説明

有機シリカメソ多孔体およびそれを含む正孔輸送材料

【課題】メソ細孔を有し且つ正孔輸送性に優れた有機シリカ多孔体を提供すること。
【解決手段】下記式(1)(*は他の分子構造との結合部位を表す)で表される分子構造を含有することを特徴とする有機シリカメソ多孔体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機シリカメソ多孔体およびそれを含む正孔輸送材料に関し、より詳しくは、オリゴフェニレンビニレンシリカ構造を含有する有機シリカメソ多孔体に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子(太陽電池)の性能は、電子輸送性材料(n型材料)および正孔輸送性材料(p型材料)といった電荷輸送性材料の電荷輸送性や、n型材料とp型材料との接触面積によって決まるものである。従来の有機材料(低分子および高分子)においては、電子輸送性材料や正孔輸送性材料は数多く報告されているが、電子や正孔などのキャリアの発生量を増大させるためにはp/n接合界面の面積を増大させる必要があり、バルクへテロ接合などのように素子構造を工夫する必要があった。
【0003】
また、Dantas de Moraisら、Advanced Material for Optics and Electronics、2000年、第10巻、69〜79ページ(非特許文献1)には、ゾル−ゲル法により作製した正孔輸送性有機シリカ薄膜が提案されている。しかしながら、この有機シリカ薄膜はメソ細孔を有するものではなく、p/n接合界面の面積を増大させるため従来のように素子構造を工夫する必要があった。
【0004】
国際公開第2007/034861号パンフレット(特許文献1)には、メチルカルバゾールや直鎖状オリゴフェニレンビニレンシランなどを用いたメソポーラス有機シリカが開示されている。このように有機シリカ中にメソ細孔構造を形成することによってp/n接合界面の面積を増大させることが可能となる。
【0005】
一方、メソ細孔を利用した電子素子として、特開2006−332249号公報(特許文献2)には、シリカと有機物とのハイブリッド材料からなるメソポーラス材料薄膜を含む電子素子が開示されている。この電子素子は、メソポーラス材料薄膜のチューブ状メソ細孔内に共役高分子化合物を保持し、この共役高分子化合物のホッピング伝導を利用してキャリアを移動させるものである。しかしながら、前記メソポーラス材料薄膜は共役高分子化合物の高分子鎖を配向制御するために用いられており、メソ細孔自体にキャリアを流すものではなかった。
【特許文献1】国際公開第2007/034861号パンフレット
【特許文献2】特開2006−332249号公報
【非特許文献1】Dantas de Moraisら、AdvancedMaterial for Optics and Electronics、2000年、第10巻、69〜79ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、メソ細孔を有し且つ正孔輸送性に優れた有機シリカ多孔体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、メチルカルバゾール基を有する有機シラン化合物を用いて形成した有機シリカ多孔体はメソ細孔を有するものの、明確な正孔輸送性を示さないこと、また、直鎖状オリゴフェニレンビニレンシランを用いて形成した有機シリカ多孔体はメソ細孔を形成しないことを見出し、さらに、中心のフェニル基からフェニレンビニレンシリカ構造が特定の3方向に伸長した分子構造を有する有機シリカ多孔体がメソ細孔を有し且つ正孔輸送性に優れたものであることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の有機シリカメソ多孔体は、下記式(1):
【0009】
【化1】

【0010】
〔式(1)中、X〜Xはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数1〜15のアルコキシ基、炭素数1〜15のハロゲン化アルキル基、アミノ基、シアノ基およびニトロ基のうちのいずれか1つの置換基を表し、Y〜Yはそれぞれ独立に下記式(2):
【0011】
【化2】

【0012】
(式(2)中、X〜Xはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数1〜15のアルコキシ基、炭素数1〜15のハロゲン化アルキル基、アミノ基、シアノ基およびニトロ基のうちのいずれか1つの置換基を表し、*は他の基との結合部位を表し、nは1〜10の整数である)
で表される有機基を表し、*は他の分子構造との結合部位を表す〕
で表される分子構造を含有することを特徴とするものである。
【0013】
このような有機シリカメソ多孔体としては、界面活性剤の存在下、下記式(3):
【0014】
【化3】

【0015】
〔式(3)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子および炭素数1〜15のアルキル基のうちのいずれか1つの置換基を表し、X〜Xはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数1〜15のアルコキシ基、炭素数1〜15のハロゲン化アルキル基、アミノ基、シアノ基およびニトロ基のうちのいずれか1つの置換基を表し、Y〜Yはそれぞれ独立に前記式(2)で表される有機基を表す〕
で表される有機シラン化合物を重合せしめたものが好ましい。
【0016】
また、本発明の有機シリカメソ多孔体は、正孔輸送材料として有用であり、正孔移動度は6×10−6cm/Vs以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、メソ細孔を有し且つ速い正孔輸送性に優れた有機シリカ多孔体を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0019】
先ず、本発明の有機シリカメソ多孔体について説明する。本発明の有機シリカメソ多孔体は、下記式(1):
【0020】
【化4】

【0021】
で表される分子構造を含有することを特徴とするものである。
【0022】
前記式(1)中、X〜Xはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数1〜15のアルコキシ基、炭素数1〜15のハロゲン化アルキル基、アミノ基、シアノ基およびニトロ基のうちのいずれか1つの置換基を表す。
【0023】
また、前記式(1)中のY〜Yはそれぞれ独立に下記式(2):
【0024】
【化5】

【0025】
で表される有機基(フェニレンビニレン基)を表し、前記式(1)中の*は他の分子構造との結合部位を表す。
【0026】
前記式(2)中、X〜Xはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数1〜15のアルコキシ基、炭素数1〜15のハロゲン化アルキル基、アミノ基、シアノ基およびニトロ基のうちのいずれか1つの置換基を表す。前記式(2)中の*は他の基との結合部位を表す。また、前記式(2)中のnは、1〜10の整数であり、原料である有機シランの合成のしやすさや有機シリカメソ多孔体におけるメソ構造の作りやすさの観点からnは1〜3の整数であることが好ましい。
【0027】
このような有機シリカメソ多孔体としては、界面活性剤の存在下、下記式(3):
【0028】
【化6】

【0029】
で表される有機シラン化合物を重合せしめたものが好ましい。
【0030】
前記式(3)中、X〜XおよびY〜Yは、それぞれ前記式(1)中のX〜XおよびY〜Yと同義である。また、前記式(3)中のR〜Rはそれぞれ独立に炭素数1〜15のアルキル基を表す。これらのうち、重合(縮合)のしやすさの観点から炭素数1〜2のアルキル基が好ましい。
【0031】
上記のように界面活性剤の存在下で前記有機シラン化合物を重合せしめることにより、細孔径分布曲線における中心細孔直径が1〜30nmのメソ孔を有する有機シリカメソ多孔体が得られる。なお、前記中心細孔直径とは、細孔容積(V)を細孔直径(D)で微分した値(dV/dD)を細孔直径(D)に対してプロットした曲線(細孔径分布曲線)の最大ピークにおける細孔直径であり、次に述べる方法により求めることができる。すなわち、多孔体を液体窒素温度(−196℃)に冷却して窒素ガスを導入し、定容量法あるいは重量法によりその吸着量を求め、次いで、導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットし、吸着等温線を得る。この吸着等温線を用い、Cranston−Inklay法、Pollimore−Heal法、BJH法などの計算法により細孔径分布曲線を求めることができる。
【0032】
このような有機シリカメソ多孔体は、細孔径分布曲線における中心細孔直径の±40%の範囲に全細孔容積の60%以上が含まれることが好ましい。この条件を満たすメソ多孔体は、細孔の直径が非常に均一であることを意味する。また、有機シリカメソ多孔体の比表面積については特に制限はないが、700m/g以上であることが好ましい。比表面積は、吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。
【0033】
さらに、このような有機シリカメソ多孔体は、そのX線回折(XRD)パターンにおいて1.5〜30.5nmのd値に相当する回折角度に1本以上のピークを有することが好ましい。X線回折ピークはそのピーク角度に相当するd値の周期構造が試料中にあることを意味する。したがって、1.5〜30.5nmのd値に相当する回折角度に1本以上のピークがあることは、細孔が1.5〜30.5nmの間隔で規則的に配列していることを意味する。
【0034】
本発明の有機シリカメソ多孔体を得る際に用いられる界面活性剤は特に制限されないが、陽イオン性、陰イオン性、非イオン性のうちのいずれであってもよく、具体的には、アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルトリエチルアンモニウム、ジアルキルジメチルアンモニウム、ベンジルアンモニウムなどの塩化物、臭化物、ヨウ化物あるいは水酸化物;脂肪酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリエチレンオキサイド系非イオン性界面活性剤、一級アルキルアミンなどが挙げられる。これらの界面活性剤は単独でまたは二種以上混合して用いられる。
【0035】
上記の界面活性剤のうち、ポリエチレンオキサイド系非イオン性界面活性剤としては、疎水性成分として炭化水素基、親水性部分としてポリエチレンオキサイドをそれぞれ有するポリエチレンオキサイド系非イオン性界面活性剤などが挙げられる。このような界面活性剤としては、例えば、一般式C2n+1(OCHCHOHで表され、nが10〜30、mが1〜30であるものが好適に使用できる。また、このような界面活性剤としては、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸などの脂肪酸とソルビタンとのエステル、あるいはこれらのエステルにポリエチレンオキサイドが付加した化合物を用いることもできる。
【0036】
さらに、このような界面活性剤としては、トリブロックコポリマー型のポリアルキレンオキサイドを用いることもできる。このような界面活性剤としては、ポリエチレンオキサイド(EO)とポリプロピレンオキサイド(PO)からなり、一般式(EO)(PO)(EO)で表されるものが挙げられる。x、yはそれぞれEO、POの繰り返し数を表すが、xは5〜110、yは15〜70であることが好ましく、xは13〜106、yは29〜70であることがより好ましい。上記のトリブロックコポリマーとしては、(EO)19(PO)29(EO)19、(EO)13(PO)70(EO)13、(EO)(PO)70(EO)、(EO)13(PO)30(EO)13、(EO)20(PO)30(EO)20、(EO)26(PO)39(EO)26、(EO)17(PO)56(EO)17、(EO)17(PO)58(EO)17、(EO)20(PO)70(EO)20、(EO)80(PO)30(EO)80、(EO)106(PO)70(EO)106、(EO)100(PO)39(EO)100、(EO)19(PO)33(EO)19、(EO)26(PO)36(EO)26が挙げられる。これらのトリブロックコポリマーはBASF社、アルドリッチ社などから入手可能であり、また、小規模製造レベルで所望のx値とy値を有するトリブロックコポリマーを得ることができる。
【0037】
また、エチレンジアミンの2個の窒素原子にそれぞれ2本のポリエチレンオキサイド(EO)鎖−ポリプロピレンオキサイド(PO)鎖が結合したスターダイブロックコポリマーも使用することができる。このようなスターダイブロックコポリマーとしては、一般式((EO)(PO)NCHCHN((PO)(EO)で表されるものが挙げられる。ここでx、yはそれぞれEO、POの繰り返し数を表すが、xは5〜110、yは15〜70であることが好ましく、xは13〜106、yは29〜70であることがより好ましい。
【0038】
このような界面活性剤の中では、結晶性の高い有機シリカメソ多孔体を得ることができることから、アルキルトリメチルアンモニウム[C2p+1N(CH]の塩(好ましくはハロゲン化物塩)を用いることが好ましい。また、その場合は、アルキルトリメチルアンモニウム中のアルキル基の炭素数は8〜22であることがより好ましい。このようなものとしては、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化デシルトリメチルアンモニウム、臭化オクチルトリメチルアンモニウム、塩化ドコシルトリメチルアンモニウムなどが挙げられる。
【0039】
上記のような界面活性剤を用いて本発明の有機シリカメソ多孔体を製造する場合においては、前記界面活性剤を含有する前記溶媒中において前記式(3)で表される有機シラン化合物を加水分解及び重縮合反応せしめることにより有機シリカ中に前記界面活性剤が導入されてなる多孔体前駆体を得る。前記溶液中の界面活性剤の濃度は0.01〜1mol/Lであることが好ましい。前記界面活性剤の濃度が前記下限未満であると細孔の形成が不完全となりやすい傾向にあり、他方、前記上限を超えると未反応で溶液中に残留する界面活性剤の量が増大して細孔の均一性が低下しやすい傾向にある。
【0040】
次に、このようにして得られた多孔体前駆体に含まれる界面活性剤を除去することによって多孔構造を有する有機シリカメソ多孔体を得ることができる。前記界面活性剤を除去する方法としては以下の方法が挙げられる。すなわち、例えば、(i)界面活性剤に対する溶解度が高い有機溶媒(例えば、エタノール)中に前記多孔体前駆体を浸漬して界面活性剤を除去する方法、(ii)前記多孔体前駆体を250〜550℃で焼成して界面活性剤を除去する方法、(iii)前記多孔体前駆体を酸性溶液に浸漬して加熱し、界面活性剤を水素イオンに交換せしめるイオン交換法、などを挙げることができる。
【0041】
本発明に用いられる前記式(3)で表される有機シラン化合物の製造方法は特に限定されないが、以下の方法が好ましい。例えば、前記式(2)においてn=1である前記式(3)で表される有機シラン化合物の場合には、先ず、下記反応式(4):
【0042】
【化7】

【0043】
(式(4)中、Xはハロゲン原子(好ましくは臭素原子)を表し、R10は炭素数1〜18のアルキル基(好ましくはメチル基またはエチル基)を表す)
に示すように、ハロゲン化アルキルを除去しながら1,3,5−トリス(ハロゲン化メチル)ベンゼンに亜リン酸トリアルキルを反応せしめて1,3,5−トリス(ジアルコキシホスホメチル)ベンゼンを調製する。
【0044】
次に、テトラヒドロフランなどの溶媒中、tert−ブチルオキシカリウムなどの触媒の存在下で、下記反応式(5):
【0045】
【化8】

【0046】
(式(5)中のR10は前記反応式(4)中のR10と同義である)
に示すように、前記1,3,5−トリス(ジアルコキシホスホメチル)ベンゼンに4−ヨードベンズアルデヒドを反応せしめて1,3,5−トリス(4−ヨードスチリル)ベンゼンを調製する。
【0047】
次いで、蒸留ジメチルホルムアミドと蒸留トリエチルアミンとの混合溶媒などの溶媒中、[Rh(cod)(CHCN)]BFおよびn−BuNIなどの触媒の存在下で、下記反応式(6):
【0048】
【化9】

【0049】
(式(6)中、R11は水素原子または炭素数1〜15のアルキル基を表す)
に示すように、前記1,3,5−トリス(4−ヨードスチリル)ベンゼンにトリアルコキシシランなど(好ましくはトリメトキシシラン、トリエトキシシラン、より好ましくはトリエトキシシラン)を反応せしめることにより1,3,5−トリス(4−トリアルコキシシリルスチリル)ベンゼンを得ることができる。
【0050】
また、前記式(2)においてnが2以上である前記式(3)で表される有機シラン化合物の場合には、先ず、下記反応式(7):
【0051】
【化10】

【0052】
(式(7)中、Xはハロゲン原子(好ましくは臭素原子)を表し、R12は炭素数1〜18のアルキル基(好ましくはメチル基またはエチル基)を表す)
に示すように、ハロゲン化アルキルを除去しながら4−ヨード−1−ハロゲン化メチルベンゼンに亜リン酸トリアルキルを反応せしめて4−ヨード−1−(ジアルコキシホスホメチル)ベンゼンを調製する。
【0053】
次に、テトラヒドロフランなどの溶媒中、tert−ブチルオキシカリウムなどの触媒の存在下で、下記反応式(8):
【0054】
【化11】

【0055】
(式(8)中のR12は前記反応式(7)中のR12と同義であり、nは1〜10の整数である)
に示すように、前記4−ヨード−1−(ジアルコキシホスホメチル)ベンゼンにテレフタルアルデヒドまたはジホルミルオリゴ(フェニレンビニレン)を反応せしめてヨードホルミルオリゴ(フェニレンビニレン)を調製する。
【0056】
次いで、テトラヒドロフランなどの溶媒中、tert−ブチルオキシカリウムなどの触媒の存在下で、下記反応式(9):
【0057】
【化12】

【0058】
(式(9)中のR10は前記反応式(4)中のR10と同義であり、式(9)中のnは前記反応式(8)中のnと同義である)
に示すように、前記反応式(4)に従って得られる1,3,5−トリス(ジアルコキシホスホメチル)ベンゼンに前記ヨードホルミルオリゴ(フェニレンビニレン)を反応せしめて4−ヨードスチリル基を有する1,3,5−トリススチリルベンゼン誘導体を調製する。
【0059】
次いで、蒸留ジメチルホルムアミドと蒸留トリエチルアミンとの混合溶媒などの溶媒中、[Rh(cod)(CHCN)]BFおよびn−BuNIなどの触媒の存在下で、下記反応式(10):
【0060】
【化13】

【0061】
(式(10)中のR11は前記反応式(6)中のR11と同義であり、式(10)中のnは前記反応式(9)中のnと同義である)
に示すように、前記1,3,5−トリススチリルベンゼン誘導体にトリアルコキシシランなど(好ましくはトリメトキシシラン、トリエトキシシラン、より好ましくはトリエトキシシラン)を反応せしめることにより前記式(2)においてnが2以上である前記式(3)で表される有機シラン化合物を得ることができる。
【0062】
このような本発明の有機シリカメソ多孔体は正孔輸送性に優れるものであり、その正孔移動度は6×10−6cm/Vs以上であることが好ましく、1×10−5cm/Vs以上であることがより好ましい。このような高い正孔移動度を示す有機シリカメソ多孔体は、有機EL素子、光電変換素子などの正孔輸送材料として有用である。
【0063】
また、本発明においては、前記式(2)で表される有機基の長さを調整することにより、HOMOおよびLUMOの位置、ならびHOMO−LUMOギャップを適宜シフトさせることが可能となり、従来の正孔輸送材料に比べて様々な特性を有するものを容易に製造することができる。
【0064】
本発明の有機シリカメソ多孔体として、例えば、以下の方法により薄膜状のものを製造することが可能である。有機シリカメソ多孔体薄膜を得る場合には、例えば、先ず、前記界面活性剤を含む酸性溶液(塩酸、硝酸等の水溶液又はアルコール溶液等)に前記式(3)で表される有機シラン化合物を添加し、この溶液を攪拌することにより反応(部分加水分解及び部分縮合反応)せしめてその部分重合体を含むゾル溶液を製造する。このような前記有機シラン化合物の加水分解反応はpHが低い領域で起こりやすいことから、系のpHを低くすることにより部分重合を促進することができる。このとき、pHは2以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。また、その際の反応温度は15〜25℃程度が好ましく、反応時間は30分間〜1日間程度が好ましい。
【0065】
このようにして得られたゾル溶液を基板に塗布することにより有機シリカメソ多孔体薄膜を作製することができる。前記ゾル溶液を基板に塗布する方法としては特に制限されず、各種コーティング方法を適宜採用することができる。例えば、溶液キャスト法や、バーコーター、ロールコーター、グラビアコーターなどを用いて塗布する方法、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティングといった方法などが挙げられる。さらに、ゾル溶液をインクジェット法により塗布することにより、基板にパターン状の有機シリカメソ多孔体薄膜を形成することも可能である。
【0066】
次いで、得られた薄膜を80〜120℃程度で乾燥せしめ、前記部分重合体の重縮合反応を進めて三次元的な架橋構造を形成させることが好ましい。
【0067】
本発明の有機シリカメソ多孔体は、粉末のまま使用してもよい。また、必要に応じて成形して使用してもよい。成形する手段は特に制限されないが、押出成形、打錠成形、転動造粒、圧縮成形、CIPなどが好ましい。その形状は使用箇所、方法などに応じて決めることができ、例えば、円柱状、破砕状、球状、ハニカム状、凹凸状、波板状等が挙げられる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0069】
(調製例1)
先ず、蒸留装置を備えるナスフラスコに1,3,5−トリス(ブロモメチル)ベンゼン(5.0g、14.0mmol)および亜リン酸トリエチル(10.81ml、63.1mmol)を添加して混合し、反応により生成するブロモエタンを蒸留により除去しながら130℃で2時間加熱攪拌して下記反応式(11):
【0070】
【化14】

【0071】
のように反応させた。その後、反応生成物を減圧蒸留して亜リン酸トリエチルを除去し、80℃で加熱攪拌しながら真空乾燥して高粘性液体の1,3,5−トリス(ジエトキシホスホメチル)ベンゼン(7.4g、収率100%)を得た。
【0072】
この1,3,5−トリス(ジエトキシホスホメチル)ベンゼンをH−NMR測定により同定した。その結果を以下に示す。
H−NMR(500MHz,CDCl):δ7.15(s,3H)、4.03(m,12H)、3.12(d,J=21.90Hz,6H)、1.26(t,J=7.00Hz,18H)。
【0073】
次に、テトラヒドロフラン(80ml)に前記1,3,5−トリス(ジエトキシホスホメチル)ベンゼン(0.687g、1.30mmol)および4−ヨードベンズアルデヒド(1.00g、4.30mmol)を溶解し、氷浴で0℃に冷却した。この溶液に、tert−ブチルオキシカリウム(1.12g、10.00mmol)とテトラヒドロフラン(20ml)との混合物を徐々に滴下した後、室温で12時間攪拌して下記反応式(12):
【0074】
【化15】

【0075】
のように反応させた。この溶液に水(100ml)を添加した後、吸引ろ過により析出物を回収した。ろ滓を水およびエタノールで十分に洗浄し、真空乾燥して淡黄色固体の1,3,5−トリス(4−ヨードスチリル)ベンゼン(0.80g、収率81%)を得た。
【0076】
この1,3,5−トリス(4−ヨードスチリル)ベンゼンをH−NMR測定およびMS測定により同定した。その結果を以下に示す。
H−NMR(500MHz,CDCl):δ7.71(d,J=8.40Hz,6H)、7.54(s,3H)、7.28(d,J=8.40Hz,6H)、7.12(m,6H)。
MS(ESI,m/z)calcd for C3021、888.78[M+I]:found 888.77。
【0077】
次に、アルゴン雰囲気下、1,3,5−トリス(4−ヨードスチリル)ベンゼン(0.600g、0.787mmol)、[Rh(cod)(CHCN)]BF(15.0mg、0.039mmol)およびn−BuNI(0.872g、2.36mmol)の混合物に、蒸留ジメチルホルムアミド(20ml)および蒸留トリエチルアミン(0.99ml、7.08mmol)を添加した。この溶液を0℃に冷却した後、トリエトキシシラン(0.87ml、4.72mmol)を添加して80℃で4時間攪拌して下記反応式(13):
【0078】
【化16】

【0079】
のように反応させた。得られた溶液を室温まで冷却した後、ジメチルホルムアミドを減圧除去し、次いでエーテルで3回抽出した後、セライトでろ過した。ろ液を粉末活性炭に通して濃縮し、淡黄色固体の1,3,5−トリス(4−トリエトキシシリルスチリル)ベンゼン(0.553g、収率81%)を得た。
【0080】
この1,3,5−トリス(4−トリエトキシシリルスチリル)ベンゼンをH−NMR測定、13C−NMR測定およびMS測定により同定した。その結果を以下に示す。
H−NMR(500MHz,CDCl):δ7.70(d,J=8.00Hz,6H)、7.57(m,9H)、7.21(s,6H)、3.90(q,J=7.00Hz,18H)、1.27(t,J=7.00Hz,27H)。
13C−NMR(125.7MHz,CDCl):δ139.0、138.0、135.3、130.4、129.3、129.1、126.0、124.3、58.8、18.3。
MS(ESI,m/z)calcd for C4866Si、893.39[M+Na]:found 893.41。
【0081】
(調製例2)
先ず、ビスピリジンヨードニウムテトラフルオロボレート(308mg、0.83mmol)とN−メチルカルバゾール(60mg、0.33mmol)とを混合し、この混合物に窒素雰囲気下でジクロロメタン(8ml)を添加して0℃に冷却した。この溶液に、トリフルオロメタンスルホン酸(29μl、0.33mmol)を滴下した後、窒素雰囲気下、室温で40時間攪拌して下記反応式(14):
【0082】
【化17】

【0083】
のように反応させた。この溶液にチオ硫酸ナトリウムを添加して過剰なヨウ素化試薬を分解した後、反応生成物をジクロロメタンで抽出し、有機相を塩化ナトリウムで洗浄した。その後、有機相を硫酸ナトリウムを用いて乾燥した後、ろ過、濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc=5:1)を用いて分離精製し、黄色固体の3,6−ジヨード−9−メチルカルバゾール(133mg、収率93%)を得た。
【0084】
この3,6−ジヨード−9−メチルカルバゾールをH−NMR測定および13C−NMR測定により同定した。その結果を以下に示す。
H−NMR(270MHz,CDCl):δ8.32(d,J=1.6Hz,2H)、7.73(d,J=8.6Hz,1.6Hz,2H)、7.17(d,J=8.6Hz,2H)、3.80(s,3H)。
13C−NMR(67.9MHz,CDCl):δ139.69、134.30、129.00、123.60、110.45、81.67。
【0085】
次に、窒素雰囲気下、3,6−ジヨード−9−メチルカルバゾール(100mg、0.23mmol)および[Rh(cod)(CHCN)]BF(4.4mg、0.012mmol)の混合物に、蒸留ジメチルホルムアミド(4ml)および蒸留トリエチルアミン(180μl、1.39mmol)を添加した後、室温で30分間攪拌した。この溶液に室温でトリエトキシシラン(171μl、0.92mmol)を添加し、窒素雰囲気下、80℃で7時間攪拌して下記反応式(15):
【0086】
【化18】

【0087】
のように反応させた。得られた溶液を室温まで冷却した後、溶媒を減圧除去し、次いでエーテルで抽出した後、セライトでろ過した。ろ液から溶媒をエバポレータを用いて留去して濃縮し、濃縮物をエーテルに溶解した後、活性炭に通して精製し、3,6−ビス(トリエトキシシリル)−9−メチルカルバゾール(90.9mg、収率78%)を得た。
【0088】
この3,6−ビス(トリエトキシシリル)−9−メチルカルバゾールをH−NMR測定および13C−NMR測定により同定した。その結果を以下に示す。
H−NMR(270MHz,CDCl):δ8.49(s,2H)、7.79(d,J=8.1Hz,2H)、7.43(d,J=8.1Hz,2H)、3.95(q,J=7.1Hz,12H)、3.84(s,3H)、1.29(t,J=7.1Hz,18H)。
13C−NMR(67.9MHz,CDCl):δ142.25、131.90、127.49、122.45、119.50、108.18、58.72、29.10、18.35。
【0089】
(調製例3)
先ず、テレフタルアルデヒド(1.81g、13.5mmol)とジエチル−p−ヨードベンジルホスホネート(10.0g、28.2mmol)とを混合し、この混合物に脱水THF(250ml)を添加して0℃に冷却した。この溶液に、tert−ブチルオキシカリウム(7.29g、65.0mmol)とテトラヒドロフラン(100ml)との混合物を徐々に滴下した後、室温で12時間攪拌して下記反応式(16):
【0090】
【化19】

【0091】
のように反応させた。この溶液に水(200ml)を添加した後、吸引ろ過により析出物を回収した。ろ滓を水およびエタノールで十分に洗浄し、真空乾燥して淡黄色固体の1,4−ビス(4−ヨードスチリル)ベンゼン(6.25g、収率87%)を得た。
【0092】
次に、アルゴン雰囲気下、1,4−ビス(4−ヨードスチリル)ベンゼン(3.60g、6.74mmol)および[Rh(cod)(CHCN)]BF(128mg、0.34mmol)の混合物に、蒸留ジメチルホルムアミド(150ml)および蒸留トリエチルアミン(5.64ml、40.4mmol)を添加した。この溶液を0℃に冷却した後、トリエトキシシラン(4.98ml、27.0mmol)を添加して80℃で4時間攪拌して下記反応式(17):
【0093】
【化20】

【0094】
のように反応させた。得られた溶液を室温まで冷却した後、ジメチルホルムアミドを減圧除去し、次いでエーテルで3回抽出した後、セライトでろ過した。ろ液を粉末活性炭に通して濃縮し、淡黄色固体の1,4−ビス(4−トリエトキシシリルスチリル)ベンゼン(3.70g、収率90%)を得た。
【0095】
この1,4−ビス(4−トリエトキシシリルスチリル)ベンゼンをH−NMR測定、13C−NMR測定およびMS測定により同定した。その結果を以下に示す。
H−NMR(500MHz,CDCl):δ7.68(d,J=8.2Hz,4H)、7.53(d,J=8.2Hz,4H)、7.52(s,4H)、7.14(m,4H)、3.89(q,J=7.0Hz,12H)、1.26(t,J=7.0Hz,18H)。
13C−NMR(125.7MHz,CDCl):δ139.1、136.6、135.2、130.2、129.0、128.4、126.9、125.9、58.7、18.2。
MS(ESI,m/z)calcd for C3446Si、629.27[M+Na]:found 629.27。
【0096】
(実施例1)
界面活性剤Brij76(商品名、アルドリッチ社製、化学式:C1837O(CHCHO)10H)20mg、テトラヒドロフランとエタノールとの混合溶媒(質量比=1:1)2g、2mol/Lの塩酸2μlおよびイオン交換水11μlを混合し、この混合溶液に調製例1で得た1,3,5−トリス(4−トリエトキシシリルスチリル)ベンゼン(以下、「T−TEStB」と略す)30mgを添加して300rpmで室温下、24時間攪拌し、有機シリカゾル溶液を調製した。
【0097】
次に、この有機シリカゾル溶液をガラス基板上に溶液キャスト法により塗布して1日間風乾し、有機シリカ薄膜を得た。この有機シリカ薄膜についてX線回折測定を実施した結果を図1に示す。図1に示した結果から明らかなように、この有機シリカ薄膜は周期5.56nm(2θ=1.56°)のメソ構造を有する有機シリカメソ多孔体(T−TEStB−HMM)膜であることが確認された。
【0098】
次に、前記ガラス基板の代わりに有機洗浄およびUVオゾン処理により表面に親水化処理を施したITO/ガラス基板を用いた以外は前記方法と同様の方法によりITO/ガラス基板上にT−TEStB−HMM膜を作製した。この膜の四方をカミソリの刃で削り取り、ガラス封止可能なサイズに調整した。
【0099】
T−TEStB−HMM膜と基板との段差(膜の切り口)を利用して触針式表面形状測定器(アルバック(株)製「DEKTAK」)を用いてT−TEStB膜の膜厚を測定したところ、膜厚は2.1μmであった。
【0100】
次に、このT−TEStB−HMM膜を備えるITO/ガラス基板を高真空チャンバーに導入して1×10−7Torrの真空下でAuを膜厚が80nmとなるように蒸着し、移動度測定用素子を作製した。その後、1気圧の窒素雰囲気下で紫外線硬化性樹脂((株)スリーボンド製)を用いて前記移動度測定用素子にガラス封止キャップを貼りあわせてガラス封止し、外部からの水や酸素の浸入を遮断した。
【0101】
前記移動度測定用素子におけるT−TEStB−HMM膜の正孔移動度をTime−of−Flight(TOF)法により測定した。すなわち、25℃に保持した前記移動度測定用素子のAu電極側を負に、ITO電極側を正にバイアスして高圧直流電源を用いて両電極間に100V、150Vまたは200Vの電圧を印加し、ITO/ガラス側からNガスレーザーパルス光(励起波長337nm、3nsec)を周波数0.5Hzで照射した。このとき、過渡光電流をデジタルオシロスコープ(岩崎通信機(株)製「DS−9242AM」)を用いて測定し、T−TEStB−HMM膜内のITO電極側で発生した正孔がAu電極側へ到達する移動時間を求めた。図2には印加電圧200Vにおける過渡光電流波形を示す。図2中の接線(点線)の交点における時間を前記正孔の移動時間とした。この移動時間、T−TEStB−HMM膜の膜厚およびAu電極とITO電極との間に印加された電界強度からT−TEStB−HMM膜の正孔移動度を求めた。その結果を図3に示す。
【0102】
(比較例1)
T−TEStBの代わりに調製例2で得た3,6−ビス(トリエトキシシリル)−9−メチルカルバゾール(以下、「B−TEMeCz」と略す)を64mg用い、界面活性剤Brij76の量を40.7mg、2mol/Lの塩酸の量を1μl、イオン交換水の量を30μlに変更した以外は実施例1と同様にして有機シリカゾル溶液を調製し、ITO/ガラス基板上に膜厚2.1μmのB−TEMeCz−HMM膜を作製した。
【0103】
このB−TEMeCz−HMM膜を備えるITO/ガラス基板を実施例1と同様にしてガラス封止して移動度測定用素子を作製し、B−TEMeCz−HMM膜の正孔移動度を求めたが、明確な正孔移動は観測されなかった。
【0104】
(参考例1)
界面活性剤としてBrij76の代わりにP123(商品名、アルドリッチ社製、化学式:HO(CHCHO)20(CHCH(CH)O)70(CHCHO)20H)20mgを用い、T−TEStBの量を25mg、2mol/Lの塩酸の量を1μlに変更した以外は実施例1と同様にして有機シリカゾル溶液を調製し、ガラス基板上に有機シリカ薄膜を作製した。この有機シリカ薄膜についてX線回折測定を実施した結果を図4に示す。図4に示した結果から明らかなように、この有機シリカ薄膜は周期9.30nm(2θ=0.95°)のメソ構造を有する有機シリカメソ多孔体(T−TEStB−HMM)膜であることが確認された。
【0105】
(比較例2)
T−TEStBの代わりに調製例3で得た1,4−ビス(4−トリエトキシシリルスチリル)ベンゼン(以下、「B−TEStB」と略す)を50mg用い、界面活性剤P123の量を60mgに変更した以外は参考例1と同様にして有機シリカゾル溶液を調製し、ガラス基板上に有機シリカ薄膜を作製した。この有機シリカ薄膜についてX線回折測定を実施した結果を図4に示す。図4に示した結果から明らかなように、この有機シリカ薄膜にはメソ構造の形成を示す明確な回折ピークは観察されなかった。また、実施例1と同様にして移動度測定用素子の作製を試みたが、正孔移動度の測定が可能な厚膜の有機シリカ膜が作製できなかった。
【0106】
以上の結果から明らかなように、中心のフェニル基からフェニレンビニレンシリカ構造が特定の3方向に伸長した分子構造を有する本発明にかかる有機シラン化合物を用いた場合(実施例1)には、得られた有機シリカ多孔体は、メソ細孔を有し且つ優れた正孔輸送性を有するものであった。一方、カルバゾール基を含有する有機シラン化合物を用いた場合(比較例1)には、得られた有機シリカ多孔体は、メソ細孔を有するものであったが、正孔移動性を示すものではなかった。また、中心のフェニル基から直鎖状に伸長した分子構造を有する有機シラン化合物を用いた場合(比較例2)には、メソ細孔が形成されていなかった。
【産業上の利用可能性】
【0107】
以上説明したように、本発明によれば、メソ細孔を有し且つ正孔輸送性に優れた有機シリカ材料を得ることが可能となる。
【0108】
本発明の有機シリカメソ多孔体を光電変換素子のp型材料として用い、この有機シリカメソ多孔体のメソ細孔に高電子移動度のn型材料を充填することによって、本発明の有機シリカメソ多孔体と前記n型材料との接触面積が非常に大きくなり、界面で発生する電子や正孔といったキャリアの発生量が増大する。また、有機シリカメソ多孔体および前記n型材料がともにキャリア輸送性に優れたものであるため、界面で発生したキャリアを大きく損失することなく外部電極に輸送することが可能となる。
【0109】
したがって、本発明の有機シリカメソ多孔体は、有機EL素子、太陽電池(光電変換素子)における正孔輸送材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】実施例1で得たT−TEStB−HMM膜のX線回折パターンを示すグラフである。
【図2】実施例1で得たT−TEStB−HMM膜の印加電圧200Vにおける過渡光電流波形を示すグラフである。
【図3】実施例1で得たT−TEStB−HMM膜の正孔移動度と電界強度との関係を示すグラフである。
【図4】参考例1で得たT−TEStB−HMM膜および比較例2で得たB−TEStB−HMM膜のX線回折パターンを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】

〔式(1)中、X〜Xはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数1〜15のアルコキシ基、炭素数1〜15のハロゲン化アルキル基、アミノ基、シアノ基およびニトロ基のうちのいずれか1つの置換基を表し、Y〜Yはそれぞれ独立に下記式(2):
【化2】

(式(2)中、X〜Xはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数1〜15のアルコキシ基、炭素数1〜15のハロゲン化アルキル基、アミノ基、シアノ基およびニトロ基のうちのいずれか1つの置換基を表し、*は他の基との結合部位を表し、nは1〜10の整数である)
で表される有機基を表し、*は他の分子構造との結合部位を表す〕
で表される分子構造を含有することを特徴とする有機シリカメソ多孔体。
【請求項2】
界面活性剤の存在下、下記式(3):
【化3】

〔式(3)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子および炭素数1〜15のアルキル基のうちのいずれか1つの置換基を表し、X〜Xはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数1〜15のアルコキシ基、炭素数1〜15のハロゲン化アルキル基、アミノ基、シアノ基およびニトロ基のうちのいずれか1つの置換基を表し、Y〜Yはそれぞれ独立に前記式(2)で表される有機基を表す〕
で表される有機シラン化合物を重合せしめたものであることを特徴とする請求項1に記載の有機シリカメソ多孔体。
【請求項3】
正孔移動度が6×10−6cm/Vs以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機シリカメソ多孔体。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の有機シリカメソ多孔体を含有することを特徴とする正孔輸送材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−235200(P2009−235200A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81610(P2008−81610)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人科学技術振興機構「有機シリカハイブリッド材料の合成と機能設計」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】