ非球面凹面ミラーと同様の機能を持っている。これにより、装置を構成する各光学部材の配置の自由度を高めて装置を容易に小型化することができるとともに、良好に収差補正された映像を観察者に提供することができる。
【0048】
光束径切り替え機構30は、光源11から射出される光の光束径を位置調整状態と映像観察状態とで切り替えることにより、光学瞳Eを通過する光の光束径を位置調整状態と映像観察状態とで切り替えるものであるが、その詳細については後述する。
【0049】
次に、上記構成の映像表示装置1の動作について説明する。なお、以下で説明する動作は、基本的には図1(a)の位置調整状態および図1(b)の映像観察状態で同じである。ただし、表示素子13に表示させる映像は、位置調整状態では例えば白パターン(全画素ON)の映像であり、映像観察状態では通常のカラー映像(観察者に観察させる映像)である。
【0050】
光源11から射出された光は、光束径切り替え機構30および照明光学系12を介して表示素子13に入射し、そこで変調されて映像光として出射される。表示素子13からの映像光は、接眼光学系4の接眼プリズム21の内部に面21aから入射し、互いに対向する2つの面21b・21cで複数回全反射されて、ホログラム光学素子23に入射する。ホログラム光学素子23に入射した光は、そこで回折反射されて光学瞳Eに達する。したがって、光学瞳Eの位置では、観察者は表示素子13に表示された映像の拡大虚像を観察することができる。
【0051】
一方、接眼プリズム21、偏向プリズム22およびホログラム光学素子23は、外光をほとんど全て透過させるので、観察者は外界像を観察することができる。したがって、表示素子13に表示された映像の虚像は、外界像の一部に重なって観察されることになる。
【0052】
(3.光学瞳の位置調整について)
次に、光学瞳Eの位置調整について説明する。位置調整状態においては、上述した光束径切り替え機構30により、光源11から射出される光の光束径が切り替えられる。本実施形態では、図1(a)(b)に示すように、光束径切り替え機構30は、開口部を有する絞り31で構成されている。つまり、絞り31は、光源から射出された光が通過する開口部の面積を位置調整状態と映像観察状態とで切り替えることにより、光学瞳Eを通過する光の光束径を位置調整状態と映像観察状態とで切り替える。絞り31は、光学瞳Eとほぼ共役な位置に配置されており、光学瞳Eを通過する光の光束径を位置調整状態と映像観察状態とで正確にかつ確実に切り替えることが可能となっている。
【0053】
ここで、映像観察状態で光学瞳Eを通過する光の光束径をφViewとし、位置調整状態で光学瞳Eを通過する光の光束径をφAli とすると、本実施形態では、φView<φAli となるように、光源11から射出される光の光束径を絞り31によって切り替えている。すなわち、図1(a)(b)に示すように、位置調整状態での絞り31の開口部の面積は、映像観察状態での開口部の面積よりも広く、これによって、光学瞳Eを通過する光の光束径が、映像観察状態よりも位置調整状態で大きくなっている。
【0054】
ちなみに、本実施形態において、光学瞳Eを通過する光の光束径φViewおよびφAli は、表1の通りである。なお、映像観察状態での光学瞳Eの位置での画角θView、および位置調整状態での光学瞳Eの位置での画角θAli も併せて表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
このように、絞り31による光源光の光束径の切り替えにより、光学瞳Eを通過する光の光束径が映像観察状態よりも位置調整状態で大きくなるので、位置調整状態において、観察者は、光束径の大きな光に基づいて光学瞳Eの位置を認識、確認することが容易となり、光学瞳Eの位置調整を容易に行うことができる。つまり、観察者は、位置調整状態において、光学瞳Eの位置を容易に見つけて、その光学瞳Eと自分の瞳Pとを容易に合わせることができる。
【0057】
特に、本実施形態では、表1より、絞り31は、3φView=φAli となるように、光源11から射出される光の光束径を切り替えている。このような光束径の切り替えにより、位置調整状態においては、光学瞳Eを通過する光の光束径が十分に大きくなるので、観察者は、位置調整のスタート時に光学瞳Eをさらに容易に見つけることができ、その光学瞳Eと自分の瞳Pとをさらに容易に合わせることが可能となる。なお、この効果は、φAli がφViewの3倍よりも大きければ、確実に得ることができる。つまり、絞り31が3φView≦φAli となるように、光源11から射出される光の光束径を切り替えれば、上記の効果を得ることができる。
【0058】
また、本実施形態では、光束径切り替え機構30が、映像観察状態と位置調整状態とで開口部の面積を切り替える絞り31で構成されているので、光源11から射出される光の光束径を、映像観察状態と位置調整状態とで簡単に切り替えることができ、これによって、光学瞳Eを通過する光の光束径を、映像観察状態と位置調整状態とで簡単に切り替えることができる。このように光束径切り替え機構30として絞り31を用いる構成は、特に、映像観察状態で光学瞳Eを通過する光の光束径φViewに対して光源11の発光面積が大きい場合には有効である。
【0059】
ところで、本実施形態では、表示素子13の映像表示領域は、映像観察状態よりも位置調整状態で小さくなっている。つまり、図1(a)(b)のYZ面内において、位置調整状態での表示素子13の映像表示領域をR1とし、映像観察状態での表示素子13の映像表示領域をR2とすると、R1<R2となっている。なお、このような映像表示領域の切り替えは、例えば、映像観察状態では表示素子13の全画素をON(光透過状態)にする一方、位置調整状態では表示素子13の周辺部の画素をOFF(光遮光状態)とし、周辺部よりも内側(光軸側)の画素をON(光透過状態)とすることで実現可能である。
【0060】
接眼光学系4は、映像観察状態(光学瞳Eを通過する光の光束径は小さい)で発生する収差が補正されるように設計されているが、このような接眼光学系4を用いた場合、R1=R2の状態で、位置調整状態で光学瞳Eを通過する光の光束径を大きくすると、映像の周辺部に向かうほど収差が発生し、結像性能が劣化する(映像がぼやける)。位置調整状態では、光学瞳Eの位置のみを確認できればよいので、結像性能の劣化は特に問題とはならないが、本実施形態のように、R1<R2とすることにより、映像がはっきりと出る部分(映像の中心部)のみを光学瞳Eの位置調整に用いることが可能となる。この場合、観察者は光学瞳Eの正確な中心位置をより認識し易くなり、光学瞳Eの位置調整がさらに容易となる。
【0061】
また、上記のような映像表示領域の切り替えにより、位置調整状態での接眼光学系4の有効光路領域は、映像観察状態での接眼光学系4の有効光路領域に含まれることになる。なお、上記の有効光路領域とは、接眼光学系4において、明確に観察できる映像を作る光が通過する領域(範囲)を指す。より分かりやすく言うと、位置調整状態および映像観察状態での接眼光学系4の有効光路領域は、後述する実施の形態2の映像表示装置1における光路図を示す図3(a)(b)において、T1およびT2の範囲にそれぞれ相当する。
【0062】
一般に、光学瞳Eを通過する光の光束径を大きくすると、接眼光学系4の有効光路領域を確保するために、接眼光学系4を大きく構成せざるを得なくなる。しかし、本実施形態では、上記のように、位置調整状態での接眼光学系4の有効光路領域は、映像観察状態での接眼光学系4の有効光路領域に含まれるので、接眼光学系4を大きく構成することなく、φView<φAli を実現することができる。したがって、接眼光学系4をコンパクトに構成しつつ、光学瞳Eの位置調整が容易な映像表示装置1を実現することができる。また、コンパクトな接眼光学系4を用いることができるので、小型、軽量で、映像品位の高い、長時間使用可能なHMDを実現することが可能となる。
【0063】
また、本実施形態では、光学瞳Eを通過する光の光束径は、位置調整状態よりも映像観察状態で小さいので、映像観察状態での焦点深度は深くなり、対応視度が広くなる。つまり、映像観察状態においては、極度の近視や遠視でなければ、視度補正を行うことなく映像を観察することが可能となる。一方、位置調整状態での焦点深度は浅くなるので、位置調整状態では、光学瞳Eの面内方向だけでなく、光軸方向の位置調整を行うことも可能となる。つまり、光学瞳Eが光軸方向にずれると、映像がぼやけやすくなるので、これを利用して光軸方向における光学瞳Eの位置調整を行うことも可能となる。
【0064】
なお、以上では、表示素子13の映像表示領域の切り替え、および接眼光学系4の有効光路領域の設定について、上下方向(YZ平面内)で説明したが、左右方向(XY平面内)についても同様に考えることができる。
【0065】
なお、本実施形態では、θViewは±5.0°となっており、観察者の眼が大きく回旋しないような画角となっているが、θViewが観察者の眼が大きく回旋する画角(例えば±8°以上)となっている場合でも、上述した本実施形態の構成は有効である。この点は、以下の各実施の形態についても同様に言える。
【0066】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、以下での説明の便宜上、実施の形態1と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
【0067】
図3(a)(b)は、本実施形態の映像表示装置1の光路を展開して示す説明図であり、特に、図3(a)は位置調整状態においての説明図であり、図3(b)は映像観察状態においての説明図である。本実施形態の映像表示装置1は、光源11が集光レンズを先端部に有するLEDで構成されており、照明光学系12が集光レンズで構成されている点で、実施の形態1と異なっている。なお、図4は、光源11の発光特性を示している。ただし、図4の縦軸の発光輝度は、最大輝度(光軸位置の輝度)に対する相対的な値を示している。
【0068】
また、本実施形態では、光束径切り替え機構30が、絞り31の他にさらに照度調整フィルタ32を有している。照度調整フィルタ32は、光源11から射出される光の瞳面内での照度(照明輝度)を調整するためのフィルタであり、絞り31よりも光源11側に配置されている。この照度調整フィルタ32は、中心部32aと周辺部32bとで構成されている。中心部32aは、例えば孔で構成されており、周辺部32bは、例えば半透過膜で構成されている。
【0069】
図5は、照度調整フィルタ32の透過特性を示す説明図である。なお、図5の縦軸の透過率は、最大透過率(光軸位置の透過率)に対する相対的な値を示している。照度調整フィルタ32が上記の中心部32aおよび周辺部32bで構成されていることにより、中心部32aでは光の透過率が高く(例えば透過率100%)、周辺部32bでは光の透過率が低い(例えば透過率50%)。したがって、照度調整フィルタ32においては、周辺部32bを透過する光の透過率は、中心部32aを透過する光の透過率の例えば1/2に低下することとなる。
【0070】
本実施形態においても、φView<φAli となるように、光源11から射出される光の光束径を絞り31によって切り替えている。すなわち、図3(a)(b)に示すように、位置調整状態での絞り31の開口部の面積は、映像観察状態での開口部の面積よりも広く、かつ、照度調整フィルタ32の中心部32aの面積よりも広い。これによって、光学瞳Eを通過する光の光束径が、映像観察状態よりも位置調整状態で大きくなっている。
【0071】
ちなみに、本実施形態において、φViewおよびφAli は、表2の通りである。なお、θViewおよびθAli についても併せて表2に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
このように、本実施形態においても、実施の形態1と同様に、絞り31による光源光の光束径の切り替えにより、光学瞳Eを通過する光の光束径が映像観察状態よりも位置調整状態で大きくなる。これにより、位置調整状態において、観察者は、光学瞳Eの位置、すなわち、自分の瞳P内に光が入る場所を最初に見つけることが容易となり、光学瞳Eの位置調整を容易に行うことができる。
【0074】
また、図6は、光学瞳Eの瞳面での照明特性を示す説明図である。なお、図6の縦軸の照度は、最大照度(光軸位置の照度)に対する相対的な値を示している。図4の特性の光源11を用い、光源11からの光を、図5の特性を有する照度調整フィルタ32を介して光学瞳Eに導くと、上記した絞り31による光束径の切り替えにより、位置調整状態において、光学瞳Eの中心部では照度が高く、周辺部では照度が低くなる。特に、位置調整状態において、光学瞳Eを通過する光の瞳面内での周辺照度は、中心照度の1/2以下となっている。
【0075】
このように、光束径切り替え機構30が絞り31と照度調整フィルタ32とを有して構成されることにより、位置調整状態において、光学瞳Eを通過する光の瞳面内での照度を、中心から周辺に向かって低下させることができる。これにより、観察者は、光学瞳Eの面内における周辺から中心に向かう方向への位置調整がしやすくなる。
【0076】
つまり、観察者は、位置調整状態において、眼前に映像表示装置1を近づけ、まず、自分の瞳Pに光が入る場所を探し、瞳Pに光が入ったら、その周辺で映像表示装置1を移動させ、最も明るく、かつ、バランスよく照明光が瞳Pに入る場所に映像表示装置1を位置させた後、その位置を固定機構7(図2参照)によって固定すればよい。
【0077】
また、位置調整状態において、光学瞳Eを通過する光の瞳面内での照度は、中心位置で最大であるので、観察者は、位置調整時に光学瞳Eの中心を認識することが容易となり、位置調整を正確に行うことができる。
【0078】
特に、本実施形態では、位置調整状態において、光学瞳Eを通過する光の瞳面内での周辺照度は、中心照度の1/2以下であり、中心照度と周辺照度との差が大きいので、観察者は、位置調整時に光学瞳Eの中心を認識することがさらに容易となり、位置調整をさらに正確に行うことができる。
【0079】
また、本実施形態では、照度調整フィルタ32を用いることにより、位置調整状態において、光学瞳Eを通過する光の瞳面内での照度は、中心から周辺に向かって段階的に低下しているので、観察者は、光学瞳Eの中心を確実に認識することができ、光学瞳Eの面内における周辺から中心に向かう方向への位置調整がさらに容易となる。
【0080】
また、本実施形態においても、実施の形態1と同様に、表示素子13の映像表示領域は、映像観察状態よりも位置調整状態で小さく、この結果、図3(a)(b)に示すように、位置調整状態での接眼光学系4の有効光路領域T1は、映像観察状態での接眼光学系4の有効光路領域T2に含まれている(T1<T2)。したがって、実施の形態1と同様に、接眼光学系4を大きく構成することなくφView<φAli を実現して、光学瞳Eの位置調整が容易な映像表示装置1を実現することができる。
【0081】
なお、位置調整状態では、絞り31の開口部の面積が広く、φAli が大きいため、光学瞳Eの位置では、図6のBの範囲で照度を認識することができる。一方、映像観察状態では、絞り31の開口部の面積が狭く、φViewが小さいため、光学瞳Eの位置では、図6のBよりも狭いAの範囲で照度を認識することとなる。このとき、Aの範囲では全体的に照度が高いため、観察者は、映像観察状態において明るい映像を観察することができる。
【0082】
〔実施の形態3〕
本発明のさらに他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、以下での説明の便宜上、実施の形態1・2と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
【0083】
図7(a)(b)は、本実施形態の映像表示装置1の光路を展開して示す説明図であり、特に、図7(a)は位置調整状態においての説明図であり、図7(b)は映像観察状態においての説明図である。本実施形態の映像表示装置1は、光源11が発光面積の小さな表面実装タイプのLEDで構成されている点で、実施の形態1・2とは異なっている。ちなみに、光源11の発光部のサイズは、例えば0.6mm×0.6mmとなっている。
【0084】
また、本実施形態では、光束径切り替え機構30が、絞り31や照度調整フィルタ32の代わりに、拡散板33および駆動部34を有して構成されている。拡散板33は、光源11からの光を拡散させるものであり、光学瞳Eとほぼ共役な位置に配置されている。駆動部34は、位置調整状態のときには、図7(a)に示すように、拡散板33を光路中に配置する一方、映像観察状態のときには、図7(b)に示すように、拡散板33を光路中から取り除くものであり、例えば光軸と平行な回転軸を有し、拡散板33を回転させるモータで構成されている。なお、本実施形態では、表示素子13における映像表示領域の大きさは、位置調整状態と映像観察状態とで同じとなっている。
【0085】
映像観察状態において、駆動部34によって拡散板33を光路外に退避させることにより、光学瞳Eを通過する光の光束径を光源11のチップ面サイズまで、小さく絞ることができる。これにより、焦点深度が深くなり、映像観察状態においては、視度補正を行うことなく映像を観察することが可能となる。
【0086】
一方、位置調整状態では、駆動部34によって拡散板33が光路中に配置されるので、簡単に、光源11の発光面積を擬似的に大きくすることができる。したがって、φViewに対して光源11の発光面積が小さい場合でも、拡散板33の光路中への出し入れによって、光源光の光束径を、映像観察状態と位置調整状態とで簡単に切り替えて、φView<φAli を容易に実現することができる。
【0087】
ちなみに、本実施形態において、φViewおよびφAli は、表3の通りである。なお、θViewおよびθAli についても併せて表3に示す。
【0088】
【表3】
【0089】
このように、本実施形態においても、光束径切り替え機構30により、光学瞳Eを通過する光の光束径が映像観察状態よりも位置調整状態で大きくなるので、位置調整状態において、観察者は光学瞳Eの位置調整を容易に行うことができる。
【0090】
また、本実施形態では、表3より、θViewおよびθAli は、位置調整状態と映像観察状態とで同じであり、表示素子13の映像表示領域も、位置調整状態と映像観察状態とで同じであるので、接眼光学系4に入射する映像光のうち、表示素子13の周辺部から射出された映像光は、接眼光学系4の端部でけられ、表示素子13の中央部から射出された映像光のみが接眼光学系4を介して光学瞳Eに入射する。したがって、光学瞳Eの位置では、周辺部は暗く、中央部は明るい映像となる。なお、接眼光学系4の有効光路領域は、明確に観察できる映像を作る光が通過する領域を指すので、本実施形態での有効光路領域は、位置調整状態と映像観察状態とで同じと言える(T1=T2)。また、光学瞳Eが光軸方向にずれるほど、つまり、光軸方向における光学瞳Eの位置と観察者の瞳Pの位置とがずれるほど、表示素子13の表示映像の周辺部が欠けるため、位置調整状態において見える映像の範囲は小さくなる(表示映像の中心付近しか見えなくなる)。
【0091】
そこで、本実施形態では、位置調整状態において、観察者は、光束の位置を見つけたら、まず、その中心(光軸上)に自分の瞳Pが位置するように光学瞳Eを調整し、その後、光軸上で映像表示装置1との距離を調整すればよい。そして、映像が最も大きくなり、かつ、一番明るくなったところで(光学瞳Eの瞳面上に自分の瞳Pが位置したときに)、映像表示装置1の位置を固定すればよい。このような手法により、簡単に、光学瞳Eの3次元的な位置調整が可能になる。
【0092】
なお、位置調整状態において、表示素子13に表示させる映像は、白パターン(全画素白表示)であってもよいし、例えばチェックパターン(市松模様)であってもよい。特に後者の場合は、位置調整状態において、表示映像の大部分が見えているのか、中心付近だけが見えているのかの判断が容易となり、光軸方向の位置ずれの判断が容易となるので、その点では好ましいと言える。
【0093】
なお、本実施形態では、1種類の拡散板33を用いて、映像観察状態と位置調整状態とで光源光の光束径を切り替える構成としているが、映像観察状態および位置調整状態のそれぞれで光学瞳Eを通過する光の光束径に対応したサイズの拡散板を2つ設けて、これらを出し入れすることにより、光束径を切り替える構成としてもよい。つまり、光束径切り替え手段は、映像観察状態で光学瞳を通過する光の光束径に対応したサイズの第1の拡散板と、位置調整状態で光学瞳を通過する光の光束径に対応したサイズの第2の拡散板と、映像観察状態のときに第1の拡散板を光路中に配置する一方、位置調整状態のときに第2の拡散板を光路中に配置する駆動部とを有する構成としてもよい。
【0094】
〔実施の形態4〕
本発明のさらに他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、以下での説明の便宜上、実施の形態1〜3と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
【0095】
図8(a)(b)(c)は、本実施形態の映像表示装置1の光路を展開して示す説明図であり、特に、図8(a)は第1の位置調整状態においての説明図であり、図8(b)は第2の位置調整状態においての説明図であり、図8(c)は映像観察状態においての説明図である。本実施形態では、映像表示装置1の光束径切り替え機構30が、実施の形態1〜3で述べた絞り31、照度調整フィルタ32、拡散板33および駆動部34を全て有して構成されている。ただし、照度調整フィルタ32の構成は、実施の形態2のものとは若干異なっている。拡散板33、照度調整フィルタ32および絞り31は、光源11側からこの順で配置されている。なお、便宜上、図8(a)(b)(c)では、駆動部34の図示を省略しており、図8(c)では、さらに拡散板33の図示を省略している。
【0096】
図9は、光源11および拡散板33で1つの光源とみなしたときの発光特性を示している。なお、図9の縦軸の発光輝度は、最大輝度(光軸位置の輝度)に対する相対的な値を示している。同図に示すように、光源11からの光は拡散板33で拡散されるため、光軸に垂直な方向に比較的広範囲にわたって発光輝度の高い分布となっている。
【0097】
図8(a)(b)(c)に示した照度調整フィルタ32は、中心部32aと周辺部32bとで構成されているが、周辺部32bは、さらに第1周辺部32b1と第2周辺部32b2とで構成されている。中心部32aは、例えば孔で構成されており、周辺部32bは、例えば半透過膜で構成されている。
【0098】
周辺部32bにおいて、第2周辺部32b2は、第1周辺部32b1よりも外側に形成されており、透過率は第1周辺部32b1よりも低く設定されている。このような照度調整フィルタ32の構成により、周辺部32bを透過する光の照度は、中心部32aを透過する光の照度を基準として2段階で低下することになる。
【0099】
ここで、図10は、本実施形態の照度調整フィルタ32の透過特性を示す説明図である。なお、図10の縦軸の透過率は、最大透過率(光軸位置の透過率)に対する相対的な値を示している。照度調整フィルタ32が上記の中心部32aおよび周辺部32b(第1周辺部32b1+第2周辺部32b2)で構成されていることにより、中心部32aでは光の透過率が高く(例えば透過率100%)、第2周辺部32b2では光の透過率が低く(例えば透過率30%)、第1周辺部32b1ではそれらの間の透過率(例えば透過率60%)となっている。このように、照度調整フィルタ32においては、中心から周辺に向かって、透過率が段階的に低下している。
【0100】
本実施形態では、光束径切り替え機構30は、位置調整状態および映像観察状態において、光源11から射出される光の光束径を計3段階で切り替えるようにしている。
【0101】
より具体的には、第1の位置調整状態では、図8(a)に示すように、光源11からの光が照度調整フィルタの中心部32a、第1周辺部32b1および第2周辺部32b2の全てを透過して光学瞳Eに導かれるように、絞り31によって開口部の径(面積)を調整する。
【0102】
続いて、第2の位置調整状態では、図8(b)に示すように、光源11からの光が照度調整フィルタの中心部32aおよび第1周辺部32b1のみを透過して光学瞳Eに導かれるように、絞り31によって開口部の径を第1の位置調整状態のときよりも小さくする。
【0103】
一方、映像観察状態では、図8(c)に示すように、光源11からの光が照度調整フィルタの中心部32aのみを透過して光学瞳Eに導かれるように、絞り31によって開口部の径を第2の位置調整状態のときよりもさらに小さくする。
【0104】
なお、駆動部34により、第1および第2の位置調整状態では、拡散板33を光路中に配置し、映像観察状態では、拡散板33を光路中から退避させる。
【0105】
以上のように、光源11から射出される光の光束径を絞り31によって図8(a)(b)(c)のように切り替えることにより、本実施形態においても、φView<φAli を実現することができる。特に、第1の位置調整状態で光学瞳Eを通過する光の光束径をφAli-1 とし、第2の位置調整状態で光学瞳Eを通過する光の光束径をφAli-2 とすると、φView<φAli-2 <φAli-1 を実現することができる。
【0106】
ちなみに、本実施形態において、φView、φAli-1 およびφAli-2 は、表4の通りである。なお、映像観察状態での光学瞳Eの位置での画角θView、および第1および第2の位置調整状態での光学瞳Eの位置での画角θAli-1 およびθAli-2 も併せて表4に示す。
【0107】
【表4】
【0108】
このように、本実施形態においても、絞り31による光源光の光束径の切り替えにより、光学瞳Eを通過する光の光束径が映像観察状態よりも位置調整状態で大きくなるので、位置調整状態において、観察者は、光学瞳Eの位置の位置調整を容易に行うことができる。
【0109】
また、位置調整状態では、光束径切り替え機構30によって、光源光の光束径を2段階で切り替えて段階的に小さくするので、上述のように、光学瞳Eを通過する光の光束径を段階的に小さくして段階的な位置調整が可能となる。これにより、観察者は、光学瞳Eの中心と自らの瞳Pの中心とを段階的に合わせることが可能となり、互いの中心同士を合わせやすくなる。
【0110】
また、図11は、光学瞳Eの瞳面での照明特性を示す説明図である。なお、図11の縦軸の照度は、最大照度(光軸位置の照度)に対する相対的な値を示している。第1の位置調整状態では、光学瞳Eの中心部で照度が高く、周辺部で照度が2段階で低くなる(Cの範囲参照)。また、第2の位置調整状態では、光学瞳Eの中心部で照度が高く、周辺部で照度が低くなる(Bの範囲参照)。一方、映像観察状態では、光学瞳Eの中心部、すなわち、照度が高いAの範囲で映像を観察することが可能となる。
【0111】
このように、周辺部32を透過する光の透過率を2段階で低下させる照度調整フィルタ32を用い、絞り31によって光束径を切り替えることにより、第1の位置調整状態では、光学瞳Eを通過する光の瞳面内での照度を、中心から周辺に向かって2段階で低下させることができる。したがって、観察者は、光学瞳Eの面内における周辺から中心に向かう方向への位置調整がさらにしやすくなる。
【0112】
なお、本実施形態では、光束径切り替え機構30は、位置調整状態において、光源光の光束径を2段階で切り替える構成となっているが、照度調整フィルタ32の周辺部32bの透過率を3段階以上に設定して、絞り31で開口部の面積を調整することにより、位置調整状態において、光源光の光束径を3段階以上に切り替え、φAli を3段階以上に切り替えることも可能である。
【0113】
なお、本実施形態では、光束径切り替え機構30は、絞り31、照度調整フィルタ32、拡散板33および駆動部34で構成しているが、絞り31と照度調整フィルタ32のみで構成することも勿論可能である。
【0114】
なお、上述した各実施の形態の構成を適宜組み合わせて、映像表示装置1ひいてはHMDを構成したり、光学瞳Eの位置調整を行うことも勿論可能である。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、HMDに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】(a)は、本発明の実施の一形態に係る映像表示装置の位置調整状態での構成を示す断面図であり、(b)は、映像表示装置の映像観察状態での構成を示す断面図である。
【図2】上記映像表示装置を有するHMDの概略の構成を示す斜視図である。
【図3】(a)は、本発明の他の実施の形態に係る映像表示装置の位置調整状態での光路を展開して示す説明図であり、(b)は、映像表示装置の映像観察状態での光路を展開して示す説明図である。
【図4】上記映像表示装置の光源の発光特性を示す説明図である。
【図5】上記映像表示装置が有する光束径切り替え機構の照度調整フィルタの透過特性を示す説明図である。
【図6】光学瞳の瞳面での照明特性を示す説明図である。
【図7】(a)は、本発明のさらに他の実施の形態に係る映像表示装置の位置調整状態での光路を展開して示す説明図であり、(b)は、映像表示装置の映像観察状態での光路を展開して示す説明図である。
【図8】(a)は、本発明のさらに他の実施の形態に係る映像表示装置の第1の位置調整状態での光路を展開して示す説明図であり、(b)は、映像表示装置の第2の位置調整状態での光路を展開して示す説明図であり、(c)は、映像表示装置の映像観察状態での光路を展開して示す説明図である。
【図9】上記映像表示装置において、拡散板も考慮した光源の発光特性を示す説明図である。
【図10】上記映像表示装置が有する光束径切り替え機構の照度調整フィルタの透過特性を示す説明図である。
【図11】光学瞳の瞳面での照明特性を示す説明図である。
【符号の説明】
【0117】
1 映像表示装置
2 支持手段
4 接眼光学系
7 固定機構(固定手段)
11 光源
13 表示素子
23 ホログラム光学素子
30 光束径切り替え機構(光束径切り替え手段)
31 絞り
32 照度調整フィルタ
33 拡散板
34 駆動部
E 光学瞳
P 観察者の瞳
R1 映像表示領域
R2 映像表示領域
T1 有効光路領域
T2 有効光路領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
光源からの光を変調して映像を表示する表示素子と、
表示素子からの映像光を光学瞳に導く接眼光学系とを備えた映像表示装置であって、
観察者が光学瞳の位置で映像を観察する映像観察状態で、光学瞳を通過する光の光束径をφViewとし、光学瞳の位置を観察者の瞳位置に合わせるための位置調整状態で、光学瞳を通過する光の光束径をφAli としたときに、φView<φAli となるように、光源から射出される光の光束径を切り替える光束径切り替え手段をさらに備えており、
位置調整状態での接眼光学系の有効光路領域は、映像観察状態での接眼光学系の有効光路領域に含まれていることを特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
位置調整状態において、光学瞳を通過する光の瞳面内での照度は、中心位置で最大であることを特徴とする請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項3】
位置調整状態において、光学瞳を通過する光の瞳面内での周辺照度は、中心照度の1/2以下であることを特徴とする請求項2に記載の映像表示装置。
【請求項4】
位置調整状態において、光学瞳を通過する光の瞳面内での照度は、中心から周辺に向かって段階的に低下することを特徴とする請求項2に記載の映像表示装置。
【請求項5】
光束径切り替え手段は、3φView≦φAli となるように、光源から射出される光の光束径を切り替えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の映像表示装置。
【請求項6】
表示素子の映像表示領域は、映像観察状態よりも位置調整状態のほうが小さいことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の映像表示装置。
【請求項7】
光束径切り替え手段は、光学瞳とほぼ共役な位置に配置されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の映像表示装置。
【請求項8】
光束径切り替え手段は、映像観察状態と位置調整状態とで開口部の面積を切り替える絞りを有していることを特徴とする請求項7に記載の映像表示装置。
【請求項9】
光束径切り替え手段は、光源から射出される光の瞳面内での照度を調整するための照度調整フィルタをさらに有しており、
照度調整フィルタは、中心部を透過する光の透過率よりも周辺部を透過する光の透過率を低下させることを特徴とする請求項8に記載の映像表示装置。
【請求項10】
照度調整フィルタは、周辺部を透過する光の透過率を少なくとも2段階で低下させることを特徴とする請求項9に記載の映像表示装置。
【請求項11】
光束径切り替え手段は、光源からの光を拡散させる拡散板と、位置調整状態のときに拡散板を光路中に配置する一方、映像観察状態のときに拡散板を光路中から取り除く駆動部とを有していることを特徴とする請求項7から10のいずれかに記載の映像表示装置。
【請求項12】
光束径切り替え手段は、位置調整状態において、光源から射出される光の光束径を少なくとも2段階に切り替えることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の映像表示装置。
【請求項13】
接眼光学系は、体積位相型の反射型ホログラム光学素子を含んでおり、
上記ホログラム光学素子は、表示素子からの映像光を回折反射させて光学瞳に導くと同時に、外光を透過させて光学瞳に導くことを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の映像表示装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載の映像表示装置と、
上記映像表示装置を観察者の眼前で支持する支持手段とを有していることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項15】
上記支持手段は、接眼光学系の光学瞳の位置を観察者の瞳位置に合わせる位置調整を行った後に、観察者の頭部に対する接眼光学系の相対位置を固定する固定手段を有していることを特徴とする請求項14に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項1】
光源と、
光源からの光を変調して映像を表示する表示素子と、
表示素子からの映像光を光学瞳に導く接眼光学系とを備えた映像表示装置であって、
観察者が光学瞳の位置で映像を観察する映像観察状態で、光学瞳を通過する光の光束径をφViewとし、光学瞳の位置を観察者の瞳位置に合わせるための位置調整状態で、光学瞳を通過する光の光束径をφAli としたときに、φView<φAli となるように、光源から射出される光の光束径を切り替える光束径切り替え手段をさらに備えており、
位置調整状態での接眼光学系の有効光路領域は、映像観察状態での接眼光学系の有効光路領域に含まれていることを特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
位置調整状態において、光学瞳を通過する光の瞳面内での照度は、中心位置で最大であることを特徴とする請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項3】
位置調整状態において、光学瞳を通過する光の瞳面内での周辺照度は、中心照度の1/2以下であることを特徴とする請求項2に記載の映像表示装置。
【請求項4】
位置調整状態において、光学瞳を通過する光の瞳面内での照度は、中心から周辺に向かって段階的に低下することを特徴とする請求項2に記載の映像表示装置。
【請求項5】
光束径切り替え手段は、3φView≦φAli となるように、光源から射出される光の光束径を切り替えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の映像表示装置。
【請求項6】
表示素子の映像表示領域は、映像観察状態よりも位置調整状態のほうが小さいことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の映像表示装置。
【請求項7】
光束径切り替え手段は、光学瞳とほぼ共役な位置に配置されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の映像表示装置。
【請求項8】
光束径切り替え手段は、映像観察状態と位置調整状態とで開口部の面積を切り替える絞りを有していることを特徴とする請求項7に記載の映像表示装置。
【請求項9】
光束径切り替え手段は、光源から射出される光の瞳面内での照度を調整するための照度調整フィルタをさらに有しており、
照度調整フィルタは、中心部を透過する光の透過率よりも周辺部を透過する光の透過率を低下させることを特徴とする請求項8に記載の映像表示装置。
【請求項10】
照度調整フィルタは、周辺部を透過する光の透過率を少なくとも2段階で低下させることを特徴とする請求項9に記載の映像表示装置。
【請求項11】
光束径切り替え手段は、光源からの光を拡散させる拡散板と、位置調整状態のときに拡散板を光路中に配置する一方、映像観察状態のときに拡散板を光路中から取り除く駆動部とを有していることを特徴とする請求項7から10のいずれかに記載の映像表示装置。
【請求項12】
光束径切り替え手段は、位置調整状態において、光源から射出される光の光束径を少なくとも2段階に切り替えることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の映像表示装置。
【請求項13】
接眼光学系は、体積位相型の反射型ホログラム光学素子を含んでおり、
上記ホログラム光学素子は、表示素子からの映像光を回折反射させて光学瞳に導くと同時に、外光を透過させて光学瞳に導くことを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の映像表示装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載の映像表示装置と、
上記映像表示装置を観察者の眼前で支持する支持手段とを有していることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項15】
上記支持手段は、接眼光学系の光学瞳の位置を観察者の瞳位置に合わせる位置調整を行った後に、観察者の頭部に対する接眼光学系の相対位置を固定する固定手段を有していることを特徴とする請求項14に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−151065(P2009−151065A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328473(P2007−328473)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
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