説明

映像表示装置

【課題】第2揺動角にあるミラーによって反射された光線を有効に活用して、より好適な映像表示装置を提供する。
【解決手段】明暗が反転した2つの映像を表示する装置であり、光源と反射方向切換装置と第1結像光学系と第2結像光学系と制御装置を備えている。反射方向切換装置は、(1)規則的に配置された複数のミラーと、ミラー毎に設けられたアクチュエータを備え、(2)各々のミラーは、光源から入射した光線を第1結像光学系に向けて反射する第1揺動角と、光源から入射した光線を第2結像光学系に向けて反射する第2揺動角の間で揺動可能であり、(3)各々のアクチュエータは、各々のアクチュエータに対応する1つのミラーに機械的に連携しており、(4)各々のアクチュエータは、他のアクチュエータに拘束されることなく、対応するミラーの揺動角を第1揺動角と第2揺動角の間で切換えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個々に反射方向を制御可能な複数のミラーを備え、ミラー群が反射した光を結像して映像を表示する映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、映像表示装置が開示されている。この映像表示装置は、光源と、反射方向切換装置と、結像光学系と、制御装置を備えている。光源は、反射方向切換装置を照射する光を発生する。反射方向切換装置は、複数のミラーと、ミラー毎に設けられたアクチュエータを備えている。各ミラーは、光源から入射した光線を結像光学系に向けて反射する第1揺動角と、光源から入射した光線を結像光学系に入射しない向きに反射する第2揺動角との間で揺動可能とされている。各アクチュエータは、対応するミラーの揺動角を第1揺動角と第2揺動角の間で切換える。制御装置は、各アクチュエータを制御することによって、各ミラーの揺動角を制御する。
ミラーが第1揺動角にあると、そのミラーは結像光学系に向けて光線を反射する。したがって、結像光学系の結像面上では、第1揺動角にあるミラーに対応する位置が明部となる。ミラーが第2揺動角にあると、そのミラーの反射光線は結像光学系に入射しない。したがって、結像光学系の結像面上では、第2揺動角にあるミラーに対応する位置が暗部となる。制御装置が各ミラーの揺動角を制御することによって、明部と暗部からなる映像が結像される。
【0003】
【特許文献1】特開2004−210130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した映像表示装置では、第2揺動角にあるミラーによって反射された光線を、アブソーバに照射して吸収する。したがって、第2揺動角にあるミラーによって反射された光線を有効に活用しているとはいえなかった。本発明は、第2揺動角にあるミラーによって反射された光線を有効に活用する映像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、明暗が反転した2つの映像を表示する映像表示装置を提供する。この映像表示装置は、光源と反射方向切換装置と第1結像光学系と第2結像光学系と制御装置を備えている。光源は反射方向切換装置を照射する光を発生する。反射方向切換装置は、以下のように構成されている。
(1)規則的に配置された複数のミラーと、ミラー毎に設けられたアクチュエータを備えている。
(2)各々のミラーは、光源から入射した光線を第1結像光学系に向けて反射する第1揺動角と、光源から入射した光線を第2結像光学系に向けて反射する第2揺動角の間で揺動可能である。
(3)各々のアクチュエータは、各々のアクチュエータに対応する1つのミラーに機械的に連携している。
(4)各々のアクチュエータは、他のアクチュエータに拘束されることなく、対応するミラーの揺動角を第1揺動角と第2揺動角の間で切換えるものである。
また、制御装置は、以下のように構成されている。
(1)第1結像光学系で得られる映像において明部となる位置に結像するミラーに対応するアクチュエータを制御して対応するミラーの揺動角を第1揺動角に切換える。
(2)第1結像光学系で得られる映像において暗部となる位置に結像するミラーに対応するアクチュエータを制御して対応するミラーの揺動角を第2揺動角に切換える。
【0006】
この映像表示装置では、第1揺動角にあるミラーによって反射された光線は、第1結像光学系によって結像される。また、第2揺動角にあるミラーによって反射された光線は、第2結像光学系によって結像される。したがって、第1結像光学系は、第1揺動角にあるミラーに対応する位置が明部となり、第2揺動角にあるミラーに対応する位置が暗部となる映像を結像する。一方、第2結像光学系は、第1揺動角にあるミラーに対応する位置が暗部となり、第2揺動角にあるミラーに対応する位置が明部となる映像を結像する。すなわち、第2結像光学系は、第1結像光学系により結像される映像とは明部と暗部が反転した映像を結像する。この映像表示装置は、明部と暗部が反転した2つの映像を同時に表示することができる。
以上のように、この映像表示装置は、第1揺動角にあるミラーによる反射光線と、第2揺動角にあるミラーによる反射光線のそれぞれを、異なる結像光学系で結像することにより、2つの映像を同時に表示する。
【0007】
上述した映像表示装置は、車載されている車載式映像表示装置として用いることができる。この場合、第1結像光学系が車両の前方に結像し、第2結像光学系が車室内に結像することが好ましい。
このような構成によれば、車両前方(例えば、路面等)に結像した映像によってドライバと歩行者等への注意喚起を行うことができるとともに、車室内に結像した映像によってドライバへの注意喚起効果をより向上させることができる。
【0008】
上述した車載式映像表示装置は、第2結像光学系が光ファイバアレイと終端結像装置を備えており、第2揺動角に調整されたミラーの反射光が光ファイバアレイの入射面に入射し、光ファイバアレイの射出面の先に終端結像装置が位置する位置関係に配置されていることが好ましい。
このような構成によれば、車室内の任意の位置に容易に映像を表示することができる。
【0009】
上述した車載式映像表示装置は、終端結像装置が、車両前方の景色に結像映像を重畳させるコンバイナを備えていることが好ましい。
このような構成によれば、ドライバに認識し易い態様で映像を表示することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の映像表示装置によれば、第1揺動角にあるミラーと第2揺動角にあるミラーの双方の反射光線を用いることによって、2つの映像を表示することができる。第1揺動角にあるミラーと第2揺動角にあるミラーの双方の反射光線が無駄となることが無く、高効率で2つの映像を表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に説明する実施例の特徴を列記する。
(特徴1)反射方向切換装置は、規則的に配置された複数のミラーと、ミラー毎に設けられたアクチュエータを備えている。なお、複数のミラーの配置は、縦横に配列させる等、種々の配置を採用することができる。
(特徴2)各々のミラーは、光源から入射した光線を第1結像光学系に向けて反射する第1揺動角と、光源から入射した光線を第2結像光学系に向けて反射する第2揺動角の間で揺動可能である。なお、第1揺動角と第2揺動角の間で揺動するとは、少なくとも第1揺動角と第2揺動角の間で揺動することを意味し、それ以上の範囲で揺動可能であってもかまわない。
【実施例】
【0012】
(第1実施例)
本発明の実施例に係る車載式映像表示装置について、図面を参照しながら説明する。第1実施例では、車載式映像表示装置を、ドライバに歩行者等の存在を報知する報知システムに組み込んだ構成について説明する。図1は、自車両100に搭載されている報知システム90の構成を示している。図1に示すように、報知システム90は、車載式映像表示装置10と、カメラ12と、カーナビゲーションシステム13(以下、カーナビ13という)と、距離計測装置14と、速度センサ16と、操舵角センサ18と、記憶装置22と、演算装置24を備えている。
【0013】
(車載式映像表示装置10の構成)
最初に、車載式映像表示装置10の構成について説明する。
車載式映像表示装置10は、演算装置24に接続されている。車載式映像表示装置10は、演算装置24からの命令に応じて、自車両100の前方の路面上と、自車両100の車室内のそれぞれに映像を表示する。
【0014】
図2は、車載式映像表示装置10の概略構成を示している。図2に示すように、車載式映像表示装置10は、光源30と、リフレクタ32と、反射方向切換装置34と、第1結像光学系40と、第2結像光学系42を備えている。
【0015】
光源30は、高圧水銀ランプである。なお、光源30には、高圧水銀ランプの他に、ハロゲンランプやLED等、種々の発光素子を用いることができる。
【0016】
リフレクタ32は、光源30から照射される光線の一部を、反射方向切換装置34に向けて反射する。したがって、反射方向切換装置34には、光源30からの直接光線と、リフレクタ32からの反射光線とが照射される。
【0017】
反射方向切換装置34は、光源30及びリフレクタ32から照射される光線を、第1結像光学系40と第2結像光学系42に向けて反射する。図3は、反射方向切換装置34の概略構成を示す平面図である。図3に示すように、反射方向切換装置34は、半導体基板35と、半導体基板35上に形成されている複数のマイクロメカニカル構造体36を備えている。マイクロメカニカル構造体36は、半導体基板35上に、縦横にマトリクス状に配置されている。また、半導体基板35の縁部近傍には、駆動回路35dが形成されている。なお、図3は、説明のために簡略化して記載しており、実際には半導体基板35上にはより多数のマイクロメカニカル構造体36が形成されている。
【0018】
図4は、1つのマイクロメカニカル構造体36を拡大視した平面図を示している。また、図5は図4のV−V線断面図を示しており、図6は図4のVI−VI線断面図を示している。図4〜6に示すように、マイクロメカニカル構造体36は、固定部36aと、捩れ梁36bと、ミラー部36cを備えている。
【0019】
図5、6に示すように、半導体基板35の表面には、絶縁膜35aが形成されている。
固定部36aは、半導体基板35上(絶縁膜35a上)に立設されている。図4に示すように、固定部36aは、半導体基板35の表面上を正方形の辺に沿って伸びている。
図4に示すように、ミラー部36cは、正方形の辺に沿って伸びる固定部36aの内側(正方形の内側)に配置されている。ミラー部36cは、一対の捩れ梁36bによって固定部36aに接続されている。図5に示すように、ミラー部36cと捩れ梁36bは、半導体基板35から間隔を置いた位置に配置されている。すなわち、ミラー部36cと捩れ梁36bは、固定部36aで支持されており、半導体基板35から浮いた状態となっている。図4に示すように、一対の捩れ梁36bは、双方の延長線が一致するように形成されている。また、捩れ梁36bは幅が細いため、しなやかに捩れることができる。したがって、ミラー部36cは、図6の矢印101に示すように、2つの捩れ梁36bを繋ぐ軸線を中心に揺動することができる。ミラー部36cの上面は鏡面となっており、光を反射する。ミラー部36cが揺動すると、ミラー部36cの光の反射方向が変化する。
【0020】
図5、6に示すように、ミラー部36cと捩れ梁36bは積層構造を備えており、そのうちの1つの層36eは不純物を多量に含む半導体により形成されている。したがって、層36e(以下、電極層という)は電気抵抗が低い。電極層36eは、ミラー部36cと捩れ梁36bの全域に亘って形成されている。
固定部36aは、不純物を多量に含む半導体により形成されており、その電気抵抗は低い。固定部36aは、スルーホール36fによって電極層36eと電気的に接続されている。
図4、5に示すように、固定部36aの下部の半導体基板35には、不純物注入により形成した低抵抗領域35bが形成されている。低抵抗領域35bは、絶縁膜35aに形成されているスルーホール35cにより、固定部36aと電気的に接続されている。また、低抵抗領域35bは、図示しない位置まで延出されており、そこで駆動回路35dと電気的に接続されている。したがって、駆動回路35dによって、電極層36eの電位を制御可能となっている。
【0021】
図4、6に示すように、ミラー部36cの下部の半導体基板35には、不純物注入により形成した低抵抗領域35g、35h(以下では、電極35g、35hという)が形成されている。電極35gは、一対の捩れ梁36bを結ぶ線分よりも図4において下側の位置に配置されている。電極35hは、一対の捩れ梁36bを結ぶ線分よりも図4において上側の位置に配置されている。電極35gと電極35hは、それぞれ図示しない位置まで延出されており、そこで駆動回路35dと電気的に接続されている。したがって、駆動回路35dによって、電極35gと電極35hのそれぞれの電位を制御可能となっている。
【0022】
ミラー部36cは、電極35g、35hのそれぞれと対向している。電極層36eと電極35gの間に電圧を印加すると、両者間に吸引力が生じ、ミラー部36cは図6の姿勢から左回りに揺動する。また、電極層36eと電極35hの間に電圧を印加すると、両者間に吸引力が生じ、ミラー部36cは図6の姿勢から右回りに揺動する。したがって、これらの電圧を制御することによって、ミラー部36cの揺動角を制御することができる。すなわち、電極層36eと、電極35g、35hは、ミラー部36cの揺動角を制御するアクチュエータとして機能する。
駆動回路35dは、これらの電圧を制御することによって、ミラー部36cの姿勢を制御する。駆動回路35dは、ミラー部36cの姿勢を、図6の姿勢から所定角度左回りに揺動した姿勢(以下では、このときの揺動角を第1揺動角という)と図6の姿勢から所定角度右回りに揺動した姿勢(以下では、このときの揺動角を第2揺動角という)の何れかに切り換える。
なお、図3に示す各マイクロメカニカル構造体36は、それぞれが駆動回路35dに接続されている。駆動回路35dは、各ミラー部36cの揺動角を独立に制御することができる。
【0023】
以上に説明したように、反射方向切換装置34は、複数のミラー部36cを有しており、各ミラー部36cの揺動角は、第1揺動角と第2揺動角の何れかに制御される。光源30及びリフレクタ32から反射方向切換装置34に照射される光線は、各ミラー部36cによって反射される。第1揺動角にあるミラー部36cに反射された光線は、第1結像光学系40に入射する。第2揺動角にあるミラー部36cに反射された光線は、第2結像光学系42に入射する。
【0024】
第1結像光学系40は、反射方向切換装置34から入射する光線を、自車両100の前方の路面上に結像する。上述したように、第1結像光学系40には、第1揺動角にあるミラー部36cで反射された光線が入射する。したがって、路面上には、第1揺動角にあるミラー部36cに対応する位置が明部となり、第2揺動角にあるミラー部36cに対応する位置が暗部となる映像が結像される。
【0025】
第2結像光学系42は、始端側結像レンズ42a、光ファイバアレイ42b、終端側結像レンズ42c、及び、コンバイナ42dを備えている。
始端側結像レンズ42aは、反射方向切換装置34から入射する光線を結像する。
光ファイバアレイ42bは、多数の光ファイバを束ねたものである。光ファイバアレイ42bの入射面(一方の端部)は、始端側結像レンズ42aの結像位置に配置されている。光ファイバアレイ42bの射出面(他方の端部)は、自車両100の車室内に引き込まれている。光ファイバアレイ42bの入射面に入射した光線は、射出面から射出される。
終端側結像レンズ42cは、光ファイバアレイ42bの射出面に対向する位置に配置されている。終端側結像レンズ42cは、光ファイバアレイ42bの射出面から射出された光線を結像する。
図2に示すように、コンバイナ42dは、自車両100のフロントガラス44の内側の表面に設置されている。コンバイナ42dは、ハーフミラーにより構成されている(但し、ホログラムにより構成されていてもよい)。したがって、ドライバは、コンバイナ42dを通して自車両100の前方の景色を視認することができる。また、コンバイナ42dには、終端側結像レンズ42cから光線が照射される。コンバイナ42dは、終端側結像レンズ42cからの光線をドライバに向けて反射する。したがって、ドライバは、終端側結像レンズ42cによる結像映像を、フロントガラス44より自車両100の前方側に表示される虚像として視認することができる。このように、コンバイナ42dは、自車両100前方の景色に結像映像を重畳して表示する。すなわち、第2結像光学系42は、いわゆるヘッドアップディスプレイである。
上述したように、第2結像光学系42には、第2揺動角にあるミラー部36cで反射された光線が入射する。したがって、第2結像光学系42によって、第2揺動角にあるミラー部36cに対応する位置が明部となり、第1揺動角にあるミラー部36cに対応する位置が暗部となる映像が表示される。すなわち、第2結像光学系42は、第1結像光学系40が路面上に表示する映像とは明部と暗部が反転した映像を表示する。
【0026】
以上に説明したように、車載式映像表示装置10は、第1揺動角にあるミラー部36cによる反射光線により路面上に映像を表示し、第2揺動角にあるミラー部36cによる反射光により車室内に映像を表示する。すなわち、第1揺動角にあるミラー部36cによる反射光線と第2揺動角にあるミラー部36cによる反射光線を有効に活用して、2つの映像の表示を可能としている。反射光線を無駄にすることがないので、高効率で2つの映像を表示することができる。また、これらの映像は、明部と暗部が反転した映像であるが、実質的には同一の情報を伝達することができる。
また、従来技術のように一方の反射光線をアブソーバ等に吸収させる方式では、車載式映像表示装置10内で熱が発生する。本実施例の車載式映像表示装置10によれば、車載式映像表示装置10内で光線を吸収しないので、発熱を抑えることができる。これにより、車載式映像表示装置10の信頼性や寿命の向上が実現されている。
【0027】
(報知システム90の構成)
次に、図1に示す報知システム90の、車載式映像表示装置10以外の部分について説明する。
【0028】
カメラ12は、自車両100の前方を撮影可能な位置に設置されている。カメラ12は、自車両100の前方の画像をリアルタイムで撮影する。カメラ12は、演算装置24に接続されている。カメラ12で撮影された画像データは、演算装置24に入力される。
【0029】
カーナビ13は、GPSを用いて、自車両100と周辺のマップデータとの位置関係を特定して表示する。
【0030】
距離計測装置14は、車両前方の物体までの距離と方向を計測する。これによって、車両前方の物体の位置が特定される。本実施例では、距離計測装置14にミリ波レーダを用いている。但し、距離計測装置14には、レーザレーダ等を用いることもできる。また、複数のカメラにより車両前方の画像を撮影し、それらの画像から物体の位置を特定するシステム(いわゆる、ステレオカメラシステム)を用いることもできる。距離計測装置14は、演算装置24に接続されている。距離計測装置14が計測したデータは、演算装置24に入力される。
【0031】
速度センサ16は、自車両100の走行速度を検出する。速度センサ16は、演算装置24に接続されている。速度センサ16が検出した走行速度データは、演算装置24に入力される。
【0032】
操舵角センサ18は、自車両100のハンドルの操舵角を検出する。操舵角センサ18は、演算装置24に接続されている。操舵角センサ18が検出した操舵角データは、演算装置24に入力される。
【0033】
記憶装置22は、ROMやRAM等のメモリ装置により構成されている。記憶装置22は、車載式映像表示装置10に表示させる画像データ等の種々のデータを記憶している。記憶装置22が記憶している各データは、必要に応じて演算装置24に読み取られる。
【0034】
演算装置24は、CPU等を備えたマイクロコンピュータである。演算装置24は、カメラ12、カーナビ13、距離計測装置14、速度センサ16、及び、操舵角センサ18から入力される各データ等に基づいて、自車両100の前方の状況を特定する。そして、特定した自車両100の前方の状況に応じて、車載式映像表示装置10に映像を表示させる。
【0035】
(報知システム90の動作)
次に、報知システム90の動作について説明する。図7は、演算装置24が実行する動作を示すフローチャートである。
【0036】
ステップS2では、演算装置24は、自車両100の前方に存在する注意対象を特定する。なお、注意対象とは、運転時にドライバが注意を要する対象物である。具体的には、注意対象には、歩行者、他車両、障害物、交差点等が含まれる。
ステップS2の処理では、演算装置24は、カメラ12が取得する画像データから、歩行者、他車両、路面上の障害物等を形状認識により特定する。そして、これらの位置を、距離計測装置14により計測する。また、歩行者、他車両については、距離計測装置14による過去の計測結果に基づいて、その移動速度を算出する。そして、算出した移動速度と、速度センサ16で検出される自車両100の走行速度と、操舵角センサ18で検出される操舵角から、各歩行者及び各他車両が、自車両100の進路付近に進入する可能性があるか否かを判定する。進入可能性がある歩行者と、進入可能性がある他車両と、路面上の障害物は、注意対象として特定される。なお、複数の歩行者が接近して存在している場合には、それらの歩行者の移動速度が等しいか否かによって、それらの歩行者が同行体であるか否かについても判定する。同行体である複数の歩行者は、1つの注意対象として特定する。
また、演算装置24は、カーナビ13のマップデータから、自車両100の進路上に存在する交差点を特定する。交差点も、注意対象として特定される。
【0037】
ステップS4では、演算装置24は、自車両100が各注意対象を安全に通過できるか否かを判定する。
すなわち、演算装置24は、まず、ステップS2で特定した注意対象の数が所定数以上であるか否かを判定する。そして、注意対象の数が所定数以上である場合には、自車両100の走行速度と、各注意対象の位置及び移動速度に基づいて、各注意対象を通過するときの時間間隔を算出する。算出された各時間間隔の何れかが所定間隔より短いときには、演算装置24は、ステップS4でNOと判定する。一方、全ての時間間隔が所定時間より長いとき、及び、注意対象の数が少ないときは、ステップS4でYESと判定する。
【0038】
ステップS6では、演算装置24は、上記の時間間隔が所定間隔以上となるように、自車両100の適切な走行速度を算出する。
【0039】
ステップS8では、演算装置24は、ステップS6で算出した走行速度を表示するように、車載式映像表示装置10に指令を送る。すると、指令に応じて光源30が点灯されるとともに、反射方向切換装置34の駆動回路35dが、各ミラー部36cの揺動角を、指令された映像に応じて制御する(既に光源30が転倒している場合には、各ミラー部36cの揺動角のみが制御される)。これによって、車載式映像表示装置10によって、自車両100の前方の路面上と、車室内に、適切な走行速度が表示される。
例えば、自車両100の前方の路面上には、図8に示すように適切な走行速度を示す映像が表示される。また、車室内には、図9に示すように、自車両100の前方の景色と重畳させて適切な走行速度を示す映像が表示される。なお、図8に示す映像と図9に示す映像は、明部と暗部が反転した映像となる。
このように、路面上に情報を表示することで、ドライバは視点をあまり動かすことなく情報を読み取ることができる。また、雨天の場合や路面に凹凸がある場合等には、路面上に適切に映像を表示できない場合がある。この場合には、ドライバは、コンバイナ42dにより表示される映像により情報を読み取ることができる。特に、コンバイナ42dによれば、フロントガラス44よりも前方に虚像が表示されるので、ドライバは眼の焦点をあまり動かすことなく映像を確認することができる。
【0040】
ステップS4でYESと判定した場合は、演算装置24が、ステップS10でナビ情報(カーナビ13がドライバに案内する情報)の有無を判断する。
カーナビ13から提供されるナビ情報があれば(ステップS10でYES)、演算装置24は、そのナビ情報を表示するように、車載式映像表示装置10に指令を送る(ステップS12)。この場合、例えば、図10に示すように、「20m先左折」等の情報が路面上に表示される。また、車室内にも同様の映像(明部と暗部を反転させた映像)が表示される。
また、カーナビ13から提供されるナビ情報がなければ(ステップS10でNO)、演算装置24は、車載式映像表示装置10に表示をOFFするように指令を送る(ステップS14)。これによって、車載式映像表示装置10は、表示をOFFする(既にOFFしている場合には、OFFの状態が維持される)。
【0041】
演算装置24は、図7のフローチャートに示す処理を繰り返し実行する。したがって、注意が必要なとき、及び、ナビ情報が提供されているときに、適切に映像が表示される。
【0042】
(第2実施例)
次に、第2実施例の車載式映像表示装置10について説明する。第2実施例の車載式映像表示装置10の第1結像光学系40は、夜間等において自動車のヘッドライトとして使用される。したがって、第2実施例の車載式映像表示装置10は、第1結像光学系40が、自車両100の前方の広い範囲に光線を照射するように構成されている。第2実施例の車載式映像表示装置10は、第1実施例と略同様の報知システム90に組み込まれている。
【0043】
図11のフローチャートは、第2実施例の報知システム90において、演算装置24が実行する処理を示している。
【0044】
ステップS22では、演算装置24は、自車両100の前方に存在する人物(歩行者、他車両のドライバ等)を特定する。この特定は、図7のステップS2と同様に、カメラ12が取得する画像データに基づいて行う。また、画像データ上において、特定した人物の眼を含む一定範囲を画定する。
【0045】
ステップS24では、演算装置24は、映像を表示するように車載式映像表示装置10に指令を送る。このとき、演算装置24は、ステップS22において画像データ上で画定した範囲(眼を含む範囲)に対応する領域を暗部とし、その他の領域を明部とする映像を、第1結像光学系40によって表示するように指令を送る。
すると、図12に示すように、車載式映像表示装置10によって、自車両100の前方に光線が照射される。但し、人物の眼を含む範囲には光線が照射されない(図12の参照番号80は、暗部を示している)。したがって、光線の照射によりドライバは人物を容易に視認可能であり、また、人物は自車両100からの光を眩しいと感じることなく自車両100を視認することができる。したがって、従来のヘッドライトのようにハイビームとロービームを使い分ける必要がなくなり、広い範囲への光照射が可能となる。これにより、夜間運転時の安全性が向上する。
【0046】
演算装置24は、図11のフローチャートに示す処理を繰り返し実行する。したがって、自車両100と人物との相対位置の変化に応じて、暗部(第1結像光学系40における暗部)の位置が変更され、適切に光線が照射される。
【0047】
以上の第1実施例及び第2実施例に説明したように、本発明の車載式映像表示装置10は、第1揺動角にあるミラー部36cによる反射光線により第1の映像を表示し、第2揺動角にあるミラー部36cによる反射光線により第1の映像と明部と暗部が反転した第2の映像を表示する。1つの映像表示装置で、2つの映像を表示できる。これらの2つの映像を、路面上と車室内とにそれぞれ表示することで、自車両100の走行時の安全性の向上が実現される。
【0048】
なお、上述した車載式映像表示装置10では、反射方向切換装置34に電極35gと電極35hが形成されていた。そして、電極層36eと電極35gの間の印加電圧と、電極層36eと電極35hの間の印加電圧によって、ミラー部36cの揺動角を制御していた。しかしながら、電極35gのみを形成しておき、電極層36eと電極35gの間の印加電圧のみによってミラー部36cの揺動角を制御することもできる。すなわち、電極層36eと電極35gの間に電圧を印加すると、ミラー部36cが揺動する。電圧をオフすると、捩れ梁36bの復元力によってミラー部36cは元の角度(半導体基板35と平行な角度)に戻る。したがって、電極層36eと電極35gの間の印加電圧によって、ミラー部36cの揺動角を制御できる。この場合、揺動しているミラー部36cの反射光線と、揺動していないミラー部36cの反射光線とをそれぞれ異なる結像光学系に入射させることで、2つの映像の表示が可能となる。
【0049】
また、2つの車載式映像表示装置10を車載することもできる。この場合、第1の車載式映像表示装置10からの映像(第2結像光学系42による映像)をドライバの一方の眼に入射させ、第2の車載式映像表示装置10からの映像(第2結像光学系42による映像)をドライバの他方の眼に入射させることができる。このような構成によれば、それぞれの眼への光線の入射角度を適切な角度に調整しておくことで、ドライバに対して、自車両100の前方の所定距離の位置(上述した実施例よりも遠方の位置)に映像(虚像)を表示させることができる。このような構成によれば、ドライバは眼の焦点をほとんど動かすことなく第2結像光学系42による映像を視認することが可能となる。
【0050】
また、上述したように、路面上に表示する映像は、路面の状態によってはうまく表示できない場合がある。したがって、上述した報知システム90は、映像を表示する前に、路面上にテストパターンを表示し、表示したテストパターンをカメラ12で撮影し、撮影したテストパターンによって映像の表示位置を変更するようにしてもよい。
すなわち、速度情報やナビ情報の映像を表示する直前に、車載式映像表示装置10によって路面上にテストパターンを表示する。テストパターンは、例えば、格子状の映像等を用いることができる。テストパターンを路面上に表示するのと同時に、カメラ12によって路面上に表示されたテストパターンを撮影する。路面上に部分的に水溜りや凹凸があれば、その部分ではテストパターンが適切に表示されない。したがって、カメラ12で撮影したテストパターンから、映像を適切に表示できない路面上の領域を特定することができる。領域を特定したら、車載式映像表示装置10にその領域以外に速度情報やナビ情報の映像を表示するように指令を送る。これによって、路面上に必要な情報を確実に表示することが可能となる。
なお、テストパターンは、人が認識できないように、高速で点滅させて表示させたり、ごく短時間だけ表示させてもよい。この場合には、カメラ12に高速カメラを採用し、高速カメラによってテストパターンを撮影する。また、テストパターンは、人が認識できないように、近赤外線を照射することによって表示してもよい。近赤外線を用いる場合には、カメラ12に近赤外線を撮影可能なカメラを採用する。
【0051】
また、光ファイバアレイ42bの光ファイバの密度は、入射面と射出面とで等しくしてもよいが、入射面と射出面とで異なるように構成してもよい。
図2に示すように、光ファイバアレイ42bから射出された光線は、終端側結像レンズ42cを介してコンバイナ42dに対して斜めに入射する。したがって、入射面と射出面とで光ファイバの密度が等しいと、上下に伸びた映像がコンバイナ42dにより表示される場合がある。したがって、コンバイナ42dの上下方向に対応する方向の光ファイバの密度を入射面と射出面とで異ならせることで、映像の伸びを補正することが可能となる。
【0052】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】報知システム90の構成を示すブロック図。
【図2】車載式映像表示装置10の概略構成を示す説明図。
【図3】反射方向切換装置34の平面図。
【図4】マイクロメカニカル構造体36の上面図。
【図5】図4のV−V線断面図。
【図6】図4のVI−VI線断面図。
【図7】第1実施例の報知システム90において、演算装置24が実行する処理を示すフローチャート。
【図8】第1実施例の報知システム90で、路面上に表示される映像を例示する図。
【図9】第1実施例の報知システム90で、車室内に表示される映像を例示する図。
【図10】第1実施例の報知システム90で、路面上に表示される映像を例示する図。
【図11】第2実施例の報知システム90において、演算装置24が実行する処理を示すフローチャート。
【図12】第2実施例の報知システム90で、自車両100の前方に照射される光線の説明図。
【符号の説明】
【0054】
10:車載式映像表示装置
12:カメラ
13:カーナビ
14:距離計測装置
16:速度センサ
18:操舵角センサ
22:記憶装置
24:演算装置
30:光源
32:リフレクタ
34:反射方向切換装置
35:半導体基板
35g:電極
35h:電極
36:マイクロメカニカル構造体
36a:固定部
36b:捩れ梁
36c:ミラー部
36e:電極層
40:第1結像光学系
42:第2結像光学系
42a:始端側結像レンズ
42b:光ファイバアレイ
42c:終端側結像レンズ
42d:コンバイナ
90:報知システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明暗が反転した2つの映像を表示する装置であり、
光源と反射方向切換装置と第1結像光学系と第2結像光学系と制御装置を備えており、
光源は反射方向切換装置を照射する光を発生し、
反射方向切換装置は、
(1)規則的に配置された複数のミラーと、ミラー毎に設けられたアクチュエータを備えており、
(2)各々のミラーは、光源から入射した光線を第1結像光学系に向けて反射する第1揺動角と、光源から入射した光線を第2結像光学系に向けて反射する第2揺動角の間で揺動可能であり、
(3)各々のアクチュエータは、各々のアクチュエータに対応する1つのミラーに機械的に連携しており、
(4)各々のアクチュエータは、他のアクチュエータに拘束されることなく、対応するミラーの揺動角を第1揺動角と第2揺動角の間で切換えるものであり、
制御装置は、
(1)第1結像光学系で得られる映像において明部となる位置に結像するミラーに対応するアクチュエータを制御して対応するミラーの揺動角を第1揺動角に切換え、
(2)第1結像光学系で得られる映像において暗部となる位置に結像するミラーに対応するアクチュエータを制御して対応するミラーの揺動角を第2揺動角に切換える
ことを特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
請求項1の映像表示装置が車載されており、第1結像光学系が車両の前方に結像し、第2結像光学系が車室内に結像することを特徴とする車載式映像表示装置。
【請求項3】
第2結像光学系が、光ファイバアレイと終端結像装置を備えており、
第2揺動角に調整されたミラーの反射光が光ファイバアレイの入射面に入射し、光ファイバアレイの射出面の先に終端結像装置が位置する位置関係に配置されていることを特徴とする請求項2の車載式映像表示装置。
【請求項4】
終端結像装置が、車両前方の景色に結像映像を重畳させるコンバイナを備えていることを特徴とする請求項3の車載式映像表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−32906(P2010−32906A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196679(P2008−196679)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】