説明

有機薄膜トランジスタ

【課題】塗工や印刷等の簡便なプロセスで製造でき、再現性のよい特性が得られる有機薄膜トランジスタを提供する。
【解決手段】有機半導体層が下記一般式で示されるカルボエステル基含有アゾ化合物を、化学的手段、熱的手段または光分解的手段を用いて脱カルボエステル化することにより、A(H)nで示されるアゾ顔料に変換された顔料を含有することを特徴とする有機トランジスタ。


〔Aはアゾ化合物の残基で、ヘテロ原子を介してn個のE基に結合し、このヘテロ原子は、NおよびOからなる群から選ばれ、残基Aの一部を形成し、E基はカルボエステル基:−C(=O)−O−R1(R1は、炭素数4から10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、またはアラルキル基)を表わし、nは1から16の整数である。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機光導電体として有用な新規アゾ顔料を用いた有機トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機半導体材料を利用した有機薄膜トランジスタの研究開発が盛んである。
有機半導体材料は、印刷法、スピンコート法等のウェットプロセスによる簡便な方法で容易に薄膜形成が可能であり、従来の無機半導体材料を利用した薄膜トランジスタと比し、製造プロセス温度を低温化できるという利点がある。これにより、一般に耐熱性の低いプラスチック基板上への形成が可能となり、ディスプレイ等のエレクトロニクスデバイスの軽量化や低コスト化できるとともに、プラスチック基板のフレキシビリティーを活かした用途等、多様な展開が期待できる。
【0003】
これまでに、有機半導体材料としてペンタセン等のアセン系材料が報告されている(例えば、特許文献1参照)。このペンタセンを有機半導体層として利用した有機薄膜トランジスタは、比較的高移動度であることが報告されているが、これらアセン系材料は汎用溶媒に対しきわめて溶解性が低く、それを有機薄膜トランジスタにおける有機半導体層として薄膜化する際には、真空蒸着工程を経る必要がある。ゆえに、前述したような塗布や印刷などの簡便なプロセスで薄膜を形成できるという有機半導体材料への期待に応えるものではない。
【0004】
更に、それらの有機化合物が溶液の塗布等による層形成が困難であるのに対して、溶液の塗布等による半導体層形成が容易であり、且つ、高い移動度を発現し得る有機半導体として、ポリフィリン化合物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしこのポルフィリン化合物は、大気下において不安定であり、アルゴンや窒素などの不活性ガス雰囲気下で膜を作製する必要がある。
また、高分子有機半導体材料として、ポリ(3−アルキルチオフェン)(非特許文献1参照)や、ジアルキルフルオレンとビチオフェンとの共重合体(非特許文献2参照)等が提案されている。これらの高分子有機半導体材料は、アルキル基の導入により、低いながらも溶解性を有するため、真空蒸着工程を経ず、塗布や印刷で薄膜化が可能である。
しかしながら、これらの高分子有機半導体材料は、分子間が整列した状態において、高移動度が実現されるため、その薄膜形成に際し、溶媒種、塗工方法等により配列状態が異なり、結果としてトランジスタ特性にバラツキが生じたり、特性の再現性に欠けるということが問題になっている。
【0005】
また電子写真感光体の有機光導電体、特に電荷発生顔料として有用に用いられているアゾ顔料を用いた有機トランジスタが提案されている(例えば、特許文献3参照)。アゾ顔料としては、ベンジジン系ビスアゾ顔料(例えば、特許文献4参照)、スチルベン系ビスアゾ顔料(例えば、特許文献5参照)、ジフェニルヘキサトリエン系ビスアゾ顔料(例えば、特許文献6参照)、ジフェニルブタジエン系ビスアゾ顔料(例えば、特許文献7参照)等が知られている。
これらのアゾ顔料は、一般的に有機溶剤に対する溶解性がきわめて低く、塗布液は、ボールミリングなどを用いて微結晶分散液を作製し、製膜する。しかしこのような微結晶分散膜では、結晶粒界等が多く存在し、アゾ顔料が元々持つ、特性を充分に発現することはできない。
【0006】
【特許文献1】特開平5−55568号公報
【特許文献2】特開2004−6750号公報
【特許文献3】特開2003−110110号公報
【特許文献4】特開昭47−37543号公報
【特許文献5】特開昭52−8832号公報
【特許文献6】特開昭58−222152号公報
【特許文献7】特開昭58−222153号公報
【非特許文献1】Appl.Phys.Lett.,69(26),4108(1996)
【非特許文献2】Science,290,2123(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述の問題を解決し、塗工や印刷等の簡便なプロセスで製造でき、再現性のよい特性が得られる有機薄膜トランジスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の本発明によって解決される。
(1)「少なくとも基板上にゲート電極、絶縁層、ソース電極、ドレイン電極、有機半導体層を具備してなる有機トランジスタにおいて、該有機半導体層が下記一般式(I)で示されるカルボエステル基含有アゾ化合物を、化学的手段、熱的手段または光分解的手段を用いて脱カルボエステル化することにより、A(H)nで示されるアゾ顔料に変換された顔料を含有することを特徴とする有機トランジスタ。
【0009】
【化1】

〔但し、Aはアゾ化合物の残基であり、この残基Aは、1つまたはそれ以上のヘテロ原子を介してn個のE基に結合しており、そしてこれらのヘテロ原子は、NおよびOからなる群から選ばれ、残基Aの一部を形成しており、E基は下記のカルボエステル基:−C(=O)−O−R1(式中R1は、炭素数4から10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、またはアラルキル基を表わす。)を表わし、nは、1から16(=アゾ基が少なくとも1個、通常は2個以上あるため、数を10から9にする)の整数である。〕」、
(2)「一般式(I)で示されるアゾ化合物が、次の一般式(Ia)で示されるアゾ化合物であることを特徴とする前記第(1)項に記載の有機トランジスタ。
【0010】
【化2】

〔但し、Bはアゾ化合物の主骨格を示し、Eは前記と同じ意味であり、Cpはカップラー成分残基であり、カップラー成分残基Cpに結合するEはそれぞれ独立して前記意味を有し、jは1乃至4の整数、kは1乃至3の整数を表わし、jが2以上であるときそれぞれのCpに結合するEの数kは同じであっても異なっていてもよい。〕」、
(3)「前記アゾ顔料A(H)nが、下記一般式(II)で示される顔料であることを特徴とする前記第(1)項又は第(2)項に記載の有機トランジスタ。
【0011】
【化3】

〔但し、Bはアゾ化合物の主骨格を示し、Cpはカップラー成分残基であり、mは2又は3の整数を表わす。〕」、
(4)「前記一般式(I)、(Ia)又は(II)のアゾ化合物を有機溶剤に溶解し、その溶液をシリカゲル、アルミナ、フロリジル、活性炭素、活性白土、珪藻土、またはパーライトで吸着処理をした後、化学的手段、熱的手段または光分解的手段を用いて脱カルボエステル化することにより、A(H)nで示されるアゾ顔料に変換されたアゾ顔料を有機半導体層として用いることを特徴とする有機トランジスタ」、
(5)「前記脱カルボエステル化は、酸性触媒が用いられたものであることを特徴とする前記第(1)項乃至第(4)項のいずれかに記載の有機トランジスタ」、
(6)「前記脱カルボエステル化は、化学的手段と熱的手段が併用されたものであることを特徴とする前記第(1)項乃至第(5)項のいずれかに記載の有機トランジスタ」、
(7)「前記Cp−が下記一般式(5)乃至(13)の少なくともいずれかで表わされるカップラー成分残基であることを特徴とする前記第(2)項又は第(3)項に記載の有機トランジスタ。
【0012】
【化4】

【0013】
【化5】

【0014】
【化6】

【0015】
【化7】

上記一般式(5)〜(8)中、X、Y、Z、pおよびqはそれぞれ以下のものを表わす。
X:−OH、−N(R)(R)または−NHSO−R
(ただしここで、RおよびRは水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基を表わし、Rは置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表わす。)
:水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシ基、スルホン基、置換もしくは無置換のスルファモイル基または−CON(R)(Y)。
[Rは水素原子、アルキル基もしくはその置換体またはフェニル基もしくはその置換体を表わし、Yは炭化水素環基もしくはその置換体、複素環基もしくはその置換体、または−N=C(R)(R)(但し、Rは炭化水素環基もしくはその置換体、複素環基もしくはその置換体またはスチリル基もしくはその置換体、Rは水素原子、アルキル基またはフェニル基もしくはその置換体を表わすか、あるいはRおよびRはそれらに結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。)を示す。]
Z:炭化水素環もしくはその置換体または複素環もしくはその置換体。
p:1または2の整数。
q:1または2の整数。
【0016】
【化8】


(上式中、Rは置換もしくは無置換の炭化水素基を表わし、Xは前記と同じである。)
【0017】
【化9】

(上式中、Aは、式(10)中に記載された2個のN原子と共にN含有ヘテロ環を形成するに必要な芳香族炭化水素の2価基または窒素原子を環内に含むヘテロ原子含有の2価基を表わす(これらの環は置換または無置換でもよい。)Xは前記と同じである。)
【0018】
【化10】

(上式中、Rはアルキル基、カルバモイル基、カルボキシ基を表わし、Arは炭化水素環基またはその置換体を表わし、Xは前記と同じである。)
【0019】
【化11】

【0020】
【化12】

(上記式(12)および(13)中、Rは水素原子または置換もしくは無置換の炭化水素基を表わし、Arは炭化水素環基またはその置換体を表わす。但し、同時にRが水素原子でかつArがシクロアルキル基又はシクロアルケニル基になることはない)」、
(8)「前記一般式(Ia)又は(II)のBが、下記一般式(III)で示されることを特徴とする前記第(6)項又は第(7)項に記載の有機トランジスタ。
【0021】
【化13】

(ただし、R11,R12は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基を表わす。)」、
(9)「前記一般式(Ia)又は(II)のBが、下記一般式(IV)で示されることを特徴とする前記第(6)項又は第(7)項に記載の有機トランジスタ。
【0022】
【化14】

(ただし、R13,R14,R15は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基を表わす。)」、
(10)「前記一般式(Ia)又は(II)のBが、下記一般式(V)で示されることを特徴とする前記第(6)項又は第(7)項に記載の有機トランジスタ。
【0023】
【化15】

(ただし、R16,R17,R18は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基を表わす。)」、
(11)「前記一般式(Ia)又は(II)のBが、下記一般式(VI)で示されることを特徴とする前記第(6)項又は第(7)項に記載のアゾ顔料を有機半導体層として用いることを特徴とする有機トランジスタ。
【0024】
【化16】

(ただし、R19,R20は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びを表わす。)」、
(12)「前記一般式(Ia)又は(II)のBが、下記一般式(VII)で示されることを特徴とする請求項6又は7に記載の有機トランジスタ。
【0025】
【化17】

(ただし、R21,R22,R23は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基を表わす。)」、
(13)「前記一般式(Ia)又は(II)のBが、下記一般式(VIII)で示されることを特徴とする前記第(6)項又は第(7)項に記載のアゾ顔料を有機半導体層として用いることを特徴とする有機トランジスタ。
【0026】
【化18】

(ただし、R24,R25,R26は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基を表わす。)」、
(14)「前記一般式(Ia)又は(II)のBが、下記一般式(IX)で示されることを特徴とする前記第(6)項又は第(7)項に記載の有機トランジスタ。
【0027】
【化19】

(ただし、R27,R28,R29は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基を表わす。)」、
(15)「前記一般式(Ia)又は(II)のBが、下記一般式(X)で示されることを特徴とする前記第(6)項又は第(7)項に記載のアゾ顔料を有機半導体層として用いることを特徴とする有機トランジスタ。
【0028】
【化20】

(ただし、R30,R31は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基を表わす。)」。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、有機トランジスタ特性として良好であり、塗工や印刷等の簡便なプロセスで製造でき、環境安定性、経時安定性に優れた有機トランジスタを提供できる。
また、再現性のよい特性が得られる有機薄膜トランジスタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の前記式:A(H)nで示されるアゾ顔料の好ましい化合物としては、アゾ顔料の主骨格が一般式(III)である式(III)−1〜(III)−14、アゾ顔料の主骨格が一般式(IV)である式(IV)−1〜(IV)−5、アゾ顔料の主骨格が一般式(V)である式(V)−1〜(V)−7、アゾ顔料の主骨格が一般式(VI)である式(VI)−1〜(VI)−5、アゾ顔料の主骨格が一般式(VII)である式(VII)−1〜(VII)−7、アゾ顔料の主骨格が一般式(VIII)である式(VIII)−1〜(VIII)−5、アゾ顔料の主骨格が一般式(IX)である式(IX)−1〜(IX)−4、アゾ顔料の主骨格が一般式(X)である式(X)−1〜(X)−6である。
以下に化合物例を示す。
【0031】
<アゾ顔料の主骨格が一般式(III)である化合物の例>
【0032】
【表1−1】

【0033】
【表1−2】

【0034】
【表1−3】

【0035】
<アゾ顔料の主骨格が一般式(IV)である化合物の例>
【0036】
【表1−4】

【0037】
【表1−5】

【0038】
【化21】

【0039】
<アゾ顔料の主骨格が一般式(V)である化合物の例>
【0040】
【表1−6】

【0041】
【表1−7】

【0042】
<アゾ顔料の主骨格が一般式(VI)である化合物の例>
【0043】
【表1−8】

【0044】
【表1−9】

【0045】
<アゾ顔料の主骨格が一般式(VII)である化合物の例>
【0046】
【表1−10】

【0047】
【表1−11】

【0048】
<アゾ顔料の主骨格が一般式(VIII)である化合物の例>
【0049】
【表1−12】

【0050】
【表1−13】

【0051】
<アゾ顔料の主骨格が一般式(IX)である化合物の例>
【0052】
【表1−14】

【0053】
<アゾ顔料の主骨格が一般式(X)である化合物の例>
【0054】
【表1−15】

【0055】
【表1−16】

【0056】
前記式(I)及び(Ia)の化合物は、例えば特願2007−172269号明細書に記載されているようにして合成でき、例えば非プロトン性有機溶剤中、触媒として塩基の存在下0〜150℃、好ましくは10〜100℃の温度で、30分から20時間、前記一般式(II)のものと、下記式のものとを、適切なモル比で反応させて合成できる。
【0057】
【化22】

(B,Cp,Rは前記に記載のとおりである)
それぞれの場合において、モル比は導入されるEの数に左右される。好ましくはピロ炭酸ジエステルを少し過剰に用いるのが適している。
【0058】
適切な非プロトン性有機溶剤は、例えば、テトラヒドロフランまたはジオキサン等のエーテル系溶媒、またはエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤またアセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、ピリジン、ピコリンまたはキノリン等が挙げられる。好ましい溶剤は、ピリジン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドである。
触媒として適切な塩基は、例えばアルカリ金属:ナトリウム、カリウムなど、ならびにそれらの水酸化物及び炭酸塩、またはアルカリ金属アミド類であり、ナトリウムアミド、カリウムアミド類であり、また水素化アルカリ金属類たとえば水素化リチウムなどがある。有機脂肪族、芳香族またはヘテロ環式N−塩基類としては、ジアザビシクロオクテン、ジアザビシクロウンデセン、4−ジメチルアミノピリジン、ジメチルピリジン、ピリジン、トリエチルアミンなどが使用できる。好ましいのは、有機N−塩基類であり、例えば、4−ジメチルアミノピリジン、ジメチルピリジン、ピリジンである。
【0059】
下記式で示されるピロ炭酸ジエステルは、一般に知られている方法で製造できる。
また商業的にも入手できる。Rは、上記の記載のものを示すが、好ましくは溶解性の驚くべき向上の点で分岐のアルキル基が好ましい。
【0060】
【化23】

【0061】
[合成例]
以下に本発明で用いるアゾ化合物の合成法は、特願2007−172269号明細書に記載されているが、改めて以下に説明する。
<合成例1>
・化合物(III−3)の製造
化合物(III−3)の前駆体(E=H)0.83グラム、ピロカルボン酸ジ−tert−ブチルエステル2.6グラム(12倍モル)を脱水ピリジン150mlに分散させ、室温で15分間攪拌した後、さらに約50℃に加温し30分間反応させた。徐々に赤色味を帯び、均一な溶液が得られた。室温に戻し、溶媒を除去し、酢酸エチル約50mlを加え1.18グラム(収率:95.3%)の赤色の粉末を得た。これをさらにカラムクロマトグラム(シリカゲル/クロロフォルム)で精製を行なった。
元素分析(C676013Clとして)(すべてのE:Cとして)
【0062】
【表2−1】

このものの赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)は、2980cm−1に飽和炭化水素による吸収、1760cm−1にカルボネートのC=Oの伸縮振動に基づく吸収が認められた。
【0063】
<合成例2>
・化合物(III−4)の製造
化合物(III−4)の前駆体(E=H)を用い、合成例1と同様にして、化合物(III−4)の赤色の粉末を得た。
元素分析(C696613として)(すべてのE:Cとして)
【0064】
【表2−2】

このものの赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)は、2980cm−1に飽和炭化水素による吸収、1760cm−1にカルボネートのC=Oの伸縮振動に基づく吸収が認められた。
【0065】
<合成例3>
・化合物(III−2)の製造
化合物(III−2)の前駆体(E=H)を用い、合成例1と同様にして、化合物(III−2)の赤色の粉末を得た。
元素分析(C5847Clとして)(すべてのE:Cとして)
【0066】
【表2−3】

このものの赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)は、2980cm−1に飽和炭化水素による吸収、1765cm−1にカルボネートのC=Oの伸縮振動に基づく吸収が認められた。
【0067】
<合成例4>
・化合物(III−3)の製造
化合物(III−3)の前駆体(E=H)を用い、合成例1と同様にして、化合物(III−3)の赤色の粉末を得た。
このものの赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)は、2980cm−1に飽和炭化水素による吸収、1760cm−1にカルボネートのC=Oの伸縮振動に基づく吸収が認められた。
【0068】
<合成例5>
・化合物(IV−1)の製造
化合物(IV−1)の前駆体(E=H)を用い、合成例1と同様にして、化合物(IV−1)の赤色の粉末を得た。
元素分析(C1231171318として)(すべてのE:Cとして)
【0069】
【表2−4】

このものの赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)は、2980cm−1に飽和炭化水素による吸収、1765cm−1にカルボネートのC=Oの伸縮振動に基づく吸収が認められた。
【0070】
<合成例6>
・化合物(V−1)の製造
化合物(V−1)の前駆体(E=H)を用い、合成例1と同様にして、化合物(V−1)の赤色の粉末を得た。
元素分析(C696613として)(すべてのE:Cとして)
【0071】
【表2−5】

このものの赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)は、2975cm−1に飽和炭化水素による吸収、1760cm−1にカルボネートのC=Oの伸縮振動に基づく吸収が認められた。
【0072】
<合成例7>
・化合物(VI−1)の製造
化合物(VI−1)の前駆体(E=H)を用い、合成例1と同様にして、化合物(VI−1)の赤色の粉末を得た。
元素分析(C4824Brとして)(すべてのE:Cとして)
【0073】
【表2−6】

このものの赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)は、2980cm−1に飽和炭化水素による吸収、1760cm−1にカルボネートのC=Oの伸縮振動に基づく吸収が認められた。
【0074】
<合成例8>
・化合物(VII−2)の製造
化合物(VII−2)の前駆体(E=H)を用い、合成例1と同様にして、化合物(VII−2)の赤色の粉末を得た。
元素分析(C1228316Clとして)(すべてのE:Cとして)
【0075】
【表2−7】

このものの赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)は、2980cm−1に飽和炭化水素による吸収、1760cm−1にカルボネートのC=Oの伸縮振動に基づく吸収が認められた。
【0076】
<合成例9>
・化合物(VIII−5)の製造
化合物(VIII−5)の前駆体(E=H)を用い、合成例1と同様にして、化合物(VIII−5)の赤色の粉末を得た。
元素分析(C757213として)(すべてのE:Cとして)
【0077】
【表2−8】

このものの赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)は、2980cm−1に飽和炭化水素による吸収、1760cm−1にカルボネートのC=Oの伸縮振動に基づく吸収が認められた。
【0078】
<合成例10>
・化合物(X−1)の製造
化合物(X−1)の前駆体(E=H)を用い、合成例1と同様にして、化合物(X−1)の赤色の粉末を得た。
元素分析(C696613として)(すべてのE:Cとして)
【0079】
【表2−9】

このものの赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)は、2980cm−1に飽和炭化水素による吸収、1760cm−1にカルボネートのC=Oの伸縮振動に基づく吸収が認められた。
【0080】
本発明の、下記一般式(I)で示されるアゾ化合物を、化学的手段、熱的手段または光分解的手段を用いて脱カルボエステル化することにより、A(H)nで示されるアゾ化合物に変換することを内容とするアゾ顔料の製造法について、説明する。
【0081】
【化24】

〔但し、Aはアゾ化合物の残基であり、この残基Aは、1つまたはそれ以上のヘテロ原子を介してn個のE基に結合しており、そしてこれらのヘテロ原子は、NおよびOからなる群から選ばれ、残基Aの一部を形成しており、E基は下記のカルボエステル基:−C(=O)−O−R1(式中R1は、炭素数4から10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、またはアラルキル基を表わす。)を表わし、nは、1から9の整数である。〕
化学的手段は、酸または塩基などの触媒によりアゾ顔料を製造する方法であるが、好ましい触媒は酸であり、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、安息香酸、塩酸、硫酸、ホウ酸、p−トルエンスルホン酸。サリチル酸等が挙げられる。
熱的手段は、無溶媒あるいは溶媒の存在下に50℃〜300℃に加熱することによりアゾ顔料を製造する方法であるが、好ましくは、70℃〜250℃に大気圧下で30分から20時間反応させることが望ましい。
光分解的手段は、前記一般式(I)で示されるアゾ化合物が、吸収を有する光であれば使用することができる。具体的には、高圧または低圧水銀灯、タングステンランプ、LEDランプ、レーザー光源などが使用できる。
【0082】
ここに用いられる有機溶剤としては、例えば、テトラヒドロフランまたはジオキサン等のエーテル系溶媒、またはエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤またブタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸ブチル、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール、シクロヘキサノン、ニトロベンゼン、ピリジン、ピコリンまたはキノリン等が挙げられる。
化学的方法、熱的方法または光分解的方法は、併用することによりさらに効率的にアゾ顔料が製造できる。特に化学的方法と熱的方法を組み合わせることにより収率よく、高純度のアゾ顔料が製造できる。
【0083】
前記一般式(I)で示されるアゾ化合物を有機溶剤に溶解し、その溶液をシリカゲル、アルミナ、フロリジル、活性炭素、活性白土、珪藻土、またはパーライトで吸着処理をした後、化学的方法、熱的方法または光分解的方法を用いることにより、A(H)nで示される前記アゾ顔料の製造法について、説明する。
ここで用いる有機溶剤としては、例えば、テトラヒドロフランまたはジオキサン等のエーテル系溶媒、またはエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤またN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジクロロメタン、クロロホルム、4塩化炭素、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール、n−ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、ニトロベンゼン、ピリジン、ピコリンまたはキノリン等及びこれらの混合溶剤が挙げられる。
吸着処理の具体的方法としては、カラムクロマトグラフィー、室温または、加熱時に吸着剤を加え、濾過する方法がある。また、再結晶と組み合わせることによりさらに効率的に高純度のアゾ顔料が製造できる。
【0084】
次に、本発明を有機トランジスタの構造について説明する。
図1の(A)、(B)は本発明に係わる有機薄膜トランジスタの概略構造を示す図である。
本発明に係わる有機薄膜トランジスタの有機半導体層1は、上記各一般式で示した繰り返し単位を有する重合体を主成分とする。
本発明の有機薄膜トランジスタには、空間的に分離されたソース電極2、ドレイン電極3およびゲート電極4が設けられており、(A)および(B)に示すようにゲート電極4と有機半導体層1の間には絶縁膜5が設けられていてもよい。
有機薄膜トランジスタはゲート電極4への電圧の印加により、ソース電極2とドレイン電極3の間の有機半導体層1内を流れる電流がコントロールされる。
【0085】
本発明の有機薄膜トランジスタは、支持体上に設けることができ、例えば、ガラス、シリコン、プラスチック等の一般に用いられる基板を利用できる。
また、導電性基板を用いることにより、ゲート電極と兼ねること、さらにはゲート電極と導電性基板とを積層した構造にすることもできるが、本発明の有機薄膜トランジスタが応用されるデバイスのフレキシビリティー、軽量化、安価、耐衝撃性等の特性が所望される場合、プラスチックシートを支持体とすることが好ましい。
プラスチックシートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等からなるフィルム等が挙げられる。
【0086】
本発明の有機薄膜トランジスタにおいては、有機半導体層は先に説明したアゾ化合物より作製したアゾ顔料を用いる。
これら有機半導体薄膜の作製方法としては、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、ディスペンス法等が挙げられ、材料に応じて、適した上記製膜方法と、上記溶媒から適切な溶媒が選択される。
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、有機半導体層の膜厚としては、特に制限はないが、均一な薄膜(即ち、有機半導体層のキャリア輸送特性に悪影響を及ぼすギャップやホールがない)が形成されるような厚みに選択される。
有機半導体薄膜の厚みは、一般に1μm以下、特に5〜200nmが好ましい。
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、上記重合体を主成分として形成される有機半導体層は、ソース電極、ドレイン電極及び絶縁膜に接して形成されてもよい。
【0087】
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて用いられる絶縁膜には、種々の絶縁膜材料を用いることができる。
例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコウム酸化チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウム等の無機系絶縁材料が挙げられる。
また、例えば、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリエステル、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、無置換またはハロゲン原子置換ポリパラキシリレン、ポリアクリロニトリル、シアノエチルプルラン等の高分子化合物を用いることができる。
さらに、上記絶縁材料を2種以上合わせて用いてもよい。特に材料は限定されないが、中でも誘電率が高く、導電率が低いものが好ましい。
上記材料を用いた絶縁膜の作製方法としては、例えば、CVD法、プラズマCVD法、プラズマ重合法、蒸着法のドライプロセスや、スプレーコート法、スピンコート法、ディップコート法、インクジェット法、キャスト法、ブレードコート法、バーコート法等の塗布によるウェットプロセスが挙げられる。
【0088】
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、絶縁膜と有機半導体層の接着性を向上、ゲート電圧の低減、リーク電流低減等の目的で、これら層間に有機薄膜を設けてもよい。
有機薄膜は有機半導体層に対し、化学的影響を与えなければ、特に限定されないが、例えば、有機分子膜や高分子薄膜が利用できる。
有機分子膜としては、オクタデシルトリクロロシランやヘキサメチレンジシラザン等を具体的な例としたカップリング剤が挙げられる。
また、高分子薄膜としては、上述の高分子絶縁膜材料を利用することができ、これらが絶縁膜の一種として機能していてもよい。
また、この有機薄膜をラビング等により、異方性処理を施していてもよい。
【0089】
本発明の有機薄膜トランジスタに用いられるゲート電極、ソース電極、ドレイン電極としては、導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン、鉛、タンタル、インジウム、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム等、及びこれらの合金やインジウム・錫酸化物等の導電性金属酸化物、あるいはドーピング等で導電率を向上させた無機及び有機半導体、例えば、シリコン単結晶、ポリシリコン、アモルファスシリコン、ゲルマニウム、グラファイト、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチエニレンビニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体等が挙げられる。
ソース電極及びドレイン電極は、上記導電性の中でも半導体層との接触面において、電気抵抗が少ないものが好ましい。
【0090】
電極の形成方法としては、上記材料を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅等の金属箔上に熱転写、インクジェット等によるレジストを用いてエッチングする方法がある。
また導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、導電性微粒子分散液を直接インクジェットによりパターニングしてもよいし、塗工膜からリソグラフィーやレーザーアブレーション等により形成してもよい。さらに導電性ポリマーや導電性微粒子を含むインク、導電性ペースト等を凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等の印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
【0091】
また、本発明の有機薄膜トランジスタは、必要に応じて各電極からの引出し電極を設けることができる。
本発明の有機トランジスタは、大気中でも安定に駆動するものであるが、機械的破壊からの保護、水分やガスからの保護、またはデバイス集積の都合上、保護等のため必要に応じて保護層を設けることもできる。
【0092】
本発明の有機薄膜トランジスタは、液晶、有機EL、電気泳動等の表示画像素子を駆動するための素子として利用でき、これらの集積化により、いわゆる「電子ペーパー」と呼ばれるディスプレイを製造することが可能である。また、ICタグ等のデバイスとして、本発明の有機薄膜トランジスタを集積化したICを利用することが可能である。
【実施例】
【0093】
次に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
〈実施例1〉
あらかじめ、30mmのp−ドープされたシリコン基板表面を熱酸化してSiO2の絶縁膜を200nm形成した後、片面だけレジスト膜(東京応化社製:TSMR8800)で覆い、もう片面をフッ酸により酸化膜を除去した。次いで、この熱酸化膜を除去した面にアルミニウムを300nm蒸着した。その後、レジスト膜をアセトンで除去し、有機薄膜トランジスタ評価用基板を作製した。
上記方法にて作製した有機薄膜トランジスタ評価用基板上に、構造式III−2の化合物(Eはtert−ブトキシカルボニル基)を用いて、大気下で下記の有機薄膜トランジスタを作製した。
(塗工液)
構造式III−2:1.5wt%
トリフルオロ酢酸:0.01wt%
溶媒:クロロホルム
(塗工)
塗工方法:スピンコート
(熱処理)
温度:160℃
時間:1時間
作製した薄膜の赤外線吸収スペクトル(ATR法)は、アゾ化合物の2980cm−1の飽和炭化水素による吸収、1760cm−1のカルボネートのC=Oの伸縮振動に基づく吸収が消失し、tert−ブトキシカルボニル基が脱離していることが確認された。次いで、チャネル長30μm、チャネル幅10mmとなるように、金を蒸着することにより膜厚100nmのソース電極およびドレイン電極を形成し、有機薄膜トランジスタを作製した。
各有機薄膜トランジスタは、同条件で5サンプルずつ作製を行なった。
【0094】
〈実施例2〉
構造式III−2の化合物(Eはtert−ブトキシカルボニル基)を構造式III−3(Eはtert−ブトキシカルボニル基)とすること以外は全て実施例1と同様にして有機薄膜トランジスタを作製した。
また有機薄膜トランジスタ作製過程で、有機半導体層薄膜の赤外線吸収スペクトル(ATR法)は、アゾ化合物の2980cm−1の飽和炭化水素による吸収、1760cm−1のカルボネートのC=Oの伸縮振動に基づく吸収が消失し、tert−ブトキシカルボニル基が脱離していることが確認された。
【0095】
〈実施例3〉
構造式III−2の化合物(Eはtert−ブトキシカルボニル基)を構造式IV−2(Eはtert−ブトキシカルボニル基)とすること以外は全て実施例1と同様にして有機薄膜トランジスタを作製した。
また有機薄膜トランジスタ作製過程で、有機半導体層薄膜の赤外線吸収スペクトル(ATR法)は、アゾ化合物の2980cm−1の飽和炭化水素による吸収、1760cm−1のカルボネートのC=Oの伸縮振動に基づく吸収が消失し、tert−ブトキシカルボニル基が脱離していることが確認された。
【0096】
〈比較例1〉
構造式III−2のEが水素原子であるアゾ化合物を用いて、下記塗工液を作製し、実施例1と同様にして有機薄膜トランジスタを作製した。
(塗工液)
上記アゾ化合物:1.5wt%
溶媒:クロロホルム
上記アゾ化合物は、有機溶媒に対して不溶であるため、下記分散方法を用いて塗工液とした。
(塗工液分散方法)
分散方法:ボールミリング法(2mmφジルコニアボール)
<1次分散>
固形分10wt%とし、24時間ミリングを行なった。
<2次分散>
1次分散終了後の液にクロロホルムを加えて、固形分1.5wt%として2時間ミリングを行なった。
2次分散終了後の液を塗工液とした。
【0097】
〈比較例2〉
構造式III−3のEが水素原子であるアゾ化合物を用いて、比較例1と同様にして塗工液を作製し、さらに実施例1と同様に有機薄膜トランジスタを作製した。
【0098】
〈比較例3〉
構造式IV−2のEが水素原子であるアゾ化合物を用いて、比較例1と同様にして塗工液を作製し、さらに実施例1と同様に有機薄膜トランジスタを作製した。
これら作製した有機薄膜トランジスタは、図1(B)の構造を有し、支持体として用いたp−ドープされたシリコン基板は下部に設けたアルミニウム薄膜とともにゲート電極として作用する。
このように作製した有機薄膜トランジスタの特性である電界効果移動度を測定した。
なお、有機薄膜トランジスタの電界効果移動度の算出には、以下の式を用いた。
Ids=μCinW(Vg−Vth)2/2L
(ただし、Cinはゲート絶縁膜の単位面積あたりのキャパシタンス、Wはチャネル幅、Lはチャネル長、Vgはゲート電圧、Idsはソースドレイン電流、μは移動度、Vthはチャネルが形成し始めるゲートの閾値電圧である。)
以上のように作製した有機薄膜トランジスタを、ヒューレットパッカード社製半導体パラメータ4145Bを用いて、電界効果移動度の測定を行なった。評価結果を表3に示す。
【0099】
【表3】

以上のように本発明によれば、新規のアゾ化合物を用いることにより、有機溶媒に容易に溶解することが可能である。
このため簡便な印刷プロセス等による製造方法が可能となり、また従来のアゾ顔料を用いたFETに比べて、移動度が高く、且つ安定した特性を有する有機薄膜トランジスタを達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明における有機電界効果トランジスタの概略図である
【符号の説明】
【0101】
1 有機半導体層
2 ソース電極
3 ドレイン電極
4 ゲート電極
5 ゲート絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基板上にゲート電極、絶縁層、ソース電極、ドレイン電極、有機半導体層を具備してなる有機トランジスタにおいて、該有機半導体層が下記一般式(I)で示されるカルボエステル基含有アゾ化合物を、化学的手段、熱的手段または光分解的手段を用いて脱カルボエステル化することにより、A(H)nで示されるアゾ顔料に変換された顔料を含有することを特徴とする有機トランジスタ。
【化1】

〔但し、Aはアゾ化合物の残基であり、この残基Aは、1つまたはそれ以上のヘテロ原子を介してn個のE基に結合しており、そしてこれらのヘテロ原子は、NおよびOからなる群から選ばれ、残基Aの一部を形成しており、E基は下記のカルボエステル基:−C(=O)−O−R1(式中R1は、炭素数4から10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、またはアラルキル基を表わす。)を表わし、nは、1から16(=アゾ基が少なくとも1個、通常は2個以上あるため、数を10から9にする)の整数である。〕
【請求項2】
一般式(I)で示されるアゾ化合物が、次の一般式(Ia)で示されるアゾ化合物であることを特徴とする請求項1に記載の有機トランジスタ。
【化2】

〔但し、Bはアゾ化合物の主骨格を示し、Eは前記と同じ意味であり、Cpはカップラー成分残基であり、カップラー成分残基Cpに結合するEはそれぞれ独立して前記意味を有し、jは1乃至4の整数、kは1乃至3の整数を表わし、jが2以上であるときそれぞれのCpに結合するEの数kは同じであっても異なっていてもよい。〕
【請求項3】
前記アゾ顔料A(H)nが、下記一般式(II)で示される顔料であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機トランジスタ。
【化3】

〔但し、Bはアゾ化合物の主骨格を示し、Cpはカップラー成分残基であり、mは2又は3の整数を表わす。〕
【請求項4】
前記一般式(I)、(Ia)又は(II)のアゾ化合物を有機溶剤に溶解し、その溶液をシリカゲル、アルミナ、フロリジル、活性炭素、活性白土、珪藻土、またはパーライトで吸着処理をした後、化学的手段、熱的手段または光分解的手段を用いて脱カルボエステル化することにより、A(H)nで示されるアゾ顔料に変換されたアゾ顔料を有機半導体層として用いることを特徴とする有機トランジスタ。
【請求項5】
前記脱カルボエステル化は、酸性触媒が用いられたものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の有機トランジスタ。
【請求項6】
前記脱カルボエステル化は、化学的手段と熱的手段が併用されたものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の有機トランジスタ。
【請求項7】
前記Cp−が下記一般式(5)乃至(13)の少なくともいずれかで表わされるカップラー成分残基であることを特徴とする請求項2又は3に記載の有機トランジスタ。
【化4】

【化5】


【化6】


【化7】


上記一般式(5)〜(8)中、X、Y、Z、pおよびqはそれぞれ以下のものを表わす。
X:−OH、−N(R)(R)または−NHSO−R
(ただしここで、RおよびRは水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基を表わし、Rは置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表わす。)
:水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシ基、スルホン基、置換もしくは無置換のスルファモイル基または−CON(R)(Y)。
[Rは水素原子、アルキル基もしくはその置換体またはフェニル基もしくはその置換体を表わし、Yは炭化水素環基もしくはその置換体、複素環基もしくはその置換体、または−N=C(R)(R)(但し、Rは炭化水素環基もしくはその置換体、複素環基もしくはその置換体またはスチリル基もしくはその置換体、Rは水素原子、アルキル基またはフェニル基もしくはその置換体を表わすか、あるいはRおよびRはそれらに結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。)を示す。]
Z:炭化水素環もしくはその置換体または複素環もしくはその置換体。
p:1または2の整数。
q:1または2の整数。
【化8】


(上式中、Rは置換もしくは無置換の炭化水素基を表わし、Xは前記と同じである。)
【化9】


(上式中、Aは、式(10)中に記載された2個のN原子と共にN含有ヘテロ環を形成するに必要な芳香族炭化水素の2価基または窒素原子を環内に含むヘテロ原子含有の2価基を表わす(これらの環は置換または無置換でもよい。)Xは前記と同じである。)
【化10】


(上式中、Rはアルキル基、カルバモイル基、カルボキシ基を表わし、Arは炭化水素環基またはその置換体を表わし、Xは前記と同じである。)
【化11】


【化12】


(上記式(12)および(13)中、Rは水素原子または置換もしくは無置換の炭化水素基を表わし、Arは炭化水素環基またはその置換体を表わす。但し、同時にRが水素原子でかつArがシクロアルキル基又はシクロアルケニル基になることはない。
【請求項8】
前記一般式(Ia)又は(II)のBが、下記一般式(III)で示されることを特徴とする請求項6又は7に記載の有機トランジスタ。
【化13】

(ただし、R11,R12は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基を表わす。)
【請求項9】
前記一般式(Ia)又は(II)のBが、下記一般式(IV)で示されることを特徴とする請求項6又は7に記載の有機トランジスタ。
【化14】

(ただし、R13,R14,R15は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基を表わす。)
【請求項10】
前記一般式(Ia)又は(II)のBが、下記一般式(V)で示されることを特徴とする請求項6又は7に記載の有機トランジスタ。
【化15】

(ただし、R16,R17,R18は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基を表わす。)
【請求項11】
前記一般式(Ia)又は(II)のBが、下記一般式(VI)で示されることを特徴とする請求項6又は7に記載のアゾ顔料を有機半導体層として用いることを特徴とする有機トランジスタ。
【化16】

(ただし、R19,R20は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びを表わす。)
【請求項12】
前記一般式(Ia)又は(II)のBが、下記一般式(VII)で示されることを特徴とする請求項6又は7に記載の有機トランジスタ。
【化17】

(ただし、R21,R22,R23は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基を表わす。)
【請求項13】
前記一般式(Ia)又は(II)のBが、下記一般式(VIII)で示されることを特徴とする請求項6又は7に記載のアゾ顔料を有機半導体層として用いることを特徴とする有機トランジスタ。
【化18】

(ただし、R24,R25,R26は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基を表わす。)
【請求項14】
前記一般式(Ia)又は(II)のBが、下記一般式(IX)で示されることを特徴とする請求項6又は7に記載の有機トランジスタ。
【化19】

(ただし、R27,R28,R29は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基を表わす。)
【請求項15】
前記一般式(Ia)又は(II)のBが、下記一般式(X)で示されることを特徴とする請求項6又は7に記載のアゾ顔料を有機半導体層として用いることを特徴とする有機トランジスタ。
【化20】

(ただし、R30,R31は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基を表わす。)

【図1】
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【公開番号】特開2010−73831(P2010−73831A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238568(P2008−238568)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】