有機分子メモリおよびその製造方法
【課題】メモリセルに流れる電流を制御し、安定した動作と高い信頼性を備える有機分子メモリを提供する。
【解決手段】第1の電極と、第1の電極と異なる材料で形成される第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に設けられる有機分子層であって、有機分子層を構成する抵抗変化型分子鎖の一端が第1の電極と化学結合し、抵抗変化型分子鎖の他端と第2の電極との間に空隙が存在する有機分子層と、を備える有機分子メモリ。
【解決手段】第1の電極と、第1の電極と異なる材料で形成される第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に設けられる有機分子層であって、有機分子層を構成する抵抗変化型分子鎖の一端が第1の電極と化学結合し、抵抗変化型分子鎖の他端と第2の電極との間に空隙が存在する有機分子層と、を備える有機分子メモリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、有機分子メモリおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機分子をメモリセルに用いると、有機分子自体のサイズが小さいためメモリセルのサイズが小さくなる。したがって、記録密度の向上が可能となる。このため、電場の有無や電荷の注入により抵抗が変化する機能を備える分子を上下の電極で挟み、上下電極間に印加する電圧により抵抗を変化させ、流れる電流の差を検出することによりメモリセルを構成する試みが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007−527620号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】C.Li et. al,“Fabrication approach for molecular memory arrays”,Appl.Phys.Lett.82,645(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
もっとも、上述のようなメモリセルをメモリ製品として実用化させるためには、メモリセルを安定して動作させるとともに、メモリセルの信頼性を向上させることが重要となってくる。このため、メモリセルに過大な電流が流れることに起因する、メモリセルの誤動作や信頼性不良を低減することが必要となる。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、メモリセルに流れる電流を制御し、安定した動作と高い信頼性を備える有機分子メモリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施の形態の有機分子メモリは、第1の電極と、第1の電極と異なる材料で形成される第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に設けられる有機分子層であって、有機分子層を構成する抵抗変化型分子鎖の一端が第1の電極と化学結合し、抵抗変化型分子鎖の他端と第2の電極との間に空隙が存在する有機分子層と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施の形態の有機分子メモリのメモリセル部の模式断面図である。
【図2】第1の実施の形態の抵抗変化型分子鎖の分子構造を示す図である。
【図3】第1の実施の形態の有機分子メモリの模式上面図である。
【図4】図3の模式断面図である。
【図5】第1の実施の形態の空隙幅と抵抗変化型分子鎖を流れる電流の関係のシミュレーション結果である。
【図6】1次元方向にπ共役系が伸びた分子を構成し得る分子ユニットの例示する図である。
【図7】第1の実施の形態の有機分子メモリの製造方法を示す模式断面図である。
【図8】第1の実施の形態の有機分子メモリの製造方法を示す模式断面図である。
【図9】第1の実施の形態の有機分子メモリの製造方法を示す模式断面図である。
【図10】第1の実施の形態の有機分子メモリの製造方法を示す模式断面図である。
【図11】第1の実施の形態の有機分子メモリの製造方法を示す模式断面図である。
【図12】第1の実施の形態の有機分子メモリの製造方法を示す模式断面図である。
【図13】第1の実施の形態の有機分子メモリの製造方法を示す模式断面図である。
【図14】第1の実施の形態の有機分子メモリの製造方法を示す模式断面図である。
【図15】第1の実施の形態の有機分子メモリの製造方法を示す模式断面図である。
【図16】第2の実施の形態の有機分子メモリの模式断面図である。
【図17】第3の実施の形態の有機分子メモリの模式断面図である。
【図18】第4の実施の形態の有機分子メモリの模式断面図および模式回路図である。
【図19】第5の実施の形態の有機分子メモリのメモリセル部の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ実施の形態を説明する。
【0010】
なお、本明細書中「抵抗変化型分子鎖」とは、電場の有無や電荷の注入により抵抗が変化する機能を備える分子鎖を意味するものとする。
【0011】
また、本明細書中「化学結合」とは、共有結合、イオン結合、金属結合のいずれかを指す概念とし、水素結合やファンデルワールス力による結合を除外する概念とする。
【0012】
また、本明細書中「空隙が存在する」とは、「化学結合していない」ことを意味する。そして、「空隙幅」とは、電極と、この電極に対向する有機分子層を構成する抵抗変化型分子鎖の端部との間の距離を意味する。より厳密には、電極表面と抵抗変化型分子鎖の終端部の炭素(C)原子、または酸素(O)原子、窒素(N)原子、硫黄(S)原子等のヘテロ原子の重心との距離を表わす概念とする。そして、「空隙(エアギャップ)」部分は、真空であっても、空気あるいはその他の気体が存在していてもかまわない。
【0013】
(第1の実施の形態)
本実施の形態の有機分子メモリは、第1の電極配線と、第1の電極配線と交差し、第1の電極配線と異なる材料で形成される第2の電極配線と、第1の電極配線と第2の電極配線との交差部の、第1の電極配線と第2の電極配線との間に設けられる有機分子層を備える。そして、この有機分子層を構成する抵抗変化型分子鎖の一端が第1の電極配線と化学結合し、他端と第2の電極配線との間に空隙が存在する。
【0014】
上記構成を備えることにより、有機分子メモリ(以下、単に分子メモリとも称する)の有機分子層に流れる電流が抑制される。したがって、過剰な電流が流れることで生ずるマイグレーションによる配線断線等を防止することが可能となる。また、非選択セルにおけるリーク電流が低減することで、メモリの誤動作を防止することが可能となる。
【0015】
図3は、本実施の形態の分子メモリの模式上面図である。図4は、図3の模式断面図である。図4(a)が図3のAA断面図、図4(b)が図3のBB断面図である。図1は、図4(a)の一部拡大図である。図1は、有機分子メモリのメモリセル(分子セル)部の模式断面図である。また、図2は、抵抗変化型分子鎖の分子構造を示す図である。
【0016】
本実施の形態の分子メモリは、クロスポイント型の分子メモリである。図3、図4に示すように、基板10の上部に複数の下部電極配線(第1の電極配線または第1の電極)12が設けられている。そして、下部電極配線12に交差、図3では直交、するように下部電極配線12と異なる材料で形成される複数の上部電極配線(第2の電極配線または第2の電極)14が設けられている。電極配線のデザインルールは例えば、3〜20nm程度である。
【0017】
上部電極配線14は、プラグ部14aと配線部14bの2層構造となっている。
【0018】
下部電極配線12と上部電極配線14との交差部の、下部電極配線12と上部電極配線14との間には、有機分子層16が設けられている。複数の抵抗変化型分子鎖16aが、有機分子層16を構成する。
【0019】
そして、この有機分子層16と下部電極配線12は接触し、有機分子層16と上部電極配線14との間には空隙20が存在する。より厳密には、有機分子層16を構成する抵抗変化型分子鎖16aの一端が下部電極配線12と化学結合し、他端と上部電極配線14との間に空隙20が存在する。空隙20の幅、すなわち空隙幅は、図1、図2中「d」で示される距離である。抵抗変化型分子鎖16aは、下部電極配線12の、抵抗変化型分子鎖16aが化学結合する面に対して略垂直に伸長する。
【0020】
隣接する有機分子層16の間、下部電極配線12の間、上部電極配線14の間のスペースには、絶縁層22が設けられている。
【0021】
基板10は、例えば、(110)面を表面とするシリコンである。また、下部電極配線12は、例えば、金属材料である金(Au)である。下部電極配線12の有機分子層に接する面は、例えば(111)面である。また、上部電極配線14は、例えば、金属材料であるモリブデン(Mo)である。絶縁層22は例えばシリコン窒化膜である。
【0022】
有機分子層16を構成する抵抗変化型分子鎖16aは、例えば、図2に示すような、4−[2−amino−5−nitro−4−(phenylethynyl)phenylethynyl]benzenethiolである。図2に示す分子構造の抵抗変化型分子鎖は、ツアーワイア(Tour wire)とも称される。
【0023】
抵抗変化型分子鎖16aは、電場の有無や電荷の注入により抵抗が変化する機能を備える分子鎖である。例えば、図2に示す分子構造を備える抵抗変化型分子鎖は、両端部の間に電圧を印加することで低抵抗状態と高抵抗状態とを切り替えることが可能である。この抵抗状態の変化を利用することでメモリセルが実現される。
【0024】
具体的には、図2において上部電極配線14側に電圧を印加することにより、初期状態の低抵抗状態となる。この時印加する電圧の極性は分子の構造、分子と電極の結合角度、電極のフェルミ準位によって決定される。例えば、これを“0”状態と定義する。そして、上部電極配線14側に”0”状態にした時と逆極性の電圧を印加することにより、イオン化し高抵抗状態となる。例えば、これを“1”状態と定義する。この“0”状態と“1”状態とを書き込み・読み出し・消去することによりメモリセルが機能する。
【0025】
本実施の形態においては、図1に示す様に、有機分子層16を構成する抵抗変化型分子鎖16aの一端は下部電極配線12と化学結合している。また、抵抗変化型分子鎖16aの他端と上部電極配線14とは化学結合しておらず、それぞれの間に空隙幅dの空隙が存在する。
【0026】
図2の抵抗変化型分子鎖16aの場合は、一端にチオール基が存在し、硫黄原子(S)と、下部電極配線12表面の金原子(Au)とが化学結合している。一方、抵抗変化型分子鎖16aの他端のベンゼン環は、上部電極配線14表面のモリブデン(Mo)原子と化学結合しておらず、それぞれの間に空隙幅dの空隙が存在する。
【0027】
空隙が存在するため、抵抗変化型分子鎖16aの両端部に電圧を印加して電流を流す場合、空隙が電流の障壁として働く。したがって、空隙幅dの存在により抵抗変化型分子鎖16aを流れる電流を抑制することができる。そして、空隙幅dを制御することにより、電荷がこの障壁をトンネリングする確率を制御することが可能となる。よって、空隙幅dを変化させることで流れる電流を所望の値に設定することも可能となる。
【0028】
図5は、空隙幅と1本の抵抗変化型分子鎖を流れる電流の関係のシミュレーション結果である。抵抗変化型分子鎖は、図2に示す構造としている。
【0029】
空隙側の電極(図2の上部電極配線14)に1V、対向電極(図2の下部電極配線12)に0Vを印加した場合を想定している。温度は300Kである。
【0030】
空隙部のトンネリングレートをパラメータとし、トンネリングレートを空隙幅に換算して図示している。この際、別途計算により求められた空隙幅とトンネリングレートの相関、すなわち、空隙幅1nmの変化が、トンネリングレート2桁の変化に対応するという相関を用いている。また、トンネリングレートに対して電流が飽和する状態、すなわち、抵抗変化型分子鎖が電極に化学結合または接触していると仮定できる状態を、空隙幅が0nmと定義している。
【0031】
図5に示すように、空隙幅が0.2nmを超えるところから電流が低下し始め、0.5nmを超えるところからより顕著に電流が低下する。したがって、効果的に電流低減効果を得る観点から空隙幅は0.2nm以上であることが望ましく、0.5nm以上であることがより望ましい。
【0032】
一方、空隙幅が大きくなると分子鎖に書き込み・消去を行うために電極間に印加すべき電圧が増大する。通常、書き込み・消去には分子鎖に1V以上の電圧を印加することが必要となる。有機分子層の比誘電率を3程度と仮定すると、例えば、空隙が54nmの時には、電極に10Vを印加することが必要となる。
【0033】
電極間に印加する電圧は、10V未満であることが、メモリセルとしての動作・信頼性を確保する上で望ましい。したがって、空隙幅は50nm以下であることが望ましい。
【0034】
実際のメモリセルにおいて、空隙幅dは、例えば、以下のように求めることができる。まず、電極間の距離(図2中a)は、TEM(Transmission Electoron Microscope)による観察で求められる。また、抵抗変化型分子鎖の長さ(図2中b)は、有機分子層中の分子を構造解析して分子構造を同定することで求められる。この時、抵抗変化型分子鎖の長さは、厳密には、抵抗変化型分子鎖の両端部の水素以外の原子(図2では硫黄と炭素)の重心間の距離とする。
【0035】
また、電極と抵抗変化型分子鎖の化学結合距離(図2中c)は、分子構造から判明する端部の原子の種類(図2では硫黄)と、この原子と結合しうる電極表面の原子の種類(図2では金)が決まれば、公知の文献値等から決定できる。
【0036】
したがって、空隙幅dは下記の(式1)で求めることが可能である。
d=a−(b+c)・・・(式1)
【0037】
なお、図5に示す空隙幅と電流との関係は、抵抗変化型分子鎖16aの構造が変わったとしても基本的に同様の傾向を示すと推察される。なぜなら、空隙幅と電流との関係の相関を主として支配するのは、障壁となる空隙のトンネリングレートであり、このトンネリングレートは抵抗変化型分子鎖の構造に基本的に支配されないからである。
【0038】
また、抵抗変化型分子鎖16aの端部が下部電極に化学結合しているか否かは、例えば、有機分子層の上面からSTM(Scanning Tunneling Microscope)で観察し、抵抗変化型分子鎖16aが電極材料に対して自己整合的に形成されているか否かを観察することにより確認される。また、空隙幅が少なくとも0.2nm以上あることが確認されれば、抵抗変化型分子鎖16aの端部が電極に化学結合していないとみなすことができる。
【0039】
以上、抵抗変化型分子鎖16aとして、図2に示す、4−[2−amino−5−nitro−4−(phenylethynyl)phenylethynyl]benzenethiolを例に説明したが、抵抗変化型分子鎖16aは、抵抗が変化する機能を備える分子鎖であれば、図2の分子鎖に限られるものではない。
【0040】
例えば、下記(一般式1)で示される4−[2−amino−5−nitro−4−(phenylethynyl)phenylethynyl]benzenethiolの誘導体であっても構わない。
【化1】
(上記一般式1において、XとYの組み合わせが、フッ素(F)・塩素(Cl)・臭素(Br)・ヨウ素(I)・シアノ基(CN)・ニトロ基(NO2)・アミノ基(NH2)・水酸基(OH)・カルボニル基(CO)・カルボキシ基(COOH)の任意の2つである。また、Rn(n=1〜8)は最外殻電子がd電子・f電子の原子を除く、任意の原子および特性基(例えば水素(H)・フッ素(F)・塩素(Cl)・臭素(Br)・ヨウ素(I)・メチル基(CH3))のいずれかである。)
【0041】
また、抵抗変化型分子鎖16aは、上記一般式1で表わされる分子構造以外の一次元方向にπ共役系が伸びた分子であってもかまわない。例えば、パラフェニレン誘導体やオリゴチオフェン誘導体・オリゴピロール誘導体・オリゴフラン誘導体・パラフェニレンビニレン誘導体を用いることも可能である。
【0042】
図6は、1次元方向にπ共役系が伸びた分子を構成し得る分子ユニットの例示である。図6(a)はパラフェニレン、図6(b)はチオフェン、図6(c)はピロール、図6(d)はフラン、図6(e)はビニレン、図6(f)はアルキンである。この他、ピリジン等のヘテロ六員環化合物を用いてもかまわない。
【0043】
もっとも、π共役系の長さが短い場合には、電極から注入された電子が分子上に留まることなく抜けてゆくため、電荷を蓄積させるために有る程度の長さの分子が好ましく、一次元方向の−CH=CH−のユニットで計算して、5つ以上で有ることが望ましい。これはベンゼン環(パラフェニレン)の場合、3個以上に相当する。
【0044】
また、π共役系の長さが長い場合には分子内での電荷の伝導による電圧降下などが問題になる。このため、一元方向の−CH=CH−のユニットで計算して20(ベンゼン環10個=π共役系のキャリアであるポーラロンの拡がり幅の倍)以下であることが望ましい。
【0045】
なお、図2に示す抵抗変化型分子鎖16aは、電圧−電流特性が非対称なダイオード特性を備える。非選択セルとなるメモリセルにおけるリーク電流を低減する観点からは、抵抗変化型分子鎖16aがダイオード特性を備えることが望ましい。
【0046】
下部電極配線12の材料として金を、上部電極配線14の材料としてモリブデンを例に説明した。しかしながら、下部電極配線12、上部電極配線14の材料はこれに限られるものではない。
【0047】
抵抗変化型分子鎖16aの一端が化学結合する側の電極(本実施の形態では下部電極配線12)は、少なくとも抵抗変化型分子鎖16aが化学結合する領域については、抵抗変化型分子鎖16aの一端が化学結合を形成しやすい材料であることが望ましい。また、空隙側の電極(本実施の形態では上部電極配線14)は、後述する製造方法とも関係して、少なくとも抵抗変化型分子鎖16aと対向する領域については、抵抗変化型分子鎖16aの一端と化学結合を形成しにくい材料であることが望ましい。
【0048】
抵抗変化型分子鎖16aの一端の構造によって望ましい材料が異なる。例えば、一端が図2のようにチオール基である場合は、化学結合する側の電極は金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、タングステン(W)、窒化タングステン(WN)、窒化タンタル(TaN)、または窒化チタン(TiN)であることが望ましく、この中でも特に化学結合を形成しやすい金(Au)、銀(Ag)、またはタングステン(W)であることが特に望ましい。一方、空隙側の電極はタンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、窒化モリブデン(MoN)、またはシリコン(Si)であることが望ましい。
【0049】
また、例えば、一端がアルコール基、またはカルボキシル基である場合は、化学結合する側の電極はタングステン(W)、窒化タングステン(WN)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、モリブデン(Mo)、窒化モリブデン(MoN)、または窒化チタン(TiN)であることが望ましく、この中でも特に化学結合を形成しやすいタンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、窒化モリブデン(MoN)、または窒化チタン(TiN)であることが特に望ましい。一方、空隙側の電極は金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、またはシリコン(Si)であることが望ましい。
【0050】
また、例えば、一端がシラノール基である場合は、化学結合する側の電極はシリコン(Si)または金属酸化物であることが望ましい。一方、空隙側の電極は金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、タングステン(W)、窒化タングステン(WN)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、モリブデン(Mo)、窒化モリブデン(MoN)、または窒化チタン(TiN)であることが望ましい。
【0051】
なお、電極材料が化合物である場合、化合物の組成は適宜選択することが可能である。
【0052】
また、電極材料として例えば、グラフェンやカーボンナノチューブを適用することも可能である。
【0053】
また、基板10の材料としてシリコンを用いる場合を例に説明したが、基板10の材料はこれに限られることなく、基板10上に形成される電極材料の配向性や、プロセス整合性等を考慮し半導体材料、絶縁性材料等の中から適宜適切な材料を選択すればよい。
【0054】
そして、絶縁層22についても、シリコン窒化膜以外の絶縁性材料と適宜選択することが可能である。
【0055】
図7〜図15は、図1、図3、図4に示す本実施の形態の有機分子メモリの製造方法を示す模式断面図である。図7(a)〜図15(a)は図3のAA断面に相当する図、図7(b)〜図15(b)は図3のBB断面に相当する図である。以下、図7〜図15を参照しつつ本実施の形態の製造方法について説明する。
【0056】
まず、(110)面のシリコンの基板10上に第1の電極材料として金層32を、例えば蒸着により形成する。ここで、金層32の表面は(111)面となる。さらに金層32上に、例えばシリコン酸化膜の犠牲層36を形成する(図7)。この際、犠牲層36の厚さを、後に抵抗変化型分子鎖と上部電極配線との間に空隙が形成されるに十分な厚さとする。すなわち、抵抗変化型分子鎖の長さより厚く設定する。
【0057】
次に、犠牲層36上に第2の電極材料としてモリブデン層34を、例えば蒸着により形成する(図8)。ここで、第2の電極材料は、第1の電極材料と異なる材料で形成される。
【0058】
ここで、第1の電極材料は、少なくともその表面が、後に形成される有機分子層の抵抗変化型分子鎖と化学結合しやすい材料となるよう選択する。また、第2の電極材料は、少なくともその表面が後に形成される有機分子層の抵抗変化型分子鎖と化学結合しにくい材料となるよう選択する。
【0059】
次に、モリブデン層34と犠牲層36とを、公知のリソグラフィー技術とエッチング技術により、第1の方向(図3参照)に伸長する複数のラインとなるようパターニングする(図9)。
【0060】
次に、パターニングされたモリブデン層34と犠牲層36との間のスペースを、例えば絶縁膜であるシリコン窒化膜で埋め込み平坦化し、絶縁層22を形成する(図10)。
【0061】
次に、モリブデン層34、犠牲層36、絶縁層22と金層32を公知のリソグラフィー技術とエッチング技術によりパターニングする。この時、金層32は第1の方向と交差(図では直交)する第2の方向(図3参照)に伸長する複数のラインとなるように加工され、下部電極配線12となる。一方、モリブデン層34、犠牲層36は柱状に加工される。加工されたモリブデン層34が、上部電極配線14のプラグ部14aとなる(図11)。
【0062】
次に、犠牲層36を公知のウェットエッチングで除去する(図12)。
【0063】
次に、金層32上に犠牲層36の厚さ、すなわち下部電極配線12とプラグ部14aとの間の距離、よりも長さの短い抵抗変化型分子鎖を選択的に化学結合させて、有機分子層16を形成する。例えば、図2に示す構造の抵抗変化型分子鎖16aを、例えばエタノールに分散させた溶液を準備する。そして、この溶液中に、基板10上に形成された構造を浸漬する。その後、リンスおよび乾燥を行う。
【0064】
この際、抵抗変化型分子鎖16aのチオール基は、モリブデンで形成されるプラグ部14aよりも、金で形成される下部電極配線12と選択的に化学結合する。よって、このプロセスにより、自己整合単分子膜(Self−assembled monolayer:SAM)である有機分子層16が形成される(図13)。
【0065】
次に、下部電極配線12の間、有機分子層16の間、上部電極配線14の間のスペースを、例えば絶縁膜であるシリコン窒化膜で埋め込み平坦化し、絶縁層22を形成する(図14(b))。
【0066】
次に、第3の電極材料としてモリブデン層34を、再度、第2の電極材料であるプラグ部14aの上に形成する(図15)。その後、モリブデン層34を公知のリソグラフィー技術とエッチング技術により、プラグ部14aと接続され第1の方向に伸長する複数のラインとなるようパターニングして、上部電極配線14の配線部14bを形成する。その後、配線部14bを、例えばシリコン窒化膜で埋め込み平坦化し、図3、図4に示す本実施の形態の有機分子メモリが製造される。
【0067】
なお、抵抗変化型分子鎖、各電極の材料等は製造する分子メモリに応じて、上述の候補等の中から適宜選択すればよい。
【0068】
本実施の形態の有機分子メモリにおいては、上述のように空隙幅dの存在により抵抗変化型分子鎖16aを流れる電流を抑制することができる。したがって、過剰な電流が流れることで生ずるマイグレーションによる配線断線等を防止することが可能となる。また、非選択セルにおけるリーク電流が低減することで、メモリの誤動作を防止することが可能となる。
【0069】
また、空隙幅dを変化させることでメモリセルを流れる電流を所望の値に設定することも可能となる。したがって、メモリセルを流れる電流量を、メモリ動作および信頼性の観点から最適な値に設定することが可能となり、安定した動作で高い信頼性を備えた分子メモリを実現することが可能となる。
【0070】
また、本実施の形態の製造方法では、異なる材料で形成される上下の電極配線を有機分子層形成の前に形成する。この際、抵抗変化型分子鎖の長さに応じて犠牲層の厚さを制御することで、安定した空隙幅を備える空隙の形成を高い精度で実現できる。
【0071】
そして、有機分子層形成後に上部の電極配線を形成するプロセスと異なり、有機分子層中に電極材料が侵入してショートするという問題も生じない。加えて、上部の電極配線形成時の熱工程による有機分子層へのダメージも回避することができる。
【0072】
よって、本実施の形態の製造方法によれば、安定した動作で高い信頼性を備えた分子メモリの製造を容易に実現することが可能となる。
【0073】
(第2の実施の形態)
本実施の形態の有機分子メモリは、有機分子メモリのセルアレイが積層構造となっている点で第1の実施の形態と異なっている。有機分子層を構成する抵抗変化型分子鎖、電極材料、基板の材料等については第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と重複する内容については記述を省略する。
【0074】
本実施の形態の有機分子メモリは、第1の電極配線と、第1の電極配線と交差する第2の電極配線であって、第1の電極配線と異なる材料で形成される第2の電極配線を備える。そして、第1の電極配線と第2の電極配線との第1の交差部の、第1の電極配線と第2の電極配線との間に設けられる第1の有機分子層であって、第1の有機分子層を構成する抵抗変化型分子鎖の一端が第1の電極配線と化学結合し、抵抗変化型分子鎖の他端と第2の電極配線との間に空隙が存在する第1の有機分子層を備えている。さらに、第2の電極配線と交差する第3の電極配線であって、第2の電極配線と異なる材料で形成される第3の電極配線を備える。そして、第2の電極配線と第3の電極配線との第2の交差部の、第2の電極配線と第3の電極配線との間に設けられる第2の有機分子層であって、第2の有機分子層を構成する抵抗変化型分子鎖の一端が第3の電極配線と化学結合し、抵抗変化型分子鎖の他端と第2の電極配線との間に空隙が存在する第2の有機分子層を備えている。
【0075】
図16は、本実施の形態の分子メモリの模式断面図である。図16(b)は、図16(a)に直交する方向に相当する図である。
【0076】
本実施の形態の分子メモリは、セルアレイが2層積層されたクロスポイント型の分子メモリである。図16に示すように、基板10の上部に複数の第1の電極配線42が設けられている。そして、第1の電極配線42に交差、ここでは直交するように第1の電極配線42と異なる材料で形成される複数の第2の電極配線44が設けられている。
【0077】
第2の電極配線44は、プラグ部44aと配線部44bの2層構造となっている。
【0078】
第1の電極配線42と第2の電極配線44との第1の交差部の、第1の電極配線42と第2の電極配線44との間には、第1の有機分子層46が設けられている。複数の抵抗変化型分子鎖16aが、第1の有機分子層46を構成する。そして、複数の第1の有機分子層46が第1のメモリセルアレイを構成する。
【0079】
そして、この第1の有機分子層46と第1の電極配線42は接触し、第1の有機分子層46と第2の電極配線44との間に空隙20が存在する。
【0080】
隣接する第1の有機分子層46の間、第1の電極配線42の間、第2の電極配線44の間のスペースには、絶縁層22が設けられている。
【0081】
さらに、第2の電極配線44と交差し、第2の電極配線44と異なり、かつ、第1の電極配線42と同じ材料で形成される第3の電極配線54を備えている。第3の電極配線54は、プラグ部54aと配線部54bの2層構造となっている。
【0082】
第2の電極配線44と第3の電極配線54との第2の交差部の、第2の電極配線44と第3の電極配線54との間には、第2の有機分子層56が設けられている。複数の抵抗変化型分子鎖16aが、第2の有機分子層56を構成する。そして、複数の第2の有機分子層56が第2のメモリセルアレイを構成する。
【0083】
そして、この第2の有機分子層56と第3の電極配線54は接触し、第2の有機分子層56と第2の電極配線44との間に空隙20が存在する。
【0084】
隣接する第2の有機分子層56の間、第3の電極配線54の間のスペースには、絶縁層22が設けられている。
【0085】
本実施の形態の有機分子メモリは、第1の実施の形態の製造方法を、ラインのパターニングの方向を変えて繰り返すことで、製造することが可能である。
【0086】
本実施の形態によれば、2層のセルアレイを積層することで分子メモリのメモリ容量を増大させることが可能となる。なお、ここでは2層のセルアレイを積層する場合を例に説明したが、3層以上のセルアレイを積層することで更にメモリ容量を増大させることが可能である。
【0087】
(第3の実施の形態)
本実施の形態の有機分子メモリは、有機分子メモリのセルアレイが積層構造となっている点で第1の実施の形態と異なっている。また、第1の有機分子層と第2の有機分子層とを構成する抵抗変化型分子鎖の向きが揃っている点で第2の実施の形態と異なっている。有機分子層を構成する抵抗変化型分子鎖、電極材料、基板の材料等については第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と重複する内容については記述を省略する。
【0088】
本実施の形態の有機分子メモリは、第1の電極配線と、第1の電極配線と交差する第2の電極配線であって、第1の電極配線側の第1の表面が第1の電極配線と異なる材料で形成され、第1の電極配線と反対側の第2の表面が第1の電極配線と同一の材料で形成される第2の電極配線を備えている。そして、第1の電極配線と第2の電極配線との第1の交差部の、第1の電極配線と第2の電極配線との間に設けられる第1の有機分子層であって、第1の有機分子層を構成する抵抗変化型分子鎖の一端が第1の電極配線と化学結合し、抵抗変化型分子鎖の他端と第2の電極配線との間に空隙が存在する第1の有機分子層を備えている。そして、第2の電極配線と交差する第3の電極配線であって、第2の電極配線側の表面が、第2の表面と異なる材料で形成される第3の電極配線を備える。そして、第2の電極配線と第3の電極配線との第2の交差部の、第2の電極配線と第3の電極配線との間に設けられる第2の有機分子層であって、第2の有機分子層を構成する抵抗変化型分子鎖の一端が第2の電極配線と化学結合し、抵抗変化型分子鎖の他端と第3の電極配線との間に空隙が存在する第2の有機分子層を備えている。
【0089】
図17は、本実施の形態の分子メモリの模式断面図である。図17(b)は、図17(a)に直交する方向に相当する図である。
【0090】
本実施の形態の分子メモリは、第2の実施の形態同様、セルアレイが2層積層されたクロスポイント型の分子メモリである。図17に示すように、基板10の上部に複数の第1の電極配線42が設けられている。そして、第1の電極配線42に交差、ここでは直交するように第1の電極配線42側の第1の表面が第1の電極配線42と異なる材料で形成され、第1の電極配線42と反対側の第2の表面が第1の電極配線42と同一の材料で形成される複数の第2の電極配線44が設けられている。
【0091】
第2の電極配線44は、プラグ部44aと配線部44bの2層構造となっている。ここでは、プラグ部44aが第1の電極配線42と異なる材料で形成されている。一方、配線部44bが第1の電極配線42と同一の材料で形成されている。
【0092】
第1の電極配線42と第2の電極配線44との第1の交差部の、第1の電極配線42と第2の電極配線44との間には、第1の有機分子層46が設けられている。複数の抵抗変化型分子鎖16aが、第1の有機分子層46を構成する。そして、複数の第1の有機分子層46が第1のメモリセルアレイを構成する。
【0093】
そして、この第1の有機分子層46と第1の電極配線42は接触し、第1の有機分子層46と第2の電極配線44との間に空隙20が存在する。
【0094】
隣接する第1の有機分子層46と第1の有機分子層46、第1の電極配線42と第1の電極配線42、第2の電極配線44と第2の電極配線44との間のスペースには、絶縁層22が設けられている。
【0095】
さらに、第2の電極配線44と交差し、第2の電極配線44と異なる材料である第1の電極配線42と同じ材料で形成される第3の電極配線54を備えている。第3の電極配線54は、プラグ部54aと配線部54bの2層構造となっている。
【0096】
第2の電極配線44と第3の電極配線54との第2の交差部の、第2の電極配線44と第3の電極配線54との間には、第2の有機分子層56が設けられている。複数の抵抗変化型分子鎖16aが、第2の有機分子層56を構成する。そして、複数の第2の有機分子層56が第2のメモリセルアレイを構成する。
【0097】
そして、この第2の有機分子層56と第2の電極配線44は接触し、第2の有機分子層56と第3の電極配線54との間に空隙20が存在する。
【0098】
隣接する第2の有機分子層56の間、第3の電極配線54の間のスペースには、絶縁層22が設けられている。
【0099】
本実施の形態の有機分子メモリは、第2の実施の形態の製造方法を、電極材料を変えて繰り返すことで、製造することが可能である。
【0100】
本実施の形態によれば、第2の実施の形態同様、2層のセルアレイを積層することで分子メモリのメモリ容量を増大させることが可能となる。なお、ここでは2層のセルアレイを積層する場合を例に説明したが、3層以上のセルアレイを積層することで更にメモリ容量を増大させることが可能である。
【0101】
さらに、第1のセルアレイと第2のセルアレイとで、有機分子層を構成する抵抗変化型分子鎖の向きを揃えることで、第1のセルアレイと第2のセルアレイの分子セルの特性に差が生じることを抑制できる。
【0102】
(第4の実施の形態)
本実施の形態の有機分子メモリは、有機分子層と電極配線との間にダイオード素子が形成されること以外は、基本的に第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と重複する内容については記述を省略する。
【0103】
図18は、本実施の形態の分子メモリの模式断面図である。図18(b)は、図18(a)に直交する方向に相当する図である。図18(c)はメモリセル部分の模式回路図である。
【0104】
本実施の形態の分子メモリは、クロスポイント型の分子メモリである。図18に示すように、基板10の上部に複数の下部電極配線(第1の電極配線)12が設けられている。そして、下部電極配線12に交差、図3では直交するように下部電極配線12と異なる材料で形成される複数の上部電極配線(第2の電極配線)64が設けられている。
【0105】
上部電極配線64は、プラグ部64aと配線部64bの2層構造となっている。プラグ部64a、配線部64bが整流特性を備えるダイオードを形成している。
【0106】
下部電極配線12と上部電極配線64との交差部の、下部電極配線12と上部電極配線64との間には、有機分子層16が設けられている。複数の抵抗変化型分子鎖16aが、有機分子層16を構成する。
【0107】
そして、この有機分子層16と下部電極配線12は接触し、有機分子層16と上部電極配線64との間に空隙20が存在する。
【0108】
隣接する有機分子層16と有機分子層16、下部電極配線12と下部電極配線12、上部電極配線64と上部電極配線64との間のスペースには、絶縁層22が設けられている。
【0109】
基板10は、例えば、(110)面を表面とするシリコンである。また、下部電極配線12は、例えば、金属材料である金(Au)である。
【0110】
そして、上部電極配線64のプラグ部64aは、例えば、n型にドープされたシリコンである。また、配線部64bは金属材料であるモリブデン(Mo)である。絶縁層22は例えばシリコン窒化膜である。
【0111】
有機分子層16を構成する抵抗変化型分子鎖16aは、例えば、図2に示すような、4−[2−amino−5−nitro−4−(phenylethynyl)phenylethynyl]benzenethiolである。
【0112】
本実施の形態によれば、上部電極配線64のプラグ部64aのシリコンと、配線部64bのモリブデン(Mo)がショットキー障壁を形成する。したがって、図18(c)に示すように、有機分子層16と上部電極配線64との間に、ショットキーダイオードが形成される構成となる。
【0113】
このショットキーダイオードは、上部電極配線64と下部電極配線12間に流れる電流を整流する。したがって、有機分子層16を形成する抵抗変化型分子鎖16a自体が、ダイオード特性を備えない場合、または、十分でない場合であっても、非選択セルにおけるリーク電流を抑制する。よって、安定した動作が実現される有機分子メモリが実現される。
【0114】
(第5の実施の形態)
本実施の形態の有機分子メモリは、第1の電極と、第1の電極と異なる材料で形成される第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に設けられる有機分子層を備える。そして、上記有機分子層を構成する抵抗変化型分子鎖の一端が第1の電極と化学結合し、抵抗変化型分子鎖の他端と第2の電極との間に空隙が存在する。
【0115】
本実施の形態の有機分子メモリは、1個のトランジスタと1個の有機分子層をメモリセルとする有機分子メモリである。メモリセル構造以外は、基本的に第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と重複する内容については記述を省略する。
【0116】
図19は、本実施の形態の有機分子メモリのメモリセル部の模式断面図である。
【0117】
本実施の形態の有機分子メモリは、1個のトランジスタと1個の抵抗変化型の有機分子層をメモリセルとする分子メモリである。図19に示すように、基板70上に、ゲート絶縁膜72とゲート電極74とを備える選択トランジスタ76が形成される。基板70には、ゲート電極74を挟んで第1のソース・ドレイン領域80と第2のソース・ドレイン領域82が形成される。
【0118】
基板70は、例えばシリコン基板である。ゲート絶縁膜72は、例えば、シリコン酸化膜である。ゲート電極74は、例えば多結晶シリコンである。第1のソース・ドレイン領域80および第2のソース・ドレイン領域82は、例えば、砒素(As)を不純物とする拡散層である。
【0119】
第1のソース・ドレイン領域80上には、第1のコンタクトプラグ84が形成される。そして、第1のコンタクトプラグ84上には第1のビット線86が形成される。第1のコンタクトプラグ84の材料は、例えば、タングステンであり、第1のビット線86の材料は、例えば、モリブデンである。
【0120】
第2のソース・ドレイン領域82上には、第2のコンタクトプラグ(第1の電極)88が形成される。そして、第2のコンタクトプラグ88上には、有機分子層90を挟んで第2のビット線(第2の電極)92が形成される。第2のコンタクトプラグ88の材料は、例えば、タングステンであり、第2のビット線92の材料は、例えば、モリブデンである。第2のビット線92の材料は、第2のコンタクトプラグ88とは異なる材料で形成される。
【0121】
複数の抵抗変化型分子鎖16aが、有機分子層90を構成する。そして、この有機分子層90と第2のコンタクトプラグ88は接触し、有機分子層90と第2のビット線92との間には空隙20が存在する。より厳密には、有機分子層90を構成する抵抗変化型分子鎖16aの一端が第2のコンタクトプラグ88と化学結合し、他端と第2のビット線92との間に空隙20が存在する。
【0122】
有機分子層90を構成する抵抗変化型分子鎖16aは、例えば、図2に示すような、4−[2−amino−5−nitro−4−(phenylethynyl)phenylethynyl]benzenethiolである。
【0123】
抵抗変化型分子鎖16aは、電場の有無や電荷の注入により抵抗が変化する機能を備える分子鎖である。例えば、図2に示す分子構造を備える抵抗変化型分子鎖は、両端部の間に電圧を印加することで低抵抗状態と高抵抗状態とを切り替えることが可能である。
【0124】
本実施の形態の有機分子メモリは、選択トランジスタ76をオンさせた状態で、第1のビット線86と第2のビット線92との間に電圧を印加することで、有機分子層90への書き込み、消去が可能となる。また、選択トランジスタ76をオン状態にして、第1のビット線86と第2のビット線92間に流れる電流をモニタすることで、有機分子層90の抵抗状態の読み出しが可能となる。これらの動作によりメモリセルが機能する。
【0125】
なお、空隙幅は0.2nm以上であることが望ましく、0.5nm以上であることがより望ましい点については、第1の実施の形態と同様である。また、有機分子層90を挟む第2のコンタクトプラグ(第1の電極)88と、第2のビット線(第2の電極)92についての好ましい材料についても第1の実施の形態と同様である。
【0126】
本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様、分子メモリの有機分子層に流れる電流が抑制される。したがって、過剰な電流が流れることで生ずるマイグレーションによる配線断線等を防止することが可能となる。また、非選択セルにおけるリーク電流が低減することで、メモリの誤動作を防止することが可能となる。
【0127】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。上記、実施の形態はあくまで、例として挙げられているだけであり、本発明を限定するものではない。また、実施の形態の説明においては、有機分子メモリ、有機分子メモリの製造方法等で、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる有機分子メモリ、有機分子メモリの製造方法等に関わる要素を適宜選択して用いることができる。
【0128】
例えば、実施の形態においては、有機分子層を構成する有機分子として、抵抗変化型分子鎖についてのみ言及しているが、抵抗変化型分子鎖に加えて、その他の有機分子が有機分子層中に含まれることを排除するものではない。
【0129】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての半導体整流装置が、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲およびその均等物の範囲によって定義されるものである。
【符号の説明】
【0130】
10 基板
12 下部電極配線(第1の電極または第1の電極配線)
14 上部電極配線(第2の電極または第2の電極配線)
16 有機分子層
16a 抵抗変化型分子鎖
20 空隙
22 絶縁層
36 犠牲層
42 第1の電極配線
44 第2の電極配線
46 第1の有機分子層
54 第3の電極配線
56 第2の有機分子層
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、有機分子メモリおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機分子をメモリセルに用いると、有機分子自体のサイズが小さいためメモリセルのサイズが小さくなる。したがって、記録密度の向上が可能となる。このため、電場の有無や電荷の注入により抵抗が変化する機能を備える分子を上下の電極で挟み、上下電極間に印加する電圧により抵抗を変化させ、流れる電流の差を検出することによりメモリセルを構成する試みが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007−527620号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】C.Li et. al,“Fabrication approach for molecular memory arrays”,Appl.Phys.Lett.82,645(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
もっとも、上述のようなメモリセルをメモリ製品として実用化させるためには、メモリセルを安定して動作させるとともに、メモリセルの信頼性を向上させることが重要となってくる。このため、メモリセルに過大な電流が流れることに起因する、メモリセルの誤動作や信頼性不良を低減することが必要となる。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、メモリセルに流れる電流を制御し、安定した動作と高い信頼性を備える有機分子メモリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施の形態の有機分子メモリは、第1の電極と、第1の電極と異なる材料で形成される第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に設けられる有機分子層であって、有機分子層を構成する抵抗変化型分子鎖の一端が第1の電極と化学結合し、抵抗変化型分子鎖の他端と第2の電極との間に空隙が存在する有機分子層と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施の形態の有機分子メモリのメモリセル部の模式断面図である。
【図2】第1の実施の形態の抵抗変化型分子鎖の分子構造を示す図である。
【図3】第1の実施の形態の有機分子メモリの模式上面図である。
【図4】図3の模式断面図である。
【図5】第1の実施の形態の空隙幅と抵抗変化型分子鎖を流れる電流の関係のシミュレーション結果である。
【図6】1次元方向にπ共役系が伸びた分子を構成し得る分子ユニットの例示する図である。
【図7】第1の実施の形態の有機分子メモリの製造方法を示す模式断面図である。
【図8】第1の実施の形態の有機分子メモリの製造方法を示す模式断面図である。
【図9】第1の実施の形態の有機分子メモリの製造方法を示す模式断面図である。
【図10】第1の実施の形態の有機分子メモリの製造方法を示す模式断面図である。
【図11】第1の実施の形態の有機分子メモリの製造方法を示す模式断面図である。
【図12】第1の実施の形態の有機分子メモリの製造方法を示す模式断面図である。
【図13】第1の実施の形態の有機分子メモリの製造方法を示す模式断面図である。
【図14】第1の実施の形態の有機分子メモリの製造方法を示す模式断面図である。
【図15】第1の実施の形態の有機分子メモリの製造方法を示す模式断面図である。
【図16】第2の実施の形態の有機分子メモリの模式断面図である。
【図17】第3の実施の形態の有機分子メモリの模式断面図である。
【図18】第4の実施の形態の有機分子メモリの模式断面図および模式回路図である。
【図19】第5の実施の形態の有機分子メモリのメモリセル部の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ実施の形態を説明する。
【0010】
なお、本明細書中「抵抗変化型分子鎖」とは、電場の有無や電荷の注入により抵抗が変化する機能を備える分子鎖を意味するものとする。
【0011】
また、本明細書中「化学結合」とは、共有結合、イオン結合、金属結合のいずれかを指す概念とし、水素結合やファンデルワールス力による結合を除外する概念とする。
【0012】
また、本明細書中「空隙が存在する」とは、「化学結合していない」ことを意味する。そして、「空隙幅」とは、電極と、この電極に対向する有機分子層を構成する抵抗変化型分子鎖の端部との間の距離を意味する。より厳密には、電極表面と抵抗変化型分子鎖の終端部の炭素(C)原子、または酸素(O)原子、窒素(N)原子、硫黄(S)原子等のヘテロ原子の重心との距離を表わす概念とする。そして、「空隙(エアギャップ)」部分は、真空であっても、空気あるいはその他の気体が存在していてもかまわない。
【0013】
(第1の実施の形態)
本実施の形態の有機分子メモリは、第1の電極配線と、第1の電極配線と交差し、第1の電極配線と異なる材料で形成される第2の電極配線と、第1の電極配線と第2の電極配線との交差部の、第1の電極配線と第2の電極配線との間に設けられる有機分子層を備える。そして、この有機分子層を構成する抵抗変化型分子鎖の一端が第1の電極配線と化学結合し、他端と第2の電極配線との間に空隙が存在する。
【0014】
上記構成を備えることにより、有機分子メモリ(以下、単に分子メモリとも称する)の有機分子層に流れる電流が抑制される。したがって、過剰な電流が流れることで生ずるマイグレーションによる配線断線等を防止することが可能となる。また、非選択セルにおけるリーク電流が低減することで、メモリの誤動作を防止することが可能となる。
【0015】
図3は、本実施の形態の分子メモリの模式上面図である。図4は、図3の模式断面図である。図4(a)が図3のAA断面図、図4(b)が図3のBB断面図である。図1は、図4(a)の一部拡大図である。図1は、有機分子メモリのメモリセル(分子セル)部の模式断面図である。また、図2は、抵抗変化型分子鎖の分子構造を示す図である。
【0016】
本実施の形態の分子メモリは、クロスポイント型の分子メモリである。図3、図4に示すように、基板10の上部に複数の下部電極配線(第1の電極配線または第1の電極)12が設けられている。そして、下部電極配線12に交差、図3では直交、するように下部電極配線12と異なる材料で形成される複数の上部電極配線(第2の電極配線または第2の電極)14が設けられている。電極配線のデザインルールは例えば、3〜20nm程度である。
【0017】
上部電極配線14は、プラグ部14aと配線部14bの2層構造となっている。
【0018】
下部電極配線12と上部電極配線14との交差部の、下部電極配線12と上部電極配線14との間には、有機分子層16が設けられている。複数の抵抗変化型分子鎖16aが、有機分子層16を構成する。
【0019】
そして、この有機分子層16と下部電極配線12は接触し、有機分子層16と上部電極配線14との間には空隙20が存在する。より厳密には、有機分子層16を構成する抵抗変化型分子鎖16aの一端が下部電極配線12と化学結合し、他端と上部電極配線14との間に空隙20が存在する。空隙20の幅、すなわち空隙幅は、図1、図2中「d」で示される距離である。抵抗変化型分子鎖16aは、下部電極配線12の、抵抗変化型分子鎖16aが化学結合する面に対して略垂直に伸長する。
【0020】
隣接する有機分子層16の間、下部電極配線12の間、上部電極配線14の間のスペースには、絶縁層22が設けられている。
【0021】
基板10は、例えば、(110)面を表面とするシリコンである。また、下部電極配線12は、例えば、金属材料である金(Au)である。下部電極配線12の有機分子層に接する面は、例えば(111)面である。また、上部電極配線14は、例えば、金属材料であるモリブデン(Mo)である。絶縁層22は例えばシリコン窒化膜である。
【0022】
有機分子層16を構成する抵抗変化型分子鎖16aは、例えば、図2に示すような、4−[2−amino−5−nitro−4−(phenylethynyl)phenylethynyl]benzenethiolである。図2に示す分子構造の抵抗変化型分子鎖は、ツアーワイア(Tour wire)とも称される。
【0023】
抵抗変化型分子鎖16aは、電場の有無や電荷の注入により抵抗が変化する機能を備える分子鎖である。例えば、図2に示す分子構造を備える抵抗変化型分子鎖は、両端部の間に電圧を印加することで低抵抗状態と高抵抗状態とを切り替えることが可能である。この抵抗状態の変化を利用することでメモリセルが実現される。
【0024】
具体的には、図2において上部電極配線14側に電圧を印加することにより、初期状態の低抵抗状態となる。この時印加する電圧の極性は分子の構造、分子と電極の結合角度、電極のフェルミ準位によって決定される。例えば、これを“0”状態と定義する。そして、上部電極配線14側に”0”状態にした時と逆極性の電圧を印加することにより、イオン化し高抵抗状態となる。例えば、これを“1”状態と定義する。この“0”状態と“1”状態とを書き込み・読み出し・消去することによりメモリセルが機能する。
【0025】
本実施の形態においては、図1に示す様に、有機分子層16を構成する抵抗変化型分子鎖16aの一端は下部電極配線12と化学結合している。また、抵抗変化型分子鎖16aの他端と上部電極配線14とは化学結合しておらず、それぞれの間に空隙幅dの空隙が存在する。
【0026】
図2の抵抗変化型分子鎖16aの場合は、一端にチオール基が存在し、硫黄原子(S)と、下部電極配線12表面の金原子(Au)とが化学結合している。一方、抵抗変化型分子鎖16aの他端のベンゼン環は、上部電極配線14表面のモリブデン(Mo)原子と化学結合しておらず、それぞれの間に空隙幅dの空隙が存在する。
【0027】
空隙が存在するため、抵抗変化型分子鎖16aの両端部に電圧を印加して電流を流す場合、空隙が電流の障壁として働く。したがって、空隙幅dの存在により抵抗変化型分子鎖16aを流れる電流を抑制することができる。そして、空隙幅dを制御することにより、電荷がこの障壁をトンネリングする確率を制御することが可能となる。よって、空隙幅dを変化させることで流れる電流を所望の値に設定することも可能となる。
【0028】
図5は、空隙幅と1本の抵抗変化型分子鎖を流れる電流の関係のシミュレーション結果である。抵抗変化型分子鎖は、図2に示す構造としている。
【0029】
空隙側の電極(図2の上部電極配線14)に1V、対向電極(図2の下部電極配線12)に0Vを印加した場合を想定している。温度は300Kである。
【0030】
空隙部のトンネリングレートをパラメータとし、トンネリングレートを空隙幅に換算して図示している。この際、別途計算により求められた空隙幅とトンネリングレートの相関、すなわち、空隙幅1nmの変化が、トンネリングレート2桁の変化に対応するという相関を用いている。また、トンネリングレートに対して電流が飽和する状態、すなわち、抵抗変化型分子鎖が電極に化学結合または接触していると仮定できる状態を、空隙幅が0nmと定義している。
【0031】
図5に示すように、空隙幅が0.2nmを超えるところから電流が低下し始め、0.5nmを超えるところからより顕著に電流が低下する。したがって、効果的に電流低減効果を得る観点から空隙幅は0.2nm以上であることが望ましく、0.5nm以上であることがより望ましい。
【0032】
一方、空隙幅が大きくなると分子鎖に書き込み・消去を行うために電極間に印加すべき電圧が増大する。通常、書き込み・消去には分子鎖に1V以上の電圧を印加することが必要となる。有機分子層の比誘電率を3程度と仮定すると、例えば、空隙が54nmの時には、電極に10Vを印加することが必要となる。
【0033】
電極間に印加する電圧は、10V未満であることが、メモリセルとしての動作・信頼性を確保する上で望ましい。したがって、空隙幅は50nm以下であることが望ましい。
【0034】
実際のメモリセルにおいて、空隙幅dは、例えば、以下のように求めることができる。まず、電極間の距離(図2中a)は、TEM(Transmission Electoron Microscope)による観察で求められる。また、抵抗変化型分子鎖の長さ(図2中b)は、有機分子層中の分子を構造解析して分子構造を同定することで求められる。この時、抵抗変化型分子鎖の長さは、厳密には、抵抗変化型分子鎖の両端部の水素以外の原子(図2では硫黄と炭素)の重心間の距離とする。
【0035】
また、電極と抵抗変化型分子鎖の化学結合距離(図2中c)は、分子構造から判明する端部の原子の種類(図2では硫黄)と、この原子と結合しうる電極表面の原子の種類(図2では金)が決まれば、公知の文献値等から決定できる。
【0036】
したがって、空隙幅dは下記の(式1)で求めることが可能である。
d=a−(b+c)・・・(式1)
【0037】
なお、図5に示す空隙幅と電流との関係は、抵抗変化型分子鎖16aの構造が変わったとしても基本的に同様の傾向を示すと推察される。なぜなら、空隙幅と電流との関係の相関を主として支配するのは、障壁となる空隙のトンネリングレートであり、このトンネリングレートは抵抗変化型分子鎖の構造に基本的に支配されないからである。
【0038】
また、抵抗変化型分子鎖16aの端部が下部電極に化学結合しているか否かは、例えば、有機分子層の上面からSTM(Scanning Tunneling Microscope)で観察し、抵抗変化型分子鎖16aが電極材料に対して自己整合的に形成されているか否かを観察することにより確認される。また、空隙幅が少なくとも0.2nm以上あることが確認されれば、抵抗変化型分子鎖16aの端部が電極に化学結合していないとみなすことができる。
【0039】
以上、抵抗変化型分子鎖16aとして、図2に示す、4−[2−amino−5−nitro−4−(phenylethynyl)phenylethynyl]benzenethiolを例に説明したが、抵抗変化型分子鎖16aは、抵抗が変化する機能を備える分子鎖であれば、図2の分子鎖に限られるものではない。
【0040】
例えば、下記(一般式1)で示される4−[2−amino−5−nitro−4−(phenylethynyl)phenylethynyl]benzenethiolの誘導体であっても構わない。
【化1】
(上記一般式1において、XとYの組み合わせが、フッ素(F)・塩素(Cl)・臭素(Br)・ヨウ素(I)・シアノ基(CN)・ニトロ基(NO2)・アミノ基(NH2)・水酸基(OH)・カルボニル基(CO)・カルボキシ基(COOH)の任意の2つである。また、Rn(n=1〜8)は最外殻電子がd電子・f電子の原子を除く、任意の原子および特性基(例えば水素(H)・フッ素(F)・塩素(Cl)・臭素(Br)・ヨウ素(I)・メチル基(CH3))のいずれかである。)
【0041】
また、抵抗変化型分子鎖16aは、上記一般式1で表わされる分子構造以外の一次元方向にπ共役系が伸びた分子であってもかまわない。例えば、パラフェニレン誘導体やオリゴチオフェン誘導体・オリゴピロール誘導体・オリゴフラン誘導体・パラフェニレンビニレン誘導体を用いることも可能である。
【0042】
図6は、1次元方向にπ共役系が伸びた分子を構成し得る分子ユニットの例示である。図6(a)はパラフェニレン、図6(b)はチオフェン、図6(c)はピロール、図6(d)はフラン、図6(e)はビニレン、図6(f)はアルキンである。この他、ピリジン等のヘテロ六員環化合物を用いてもかまわない。
【0043】
もっとも、π共役系の長さが短い場合には、電極から注入された電子が分子上に留まることなく抜けてゆくため、電荷を蓄積させるために有る程度の長さの分子が好ましく、一次元方向の−CH=CH−のユニットで計算して、5つ以上で有ることが望ましい。これはベンゼン環(パラフェニレン)の場合、3個以上に相当する。
【0044】
また、π共役系の長さが長い場合には分子内での電荷の伝導による電圧降下などが問題になる。このため、一元方向の−CH=CH−のユニットで計算して20(ベンゼン環10個=π共役系のキャリアであるポーラロンの拡がり幅の倍)以下であることが望ましい。
【0045】
なお、図2に示す抵抗変化型分子鎖16aは、電圧−電流特性が非対称なダイオード特性を備える。非選択セルとなるメモリセルにおけるリーク電流を低減する観点からは、抵抗変化型分子鎖16aがダイオード特性を備えることが望ましい。
【0046】
下部電極配線12の材料として金を、上部電極配線14の材料としてモリブデンを例に説明した。しかしながら、下部電極配線12、上部電極配線14の材料はこれに限られるものではない。
【0047】
抵抗変化型分子鎖16aの一端が化学結合する側の電極(本実施の形態では下部電極配線12)は、少なくとも抵抗変化型分子鎖16aが化学結合する領域については、抵抗変化型分子鎖16aの一端が化学結合を形成しやすい材料であることが望ましい。また、空隙側の電極(本実施の形態では上部電極配線14)は、後述する製造方法とも関係して、少なくとも抵抗変化型分子鎖16aと対向する領域については、抵抗変化型分子鎖16aの一端と化学結合を形成しにくい材料であることが望ましい。
【0048】
抵抗変化型分子鎖16aの一端の構造によって望ましい材料が異なる。例えば、一端が図2のようにチオール基である場合は、化学結合する側の電極は金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、タングステン(W)、窒化タングステン(WN)、窒化タンタル(TaN)、または窒化チタン(TiN)であることが望ましく、この中でも特に化学結合を形成しやすい金(Au)、銀(Ag)、またはタングステン(W)であることが特に望ましい。一方、空隙側の電極はタンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、窒化モリブデン(MoN)、またはシリコン(Si)であることが望ましい。
【0049】
また、例えば、一端がアルコール基、またはカルボキシル基である場合は、化学結合する側の電極はタングステン(W)、窒化タングステン(WN)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、モリブデン(Mo)、窒化モリブデン(MoN)、または窒化チタン(TiN)であることが望ましく、この中でも特に化学結合を形成しやすいタンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、窒化モリブデン(MoN)、または窒化チタン(TiN)であることが特に望ましい。一方、空隙側の電極は金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、またはシリコン(Si)であることが望ましい。
【0050】
また、例えば、一端がシラノール基である場合は、化学結合する側の電極はシリコン(Si)または金属酸化物であることが望ましい。一方、空隙側の電極は金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、タングステン(W)、窒化タングステン(WN)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、モリブデン(Mo)、窒化モリブデン(MoN)、または窒化チタン(TiN)であることが望ましい。
【0051】
なお、電極材料が化合物である場合、化合物の組成は適宜選択することが可能である。
【0052】
また、電極材料として例えば、グラフェンやカーボンナノチューブを適用することも可能である。
【0053】
また、基板10の材料としてシリコンを用いる場合を例に説明したが、基板10の材料はこれに限られることなく、基板10上に形成される電極材料の配向性や、プロセス整合性等を考慮し半導体材料、絶縁性材料等の中から適宜適切な材料を選択すればよい。
【0054】
そして、絶縁層22についても、シリコン窒化膜以外の絶縁性材料と適宜選択することが可能である。
【0055】
図7〜図15は、図1、図3、図4に示す本実施の形態の有機分子メモリの製造方法を示す模式断面図である。図7(a)〜図15(a)は図3のAA断面に相当する図、図7(b)〜図15(b)は図3のBB断面に相当する図である。以下、図7〜図15を参照しつつ本実施の形態の製造方法について説明する。
【0056】
まず、(110)面のシリコンの基板10上に第1の電極材料として金層32を、例えば蒸着により形成する。ここで、金層32の表面は(111)面となる。さらに金層32上に、例えばシリコン酸化膜の犠牲層36を形成する(図7)。この際、犠牲層36の厚さを、後に抵抗変化型分子鎖と上部電極配線との間に空隙が形成されるに十分な厚さとする。すなわち、抵抗変化型分子鎖の長さより厚く設定する。
【0057】
次に、犠牲層36上に第2の電極材料としてモリブデン層34を、例えば蒸着により形成する(図8)。ここで、第2の電極材料は、第1の電極材料と異なる材料で形成される。
【0058】
ここで、第1の電極材料は、少なくともその表面が、後に形成される有機分子層の抵抗変化型分子鎖と化学結合しやすい材料となるよう選択する。また、第2の電極材料は、少なくともその表面が後に形成される有機分子層の抵抗変化型分子鎖と化学結合しにくい材料となるよう選択する。
【0059】
次に、モリブデン層34と犠牲層36とを、公知のリソグラフィー技術とエッチング技術により、第1の方向(図3参照)に伸長する複数のラインとなるようパターニングする(図9)。
【0060】
次に、パターニングされたモリブデン層34と犠牲層36との間のスペースを、例えば絶縁膜であるシリコン窒化膜で埋め込み平坦化し、絶縁層22を形成する(図10)。
【0061】
次に、モリブデン層34、犠牲層36、絶縁層22と金層32を公知のリソグラフィー技術とエッチング技術によりパターニングする。この時、金層32は第1の方向と交差(図では直交)する第2の方向(図3参照)に伸長する複数のラインとなるように加工され、下部電極配線12となる。一方、モリブデン層34、犠牲層36は柱状に加工される。加工されたモリブデン層34が、上部電極配線14のプラグ部14aとなる(図11)。
【0062】
次に、犠牲層36を公知のウェットエッチングで除去する(図12)。
【0063】
次に、金層32上に犠牲層36の厚さ、すなわち下部電極配線12とプラグ部14aとの間の距離、よりも長さの短い抵抗変化型分子鎖を選択的に化学結合させて、有機分子層16を形成する。例えば、図2に示す構造の抵抗変化型分子鎖16aを、例えばエタノールに分散させた溶液を準備する。そして、この溶液中に、基板10上に形成された構造を浸漬する。その後、リンスおよび乾燥を行う。
【0064】
この際、抵抗変化型分子鎖16aのチオール基は、モリブデンで形成されるプラグ部14aよりも、金で形成される下部電極配線12と選択的に化学結合する。よって、このプロセスにより、自己整合単分子膜(Self−assembled monolayer:SAM)である有機分子層16が形成される(図13)。
【0065】
次に、下部電極配線12の間、有機分子層16の間、上部電極配線14の間のスペースを、例えば絶縁膜であるシリコン窒化膜で埋め込み平坦化し、絶縁層22を形成する(図14(b))。
【0066】
次に、第3の電極材料としてモリブデン層34を、再度、第2の電極材料であるプラグ部14aの上に形成する(図15)。その後、モリブデン層34を公知のリソグラフィー技術とエッチング技術により、プラグ部14aと接続され第1の方向に伸長する複数のラインとなるようパターニングして、上部電極配線14の配線部14bを形成する。その後、配線部14bを、例えばシリコン窒化膜で埋め込み平坦化し、図3、図4に示す本実施の形態の有機分子メモリが製造される。
【0067】
なお、抵抗変化型分子鎖、各電極の材料等は製造する分子メモリに応じて、上述の候補等の中から適宜選択すればよい。
【0068】
本実施の形態の有機分子メモリにおいては、上述のように空隙幅dの存在により抵抗変化型分子鎖16aを流れる電流を抑制することができる。したがって、過剰な電流が流れることで生ずるマイグレーションによる配線断線等を防止することが可能となる。また、非選択セルにおけるリーク電流が低減することで、メモリの誤動作を防止することが可能となる。
【0069】
また、空隙幅dを変化させることでメモリセルを流れる電流を所望の値に設定することも可能となる。したがって、メモリセルを流れる電流量を、メモリ動作および信頼性の観点から最適な値に設定することが可能となり、安定した動作で高い信頼性を備えた分子メモリを実現することが可能となる。
【0070】
また、本実施の形態の製造方法では、異なる材料で形成される上下の電極配線を有機分子層形成の前に形成する。この際、抵抗変化型分子鎖の長さに応じて犠牲層の厚さを制御することで、安定した空隙幅を備える空隙の形成を高い精度で実現できる。
【0071】
そして、有機分子層形成後に上部の電極配線を形成するプロセスと異なり、有機分子層中に電極材料が侵入してショートするという問題も生じない。加えて、上部の電極配線形成時の熱工程による有機分子層へのダメージも回避することができる。
【0072】
よって、本実施の形態の製造方法によれば、安定した動作で高い信頼性を備えた分子メモリの製造を容易に実現することが可能となる。
【0073】
(第2の実施の形態)
本実施の形態の有機分子メモリは、有機分子メモリのセルアレイが積層構造となっている点で第1の実施の形態と異なっている。有機分子層を構成する抵抗変化型分子鎖、電極材料、基板の材料等については第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と重複する内容については記述を省略する。
【0074】
本実施の形態の有機分子メモリは、第1の電極配線と、第1の電極配線と交差する第2の電極配線であって、第1の電極配線と異なる材料で形成される第2の電極配線を備える。そして、第1の電極配線と第2の電極配線との第1の交差部の、第1の電極配線と第2の電極配線との間に設けられる第1の有機分子層であって、第1の有機分子層を構成する抵抗変化型分子鎖の一端が第1の電極配線と化学結合し、抵抗変化型分子鎖の他端と第2の電極配線との間に空隙が存在する第1の有機分子層を備えている。さらに、第2の電極配線と交差する第3の電極配線であって、第2の電極配線と異なる材料で形成される第3の電極配線を備える。そして、第2の電極配線と第3の電極配線との第2の交差部の、第2の電極配線と第3の電極配線との間に設けられる第2の有機分子層であって、第2の有機分子層を構成する抵抗変化型分子鎖の一端が第3の電極配線と化学結合し、抵抗変化型分子鎖の他端と第2の電極配線との間に空隙が存在する第2の有機分子層を備えている。
【0075】
図16は、本実施の形態の分子メモリの模式断面図である。図16(b)は、図16(a)に直交する方向に相当する図である。
【0076】
本実施の形態の分子メモリは、セルアレイが2層積層されたクロスポイント型の分子メモリである。図16に示すように、基板10の上部に複数の第1の電極配線42が設けられている。そして、第1の電極配線42に交差、ここでは直交するように第1の電極配線42と異なる材料で形成される複数の第2の電極配線44が設けられている。
【0077】
第2の電極配線44は、プラグ部44aと配線部44bの2層構造となっている。
【0078】
第1の電極配線42と第2の電極配線44との第1の交差部の、第1の電極配線42と第2の電極配線44との間には、第1の有機分子層46が設けられている。複数の抵抗変化型分子鎖16aが、第1の有機分子層46を構成する。そして、複数の第1の有機分子層46が第1のメモリセルアレイを構成する。
【0079】
そして、この第1の有機分子層46と第1の電極配線42は接触し、第1の有機分子層46と第2の電極配線44との間に空隙20が存在する。
【0080】
隣接する第1の有機分子層46の間、第1の電極配線42の間、第2の電極配線44の間のスペースには、絶縁層22が設けられている。
【0081】
さらに、第2の電極配線44と交差し、第2の電極配線44と異なり、かつ、第1の電極配線42と同じ材料で形成される第3の電極配線54を備えている。第3の電極配線54は、プラグ部54aと配線部54bの2層構造となっている。
【0082】
第2の電極配線44と第3の電極配線54との第2の交差部の、第2の電極配線44と第3の電極配線54との間には、第2の有機分子層56が設けられている。複数の抵抗変化型分子鎖16aが、第2の有機分子層56を構成する。そして、複数の第2の有機分子層56が第2のメモリセルアレイを構成する。
【0083】
そして、この第2の有機分子層56と第3の電極配線54は接触し、第2の有機分子層56と第2の電極配線44との間に空隙20が存在する。
【0084】
隣接する第2の有機分子層56の間、第3の電極配線54の間のスペースには、絶縁層22が設けられている。
【0085】
本実施の形態の有機分子メモリは、第1の実施の形態の製造方法を、ラインのパターニングの方向を変えて繰り返すことで、製造することが可能である。
【0086】
本実施の形態によれば、2層のセルアレイを積層することで分子メモリのメモリ容量を増大させることが可能となる。なお、ここでは2層のセルアレイを積層する場合を例に説明したが、3層以上のセルアレイを積層することで更にメモリ容量を増大させることが可能である。
【0087】
(第3の実施の形態)
本実施の形態の有機分子メモリは、有機分子メモリのセルアレイが積層構造となっている点で第1の実施の形態と異なっている。また、第1の有機分子層と第2の有機分子層とを構成する抵抗変化型分子鎖の向きが揃っている点で第2の実施の形態と異なっている。有機分子層を構成する抵抗変化型分子鎖、電極材料、基板の材料等については第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と重複する内容については記述を省略する。
【0088】
本実施の形態の有機分子メモリは、第1の電極配線と、第1の電極配線と交差する第2の電極配線であって、第1の電極配線側の第1の表面が第1の電極配線と異なる材料で形成され、第1の電極配線と反対側の第2の表面が第1の電極配線と同一の材料で形成される第2の電極配線を備えている。そして、第1の電極配線と第2の電極配線との第1の交差部の、第1の電極配線と第2の電極配線との間に設けられる第1の有機分子層であって、第1の有機分子層を構成する抵抗変化型分子鎖の一端が第1の電極配線と化学結合し、抵抗変化型分子鎖の他端と第2の電極配線との間に空隙が存在する第1の有機分子層を備えている。そして、第2の電極配線と交差する第3の電極配線であって、第2の電極配線側の表面が、第2の表面と異なる材料で形成される第3の電極配線を備える。そして、第2の電極配線と第3の電極配線との第2の交差部の、第2の電極配線と第3の電極配線との間に設けられる第2の有機分子層であって、第2の有機分子層を構成する抵抗変化型分子鎖の一端が第2の電極配線と化学結合し、抵抗変化型分子鎖の他端と第3の電極配線との間に空隙が存在する第2の有機分子層を備えている。
【0089】
図17は、本実施の形態の分子メモリの模式断面図である。図17(b)は、図17(a)に直交する方向に相当する図である。
【0090】
本実施の形態の分子メモリは、第2の実施の形態同様、セルアレイが2層積層されたクロスポイント型の分子メモリである。図17に示すように、基板10の上部に複数の第1の電極配線42が設けられている。そして、第1の電極配線42に交差、ここでは直交するように第1の電極配線42側の第1の表面が第1の電極配線42と異なる材料で形成され、第1の電極配線42と反対側の第2の表面が第1の電極配線42と同一の材料で形成される複数の第2の電極配線44が設けられている。
【0091】
第2の電極配線44は、プラグ部44aと配線部44bの2層構造となっている。ここでは、プラグ部44aが第1の電極配線42と異なる材料で形成されている。一方、配線部44bが第1の電極配線42と同一の材料で形成されている。
【0092】
第1の電極配線42と第2の電極配線44との第1の交差部の、第1の電極配線42と第2の電極配線44との間には、第1の有機分子層46が設けられている。複数の抵抗変化型分子鎖16aが、第1の有機分子層46を構成する。そして、複数の第1の有機分子層46が第1のメモリセルアレイを構成する。
【0093】
そして、この第1の有機分子層46と第1の電極配線42は接触し、第1の有機分子層46と第2の電極配線44との間に空隙20が存在する。
【0094】
隣接する第1の有機分子層46と第1の有機分子層46、第1の電極配線42と第1の電極配線42、第2の電極配線44と第2の電極配線44との間のスペースには、絶縁層22が設けられている。
【0095】
さらに、第2の電極配線44と交差し、第2の電極配線44と異なる材料である第1の電極配線42と同じ材料で形成される第3の電極配線54を備えている。第3の電極配線54は、プラグ部54aと配線部54bの2層構造となっている。
【0096】
第2の電極配線44と第3の電極配線54との第2の交差部の、第2の電極配線44と第3の電極配線54との間には、第2の有機分子層56が設けられている。複数の抵抗変化型分子鎖16aが、第2の有機分子層56を構成する。そして、複数の第2の有機分子層56が第2のメモリセルアレイを構成する。
【0097】
そして、この第2の有機分子層56と第2の電極配線44は接触し、第2の有機分子層56と第3の電極配線54との間に空隙20が存在する。
【0098】
隣接する第2の有機分子層56の間、第3の電極配線54の間のスペースには、絶縁層22が設けられている。
【0099】
本実施の形態の有機分子メモリは、第2の実施の形態の製造方法を、電極材料を変えて繰り返すことで、製造することが可能である。
【0100】
本実施の形態によれば、第2の実施の形態同様、2層のセルアレイを積層することで分子メモリのメモリ容量を増大させることが可能となる。なお、ここでは2層のセルアレイを積層する場合を例に説明したが、3層以上のセルアレイを積層することで更にメモリ容量を増大させることが可能である。
【0101】
さらに、第1のセルアレイと第2のセルアレイとで、有機分子層を構成する抵抗変化型分子鎖の向きを揃えることで、第1のセルアレイと第2のセルアレイの分子セルの特性に差が生じることを抑制できる。
【0102】
(第4の実施の形態)
本実施の形態の有機分子メモリは、有機分子層と電極配線との間にダイオード素子が形成されること以外は、基本的に第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と重複する内容については記述を省略する。
【0103】
図18は、本実施の形態の分子メモリの模式断面図である。図18(b)は、図18(a)に直交する方向に相当する図である。図18(c)はメモリセル部分の模式回路図である。
【0104】
本実施の形態の分子メモリは、クロスポイント型の分子メモリである。図18に示すように、基板10の上部に複数の下部電極配線(第1の電極配線)12が設けられている。そして、下部電極配線12に交差、図3では直交するように下部電極配線12と異なる材料で形成される複数の上部電極配線(第2の電極配線)64が設けられている。
【0105】
上部電極配線64は、プラグ部64aと配線部64bの2層構造となっている。プラグ部64a、配線部64bが整流特性を備えるダイオードを形成している。
【0106】
下部電極配線12と上部電極配線64との交差部の、下部電極配線12と上部電極配線64との間には、有機分子層16が設けられている。複数の抵抗変化型分子鎖16aが、有機分子層16を構成する。
【0107】
そして、この有機分子層16と下部電極配線12は接触し、有機分子層16と上部電極配線64との間に空隙20が存在する。
【0108】
隣接する有機分子層16と有機分子層16、下部電極配線12と下部電極配線12、上部電極配線64と上部電極配線64との間のスペースには、絶縁層22が設けられている。
【0109】
基板10は、例えば、(110)面を表面とするシリコンである。また、下部電極配線12は、例えば、金属材料である金(Au)である。
【0110】
そして、上部電極配線64のプラグ部64aは、例えば、n型にドープされたシリコンである。また、配線部64bは金属材料であるモリブデン(Mo)である。絶縁層22は例えばシリコン窒化膜である。
【0111】
有機分子層16を構成する抵抗変化型分子鎖16aは、例えば、図2に示すような、4−[2−amino−5−nitro−4−(phenylethynyl)phenylethynyl]benzenethiolである。
【0112】
本実施の形態によれば、上部電極配線64のプラグ部64aのシリコンと、配線部64bのモリブデン(Mo)がショットキー障壁を形成する。したがって、図18(c)に示すように、有機分子層16と上部電極配線64との間に、ショットキーダイオードが形成される構成となる。
【0113】
このショットキーダイオードは、上部電極配線64と下部電極配線12間に流れる電流を整流する。したがって、有機分子層16を形成する抵抗変化型分子鎖16a自体が、ダイオード特性を備えない場合、または、十分でない場合であっても、非選択セルにおけるリーク電流を抑制する。よって、安定した動作が実現される有機分子メモリが実現される。
【0114】
(第5の実施の形態)
本実施の形態の有機分子メモリは、第1の電極と、第1の電極と異なる材料で形成される第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に設けられる有機分子層を備える。そして、上記有機分子層を構成する抵抗変化型分子鎖の一端が第1の電極と化学結合し、抵抗変化型分子鎖の他端と第2の電極との間に空隙が存在する。
【0115】
本実施の形態の有機分子メモリは、1個のトランジスタと1個の有機分子層をメモリセルとする有機分子メモリである。メモリセル構造以外は、基本的に第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と重複する内容については記述を省略する。
【0116】
図19は、本実施の形態の有機分子メモリのメモリセル部の模式断面図である。
【0117】
本実施の形態の有機分子メモリは、1個のトランジスタと1個の抵抗変化型の有機分子層をメモリセルとする分子メモリである。図19に示すように、基板70上に、ゲート絶縁膜72とゲート電極74とを備える選択トランジスタ76が形成される。基板70には、ゲート電極74を挟んで第1のソース・ドレイン領域80と第2のソース・ドレイン領域82が形成される。
【0118】
基板70は、例えばシリコン基板である。ゲート絶縁膜72は、例えば、シリコン酸化膜である。ゲート電極74は、例えば多結晶シリコンである。第1のソース・ドレイン領域80および第2のソース・ドレイン領域82は、例えば、砒素(As)を不純物とする拡散層である。
【0119】
第1のソース・ドレイン領域80上には、第1のコンタクトプラグ84が形成される。そして、第1のコンタクトプラグ84上には第1のビット線86が形成される。第1のコンタクトプラグ84の材料は、例えば、タングステンであり、第1のビット線86の材料は、例えば、モリブデンである。
【0120】
第2のソース・ドレイン領域82上には、第2のコンタクトプラグ(第1の電極)88が形成される。そして、第2のコンタクトプラグ88上には、有機分子層90を挟んで第2のビット線(第2の電極)92が形成される。第2のコンタクトプラグ88の材料は、例えば、タングステンであり、第2のビット線92の材料は、例えば、モリブデンである。第2のビット線92の材料は、第2のコンタクトプラグ88とは異なる材料で形成される。
【0121】
複数の抵抗変化型分子鎖16aが、有機分子層90を構成する。そして、この有機分子層90と第2のコンタクトプラグ88は接触し、有機分子層90と第2のビット線92との間には空隙20が存在する。より厳密には、有機分子層90を構成する抵抗変化型分子鎖16aの一端が第2のコンタクトプラグ88と化学結合し、他端と第2のビット線92との間に空隙20が存在する。
【0122】
有機分子層90を構成する抵抗変化型分子鎖16aは、例えば、図2に示すような、4−[2−amino−5−nitro−4−(phenylethynyl)phenylethynyl]benzenethiolである。
【0123】
抵抗変化型分子鎖16aは、電場の有無や電荷の注入により抵抗が変化する機能を備える分子鎖である。例えば、図2に示す分子構造を備える抵抗変化型分子鎖は、両端部の間に電圧を印加することで低抵抗状態と高抵抗状態とを切り替えることが可能である。
【0124】
本実施の形態の有機分子メモリは、選択トランジスタ76をオンさせた状態で、第1のビット線86と第2のビット線92との間に電圧を印加することで、有機分子層90への書き込み、消去が可能となる。また、選択トランジスタ76をオン状態にして、第1のビット線86と第2のビット線92間に流れる電流をモニタすることで、有機分子層90の抵抗状態の読み出しが可能となる。これらの動作によりメモリセルが機能する。
【0125】
なお、空隙幅は0.2nm以上であることが望ましく、0.5nm以上であることがより望ましい点については、第1の実施の形態と同様である。また、有機分子層90を挟む第2のコンタクトプラグ(第1の電極)88と、第2のビット線(第2の電極)92についての好ましい材料についても第1の実施の形態と同様である。
【0126】
本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様、分子メモリの有機分子層に流れる電流が抑制される。したがって、過剰な電流が流れることで生ずるマイグレーションによる配線断線等を防止することが可能となる。また、非選択セルにおけるリーク電流が低減することで、メモリの誤動作を防止することが可能となる。
【0127】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。上記、実施の形態はあくまで、例として挙げられているだけであり、本発明を限定するものではない。また、実施の形態の説明においては、有機分子メモリ、有機分子メモリの製造方法等で、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる有機分子メモリ、有機分子メモリの製造方法等に関わる要素を適宜選択して用いることができる。
【0128】
例えば、実施の形態においては、有機分子層を構成する有機分子として、抵抗変化型分子鎖についてのみ言及しているが、抵抗変化型分子鎖に加えて、その他の有機分子が有機分子層中に含まれることを排除するものではない。
【0129】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての半導体整流装置が、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲およびその均等物の範囲によって定義されるものである。
【符号の説明】
【0130】
10 基板
12 下部電極配線(第1の電極または第1の電極配線)
14 上部電極配線(第2の電極または第2の電極配線)
16 有機分子層
16a 抵抗変化型分子鎖
20 空隙
22 絶縁層
36 犠牲層
42 第1の電極配線
44 第2の電極配線
46 第1の有機分子層
54 第3の電極配線
56 第2の有機分子層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、
前記第1の電極と異なる材料で形成される第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられる有機分子層であって、前記有機分子層を構成する抵抗変化型分子鎖の一端が前記第1の電極と化学結合し、前記抵抗変化型分子鎖の他端と前記第2の電極との間に空隙が存在する前記有機分子層と、
を有することを特徴とする有機分子メモリ。
【請求項2】
前記抵抗変化型分子鎖の前記他端と、前記第2の電極との距離が、0.2nm以上50nm以下であることを特徴とする請求項1記載の有機分子メモリ。
【請求項3】
前記抵抗変化型分子鎖の前記一端がチオール基である場合、前記第1の電極の前記一端と化学結合される領域が金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、タングステン(W)、窒化タングステン(WN)、窒化タンタル(TaN)、または窒化チタン(TiN)であり、前記第2の電極の前記他端と対向する領域がタンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、窒化モリブデン(MoN)、またはシリコン(Si)であり、
前記抵抗変化型分子鎖の前記一端がアルコール基、またはカルボキシル基である場合、前記第1の電極の前記一端と化学結合される領域がタングステン(W)、窒化タングステン(WN)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、モリブデン(Mo)、窒化モリブデン(MoN)、または窒化チタン(TiN)であり、前記第2の電極の前記他端と対向する領域が金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、またはシリコン(Si)であり、
前記抵抗変化型分子鎖の前記一端がシラノール基である場合、前記第1の電極の前記一端と化学結合される領域がシリコン(Si)または金属酸化物であり、前記第2の電極の前記他端と対向する領域が金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、タングステン(W)、窒化タングステン(WN)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、モリブデン(Mo)、窒化モリブデン(MoN)、または窒化チタン(TiN)であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の有機分子メモリ。
【請求項4】
第1の電極配線と、
前記第1の電極配線と交差し、前記第1の電極配線と異なる材料で形成される第2の電極配線と、
前記第1の電極配線と前記第2の電極配線との交差部の、前記第1の電極配線と前記第2の電極配線との間に設けられる有機分子層であって、前記有機分子層を構成する抵抗変化型分子鎖の一端が前記第1の電極配線と化学結合し、前記抵抗変化型分子鎖の他端と前記第2の電極配線との間に空隙が存在する前記有機分子層と、
を有することを特徴とする有機分子メモリ。
【請求項5】
前記抵抗変化型分子鎖の前記他端と、前記第2の電極配線との距離が、0.2nm以上50nm以下であることを特徴とする請求項4記載の有機分子メモリ。
【請求項6】
前記抵抗変化型分子鎖の前記一端がチオール基である場合、前記第1の電極配線の前記一端と化学結合される領域が金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、タングステン(W)、窒化タングステン(WN)、窒化タンタル(TaN)、または窒化チタン(TiN)であり、前記第2の電極配線の前記他端と対向する領域がタンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、窒化モリブデン(MoN)、またはシリコン(Si)であり、
前記抵抗変化型分子鎖の前記一端がアルコール基、またはカルボキシル基である場合、前記第1の電極配線の前記一端と化学結合される領域がタングステン(W)、窒化タングステン(WN)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、モリブデン(Mo)、窒化モリブデン(MoN)、または窒化チタン(TiN)であり、前記第2の電極配線の前記他端と対向する領域が金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、またはシリコン(Si)であり、
前記抵抗変化型分子鎖の前記一端がシラノール基である場合、前記第1の電極配線の前記一端と化学結合される領域がシリコン(Si)または金属酸化物であり、前記第2の電極配線の前記他端と対向する領域が金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、タングステン(W)、窒化タングステン(WN)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、モリブデン(Mo)、窒化モリブデン(MoN)、または窒化チタン(TiN)であることを特徴とする請求項4または請求項5記載の有機分子メモリ。
【請求項7】
第1の電極配線と、
前記第1の電極配線と交差する第2の電極配線であって、前記第1の電極配線側の第1の表面が前記第1の電極配線と異なる材料で形成され、前記第1の電極配線と反対側の第2の表面が前記第1の電極配線と同一の材料で形成される前記第2の電極配線と、
前記第1の電極配線と前記第2の電極配線との第1の交差部の、前記第1の電極配線と前記第2の電極配線との間に設けられる第1の有機分子層であって、前記第1の有機分子層を構成する抵抗変化型分子鎖の一端が前記第1の電極配線と化学結合し、前記抵抗変化型分子鎖の他端と前記第2の電極配線との間に空隙が存在する前記第1の有機分子層と、
前記第2の電極配線と交差する第3の電極配線であって、前記第2の電極配線側の表面が、前記第2の表面と異なる材料で形成される前記第3の電極配線と、
前記第2の電極配線と前記第3の電極配線との第2の交差部の、前記第2の電極配線と前記第3の電極配線との間に設けられる第2の有機分子層であって、前記第2の有機分子層を構成する抵抗変化型分子鎖の一端が前記第2の電極配線と化学結合し、前記抵抗変化型分子鎖の他端と前記第3の電極配線との間に空隙が存在する前記第2の有機分子層と、
を有することを特徴とする有機分子メモリ。
【請求項8】
第1の電極を形成し、
前記第1の電極と異なる材料の第2の電極を形成し、
前記第1の電極上に、前記第1の電極と前記第2の電極間の間隔よりも長さの短い抵抗変化型分子鎖を選択的に化学結合させて、前記第1の電極と前記第2の電極との間に有機分子層を形成することを特徴とする有機分子メモリの製造方法。
【請求項9】
基板上に第1の電極材料を形成し、
前記第1の電極材料上に犠牲層を形成し、
前記犠牲層上に前記第1の電極材料と異なる第2の電極材料を形成し、
前記第2の電極材料と前記犠牲層を第1の方向に伸長する複数のラインとなるようパターニングし、
前記第2の電極材料と前記犠牲層の間のスペースを第1の絶縁膜で埋め込み、
前記第1の電極材料が前記第1の方向と交差する第2の方向に伸長する複数のラインとなるよう、前記第2の電極材料、前記犠牲層、前記第1の絶縁膜、および、前記第1の電極材料をパターニングし、
前記犠牲層を、前記第1の電極材料、前記第2の電極材料、および、前記第1の絶縁膜に対し選択的に除去し、
前記第1の電極材料上に前記犠牲層の厚さよりも長さの短い抵抗変化型分子鎖を選択的に化学結合させて、有機分子層を形成し、
前記第1の電極材料の間、前記有機分子層の間、前記第2の電極材料の間のスペースを、第2の絶縁膜で埋め込み、
前記第2の電極材料上に第3の電極材料を形成し、
前記第3の電極材料を、前記第2の電極材料に接続され、前記第1の方向に伸長する複数のラインとなるようパターニングすることを特徴とする有機分子メモリの製造方法。
【請求項1】
第1の電極と、
前記第1の電極と異なる材料で形成される第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられる有機分子層であって、前記有機分子層を構成する抵抗変化型分子鎖の一端が前記第1の電極と化学結合し、前記抵抗変化型分子鎖の他端と前記第2の電極との間に空隙が存在する前記有機分子層と、
を有することを特徴とする有機分子メモリ。
【請求項2】
前記抵抗変化型分子鎖の前記他端と、前記第2の電極との距離が、0.2nm以上50nm以下であることを特徴とする請求項1記載の有機分子メモリ。
【請求項3】
前記抵抗変化型分子鎖の前記一端がチオール基である場合、前記第1の電極の前記一端と化学結合される領域が金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、タングステン(W)、窒化タングステン(WN)、窒化タンタル(TaN)、または窒化チタン(TiN)であり、前記第2の電極の前記他端と対向する領域がタンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、窒化モリブデン(MoN)、またはシリコン(Si)であり、
前記抵抗変化型分子鎖の前記一端がアルコール基、またはカルボキシル基である場合、前記第1の電極の前記一端と化学結合される領域がタングステン(W)、窒化タングステン(WN)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、モリブデン(Mo)、窒化モリブデン(MoN)、または窒化チタン(TiN)であり、前記第2の電極の前記他端と対向する領域が金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、またはシリコン(Si)であり、
前記抵抗変化型分子鎖の前記一端がシラノール基である場合、前記第1の電極の前記一端と化学結合される領域がシリコン(Si)または金属酸化物であり、前記第2の電極の前記他端と対向する領域が金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、タングステン(W)、窒化タングステン(WN)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、モリブデン(Mo)、窒化モリブデン(MoN)、または窒化チタン(TiN)であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の有機分子メモリ。
【請求項4】
第1の電極配線と、
前記第1の電極配線と交差し、前記第1の電極配線と異なる材料で形成される第2の電極配線と、
前記第1の電極配線と前記第2の電極配線との交差部の、前記第1の電極配線と前記第2の電極配線との間に設けられる有機分子層であって、前記有機分子層を構成する抵抗変化型分子鎖の一端が前記第1の電極配線と化学結合し、前記抵抗変化型分子鎖の他端と前記第2の電極配線との間に空隙が存在する前記有機分子層と、
を有することを特徴とする有機分子メモリ。
【請求項5】
前記抵抗変化型分子鎖の前記他端と、前記第2の電極配線との距離が、0.2nm以上50nm以下であることを特徴とする請求項4記載の有機分子メモリ。
【請求項6】
前記抵抗変化型分子鎖の前記一端がチオール基である場合、前記第1の電極配線の前記一端と化学結合される領域が金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、タングステン(W)、窒化タングステン(WN)、窒化タンタル(TaN)、または窒化チタン(TiN)であり、前記第2の電極配線の前記他端と対向する領域がタンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、窒化モリブデン(MoN)、またはシリコン(Si)であり、
前記抵抗変化型分子鎖の前記一端がアルコール基、またはカルボキシル基である場合、前記第1の電極配線の前記一端と化学結合される領域がタングステン(W)、窒化タングステン(WN)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、モリブデン(Mo)、窒化モリブデン(MoN)、または窒化チタン(TiN)であり、前記第2の電極配線の前記他端と対向する領域が金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、またはシリコン(Si)であり、
前記抵抗変化型分子鎖の前記一端がシラノール基である場合、前記第1の電極配線の前記一端と化学結合される領域がシリコン(Si)または金属酸化物であり、前記第2の電極配線の前記他端と対向する領域が金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、タングステン(W)、窒化タングステン(WN)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、モリブデン(Mo)、窒化モリブデン(MoN)、または窒化チタン(TiN)であることを特徴とする請求項4または請求項5記載の有機分子メモリ。
【請求項7】
第1の電極配線と、
前記第1の電極配線と交差する第2の電極配線であって、前記第1の電極配線側の第1の表面が前記第1の電極配線と異なる材料で形成され、前記第1の電極配線と反対側の第2の表面が前記第1の電極配線と同一の材料で形成される前記第2の電極配線と、
前記第1の電極配線と前記第2の電極配線との第1の交差部の、前記第1の電極配線と前記第2の電極配線との間に設けられる第1の有機分子層であって、前記第1の有機分子層を構成する抵抗変化型分子鎖の一端が前記第1の電極配線と化学結合し、前記抵抗変化型分子鎖の他端と前記第2の電極配線との間に空隙が存在する前記第1の有機分子層と、
前記第2の電極配線と交差する第3の電極配線であって、前記第2の電極配線側の表面が、前記第2の表面と異なる材料で形成される前記第3の電極配線と、
前記第2の電極配線と前記第3の電極配線との第2の交差部の、前記第2の電極配線と前記第3の電極配線との間に設けられる第2の有機分子層であって、前記第2の有機分子層を構成する抵抗変化型分子鎖の一端が前記第2の電極配線と化学結合し、前記抵抗変化型分子鎖の他端と前記第3の電極配線との間に空隙が存在する前記第2の有機分子層と、
を有することを特徴とする有機分子メモリ。
【請求項8】
第1の電極を形成し、
前記第1の電極と異なる材料の第2の電極を形成し、
前記第1の電極上に、前記第1の電極と前記第2の電極間の間隔よりも長さの短い抵抗変化型分子鎖を選択的に化学結合させて、前記第1の電極と前記第2の電極との間に有機分子層を形成することを特徴とする有機分子メモリの製造方法。
【請求項9】
基板上に第1の電極材料を形成し、
前記第1の電極材料上に犠牲層を形成し、
前記犠牲層上に前記第1の電極材料と異なる第2の電極材料を形成し、
前記第2の電極材料と前記犠牲層を第1の方向に伸長する複数のラインとなるようパターニングし、
前記第2の電極材料と前記犠牲層の間のスペースを第1の絶縁膜で埋め込み、
前記第1の電極材料が前記第1の方向と交差する第2の方向に伸長する複数のラインとなるよう、前記第2の電極材料、前記犠牲層、前記第1の絶縁膜、および、前記第1の電極材料をパターニングし、
前記犠牲層を、前記第1の電極材料、前記第2の電極材料、および、前記第1の絶縁膜に対し選択的に除去し、
前記第1の電極材料上に前記犠牲層の厚さよりも長さの短い抵抗変化型分子鎖を選択的に化学結合させて、有機分子層を形成し、
前記第1の電極材料の間、前記有機分子層の間、前記第2の電極材料の間のスペースを、第2の絶縁膜で埋め込み、
前記第2の電極材料上に第3の電極材料を形成し、
前記第3の電極材料を、前記第2の電極材料に接続され、前記第1の方向に伸長する複数のラインとなるようパターニングすることを特徴とする有機分子メモリの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図6】
【公開番号】特開2012−204446(P2012−204446A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65527(P2011−65527)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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