説明

有機電界発光素子用材料入り容器、並びに、有機電界発光素子用材料、蒸着膜及びその製造方法、有機電界発光素子、及び容器のスクリーニング方法

【課題】有機電界発光素子用材料の取扱いを容易にすると共に内部に収容される有機電界発光素子用材料の蒸着時における熱分解を抑制することができる有機電界発光素子用材料入り容器などの提供。
【解決手段】有機電界発光素子用材料入り容器は、蒸着で成膜可能な有機電界発光素子用材料と、該有機電界発光素子用材料を内部に収容する容器とを含む有機電界発光素子用材料入り容器であって、前記有機電界発光素子用材料の粉粒と鉄粉粒との摩擦により帯電された有機電界発光素子用材料の粉粒の帯電量と、前記容器を粉砕して得られた容器の粉粒と鉄粉粒との摩擦により帯電された容器の粉粒の帯電量との差の絶対値が、10μC/g以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子用材料入り容器、並びに、有機電界発光素子用材料、該容器に収容された有機電界発光素子用材料による蒸着膜及びその製造方法、前記蒸着膜が形成された有機電界発光素子(以下、「有機エレクトロルミネッセント素子」、「有機EL素子」と称することもある)、及び前記有機電界発光素子用材料を収容する容器のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子の製造に用いられる有機電界発光素子用材料は、粉粒状で取り扱われる場合が多い。この粉粒状の有機電界発光素子用材料が帯電してしまうと、静電引力によって様々な箇所に付着してしまうため、取扱いが非常に困難となり、例えば、有機物化合物を自動的に補給する自動補給機構を構築することができずに、製造コストが増加してしまうという問題がある。
また、有機EL素子の製造に用いられる有機電界発光素子用材料は、るつぼ等の容器に収容され、真空蒸着により気化されて、基板上に蒸着膜が形成される。ここで、前記有機電界発光素子用材料の蒸着を長時間行う場合において、熱分解が起こりやすいという問題がある。
なお、無機蛍光体の帯電量の絶対値が所定値以上となるように制御して、蛍光体同士の凝集を防止するなどして、無機蛍光体の発光効率を向上することが特許文献1及び2に開示されているが、有機電界発光素子用材料が熱分解を起こすことなく、長時間安定して有機電界発光素子用材料を蒸着することができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第07/040063号パンフレット
【特許文献2】国際公開第07/083626号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、有機電界発光素子用材料の取扱いを容易にすると共に内部に収容される有機電界発光素子用材料の蒸着時における熱分解を抑制することができる有機電界発光素子用材料入り容器、並びに、該容器に収容された有機電界発光素子用材料、該容器に収容された有機電界発光素子用材料による蒸着膜及びその製造方法、前記蒸着膜が形成された有機電界発光素子、及び前記有機電界発光素子用材料を収容する容器のスクリーニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、有機電界発光素子用材料の帯電量を制御することにより、有機電界発光素子用材料の取扱いを容易にするだけでなく、前記有機電界発光素子用材料の蒸着時における熱分解を抑制でき、該蒸着時における熱分解の抑制により、発光効率及び耐久性が改善された有機電界発光素子を作製することができることを知見した。
有機電界発光素子用材料が、粒径が150μm以上の粉粒を実質的に含まないと、長時間の加熱に対する蒸着安定性が改善されることを知見した。
有機電界発光素子用材料が、粒径が1μm以下の粉粒を実質的に含まないと、長時間の加熱に対する蒸着安定性が改善されることを知見した。
有機電界発光素子用材料が、粒径が150μm以上の粉粒を実質的に含まず、かつ、粒径が1μm以下の粉粒を実質的に含まないと、長時間の加熱に対する蒸着安定性がさらに改善されることを知見した。
【0006】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 蒸着で成膜可能な有機電界発光素子用材料と、該有機電界発光素子用材料を内部に収容する容器とを含む有機電界発光素子用材料入り容器であって、前記有機電界発光素子用材料の粉粒と鉄粉粒との摩擦により帯電された有機電界発光素子用材料の粉粒の帯電量と、前記容器を粉砕して得られた容器の粉粒と鉄粉粒との摩擦により帯電された容器の粉粒の帯電量との差の絶対値が、10μC/g以下であることを特徴とする有機電界発光素子用材料入り容器である。
<2> 有機電界発光素子用材料が、粒径が150μm以上の粉粒を実質的に含まない前記<1>に記載の有機電界発光素子用材料入り容器である。
<3> 有機電界発光素子用材料が、粒径が1μm以下の粉粒を実質的に含まない前記<1>から<2>のいずれかに記載の有機電界発光素子用材料入り容器である。
<4> 有機電界発光素子用材料の粉粒が、数平均粒径が0.1μm〜200μmである前記<1>から<3>のいずれかに記載の有機電界発光素子用材料入り容器である。
<5> 有機電界発光素子用材料が燐光発光性の有機金属錯体を含む前記<1>から<4>のいずれかに記載の有機電界発光素子用材料入り容器である。
<6> 容器材料が、ガラス、石英、鉄、タンタル、ステンレス、酸化アルミニウム、炭化珪素、及びポリプロピレンから選択される少なくとも1種を含む前記<1>から<5>のいずれかに記載の有機電界発光素子用材料入り容器である。
<7> 前記<1>から<6>のいずれかに記載の有機電界発光素子用材料入り容器に収容された有機電界発光素子用材料であって、昇華により気化することを特徴とする有機電界発光素子用材料である。
<8> 前記<1>から<6>のいずれかに記載の有機電界発光素子用材料入り容器に収容された有機電界発光素子用材料を蒸着して、前記有機電界発光素子用材料による蒸着膜を基材上に形成することを特徴とする蒸着膜の製造方法である。
<9> 前記<8>に記載の蒸着膜の製造方法により製造されたことを特徴とする蒸着膜である。
<10> 前記<9>に記載の蒸着膜が少なくとも1層形成されたことを特徴とする有機電界発光素子である。
<11> 蒸着に用いる有機電界発光素子用材料の収容に適した容器をスクリーニングする容器のスクリーニング方法であって、前記有機電界発光素子用材料の粉粒と鉄粉粒とを混合して前記有機電界発光素子用材料の粉粒の帯電量を測定し、容器の粉粒と鉄粉粒とを混合して前記容器の粉粒の帯電量を測定し、前記有機電界発光素子用材料の粉粒の帯電量と前記容器の粉粒の帯電量との差の絶対値が10μC/g以下となる容器をスクリーニングすることを特徴とする容器のスクリーニング方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、有機電界発光素子用材料の取扱いを容易にすると共に内部に収容される有機電界発光素子用材料の蒸着時における熱分解を抑制することができる有機電界発光素子用材料入り容器、並びに、該容器に収容された有機電界発光素子用材料、該有機電界発光素子用材料入り容器に収容された有機電界発光素子用材料による蒸着膜及びその製造方法、前記蒸着膜が形成された有機電界発光素子、及び前記有機電界発光素子用材料を収容する容器のスクリーニング方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の有機電界発光素子の層構成の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の有機電界発光素子用材料の粒度分布測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(有機電界発光素子用材料入り容器)
本発明の有機電界発光素子用材料入り容器としては、少なくとも、有機電界発光素子用材料と、容器とを含み、さらに必要に応じて、その他の成分を含む。
前記有機電界発光素子用材料の粉粒と鉄粉粒との摩擦により帯電された有機電界発光素子用材料の粉粒の帯電量と、前記前記容器を粉砕して得られた容器の粉粒と鉄粉粒との摩擦により帯電された容器の粉粒の帯電量との差の絶対値としては、10μC/g以下である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、8μC/g以下が好ましく、5μC/g以下がより好ましい。
前記差の絶対値が、10μC/gを超えると、長時間の加熱時に分解が生じる可能性がある。一方、前記差の絶対値が、特に好ましい範囲内であると、分解を生じることなく長時間成膜可能な点で有利である。
有機電界発光素子用材料は、蒸着安定性を向上させる点で、実質的に粒径が150μm以上の粉粒を含まないことが好ましく、さらに、実質的に粒径が1μm以下の粉粒を含まないことが好ましい。ここで、「実質的に」とは、体積占有率で5%以下であること、3%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましい。
なお、前記有機電界発光素子用材料の粉粒の数平均粒径が0.1μm〜200μmであり、前記容器の粉粒は、数平均粒径が0.1μm〜200μmである。
【0010】
<帯電量の測定>
前記帯電量の測定としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ブローオフ型粉体帯電量測定装置を用いた、日本画像学会が定める「トナー帯電量測定法標準」に基づく測定法(ブローオフ法)などが挙げられる。
【0011】
−ブローオフ法−
測定試料5質量%と、キャリアとしての数平均粒径が約300μmの鉄粉粒95質量%とを攪拌混合することによって、測定試料を摩擦帯電させる。この鉄粉粒混合試料を大地と絶縁した金属容器内の金網上に載置し、窒素圧縮ガスを吹きつけ、鉄粉粒混合試料を前記金網の目開きを通じて分離除去する。前記金網上に残留した鉄粉粒には、前記測定試料と等量且つ逆の帯電が残っている。前記金属容器に接続されたコンデンサの両端の電位を測定することによって、前記測定試料の帯電量を測定する。
【0012】
<粒径の測定>
前記粒径の測定としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粒度分布測定装置(マイクロトラックMT3000II、日機装株式会社製)を用いた粒度測定、などが挙げられる。
【0013】
<有機電界発光素子用材料>
前記有機電界発光素子用材料としては、蒸着で成膜可能な有機電界発光素子用材料である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、後述する有機電界発光素子で用いられる材料のうち蒸着で成膜可能な有機電界発光素子用材料として、下記構造式(M−1)〜(M−13)の化合物などが挙げられる。これらの中でも、燐光発光性の有機金属錯体を含む有機電界発光素子用材料が好ましい。
なお、前記有機電界発光素子用材料としては、昇華により気化する材料が多い。
前記燐光発光性の有機金属錯体を含む有機電界発光素子用材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記構造式(M−1)〜(M−3)、(M−8)〜(M−11)の化合物などが挙げられる。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【0014】
<容器>
前記容器としては、前記有機電界発光素子用材料を内部に収容するものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記容器の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ガラス、石英、鉄、タンタル、ステンレス、酸化アルミニウム(アルミナ)、炭化珪素、及びポリプロピレンから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
前記ガラスとは、ケイ酸ガラスにいくらかの不純物を含んだものを表し、密度が2.5g/cm以上のものである。
前記石英とは、不純物の少ないケイ酸ガラスを指し、密度が2.0g/cm以上2.5g/cm未満のものである。
前記ステンレスは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、SUS304、SUS316、SUS430、などが挙げられる。
【0015】
<鉄粉粒>
前記鉄粉粒の材質は、不純物を含まない純鉄である限り、特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができる。
【0016】
前記鉄粉粒の数平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、300μm〜1,000μmが好ましく、300μm〜800μmがより好ましく、350μm〜500μmが特に好ましい。
前記鉄粉粒の数平均粒径が、300μm未満であると、金網から抜けてしまい測定値が正しくなくなることがあり、1,000μmを超えると、有機粉末との混合が行いにくいことがある。一方、前記鉄粉粒の数平均粒径が、特に好ましい範囲内であると、測定が容易に行える点で有利である。
【0017】
前記鉄粉粒と前記有機電界発光素子用材料の粉粒との質量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、材料の帯電性を評価する場合には、一定の比率で測定することが必要となる。
【0018】
前記鉄粉粒と前記容器の粉粒との質量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、材料の帯電性を評価する場合には、一定の比率で測定することが必要となる。
【0019】
(スクリーニング方法)
本発明のスクリーニング方法は、少なくとも、スクリーニング工程を含み、さらに、必要に応じて適宜選択した、その他の工程を含む。
【0020】
<スクリーニング工程>
前記スクリーニング工程は、有機電界発光素子用材料の粉粒と鉄粉粒とを混合して前記有機電界発光素子用材料の粉粒の帯電量を測定し、容器の粉粒と鉄粉粒とを混合して前記容器の粉粒の帯電量を測定し、前記有機電界発光素子用材料の粉粒の帯電量と前記容器の粉粒の帯電量との差の絶対値が10μC/g以下となる容器をスクリーニングする工程である。
【0021】
(蒸着膜及びその製造方法)
本発明の蒸着膜の製造方法は、少なくとも、蒸着膜形成工程を含み、さらに、必要に応じて適宜選択した、その他の工程を含む。
【0022】
<前記蒸着膜形成工程>
前記蒸着膜形成工程は、本発明の有機電界発光素子用材料入り容器に収容された有機電界発光素子用材料を蒸着して、前記有機電界発光素子用材料による蒸着膜を基材上に形成する工程である。
前記蒸着膜形成工程における圧力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1×10−2Pa以下が好ましく、1×10−3Pa以下がより好ましく、1×10−4Pa以下が特に好ましい。
前記蒸着膜形成工程における圧力が、1×10−2Paを超えると、平均自由工程が短くなり蒸着が行えなくなることがある。一方、前記蒸着膜形成工程における圧力が、特に好ましい範囲内であると、残留ガスによる悪影響が少ない点で有利である。
前記蒸着膜形成工程における温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、100℃以上が特に好ましい。
前記蒸着膜形成工程における温度が、50℃未満であると、蒸着物が基板上で膜にならないことがある。一方、前記蒸着膜形成工程における温度が、特に好ましい範囲内であると、一般的に入手可能なボートやるつぼを使用できる点で有利である。
【0023】
−蒸着膜−
前記蒸着膜としては、本発明の有機電界発光素子用材料入り容器に収容された有機電界発光素子用材料による蒸着膜である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機薄膜などが挙げられる。
前記蒸着膜の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0024】
−基材−
前記基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、後述する基板などが挙げられる。なお、「基材上」とは、「基材表面と接すること」乃至「基材上方」を意味する。
【0025】
(有機電界発光素子)
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極(電極)の間に、発光層を含む少なくとも1層の有機層を有してなり、更に必要に応じて、その他の層を有してなる。前記有機電界発光素子の層のうち、少なくとも1層が本発明の蒸着膜である。
前記有機層は、少なくとも前記発光層を有し、電子輸送層、電子注入層、更に必要に応じて、正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロック層、電子ブロック層、などを有していてもよい。
【0026】
<発光層>
前記発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、又は正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
前記発光層は、発光材料のみで構成されていてもよく、ホスト材料と発光性ドーパントの混合層とした構成でもよい。発光性ドーパントは蛍光発光材料でも燐光発光材料であってもよく、2種以上であってもよい。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は1種であっても2種以上であってもよく、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられる。さらに、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいてもよい。
また、発光層は1層であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。
前記発光層は、特に制限はなく、公知の方法に従って形成することができるが、例えば、蒸着法、スパッタ法等の乾式製膜法、湿式塗布法、転写法、印刷法、インクジェット方式、などにより好適に形成することができる。
【0027】
前記発光層の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、2nm〜500nmが好ましく、発光効率の観点から、3nm〜200nmがより好ましく、10nm〜200nmが更に好ましい。また、前記発光層は1層であっても2層以上であってもよい。
【0028】
前記燐光発光性ドーパントとしては、特に限定はなく、目的に応じて適宜選択することができ、遷移金属原子又はランタノイド原子を含む錯体を挙げることができる。
前記遷移金属原子としては、特に限定はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、金、銀、銅、及び白金が好ましく、レニウム、イリジウム、及び白金がより好ましく、イリジウム、白金が特に好ましい。
ランタノイド原子としては、特に限定はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、およびルテシウムが挙げられる。これらの中でも、ネオジム、ユーロピウム、及びガドリニウムが好ましい。
【0029】
錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry, Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer−Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
配位子としては、ハロゲン配位子(塩素配位子が好ましい)、芳香族炭素環配位子(例えば、シクロペンタジエニルアニオン、ベンゼンアニオン、ナフチルアニオンなどが挙げられ、炭素数5〜30が好ましく、炭素数6〜30がより好ましく、炭素数6〜20がさらに好ましく、炭素数6〜12が特に好ましい)、含窒素ヘテロ環配位子(例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、フェナントロリンなどが挙げられ、炭素数5〜30が好ましく、炭素数6〜30がより好ましく、炭素数6〜20がさらに好ましく、炭素数6〜12が特に好ましい)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなどが挙げられる)、カルボン酸配位子(例えば、酢酸配位子などが挙げられ、炭素数2〜30が好ましく、炭素数2〜20がより好ましく、炭素数2〜16が特に好ましい)、アルコラト配位子(例えば、フェノラト配位子などが挙げられ、炭素数1〜30が好ましく、炭素数1〜20がより好ましく、炭素数6〜20がさらに好ましい)、シリルオキシ配位子(例えば、トリメチルシリルオキシ配位子、ジメチル−tert−ブチルシリルオキシ配位子、トリフェニルシリルオキシ配位子などが挙げられ、炭素数3〜40が好ましく、炭素数3〜30がより好ましく、炭素数3〜20が特に好ましい)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子、リン配位子(例えば、トリフェニルフォスフィン配位子などが挙げられ、炭素数3〜40が好ましく、炭素数3〜30がより好ましく、炭素数3〜20がさらに好ましく、炭素数6〜20が特に好ましい)、チオラト配位子(例えば、フェニルチオラト配位子などが挙げられ、炭素数1〜30が好ましく、炭素数1〜20がより好ましく、炭素数6〜20がさらに好ましい)、フォスフィンオキシド配位子(例えば、トリフェニルフォスフィンオキシド配位子などが挙げられ、炭素数3〜30が好ましく、炭素数8〜30がより好ましく、炭素数18〜30が特に好ましくい)が好ましく、含窒素ヘテロ環配位子がより好ましい。
上記錯体は、化合物中に遷移金属原子を一つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
【0030】
これらの中でも、発光性ドーパントとしては、例えば、US6303238B1、US6097147、WO00/57676、WO00/70655、WO01/08230、WO01/39234A2、WO01/41512A1、WO02/02714A2、WO02/15645A1、WO02/44189A1、WO05/19373A2、特開2001−247859、特開2002−302671、特開2002−117978、特開2003−133074、特開2002−235076、特開2003−123982、特開2002−170684、EP1211257、特開2002−226495、特開2002−234894、特開2001−247859、特開2001−298470、特開2002−173674、特開2002−203678、特開2002−203679、特開2004−357791、特開2006−256999、特開2007−19462、特開2007−84635、特開2007−96259等の特許文献に記載の燐光発光化合物などが挙げられる。中でも、Ir錯体、Pt錯体、Cu錯体、Re錯体、W錯体、Rh錯体、Ru錯体、Pd錯体、Os錯体、Eu錯体、Tb錯体、Gd錯体、Dy錯体、Ce錯体が好ましく、Ir錯体、Pt錯体、Re錯体がより好ましい。中でも、金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含むIr錯体、Pt錯体、Re錯体が、さらに好ましい。さらに、発光効率、駆動耐久性、色度等の観点で、3座以上の多座配位子を含むIr錯体、Pt錯体、Re錯体が特に好ましい。
【0031】
前記蛍光発光性ドーパントとしては、特に限定はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、スチリルベンゼン、ポリフェニル、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、ナフタルイミド、クマリン、ピラン、ペリノン、オキサジアゾール、アルダジン、ピラリジン、シクロペンタジエン、ビススチリルアントラセン、キナクリドン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、シクロペンタジエン、スチリルアミン、芳香族ジメチリディン化合物、縮合多環芳香族化合物(アントラセン、フェナントロリン、ピレン、ペリレン、ルブレン、またはペンタセンなど)、8−キノリノールの金属錯体、ピロメテン錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン、およびこれらの誘導体などが挙げられる。
【0032】
発光性ドーパントとしては、例えば下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
【化14】

【0034】
【化15】

【0035】
【化16】

【0036】
【化17】

【0037】
【化18】

【0038】
【化19】

【0039】
発光層中の発光性ドーパントは、発光層中に一般的に発光層を形成する全化合物質量に対して、0.1質量%〜50質量%含有されるが、耐久性、外部量子効率の観点から1質量%〜50質量%含有されることが好ましく、2質量%〜40質量%含有されることがより好ましい。
【0040】
発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、2nm〜500nmであるのが好ましく、中でも、外部量子効率の観点で、3nm〜200nmであるのがより好ましく、5nm〜100nmであるのが特に好ましい。
【0041】
前記ホスト材料としては、正孔輸送性に優れる正孔輸送性ホスト材料(正孔輸送性ホストと記載する場合がある)及び電子輸送性に優れる電子輸送性ホスト化合物(電子輸送性ホストと記載する場合がある)を用いることができる。
【0042】
発光層内の正孔輸送性ホストとしては、例えば、以下の材料が挙げられる。
ピロール、インドール、カルバゾール、アザインドール、アザカルバゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ピラゾール、イミダゾール、チオフェン、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、及び、それらの誘導体等が挙げられる。
インドール誘導体、カルバゾール誘導体、芳香族第三級アミン化合物、チオフェン誘導体であることが好ましく、分子内にカルバゾール基を有するものがより好ましく、t−ブチル置換カルバゾール基を有する化合物が特に好ましい。
【0043】
発光層内の電子輸送性ホストとしては、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、電子親和力Eaが2.5eV以上3.5eV以下であることが好ましく、2.6eV以上3.4eV以下であることがより好ましく、2.8eV以上3.3eV以下であることが特に好ましい。また、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、イオン化ポテンシャルIpが5.7eV以上7.5eV以下であることが好ましく、5.8eV以上7.0eV以下であることがより好ましく、5.9eV以上6.5eV以下であることが特に好ましい。
【0044】
このような電子輸送性ホストとしては、具体的には、例えば、以下の材料が挙げられる。
ピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾ−ル、オキサゾ−ル、オキサジアゾ−ル、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、およびそれらの誘導体(他の環と縮合環を形成してもよい)、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体等が挙げられる。
【0045】
電子輸送性ホストとしては、金属錯体、アゾール誘導体(ベンズイミダゾール誘導体、イミダゾピリジン誘導体等)、アジン誘導体(ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体等)が好ましく、中でも、耐久性の点から、金属錯体化合物がより好ましい。金属錯体化合物(A)は、金属に配位する窒素原子、酸素原子及び硫黄原子の少なくともいずれかを有する配位子を有する金属錯体がより好ましい。
金属錯体中の金属イオンは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、亜鉛イオン、インジウムイオン、錫イオン、白金イオン、又はパラジウムイオンであることが好ましく、ベリリウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、亜鉛イオン、白金イオン、又はパラジウムイオンがより好ましく、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、又はパラジウムイオンが特に好ましい。
【0046】
前記金属錯体中に含まれる配位子としては種々の公知の配位子が有るが、例えば、「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」、Springer−Verlag社、H.Yersin著、1987年発行、「有機金属化学−基礎と応用−」、裳華房社、山本明夫著、1982年発行等に記載の配位子が挙げられる。
【0047】
前記配位子としては、含窒素ヘテロ環配位子(炭素数1〜30が好ましく、炭素数2〜20がより好ましく、炭素数3〜15が特に好ましい)が好ましい。また、前記配位子としては、単座配位子であっても2座以上の配位子であってもよいが、2座以上6座以下の配位子であることが好ましい。また、2座以上6座以下の配位子と単座の混合配位子も好ましい。
前記配位子としては、例えば、アジン配位子(例えば、ピリジン配位子、ビピリジル配位子、ターピリジン配位子などが挙げられる。)、ヒドロキシフェニルアゾール配位子(例えば、ヒドロキシフェニルベンズイミダゾール配位子、ヒドロキシフェニルベンズオキサゾール配位子、ヒドロキシフェニルイミダゾール配位子、ヒドロキシフェニルイミダゾピリジン配位子などが挙げられる。)、アルコキシ配位子(例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられ、炭素数1〜30が好ましく、炭素数1〜20がより好ましく、炭素数1〜10が特に好ましい。)、アリールオキシ配位子(例えば、フェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシ、2,4,6−トリメチルフェニルオキシ、4−ビフェニルオキシなどが挙げられ、炭素数6〜30が好ましく、炭素数6〜20がより好ましく、炭素数6〜12が特に好ましい)などが挙げられる。
【0048】
ヘテロアリールオキシ配位子(例えば、ピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられ、炭素数1〜30が好ましく、炭素数1〜20がより好ましく、炭素数1〜12が特に好ましい。)、アルキルチオ配位子(例えば、メチルチオ、エチルチオなどが挙げられ、炭素数1〜30が好ましく、炭素数1〜20がより好ましく、炭素数1〜12が特に好ましい。)、アリールチオ配位子(例えば、フェニルチオなどが挙げられ、炭素数6〜30が好ましく、炭素数6〜20がより好ましく、炭素数6〜12が特に好ましい。)、ヘテロアリールチオ配位子(例えば、ピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられ、炭素数1〜30が好ましく、炭素数1〜20がより好ましく、炭素数1〜12が特に好ましい。)、シロキシ配位子(例えば、トリフェニルシロキシ基、トリエトキシシロキシ基、トリイソプロピルシロキシ基などが挙げられ、炭素数1〜30が好ましく、炭素数3〜25がより好ましく、炭素数6〜20が特に好ましい。)、芳香族炭化水素アニオン配位子(例えば、フェニルアニオン、ナフチルアニオン、及びアントラニルアニオンなどが挙げられ、炭素数6〜30が好ましく、炭素数6〜25がより好ましく、炭素数6〜20が特に好ましい。)、芳香族ヘテロ環アニオン配位子(例えば、ピロールアニオン、ピラゾールアニオン、ピラゾールアニオン、トリアゾールアニオン、オキサゾールアニオン、ベンゾオキサゾールアニオン、チアゾールアニオン、ベンゾチアゾールアニオン、チオフェンアニオン、及びベンゾチオフェンアニオンなどが挙げられ、炭素数1〜30が好ましく、炭素数2〜25がより好ましく、炭素数2〜20が特に好ましい。)、インドレニンアニオン配位子などが挙げられ、含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ基、シロキシ配位子などが好ましく、含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、シロキシ配位子、芳香族炭化水素アニオン配位子、芳香族ヘテロ環アニオン配位子などがさらに好ましい。
【0049】
金属錯体電子輸送性ホストの例としては、例えば、特開2002−235076、特開2004−214179、特開2004−221062、特開2004−221065、特開2004−221068、特開2004−327313等に記載の化合物が挙げられる。
【0050】
発光層において、前記ホスト材料の三重項最低励起準位(T1)が、前記燐光発光材料のT1より高いことが色純度、発光効率、駆動耐久性の点で好ましい。
【0051】
また、ホスト化合物の含有量は、特に限定されるものではないが、発光効率、駆動電圧の観点から、発光層を形成する全化合物質量に対して15質量%以上95質量%以下であることが好ましい。
【0052】
<電子注入層、電子輸送層>
電子注入層、電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能
を有する層である。これらの層に用いる電子注入材料、電子輸送材料は低分子化合物であ
っても高分子化合物であってもよい。
具体的には、ピリジン誘導体、キノリン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、
フタラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、トリアジン誘導体、トリアゾール誘導体、
オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導
体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピ
ランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチ
リルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロ
シアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオ
キサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、シロ
ールに代表される有機シラン誘導体、等を含有する層であることが好ましい。
【0053】
本発明の有機電界発光素子の電子注入層あるいは電子輸送層には、電子供与性ドーパントを含有させることができる。電子注入層、あるいは電子輸送層に導入される電子供与性ドーパントとしては、電子供与性で有機化合物を還元する性質を有していればよく、Liなどのアルカリ金属、Mgなどのアルカリ土類金属、希土類金属を含む遷移金属や還元性有機化合物などが好適に用いられる。金属としては、特に仕事関数が4.2eV以下の金属が好適に使用でき、具体的には、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Cs、La、Sm、Gd、およびYbなどが挙げられる。また、還元性有機化合物としては、例えば、含窒素化合物、含硫黄化合物、含リン化合物などが挙げられる。
この他にも、特開平6−212153、特開2000−196140、特開2003−
68468、特開2003−229278、特開2004−342614等に記載の材料
を用いることが出来る。
【0054】
これらの電子供与性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
電子供与性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、電子輸送層材料に対し
て0.1質量%〜99質量%であることが好ましく、1.0質量%〜80質量%であるこ
とがさらに好ましく、2.0質量%〜70質量%であることが特に好ましい。
【0055】
電子注入層、電子輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm
以下であることが好ましい。
電子輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200
nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが特に好ましい。また、電
子注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.2nm〜1
00nmであるのがより好ましく、0.5nm〜50nmであるのが特に好ましい。
電子注入層、電子輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であっ
てもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0056】
<正孔注入層、正孔輸送層>
前記正孔注入層及び正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。該正孔注入層及び正孔輸送層は、単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
これらの層に用いられる正孔注入材料、又は正孔輸送材料としては、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
前記正孔注入材料又は正孔輸送材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばピロール誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、チオフェン誘導体、有機シラン誘導体、カーボン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
前記正孔注入層、及び正孔輸送層には、電子受容性ドーパントを含有させることができる。
前記電子受容性ドーパントとしては、電子受容性で有機化合物を酸化する性質を有すれば、無機化合物でも有機化合物でも使用できる。
前記無機化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば塩化第二鉄、塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、五塩化アンチモン等のハロゲン化金属;五酸化バナジウム、三酸化モリブデン等の金属酸化物、などが挙げられる。
前記有機化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば置換基としてニトロ基、ハロゲン、シアノ基、トリフルオロメチル基等を有する化合物;キノン系化合物、酸無水物系化合物、フラーレン、などが挙げられる。
これらの電子受容性ドーパントは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
前記電子受容性ドーパントの使用量は、特に制限はなく、材料の種類によって異なるが、正孔輸送層材料又は正孔注入材料に対して0.01質量%〜50質量%が好ましく、0.05質量%〜30質量%がより好ましく、0.1質量%〜30質量%が更に好ましい。
【0058】
前記正孔注入層及び正孔輸送層は、特に制限はなく、公知の方法に従って形成することができるが、例えば、蒸着法、スパッタ法等の乾式製膜法、湿式塗布法、転写法、印刷法、インクジェット方式、などにより好適に形成することができる。
前記正孔注入層及び正孔輸送層の厚さは、1nm〜500nmが好ましく、5nm〜250nmがより好ましく、10nm〜200nmが更に好ましい。
【0059】
<正孔ブロック層、電子ブロック層>
前記正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が陰極側に通り抜けることを防止する機能を有する層であり、通常、発光層と陰極側で隣接する有機化合物層として設けられる。
前記電子ブロック層は、陰極側から発光層に輸送された電子が陽極側に通り抜けることを防止する機能を有する層であり、通常、発光層と陽極側で隣接する有機化合物層として設けられる。
前記正孔ブロック層を構成する化合物としては、例えばBAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体、などが挙げられる。
前記電子ブロック層を構成する化合物としては、例えば前述の正孔輸送材料として挙げたものが利用できる。
【0060】
前記電子ブロック層及び正孔ブロック層は、特に制限はなく、公知の方法に従って形成することができるが、例えば、蒸着法、スパッタ法等の乾式製膜法、湿式塗布法、転写法、印刷法、インクジェット方式、などにより好適に形成することができる。
前記正孔ブロック層及び電子ブロック層の厚さは、1nm〜200nmであるのが好ましく、1nm〜50nmであるのがより好ましく、3nm〜10nmであるのが更に好ましい。また、正孔ブロック層及び電子ブロック層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0061】
<電極>
本発明の有機電界発光素子は、一対の電極、即ち陽極と陰極とを含む。前記有機電界発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は透明であることが好ましい。通常、陽極は有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、陰極は有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよい。
前記電極としては、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
前記電極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、又はこれらの混合物等が好適に挙げられる。
【0062】
−陽極−
前記陽極を構成する材料としては、例えば、アンチモン、フッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物;金、銀、クロム、ニッケル等の金属;これらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物;ヨウ化銅、硫化銅等の無機導電性物質;ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性材料、又はこれらとITOとの積層物、などが挙げられる。これらの中でも、導電性金属酸化物が好ましく、生産性、高導電性、透明性等の点からはITOが特に好ましい。
【0063】
−陰極−
前記陰極を構成する材料としては、例えば、アルカリ金属(例えばLi、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(例えばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
これらの中でも、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。
前記アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01質量%〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)を魅する。
【0064】
前記電極の形成方法については、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができ、例えば印刷方式、コーティング方式等の湿式方式;真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式;CVD、プラズマCVD法等の化学的方式、などが挙げられる。これらの中でも、前記電極を構成する材料との適性を考慮し、適宜選択した方法に従って前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料としてITOを選択する場合には、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って形成することができる。陰極の材料として金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って形成することができる。
【0065】
なお、前記電極を形成する際にパターニングを行う場合は、フォトリソグラフィー等による化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザー等による物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0066】
<基板>
本発明の有機電界発光素子は、基板上に設けられていることが好ましく、電極と基板とが直接接する形で設けられていてもよいし、中間層を介在する形で設けられていてもよい。
前記基板の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ガラス(無アルカリガラス、ソーダライムガラス等)等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の有機材料、などが挙げられる。
【0067】
前記基板の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、発光素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができる。一般的には、基板の形状としては、板状であることが好ましい。基板の構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。基板は透明でも不透明でもよく、透明な場合は無色透明でも有色透明でもよい。
【0068】
前記基板には、その表面又は裏面に透湿防止層(ガスバリア層)を設けることができる。
前記透湿防止層(ガスバリア層)の材料としては、例えば窒化珪素、酸化珪素等の無機物などが挙げられる。
前記透湿防止層(ガスバリア層)は、例えば高周波スパッタリング法などにより形成することができる。
【0069】
<その他の構成>
前記その他の構成としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、保護層、封止容器、樹脂封止層、封止接着剤などを挙げることができる。
前記保護層、前記封止容器、前記樹脂封止層、前記封止接着剤などの内容としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2009−152572号公報等に記載の事項を適用することができる。
【0070】
図1は、本発明の有機電界発光素子の層構成の一例を示す概略図である。有機EL素子10は、ガラス基板1上に形成された陽極2(例えばITO電極)と、正孔注入層3と、正孔輸送層4と、発光層5と、電子輸送層6と、電子注入層7と、陰極8(例えばAl−Li電極)とをこの順に積層してなる層構成を有する。なお、陽極2(例えばITO電極)と陰極8(例えばAl−Li電極)とは電源を介して互いに接続されている。
【0071】
<駆動>
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
本発明の有機電界発光素子は、薄膜トランジスタ(TFT)によりアクティブマトリックスへ適用することができる。薄膜トランジスタの活性層としてアモルファスシリコン、高温ポリシリコン、低温ポリシリコン、微結晶シリコン、酸化物半導体、有機半導体、カーボンナノチューブ等を適用することができる。
本発明の有機電界発光素子は、例えば国際公開2005/088726号パンフレット、特開2006−165529号公報、米国特許出願公開2008/0237598号明細書などに記載の薄膜トランジスタを適用することができる。
【0072】
本発明の有機電界発光素子は、特に制限はなく、種々の公知の工夫により、光取り出し効率を向上させることができる。例えば、基板表面形状を加工する(例えば微細な凹凸パターンを形成する)、基板、ITO層、有機層の屈折率を制御する、基板、ITO層、有機層の厚みを制御すること等により、光の取り出し効率を向上させ、外部量子効率を向上させることが可能である。
本発明の有機電界発光素子からの光取り出し方式は、トップエミッション方式であってもボトムエミッション方式であってもよい。
【0073】
本発明の有機電界発光素子は、共振器構造を有してもよい。例えば、透明基板上に、屈折率の異なる複数の積層膜よりなる多層膜ミラー、透明又は半透明電極、発光層、及び金属電極を重ね合わせて有する。発光層で生じた光は多層膜ミラーと金属電極を反射板としてその間で反射を繰り返し共振する。
別の好ましい態様では、透明基板上に、透明又は半透明電極と金属電極がそれぞれ反射板として機能して、発光層で生じた光はその間で反射を繰り返し共振する。
共振構造を形成するためには、2つの反射板の有効屈折率、反射板間の各層の屈折率と厚みから決定される光路長を所望の共振波長を得るのに最適な値となるよう調整される。第1の態様の場合の計算式は、特開平9−180883号公報に記載されている。第2の態様の場合の計算式は、特開2004−127795号公報に記載されている。
【0074】
<用途>
本発明の有機電界発光素子は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信等に好適に利用できる。
前記有機ELディスプレイをフルカラータイプのものとする方法としては、例えば「月刊ディスプレイ」、2000年9月号、33〜37ページに記載されているように、色の3原色(青色(B)、緑色(G)、赤色(R))に対応する光をそれぞれ発光する有機EL素子を基板上に配置する3色発光法、白色発光用の有機電界発光素子による白色発光をカラーフィルターを通して3原色に分ける白色法、青色発光用の有機電界発光素子による青色発光を蛍光色素層を通して赤色(R)及び緑色(G)に変換する色変換法、などが知られている。
【実施例】
【0075】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0076】
(実施例1〜4、比較例1〜7)
<有機電界発光素子用材料の粉粒の帯電量の測定>
下記構造式(M−1)〜(M−13)の有機電界発光素子用材料の粉粒(数平均粒径100μm)の帯電量を以下に示すブローオフ法により測定した。測定した結果を表1に示す。
【0077】
【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

【0078】
−ブローオフ法−
有機電界発光素子用材料の粉粒(数平均粒径100μm)5質量%と、キャリアとしての数平均粒径が約300μmの鉄粉粒95質量%とを攪拌混合することによって、前記有機電界発光素子用材料の粉粒を摩擦帯電させた。この鉄粉粒混合試料を大地と絶縁した金属容器内の金網(目開き0.2mm)上に載置し、窒素圧縮ガスを吹きつけ、鉄粉粒混合試料を前記金網の目開きを通じて分離除去した。前記金属容器に接続されたコンデンサ両端の電位を、測定することによって、前記測定試料の帯電量を測定した。測定は、三協パイオテク社製、STC−1を用いて行った。
【0079】
【表1】

【0080】
<容器の粉粒の帯電量の測定>
ガラス製容器(ソーダガラス加工品、東静容器社製)、石英製容器(合成石英加工品、フルウチ化学製)、鉄製容器(純鉄加工品、サンリック社製)、タンタル製容器(タンタル加工品、サンリック社製)、ステンレス製容器(SUS304加工品フルウチ化学社製)、アルミナ製容器(商品名AL−203、フルウチ化学社製)、炭化珪素製容器(炭化珪素加工品、アルバックマテリアル社製)、ポリプロピレン製容器を準備し、これらの容器を、それぞれ、粉砕装置(商品名HP−M100、ハルツォクジャパン社製)を用いて繰り返し破砕して、容器の粉粒(数平均粒径100μm)を得た。
得られた容器の粉粒の帯電量を前述のブローオフ法により測定した。測定した結果を表2に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
<蒸着膜の作製>
下記構造式(M−1)、(M−8)、(M−10)の有機電界発光素子用材料の粉粒(数平均粒径100μm)を、石英製容器(合成石英加工品、フルウチ化学社製)、アルミナ製容器(AL−203、フルウチ化学社製)、タンタル製容器(タンタル加工品、サンリック社製)、炭化珪素製容器(炭化珪素加工品、アルバックマテリアル社製)に投入して、真空中(圧力:3×10−4Pa)で加熱して、真空蒸着により単独蒸着膜を石英基板上に形成した(実施例1〜4、比較例1〜8)。蒸着レートは0.2nm/secとし、厚みは500nmとした。
連続成膜時に有機電界発光素子用材料の分解が発生するか否かを測定するため、同じ蒸着源から連続的に24回成膜を行った。加熱していない有機電界発光素子用材料の粉粒と、1回目に成膜した蒸着膜と、24回目に成膜した蒸着膜とを、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(商品名:S−8030、相馬光学社製)を用いて、下記条件で分析し、連続蒸着による有機電界発光素子用材料の分解の有無を確認した。結果を表3に示す。
なお、有機電界発光素子用材料の分解の有無の判断は、加熱していない有機電界発光素子用材料の粉粒のHPLC分析結果と蒸着膜のHPLC分析結果とを比較し、有機電界発光素子用材料の粉粒のHPLC分析結果において検出されていないピークが、蒸着膜のHPLC分析結果において、0.1面積%以上出現した場合を分解ありと判断した。
【0083】
−高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の測定条件−
粉末、蒸着膜をそれぞれ、THF、水の9:1混合溶媒に溶解させる。得られた溶液を相馬光学株式会社製、S−8030を用いて波長254nmで吸収検出により成分分析を行った。カラム温度を40℃とし、流量1mL/minで分析を行った。
粉末と蒸着膜で得られたピークを比較し、粉末で見られなかったピークの総面積が粉末と共通で見られているピーク面積に対して、0.1%以上であった場合に分解が生じていると判断した。
【0084】
【表3】

【0085】
表3より、有機電界発光素子用材料の粉粒の帯電量とるつぼの粉粒との帯電量との差の絶対値が、10μC/g以下となるように、有機電界発光素子用材料とるつぼ材料を選択することにより、有機電界発光素子用材料の帯電による影響を抑制し、長時間の蒸着においても有機電界発光素子用材料が分解することなく、長時間安定に蒸着可能であることが判る。
【0086】
(実施例6、比較例8)
構造式(M−4)の有機電界発光素子用材料が収容された石英るつぼ(合成石英加工品、フルウチ化学社製)と、構造式(M−8)の有機電界発光素子用材料が収容されたタンタル製るつぼ(タンタル加工品、サンリック社製)を用いて、有機EL素子を10回連続して作製した。
比較例として、構造式(M−4)の有機電界発光素子用材料が収容されたステンレスるつぼ(SUS304加工品、フルウチ化学社製)と、構造式(M−8)の有機電界発光素子用材料が収容されたアルミナるつぼ(AL−203、フルウチ化学社製)を用いて、有機EL素子を10回連続して作製した。
前記有機EL素子の素子構成は、ITO(100nm)/2−TNATA(4,4’,4”−トリス(N−(2−ナフチル)−N−フェニル−アミノ)−トリフェニルアミン)+0.3%F4TCNQ(2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン)(120nm)/構造式(M−4)の有機電界発光素子用材料(50nm)/構造式(M−8)の有機電界発光素子用材料(50nm)/LiF(1nm)/Al(70nm)とした。
1回目で得られた有機EL素子と、10回目で得られた有機EL素子とについて、輝度半減期(耐久性)(単位:時間)と正面輝度(単位:cd/m)とを測定した。結果を表4に示す。
【化33】

【化34】

【0087】
前記有機EL素子は、以下のように作製した。
<有機EL素子の作製方法>
0.7mm厚み、2.5cm角のITO付きガラス基板を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、酸素流量70mL/分、処理時間1分間、RFパワー80Wの条件で神港精機社製のEXAM型プラズマクリーニング装置を用いて酸素プラズマ処理を行った。
次に、陽極(ITO)上に、正孔注入層として2−TNATA(4,4’,4”−トリス(N−(2−ナフチル)−N−フェニル−アミノ)−トリフェニルアミン)を0.5nm/sで、F4TCNQ(2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン)を0.0015nm/sで共蒸着した。厚みを120nmとした。
次に、正孔注入層上に、正孔輸送層としてα−NPD(ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン)を0.1nm/sで厚み50nmに蒸着した。
次に、電子輸送層、兼発光層としてAlq3(トリ(8−ヒドロキシキノリン)アルミナム)を0.1nm/sで50nm成膜した。
次に、電子輸送層上に、電子注入層としてLiFを0.05nm/sで厚み1nmとなるように蒸着した。
次に、電子注入層上に、陰極としてパタ−ニングしたマスク(発光領域が2mm×2mmとなるマスク)を設置し、金属アルミニウムを0.3nm/sで厚み70nmとなるように蒸着した。
以上により作製した積層体を、窒素ガスで置換したグローブボックス内に入れ、ガラス封止基板、及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ株式会社製)を用いて封止した。
【0088】
<正面輝度(単位:cd/m2)の測定>
東陽テクニカ(株)製ソースメジャーユニット2400を用いて、直流電流2.0mAを各素子に印加し、発光させた。その輝度をトプコン社製輝度計BM−8を用いて測定した。
【0089】
<輝度半減期(耐久性)(単位:時間)の測定>
各素子に2.0mAの一定電流を連続通電し、輝度が初期輝度の半分になるまでの時間を測定した。
【0090】
【表4】

表4から明らかなように、実施例6の材料と容器の組み合わせで連続作成した素子では、初期も連続10回蒸着後もほぼ同じ正面輝度、半減期が得られたのに対して、比較例8の素子は初期は同じ特性が得られたが、連続蒸着後には正面輝度の低下と半減期の低下が見られた。
【0091】
(実施例7:有機化合物M−10−1の粒度分布測定)
ケミプロ化成製Ir(ppy)3について、昇華精製装置(TRS−1、アルバック理工社製)を用いて、昇華精製を行った。得られた昇華精製品(有機化合物M−10−1とする)をかき出し、製粒度分布測定装置(マイクロトラックMT3000II、日機装株式会社製)を用いて粒度分布を測定した。結果を図2に示す。有機化合物M−10−1は、粒径0.01μm〜4,000μmの幅広い粒径分布を有する。
【0092】
(実施例8:有機化合物M−10−2の作製)
金属製のふるい(ふるいの目は150μmのもの)を使用して、有機化合物M−10−1から150μm以上の粒径を有する粉粒を除去し、有機化合物M−10−2を作製した。実施例7と同様にして、有機化合物M−10−2の粒度分布を測定した。結果を図2に示す。有機化合物M−10−2において、粒径が150μm以上の粉粒は、体積占有率で1%以下であった。
【0093】
(実施例9:有機化合物M−10−3の作製)
有機化合物M−10−1を300mgはかり取り、ジクロロエタンに溶かしきった。この有機化合物M−10−1溶液を入れたナスフラスコを50℃のオイルバスにいれて3日間放置した。溶媒が蒸発し、有機化合物の黄色単結晶が得られた。この有機化合物を、ろ過及び真空乾燥し、有機化合物M−10−3とした。実施例7と同様にして、有機化合物M−10−3の粒度分布を測定した。結果を図2に示す。有機化合物M−10−3において、1μm以下の粉粒は、体積占有率で2%以下であった。
即ち、有機化合物M−10−1を再結晶し、ゆっくりと析出させることで、粒径が大きい有機化合物M−10−3を作製し、この作製した有機化合物M−10−3を粒度分布測定することにより1μm以下の粒子が減少したことを確認した。
【0094】
(実施例10:有機化合物M−10−4の作製)
有機化合物M−10−3をIPA溶媒に分散した分散液をナスフラスコに入れ、超音波洗浄器(ブランソニック2510、ブランソン社製)を用いて超音波を5秒間付与した。これを、ろ過及び真空乾燥し、有機化合物M−10−4とした。さらに、実施例7と同様にして、有機化合物M−10−4の粒度分布を測定した。結果を図2に示す。有機化合物M−10−4において、1μm以上の粉粒は体積占有率で3%以下、かつ、150μm以上の粉粒は、体積占有率で1%以下であることが分かった。
有機化合物M−10−1の粒径150μm以上の粒子と粒径1μm以下の粒子とを除去して有機化合物M−10−4を作製した。粒度分布測定により150μm以上の粒子と1μm以下の粒子とが減少したことを確認した。
【0095】
(比較例9〜比較例11)
比較例6において、有機化合物M−10を用いる代わりに、有機化合物M−10−2〜M−10−4を用いたこと以外は、比較例6と同様にして、有機電界発光素子用材料の粉粒の帯電量の測定、容器の粉粒の帯電量の測定、蒸着膜の作製を行った。結果を表5に示す。
【表5】

表5より、粒径分布を調整したとしても、帯電量の差の絶対値の大きな(帯電量の絶対値が10uC/g以上の)容器と有機化合物との組み合わせでは、長時間加熱による分解は改善しないことが分かった。
【0096】
(実施例11)
実施例4において、有機化合物M−10を用いる代わりに、有機化合物M−10−1を用い、さらに、同じ蒸着源から連続的に24回成膜を行う代わりに、同じ蒸着源から連続的に50回成膜を行ったこと以外は、実施例6と同様にして、有機電界発光素子用材料の粉粒の帯電量の測定、容器の粉粒の帯電量の測定、蒸着膜の作製を行った。結果を表6に示す。
【0097】
(実施例12〜14)
実施例11において、有機化合物M−10−1を用いる代わりに、有機化合物M−10−2〜M−10−4を用い、さらに、同じ蒸着源から連続的に50回成膜を行う代わりに、同じ蒸着源から連続的に80回成膜を行ったこと以外は、実施例11と同様にして、有機電界発光素子用材料の粉粒の帯電量の測定、容器の粉粒の帯電量の測定、蒸着膜の作製を行った。結果を表6に示す。
【0098】
【表6】

表6より、粒径分布を調整することで長時間加熱による分解が改善されることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の有機電界発光素子は、例えば、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信などに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0100】
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電子輸送層
7 電子注入層
8 陰極
10 有機EL素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着で成膜可能な有機電界発光素子用材料と、該有機電界発光素子用材料を内部に収容する容器とを含む有機電界発光素子用材料入り容器であって、前記有機電界発光素子用材料の粉粒と鉄粉粒との摩擦により帯電された有機電界発光素子用材料の粉粒の帯電量と、前記容器を粉砕して得られた容器の粉粒と鉄粉粒との摩擦により帯電された容器の粉粒の帯電量との差の絶対値が、10μC/g以下であることを特徴とする有機電界発光素子用材料入り容器。
【請求項2】
有機電界発光素子用材料が、粒径が150μm以上の粉粒を実質的に含まない請求項1に記載の有機電界発光素子用材料入り容器。
【請求項3】
有機電界発光素子用材料が、粒径が1μm以下の粉粒を実質的に含まない請求項1から2のいずれかに記載の有機電界発光素子用材料入り容器。
【請求項4】
有機電界発光素子用材料の粉粒が、数平均粒径が0.1μm〜200μmである請求項1から3のいずれかに記載の有機電界発光素子用材料入り容器。
【請求項5】
有機電界発光素子用材料が、燐光発光性の有機金属錯体を含む請求項1から4のいずれかに記載の有機電界発光素子用材料入り容器。
【請求項6】
容器材料が、ガラス、石英、鉄、タンタル、ステンレス、酸化アルミニウム、炭化珪素、及びポリプロピレンから選択される少なくとも1種を含む請求項1から5のいずれかに記載の有機電界発光素子用材料入り容器。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の有機電界発光素子用材料入り容器に収容された有機電界発光素子用材料であって、昇華により気化することを特徴とする有機電界発光素子用材料。
【請求項8】
請求項1から6のいずれかに記載の有機電界発光素子用材料入り容器に収容された有機電界発光素子用材料を蒸着して、前記有機電界発光素子用材料による蒸着膜を基材上に形成することを特徴とする蒸着膜の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の蒸着膜の製造方法により製造されたことを特徴とする蒸着膜。
【請求項10】
請求項9に記載の蒸着膜が少なくとも1層形成されたことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項11】
蒸着に用いる有機電界発光素子用材料の収容に適した容器をスクリーニングする容器のスクリーニング方法であって、前記有機電界発光素子用材料の粉粒と鉄粉粒とを混合して前記有機電界発光素子用材料の粉粒の帯電量を測定し、容器の粉粒と鉄粉粒とを混合して前記容器の粉粒の帯電量を測定し、前記有機電界発光素子用材料の粉粒の帯電量と前記容器の粉粒の帯電量との差の絶対値が10μC/g以下となる容器をスクリーニングすることを特徴とする容器のスクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−49163(P2011−49163A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171613(P2010−171613)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】