説明

曲部を有する二重管の製造方法、曲部を有する二重管

【課題】内管と外管とを備え、内管と外管との隙間及び内管の中空に流体を流すことができる、曲部を有する二重管において、二重管の内管と外管の間の隙間に流れる流体の入口と出口での差圧を抑える。
【解決手段】内管10の外周面に円周方向及び軸方向に間隔をあけてスペーサ30を取り付け、スペーサ30を取り付けた内管10を、外管20の中空内に差し込んで二重管100を形成し、二重管100を曲げ加工して湾曲部60を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内管と外管とを備え、曲部を有する二重管の製造方法及びこの方法により製造された二重管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内管と外管とを備える二重管において、内管の外周面あるいは外管の内周面に螺旋状のフィンや溝を設け、内管と外管との隙間と、内管の中空とに流体が流れる、湾曲部を有する二重管が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上述のような湾曲部を有する二重管の製造は、内管の外周面あるいは外管の内周面に螺旋状のフィンや溝を設ける加工が困難であり、加工性の低下が問題となっている。
【0004】
そこで、本願出願人らは、内管の外周面に針金を螺旋状に巻きつけておき、この針金が巻き付けられた内管を外管内に差し込み二重管を形成し、この二重管を曲げ可能することにより曲部を有する二重管を製造する方法を提案している(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−201275号公報
【特許文献2】特開2008−23537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の方法により製造した二重管では、針金が螺旋状に巻きつけられているため、外管と内管との間の隙間を流れる流体に対して針金が抵抗となり、また、針金に異物が付着するなどして、外管と内管との間を流れる流体の二重管の入口と出口での差圧が大きくなってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、内管と外管とを備え、内管と外管との隙間及び内管の中空に流体を流すことができる、曲部を有する二重管において、二重管の内管と外管の間の隙間に流れる流体の入口と出口での差圧を抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の曲部を有する二重管の製造方法は、内管と外管とを備え、内管と外管との隙間と、内管の中空とに流体を流すことができ、曲部を有する二重管の製造方法であって、前記内管となる第1の直線状の管の外周面に円周方向及び軸方向に間隔をあけてスペーサを取り付ける工程と、前記スペーサを取り付けた前記第1の直線状の管を、前記外管となる第2の直線状の管の中空内に差し込んで二重管を形成させる工程と、前記二重管を曲げ加工して曲部を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記の二重管の製造方法において、前記スペーサは球状の部材であってもよく、また、ステンレス製であってもよい。
また、本発明の曲部を有する二重管は、上記の製造方法により製造されたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の曲部を有する二重管の製造方法は、内管と外管とを備え、内管と外管との隙間と、内管の中空とに流体を流すことができ、曲部を有する二重管であって、前記内管の外周面に円周方向及び軸方向に間隔をあけて複数のスペーサが取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、内管の外周面に円周方向及び軸方向に間隔を空けてスペーサを取り付けることとしたため、曲部を形成する際にも、内管と外管との間の隙間を確保することができ、また、スペーサが内管と外管との間の隙間を流れる流体への抵抗が小さく、二重管の入口と出口での差圧を小さく抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の曲部を有する二重管の一実施形態を図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、本実施形態の二重管100を示し、(A)は斜視図、(B)は二重管100の軸方向に対して垂直方向の断面図、(C)は軸方向断面図である。また、図2は二重管100の湾曲部60を示す断面図である。同図に示すように、二重管100は、内管10と、内管10の外周面に円周方向及び軸方向に適宜な間隔で取り付けられたスペーサ30と、外周面にスペーサ30が取り付けられた内管10を挿入できるような内径を有する外管20とを備え、その中間部に湾曲部60を備える。内管10の内部には中空の通路50が形成されおり、また、内管10と外管20との間に通路40が形成されている。
【0012】
二重管100は、内管10内の通路50と、内管10と外管20との間の通路40とに、夫々、高温の流体と低温の流体とが逆方向に流れることにより、これら高温の流体と低温の流体との間で熱交換を行うものである。
【0013】
内管10及び外管20の材質は特に制限されるものではないが、熱伝導性及び耐熱性に優れた金属、例えば、銅、アルミニウム、合金(例えば、銅合金、アルミ合金、耐食合金、耐熱合金等)などからなるものを用いることにより、内管10内の通路50と、内管10と外管20との間の通路40に流れる、高温の流体と低温の流体との間で熱交換を効率よく行うことができる。
【0014】
また、スペーサ30は、内管10の外周面に円周方向及び軸方向に夫々間隔を空けて取り付けられている。このようなスペーサ30としては、ステンレス製の球体などが好適である。
【0015】
なお、スペーサ30は、ステンレス製に制限されるものではないが、内管10と外管20との間の通路に高温の流体が流れた際に、流体の熱により侵食されないように、耐熱性に優れた金属であれば良く、また、その形状も内管10の外周面に円周方向及び軸方向に間隔を空けて取り付けることができればよい。このようなスペーサとしては、ステンレス製の球体以外にも、短尺の針金等を用いることができる。
【0016】
以下、上記の二重管100の製造方法を説明する。
まず、内管10となる第1の直線状の管10aの外周面にスペーサ30を取り付ける。なお、スペーサ30は溶接することにより第1の直線状の管10aに取り付ければよい。
次に、スペーサ30が外周面に取り付けた第1の直線状の管10aを外管20となる第2の直線状の管20aの内部に挿入することで二重管100を形成する。
【0017】
次に、上述のようにして形成された二重管100を周知の曲げ加工方法(例えば、パイプベンダーを用いた曲げ加工方法など)によって曲げる。この際、内管10の外周面に取り付けられたスペーサ30が内管10と外管20との間の隙間を確保するため、曲部60においても通路40を確実に成形することができる、なお、曲部60に当たる位置には、内管10の外周面に他の部位に比べて多量にスペーサ30を取り付けておくとよい。
【0018】
本実施形態によれば、内管10の外周面に円周方向及び軸方向に間隔を空けてスペーサ30を取り付けることしたため、湾曲部60を形成する際にも内管10と外管20との間に確実に隙間を確保することができ、さらに、スペーサ30が内管10と外管20との間の通路40に流れる流体への抵抗とならず、二重管100の入口と出口における差圧を小さく抑えることができる。
【0019】
なお、本実施形態では、中間部に1箇所、湾曲部60が形成された二重管100について説明したが、これに限らず、複数の湾曲部60を備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態の二重管を示し、(A)は斜視図、(B)は二重管の軸方向に対して垂直方向の断面図、(C)は軸方向断面図である。
【図2】二重管の湾曲部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0021】
10 内管
20 外管
30 スペーサ
40 通路
50 通路
60 湾曲部
100 二重管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内管と外管とを備え、内管と外管との隙間と、内管の中空とに流体を流すことができ、曲部を有する二重管の製造方法であって、
前記内管となる第1の直線状の管の外周面に円周方向及び軸方向に間隔をあけてスペーサを取り付ける工程と、
前記スペーサを取り付けた前記第1の直線状の管を、前記外管となる第2の直線状の管の中空内に差し込んで二重管を形成させる工程と、
前記二重管を曲げ加工して曲部を形成する工程と、を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記スペーサは球状の部材であることを特徴とする請求項1記載の二重管の製造方法。
【請求項3】
前記スペーサはステンレス製であることを特徴とする請求項1又は2記載の二重管の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のうち何れか1項に記載の二重管の製造方法により製造されたことを特徴とする二重管。
【請求項5】
内管と外管とを備え、内管と外管との隙間と、内管の中空とに流体を流すことができ、曲部を有する二重管であって、
前記内管の外周面に円周方向及び軸方向に間隔をあけて複数のスペーサが取り付けられていることを特徴とする二重管。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−241145(P2009−241145A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−93300(P2008−93300)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、経済産業省、新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究「バイオマスエネルギー高効率転換技術開発/バイオマスエネルギー転換要素技術開発/触媒懸濁スラリーによる家畜排泄物の高効率高温高圧ガス化技術の研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(592148878)株式会社東洋高圧 (49)
【Fターム(参考)】