説明

有機導電性高分子塗布液、有機導電性高分子膜、導電体、及び抵抗膜式タッチパネル

【課題】表面抵抗の面内ばらつきが抑えられた導電性膜を形成する有機導電性高分子塗布液、それにより得られる有機導電性高分子膜、導電体及び抵抗膜式タッチパネルを提供する。
【解決手段】本発明の有機導電性高分子塗布液は、導電性高分子と水溶性ポリマーであるドーパントとが、1価アルコール、ケトン及び水から選択される少なくとも1つに分散されてなる。この分散液の粘度は6.0mPa・s以下であり、かつ導電性高分子とドーパントとの分散粒子径の平均値は50nm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機導電性高分子塗布液、有機導電性高分子膜、導電体、及び抵抗膜式タッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、さらにエレクトロルミネッセンス(EL)素子などに代表される画像表示体(ディスプレイ)が、テレビ、コンピューターや近年普及してきた各種モバイル装置など、様々な分野で広く用いられるようになってきており、目覚しい発展を遂げている。一方、地球環境に配慮した脱化石エネルギーの1つとして太陽電池が注目され、太陽電池の更なる普及の要求に応えるべく、高機能化などに関する研究が求められている。このような表示素子や太陽電池には導電性膜が使用されている。
【0003】
ITO系導電性膜をはじめとする金属系材料を用いた導電性膜は、金属系材料を真空蒸着法やスパッタリング法などの気相法によって、ガラス基板上に製膜して製造するのが一般的である。携帯電話やモバイルなどの表示素子については軽量化が進められ、表示素子基板についてもガラスからプラスチックへの移行が求められている。プラスチック基板の導入で表示素子の重量は従来の半分以下となり、強度や耐衝撃性が著しく向上している。
【0004】
しかしながら、ITO系導電性膜ではガラス基板からプラスチックフィルムに代えることにより密着性が低下し、基材と形成された導電性膜とが剥がれやすいという問題があった。またITOなどの金属系材料は通常、スパッタなどの気相法を用いて成膜するため高価な製造装置を使用しなければならない。
【0005】
これらに代わる導電性材料として導電性ポリマーが知られている。導電性ポリマーを用いることで、導電性を発現する薄膜を塗布によって形成することが可能となり、安価に製造できるという利点を有する。また、導電性ポリマーで作られた電極はITO電極よりフレキシブルであり、脆性が低く、可撓性を有するものに使用しても破損し難い。これに対し、特に高フレキシブル電極が必要とされるタッチスクリーンに、導電性ポリマーで作られた電極を適用すると、装置の寿命を延ばすことができるという利点をも有するものである。
【0006】
しかしながら、導電性ポリマーは溶媒に分散し難く、導電性ポリマー含有の塗布液を用いて形成した膜は均一性に乏しいものであった。そこで、ポリアニオンをドープしたポリチオフェンが開発され(例えば、特許文献1参照。)、特にポリチオフェンとして3,4−エチレンジオキシ−ポリチオフェン(PEDOT)を用い、ポリアニオンとしてポリスチレンスルホン酸(PSS)を用いた下記構造のPEDOT/PSSが広く適用されている。
【0007】
【化1】



【0008】
PEDOT/PSSは、PEDOTがポリスチレンスルホン酸でドープされており、水に対する分散性が向上し、塗布性能に優れるとされている。
【0009】
更に、PEDOT系高分子水溶液を用いて製造された電極の電導度を高めようとする研究がなされている。例えば、多価アルコール、1価アルコール、及びアミド系又はスルホキシド系溶媒の混合溶媒を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、エチレングリコールなどの水溶性有機化合物、及び水溶性エポキシモノマーを添加したPEDOT系組成物は、透明性、導電性及び耐水性に優れた導電性膜を形成し得ることが報告されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許第440957号明細書
【特許文献2】特表2007−531233号公報
【特許文献3】特開2007−531233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の技術によって、分散性が向上した導電性ポリマー分散液が得られるようになったものの、分散性が未だ充分でない場合があり、形成された導電性膜の面内の表面抵抗のばらつきを更に小さくすることが望まれている。
特に、導電性膜をタッチパネルに適用する場合には、表面抵抗の面内ばらつきが、位置変量に対する内部抵抗値の直線性(所謂、リニアリティ)に直接的に影響する。
そこで本発明の課題は、表面抵抗の面内ばらつきが抑えられた導電性膜を形成する有機導電性高分子塗布液、それにより得られる有機導電性高分子膜、導電体、及び抵抗膜式タッチパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記状況を鑑み、本発明者らは鋭意研究を行なったところ、特定の溶媒種、分散粒子径、及び粘度とすることで、表面抵抗の面内ばらつきが著しく抑えられるという予想外の知見を得、この知見に基づいて更に検討し、本発明を完成するに至った。
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
【0013】
<1> 導電性高分子とドーパントとが、1価アルコール、ケトン、及び水から選択される少なくとも1つに分散されてなり、
導電性高分子とドーパントとの分散粒子径の平均値が50nm以下であり、かつ
粘度が6.0mPa・s以下である有機導電性高分子塗布液。
【0014】
<2> 更に、多価アルコールを含有する前記<1>に記載の有機導電性高分子塗布液。
【0015】
<3> 前記導電性高分子が、ポリチオフェンを含む前記<1>又は<2>に記載の有機導電性高分子塗布液。
【0016】
<4> 前記ポリチオフェンが、ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェンを含む前記<1>又は<2>に記載の有機導電性高分子塗布液。
【0017】
<5> 前記ドーパントが、水溶性ポリマーである前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の有機導電性高分子塗布液。
【0018】
<6> 前記ドーパントが、ポリスチレンスルホン酸及びスチレンスルホン酸の共重合体から選択される少なくとも1つを含む前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の有機導電性高分子塗布液。
【0019】
<7> 前記導電性高分子とドーパントとの総固形分濃度が、0.2質量%以上0.7質量%以下である前記<1>〜<6>のいずれか1項に記載の有機導電性高分子塗布液。
【0020】
<8> 更に、ノニオン系界面活性剤を含有する前記<1>〜<7>のいずれか1項に記載の有機導電性高分子塗布液。
【0021】
<9> 更に、フッ素基を有するノニオン系界面活性剤を含有する前記<1>〜<7>のいずれか1項に記載の有機導電性高分子塗布液。
【0022】
<10> 前記多価アルコールが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、及びテトラエチレングリコールから選択される少なくとも1つである前記<2>〜<9>のいずれか1項に記載の有機導電性高分子塗布液。
【0023】
<11> 前記<1>〜<10>のいずれか1項に記載の有機導電性高分子塗布液を塗布し、乾燥して形成された有機導電性高分子膜。
【0024】
<12> 25℃50%RHでの表面抵抗が、100Ω/□以上3000Ω/□以下の範囲にある前記<11>に記載の有機導電性高分子膜。
【0025】
<13> 下記式で表される25℃50%RHでの表面抵抗の面内ばらつき値(CV値)が、0%以上5.0%未満である前記<11>又は<12>に記載の有機導電性高分子膜。
CV値=(表面抵抗の標準偏差)/(表面抵抗の平均値)×100
【0026】
<14> 更に、ヒドロキサム酸誘導体及びリン酸誘導体の少なくとも1つが付与されてなる前記<11>〜<13>のいずれか1項に記載の有機導電性高分子膜。
【0027】
<15> 更に、誘電体層を積層する前記<11>〜<14>のいずれか1項に記載の有機導電性高分子膜。
【0028】
<16> 支持体上に、前記<11>〜<15>のいずれか1項に記載の有機導電性高分子膜を備える導電体。
【0029】
<17> 支持体としての透明フィルム上に導電膜を備える第一の導電体と、支持体としての基体上に導電膜を備える第二の導電体とが、対向して配置され、
前記第一の導電体及び第二の導電体の少なくとも一方の導電膜が、前記<11>〜<15>のいずれか1項に記載の有機導電性高分子膜である抵抗膜式タッチパネル。
【0030】
<18> 位置変量に対する内部抵抗値のリニアリティが−3.0%以上3.0%以下である前記<17>に記載の抵抗膜式タッチパネル。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、表面抵抗の面内ばらつきが抑えられた導電性膜を形成する有機導電性高分子塗布液、表面抵抗の面内ばらつきが抑えられた有機導電性高分子膜、導電体、及び抵抗膜式タッチパネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の抵抗膜式タッチパネルの一例を示す断面概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0034】
<有機導電性高分子塗布液>
本発明の有機導電性高分子塗布液は、導電性高分子とドーパントとが、1価アルコール、ケトン、及び水から選択される少なくとも1つに分散されてなる。この分散液の粘度は6.0mPa・s以下であり、かつこれに含まれる導電性高分子とドーパントとの分散粒子径の平均値は50nm以下である。
以下、有機導電性高分子塗布液の構成物について、詳細に説明する。
【0035】
(1)導電性高分子
本発明に用いられる導電性高分子とは、10−6S・cm−1以上の導電性を示す高分子をいい、これに該当する高分子化合物であれば、いずれのものも使用することができる。より好ましくは、10−1S・cm−1以上の導電性を有する高分子化合物である。
【0036】
導電性高分子としては、好ましくは芳香族炭素環または芳香族ヘテロ環を、単結合または二価以上の連結基で連結した非共役高分子または共役高分子である。
非共役高分子または共役高分子における前記芳香族炭素環としては、例えばベンゼン環が挙げられ、更に縮環を形成してもよい。
非共役高分子または共役高分子における前記芳香族ヘテロ環としては、例えばピリジン環、ビラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、インドール環、カルバゾール環、ペンゾイミダゾール環、イミダゾピリジン環などが挙げられ、更に縮環を形成してもよく、置換基を有してもよい。
【0037】
また、非共役高分子または共役高分子における前記二価以上の連結基としては、炭素原子、珪素原子、窒素原子、硼素原子、酸素原子、硫黄原子、金属、金属イオンなどで形成される連結基が挙げられる。好ましくは、炭素原子、窒素原子、珪素原子、硼素原子、酸素原子、硫黄原子およびこれらの組み合わせから形成される基であり、組み合わせにより形成される基としては、置換もしくは無置換のメチレン基、カルボニル基、イミノ基、スルホニル基、スルフィニル基、エステル基、アミド基、シリル基などが挙げられる。
【0038】
導電性高分子としては、具体的には、例えば、置換および非置換の導電性ポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリピロール、ポリセレノフェン、ポリイソチアナフテン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアセチレン、ポリピリジルビニレン、ポリアジン等が挙げられる。
これら導電性高分子は1種のみを用いてもよく、また、目的に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
また、所望の導電性を達成できる範囲であれば、導電性を有しない他のポリマーとの混合物として用いることもでき、これらのモノマーと導電性を有しない他のモノマーとのコポリマーも用いることができる。
【0040】
導電性高分子としては、共役高分子であることが更に好ましい。共役高分子の例としては、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリ(パラフェニレン)、ポリフルオレン、ポリアズレン、ポリ(パラフェニレンサルファイド)、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリアニリン、ポリ(パラフェニレンビニレン)、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)、複鎖型共役系高分子(ポリペリナフタレンなど)、金属フタロシアニン系高分子、その他共役系高分子(ポリ(パラキシリレン)、ポリ[α−(5,5’−ビチオフェンジイル)ベンジリデン]など)が挙げられる。
【0041】
好ましくは、ポリ(パラフェニレン)、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(パラフェニレンビニレン)、ポリ(2,5−チエニレンビニレンが挙げられ、更に好ましくは、ポリ(パラフェニレン)、ポリチオフェン、ポリ(パラフェニレンビニレン)などが挙げられる。
これら共役高分子は置換基を有していてもよく、該置換基としては後述の一般式(I)においてR11として説明する置換基を挙げることができる。
【0042】
本発明では特に、導電性高分子が下記一般式(I)で表される部分構造を有すること(即ちポリチオフェン及びその誘導体であること)が、高い透明性と導電性を両立するという観点から好ましい。なお、ここでいう「透明性」とは、可視光である波長550nmの光に対する透過率が50%以上であることを意味する。得られる導電性膜の透過率は60%以上であることが好ましく、より好ましくは該透過率が70%以上である。
【0043】
【化2】

【0044】
一般式(I)中、R11は置換基を表し、m11は0〜2の整数を表す。m11が2を表すとき、複数のR11は互いに同一であっても異なってもよく、互いに連結して環を形成してもよい。n11は1以上の整数を表す。
【0045】
11で表される置換基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、2−オクテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノなどが挙げられる。)、
【0046】
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、
【0047】
アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、
【0048】
カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、
【0049】
ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12で、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられる。具体的には、例えばピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルフォリン、チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは3〜30、特に好ましくは3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)などが挙げられる。
【0050】
上記R11で表される置換基は、さらに置換されていてもよい。また、置換基を複数有する場合、それらの置換基は互いに同じでも異なっていてもよく、また可能な場合は連結して環を形成してもよい。形成される環としては例えば、シクロアルキル環、ベンゼン環、チオフェン環、ジオキサン環、ジチアン環等が挙げられる。
【0051】
11で表される置換基として、好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基であり、さらに好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基である。特に好ましくは、m11が2のとき、2つのR11が連結して環を形成したアルコキシ基、アルキルチオ基であり、ジオキサン環、ジチアン環を形成することが好適である。
【0052】
一般式(I)においてm11が1のとき、R11はアルキル基であることが好ましく、炭素数2〜8のアルキル基がより好ましい。
また、R11が、アルキル基であるポリ(3−アルキルチオフェン)であるとき、隣り合ったチオフェン環との連結様式はすべて2−5’で連結した立体規則的なものと、2−2’、5−5’連結が含まれる立体不規則的なものがあるが、立体的不規則なものが好ましい。
【0053】
本発明では、導電性高分子としては、高い透明性と導電性を両立するという観点から、ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン(下記具体例化合物(6))であることが特に好ましい。
【0054】
一般式(I)で表されるポリチオフェン及びその誘導体は、J. Mater. Chem., 2005, 15, 2077−2088.およびAdvanced Materials 2000, 12(7), page 481など公知の方法によって作製することができる。また、市販品として、Denatron P502(ナガセケムテックス社製)、 3,4-ethylenedioxythiophene (CLEVIOS(登録商標)M V2)、3,4-polyethylenedioxythiopene/polystyrenesulfonate (CLEVIOS(登録商標) P)、CLEVIOS(登録商標) C、CLEVIOS(登録商標) F E、CLEVIOS(登録商標) M V2、CLEVIOS(登録商標) P、CLEVIOS(登録商標) P AG、CLEVIOS(登録商標) P HC V4、CLEVIOS(登録商標) P HS、CLEVIOS(登録商標) PH、CLEVIOS(登録商標) PH 500、CLEVIOS(登録商標) PH 510、CLEVIOS(登録商標) PH 750、CLEVIOS(登録商標) PH 1000(以上、エッチ・シー・シュタルク社製)、オーガコンS-300(日本アグファゲバルト社製)などを入手することができる。
ポリアニリン及びその誘導体としては、ポリアニリン(アルドリッチ社製)、ポリアニリン(エレラルダイン塩)(アルドリッチ社製)などを入手することができる。
ポリピロール及びその誘導体としては、ポリピロール(アルドリッチ社製)などを入手することができる。
【0055】
以下に、導電性高分子の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、これらの他にも、WO98/01909記載の化合物等が挙げられる。
【0056】
【化3】

【0057】
【化4】

【0058】
本発明で用いる導電性高分子の重量平均分子量は、1,000〜1,000,000が好ましく、より好ましくは10,000〜500,000であり、更に好ましくは10,000〜100,000である。ここで重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定されるポリスチレン換算重量平均分子量である。
【0059】
(2)ドーパント
本発明の有機導電性高分子塗布液は、少なくとも一種のドーパントを含有する。ドーパントを含有することで、分散性が良好な分散液(組成物)となり、得られる導電性膜の導電性を高められる。
なお本発明においてドーパントとは、導電性高分子の導電性を変化させる作用を有する添加物を意味する。
このようなドーパントとしては、電子受容性(アクセプター)ドーパント、電子供与性(ドナー)ドーパントが挙げられる。
【0060】
電子受容性(アクセプター)ドーパントの例としては、ハロゲン(Cl,Br,I,ICl,ICl,IBr,IF)、ルイス酸(PF,AsF,SbF,BF,BCl,BBr,SO)、プロトン酸(HF,HCl,HNO,HSO,HClO,FSOH,CISOH,CFSOH,各種有機酸,アミノ酸など)、遷移金属化合物(FeCl,FeOCl,TiCl,ZrCl,HfCl,NbF,NbCl,TaCl,MoF,MoCl,WF,WCl,UF,LnCl(Ln=La,Ce,Pr,Nd,Smなどのランタノイド)、電解質アニオン(Cl,Br,I,ClO,PF,AsF,SbF,BF,各種スルホン酸アニオン)、その他(O,XeOF,(NO)(SbF),(NO)(SbCl),(NO)(BF),FSO00SOF,AgClO,HIrCl,La(NO・6HO等が挙げられる。
【0061】
電子供与性(ドナー)ドーパントの例としてはアルカリ金属(Li,Na,K,Rb,Cs)、アルカリ土類金属(Ca,Sr,Ba)、ランタノイド(Euなど)、その他(R,R,RAs,R,アセチルコリン)等が挙げられる。
【0062】
また、ドーパントが水溶性ポリマーであると、有機導電性高分子塗布液を水分散液として調整することが可能であり、環境負荷を低減させ且つ塗布により簡便に導電性薄膜が調整できるという点で好適である。
【0063】
ドーパントと前記導電性高分子との組み合わせとしては、例えば:
(A) ポリアセチレンとI,AsF,FeClなど;
(B) ポリ(p−フェニレン)とAsF,K,AsFなど;
(C) ポリピロールとClOなど;
(D) ポリチオフェン類とClO,スルホン酸化合物、とくにポリスチレンスルホン酸、ニトロソニウム塩、アミニウム塩、キノン類など;
(E) ポリイソチアナフテンとIなど;
(F) ポリ(p−フェニレンサルファイド)とAsF
(G) ポリ(p−フェニレンオキシド)とAsF
(H) ポリアニリンとHClなど;
(I) ポリ(p−フェニレンビニレン)とHSOなど;
(J) ポリチオフェニレンビニレンとIなど;
(K) ニッケルフタロシアニンとIなど;
等が挙げられる。
【0064】
これらの組み合わせの中でも、好ましくは前記(D)もしくは(H)の組み合わせであり、より好ましくは、ドープ状態の安定性が高いという観点から、ポリチオフェン類(ポリチオフェン及びその誘導体)とスルホン酸化合物の組み合わせであり、更に好ましくは、水分散液が調整可能であり、塗布により簡便に導電性薄膜が調整できるという観点から、ポリチオフェン類とポリスチレンスルホン酸及び/又はスチレンスルホン酸の共重合体の組み合わせである。
【0065】
一方、導電性高分子の分散性を高めるために、高分子鎖に電解質をドープしたイオン導電性高分子としてもよい。該高分子鎖の例としては、ポリエーテル(ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなど)、ポリエステル(ポリエチレンサクシネート、ポリ−β−プロピオラクトンなど)、ポリアミン(ポリエチレンイミンなど)、ポリスルフィド(ポリアルキレンスルフィドなど)などが挙げられ、ドープされた電解質としては各種アルカリ金属塩などが挙げられる。
【0066】
前記アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属イオンとしてはLi、Na、K、Rb、Csなどが、対塩を形成するアニオンとしてはF、Cl、Br、I、NO、SCN、ClO、CFSO、BF、AsF、BPhなどが挙げられる。
【0067】
高分子鎖とアルカリ金属塩の組み合わせとしては、例えばポリエチレンオキシドとLiCFSO、LiClOなど、ポリエチレンサクシネートとLiClO、LiBF、ポリ−β−プロピオラクトンとLiClOなど、ポリエチレンイミンとNaCFSO、LiBFなど、ポリアルキレンスルフィドとAgNOなどが挙げられる。
【0068】
導電性高分子とドーパントの比率は、いかなるものであってもよいが、ドープ状態の安定性と導電性を両立観点から、好ましくは、質量比で、導電性高分子:ドーパント=1.0:0.0000001〜1.0:10の範囲であり、好ましくは1.0:0.00001〜1.0:1.0の範囲、より好ましくは1.0:0.0001〜1.0:0.5の範囲である。
【0069】
前記導電性高分子とドーパントとの総固形分濃度は、導電性高分子とドーバントを含む分散液の粘度と導電性高分子とドーバントの分散体の凝集防止の観点から、0.05質量%以上1.5質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上1.2質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以上0.7質量%以下であることが更に好ましく、0.3質量%以上0.5質量%以下であることが更に好ましい。
【0070】
前記導電性高分子とドーパントとの総固形分濃度は、導電性高分子とドーバントを含む分散液の重量と、分散液から抽出、乾燥させた固形分の重量の比によって測定した値とする。
【0071】
(3)溶媒
本発明の有機導電性高分子塗布液は、少なくとも、1価アルコール、ケトン、及び水から選択される少なくとも1つを含有する。
1価アルコールは、粘度の観点から炭素数1〜3の1価アルコールが好ましく、炭素数1又は2であるメタノール又はエタノールが更に好ましい。メタノールとエタノールは単独で用いても、併用してもよい。
【0072】
ケトンは、粘度の観点から炭素数3〜9のケトンが好ましく、炭素数3〜5のケトンであるアセトン、メチルエチルケトン又はジエチルケトンが更に好ましい。これらケトンは単独で用いても、併用してもよい。
【0073】
上記1価アルコール、ケトンのなかでも、メタノールを用いることがより好適である。
【0074】
1価アルコール、ケトン及び水は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種を併用する場合の組み合わせは特に制限されないが、水とメタノール、水とメタノールとメチルエチルケトンの組み合わせであることが好適である。
【0075】
1価アルコール、ケトン及び水以外の溶媒を含有してもよいが、1価アルコール、ケトン及び/又は水を主成分溶媒として含むことが好ましく、具体的には有機導電性高分子塗布液中、1価アルコール、ケトン及び/又は水の含有率は、85質量%〜99.9質量%であることが好ましく、90質量%〜99質量%であることがより好ましい。
【0076】
更に、本発明の有機導電性高分子塗布液は、多価アルコールを含有することが導電率の向上の観点から好適である。
多価アルコールは、水/1価アルコール/ケトンへの溶解性、粘度の観点から炭素数2〜12であることが好適であり、炭素数2〜8であることがより好適である。
多価アルコールとしては、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、グリセリン、糖(フルクトースなど)、ハイドロキノン、没食子酸、カテコール、などを挙げることができ、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、又はテトラエチレングリコールを用いることがより好適であり、水への溶解性や粘度の観点から、エチレングリコールを用いることが更に好適である。
【0077】
多価アルコールの含有率は、有機導電性高分子塗布液中、0.5質量%〜20質量%であることが好ましく、1質量%〜10質量%であることがより好ましく、1質量%〜5質量%であることが更に好ましい。
【0078】
導電性高分子と多価アルコールの含有比率は、いかなるものであってもよいが、コストと導電性の両立という観点から、好ましくは、質量比で、導電性高分子:多価アルコール=1:400〜1:0.35の範囲であり、好ましくは1:200〜1:1の範囲、より好ましくは1:50〜1:5の範囲である。
【0079】
1価アルコール、ケトン、水、及び多価アルコール以外に併用し得る溶媒としては、トルエン、ヘキサン、キシレン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、酢酸ブチル等を挙げることができるが、望ましくは、1価アルコール、ケトン、水、及び多価アルコール以外の溶媒を実質的に含有しない場合である。
【0080】
(4)その他添加剤
本発明の有機導電性高分子塗布液には、更に後述の添加剤を添加することも可能である。更に含有し得る添加剤としては、膜強度を高める目的で無機微粒子、ポリマー微粒子、シランカップリング剤、分散粒子の安定な分散や基板への濡れ性を高めるために界面活性剤、特にノニオン系活性剤、屈折率を下げて透明性を高める目的でフッ素系化合物、とくにフッ素基を有するノニオン系界面活性剤などを挙げることができる。
なお、ノニオン系界面活性剤を添加することで、基板への濡れ性が向上するとともに分散液のpH変化が小さいため、PEDOT/PSSの凝集の発生を抑制でき、より平滑な塗布膜を形成できると推測される。さらに、フッ素基を有するノニオン系界面活性剤では、凝集の抑制とともにフッ素基による屈折率の低減効果により、ヘイズが低減し、高い透過率を実現できると推測される。
【0081】
ノニオン系界面活性剤の具体例としては、TRITON X-114 -100、-100CG、-102、-165、N-60、-101、-111、-115、TERGITOL 15-S-7、-12、-15(以上、ダウ・ケミカル社製品名)、フッ素系界面活性剤の具体例としては、ZONYL FS-300、FSO、FSO-100(以上、デュポン社製品名)が挙げられる。
【0082】
また、本発明の有機導電性高分子塗布液には、耐久性を高める目的で添加剤を添加することも可能である。そのような添加剤としては、ヒドロキシ化合物、フェノール化合物、アミン化合物、リン酸化合物、亜リン酸エステル化合物、スルホン酸化合物、リン化合物、ヒドロキシアミン化合物、ヒドロキサム酸化合物などである。これら添加剤は、低分子化合物であってもポリマー化合物であってもよい。ポリマーとしては、たとえば、ポリビニルアルコール、ポリエステルなどが挙げられる。
上記化合物の中でも、リン酸化合物、亜リン酸エステル化合物、ヒドロキシアミン化合物、ヒドロキサム酸化合物であることが好適であり、ヒドロキサム酸誘導体又はリン酸誘導体であることがより好適である。
【0083】
ヒドロキサム酸誘導体等の上記添加剤と導電性高分子の比率は、いかなるものであってもよいが、高い導電性と高い耐久性の両立の観点から、好ましくは、質量比で、前記添加剤:導電性高分子=0.00001:1.0〜1000:1の範囲であり、好ましくは0.0001:1.0〜500:1の範囲、より好ましくは0.0005:1.0〜100:1の範囲である。
【0084】
前記添加剤の添加方法は、いかなるものであってもよい。好ましくは、導電性高分子を含有する分散液と、前記添加剤を溶解した溶液とを混ぜ合わせる方法である。
【0085】
(5)有機導電性高分子塗布液の調製方法
前記導電性高分子を前記溶媒に分散させる方法としては、公知の方法を適用することができる。例えば、ジョークラッシャ法、超遠心粉砕法、カッティングミル法、自動乳鉢法、ディスクミル法、ボールミル法、超音波分散法などの分散方法を挙げることができる。
【0086】
(6)有機導電性高分子塗布液の物性
有機導電性高分子塗布液中で、前記ドーパントは前記導電性高分子にドープして複合粒子を形成し、この複合粒子が分散粒子の状態で存在する。例えば、導電性高分子がPEDOTで、ドーパントがPSSの場合には、PSSの高分子鎖にPEDOTが絡み合った分散粒子として存在する。
この導電性高分子とドーパントとによる分散粒子径の平均値は、50nm以下である。製造可能であれば、分散粒子径の下限値に制限は無い。好適には、前記分散粒子径の平均値は30nm以下であり、10nm以上30nm以下であることがより好ましく、20nm以上30nm以下であることが更に好ましい。
【0087】
分散粒子径は、遠心沈降法によって測定され、固形分濃度0.005質量%〜1.5質量%の分散液を5回〜10回測定し、体積累計50%粒子径を代表値とする。
【0088】
また、本発明の有機導電性高分子塗布液を塗布し、乾燥して形成された有機導電性高分子膜中では、上記分散粒子によって海島の状態が形成されている。よって、この海島の状態を原子間力顕微鏡(AFM)等で観察することによって、塗布液中に含まれていた分散粒径を概算することが可能である。
【0089】
本発明の有機導電性高分子塗布液は、前記導電性高分子とドーパントとによる分散粒子径の平均値が50nm以下であって、そのときの該塗布液の粘度は、6.0mPa・s以下である。この分散粒子径と塗布液の粘度との兼ね合いにより、得られる導電性膜の面内の表面抵抗のばらつきが著しく低減される。
【0090】
有機導電性高分子塗布液の粘度は、好適には1.0mPa・s以上6.0mPa・s以下であり、より好適には2.0mPa・s以上6.0mPa・s以下である。
粘度は、25℃にて、振動式粘度計によって測定する。
【0091】
有機導電性高分子塗布液は、分散粒子が安定するようpHを調製することが望ましい。例えば、導電性高分子がPEDOTで、ドーパントがPSSの場合には、pHは1.0以上3.0以下とすることが望ましく、1.5以上3.0以下とすることがより望ましく、2.0以上2.5以下とすることが更に望ましい。
【0092】
<有機導電性高分子膜>
上記有機導電性高分子塗布液を塗布して、有機導電性高分子膜を形成する。塗布方法としては、例えば、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等の公知の塗布方法を採用することができる。
【0093】
有機導電性高分子膜を2層以上形成する場合、1層毎に塗布し乾燥してもよいし、2層以上を同時重層塗布で形成してもよい。同時重層塗布は、製造コストの低減、製造時間の短縮化の観点から好適である。ここで、「同時重層塗布」とは、2つの塗布液が接した状態で塗布することを意味する。
前記同時重層塗布は、カーテンコーター、スライドコーター、エクストロージョンコーター等によって行うことができ、中でも、カーテンコーターが好ましい。
【0094】
塗布速度は、バーコーターの場合には、1m/min以上30m/min以下であることが好ましく、3m/min以上20m/min以下であることがより好ましく、5m/min以上20m/min以下であることが更に好ましい。
このように、本発明の有機導電性高分子塗布液を用いると、高速塗布が可能となるという利点も有する。
【0095】
有機導電性高分子膜の厚さは、1nm〜2μmの範囲であることが好ましく、10nm〜1μmの範囲であることがより好ましい。有機導電性高分子膜の膜厚がこの範囲内であれば、充分な導電性と透明性とを達成することができる。
【0096】
なお、上記有機導電性高分子膜の厚さは、断面を透過型電子顕微鏡(JEM2010(日本電子(株))製)を用いて倍率200000倍で観察して測定した値とする。
【0097】
有機導電性高分子膜の25℃50%RHでの表面抵抗は、100Ω/□以上3000Ω/□以下の範囲であることが導電性膜としての用途から望ましく、500Ω/□以上3000Ω/□以下の範囲であることがより好ましい。
【0098】
有機導電性高分子膜は、下記式で表される25℃50%RHでの表面抵抗の面内ばらつきCV値が、0%以上5.0%未満であることが好ましく、0%以上3.0%未満であることがより好ましい。なお、上記範囲のCV値は、本発明の有機導電性高分子塗布液を用いることで実現される。
CV値=(表面抵抗の標準偏差)/(表面抵抗の平均値)×100
【0099】
ここで、表面抵抗は以下のようにして測定される。
例えば、得られた有機導電性高分子膜を80mm×120mmの大きさに切り出し、表面抵抗測定器ロレスタ−GP Model.MCP−T610(三菱化学(株)製品名)を用い、測定プローブをASPとして、X方向に16mm、Y方向に15mmピッチの間隔で、測定箇所28点の表面抵抗を測定する。
測定した表面抵抗値から、平均値と標準偏差を求める。
【0100】
有機導電性高分子膜には、更に、ヒドロキシ化合物、フェノール化合物、アミン化合物、リン酸化合物、亜リン酸エステル化合物、スルホン酸化合物、リン化合物、ヒドロキシアミン化合物、又はヒドロキサム酸化合物が付与されることが、耐久性を高める観点から好適である。これらは、低分子化合物であってもポリマー化合物であってもよい。ポリマーとしては、例えばポリビニルアルコール、ポリエステルなどが挙げられる。
【0101】
なお、ヒドロキシ化合物等の上記化合物は、前述の通り、有機導電性高分子塗布液中に添加してもよく、あるいは有機導電性高分子膜を形成し、得られた有機導電性高分子膜に上記化合物を後から付与してもよい。
【0102】
ヒドロキシ化合物等の上記化合物の中でも、リン酸化合物、亜リン酸エステル化合物、ヒドロキシアミン化合物、ヒドロキサム酸化合物であることが好適であり、ヒドロキサム酸誘導体又はリン酸誘導体であることがより好適である。
ヒドロキシ化合物等の上記化合物は、1種類単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0103】
有機導電性高分子膜は、更に誘電体層を積層することが、高温高湿環境下での表面抵抗上昇の抑制や耐擦性の向上の観点から好適である。本発明において誘電体層とは導電性高分子塗布層より高い表面抵抗を有する導電層、もしくは絶縁体層をいう。
【0104】
誘電体層はバインダを含有し、該バインダとしては、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリスチレンスルホン酸(塩)、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ系硬化樹脂、ポリイミド、ポリシロキサン、ポリオレフィンなどの公知の樹脂を挙げることができ、好ましくは、ポリビニルアルコール、エポキシ系硬化樹脂であり、多官能エポキシ系硬化樹脂がより好ましい。
【0105】
エポキシ系硬化樹脂としては、デナコールEX-313、EX−314、EX−321、EX−421、EX−611、EX−614、EX−614B、EX−811、EX−821、EX−830、EX−832、EX−841、EX−851、EX−861、EX−911、EX−920、EX−931、EX−941(商品名:ナガセケムテックス(株)製)などを挙げることができる。
【0106】
誘電体層に含有するバインダは、1種類単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0107】
また、誘電体層に用いる上記バインダがアイオノマーであることも、導電性高分子へのドーパントとして機能し導電率が高くなる、あるいはアイオノマーの架橋に伴う硬膜により耐擦性が高くなるなどの観点から好適である。
【0108】
溶媒としては、水、アルコール、ケトン、を用いることができ、水を用いることが環境負荷の低減の観点から好適である。
【0109】
その他、界面活性剤、増粘剤、微粒子、帯電防止剤などの添加剤を含んでもよく、これら添加剤を含有することが好適である。
【0110】
誘電体層に適用し得る界面活性剤としては、公知のアニオン系、ノニオン系、カチオン系のものが挙げられる。界面活性剤については、例えば、「界面活性剤便覧」(西一郎、今井怡知一郎、笠井正蔵編、産業図書(株)、1960年発行)に記載されている。
【0111】
界面活性剤の添加量としては0.1mg/m以上30mg/m以下であることが好ましく、より好ましくは0.2mg/m以上10mg/m以下の範囲である。界面活性剤の添加量が上記範囲内の場合、ハジキの発生が抑えられ、且つ面状が改善する。
【0112】
誘電体層には、滑り性の向上や屈折率調整(透過率、透明性の向上)の観点から、微粒子を添加することが好ましく、このような微粒子としては、有機又は無機微粒子のいずれも使用することができる。
例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリコーン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のポリマー微粒子や、シリカ、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等の無機微粒子を用いることができる。
これらの中で、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリカは、すべり性改良効果やコストの観点から好ましい。
【0113】
無機微粒子としては、例えば、スノーテックスCL、XL、XS、S(商品名:日産化学(株)製)、アエロジルOX−50、アエロジルEG−50、アエロジルOX−90、アエロジル130、アエロジル150(商品名:日本アエロジル(株)製)等を挙げることができる。
【0114】
微粒子の平均粒径は、0.1μm以上12μm以下が好ましく、より好ましくは0.2μm以上9μm以下である。微粒子の平均粒径が上記範囲内にあると、すべり性改良効果が充分に発揮され、表示装置の表示性にも優れる。
なお、本発明でいう微粒子の平均粒径とは、微粒子を走査型電子顕微鏡で撮影した時の微粒子と同面積の円の直径を粒径としたとき、任意の50個の微粒子について求めた粒径の平均値をいう。
【0115】
また、前記微粒子の添加量は平均粒径によっても異なるが、0.1mg/m以上30mg/m以下であることが好ましく、より好ましくは0.5mg/m以上20mg/m以下である。微粒子の添加量が上記範囲内にあると、すべり性改良効果が充分に発揮され、透明性の低下が抑えられ表示装置の表示性にも優れる。
【0116】
誘電体層は帯電防止剤を含有してもよく、このような帯電防止剤としては、酸化錫、アンチモンドープされた酸化錫、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、銅、銀、金、白金、銀合金等を挙げることができ、透明性、耐久性の観点からアンチモンドープされた酸化錫が好適である。
【0117】
誘電体層を形成するための塗布液の粘度の調整のために、増粘剤を添加することも好適である。増粘剤として、公知の水溶性ポリマー又はポリマーの水分散物を適用することができ、天然物でも合成ポリマーのいずれも良好に利用できる。
水溶性ポリマーは、天然物としてはデンプン類(コーンスターチ、デンプンなど)、海藻(寒天、アルギン酸ソーダなど)、植物性粘着物(アラビアゴムなど)、動物性タンパク(にかわ、カゼイン、ゼラチン、卵白など)、発酵粘着物(プルラン、デキストリンなど)などであり、半合成ポリマーであるデンプン質(可溶性デンプン、カルボキシルデンプン、デキストランなど)、セルロース類(ビスコース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)も挙げられ、更に合成ポリマー(ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリエチレンイミン、ポリスチレンスルホン酸又はその共重合体、ポリビニルスルファン酸又はその共重合体、ポリアクリル酸又はその共重合体、アクリル酸又はその共重合体等、マレイン酸共重合体、マレイン酸モノエステル共重合体、アクリロイルメチルプロパンスルホン酸又はその共重合体、など)などが含まれる。
また、ポリマーの水分散物は、アクリル系ポリマーの水分散液、合成ゴム系(例えばスチレン−ブタジエン共重合体)ポリマーの水分散液、ポリエーテル系ポリマーの水分散液、ポリウレタン系ポリマーの水分散液などが含まれる。
【0118】
誘電体層の平均膜厚は、0.05nm〜200nmであることが好ましく、2nm〜50nmであることがより好ましく、2nm〜20nmであることが更に好ましい。
【0119】
<導電体>
本発明の導電体は、支持体上に前記有機導電性高分子膜を備える。更に、支持体と有機導電性高分子膜との密着性を向上させる目的として接着層を形成してもよい。
【0120】
(支持体)
支持体としては、安定な板状物であって、必要な可撓性、強度、耐久性等を満たせばいずれのものも使用できる。支持体は可撓性を示すことが望ましい。また、ここで得られた導電性材料を画像表示素子、太陽電池等に用いる場合には、高い透明性を要求されるため、表面平滑性の透明基材を用いることが好ましい。
【0121】
支持体の材質としては、ガラス、透明セラミックス、金属、プラスチックフィルム等が挙げられる。ガラス、透明セラミックスは、金属、プラスチックフィルムに比べ、柔軟性に欠ける。また、プラスチックフィルムは金属より安価であり、且つ柔軟性を有する。
そこで本発明に係る支持体としては、プラスチックフィルムが好ましく、たとえば二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類;ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリアリレート、シクロオレフィンポリマー等の樹脂を用いたフィルムなどが挙げられる。
【0122】
特に、支持体の材質としては、ポリエステル系樹脂(以下、適宜、「ポリエステル」と称する)が好ましい。ポリエステルとしては、芳香族二塩基酸又はそのエステル形成性誘導体とジオール又はそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルが好ましい。
【0123】
支持体に用い得るポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−フタレンジカルボキシレート等が挙げられる。このうち、入手の容易性、経済性及び効果の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0124】
また、フィルムの素材として、本発明の効果を損なわない限りにおいて、これらの共重合体の混合物、又はこれら重合体と小割合のその他の樹脂との混合物なども用いることができる。
【0125】
更に、このポリエステルフィルムの中には、滑り性を向上させるために少量の無機又は有機の粒子、たとえば、酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカ、硫酸バリウム等の如き無機フィラー、アクリル、シリコーン、ベンゾグアナミン、テフロン(登録商標)、エポキシ等の如き有機フィラー、ポリエチレングリコール(PEG)、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ等の接着性向上剤や帯電防止剤を含有させることができる。
【0126】
本発明に用いるポリエステルフィルムは、前記の如きポリエステル樹脂を溶融押出しでフィルム状にし、縦及び横二軸延伸による配向結晶化及び熱処理による結晶化させることにより形成し得る。延伸倍率には特に制限はないが、1.5〜7倍が好ましく、より好ましくは2〜5倍程度である。特に縦横方向にそれぞれ2〜5倍程度延伸した2軸延伸品が好ましい。延伸倍率が上記範囲内であると、充分な機械的強度、及び均一な厚みが得られる。
これらフィルムの製造方法及び条件は、公知の方法及び条件を適宜選択して用いることができる。
【0127】
支持体の厚みは、支持体の取り扱い性や、表示装置の小型化や軽量化の観点から、更にはコストの観点から、30μm以上500μm以下であることが好ましく、100μm以上300μm以下がより好ましい。
【0128】
支持体は、後述の接着層との密着性を高めるため、コロナ放電処理、オゾン処理などを施すことが好ましい。
【0129】
(接着層)
接着層はバインダを含有し、更には架橋剤を含有させることが好ましい。接着層は、必要に応じて微粒子、界面活性剤を含有してもよい。
【0130】
−バインダ−
接着層のバインダは、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ゴム系樹脂等のポリマーを好ましく用いることができる。
【0131】
ポリエステル樹脂とは、主鎖にエステル結合を有するポリマーの総称であり、通常、ポリカルボン酸とポリオールとの反応で得られる。ポリカルボン酸としては、例えばフマル酸、イタコン酸、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等がある。ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。
ポリエステル樹脂およびその原料については、例えば、「ポリエステル樹脂ハンドブック」(滝山栄一郎著、日刊工業新聞社、昭和63年発行)において記載されている。
【0132】
アクリル樹脂とは、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体を成分とするポリマーである。具体的例示としては、アクリル酸、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリルアミド、アクリロニトリル、ヒドロキシルアクリレート等を主成分として、これらと共重合可能なモノマー(例えば、スチレン、ジビニルベンゼン等)を共重合したポリマー等が挙げられる。
【0133】
ポリウレタン樹脂とは、主鎖にウレタン結合を有するポリマーの総称であり、通常ポリイソシアネートとポリオールの反応によって得られる。ポリイソシアネートとしては、TDI、MDI、NDI、TODI、HDI、IPDI等があり、ポリオールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ヘキサントリオール等がある。また、本発明のイソシアネートとしては、ポリイソシアネートとポリオールの反応によって得られたポリウレタンポリマーに鎖延長処理をして分子量を増大させたポリマーも使用することができる。
以上に述べたポリイソシアネート、ポリオール及び、鎖延長処理については、例えば「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(岩田敬治編、日刊工業新聞社、昭和62年発行)において記載されている。
【0134】
ゴム系樹脂とは、合成ゴムのうちジエン系合成ゴムをいう。具体例としてはポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−ジビニルベンゼン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレン等がある。
ゴム系樹脂については、例えば、「合成ゴムハンドブック」(神原周ら編集、(株)朝倉書店、昭和42年発行)において記載されている。
【0135】
バインダは、有機溶剤に溶解して用いてもよいし、水分散物を用いてもよい。環境負荷が小さいことから、水分散物を用いて水系塗布することが好ましい。水分散物としては市販ポリマーを適用できる。
【0136】
例えば、ポリエステル水分散物としては、ファインテックスEs650、Es2200(商品名:大日本インキ化学工業(株)製ポリエステル)、バイロナールMD1400、MD1480(商品名:東洋紡(株)製ポリエステル)、プラスコートZ687(商品名:互応化学工業(株)製ポリエステル等を挙げることができる。
【0137】
アクリル樹脂の水分散物としては、ジュリマーET325、ET410、SEK301(商品名:日本純薬(株)製アクリル)、ボンコートAN117、AN226(商品名:大日本インキ化学工業(株)製アクリル)、EM48D(商品名:ダイセル化学工業(株)製アクリル)等を挙げることができる。
【0138】
ポリウレタン樹脂の水分散物としては、スーパーフレックス830、460、870、420、420NS(商品名:第一工業製薬(株)製ポリウレタン)、ボンディック1370NS、1320NS(商品名:大日本インキ化学工業(株)製ポリウレタン)、オレスターUD−350、UD−800N(商品名:三井化学(株)製ポリウレタン)等を挙げることができる。
【0139】
ゴム系樹脂の水分散物としては、ラックスターDS616、DS807(商品名:大日本インキ化学工業(株)製スチレン−ブタジエンゴム)、ニッポールLX110、LX206、LX426、LX433(商品名:日本ゼオン(株)製スチレン−ブタジエンゴム)、ニッポールLX513、LX1551、LX550、LX1571(商品名:日本ゼオン(株)製アクリロニトリル−ブタジエンゴム)等を挙げることができる。
【0140】
ラテックスの分散体粒子の粒径は、5μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、0.2μm以下が更に好ましい。粒子径が上記範囲内にあると、塗布工程での粒子の凝集が抑えられ、フィルムの透明性、光沢などに優れる。
【0141】
バインダとして用いるポリマーは、1種類を単独で用いてもよいし、必要に応じて2種類以上を混合して使用してもよい。
バインダとして用いるポリマーの分子量は、特に制限されないが、層の強度及び塗布面状の観点から、重量平均分子量で3000〜1000000程度のものを用いることが好ましい。
【0142】
−架橋剤−
接着層は架橋剤を含有することが、膜強度を高める観点から好ましい。
接着層に用いる架橋剤としては、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ系化合物などを挙げることができ、膜強度の観点から、カルボジイミド化合物又はオキサゾリン化合物であることが好ましい。カルボジイミド化合物のなかでも、分子内にカルボジイミド構造を複数個有する化合物(以下「ポリカルボジイミドと称する場合がある)であることが望ましい。
【0143】
ポリカルボジイミドは、通常、有機ジイソシアネートの縮合反応により合成されるが、この合成に用いられる有機ジイソシアネートの有機基は特に限定されず、芳香族系、脂肪族系のいずれか、あるいはそれらの混合系も使用可能である。ただし、反応性の観点から脂肪族系が特に好ましい。合成原料としては、有機イソシアネート、有機ジイソシアネート、有機トリイソシアネート等が使用される。
【0144】
有機イソシアネートの例としては、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、及び、それらの混合物が使用可能である。
具体的には、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート等が用いられ、また、有機モノイソシアネートとしては、イソホロンイソシアネート、フェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等が使用される。
また、本発明に用いうるカルボジイミド化合物は、例えば、カルボジライトV−02−L2(商品名:日清紡(株)製)等の市販品としても入手可能である。
【0145】
本発明のカルボジイミド化合物は、バインダに対して15〜100質量%の範囲で添加することが好ましく、より好ましくは20〜75質量%の範囲で添加することである。カルボジイミド化合物を前記範囲で添加することで、透明フィルムとの接着性を向上させることができる。また、接着層が微粒子を含んでいる場合には、微粒子剥落を防ぐことができる。更に、生産コストを抑える観点からも上記範囲内とすることが望ましい。
【0146】
本発明で用いられるオキサゾリン化合物は、オキサゾリン基を有する化合物であり、オキサゾリン基を有するモノマーとしては2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。また、本発明で用いるオキサゾリン化合物は、例えば、エポクロスK2020E(商品名:(株)日本触媒製)等の市販品としても入手可能である。
【0147】
本発明において、オキサゾリン化合物はバインダに対して10〜65質量%の範囲で添加することが好ましく、より好ましくは、12〜63質量%の範囲で添加することである。
オキサゾリン化合物を前記範囲で添加することで、耐水化が良好となり、高熱下、熱水処理下などの悪条件の下であっても透明フィルムとの接着性を失うことなく高い接着性が保持される。また、液凝集の発生が抑えられる。
【0148】
−その他の添加剤−
また、接着層には、用途に応じて、上記の他に微粒子や界面活性剤等の各種添加剤を用いてもよい。
本発明の接着層に用いることができる微粒子としては、有機又は無機微粒子のいずれも使用することができる。微粒子は、誘電体層で説明したものを適用することができる。
【0149】
接着層に用いることができる界面活性剤としては、誘電体層で説明した界面活性剤を挙げることができる。
【0150】
-物性値等−
接着層の厚みは、透明フィルムに対する易接着性を発現させるために、10nm以上500nm以下とすることが好ましい。より好ましくは、接着層の厚みを30nm以上150nm以下とすることである。接着層の膜厚が上記範囲内にあると、支持体との接着性が充分発揮され、且つ面状の悪化が抑えられる。
【0151】
接着層の塗布量は100mg/m〜250mg/mの範囲であることが好ましく、より好ましくは120mg/m〜230mg/mの範囲である。接着層の塗布量を前記範囲にすることで、塗布ムラなどが生じることなく、透明フィルムとの接着性を一定に保持することができる。
【0152】
−製造方法−
接着層の形成方法は特に制限はないが、塗布によって設けることが好ましい。塗布方法としては、バーコーター塗布、スライドコーター塗布等の公知の方法を用いることができる。
接着層を塗布によって形成する際には溶媒(塗布溶媒)を用いることができる。塗布溶媒としては、水、トルエン、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン等、及びこれらの混合系等の水系、有機溶剤系の塗布溶剤を用いることができる。これらのうちで水を塗布溶媒として用いる方法はコスト、製造の簡便さを考えると好ましい。
【0153】
<抵抗膜式タッチパネル>
本発明の抵抗膜式タッチパネルは、支持体としての透明フィルム上に導電膜を備える第一の導電体と、支持体としての基体上に導電膜を備える第二の導電体とが、対向して配置される。前記第一の導電体及び第二の導電体の少なくとも一方の導電膜が、上述の有機導電性高分子膜である。好適には、少なくとも第一の導電体の導電膜が本発明の有機導電性高分子膜の場合である。
【0154】
図1は、本発明の抵抗膜式タッチパネルの一例を示す断面概略説明図である。
抵抗膜式タッチパネルにおいては、指先等による入力が行われるタッチ面となる前記第一の導電体と、前記第二の導電体とが、絶縁性スペーサー50を介して対向配置されている。第一の導電体は、透明フィルム1上に透明導電膜2を有する。第二の導電体は、基体11上に導電膜10を有する。透明導電膜2及び導電膜10の少なくとも一方が、前記有機導電性高分子膜である。導電膜10上にはドットスペーサー40が形成されている。
【0155】
前記第一の導電体におけるタッチ面が外部から押圧されると、第一の導電体が変形し、その押圧された部分の透明導電膜2が導電膜10に部分的に接触する。その結果、電気が導通し、信号(電位)が出力可能となり、前記入力装置が作動、駆動する。
【0156】
(支持体)
抵抗膜式タッチパネルにおける支持体は、上述の導電体で説明した支持体を用いることができる。ここで、前記支持体のなかでも第一の導電体における支持体は透明フィルムである。それ以外は、前記支持体を適用することができ、好適な範囲についても同様である。
【0157】
第一の導電体の透明フィルムとしては、プラスチックフィルム等が挙げられる。例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類;ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリアリレート、シクロオレフィンポリマー等の樹脂を用いたフィルムなどが挙げられる。
【0158】
特に、透明フィルムとしては、ポリエステル系樹脂(以下、適宜、「ポリエステル」と称する)が好ましい。ポリエステルとしては、芳香族二塩基酸又はそのエステル形成性誘導体とジオール又はそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルが好ましい。
【0159】
透明フィルムに用い得るポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−フタレンジカルボキシレート等が挙げられる。このうち、入手の容易性、経済性及び効果の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0160】
(接着層)
抵抗膜式タッチパネルでは、支持体と有機導電性高分子膜との密着性を向上させる目的として接着層を形成してもよい。この接着層は、前述の導電体で説明した接着層を適用することができ、好適な範囲についても同様である。
【0161】
(物性値等)
本発明の抵抗膜式タッチパネルは、表面抵抗の面内ばらつきが抑えられた本発明の有機導電性高分子膜を用いるため、位置変量に対する内部抵抗値の直線性(リニアリティ)に優れる。リニアリティは、下記の方法により求められる。
【0162】
透明導電性基材上を、ペン先0.8Rのポリアセタールペンでペン荷重300gにより長さ20mmの直線を210mm/minの速度で、往復筆記(描画)する。1往復を描画1回として、1000回ごとに抵抗値の直線性(リニアリティ)を測定するリニアリティは、次式で計算される。
【0163】
リニアリティ =(ΔE/E)×100%
【0164】
ここで、Eは、測定端子Pが描画する直線の両端をそれぞれX1およびX2としたとき、測定端子PがX1上にある時の電圧EXと測定端子PがX2上にある時の電圧EXを結んだ直線により計算される、X1とX2の間の任意の点Xにおける計算上の電圧である。ΔEは、点Xにおける計算上のEと実際に測定されたEXの差である。X1とX2を結ぶ直線上での最大のΔEを用いて、上記の計算式によりリニアリティの値を求める。
【0165】
本発明の抵抗膜式タッチパネルは、リニアリティを−3%以上+3%以下とすることができ、+1.5%以上−1.5%以下とすることも可能である。このような優れたリニアリティが得られるのは、表面抵抗の面内ばらつきが著しく抑えられているためである。
【0166】
<用途>
本発明の有機導電性高分子塗布液は、表面抵抗の面内ばらつきが抑えられた有機導電性高分子膜、及び導電体が得られる。この導電性膜及び導電体は、電子材料の配線や電極(基板電極など)として好適に用いることができる。特に塗布による導電性膜の形成が可能であることから大面積の電極材料を作製しやすく、基板電極への応用に適している。
このような導電性膜は、フレキシブルエレクトロルミネッセンス装置(OLED)、タッチスクリーン、タッチパネル、有機TFT、アクチュエーター、センサー、電子ペーパー、フレキシブル調光材料、太陽電池などに好適に使用することができる。特に、表面抵抗の面内ばらつきが小さいため、抵抗膜式タッチパネルに好適に使用することができる。
得られる抵抗膜式タッチパネルは、位置変量に対する内部抵抗値のリニアリティに優れる。
【実施例】
【0167】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の主旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って本発明の範囲は以下の実施例に制限されるものではない。
【0168】
<表面抵抗の測定方法>
成膜した導電性高分子膜を、80mm×120mmの大きさに切り出した。
表面抵抗測定器ロレスタ−GP Model.MCP−T610(三菱化学(株)製品名)を用い、測定プローブをASPとして、x方向に16mm、y方向に15mmピッチの間隔で、測定箇所28点の表面抵抗を25℃50%RH雰囲気で測定した。
測定した表面抵抗値から、平均値と標準偏差を求め、下記式から表面抵抗の面内のばらつき値(CV値)を算出した。
【0169】
CV値=(標準偏差)/(平均値)×100
【0170】
CV値が0〜3.0%未満を優、3.0以上〜5.0未満を良、5.0%以上を不可とした。
【0171】
<導電性高分子膜の目視評価>
導電性高分子膜を目視にて、評価を行い、膜面にスジ状の欠陥が見られた場合には×、無い場合には○、特に透明性が高い場合には◎と判断した。
【0172】
<湿熱耐久性評価>
60℃、90%RHの環境で、500時間保管した導電性高分子を塗布したサンプルの表面抵抗値を測定し、初期値と保管後の値を比較した。
【0173】
<接着層付きPETフィルムの作製>
(支持体の作製)
Geを触媒として重縮合したポリエチレンテレフタレート(以下PETと記載)樹脂を含水率50ppm以下に乾燥させ、ヒーター温度を280〜300℃に設定し、押し出し機内で溶融させた。溶融させたPET樹脂をダイ部より静電印加されたチルロール上に吐出させ、非結晶ベースを得た。得られた非結晶ベースをベース進行方向に3.3倍に延伸した後、幅方向に対して3.8倍に延伸し、厚さ188μmの支持体を得た。
【0174】
(接着層の形成)
上記により形成した支持体を、両面に対して730J/mの条件でコロナ放電処理を行った後、この両面に塗布量を4.4cm/mとして下記記載の接着層用塗布液Aをバーコート法により塗布した。そして、これを160℃で1分乾燥して接着層を形成することで、支持体の両面に接着層が塗布された積層シート(導電体)を得た。
【0175】
−接着層用塗布液Aの組成−
・ウレタン樹脂バインダ 30.7質量部
(三井化学(株)製、オレスターUD350、固形分38質量%、ガラス転移温度33℃)
・アクリル樹脂バインダ 4.2質量部
(ダイセルファインケム(株)製AS563、固形分27.5質量%、ガラス転移温度47℃)
・架橋剤 5.8質量部
(日清紡(株)製、カルボジライトV-02-L2、固形分40質量%)
・添加剤(フィラー) 1.9質量部
(日本アエロジル(株)製、アエロジルOX-50、固形分10質量%)
・添加剤(フィラー) 0.8質量部
(日産化学(株)製,スノーテックスXL、固形分40質量%)
・添加剤(すべり剤) 1.9質量部
(中京油脂(株)製、セロゾール524、固形分30質量%)
・界面活性剤1 15.5質量部
(日本油脂(株)製、ラピゾールB−90、アニオン性1質量%)
・界面活性剤2 19.4質量部
(三洋化成工業(株)製、ナロアクティーCL−95、ノニオン性1質量%)
・純水 合計が1000質量部になるように添加
【0176】
[実施例1]
PEDOT/PSS水分散液CELVIOS PH500(エイチ・シー・スタルク(株)製品名、分散平均粒径30nm、固形分濃度1.2質量%)40質量部に、メタノール54質量部とエチレングリコール6質量部を添加し、ミックスローターMR-3(アズワン(株)製品名)で30分間撹拌後、孔径10μmのメンブレンフィルターで濾過することで、導電性高分子/ドーパントを含む有機導電性高分子塗布液1を作製した。
【0177】
塗布液1の粘度は、5.8mPa・s、固形分濃度は0.48質量%であった。
【0178】
前記接着層を積層したPETフィルムに、前記有機導電性高分子塗布液1をワイヤーバー(#9)で塗布し、表面温度100℃のホットプレート上で10分乾燥し、導電性高分子膜を作製した。
【0179】
次に、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸とN−メチル−2−ジメチルアミノアセトヒドロキサム酸を各0.2質量部と、イソプロピルアルコール9質量部と、エチレングリコール1質量部とを混合した塗布液を作製した。
この塗布液を、上記導電性高分子膜上に、ワイヤーバー(#3)で塗布し、表面温度100℃のホットプレート上で10分乾燥後、庫内温度120℃のオーブンでアニール処理することで、積層構造の導電性高分子膜1を得た。
【0180】
導電性高分子膜1の表面抵抗は、520Ω/□であった。CV値は、2.10%となり、優と判断した。
また、湿熱耐久性については、表面抵抗変化率は118%であった。
【0181】
[実施例2]
実施例1の有機導電性高分子塗布液1と同様にして、但し、PEDOT/PSS水分散液CELVIOS PH500(エイチ・シー・スタルク(株)製品名、分散平均粒径30nm、固形分濃度1.2質量%)30質量部に、メタノール42質量部と純水21質量部とエチレングリコール6質量部を添加して有機導電性高分子塗布液2を作製した。
塗布液2の粘度は、5.2mPa・s、固形分濃度は0.36質量%であった。
【0182】
有機導電性高分子塗布液2をワイヤーバー(#9)で塗布し、表面温度100℃のホットプレート上で10分乾燥し、導電性高分子膜2を作製した。
【0183】
導電性高分子膜2の表面抵抗は、589Ω/□であった。CV値は、3.82%となり、良と判断した。
また、湿熱耐久性については、表面抵抗変化率は117%であった。
【0184】
[実施例3]
実施例1の有機導電性高分子塗布液1と同様にして、但し、PEDOT/PSS水分散液CELVIOS PH500(エイチ・シー・スタルク(株)製品名、分散平均粒径30nm、固形分濃度1.2質量%)30質量部に、メタノール56質量部とメチルエチルケトン21質量部とエチレングリコール6質量部を添加して有機導電性高分子塗布液3を作製した。
塗布液3の粘度は、4.1mPa・s、固形分濃度は0.36質量%であった。
【0185】
有機導電性高分子塗布液3をワイヤーバー(#9)で塗布し、表面温度100℃のホットプレート上で10分乾燥し、導電性高分子膜3を作製した。
【0186】
導電性高分子膜3の表面抵抗は、659Ω/□であった。CV値は、3.49%となり、良と判断した。
また、湿熱耐久性については、表面抵抗変化率は118%であった。
【0187】
[実施例4]
実施例1の有機導電性高分子塗布液1と同様にして、但し、PEDOT/PSS水分散液CELVIOS PH500(エイチ・シー・スタルク(株)製品名、分散平均粒径30nm、固形分濃度1.2質量%)40質量部に、メタノール58.5質量部とジエチレングリコール1.5質量部を添加して有機導電性高分子塗布液4を作製した。
塗布液4の粘度は、5.3mPa・s、固形分濃度は0.48質量%であった。
【0188】
有機導電性高分子塗布液4をワイヤーバー(#9)で塗布し、表面温度100℃のホットプレート上で10分乾燥し、導電性高分子膜4を作製した。
【0189】
次に、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸とN−メチル−2−ジメチルアミノアセトヒドロキサム酸を各0.2質量部と、イソプロピルアルコール9質量部とエチレングリコール1質量部を混合した塗布液を作製した。
この塗布液を、導電性高分子膜4上に、ワイヤーバー(#3)で塗布し、表面温度100℃のホットプレート上で10分乾燥後、庫内温度120℃のオーブンでアニール処理することで、積層構造の導電性高分子膜4を得た。
【0190】
導電性高分子膜4の表面抵抗は、458Ω/□であった。CV値は、3.18%となり、良と判断した。
また、湿熱耐久性については、表面抵抗変化率は114%であった。
【0191】
[実施例5]
実施例1の有機導電性高分子塗布液1と同様にして、但し、PEDOT/PSS水分散液CELVIOS PH500(エイチ・シー・スタルク(株)製品名、分散平均粒径30nm、固形分濃度1.2質量%)25質量部に、エタノール67.5質量部とエチレングリコール7.5質量部を添加して有機導電性高分子塗布液5を作製した。
塗布液3の粘度は、4.4mPa・s、固形分濃度は0.30質量%であった。
【0192】
有機導電性高分子塗布液5をワイヤーバー(#18)で塗布し、表面温度100℃のホットプレート上で10分乾燥し、導電性高分子膜5を作製した。
【0193】
次に、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸とN−メチル−2−ジメチルアミノアセトヒドロキサム酸を各0.2質量部と、イソプロピルアルコール9質量部とエチレングリコール1質量部を混合した塗布液を作製した。
この塗布液を、導電性高分子膜5上に、ワイヤーバー(#3)で塗布し、表面温度100℃のホットプレート上で10分乾燥後、庫内温度120℃のオーブンでアニール処理することで、積層構造の導電性高分子膜5を得た
【0194】
導電性高分子膜5の表面抵抗は、496Ω/□であった。CV値は、2.71%となり、優と判断した。
また、湿熱耐久性については、表面抵抗変化率は116%であった。
【0195】
[実施例6]
PVA217((株)クラレ製品名)0.5質量部に、純水71.6質量部とメタノール28.9質量部を含む誘電体層塗布液6を、実施例1で作製した積層構造の導電性高分子膜1上にワイヤーバー(#3)を用いて塗布し、表面温度100℃のホットプレート上で10分乾燥して、誘電体層を積層した導電性高分子膜6を作製した。
【0196】
導電性高分子膜6の表面抵抗は、545Ω/□であった。
導電性高分子膜6のCV値を求めたところ、2.73%となり、優と判断した。
また、湿熱耐久性については、表面抵抗変化率は113%と優れた耐久性を示した。
【0197】
[実施例7]
−誘電体層塗布液7の組成−
・ポリオレフィンアイオノマー 23質量部
(三井化学(株)製、ケミパールS-120、固形分27質量%)
・エポキシ化合物 220質量部
(ナガセケムテックス(株)製、デナコールEX-614B)
・添加剤(フィラー) 15質量部
(日産化学(株)製,スノーテックスCL、固形分20質量%)
・増粘剤 11質量部
(ポリスチレンスルホン酸塩、固形分3質量%)
・界面活性剤1 8質量部
(三洋化成工業(株)製、サンテッドBL、固形分10質量%)
・界面活性剤2 19質量部
(ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル・グリシドール付加物、固形分濃度4質量%)
・純水 合計が1000質量部になるように添加
【0198】
上記組成の誘電体層塗布液7を、実施例1で作製した積層構造の導電性高分子膜1上に、ワイヤーバー(#3)を用いて塗布し、表面温度100℃のホットプレート上で10分、乾燥後、庫内温度80℃のオーブンでアニール処理することで、誘電体層を積層した導電性高分子膜7を得た。
【0199】
導電性高分子膜7の表面抵抗は、510Ω/□であった。
導電性高分子膜7のCV値を求めたところ、4.21%となり、良と判断した。
また、湿熱耐久性については、表面抵抗変化率は107%と優れた耐久性を示した。
【0200】
[実施例8]
PEDOT/PSS水分散液CELVIOS PH500(エイチ・シー・スタルク(株)製品名、分散平均粒径30nm、固形分濃度1.2質量%)40質量部に、メタノール54質量部とエチレングリコール6質量部、およびノニオン系界面活性剤Polyethylene Glycol Mono-4-octylphenyl Ether n(=:)10(東京化成製品名)を0.025質量部添加し、ミックスローターMR-3(アズワン(株)製品名)で30分間撹拌後、孔径10μmのメンブレンフィルターで濾過することで、導電性高分子/ドーパントを含む有機導電性高分子塗布液8を作製した。塗布液8の粘度は、5.9mPa・s、固形分濃度は0.51質量%であった。
【0201】
実施例1と同様の前記接着層を積層したPETフィルムに、有機導電性高分子塗布液8をワイヤーバー(#9)で塗布し、表面温度100℃のホットプレート上で10分乾燥し、導電性高分子膜8を作製した。
【0202】
次に、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸とN−メチル−2−ジメチルアミノアセトヒドロキサム酸を各0.1質量部と、イソプロピルアルコール9質量部とエチレングリコール1質量部を混合した塗布液を作製した。
この塗布液を、導電性高分子膜8上に、ワイヤーバー(#3)で塗布し、表面温度100℃のホットプレート上で10分乾燥後、庫内温度120℃のオーブンでアニール処理することで、積層構造の導電性高分子膜8を得た。
【0203】
導電性高分子膜8の表面抵抗は、510Ω/□であった。CV値は、3.2%となり、良と判断した。
また、湿熱耐久性については、表面抵抗変化率は125%であった。
【0204】
[実施例9]
ノニオン系界面活性剤を、Polyethylene Glycol Mono-4-octylphenyl Ether n(=:)10から、FS-300(デュポン(株)製品名)に変更した以外は、実施例8と同様に導電性高分子膜9を作製した。なお、用いた塗布液9の粘度は、5.8mPa・s、固形分濃度は0.51質量%であった。
【0205】
導電性高分子膜9の表面抵抗は、505Ω/□であった。CV値は、2.9%となり、優と判断した。
また、湿熱耐久性については、表面抵抗変化率は122%であった。
【0206】
[実施例10]
ノニオン系界面活性剤を、Polyethylene Glycol Mono-4-octylphenyl Ether n(=:)10から、FSO-100(デュポン(株)製品名)に変更した以外は、実施例8と同様に導電性高分子膜10を作製した。なお、用いた塗布液10の粘度は、6.0mPa・s、固形分濃度は0.51質量%であった。
【0207】
次に、PVA217((株)クラレ製品名)0.5質量部に、純水71.6質量部とメタノール28.9質量部を含む誘電体層塗布液を、積層構造の導電性高分子膜10上にワイヤーバー(#3)を用いて塗布し、表面温度100℃のホットプレート上で10分乾燥して、誘電体層を積層した導電性高分子膜10を作製した。
【0208】
導電性高分子膜10の表面抵抗は、499Ω/□であった。CV値は、2.9%となり、優と判断した。
また、湿熱耐久性については、表面抵抗変化率は114%であった。
【0209】
[比較例1]
実施例1の有機導電性高分子塗布液1と同様にして、但し、PEDOT/PSS水分散液CELVIOS P HC V4(エイチ・シー・スタルク(株)製品名、分散平均粒径200nm、固形分濃度1.2質量%)40質量部に、メタノール54質量部とエチレングリコール6質量部を添加して比較の有機導電性高分子塗布液1作製した。
比較の塗布液1の粘度は、5.1mPa・s、固形分濃度は0.48質量%であった。
【0210】
比較の有機導電性高分子塗布液1をワイヤーバー(#9)で塗布し、表面温度100℃のホットプレート上で10分乾燥し、比較の導電性高分子膜1を作製した。
【0211】
比較の導電性高分子膜1の表面抵抗は、560Ω/□であった。CV値は、5.58%となり、不可と判断した。
また、湿熱耐久性については、表面抵抗変化率は130%であった。
【0212】
[比較例2]
実施例1の有機導電性高分子塗布液1と同様にして、但し、PEDOT/PSS水分散液CELVIOS PH500(エイチ・シー・スタルク(株)製品名、分散平均粒径30nm、固形分濃度1.2質量%)40質量部に、エタノール36質量部、純水18重量部とエチレングリコール6質量部を添加して比較の有機導電性高分子塗布液2を作製した。
比較の塗布液2の粘度は、8.8mPa・s、固形分濃度は0.48質量%であった。
【0213】
比較の有機導電性高分子塗布液2をワイヤーバー(#9)で塗布し、表面温度100℃のホットプレート上で10分乾燥し、比較の導電性高分子膜2を作製した。
【0214】
比較の導電性高分子膜2の表面抵抗は、414Ω/□であった。CV値は、7.32%となり、不可と判断した。
また、湿熱耐久性については、表面抵抗変化率は122%であった。
【0215】
[比較例3]
実施例1の有機導電性高分子塗布液1と同様にして、但し、PEDOT/PSS水分散液CELVIOS PH500(エイチ・シー・スタルク(株)製品名、分散平均粒径30nm、固形分濃度1.2質量%)40質量部に、イソプロピルアルコール36質量部、純水18重量部とエチレングリコール6質量部を添加して比較の有機導電性高分子塗布液3を作製した。
比較の塗布液3の粘度は、10mPa・s、固形分濃度は0.48質量%であった。
【0216】
比較の有機導電性高分子塗布液3をワイヤーバー(#9)で塗布し、表面温度100℃のホットプレート上で10分乾燥し、比較の導電性高分子膜3を作製した。
【0217】
比較の導電性高分子膜3の表面抵抗は、456Ω/□であった。CV値は、6.23%となり、不可と判断した。
また、湿熱耐久性については、表面抵抗変化率は120%であった。
【0218】
[比較例4]
実施例1の有機導電性高分子塗布液1と同様にして、但し、PEDOT/PSS水分散液CELVIOS PH500(エイチ・シー・スタルク(株)製品名、分散平均粒径30nm、固形分濃度1.2質量%)30質量部に、メタノール35質量部、純水28重量部とエチレングリコール6質量部を添加して比較の有機導電性高分子塗布液4を作製した。
比較の塗布液4の粘度は、6.9mPa・s、固形分濃度は0.36質量%であった。
【0219】
比較の有機導電性高分子塗布液4をワイヤーバー(#9)で塗布し、表面温度100℃のホットプレート上で10分乾燥し、比較の導電性高分子膜4を作製した。
【0220】
比較の導電性高分子膜4の表面抵抗は、469Ω/□であった。CV値は、5.55%となり、不可と判断した。
また、湿熱耐久性については、表面抵抗変化率は128%であった。
【0221】
【表1】

【0222】
表1に示すとおり、有機導電性高分子塗布液の粘度が6.0mPa・s以下で、導電性高分子とドーパントとの分散粒子径の平均値が50nm以下の実施例1〜10では、表面抵抗の面内ばらつき値(CV値)が低い導電性膜(導電体)が得られた。
また、更に誘電体層を付与した実施例6,7及び10では、CV値を著しく低下させることなく湿熱耐久性が向上した。
更に、フッ素系ノニオン系界面活性剤を添加した実施例9及び10では、目視評価により透明性に優れた導電性膜(導電体)が得られた。
【0223】
[実施例11]
(タッチパネル装置の製造)
実施例1と同様の操作により、PETフィルムに、接着層と、ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン(PEDOT)・ポリスチレンスルホン酸(PSS)層とを付設したフィルムを作製した。
【0224】
次に、ガラス基板上にインジウムスズオキサイドを蒸着により付設した基板を用意し、厚み4μmのドットスペーサー(東洋紡製、レジストCR-103C)をフォトリソグラフィーにて形成した後、配線を銀ペースト(東洋紡製、DW-250H-5)のスクリーン印刷により形成した。更に、絶縁インク(十条ケミカル製、商品名:JELCON IN)にて絶縁部位を形成した。最後に、上記フィルムを貼り合せてタッチパネル装置を作製した。
【0225】
(タッチパネル装置の評価)
上記タッチパネル装置のリニアリティを測定したところ、±2.5%以内であり、リニアリティに優れていることが確認された。
【0226】
[実施例12]
実施例11と同様にして、但し実施例10で作製した導電性高分子膜10に代えてタッチパネルを作製した。
このタッチパネルのリニアリティを測定したところ、±1.2%以内であり、リニアリティに優れていることが確認された。
【符号の説明】
【0227】
1 透明基体
2 透明導電膜
10 導電膜
11 基体
40 ドットスペーサー
50 絶縁性スペーサー(両面接着剤)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性高分子とドーパントとが、1価アルコール、ケトン、及び水から選択される少なくとも1つに分散されてなり、
導電性高分子とドーパントとの分散粒子径の平均値が50nm以下であり、かつ
粘度が6.0mPa・s以下である有機導電性高分子塗布液。
【請求項2】
更に、多価アルコールを含有する請求項1に記載の有機導電性高分子塗布液。
【請求項3】
前記導電性高分子が、ポリチオフェンを含む請求項1又は請求項2に記載の有機導電性高分子塗布液。
【請求項4】
前記ポリチオフェンが、ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェンを含む請求項1又は請求項2に記載の有機導電性高分子塗布液。
【請求項5】
前記ドーパントが、水溶性ポリマーである請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の有機導電性高分子塗布液。
【請求項6】
前記ドーパントが、ポリスチレンスルホン酸及びスチレンスルホン酸の共重合体から選択される少なくとも1つを含む請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の有機導電性高分子塗布液。
【請求項7】
前記導電性高分子とドーパントとの総固形分濃度が、0.2質量%以上0.7質量%以下である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の有機導電性高分子塗布液。
【請求項8】
更に、ノニオン系界面活性剤を含有する請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の有機導電性高分子塗布液。
【請求項9】
更に、フッ素基を有するノニオン系界面活性剤を含有する請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の有機導電性高分子塗布液。
【請求項10】
前記多価アルコールが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、及びテトラエチレングリコールから選択される少なくとも1つである請求項2〜請求項9のいずれか1項に記載の有機導電性高分子塗布液。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の有機導電性高分子塗布液を塗布し、乾燥して形成された有機導電性高分子膜。
【請求項12】
25℃50%RHでの表面抵抗が、100Ω/□以上3000Ω/□以下の範囲にある請求項11に記載の有機導電性高分子膜。
【請求項13】
下記式で表される25℃50%RHでの表面抵抗の面内ばらつき値(CV値)が、0%以上5.0%未満である請求項11又は請求項12に記載の有機導電性高分子膜。
CV値=(表面抵抗の標準偏差)/(表面抵抗の平均値)×100
【請求項14】
更に、ヒドロキサム酸誘導体及びリン酸誘導体の少なくとも1つが付与されてなる請求項11〜請求項13のいずれか1項に記載の有機導電性高分子膜。
【請求項15】
更に、誘電体層を積層する請求項11〜請求項14のいずれか1項に記載の有機導電性高分子膜。
【請求項16】
支持体上に、請求項11〜請求項15のいずれか1項に記載の有機導電性高分子膜を備える導電体。
【請求項17】
支持体としての透明フィルム上に導電膜を備える第一の導電体と、支持体としての基体上に導電膜を備える第二の導電体とが、対向して配置され、
前記第一の導電体及び第二の導電体の少なくとも一方の導電膜が、請求項11〜請求項15のいずれか1項に記載の有機導電性高分子膜である抵抗膜式タッチパネル。
【請求項18】
位置変量に対する内部抵抗値のリニアリティが−3.0%以上3.0%以下である請求項17に記載の抵抗膜式タッチパネル。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−114066(P2010−114066A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192457(P2009−192457)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】