説明

有機EL素子パネル及びその製造方法

【課題】製造工程等での割れ等の発生を防ぐことができる構造形態を備えた有機EL素子パネル及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基材1上に設けられた有機EL素子及び該有機EL素子を駆動する配線と、前記有機EL素子及び前記配線を覆うように設けられた封止層とを有し、前記封止層が、前記基材と同じ大きさで周縁端部まで又は該周縁端部からはみ出す大きさで設けられ、且つ前記周縁端部から内方に設けられて前記配線に接続する取出電極部には設けられていないように構成する。このとき、基材の厚さが10μm以上200μm以下であり、該基材の周縁端部からはみ出す前記封止層の長さが該基材の周縁端部から0μm以上10mm以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子パネル及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、有機ELディスプレイを構成する有機EL素子パネルを製造する際に、その製造工程中での割れ等の発生を防ぐことができる構造形態を備えた有機EL素子パネル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機ELディスプレイは、より一層の薄型化とフレキシブル化が検討されている。その有機ELディスプレイを構成する有機EL素子パネルも同様、薄膜化とフレキシブル化が検討されている。有機EL素子パネルは、画素をON/OFFさせるための駆動素子又は駆動用電極が設けられた基板である。画素をON/OFFさせる駆動方式として、パッシブマトリクス型駆動方式とアクティブマトリクス型駆動方式とがある。いずれの駆動方式とするかは、コスト、表示性能、表示面積、電流、スイッチング速度等、様々な要素を加味して選択されている。
【0003】
パッシブマトリクス型駆動方式とアクティブマトリクス型駆動方式のいずれも、有機EL素子パネルの縦横に配線が設けられている。パッシブマトリクス型駆動方式は、X配線(走査線)とY配線(データ線)との間に有機EL層を挟むと共に、両配線が直交する形態となっている。また、アクティブマトリクス型駆動方式では、TFT素子と有機EL素子とを備えた基板にX配線(走査線)及びY配線(データ線、電流供給線)が縦横に配線された形態となっている。
【0004】
図9は、パッシブマトリクス型駆動方式の有機EL素子パネル100の一例を示す斜視図(A)と平面図(B)である。図9に例示する有機EL素子パネル100は、基材101と、基材101上に設けられ且つY方向にストライプ状に並設されているY配線(データ線)103と、そのストライプ状のY配線103の上に積層された有機EL層104と、Y配線103及び有機EL層104からなるストライプ状積層体の間に設けられた絶縁層105と、ストライプ状の積層体と絶縁層との上に設けられ且つX方向にストライプ状に並設されているX配線(走査線)102と、そのX配線102を覆うように設けられた封止層106とを有している。この有機EL素子パネル100において、図9(A)(B)に示すように、X配線102とY配線103がそれぞれ延びる方向の周縁部107には封止層106が設けられておらず、フレキシブルプリント配線板に接続することになる取出電極108,109が露出した形態で設けられている。なお、取出電極108,109は、X配線102とY配線103にそれぞれ接続している。
【0005】
図10は、アクティブマトリクス型駆動方式の有機EL素子パネル200の一例を示す斜視図(A)と平面図(B)である。図10に例示する有機EL素子パネル200は、基材201と、基材201上に設けられ且つX方向及びY方向に交差して画素領域211を画定するX配線(走査線)202、Y配線(データ線及び電流供給線)203と、その画素領域211内に設けられているTFT素子204及び有機EL素子205と、これらを覆うように設けられた封止層206とを有している。この有機EL素子パネル200において、図10(A)(B)に示すように、X配線202とY配線203及び電流供給線とがそれぞれ延びる方向の周縁部207には封止層206が設けられておらず、フレキシブルプリント配線板に接続することになる取出電極208,209が露出した形態で設けられている。なお、取出電極208,209は、X配線202とY配線203及び電流供給線にそれぞれ接続している。
【0006】
関連する技術としては、特許文献1の図2及び図3には、封止基板が対向配置されたEL発光素子基板の周縁端部に、素子電極が露出した態様が記載されている。また、特許文献2には、エレクロトルミネッセンス層を保護材で被覆してなるエレクロトルミネッセンス素子が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−228455号公報
【特許文献2】特開平6−203954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図9及び図10に示した態様の有機EL素子パネル100,200では、有機EL素子パネル100,200の周縁部107,207にまで封止層106,206は設けられておらず、取出電極108,208が露出した形態になっている。図9及び図10においては、周縁部107,207は、取出電極108,208が設けられた取出電極部ということができる。
【0009】
このような形態からなる有機EL素子パネル100,200では、基材101,201として例えばガラス基材を用いた場合、そのガラス基材が厚い場合には割れ等の問題はないが、近年の薄型化・フレキシブル化によりガラス基材の厚さが例えば200μm以下に薄くなってくると、ガラス基材が割れやすくなる。特に、封止層106,206が設けられていない周縁部107,207(取出電極部)では、有機EL素子パネル100,200のハンドリング時や、フレキシブルプリント配線板の貼合工程時に割れが発生しやすいという問題がある。
【0010】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたものであって、その目的は、有機ELディスプレイパネルの製造工程等での割れ等の発生を防ぐことができる構造形態を備えた有機EL素子パネルを提供することにある。また、本発明の他の目的は、そうした有機EL素子パネルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明に係る有機EL素子パネルは、基材上に設けられた有機EL素子及び該有機EL素子を駆動する配線と、前記有機EL素子及び前記配線を覆うように設けられた封止層とを有し、前記封止層が、前記基材と同じ大きさで周縁端部まで又は該周縁端部からはみ出す大きさで設けられ、且つ前記周縁端部から内方に設けられて前記配線に接続する取出電極部には設けられていないことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、有機EL素子と配線とを覆う封止層が基材と同じ大きさで周縁端部まで又はその周縁端部からはみ出す大きさで設けられているので、その有機EL素子パネルには、封止層が設けられていない周縁部(図9及び図10に記載の取出電極部)が存在しない。その結果、有機EL素子パネルの製造工程でのフレキシブルプリント配線板の貼合工程時やハンドリング時にその周縁部に割れ等が生じたり、周縁端部に傷や欠け等が生じたりしない。
【0013】
本発明に係る有機EL素子パネルにおいて、前記基材の厚さが10μm以上200μm以下であり、該基材の周縁端部からはみ出す前記封止層の長さが該基材の周縁端部から0μm以上10mm以下である。
【0014】
この発明によれば、上記厚さ範囲の基材の周縁端部からはみ出す封止層の長さが上記範囲内であるので、基材の周縁部又は周縁端部での割れ、傷、欠け等を防ぐことができ、さらに例えば10mm程度にはみ出している場合には、基材の周縁端面をも保護することができる。
【0015】
本発明に係る有機EL素子パネルにおいて、前記取出電極部が、前記有機EL素子パネルの少なくとも一辺と平行で且つ前記周縁端部から内側に入った位置に、幅100μm〜10mmのスリット状に設けられている。
【0016】
この発明によれば、上記形態で設けられた取出電極部を有する有機EL素子パネルの製造工程等での割れ等の発生を防ぐことができる。
【0017】
上記課題を解決する本発明に係る有機EL素子パネルの製造方法は、基材を準備する工程と、前記基材上に有機EL素子及び配線を形成する工程と、前記有機EL素子と前記配線とを覆う封止層を前記基材と同じ大きさで周縁端部まで又は該周縁端部からはみ出す大きさで設けるとともに、前記周縁端部から内方にある前記配線の取出電極部には設けない工程と、を有することを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、有機EL素子と配線とを覆う封止層が基材と同じ大きさで周縁端部まで又はその周縁端部からはみ出す大きさで設けるので、封止層が設けられていない周縁部(図9及び図10に記載の取出電極部)が存在しない。その結果、製造された有機EL素子パネルは、その製造工程でのフレキシブルプリント配線板の貼合工程時やハンドリング時にその周縁部に割れ等が生じたり、周縁端部に傷や欠け等が生じたりしない。
【0019】
本発明に係る有機EL素子パネルの製造方法において、前記基材はその厚さが10μm以上200μm以下の基材である場合、該基材の周縁端部からはみ出す前記封止層の長さを該基材の周縁端部から0μm以上10mm以下とするように形成する。
【0020】
この発明によれば、封止層を上記厚さ範囲の基材に対して形成するので、封止層を形成した後の薄い基材は、有機EL素子パネルの製造工程でのFPCの貼合工程時やハンドリング時にその周縁部又は周縁端部での割れ、傷、欠け等を防ぐことができ、さらに例えば10mm以下程度にはみ出している場合には、基材の周縁端面をも保護することができる。
【0021】
本発明に係る有機EL素子パネルの製造方法において、前記基材はその厚さが300μm以上2mm以下の基材である場合、前記封止層を形成した後に該基材の露出面を研磨して厚さ10μm以上200μm以下の基材に加工する。
【0022】
この発明によれば、封止層を上記厚さ範囲の基材に対して形成し、その封止層を形成した後にその基材を研磨して薄い基材とするので、研磨後の薄い基材は、有機EL素子パネルの製造工程でのフレキシブルプリント配線板の貼合工程時やハンドリング時にその周縁部又は周縁端部が割れたりすることがない。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る有機EL素子パネルには、封止層が設けられていない周縁部が存在しないので、有機EL素子パネルの製造工程でのフレキシブルプリント配線板の貼合工程時やハンドリング時にその周縁部に割れが生じたり、周縁端部に傷や欠けが生じたりすることがない。この有機EL素子パネルを用いた有機ELディスプレイは、製品歩留まりを向上でき、低コスト化を実現できる。
【0024】
本発明に係る有機EL素子パネルの製造方法によれば、封止層が設けられていない周縁部が存在しない有機EL素子パネルを製造できるので、製造された有機EL素子パネルは、その製造工程でのフレキシブルプリント配線板の貼合工程時やハンドリング時にその周縁部に割れが生じたり、周縁端部に傷や欠けが生じるのを防ぐことができる。その結果、製造された有機EL素子パネルを用いた有機ELディスプレイは、製品歩留まりを向上でき、低コストでの製造を実現できる。
【0025】
本発明に係る製造方法において、封止層を厚さが薄い基材に対して形成してもよいし、厚さが厚い基材(剛性基材)に対して形成した後にその基材を研磨して薄い基材としてもよい。前者においては、封止層を形成した後の薄い基材の周縁部や周縁端部での割れ等を防ぐことができ、後者においては、封止層を形成した後の厚い基材の研磨工程の安定化を実現できるとともに薄い基材に研磨した後の基材の周縁部や周縁端面の割れ等を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る有機EL素子パネルの一例(パッシブマトリクス型駆動方式)を示す模式的な斜視図である。
【図2】図1の有機EL素子パネルの模式的な平面図である。
【図3】本発明に係る有機EL素子パネルの他の一例(アクティブマトリクス型駆動方式)を示す模式的な斜視面図である。
【図4】図2の有機EL素子パネルの模式的な平面図である。
【図5】図2の有機EL素子パネルのTFT素子と有機EL素子の構造形態を示す模式的な断面図である。
【図6】有機EL素子パネルの周縁部の説明図である。
【図7】本発明に係る有機EL素子パネルの製造方法の一例を示す説明図である。
【図8】本発明に係る有機EL素子パネルの製造方法の他の一例を示す説明図である。
【図9】従来の有機EL素子パネルの一例(パッシブマトリクス型駆動方式)を示す模式的な断面図(A)と平面図(B)である。
【図10】従来の有機EL素子パネルの他の一例(アクティブマトリクス型駆動方式)を示す模式的な断面図(A)と平面図(B)である。
【図11】基材を研磨してフレキシブルな有機EL素子パネルを製造する従来例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明に係る有機EL素子パネル及びその製造方法について、図面を参照して詳しく説明する。なお、本発明は、その技術的特徴を有すれば種々の変形が可能であり、以下に具体的に示す実施形態に限定されるものではない。
【0028】
[有機EL素子パネル]
(基本構成)
本発明に係る有機EL素子パネルは、図1〜図4に示すように、基材1上に設けられた有機EL素子12及びその有機EL素子12を駆動する配線2,3と、有機EL素子12及び配線2,3を覆うように設けられた封止層6とを有している。そして、その封止層6が、基材1と同じ大きさで周縁端部10まで又はその周縁端部10からはみ出す大きさで設けられ、且つ周縁端部10から内方に設けられて配線2,3に接続する取出電極部7には設けられていないことに特徴がある。
【0029】
本発明の特徴は、上記のように、有機EL素子7を覆う封止層6が、基材1と同じ大きさで周縁端部10まで又はその周縁端部10からはみ出す大きさで設けられ、且つ周縁端部10から内方に設けられて配線2,3に接続する取出電極部7には設けられていないことにある。そのため、有機EL素子パネルには、封止層6が設けられていない周縁部107(図9参照)が存在しない。その結果、有機EL素子パネルを製造する際での例えばフレキシブルプリント配線板の貼合工程時やハンドリング時にその周縁部20が割れたりすることがない。こうした構成の有機EL素子パネルは、非常に薄い基材1を用いた場合であっても破損を防ぐことができ、ハンドリングも容易に行うことができる。特に、薄いガラスを基材1として有機EL素子パネルを作製する場合には、一番破損しやすい工程はガラスに曲げ荷重が加わる場合であり、例えばガラス上の粘着剤を剥がす作業、フレキシブルプリント配線板を貼り合わせる作業、ハンドリング作業等の各作業時に曲げ荷重が加わった場合であっても、割れ等の問題なく高歩留まりの有機EL素子パネルを製造できる。
【0030】
なお、本願において、図1〜4に示すように、「周縁部」とは、基材1の端面10から取出電極部7までを含む範囲のことであり、「周縁端部」とは、基材1を側面から見たときの端面のことである。また、配線2,3と取出電極8とが一体に形成されたものであってもよいし、別々に形成されて電気的に接続したものであってもよい。
【0031】
以下、各構成について詳しく説明する。
【0032】
(基材)
基材1は、基材1の種類や構造は特に限定されるものではなく、用途に応じたフレキシブルな材質が選択される。具体的に用いることができる材料としては、例えば、ガラス、石英等が挙げられる。ガラス基材としては、無アルカリガラス、ソーダガラス、鉛アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、シリカガラス等のガラス基材等を挙げることができる。基材1として、必要に応じて水分、酸素等のガスを遮断するガスバリア性を有する基材を用いてもよい。また、金属膜や透明導電膜が形成されたガラス基材を用いてもよい。
【0033】
基材1の厚さは、10μm以上200μm以下であることが好ましい。なお、ガラス基材は、透明性、光学等方性、ガスバリア性、耐薬品性、平滑性、寸法安定性等に優れており、さらに厚さ200μm以下のガラス基材は、柔軟性(フレキシブル性)と軽量化を実現できるという利点がある反面、割れやカケ等が生じやすく、ハンドリングが難しいという問題もある。後述する封止層6は、こうした問題を解決している。
【0034】
なお、後述するように、封止層6を設けた後に研磨工程で厚い基材1’を薄く加工する場合には、厚さが300μm以上2mm以下の基材1’を用いることができ、研磨工程後に前記した厚さ範囲の基材1とすることができる。この基材1’も、上記した各材質とすることができる。なお、厚さ200μmを超える例えば700μmのガラス基材を用いる場合は、後述のように、そのガラス基材上に有機EL素子12を作製した後に封止層6を形成し、その後、ガラス基材の裏面Sを機械的に又は化学的(エッチング)に研磨してそのガラス基材を薄くすることができる(図8参照)。
【0035】
基材1の形状は特に限定されず、用途に応じて、パネル状、チップ状、カード状、ディスク状等を挙げることができる。なお、枚葉状又は連続状の基材1上に有機EL素子12や封止層6等を形成した後に個々のパネル状、チップ状、カード状、ディスク状に分断加工してもよい。
【0036】
(有機EL素子)
有機EL素子12は、基材1上に設けられている。有機EL素子12の構成の詳細は公知のものと同様のものを適用できる。
【0037】
有機EL素子パネル21,22は、有機EL素子12をパッシブマトリクス型駆動方式で駆動させる場合とアクティブマトリクス型駆動方式で駆動させる場合がある。これらのいずれの場合も、有機EL素子パネル21,22の縦横に配線が設けられ、その配線からの電気信号を制御して有機EL素子12を駆動させている。パッシブマトリクス型駆動方式は、X配線(走査線)2とY配線(データ線)3との間に有機EL層4を挟むと共に、両配線2,3が直交する形態となっている。また、アクティブマトリクス型駆動方式では、TFT素子11と有機EL素子12とを備えた基板にX配線(走査線)2及びY配線(データ線及び電流供給線)3が縦横に配線された形態となっている。
【0038】
図1及び図2は、パッシブマトリクス型駆動方式の有機EL素子パネル21の一例を示す斜視図と平面図である。この有機EL素子パネル21は、基材1と、基材1上に設けられ且つY方向にストライプ状に並設されているY配線(データ線)3と、そのストライプ状のY配線3の上に積層された有機EL層4と、Y配線3及び有機EL層4からなるストライプ状積層体の間(面内方向すなわちXY方向の間)に設けられた絶縁層5と、ストライプ状の積層体(3,4)と絶縁層5との上に設けられ且つX方向にストライプ状に並設されているX配線(走査線)2と、そのX配線2を覆うように設けられた封止層6とを有している。
【0039】
この有機EL素子パネル21において、有機EL素子12は、画素幅に対応したY配線3である第1電極(陽極又は陰極)と、同じく画素幅に対応したX配線2である第2電極(陰極又は陽極)との間に有機EL層4(発光層を少なくとも含む。)が挟まれた形態をなしている。Y配線3とX配線2とが交差する部分が有機EL素子12となって発光する。
【0040】
Y配線3とX配線2とが交差する有機EL素子12は、縦横に延びるX配線(走査線)の幅とY配線(データ線)の幅とで決まる。これらのX配線2とY配線3は、取出電極部7においてはそれぞれ取出電極8,9となり、その取出電極8,9はフレキシブルプリント配線板等(図示しない)に電気的に接続される。回路基板への電気的な接続は、例えば、回路基板の接続端子を取出電極8,9に貼り合わせて行う。
【0041】
図3及び図4は、アクティブマトリクス型駆動方式の有機EL素子パネル22の一例を示す斜視図と平面図である。この有機EL素子パネル22は、基材1と、基材1上に設けられ且つX方向及びY方向に交差して画素領域14を画定するX配線(走査線)2及びY配線(データ線、電流供給線)と、その画素領域14内に設けられているTFT素子11及び有機EL素子12と、これらを覆うように設けられた封止層6とを有している。
【0042】
この有機EL素子パネル22において、画素領域14は、TFT素子11と有機EL素子12とで構成されている。TFT素子11は、図5に示すように、基材1上に所定のパターンで形成されたゲート電極31と、ゲート電極31を覆うように形成されたゲート絶縁層32と、ゲート絶縁層32上であってゲート電極31の直上に所定のパターンで形成された半導体層33と、半導体層33上の中央部を開けて離間して形成されたソース・ドレイン電極34とを少なくとも有する逆スタガ型TFT、で構成されている。又は、図示しないが、基材1上に所定領域(チャネル領域となる部分。)を開けて離間してパターン形成されたソース・ドレイン電極と、ソース・ドレイン電極の間の所定領域を埋めると共に両電極を跨ぐように所定のパターンで形成された半導体層と、半導体層及びソース・ドレイン電極それぞれの上にそれらを覆うように形成されたゲート絶縁層と、ゲート絶縁層上に所定のパターンで形成されたゲート電極とを少なくとも有する順スタガ型TFTとしてもよい。一方、有機EL素子12は、図5に示すように、前記ソース・ドレイン電極34に接続する画素電極である第1電極(通常は陽極)35と、その第1電極35上に設けられた有機EL層37(少なくとも発光層を含む。)と、その有機EL層37上に設けられた第2電極(通常は陰極)36とで積層されている。
【0043】
TFT素子11と有機EL素子12とで構成された画素領域14は、縦横に延びるX配線(走査線)とY配線(データ線及び電流供給線)とで画定された形態となっている。これらのX配線2とY配線3は、取出電極部7においてはそれぞれ取出電極8,9となり、その取出電極8,9はフレキシブルプリント配線板等(図示しない)に電気的に接続される。回路基板への電気的な接続は、例えば、回路基板の接続端子を取出電極8,9に貼り合わせて行う。
【0044】
なお、パッシブマトリクス型駆動方式において、有機EL素子12を構成する各層(X配線2、Y配線3、有機EL層4、絶縁層5)の構成材料は特に限定されず、従来公知の各種の材料を任意に選択して適用できる。また、アクティブマトリクス型駆動方式においても、TFT素子11を構成する各層(ゲート電極31、ゲート絶縁層32、半導体層33、ソース・ドレイン電極34)及び有機EL素子12を構成する各層(陽極、有機EL層、陰極)の構成材料は特に限定されず、従来公知の各種の材料を任意に選択して適用できる。また、有機EL層(4,37)は、少なくとも発光層を有するものであればよく、正孔注入層、正孔輸送層、正孔注入輸送層、電子注入層、電子輸送層、電子注入輸送層、正孔ブロック層、電子ブロック層等を任意に選択して適用できる。
【0045】
(封止層)
封止層6は、有機EL素子と配線を覆うように設けられている。そして、この封止層6は、図1〜図4に示すように、基材1と同じ大きさで周縁端部10まで又はその周縁端部10からはみ出す大きさで設けられている。更に加えて、封止層6は、周縁端部10から内方に設けられて配線2,3に接続する取出電極部7には設けられていない。このとき、有機EL素子12を駆動するための配線2,3に電気的に接続する取出電極8,9は、取出電極部7を窓状の開口部として露出している。
【0046】
封止層6は、高分子材料を塗布して形成した封止層6であってもよいし、高分子材料からなる樹脂フィルムを貼り合わせたものであってもよい。高分子材料は特に限定されないが、例えば、フッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、液晶性ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリミクロイキシレンジメチレンテレフタレート、ポリオキシメチレン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリレート、アクリロニトリル−スチレン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、非晶質ポリオレフィン等が挙げられる。また、上記の他にも所定のフレキシブル性を満たす高分子材料であれば使用可能であり、2種類以上の共重合体を用いることもできる。また、ゾル−ゲル反応で成膜できる有機−無機系材料等を用いることもできる。
【0047】
なお、樹脂フィルムを貼り合わせる場合には、熱可塑性樹脂接着剤、熱硬化性樹脂接着剤、又は紫外線硬化型樹脂接着剤からなる接着剤層を設けた樹脂フィルムを好ましく用いることができる。封止層6の厚さは、通常、5μm〜200μmの範囲である。この範囲の厚さからなる封止層6は、厚さが10μm〜200μmと薄い基材1の割れや破損を防ぐことができる。なお、好ましい封止層6の厚さは10μm〜200μmの範囲である。こうした封止層6を形成することにより、有機EL素子パネルの製造工程で加わる力を一点に集中させないで分散させることができ、その結果、その周縁部での割れ等を防ぐことができる。
【0048】
封止層6の下層としてバリア層(図示しない)を形成してもよい。バリア層は、通常は取出電極部7には設けず、有機EL層4が設けられている画素領域14に設けられる。バリア層としては、バリア性機能を有する各種の無機層や有機層を挙げることができる。例えば、Si、SiO、Al等の窒化物や酸化物等からなる無機層は、物理的蒸着法や化学的蒸着法により成膜することができる。また、バリア性の樹脂フィルムやガラスをバリアフィルムとして設けてもよい。また、クロロトリフルオロエチレン系重合体であって、その分子量が400〜600000である重合体を蒸着源とする蒸着法により成膜された1層又は複層構造のフッ素系高分子薄膜をバリア層として設けてもよい。なお、このフッ素系高分子薄膜は塗布法でも形成できる。また、ゾル−ゲル反応で成膜できる有機−無機系材料等を用いることもできる。
【0049】
封止層6には取出電極部7が開口部としてストライプ状に設けられている。その開口部には、取出電極8,9が露出している。封止層6が設けられていない取出電極部7(開口部)は、図9及び図10に示すような基材1の周縁端部110,210に沿ったものではなく、図1〜図4等に示すように、有機EL素子パネルの二辺と平行で、周縁端部10から内側に入った位置に封止層6をくり抜いた態様でストライプ状に設けられている。なお、取出電極部7はX方向の一辺とY方向の一辺の少なくとも二辺に設けられるが、X方向の対向辺(二辺)に取出電極部7が設けられていてもよいし、Y方向の対向辺(二辺)に取出電極部7が設けられていてもよい。また、取出電極を一箇所に纏めるように配線して一箇所の取出電極部7としてもよい。したがって、取出電極部7は、少なくとも一辺に沿った位置に設けられていればよく、二辺〜四辺に沿った位置に設けられていてもよい。
【0050】
封止層6が設けられていない取出電極部7(開口部)のストライプ長さは、有機EL素子パネルの各辺の長さに応じて異なるので一概に言えないが、複数のX配線2の全てが露出する長さ及び複数のY配線3の全てが露出する長さである。一方、開口部である取出電極部7のストライプ幅は、通常、100μm〜10mm程度である。
【0051】
封止層6は、基材1に対する大きさとしては、基材1と同じ大きさで周縁端部10まで、又は、基材1の周縁端部10からはみ出す大きさで設けられている。
【0052】
「基材1と同じ大きさで周縁端部10まで」とは、封止層6の周縁端部19が基材1の周縁端部10とX方向及びY方向の平面視の位置関係で完全に一致する大きさで設ける場合はもちろん、意図しないで生じる誤差寸法も含む。そうした誤差寸法は、基材1の周縁端部10と封止層6の周縁端部19との寸法差であって、基材1の辺に直交する方向の寸法差が±1mm程度の場合である。基材1と同じ大きさの封止層6を設けることにより、封止層6が破損しやすい基材1の周縁部20を保護するように作用するので、FPCの貼合工程時やハンドリング時にその周縁部20が割れたりすることがない。
【0053】
「基材1の周縁端部10からはみ出す大きさ」とは、図6に示すように、封止層6の周縁端部19が基材1の周縁端部10から平面視で外側に所定の幅dだけ突出する場合である。突出する幅dは、上記した誤差寸法よりも大きい場合であり、例えば2mm以上の場合であり、破損防止の観点から好ましくは3mm以上である。基材1の周縁端部10から封止層6の周縁端部19がはみ出すように封止層6を設けることにより、封止層6が破損しやすい基材1の周縁部20を保護するように作用するとともに、周縁端部10に他の物体が当たって周縁端部10の端面を保護してその端面に傷や欠けが発生するのを防ぐことができる。その結果、FPCの貼合工程時やハンドリング時にその周縁部20が割れたり、周縁端部10に傷や欠けが生じたりするのを防ぐことができる。
【0054】
なお、突出幅dの上限は特に限定されないが、例えば10mmとすることができる。10mmを超える突起幅dで封止層6が突出しても、上記効果は向上せず、却ってその突出部が邪魔になることがある。
【0055】
このように、本発明の特徴は、有機EL素子12を覆う封止層6が基材1と同じ大きさで周縁端部10まで又は基材1の周縁端部10からはみ出す大きさで設けられている点にある。そのため、有機EL素子パネルには、封止層6が設けられていない周縁部(図9及び図10参照)が存在しない。その結果、有機EL素子パネルを製造する際での例えばフレキシブルプリント配線板の貼合工程時やハンドリング時にその周縁部が割れたりすることがない。こうした構成の有機EL素子パネルは、非常に薄い基材1を用いた場合であっても破損を防ぐことができ、ハンドリングも容易に行うことができる。特に、薄いガラスを基材1として有機EL素子パネルを作製する場合には、一番破損しやすい工程はガラスに曲げ荷重が加わる場合であり、例えばガラス上の粘着剤を剥がす作業、フレキシブルプリント配線板を貼り合わせる作業、ハンドリング作業等の各作業時に曲げ荷重が加わった場合であっても、割れ等の問題なく高歩留まりの有機EL素子パネルを製造できる。
【0056】
[有機EL素子パネルの製造方法]
本発明に係る有機EL素子パネルの製造方法は、図7及び図8に示すように、基材1,1’を準備する工程と、その基材1,1’上に有機EL素子12及び配線2,3を形成する工程と、その有機EL素子12と配線2,3とを覆う封止層6を基材1,1’と同じ大きさで周縁端部10まで又はその周縁端部10からはみ出す大きさで設けるとともに、周縁端部10から内方にある取出電極部7には設けない工程と、を有する。なお、有機EL素子12及び配線2,3については、図1〜図4を参照。
【0057】
本発明に係る有機EL素子12の製造方法は、図7と図8に示す2態様の方法で製造できる。
【0058】
(第1の製造方法)
第1の製造方法は、図7に示すように、基材1を準備する工程Aと、有機EL素子12及び配線2,3を基材1上に形成する工程Bと、封止層6を、周縁端部10から内方にある取出電極部7には設けず、基材1,1’と同じ大きさで周縁端部10まで又はその周縁端部10からはみ出す大きさで設ける工程Cとを有する。
【0059】
工程Aは、図7(A)に示すように、基材1を準備する工程であり、その基材1としては、「有機EL素子パネル」の説明欄で挙げた基材1を用いることができる。
【0060】
工程Bは、図7(B)に示すように、有機EL素子12及び配線2,3を基材1上に形成する工程である。例えばパッシブマトリクス型駆動方式の有機EL素子12では、図1の断面図から理解できるように、基材1上にストライプ状のY配線3(第1電極)を並設し、そのY配線3の上に有機EL層4を積層し、且つその積層体の面内方向間に絶縁層5を形成し、その有機EL層4と絶縁層5の上にX方向に延びるX配線2をストライプ状に並設する。Y配線3とX配線2とで有機EL層4を上下(Z方向)から挟む平面視領域が、有機EL素子12の単画素となる。一方、アクティブマトリクス型駆動方式の有機EL素子12では、基材1上にTFT素子11と有機EL素子12とからなる画素領域14を形成する。なお、TFT素子11と有機EL素子12の作製は、上記の有機EL素子の説明欄に記載のように、TFT素子11を構成する各層(ゲート電極31、ゲート絶縁層32、半導体層33、ソース・ドレイン電極34)を順次パターン形成するとともに、有機EL素子12を構成する各層(陽極、有機EL層、陰極)も順次パターン形成して行う。
【0061】
工程Cは、図7(C)(D)に示すように、封止層6を、配線2,3の取出電極部7には設けず、基材1,1’と同じ大きさで周縁端部10まで又はその周縁端部10からはみ出す大きさで形成する工程である。この工程は、詳しくは、図7(C)の工程と図7(D)の工程とに分かれる。
【0062】
図7(C)の工程は、工程Bで形成した有機EL素子12及び絶縁層5を覆うように封止層6を設ける工程である。このとき、封止層6は、有機EL素子12及び配線2,3を覆うとともに、基材1の全面に形成する。ここで、「全面に形成する」とは、上記したように、基材1と同じ大きさ周縁端部10まで又はその周縁端部10からはみ出す大きさで形成することである。「同じ大きさ」及び「はみ出す大きさ」の程度は、既に説明したのでここではその説明を省略する。
【0063】
図7(D)は、図7(C)の工程で封止層6を一様に形成した後において、配線2,3の取出電極部7が露出するように封止層6を除去する工程である。封止層6の除去は、図1〜図4等で示すように、取出電極部7がストライプ状に開口するように行う。取出電極部7の寸法、取出電極8,9等については、既に説明したのでここではその説明を省略する。
【0064】
なお、図7(C)(D)では、封止層を形成した後に取出電極部7に開口部を形成しているが、封止フィルムを用いる場合は、取出電極部7に相当する開口部を予め形成した封止フィルムを図7(B)の工程後に貼り合わせて図7(D)の態様としてもよい。
【0065】
(第2の製造方法)
第2の製造方法は、図8に示すように、厚さの厚い基材1’を準備する工程aと、有機EL素子12及び配線2,3を基材1’上に形成する工程bと、封止層6を、周縁端部10から内方にある取出電極部7には設けず、基材1’と同じ大きさで周縁端部10まで又はその周縁端部10からはみ出す大きさで設ける工程cと、有機EL素子12を設けていない側の基材1’の面(裏面S)を研磨して薄い基材厚さにする工程とを有する。
【0066】
工程aは、基材1よりも厚い基材1’を準備する工程である。基材1’については、既に説明したように、厚さが300μm〜2mmの基材を用いることができる。
【0067】
工程bは、有機EL素子12及び配線2,3をその基材1’上に形成する工程である。この工程bは、上記第1の製造方法における場合と同様である。
【0068】
工程cは、封止層6を、配線2,3の取出電極部7には設けず、基材1,1’と同じ大きさで周縁端部10まで又はその周縁端部10からはみ出す大きさで形成する工程である。この工程は、詳しくは、図8(A)の工程と図8(B)の工程とに分かれる。図8(A)の工程は、上記第1の製造方法における図7(C)に示す工程と同じであり、その説明も既述したのでここではその説明を省略する。また、図8(B)の工程も、上記第1の製造方法における図7(D)に示す工程と同じであり、その説明も既述したのでここではその説明を省略する。
【0069】
こうして、基材1’上に、封止層6を、有機EL素子12を駆動するための配線2,3の取出電極部7には設けず、基材1’と同じ大きさで周縁端部10まで又はその周縁端部10からはみ出す大きさで設けてなる中間製造物を得ることができる。この第2の製造方法は、その後、中間製造物に対して研磨工程を付加し、有機EL素子を設けていない側の基材1’の面(裏面S)を研磨し、薄い基材厚さにする。
【0070】
研磨工程dは、図8(C)(D)に示すように、前記した中間製造物の封止層側がステージ41に接触するように載せ、上面に露出した基材面(裏面S)を研磨する工程である。すなわち、この研磨工程は、封止層6が形成された基材面の反対側の面Sを研磨する工程である。この工程により、基材1’がフレキシブル性を備える程度にその厚さを薄くすることができる。
【0071】
この研磨工程では、基材面Sを研磨部材で研磨するので、基材に研磨時の応力が加わる。応力が負荷した状態での研磨工程では、研磨が進行して基材が薄くなると基材は割れやすくなり、例えば図11(C)(D)に示す態様ではその周縁部107に割れが生じる。しかしながら、この第2の製造方法においては、ステージ側の基材面Sでは、周縁端部10の位置まで封止層6が形成されているので、図11(C)(D)に示すような強度の弱い部分が周縁部に存在していない。その結果、薄い厚さにまで基材1’を研磨したとしても、ガラス基板に破損等を生じることを著しく低減することができる。
【0072】
基材1’の研磨手段としては、例えば、機械研磨法、化学的研磨法又は化学的機械的研磨法を挙げることができる。機械研磨法は、一般的な精密機器に用いられる無機系の透明基材を研磨する方法と同様であるのでここでの説明は省略する。また、化学的研磨方法は、ドライエッチングやエッチャントを用いたウェットエッチングのことであり、コストや生産効率の点からはウェットエッチングが好適に用いられる。このウェットエッチングでは、ガラスを溶解させるフッ酸をエッチャントとし、封止層側を保護して封止層の形成面の反対側の面を薄くする方法である。また、化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing)は、研磨剤(砥粒)自体が有する表面化学作用又は研磨液に含まれる化学成分の作用によって研磨剤と基材1’との相対運動による機械的研磨(表面除去)効果を増大させ、高速かつ平滑な研磨面を得る研磨手段である。
【0073】
以上、本発明に係る有機EL素子パネルの製造方法によれば、封止層6を基材1’上に形成し、その後に基材1’を研磨して薄い基材1とするので、研磨後の基材1は、有機EL素子パネルの製造工程でのFPCの貼合工程時やハンドリング時にその周縁部が割れたり、周縁端部10に傷や欠けが生じたりすることがない。こうして製造された有機EL素子パネルは、封止層6が設けられていない周縁部(図8参照)が存在しないので、その後の各工程においても、その周縁部が割れたり、周縁端部に傷や欠けが生じたりすることがない。
【実施例】
【0074】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。なお、本発明の範囲は以下の実施例に限定されない。
【0075】
[実施例1]
図1に示す態様のパッシブマトリクス型駆動方式の有機EL素子パネルを作製した。先ず、厚さ200μmのガラス基材(日本電気硝子株式会社製、商品名:OA−10G、寸法:150mm×150mm)を準備した。その後、そのガラス基材上にITOを成膜した後にパターニングしてストライプ状(帯状)のY配線3を形成した。Y配線3は幅1mm、Y方向にピッチ1.5mmで並設した。次に、ストライプ状のY配線3の上に有機EL層4を積層した。有機EL層4は、PEDOT(3,4−エチレンジオキシチオフェンのポリマー)からなる正孔注入輸送層、ポリフルオレン誘導体からなる発光層、カルシウムからなる電子注入輸送層をその順で設けてパターン形成した。併せて、Y配線3及び有機EL層4からなるストライプ状積層体の間に絶縁層5を形成した。絶縁層5は、ポリイミドからなる材料を成膜した後にパターニングして形成した。ストライプ状の積層体(3,4)と絶縁層5との上にアルミニウムを成膜した後にパターニングしてストライプ状(帯状)のX配線2を形成した。X配線2は幅1mm、X方向にピッチ1.5mmで並設した。
【0076】
次に、ストライプ状のX配線2を含む全面を覆うように封止層6を形成した。その後、基材の周縁端部10から内方に幅10mm(W2)の封止層6を残し、さらに内方に幅5mm(W1)のスリット状の開口部を形成した。この開口部内には、取出電極8,9が露出している。この取出電極8,9は、それぞれX配線2とY配線3に電気的に接続するものであり、後にフレキシブルプリント配線板に接続する。なお、開口部を有する封止層6は、予め有機EL層4が形成された画素領域14にCVD法で窒化ケイ素膜をバリア層として形成した後に形成した。その封止層は、ポリイミドからなる層をスクリーン印刷によりパターニングし、その後に開口部を形成してなるものである。スリット状の開口部の長手方向には、その長手方向側の周縁端部10から5mmの封止層6が残るように形成されている。
【0077】
こうして形成された有機EL素子パネルにおいて、取出電極部7(開口部)を有する封止層6は、基材1と同じ大きさで周縁端部10まで形成した。突出幅d(図6参照)は±0mmであった。
【0078】
[実施例2]
実施例1において、封止層を印刷した後にパターニングして開口部を形成する代わりに、実施例1と同様の寸法の開口部を形成した封止フィルムを貼り合わせた。なお、開口部を有する封止フィルムとして厚さ100μmのPETフィルムを用い、これを厚さ50μmのエポキシ系UV硬化型接着剤層を介し、有機EL素子及び配線を覆うように真空下で張り合わせた。貼り合せた後、UV光を照射してUV硬化型接着剤を硬化した。それ以外は実施例1と同様にして有機EL素子パネルを作製した。
【0079】
こうして形成された有機EL素子パネルにおいて、取出電極部7(開口部)を有する封止層6は、基材1の周縁端部10から突出幅dが外方側に2mmとなるようにはみ出す大きさで形成した。こうした突出幅は、貼り合わせた封止フィルムを突出幅を含めた大きさで切断加工して形成した。
【0080】
[実施例3]
実施例2と同様にして、取出電極部7(開口部)を有する封止層6を、基材1の周縁端部10から突出幅dが外方側に10mmとなるようにはみ出す大きさで形成した。それ以外は実施例2と同様にして有機EL素子パネルを作製した。
【0081】
[実施例4]
実施例1において、基材1として、厚さ50μmのガラス基材(日本電気硝子株式会社製、商品名:OA−10G)を用いた他は、実施例1と同様にして有機EL素子パネルを作製した。
【0082】
[実施例5,6]
実施例1において、取出電極部7のスリット幅W2を100μmとした有機EL素子パネルを実施例5,6として作製した。同様に、スリット幅W2を10mmとした有機EL素子パネルを作製した。
【0083】
[実施例7]
実施例1において、基材1として、厚さ700μmのガラス基材(セントラル硝子株式会社製、商品名:ソーダライムガラス、寸法:150mm×150mm)を用いた他は、実施例1と同様にして中間製造物(有機EL素子パネル)を作製した。その後、この中間製造物の裏面Sをエッチングした。エッチングは、フッ酸を用いて行い、厚さを100μmまで薄くした。こうして有機EL素子パネルを作製した。
【0084】
[実施例8]
図3に示す態様のアクティブマトリクス型駆動方式の有機EL素子パネルを作製した。先ず、厚さ200μmのガラス基材(日本電気硝子株式会社製、商品名:OA−10G、寸法:150mm×150mm)を準備した。その後、そのガラス基材上にTFT素子11と有機EL素子12を所定のパターンでそれぞれ作製すると共に、X配線2(走査線)及びY配線3(データ線と電流供給線)を所定のパターンで作製した。
【0085】
TFT素子11は図5と同じ構成とした。一方、有機EL素子12も図5に示すように、前記ソース・ドレイン電極34に接続する画素電極であるITOからなる陽極35と、その陽極35上に設けられた有機EL層37と、その有機EL層37上に設けられたアルミニウムからなる陰極36とで構成されている。有機EL層37は、PEDOTからなる正孔注入輸送層、ポリフルオレン誘導体からなる発光層及びカルシウムからなる電子注入輸送層をその順で設けてパターン形成した。封止層6については、実施例1と同様にして有機EL素子パネルを作製した。
【0086】
[比較例1]
図9に示す形態のパッシブマトリクス型駆動方式の有機EL素子パネルを、実施例1と同様にして作製した。上記した各実施例との相違は、開口部として設けられる取出電極部7の位置である。この比較例1では、取出電極部7からなる開口部を基材の辺に沿った周縁部に、周縁端部10から10mm幅で形成した。
【0087】
[評価]
実施例1〜8及び比較例1で得られた各有機EL素子パネルについて、周縁部20での割れの発生のし易さと周縁端部10への傷の付きにくさを評価した。周縁部20での割れの発生のし易さは、150mm×150mmの有機EL素子パネルを曲げていき、どの程度曲げたときに破壊が発生したかで相対評価した。その結果、有機EL素子パネルを曲げていったとき、比較例1の有機EL素子パネルの周縁部で割れが発生した曲げ量でも、実施例1〜8の有機EL素子パネルでは割れが全く発生しなかった。また、周縁端部10への傷の付きにくさは、有機EL素子パネルを落下させる落下試験で評価したが、実施例2,3の有機EL素子パネルは周縁端部10に傷は付かなかった。
【符号の説明】
【0088】
1 基材
2 X配線
3 Y配線
4 有機EL層
5 絶縁層
6 封止層
7 取出電極部
8 取出電極
9 取出電極
10 周縁端部
11 TFT素子
12 有機EL素子
13 画素電極部
14 画素領域
19 封止層の周縁端部
20 周縁部
21 有機EL素子パネル(パッシブマトリクス型駆動方式)
22 有機EL素子パネル(アクティブマトリクス型駆動方式)
31 ゲート電極
32 ゲート絶縁層
33 半導体層
34 ソース・ドレイン電極
35 第1電極(陽極)
36 第2電極(陰極)
37 有機EL層
38 絶縁層
41 ステージ
42 研磨具
W1 周縁部(取出電極部)の幅
W2 周縁端部に設けられた封止層の幅
d 周縁端部からの封止層の突出幅
S 基材の裏面
【0089】
100,200 有機EL素子パネル
101,201 基材
101’ 基材
102,202 X配線
103,203 Y配線
104 有機EL層
105 絶縁層
106,206 封止層
107,207 周縁部(取出電極部)
108,109,208,209 取出電極
110,210 周縁端部
204 TFT素子
205 有機EL素子
211 画素領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に設けられた有機EL素子及び該有機EL素子を駆動する配線と、前記有機EL素子及び前記配線を覆うように設けられた封止層とを有し、前記封止層が、前記基材と同じ大きさで周縁端部まで又は該周縁端部からはみ出す大きさで設けられ、且つ前記周縁端部から内方に設けられて前記配線に接続する取出電極部には設けられていないことを特徴とする有機EL素子パネル。
【請求項2】
前記基材の厚さが10μm以上200μm以下であり、該基材の周縁端部からはみ出す前記封止層の長さが該基材の周縁端部から0μm以上10mm以下である、請求項1に記載の有機EL素子パネル。
【請求項3】
前記取出電極部が、前記有機EL素子パネルの少なくとも一辺と平行で且つ前記周縁端部から内側に入った位置に、幅100μm〜10mmのスリット状に設けられている、請求項1又は2に記載の有機EL素子パネル。
【請求項4】
基材を準備する工程と、
前記基材上に有機EL素子及び配線を形成する工程と、
前記有機EL素子と前記配線とを覆う封止層を前記基材と同じ大きさで周縁端部まで又は該周縁端部からはみ出す大きさで設けるとともに、前記周縁端部から内方にある前記配線の取出電極部には設けない工程と、を有することを特徴とする有機EL素子パネルの製造方法。
【請求項5】
前記基材はその厚さが10μm以上200μm以下の基材である場合、該基材の周縁端部からはみ出す前記封止層の長さを該基材の周縁端部から0μm以上10mm以下とするように形成する、請求項4に記載の有機EL素子パネルの製造方法。
【請求項6】
前記基材はその厚さが300μm〜2mm以下の基材である場合、前記封止層を形成した後に該基材の露出面を研磨して厚さ10μm以上200μm以下の基材に加工する、請求項5に記載の有機EL素子パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−175753(P2011−175753A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37167(P2010−37167)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】