説明

有機性排液の処理装置および有機性排液の処理方法

【課題】生物処理槽から引き抜いた汚泥をオゾン等で改質処理し、改質汚泥を生物処理工程に返送することで汚泥を減量する有機性排水の処理方法および処理装置においては、改質処理工程で生成する微細濁質が処理水中にリークし、処理水の透視度が悪化する場合があった。本発明は、簡単な構成で透視度の悪化を防止する有機性排液の処理装置および有機性排液の処理方法を提供する。
【解決手段】生物処理槽から引き抜いた汚泥をオゾン等で改質処理し、改質汚泥を生物工程に返送して発生する汚泥を減量する有機性排液の処理方法および処理装置において、生物処理槽からの混合液に高分子凝集剤を添加した後に固液分離することを特徴とする有機性排液の処理装置および有機性排液の処理方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性排液を微生物で生物処理する処理装置および処理方法、特に生物処理で発生する汚泥を易生物分解性に改質処理して処理を行うようにした有機性排液の処理方法および処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
活性汚泥処理法などのように、微生物を利用して有機性排液を生物学的に処理する方法は、他の処理方法に比べ処理コストが安く、処理性能が優れているが、難脱水性の多量の余剰汚泥が生成する。このような処理方法において、汚泥の減容化のために、生物処理工程から引き抜いた汚泥をオゾン等の酸化剤、酸・アルカリ、ミルなどの物理的手段或いは高熱細菌などで処理することで、汚泥を易生物分解性に改質した後、改質汚泥を生物処理工程に返送して生物処理する有機性排液の処理方法が提案されている(例えば特許文献1など)。
【0003】
このような処理法では、汚泥の発生量を低減することでき、改質汚泥の量を調整することで系外へ排出する汚泥の量をほとんどゼロにすることが可能となる。しかし、生物処理的に安定化した汚泥を易生物分解性に改質して生物処理工程に返送することに伴い、汚泥に取り込まれていた溶解性CODが可溶化し、生物処理工程に流入する溶解性CODが増加する。このため、生物処理が不十分な場合には、処理水中に溶解性CODが流出する場合があり、処理水中のCOD成分の流出を防止するために生物処理槽に鉄やアルミニウムなどの水酸化物を存在させる方法が提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開平6−206088号公報
【特許文献2】特開2004−25093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生物処理工程から引き抜いた汚泥をオゾン等で改質処理し、改質汚泥を生物処理工程に返送することで汚泥を減量する有機性排水の処理方法および処理装置においては、改質処理において微生物の細胞壁などが破壊されるため、微細濁質が発生しやすい。したがって、溶解性CODやBODなどが充分に除去されていても、処理水中に前記微細濁質がリークし、処理水の透視度が悪化する場合があった。また、鉄やアルミニウムを添加では、CODの除去効果はあっても、微細濁質の除去効果は十分ではなく、更に、多量の無機汚泥が発生するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、次の有機性排液の処理装置および有機性排液の処理方法である。
(1) 有機性排液を微生物で処理する生物処理槽と、生物処理槽からの混合液に高分子凝集剤を添加する高分子凝集剤添加手段と、高分子凝集剤が添加された混合液を汚泥と処理液とに分離する固液分離手段と、固液分離手段で分離された汚泥の少なくとも一部および/または生物処理槽からの引抜き汚泥を易生物分解性に改質する改質手段と、改質汚泥を生物処理槽に返送する改質汚泥返送手段とを有することを特徴とする有機性排液の処理装置。
(2) 上記(1)において、高分子凝集剤は、下記式[1]で表されるカチオン性単量体20〜50mol%と、非イオン性単量体50〜80mol%との共重合物であることを特徴とする有機性排液の処理装置。
【0006】
【化1】

(式[1]中、Rは水素原子またはメチル基、RおよびRはそれぞれ独立にメチル基またはエチル基、Rは水素原子、メチル基、エチル基またはベンジル基、Xは酸素原子またはNH、Yは炭素数2〜4のアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基、Zは対アニオンである。)
(3) 有機性排液を微生物で処理する生物処理工程と、生物処理工程からの混合液に高分子凝集剤を添加する高分子凝集剤添加工程と、高分子凝集剤が添加された混合液を汚泥と処理液とに分離する固液分離工程と、固液分離された汚泥の少なくとも一部および/または生物処理工程からの引抜き汚泥を易生物分解性に改質する改質工程と、改質汚泥を生物処理工程に返送する改質汚泥返送工程とを有することを特徴とする有機性排液の処理方法。
(4) 上記(3)において、高分子凝集剤は、下記式[1]で表されるカチオン性単量体20〜50mol%と、非イオン性単量体50〜80mol%との共重合物であることを特徴とする有機性排液の処理方法。
【0007】
【化1】

(式[1]中、Rは水素原子またはメチル基、RおよびRはそれぞれ独立にメチル基またはエチル基、Rは水素原子、メチル基、エチル基またはベンジル基、Xは酸素原子またはNH、Yは炭素数2〜4のアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基、Zは対アニオンである。)
本発明において処理の対象となる有機性排液は、生物処理によって処理される有機物、アンモニア性窒素化合物、有機性窒素化合物、硝酸性窒素、亜硝酸性窒素などを含有する排液であるが、難生物分解性の有機物または無機物が含有されていてもよい。このような有機性排液としては下水、し尿、埋立浸出水、食品工場排水、化学工場排水、その他の産業排液などがあげられる。
【0008】
本発明で採用される生物処理としては、好気性生物処理、嫌気性生物処理またはこれらを組み合せた生物処理である。好気性生物処理としては、活性汚泥法、生物膜法などがあげられる。活性汚泥法は有機性排液を活性汚泥の存在下に好気性生物処理する処理法であり、有機性排液を生物処理槽(曝気槽)で活性汚泥と混合して曝気し、混合液を固液分離装置で固液分離し、分離汚泥の一部を曝気槽に返送する標準活性汚泥法が一般的であるが、これを変形した他の処理法でもよい。また生物膜法は担体に生物膜を形成して好気性下に排液と接触させる処理である。また嫌気性処理としては、嫌気性消化法、高負荷嫌気性処理法などがあげられる。更に、一般的な好気性処理および/または嫌気性処理からなるもののほか、アンモニア性窒素を硝化細菌により好気性下に硝酸または亜硝酸性窒素に硝化(酸化)する硝化工程と、硝酸または亜硝酸性窒素を脱窒細菌により嫌気性下に還元する脱窒工程とを含む生物処理があげられる。
【0009】
本発明では、生物処理装置からの混合液は高分子凝集剤が添加される。本発明で使用される高分子凝集剤としては、一般に凝集沈殿、汚泥脱水等に使用されているものが使用でき、カチオン性のものが好ましいが、ノニオン性またはアニオン性のものでもよい。カチオン性のものとしては、(メタ)アクリレート系カチオン性単量体の単独重合物又は非イオン性単量体との共重合物、ポリアクリルアミドのマンニッヒ変性物、ポリ(ジメチルジアリルアンモニウムクロライド)、ジアルキルアミン−エピクロルヒドリン縮合物、アルキレンジクロライド−ポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリエチレンイミン、ジシアンジアミド−ホルマリン縮合物、ポリビニルアミジン、キトサンなどのカチオン性高分子凝集剤を用いることができる。特に、下記式[1]で表される(メタ)アクリル系カチオン性単量体20〜50mol%と、非イオン性単量体50〜80mol%との共重合物を好適に用いることができ、前記非イオン性単量体としてはアクリルアミドやメタクリルアミドなどがあげられる。
【0010】
【化1】

(式[1]中、Rは水素原子またはメチル基、RおよびRはそれぞれ独立にメチル基またはエチル基、Rは水素原子、メチル基、エチル基またはベンジル基、Xは酸素原子またはNH、Yは炭素数2〜4のアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基、Zは対アニオンである。)
(メタ)アクリル系カチオン性単量体との含有量がこの範囲をはずれると凝集汚泥の沈降速度を充分に高めることができず、また、微細な濁質を十分に除去することができない。
【0011】
本発明で使用できる特に好ましいカチオン性高分子凝集剤は、下記式[2]で表される(メタ)アクリル系カチオン性単量体20〜50mol%と、アクリルアミド50〜80mol%との共重合物である。
【0012】
【化2】

本発明で使用される高分子凝集剤は固有粘度(1N NaNO水溶液の30℃での測定値)が1〜15dL/g、好ましくは3〜10dL/g、より好ましくは5〜8dL/gのものを好適に用いることができる。固有粘度が低すぎると凝集汚泥の沈降速度が十分に速くならなく、また、固有粘度が高すぎると微細な濁質を十分に除去する事が出来ず、十分に透視度を改善することができなくなる。
【0013】
高分子凝集剤の添加量は、生物処理槽内の混合液中の汚泥濃度や処理水量や汚泥の滞留時間などの運転条件で変動するが、通常添加する混合液に対して0.1〜20mg/L、好ましくは1〜10mg/L程度である。
【0014】
高分子凝集剤は通常水溶液の状態で添加され、この水溶液中の高分子の濃度は、通常0.02〜2重量%、好ましくは0.1〜0.6重量%であるのが望ましい。なお、高分子凝集剤が水性懸濁液またはW/O型エマルションである場合には、水性懸濁液またはW/O型エマルションの状態で直接混合液に添加することができる。
【0015】
高分子凝集剤の添加位置は生物処理槽から固液分離手段に至る経路であれば特に限定されず、例えば生物処理槽;生物処理槽から固液分離手段までの間の連絡路;固液分離手段内などで添加することができる。また、生物処理槽から固液分離手段までの間に凝集槽を設けて添加することができ、例えば、生物処理槽の出口部を隔壁などで仕切ることで凝集槽とすることができる。
【0016】
高分子凝集剤の添加は連続的に行うこともできるし、間欠的に行うこともできる。また、濁質の分離性が悪化した場合(透視度が悪化した場合)、または悪化が予想される場合に添加することができる。
【0017】
本発明では、高分子凝集剤が添加された混合液は固液分離手段によって処理液である分離液と分離汚泥とに分離される。このような固液分離手段としては、例えば沈殿槽、浮上分離槽、遠心分離装置または膜分離装置などによる固液分離装置が使用できる。膜分離装置を用いる場合には、従来公知の膜分離装置を用いることができ、混合液をポンプなどの送液手段を用いて膜面の片側に高流速で循環させ、もう片側からろ液を取り出す、ポンプ循環式クロスフロー濾過型の膜分離装置や、散気装置により引き起こされる曝気による循環水流を膜面に当てることにより、膜面への懸濁物質の濃縮を防止しながらろ過を行う、浸漬型膜分離装置を用いることができる。
【0018】
本発明では、このような生物処理における処理系から生物汚泥の一部を引抜き、この引抜汚泥を改質処理槽において易生物分解性に改質するための改質処理を行う。改質処理を行う汚泥は、上述した固液分離手段によって分離された分離汚泥の少なくとも一部を引抜くのが好ましいが、生物処理槽から混合液の状態で引抜いた汚泥でもよい。これら引抜き汚泥はそのまま改質処理工程に導入されても良いが、別途用意した濃縮手段で濃縮した後に、改質処理工程に導入しても良い。濃縮手段としては遠心濃縮、重力濃縮、浮上濃縮、膜分離などの汚泥の濃縮に使用される濃縮手段を適宜用いることができる。
【0019】
分離汚泥から引抜く場合、余剰汚泥として排出される部分の一部または全部を引抜汚泥として引抜くことができるが、排出される余剰汚泥に加えて、返送汚泥として生物処理工程に返送される汚泥の一部を過剰に引抜いて改質処理することもでき、これにより余剰汚泥の発生量をより少なくすることができる。この場合生物処理工程における見かけの増殖量に対応する量を引抜いて改質処理すると、余剰汚泥発生量をゼロにすることができる。
【0020】
引抜汚泥を生物が分解し易い性状に改質する改質処理方法としては、任意の方法を採用することができる。例えば、オゾン処理による改質処理、酸処理による改質処理、アルカリ処理による改質処理、高熱細菌による改質処理、ミル、ディスク、超音波などの物理的処理による改質処理、加熱処理による改質処理、これらを組合せた改質処理等を採用することができる。これらの中ではオゾン処理による改質処理が、処理操作が簡単かつ処理効率が高いため好ましい。
【0021】
このような改質処理のうち、まずオゾン処理について説明する。改質処理としてのオゾン処理は、生物処理系から引抜いた汚泥をオゾン処理槽に導いてオゾンと接触させればよく、オゾンの酸化作用により汚泥は易生物分解性に改質される。オゾン処理はpH5以下の酸性領域で行うと酸化分解効率が高くなる。このときのpHの調整は、硫酸、塩酸または硝酸などの無機酸をpH調整剤として生物汚泥に添加するか、生物汚泥を酸発酵処理して調整するか、あるいはこれらを組合せて行うのが好ましい。pH調整剤を添加する場合、pHは3〜4に調整するのが好ましく、酸発酵処理を行う場合、pHは4〜5となるように行うのが好ましい。
【0022】
オゾン処理は、引抜汚泥または酸発酵処理液をそのまま、または必要により遠心分離機などで濃縮した後pH5以下に調整し、オゾンと接触させることにより行うことができる。接触方法としては、オゾン処理槽に汚泥を導入してオゾンを吹込む方法、機械攪拌による方法、充填層を利用する方法などが採用できる。オゾンとしてはオゾンガスの他、オゾン含有空気、オゾン化空気などのオゾン含有ガスが使用できる。オゾンの使用量は0.002〜0.05g−O3/g−VSS、好ましくは0.005〜0.03g−O3/g−VSSとするのが望ましい。オゾン処理により生物汚泥は酸化分解されて、BOD成分に変換される。
【0023】
次に引抜汚泥を易生物分解性に改質する他の方法としての酸処理について説明すると、酸処理では、生物処理系から引抜いた引抜汚泥を改質槽に導き、塩酸、硫酸などの鉱酸を加え、pH2.5以下、好ましくはpH1〜2の酸性条件下で所定時間滞留させればよい。滞留時間としては、例えば5〜24時間とする。この際、汚泥を加熱、例えば50〜100℃に加熱すると改質が促進されるので好ましい。このような酸による処理により汚泥は易生物分解性となり、生物処理系に戻すことにより容易に分解除去できるようになる。
【0024】
また、汚泥の改質処理としてのアルカリ処理について説明すると、アルカリ処理では、生物処理系から引抜いた引抜汚泥を改質槽に導き、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリを汚泥に対して0.1〜1重量%加え、所定時間滞留させればよい。滞留時間は0.5〜2時間程度で汚泥は易生物分解性に改質される。この際、汚泥を加熱し、例えば50〜100℃に加熱すると改質が促進されるので好ましい。
【0025】
改質処理としての加熱処理は、加熱処理単独で行うこともできるが、酸処理またはアルカリ処理と組合せて行うのが好ましい。加熱処理単独で行う場合は、例えば温度70〜100℃、滞留時間2〜3時間とすることができる。
【0026】
このようにして易生物分解性に改質した改質汚泥を生物処理槽に導入して生物処理を行うことにより、改質処理によって易生物分解性になった汚泥は、BOD成分として生物処理槽内の微生物により分解され、汚泥発生量が減量される。
【0027】
汚泥の改質処理では、汚泥を構成する微生物の細胞壁などが破壊され、微細濁質が発生する。また、生物処理で使用される微生物(菌体)は、細胞の外側に多糖類などからなる粘着物があり、これにより菌体同士が付着しあって大きなフロックを形成し、固液分離しやすい汚泥が形成されている。一方、改質処理汚泥を生物処理槽に導入する汚泥減容方法では、余剰汚泥を全くまたはほとんど系外へ引抜かない運転となり、汚泥の平均滞留時間(SRT)が長いものとなる。この場合、上記の粘着物は微生物の自己分解で少なくり、大きなフロックを形成し難くなり、固液分離でピンフロックとして流出しやすくなる。
【0028】
本発明では上述した通り、生物処理工程での混合液に高分子凝集剤を添加して固液分離を行うため、粘着物の低下を補い、菌体をフロック化して生物汚泥の固液分離を促進する。更に、高分子凝集剤の凝集作用により微細濁質を取り込んで汚泥をフロックさせることができ、固液分離手段として沈殿槽や遠心分離機を採用した場合には処理水への微細懸濁物質の流出を防止して処理水透視度の向上をはかり、固液分離手段として濾過器や膜分離装置などを採用した場合にはこれら固液分離手段の目詰まりを抑制することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、生物処理工程から引き抜いた汚泥をオゾン等で改質処理し、改質汚泥を生物処理工程に返送することで汚泥を減量する有機性排水の処理方法および処理装置において、処理水の透視度が悪化する場合でも、簡単な装置および方法で処理水透視度の改善を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面により説明する。図1は実施の一形態による有機性排液の処理方法を示す系統図であり、生物処理として標準活性汚泥法を、改質処理としてオゾン法を採用している。図1において1は曝気槽、2は沈殿槽、3は改質槽である。
【0031】
処理方法は被処理液路5から被処理液である有機性排液を曝気槽1に導入するとともに、汚泥返送路12および改質汚泥返送路14からそれぞれ返送汚泥と改質汚泥とを導入し、散気装置7から空気を散気して曝気し、好気性微生物の存在下に好気性処理を行う。曝気条件等の具体的な処理条件は通常の好気性処理と同様である。
【0032】
曝気槽1内の混合液は移送路8を経由して沈殿槽2に導入されるが、移送路8の途中で高分子凝集剤4が連続的に添加される。そして、高分子凝集剤が添加された混合液は移送路8内を通って移送される途中で高分子凝集剤によって凝集し、沈殿槽2で分離汚泥と分離液に固液分離し、分離液は処理液路9から処理液として排出する。分離汚泥は汚泥取出路10から取出し、一部は汚泥引抜路11から改質槽3に導入し、残部は汚泥返送路12から曝気槽1に返送される。改質槽3では散気装置13からオゾンを散気してオゾン処理による改質処理を行い、生物汚泥の一部を易生物分解性に改質処理する。改質汚泥は改質汚泥返送路14から曝気槽1に返送される。
【0033】
上記実施の形態では、沈殿槽2で分離された分離汚泥の一部が改質槽3に導入されているが、曝気槽1から混合液取出路15を経由して改質槽3に導入するようにしてもよい。
【0034】
また、上記実施の形態では、高分子凝集剤4は、曝気槽1と沈澱槽2とを結ぶ移送路8で混合液に添加されているが、図2のように別途凝集槽6を設けてここに高分子凝集剤4を添加するようにしてもよい。このように凝集槽6を設けることで、高分子凝集剤の拡散やフロック化が効果的に行われるので効率的に高分子凝集剤を利用することができる。
【実施例】
【0035】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0036】
実施例および比較例で使用した高分子凝集剤は表1の通りである。なお、A−1〜A−4、B及びEは、モノマーを純水に溶解し、窒素雰囲気下、開始剤として2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩を添加し加熱することで溶液重合し、得られた重合体溶液を乾燥・粉砕して得たものを使用した。また、Cは、モノマーを20重量%濃度の硫酸アンモニウム水溶液中でシード重合することで得たものであり、ポリマー濃度20重量%の水性のポリマー分散液(ディスパージョン)として得られたものを使用した。そして、Dは、モノマーを純水に溶解し、窒素雰囲気下、開始剤として2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩を添加し加熱することで重合し、水中に重合体が析出した懸濁液に塩酸を加えアミジン化したものを乾燥したものを使用した。なお、いずれの高分子凝集剤も純分換算で0.1重量%ととなるように溶解してから以下実験に使用した。
【0037】
【表1】

注)1)DAA:アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(前記式[1]において、Rが水素、R〜Rがメチル基、Xが酸素、YがCHCH、Zが塩素のアクリル系カチオン単量体)
2)AAm:アクリルアミド
3)DAM:メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(前記式[1]において、Rがメチル基、R〜Rがメチル基、Xが酸素、YがCHCH、Zが塩素のメタクリル系カチオン単量体)
4)DAABz:アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド(前記式[1]において、Rが水素、RおよびRがメチル基、Rがベンジル基、Xが酸素、YがCHCH、Zが塩素のアクリル系カチオン単量体)
5)ポリアミジン:アクリルニトリル50mol%とN−ビニルホルムアミド50mol%との共重合物を塩酸で変性したもの。コロイド当量値は4.8meq./g
6)DADMAC:ジアリルジメチルアンモニウムクロリド
7)[η]:A−1〜A−4、BおよびEは30℃、1N−NaNOで測定した固有粘度であり、Cは30℃、0.1N−NaNOで測定した固有粘度で、Dは30℃、1N−NaClで測定した固有粘度である。
〔実験例1〕
【0038】
図1記載のフロー(ただし、高分子凝集剤の添加はおこなっていない)を採用しているA下水処理場の曝気槽汚泥100mLに高分子凝集剤を所定量添加し、水道水で10倍に希釈して1Lのメスシリンダー(直径65mm、高さ300mm)に移し、緩やかに混合攪拌し、静置後ただちに凝集フロックの沈降速度を測定するとともに、30分経過後に水面下100mmより採取した試料の濁度を測定した。結果を表2に示す。
【0039】
【表2】

以上の結果より、高分子凝集剤を添加することで上澄濁度は改善されることがわかる。特に、(メタ)アクリロイルオキシエチレントリメチルアンモニウムクロリド20〜50mol%とアクリルアミド50〜80mol%との共重合物であるA−2、A−3およびBの上澄濁度改善効果が高いことがわかる。なお、上澄濁度は、沈降分離し難い微小懸濁物の濃度と相関があり、上澄濁度の高い改善効果は、微小懸濁物質の高い凝集性を示している。
〔実験例2〕
【0040】
実験例1で汚泥を採取したA下水処理場において、図1のように曝気槽1から沈殿槽2を連結する移送路8において、曝気槽からの混合液に高分子凝集剤A−2を1.5mg/Lとなるよう連続して添加して1年間運転した。高分子凝集剤を添加する前は処理水の透視度は20〜30cmであったものが、添加後は50〜80cmとなり、高分子凝集剤の添加により処理水の透視度が長期間安定して改善されることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の有機性排液の処理方法および処理装置は、下水、し尿、埋立浸出水、食品工場排水、化学工場排水といった有機性排液の生物処理において、処理水の透視度などの水質を高く維持しつつ、汚泥発生量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態における有機性排液の処理装置
【図2】本発明の別の実施形態における有機性排液の処理装置
【符号の説明】
【0043】
1 曝気槽
2 沈殿槽
3 改質槽
6 凝集槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性排液を微生物で処理する生物処理槽と、生物処理槽からの混合液に高分子凝集剤を添加する高分子凝集剤添加手段と、高分子凝集剤が添加された混合液を汚泥と処理液とに分離する固液分離手段と、固液分離手段で分離された汚泥の少なくとも一部および/又は生物処理槽からの引抜き汚泥を易生物分解性に改質する改質手段と、改質汚泥を生物処理槽に返送する改質汚泥返送手段とを有することを特徴とする有機性排液の処理装置。
【請求項2】
請求項1において、前記高分子凝集剤は、下記式[1]で表される(メタ)アクリル系カチオン性単量体20〜50mol%と、非イオン性単量体50〜80mol%との共重合物であることを特徴とする有機性排液の処理装置。
【化1】

(式[1]中、Rは水素原子またはメチル基、RおよびRはそれぞれ独立にメチル基またはエチル基、Rは水素原子、メチル基、エチル基またはベンジル基、Xは酸素原子またはNH、Yは炭素数2〜4のアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基、Zは対アニオンである。)
【請求項3】
有機性排液を微生物で処理する生物処理工程と、生物処理工程からの混合液に高分子凝集剤を添加する高分子凝集剤添加工程と、高分子凝集剤が添加された混合液を汚泥と処理液とに分離する固液分離工程と、固液分離された汚泥の少なくとも一部および/又は生物処理工程からの引抜き汚泥を易生物分解性に改質する改質工程と、改質汚泥を生物処理工程に返送する改質汚泥返送工程とを有することを特徴とする有機性排液の処理方法。
【請求項4】
請求項3において、前記高分子凝集剤は、下記式[1]で表される(メタ)アクリル系カチオン性単量体20〜50mol%と、非イオン性単量体50〜80mol%との共重合物であることを特徴とする有機性排液の処理方法。
【化1】

(式[1]中、Rは水素原子またはメチル基、RおよびRはそれぞれ独立にメチル基またはエチル基、Rは水素原子、メチル基、エチル基またはベンジル基、Xは酸素原子またはNH、Yは炭素数2〜4のアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基、Zは対アニオンである。)

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−86848(P2008−86848A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−267393(P2006−267393)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】