説明

最大値記憶型光ファイバセンサ、最大値記憶型光ファイバセンサユニットおよび最大値記憶型光ファイバセンサシステム

【課題】 少ない配線量で多点の最大ひずみ値を記憶可能で、常時計測を要せず、小変位から大変位に亘り応動し、センサの切断時の最大変位量およびその切断位置の計測を可能にする。
【解決手段】 第1のスライド部材2と第2のスライド部材3は、相対的に摺動可能に嵌合している。第1のスライド部材2上には、片持ビーム状を呈しその先端側にナイフエッジが形成され、その反対側面にはテーパ部が形成されたカッタ部5が取付けられている。第2のスライド部材3上には、カッタ押さえ部材6とファイバ整列部材7が取り付けられている。両スライド部材2,3間に引張り方向の大きな変位が加わると、複数のカッタ部5のいずれかがその変位量に応じてカッタ押さえ部材6の櫛歯部と接触して下方に配置された複数の光ファイバのいずれかを押し切り切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、建物、土木構造物、航空機、船舶などの各種構造物に過去に掛かった最大負荷に対応する最大ひずみや最大変位量を検出する機能を備えた最大値記憶型光ファイバセンサ、最大値記憶型光ファイバセンサユニットおよび最大値記憶型光ファイバセンサシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
最大値記憶型センサで得られるデータは、構成部材に、例えば地震などの外力の経時的負荷で生じている強度変化を非破壊的に検出して構造物の破壊可能性の予知的診断を行う場合などに利用することができる。
近年高い経済成長が見込めないことや、資源、環境への配慮から適切な維持管理を行うことによる長寿命化の必要性がとみに認識されつつある。
例えば、土木構造物としての杭の健全性をモニタリングするのに適用可能な方法として、第1には、杭表面または杭内鉄筋のひずみ測定により過去の負荷履歴を把握する方法があり、第2には、杭頂部へのアクセスが可能な場合には、波動による亀裂の有無・位置を検知する方法がある。
しかしながら、前者は、必要な杭位置において、構造評価を行う上での基本となるひずみ量が得られる反面、必要となるひずみ評価点の数だけセンサとひずみ計測器との間を結ぶケーブル本数が必要なため、これらを杭の周りに配設する必要があり、そのための保護材を多く必要とすること、さらには、目的とする最大ひずみを把握するには、常時連続して計測する必要がある。このために計測に高額のコストが掛かる、という多くの欠点がある。
他方、後者の方法においては、常時測定の必要はないため、常時計測機器についてのコストは抑えられるが、前提として、杭頂部へ衝撃荷重を加えられるだけのアクセススペースが必要なこと、さらには、亀裂位置については、杭頂部に一番近い位置が判るだけで、亀裂の程度は評価できない、という欠点がある。
【0003】
建築物や橋梁などの構造物の各部に発生する変形(変位やひずみ)をモニタするために上述したような方法とは異なるものとして、特開平9−96576(以下「特許文献1」という)や特開2000−346633(以下「特許文献2」という)に記載された最大値記憶型センサや距離変化量検出用センサが提案されている。
この特許文献1に記載された最大値記憶型センサは、それぞれ所定の電気抵抗値を持つ線状体で形成した導電性要素を複数本横並び状態に配列させると共に、これら導電性要素に中間部で折り返した折り返し部を横一線に並ぶ状態に与え、且つ各導電性要素の順次的な切断に応じた相関的な抵抗値の変化を生じる回路をなすように形成した導電体と、この導電体の導電性要素をその折返し部で切断可能とする切断手段と、この切断手段を導電体に対し相対的に移動させるスライダと、これら導電体、切断手段及びスライダを水密的に収納する保護ケースとを備えてなり、そして構造物における検出対象の構成部材に対し当該構成部材に生じる変形に応じてスライダに前記導電体に対する相対移動を生じさせるように取付けて用いられ、この相対移動の移動量に応じて導電体の導電性要素を切断手段にて順次切断させ、この切断状態での導電体における抵抗値から構造物の構成部材における最大変形量を検出するようになっている最大値記憶型センサであって、そのスライダを、スライドブロック部と、このスライドブロック部から突設させた棒状のロッド部およびこのロッド部の先端に設けた接続端とで形成すると共に、保護ケースの一端に外部へ通じる挿通部を設け、この挿通部を通してロッド部の先端側を保護ケースの外部に突出するように構成されている。
【0004】
また、特許文献2に記載された距離変化量検出用センサは、物体上に設定された2点間の距離の変化量を測定するためのものであり、この検出用センサは、前記2点のうちの一方に形成された連結機構に連結される収容体と、この収容体の内部に変位自在に収容されると共に、前記2点のうちの他方に形成された連結機構に連結されることにより、前記2点間の距離の変化に伴って前記収容体の内部を互いに逆向きの第1、第2の方向に変位する摺動体と、前記摺動体に形成された第1の押圧部に接触可能に配置される第1の接触部を有し、この摺動体の変位によって生じた第1の方向への最大変位量に応じた変位量を生ずる第1の変位機構と、前記摺動体に形成された第2の押圧部に接触可能に配置される第2の接触部を有しこの摺動体の変位によって生じた前記第2の方向への最大変位量に応じた変位量を生ずる第2の変位機構と、これら第1,第2の変位機構の変位量を検出する第1、第2の変位量検出機構と、前記第1、第2の変位機構の前記第1、第2の接触部を前記摺動体の第1、第2の押圧部のそれぞれに接触させるリセット機構とを備えることにより、素子を交換することなく、リセット動作を経て反復使用が可能なように構成されている。
【0005】
しかしながら、前者の特許文献1のセンサは、第1に、導電体を切断し、その抵抗値変化から状態を検出するものであるため、基本的には、導電体の絶縁を図る必要があるため、防水・防湿構造が要求される。そのため、センサが複雑且つ大型化し、コストが大幅に増大し、さらには確実な防水・防湿構造が得られない、という難点がある。
第2には、U字形に折り返した導電体を櫛形カッタで切断する方式であるため、切断が達成されるまである程度の変位を発生する必要があるが、微少な変位では、切断が困難乃至は不可能である。
第3には、各センサは、ひずみ評価点の数だけセンサと計測器との間を結ぶケーブル本数が必要なため、上述したひずみゲージ検出方式と同様な問題点や欠点がある。
また、上記特許文献2のセンサは、使用素子を交換することなく、リセット操作を介して反復使用可能である反面、第1には、センサ部分は、リニアポテンショメータ変位計、静電容量変位計、作動トランス変位計、ひずみゲージ式等の変位計などが用いられ、最大変位を保持する制動器が用いられるため、装置が大型で機構も複雑で、安価には構成できない、という難点があり、第2には、変位評価点の数だけケーブル本数が必要なため、多くのセンサを取付けるとケーブルが太くなり、施工上およびコスト上の障害となる、という難点がある。
【0006】
【特許文献1】特開平09−096576号公報
【特許文献2】特開2000−346633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、その第1の目的とするところは、なるべく少ない配線量で多点の最大のひずみ値を計測し得る最大値記憶型光ファイバセンサを提供することにあり、
第2の目的とするところは、常時計測することなく過去に発生したひずみの最大値を精度よく計測することが可能な最大値記憶型光ファイバセンサを提供することにあり、
第3の目的とするところは、特別に絶縁のための防水・防湿処理を施す必要がなく、その分低コスト、軽量化、コンパクト化を図り得る最大値記憶型光ファイバセンサを提供することにあり、
第4の目的とするところは、小変位から大変位に亘り応動し、高精度な最大値記憶型光ファイバセンサを提供することにあり、
第5の目的とするところは、引張ひずみと圧縮ひずみのいずれのひずみ(変位)に対しても、最大のひずみ値を選択的に計測し得る最大値記憶型光ファイバセンサを提供することにあり、
第6の目的とするところは、センサの損傷発生時の最大の変位量およびその損傷発生位置を把握し得る最大値記憶型ファイバセンサユニットおよび最大値記憶型ファイバセンサシステムを提供することにあり、
第7の目的とするところは、センサシステムのトータル価格を低減化し得る最大値記憶型光ファイバセンサシステムを提供することにあり、
第8の目的とするところは、縦列上に接続された複数のセンサのうち、最も近い位置または最も遠い位置に設置された基準位置とセンサの損傷発生時の最大変位量およびその損傷発生位置を把握し得る最大値記憶型ファイバセンサシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載した発明に係る最大値記憶型光ファイバセンサは、
上記第1〜第4の目的を達成するために、
相対的に移動可能なるように構成された一対のスライド部材と、
一方の前記スライド部材に並列状に取付けられた複数のカッタ部材と、
前記複数のカッタ部材に対応するように前記一方のスライド部材上に並列状に配置されると共に、内部を通過する光信号を検出可能な光検出器に対し連結可能な複数本の光ファイバと、
前記複数のカッタ部材に対応するように他方のスライド部材上に配置され、前記複数のカッタ部材に対し、異なる最大ひずみ量で個々の光ファイバを切断するように、前記カッタ部材の移動量に応じて所定の移動間隔で順次、前記カッタ部材に押し切り作用を生じさせるカッタ押さえ部材と、
を有し、前記一対のスライド部材間に生じる所定の範囲内の変位に応じていずれかの前記カッタ部材により前記光ファイバが切断され、前記光ファイバ内を通過する光信号が、前記光検出器でもって検出されることで前記ひずみ量の変位の最大値を記憶し得るように構成したことを特徴としている。
なお、光検出器は、例えばOTDRの如き光パルス試験器を用いることが好適であり、当該OTDRは、光ファイバの切断個所でのフレネル散乱光を検出可能に構成されているのが望ましい。
【0009】
請求項2に記載した発明に係る最大値記憶型光ファイバセンサは、上記の第1〜第4の目的を達成するために、
前記複数のカッタ部材は、基端側が前記一方のスライド部材に固定された片持ビーム状を呈し、その先端側の一方の面側にはナイフエッジが形成され、他方の面側にはテーパ部が形成されてなることを特徴としている。
請求項3に記載した発明に係る最大値記憶型光ファイバセンサは、上記第1〜第4の目的を達成するために、
前記カッタ押さえ部材は、複数のカッタ部材の先端に形成された前記テーパ部の移動域に対応させて複数の前記テーパ部に順次当接し得るように配置され、前記ナイフエッジの水平変位を、垂直変位に拡大して伝達し得るように、所定の段差を付してなる櫛歯部を有することを特徴としている。
請求項4に記載した発明に係る最大値記憶型光ファイバセンサは、上記第1〜第4の目的を達成するために、
前記複数本の光ファイバを並列状に整列させるファイバ整列部材が、前記カッタ部材に近接して前記他方のスライド部材上に配設されていることを特徴としている。
【0010】
請求項5に記載した発明に係る最大値記憶型光ファイバセンサは、上記第1〜第4の目的を達成するために、
前記一方のスライド部材の一端および前記他方のスライド部材の他端には、被測定対象物の二点間の変位を検出すべく、前記被測定対象物に直接または間接に取り付けるための取付部がそれぞれ設けられていることを特徴としている。
請求項6に記載した発明に係る最大値記憶型光ファイバセンサは、上記第1〜第4の目的を達成するために、
前記一方および他方の前記取付部には、前記光ファイバを内部に有する光ケーブルを挿通した状態で前記光ケーブルを押さえるためのケーブル押さえ部材が取付けられていることを特徴としている。
請求項7に記載した発明に係る最大値記憶型光ファイバセンサは、上記第1〜第4の目的を達成するために、
前記一方のスライド部材と他方のスライド部材との間の初期位置を調整するためのストッパねじ部材が、前記他方のスライド部材に形成された雌ねじ部に螺合されていることを特徴としている。
【0011】
請求項8に記載した発明に係る最大値記憶型光ファイバセンサは、上記第1〜第4の目的、第6の目的および第8の目的を達成するために、
相対的に移動可能なるように構成された一対のスライド部材と、
一方の前記スライド部材に並列状に取付けられた複数のカッタ部材と、
前記複数のカッタ部材に対応するように前記一方のスライド部材上に並列状に配置されると共に、内部を通過する光信号を検出可能な光検出器に対し連結可能な複数本の光ファイバと、
前記カッタ部材から外れた位置に切断された状態で固定されると共に、内部を通過可能な光信号を検出可能な光検出器に対し連絡可能な少なくとも1本の基準位置測定用光ファイバと、
前記複数のカッタ部材に対応するように他方のスライド部材上に配置され、前記複数のカッタ部材に対し、前記カッタ部材の移動量に応じて所定の移動間隔で順次、前記カッタ部材に押し切り作用を生じさせるカッタ押さえ部材と、
を有し、前記一対のスライド部材間に生じる所定の範囲内の変位に応じていずれかの前記カッタ部材により前記光ファイバが切断され、光ファイバ内を通過する光信号が、前記光検出器でもって検出されることで、前記ひずみ量の変位の最大値を記憶し得ると共に前記基準位置測定用光ファイバが設置された基準位置を測定し得るように構成したことを特徴としている。
なお、光検出器は、例えばOTDRの如き光パルス試験器を用いることが好適であり、当該OTDRは、光ファイバの切断個所でのフレネル散乱光を検出可能に構成されているのが望ましい。
【0012】
請求項9に記載した発明に係る最大値記憶型光ファイバセンサユニットは、上記第1〜第5の目的を達成するために、
帯状を呈し、各基端に前記光ファイバセンサの各取付部に取付けるためのねじ穴が穿設された、一対の取付板に、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載された最大値記憶型光ファイバセンサが取付けられ、前記一対の取付板の間に取外し可能に且つ前記一対の取付板に引張方向の変位が負荷されたとき前記最大値記憶型光ファイバセンサに引張力が作用するように構成されていることを特徴としている。
請求項10に記載した発明に係る最大値記憶型光ファイバセンサユニットは、上記第1〜第5の目的を達成するために、
相対的に摺動可能に嵌合された一対のビームからなり、前記一対のビームの各一方の端部近傍に被測定対象物に取付けるための長孔が穿設された剛性大なる取付部材を備え、
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載された最大値記憶型光ファイバセンサの一端および他端が、前記一対のビームの一方および他方の間に取付けられ、且つ前記一対のビームに圧縮方向の変位が負荷されたとき前記最大値記憶型ファイバセンサに引張力が作用するように構成したことを特徴としている。
【0013】
請求項11に記載した発明に係る最大値記憶型光ファイバセンサシステムは、上記第1〜8の目的を達成するために、
最大値記憶型光ファイバセンサユニットとして、請求項9に記載の複数の最大値記憶型光ファイバセンサユニットが、縦列状に互いに連結され且つ当該連結部が被測定対象物に固定されてなり、
前記複数の最大値記憶型光ファイバセンサユニットの同じひずみレベル測定用の光ファイバは、1本乃至は光コネクタで縦列状に連結されて実質上1本の光ファイバとして構成され、
前記それぞれの光ファイバの一端からパルス光を入射し、前記光ファイバの他端から戻ってくる反射光を光パルス試験器で測定することにより、何らかの負荷により前記光ファイバのいずれかが切断したときの切断箇所およびひずみレベルを検出し得るように構成されたことを特徴としている。
【0014】
請求項12に記載した発明係る最大値記憶型光ファイバセンサシステムは、上記第1〜8の目的を達成するために、
最大値記憶型光ファイバセンサユニットとして、請求項10に記載の複数の最大値記憶型光ファイバセンサユニットが、縦列状に互いに連結され且つ当該連結部が被測定対象物に固定されてなり、
前記複数の最大値記憶型光ファイバセンサユニットの同じひずみレベル測定用の光ファイバは、1本乃至は光コネクタで縦列状に連結されて実質上1本の光ファイバとして構成され、
前記それぞれの光ファイバの一端からパルス光を入射し、前記光ファイバの他端から戻ってくる反射光を光パルス試験器で測定することにより、何らかの負荷により前記光ファイバのいずれかが切断したときの切断個所およびひずみレベルを検出し得るように構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明に係る最大値記憶型光ファイバセンサによれば、
相対的に移動可能なるように構成された一対のスライド部材と、
一方の前記スライド部材に並列状に取付けられた複数のカッタ部材と、
前記複数のカッタ部材に対応するように前記一方のスライド部材上に並列状に配置されると共に、内部を通過する光信号を検出可能な光検出器に対し連結可能な複数本の光ファイバと、
前記複数のカッタ部材に対応するように他方のスライド部材上に配置され、前記複数のカッタ部材に対し、異なる最大ひずみ量で個々の光ファイバを切断するように、前記カッタ部材の移動量に応じて所定の移動間隔で順次、前記カッタ部材に押し切り作用を生じさせるカッタ押さえ部材と、
を有し、前記一対のスライド部材間に生じる所定の範囲内の変位に応じていずれかの前記カッタ部材により前記光ファイバが切断され、前記光ファイバ内を通過する光信号が、前記光検出器でもって検出されることで前記ひずみ量の変位の最大値を記憶し得るように構成したので、
すべてのセンサに共通した光ファイバを利用することで配線量が少なくてすみ、
さらに、所定のひずみを受けたとき、複数本の光ファイバのうち、当該ひずみに対応した光ファイバが断線することから、常時ひずみを計測する必要がなく、過去に発生したひずみの最大値を精度よく計測することができ、
さらに、ひずみゲージや抵抗素子を用いず、光ファイバを用いていることから、防水カバーやシーリング部材などの防水・防湿処理を施す必要がなく、その分、低コスト化、軽量化、コンパクト化を図ることができ、
さらには、光ファイバが所定の範囲内の変位に応じてカッタ部材を押し切って切断されることから、切断の位置が正確で且つ確実に切断されるため、小変位から大変位に亘り応動し、高精度な最大値を記憶させることができる。
【0016】
請求項2に記載の発明に係る最大値記憶型光ファイバセンサによれば、
前記複数のカッタ部材は、基端側が前記一方のスライド部材に固定された片持ビーム状を呈し、その先端側の一方の面側にはナイフエッジが形成され、他方の面側にはテーパ部が形成されてなるので、所定の最大変位時にナイフエッジで光ファイバを確実に押し切ることができる。
請求項3に記載の最大値記憶型光ファイバセンサによれば、
前記カッタ押さえ部材は、複数のカッタ部材の先端に形成された前記テーパ部の移動域に対応させて複数の前記テーパ部に順次当接し得るように、配置され、前記ナイフエッジの水平変位を、垂直変位に拡大して伝達し得るように、所定の段差を付してなる櫛歯部を有しているので、カッタ部材の水平変位を垂直変位に拡大伝達することができ、従って、微少な変位でも光ファイバを確実に切断することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明に係る最大値記憶型光ファイバセンサによれば、
前記複数本の光ファイバを並列状に整列させるファイバ整列部材が、前記カッタ部材に近接して前記他方のスライド部材上に配設されているので、光ファイバ部材が一方のスライド部材と共に移動しても複数本の光ファイバが対応する複数のカッタ部材の移動域から外れず、どの移動域においてもカッタ部材により対応した光ファイバを切断することができる。
請求項5に記載の発明に係る最大値記憶型光ファイバセンサによれば、
前記一方のスライド部材の一端および前記他方のスライド部材の他端には、被測定対象物の二点間の変位を検出すべく、前記被測定対象物に直接または間接に取り付けるための取付部がそれぞれ設けられているので、被測定対象物の二点間の変位を直接計測することができると共に、二つの取付部を中継部材に取付けることで、中継部材を介して被測定対象物の二点の評点距離間の負荷によるひずみを計測することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明に係る最大値記憶型光ファイバセンサによれば、
前記一方および他方の前記取付部には、前記光ファイバを内部に有する光ケーブルを挿通した状態で前記光ケーブルを押さえるためのケーブル押さえ部材が取付けられているので、ファイバケーブルを安定的に保持することができ、特に、複数のセンサ間を直列状にケーブルで接続することが可能となる。
請求項7に記載の発明に係る最大値記憶型光ファイバセンサによれば、
前記一方のスライド部材と、他方のスライド部材との間の初期位置を調整するためのストッパねじ部材が、他方のスライド部材に形成された雌ねじ部に螺合されているので、一対のスライド部材やカッタ部材、カッタ押さえ部材の加工誤差や組立誤差が生じていても、ストッパねじ部材により調整でき、従って正確に最大値を記憶させることができる。
【0019】
請求項8に記載の最大値記憶型光ファイバセンサによれば、
相対的に移動可能なるように構成された一対のスライド部材と、
一方の前記スライド部材に並列状に取付けられた複数のカッタ部材と、
前記複数のカッタ部材に対応するように前記一方のスライド部材上に並列状に配置されると共に、内部を通過する光信号を検出可能な光検出器に対し連結可能な複数本の光ファイバと、
前記カッタ部材から外れた位置に切断された状態で固定されると共に、内部を通過可能な光信号を検出可能な光検出器に対し連結可能な少なくとも1本の基準位置測定用光ファイバと、
前記複数のカッタ部材に対応するように他方のスライド部材上に配置され、前記複数のカッタ部材に対し、前記カッタ部材の移動量に応じて所定の移動間隔で順次、前記カッタ部材に押し切り作用を生じさせるカッタ押さえ部材と、
を有し、前記一対のスライド部材間に生じる所定の範囲内の変位に応じていずれかの前記カッタ部材により前記光ファイバが切断され、光ファイバ内を通過する光信号が、前記光検出器でもって検出されることで、前記ひずみ量の変位の最大値を記憶し得ると共に前記基準位置測定用光ファイバが設置された基準位置を測定し得るように構成したので、
すべてのセンサに共通した光ファイバを利用することで配線量が少なくてすみ、
さらに、所定のひずみを受けたとき、複数本の光ファイバのうち、当該ひずみに対応した光ファイバが断線することから、常時ひずみを計測する必要がなく、過去に発生したひずみの最大値を精度よく計測することができ、
さらに、ひずみゲージや抵抗素子を用いず、光ファイバを用いていることから、防水カバーやシーリング部材などの防水・防湿処理を施す必要がなく、その分、低コスト化、軽量化、コンパクト化を図ることができ、
さらに、光ファイバが所定の範囲内の変位に応じてカッタ部材を押し切って切断されることから、切断の位置が正確で且つ確実に切断されることから、小変位から大変位に亘り応動し、高精度な最大値を記憶させることができ、
さらには、予め最大値記憶型光ファイバユニットの設置位置を計測したり、記録しておく必要がなく、光ファイバの切断位置を事後的であっても把握することができ、
さらには、センサの損傷発生時の最大変位量およびその損傷位置を把握することができる。
【0020】
請求項9に記載の発明に係る最大値記憶型光ファイバセンサユニットによれば、
帯状を呈し、各基端に前記光ファイバセンサの各取付部に取付けるためのねじ穴が穿設された一対の取付板に、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載された最大値記憶型光ファイバセンサが取付けられ、前記一対の取付板の間に取外し可能に且つ前記取付板に引張方向の変位が負荷されたとき前記最大値記憶型光ファイバセンサに引張力が作用するように構成されているので、上記請求項1〜請求項8に記載の発明の効果を奏し得ると共に、特に取付板の両端に穿設された長孔に取付ボルトをもって被測定対象物に取付けることで標点の引張ひずみの最大値を容易に計測することができ、
さらに、複数の取付板の端部同士を直線的に連結し且つ被測定対象物に連結点を固定することで、複数箇所の標点の引張ひずみの最大値を記憶せしめることが可能となる。
【0021】
また、請求項10に記載の発明に係る最大値記憶型光ファイバセンサユニットによれば、
相対的に摺動可能に嵌合された一対のビームからなり、前記一対のビームの各一方の端部近傍に被測定対象物に取付けるための長孔が穿設された剛性大なる取付部材を備え、
請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載された最大値記憶型光ファイバセンサの一端および他端が、前記一対のビームの一方および他方の間に取付けられ、且つ前記一対のビームに圧縮方向の変位が負荷されたとき前記最大値記憶型ファイバセンサに引張力が作用するように構成したので、
すべてのセンサに共通した光ファイバを利用することで配線量が少なくてすみ、
さらに、所定の圧縮ひずみを受けたとき、複数本の光ファイバのうち、当該ひずみに対応した光ファイバが断線することから、常時圧縮ひずみを計測する必要がなく、過去に発生したひずみの最大値を精度よく計測することができ、
さらに、ひずみゲージや抵抗素子を用いず、光ファイバを用いていることから、防水カバーやシーリング部材などの防水・防湿処理を施す必要がなく、その分、低コスト化、軽量化、コンパクト化を図ることができ、
さらに、光ファイバが所定の範囲内の変位に応じてカッタ部材を押し切って切断されることから、切断の位置が正確で且つ確実に切断されることから、小変位から大変位に亘り応動し、高精度に圧縮方向のひずみの最大値を記憶させることができる。
【0022】
また、請求項11に記載の最大値記憶型光ファイバセンサシステムによれば、
最大値記憶型光ファイバセンサユニットとして、請求項9に記載の複数の最大値記憶型光ファイバセンサユニットが、縦列状に互いに連結され且つ当該連結部が被測定対象物に固定されてなり、
前記複数の最大値記憶型光ファイバセンサユニットの同ひずみレベル測定用の光ファイバは、1本乃至は光コネクタで縦列状に連結されて実質上1本の光ファイバとして構成され、
前記それぞれの光ファイバの一端からパルス光を入射し、前記光ファイバの他端から戻ってくる反射光を光パルス試験器で測定することにより、何らかの負荷により前記光ファイバのいずれかが切断したときの切断個所およびひずみレベルを検出し得るように構成したので、
上記請求項9に記載の効果を奏し得ると共に、特に複数の最大値記憶型光ファイバセンサを直列状に連結配置することで、いずれかの光ファイバが切断された位置を特定することができると共にその変位レベルも計測することができ、
さらに、複数個の最大値記憶型光ファイバセンサを同一ケーブルを介して、直列状に配線するため、配線ケーブルの本数が少なくて済むという利点が得られ、
さらには、計測器として比較的安価な、例えばOTDRのような光パルス試験器を用いることができ、従って、システム全体のコストを低減化することができる。
【0023】
請求項12に記載の最大値記憶型光ファイバセンサシステムによれば、
最大値記憶型光ファイバセンサユニットとして、請求項10に記載の複数の最大値記憶型光ファイバセンサユニットが、縦列状に互いに連結され且つ当該連結部が被測定対象物に固定されてなり、
前記複数の最大値記憶型光ファイバセンサユニットの同じひずみレベル測定用の光ファイバは、1本乃至は光コネクタで縦列状に連結されて実質上1本の光ファイバとして構成され、
前記それぞれの光ファイバの一端からパルス光を入射し、前記光ファイバの他端から戻ってくる反射光を光パルス試験器で測定することにより、何らかの負荷により前記光ファイバのいずれかが切断したときのひずみレベルを検出し得るように構成したので、
すべてのセンサに共通した光ファイバを利用することで配線量が少なくてすみ、
さらに、所定の圧縮ひずみを受けたとき、複数本の光ファイバのうち、当該圧縮ひずみに対応した光ファイバが断線することから、常時ひずみを計測する必要がなく、過去に発生した圧縮ひずみの最大値を精度よく計測することができ、
さらに、ひずみゲージや抵抗素子を用いず、光ファイバを用いていることから、防水カバーやシーリング部材などの防水・防湿処理を施す必要がなく、その分、低コスト化、軽量化、コンパクト化を図ることができ、
さらには、光ファイバが所定の範囲内の変位に応じてカッタ部材を押し切って切断されることから、切断の位置が正確で且つ確実に切断されることから、小変位から大変位に亘り応動し、高精度な最大値を記憶させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明に係る実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
先ず、図1〜図9を参照して、本発明に係る最大値記憶型光ファイバセンサの第1の実施の形態について、また、図10を参照して、本発明に係る最大値記憶型光ファイバセンサユニットの第2の実施の形態について詳しく説明する。
図1は、最大値記憶型光ファイバセンサの全体構成を示すもので、このうち(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は左側面図、(e)は右側面図である。
図2は、図1に示す最大値記憶型光ファイバセンサの一部を構成する一方のスライド部材である第1のスライド部材の全体構成を示すもので、このうち(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は、図2(b)X−X線矢視方向断面図である。
図3は、図1に示す最大値記憶型光ファイバセンサの一部を構成する他方のスライド部材である第2のスライド部材の全体構成を示すもので、このうち、(a)は、平面図、(b)は、正面図、(c)は、左側面図、(d)は、右側面図である。
図4は、図1に示す最大値記憶型光ファイバセンサの一部を構成する取付部の構成を示すもので、このうち、(a)は、左側面図、(b)は、平面図である。
【0025】
図5は、図1に示す最大値記憶型光ファイバセンサの一部を構成するカッタ部材の構成を示すもので、このうち、(a)は、平面図、(b)は、正面図である。
図6は、図1に示す最大値記憶型光ファイバセンサの一部を構成するカッタ押さえ部材の構成を示すもので、このうち(a)は、左側面図、(b)は、平面図、(c)は、断面図である。
図7は、図1に示す最大値記憶型光ファイバセンサの一部を構成するファイバ整列部材の構成を示すもので、このうち、(a)は、左側面図、(b)は、平面図である。
図8は、図1に示す最大値記憶型光ファイバセンサの一部を構成するケーブル押さえ部材の構成を示すもので、このうち、(a)は、平面図、(b)は、正面図、(c)は、右側面図である。
図9は、図1では省略してあるが、最大値記憶型光ファイバセンサを構成するカバー部材の構成を示すもので、(a)は、平面図、(b)は、正面図、(c)は、右側面図である。
【0026】
図10は、本発明の最大値記憶型光ファイバセンサユニットに係る第2の実施の形態の全体構成を示すもので、このうち、(a)は、正面図、(b)は、平面図である。
尚、図1には、本発明の最大値記憶型光ファイバセンサの一部を構成する光ファイバについて、図を見易くするために図示を省略してあるが、光ファイバについては、図10に示す光ファイバおよび光ケーブルが用いられているものとする。
図1〜図9において、1は、最大値記憶型光ファイバセンサであり、一対のスライド部材、即ち、第1のスライド部材2と、第2のスライド部材3と、取付部4と、カッタ部材5と、カッタ押さえ部材6と、ファイバ整列部材7と、ケーブル押さえ部材8と、カバー部材9(図9に示してあるが、図1では省略してある)と光ケーブル10および光ケーブルの心線である光ファイバ11(これら光ケーブル10と光ファイバ11は、図10に示してあるが、図1〜図3では省略してある)から構成されている。
【0027】
先ず、第1のスライド部材2は、円柱体の中間部を略中心軸に沿って、摺り落とすように削り取って断面D字状に形成されてなり、両端は所定長さに亘り円柱状を呈している。即ち、一方の端部側(図2において左側)には、円柱状の軸部2bが、他方の端部側(図2において右側)には、同じく円柱状の軸部2cがそれぞれ形成され、これら両側の軸2bと2cとの間に挟まれる領域に平坦部2aが形成され、その平坦部2aの中間部に、カッタ部材5を取り付けるための2個のねじ穴2dが形成されている。
上記第1のスライド部材2と互いに嵌合して相対的に摺動する第2のスライド部材3は、図3に示されるように、一方の端部(左端部)側は、所定幅に亘り、厚肉矩形状に形成された取付部3aが形成され、他方の端部(右端部)側は、取付部3aより狭い幅の厚肉矩形状に形成され、軸方向(図3において左右方向)に沿って上記第1のスライド部材2の他方の軸部2cに嵌合して案内するための軸受部3bが形成され、この軸受部3bには、後述するストッパねじ部材12が螺合する雌ねじ部3cが形成されている。
【0028】
さらに、第2のスライド部材3には、図3の(a)、(b)、(c)において、ケーブル押さえ部材8を取付けるための3個のねじ穴3d、3e、3fと、後述する可撓性を有する取付板13a、13bを連結するための4個のねじ穴3gと、ファイバ整列部材7を取り付けるための2個のねじ穴3hと、カッタ押さえ部材6を取付けるための3個のねじ穴3iがそれぞれ形成されている。
軸受部3bには、第1のスライド部材2の軸部2cが嵌合する貫通孔3mと、光ケー
ブル10を貫通させるための1/4円状の切欠き3nが形成されている。
上記第1のスライド部材2の他方の軸部2cには、図4に示す取付部4に穿設された貫通孔4aが嵌合しており、側端(図4において上端)から、貫通孔4aに至る2つの雌ねじ穴4bが形成されていると共に、一方側の隅部が光ケーブル10を貫通させる1/4円状の 切欠き4cが形成され、さらに、平面と、正面に、上記ケーブル押さえ部材8を取り付けるための3個のねじ穴4dが形成され、取付部3aには軸心方向に沿って、軸孔3kが穿設されている。
【0029】
このように形成された構成部材は、次のようにして組立てられている。
即ち、第1のスライド部材2の一方の軸部2bをスライド部材3の軸孔3kに摺動可能に嵌合し、他方の軸部2cと平坦部2aの一部が、第2のスライド部材3の軸受部3bに摺動可能に嵌合し、さらに他方の軸部2cが、図4に示す取付部4の貫通孔4aに嵌合し、2個の固定ねじ(図示省略)が、上記2個の雌ねじ穴4bにねじ込まれることによって、一体的に取付部4に固定されている。
次に、光ケーブル(例えば、直径が5.5mmのPVC被覆付4芯ケーブル)10の被覆を一部分剥ぎ、直径が例えば、0.9mmのビニール線からなる光ファイバ11を露出させる。
上記光ケーブル10は、図10に示すように、その一端側(左端側)が、第2のスライド部材3の取付部3aに形成された切欠き3pに通した後、図8に示すケーブル押さえ部材8を、正面から上面にかけて当接せしめ、取付ねじ14をケーブル押さえ部材8に穿設した3個の貫通孔に通し、さらに上記した取付部3aに形成した3個のねじ穴3d、3e、3fにねじ込むことにより、ケーブル押え部材8を取付部3aに固定すると共に、光ケーブル10を、取付部3aに固定することになる。
【0030】
また、光ケーブル10は、他端側(右端側)が、図4に示す取付部4に形成された切欠き4cに通した後、上記と同様に図8に示すケーブル押さえ部材8を、正面から上面にかけて当接せしめ、取付ねじ14をケーブル押さえ部材8に穿設した3個の貫通孔に通し、さらに上記した取付部4に形成した3個のねじ穴4dにねじ込むことにより、ケーブル押さえ部材8を取付部4に固定すると共に光ケーブル10を取付部4に固定することになる。
次いで、この場合、4本の光ファイバ11を、図10(a)において、第1のスライド部材2上であって、カッタ部材5の側方を通した後、この場合、4本の片持ちビーム状をなすカッタ部材5の取付予定領域に並列・平行に並べ、且つ、望ましくは、その状態を維持するように接着剤をもって平坦部2a上に固定する。この場合、第1のスライド部材2と第2のスライド部材3とは、相対的に相当量移動するので、その相当量を見込んで光ファイバ11は、光ケーブル10の取付部(取付部3aと4の部分)との間に余裕を持たせて弛ませた状態に設定しておくものとする。
【0031】
次いで、取付ねじ15を、ファイバ整列部材7に穿設した2個の貫通孔を介して、第2のスライド部材3に形成された2個のねじ穴3hにねじ込むことによって、ファイバ整列部材7を、第2のスライド部材3に固定する。この状態において、ファイバ整列部材7には、図7(a)に示すように、第1のスライド部材2に対向する面側に複数(この場合4つ)の凹溝7aが形成されており、複数の光ファイバ11の1本1本が凹溝7a内に嵌入し相対的に移動可能なようにして取り付けてあるので、第1のスライド部材2と第2のスライド部材3が相対移動しても、光ファイバ11が平行状態を維持するように機能させている。
次に、2本の取付ねじ16をカッタ部材5の基端部5dに穿設された2個の貫通孔を介して第1のスライド部材2に形成された2本のねじ穴2dにねじ込むことによってカッタ部材5を第1のスライド部材2上に取付ける。
この状態においては、先に配設した4本の光ファイバ11の上方に、カッタ部材5の4本のビーム部5cの先端に形成された4個のナイフエッジ5aが光ファイバ11の1本1本に対応する上方位置に接近して配設されることになる。
【0032】
次に、4本の取付ねじ17を、カッタ押さえ部材6に穿設した4個の貫通孔に通した後、第2のスライド部材3に形成された4つのねじ穴3iにねじ込むことによって、カッタ押さえ部材6を、第2のスライド部材3に取付ける。
この状態において、カッタ押さえ部材6の一方の面側、即ち、図6(b)の左側に、下方に向うに従い順次所定幅の切込みが深くなるような形状の段差が設けられた櫛歯部6aを有している。この櫛歯部6aの下面側には、上記カッタ部材5のそれぞれのテーパ部5bとそれぞれ摺接するテーパ部6bが形成されている。
このように、各部が組立てられた後、第2のスライド部材3の軸受部3bに形成された雌ねじ部3cに螺合されたストッパねじ部材12を、回動することにより、ストッパねじ部材12の先端(右端)と取付部4との間の距離を変化させ、第1のスライド部材2と第2のスライド部材3との間の初期位置(あるいは基準位置)を調整し、仮にこの位置を保持しておく。
【0033】
そして、さらに、この最大値記憶型光ファイバセンサ1を製作工場から、被測定対象物(例えば、コンクリート杭)に設置されるまでの移動時に上記初期位置が変化しないようにするために、第2のスライド部材3の取付部3aに形成された雌ねじ穴3eに固定ねじ(図示せず)を螺合し、固定ねじの先端が第1のスライド部材2の軸部2bに押付けるまで締付けることにより、第1のスライド部材2と第2のスライド部材3が、相対的に摺動しないように固定しておく。
但し、被測定対象物に最大値記憶型光ファイバセンサ1の取付けが完了した後は、雌ねじ穴3eにねじ込んでおいた固定ねじは、緩めておくか、取外して、第1のスライド部材2と第2のスライド部材3が自由に摺動できるようにする。
また、被測定対象物に取付けが完了した後は、ストッパねじ部材12も、第2のスライド部材3の右端(軸受部3b右端)より突出した状態から、突出しない状態となるように引込めるようにする。
これは、第1のスライド部材2と第2のスライド部材3が相互に離れる方向、即ち、引張り方向のみに移動するとは限らず、若干圧縮方向にも摺動する可能性があるので、それを許容するためである。
【0034】
このように構成された最大値記憶型光ファイバセンサ1は、図10に示すように、一方の取付板13aの一端(図10において右端)に穿設された4つの貫通孔(図示せず)に4本の取付ねじ(図示せず)を挿通し、第1のスライド部材2に連結された取付部4に形成された4つのねじ穴4eにねじ込むことによって、取付板13aに連結される。
また、同様にして、他方の取付板13bの一端(図10において左端)に穿設された4つの貫通孔(図示せず)に、4本の取付ねじ(図示せず)を挿通し、第2のスライド部材3の底面に形成された4つのねじ穴3gにねじ込むことによって最大値記憶型光ファイバセンサ1を取付板13bに連結される。
図11は、第3の実施の形態を示すものであり、土中に埋設されたコンクリート杭に本発明に係る最大値記憶型光ファイバセンサユニットを設置し、且つ、光ケーブルの始端(コネクタ)側からパルス光を入射し、光ファイバの切断個所で反射されたフレネル反射光を光検出器または光パルス試験器としてのOTDR(Optical time domain reflectometer)により測定し、光ファイバセンサのひずみ最大値を記憶する最大値記憶型光ファイバセンサシステムの構成を模式的に示す図であり、(a)は断面図、(b)はコンクリート杭の左側面図である。
【0035】
図11(a)、(b)において、土中に埋設される前に、コンクリート杭18の外周面に等角度間隔(この場合、90度間隔)で4系列の最大値記憶型光ファイバセンサユニット19が複数縦列状に連結されている。
1系列の最大値記憶型光ファイバセンサシステムは、この場合、1000mm間隔(標点距離)で、10個の最大値記憶型光ファイバセンサユニット19−1〜19−10が連結され、且つ各連結部は、コンクリート杭18の中に予め埋設しておいた雌ねじに取付ボルト20をもって固定されている。
光ケーブル10は、一方のコネクタ20fを出発し、最初の最大値記憶型光ファイバセンサユニット19−1から最終の最大値記憶型光ファイバセンサユニット19−10を経て、最終の最大値記憶型光ファイバセンサユニット19−10から直接、他方のコネクタ20rに戻るまで、基本的には1本の光ケーブル10を用いるか、途中に光コネクタを介して実質的に1本の光ケーブル10を用いる。
【0036】
尚、最大値記憶型光ファイバセンサユニットの表面には、土中に埋設した際の最大値記憶型光ファイバセンサの挙動が阻害されないように分離材を添着することが望ましい。
このようにして、4本(4系列)の最大値記憶型光ファイバセンサユニット19が設置されたコンクリート杭18は、予め掘削した穴に埋設され、光ケーブル10のみが地上に引き出される。
この光ケーブル10は、一方のコネクタ20fを出発し、コンクリート杭18と共に埋設された複数のセンサユニット19(19−1〜19−10)を介して、最後のセンサユニット19−10を出てから折り返されて、複数の光ファイバセンサユニット19の近傍に沿って、コンクリート杭18の左端から導出され、他方のコネクタ20rに接続される。
これらコネクタ20fおよび20rには、図示は省略したが、選択的に後述の図13に示すように、光スイッチ21を介して内部を通過する光信号を検出可能なOTDR22が、離脱可能(連結可能)に接続される。
【0037】
このように構成された最大値記憶型光ファイバセンサシステムにおいて、例えば、光源から出射されたパルス光が、一方のコネクタ20fを介して光ケーブル10に入射し、複数の最大値記憶型光ファイバセンサ1のいずれかの光ファイバ11に切断があると、その切断個所でフレネル反射が生じ、その反射光が光ファイバ内を逆方向に伝搬される。
この反射光は、光コネクタ20fに導出される。この光コネクタ20fを介して入射される光と反射光とは、光カプラにより分岐される。
光コネクタ20fから導出された反射光は、OTDR22により測定されることにより、切断された光ファイバを備えた最大値記憶型光ファイバセンサの特定のチャンネルの損傷が検知され、そのひずみ量の最大値が瞬時に、あるいは事後的に検出されることになる。
【0038】
OTDR22は、光ファイバケーブルの長さ(障害点検出を含む)、伝達損失(dB、dBkm)、接続損失(dB)、光コネクタの反射減衰量の測定等に使用されるが、ここでは、光ファイバの切断面(障害点)までの距離を測定することに使用する。光コネクタ20fを介して、被測定光ファイバ11(光ケーブル10)に光パルスを入射し、切断面で反射して戻ってくる反射光パルス信号(フレネル反射光)を受信し、光パルスの往復の伝搬時間から光ファイバの切断面までの長さ(距離)を計測する。
尚、光源からのパルス光を他方のコネクタ20rから入射させ、そのフレネル反射光を、OTDR22で計測することで同様に、光ファイバ11の切断個所までの距離を計測することもできる。
このようにコンクリート杭18の外周4個所に等角度間隔(90度間隔)で4系列の最大値記憶型光ファイバセンサユニットを配設し、その各系列の出力をOTDRより検出することにより、設置基準角度位置に対し、いかなる角度方向にどの程度のひずみ量の最大値が発生したかを計測することができる。即ち、基本的には、一対のスライド部材2、3間に生じる所定の範囲内の変位に応じていずれかのカッタ部材5により光ファイバ11が切断され、光ファイバ11内を通過する光信号が、光検出器または光パルス試験器としてのOTDR22でもって検出されることで、ひずみ量の変位の最大値を記憶し得るように構成してある。
【0039】
図12は、模擬試験用に製作したコンクリート杭18に3系列の最大値記憶型光ファイバセンサユニットを設置し、コンクリート杭18の上方向(図12において)から負荷Wをかけた場合の負荷試験の状況を示す説明図である。
図12において、長さ10m、直径400mm程度のコンクリート杭18の上側面には、光スイッチの第1チャンネル1chに接続された最大値記憶型光ファイバセンサ19aを、正面の中心面には、光スイッチの第2チャンネル2chに接続された最大値記憶型光ファイバセンサ19bを、下側面には光スイッチの第3チャンネル3chに接続された最大値記憶型光ファイバセンサ19cを、それぞれ上述した要領で設置されているものとする。このコンクリート杭18の両端近傍下方をそれぞれ支持した状態で中央部の上方から下方に向けて集中荷重(曲げ荷重)Wを負荷する。
すると、第1チャンネル1chの最大値記憶型光ファイバセンサ19aには圧縮ひずみが生じ、第3チャンネル3chの最大値記憶型光ファイバセンサ19cには、引張ひずみが生じるが、第2チャンネル2chの最大値記憶型光ファイバセンサは、中立軸にあるので、コンクリート杭18の弾性限界内では殆どひずみを生じない。最大値記憶型光ファイバセンサの標点距離1000mmに対し、最大値記憶型光ファイバセンサに設定される最大値は、300με、1000με、2000μεおよび4000μεで光ファイバが断線するように設定してある。
【0040】
また、コンクリート杭18の表面における第1チャンネル1chの最大値記憶型光ファイバセンサ19a〜第3チャンネル3chの最大値記憶型光ファイバセンサ19cの設置個所に近接して、参照用のひずみゲージ(図示せず)および変位計が取付けられている。
このように配設され且つコンクリート杭18に荷重Wが負荷された状態において、第1チャンネル1chの最大値記憶型光ファイバセンサ19a〜第3チャンネル3chの最大値記憶型光ファイバセンサ19cの3本の光ケーブル10に対し、光スイッチ21からパルス光を入射し、それぞれの光ケーブル10の切断面で反射されたフレネル反射光を光コネクタを介して、OTDR22にて測定する。これと同時に、別途コンクリート杭18に添着されたひずみゲージの抵抗変化に基づく電気量をひずみ測定器で測定し、さらに、コンクリート杭18にクラックが入ってしまうとひずみゲージでは、ひずみ計測不能となるので、別途、設置した変位計により、変位を測定し、最大値記憶型光ファイバセンサの測定結果を検証(比較)するものである。
図13は、最大値記憶型光ファイバセンサ1つ当たりの光ファイバの配線図を示す。この実験においては、1ラインで4レベルのひずみを、ひずみ量の小さい順に切断される様子が測定できるように、光源または測定器(OTDR)から最も遠い位置に、先ず300μεで切断される部分を、次に順次近い位置に1000με、2000μεおよび4000μεで切断される部分をそれぞれ配置したものである。
【0041】
なお、光ファイバの切断の確認は、ファイバ内のフレネル散乱光をOTDRで測定することは、上述した通りである。
OTDRのトレースデータは、縦軸に光強度(dB)をとり、横軸に距離(Kmまたは、m)〕をとった場合において、ファイバ端部でのフレネル反射により大きく立ち上がる(強度が上がる)ので、この立ち上がりの位置を検出することで距離が測定できる。この立ち上がりの位置は、ファイバの破断で端部の位置が1m程度変われば、充分認識することができる。
従って、予め配線の距離を決めておき、何らかの負荷により光ファイバの切断が起こり、配線の距離が変化すれば破断が生じた個所およびひずみレベルを検出することができる。
図14は、コンクリート杭に荷重をかけたときの負荷ステップと負荷(KN.m)との関係を示すグラフである。
図14においては、始めに、クラック発生程度まで負荷をかけ、その後一旦除荷し、その後再度、負荷を加えていき、崩壊荷重まで負荷した負荷ステップの状況を示している。
【0042】
図15は、図14において上述した負荷ステップに対応し、各ラインで何本の光ファイバの破断があったかをプロットした特性図である。
図15は、図12に示した模擬試験の結果を示すものである。この図15から分るように、第1チャンネルの最大値記憶型光ファイバセンサ19aには、圧縮ひずみが生じるため、引張り変位のみに対応する本発明に係る第1の実施の形態の最大値記憶型光ファイバセンサでは、破断は生じていない。
また、側面中間位置に配置した第2チャンネルの最大値記憶型光ファイバセンサ12bは、中立軸であるが、下面にクラックが発生した後は、引張ひずみが発生する。
そして、第3チャンネルの最大値記憶型光ファイバセンサ19cには、当然に引張ひずみが生じるため一番先に破断が発生する。
図16は、図12に示す第2チャンネルの最大値記憶型光ファイバセンサの破断状況を示し、図17は、第3チャンネルの最大値記憶型光ファイバセンサの破断状況をそれぞれ示す特性図である。
【0043】
図16および図17においては、横軸に参照用に設置したひずみゲージ式変位計からの換算ひずみまたはひずみゲージの値、縦軸には、負荷値(KN.m)をとった特性線図を示したものである。この試験においては、負荷ステップが試験の都合上、余り細かいステップとすることができず、ステップ間の範囲が広くなってしまっているが、予定のひずみに近いひずみの最大値で光ファイバの破断が生じていることが実証された。
図18は、本発明の第4の実施の形態に係る最大値記憶型光ファイバセンサユニットの構成を示すもので、(a)は正面図を、(b)は右側面図をそれぞれ示す。
図18に示す最大値記憶型光ファイバセンサユニットは、第1の実施の形態に係る最大値記憶型光ファイバセンサと異なり、圧縮ひずみ(変位)の最大値を記憶し得るように構成されている。
即ち、第1の実施の形態における最大値記憶型光ファイバセンサの取付板13a、13bは、薄板状で構成されているが、これに対応する第4の実施の形態における取付部材24は、相対的に摺動可能に嵌合された一対のビーム24aと24bからなり、それぞれのビーム24aと24bの各一方の端部近傍に、被測定対象物に取付けるための長孔(図示せず)が穿設されている。
【0044】
一方のビーム24aは、固定端25から先端近傍にかけて、円柱状を呈し、先端側(図18において右端側)の一定領域においては上面から中立軸辺りまで断面D字状となるように削成されて、平面部24cが形成されている。
他方のビーム24bは、固定端26に近い部位は、円柱状を呈するが、先端側は、中心部に有底穴が穿設されて、有底円筒部24dが形成されている。
このように形成された取付部材24には、先ず、第1の実施の形態に係る最大値記憶型光ファイバセンサの、例えば、取付部3aが、他方のビーム24bの有底円筒部24dに取付ねじ(図示せず)により固着され、取付部4が一方のビーム24aの平面部24cに取付ねじ(図示せず)により固着されている。
このように構成された第4の実施の形態に係る最大値記憶型光ファイバセンサユニット28は、固定端25と26の間に、圧縮変位が与えられると、第1の実施の形態に係る最大値記憶型光ファイバセンサの取付部3aと取付部4との間に引張力が作用して第1のスライド部材2と第2のスライド部材3の間に相対的移動が生じ、そのひずみ量(変位量)の大きさに応じ、4本のカッタ部材5のテーパ5bが、カッタ押さえ部材6に当設し、ナイフエッジ5aにより光ファイバ11が切断されるように構成されている。
【0045】
このとき、4本設けられたうちの1本乃至は複数本の光ファイバ11が切断されるので、その切断されたチャンネルによって、圧縮ひずみの最大値が記憶されることになる。
このように、最大値記憶型光ファイバセンサ自体は、図1〜図9に示すものと共通に用い、引張ひずみの最大値を記憶することを意図する場合は、図10に示す最大値記憶型光ファイバセンサユニットを使用し、圧縮ひずみの最大値を記憶することを意図する場合は、図18に示す実施の形態の最大値記憶型光ファイバセンサユニット28を使用することができるので、引張ひずみと圧縮ひずみのいずれのひずみ(変位)に対しても選択的に最大ひずみ値を計測することができる。
図19は、本発明の第5の実施の形態に係る最大値記憶型光ファイバセンサユニットの構成を模式的に示す平面図である。
【0046】
図19において、4チャンネルの光ファイバ11が存在するが、このうち、第1チャンネル1chと、第2チャンネル2chについては、第1の実施の形態の最大値記憶型光ファイバセンサの第1番目と第2番目のカッタ部材5に対応して光ファイバ11が配置されるが、第3チャンネル3chおよび第4チャンネル4chは、ひずみの最大値を記憶するセンサとして使用するのではなく、最初および最後の最大値記憶型光ファイバセンサ19−1の位置Xfと最後の最大値記憶型光ファイバセンサ19−10の基準位置Zfにおいて予め光ファイバ11を切断しておくことにより、その近傍における位置を知ることができる。
このように、最初または最後の最大値記憶型光ファイバセンサの基準位置XfまたはZfは、通常は、予め実測して紙などにメモしておけばよいわけであるが、その記録を取り忘れたような場合や最初または最後の最大値記憶型光ファイバセンサの位置に関するデータが紛失してしまうと、いかなる場所の最大値記憶型光ファイバセンサの光ファイバが破損したか把握ができなくなる。これに対し、本発明の第5の実施の形態によれば、最大値記憶型光ファイバセンサの設置位置や距離などを記憶しておく必要がなく、第3チャンネル3chおよび第4チャンネル4chの光ファイバ11の入力端の光ファイバにパルス光を入射させ、その反射光をOTDRにより測定することでOTDRから最初の基準位置Xfまたは最後の基準位置Zfまでの距離を簡単且つ確実に測定することができる。
【0047】
図20〜図22を参照して切断された最大値記憶型光ファイバセンサの位置、即ち基準位置XfまたはZfの位置からの距離を演算する方法について説明する。
図19〜図21において、第1チャンネル1chの最大値記憶型光ファイバセンサにレベル1(例えば、300με)のひずみが印加されたために、第1チャンネル1chの光ファイバ11が切断されたとする。
この切断された光ファイバ11を有する最大値記憶型光ファイバセンサの位置をYfとすると、そのYfの位置は、Yf−Xfのところに存在することが分る。また、そのときのひずみの最大値は、レベル1(300με)であったことが分る。
尚、最初の最大値記憶型光ファイバセンサ19−1の位置の方向から測定した場合は、最初の最大値記憶型光ファイバセンサ19−1から最後の最大値記憶型光ファイバセンサ19−10までの距離は、Zf−Xfである。
また、図19、図20、図22に示すように、最後の最大値記憶型光ファイバセンサ19−10の位置の方向から測定した場合は、レベル1のひずみにより、Xrの位置の最大値記憶型光ファイバセンサの光ファイバが切断されたとしたとき、その位置を、最初の基準位置Yrから測定することができ、つまり、Yr−Xrにて求めることができる。
【0048】
また、図20に示すように、最初のセンサ(Yf−Xf)の個所または最後のセンサ(Yr−Xr)の個所で断線があり、その間の状況が不明であった場合に、もし、上記距離が一致していれば、1個所だけが破断していることが分り、上記距離が一致していなければ、異なる個所で複数の光ファイバが複数断線していることが分る。
このようなシステムに構成しておけば、最大値記憶型光ファイバセンサを設置する際、最初の最大値記憶型光ファイバセンサまでの距離および最後の最大値記憶型光ファイバセンサまでの距離を記録し忘れたり、記録したデータを紛失してしまったような場合でも、何らの支障なく、ひずみの最大値の記憶と光ファイバが切断された位置(距離)を確実に計測することができる。
尚、本発明は、上記の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更ができることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る最大値記憶型光ファイバセンサの第1の実施の形態を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は左側面図、(e)は右側面図である。
【図2】図1に示す最大値記憶型光ファイバセンサの一部を構成する一方のスライド部材である第1のスライド部材の全体構成を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は、図2(b)X−X線矢視方向断面図である。
【図3】図1に示す最大値記憶型光ファイバセンサの一部を構成する他方のスライド部材である第2のスライド部材の全体構成を示すもので、このうち、(a)は、平面図、(b)は、正面図、(c)は、左側面図、(d)は、右側面図である。
【図4】図1に示す最大値記憶型光ファイバセンサの一部を構成する取付部の構成を示すもので、このうち、(a)は、左側面図、(b)は、平面図である。
【図5】図1に示す最大値記憶型光ファイバセンサの一部を構成するカッタ部材の構成を示すもので、このうち、(a)は、平面図、(b)は、正面図である。
【図6】図1に示す最大値記憶型光ファイバセンサの一部を構成するカッタ押さえ部材の構成を示すもので、このうち(a)は、左側面図、(b)は、平面図、(c)は、断面図である。
【図7】図1に示す最大値記憶型光ファイバセンサの一部を構成するファイバ整列部材の構成を示すもので、このうち、(a)は、左側面図、(b)は、平面図である。
【図8】図1に示す最大値記憶型光ファイバセンサの一部を構成するケーブル押さえ部材の構成を示すもので、このうち、(a)は、平面図、(b)は、正面図、(c)は、右側面図である。
【図9】図1では省略してあるが、最大値記憶型光ファイバセンサを構成するカバー部材の構成を示すもので、(a)は、平面図、(b)は、正面図、(c)は、右側面図である。
【図10】本発明の最大値記憶型光ファイバセンサユニットに係る第2の実施の形態の全体構成を示すもので、このうち、(a)は、正面図、(b)は、平面図である。
【図11】土中に埋設されたコンクリート杭に最大値記憶型光ファイバセンサを設置した状態の第3の実施の形態の最大値記憶型光ファイバセンサシステムの構成を模式的に示すもので、このうち、(a)は断面図、(b)はコンクリート杭の左側面図である。
【図12】模擬試験用に製作したコンクリート杭に最大値記憶型光ファイバセンサユニットを設置して、コンクリート杭に曲げ負荷をかけた場合の負荷試験の状況を示す説明図である。
【図13】最大値記憶型光ファイバセンサ1つ当たりの光ファイバの配線図である。
【図14】コンクリート杭に荷重をかけたときの負荷ステップと負荷(KN.m)との関係を示すグラフである。
【図15】図14において上述した負荷ステップに対応し、各ラインで何本の光ファイバの破断があったかをプロットした特性図である。
【図16】図12に示す第2チャンネルの最大値記憶型光ファイバセンサの破断状況を示す特性図である。
【図17】第3チャンネルの最大値記憶型光ファイバセンサの破断状況をそれぞれ示す特性図である。
【図18】本発明の第4の実施の形態に係る最大値記憶型光ファイバセンサユニットの構成を示すもので、(a)は正面図を、(b)は右側面図をそれぞれ示す。
【図19】本発明の第5の実施の形態に係る最大値記憶型光ファイバセンサユニットの構成を模式的に示す平面図である。
【図20】図19に示す本発明の第5の実施の形態に係る最大値記憶型光ファイバセンサユニットにより光ファイバの断線位置を検出することを説明するための説明図である。
【図21】図19に示す最大値記憶型光ファイバセンサの作用を説明するための説明図である。
【図22】図19に示す最大値記憶型光ファイバセンサの作用を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1 最大値記憶型光ファイバセンサ
2 第1のスライド部材
2a 平坦部
2b 一方の軸部
2c 他方の軸部
3 第2のスライド部材
3a 取付部
3b 軸受部
3c 雌ねじ部
3k 軸孔
3m 貫通孔
3n 切欠き
3p 切欠き
4 取付部
4a 貫通孔
5 カッタ部材
5a ナイフエッジ
5b テーパ部
5c ビーム部
5d 基端部
6 カッタ押さえ部材
6a 櫛歯部
6b テーパ部
7 ファイバ整列部材
7a 凹溝
8 ケーブル押さえ部材
9 カバー部材
10 光ケーブル
11 光ファイバ
12 ストッパねじ部材
13a、13b 取付板
14 取付ねじ(ケーブル押え8用)
15 取付ねじ(ファイバ整列部材7用)
16 取付ねじ(カッタ部材5用)
17 取付ねじ(カッタ押さえ部材6用)
18 コンクリート杭
19、19a、19b、19c 最大値記憶型光ファイバセンサユニット
20 取付ボルト
20a、20b コネクタ
21 光スイッチ
22 OTDR
23 最大値記憶型光ファイバセンサ
24 取付部材
24a、24b 一対のビーム
25、26 固定端
28 最大値記憶型光ファイバセンサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に移動可能なるように構成された一対のスライド部材と、
一方の前記スライド部材に並列状に取付けられた複数のカッタ部材と、
前記複数のカッタ部材に対応するように前記一方のスライド部材上に並列状に配置されると共に、内部を通過する光信号を検出可能な光検出器に対し連結可能な複数本の光ファイバと、
前記複数のカッタ部材に対応するように他方のスライド部材上に配置され、前記複数のカッタ部材に対し、異なる最大ひずみ量で個々の光ファイバを切断するように、前記カッタ部材の移動量に応じて所定の移動間隔で順次、前記カッタ部材に押し切り作用を生じさせるカッタ押さえ部材と、
を有し、前記一対のスライド部材間に生じる所定の範囲内の変位に応じていずれかの前記カッタ部材により前記光ファイバが切断され、前記光ファイバ内を通過する光信号が、前記光検出器でもって検出されることで前記ひずみ量の変位の最大値を記憶し得るように構成したことを特徴とする最大値記憶型光ファイバセンサ。
【請求項2】
前記複数のカッタ部材は、基端側が前記一方のスライド部材に固定された片持ビーム状を呈し、その先端側の一方の面側にはナイフエッジが形成され、他方の面側にはテーパ部が形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の最大値記憶型光ファイバセンサ。
【請求項3】
前記カッタ押さえ部材は、複数のカッタ部材の先端に形成された前記テーパ部の移動域に対応させて複数の前記テーパ部に順次当接し得るように配置され、前記ナイフエッジの水平変位を、垂直変位に拡大して伝達し得るように、所定の段差を付してなる櫛歯部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の最大値記憶型光ファイバセンサ。
【請求項4】
前記複数本の光ファイバを並列状に整列させるファイバ整列部材が、前記カッタ部材に近接して前記他方のスライド部材上に配設されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の最大値記憶型光ファイバセンサ。
【請求項5】
前記一方のスライド部材の一端および前記他方のスライド部材の他端には、被測定対象物の二点間の変位を検出すべく、前記被測定対象物に直接または間接に取り付けるための取付部がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の最大値記憶型光ファイバセンサ。
【請求項6】
前記一方および他方の前記取付部には、前記光ファイバを内部に有する光ケーブルを挿通した状態で前記光ケーブルを押さえるためのケーブル押さえ部材が取付けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの項に記載の最大値記憶型光ファイバセンサ。
【請求項7】
前記一方のスライド部材と他方のスライド部材との間の初期位置を調整するためのストッパねじ部材が、前記他方のスライド部材に形成された雌ねじ部に螺合されていることを特徴する請求項1〜6のいずれかの項に記載の最大値記憶型光ファイバセンサ。
【請求項8】
相対的に移動可能なるように構成された一対のスライド部材と、
一方の前記スライド部材に並列状に取付けられた複数のカッタ部材と、
前記複数のカッタ部材に対応するように前記一方のスライド部材上に並列状に配置されると共に、内部を通過する光信号を検出可能な光検出器に対し連結可能な複数本の光ファイバと、
前記カッタ部材から外れた位置に切断された状態で固定されると共に、内部を通過可能な光信号を検出可能な光検出器に対し連結可能な少なくとも1本の基準位置測定用光ファイバと、
前記複数のカッタ部材に対応するように他方のスライド部材上に配置され、前記複数のカッタ部材に対し、前記カッタ部材の移動量に応じて所定の移動間隔で順次、前記カッタ部材に押し切り作用を生じさせるカッタ押さえ部材と、
を有し、前記一対のスライド部材間に生じる所定の範囲内の変位に応じていずれかの前記カッタ部材により前記光ファイバが切断され、光ファイバ内を通過する光信号が、前記光検出器でもって検出されることで、前記ひずみ量の変位の最大値を記憶し得ると共に前記基準位置測定用光ファイバが設置された基準位置を測定し得るように構成したことを特徴とする最大値記憶型光ファイバセンサ。
【請求項9】
帯状を呈し、各基端に前記光ファイバセンサの各取付部に取付けるためのねじ穴が穿設された一対の取付板に、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載された最大値記憶型光ファイバセンサが取付けられ、前記一対の取付板の間に取外し可能に且つ前記取付板に引張方向の変位が負荷されたとき前記最大値記憶型光ファイバセンサに引張力が作用するように構成されていることを特徴とする最大値記憶型光ファイバセンサユニット。
【請求項10】
相対的に摺動可能に嵌合された一対のビームからなり、前記一対のビームの各一方の端部近傍に被測定対象物に取付けるための長孔が穿設された剛性大なる取付部材を備え、
請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載された最大値記憶型光ファイバセンサの一端および他端が、前記一対のビームの一方および他方の間に取付けられ、且つ前記一対のビームに圧縮方向の変位が負荷されたとき前記最大値記憶型ファイバセンサに引張力が作用するように構成したことを特徴とする最大値記憶型光ファイバセンサユニット。
【請求項11】
最大値記憶型光ファイバセンサユニットとして、請求項9に記載の複数の最大値記憶型光ファイバセンサユニットが、縦列状に互いに連結され且つ当該連結部が被測定対象物に固定されてなり、
前記複数の最大値記憶型光ファイバセンサユニットの同ひずみレベル測定用の光ファイバは、1本乃至は光コネクタで縦列状に連結されて実質上1本の光ファイバとして構成され、
前記それぞれの光ファイバの一端からパルス光を入射し、前記光ファイバの他端から戻ってくる反射光を光パルス試験器で測定することにより、何らかの負荷により前記光ファイバのいずれかが切断したときの切断箇所およびひずみレベルを検出し得るように構成されたことを特徴とする最大値記憶型光ファイバセンサシステム。
【請求項12】
最大値記憶型光ファイバセンサユニットとして、請求項10に記載の複数の最大値記憶型光ファイバセンサユニットが、縦列状に互いに連結され且つ当該連結部が被測定対象物に固定されてなり、
前記複数の最大値記憶型光ファイバセンサユニットの同じひずみレベル測定用の光ファイバは、1本乃至は光コネクタで縦列状に連結されて実質上1本の光ファイバとして構成され、
前記それぞれの光ファイバの一端からパルス光を入射し、前記光ファイバの他端から戻ってくる反射光をOTDRの如き光パルス試験器で測定することにより、何らかの負荷により前記光ファイバのいずれかが切断したときの切断個所およびひずみレベルを検出し得るように構成されたことを特徴とする最大値記憶型光ファイバセンサシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2007−198756(P2007−198756A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−14487(P2006−14487)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年7月31日 社団法人日本建築学会発行の「2005年度大会(近畿)学術講演梗概集B−2分冊」に発表
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【出願人】(501267357)独立行政法人建築研究所 (28)
【出願人】(000142067)株式会社共和電業 (52)
【出願人】(000176512)三谷セキサン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】