説明

有機化合物の組合せ剤

本発明は、DDP IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩および少なくとも1種の免疫抑制剤もしくは免疫調節剤またはその薬学的に許容される塩を含む組合せ剤、例えば組合せ製剤または医薬組成物に関する。本発明はさらに、DDP IV阻害によって阻害され得る疾患および障害の予防、進行の遅延もしくは処置、自己免疫疾患およびそれに関連する障害の予防、進行の遅延もしくは処置、または移植片拒絶の予防、進行の遅延もしくは処置のための、前記組合せ剤の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DPP−IV阻害剤および少なくとも1種の免疫抑制剤または免疫調節剤を含む、とりわけDPP IV阻害によって阻害され得る疾患および状態の予防、進行の遅延もしくは処置、自己免疫疾患、例えば1型糖尿病およびそれに関連する障害の予防、進行の遅延もしくは処置のために投与する医薬組合せ剤に関する。
【背景技術】
【0002】
臓器移植および自己免疫疾患患者には多くの処置選択肢があるにもかかわらず、有効で安全な免疫抑制剤の必要性および組合せ治療におけるそれらの好ましい使用の必要性はなお残されている。
【0003】
1型糖尿病はインシュリン依存性糖尿病(IDDM)とも呼ばれる。1型糖尿病において、インシュリン産生膵臓ベータ細胞が体自体に自己免疫性攻撃を行い、そして膵臓をインシュリン生産不可能にする。ヨーロッパは最も患者数が多い地域の1つであり、100万人以上の患者が存在する。患者は驚くべき費用を伴った破壊された血管合併症を有し;現在の処置法は治療にも予防にも利用することができない。1型糖尿病と診断された個体は生存のために定期的なインシュリン注射が必要である。島細胞移植および膵臓移植は、ある症例においてインシュリン注射の必要性を取り除くことができる。しかし、これらの方法であっても、抗拒絶治療の終生の計画を維持することを患者に要求する。
【0004】
1型糖尿病は、ベータ細胞を標的とする破壊的自己免疫プロセスとこれらの細胞の再生能の好ましくないバランスによる、膵臓ベータ細胞の進行性喪失によって特徴付けられる。この不均衡は最終的には、ベータ細胞および内因性インシュリン分泌の完全な喪失をもたらす。
【0005】
しかし、1型糖尿病であると新たに診断された患者において、インシュリン処置開始の直後には逆行的改善が起こる:患者の残存ベータ細胞の能力が増加し、そして寛解期(「蜜月」)が続いて、患者の外因性インシュリン処置の必要が低下し、そしていくつかの症例において完全に不要となり、そして代謝制御が最適に近くなる。結果として、寛解期は相対的ベータ細胞回復期、または損傷したがなおも再生しているベータ細胞塊の臨床所見を反映し得る。したがって、寛解期の期間がベータ細胞の再生能に比例する。したがって、1型糖尿病を有すると新たに診断された患者のベータ細胞の増加は、残存ベータ細胞に対するストレスを和らげ、したがってそれらを自己免疫性破壊から保護することができる。
【0006】
寛解期にベータ細胞機能を保護する薬理学的介入の原理は、新しく1型糖尿病と診断された島細胞抗体(ICA)−陽性成人患者におけるインシュリンレジメンを制御するためのジアゾキシドを補助治療として示された[Bjork E, et al Diabetes (1996) 45:1427-30 and Bjork E, et al Diabetes Care (1998) 21:427-430)]が、過度の副作用(血圧の低下、浮腫、毛髪成長の増加)のため、この化合物を用いた処置は通常の臨床実施には耐用性ではない。したがって現在のところ、通常の基礎における寛解期のベータ細胞の機能を予め提供する(pre serve)ための薬理学的介入の基礎が存在しない。
【0007】
1型糖尿病は慢性自己免疫疾患であり、ランゲルハンスの膵島内のインシュリン産生細胞(P細胞)を選択的に標的として、免疫細胞の浸潤によって破壊する。この浸潤によって島に炎症様効果をもたらし、これは膵島炎として知られている。1型糖尿病発症後の処置プロトコルは、ヒトにおいて糖尿病が診断される時までに膵島炎がすでに劇的に進行しており、80%以上の細胞が失われているため、とりわけ問題である。島移植は1型糖尿病の潜在的に成功し得る処置であるが、重度のP細胞破壊がかかる処置を保証するために必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
膵島炎および他の島機能不全状態の阻害のための初期段階治療の必要性が存在する。危険性がある個体において疾患発症の前に開始することができるプロトコルがとりわけ有用であろう。1型糖尿病を発症するおそれのある個体における危険因子の同定において顕著な進歩がなされている。しかし、上記常套の1型糖尿病に対する処置プロトコルは、効果であり望ましくない副作用のために予防治療としては実際的ではない。膵島炎は前糖尿病段階であり、これは通常1型糖尿病の発症に先行し、したがって、膵島炎の阻害のための予防的プロトコルが必要である。これは究極的には1型糖尿病の遅延または予防をもたらし得る。
【0009】
2型糖尿病は通常、40歳以上または体重過多(肥満)のヒトにおいて発症する。一般的に、2型糖尿病患者の処置にはインシュリン治療を含まないが、ライフスタイル面での変化(例えば運動、減量、厳しいダイエット)および時に経口抗糖尿病薬が血中グルコースレベルを制御するために必要である。
【0010】
1型糖尿病はしばしば小児において診断され、そのために若年性糖尿病と呼ばれることがある。心臓疾患、失明、高血圧、神経損傷および腎不全を含む糖尿病のより重度の合併症を予防するためには、早期診断が重要である。しかし、1型糖尿病がしばしば若く細身のヒトに、通常30歳までで発症する傾向があるが、老年の患者でもこの形態の糖尿病を有する。このタイプの1型糖尿病は通常、成人の潜在的自己免疫性糖尿病(LADA)と呼ばれる。より一般的な若年性1型糖尿病のように、LADAはインシュリン産生膵臓ベータ細胞の免疫介在破壊によって引き起こされる。LADAはまた、遅発性1型糖尿病、成人の遅発性自己免疫性糖尿病、および1型糖尿病とも知られる。若年性1型糖尿病とLADAの大きな違いは、診断の年齢−一般的には30歳以上である。LADAの診断法は、例えば特許公報WO2005054512 A2に記載されている。
【0011】
したがって、1型糖尿病はあらゆる年齢で存在し得るものであり、臨床的発現の年齢を決定する因子は知られていない。2型糖尿病(成人発症糖尿病)は一般的に、遺伝的因子および肥満のために身体がインシュリン抵抗性を獲得したときに発症し、典型的には成人において診断される。インシュリン抵抗性は高血糖を引き起こし、そしてインシュリン生産の要求を長引かせるため、膵臓ベータ細胞を劣化させる。インシュリン抵抗性とベータ細胞機能の減少の組合せによって、最終的に2型糖尿病が引き起こされる。
【0012】
LADAはしばしば、発症年齢が高いため、2型糖尿病と誤診される。他の形態の1型糖尿病のように、LADAを有する患者は血中グルコースレベルを正常化するためにインシュリン注射が必要である。30歳以上の肥満患者は必ず2型糖尿病症例であると推測することは不適切であり、誤った処置を導入することがある。したがって糖尿病を診断するときには、1型糖尿病と2型糖尿病を確実に正しく区別することが極めて重要である。既知の診断法には、島細胞抗体(ICA)、インシュリン自動抗体(IAA)および/またはグルタミン酸デカルボキシラーゼ(IADとして知られるベータ細胞タンパク質であり、LADA診断を裏付けることができる)の存在についての(1型糖尿病患者における)血液試験が含まれる。インシュリン生産中に製造されるタンパク質であるc−タンパク質の存在量を1型糖尿病またはLADAを2型糖尿病から区別するために使用することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明において、少なくとも1種の免疫抑制剤または免疫調節剤、例えば下記定義のものと、共薬剤としてのDPP−IV阻害剤、例えば下記定義のものを含む組合せ剤が、自己免疫疾患、例えば1型糖尿病およびそれに関連する障害、あるいは移植片拒絶またはDPP−IV阻害によって処置され得る状態/障害に対して有益な効果を有することを見出した。
【0014】
したがって本発明は、
i)DPP IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩、および
ii)免疫抑制剤もしくは免疫調節剤、またはその薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1種の有効成分
をそれぞれ含む組合せ剤、例えば組合せ製剤または医薬組成物に関する。
【0015】
好ましくは本発明は、
i)DPPIV阻害剤またはその薬学的に許容される塩、および
ii)免疫抑制剤もしくは免疫調節剤、またはその薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1種の有効成分、そして
少なくとも1種のさらなる薬学的に許容される担体をそれぞれ含む組合せ剤(医薬組合せ剤)、例えば組合せ製剤または医薬組成物に関する。
【0016】
好ましくは組合せ剤は医薬組成物または組合せ医薬製剤である。
【0017】
本発明の医薬組成物において、組合せパートナー(i)および(ii)を同時に、1個ずつまたは別個に、1個の組合せ単位投与形態または2個の別個の単位投与形態で、投与することができる。単位投与形態は固定された組合せ剤であってもよい。
【0018】
「少なくとも1種の治療薬剤」なる用語は、DPP IV阻害剤に加えて、1種以上、例えば2,さらには3種の、本発明おいて特定されている有効成分が組み合わされ得ることを意味している。好ましくは、免疫抑制剤および/または免疫調節剤から選択される1または2種の薬剤である。
【0019】
「DPP−IV」なる用語は、本明細書において使用するとき、CD26としても知られているジペプチジルペプチダーゼIVを意味する。DPP−IVはプロリン/アラニン後切断アミノジペプチダーゼのグループに属するセリンプロテアーゼであり、プロリンまたはアラニンを2位に有するタンパク質から2個のN−末端アミノ酸を特異的に除去する。基質にインシュリン分泌促進ホルモン類、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)および胃抑制ペプチド(GIP)が含まれているため、DPP−IVをグルコース代謝の制御に使用することができる。GLP−1およびGIPは無傷の形態でのみ活性であり、それらの2個のN−末端アミノ酸を除去するとそれらが不活性化される。
【0020】
DPP−IVの合成阻害剤のインビボ投与によってGLP−1およびGIPのN−末端分解が阻止され、これらのホルモンの血漿濃度が上昇し、インシュリン分泌が上昇し、したがってグルコース耐性が改善される。
【0021】
「DPP−IV阻害剤」なる用語は、DPP−IVおよび機能的に関連している酵素の酵素活性の阻害、例えば1〜100%または20〜80%阻害を示し、そしてこれらに限定されないが、GLP−1、GIP、ペプチドヒスチジンメチオニン、サブスタンスP、神経ペプチドY、および典型的にはアミノ末端位から2番目にアラニンまたはプロリンを含む分子の作用をとりわけ保存する分子を意味する。DPP−IV阻害剤での処置によってペプチド基質の作用期間が延長され、それらの無傷の未分解形態のレベルが増加し、本発明に関連する生物学的活性のスペクトルがもたらされる。
【0022】
そのような目的のため、化学化合物を、精製CD26/DPP−IVの酵素活性を阻害する能力について試験する。簡潔に述べると、CD26/DPP−IVの活性を合成基質Gly−Pro−p−ニトロアニリド(Gly−Pro−pNA)を切断する能力によってインビトロで測定する。Gly−Pro−pNAのDPP−IVによる切断によって、生成物p−ニトロアニリド(pNA)が遊離し、その出現速度が酵素活性と直接比例する。特定の酵素阻害剤による酵素活性の阻害によってpNAの生産は遅延する。阻害剤と酵素の強い相互作用はpNAの生産速度をより遅延させる。したがって、pNAの蓄積速度の阻害の程度が酵素阻害の強さの直接の指標である。pNAの蓄積は分光光度計によって測定する。各化合物の阻害定数Kiを、固定量の酵素を複数の異なる濃度の阻害剤と基質とインキュベートすることによって決定する。
【0023】
本発明において、「DPP−IV阻害剤」はまた、活性な代謝産物およびそのプロドラッグ、例えば活性な代謝産物およびDPP−IV阻害剤のプロドラッグを含むことを意図する。活性な「代謝産物」はDPP−IV阻害剤を代謝したときに生産されるDPP−IV阻害剤の活性誘導体である。「プロドラッグ」は、DPP−IV阻害剤に代謝されるか、またはDPP−IV阻害剤と同じ代謝産物に代謝される化合物である。
【0024】
DPP−IV阻害剤は当業者に既知である。例えば、DPP−IV阻害剤は各々の場合において一般的かつ具体的に、例えばWO 98/19998、DE19616 486 A1、WO 00/34241、WO 95/15309、WO 01/72290、WO01/52825、WO 9310127、WO 9925719、WO 9938501、WO 9946272、WO 9967278およびWO 9967279に記載されている。
【0025】
好ましいDPP−IV阻害剤は下記特許出願に記載されている;WO 02053548、とりわけ化合物1001〜1293および実施例1〜124、WO 02067918、とりわけ化合物1000〜1278および2001〜2159、WO 02066627、とりわけ実施例、WO 02/068420、とりわけ実施例I〜LXIIIに具体的に列記されている全ての化合物および対応するアナログ、さらに好ましい化合物はIC50を記載している表中の2(28)、2(88)、2(119)、2(136)、WO 02083128、とりわけ実施例1〜13、US 2003096846、とりわけ具体的に記載されている化合物、WO 2004/037181、とりわけ実施例1〜33、WO 0168603、とりわけ実施例1〜109の化合物、EP1258480、とりわけ実施例1〜60の化合物、WO 0181337、とりわけ実施例1〜118、WO 02083109、とりわけ実施例1A〜1D、WO 030003250、とりわけ実施例1〜166、最も好ましくは1〜8の化合物、WO 03035067、とりわけ実施例に記載の化合物、WO 03/035057、とりわけ実施例に記載の化合物、US2003216450、とりわけ実施例1〜450、WO 99/46272、とりわけ請求項12、14、15および17の化合物、WO 0197808、とりわけ請求項2の化合物、WO 03002553、とりわけ実施例1〜33の化合物、WO 01/34594、とりわけ実施例1〜4に記載の化合物、WO 02051836、とりわけ実施例1〜712、EP1245568、とりわけ実施例1〜7、EP1258476、とりわけ実施例1〜32、US 2003087950、とりわけ実施例、WO 02/076450、とりわけ実施例1〜128、WO 03000180、とりわけ実施例1〜162、WO 03000181、とりわけ実施例1〜66、WO 03004498、とりわけ実施例1〜33、WO 0302942、とりわけ実施例1〜68、US 6482844、とりわけ実施例、WO 0155105、とりわけ実施例1および2に記載の化合物、WO 0202560、とりわけ実施例1〜166、WO 03004496、とりわけ実施例1〜103、WO 03/024965、とりわけ実施例1〜54、WO 0303727、とりわけ実施例1〜209、WO 0368757、とりわけ実施例1〜88、WO 03074500、とりわけ実施例1〜72、実施例4.1〜4.23、実施例5.1〜5.10、実施例6.1〜6.30、実施例7.1〜7.23、実施例8.1〜8.10、実施例9.1〜9.30、WO 02038541、とりわけ実施例1〜53、WO 02062764、とりわけ実施例1〜293、好ましくは実施例95の化合物(2−{{3−(アミノメチル)−4−ブトキシ−2−ネオペンチル−1−オキソ−1,2 ジヒドロ−6−イソキノリニル}オキシ}アセトアミドヒドロクロライド)、WO 02308090、とりわけ実施例1−1〜1−109、実施例2−1〜2−9、実施例3、実施例4−1〜4−19、実施例5−1〜5−39、実施例6−1〜6−4、実施例7−1〜7−10、実施例8−1〜8−8、90頁の実施例7−1〜7−7、91〜95頁の実施例8−1〜8−59、実施例9−1〜9−33、実施例10−1〜10−20、US 2003225102、とりわけ化合物1〜115、実施例1〜121の化合物、好ましくは化合物a)〜z)、aa)〜az)、ba)〜bz)、ca)〜cz)およびda)〜dk)、WO 0214271、とりわけ実施例1〜320、ならびにUS 2003096857およびWO 2004/052850、とりわけ実施例1〜42のように具体的に記載された化合物および請求項1の化合物、DE 102 56 264 A1、とりわけ実施例1〜181のような記載された化合物および請求項5の化合物、WO 04/076433、とりわけ表Aに記載のような具体的に記載された化合物、好ましくは表Bに記載の化合物、好ましくは化合物I〜XXXXVII、または請求項6〜49の化合物、WO 04/071454、とりわけ具体的に記載された化合物、例えば化合物1〜53または表Ia〜Ifの化合物、または請求項2〜55の化合物、WO 02/068420、とりわけ具体的に記載された化合物、例えば化合物I〜LXIIIまたは実施例Iおよびアナログ1〜140または実施例2およびアナログ1〜174または実施例3およびアナログ1、または実施例4〜5、または実施例6およびアナログ1〜5、または実施例7およびアナログ1〜3、または実施例8およびアナログ1、または実施例9、または実施例10およびアナログ1〜531、より好ましくは請求項13の化合物、WO 03/000250、とりわけ具体的に記載された化合物、例えば化合物1〜166、好ましくは実施例1〜9の化合物、WO 03/024942、とりわけ具体的に記載された化合物、例えば化合物1〜59、表1の化合物(1〜68)、請求項6、7、8、9の化合物、WO 03024965024942、とりわけ具体的に記載された化合物、例えば化合物1〜54、WO 03002593、とりわけ具体的に記載された化合物、例えば表1または請求項2〜15の化合物、WO03037327、とりわけ具体的に記載された化合物、例えば実施例1〜209の化合物、WO 03/000250、とりわけ具体的に記載された化合物、例えば化合物1〜166、好ましくは実施例1〜9の化合物、WO 03/024942、とりわけ具体的に記載された化合物、例えば化合物1〜59、表1の化合物(1〜68)、請求項6、7、8、9の化合物、WO 03024965024942、とりわけ具体的に記載された化合物、例えば化合物1〜54、WO 03002593、とりわけ具体的に記載された化合物、例えば表1または請求項2〜15のもの、WO03037327、とりわけ具体的に記載された化合物、例えば実施例1〜209のもの、WO0238541、WO0230890、WO 03/000250、とりわけ具体的に記載された化合物、例えば化合物1〜166、好ましくは実施例1〜9の化合物、WO 03/024942、とりわけ具体的に記載された化合物、例えば化合物1〜59、表1の化合物(1〜68)、請求項6、7、8、9の化合物、WO 03024965、とりわけ具体的に記載された化合物、例えば化合物1〜54、WO 03002593、とりわけ具体的に記載された化合物、例えば表1または請求項2〜15の化合物、WO03037327、とりわけ具体的に記載された化合物、例えば実施例1〜209の化合物、WO0238541、とりわけ具体的に記載された化合物、例えば実施例1〜53の化合物、WO 03/002531、とりわけ具体的に記載された化合物、好ましくは9〜13ページに列記された化合物、最も好ましくは実施例1〜46の化合物、さらに好ましくは実施例9の化合物、U.S.特許第6,395,767号、好ましくは実施例1〜109の化合物、最も好ましくは実施例60の化合物、U.S.出願第09/788,173号(2001年2月16日出願、代理人ファイル番号LA50)、とりわけ実施例、WO99/38501、とりわけ実施例、WO99/46272、とりわけ実施例、およびDE19616 486 A1、とりわけval−pyr、val−チアゾリジド、イソロイシル−チアゾリジド、イソロイシル−ピロリジド、およびイソロイシル−チアゾリジドフマル酸塩およびイソロイシル−ピロリジドフマル酸塩。
【0026】
さらに好ましいDPP−IV阻害剤には、米国特許番号第6124305号および第6107317号、国際公開第WO 95153 09号および第WO 9818763号に記載の具体的な実施例が含まれる。
【0027】
具体的な請求項の化合物および実施例の最終生成物のそれぞれについて、最終生成物、医薬製剤および請求項の主題を、これらの公報を参照することによって本願明細書の一部とする。
【0028】
公開特許出願WO 9819998には、N−(N’−置換グリシル)−2−シアノピロリジン、とりわけ1−[2−[5−シアノピリジン−2−イル]アミノ]−エチルアミノ]アセチル−2−シアノ−(S)−ピロリジン(NVP−DPP728)が記載されている。
【0029】
公開特許出願WO 0034241および公開特許US 6110949には、N−置換アダマンチル−アミノ−アセチル−2−シアノピロリジンおよびW(置換グリシル)−4−シアノピロリジンがそれぞれ記載されている。興味のあるDPP−IV阻害剤はとりわけ、請求項1〜4に記載のものである。とりわけこれらの出願には、化合物1−[[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル]−2−シアノ−(S)−ピロリジン(LAF237またはビルダグリプチンとも知られている)が記載されている。
【0030】
公開特許出願WO 9515309には、アミノ酸2−シアノピロリジンアミドがDPP−IV阻害剤として記載されている。公開特許出願WO 9529691には、アルファ−アミノアルキルホスホン酸ジエステルのペプチジル誘導体、とりわけプロリンまたは関連構造を有するものが記載されている。興味のあるDPP−IV阻害剤は、とりわけ表1〜8に記載のものである。
【0031】
WO 01/72290では、興味のあるDPP−IV阻害剤はとりわけ実施例1および請求項1、4および6に記載のものである。
【0032】
WO01/52825にはとりわけ、(S)−1−{2−[5−シアノピリジン−2イル)アミノ]エチル−アミノアセチル)−2−シアノ−ピロリジンまたは(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンが記載されている。
【0033】
公開特許出願WO 9310127には、DPP−IV阻害剤として有用なプロリンボロン酸エステルが記載されている。興味のあるDPP−IV阻害剤はとりわけ、実施例1〜19に記載のものである。
【0034】
公開特許出願WO 9925719にはストレプトマイセス属微生物を培養して製造するDPP−IV阻害剤である、スルホスチンが記載されている。
【0035】
公開特許出願WO 9938501にはN−置換4〜8員ヘテロ環式環が記載されている。興味のあるDPP−IV阻害剤はとりわけ、請求項15〜20に記載のものである。
【0036】
公開特許出願WO 9946272には、DPP−IV阻害剤としてリン酸化合物が記載されている。興味のあるDPP−IV阻害剤は、とりわけ請求項1〜23に記載のものである。
【0037】
公開特許出願WO 9967278およびWO 9967279には、DPP−IVプロドラッグおよびA−B−C(CはDPP−IVの安定または不安定阻害剤である)形の阻害剤が記載されている。
【0038】
他の好ましいDPP−IV阻害剤は、特許出願WO 03/057200の14〜27ページに記載の式I、IIまたはIIIの化合物である。最も好ましいDPP−IV阻害剤は、ページ28および29に具体的に記載された化合物である。
【0039】
上記特許文献に記載の物質は、本発明の実施に使用するためのDPP−IV阻害剤として潜在的に有用であると考えられる(これらを出典明示により本明細書の一部とする)。
【0040】
さらに好ましい態様において、DPP−IV阻害剤はN−ペプチジル−O−アロイルヒドロキシルアミンまたはその薬学的に許容される塩である。アロイルは、例えばナフチルカルボニル;あるいは非置換であるか、低級アルコキシ、低級アルキル、ハロゲンもしくは好ましくはニトロで1または2置換されたベンゾイルである。ペプチジル基は、好ましくは2個のα−アミノ酸、例えばグリシン、アラニン、ロイシン、フェニルアラニン、リシンまたはプロリンを含んでおり、ヒドロキシルアミン窒素原子と直接結合している1個は好ましくはプロリンである。
【0041】
好ましくは、N−ペプチジル−O−アロイルヒドロキシルアミンは式VII
【化1】

〔式中、
jは0、1または2であり;
Rεは天然アミノ酸の側鎖を意味し;そして
Rεは低級アルコキシ、低級アルキル、ハロゲンまたはニトロを意味する〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0042】
本発明の極めて好ましい態様において、N−ペプチジル−O−アロイルヒドロキシルアミンは式VIIa
【化2】

の化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0043】
例えば式VIIまたはVIIaのN−ペプチジル−O−アロイルヒドロキシルアミン、およびそれらの製造法は、H.U. Demuth et al. in J. Enzyme Inhibition 1988, Vol. 2の129〜142ページ、とりわけ130〜132ページに記載されている。
【0044】
好ましいDPP−IV阻害剤はN−置換アダマンチル−アミノ−アセチル−2−シアノピロリジン、N(置換グリシル)−4−シアノピロリジン、N−(N’−置換グリシル)−2−シアノピロリジン、N−アミノアシルチアゾリジン、N−アミノアシルピロリジン、L−アロ−イソロイシルチアゾリジン、L−トレオ−イソロイシルピロリジン、およびL−アロ−イソロイシルピロリジン、1−[2−[(5−シアノピリジン−2−イル)アミノ]エチルアミノ]アセチル−2−シアノ−(S)−ピロリジンおよびそれらの医薬的塩である。
【0045】
好ましいDPP−IV阻害剤は、Mona Patel and col. (Expert Opinion Investig Drugs. 2003 Apr;12(4):623-33)の第5段落に記載のもの、とりわけP32/98、K−364、FE−999011、BDPX、NVP−DDP−728および他のもの、とりわけ記載のDPP−IV阻害剤である。
【0046】
他の好ましい阻害剤は、WO 2001068603または米国特許第6,395,767号(実施例60の化合物)に記載の化合物BMS−477118であり、これは(1S,3S,5S)−2−[(2S)−2−アミノ−2−(3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デシ−1−イル)−1−オキソエチル]−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−カルボニトリル、ベンゾエート(1:1)として知られており、特許出願WO 2004/052850の2ページの式Mに示されており、そして対応する遊離塩基(lS,3S,5S)−2−[(2S)−2−アミノ−2−(3−ヒドロキシ−トリシクロ[3.3.1.13,7]デシ−1−イル)−1−オキソエチル]−2−アザビシクロ−[3.1.0]ヘキサン−3−カルボニトリル(M’)およびその1水和物(M’’)は特許出願WO 2004/052850の3ページの式Mに示されている。化合物BMS−477118はサキサグリプチンとも知られている。
【0047】
他の好ましい阻害剤は、WO 03/002531(実施例9)に記載の化合物GSK23Aであり、これは(2S,4S)−1−((2R)−2−アミノ−3−[(4−メトキシベンジル)スルホニル]−3−メチルブタノイル)−4−フルオロピロリジン−2−カルボニトリルヒドロクロライドとも知られている。
【0048】
FE−999011は特許出願WO 95/15309、14ページに化合物18として記載されている。
【0049】
3−[(2S,3S)−2−アミノ−3−メチル−1−オキソペンチル]チアゾリジンとしても知られるP32/98またはP3298(CAS番号:251572−86−8)を、下記のような3−[(2S,3S)−2−アミノ−3−メチル−1−オキソペンチル]チアゾリジンおよび(2E)−2−ブテネジオエート(2:1)混合物
【化3】

として使用することができ、そしてWO 99/61431およびDiabetes 1998, 47, 1253-1258にProbiodrugの名で、そして同じ会社によって化合物P93/01と記載されている。
【0050】
他の極めて好ましい本発明のDPP−IV阻害剤は、国際特許出願WO 02/076450(とりわけ実施例1〜128)およびWallace T. Ashton (Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 14 (2004) 859-863)に、とりわけ化合物1ならびに表1および2に列記されている化合物として記載されている。式
【化4】

の化合物21e(表1)が好ましい。
【0051】
他の好ましいDPP−IV阻害剤は特許出願WO 2004/037169に記載されており、とりわけ実施例1〜48、およびWO 02/062764、とりわけ実施例1〜293に記載のものが好ましい。とりわけWO2004/024184の7ページ、とりわけ参考例1〜4に記載の化合物3−(アミノメチル)−2−イソブチル−1−オキソ−4−フェニル−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリンカルボキサミドおよび2−{[3−(アミノメチル)−2−イソブチル−4−フェニル−1−オキソ−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリル]オキシ}アセトアミドが好ましい。
【0052】
他の好ましいDPP−IV阻害剤は特許出願WO 03/004498、とりわけ実施例1〜33および最も好ましくは実施例7に記載の式
【化5】

の化合物(MK−0431またはシタグリプチンとも知られる)である。
【0053】
好ましいDPP−IV阻害剤は特許出願WO 2004/037181、とりわけ実施例1〜33に記載されており、最も好ましくは請求項3〜5に記載の化合物である。
【0054】
好ましいDPP−IV阻害剤はN−置換アダマンチル−アミノ−アセチル−2−シアノピロリジン、N(置換グリシル)−4−シアノピロリジン、N−(N’−置換グリシル)−2−シアノピロリジン、N−アミノアシルチアゾリジン、N−アミノアシルピロリジン、L−アロ−イソロイシルチアゾリジン、L−トレオ−イソロイシルピロリジン、およびL−アロ−イソロイシルピロリジン、1−[2−[(5−シアノピリジン−2−イル)アミノ]エチルアミノ]アセチル−2−シアノ−(S)−ピロリジン、MK−431およびその医薬的塩である。
【0055】
最も好ましいDPP−IV阻害剤は、[S]−1−[2−(5−シアノ−2−ピリジニルアミノ)エチルアミノ]アセチル−2−ピロリジンカルボニトリルモノヒドロクロライド、(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンおよびL−トレオ−イソロイシルチアゾリジン(上記Probiodrugの化合物番号:P32/98)、MK−0431、3−(アミノメチル)−2−イソブチル−1−オキソ−4−フェニル−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリンカルボキサミドおよび2−{[3−(アミノメチル)−2−イソブチル−4−フェニル−1−オキソ−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリル]オキシ}アセトアミドおよび所望によりその医薬的塩から選択される。
【0056】
とりわけ、式
【化6】

の1−{2−[(5−シアノピリジン−2−イル)アミノ]エチルアミノ}アセチル−2(S)−シアノ−ピロリジンジヒドロクロライド(DPP728)([S]−1−[2−(5−シアノ−2−ピリジニルアミノ)エチルアミノ]アセチル−2−ピロリジンカルボニトリルモノヒドロクロライドとも呼ばれる)、とりわけそのジヒドロクロライドおよびモノヒドロクロライド、および式
【化7】

の1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−、(S)((S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジン、LAF237またはビルダグリプチンとも呼ばれる)、およびL−トレオ−イソロイシルチアゾリジン(上記Probiodrugの化合物番号:P32/98)、MK−0431、GSK23A、サキサグリプチン、3−(アミノメチル)−2−イソブチル−1−オキソ−4−フェニル−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリンカルボキサミドおよび2−{[3−(アミノメチル)−2−イソブチル−4−フェニル−1−オキソ−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリル]オキシ}アセトアミド、および所望によりその医薬的塩が好ましい。
【0057】
DPP728およびビルダグリプチンはとりわけ、WO 98/19998の実施例3およびWO 00/34241の実施例1にそれぞれ具体的に記載されている。DPP−IV阻害剤P32/98(上記参照)は、Diabetes 1998, 47, 1253-1258に具体的に記載されている。DPP728およびLAF237はWO 98/19998の20ページ、WO 00/34241または国際特許出願EP2005/000400(出願番号)に記載の通りに製剤することができる。
【0058】
経口的に活性なDPP−IV阻害剤がとりわけ好ましい。
【0059】
上記特許文献および科学文献に記載の全ての物質は、本発明の実施に使用するためのDPP−IV阻害剤として潜在的に有用であると考えられる(それらを出典明示により本明細書の一部とする)。
【0060】
具体的な請求項の化合物および実施例の最終生成物のそれぞれについて、最終生成物、医薬製剤および請求項の主題を、これらの文献を参照することによって本願明細書の一部とする。
【0061】
免疫抑制剤なる用語には、例えばカルシニューリン阻害剤、例えばシクロスポリンA、FK506またはISATX247;mTOR阻害剤、例えばラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン、CCI779、ABT578、AP23573、AP23464、AP23675、AP23841、TAFA−93、バイオリムス(biolimus)7またはバイオリムス9;免疫抑制特性を有するアスコマイシン、例えばABT−281、ASM981等;コルチコステロイド類;シクロホスファミド;アザチオプレン;メトトレキサート;S1P受容体アゴニスト、例えばFTY720またはそのアナログ;レフルノミド;ミゾリビン;ミコフェノール酸またはその塩もしくはエステル、例えばミコフェノール酸ナトリウムまたはミコフェノール酸モフェチル;15−デオキシスペルグアリンまたはその免疫抑制ホモログ、アナログもしくは誘導体;免疫抑制性モノクローナル抗体、例えばロイコサイト受容体に対するモノクローナル抗体、例えばMHC、CD2、CD3、CD4、CD11a/CD18、CD7、CD25、CD27、B7、CD40、CD45、CD58、CD137、ICOS、CD150(SLAM)、OX40、4−1BBまたはそれらのリガンド、例えばCD154が含まれる。
【0062】
カルシニューリン阻害剤には、例えばシクロスポリン類およびFK506が含まれる。
【0063】
本発明に使用されるシクロスポリンは、例えば免疫抑制剤として医薬有用性を有する既知および文献に記載されているあらゆるもの、とりわけシクロスポリンA(サイクロスポリンとしても知られている)、シクロスポリンG、[O−(2−ヒドロキシエチル)−(D)Ser]シクロスポリン、および[3’−デヒドロキシ−3’ケト−MeBmt]−[Val]シクロスポリンである。シクロスポリンAが好ましい。
【0064】
“シクロスポリンA”は、例えばUS5342625、US5741512、US5866159、US5916589、US5962014、US5962017、US6024978、US6007840に記載のミクロエマルジョン濃縮物の形態で、あるいは例えばEP649651に記載のソフトゲルカプセル剤の形態で、あるいは例えばUS5389382に記載のヒドロゾルの形態で使用することができる(それらの内容を出典明示により本明細書の一部とする)。好ましくはCys AをNeoralまたはSandimmun Neoralの商標として商業的に入手可能な形態で投与(または使用)する。
【0065】
タクロリムスとしても知られているFK−506は、Streptomyces tsukubaensisの発行培養物から製造されるマクロライドラクトンであり、例えばJournal of Antibiotics 1987, 40: p. 1249-1255およびJournal of Antibiotics 1987, 40: p. 1256-1265に記載されている。
【0066】
mTOR阻害剤は細胞内mTORを標的とする化合物である(「哺乳類のラパマイシン標的」)。mTORはキナーゼに関連するホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3−キナーゼ)のファミリーメンバーである。ラパマイシンおよびラパマイシン誘導体は細胞内受容体FKBP12(FK506結合タンパク質12)との複合体を介してmTOR経路を阻害する。
【0067】
ラパマイシンはStreptomyces hygroscopicusによって製造される既知のマクロライド抗生物質である。ラパマイシン誘導体はmTOR阻害特性を有する置換ラパマイシン、例えば40位および/または16位および/または32位で置換されたラパマイシン例えば式I
【化8】

〔式中、
はCHまたはC3−6アルキニルであり、
はH、−CH−CH−OH、3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチル−プロパノイルまたはテトラゾリルであり、そして
Xは=O、(H,H)または(H,OH)であるが、
Xが=OでありそしてRがCHであるとき、RはH以外である〕
の化合物またはRが−CH−CH−OHであるときそのプロドラッグ、例えば生理的に加水分解可能なそのエーテルを意味する。
【0068】
代表的な式Iのラパマイシン誘導体は例えば、32−デオキソラパマイシン、16−ペント−2−イニルオキシ−32−デオキソラパマイシン、16−ペント−2−イニルオキシ−32(SまたはR)−ジヒドロ−ラパマイシン、16−ペント−2−イニルオキシ−32(SまたはR)−ジヒドロ−40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン、40−[3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロパノエート]−ラパマイシン(CCI779とも呼ばれる)、または40−エピ−(テトラゾリル)−ラパマイシン(ABT578とも呼ばれる)である。好ましい化合物は例えば、WO 94/09010の実施例8に記載の40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン(エベロリムス)(以後化合物Aと称する)、あるいはWO 96/41807に記載の32−デオキソラパマイシンまたは16−ペント−2−イニルオキシ−32(S)−ジヒドロ−ラパマイシンである。
【0069】
ラパマイシン誘導体には、例えばWO 98/02441およびWO01/14387およびWO0364383に記載のような所謂ラパログ類、例えばAP23573、AP23464、AP23675またはAP23841が含まれ得る。
【0070】
さらなるラパマイシン誘導体の例は、TAFA−93、バイオリムス−7またはバイオリムス−9の名前で開示されているものである。
【0071】
免疫調節化合物なる用語には、例えば少なくともCTLA4の細胞外ドメインの一部を、例えば非CTLA4タンパク質配列と結合した少なくともCTLA4の細胞外部分またはその変異体を有する組換え結合分子またはその変異体、例えばCTLA4Ig(例えば、ATCC68629)またはその変異体、例えばLEA29Y”が含まれる。
【0072】
好ましくは免疫調節剤はS1P受容体アゴニストまたは調節剤である。
【0073】
S1P受容体アゴニストまたは調節剤は、1種以上のスフィンゴシン−1ホスフェート受容体、例えばS1P1〜S1P8でのアゴニストを示す化合物である。S1P受容体と結合するアゴニストは、例えば細胞内ヘテロ3量体Gタンパク質をGα−GTPおよびGβγ−GTPに分解する、および/またはアゴニスト占有受容体のリン酸化および下流シグナル経路/キナーゼの活性化を増加させる。
【0074】
個々のヒトS1P受容体に対するS1P受容体アゴニストまたは調節剤の結合親和性を、下記アッセイで測定することができる:
化合物のS1P受容体アゴニストまたは調節剤活性をヒトS1P受容体S1P、S1P、S1P、S1PおよびS1Pで試験する。機能的受容体の活性化を、適当なヒトS1P受容体を安定的に発現する組換えCHOまたはRH7777細胞から製造した膜タンパク質に結合する化合物誘導GTP[γ−35S]を定量することによって評価する。使用するアッセイ技術はSPA(シンチレーション近接アッセイ)である。簡単に述べると、化合物溶解DMSOを連続希釈し、S1P受容体発現膜タンパク質(10〜20μg/ウェル)を不動化したSPAビーズ(Amersham-Pharmacia)に50mM Hepes、100mM NaCl、10mM MgCl、10μM GDP、0.1%無脂肪BSAおよび0.2nM GTP[γ−35S](1200 Ci/mmol)の存在下で加える。96ウェルマイクロタイタープレート中室温で120分間インキュベーションした後、結合していないGTP[γ−35S]を遠心分離操作によって分離する。膜結合GTP[γ−35S]によって引き起こされるSPAビーズの蛍光をトップカウントプレートリーダー(Packard)で定量する。EC50を標準的なカーブフィッティングソフトウェアを使用して計算する。このアッセイにおいて、S1P受容体アゴニストは好ましくは<50nMのS1P受容体結合親和性を有する。
【0075】
好ましいS1P受容体アゴニストまたは調節剤は例えば、S1P結合特性に加えてリンパ球ホーミング促進特性を有する化合物、例えば全身性免疫抑制を引き起こすことなく循環系から二次的リンパ管組織にリンパ球が好ましくは可逆的に再分散することによってもたらされるリンパ球減少を引き起こす化合物である。未感作細胞を分離する;CD4およびCD8T細胞ならびに血液由来のB細胞を刺激してリンパ節(LN)およびパイアー斑(PP)に移動させる。
【0076】
リンパ球ホーミング特性を下記血中リンパ球減少アッセイで測定することができる:
S1P受容体アゴニストもしくは調節剤またはビークルをラットに胃管法によって経口的に投与する。血液モニタリングのため尾血液を−1日目に得て、個々の値のベースラインとし、そして適用後2、6、24、48および72時間に得る。このアッセイにおいて、S1P受容体アゴニストまたは調節剤は末梢血リンパ球を、例えば<20mg/kgの用量で投与すると例えば50%減少させる。
【0077】
適当なS1P受容体アゴニストまたは調節剤の例は、例えば下記のものである:
−EP627406A1に記載の化合物、例えば式I
【化9】

〔式中、
は直鎖または分枝鎖状(C12−22)鎖であり
−当該鎖中に2重結合、3重結合、O、S、NR(式中、RはH、C1−4アルキル、アリール−C1−4アルキル、アシルまたは(C1−4アルコキシ)カルボニルである)、およびカルボニルから選択される結合またはヘテロ原子を有していてもよく、および/または
−置換基としてC1−4アルコキシ、C2−4アルケニルオキシ、C2−4アルキニルオキシ、アリールC1−4アルキル−オキシ、アシル、C1−4アルキルアミノ、C1−4アルキルチオ、アシルアミノ、(C1−4アルコキシ)カルボニル、(C1−4アルコキシ)−カルボニルアミノ、アシルオキシ、(C1−4アルキル)カルバモイル、ニトロ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシイミノ、ヒドロキシまたはカルボキシを有していてもよく;あるいは

−フェニルアルキル(当該アルキルは直鎖または分枝鎖状(C6−20)炭素鎖である);または
−フェニルアルキル(当該アルキルは直鎖または分枝鎖状(C1−30)炭素鎖であり、前記フェニルアルキルは
−所望によりハロゲンで置換された直鎖または分枝鎖状(C6−20)炭素鎖、
−所望によりハロゲンで置換された直鎖または分枝鎖状(C6−20)アルコキシ鎖、
−直鎖または分枝鎖状(C6−20)アルケニルオキシ、
−フェニル−C1−14アルコキシ、ハロフェニル−C1−4アルコキシ、フェニル−C1−14アルコキシ−C1−14アルキル、フェノキシ−C1−4アルコキシもしくはフェノキシ−C1−4アルキル、
−C6−20アルキルで置換されたシクロアルキルアルキル、
−C6−20アルキルで置換されたヘテロアリールアルキル、
−ヘテロ環式C6−20アルキルまたは
−C2−20アルキルで置換されたヘテロ環式アルキルによって置換されており、そして式中、前記アルキル基は
−炭素鎖中に、2重結合、3重結合、O、S、スルフィニル、スルホニル、またはNR(式中、Rは上記定義のとおりである)から選択される結合またはヘテロ原子を有していてもよく、そして
−置換基としてC1−4アルコキシ、C2−4アルケニルオキシ、C2−4アルキニルオキシ、アリールC1−4アルキルオキシ、アシル、C1−4アルキル−アミノ、C1−4アルキルチオ、アシルアミノ、(C1−4アルコキシ)カルボニル、(C1−4アルコキシ)カルボニルアミノ、アシルオキシ、(C1−4アルキル)カルバモイル、ニトロ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシまたはカルボキシを有していてもよく、そして
、R、RおよびRは各々独立して、H、C1−4アルキルまたはアシルである〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物;
【0078】
−EP 1002792A1に記載の化合物、例えば式II
【化10】

〔式中、mは1〜9であり、R’、R’、R’およびR’は各々独立して、H、C1−6アルキルまたはアシルである〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物;
−EP0778263 A1に記載の化合物、例えば式III
【化11】

〔式中、
WはH;C1−6アルキル、C2−6アルケニルもしくはC2−6アルキニル;非置換であるかもしくはOHで置換されたフェニル;R’’O(CH;またはハロゲン、C3−8シクロアルキル、フェニルおよびOHで置換されたフェニルからなる群から選択される1〜3個の置換基によって置換されたC1−6アルキルであり;
XはH、または例えばC1−6アルキル、OH、C1−6アルコキシ、アシルオキシ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、アシルアミノ、オキソ、ハロC1−6アルキル、ハロゲン、非置換フェニル、ならびにC1−6アルキル、OH、C1−6アルコキシ、アシル、アシルオキシ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、アシルアミノ、ハロC1−6アルキルおよびハロゲンからなる群から選択される1〜3個の置換基で置換されたフェニルからなる群から選択される1〜3個の置換基によって置換される、p個の炭素原子を有する置換もしくは非置換直鎖アルキルまたは(p−1)個の炭素原子を有する置換もしくは非置換直鎖アルコキシ;YはH、C1−6アルキル、OH、C1−6アルコキシ、アシル、アシルオキシ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、アシルアミノ、ハロC1−6アルキルまたはハロゲンであり、Zは単結合またはq個の炭素原子を有する直鎖アルキレンであり、
pおよびqは各々独立して1〜20の整数であるが6p+q23であり、m’は1、2または3であり、nは2または3であり、
R’’、R’’、R’’およびR’’は各々独立してH、C1−4アルキルまたはアシルである〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物,
【0079】
−WO02/18395に記載の化合物、例えば式IVaまたはIVb
【化12】

〔式中、
はO、S、NR1sまたは−(CHna−基(式中、当該基は非置換であるかまたは1〜4個のハロゲンで置換されており;nは1または2であり、R1sはHまたは(C1−4)アルキルであり、アルキルは非置換であるかまたはハロゲンで置換されている)であり;
1aはH、OH、(C1−4)アルキルまたはO(C1−4)アルキル(式中、アルキルは非置換であるかまたは1〜3個のハロゲンで置換されている)であり;
1bはH、OHまたは(C1−4)アルキル(式中、アルキルは非置換であるかまたはハロゲンで置換されている)であり;
2aは各々独立してHまたは(C1−4)アルキル(式中、アルキルは非置換であるかまたはハロゲンで置換されている)から選択され;
3aはH、OH、ハロゲンまたはO(C1−4)アルキル(式中、アルキルは非置換であるかまたはハロゲンで置換されている)であり;そして
3bはH、OH、ハロゲン、(C1−4)アルキル(式中、アルキルは非置換であるかまたはヒドロキシで置換されている)、またはO(C1−4)アルキル(式中、アルキルは非置換であるかまたはハロゲンで置換されている)であり;
は−CH−、−C(O)−、−CH(OH)−、−C(=NOH)−、OまたはSであり、そしてR4aは(C4−14)アルキルまたは(C4−14)アルケニルである〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物;
【0080】
−WO 02/076995に記載の化合物、例えば式V
【化13】

〔式中、
は1、2または3であり;
はOまたは直接結合であり;
1cはH;所望によりOH、アシル、ハロゲン、C3−10シクロアルキル、フェニルもしくはヒドロキシ−フェニレンによって置換されたC1−6アルキル; C2−6アルケニル;C2−6アルキニル;または所望によりOHによって置換されたフェニルであり;
2c
【化14】

(式中、R5cはH、または所望により1、2もしくは3個のハロゲン原子で置換されたC1−4アルキルであり、そしてR6cはH、または所望によりハロゲンで置換されたC1−4アルキルである)であり;
3cおよびR4cは各々独立して、H、所望によりハロゲンで置換されたC1−4アルキル、またはアシルであり、そして
は所望により鎖中に酸素原子を有していてもよく、ニトロ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシもしくはカルボキシによって置換されていてもよいC13−20アルキル;または式(a)
【化15】

(式中、
7cはH、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシであり、そしてR8cは置換C1−20アルカノイル、フェニルC1−14アルキル(式中、C1−14アルキルは所望によりハロゲンまたはOHで置換されている)、シクロアルキルC1−14アルコキシもしくはフェニルC1−14アルコキシ(式中、シクロアルキルもしくはフェニル環は所望によりハロゲン、C1−4アルキルおよび/またはC1−4アルコキシで置換されている)、フェニルC1−14アルコキシ−C1−14アルキル、フェノキシC1−14アルコキシまたはフェノキシC1−14アルキルである)
の基であり、
はまた、式(a)〔式中、R1cがC1−4アルキル、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニルであるときR8cはC1−14アルコキシである〕の基である〕
の化合物または式VI
【化16】

〔式中、
は2、3または4であり
1xはH;所望によりOH、アシル、ハロゲン、シクロアルキル、フェニルもしくはヒドロキシ−フェニレンによって置換されたC1−6アルキル;C2−6アルケニル;C2−6アルキニル;または所望によりOHによって置換されたフェニルであり;
2xはH、C1−4アルキルまたはアシルであり、
3xおよびR4xは各々独立して、H、ハロゲンによって置換されたC1−4アルキルまたはアシルであり、
5xはH、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシであり、そして
6xはシクロアルキルによって置換されたC1−20アルカノイル;シクロアルキルC1−14アルコキシ(式中、シクロアルキル環が所望によってハロゲン、C1−4アルキルおよび/またはC1−4アルコキシによって置換されている);フェニルC1−14アルコキシ(式中、フェニル環は所望によりハロゲン、C1−4アルキルおよび/またはC1−4アルコキシによって置換されている)であり、
6xはまた、R1xがOHによって置換されたC2−4アルキルであるときC4−14アルコキシであり、あるいはR1xがC1−4アルキルであるときペンチルオキシまたはヘキシルオキシであるが、
5xがHであるかまたはR1xがメチルであるとき、R6xはフェニル−ブチレンオキシではない〕
の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは水和物;
【0081】
−WO02/06268AIに記載の化合物、例えば式VII
【化17】

〔式中、
1dおよびR2dは各々独立して、Hまたはアミノ保護基であり;
3dは水素、ヒドロキシ保護基または式
【化18】

の基であり、
4dはC1−4アルキルであり;
は1〜6の整数であり;
はエチレン、ビニレン、エチニレン、式−D−CH−(式中、Dはカルボニル、−CH(OH)−、O、SまたはNである)の基、アリール、または下記定義のグループaから選択される3個までの置換基によって置換されているアリールであり;
は単結合、C1−10アルキレン、グループaおよびbから選択される3個までの置換基によって置換されているC1−10アルキレン、炭素鎖の中または末端にOもしくはSを有するC1−10アルキレン、または炭素鎖の中または末端にOもしくはSを有し、かつグループaおよびbから選択される3個までの置換基によって置換されているC1−10アルキレンであり;
5dは水素、C3−6シクロアルキル、アリール、ヘテロ環式基、グループaおよびbから選択される3個までの置換基によって置換されているC3−6シクロアルキル、グループaおよびbから選択される3個までの置換基によって置換されているアリール、またはグループaおよびbから選択される3個までから選択される3個までの置換基によって置換されているヘテロ環式基であり;
6dおよびR7dは各々独立して、Hまたはグループaから選択される置換基であり;
8dおよびR9dは各々独立して、Hまたは所望によりハロゲンによって置換されているC1−4アルキルであり;
<グループa>はハロゲン、低級アルキル、ハロゲノ低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、カルボキシル、低級アルコキシカルボニル、ヒドロキシ、低級脂肪族アシル、アミノ、モノ低級アルキルアミノ、ジC1−4アルキルアミノ、アシルアミノ、シアノまたはニトロであり;そして
<グループb>は各々所望によりグループaから選択される3個までの置換基によって置換されているC3−6シクロアルキル、アリールまたはヘテロ環式基であるが;
5dが水素であるとき、Yは単結合または線形C1−10アルキレンである〕
の化合物、またはその薬理学的に許容される塩、エステルもしくは水和物;
【0082】
−JP−14316985(JP2002316985)に記載の化合物、例えば式VIII
【化19】

〔式中、R1e,R2e,R3e,R4e,R5e,R6e,R7e、n、XおよびYはJP−14316985に記載の通りである〕
の化合物、またはその薬理学的に許容される塩、エステルもしくは水和物;
−WO 03/29184およびWO 03/29205に記載の化合物、例えば式IX
【化20】

〔式中、
はO、S、SOまたはSOであり、
1fはハロゲン、トリハロメチル、OH、C1−7アルキル、C1−4アルコキシ、トリフルオロメトキシ、フェノキシ、シクロヘキシルメチルオキシ、ピリジルメトキシ、シンナミル(cinnamyl)オキシ、ナフチルメトキシ、フェノキシメチル、CH−OH、CH−CH−OH、C1−4アルキルチオ、C1−4アルキルスルフィニル、C1−4アルキルスルホニル、ベンジルチオ、アセチル、ニトロもしくはシアノ、またはフェニル、フェニルC1−4アルキルもしくはフェニル−C1−4アルコキシ(各フェニル基は所望によってハロゲン、CF、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシで置換されている)であり;
2fはH、ハロゲン、トリハロメチル、C1−4アルコキシ、C1−7アルキル、フェネチルまたはベンジルオキシであり;
3fはH、ハロゲン、CF、OH、C1−7アルキル、C1−4アルコキシ、ベンジルオキシまたはC1−4アルコキシメチルであり;
4fおよびR5fは各々独立して、Hまたは式
【化21】

(式中、R8fおよびR9fは各々独立して、Hまたは所望によってハロゲンで置換されているC1−4アルキルである)
の基であり;そして
は1〜4の整数である〕
の化合物、例えば2−アミノ−2−[4−(3−ベンジルオキシフェノキシ)−2−クロロフェニル]プロピル−1,3−プロパン−ジオールまたは2−アミノ−2−[4−(ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]プロピル−1,3−プロパン−ジオール、またはその薬理学的塩もしくは水和物;
【0083】
−WO03/062252A1に記載の化合物、例えば式X
【化22】

〔式中、
Arはフェニルまたはナフチルであり;
およびnは各々独立して0または1であり;
AはCOOH、PO、POSOPO(C1−3アルキル)OHおよび1H−テトラゾール−5−イルから選択され;
1gおよびR2gは各々独立して、H、ハロゲン、OH、COOH、または所望によってハロゲンで置換されているC1−4アルキルであり;
3gはH、または所望によってハロゲンもしくはOHで置換されているC1−4アルキルであり;
4gは各々独立して、ハロゲン、または所望によってハロゲンで置換されているC1−4アルキルもしくはC1−3アルコキシであり;そして
およびMは各々独立して、WO03/062252A1にBおよびCと各々示されている意味の1つを有する〕
の化合物;
【0084】
−WO 03/062248A2に記載の化合物、例えば式XI
【化23】

〔式中、
Arはフェニルまたはナフチルであり;
nは2、3または4であり;
AはCOOH、1H−テトラゾール−5−イル、PO、PO、−SOHまたはPO(R5h)OH(式中、R5hはC1−4アルキル、ヒドロキシC1−4アルキル、フェニル、−CO−C1−3アルコキシおよび−CH(OH)−フェニルから選択され、前記フェニルまたはフェニル基は所望により置換されている)であり;
1hおよびR2hは各々独立して、H、ハロゲン、OH、COOH、または所望によってハロゲンで置換されているC1−6アルキルもしくはフェニルであり;
3hはH、または所望によってハロゲンおよび/またはOHで置換されているC1−4アルキルであり;
4hは各々独立して、ハロゲノ、OH、COOH、C1−4アルキル、S(O)0、1または1−3アルキル、C1−3アルコキシ、C3−6シクロアルコキシ、アリールまたはアラルコキシ(式中、アルキル基は所望によって1〜3個のハロゲンで置換されていてもよい)であり;そして
およびMは各々独立してWO03/062248A2にBおよびCと各々示されている意味の1つを有する〕
の化合物。
【0085】
本発明のさらなる態様において、本発明の組合せ剤に使用するためのS1P受容体アゴニストまたは調節剤はまた、選択的S1P1受容体、例えばS1P3受容体よりもS1P1受容体に、35S−GTPγS結合アッセイで評価したS1P1受容体のEC50のS1P3受容体のEC50に対する比測定したとき少なくとも20倍、例えば100、500、1000または2000倍選択性を有する化合物であり得る。かかる化合物は、35S−GTPγS結合アッセイで評価すると100nM以下のS1P1受容体結合EC50を有する。代表的なS1P1受容体アゴニストまたは調節剤は、例えばWO 03/061567(出典明示によりその内容を本明細書の一部とする)に記載の化合物、例えば式
【化24】

の化合物である。
【0086】
式I〜XIIIの化合物が分子中に1個以上の不斉中心を有するとき、本発明は様々な光学異性体、ならびにラセマート、ジアステレオマーおよびそれらの混合物を包含するものとして理解される。式IIIまたはIVbの化合物は、アミノ基を有する炭素原子が不斉であるとき、好ましくは当該炭素原子でR立体配置を有する。
【0087】
式I〜XIIIの化合物は遊離形または塩形で存在していてもよい。式I〜XIIIの化合物の薬学的に許容される塩の例には、無機酸との塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩および硫酸塩、有機酸との塩、例えば酢酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、メタンスルホン酸塩およびベンゼンスルホン酸塩、または適当であるとき、金属との塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩およびアルミニウム塩、アミンとの塩、例えばトリエチルアミン塩、ならびに2塩基アミノ酸との塩、例えばリシン塩が含まれる。本発明の組合せ剤の化合物および塩には、水和物および溶媒和物形態が含まれる。
【0088】
上記アシルはR−CO−(式中、RはC1−6アルキル、C3−6シクロアルキル、フェニルまたはフェニル−C1−4アルキルである)基であり得る。他に指示がない限り、アルキル、アルコキシ、アルケニルまたはアルキニルは直鎖または分枝鎖状であってもよい。
【0089】
アリールはフェニルまたはナフチル、好ましくはフェニルであり得る。
【0090】
式Iの化合物においてRの炭素鎖が置換されているとき、それは好ましくはハロゲン、ニトロ、アミノ、ヒドロキシまたはカルボキシで置換されている。炭素鎖が所望によって置換されているフェニレンで中断されているとき、炭素鎖は好ましくは置換されていない。フェニレン基が置換されているとき、それは好ましくはハロゲン、ニトロ、アミノ、メトキシ、ヒドロキシまたはカルボキシで置換されている。
【0091】
好ましい式Iの化合物は、Rが所望によってニトロ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシまたはカルボキシで置換されているC13−20アルキルであるもの、およびより好ましくは、Rが所望によってハロゲンで置換されたC6−14−アルキル鎖によって置換されているフェニルアルキルであり、そしてアルキル基が所望によってヒドロキシで置換されているC1−6アルキルであるものである。より好ましくは、Rはフェニルで直鎖もしくは分枝鎖状、好ましくは直鎖状C6−14アルキル鎖で置換されているフェニル−C1−6アルキルである。C6−14アルキル鎖はオルト、メタまたはパラ、好ましくはパラであり得る。
【0092】
好ましくはR〜Rは各々Hである。
【0093】
上記式VIIにおいて、“ヘテロ環式基”は、S、OおよびNから選択される1〜3個のヘテロ原子を有する5〜7員ヘテロ環式基を意味する。かかるヘテロ環式基の例には、上記ヘテロアリール基、およびヘテロ環式化合物に対応する部分的または完全水素化ヘテロアリール基、例えばフリル、チエニル、ピロリル、アゼピニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、ピラニル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、テトラヒドロピラニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピロリジニル、ピロリル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、オキサゾリジニル、イソキサゾリジニル、チアゾリジニルまたはピラゾリジニルが含まれる。好ましいヘテロ環式基は、5または6員ヘテロアリール基であり、最も好ましいヘテロ環式基は、モルホリニル、チオモルホリニルまたはピペリジニル基である。
【0094】
好ましい式Iの化合物は、2−アミノ−2−テトラデシル−1,3−プロパンジオールである。とりわけ好ましい式IのS1P受容体アゴニストはFTY720、すなわち遊離形または薬学的に許容される塩形、例えば塩酸塩形の2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオール(以後、化合物Aと称する):
【化25】

である。
【0095】
好ましい式IIの化合物は、R’〜R’が各々Hであり、そしてmが4であるもの、すなわち遊離形または薬学的に許容される塩形、例えば塩酸塩形の2−アミノ−2−{2−[4−(1−オキソ−5−フェニルペンチル)フェニル]エチル}プロパン−1,3−ジオール(以後、化合物Bと称する)である。
【0096】
好ましい式IIIの化合物は、WがCHであり、R’’〜R’’が各々Hであり、Zがエチレンであり、XがヘプチルオキシでありそしてYがHであるもの、すなわち遊離形または薬学的に許容される塩形、例えば塩酸塩形の2−アミノ−4−(4−ヘプチルオキシフェニル)−2−メチル−ブタノールである。Rエナンチオマーがとりわけ好ましい。
【0097】
好ましい式IVaの化合物はFTY720リン酸塩(R2aがHであり、R3aがOHであり、XがOであり、R1aおよびR1bがOHである)である。好ましい式IVbの化合物は化合物Cリン酸塩(R2aがHであり、R3bがOHであり、XがOであり、R1aおよびR1bがOHであり、YがOでありそしてR4aがヘプチルである)である。好ましい式Vの化合物は化合物Bリン酸塩である。
【0098】
好ましい式Vの化合物はリン酸モノ−[(R)−2−アミノ−2−メチル−4−(4−ペンチルオキシ−フェニル)−ブチル]エステルである。
【0099】
好ましい式VIIIの化合物は、(2R)−2−アミノ−4−[3−(4−シクロヘキシルオキシブチル)−ベンゾ[b]チエン−6−イル]−2−メチルブタン−1−オールである。
【0100】
組み合わせる化合物は薬学的に許容される塩として存在していてもよい。これらの化合物が例えば、少なくとも1個の塩基性中心を有するとき、それらは酸付加塩を形成することができる。対応する酸付加塩はまた、所望によりさらなる塩基性中心を有するように形成することもできる。酸性基(例えばCOOH)を有する化合物はまた、塩基との塩を形成することができる。
【0101】
本発明の組合せ剤の投与によって得られる薬理活性を、例えば関連技術分野で知られている対応する薬理モデルを使用することによって示すことができる。当業者は対応する動物モデルを選択して本明細書に記載の治療適用および有利な効果を証明することが十分可能である。
【0102】
投与される免疫抑制剤または免疫調節剤の用量はまた、一般的に処置を受ける対象の健康、所望の処置の程度、存在するならば現在の治療の性質および種類、ならびに処置の頻度および所望の効果の性質に依存する。一般的に、薬剤の用量は一般に1日あたり約0.001〜約50mg/kg対象の体重、好ましくは1日あたり約0.1〜約10mg/kg対象の体重を、1回または分割用量で投与する。しかし、患者の年齢、体重および種、意図する投与経路、ならびに処置する疾患または状態の重症度の進行および程度に依存して一般的な用量を変化させる必要があり得る。
【0103】
本発明の実施に必要な免疫抑制剤または免疫調節剤の1日用量は、例えば投与形態および処置する状態の重症度に依存して変化する。適用可能な1日用量は約0.1〜約200mg、例えば0.1〜100mgの有効成分を経口使用で、簡便には1回または分割用量で投与することができる。
【0104】
DPP−IV阻害剤、好ましくはビルダグリプチンまたはその薬学的に許容される塩と、2−アミノ−2−テトラデシル−1,3−プロパンジオール、FTY720、すなわち2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオール(以後、化合物Aと称する)、FTY720、すなわち2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオールの塩酸塩、塩化水和物(INN名:Fingolimodで知られている)、リン酸モノ−[(R)−2−アミノ−2−メチル−4−(4−ペンチルオキシ−フェニル)−ブチル]エステル、(2R)−2−アミノ−4−[3−(4−シクロヘキシルオキシブチル)−ベンゾ[b]チエン−6−イル]−2−メチルブタン−1−オール、FTY720リン酸塩、2−アミノ−4−(4−ヘプチルオキシフェニル)−2−メチル−ブタノール(以後、化合物Cと称する)、2−アミノ−4−(4−ヘプチルオキシフェニル)−2−メチル−ブタノールの塩酸塩、2−アミノ−4−(4−ヘプチルオキシフェニル)−2−メチル−ブタノールのRエナンチオマー、化合物Cリン酸塩、2−アミノ−2−{2−[4−(1−オキソ−5−フェニルペンチル)フェニル]エチル}プロパン−1,3−ジオール(以後、化合物Bと称する)、化合物B塩酸塩、化合物Bリン酸塩、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体、タクロリムス、シクロスポリン、例えばシクロスポリン“A”、シクロスポリンG、[O−(2−ヒドロキシエチル)−(D)Ser]シクロスポリン、および[3’−デヒドロキシ−3’−ケト−MeBmt]−[Val]シクロスポリン、FK506、または各々の場合においてその薬学的に許容される塩から選択される第2の活性剤を含む組合せ剤、例えば組合せ製剤または医薬組成物が好ましい。
【0105】
好ましい態様において、a)遊離形または薬学的に許容される塩形、もしくは水和物または結晶形の2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオール、2−アミノ−2−[4−(3−ベンジルオキシフェノキシ)−2−クロロフェニル]プロピル−1,3−プロパン−ジオールまたは2−アミノ−2−[4−(ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]プロピル−1,3−プロパン−ジオールから選択される免疫調節剤はS1P受容体アゴニストまたは調節剤である。
【0106】
対応する有効成分またはその薬学的に許容される塩も、水和物または結晶化に使用する他の溶媒を含む溶媒和物の形態で使用することができる。
【0107】
組み合わせる化合物は薬学的に許容される塩として存在していてもよい。これらの化合物が例えば、少なくとも1個の塩基性中心を有するとき、それらは酸付加塩を形成することができる。対応する酸付加塩はまた、所望によりさらなる塩基性中心を有するように形成することもできる。酸性基(例えばCOOH)を有する化合物はまた、塩基との塩を形成することができる。
【0108】
これらの記載の製品は全て、本発明の組合せ治療のためにそのまま使用することができる。
【0109】
一般名または商標名で同定される有効成分の構造を、標準的概要書“The Merck Index”の現行版またはデータベース、例えばPatents International(例えばIMS World Publications)から得ることができる。対応するそれらの内容を参照により本明細書の一部とする。当業者は有効成分を同定し、これらの文献に基づいて製造し、そしてインビトロおよびインビボの両方で標準的な試験モデルで医薬適用および特性を試験することが十分可能である。
【発明の効果】
【0110】
より驚くべきことに、DPP IV阻害剤またはその塩と、免疫抑制剤または免疫調節剤またはその塩から選択される少なくとも1種の有効成分の組合せ投与が、有利な、とりわけ相乗的な治療効果をもたらすだけでなく、組合せ処置による有利な成果に加えて、本発明の組合せ剤で使用される薬理活性化合物の1種のみを使用する単独治療と比較して、さらなる驚くべき有利な効果をもたらすことを実験的に見出す。
【0111】
DPP−IV阻害剤と免疫抑制剤または免疫調節剤から選択される少なくとも1種の有効成分の組合せによって、下記疾患のより効果的な予防または好ましくは処置がもたらされることを、確立された試験モデル、とりわけ本明細書に記載の試験モデルによって示すことができる。とりわけ、本発明の組合せによって下記疾患のより効果的な予防または好ましくは処置がもたらされることを、確立された試験モデル、とりわけ本明細書に記載の試験モデルによって示すことができる。
【0112】
同時に投与すると、これはさらに上昇した有利な、とりわけ相乗的な治療効果をもたらすだけでなく、同時処置によってさらなる有利な結果、例えば驚くべき効果の延長、広範な治療処置、および自己免疫疾患、例えば膵島炎、I型糖尿病、LADAおよび糖尿病関連障害、または移植片拒絶およびDPP−IV阻害によって処置され得る状態/障害、とりわけ肥満、糖尿病、とりわけIGT、ならびに糖尿病、IGT、肥満、パーキンソン病、統合失調症、アルツハイマー病、およびそれらの複数の組合せに関連する疾患および状態に対する驚くべき有利な効果をもたらす。
【0113】
“相乗作用”なる用語は、対応する薬理活性または治療効果それぞれの上昇を意味する。本発明の他の成分の共投与による本発明の組合せの1種の成分の相乗作用は、得られた効果が1種の成分のみで得られたものより大きいことを意味する。
【0114】
“相乗的な”なる用語は、薬剤が、一緒に投与されたとき、各薬剤を単独で投与したときの効果の合計よりも大きい共同的な治療効果を生み出すことを意味する。
【0115】
さらに、ヒト患者にとって、とりわけ老年のヒトにとって、2個の錠剤を同時に、例えば食前にのむことを記憶するのは、バラバラの時間、すなわちより複雑な処置スケジュールに従うよりもより簡便かつ容易である。より好ましくは、本明細書の全ての場合において、両方の有効成分を固定された組合せ剤として、すなわち1個の錠剤として投与する。1個の錠剤をのむことは、2個の錠剤を同時に飲むよりもさらに容易である。さらにまた、パッケージングをより少ない労力で行うことができる。
【0116】
当業者は対応する動物モデルを選択して本明細書に記載の治療適用および有利な効果を証明することが十分可能である。
【0117】
本発明で使用される活性剤の組合せの投与によって得られる薬理活性を、例えば関連技術分野において既知の対応する薬理モデルを使用することによって示すことができる。
本発明の組合せのインシュリン分泌上昇特性を、例えばT.Ikenoue et al. Biol.Pharm.Bull. 29(4), 354-359 (1997)に記載されている方法論に従って測定することができる。
これらの文献の対応する主題を参照により本明細書の一部とする。
【0118】
したがって、本発明の組合せを例えば、DPP IV阻害によって阻害され得る疾患および障害、および/または欲求障害またはニコチン中毒の予防、進行の遅延または処置に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0119】
したがって、さらなる局面において本発明は、DPP IV阻害によって阻害され得る疾患および障害の予防、進行の遅延または処置用医薬、自己免疫疾患、例えば1型およびそれに関連する障害の予防、進行の遅延または処置用医薬、または移植片拒絶の予防、進行の遅延または処置用医薬の製造のための、
i)DPP IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩、
ii)免疫抑制剤もしくは免疫調節剤、またはその薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1種の有効成分
を含む組合せの使用に関する。DPP−IV阻害によって処置され得る状態/障害は、とりわけ肥満、糖尿病、とりわけII型糖尿病、IGT、ならびに糖尿病、パーキンソン病、統合失調症、アルツハイマー病に関連する疾患および状態である。
【0120】
本発明はさらに、DDP IV阻害によって阻害され得る疾患および障害の予防、進行の遅延または処置法、自己免疫疾患、例えば1型およびそれに関連する障害の予防、進行の遅延または処置法、または移植片拒絶の予防、進行の遅延または処置法であって、それを必要とするヒトを含む温血動物に、DPP IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩と、免疫抑制剤もしくは免疫調節剤、またはその薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1種の有効成分;
および少なくとも1種のさらなる薬学的に許容される担体を、共同的に有効量で投与することを含んでなる方法に関する。
【0121】
本明細書に記載のDPP−IV阻害によって処置され得る状態/障害は、とりわけ肥満、糖尿病、とりわけII型糖尿病、IGT、ならびに糖尿病、パーキンソン病、統合失調症、アルツハイマー病に関連する疾患および状態である。
【0122】
本発明はさらに、DPP−IV阻害によって阻害され得る疾患および障害の予防、進行の遅延または処置用、自己免疫疾患、例えば1型およびそれに関連する障害の予防、進行の遅延または処置用、または移植片拒絶の予防、進行の遅延または処置用医薬組成物であって、DPP IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩と、免疫抑制剤もしくは免疫調節剤、またはその薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1種の有効成分;
および少なくとも1種のさらなる薬学的に許容される担体の組合せを含む医薬組成物に関する。
【0123】
上記方法または使用において、疾患または状態はインシュリン耐性、グルコース代謝障害、耐糖能異常状態、空腹時血漿グルコース異常状態、糖尿病とりわけ2型糖尿病、肥満、糖尿病性網膜症、黄班変性、白内障、糖尿病性腎症、糸球体硬化症、糖尿病性神経障害、勃起障害、月経症候群、冠状動脈性心臓病、高血圧、狭心症、心筋梗塞、卒中、血管再狭窄、皮膚および結合性組織障害、脚潰瘍、潰瘍性大腸炎、内皮機能不全、血管コンプライアンス障害、神経変性障害、認知症、記憶および学習能力の問題、自己免疫疾患、例えば膵島炎、I型糖尿病、LADA、および糖尿病に関連する疾患または状態、または移植片拒絶から選択される。
【0124】
上記方法または使用において、疾患または状態はグルコース代謝障害、耐糖能異常状態(IGT)、空腹時血漿グルコース異常状態、糖尿病とりわけ2型糖尿病、肥満、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、脚潰瘍、糖尿病に関連する疾患または状態、パーキンソン病、統合失調症、アルツハイマー病、認知症、老年性認知症、軽度の認知障害またはアルツハイマー型認知症、統合失調症に関連する認知障害、アルツハイマー病に関連する認知機能の障害、パーキンソン病に関連する認知機能の障害、自己免疫疾患、例えば膵島炎、I型糖尿病、LADA、および糖尿病に関連する疾患または状態、または移植片拒絶から選択される。
【0125】
最も好ましくは、疾患または状態は肥満、糖尿病、IGT、2型糖尿病、パーキンソン病、統合失調症、アルツハイマー病、膵島炎、1型糖尿病、LADA、糖尿病に関連する疾患または状態および移植片拒絶から選択される。
【0126】
さらなる態様において、本明細書に記載の方法、使用および組成物は、肥満、IGT、2型糖尿病、膵島炎、1型糖尿病、LADA、移植片拒絶または糖尿病に関連する疾患もしくは状態の予防、進行の遅延または処置のために使用される。
【0127】
好ましい態様において、本明細書に記載の方法、使用および組成物は、骨髄移植または膵島移植における移植片拒絶の予防、進行の遅延または処置のために、すなわち島移植の成功率向上のために使用される。
【0128】
さらなる態様において、本明細書に記載の方法、使用および組成物は、膵島移植片拒絶の予防、進行の遅延または処置のために使用される。
【0129】
さらなる局面において、本発明はまた、1型糖尿病を有する患者が寛解期である時間を延長するための方法であって、寛解期の1型糖尿病患者にDPP−IV阻害剤と、本明細書に記載の少なくとも1種の免疫抑制剤または免疫調節剤を、患者が寛解期である時間を延長するために投与することを含んでなる方法を含む。ここで、組合せ剤を当該患者に最初に投与するとき、当該患者は好ましくは新たに1型糖尿病であると診断されている。本発明はまた、1型糖尿病を有する患者が寛解期である時間の延長用医薬の製造のための、DPP−IV阻害剤と、本明細書に記載の少なくとも1種の免疫抑制剤または免疫調節剤またはその塩を含む組合せの使用を含む。ここで、組合せ剤を当該患者に最初に投与するとき、当該患者は好ましくは新たに1型糖尿病であると診断されている。
【0130】
さらなる態様において、本明細書に記載の方法、使用および組成物は、I型糖尿病を有する患者が寛解期である時間を延長するため、または新たに1型糖尿病であると診断された患者の処置のために使用される(下記参照)。
【0131】
記載の使用または方法のための好ましい組合せは、本明細書に記載されている。
【0132】
本明細書に定義の“DPP−IV阻害剤によって阻害され得る疾患または状態”には、これらに限定されないが、インシュリン耐性、グルコース代謝障害、耐糖能異常状態(IGT)、空腹時血漿グルコース異常状態、糖尿病とりわけ2型糖尿病、肥満、糖尿病性網膜症、黄班変性、白内障、糖尿病性腎症、糸球体硬化症、糖尿病性神経障害、勃起障害、月経症候群、冠状動脈性心臓病、高血圧、狭心症、心筋梗塞、卒中、血管再狭窄、皮膚および結合性組織障害、脚潰瘍および潰瘍性大腸炎、内皮機能不全および血管コンプライアンス障害、糖尿病に関連する疾患または状態、神経変性障害、認知障害および記憶および学習能力の問題が含まれる。神経変性障害はパーキンソン病、統合失調症、認知症、老年性認知症、軽度の認識機能障害、アルツハイマー関連認知症、ハンチントン舞踏病、遅発性ジスキネジー、過動症、躁病、モーブス・パーキンソン、鉄リチャード症候群、ダウン症、重症筋無力症、神経および脳のトラウマ、血管アミロイド症、アミロイド症に伴う脳性出血、脳炎症、フリードリッヒ運動失調、急性混乱障害、アポトーシス性細胞壊死が関連する急性混乱障害、筋萎縮性側索硬化症、緑内障、およびアルツハイマー病から選択される。認知障害は、統合失調症に関連する認知障害、年齢関連記憶障害、精神病関連認知障害、糖尿病関連認知障害、卒中後関連認知症外、低酸素症関連記憶障害、老年性認知症関連認知および注意欠損、注意欠損障害、軽度の認知障害に関連する記憶の問題、認知症関連認知機能不全、アルツハイマー病に関連する認知機能の障害、パーキンソン病に関連する認知機能の障害、血管性痴呆関連認知機能不全、脳腫瘍に関連する認知の問題、ピック病、自閉症による認知欠損、電気ショック療法後認知欠損、外傷性脳損傷関連認知障害、記憶喪失症障害、せん妄、認知症から選択される。
【0133】
好ましくは、“DPP−IV阻害剤によって阻害され得る疾患または状態”は、グルコース代謝障害、耐糖能異常状態、空腹時血漿グルコース異常状態、糖尿病とりわけ2型糖尿病、肥満、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、脚潰瘍、糖尿病に関連する疾患または状態、パーキンソン病、統合失調症、アルツハイマー病、認知症、老年性認知症、軽度の認知障害またはアルツハイマー型認知症、統合失調症に関連する認知障害、アルツハイマー病に関連する認知機能の障害、パーキンソン病に関連する認知機能の障害から選択される。
【0134】
“治療”なる用語は、本明細書において使用するとき、疾患、障害または状態の進行の処置における有効性を意味する。
【0135】
“予防”なる用語は、処置する疾患、障害または状態の発生または再発の予防を意味する。
【0136】
“進行の遅延”なる用語は、本明細書において使用するとき、処置する疾患の前段階または初期フェーズである、例えば対応する疾患が診断される前または例えば医薬処置中患者がある状態または対応する疾患が発症する可能性がある状態である患者に、組合せを投与することを意味する。
【0137】
“自己免疫疾患”なる用語は、サルコイドーシス、類繊維肺(肺線維症)、特発性間質性肺炎、閉塞性気道疾患、例えば喘息、内因性喘息、外因性喘息、塵埃喘息、とりわけ慢性または難治性喘息(例えば遅発性喘息および気道過敏症)、気管支炎、気管支喘息、小児喘息、アレルギー性リウマチ性関節炎、全身性エリテマトーデス、ネフローゼ症候群、狼瘡、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、重症筋無力症、膵島炎、I型糖尿病およびそれに関連する合併症、II型成人発症糖尿病、成人の潜在的自己免疫性糖尿病(LADA)、ブドウ膜炎、ネフローゼ症候群、ステロイド依存性およびステロイド抵抗性ネフローゼ、掌蹠膿疱症、アレルギー性脳脊髄炎、糸球体腎炎、乾癬、乾癬性関節炎、アトピー性湿疹(アトピー性皮膚炎)、接触性皮膚炎およびさらなる湿疹性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、扁平苔癬、天疱瘡、類天疱瘡、表皮水疱症、じんま疹、血管浮腫、脈管炎、紅斑、皮膚好酸球増加症、ざ瘡、円形脱毛症、好酸球性筋膜炎、アテローム性動脈硬化症、結膜炎、角結膜炎、角膜炎、春季結膜炎、ベーチェット病関連ブドウ膜炎、ヘルペス性角膜炎、円錐角膜、上皮角膜ジストロフィー、角化白斑、眼天疱瘡、モーレン潰瘍、強膜炎、グレーブス眼症、重度眼内炎症、粘膜または血管の炎症または、例えばロイコトリエンB4介在疾患、胃潰瘍、虚血性疾患および血栓症によってもたらされる血管損傷、虚血性腸疾患、炎症性腸疾患(例えばクローン病および潰瘍性大腸炎)、壊死性腸炎、腎疾患、例えば間質性腎炎、グッドパスチャー症候群、溶血性尿毒症症候群および糖尿病性腎症、多発性筋炎、ギランバレー症候群、メニエール病および神経根障害から選択される神経疾患、コラーゲン疾患、例えば強皮症、ウェグナー肉芽腫およびショーグレン症候群、慢性自己免疫性肝臓疾患、例えば自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変および硬化性胆管炎)、肝臓部分切除、急性肝臓壊死(例えば毒、ウイルス性肝炎、ショックまたは酸素欠乏によって引き起こされる壊死)、Bウイルス肝炎、非A/非B A型肝炎性肝硬変、劇症肝炎、膿疱性乾癬、ベーチェット病、活性慢性肝炎、エバンス症候群、花粉症、特発性副甲状腺機能低下症、アジソン病、自己免疫性萎縮性胃炎、ルポイド肝炎、尿細管間質性腎炎、膜性腎炎、筋萎縮性側索硬化症またはリウマチ熱を含み、好ましくはそれらから選択される。それはまた、I型糖尿病を有する患者が寛解期である時間を延長すること、または新たにI型糖尿病であると診断された患者の処置を含む。
【0138】
移植片拒絶は、細胞、組織もしくは固体臓器、例えば膵島、幹細胞、骨髄、皮膚、筋肉、角膜組織、神経組織、心臓、肺、心肺、腎臓、肝臓、腸、膵臓、気管または食道の同種もしくは異種移植片の急性または慢性拒絶、あるいは移植片対宿主病を意味する。慢性拒絶は血管移植疾患または移植片血管障害とも呼ばれる。
【0139】
好ましい態様において、骨髄移植における移植片拒絶である。
【0140】
さらなる態様において、本発明は下記態様に関する:
1. 自己免疫疾患(好ましくは自己免疫疾患は成人の潜在的自己免疫性糖尿病(LADA)である)、例えば膵島炎、I型糖尿病およびそれに関連する障害の処置、進行の遅延または処置用医薬、あるいは膵島移植の改善用医薬の製造のための、DPP IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩の使用。
【0141】
2. 自己免疫疾患(好ましくは自己免疫疾患は成人の潜在的自己免疫性糖尿病(LADA)である)、例えば膵島炎、I型糖尿病およびそれに関連する障害の予防、進行の遅延または処置法、あるいは膵島移植の改善法であって、それを必要とするヒトを含む温血動物に有効量のDPP IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩および少なくとも1種のさらなる薬学的に許容される担体を投与することを含んでなる方法。
【0142】
上記DPP−4、好ましくはビルダグリプチンの単独療法での使用または対応する処置法において、自己免疫疾患は好ましくは、膵島炎、LADA、I型糖尿病、新たにI型糖尿病患者であると診断されたI型糖尿病から選択される。
【0143】
上記DPP−4、好ましくはビルダグリプチンの使用、または対応する処置法は、膵島移植を改善を改善するかまたは膵島移植を受けた対象を処置するためのものである。
【0144】
本発明において「膵島移植の改善」なる用語は、膵島移植後の膵島(移植されたものまたは患者自身の膵島)のあらゆる機能的または生理的問題を減少することを意味する。それはとりわけ膵島移植を受けた患者の処置を包含する。
【0145】
さらなる局面において、本発明はまた、1型糖尿病を有する患者が寛解期である時間を延長するための方法であって、寛解期の1型糖尿病患者に有効量のDPP−4阻害剤、とりわけビルダグリプチンまたはその塩を投与して、前記患者が寛解期である時間を延長させる方法を包含する。好ましくは前記患者は、DPP−4阻害剤を患者に最初に投与するとき新たに1型糖尿病であると診断される。本発明はまた、1型糖尿病を有する患者が寛解期である時間の延長用医薬の製造のための、DPP−4阻害剤、とりわけビルダグリプチンまたはその塩の使用を包含する。好ましくは前記患者は、DPP−4阻害剤を患者に最初に投与するとき新たに1型糖尿病であると診断される。
【0146】
1型糖尿病を有する患者が寛解期である時間を延長するための上記使用または方法の1つの態様において、当該患者にさらに自己免疫薬剤を投与する。
【0147】
本件特許出願において使用されている「新たに1型糖尿病であると診断された」とは、患者が1型糖尿病であると、12ヶ月以内、好ましくは6ヶ月以内、より好ましくは3ヶ月以内、さらにより好ましくは2ヶ月以内、最も好ましくは1ヶ月以内に診断されていることを意味する。
【0148】
もちろん当業者は、1型糖尿病を、これらに限定されないが、尿のグルコースおよびケトン体の存在を測定する尿分析、126mg/dl以上の空腹時血糖、200mg/dl以上のランダムグルコース、6%以上のHbA、C(この%は全ヘモグロビンの%である)、空腹時インシュリンが20mcU/ml以上である血清インシュリン試験、または100pmol/l以上のC−ペプチド試験を含む試験の1個以上によって診断することができることを理解する。
【0149】
本発明の方法または使用の1つの態様において、患者は18歳未満で1型糖尿病であると新たに診断される。本発明の方法または使用の他の態様において、患者は16歳未満で1型糖尿病であると新たに診断される。
【0150】
さらなる態様において、患者は、該患者が思春期前である間に1型糖尿病であると新たに診断される。さらに他の態様において、12歳未満で1型糖尿病であると新たに診断される。さらなる態様において、患者は6歳未満で1型糖尿病であると新たに診断される。
【0151】
さらなる態様において、処置する患者は寛解期である。ここで、寛解を様々な方法で定義することができる。例えば、寛解を0.5U/kg/24hのインシュリン要求、または0.5U/kg/24hのインシュリン要求と7.5%未満のHbACとの組合せ、または>100pmol/lの基本C−ペプチドレベルによって定義することができる。好ましい態様において、寛解を式:HbA,C+(4×1日インシュリン用量(U/Kg/24h)9%によって定義する。DPP−4阻害剤または本明細書に記載の組合せ剤で処置する患者が寛解期であるとき、DPP−4阻害剤または本明細書に記載の組合せ剤で該患者を処置することによって、DPP−4阻害剤または本明細書に記載の組合せ剤なしでの処置と比較して、前記患者が寛解期である時間(寛解期間)を延長すると考えられる。
【0152】
したがって、本発明はまた、I型糖尿病を有する患者が寛解期である時間を延長するための使用または方法であって、前記患者が寛解期である時間を延長するのに有効なDPP−4阻害剤または本明細書に記載の組合せ剤を投与することを含んでなる方法に関する。ここで、寛解を上記式のいずれか1つによって測定する。
【0153】
本明細書に記載の「組合せ医薬組成物」なる用語は、有効成分、例えば2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオール、2−アミノ−2−[4−(3−ベンジルオキシフェノキシ)−2−クロロフェニル]プロピル−1,3−プロパン−ジオールまたは2−アミノ−2−[4−(ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]プロピル−1,3−プロパン−ジオールまたはその薬学的に許容される塩と、DPP−IV阻害剤、好ましくはビルダグリプチン、またはその薬学的に許容される塩を、患者に別個の物として同時に、一度に、または具体的な時間制限なしに逐次的に投与するとを意味する。ここで、かかる投与は体内で好ましくは同時に、2種の化合物の治療上有効レベルを提供する。例として、非固定組合せ剤は、患者が体内で同時に療法の有効成分で処置を得るための、各々1種の有効成分を含む2種のカプセル剤であり得る。
【0154】
「処置する」または「処置」なる用語は、生物に作用する症状または病気の低減、緩和および除去を含む医薬治療に関連した治療上ポジティブな範囲を包含する。
【0155】
好ましくは、共同的に治療上有効量の本発明の組合せ剤の有効成分を、同時に、または任意の順序で逐次的に、例えば個別に(組合せ医薬組成物)、あるいは固定組合せ剤で投与することができる。
【0156】
ある状況下で、異なる作用機序を有する薬剤を組み合わせることができる。しかし、異なる作用形態を有するが同じ領域に作用する薬剤のあらゆる組合せを考慮するだけでは、有利な効果を有する組合せ剤を必ずしも得ることができない。
【0157】
より驚くべきことに、本発明のDPP−IV阻害剤またはそれぞれの場合においてその薬学的に許容される形態の組合せ投与によって、有益であるだけでなく、とりわけ増強されたまたは相乗的な治療効果がもたらされることを実験的に見出す。それとは独立して、組合せ処置によってもたらされるさらなる利点は、例えば驚くべき効果の延長、より広い治療処置の種類、および糖尿病に関連する疾患および状態に対する驚くべき有益な効果(例えば、食欲減少、体重増加の減少、または心臓血管副作用の減少、ベータ細胞壊死/細胞死の減少、ベータ細胞壊死の改善)であり得る。
【0158】
1型または2型糖尿病に関連する疾患、障害または状態には、これらに限定されないが、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症および糖尿病性神経障害、黄班変性、冠状動脈性心臓病、心筋梗塞、糖尿病性心筋障害、心筋細胞死、冠状動脈疾患、末梢動脈疾患、卒中、脚虚血、血管再狭窄、脚潰瘍、内皮機能不全および/またはアテローム性動脈硬化症が含まれる。
【0159】
さらなる利点は、より低い用量の本発明の個々の組合せ薬剤を使用することができ、用量が減少すること、例えば必要な用量を少なくするだけでなく、より少ない頻度で使用すること、または副作用の発生を減少させるために使用することができることである。これは、処置を受ける患者の要望および必要に従うものである。
【0160】
例えば、本発明の組合せ剤によって、とりわけ糖尿病患者の処置に利益、例えばネガティブな心臓血管事象のリスクを減少すること、副作用のリスクを減少すること、(糖尿病患者の)体重の増加を制御すること、または他の消化器運動性、感受性および/または分泌障害を有する患者における利益を提供する。
【0161】
本発明において使用されるDPP−IV阻害剤または免疫抑制剤もしくは免疫調節剤の用量減少の点で、第一線治療に適当な組合せ剤の顕著に安全なプロファイルが存在する。
【0162】
本明細書に記載の本発明の医薬組成物を、同時使用または任意の順序での連続使用に、個別使用または固定された組合せ剤として使用することができる。
【0163】
上記方法または使用は、DPP−IV阻害剤と免疫抑制剤または免疫調節剤を本発明の組合せ剤の形態、例えば固定された組合せ剤または固定製剤またはパーツのキットとして投与する。
【0164】
本明細書に記載の「パーツのキット」、組合せ剤、方法または使用において、DPP−IV阻害剤はビルダグリプチンであり、または/および免疫抑制剤または免疫調節剤は好ましくは2−アミノ−2−テトラデシル−1,3−プロパンジオール、FTY720、すなわち2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオール(以下、化合物Aと称する)、FTY720の塩酸塩、リン酸モノ−[(R)−2−アミノ−2−メチル−4−(4−ペンチルオキシ−フェニル)−ブチル]エステル、(2R)−2−アミノ−4−[3−(4−シクロヘキシルオキシブチル)−ベンゾ[b]チエン−6−イル]−2−メチルブタン−1−オール、FTY720リン酸塩、2−アミノ−4−(4−ヘプチルオキシフェニル)−2−メチル−ブタノール(以下、化合物Cと称する)、2−アミノ−4−(4−ヘプチルオキシフェニル)−2−メチル−ブタノールの塩酸塩、2−アミノ−4−(4−ヘプチルオキシフェニル)−2−メチル−ブタノールのRエナンチオマー、化合物Cリン酸塩、2−アミノ−2−{2−[4−(1−オキソ−5−フェニルペンチル)フェニル]エチル}プロパン−1,3−ジオール(以下、化合物Bと称する)、化合物B塩酸塩、化合物Bリン酸塩、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体、タクロリムス、シクロスポリン、例えばシクロスポリン“A”、シクロスポリンG、[O−(2−ヒドロキシエチル)−(D)Ser]シクロスポリン、および[3’−デヒドロキシ−3’−ケト−MeBmt]−[Val]シクロスポリン、FK506,またはそれぞれの場合においてその薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0165】
上記「パーツのキット」、組合せ剤、方法または使用において、DPP−IV阻害剤はビルダグリプチンであり、そして免疫抑制剤または免疫調節剤は2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオール、2−アミノ−2−[4−(3−ベンジルオキシフェノキシ)−2−クロロフェニル]プロピル−1,3−プロパン−ジオールまたは2−アミノ−2−[4−(ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]プロピル−1,3−プロパン−ジオール、またはそれぞれの場合においてその薬学的に許容される塩である。
【0166】
本発明において、DPP−IV阻害剤と免疫抑制剤または免疫調節剤を同時に投与するとき、かかる投与をある時間で連続的に、または同時に、同じ方法であることが一般的に好ましい。連続投与について、DPP−IV阻害剤と免疫抑制剤または免疫調節剤を任意の順序で投与することができる。かかる投与は一般的に経口であるのが好ましい。とりわけ好ましくは、投与は経口かつ同時である。しかし、処置する対象が嚥下不可能であるかまたは経口吸収が不可能もしくは望ましくないとき、非経腸または経皮投与が適当である。DPP−IV阻害剤と免疫抑制剤または免疫調節剤を連続的に投与するとき、各々の投与は同じ方法または異なる方法であってもよい。
【0167】
本発明のさらなる局面は、
(a)第1の単位用量形の、有効量のDPP IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩;
(b)第2などの単位用量形の、有効量の免疫抑制剤または免疫調節剤または各々の場合においてその薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1種の有効成分;および
(c)前記第1、第2などの単位形態を含む容器
を含む本発明の疾患または状態の予防、進行の遅延、処置用キットである。
【0168】
そのバリエーションにおいて、本発明は同様に、例えば本発明によって組み合わせる成分を独立して投与することができ、または異なる量の成分での固定された組合せ剤で、すなわち同時または異なる時点で投与することができる「パーツのキット」に関する。パーツのキットのパーツを、同時にまたは異なる時点で、すなわち異なる時点で任意のパーツのキットのパーツを等しいまたは異なる時間間隔で投与することができる。好ましくは時間間隔は、パーツの組合せ使用において処置する疾患または状態に対する効果が成分のいずれか1種のみの使用によって得られるであろう効果よりも大きくなるように選択する。
【0169】
本発明はしたがって、
(a)第1の単位用量形の、有効量のDPP IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩;
(b)第2などの単位用量形の、有効量の免疫抑制剤または免疫調節剤または各々の場合においてその薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1種の有効成分;
を、成分(a)および(b)の2または3またそれ以上の個別単位の形態で含む、本発明に記載の疾患または状態の予防、進行の遅延、処置用パーツのキットに関する。
【0170】
本発明はさらに、本発明の組合せ剤を同時、個別または逐次使用のための指示書と共に含む商品パッケージに関する。
【0171】
好ましい態様において、製品(商品)は有効成分としての本発明の組合せ剤(成分(a)および(b)の2または3またそれ以上の個別単位の形態で)を、本明細書に記載の疾患の進行の遅延または処置におけるその同時、個別または逐次使用、あるいはそのいずれかの組合せのための指示書と共に含む商品パッケージである。
【0172】
あらゆる好ましい記載を、本発明の組合せ剤、組成物、使用、処置法、「パーツのキット」および商品パッケージに適用する。
【0173】
これらの医薬組成物は、恒温動物に経腸的、例えば経口、および経直腸または非経腸的に投与するためのものであり、該組成物は薬理活性化合物を単独で、または常套の医薬補助物質と共に含む。例えば、医薬組成物は約0.1%〜90%、好ましくは約1%〜80%の活性化合物からなる。経腸または非経腸、および眼用医薬組成物は、例えば単位投与形、例えばコーティング錠、錠剤、カプセル剤または座薬およびアンプルである。これらは自体既知の方法で、例えば常套の混合、造粒、コーティング、溶解または凍結乾燥処理を使用して製造される。したがって、経口用医薬組成物を、活性化合物と固体賦形剤を混合し、所望によって得られた混合物を造粒し、所望または必要により混合物または造粒物を適当な補助物質を加えた後に錠剤またはコーティング錠核に処理することによって得ることができる。
【0174】
活性化合物の用量は様々な要素、例えば投与形態、恒温動物の種、年齢、および/または個体の状態に依存して変化し得る。
本発明の医薬組合せ剤の有効成分の好ましい用量は、治療上有効な用量、とりわけ商業的に入手可能であるものである。
【0175】
通常、経口投与の場合、例えば体重約75kgの患者について、およその1日用量は約1mg〜約360mgと見積もられる。
【0176】
活性化合物の用量は様々な要素、例えば投与形態、恒温動物の種、年齢、および/または個体の状態に依存して変化し得る。
医薬組成物を適当な単位用量形、例えばカプセル剤または錠剤で、そして共同的に有効なさらなる成分と共に、例えば100mgまたは50mgのビルダグリプチンを含む形で供給される。
【0177】
上記本発明の医薬組成物は、同時使用または任意の順序で逐次使用、個別使用または固定された組合せ剤として使用することができる。
【0178】
したがってさらなる態様において、DPP−IV阻害剤を免疫抑制剤または免疫調節剤から選択される少なくとも1種の有効成分と共に、好ましくは薬学的に許容される担体、ビークルまたは希釈剤を含む固定医薬組成物の形態で投与する。したがって、本発明のDPP−IV阻害剤を、免疫抑制剤または免疫調節剤から選択される少なくとも1種の有効成分と共に、固定組合せ剤として、任意の常套の蛍光、非経腸または経皮投与形態で投与することができる。
【0179】
温血動物、例えば70kgの例えばヒトに投与する式(I)のDPP−IV阻害剤の用量、とりわけDPP−IV酵素の阻害に有効な量は、1人あたり1日あたり、約3mg〜約3g、好ましくは約10mg〜約1g、例えば約20mg〜200mgであり、例えば同じサイズであり得る1〜4個の1回投与量に分割する。通常、小児は成人用量の約半分を投与される。各個体が必要とする用量を、例えば有効成分の血清濃度を測定し、最適なレベルに調節することによってモニターすることができる。1回投与量は例えば、成人患者あたり10、40または100mgを含む。
【0180】
ビルダグリプチンの用量は、好ましくは1日10〜150mg、最も好ましくは1日25〜150mg、25〜100mgまたは25〜50mgもしくはは50〜100mgである。1日経口投与量の好ましい例は、25、30、35、45、50、55、60、80、100または150mgである。有効成分の適用は1日3回まで、好ましくは1日1または2回起こり得る。
【0181】
S1P受容体アゴニストまたは調節剤、例えば式I〜XIIIの化合物、例えば化合物AまたはBを、任意の常套の経路で、とりわけ経腸、例えば経口的に、例えば錠剤、カプセル剤、飲用液剤、または非経腸、例えば注射溶液もしくは懸濁液の形態で投与することができる。経口投与に適当な単位投与形態には、約0.01〜50mg、通常0.1〜30mgの有効成分、例えば化合物AまたはBを、1種以上の薬学的に許容される希釈剤または担体と共に含む。好ましい組合せ剤はFTY720とビルダグリプチン、またはいずれかの場合においてその塩、例えばFTY720塩酸塩の組合せである。
【0182】
好ましい本明細書に記載の免疫抑制剤または免疫調節剤は、適当な単位投与形態、例えばカプセル剤または錠剤として、そして本明細書または公知文献に記載の通り、治療上有効量、例えば約0.1〜約100mg含む形態で供給される。有効成分の適用は、1日3回まで、好ましくは1日1または2回起こり得る。同じ好ましい投与量は、固定組合せ剤について選択される。
【0183】
本発明の方法を実施するために必要な2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオール、2−アミノ−2−[4−(3−ベンジルオキシフェノキシ)−2−クロロフェニル]プロピル−1,3−プロパン−ジオールまたは2−アミノ−2−[4−(ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]プロピル−1,3−プロパン−ジオールの1日用量は、例えば投与形態および処置する状態の重症度に依存して変化する。指示1日用量は、約0.1〜約100mg、例えば1〜10mgの経口使用のための有効成分であり、簡便には1回または分割用量で投与する。好ましくは約0.5〜約6mgの1日用量である。
【0184】
対応する投与量を、例えば朝、日中または夜に摂取することができる。
【0185】
好ましい局面において、本発明は;
i)25〜150mg、または50〜100mgのビルダグリプチン、および
ii)0.5〜10mg、または0.5〜6mgの、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオール、2−アミノ−2−[4−(3−ベンジルオキシフェノキシ)−2−クロロフェニル]プロピル−1,3−プロパン−ジオールおよび2−アミノ−2−[4−(ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]プロピル−1,3−プロパン−ジオールから選択される化合物;
(またはそれぞれの場合においてその薬学的に許容される塩)
を含むかまたは上記1日投与である、本明細書に記載の「パーツのキット」、組合せ剤、使用または方法に関する。
【0186】
好ましい局面において、本発明は;
i)50または100mgのビルダグリプチン、および
ii)2.5または5mgの2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオール、2−アミノ−2−[4−(3−ベンジルオキシフェノキシ)−2−クロロフェニル]プロピル−1,3−プロパン−ジオールおよび2−アミノ−2−[4−(ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]プロピル−1,3−プロパン−ジオールから選択される化合物;
(またはそれぞれの場合においてその薬学的に許容される塩)
を含むかまたは上記1日投与である、本明細書に記載の「パーツのキット」、組合せ剤、使用または方法に関する。
【0187】
好ましくはアミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオール塩化水和物を1日2.5mg〜5mg投与する。
【0188】
好ましくは、固定されていない組合せ剤の場合、認可され市販されている製品の用量が好ましい。
【0189】
低用量組合せ剤がとりわけ好ましい。
【0190】
さらに本発明を説明するため下記実施例を提供するが、これによって限定されない。
【実施例】
【0191】
本発明はある好ましい態様について文献と共に詳細に記載しているが、本発明に含まれる好ましい態様の精神および範囲から離れることなく他の態様が可能である。本明細書に記載の全ての文献および特許(米国およびその他)は、本明細書中にその全文が記載されているのと同様に、全体を参照により本明細書の一部とする。
【0192】
本発明の有用性を下記US20030180345の実施例によって示すことができる。
【0193】
上記方法における本発明の化合物の組合せ剤の有用性を、動物試験法および臨床的に、例えば下記方法によって示すことができる。
【0194】
A1. 島移植片
BALB/C(H−2)マウス由来の島を、STZ誘導性糖尿病CBA(H−2)マウスの腎皮膜直下に移植する。受容者を本発明の組合せ剤で、島移植後50日間経口的に処置し、各成分を好ましくは1日用量0.1〜40mg/kgで投与する。島移植片の機能状態を血中グルコースを測定することによって毎日モニターする。例えば動物を1または3mg/kg/dの化合物A塩酸塩および0.5〜75mg/kg/dのビルダグリプチンで処置したとき、処置動物は非処置動物と比較してより多い日数通常血糖を維持することができる。
【0195】
B. 組合せ処置
適当な臨床試験は、例えば乾癬または多発性硬化症を有する患者のオープンラベル、用量漸増試験である。かかる試験は本発明の組合せ剤の有効成分のとりわけ相乗効果を証明する。乾癬または多発性硬化症に対する有利な効果を、当業者に自体既知のこれらの試験の結果から直接決定することができる。かかる試験はとりわけ、有効成分を使用した単独治療と本発明の組合せ剤の効果を比較するのに適切である。好ましくは、薬剤(a)の用量を最大耐用用量に達するまで漸増し、薬剤(b)を固定用量で投与する。あるいは、薬剤(a)を固定用量で投与し、薬剤(b)の用量を漸増する。各患者は毎日または間欠的に薬剤(a)用量を投与される。処置の効果をかかる試験において、例えば12、18または24週後に、6週毎に症状スコアを評価することによって測定することができる。
【0196】
あるいは、プラセボ対照、2重盲検試験を使用して、本明細書に記載の本発明の組合せ剤の、例えば臓器、組織または細胞、例えばランゲルハンス島細胞の移植における利点を証明することができる。
【0197】
C. ベータ細胞新生および島アポトーシス−自己免疫疾患の処置および予防
この試験はビルダグリプチンと免疫調節剤がベータ細胞重量の増加および島アポトーシスの減少を導き得ることを説明する。膵臓ベータ細胞増殖を、新生児ラット急速ベータ細胞交代および増殖モデルを使用して評価する。新生児ラット(n=5〜8/グループ)にビルダグリプチン(60mg/kg/day)、1または3mg/kg/dの化合物A塩酸塩、ならびに1または3mg/kg/dの化合物A塩酸塩とビルダグリプチン(60mg/kg/day)の組合せ剤、またはビークル(対照)を、1〜21日目まで、1日1回経口的に投与する。膵臓免疫組織学および形態学的分析を7、21および28日目に行う。7日目にBrdU陽性島細胞の数およびインシュリン染色島中のApoptag陽性細胞数の減少を分析する。投与の21日後に、処置ラットのベータ細胞重量および膵臓インシュリン含有量を評価する。この試験は請求項の組合せ剤の、島細胞に対する有利な効果を支持することができる。
【0198】
動物および方法
妊娠中のWistarラット(Charles River)を個別に、妊娠14日目から、標準的なげっ歯類食および水に自由にアクセスできる状況で、温度および湿度制御環境下で、12時間明暗周期で飼育する。
【0199】
出産後(〜妊娠21日目=試験0日目)、全ての幼若ラットを48時間安静にする。
【0200】
36匹の幼若犬(雄および雌、性別未決定)をビークル投与に割り当て、そして35匹の幼若犬をビルダグリプチン(60mg/kg、po)、1または3mg/kgの化合物A塩酸塩および1または3mg/kgの化合物A塩酸塩形とビルダグリプチン(60mg/kg)の組合せ剤投与に割り当てる。1日1回投与、2日目から開始する。
【0201】
幼若犬1グループ(n=12/処置グループ)を7日目、処置の5日後に安楽死させる。第2のグループ(n=12/処置グループ)は21日目まで処置を続け、処置の19日後に安楽死させる。残りの動物(2〜20日目まで処置を受けた)を離乳させ、性別を決定し、21日目に2ラット/ケージで飼育し、それ以上処置を与えない。これらの動物を33日目、「洗浄」の12日後に安楽死させる。
【0202】
屠殺した日に、全ての動物に5’−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdU;100mg/kg、ip)を注射する。1時間後、血液試料を心臓穿刺によって得て、動物をCOで安楽死させ、膵臓組織を採取する。
【0203】
各処置グループの半分からの膵臓を秤量し、続く免疫組織学(IHC)−形態学的分析のために10%中性緩衝化バッファーで緩衝化したホルマリンで固定する。
【0204】
各処置グループの半分由来の膵臓を秤量し、続く膵臓インシュリン含有量の決定のために液体窒素で凍結させる。
【0205】
D. 新たに1型糖尿病と診断された小児の処置および1型糖尿病を有する患者が寛解期である時間の延長。
この期間(寛解)に、ビルダグリプチンまたは本明細書に記載の組合せ剤の1つでの薬理学的介入によって残存ベータ細胞重量の生存を上昇/増強し、それによって寛解期の延長がもたらされることが期待される。
【0206】
試験デザイン 新たに1型糖尿行であると診断された総数100人の小児および青年(16歳未満)をこの試験に参加させる。性別、年齢、思春期状態、症状の期間、診察時DKA、およびインシュリンレジメンを記録する。基底C−ペプチドおよびグルコースを診断時に測定する。誘導C−ペプチド試験を診断後1、6および12ヶ月、各対象に行う。HbA,Cおよび免疫学的血清(ICA、GAD、IA2、IM)をこの期間中通常の間隔で分析する。試験において、全血サンプルをDNA単離およびHLAタイプ分類のために各個体から採取する。
【0207】
50人の小児を1年間通常通りインシュリンで処置し、50人の小児の3グループをランダム化してビルダグリプチン(50mg)、化合物A(1.5mg)またはビルダグリプチンと化合物Aの組合せ剤で、インシュリンとの組合せで処置する。
【0208】
検出力考察の統計(Statistics with power consideration) 統計的評価は誘導C−ペプチド、用量調節HbA,Cそれぞれのデータについてのくり返し測定モデルに基づく。分析は基底値に対して補正する。検出力を応答として12ヶ月値のみを使用して、薄い単純なフレームで計算する。これは最終であり、そして最も情報の多い値である。200患者(各グループ50人)の試験サイズでどの程度の大きさの差異が得られるかを計算する。患者内および患者間の変化値を前者の試験におけるHvidere寛解で見出されるものとする。
【0209】
誘導C−ペプチド(対数スケール) 患者内の変化は0.39であり、患者間は0.59である。このことは、基底線を考慮すると、12ヶ月値の変化はSD0.62であることを示唆している。有意レベル0.05および検出力0.9を用いると、0.51の最小差異は、各グループに50患者が必要であることを示唆している。
【0210】
この差異は、12ヶ月後の誘導C−ペプチドにおける2つの処置グループ間の因数1.67に対応する。この評価はドロップアウトの理由とはならない。
【0211】
用量調節HbA1c(HbA1c%+4×1日用量/kg)について、患者内の変化は1.74であり、患者間は1.92である。このことは、基底線を考慮すると、12ヶ月値の変化はSD1.63であることを示唆している。有意レベル0.05および検出力0.9を用いると、1.06の最小差異は、各グループに50患者が必要であることを示唆している。この評価はドロップアウトの理由とはならない。
【0212】
ビルダグリプチン、化合物Aまたはビルダグリプチンと化合物Aの組合せ剤での処置は、新たに1型糖尿行であると診断された小児の寛解相を、ベータ細胞機能、Cペプチドレベルに対する代理マーカーによって測定されるように患者の残存ベータ細胞機能の保存を誘導することによって、延長することができる。
【0213】
E: 膵島炎に対するビルダグリプチンまたは組合せ剤「ビルダグリプチン+化合物A」の効果。
膵島炎またはI型糖尿病に対するビルダグリプチンまたは組合せ剤「ビルダグリプチン+化合物A」の効果を調査するため、IDDM(インシュリン依存性糖尿病)を発症する遺伝的素因を有するマウス(NOD)をビルダグリプチンまたは組合せ剤「ビルダグリプチン+化合物A」で処置する。
【0214】
動物に4週齢から1週間に3回、4週間腹腔内投与する。膵島炎を14週で評価し、表に採点する。
【0215】
マウスをBealesら(European Journal of Pharmacology 357(1998) 221-225)の方法によって採点する。3以上(DMSOおよびPBS)が重度の膵島炎を意味し、1〜3はわずかな浸潤を意味する(スコア1は低グレードの膵島周囲炎を意味する)。
【0216】
ビルダグリプチンおよび組合せ剤「ビルダグリプチン+化合物A」は、膵島炎の減少に予期し得ない良好な結果を示すことができる。
【0217】
F. 膵島炎の発症に対するビルダグリプチンおよび組合せ剤「ビルダグリプチン+化合物A」の効果 糖尿病傾向の非肥満糖尿病(NOD)マウス(雌は25週齢までに90%の割合で自己免疫性糖尿病を発症する)を、膵島炎の発症および進行に対するビルダグリプチンおよび組合せ剤「ビルダグリプチン+化合物A」の効果を測定するために試験する。雌および雄マウス両方で白血球が導管および小静脈周辺で浸潤し始めるため、膵島炎がNODマウスの3〜5週齢で開始する。これらの浸潤は膵島にまで進行し、これが島周辺リンパ球の同心円層によって包囲される(非破壊的膵島周囲炎)。次いで破壊的島内膵島炎が起こり、広域なP細胞破壊を導く。全てのNODマウスは膵島周囲炎を示すが、膵島内炎および明白な1型糖尿病はこの例で使用したNODマウスコロニーの約70〜80%の雌および約10〜15%の雄に限定される。
【0218】
膵島炎浸潤は主に、CD4’およびCD8’T細胞からなるが、マクロファージ、B細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。
【0219】
糖尿病のNODマウスモデルは、ヒト1型糖尿病と直接比較し得る十分確立されたモデルである。NODマウスは組織学および自己免疫応答の範囲で1型糖尿病と極めて類似した疾患を自然発生的に発症する。最終的には、NODマウスは膵島における細胞の喪失を示す。
【0220】
妊娠NODマウスを妊娠および授乳中、食餌制限、飲用水中にビルダグリプチンまたは組合せ剤「ビルダグリプチン+化合物A」を補い、または補わずに、維持する。ビルダグリプチンまたは組合せ剤「ビルダグリプチン+化合物A」の補充を、離乳後停止する。12週齢で動物を殺し、膵島中の膵島炎の組織学的証拠の有無を試験する。試験され膵島炎の証拠が発見されたマウスは、さらに島周辺(軽微)、島の50%未満の領域(中度)または島の50%以上の領域(重度)として、膵島炎のステージおよび/または重症度の指標を採点する。
【0221】
ビルダグリプチンおよび組合せ剤「ビルダグリプチン+化合物A」は膵島炎減少に予期し得ない良好な結果を示すことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)DPP IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩、および
ii)免疫抑制剤もしくは免疫調節剤、またはその薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1種の有効成分
を含む組合せ剤。
【請求項2】
i)DPP IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩、および
ii)免疫抑制剤もしくは免疫調節剤、またはその薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1種の有効成分
ならびに少なくとも1種のさらなる薬学的に許容される担体を含む、請求項1に記載の組合せ剤。
【請求項3】
組合せ製剤または固定された組合せ剤の形態の、請求項1または2に記載の組合せ剤。
【請求項4】
DDP IV阻害によって阻害され得る疾患および障害の予防、進行の遅延もしくは処置、自己免疫疾患およびそれに関連する障害の予防、進行の遅延もしくは処置、または移植片拒絶の予防、進行の遅延もしくは処置用医薬の製造のための、
i)DPP IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩、および
ii)免疫抑制剤もしくは免疫調節剤、またはその薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1種の有効成分
を含む組合せ剤の使用。
【請求項5】
DDP IV阻害によって阻害され得る疾患および障害の予防、進行の遅延もしくは処置、自己免疫疾患およびそれに関連する障害の予防、進行の遅延もしくは処置、または移植片拒絶の予防、進行の遅延もしくは処置法であって、それを必要とするヒトを含む温血動物に、共同的に治療上有効量のDPP IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩と免疫抑制剤もしくは免疫調節剤、またはその薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1種の有効成分;
および少なくとも1種のさらなる薬学的に許容される担体の組合せ剤を投与することを含んでなる方法。
【請求項6】
疾患または状態が、グルコース代謝障害、耐糖能異常状態、空腹時血漿グルコース異常状態、糖尿病、とりわけ2型糖尿病、肥満、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、脚潰瘍、糖尿病に関連する疾患または状態、パーキンソン病、統合失調症、アルツハイマー病、認知症、老年性認知症、軽度の認知障害またはアルツハイマー型認知症、統合失調症に関連する認知障害、アルツハイマー病に関連する認知機能の障害、パーキンソン病に関連する認知機能の障害、欲求障害(appetency disorder)または薬物乱用障害、あるいは体脂肪減少から選択される、請求項4または5に記載の方法または使用。
【請求項7】
疾患または状態が肥満、IGT、2型糖尿病、膵島炎、1型糖尿病、LADA、移植片拒絶または糖尿病に関連する疾患もしくは状態から選択される、請求項6に記載の方法または使用。
【請求項8】
骨髄移植または膵島片移植における移植片拒絶の予防、進行の遅延または処置のための請求項4または5に記載の方法または使用。
【請求項9】
1型糖尿病を有する患者が寛解期である時間を延長するための方法であって、寛解期の1型糖尿病患者に、患者が寛解期である時間を延長するための量の本明細書に記載のDPP−IV阻害剤および少なくとも1種の免疫抑制剤または免疫調節剤を投与することを含んでなる方法。
【請求項10】
1型糖尿病を有する患者が寛解期である時間の延長用医薬の製造のための、DPP−IV阻害剤および少なくとも1種の免疫抑制剤もしくは免疫調節剤、またはその塩を含む組合せ剤の使用。
【請求項11】
患者が新たに1型糖尿病であると診断されて、組合せ剤を当該患者に最初に投与する、請求項9に記載の方法または請求項10に記載の使用。
【請求項12】
自己免疫疾患、I型糖尿病およびそれに関連する障害の予防、進行の遅延または処置、あるいは膵島移植の改善用医薬の製造のための、DPP IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項13】
自己免疫疾患、I型糖尿病およびそれに関連する障害の予防、進行の遅延もしくは処置、または膵島移植の改善のための方法であって、それを必要とするヒトを含む温血動物に、有効量のDPP IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩および少なくとも1種のさらなる薬学的に許容される担体を投与することを含んでなる方法。
【請求項14】
自己免疫疾患が成人の潜在的自己免疫性糖尿病(LADA)である、請求項13に記載の方法または請求項12に記載の使用。
【請求項15】
膵島移植を改善するための、または膵島移植を受けた患者を処置するための、請求項13に記載の方法または請求項12に記載の使用。
【請求項16】
1型糖尿病を有する患者が寛解期である時間を延長するための方法であって、寛解期の1型糖尿病患者に、当該患者が寛解期である時間を延長するための量のDPP−IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩を投与することを含んでなる方法。
【請求項17】
1型糖尿病を有する患者が寛解期である時間の延長用医薬の製造のための、DPP−IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項18】
患者が新たに1型糖尿病であると診断されて、DPP−IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩を当該患者に最初に投与する、請求項16に記載の方法または請求項17に記載の使用。
【請求項19】
DPP−IV阻害剤が、(S)−1−{2−[5−シアノピリジン−2イル)アミノ]エチル−アミノアセチル)−2−シアノ−ピロリジン、ビルダグリプチン、MK−0431(シタグリプチン)、GSK23A、サキサグリプチン、3−(アミノメチル)−2−イソブチル−1−オキソ−4−フェニル−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリンカルボキサミドおよび2−{[3−(アミノメチル)−2−イソブチル−4−フェニル−1−オキソ−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリル]オキシ}アセトアミド、または各々の場合においてその薬学的に許容される塩から選択される、請求項1〜18のいずれかに記載の組合せ剤、方法または使用。
【請求項20】
DPP−IV阻害剤がビルダグリプチンまたはその薬学的に許容される塩である、請求項1〜19のいずれかに記載の組合せ剤、方法または使用。
【請求項21】
ミコフェノール酸またはその塩もしくはエステル、ミコフェノール酸ナトリウム、ミコフェノール酸モフェチル、2−アミノ−2−テトラデシル−1,3−プロパンジオール;2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオール(FTY720);2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオールの塩酸塩;リン酸モノ−[(R)−2−アミノ−2−メチル−4−(4−ペンチルオキシ−フェニル)−ブチル]エステル;(2R)−2−アミノ−4−[3−(4−シクロヘキシルオキシブチル)−ベンゾ[b]チエン−6−イル]−2−メチルブタン−1−オール;2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオールのリン酸塩;2−アミノ−4−(4−ヘプチルオキシフェニル)−2−メチル−ブタノール、2−アミノ−4−(4−ヘプチルオキシフェニル)−2−メチル−ブタノールの塩酸塩;2−アミノ−4−(4−ヘプチルオキシフェニル)−2−メチル−ブタノールのR−エナンチオマー;2−アミノ−4−(4−ヘプチルオキシフェニル)−2−メチル−ブタノールのリン酸塩;2−アミノ−2−{2−[4−(1−オキソ−5−フェニルペンチル)フェニル]エチル}プロパン−1,3−ジオール塩酸塩;または2−アミノ−2−{2−[4−(1−オキソ−5−フェニルペンチル)フェニル]エチル}プロパン−1,3−ジオールのリン酸塩;ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体;タクロリムス;シクロスポリン、シクロスポリンA、シクロスポリンG、[O−(2−ヒドロキシエチル)−(D)Ser]シクロスポリン、[3’−デヒドロキシ−3’−ケト−MeBmt]−[Val]シクロスポリン;およびFK506、または各々の場合においてその薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1〜20のいずれかに記載の組合せ剤、方法または使用。
【請求項22】
免疫抑制剤または免疫調節剤がS1P受容体アゴニスト、または各々の場合においてその薬学的に許容される塩である、請求項1〜21のいずれかに記載の組合せ剤、方法または使用。
【請求項23】
免疫抑制剤または免疫調節剤が、遊離形または各々の場合においてその薬学的に許容される塩形の、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオール、2−アミノ−2−[4−(3−ベンジルオキシフェノキシ)−2−クロロフェニル]プロピル−1,3−プロパン−ジオールまたは2−アミノ−2−[4−(ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]プロピル−1,3−プロパン−ジオールから選択されるS1P受容体アゴニストである、請求項1〜22のいずれかに記載の組合せ剤、方法または使用。
【請求項24】
ビルダグリプチンまたはその薬学的に許容される塩を1日あたり25〜150mgまたは50〜100mgの量で投与する、請求項1〜23のいずれかに記載の組合せ剤、方法または使用。
【請求項25】
2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオールまたはその薬学的に許容される塩を1日あたり1mg〜10mgの量で投与する、請求項1〜24のいずれかに記載の組合せ剤、方法または使用。
【請求項26】
塩酸2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオールを1日0.5mg〜6mgまたは2.5mg〜5mgの量で投与する、請求項1〜25のいずれかに記載の組合せ剤、方法または使用。
【請求項27】
i)ビルダグリプチンを1日25〜150mgまたは50〜100mgの量で投与し、そして
ii)2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオールを1日あたり0.5〜6mgまたは2.5〜5mgの量で投与する(または各々の場合においてその薬学的に許容される塩)、請求項1〜26のいずれかに記載の組合せ剤、方法または使用。
【請求項28】
i)50または100mgのビルダグリプチンを1日あたり投与し、そして
ii)2.5または5mgの塩酸2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオールを1日当たり投与する(または各々の場合においてその薬学的に許容される塩)、請求項1〜27のいずれかに記載の組合せ剤、方法または使用。

【公表番号】特表2009−510112(P2009−510112A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533704(P2008−533704)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/038203
【国際公開番号】WO2007/041368
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】