説明

有機溶剤回収システム

【課題】有機溶剤回収システムに用いられるエネルギー使用量を削減することが可能な構成を備える有機溶剤回収システムを提供することを目的とする。
【解決手段】有機溶剤回収システム1においては、濃縮装置200の脱着部22から排出された脱着ガス(G14)は、凝縮液(E10)との熱交換部500における熱交換によって降温された状態で冷却装置300に導入される。冷却装置300から排出される凝縮液(E10)は、脱着ガス(G14)との熱交換部500における熱交換によって昇温された状態で膜分離装置400に導入される。膜分離装置400から排出される透過液(E11)および濃縮液(E12)は、冷却装置300から排出される未凝縮ガス(G17)との熱交換部600における熱交換によって冷却される。熱交換部500,600の熱交換によってより少ないエネルギー使用量で有機溶剤を回収することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶剤を含有する有機溶剤含有ガスから有機溶剤を回収する有機溶剤回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
有機溶剤回収システムは、有機溶剤含有ガスを清浄化するとともに、除去した有機溶剤を高濃度に濃縮して回収する(特許文献1〜3参照)。有機溶剤回収システムによって回収された回収液には、有機溶剤以外にも、脱着処理に用いられる水蒸気等に由来する水分や、有機溶剤の分解物等が含まれている。回収液は、蒸留塔を使用したり、浸透気化分離法(パーベーパレーション法)を使用したりすることによって精製される。浸透気化分離法による精製処理は、蒸留塔による精製処理に比べて精製に必要なエネルギーの使用量が少ない(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭7−2028号公報
【特許文献2】実公昭7−2029号公報
【特許文献3】実公昭7−2030号公報
【特許文献4】特開2009−66530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、有機溶剤を含有する有機溶剤含有ガスから有機溶剤を回収する有機溶剤回収システムであって、より少ないエネルギー使用量で有機溶剤を回収可能な有機溶剤回収システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の局面に基づく有機溶剤回収システムは、有機溶剤を含有する有機溶剤含有ガスから上記有機溶剤を回収する有機溶剤回収システムであって、濃縮装置と冷却装置と膜分離装置と熱交換部とを備える。
【0006】
上記濃縮装置は、上記有機溶剤含有ガスを接触させることで上記有機溶剤を吸着し且つ上記有機溶剤含有ガスよりも高温の加熱ガスを接触させることで吸着した上記有機溶剤を脱着する吸着素子を含み、上記吸着素子に上記有機溶剤含有ガスが導入されることによって上記有機溶剤を上記吸着素子に吸着させて清浄ガスを排出する吸着部と、上記吸着素子に上記加熱ガスが導入されることによって上記有機溶剤を上記吸着素子から脱着させて上記有機溶剤を含有する脱着ガスを排出する脱着部と、を有する。
【0007】
上記冷却装置は、上記脱着部から排出された上記脱着ガスを冷却する。上記膜分離装置は、水を選択的に透過して分離する分離膜を含み、上記冷却装置の冷却によって凝縮するとともに上記冷却装置から排出された凝縮液を上記分離膜に供給することによって、上記有機溶剤を高濃度に含有する濃縮液と水を主成分とする透過液とに分離する。上記熱交換部は、上記膜分離装置から排出された上記濃縮液およびまたは上記透過液と、上記冷却装置の冷却によって凝縮せずに上記冷却装置から排出された未凝縮ガスとを熱交換させる。
【0008】
本発明の第2の局面に基づく有機溶剤回収システムは、有機溶剤を含有する有機溶剤含有ガスから上記有機溶剤を回収する有機溶剤回収システムであって、濃縮装置と冷却装置と膜分離装置と熱交換部とを備える。
【0009】
上記濃縮装置は、上記有機溶剤含有ガスを接触させることで上記有機溶剤を吸着し且つ上記有機溶剤含有ガスよりも高温の加熱ガスを接触させることで吸着した上記有機溶剤を脱着する吸着素子を含み、上記吸着素子に上記有機溶剤含有ガスが導入されることによって上記有機溶剤を上記吸着素子に吸着させて清浄ガスを排出する吸着部と、上記吸着素子に上記加熱ガスが導入されることによって上記有機溶剤を上記吸着素子から脱着させて上記有機溶剤を含有する脱着ガスを排出する脱着部と、を有する。
【0010】
上記冷却装置は、上記吸着部に導入される上記有機溶剤含有ガスを冷却した状態で排出する。蒸気膜分離装置は、水を選択的に透過して分離する分離膜を含み、上記冷却装置の冷却によって凝縮するとともに上記冷却装置から排出された凝縮液を上記分離膜に供給することによって、上記有機溶剤を高濃度に含有する濃縮液と水を主成分とする透過液とに分離する。上記熱交換部は、上記膜分離装置から排出された上記濃縮液およびまたは上記透過液と、上記吸着部に導入される上記有機溶剤含有ガスとを熱交換させる。
【0011】
本発明の第3の局面に基づく有機溶剤回収システムは、上記第1または上記第2の局面に基づく有機溶剤回収システムであって、他の熱交換部をさらに備える。上記他の熱交換部は、上記脱着部から排出された上記脱着ガスと、上記冷却装置の冷却によって凝縮するとともに上記冷却装置から排出され上記分離膜に供給される上記凝縮液とを熱交換させる。
【0012】
本発明の第4の局面に基づく有機溶剤回収システムは、有機溶剤を含有する温度が約50℃〜約200℃の原ガスから上記有機溶剤を回収する有機溶剤回収システムであって、濃縮装置と冷却装置と膜分離装置と熱交換部とを備える。
【0013】
上記濃縮装置は、上記有機溶剤を含有する有機溶剤含有ガスを接触させることで上記有機溶剤を吸着し且つ上記有機溶剤含有ガスよりも高温の上記原ガスを接触させることで吸着した上記有機溶剤を脱着する吸着素子を含み、上記吸着素子に上記有機溶剤含有ガスが導入されることによって上記有機溶剤を上記吸着素子に吸着させて清浄ガスを排出する吸着部と、上記吸着素子に上記原ガスが導入されることによって上記有機溶剤を上記吸着素子から脱着させて上記有機溶剤を含有する脱着ガスを排出する脱着部と、を有する。
【0014】
上記冷却装置は、上記脱着ガスまたは上記原ガスを含む上記脱着ガスを冷却する。上記膜分離装置は、水を選択的に透過して分離する分離膜を含み、上記冷却装置の冷却によって凝縮するとともに上記冷却装置から排出された凝縮液を上記分離膜に供給することによって、上記有機溶剤を高濃度に含有する濃縮液と水を主成分とする透過液とに分離する。上記熱交換部は、上記膜分離装置から排出された上記濃縮液およびまたは上記透過液と、上記冷却装置の冷却によって凝縮せずに上記冷却装置から排出された未凝縮ガスとを熱交換させる。上記有機溶剤含有ガスは、上記冷却装置の冷却によって凝縮せずに上記冷却装置から排出された上記未凝縮ガスである。上記冷却装置へ上記原ガスおよび上記脱着ガスを供給する割合は、上記原ガスが0%〜50%であり、上記脱着ガスが50%〜100%である。
【0015】
本発明の第5の局面に基づく有機溶剤回収システムは、上記第4の局面に基づく有機溶剤回収システムであって、他の熱交換部をさらに備える。上記他の熱交換部は、上記冷却装置に供給される上記脱着ガスまたは上記冷却装置に供給される上記原ガスを含む上記脱着ガスと、上記冷却装置の冷却によって凝縮するとともに上記冷却装置から排出され上記分離膜に供給される上記凝縮液とを熱交換させる。
【0016】
本発明の第6の局面に基づく有機溶剤回収システムは、上記第1から上記第5のいずれかの局面に基づく有機溶剤回収システムであって、上記濃縮装置は、回転軸と、上記回転軸の周りに設けられた上記吸着素子としての筒状吸着体と、を備え、上記回転軸の周りに上記筒状吸着体を回転させることにより、上記吸着部において上記有機溶剤含有ガス中の上記有機溶剤を吸着した上記吸着素子が連続的に上記脱着部に移行する。
【0017】
本発明の第7の局面に基づく有機溶剤回収システムは、上記第1から上記第6のいずれかの局面に基づく有機溶剤回収システムであって、上記吸着素子は、ハニカム構造を有している。
【0018】
本発明の第8の局面に基づく有機溶剤回収システムは、上記第1から上記第7のいずれかの局面に基づく有機溶剤回収システムであって、上記膜分離装置は、浸透気化分離法に基づくものである。
【0019】
本発明の第9の局面に基づく有機溶剤回収システムは、上記第1から上記第8のいずれかの局面に基づく有機溶剤回収システムであって、上記有機溶剤は、n−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、またはn−デカンである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、有機溶剤を含有する有機溶剤含有ガスから有機溶剤を回収する有機溶剤回収システムであって、より少ないエネルギー使用量で有機溶剤を回収可能な有機溶剤回収システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の形態1における有機溶剤回収システムを示すシステム構成図である。
【図2】実施の形態1(〜実施の形態4)における有機溶剤回収システムの濃縮装置を示す斜視図である。
【図3】実施の形態1(〜実施の形態4)における有機溶剤回収システムの膜分離装置を示す断面図である。
【図4】実施の形態1に対する比較例における有機溶剤回収システムを示すシステム構成図である。
【図5】実施の形態2における有機溶剤回収システムを示すシステム構成図である。
【図6】実施の形態3における有機溶剤回収システムを示すシステム構成図である。
【図7】実施の形態4における有機溶剤回収システムを示すシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態においては、同一または対応する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない場合がある。以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。
【0023】
[実施の形態1]
図1〜図3を参照して、本実施の形態における有機溶剤回収システム1について説明する。図1は、有機溶剤回収システム1を示すシステム構成図である。図2は、有機溶剤回収システム1における濃縮装置200を模式的に示す斜視図である。図3は、有機溶剤回収システム1における膜分離装置400を模式的に示す断面図である。
【0024】
図1を参照して、有機溶剤回収システム1は、生産設備1000から排出される原ガス(G10)中の有機溶剤を回収液として回収する。有機溶剤回収システム1は、濃縮装置200、冷却装置300、膜分離装置400、熱交換部500(他の熱交換部)、および熱交換部600を備えている。
【0025】
(濃縮装置200)
図2を参照して、回転式の濃縮装置200は、吸着素子としての筒状の吸着体20と、吸着部21と、脱着部22とを有している。吸着体20は、吸着剤として、活性炭、活性炭素繊維またはゼオライト等を含んでいる。吸着体20は、ハニカム(ハニカムローター)構造を有しているとよい。吸着体20は、筒軸23周りに矢印A方向に回転する。吸着体20の回転により、吸着体20は吸着部21および脱着部22を交互に通過する。
【0026】
吸着部21を通過する吸着体20に、有機溶剤含有ガス(G11)が配管ラインL1を通して供給される。有機溶剤含有ガス(G11)と吸着体20との接触により、有機溶剤含有ガス(G11)中の有機溶剤が吸着材に吸着される。この吸着によって有機溶剤含有ガス(G11)は清浄化され、清浄ガス(G12)が吸着部21から配管ラインL2を通して排出される。
【0027】
脱着部22を通過する吸着体20に、有機溶剤含有ガス(G11)よりも高温の加熱ガス(G13)が配管ラインL4を通して供給される。加熱ガス(G13)と吸着体20との接触により、吸着体20が吸着していた有機溶剤は脱着される。加熱ガス(G13)によるこの脱着によって、有機溶剤を高濃度に含む脱着ガス(G14)が脱着部22から配管ラインL5を通して排出される。
【0028】
吸着体20は、脱着部22における脱着によって再生される。吸着体20は再び吸着部21を通過する。濃縮装置200は、これらの吸着および脱着の一連の動作を繰り返すことにより、有機溶剤含有ガス(G11)を連続的に濃縮することができる。
【0029】
図1を再び参照して、上述のとおり、吸着部21に接続された配管ラインL1は、吸着部21に有機溶剤含有ガス(G11)を導入する。有機溶剤含有ガス(G11)は、生産設備1000から排出される原ガス(G10)と、後述する未凝縮ガス(G17)とを含んでいる。
【0030】
吸着部21に接続された配管ラインL2は、吸着部21から清浄ガス(G12)を導出する。配管ラインL2には、加熱装置700に向かって分岐する配管ラインL3が接続されている。配管ラインL3には、加熱装置700への清浄ガス(G12)の流量を調節するバルブV101が設けられているとよい。
【0031】
脱着部22に接続された配管ラインL4は、加熱装置700から脱着部22に加熱ガス(G13)を導入する。脱着部22に接続された配管ラインL5は、脱着部22から脱着ガス(G14)を導出する。脱着部22における有機溶剤の脱着のためには、清浄ガス(G12)を加熱して加熱ガス(G13)として脱着部22に導入する以外にも、水蒸気または高温の不活性ガス等を直接脱着部22に導入してもよい。
【0032】
(冷却装置300)
冷却装置300には、熱交換部500における熱交換(詳細は後述する)によって降温された脱着ガス(G14)が、配管ラインL5を通して導入される。冷却装置300は冷却水等を用いて脱着ガス(G14)を冷却する。脱着ガス(G14)は、有機溶剤を高濃度に含有する凝縮液(E10)と、有機溶剤を低濃度に含有する未凝縮ガス(G17)とに分離される。
【0033】
凝縮液(E10)は、配管ラインL6を通して膜分離装置400へと導出される。膜分離装置400には、熱交換部500における熱交換(詳細は後述する)によって昇温された凝縮液(E10)が導入される。配管ラインL6には、膜分離装置400への凝縮液(E10)の流量を調節するバルブV102が設けられているとよい。
【0034】
未凝縮ガス(G17)は、配管ラインL7を通して配管ラインL1へと導出される。配管ラインL1には、熱交換部600における熱交換(詳細は後述する)によって昇温された未凝縮ガス(G17)が導入される。配管ラインL7には、配管ラインL1への未凝縮ガス(G17)の流量を調節するバルブV103が設けられているとよい。
【0035】
(膜分離装置400)
浸透気化分離法に基づく膜分離装置400は、凝縮液(E10)に含有される水分、または凝縮液(E10)に含有される酸が混入した水分を選択的に透過して分離する。
【0036】
図3を参照して、膜分離装置400は、外殻となるシェル41と、シェル41の内部に収容された内部中空の分離膜42と、分離膜42に連通する吸引管44と、シェル41の外壁を貫通する導入口45と、シェル41の外壁を貫通する導出口46とを備えている。
【0037】
分離膜42の(紙面左側の)一端は支持部材43aによって支持され、分離膜42の(紙面右側の)他端は支持部材43bによって支持されている。分離膜42の他端は吸引管44に接続されている。吸引管44には、分離膜42の内部を減圧可能な真空ポンプ(図示せず)などの吸引手段が設けられている。
【0038】
導入口45に接続された配管ラインL6は、冷却装置300の凝縮液(E10)をシェル41の内部に導入する。凝縮液(E10)は分離膜42に接触する。分離膜42は、真空ポンプなどの吸引によって、凝縮液(E10)に含有される水分(または酸が混入した水分)を選択的に透過させる。この透過作用によって凝縮液(E10)は、水分を含む透過液(E11)と、水分を含まない濃縮液(E12)とに分離される。透過液(E11)は、吸引管44に接続された配管ラインL8を通して導出される。濃縮液(E12)は、導出口46に接続された配管ラインL9を通して導出される。
【0039】
ここで、分離膜42としては炭素膜を利用するとよい。凝縮液(E10)は比較的高温の液体であり、且つ凝縮液(E10)には酸が含まれる場合がある。耐熱性および耐酸性に優れた炭素膜を利用することで、膜分離装置400の高寿命化を図ることができる。分離膜42として炭素膜を利用する場合、水分と炭素膜に含有される金属との反応によって膜分離装置400内に酸が発生することがある。炭素膜中の金属種や量を最適化することによって酸の発生を抑制するとよい。
【0040】
炭素膜中の金属種や量を最適化するためには、たとえば原料の選定や炭素膜製造条件の調整によって、たとえばF,P,S,Cl,K,Ca,Cr,Fe,Zn,Na,Mg,Cu,Co,Mn,Ni等の金属の含有量をそれぞれ500ppm以下に抑える。炭素膜の製造過程または後処理によって、たとえば塩酸等の無機酸で炭素膜中の金属を洗浄することによって、炭素膜中の金属量を低減することができる。なお分離膜42としては、各種の無機膜や高分子膜を利用してもよい。
【0041】
分離膜42は中空糸構造を有しているとよい。中空糸構造の採用により、他のチューブ構造等を有する分離膜を利用する場合に比べて、分離膜の単位容積当たりの表面積が大きくなる。膜分離装置400の分離能が向上し、膜分離装置400の小型化、低コスト化および省エネルギー化が可能になる。中空糸構造を有する炭素膜の原料としては、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリフルフリルアルコール、フェノール樹脂などを利用することができる。
【0042】
中空糸構造を有する炭素膜は、上述の樹脂原料等を中空状に加工し、さらにそれらを不活性雰囲気中で熱処理することによって製造することができる。熱処理温度としては、樹脂の熱分解開始温度以上(たとえば約250℃以上)にするとよい。熱処理温度が高すぎると熱収縮で炭素膜の細孔が閉塞してしまうため、熱処理温度は1300℃以下にするとよい。
【0043】
不活性雰囲気中の熱処理の前に、空気中での熱処理(耐炎化、不融化、熱安定化ともいう)や、樹脂に難燃剤などを付与してもよい。不活性雰囲気中の熱処理の後に、薬品による処理や、熱処理などによる表面処理を加えてもよい。炭素膜は、炭素、水素、酸素、窒素、硫黄などの元素と、前述の金属成分で構成され、主成分としては炭素であり、その含有率は60%以上99.9%以下である。
【0044】
図1を再び参照して、膜分離装置400から排出された透過液(E11)は、熱交換部600の熱交換作用(詳細は後述する)によって凝縮し、配管ラインL8を通して回収タンク(図示せず)等に透過液として回収される。膜分離装置400から排出された濃縮液(E12)は、熱交換部600の熱交換作用(詳細は後述する)によって凝縮し、配管ラインL9を通して他の回収タンク(図示せず)等に回収液として回収される。
【0045】
(熱交換部500)
熱交換部500は、たとえば熱交換器であり、配管ラインL5と配管ラインL6とを熱的に接触させる。熱交換部500は、配管ラインL5を通過する脱着ガス(G14)が持つ潜熱(または顕熱、以下同じ)を、配管ラインL6を通過する凝縮液(E10)に付与させる。
【0046】
(熱交換部600)
熱交換部600は、たとえば熱交換器であり、配管ラインL7と配管ラインL8,L9とを熱的に接触させる。熱交換部600は、配管ラインL8を通過する透過液(E11)および配管ラインL9を通過する濃縮液(E12)が持つ潜熱を、配管ラインL7を通過する未凝縮ガス(G17)に付与させる。未凝縮ガス(G17)との熱交換によって、透過液(E11)および濃縮液(E12)は冷却される。
【0047】
熱交換部500,600としては、たとえば蛇行管、直行管、フィン付き管等を用いた熱交換器が利用可能である。
【0048】
(回収液の回収)
有機溶剤回収システム1を用いて、生産設備1000から排出される原ガス(G10)に含まれる有機溶剤[DMAC(N,N−ジメチルアセトアミド)]を回収するシステムについて以下説明する。有機溶剤回収システム1が処理回収する有機溶剤としては、N,N−ジメチルアセトアミド以外にも、n−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、またはn−デカンであってもよい。
【0049】
生産設備1000から排出される原ガス(G10)は、温度が約30℃、有機溶剤濃度が約500ppm、流量が約100NCMM、湿度が約17g/kgである。原ガス(G10)は、冷却装置300から排出され熱交換部600によって昇温した未凝縮ガス(G17)と混合される。熱交換部600によって昇温した未凝縮ガス(G17)は、温度が約24℃、有機溶剤濃度が約150ppm、流量が約20NCMMである。
【0050】
原ガス(G10)および未凝縮ガス(G17)は、混合されることによって有機溶剤含有ガス(G11)として濃縮装置200の吸着部21に導入される。有機溶剤含有ガス(G11)は、有機溶剤濃度が約442ppm、流量が約120NCMMである。
【0051】
有機溶剤含有ガス(G11)は、吸着部21において清浄化され、清浄ガス(G12)として排出される。清浄ガス(G12)は、有機溶剤濃度が約10ppm、流量が約100NCMMである。清浄ガス(G12)の一部は加熱装置700によって昇温され、加熱ガス(G13)として濃縮装置200の脱着部22に導入される。加熱ガス(G13)は、温度が約140℃、流量が約20NCMMである。
【0052】
加熱ガス(G13)は、脱着部22において有機溶剤を吸着素子から脱着させ、脱着ガス(G14)として排出される。脱着ガス(G14)は、有機溶剤濃度が約2600ppm、温度が約90℃、流量が約20NCMMである。脱着ガス(G14)は、凝縮液(E10)との熱交換部500における熱交換によって約86℃に降温された状態で、冷却装置300に導入される。
【0053】
脱着ガス(G14)は冷却装置300において冷却され、凝縮液(E10)と未凝縮ガス(G17)とに分離される。これらの温度は共に約20℃である。凝縮液(E10)における有機溶剤(DMAC)の質量流量は約194g/minであり、凝縮液(E10)における水の質量流量は256g/minである。
【0054】
未凝縮ガス(G17)は、透過液(E11)および濃縮液(E12)との熱交換部600における熱交換によって約24℃に昇温された状態で、配管ラインL1に導入される。凝縮液(E10)は、脱着ガス(G14)との熱交換部500における熱交換によって約80℃に昇温された状態で、膜分離装置400に導入される。凝縮液(E10)の昇温によって膜分離装置400における膜分離処理の分離能が向上し、膜分離処理は効率良く行なわれる。
【0055】
膜分離装置400において、凝縮液(E10)は透過液(E11)と濃縮液(E12)とに分離される。これらの温度は共に約80℃である。透過液(E11)および濃縮液(E12)は、未凝縮ガス(G17)との熱交換部600における熱交換によって、共に約30℃に降温する。透過液(E11)および濃縮液(E12)の降温によって、これらに含まれていた気体が凝固し、透過液(E11)および濃縮液(E12)のほとんどは液体に変化する(回収可能な状態となる)。
【0056】
透過液(E11)は、水を主成分とする透過液として回収される。濃縮液(E12)は、有機溶剤を高濃度に含む回収液として回収される。この回収液における有機溶剤(DMAC)の濃度は約98%であり、この回収液における水の濃度は約500ppmである。回収タンクに貯留された回収液は、所定量が貯まった後、有機溶剤回収システム1の外部へと排出される。
【0057】
(作用・効果)
有機溶剤回収システム1によれば、脱着部22から排出された脱着ガス(G14)は、熱交換部500における凝縮液(E10)との熱交換によって降温した状態で冷却装置300に導入される。冷却装置300が脱着ガス(G14)を20℃まで冷却するために、冷却装置300の稼動に必要なエネルギー(たとえば冷却水の温度調節に必要なエネルギーや冷却水の搬送に必要なエネルギー等)の使用量は少なくてすむ(比較例と対比し、詳細は後述する)。
【0058】
有機溶剤回収システム1によれば、透過液(E11)および濃縮液(E12)は、熱交換部600における未凝縮ガス(G17)との熱交換によって降温する。この熱交換によって、透過液(E11)および濃縮液(E12)は凝固する。透過液(E11)および濃縮液(E12)を凝固させるための、他の冷却装置が不要となる。仮に、透過液(E11)および濃縮液(E12)を凝固させるための他の冷却装置(図示せず)を設ける場合であっても、この他の冷却装置の稼動に必要なエネルギーの使用量は少なくてすむ。
【0059】
有機溶剤回収システム1によれば、未凝縮ガス(G17)は、熱交換部600における透過液(E11)および濃縮液(E12)との熱交換によって昇温する。この熱交換によって未凝縮ガス(G17)が気化し、未凝縮ガス(G17)はミスト状のガス成分を含まなくなる。濃縮装置200の吸着部21において、高効率の吸着処理が得られる。
【0060】
以上説明したとおり、有機溶剤回収システム1によれば、膜分離装置400の膜分離(精製)によって高濃度かつ高収率の有機溶剤を回収することが可能となる。有機溶剤回収システム1によれば、熱交換部500,600の熱交換によってより少ないエネルギー使用量で有機溶剤を回収することが可能となる。
【0061】
[比較例]
図4を参照して、上述の実施の形態1における有機溶剤回収システム1に対する比較例について説明する。ここでは、本比較例における有機溶剤回収システム1Aと、上述の実施の形態1における有機溶剤回収システム1との相違点について説明する。有機溶剤回収システム1Aは、加熱装置701と、冷却装置301とを備えている。
【0062】
有機溶剤回収システム1Aは、上述の実施の形態1における熱交換部500(図1参照)を備えていない。有機溶剤回収システム1Aにおいては、配管ラインL5を通過する脱着ガス(G14)が持つ潜熱は、配管ラインL6を通過する凝縮液(E10)に付与されない。有機溶剤回収システム1Aにおいては、冷却装置300から排出された凝縮液(E10)を、加熱装置701によって昇温させる必要がある。有機溶剤回収システム1Aにおいては、加熱装置701の稼動のために、上述の実施の形態1における有機溶剤回収システム1に比べて追加的なエネルギーが必要となる。
【0063】
上述の実施の形態1における有機溶剤回収システム1における冷却装置300は、熱交換部500(図1参照)の熱交換作用によって、脱着ガス(G14)の温度を86℃から20℃まで冷却している。本比較例における有機溶剤回収システム1Aは熱交換部500を備えていないため、冷却装置300は、脱着ガス(G14)の温度を90℃(図4参照)から20℃まで冷却する必要がある。有機溶剤回収システム1Aにおいては、冷却装置300の稼動のために、上述の実施の形態1における有機溶剤回収システム1に比べて追加的なエネルギーが必要となる。
【0064】
有機溶剤回収システム1Aは、上述の実施の形態1における熱交換部600(図1参照)も備えていない。有機溶剤回収システム1Aにおいては、未凝縮ガス(G17)の熱エネルギーによって、透過液(E11)および濃縮液(E12)が冷却される態様とはなっていない。有機溶剤回収システム1Aにおいては、膜分離装置400から排出された透過液(E11)および濃縮液(E12)を、冷却装置301によって冷却する必要がある。有機溶剤回収システム1Aにおいては、冷却装置301の稼動のために、上述の実施の形態1における有機溶剤回収システム1に比べて追加的なエネルギーが必要となる。
【0065】
上述の実施の形態1における有機溶剤回収システム1によれば、熱交換部500,600の熱交換によってより少ないエネルギー使用量で有機溶剤を回収することが可能となる。上述の実施の形態1における有機溶剤回収システム1によれば、加熱装置701および冷却装置301を備えていないことによって、有機溶剤回収システム1Aよりも安価に製造されることが可能となる。
【0066】
[実施の形態1の他の形態]
図2を参照して、上述の実施の形態1における濃縮装置200は回転式である。濃縮装置200は、塔切替(ダンパー切替)によって連続的に吸着および脱着が行なわれるバッチ式の濃縮装置であってもよい。
【0067】
図1を参照して、上述の実施の形態1における有機溶剤回収システム1は、熱交換部500および熱交換部600の双方を備えている。有機溶剤回収システム1は、熱交換部500および熱交換部600の一方のみを備えていてもよい。
【0068】
上述の実施の形態1においては、熱交換部600において、透過液(E11)および濃縮液(E12)の双方が持つ潜熱を、未凝縮ガス(G17)に付与させている。熱交換部600においては、透過液(E11)が持つ潜熱のみを未凝縮ガス(G17)に付与させてもよく、濃縮液(E12)が持つ潜熱のみを未凝縮ガス(G17)に付与させてもよい。
【0069】
[実施の形態2]
図5を参照して、本実施の形態における有機溶剤回収システム2について説明する。図5は、有機溶剤回収システム2を示すシステム構成図である。有機溶剤回収システム2は、生産設備1000から排出される原ガス(G20)中の有機溶剤を回収液として回収する。有機溶剤回収システム2は、濃縮装置200、冷却装置300、膜分離装置400、熱交換部500(他の熱交換部)、および熱交換部600を備えている。
【0070】
(冷却装置300)
配管ラインL1は、生産設備1000および冷却装置300に接続されている。冷却装置300には、生産設備1000から排出された原ガス(G20)と、後述する脱着ガス(G24)とが混合された混合ガス(G20a)が導入される。冷却装置300は、混合ガス(G20a)を冷却する。混合ガス(G20a)は、凝縮液(E20)と、有機溶剤含有ガス(G21)とに分離され、冷却された状態でそれぞれ排出される。
【0071】
凝縮液(E20)は、配管ラインL6を通して膜分離装置400へと導出される。配管ラインL6には、膜分離装置400への凝縮液(E20)の流量を調節するバルブV102が設けられているとよい。膜分離装置400には、熱交換部500における熱交換(詳細は後述する)によって昇温された凝縮液(E20)が導入される。
【0072】
有機溶剤含有ガス(G21)は、配管ラインL7を通して濃縮装置200の吸着部21へと導出される。有機溶剤含有ガス(G21)は、熱交換部600における熱交換(詳細は後述する)によって昇温された状態で、吸着部21に導入される。配管ラインL7には、吸着部21への有機溶剤含有ガス(G21)の流量を調節するバルブV103が設けられているとよい。また、配管ラインL7には、必要に応じて有機溶剤含有ガス(G21)をさらに昇温可能な加熱装置701が設けられているとよい。配管ラインL10を通して、加熱装置701から有機溶剤含有ガス(G21)がさらに昇温された状態で吸着部21へと導出される。
【0073】
(濃縮装置200)
濃縮装置200は、上述の実施の形態1における濃縮装置200と同様に構成され、回転式であってもよく、バッチ式であってもよい。吸着部21に導入された有機溶剤含有ガス(G21)は清浄化され、清浄ガス(G22)として配管ラインL2から導出される。配管ラインL2には、加熱装置700に向かって分岐する配管ラインL3が接続されている。配管ラインL3には、加熱装置700への清浄ガス(G22)の流量を調節するバルブV101が設けられているとよい。
【0074】
脱着部22に接続された配管ラインL4は、加熱装置700から脱着部22に加熱ガス(G23)を導入する。脱着部22に接続された配管ラインL5は、脱着部22から脱着ガス(G24)を導出する。配管ラインL5に接続された配管ラインL1には、熱交換部500における熱交換(詳細は後述する)によって降温された脱着ガス(G24)が導入される。
【0075】
(膜分離装置400)
膜分離装置400は、上述の実施の形態1における膜分離装置400と同様に構成される。膜分離装置400には、熱交換部500における熱交換(詳細は後述する)によって昇温された凝縮液(E20)が、配管ラインL6を通して導入される。膜分離装置400における透過作用によって、凝縮液(E20)は、水分を含む透過液(E21)と、水分を含まない濃縮液(E22)とに分離される。透過液(E21)は、配管ラインL8を通して排出される。濃縮液(E22)は、配管ラインL9を通して排出される。
【0076】
透過液(E21)は、熱交換部600の熱交換作用(詳細は後述する)によって凝縮し、配管ラインL8を通して回収タンク(図示せず)等に透過液として回収される。濃縮液(E22)は、熱交換部600の熱交換作用(詳細は後述する)によって凝縮し、配管ラインL9を通して他の回収タンク(図示せず)等に回収液として回収される。
【0077】
(熱交換部500)
熱交換部500は、たとえば熱交換器であり、配管ラインL5と配管ラインL6とを熱的に接触させる。熱交換部500は、配管ラインL5を通過する脱着ガス(G24)が持つ潜熱を、配管ラインL6を通過する凝縮液(E20)に付与させる。
【0078】
(熱交換部600)
熱交換部600は、たとえば熱交換器であり、配管ラインL7と配管ラインL8,L9とを熱的に接触させる。熱交換部600は、配管ラインL8を通過する透過液(E21)および配管ラインL9を通過する濃縮液(E22)が持つ潜熱を、配管ラインL7を通過する有機溶剤含有ガス(G21)に付与させる。有機溶剤含有ガス(G21)との熱交換によって、透過液(E21)および濃縮液(E22)は冷却される。
【0079】
(回収液の回収)
有機溶剤回収システム2を用いて、生産設備1000から排出される原ガス(G20)に含まれる有機溶剤[DMAC(N,N−ジメチルアセトアミド)]を回収するシステムについて以下説明する。有機溶剤回収システム2が処理回収する有機溶剤としては、N,N−ジメチルアセトアミド以外にも、n−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、またはn−デカンであってもよい。
【0080】
生産設備1000から排出される原ガス(G20)は、温度が約30℃、有機溶剤濃度が約500ppm、流量が約100NCMM、湿度が約17g/kgである。原ガス(G20)は、脱着部22から排出され熱交換部500によって降温した脱着ガス(G24)と混合される。熱交換部500によって降温した脱着ガス(G24)は、有機溶剤濃度が約2600ppm、温度が約86℃、流量が約20NCMMである。
【0081】
原ガス(G20)および脱着ガス(G24)は、混合されることによって混合ガス(G20a)となる。混合ガス(G20a)は、温度が約39.3℃、有機溶剤濃度が約850ppm、流量が約120NCMMである。
【0082】
混合ガス(G20a)は冷却装置300において冷却され、凝縮液(E20)と有機溶剤含有ガス(G21)とに分離される。凝縮液(E20)の温度は約20℃である。有機溶剤含有ガス(G21)は、温度が約25℃、有機溶剤濃度が約300ppm、流量が約120NCMMである。有機溶剤含有ガス(G21)は、熱交換部600によって昇温された状態で(温度約27℃)、吸着部21に導入される。なお、加熱装置701が設けられている場合、有機溶剤含有ガス(G21)は、温度約28℃にさらに昇温された状態で、吸着部21に導入される。
【0083】
有機溶剤含有ガス(G21)は、吸着部21において清浄化され、清浄ガス(G22)として排出される。清浄ガス(G22)は、有機溶剤濃度が約10ppm、流量が約100NCMMである。清浄ガス(G22)の一部は加熱装置700によって昇温され、加熱ガス(G23)として濃縮装置200の脱着部22に導入される。加熱ガス(G23)は、温度が約140℃、流量が約20NCMMである。
【0084】
加熱ガス(G23)は、脱着部22において有機溶剤を吸着素子から脱着させ、脱着ガス(G24)として排出される。脱着ガス(G24)は、有機溶剤濃度が約2600ppm、温度が約90℃、流量が約20NCMMである。脱着ガス(G24)は、凝縮液(E20)との熱交換部500における熱交換によって約86℃に降温された状態で、配管ラインL1に導入される。
【0085】
凝縮液(E20)は、脱着ガス(G24)との熱交換部500における熱交換によって約80℃に昇温された状態で、膜分離装置400に導入される。凝縮液(E20)の昇温によって膜分離装置400における膜分離処理の分離能が向上し、膜分離処理は効率良く行なわれる。
【0086】
膜分離装置400において、凝縮液(E20)は透過液(E21)と濃縮液(E22)とに分離される。これらの温度は共に約80℃である。透過液(E21)および濃縮液(E22)は、有機溶剤含有ガス(G21)との熱交換部600における熱交換によって、共に約40℃に降温する。透過液(E21)および濃縮液(E22)の降温によって、これらに含まれていた気体が凝固し、透過液(E21)および濃縮液(E22)のほとんどは液体に変化する(回収可能な状態となる)。
【0087】
透過液(E21)は、水を主成分とする透過液として回収される。濃縮液(E22)は、有機溶剤を高濃度に含む回収液として回収される。この回収液における有機溶剤(DMAC)の濃度は約98%であり、この回収液における水の濃度は約460ppmである。回収タンクに貯留された回収液は、所定量が貯まった後、有機溶剤回収システム2の外部へと排出される。
【0088】
(作用・効果)
有機溶剤回収システム2によれば、脱着部22から排出された脱着ガス(G24)は、熱交換部500における凝縮液(E20)との熱交換によって降温した状態で冷却装置300に導入される。冷却装置300が脱着ガス(G24)(混合ガス(G20a))を冷却するために、冷却装置300の稼動に必要なエネルギーの使用量は少なくてすむ。
【0089】
有機溶剤回収システム2によれば、透過液(E21)および濃縮液(E22)は、熱交換部600における有機溶剤含有ガス(G21)との熱交換によって降温する。この熱交換によって、透過液(E21)および濃縮液(E22)は凝固する。透過液(E21)および濃縮液(E22)を凝固させるための、他の冷却装置が不要となる。仮に、透過液(E21)および濃縮液(E22)を凝固させるための他の冷却装置(図示せず)を設ける場合であっても、この他の冷却装置の稼動に必要なエネルギーの使用量は少なくてすむ。
【0090】
以上説明したとおり、有機溶剤回収システム2によれば、膜分離装置400の膜分離(精製)によって高濃度かつ高収率の有機溶剤を回収することが可能となる。有機溶剤回収システム2によれば、熱交換部500,600の熱交換によってより少ないエネルギー使用量で有機溶剤を回収することが可能となる。
【0091】
[実施の形態2の他の形態]
上述の実施の形態2における有機溶剤回収システム2は、熱交換部500および熱交換部600の双方を備えている。有機溶剤回収システム2は、熱交換部500および熱交換部600の一方のみを備えていてもよい。
【0092】
上述の実施の形態2においては、熱交換部600において、透過液(E21)および濃縮液(E22)の双方が持つ潜熱を、有機溶剤含有ガス(G21)に付与させている。熱交換部600においては、透過液(E21)が持つ潜熱のみを有機溶剤含有ガス(G21)に付与させてもよく、濃縮液(E22)が持つ潜熱のみを有機溶剤含有ガス(G21)に付与させてもよい。
【0093】
[実施の形態3]
図6を参照して、本実施の形態における有機溶剤回収システム3について説明する。図6は、有機溶剤回収システム3を示すシステム構成図である。有機溶剤回収システム3は、生産設備1000から排出される原ガス(G30)中の有機溶剤を回収する。有機溶剤回収システム3は、再生ヒータ100、濃縮装置200、冷却装置300、膜分離装置400、熱交換部500(他の熱交換部)、熱交換部600、および加熱装置700を備えている。
【0094】
(再生ヒータ100)
生産設備1000および再生ヒータ100に接続された配管ラインL1は、生産設備1000からの原ガス(G30)を再生ヒータ100に導入する。原ガス(G30)の温度が十分に高温の場合には、再生ヒータ100が用いられることはない。生産設備1000が稼動初期状態で、原ガス(G30)の温度が所定温度に達していない場合には、再生ヒータ100を用いることによって原ガス(G30)が所定温度にまで昇温される。
【0095】
(濃縮装置200)
濃縮装置200は、上述の実施の形態1における濃縮装置200と同様に構成され、回転式であってもよく、バッチ式であってもよい。再生ヒータ100および濃縮装置200に接続された配管ラインL10は、高温の原ガス(G30)を濃縮装置200の脱着部22に導入する。脱着部22に接続された配管ラインL2は、脱着部22から脱着ガス(G31)を導出する。
【0096】
(冷却装置300)
配管ラインL2に接続された冷却装置300には、熱交換部500の熱交換(詳細は後述する)によって降温された脱着ガス(G31)が導入される。冷却装置300は、脱着ガス(G31)を冷却する。脱着ガス(G31)は、凝縮液(E30)と、未凝縮ガス(G32)とに分離される。
【0097】
凝縮液(E30)は、配管ラインL3を通して膜分離装置400へと導出される。配管ラインL3には、膜分離装置400への凝縮液(E30)の流量を調節するバルブV102が設けられているとよい。膜分離装置400には、熱交換部500における熱交換(詳細は後述する)によって昇温された凝縮液(E30)が導入される。
【0098】
未凝縮ガス(G32)は、配管ラインL4を通して加熱装置700へと導出される。配管ラインL4には、未凝縮ガス(G32)の流量を調節するバルブV103が設けられているとよい。加熱装置700には、熱交換部600の熱交換(詳細は後述する)によって昇温された未凝縮ガス(G32)が導入される。
【0099】
加熱装置700および濃縮装置200に接続された配管ラインL7は、加熱装置700によって昇温された未凝縮ガス(G32)を濃縮装置200の吸着部21に導入する。未凝縮ガス(G32)は清浄化され、清浄ガス(G33)として配管ラインL8から排出される。配管ラインL8には、生産設備1000に向かって分岐する配管ラインL9が接続されている。配管ラインL9には、生産設備1000への清浄ガス(G33)の流量を調節するバルブV101が設けられているとよい。
【0100】
(膜分離装置400)
膜分離装置400は、上述の実施の形態1における膜分離装置400と同様に構成される。膜分離装置400には、熱交換部500の熱交換(詳細は後述する)によって昇温された凝縮液(E30)が、配管ラインL3を通して導入される。膜分離装置400における透過作用によって凝縮液(E30)は、水分を含む透過液(E31)と、水分を含まない濃縮液(E32)とに分離される。透過液(E31)は、配管ラインL5を通して排出される。濃縮液(E32)は、配管ラインL6を通して排出される。
【0101】
透過液(E31)は、熱交換部600の熱交換作用(詳細は後述する)によって凝縮し、配管ラインL5を通して回収タンク(図示せず)等に透過液として回収される。濃縮液(E32)は、熱交換部600の熱交換作用(詳細は後述する)によって凝縮し、配管ラインL6を通して他の回収タンク(図示せず)等に回収液として回収される。
【0102】
(熱交換部500)
熱交換部500は、たとえば熱交換器であり、配管ラインL2と配管ラインL3とを熱的に接触させる。熱交換部500は、配管ラインL2を通過する脱着ガス(G31)が持つ潜熱を、配管ラインL3を通過する凝縮液(E30)に付与させる。
【0103】
(熱交換部600)
熱交換部600は、たとえば熱交換器であり、配管ラインL4と配管ラインL5,L6とを熱的に接触させる。熱交換部600は、配管ラインL5を通過する透過液(E31)および配管ラインL6を通過する濃縮液(E32)が持つ潜熱を、配管ラインL4を通過する未凝縮ガス(G32)に付与させる。未凝縮ガス(G32)との熱交換によって、透過液(E31)および濃縮液(E32)は冷却される。
【0104】
(回収液の回収)
有機溶剤回収システム3を用いて、生産設備1000から排出される原ガス(G30)に含まれる有機溶剤[DMP(N−メチルピロリドン)]を回収するシステムについて以下説明する。有機溶剤回収システム3が処理回収する有機溶剤としては、n−メチルピロリドン以外にも、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、またはn−デカンであってもよい。
【0105】
生産設備1000から排出される原ガス(G30)は、温度が約130℃、有機溶剤濃度が約2000ppm、流量が約770NCMM、湿度が約15g/kgである。脱着部22に導入された原ガス(G30)は、脱着ガス(G31)として排出される。脱着ガス(G31)は、温度が約100℃、有機溶剤濃度が約3000ppm、流量が約770NCMMである。脱着ガス(G31)は、熱交換部500によって降温された状態で(温度約99℃)、冷却装置300に導入される。
【0106】
脱着ガス(G31)は冷却装置300において冷却され、凝縮液(E30)と未凝縮ガス(G32)とに分離される。凝縮液(E30)の温度は約37℃である。未凝縮ガス(G32)は、温度が約37℃、有機溶剤濃度が約1000ppm、流量が約770NCMMである。
【0107】
未凝縮ガス(G32)は、透過液(E31)および濃縮液(E32)との熱交換部600における熱交換によって約38℃に昇温された状態で、加熱装置700に導入される。未凝縮ガス(G32)は、加熱装置700によって昇温された状態で(温度約40℃)、濃縮装置200の吸着部21に導入される。未凝縮ガス(G32)は、吸着部21において清浄化され、清浄ガス(G33)として排出される。清浄ガス(G33)は、有機溶剤濃度が約10ppm、流量が約770NCMMである。清浄ガス(G33)の一部は生産設備1000に導入される。
【0108】
凝縮液(E30)は、脱着ガス(G31)との熱交換部500における熱交換によって約90℃に昇温された状態で、膜分離装置400に導入される。凝縮液(E30)の昇温によって膜分離装置400における膜分離処理の分離能が向上し、膜分離処理は効率良く行なわれる。
【0109】
膜分離装置400において、凝縮液(E30)は透過液(E31)と濃縮液(E32)とに分離される。これらの温度は共に約90℃である。透過液(E31)および濃縮液(E32)は、未凝縮ガス(G32)との熱交換部600における熱交換によって、共に約40℃に降温する。透過液(E31)および濃縮液(E32)の降温によって、これらに含まれていた気体が凝固し、透過液(E31)および濃縮液(E32)のほとんどは液体に変化する(回収可能な状態となる)。
【0110】
透過液(E31)は、水を主成分とする透過液として回収される。濃縮液(E32)は、有機溶剤を高濃度に含む回収液として回収される。この回収液における有機溶剤(NMP)の濃度は約99%であり、この回収液における水の濃度は約300ppmである。回収タンクに貯留された回収液は、所定量が貯まった後、有機溶剤回収システム3の外部へと排出される。
【0111】
(作用・効果)
有機溶剤回収システム3によれば、脱着部22から排出された脱着ガス(G31)は、熱交換部500における凝縮液(E30)との熱交換によって降温した状態で冷却装置300に導入される。冷却装置300が脱着ガス(G31)を冷却するために、冷却装置300の稼動に必要なエネルギーの使用量は少なくてすむ。
【0112】
有機溶剤回収システム3によれば、透過液(E31)および濃縮液(E32)は、熱交換部600における未凝縮ガス(G32)との熱交換によって降温する。この熱交換によって、透過液(E31)および濃縮液(E32)は凝固する。透過液(E31)および濃縮液(E32)を凝固させるための、他の冷却装置が不要となる。仮に、透過液(E31)および濃縮液(E32)を凝固させるための他の冷却装置(図示せず)を設ける場合であっても、この他の冷却装置の稼動に必要なエネルギーの使用量は少なくてすむ。
【0113】
有機溶剤回収システム3によれば、未凝縮ガス(G32)は、熱交換部600における透過液(E31)および濃縮液(E32)との熱交換によって昇温する。この熱交換によって、加熱装置700が未凝縮ガス(G32)を加熱するために、加熱装置700の稼動に必要なエネルギーの使用量は少なくてすむ。
【0114】
以上説明したとおり、有機溶剤回収システム3によれば、膜分離装置400の膜分離(精製)によって高濃度かつ高収率の有機溶剤を回収することが可能となる。有機溶剤回収システム3によれば、熱交換部500,600の熱交換によってより少ないエネルギー使用量で有機溶剤を回収することが可能となる。
【0115】
[実施の形態3の他の形態]
上述の実施の形態3における有機溶剤回収システム3は、熱交換部500および熱交換部600の双方を備えている。有機溶剤回収システム3は、熱交換部500および熱交換部600の一方のみを備えていてもよい。
【0116】
上述の実施の形態3においては、熱交換部600において、透過液(E31)および濃縮液(E32)の双方が持つ潜熱を、未凝縮ガス(G32)に付与させている。熱交換部600においては、透過液(E31)が持つ潜熱のみを未凝縮ガス(G32)に付与させてもよく、濃縮液(E32)が持つ潜熱のみを未凝縮ガス(G32)に付与させてもよい。
【0117】
[実施の形態4]
図7を参照して、本実施の形態における有機溶剤回収システム4について説明する。図7は、有機溶剤回収システム4を示すシステム構成図である。有機溶剤回収システム4は、生産設備1000から排出される原ガス(G40)中の有機溶剤を回収する。有機溶剤回収システム4は、再生ヒータ100、濃縮装置200、冷却装置300、膜分離装置400、熱交換部500(他の熱交換部)、熱交換部600、および加熱装置700を備えている。
【0118】
(再生ヒータ100)
生産設備1000および再生ヒータ100に接続された配管ラインL1は、生産設備1000からの原ガス(G40)を再生ヒータ100に導入する。配管ラインL1には、再生ヒータ100への原ガス(G40)の流量を調節するバルブV104が設けられているとよい。再生ヒータ100は、必要に応じて原ガス(G40)を所定温度にまで昇温させる。
【0119】
配管ラインL1には、配管ラインL2に向かって分岐する配管ラインL11が接続されている。配管ラインL11を通して、生産設備1000からの原ガス(G40)の一部は配管ラインL2に直接導出される。配管ラインL11には、配管ラインL2への原ガス(G40)の流量を調節するバルブV105が設けられているとよい。
【0120】
(濃縮装置200)
濃縮装置200は、上述の実施の形態1における濃縮装置200と同様に構成され、回転式であってもよく、バッチ式であってもよい。再生ヒータ100および濃縮装置200に接続された配管ラインL10は、高温の原ガス(G40)を濃縮装置200の脱着部22に導入する。脱着部22に接続された配管ラインL2は、脱着部22から脱着ガス(G41)を導出する。
【0121】
(冷却装置300)
配管ラインL2に接続された冷却装置300には、配管ラインL11から導出された原ガス(G40)と、脱着部22から排出された脱着ガス(G41)とが混合された混合ガス(G41a)が導入される。混合ガス(G41a)は、熱交換部500の熱交換(詳細は後述する)によって降温された状態で、冷却装置300に導入される。冷却装置300は、混合ガス(G41a)を冷却する。混合ガス(G41a)は、凝縮液(E40)と、未凝縮ガス(G42)とに分離される。
【0122】
凝縮液(E40)は、配管ラインL3を通して膜分離装置400へと導出される。配管ラインL3には、膜分離装置400への凝縮液(E40)の流量を調節するバルブV102が設けられているとよい。膜分離装置400には、熱交換部500の熱交換(詳細は後述する)によって昇温された凝縮液(E40)が導入される。
【0123】
未凝縮ガス(G42)は、配管ラインL4を通して加熱装置700へと導出される。配管ラインL4には、加熱装置700への未凝縮ガス(G32)の流量を調節するバルブV103が設けられているとよい。加熱装置700には、熱交換部600の熱交換(詳細は後述する)によって昇温された未凝縮ガス(G42)が導入される。
【0124】
加熱装置700および濃縮装置200に接続された配管ラインL7は、加熱装置700によって昇温された未凝縮ガス(G42)を濃縮装置200の吸着部21に導入する。未凝縮ガス(G42)は、吸着部21において清浄化され、清浄ガス(G43)として配管ラインL8から排出される。配管ラインL8には、生産設備1000に向かって分岐する配管ラインL9が接続されている。配管ラインL9には、生産設備1000への清浄ガス(G43)の流量を調節するバルブV101が設けられているとよい。
【0125】
(膜分離装置400)
膜分離装置400は、上述の実施の形態1における膜分離装置400と同様に構成される。膜分離装置400には、熱交換部500の熱交換(詳細は後述する)によって昇温された凝縮液(E40)が、配管ラインL3を通して導入される。膜分離装置400における透過作用によって凝縮液(E40)は、水分を含む透過液(E41)と、水分を含まない濃縮液(E42)とに分離される。透過液(E41)は、配管ラインL5を通して排出される。濃縮液(E42)は、配管ラインL6を通して排出される。
【0126】
透過液(E41)は、熱交換部600の熱交換作用(詳細は後述する)によって凝縮し、配管ラインL5を通して回収タンク(図示せず)等に透過液として回収される。濃縮液(E42)は、熱交換部600の熱交換作用(詳細は後述する)によって凝縮し、配管ラインL6を通して他の回収タンク(図示せず)等に回収液として回収される。
【0127】
(熱交換部500)
熱交換部500は、たとえば熱交換器であり、配管ラインL2と配管ラインL3とを熱的に接触させる。熱交換部500は、配管ラインL2を通過する混合ガス(G41a)が持つ潜熱を、配管ラインL3を通過する凝縮液(E40)に付与させる。
【0128】
(熱交換部600)
熱交換部600は、たとえば熱交換器であり、配管ラインL4と配管ラインL5,L6とを熱的に接触させる。熱交換部600は、配管ラインL5を通過する透過液(E41)および配管ラインL6を通過する濃縮液(E42)が持つ潜熱を、配管ラインL4を通過する未凝縮ガス(G42)に付与させる。未凝縮ガス(G42)との熱交換によって、透過液(E41)および濃縮液(E42)は冷却される。
【0129】
(回収液の回収)
有機溶剤回収システム4を用いて、生産設備1000から排出される原ガス(G40)に含まれる有機溶剤[DMP(N−メチルピロリドン)]を回収するシステムについて以下説明する。有機溶剤回収システム4が処理回収する有機溶剤としては、n−メチルピロリドン以外にも、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、またはn−デカンであってもよい。
【0130】
生産設備1000から排出される原ガス(G40)は、温度が約110℃、有機溶剤濃度が約2000ppm、流量が約770NCMM、湿度が約15g/kgである。原ガス(G40)の一部は、再生ヒータ100によって約130℃に昇温された状態で、濃縮装置200の脱着部22に導入される。脱着部22に導入された一部の原ガス(G40)は、脱着ガス(G41)として排出される。脱着ガス(G41)は、温度が約100℃、有機溶剤濃度が約3000ppm、流量が約385NCMMである。
【0131】
原ガス(G40)の残部(流量約385NCMM)は、配管ラインL11を通して配管ラインL2に導入される。上記の脱着ガス(G41)と、原ガス(G40)の残部とは、混合されることによって混合ガス(G41a)となる。混合ガス(G41a)は、温度が約105℃、有機溶剤濃度が約2500ppm、流量が約770NCMMである。混合ガス(G41a)は、熱交換部500によって降温された状態で(温度約104℃)、冷却装置300に導入される。
【0132】
混合ガス(G41a)は冷却装置300において冷却され、凝縮液(E30)と未凝縮ガス(G42)とに分離される。凝縮液(E40)の温度は約37℃である。未凝縮ガス(G32)は、温度が約37℃、有機溶剤濃度が約1000ppm、流量が約770NCMMである。
【0133】
未凝縮ガス(G42)は、透過液(E41)および濃縮液(E42)との熱交換部600における熱交換によって約38℃に昇温された状態で、加熱装置700に導入される。未凝縮ガス(G42)は、加熱装置700によって昇温された状態で(温度約40℃)、濃縮装置200の吸着部21に導入される。未凝縮ガス(G42)は、吸着部21において清浄化され、清浄ガス(G43)として排出される。清浄ガス(G43)は、有機溶剤濃度が約10ppm、流量が約770NCMMである。清浄ガス(G43)の一部は生産設備1000に導入される。
【0134】
凝縮液(E40)は、混合ガス(G41a)との熱交換部500における熱交換によって約90℃に昇温された状態で、膜分離装置400に導入される。凝縮液(E40)の昇温によって膜分離装置400における膜分離処理の分離能が向上し、膜分離処理は効率良く行なわれる。
【0135】
膜分離装置400において、凝縮液(E40)は透過液(E41)と濃縮液(E42)とに分離される。これらの温度は共に約90℃である。透過液(E41)および濃縮液(E42)は、未凝縮ガス(G42)との熱交換部600における熱交換によって、共に約40℃に降温する。透過液(E41)および濃縮液(E42)の降温によって、これらに含まれていた気体が凝固し、透過液(E41)および濃縮液(E42)のほとんどは液体に変化する(回収可能な状態となる)。
【0136】
透過液(E41)は、水を主成分とする透過液として回収される。濃縮液(E42)は、有機溶剤を高濃度に含む回収液として回収される。この回収液における有機溶剤(NMP)の濃度は約99%であり、この回収液における水の濃度は約280ppmである。回収タンクに貯留された回収液は、所定量が貯まった後、有機溶剤回収システム4の外部へと排出される。
【0137】
(作用・効果)
有機溶剤回収システム4によれば、脱着ガス(G41)と原ガス(G40)の残部との混合ガス(G41a)は、熱交換部500における凝縮液(E40)との熱交換によって降温した状態で冷却装置300に導入される。冷却装置300が混合ガス(G41a)を冷却するために、冷却装置300の稼動に必要なエネルギーの使用量は少なくてすむ。
【0138】
有機溶剤回収システム4によれば、透過液(E41)および濃縮液(E42)は、熱交換部600における未凝縮ガス(G42)との熱交換によって降温する。この熱交換によって、透過液(E41)および濃縮液(E42)は凝固する。透過液(E41)および濃縮液(E42)を凝固させるための、他の冷却装置が不要となる。仮に、透過液(E41)および濃縮液(E42)を凝固させるための他の冷却装置(図示せず)を設ける場合であっても、この他の冷却装置の稼動に必要なエネルギーの使用量は少なくてすむ。
【0139】
有機溶剤回収システム4によれば、未凝縮ガス(G42)は、熱交換部600における透過液(E41)および濃縮液(E42)との熱交換によって昇温する。この熱交換によって、加熱装置700が未凝縮ガス(G42)を加熱するために、加熱装置700の稼動に必要なエネルギーの使用量は少なくてすむ。
【0140】
以上説明したとおり、有機溶剤回収システム4によれば、膜分離装置400の膜分離(精製)によって高濃度かつ高収率の有機溶剤を回収することが可能となる。有機溶剤回収システム4によれば、熱交換部500,600の熱交換によってより少ないエネルギー使用量で有機溶剤を回収することが可能となる。
【0141】
[実施の形態4の他の形態]
上述の実施の形態4における有機溶剤回収システム3は、熱交換部500および熱交換部600の双方を備えている。有機溶剤回収システム3は、熱交換部500および熱交換部600の一方のみを備えていてもよい。
【0142】
上述の実施の形態4においては、熱交換部600において、透過液(E41)および濃縮液(E42)の双方が持つ潜熱を、未凝縮ガス(G42)に付与させている。熱交換部600においては、透過液(E41)が持つ潜熱のみを未凝縮ガス(G42)に付与させてもよく、濃縮液(E42)が持つ潜熱のみを未凝縮ガス(G42)に付与させてもよい。
【0143】
上述の実施の形態4においては、生産設備1000から排出された原ガス(G40)の一部(50%)を脱着部22に導入し、生産設備1000から排出された原ガス(G40)の残部(50%)を配管ラインL2に導入している。原ガス(G40)の全部(100%)を、配管ラインL10を通じて直接冷却装置300に導入することも可能である。冷却装置300に導入する混合ガス(G40a)の想定される割合は、原ガス(G40)が0%〜50%、脱着ガス(G41)が50%〜100%程度である。
【0144】
以上、本発明に基づいた各実施の形態について説明したが、今回開示した上記各実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0145】
1〜4,1A 有機溶剤回収システム、20 吸着体、21 吸着部、22 脱着部、23 筒軸、41 シェル、42 分離膜、43a 支持部材、43b 支持部材、44 吸引管、45 導入口、46 導出口、100 再生ヒータ、200 濃縮装置、300,301 冷却装置、400 膜分離装置、500,600 熱交換部、700,701 加熱装置、1000 生産設備、A 矢印、L1〜L11 配管ライン、V101〜V105 バルブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤を含有する有機溶剤含有ガスから前記有機溶剤を回収する有機溶剤回収システムであって、
前記有機溶剤含有ガスを接触させることで前記有機溶剤を吸着し且つ前記有機溶剤含有ガスよりも高温の加熱ガスを接触させることで吸着した前記有機溶剤を脱着する吸着素子を含み、前記吸着素子に前記有機溶剤含有ガスが導入されることによって前記有機溶剤を前記吸着素子に吸着させて清浄ガスを排出する吸着部と、前記吸着素子に前記加熱ガスが導入されることによって前記有機溶剤を前記吸着素子から脱着させて前記有機溶剤を含有する脱着ガスを排出する脱着部と、を有する濃縮装置と、
前記脱着部から排出された前記脱着ガスを冷却する冷却装置と、
水を選択的に透過して分離する分離膜を含み、前記冷却装置の冷却によって凝縮するとともに前記冷却装置から排出された凝縮液を前記分離膜に供給することによって、前記有機溶剤を高濃度に含有する濃縮液と水を主成分とする透過液とに分離する膜分離装置と、
前記膜分離装置から排出された前記濃縮液およびまたは前記透過液と、前記冷却装置の冷却によって凝縮せずに前記冷却装置から排出された未凝縮ガスとを熱交換させる熱交換部と、を備える、
有機溶剤回収システム。
【請求項2】
有機溶剤を含有する有機溶剤含有ガスから前記有機溶剤を回収する有機溶剤回収システムであって、
前記有機溶剤含有ガスを接触させることで前記有機溶剤を吸着し且つ前記有機溶剤含有ガスよりも高温の加熱ガスを接触させることで吸着した前記有機溶剤を脱着する吸着素子を含み、前記吸着素子に前記有機溶剤含有ガスが導入されることによって前記有機溶剤を前記吸着素子に吸着させて清浄ガスを排出する吸着部と、前記吸着素子に前記加熱ガスが導入されることによって前記有機溶剤を前記吸着素子から脱着させて前記有機溶剤を含有する脱着ガスを排出する脱着部と、を有する濃縮装置と、
前記吸着部に導入される前記有機溶剤含有ガスを冷却した状態で排出する冷却装置と、
水を選択的に透過して分離する分離膜を含み、前記冷却装置の冷却によって凝縮するとともに前記冷却装置から排出された凝縮液を前記分離膜に供給することによって、前記有機溶剤を高濃度に含有する濃縮液と水を主成分とする透過液とに分離する膜分離装置と、
前記膜分離装置から排出された前記濃縮液およびまたは前記透過液と、前記吸着部に導入される前記有機溶剤含有ガスとを熱交換させる熱交換部と、を備える、
有機溶剤回収システム。
【請求項3】
前記脱着部から排出された前記脱着ガスと、前記冷却装置の冷却によって凝縮するとともに前記冷却装置から排出され前記分離膜に供給される前記凝縮液とを熱交換させる他の熱交換部をさらに備える、
請求項1または2に記載の有機溶剤回収システム。
【請求項4】
有機溶剤を含有する温度が約50℃〜約200℃の原ガスから前記有機溶剤を回収する有機溶剤回収システムであって、
前記有機溶剤を含有する有機溶剤含有ガスを接触させることで前記有機溶剤を吸着し且つ前記有機溶剤含有ガスよりも高温の前記原ガスを接触させることで吸着した前記有機溶剤を脱着する吸着素子を含み、前記吸着素子に前記有機溶剤含有ガスが導入されることによって前記有機溶剤を前記吸着素子に吸着させて清浄ガスを排出する吸着部と、前記吸着素子に前記原ガスが導入されることによって前記有機溶剤を前記吸着素子から脱着させて前記有機溶剤を含有する脱着ガスを排出する脱着部と、を有する濃縮装置と、
前記脱着ガスまたは前記原ガスを含む前記脱着ガスを冷却する冷却装置と、
水を選択的に透過して分離する分離膜を含み、前記冷却装置の冷却によって凝縮するとともに前記冷却装置から排出された凝縮液を前記分離膜に供給することによって、前記有機溶剤を高濃度に含有する濃縮液と水を主成分とする透過液とに分離する膜分離装置と、
前記膜分離装置から排出された前記濃縮液およびまたは前記透過液と、前記冷却装置の冷却によって凝縮せずに前記冷却装置から排出された未凝縮ガスとを熱交換させる熱交換部と、を備え、
前記有機溶剤含有ガスは、前記冷却装置の冷却によって凝縮せずに前記冷却装置から排出された前記未凝縮ガスであり、
前記冷却装置へ前記原ガスおよび前記脱着ガスを供給する割合は、前記原ガスが0%〜50%であり、前記脱着ガスが50%〜100%である、
有機溶剤回収システム。
【請求項5】
前記冷却装置に供給される前記脱着ガスまたは前記冷却装置に供給される前記原ガスを含む前記脱着ガスと、前記冷却装置の冷却によって凝縮するとともに前記冷却装置から排出され前記分離膜に供給される前記凝縮液とを熱交換させる他の熱交換部をさらに備える、
請求項4に記載の有機溶剤回収システム。
【請求項6】
前記濃縮装置は、
回転軸と、
前記回転軸の周りに設けられた前記吸着素子としての筒状吸着体と、を備え、
前記回転軸の周りに前記筒状吸着体を回転させることにより、前記吸着部において前記有機溶剤含有ガス中の前記有機溶剤を吸着した前記吸着素子が連続的に前記脱着部に移行する、
請求項1から5のいずれかに記載の有機溶剤回収システム。
【請求項7】
前記吸着素子は、ハニカム構造を有している、
請求項1から6のいずれかに記載の有機溶剤回収システム。
【請求項8】
前記膜分離装置は、浸透気化分離法に基づくものである、
請求項1から7のいずれかに記載の有機溶剤回収システム。
【請求項9】
前記有機溶剤は、n−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、またはn−デカンである、
請求項1から8のいずれかに記載の有機溶剤回収システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−5922(P2012−5922A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141740(P2010−141740)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】