説明

有機エレクトロルミネッセンス素子および高分子発光体組成物

【課題】素子寿命の長い有機EL素子、およびこの有機EL素子に用いられる高分子発光体組成物を提供することにある。
【解決手段】一対の電極と、該電極間に設けられる発光層とを備える有機EL素子において、前記発光層は、下記化合物(I)〜(IV)およびこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種以上の化合物と、第1の高分子発光体とを含有する発光層、前記化合物(I)〜(IV)およびこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種以上の化合物の2価の残基を、繰り返し単位として有する第2の高分子発光体を含有する発光層である、有機EL素子。
(I)ペリレン若しくはナフタレンのテトラカルボン酸ジイミド
(II)ペリレン若しくはナフタレンのテトラカルボン酸二無水物
(III)ペリレン若しくはナフタレンのテトラカルボン酸ビスイミダゾール
(IV)ペリレン若しくはナフタレンのテトラカルボン酸ビスピリミジン

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ということがある。)、この有機EL素子に用いられる高分子発光体組成物、及び発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、陽極および陰極からなる一対の電極と、該電極間に設けられる発光層とを備える。有機EL素子に電圧を印加すると、陽極から正孔が注入されるとともに陰極から電子が注入され、これら正孔と電子とが結合することによって発光する。
【0003】
有機EL素子の発光層には、発光体として有機物が用いられている。発光層に用いられる有機物を高分子発光体と低分子発光体とに大別すると、高分子発光体は、低分子発光体と比べると比較的溶媒に溶け易いため、乾式法よりも成膜工程が簡易な湿式法に適した発光材料である。そのため近年種々の高分子発光体が提案されている(例えば非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Advanced Materials Vol.12 1737-1750 (2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発光素子として種々の発光装置に使用される有機EL素子には、素子寿命のさらなる向上が求められている。そのため本発明の目的は、素子寿命の長い有機EL素子、およびこの有機EL素子に用いられる高分子発光体組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の有機エレクトロルミネッセンス素子および高分子発光体組成物等を提供する。
【0007】
<1> 一対の電極と、該電極間に設けられる発光層とを備える有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記発光層は、
下記化合物(I)〜(IV)およびこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種以上の化合物と、第1の高分子発光体とを含有する発光層、または、
前記化合物(I)〜(IV)およびこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種以上の化合物の2価の残基を、繰り返し単位として有する第2の高分子発光体を含有する発光層である、有機エレクトロルミネッセンス素子。
(I)ペリレン若しくはナフタレンのテトラカルボン酸ジイミド
(II)ペリレン若しくはナフタレンのテトラカルボン酸二無水物
(III)ペリレン若しくはナフタレンのテトラカルボン酸ビスイミダゾール
(IV)ペリレン若しくはナフタレンのテトラカルボン酸ビスピリミジン
【0008】
<2> 前記化合物(I)〜(IV)の誘導体が高分子化合物である<1>に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0009】
<3> 前記第1および第2高分子発光体が共役系高分子である、<1>または<2>に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0010】
<4> 前記第1および第2高分子発光体が、非置換又は置換のフルオレンジイル基、及び非置換又は置換のベンゾフルオレンジイル基からなる群から選ばれる1種以上のジイル基を繰り返し単位として有する高分子発光体である、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0011】
<5> 前記発光層における前記化合物(I)〜(IV)およびこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種以上の化合物の含有量が、前記高分子発光体を100重量部としたときに0.001〜5重量部である、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0012】
<6> 前記発光層における前記化合物(I)〜(IV)およびこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種以上の化合物の含有量が、前記高分子発光体を100重量部としたときに0.01〜1重量部である<1>〜<5>のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0013】
<7> <1>〜<6>のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備える発光装置。
【0014】
<8> 下記(I)〜(IV)およびこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種以上の化合物と、第1の高分子発光体とを含有する、または、
前記化合物(I)〜(IV)およびこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種以上の化合物の2価の残基を、繰り返し単位として有する第2の高分子発光体を含有する、高分子発光体組成物。
(I)ペリレン若しくはナフタレンのテトラカルボン酸ジイミド
(II)ペリレン若しくはナフタレンのテトラカルボン酸二無水物
(III)ペリレン若しくはナフタレンのテトラカルボン酸ビスイミダゾール
(IV)ペリレン若しくはナフタレンのテトラカルボン酸ビスピリミジン
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、素子寿命の向上した有機EL素子を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の有機EL素子は、一対の電極と、該電極間に設けられる発光層とを備え、前記発光層は、下記化合物(I)〜(IV)およびこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種以上の化合物と、第1の高分子発光体とを含有する。
(I)ペリレン若しくはナフタレンのテトラカルボン酸ジイミド
(II)ペリレン若しくはナフタレンのテトラカルボン酸二無水物
(III)ペリレン若しくはナフタレンのテトラカルボン酸ビスイミダゾール
(IV)ペリレン若しくはナフタレンのテトラカルボン酸ビスピリミジン
【0017】
なお発光層は、上記化合物と第1の高分子発光体との2種類の化合物を含有する場合に限らず、前記化合物(I)〜(IV)およびこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種以上の化合物の2価の残基を、繰り返し単位として有する第2の高分子発光体を含有する発光層であってもよい。さらには、発光層は、第2の高分子発光体と、この第2の高分子発光体に加えて、第2の高分子発光体とは異なる高分子発光体を含んでいてもよい。以下では第1および第2の高分子発光体について、これらを総称する場合、「第1」または「第2」を明示せずに単に高分子発光体ということがある。本発明に用いる高分子発光体のポリスチレン換算の数平均分子量は、膜形成能、溶剤への溶解性の観点から、103〜108程度であることが好ましく、103〜106程度であることがより好ましい。また前記共役系高分子のポリスチレン換算の重量平均分子量は、103〜10であることが好ましく、10〜106であることがより好ましい。
【0018】
発光層は上記複数種類の化合物のうちの1種類の化合物のみを含有していてもよく、また複数種類の化合物を含有していてもよい。前記化合物(I)〜(IV)の誘導体としては、化合物(I)〜(IV)の炭素原子および窒素原子などの所定の原子に、複素環基、アリールアルキル基、後記式(1)、(2)の項で説明するアルキル基、アリール基、アルコキシ基などの所定の置換基が結合した化合物があげられる。
【0019】
複素環基の炭素数は通常4〜60程度である。複素環基の中では芳香族複素環基が好ましい。
【0020】
複素環基の具体例としては、チエニル基、C1〜C12アルキルチエニル基(C1〜C12は、炭素数1〜12であることを示す。以下も同様である。)、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、C1〜C12アルキルピリジル基、チアゾリル基、C1〜C12アルキルチアゾリル基、キノリル基などがあげられる。
【0021】
アリールアルキル基の炭素数は通常7〜60程度である。
【0022】
アリールアルキル基の具体例としては、フェニルメチル基、フェニルエチル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基などのフェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル基、1−ナフチル−C1〜C12アルキル基、2−ナフチル−C1〜C12アルキル基などがあげられる。
【0023】
発光層に含まれるペリレン又はナフタレンのテトラカルボン酸ジイミド、およびその誘導体の具体的構造としては以下の化合物、および以下の化合物の芳香環上の水素原子1個以上を置換基または、フッ素、塩素、臭素などのハロゲン原子で置き換えて得られる化合物等があげられる。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基、アリールアルキル基があげられる。これらの基に含まれる水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。アルキル基、アルコキシ基、アリール基の定義およびその具体例等は、後述の式(1)、式(2)におけるこれらの基の定義およびその具体例等と同様である。複素環基、アリールアルキル基の定義およびその具体例等は、前記と同様である。

【0024】
発光層に含まれるペリレン又はナフタレンのテトラカルボン酸二無水物、およびその誘導体の具体的構造としては以下の化合物、および以下の化合物の芳香環上の水素原子1個以上を、置換基または、フッ素、塩素、臭素などのハロゲン原子で置き換えて得られる化合物等があげられる。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基、アリールアルキル基があげられる。これらの基に含まれる水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。アルキル基、アルコキシ基、アリール基の定義、具体例等は、後述の式(1)、式(2)におけるこれらの基の定義、具体例等と同様である。また複素環基、アリールアルキル基の定義およびその具体例等は、前記と同様である。

【0025】
発光層に含まれるペリレン又はナフタレンのテトラカルボン酸ビスイミダゾール、およびその誘導体の具体的構造としては以下の化合物および以下の化合物の芳香環上の水素原子1個以上を、置換基または、フッ素、塩素、臭素などのハロゲン原子で置き換えて得られる化合物等があげられる。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基、アリールアルキル基があげられる。これらの基に含まれる水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。アルキル基、アルコキシ基、アリール基の定義およびその具体例等は、後述の式(1)、式(2)におけるこれらの基の定義およびその具体例等と同様である。複素環基、アリールアルキル基の定義およびその具体例等は、前記と同様である。


【0026】
発光層に含まれるペリレン又はナフタレンのテトラカルボン酸ビスピリミジン、およびその誘導体の具体的構造としては以下の化合物および以下の化合物の芳香環上の水素原子1個以上を、置換基または、フッ素、塩素、臭素などのハロゲン原子で置き換えて得られる化合物等があげられる。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基またはアリール基、複素環基、アリールアルキル基があげられる。これらの基に含まれる水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。アルキル基、アルコキシ基、アリール基の定義およびその具体例等は、後述の式(1)、式(2)におけるこれらの基の定義、具体例等と同様である。複素環基、アリールアルキル基の定義およびその具体例等は、前記と同様である。

【0027】
また前記化合物(I)〜(IV)の誘導体は、低分子化合物に限らず、高分子化合物であってもよい。高分子化合物としては、前記化合物(I)〜(IV)およびこれらの誘導体の2価の残基のうちの少なくとも1つの残基を、繰り返し単位として有する高分子化合物があげられる。前記化合物(I)〜(IV)およびこれらの誘導体の2価の残基とは、化合物(I)〜(IV)およびこれらの誘導体から、これらの化合物を構成する炭素原子や窒素原子に結合する2つの水素原子を除いた2価の基を意味する。このような繰り返し単位、すなわち前記化合物(I)〜(IV)およびこれらの誘導体の2価の残基の具体的な構造としては、以下の残基および以下の残基の芳香環上の水素原子1個以上を、置換基または、フッ素、塩素、臭素などのハロゲン原子で置き換えて得られる残基等があげられる。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基またはアリール基があげられる。これらの基に含まれる水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。アルキル基、アルコキシ基、アリール基の定義およびその具体例等は、後述の式(1)、式(2)におけるこれらの基の定義およびその具体例等と同様である。複素環基、アリールアルキル基の定義およびその具体例等は、前記と同様である。


なお各構造式において、括弧記号に交差する直線、すなわち括弧記号”(”、または括弧記号”)”に交差する直線は、それぞれ結合手を表す。
【0028】
次に本発明に用いる高分子発光体について説明する。本発明に用いる高分子発光体は、単独重合体であっても共重合体でもよい。また本発明に用いる高分子発光体は、共役系高分子でも非共役系高分子でもよく、共役系高分子であるものが好ましい。
【0029】
本発明に用いる高分子発光体は、非置換又は置換のフルオレンジイル基、及び非置換又は置換のベンゾフルオレンジイル基からなる群から選ばれる1種以上のジイル基を繰り返し単位として有することが好ましい。
【0030】
非置換又は置換のフルオレンジイル基としてはたとえば下記式(1)で表されるジイル基があげられる。

(1)
(式(1)中、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基またはアリール基を表す。これらの基に含まれる水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。)
【0031】
非置換又は置換のベンゾフルオレンジイル基としては下記式(2)で表されるジイル基があげられる。

(2)
(式(2)中、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17およびR18は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基またはアリール基を表す。これらの基に含まれる水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。)
【0032】
式(1)、(2)中のR〜R18で表されるアルキル基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、シクロアルキル基でもよい。アルキル基の炭素数は通常1〜20程度である。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基、3−メチルブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、n−ラウリル基等があげられる。前記アルキル基中の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよく、その例としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基等があげられる。
【0033】
式(1)、(2)中のR〜R18で表されるアルコキシ基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、シクロアルキルオキシ基であってもよい。アルコキシ基の炭素数は通常1〜20程度である。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、n−ラウリルオキシ基等があげられる。前記アルコキシ基中の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよく、その例としては、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基等があげられる。
【0034】
式(1)、(2)中のR〜R18で表されるアリール基としては、芳香族炭化水素から、水素原子1個を除いた原子団であり、縮合環を持つもの、独立したベンゼン環又は縮合環2個以上が直接又はビニレン等の基を介して結合したものも含まれる。アリール基は、炭素数が通常6〜60程度であり、好ましくは6〜48である。前記アリール基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状のアルキル基又は炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状のアルキル基又は炭素数3〜20のシクロアルキル基をその構造中に含むアルコキシ基、下記式(3)で表される基があげられる。アリール基の具体例としては、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、ペンタフルオロフェニル基等が挙げられ、C1〜C12アルコキシフェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基が好ましい。C1〜C12アルコキシフェニル基として具体的には、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、n−プロピルオキシフェニル基、イソプロピルオキシフェニル基、n−ブトキシフェニル基、イソブトキシフェニル基、s−ブトキシフェニル基、t−ブトキシフェニル基、n−ペンチルオキシフェニル基、n−ヘキシルオキシフェニル基、シクロヘキシルオキシフェニル基、n−ヘプチルオキシフェニル基、n−オクチルオキシフェニル基、2−エチルヘキシルオキシフェニル基、n−ノニルオキシフェニル基、n−デシルオキシフェニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシフェニル基、n−ラウリルオキシフェニル基等があげられる。C1〜C12アルキルフェニル基として具体的にはメチルフェニル基、エチルフェニル基、ジメチルフェニル基、n−プロピルフェニル基、メシチル基、メチルエチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、イソブチルフェニル基、s−ブチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、n−ペンチルフェニル基、イソアミルフェニル基、ヘキシルフェニル基、n−ヘプチルフェニル基、n−オクチルフェニル基、n−ノニルフェニル基、n−デシルフェニル基、n−ドデシルフェニル基等があげられる。前記アリール基中の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。

(3)
(式(3)中、gは1〜6の整数を表し、hは0〜5の整数を表す。)
【0035】
有機溶媒への溶解性の観点からは、式(1)、(2)中のR、R2、RおよびR10は、アルキル基、アルコキシ基またはアリール基であることが好ましく、アルキル基またはアリール基であることがより好ましい。
【0036】
式(1)で表されるジイル基としては、例えば下記のジイル基があげられる。

【0037】
式(2)で表されるジイル基としては、例えば下記のジイル基があげられる。

【0038】
前記共役系高分子は、(1)二重結合と単結合とが交互に並んだ構造から実質的になる高分子、(2)二重結合と単結合とが窒素原子を介して並んだ構造から実質的になる高分子、(3)二重結合と単結合とが交互に並んだ構造及び二重結合と単結合とが窒素原子を介して並んだ構造から実質的になる高分子等を意味し、本明細書においては具体的には、非置換又は置換のフルオレンジイル基、及び非置換又は置換のベンゾフルオレンジイル基からなる群から選ばれる1種以上のジイル基を少なくとも繰り返し単位として有し、該繰り返し単位同士が直接又は連結基を介して結合した高分子である。なお共役系高分子は、非置換又は置換のフルオレンジイル基、及び非置換又は置換のベンゾフルオレンジイル基からなる群から選ばれる1種以上に加えて、例えばジベンゾフランジイル基、非置換又は置換のジベンゾチオフェンジイル基、非置換又は置換のカルバゾールジイル基、非置換又は置換のチオフェンジイル基、非置換又は置換のフランジイル基、非置換又は置換のピロールジイル基、非置換又は置換のベンゾチアジアゾールジイル基、非置換又は置換のフェニレンビニレンジイル基、非置換又は置換のチエニレンビニレンジイル基、及び非置換又は置換のトリフェニルアミンジイル基からなる選ばれる一種又は二種以上を繰り返し単位として有していてもよく、前述の非置換又は置換のフルオレンジイル基、及び非置換又は置換のベンゾフルオレンジイル基に加えて、これらの繰り返し単位同士が直接又は連結基を介して結合した高分子でもよい。
【0039】
前記共役系高分子において、前記繰り返し単位同士が連結基を介して結合している場合、該連結基としては、例えば、フェニレン、ビフェニレン、ナフタレンジイル、アントラセンジイル等があげられる。
【0040】
第1および第2の高分子発光体のうちの第1の高分子発光体は、前記化合物(I)〜(IV)およびこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種以上の化合物の2価の残基を有さないが、第2の高分子発光体は、化合物(I)〜(IV)およびこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種以上の化合物の2価の残基を、繰り返し単位として有する。このような2価の残基としては上述した2価の残基をあげることができる。第2の高分子発光体は、化合物(I)〜(IV)およびこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種以上の化合物の2価の残基を、繰り返し単位として有し、さらには他の2価の基を繰り返し単位として有していてもよく、たとえば上述した、非置換又は置換のフルオレンジイル基、及び非置換又は置換のベンゾフルオレンジイル基からなる群から選ばれる1種以上のジイル基を繰り返し単位として有していてもよい。
【0041】
前記共役系高分子の数平均分子量は、膜形成能、溶剤への溶解性の観点から、ポリスチレン換算で103〜108程度であることが好ましく、ポリスチレン換算で103〜106程度であることがより好ましい。また前記共役系高分子の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で103〜10であることが好ましく、ポリスチレン換算で10〜106であることがより好ましい。
【0042】
前記共役系高分子が非置換又は置換のフルオレンジイル基および/または非置換又は置換のベンゾフルオレンジイル基を含む場合、この共役系高分子を構成する、非置換又は置換のフルオレンジイル基と、非置換又は置換のベンゾフルオレンジイル基との合計分子量の、共役系高分子における割合は、共役系高分子の分子量を1とすると、通常0.3以上であり、好ましくは0.5以上である。
また第2の高分子発光体を構成する、化合物(I)〜(IV)およびこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種以上の化合物の2価の残基の合計分子量の、第2の高分子発光体における割合は、第2の高分子発光体を1とすると、通常0.0001〜1.0であり、より好ましくは0.0001〜0.5であり、さらに好ましくは0.001〜0.2である。
【0043】
本発明に用いる高分子発光体は公知の重合方法により製造することができる。
例えば、共役系高分子である高分子発光体は、用いる重合反応に適した官能基を有する単量体を合成した後に、必要に応じて、有機溶媒に溶解し、例えば、アルカリや適当な触媒、配位子を用いた公知のアリールカップリング等の重合方法を用いて重合することにより合成することができる。
【0044】
アリールカップリングによる重合方法は、特に限定されない。前記重合反応に適した官能基としては、例えば、ホウ酸基又はホウ酸エステル基を有するモノマーと、官能基として臭素原子、ヨウ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、又はトリフルオロメタンスルホネート基、p-トルエンスルホネート基等のスルホネート基を有するモノマーとを炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸三カリウム、フッ化カリウム等の無機塩基、フッ化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム等の有機塩基の存在下、パラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、[トリス(ジベンジリデンアセトン)]ジパラジウム、パラジウムアセテート、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロライド、ビス(シクロオクタジエン)ニッケル等のPd若しくはNi錯体と、必要に応じ、さらにトリフェニルホスフィン、トリ(2−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(2-メトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィノプロパン、トリ(シクロヘキシル)ホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィン等の配位子とからなる触媒を用いたSuzukiカップリング反応により重合する方法;ハロゲン原子又はトリフルオロメタンスルホネート基等のスルホネート基を有するモノマー同士をビス(シクロオクタジエン)ニッケル等のニッケルゼロ価錯体とビピリジル等の配位子からなる触媒を用い、若しくは[ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケルジクロライド、[ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケルジクロライド等のNi錯体と、必要に応じ、さらにトリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィノプロパン、トリ(シクロヘキシル)ホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィン等の配位子とからなる触媒と亜鉛、マグネシウム等の還元剤を用い、必要に応じて脱水条件で反応させる、Yamamotoカップリング反応により重合する方法;ハロゲン化マグネシウム基を有する化合物とハロゲン原子を有する化合物とを[ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケルジクロライド、[ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケルジクロライド等のNi触媒を用い、脱水条件で反応させる、アリールカップリング反応により重合するKumada−Tamaoカップリング反応により重合する方法、水素原子を官能基として、FeCl3等の酸化剤により重合する方法、電気化学的に酸化重合する方法等があげられる。
【0045】
反応溶媒は、用いる重合反応、モノマー及びポリマーの溶解性等を考慮して選択される。具体的には、テトラヒドロフラン、トルエン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、それらの2種以上の混合溶媒等の有機溶媒、又はそれらと水との二相系が例示される。
【0046】
Suzukiカップリング反応においては、テトラヒドロフラン、トルエン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、それらの2種以上の混合溶媒等の有機溶媒、又はそれらと水との二相系が好ましい。反応溶媒は一般に副反応を抑制するために、脱酸素処理を行うことが好ましい。
【0047】
Yamamotoカップリング反応においては、テトラヒドロフラン、トルエン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、それらの2種以上の混合溶媒等の有機溶媒が好ましい。反応溶媒は一般に副反応を抑制するために、脱酸素処理を行うことが好ましい。
【0048】
前記アリールカップリング反応の中でも、反応性の観点から、Suzukiカップリング反応、Yamamotoカップリング反応が好ましく、Suzukiカップリング反応とニッケルゼロ価錯体を用いたYamamotoカップリング反応がより好ましい。Suzukiカップリングによる重合に関してより詳細には、例えば、Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.39,1533−1556(2001)に記載されている公知の方法を参考にできる。Yamamotoカップリングによる重合に関しては、例えば、Macromolecules 1992,25,1214−1223に記載されている公知の方法を参考にできる。
【0049】
これらの反応における反応温度は、反応溶液が液状を保つ温度範囲であれば、特に限定されるものではないが、その下限は、反応性の観点から、好ましくは−100℃、より好ましくは−20℃、特に好ましくは0℃であり、その上限は、前記共役系高分子及び前記式(1)または式(2)で表される化合物の安定性の観点から、好ましくは200℃、より好ましくは150℃、特に好ましくは120℃である。
【0050】
前記共役系高分子の取り出しは公知の方法に準じて行うことができる。例えば、メタノール等の低級アルコールに反応溶液を加えて析出させた沈殿をろ過、乾燥することにより、前記共役系高分子を得ることができる。得られた共役系高分子の純度が低い場合は、再結晶、ソックスレー抽出器による連続抽出、カラムクロマトグラフィー等の通常の方法にて精製することができる。
【0051】
本発明の高分子発光体組成物は、前記化合物(I)〜(IV)およびこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種以上の化合物と、前記第1の高分子発光体とを含有する。高分子発光体組成物は、前記化合物(I)〜(IV)およびこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種以上の化合物と、前記第1の高分子発光体とに加えて、溶媒または分散媒をさらに含有していてもよく、前記化合物(I)〜(IV)およびこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種以上の化合物と、第1の高分子発光体とが溶媒に溶解した、または分散媒に分散した液体状の組成物であってもよい。
【0052】
また高分子発光体組成物は、前記第2の高分子発光体のみを含有していてもよく、第2の高分子発光組成物と、他の成分、たとえば第1の高分子発光体とを含有していてもよい。また高分子発光体組成物は、前記第2の高分子発光体に加えて溶媒または分散媒をさらに含有していてもよい。
【0053】
前記溶媒は、前記化合物(I)〜(IV)およびこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種以上の化合物と、前記第1の高分子発光体とを均一に溶解乃至分散でき安定なものを、公知の溶媒から適宜選択して使用できる。また前記溶媒は、第2の高分子発光体を均一に溶解乃至分散でき安定なものを、公知の溶媒から適宜選択して使用できる。このような溶媒としては、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、有機塩素類(クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン等)、脂肪族炭化水素類(ノルマルヘキサン、シクロヘキサン等)、アミド類(ジメチルホルムアミド等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)等があげられる。これらの溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0054】
前記発光層における前記化合物(I)〜(IV)およびこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種以上の化合物の含有量は、前記第1の高分子発光体を100重量部としたときに通常、0.001〜10重量部であり、好ましくは0.001〜5重量部であり、さらに好ましくは0.01〜1重量部であり、さらに好ましくは0.05重量部〜1重量部である。
【0055】
また前記発光層における第2の高分子発光体の含有量は、発光層を100重量部としたときに通常、0.001〜100重量部であり、好ましくは0.001〜20重量部であり、さらに好ましくは0.001〜10重量部であり、さらにより好ましくは0.01〜5重量部である。
【0056】
本発明の高分子発光体組成物が溶媒を含有する場合、高分子発光体組成物を100重量部とすると溶媒は、90〜99.9重量部程度であり、たとえば前記化合物(I)〜(IV)およびこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種以上の化合物と、前記第1の高分子発光体との合計量100重量部に対して、高分子発光体組成物における溶媒の量は、通常、1000〜100000重量部程度である。
【0057】
本発明の高分子発光体組成物は、電荷輸送性、電荷注入性を損なわない範囲で、前記化合物(I)〜(IV)およびこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種以上の化合物と、前記第1の高分子発光体とに加えて、他の成分を含んでいてもよい。高分子発光体組成物またはこれを用いて形成された発光層中において、前記化合物(I)〜(IV)およびこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種以上の化合物と、第1の高分子発光体との合計量は、高分子発光体組成物または発光層100重量部に対して通常30重量部以上であり、50重量部以上が好ましく、70重量部以上がさらに好ましい。
【0058】
本発明の有機EL素子は、前述したように陽極および陰極からなる一対の電極と、該電極間に設けられる発光層とを備える。発光層は、前記化合物(I)〜(IV)およびこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種以上の化合物と、第1の高分子発光体とを含有する発光層、または、前記化合物(I)〜(IV)およびこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種以上の化合物の2価の残基を、繰り返し単位として有する第2の高分子発光体を含有する発光層である。
【0059】
有機EL素子は、電極間に発光層に加えて所定の層を備えていてもよい。
【0060】
陰極と発光層との間に設けられる層としては、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層などを挙げることができる。陰極と発光層との間に電子注入層と電子輸送層との両方の層が設けられる場合、陰極に接する層を電子注入層といい、この電子注入層を除く層を電子輸送層という。電子注入層は、陰極からの電子注入効率を改善する機能を有する。電子輸送層は陰極側の表面に接する層からの電子注入を改善する機能を有する。正孔ブロック層は、正孔の輸送を堰き止める機能を有する。なお電子注入層、及び/又は電子輸送層が正孔の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層が正孔ブロック層を兼ねることがある。正孔ブロック層が正孔の輸送を堰き止める機能を有することは、例えばホール電流のみを流す素子を作製し、その電流値の減少で堰き止める効果を確認することが可能である。
【0061】
陽極と発光層との間に設けられる層としては、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層などを挙げることができる。陽極と発光層との間に、正孔注入層と正孔輸送層との両方の層が設けられる場合、陽極に接する層を正孔注入層といい、この正孔注入層を除く層を正孔輸送層という。正孔注入層は、陽極からの正孔注入効率を改善する機能を有する。正孔輸送層は陽極側の表面に接する層からの正孔注入を改善する機能を有する。電子ブロック層は、電子の輸送を堰き止める機能を有する。なお正孔注入層、及び/又は正孔輸送層が電子の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層が電子ブロック層を兼ねることがある。電子ブロック層が電子の輸送を堰き止める機能を有することは、例えば、電子電流のみを流す素子を作製し、その電流値の減少で堰き止める効果を確認することが可能である。
【0062】
なお、電子注入層および正孔注入層を総称して電荷注入層ということがあり、電子輸送層および正孔輸送層を総称して電荷輸送層ということがある。
【0063】
以下に有機EL素子のとりうる層構成の一例を示す。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
c)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
d)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極
e)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
f)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
g)陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
h)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
i)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
j)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
k)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
l)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
m)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
n)陽極/発光層/電子注入層/陰極
o)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
p)陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(ここで、記号「/」は、記号「/」を挟む各層が隣接して積層されていることを示す。以下同じ。)
【0064】
有機EL素子は2層以上の発光層を有していてもよい。たとえば上記a)〜p)のうちのいずれか1つにおいて、陽極と陰極とに挟持された積層体を「構造単位A」とすると、2層の発光層を有する有機EL素子の構成として、下記q)に示す層構成を挙げることができる。なお2つある(構造単位A)の層構成は互いに同じでも、異なっていてもよい。
q)陽極/(構造単位A)/電荷発生層/(構造単位A)/陰極
【0065】
また「(構造単位A)/電荷発生層」を「構造単位B」とすると、3層以上の発光層を有する有機EL素子の構成として、下記r)に示す層構成を挙げることができる。
r)陽極/(構造単位B)x/(構造単位A)/陰極
【0066】
なお記号「x」は、2以上の整数を表し、(構造単位B)xは、構造単位Bがx段積層された積層体を表す。また複数ある(構造単位B)の層構成は同じでも、異なっていてもよい。
【0067】
有機EL素子は通常、前述した有機EL素子を構成する各層を順次所定の方法で支持基板上に積層することによって作製することができる。たとえば有機EL素子は、前述したa)〜r)の構成において、右側の層からから順に各層を支持基板上に積層する、または左側の層から順に各層を支持基板上に積層することによって作製することができる。
【0068】
<陽極>
発光層から放射される光が陽極を通って素子の外に出射する構成の有機EL素子の場合、陽極には光透過性を示す電極が用いられる。光透過性を示す電極としては、金属酸化物、金属硫化物および金属などの薄膜を用いることができ、電気伝導度および光透過率の高いものが好適に用いられる。具体的には酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、インジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide:略称ITO)、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:略称IZO)、金、白金、銀、および銅などから成る薄膜が用いられ、これらの中でもITO、IZO、または酸化スズから成る薄膜が好適に用いられる。陽極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法などを挙げることができる。また、該陽極として、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などの有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0069】
陽極の膜厚は、要求される特性および工程の簡易さなどを考慮して適宜設定され、例えば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0070】
<陰極>
陰極の材料としては、仕事関数が小さく、発光層への電子注入が容易で、電気伝導度の高い材料が好ましい。また陽極側から光を取出す構成の有機EL素子では、発光層から放射される光を陰極で陽極側に反射するために、陰極の材料としては可視光反射率の高い材料が好ましい。陰極には、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属および周期表の13族金属などを用いることができる。陰極の材料としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウムなどの金属、前記金属のうちの2種以上の合金、前記金属のうちの1種以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうちの1種以上との合金、またはグラファイト若しくはグラファイト層間化合物などが用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金などを挙げることができる。また、陰極としては導電性金属酸化物および導電性有機物などから成る透明導電性電極を用いることができる。具体的には、導電性金属酸化物として酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、およびIZOを挙げることができ、導電性有機物としてポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などを挙げることができる。なお陰極は、2層以上を積層した積層体で構成されていてもよい。なお電子注入層が陰極として用いられる場合もある。
【0071】
陰極の膜厚は、求められる特性および工程の簡易さなどを考慮して適宜設計され、例えば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
陰極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、また金属薄膜を熱圧着するラミネート法などを挙げることができる。
【0072】
<発光層>
発光層は、塗布法によって形成されることが好ましい。塗布法は、製造プロセスを簡略化できる点、生産性が優れている点で好ましい。塗布法としてはキャスティング法、スピンコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット法等があげられる。前記塗布法を用いて発光層を形成する場合、まず前記化合物(I)〜(IV)およびこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種以上の化合物と、前記高分子発光体とを含有する溶液状態の高分子発光体組成物を塗布液として調製し、この塗布液を前述した所定の塗布法によって所望の層又は電極上に塗布し、さらにこれを乾燥することにより、所期の膜厚の発光層を形成することができる。
【0073】
<他の層>
正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層および電子輸送層などの材料は特に制限されない。正孔注入層の材料としては、たとえば酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、および酸化アルミニウムなどの酸化物や、フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、アモルファスカーボン、ポリアニリン、およびポリチオフェン誘導体をあげることができる。正孔輸送層の材料としては、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、又はポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体をあげることができる。電子輸送層の材料としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン若しくはその誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、又は8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体をあげることができる。電子注入層の材料としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のうちの1種類以上を含む合金、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物、またはこれらの物質の混合物などをあげることができる。各層は塗布法、真空蒸着法、スパッタリング法およびラミネート法などの所定の成膜方法によって形成される。
【0074】
以上説明した有機EL素子は、曲面状や平面状の照明装置、例えばスキャナの光源として用いられる面状光源、および表示装置などの発光装置に好適に用いることができる。
【0075】
有機EL素子を備える表示装置としては、セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置などを挙げることができる。ドットマトリックス表示装置には、アクティブマトリックス表示装置およびパッシブマトリックス表示装置などがある。有機EL素子は、アクティブマトリックス表示装置、パッシブマトリックス表示装置において、各画素を構成する発光素子として用いられる。また有機EL素子は、セグメント表示装置において、各セグメントを構成する発光素子またはバックライトとして用いられる。また有機EL素子は液晶表示装置においてバックライトとして用いられる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0077】
−分子量の測定方法−
実施例において、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算のものを求めた。具体的には、GPC(東ソー製、商品名:HLC-8220GPC)により、TSKgel SuperHM-H(東ソー製)3本を直列に繋げたカラムを用いて、展開溶媒としてテトラヒドロフランを0.5mL/分の流速で流し、40℃で測定した。検出器には、示差屈折率検出器を用いた。
【0078】
<合成例1>(高分子化合物1の合成)
500mlの4口フラスコにメチルトリオクチルアンモニウムクロライド(商品名:Aliquat336、シグマアルドリッチジャパン社製)1.72g、下記式:

で表される化合物A 6.2171g、下記式:

で表される化合物B 0.5085g、下記式:

で表される化合物C 6.2225g、及び下記式:

で表される化合物D 0.5487gを取り、窒素置換した。トルエン100mlを加え、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II) 7.6mg、炭酸ナトリウム水溶液24mlを加え、環流下で3時間攪拌した後、フェニルホウ酸0.40gを加え、終夜攪拌した。ナトリウムN,N−ジエチルジチオカルバメート水溶液を加え、さらに環流下で3時間攪拌した。得られた反応液を分液し、有機相を酢酸水溶液及び水で洗浄した後、メタノール中に滴下したところ、沈殿が生じた。得られた沈殿をろ過し、ろ過した沈殿を減圧乾燥した後、トルエンに溶解させ、シリカゲル−アルミナカラムを通し、トルエンで洗浄した。得られたトルエン溶液をメタノール中に滴下したところ、沈殿が生じた。得られた沈殿をろ過し、ろ過した沈殿を減圧乾燥した後、トルエンに溶解させ、メタノールに滴下ところ、沈殿が生じた。得られた沈殿をろ過し、ろ過した沈殿を減圧乾燥して、7.72gの高分子化合物1(共役系高分子)を得た。高分子化合物1のポリスチレン換算の数平均分子量Mnは1.2×105であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは2.9×105であった。
【0079】
<合成例2>(高分子化合物2の合成)
5Lセパラブルフラスコにメチルトリオクチルアンモニウムクロライド(商品名:Aliquat336、シグマアルドリッチジャパン社製)40.18g、下記式:

で表される化合物A 234.06g、下記式:

で表される化合物E 172.06g、及び下記式:

で表される化合物F 28.5528gを取り、窒素置換した。アルゴンバブリングしたトルエン2620gを加え、攪拌しながら更に30分間バブリングした。酢酸パラジウム 99.1mg、トリス(o−トリル)ホスフィン 937.0mgを加え、158gのトルエンで洗い流し、95℃に加熱した。17.5重量%炭酸ナトリウム水溶液855gを滴下後、バス温110℃に昇温し、9.5時間攪拌した後、フェニルホウ酸5.39gをトルエン96mlに溶解して加え、14時間攪拌した。200mlのトルエンを加え、反応液を分液し、有機相を3重量%酢酸水溶液850mlで2回、更に850mlの水とナトリウムN,N−ジエチルジチオカルバメート19.89gを加え、4時間攪拌した。分液後、シリカゲル−アルミナカラムを通し、トルエンで洗浄した。得られたトルエン溶液をメタノール50Lに滴下したところ、沈殿が生じた。得られた沈殿を、メタノールで洗浄した。減圧乾燥後、11Lのトルエンに溶解させ、得られたトルエン溶液をメタノール50Lに滴下したところ、沈殿が生じた。得られた沈殿をろ過し、ろ過した沈殿を減圧乾燥して、278.39gの高分子化合物2を得た。高分子化合物2のポリスチレン換算の数平均分子量Mnは7.7×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは3.8×105であった。
【0080】
なお上記化合物A〜Fは、例えばWO2005/52027に記載されている方法で合成することができる。
【0081】
<高分子化合物3の合成>
200mLセパラブルフラスコに、9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジホウ酸エチレングリコールエステル 1.591g(3.00mmol)、9,9−ジオクチル−2,7−ジブロモフルオレン 1.612g(2.94mmol)、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−ジブロモペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸ビスイミド(1,6−ジブロモ体と1,7−ジブロモ体との異性体混合物) 0.052g(0.06mmol)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(商品名:Aliquat336、シグマアルドリッチジャパン社製) 0.39gとトルエン 30mLを加えた。窒素雰囲気下、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド 3.2mgを加え85℃に加熱した。この溶液に、17.5重量%炭酸ナトリウム水溶液 8.2mLを滴下しながら105℃に加熱した後、2.5hr攪拌した。次にフェニルホウ酸 0.366g、トルエン30mLを加え、105℃で終夜攪拌した。
【0082】
水層を除いた後、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物 1.67g、イオン交換水 33mLを加え85℃で2hr攪拌した。有機層を水層と分離した後、有機層をイオン交換水 (2回)、3重量%酢酸水溶液(2回)、イオン交換水(2回)の順番で洗浄した。
【0083】
有機層をメタノールに滴下しポリマーを沈殿させ、濾過後、沈殿物を乾燥し固体を得た。この固体をトルエンに溶解し、あらかじめトルエンを通液したシリカゲル/アルミナカラムに溶液を通液し、通液された溶出液をメタノールに滴下しポリマーを沈殿させ、濾過後、沈殿物を乾燥し、高分子化合物(以後、高分子化合物3と呼ぶ)を1.78g得た。また、ポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量は、それぞれMn=9.7×10、Mw=2.5×10であった。
【0084】
高分子化合物3は、以下の繰り返し単位を以下のモル比(99:1)で有する重合体である(原料から求めた理論値である)。

99 : 1
【0085】
<高分子化合物4の合成>
200mLセパラブルフラスコに、9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジホウ酸エチレングリコールエステル 1.061g(2.00mmol)、9,9−ジオクチル−2,7−ジブロモフルオレン 0.987g(1.80mmol)、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−ジブロモペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸ビスイミド(1,6−ジブロモ体と1,7−ジブロモ体との異性体混合物) 0.174g(0.20mmol)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(商品名:Aliquat336、シグマアルドリッチジャパン社製) 0.26gとトルエン 20mLを加えた。窒素雰囲気下、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド 2.1mgを加え85℃に加熱した。この溶液に、17.5重量%炭酸ナトリウム水溶液 5.4mLを滴下しながら105℃に加熱した後、6hr攪拌した。次にフェニルホウ酸 0.244g、トルエン20mLを加え、105℃で終夜攪拌した。
【0086】
水層を除いた後、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物 1.11g、イオン交換水 22mLを加え85℃で2hr攪拌した。有機層を水層と分離した後、有機層をイオン交換水 (2回)、3重量%酢酸水溶液(2回)、イオン交換水(2回)の順番で洗浄した。
【0087】
有機層をメタノールに滴下しポリマーを沈殿させ、濾過後、沈殿物を乾燥し固体を得た。この固体をトルエンに溶解し、あらかじめトルエンを通液したシリカゲル/アルミナカラムに溶液を通液し、通液された溶出液をメタノールに滴下しポリマーを沈殿させ、濾過後、沈殿物を乾燥し、高分子化合物(以後、高分子化合物4と呼ぶ)を1.14g得た。また、ポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量は、それぞれMn=1.2×10、Mw=2.6×10であった。
高分子化合物4は、以下の繰り返し単位を以下のモル比(99:5)で有する重合体である(原料から求めた理論値である)。

95 : 5
【0088】
N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−ジブロモペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸ビスイミド(1,6−ジブロモ体と1,7−ジブロモ体との異性体混合物)は、例えば、Journal of Chemistry Vol.70 (2005) 4323〜4331ページに記載の方法で合成することができる。
【0089】
<塗布溶液A1の作製>
高分子化合物1を1.0重量%の濃度でキシレンに溶解させ、その後、該溶液を孔径0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過し、塗布溶液A1を作製した。
【0090】
<塗布溶液Bの作製>
高分子化合物2を0.5重量%の濃度でキシレンに溶解させ、その後、該溶液を孔径0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過し、塗布溶液Bを作製した。
【0091】
<塗布溶液A2の作製>
高分子化合物1を1.0重量%の濃度でキシレンに溶解させ、さらにペリレンのテトラカルボン酸ジイミド誘導体として下記化合物BPPC(シグマ−アルドリッチジャパン社より購入)を溶解{高分子化合物1:化合物BPPC=100:0.1(重量比)}させ、塗布溶液A2を作製した。

N,N′-Bis(2,5-di-tert-butylphenyl)-3,4,9,10-perylenedicarboximide
(略称BPPC)
【0092】
<塗布溶液A3の作製>
高分子化合物1を1.0重量%の濃度でキシレンに溶解させ、さらに上記化合物BPPCを溶解高分子化合物1:化合物BPPC=100:0.01(重量比)}させ、塗布溶液A3を作製した。
【0093】
<塗布溶液A4の作製>
高分子化合物1を1.0重量%の濃度でキシレンに溶解させ、高分子化合物3を1.0重量%の濃度でクロロベンゼンに溶解させ、さらにそれら溶液を高分子化合物1:高分子化合物3=99:1(重量比)の割合になるように混合し、塗布溶液A4を作製した。
【0094】
<塗布溶液A5の作製>
高分子化合物1を1.0重量%の濃度でキシレンに溶解させ、高分子化合物3を1.0重量%の濃度でクロロベンゼンに溶解させ、さらにそれら溶液を高分子化合物1:高分子化合物3=96:4(重量比)の割合になるように混合し、塗布溶液A5を作製した。
【0095】
<塗布溶液A6の作製>
高分子化合物1を1.0重量%の濃度でキシレンに溶解させ、高分子化合物4を1.0重量%の濃度でクロロベンゼンに溶解させ、さらにそれら溶液を高分子化合物1:高分子化合物4=99:1(重量比)の割合になるように混合し、塗布溶液A6を作製した。
【0096】
(有機EL素子の作製、評価)
<実施例1>
スパッタ法により表面に陽極(膜厚150nmのITO膜)が形成されたガラス基板上に、正孔注入層形成用溶液(Plextronics社製、商品名:HIL764)をスピンコートし、さらにこれを大気中ホットプレート上で170℃で15分間乾燥することにより正孔注入層(膜厚:50nm)を形成した。次に、塗布溶液Bを正孔注入層上にスピンコートし、グローブボックス中において窒素雰囲気中で、180℃で60分間ベークすることにより正孔輸送層(膜厚:20nm)を形成した。さらに前記塗布溶液A2を正孔輸送層上にスピンコートし、発光層を形成した。発光層の形成ではその膜厚が80nmとなるように調整した。
【0097】
その後、窒素雰囲気中で130℃のホットプレートで10分間ベークし、さらにNaFを4nmの厚さで蒸着し、次いで、Alを100nmの厚さで蒸着し、陰極を形成した。蒸着のときの真空度は、1×10-4Pa〜9×10-3Paの範囲であった。素子の形状は、2mm×2mmの正四角形であった。得られた素子を初期輝度5000cd/mで定電流駆動し、寿命試験をおこなった。輝度が4000cd/m(初期輝度の80%)に低下するまでの時間(これをLT80と呼ぶ)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0098】
<実施例2>
塗布溶液A2の代わりに塗布溶液A3を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で有機EL素子を作製し、有機EL素子のLT80を測定した。測定結果を表1に示す。
【0099】
<実施例3>
塗布溶液A2の代わりに塗布溶液A4を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で有機EL素子を作製し、有機EL素子のLT80を測定した。測定結果を表1に示す。
【0100】
<実施例4>
塗布溶液A2の代わりに塗布溶液A5を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で有機EL素子を作製し、有機EL素子のLT80を測定した。測定結果を表1に示す。
【0101】
<実施例5>
塗布溶液A2の代わりに塗布溶液A6を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で有機EL素子を作製し、有機EL素子のLT80を測定した。測定結果を表1に示す。
【0102】
<比較例1>
塗布溶液A2の代わりに塗布溶液A1を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で有機EL素子を作製し、有機EL素子のLT80を測定した。測定結果を表1に示す。
【0103】
【表1】

【0104】
表1からわかるように、第1の高分子発光体(高分子化合物1)とペリレンのテトラカルボン酸ジイミド誘導体とを含有する発光層を備える有機EL素子は、第1の高分子発光体のみからなる発光層を備える有機EL素子に比べて、初期輝度を同じにして定電流駆動したときのLT80寿命が著しく向上した。また第2の高分子発光体(高分子化合物3または高分子化合物4)を含有する発光層を備える有機EL素子は、第1の高分子発光体のみからなる発光層を備える有機EL素子に比べて、初期輝度を同じにして定電流駆動したときのLT80寿命が著しく向上した。すなわち本発明の高分子発光体組成物を含有する発光層を備える有機EL素子は素子寿命に優れることが認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極と、該電極間に設けられる発光層とを備える有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記発光層は、
下記化合物(I)〜(IV)およびこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種以上の化合物と、第1の高分子発光体とを含有する発光層、または、
前記化合物(I)〜(IV)およびこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種以上の化合物の2価の残基を、繰り返し単位として有する第2の高分子発光体を含有する発光層である、有機エレクトロルミネッセンス素子。
(I)ペリレン若しくはナフタレンのテトラカルボン酸ジイミド
(II)ペリレン若しくはナフタレンのテトラカルボン酸二無水物
(III)ペリレン若しくはナフタレンのテトラカルボン酸ビスイミダゾール
(IV)ペリレン若しくはナフタレンのテトラカルボン酸ビスピリミジン
【請求項2】
前記化合物(I)〜(IV)の誘導体が高分子化合物である請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記第1および第2高分子発光体が共役系高分子である、請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記第1および第2高分子発光体が、非置換又は置換のフルオレンジイル基、及び非置換又は置換のベンゾフルオレンジイル基からなる群から選ばれる1種以上のジイル基を繰り返し単位として有する高分子発光体である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記発光層における前記化合物(I)〜(IV)およびこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種以上の化合物の含有量が、前記高分子発光体を100重量部としたときに0.001〜5重量部である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記発光層における前記化合物(I)〜(IV)およびこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種以上の化合物の含有量が、前記高分子発光体を100重量部としたときに0.01〜1重量部である請求項1〜5のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備える発光装置。
【請求項8】
下記(I)〜(IV)およびこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種以上の化合物と、第1の高分子発光体とを含有する、または、
前記化合物(I)〜(IV)およびこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種以上の化合物の2価の残基を、繰り返し単位として有する第2の高分子発光体を含有する、高分子発光体組成物。
(I)ペリレン若しくはナフタレンのテトラカルボン酸ジイミド
(II)ペリレン若しくはナフタレンのテトラカルボン酸二無水物
(III)ペリレン若しくはナフタレンのテトラカルボン酸ビスイミダゾール
(IV)ペリレン若しくはナフタレンのテトラカルボン酸ビスピリミジン

【公開番号】特開2011−181900(P2011−181900A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2739(P2011−2739)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】