説明

有機光電変換素子の製造方法及び該製造方法により製造された有機光電変換素子

【課題】表面凹凸の大きい電極表面上にも高い被覆率でより緻密な膜を形成させる有機光電変換素子の製造方法を提供する。
【解決手段】金属Aから成る第一の電極と第二の電極に挟まれたバルクヘテロジャンクション型の光電変換層と、正孔輸送層もしくは電子輸送層とを有する有機光電変換素子の製造方法において、前記正孔輸送層もしくは電子輸送層の形成工程が、該第一の電極の上に、前記金属Aとは異なる金属Bを含有する物質を被覆する工程と、該金属Bを含有する物質を酸化させる工程とを含むことを特徴とする有機光電変換素子の製造方法及び該製造方法により製造された有機光電変換素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機光電変換素子の製造方法及び該製造方法により製造された有機光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機太陽電池は塗布法で形成できることから大量生産に適した太陽電池として注目され、多くの研究機関で盛んに研究がなされている。有機太陽電池は有機ドナー材料と有機アクセプター材料を混合した、所謂、バルクヘテロジャンクション構造によって、課題だった電荷分離効率を向上させている。結果としてエネルギー変換効率は5%台まで向上し、一気に実用レベルにまで発展してきた分野と言える(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
有機光電変換素子においては、陽極となる第一の電極と光電変換層となる活性層との間に、ホールを選択的に通しやすく、エレクトロンを通しにくくする正孔輸送層、陰極となる第二の電極と光電変換層の間に、エレクトロンを選択的に通しやすく、ホールを通しにくくする電子輸送層を導入することで光電変換効率を向上させて提案がなされている。中でも、正孔輸送層としてPEDOT、電子輸送層としてTiOxを塗布法により形成する方法が提案されている(特許文献2,3参照)が、これら塗布法で得られる正孔輸送層、電子輸送層は得られる膜の密度が低く、キャリアの選択性が十分ではなかったという課題があった。また、導電性繊維や金属ナノロッドなど表面凹凸の大きい電極の表面に被覆しようとした場合、凹凸に沿った被覆が困難で電極に対する被覆率が低くなるといった実用上の課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5331183号明細書
【特許文献2】特開2007−273929号公報
【特許文献3】WO2004−017422A2号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、従来提案されている技術では、いずれも各種特性を満足した正孔輸送層または電子輸送層を得るという課題を解決することができなかった。従って、本発明の目的は、表面凹凸の大きい電極表面上にも高い被覆率でより緻密な膜を形成させる有機光電変換素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0007】
1.第一の電極と第二の電極に挟まれたバルクヘテロジャンクション型の光電変換層と、正孔輸送層もしくは電子輸送層とを有する有機光電変換素子の製造方法において、該第一の電極は金属Aから成り、かつ、前記正孔輸送層もしくは電子輸送層の形成工程が、該第一の電極の上に、前記金属Aとは異なる金属Bを含有する物質又は金属Bを被覆する工程と、該金属Bを酸化させる工程とを含むことを特徴とする有機光電変換素子の製造方法。
【0008】
2.前記金属Bが、前記金属Bを含有する金属塩化合物から供給されることを特徴とする前記1記載の有機光電変換素子の製造方法。
【0009】
3.前記金属Bを含有する物質又は金属Bを被覆する工程が、前記金属Aから成る第一の電極を形成させた後、前記金属Bを酸化させる工程を含むことを特徴とする前記1又は2記載の有機光電変換素子の製造方法。
【0010】
4.前記金属Bを被覆させる工程が、メッキ法を用いることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の有機光電変換素子の製造方法。
【0011】
5.前記金属Bを含有する物質を酸化させる工程が、大気圧プラズマを用いることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の有機光電変換素子の製造方法。
【0012】
6.前記第一の電極と第二の電極の少なくとも一方の電極とバルクヘテロジャンクション層の間の層が少なくとも正孔輸送層と電子輸送層のいずれかであることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の有機光電変換素子の製造方法。
【0013】
7.前記金属Bが少なくともTi、Ni、Cu、Znのいずれかを含むことを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載の有機光電変換素子の製造方法。
【0014】
8.前記第一の電極の表面が凹凸を有することを特徴とする前記1〜7のいずれか1項に記載の有機光電変換素子の製造方法。
【0015】
9.前記第一の電極を形成する金属Aが少なくとも導電性繊維もしくはナノロッドのいずれかを含むことを特徴とする前記1〜8のいずれか1項に記載の有機光電変換素子の製造方法。
【0016】
10.前記導電性繊維が少なくとも金属ナノワイヤまたはカーボンナノチューブのいずれかを含むことを特徴とする前記9に記載の有機光電変換素子の製造方法。
【0017】
11.前記金属ナノワイヤが銀ナノワイヤであることを特徴とする前記10に記載の有機光電変換素子の製造方法。
【0018】
12.前記1〜11のいずれか1項に記載の有機光電変換素子の製造方法により製造されたことを特徴とする有機光電変換素子。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、電極上に金属をメッキ法により形成させ、その表面を大気圧プラズマにより酸化させることで、形成される膜の密度が高く、キャリア分離能に優れた正孔輸送層、電子輸送層を形成することができた。また本発明により、導電性繊維や金属ナノロッドなどの表面凹凸の大きい電極に対しても、高い被覆率で正孔輸送層や電子輸送層を形成させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のバルクヘテロジャンクション型光電変換素子の基本構造を示す概略断面図である。
【図2】本発明のバルクヘテロジャンクション型光電変換素子の好ましい構造を示す概略断面図である。
【図3】回転電極と固定電極を有する大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【図4】ロール回転電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【図5】角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
前述のように、従来の塗布法で形成された正孔輸送層または電子輸送層では、膜の緻密性が低くキャリア分離能が十分でなく、また、表面凹凸の大きい電極上に積層した場合被覆率が低いといった課題があり実用上の課題となっていた。そこで本発明者は第一の電極表面上にメッキ法により金属薄膜を被覆させ、さらに大気圧プラズマ法により金属を酸化させることにより緻密性が良く、表面凹凸の大きい電極表面にも高い被覆率で正孔輸送層および電子輸送層を成膜できることを見出し、本発明に至った。
【0022】
以下、本発明において好ましく用いることができる構成について、詳細に説明する。
【0023】
〔有機光電変換素子〕
本発明の光電変換素子について、図1を用いて詳細に説明する。図1は、本発明のバルクへテロジャンクション型光電変換素子の基本構造を示す概略断面図である。
【0024】
図1において、バルクヘテロジャンクション型有機光電変換素子は、基板11の一方面上に、第一の電極12、バルクヘテロジャンクション構造(p型半導体層およびn型半導体層)を有する光電変換層13(以下、バルクヘテロジャンクション層とも呼ぶ)、及び第二の電極14が図1に示すように順次積層された構造からなる。さらには、第一の電極12と光電変換層13の間、及び/又は光電変換層13と第二の電極14との間に中間層を有しても良い。好ましい中間層の形態としては、光電変換層13と第一の電極12の間に正孔輸送層が積層されており、光電変換層13と第二の電極14の間に電子輸送層が積層されていることが好ましい。本発明は、バルクへテロジャンクション型の有機光電変換素子において、第一の電極が、導電性繊維表面を導電性繊維とは異なる金属の酸化物で被覆されて成ることを特徴とするものである。
【0025】
本発明に係る有機光電変換素子の製造方法としては、図2を用いて詳細に説明する。基板21上に、導電性繊維を塗布した後、大気圧プラズマ法で金属酸化物を被覆させて第一の電極22および正孔輸送層23を形成させ、その上にp型半導体とn型半導体材料含む光電変換層24、電子輸送層25を順次積層し、第2の電極26を形成させることにより、有機光電変換素子を作製することが好ましい。また、正孔輸送層23と電子輸送層25は逆構成であっても本発明で好ましく用いることができる。
【0026】
以下、本発明の好ましい構成について説明する。
【0027】
〔第一の電極〕
本発明の第一の電極は、陰極、陽極は特に限定せず、素子構成により選択することができる。例えば、陽極として用いる場合、第一の電極12は、好ましくは300〜800nmの光を透過する電極である。材料としては、例えば、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の透明導電性金属酸化物、金、銀、白金等の金属薄膜、金属ナノワイヤ、カーボンナノチューブ、導電性高分子を用いることができ、また、それらを組み合わせて構成しても良い。さらに、第一の電極の全光線透過率は60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。全光透過率は、分光光度計等を用いた公知の方法に従って測定することができる。また、本発明の第一の電極の電気抵抗値としては、表面抵抗率として50Ω/□以下であることが好ましく、10Ω/□以下であることがより好ましく、3Ω/□以下であることが特に好ましい。50Ω/□以下であれば、受光面積の広い有機光電変換素子においても十分な光電変換効率が得られるため好ましい。前記表面抵抗率は、例えば、JIS K 7194:1994(導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法)などに準拠して測定することができ、また市販の表面抵抗率計を用いて簡便に測定することができる。なお、図1に示すバルクヘテロ接合型の有機光電変換素子10では、光電変換層13が第一の電極12と第二の電極13とでサンドイッチされているが、一対の櫛歯状電極を光電変換層13の片面に配置するといった、バックコンタクト型の有機光電変換素子10が構成されてもよい。本発明の第一の電極の厚みには特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、一般的に10μm以下であることが好ましく、厚みが薄くなるほど透明性や柔軟性が向上するためより好ましい。
【0028】
〔導電性繊維〕
本発明に係る導電性繊維とは、導電性を有し、かつその長さが直径(太さ)に比べて十分に長い形状を持つものである。本発明に係る導電性繊維は、透明導電層内において導電性繊維が互いに接触し合うことにより3次元的な導電ネットワークを形成し補助電極として機能すると考えられる。従って、導電性繊維が長い方が導電ネットワーク形成に有利であるため好ましい。一方で、導電性繊維が長くなると導電性繊維が絡み合って凝集体を生じ、光学特性を劣化させる場合がある。導電ネットワーク形成や凝集体生成には、導電性繊維の剛性や直径等も影響するため、使用する導電性繊維に応じて最適な平均アスペクト比(アスペクト=長さ/直径)のものを使用することが好ましい。大凡の目安として、平均アスペクト比は、10〜10,000であるものが好ましい。
【0029】
形状としては中空チューブ状、ワイヤ状、ファイバー状のもの等があり、例えば、金属でコーティングした有機繊維や無機繊維、導電性金属酸化物繊維、金属ナノワイヤ、炭素繊維、カーボンナノチューブ等がある。本発明においては、透明性の観点から太さが300nm以下の導電性繊維であることが好ましく、併せて導電性も満足するために、導電性繊維は金属ナノワイヤ及びカーボンナノチューブの群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。さらには、コスト(原材料費、製造費)と性能(導電性、透明性、可撓性)の観点から、銀ナノワイヤが特に好ましい。
【0030】
〔金属ナノワイヤ〕
一般に、金属ナノワイヤとは、金属元素を主要な構成要素とする線状構造体のことをいう。特に、本発明における金属ナノワイヤとは、原子スケールからnmスケールの直径を有する線状構造体を意味する。
【0031】
本発明に係る導電性繊維に適用される金属ナノワイヤとしては、1つの金属ナノワイヤで長い導電パスを形成するために、平均長さが3μm以上であることが好ましく、さらには3〜500μmが好ましく、特に、3〜300μmであることが好ましい。併せて、長さの相対標準偏差は40%以下であることが好ましい。また、平均直径は、透明性の観点からは小さいことが好ましく、一方で、導電性の観点からは大きい方が好ましい。本発明においては、金属ナノワイヤの平均直径として10〜300nmが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。併せて、直径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。
【0032】
本発明に係る金属ナノワイヤの金属組成としては特に制限はなく、貴金属元素や卑金属元素の1種または複数の金属から構成することができるが、貴金属(例えば、金、白金、銀、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム等)及び鉄、コバルト、銅、錫からなる群に属する少なくとも1種の金属を含むことが好ましく、導電性の観点から少なくとも銀を含むことがより好ましい。また、導電性と安定性(金属ナノワイヤの硫化や酸化耐性、及びマグレーション耐性)を両立するために、銀と、銀を除く貴金属に属する少なくとも1種の金属を含むこともできる。本発明に係る金属ナノワイヤが2種類以上の金属元素を含む場合には、例えば、金属ナノワイヤの表面と内部で金属組成が異なっていてもよく、金属ナノワイヤ全体が同一の金属組成を有していてもよい。
【0033】
本発明において金属ナノワイヤの製造手段には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。特に、Adv.Mater.,2002,14,833〜837及びChem.Mater.,2002,14,4736〜4745で報告されたAgナノワイヤの製造方法は、水系で簡便にAgナノワイヤを製造することができる。銀の導電率は金属中で最大であることから、本発明に係る金属ナノワイヤとして好ましく適用することができる。
【0034】
〔カーボンナノチューブ〕
カーボンナノチューブは、厚さ数原子層のグラファイト状炭素原子面(グラフェンシート)が筒形に巻かれた形状からなる炭素系繊維材料であり、その周壁の構成数から単層ナノチューブ(SWCNT)と多層ナノチューブ(MWCNT)とに大別され、また、グラフェンシートの構造の違いからカイラル(らせん)型、ジグザグ型、アームチェア型に分けられ、各種のものが知られている。
【0035】
本発明に係る導電性繊維に適用されるカーボンナノチューブとしては、いずれのタイプのカーボンナノチューブも用いることができ、また、これらの種々のカーボンナノチューブを複数混合して用いてもよいが、導電性に優れた単層カーボンナノチューブであることが好ましく、さらには金属性のアームチェア型単層カーボンナノチューブであることがより好ましい。
【0036】
本発明に係るカーボンナノチューブの形状としては、1つのカーボンナノチューブで長い導電パスを形成するために、アスペクト比(=長さ/直径)が大きい、すなわち細くて長い単層カーボンナノチューブであることが好ましい。例えば、アスペクト比が102以上、好ましくは103以上のカーボンナノチューブが挙げられる。カーボンナノチューブの平均長さは、3μm以上であることが好ましく、さらには3〜500μmが好ましく、特に、3〜300μmであることが好ましい。併せて、長さの相対標準偏差は40%以下であることが好ましい。また、平均直径は100nmより小さいことが好ましく、1〜50nmが好ましく、1〜30nmであることがより好ましい。併せて、直径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。
【0037】
本発明で使用されるカーボンナノチューブの製造方法は特に限定されるものではなく、二酸化炭素の接触水素還元、アーク放電法、レーザー蒸発法、CVD法、気相成長法、一酸化炭素を高温高圧化で鉄触媒と共に反応させて気相で成長させるHiPco法等の公知の手段を用いることができる。また、副生成物や触媒金属等の残留物を除去するために、洗浄法、遠心分離法、ろ過法、酸化法、クロマトグラフ法等の種々の精製法によって、より高純度化されたカーボンナノチューブの方が、各種機能を十分に発現できることから好ましい。
【0038】
導電性繊維と導電性材料を含む透明導電層の好ましい形成方法としては、素子上に導電性繊維の分散液を塗布または印刷し、乾燥して導電性繊維からなる導電ネットワーク構造を形成する。次に、該導電性繊維のネットワーク構造上の隙間に透明導電性材料を含浸させ、導電性繊維と透明導電性材料を含む透明導電層を形成する方法が好ましい。
【0039】
〔金属酸化物〕
本発明で用いることができる金属酸化物としては、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuから選ばれる少なくとも1種類、好ましくはモリブデン、ニッケル、珪素、ジルコニウム、チタン、タングステン、タンタル、アルミニウム、銅、亜鉛、インジウム、クロム、バナジウム、ニオブ、ガリウム及び錫のうち少なくとも1種類の元素を有する。更に好ましくは珪素、チタン、錫、亜鉛、及びインジウムのうち少なくとも1種類の元素を有することが好ましい。これらの金属は単独でも使用できるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。例えば、チタン酸バリウム、SrTiO、PZT等が挙げられる。また、アルカリ金属と他の金属を組み合わせて使用することもできる。金属酸化物は、基本的には結晶質、非晶質を問わないが、結晶質であることが好ましい。結晶質は一種以上の単結晶であっても、多結晶であっても、非晶部と結晶部を同時に有する一種以上の半結晶性物質であっても、また、これらの混合物であってもよいが、特に好ましくは単結晶である。
【0040】
導電性繊維表面がp型半導体の金属酸化物で被覆されていれば、形成される導電パスは正孔輸送層(HTL)としての機能を発現する。p型の半導体材料であれば如何なる金属酸化物でも用いることができ、例えば、酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化タングステン、酸化銅等の金属酸化物等を用いることができる。
【0041】
導電性繊維表面がn型半導体の金属酸化物で被服されていれば、形成される導電パスは電子輸送層(ETL)としての機能を発現する。n型の半導体材料であれば如何なる金属酸化物でも用いることができ、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウム等の金属酸化物を用いることができる。
【0042】
正孔輸送層および電子輸送層は、正孔と電子のうちどちらかの電荷を主に流す層であり、正孔と電子の移動度の差や、エネルギー準位の差による障壁によって、逆の電荷をブロックする層であることが好ましい。
【0043】
〔正孔輸送層〕
正孔輸送層(電子ブロック層)として好ましく用いられる材料としては、スタルクヴイテック社製、商品名BaytronP等のPEDOT、ポリアニリン及びそのドープ材料、特開平5−271166号公報等に記載のトリアリールアミン系化合物、WO2006019270号公報等に記載のシアン化合物、また酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化タングステン等の金属酸化物等を用いることができる。また、バルクへテロジャンクション層に用いたp型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を形成する手段としては、溶液塗布法で形成することが好ましい。
【0044】
〔電子輸送層〕
また電子輸送層(正孔ブロック層)としては、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等のn型半導体材料、及び酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウム等のn型無機酸化物及びフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属化合物等を用いることができる。また、バルクへテロジャンクション層に用いたn型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。
【0045】
本発明の第一の電極表面を被覆する層の製膜方法としては、炭素元素を含む金属酸化物層であれば如何なる方法でもよく、例えば塗布法や蒸着法、スパッタ法、スプレー熱分解法、減圧プラズマCVD法、大気圧プラズマCVD法などを用いる事ができる。フレキシブルな基板を用いた高い生産性を得るためには、連続プロセスに適した方法がより好ましく、中でも塗布法、スプレー熱分解法、大気圧プラズマCVD法が好ましく、連続生産性と膜質の観点から大気圧プラズマCVD法が最も好ましい。
【0046】
大気圧プラズマCVD法を用いて金属酸化物層を形成する場合、層中の炭素元素比率を制御する方法としては、後述する放電(キャリア)ガスの種類、原料となる反応性ガスの濃度および流速、第1電極と第2電極に印加する周波数や電力を調整することで制御することができる。
【0047】
〔プラズマ放電処理〕
以下、大気圧プラズマ法について説明する。
【0048】
大気圧プラズマ法は、大気圧または大気圧近傍の気圧下で放電し、反応性ガスをプラズマ励起し、基材表面上に反応性ガスを導入して金属酸化物等の薄膜を形成する方法であり、例えば、特開平11−133205号、特開2000−185362号、特開平11−61406号、特開2000−147209号、同2000−121804号等などで紹介されている。これら公報に開示される大気圧プラズマ法は、対向する電極間にパルス化され、周波数が0.5〜100kHzであり、かつ、電界の強さが1〜100V/cmで、放電プラズマを発生させるというものである。
【0049】
本発明において、プラズマ放電処理は、大気圧もしくはその近傍の圧力下で行われるが、大気圧もしくはその近傍の圧力とは20kPa〜110kPa程度であり、本発明に記載の良好な効果を得るためには、93kPa〜104kPaが好ましい。
【0050】
本発明において、大気圧プラズマ放電処理としては、ヘリウム或いはアルゴンのような希ガスを放電ガスとして使用し、100kHzを超え、150MHz程度迄の、好ましくは数100kHz〜100MHz程度の高周波電界をかけて行われる。本発明において、供給する電力は用いる放電ガス種により大きく異なるが、特に電極間に供給する電力の下限値は、好ましくは0.01W/cm以上、上限値として、好ましくは20W/cm以下、さらに好ましくは10W/cm以下である。なお、電極における電圧の印加面積(/cm)は、放電が起こる範囲の面積のことをさす。
【0051】
プラズマを発生させるためには、キャリアガスとして、不活性ガスの雰囲気下で放電させる必要があるが、ここで不活性ガスとは、周期表の第18属元素、所謂希ガスと呼ばれる、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等や、更には窒素ガス雰囲気下で行うことが好ましく、アルゴンまたはヘリウムが特に好ましく用いられる。ただし、製造コストの削減といった観点からは窒素ガスを用いることが最も好ましい。
【0052】
本発明において、放電空間に供給するガスには、放電ガスの他に、反応性ガスとして、酸素、オゾン、過酸化水素等を用いる。
【0053】
本発明における放電条件は、対向する第1電極と第2電極との放電空間に、高周波電圧を印加し、該高周波電圧が、第一の周波数ω1の電圧成分と、前記第一の周波数ω1より高い第二の周波数ω2の電圧成分とを重ね合わせた成分を少なくとも有することが好ましい。
【0054】
高周波とは、少なくとも0.5kHzの周波数を有するものをいう。前記高周波電圧が、第一の周波数ω1の電圧成分と、前記第一の周波数ω1より高い第二の周波数ω2の電圧成分とを重ね合わせた成分となり、その波形は周波数ω1のサイン波上に、それより高い周波数ω2のサイン波が重畳されたω1のサイン波がギザギザしたような波形となる。
【0055】
本発明において、放電開始電圧とは、実際の薄膜形成方法に使用される放電空間(電極の構成など)及び反応条件(ガス条件など)において放電を起こすことのできる最低電圧のことを指す。放電開始電圧は、放電空間に供給されるガス種や電極の誘電体種などによって多少変動するが、放電ガス単独の放電開始電圧と略同一と考えてよい。
【0056】
上記で述べたような高周波電圧を対向電極間(放電空間)に印加することによって、薄膜形成可能な放電を起こし、高品位な薄膜形成に必要な高密度プラズマを発生することができる。ここで重要なのは、このような高周波電圧が対向する電極それぞれに印加され、すなわち、同じ放電空間に両方から印加されることが好ましい。
【0057】
上記でサイン波の重畳について説明したが、これに限られるものではなく、両方パルス波であっても、一方がサイン波でもう一方がパルス波であっても構わない。また、更に第3の電圧成分を有していてもよい。
【0058】
上記本発明の高周波電圧を、対向電極間(同一放電空間)に印加する具体的な方法としては、対向電極を構成する第1電極に周波数ω1であって電圧V1である第1の高周波電圧を印加する第1電源を接続し、第2電極に周波数ω2であって電圧V2である第2の高周波電圧を印加する第2電源を接続した大気圧プラズマ放電処理装置である。
【0059】
上記の大気圧プラズマ放電処理装置には、前記対向電極間に、放電ガスと薄膜形成用ガスとを供給するガス供給手段を備える。更に、電極の温度を制御する電極温度制御手段を有することが好ましい。
【0060】
また、電極、第1電源またはそれらの間のいずれかには第1フィルタを、また電極、第2電源またはそれらの間のいずれかには第2フィルタを接続することが好ましく、第1フィルタは該第1電源からの周波数の電流を通過しにくくし、該第2電源からの周波数の電流を通過し易くし、また、第2フィルタはその逆で、該第2電源からの周波数の電流を通過しにくくし、該第1電源からの周波数の電流を通過し易くするというそれぞれのフィルタには機能が備わっているものを使用する。ここで、通過しにくいとは、好ましくは、電流の20%以下、より好ましくは10%以下しか通さないことをいう。逆に通過し易いとは、好ましくは電流の80%以上、より好ましくは90%以上を通すことをいう。
【0061】
さらに、本発明の大気圧プラズマ放電処理装置の第1電源は、第2電源より大きな高周波電圧を印加できる能力を有していることが好ましい。
【0062】
また、本発明における別の放電条件としては、対向する第1電極と第2電極との間に、高周波電圧を印加し、該高周波電圧が、第1の高周波電圧V1及び第2の高周波電圧V2を重畳したものであって、放電開始電圧をIVとしたとき、
V1≧IV>V2
または V1>IV≧V2
を満たす。更に好ましくは、
V1>IV>V2
を満たすことである。
【0063】
高周波及び放電開始電圧の定義、また、上記本発明の高周波電圧を、対向電極間(同一放電空間)に印加する具体的な方法としては、上述したものと同様である。
【0064】
ここで、本発明でいう高周波電圧(印加電圧)と放電開始電圧は、下記の方法で測定されたものをいう。
【0065】
(高周波電圧V1及びV2(単位:kV/mm)の測定方法)
各電極部の高周波プローブ(P6015A)を設置し、該高周波プローブをオシロスコープ(Tektronix社製、TDS3012B)に接続し、電圧を測定する。
【0066】
(放電開始電圧IV(単位:kV/mm)の測定方法)
電極間に放電ガスを供給し、該電極間の電圧を増大させていき、放電が始まる電圧を放電開始電圧IVと定義する。測定器は上記高周波電圧測定と同じである。
【0067】
高い電圧をかけるような放電条件をとることにより、例え窒素ガスのように放電開始電圧が高い放電ガスでも、放電ガスを開始し、高密度で安定なプラズマ状態を維持でき、高性能な薄膜形成を行うことができるのである。
【0068】
上記の測定により放電ガスを窒素ガスとした場合、その放電開始電圧IVは3.7kV/mm程度であり、従って、上記の関係において、第1の高周波電圧を、V1≧3.7kV/mmとして印加することによって窒素ガスを励起し、プラズマ状態にすることができる。
【0069】
ここで、第1電源の周波数としては、200kHz以下の周波数が好ましく用いることができる。またこの電界波形としては、サイン波でもパルスでもよい。下限は1kHz程度が望ましい。
【0070】
一方、第2電源の周波数としては、800kHz以上の周波数が好ましく用いられる。この第2電源の周波数が高い程、プラズマ密度が高くなり、緻密で良質な薄膜が得られる。上限は200MHz程度が望ましい。
【0071】
このような2つの電源から高周波電圧を印加することは、第1の周波数ω1側によって高い放電開始電圧を有する放電ガスの放電を開始するのに必要であり、また第2の周波数ω2側はプラズマ密度を高くして緻密で良質な薄膜を形成するのに必要である。
【0072】
本発明において、前記第1フィルタは、前記第1電源からの周波数の電流を通過しにくくし、かつ前記第2電源からの周波数の電流を通過し易くするようになっており、また前記第2フィルタは、該第2電源からの周波数の電流を通過しにくく、かつ該第1電源からの周波数の電流を通過し易くするようになっている。本発明において、かかる性質のあるフィルタであれば制限なく使用できる。
【0073】
例えば、第1フィルタとしては、第2電源の周波数に応じて数10〜数万pFのコンデンサー、もしくは数μH程度のコイルを用いることができる。第2フィルタとしては、第1電源の周波数に応じて10μH以上のコイルを用い、これらのコイルまたはコンデンサーを介してアース接地することでフィルタとして使用できる。
【0074】
本発明の大気圧プラズマ放電処理装置は、上述のように、対向電極の間で放電させ、該対向電極間に導入した少なくとも放電ガスと薄膜形成性ガスをプラズマ状態とし、該対向電極間に静置或いは移送される基材を該プラズマ状態のガスに晒すことによって、該基材の上に薄膜を形成させるものである。また他の方式として、大気圧プラズマ放電処理装置は、上記同様の対向電極間で放電させ、該対向電極間に導入したガスを励起しまたはプラズマ状態とし、該対向電極外にジェット状に励起またはプラズマ状態のガスを吹き出し、該対向電極の近傍にある基材(静置していても移送されていてもよい)を晒すことによって該基材の上に薄膜を形成させるジェット方式であっても本発明で好ましく用いることができる。
【0075】
ジェット方式の該大気圧プラズマ放電処理装置を複数基接して直列に並べて同時に同じプラズマ状態のガスを放電させることができるので、何回も処理され高速で処理することもできる。また各装置が異なったプラズマ状態のガスをジェット噴射すれば、異なった層の積層薄膜を形成することもできる。
【0076】
図3は本発明において特に有用な、対向電極間で基材を処理する方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【0077】
本発明の大気圧プラズマ放電処理装置は、少なくとも、プラズマ放電処理装置30、2つの電源を有する電圧印加手段40、ガス供給手段50、電極温度調節手段60を有している装置である。
【0078】
図3は、ロール回転電極(第1電極)35と角筒型固定電極群(第2電極)36との対向電極間(放電空間)32で、基材Fをプラズマ放電処理して薄膜を形成するものである。
【0079】
ロール回転電極(第1電極)35と角筒型固定電極群(第2電極)36との間の放電空間(対向電極間)32に、ロール回転電極(第1電極)35には第1電源41から周波数ω1であって高周波電圧V1を、また角筒型固定電極群(第2電極)36には第2電源42から周波数ω2であって高周波電圧V2をかけるようになっている。
【0080】
ロール回転電極(第1電極)35と第1電源41との間には、第1電源41からの電流がロール回転電極(第1電極)35に向かって流れるように第1フィルタ43が設置されており、該第1フィルタは第1電源41からの電流を通過しにくくし、第2電源42からの電流を通過し易くするように設計されている。また、角筒型固定電極群(第2電極)36と第2電源42との間には、第2電源からの電流が第2電極に向かって流れるように第2フィルタ44が設置されており、第2フィルタ44は、第2電源42からの電流を通過しにくくし、第1電源41からの電流を通過し易くするように設計されている。
【0081】
尚、本発明においては、ロール回転電極35を第2電極、また角筒型固定電極群36を第1電極としてもよい。いずれにしろ第1電極には第1電源が、また第2電極には第2電源が接続される。更に、第1電源は第2電源より大きな高周波電圧(V1>V2)を印加できる能力を有していればよい。また、周波数はω1<ω2となる能力を有していればよい。
【0082】
ガス供給手段50のガス供給装置51で発生させたガスGは、流量を制御して給気口52よりプラズマ放電処理容器31内に導入する。放電空間32及びプラズマ放電処理容器31内をガスGで満たす。
【0083】
基材Fを、図示されていない元巻きから巻きほぐして搬送されて来るか、または前工程から搬送されて来て、ガイドロール64を経てニップロール65で基材に同伴されて来る空気等を遮断し、ロール回転電極35に接触したまま巻き回しながら角筒型固定電極群36との間に移送し、ロール回転電極(第1電極)35と角筒型固定電極群(第2電極)36との両方から電圧をかけ、対向電極間(放電空間)32で放電プラズマを発生させる。基材Fはロール回転電極35に接触したまま巻き回されながらプラズマ状態のガスにより薄膜を形成する。基材Fは、ニップロール66、ガイドロール67を経て、図示してない巻き取り機で巻き取るか、次工程に移送する。
【0084】
放電処理済みの処理排ガスG′は排気口53より排出する。薄膜形成中、ロール回転電極(第1電極)35及び角筒型固定電極群(第2電極)36を加熱または冷却するために、電極温度調節手段60で温度を調節した媒体を、送液ポンプPで配管61を経て両電極に送り、電極内側から温度を調節する。尚、65及び66はプラズマ放電処理容器31と外界とを仕切る仕切板である。
【0085】
図4は、図3に示したロール回転電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【0086】
図4において、ロール電極35aは導電性の金属質母材35Aとその上に誘電体35Bが被覆されたものである。内部は中空のジャケットになっていて温度調節が行われるようになっている。
【0087】
図5は、角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【0088】
図5において、角筒型電極36aは、導電性の金属質母材36Aに対し、図3同様の誘電体36Bの被覆を有しており、該電極の構造は金属質のパイプになっていて、それがジャケットとなり、放電中の温度調節が行えるようになっている。
【0089】
尚、角筒型固定電極の数は、上記ロール電極の円周より大きな円周上に沿って複数本設置されており、該電極の放電面積はロール回転電極35に対向している全角筒型固定電極面の面積の和で表される。
【0090】
図5に示した角筒型電極36aは、円筒型電極でもよいが、角筒型電極は円筒型電極に比べて、放電範囲(放電面積)を広げる効果があるので、本発明に好ましく用いられる。
【0091】
図4及び5において、ロール電極35a及び角筒型電極36aは、それぞれ導電性の金属質母材35A及び36Aの上に誘電体35B及び36Bとしてのセラミックスを溶射後、無機化合物の封孔材料を用いて封孔処理したものである。セラミックス誘電体は片肉で1mm程度被覆があればよい。溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工し易いので、特に好ましく用いられる。また、誘電体層が、ガラスライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体であってもよい。
【0092】
導電性の金属質母材35A及び36Aとしては、チタン金属またはチタン合金、銀、白金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄等の金属等や、鉄とセラミックスとの複合材料またはアルミニウムとセラミックスとの複合材料を挙げることができるが、後述の理由からはチタン金属またはチタン合金が特に好ましい。
【0093】
2個の電極間の距離(電極間隙)は、導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定されるが、電極の一方に誘電体を設けた場合の誘電体表面と導電性の金属質母材表面の最短距離、上記電極の双方に誘電体を設けた場合の誘電体表面同士の距離としては、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.1〜20mmが好ましく、特に好ましくは0.5〜2mmである。
【0094】
本発明に有用な導電性の金属質母材及び誘電体についての詳細については後述する。
【0095】
プラズマ放電処理容器31はパイレックス(登録商標)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウムまたは、ステンレススティールのフレームの内面にポリイミド樹脂等を貼りつけてもよく、該金属フレームにセラミックス溶射を行い、絶縁をとってもよい。
【0096】
大気圧プラズマ放電処理装置に設置する第1電源(高周波電源)としては、
印加電源記号 メーカー 周波数
A1 神鋼電機 3kHz
A2 神鋼電機 5kHz
A3 春日電機 15kHz
A4 神鋼電機 50kHz
A5 ハイデン研究所 100kHz
A6 パール工業 200kHz
等の市販のものを挙げることができ、いずれも使用することができる。尚、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。
【0097】
また、第2電源(高周波電源)としては、
印加電源記号 メーカー 周波数
B1 パール工業 800kHz
B2 パール工業 2MHz
B3 パール工業 13.56MHz
B4 パール工業 27MHz
B5 パール工業 150MHz
等の市販のものを挙げることができ、いずれも好ましく使用できる。
【0098】
本発明においては、このような電圧を印加して、均一なグロー放電状態を保つことができる電極をプラズマ放電処理装置に採用する必要がある。
【0099】
本発明において、対向する電極間に印加する電力は、第2電極に1W/cm以上の電力(出力密度)を供給し、放電ガスを励起してプラズマを発生させ、エネルギーを薄膜形成性ガスに与え薄膜を形成させる。供給する電力の上限値としては、好ましくは50W/cm以下、より好ましくは20W/cm以下である。下限値は、好ましくは1.2W/cm以上である。尚、放電面積(cm)は、電極において放電が起こる範囲の面積のことをさす。
【0100】
ここで電源の印加法に関しては、連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードと、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モードのどちらを採用してもよいが、少なくとも第2電極側は連続サイン波の方がより緻密で良質な膜が得られるので好ましい。
【0101】
このような大気圧プラズマによる薄膜形成法に使用する電極は、構造的にも、性能的にも過酷な条件に耐えられるものでなければならない。このような電極としては、金属質母材上に誘電体を被覆したものであることが好ましい。
【0102】
本発明に使用する誘電体被覆電極においては、様々な金属質母材と誘電体との間に特性が合うものが好ましく、その一つの特性として、金属質母材と誘電体との線熱膨張係数の差が10×10−6/℃以下となる組み合わせのものである。好ましくは8×10−6/℃以下、更に好ましくは5×10−6/℃以下、更に好ましくは2×10−6/℃以下である。尚、線熱膨張係数とは、周知の材料特有の物性値である。
【0103】
線熱膨張係数の差が、この範囲にある導電性の金属質母材と誘電体との組み合わせとしては、
(1)金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がセラミックス溶射被膜
(2)金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がガラスライニング
(3)金属質母材がステンレススティールで、誘電体がセラミックス溶射被膜
(4)金属質母材がステンレススティールで、誘電体がガラスライニング
(5)金属質母材がセラミックス及び鉄の複合材料で、誘電体がセラミックス溶射被膜
(6)金属質母材がセラミックス及び鉄の複合材料で、誘電体がガラスライニング
(7)金属質母材がセラミックス及びアルミニウムの複合材料で、誘電体がセラミックス溶射皮膜
(8)金属質母材がセラミックス及びアルミニウムの複合材料で、誘電体がガラスライニング
等がある。線熱膨張係数の差という観点では、上記(1)または(2)及び(5)〜(8)が好ましく、特に(1)が好ましい。
【0104】
本発明において、金属質母材は、上記の特性からはチタンまたはチタン合金が特に有用である。金属質母材をチタンまたはチタン合金とすることにより、誘電体を上記とすることにより、使用中の電極の劣化、特にひび割れ、剥がれ、脱落等がなく、過酷な条件での長時間の使用に耐えることができる。
【0105】
本発明に有用な電極の金属質母材は、チタンを70質量%以上含有するチタン合金またはチタン金属である。本発明において、チタン合金またはチタン金属中のチタンの含有量は、70質量%以上であれば、問題なく使用できるが、好ましくは80質量%以上のチタンを含有しているものが好ましい。本発明に有用なチタン合金またはチタン金属は、工業用純チタン、耐食性チタン、高力チタン等として一般に使用されているものを用いることができる。工業用純チタンとしては、TIA、TIB、TIC、TID等を挙げることができ、いずれも鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、水素原子等を極僅か含有しているもので、チタンの含有量としては、99質量%以上を有している。耐食性チタン合金としては、T15PBを好ましく用いることができ、上記含有原子の他に鉛を含有しており、チタン含有量としては、98質量%以上である。また、チタン合金としては、鉛を除く上記の原子の他に、アルミニウムを含有し、その他バナジウムや錫を含有しているT64、T325、T525、TA3等を好ましく用いることができ、これらのチタン含有量としては、85質量%以上を含有しているものである。これらのチタン合金またはチタン金属はステンレススティール、例えばAISI316に比べて、熱膨張係数が1/2程度小さく、金属質母材としてチタン合金またはチタン金属の上に施された後述の誘電体との組み合わせがよく、高温、長時間での使用に耐えることができる。
【0106】
一方、誘電体の求められる特性としては、具体的には、比誘電率が6〜45の無機化合物であることが好ましく、また、このような誘電体としては、アルミナ、窒化珪素等のセラミックス、或いは、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等がある。この中では、後述のセラミックスを溶射したものやガラスライニングにより設けたものが好ましい。特にアルミナを溶射して設けた誘電体が好ましい。
【0107】
または、上述のような大電力に耐える仕様の一つとして、誘電体の空隙率が10体積%以下、好ましくは8体積%以下であることで、好ましくは0体積%を越えて5体積%以下である。尚、誘電体の空隙率は、BET吸着法や水銀ポロシメーターにより測定することができる。後述の実施例においては、島津製作所製の水銀ポロシメーターにより金属質母材に被覆された誘電体の破片を用い、空隙率を測定する。誘電体が、低い空隙率を有することにより、高耐久性が達成される。このような空隙を有しつつも空隙率が低い誘電体としては、後述の大気プラズマ溶射法等による高密度、高密着のセラミックス溶射被膜等を挙げることができる。更に空隙率を下げるためには、封孔処理を行うことが好ましい。
【0108】
上記、大気プラズマ溶射法は、セラミックス等の微粉末、ワイヤ等をプラズマ熱源中に投入し、溶融または半溶融状態の微粒子として被覆対象の金属質母材に吹き付け、皮膜を形成させる技術である。プラズマ熱源とは、分子ガスを高温にし、原子に解離させ、更にエネルギーを与えて電子を放出させた高温のプラズマガスである。このプラズマガスの噴射速度は大きく、従来のアーク溶射やフレーム溶射に比べて、溶射材料が高速で金属質母材に衝突するため、密着強度が高く、高密度な被膜を得ることができる。詳しくは、特開2000−301655号に記載の高温被曝部材に熱遮蔽皮膜を形成する溶射方法を参照することができる。この方法により、上記のような被覆する誘電体(セラミックス溶射膜)の空隙率にすることができる。
【0109】
また、大電力に耐える別の好ましい仕様としては、誘電体の厚みが0.5〜2mmであることである。この膜厚変動は、5%以下であることが望ましく、好ましくは3%以下、更に好ましくは1%以下である。
【0110】
誘電体の空隙率をより低減させるためには、上記のようにセラミックス等の溶射膜に、更に、無機化合物で封孔処理を行うことが好ましい。前記無機化合物としては、金属酸化物が好ましく、この中では特に酸化珪素(SiO)を主成分として含有するものが好ましい。
【0111】
封孔処理の無機化合物は、ゾルゲル反応により硬化して形成したものであることが好ましい。封孔処理の無機化合物が金属酸化物を主成分とするものである場合には、金属アルコキシド等を封孔液として前記セラミックス溶射膜上に塗布し、ゾルゲル反応により硬化する。無機化合物がシリカを主成分とするものの場合には、アルコキシシランを封孔液として用いることが好ましい。
【0112】
ここでゾルゲル反応の促進には、エネルギー処理を用いることが好ましい。エネルギー処理としては、熱硬化(好ましくは200℃以下)や、紫外線照射などがある。更に封孔処理の仕方として、封孔液を希釈し、コーティングと硬化を逐次で数回繰り返すと、よりいっそう無機質化が向上し、劣化の無い緻密な電極ができる。
【0113】
本発明に係る誘電体被覆電極の金属アルコキシド等を封孔液として、セラミックス溶射膜にコーティングした後、ゾルゲル反応で硬化する封孔処理を行う場合、硬化した後の金属酸化物の含有量は60モル%以上であることが好ましい。封孔液の金属アルコキシドとしてアルコキシシランを用いた場合には、硬化後のSiO(xは2以下)含有量が60モル%以上であることが好ましい。硬化後のSiO含有量は、XPSにより誘電体層の断層を分析することにより測定する。
【0114】
本発明の薄膜形成方法に係る電極においては、電極の少なくとも基材と接する側のJIS B 0601で規定される表面粗さの最大高さ(Rmax)が10μm以下になるように調整することが、本発明に記載の効果を得る観点から好ましいが、更に好ましくは、表面粗さの最大値が8μm以下であり、特に好ましくは、7μm以下に調整することである。このように誘電体被覆電極の誘電体表面を研磨仕上げする等の方法により、誘電体の厚み及び電極間のギャップを一定に保つことができ、放電状態を安定化できること、更に熱収縮差や残留応力による歪やひび割れをなくし、かつ、高精度で、耐久性を大きく向上させることができる。誘電体表面の研磨仕上げは、少なくとも基材と接する側の誘電体において行われることが好ましい。更にJIS B 0601で規定される中心線平均表面粗さ(Ra)は0.5μm以下が好ましく、更に好ましくは0.1μm以下である。
【0115】
本発明に使用する誘電体被覆電極において、大電力に耐える他の好ましい仕様としては、耐熱温度が100℃以上であることである。更に好ましくは120℃以上、特に好ましくは150℃以上である。また上限は500℃である。尚、耐熱温度とは、絶縁破壊が発生せず、正常に放電できる状態において耐えられる最も高い温度のことを指す。このような耐熱温度は、上記のセラミックス溶射や、泡混入量の異なる層状のガラスライニングで設けた誘電体を適用したり、下記金属質母材と誘電体の線熱膨張係数の差の範囲内の材料を適宜選択する手段を適宜組み合わせたりすることによって達成可能である。
【0116】
〔第二の電極〕
本発明に係る第二の電極は、少なくとも導電性繊維を含むことが好ましい。本発明の第二の電極は、陰極、陽極は特に限定せず、素子構成により選択することができる。さらに、本発明においては、導電性繊維とともに、透明導電性材料を含むことができる。
【0117】
〔基板〕
基板は、順次積層された第一の電極、光電変換層及び第二の電極を保持する部材である。本実施形態では、少なくとも第一の電極又は第二の電極、更には両方の電極から光電変換される光が入射することが可能なように、光電変換すべき光の波長に対して透明な基板であることが望ましい。基板は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が好適に挙げられるが、軽量性と柔軟性の観点から透明樹脂フィルムを用いることが望ましい。本発明で透明基板として好ましく用いることができる透明樹脂フィルムには特に制限がなく、その材料、形状、構造、厚み等については公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができるが、可視域の波長(380〜780nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に係る透明樹脂フィルムに好ましく適用することができる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
【0118】
本発明に用いられる透明基材には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。透明樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである場合は、フィルムに隣接する易接着層の屈折率を1.57〜1.63とすることで、フィルム基材と易接着層との界面反射を低減して透過率を向上させることができるのでより好ましい。屈折率を調整する方法としては、酸化スズゾルや酸化セリウムゾル等の比較的屈折率の高い酸化物ゾルとバインダー樹脂との比率を適宜調整して塗設することで実施できる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。また、透明基材にはバリアコート層が予め形成されていてもよいし、透明導電層を転写する反対側にはハードコート層が予め形成されていてもよい。
【0119】
〔光電変換層〕
光電変換層13は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、p型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を有して構成される。p型半導体材料は、相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型半導体材料は、相対的に電子受容体(アクセプター)として機能する。ここで、電子供与体及び電子受容体は、“光を吸収した際に、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)を形成する電子供与体及び電子受容体”であり、電極のように単に電子を供与あるいは受容するものではなく、光反応によって、電子を供与あるいは受容するものである。
【0120】
本発明に用いられるp型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族化合物や共役系化合物が挙げられる。
【0121】
縮合多環芳香族化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、へプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、及びこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
【0122】
共役系化合物としては、例えば、ポリチオフェン及びそのオリゴマー、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、テトラチアフルバレン化合物、キノン化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、フラーレン及びこれらの誘導体あるいは混合物を挙げることができる。
【0123】
また、特にポリチオフェン及びそのオリゴマーのうち、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いることができる。
【0124】
その他、高分子p型半導体の例としては、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリピロール、ポリパラフェニレンスルフィド、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン、ポリカルバゾール、ポリイソチアナフテン、ポリヘプタジイン、ポリキノリン、ポリアニリンなどが挙げられ、更には特開2006−36755号公報などの置換―無置換交互共重合ポリチオフェン、特開2007−51289号公報、特開2005−76030号公報、J.Amer.Chem.Soc.,2007,p4112、J.Amer.Chem.Soc.,2007,p7246などの縮環チオフェン構造を有するポリマー、WO2008/000664、Adv.Mater.,2007,p4160、Macromolecules,2007,Vol.40,p1981などのチオフェン共重合体などを挙げることができる。
【0125】
さらに、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、BEDTTTF−ヨウ素錯体、TCNQ−ヨウ素錯体、等の有機分子錯体、C60、C70、C76、C78、C84等のフラーレン類、SWNT等のカーボンナノチューブ、メロシアニン色素類、ヘミシアニン色素類等の色素等、さらにポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマーや特開2000−260999に記載の有機・無機混成材料も用いることができる。
【0126】
これらのπ共役系材料のうちでも、ペンタセン等の縮合多環芳香族化合物、フラーレン類、縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、金属フタロシアニン、金属ポルフィリンよりなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。また、ペンタセン類がより好ましい。
【0127】
ペンタセン類の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986等に記載の置換アセン類及びその誘導体等が挙げられる。
【0128】
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶剤への溶解性が高く、かつ乾燥後は結晶性薄膜を形成し、高い移動度を達成することが可能な化合物が好ましい。そのような化合物としては、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123、p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008)、No.9、2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物、及び米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、特開2007−224019号公報等に記載のポルフィリンプレカーサー等のような、プレカーサータイプの化合物(前駆体)が挙げられる。これらの中でも、後者のプリカーサータイプの方が好ましく用いることができる。これは、プリカーサータイプの方が、変換後に不溶化するため、バルクへテロジャンクション層の上に正孔輸送層・電子輸送層・正孔ブロック層・電子ブロック層等を溶液プロセスで形成する際に、バルクへテロジャンクション層が溶解してしまうことがなくなるため、前記の層を構成する材料とバルクへテロジャンクション層を形成する材料とが混合することがなくなり、一層の効率向上・寿命向上を達成することができるためである。
【0129】
本発明の有機光電変換素子のp型半導体材料としては、p型半導体材料前駆体に熱・光・放射線・化学反応を引き起こす化合物の蒸気に晒す、等の方法によって化学構造変化を起こし、p型半導体材料に変換された化合物であることが好ましい。中でも熱によって科学構造変化を起こす化合物が好ましい。
【0130】
n型半導体材料の例としては、フラーレン、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む、高分子化合物が挙げられる。
【0131】
中でも、フラーレン含有高分子化合物が好ましい。フラーレン含有高分子化合物としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)等を骨格に持つ高分子化合物が挙げられる。フラーレン含有高分子化合物では、フラーレンC60を骨格に持つ高分子化合物(誘導体)が好ましい。
【0132】
フラーレン含有ポリマーとしては、大別してフラーレンが高分子主鎖からペンダントされたポリマーと、フラーレンが高分子主鎖に含有されるポリマーとに大別されるが、フラーレンがポリマーの主鎖に含有されている化合物が好ましい。これは、フラーレンが主鎖に含有されているポリマーは、ポリマーが分岐構造を有さないため、固体化した際に高密度なパッキングができ、結果として高い移動度を得ることができるためではないかと推定される。
【0133】
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。この中で、特に塗布法が好ましい。
【0134】
そして、光電変換部のバルクヘテロジャンクション層は、光電変換率を向上すべく、製造工程中において所定の温度でアニール処理され、微視的に一部結晶化されている。
【0135】
光電変換素子では、基板を介して透明電極から入射された光は、光電変換部のバルクヘテロジャンクション層における電子受容体あるいは電子供与体で吸収され、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)が形成される。発生した電荷は、内部電界、例えば、透明電極と対電極の仕事関数が異なる場合では透明電極と対電極との電位差によって、電子は、電子受容体間を通り、また正孔は、電子供与体間を通り、それぞれ異なる電極へ運ばれ、光電流が検出される。例えば、透明電極の仕事関数が対電極の仕事関数よりも大きい場合では、電子は、透明電極へ、正孔は、対電極へ輸送される。なお、仕事関数の大小が逆転すれば電子と正孔は、これとは逆方向に輸送される。また、透明電極と対電極との間に電位をかけることにより、電子と正孔の輸送方向を制御することもできる。
【0136】
光電変換部は、電子受容体と電子供与体とが均一に混在された単一層で構成してもよいが、電子受容体と電子供与体との混合比を変えた複数層で構成してもよい。
【0137】
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。このうち、前述の正孔と電子が電荷分離する界面の面積を増大させ、高い光電変換効率を有する素子を作製するためには、塗布法が好ましい。塗布後は残留溶媒及び水分、ガスの除去、及び前述のような半導体材料の化学反応を引き起こすために加熱を行うことが好ましい。
【0138】
〔中間層〕
また、上述のバルクヘテロ接合型の有機光電変換素子は、順次に基板上に積層された透明電極、バルクヘテロジャンクション層の光電変換部及び対電極で構成されたが、これに限られず、例えば透明電極や対電極と光電変換部との間に正孔輸送層、電子輸送層、正孔ブロック層、電子ブロック層、あるいは平滑化層等の他の層を有してバルクヘテロ接合型の有機光電変換素子が構成されてもよい。これらの中でも、バルクへテロジャンクション層と陽極(通常、透明電極側)との中間には正孔輸送層または電子ブロック層を、陰極(通常、対電極側)との中間には電子輸送層または正孔ブロック層を形成することで、バルクへテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
【0139】
〔タンデム型構成〕
太陽光利用率(光電変換効率)の向上を目的として、光電変換素子を積層した、タンデム型の構成としてもよい。タンデム型構成の場合、基板上に、順次透明電極、第一の光電変換部を積層した後、電荷再結合層を積層した後、第二の光電変換部、次いで対電極を積層することで、タンデム型の構成とすることができる。第二の光電変換部は、第一の光電変換部の吸収スペクトルと同じスペクトルを吸収する層でもよいし、異なるスペクトルを吸収する層でもよいが、好ましくは異なるスペクトルを吸収する層である。また、電荷再結合層の材料としては、透明性と導電性を併せ持つ化合物を用いた層であることが好ましく、ITO、AZO、FTO、酸化チタン等の透明金属酸化物、Ag、Al、Au等の非常に薄い金属層、PEDOT:PSS、ポリアニリン等の導電性高分子材料等が好ましい。
【0140】
〔封止〕
また、作製した有機光電変換素子が環境中の酸素、水分等で劣化しないために、公知の手法によって封止することが好ましい。例えば、アルミまたはガラスでできたキャップを接着剤によって接着することによって封止する手法、アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等のガスバリア層が形成されたプラスチックフィルムと有機光電変換素子上10を接着剤で貼合する手法、ガスバリア性の高い有機高分子材料(ポリビニルアルコール等)をスピンコートする方法、ガスバリア性の高い無機薄膜(酸化ケイ素、酸化アルミニウム等)を直接堆積する方法、及びこれらを複合的に積層する方法等を挙げることができる。
【実施例】
【0141】
(有機光電変換素子SC−101の作製)
《金属ナノワイヤ》
バリア層付きPENフィルム基板上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積したもの(シート抵抗13Ω/□)を、通常のフォトリソグラフィ技術と塩酸エッチングとを用いて10×100mm角の受光部と取り出し電極部をパターニングし第1の電極を形成した。
【0142】
パターン形成した第1の電極を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
【0143】
本実施例では、金属ナノワイヤとして銀ナノワイヤを用いた。銀ナノワイヤは、Adv.Mater.,2002,14,833〜837に記載の方法を参考に、平均直径75nm、平均長さ35μmの銀ナノワイヤを作製し、限外濾過膜を用いて銀ナノワイヤを濾別かつ水洗処理した後、エタノール中に再分散して銀ナノワイヤ(AgNW)分散液(銀ナノワイヤ含有量5質量%)を調製した。ITOを堆積させたPENフィルム基板上に、銀ナノワイヤ分散液を銀ナノワイヤの目付け量が80mg/mとなるようにアプリケータを用いて塗布し乾燥して、銀ナノワイヤネットワーク構造を形成した。
【0144】
さらに、下記電解めっき液を用いて25℃で電解銅めっき処理を施した後、水洗、乾燥処理を行った。なお電解銅めっきにおける電流制御は3Aで1分間、次いで1Aで12分間、計13分間かけて実施した。
【0145】
めっき処理終了後に、純水で10分間洗い流して水洗処理を行い、乾燥風(50℃)を用いてドライ状態になるまで乾燥した。
【0146】
(電解めっき液)
硫酸銅(五水和物) 200g
硫酸 50g
塩化ナトリウム 0.1g
水を加えて総量を1000mlに仕上げる。
【0147】
下記プラズマ処理条件により照射し、めっき表面の酸化処理を行うことにより表面に金属酸化物を被覆した本発明の第一電極を作製した。
【0148】
(プラズマ処理条件)
キャリアガス:窒素
反応性ガス:酸素(窒素に対して12体積%)
第1電源電力:ハイデン研究所PHF−6k(100kHz)
第2電源電力:パール工業CF−5000−13M(13.56MHz)
印加出力:1.0W/cm
電極部温度調節:80℃
処理時間:2秒
これ以降は、基板をグローブボックス中に持ち込み、窒素雰囲気下で作業した。
【0149】
次に、クロロベンゼンにP3HT(プレクストロニクス社製:レジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン)(Mw=52000、高分子p型半導体材料)とPCBM(フロンティアカーボン:6,6−フェニル−C61−ブチリックアシッドメチルエステル)(Mw=911、低分子n型半導体材料)を3.0質量%になるように1:1で混合した液を調製し、フィルターでろ過しながら膜厚300nmになるように塗布を行い、室温で放置して光電変換層を成膜した。
【0150】
次に、エタノールにTi−イソプロポキシドを0.05mol/Lになるように溶解した液を調製し、マスキングした後、膜厚20nmになるように塗布を行い、水蒸気量を調節した大気中放置して電子輸送層を成膜した。
【0151】
次に、作製した素子を真空蒸着装置内に設置して、1cm幅のシャドウマスクをセットし、1×10−3Pa以下にまで真空蒸着機内を減圧した後、アルミニウムを膜厚が100nmになるように蒸着し、第二の電極を形成させた。
【0152】
得られた有機光電変換素子SC−101は、窒素雰囲気下でバリア付きPENフィルムとUV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った。
【0153】
(有機光電変換素子SC−102の作製)
有機光電変換素子SC−101の作製において、メッキする金属をニッケルに変更し、上述のようにニッケルの酸化処理を行い、酸化ニッケル被覆銀ナノワイヤを第一の電極とした以外は、有機光電変換素子SC−101と同様にして有機光電変換素子SC−102を得た。
【0154】
得られた有機光電変換素子SC−102は、窒素雰囲気下でバリア付きPENフィルムとUV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った。
【0155】
(有機光電変換素子SC−103の作製)
有機光電変換素子SC−101の作製において、導電性繊維をSWCNT(Unidym社製、HiPcoR単層カーボンナノチューブ)の分散液に変更し、SWCNTの目付け量が10mg/mになるように調整した後、ニッケルのメッキを行い上述のようにニッケルの酸化処理を行い、酸化ニッケル被覆銀ナノワイヤを第一の電極とした以外は、有機光電変換素子SC−101と同様にして有機光電変換素子SC−103を得た。
【0156】
得られた有機光電変換素子SC−103は、窒素雰囲気下でバリア付きPENフィルムとUV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った。
【0157】
(有機光電変換素子SC−104の作製)
有機光電変換素子SC−101の作製において、メッキする金属をニッケルに変更し、大気中300℃で10分間加熱することによりニッケルの酸化処理を行い、酸化ニッケル被覆銀ナノワイヤを第一の電極とした以外は、有機光電変換素子SC−101と同様にして有機光電変換素子SC−104を得た。
【0158】
得られた有機光電変換素子SC−104は、窒素雰囲気下でバリア付きPENフィルムとUV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った。
【0159】
(有機光電変換素子SC−105の作製)
有機光電変換素子SC−101の作製において、レーザービーム蒸着法により銀ナノワイヤ表面に酸化ニッケルを被覆させ、第一の電極とした以外は有機光電変換素子SC−101と同様にして有機光電変換素子SC−105を得た。
【0160】
得られた有機光電変換素子SC−105は、窒素雰囲気下でバリア付きPENフィルムとUV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った。
【0161】
(有機光電変換素子SC−106の作製)
有機光電変換素子SC−101の作製において、銀ナノワイヤ上にBaytron P4083(H.C.スタルク社製)を塗布し乾燥させ、第一の電極とした以外は有機光電変換素子SC−101と同様にして有機光電変換素子SC−106を得た。
【0162】
得られた有機光電変換素子SC−106は、窒素雰囲気下でバリア付きPENフィルムとUV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った。
【0163】
(有機光電変換素子SC−107の作製)
有機光電変換素子SC−101の作製において、メッキする金属を亜鉛に変更し、上述のように亜鉛の酸化処理を行い、酸化亜鉛被覆銀ナノワイヤを第一の電極とした。これ以降は、基板をグローブボックス中に持ち込み、窒素雰囲気下で作業した。
【0164】
次に、クロロベンゼンにP3HT(プレクストロニクス社製:レジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン)(Mw=52000、高分子p型半導体材料)とPCBM(フロンティアカーボン:6,6−フェニル−C61−ブチリックアシッドメチルエステル)(Mw=911、低分子n型半導体材料)を3.0質量%になるように1:1で混合した液を調製し、フィルターでろ過しながら膜厚300nmになるように塗布を行い、室温で放置して光電変換層を成膜した。
【0165】
次に、電性高分子であるBaytron P4083(H.C.スタルク社製)を膜厚50nmになるように塗布した後、乾燥させ正孔輸送層を成膜した。
【0166】
次に、作製した素子を真空蒸着装置内に設置して、1cm幅のシャドウマスクをセットし、1×10−3Pa以下にまで真空蒸着機内を減圧した後、金を膜厚が100nmになるように蒸着し、第二の電極を形成させた。
【0167】
得られた有機光電変換素子SC−107は、窒素雰囲気下でバリア付きPENフィルムとUV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った。
【0168】
(有機光電変換素子SC−108の作製)
有機光電変換素子SC−107の作製において、メッキする金属をチタンに変更し、上述のようにチタンの酸化処理を行い、酸化チタン被覆銀ナノワイヤを第一の電極とした以外は、有機光電変換素子SC−106と同様にして有機光電変換素子SC−108を得た。
【0169】
得られた有機光電変換素子SC−108は、窒素雰囲気下でバリア付きPENフィルムとUV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った。
【0170】
(有機光電変換素子SC−109の作製)
有機光電変換素子SC−107の作製において、エタノールにTi−イソプロポキシドを0.05mol/Lになるように溶解した液を調製し、マスキングした後、膜厚20nmになるように銀ナノワイヤ上に塗布を行い、水蒸気量を調節した大気中放置して第一の電極とした以外は、有機光電変換素子SC−106と同様にして有機光電変換素子SC−109を得た。
【0171】
得られた有機光電変換素子SC−109は、窒素雰囲気下でバリア付きPENフィルムとUV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った。
【0172】
〔変換効率の評価〕
上述したように封止を行った有機光電変換素子に、1cm角のマスクを使用し、ソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ)の100mW/cmの強度の光を第一電極側から照射し、I−V特性を測定し、短絡電流密度Jsc(mA/cm)及び開放電圧Voc(V)、フィルファクターFFを測定した。またJsc、Voc、FFから式1に従ってエネルギー変換効率η(%)を求めた。
【0173】
式1 Jsc(mA/cm)×Voc(V)×FF=η(%)
〔被覆率の評価〕
金属ナノワイヤ表面の金属酸化物の被覆率はXPS(X船光電子分光法)スペクトルから求められるAgの検出量(原子%)により求めた。
【0174】
【表1】

【0175】
表1から明らかな通り、本発明の有機光電変換素子は、エネルギーの変換効率において、優れた効果を奏することが判る。
【符号の説明】
【0176】
F 基材
G 反応ガス
G′ 排ガス
11 基板
12 第一の電極(アノード電極)
13 光電変換層
14 第二の電極(透明カソード電極)
21 基板
22 第一の電極
23 正孔輸送層
24 バルクヘテロジャンクション型の光電変換層
25 電子輸送層
26 第二の電極
31 プラズマ放電処理容器
35 ロール回転電極
36 角筒型固定電極群
40 電圧印加手段
51 ガス供給装置
52 ガス給気口
53 ガス排気口
60 電極温度調節手段
64,67 ガイドロール
65,66 ニップロール
68,69 仕切板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の電極と第二の電極に挟まれたバルクヘテロジャンクション型の光電変換層と、正孔輸送層もしくは電子輸送層とを有する有機光電変換素子の製造方法において、該第一の電極は金属Aから成り、かつ、前記正孔輸送層もしくは電子輸送層の形成工程が、該第一の電極の上に、前記金属Aとは異なる金属Bを含有する物質又は金属Bを被覆する工程と、該金属Bを酸化させる工程とを含むことを特徴とする有機光電変換素子の製造方法。
【請求項2】
前記金属Bが、前記金属Bを含有する金属塩化合物から供給されることを特徴とする請求項1記載の有機光電変換素子の製造方法。
【請求項3】
前記金属Bを含有する物質又は金属Bを被覆する工程が、前記金属Aから成る第一の電極を形成させた後、前記金属Bを酸化させる工程を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の有機光電変換素子の製造方法。
【請求項4】
前記金属Bを被覆させる工程が、メッキ法を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機光電変換素子の製造方法。
【請求項5】
前記金属Bを含有する物質を酸化させる工程が、大気圧プラズマを用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機光電変換素子の製造方法。
【請求項6】
前記第一の電極と第二の電極の少なくとも一方の電極とバルクヘテロジャンクション層の間の層が少なくとも正孔輸送層と電子輸送層のいずれかであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機光電変換素子の製造方法。
【請求項7】
前記金属Bが少なくともTi、Ni、Cu、Znのいずれかを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機光電変換素子の製造方法。
【請求項8】
前記第一の電極の表面が凹凸を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機光電変換素子の製造方法。
【請求項9】
前記第一の電極を形成する金属Aが少なくとも導電性繊維もしくはナノロッドのいずれかを含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機光電変換素子の製造方法。
【請求項10】
前記導電性繊維が少なくとも金属ナノワイヤまたはカーボンナノチューブのいずれかを含むことを特徴とする請求項9に記載の有機光電変換素子の製造方法。
【請求項11】
前記金属ナノワイヤが銀ナノワイヤであることを特徴とする請求項10に記載の有機光電変換素子の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の有機光電変換素子の製造方法により製造されたことを特徴とする有機光電変換素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−258205(P2010−258205A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106279(P2009−106279)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】