有機EL表示パネルとその製造方法、および有機EL表示装置
【課題】発光領域が広く、且つ、発光領域内での有機機能層の膜厚が均一に維持され、且つ、有機機能層の段切れのないことから、優れた発光特性を有しながら、長寿命な有機EL表示パネルとその製造方法、および有機EL表示装置を提供する。
【解決手段】陽極105は、その端部P1が、開口部を臨むバンクの端部P2から離間した状態で配置されている。陽極105は、平坦化膜104の側からアルミニウム若しくはアルミニウム合金からなる金属層1051と、ITOからなる透明導電層1052との積層構造を有する。この内、金属層1051の膜厚t2は、40[nm]以上200[nm]以下であり、その表面部が所定の反射率を有する反射部となっている。また、陽極105上に形成された有機機能層107は、その膜厚t3が、陽極105の膜厚t1以上であり、陽極105の上面から端部の側面にわたって形成されている。
【解決手段】陽極105は、その端部P1が、開口部を臨むバンクの端部P2から離間した状態で配置されている。陽極105は、平坦化膜104の側からアルミニウム若しくはアルミニウム合金からなる金属層1051と、ITOからなる透明導電層1052との積層構造を有する。この内、金属層1051の膜厚t2は、40[nm]以上200[nm]以下であり、その表面部が所定の反射率を有する反射部となっている。また、陽極105上に形成された有機機能層107は、その膜厚t3が、陽極105の膜厚t1以上であり、陽極105の上面から端部の側面にわたって形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示パネルとその製造方法、および有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置の研究・開発がなされている。有機EL表示装置に含まれる有機EL表示パネルは、画素単位で有機EL素子が設けられた構成を有し、有機EL素子毎に固体蛍光性物質の電界発光現象を利用して自発光する。従来技術の一例として、特許文献1,2で開示されている有機EL表示パネルの構成について、図16を用い説明する。
【0003】
図16に示すように、従来技術に係る有機EL表示パネルでは、基板901上にTFT(Thin Film Transistor)層902が形成され(図16では、一部であるソースのみを図示している)、その上にパッシベーション膜903および平坦化膜904が順に積層形成されている。平坦化膜904上には、各画素900に対応する状態で、陽極905が形成されている。陽極905は、平坦化膜904の側から順に積層形成された金属層9051と透明導電層9052とから構成されている。陽極905は、平坦化膜904に開けられたコンタクトホール904a中にも埋め込まれており、これによりTFT層902との接続が図られている。
【0004】
平坦化膜904上には、画素900と隣接する画素900との間を区画するように、バンク906が形成されている。バンク906は、陽極905の端部の一部上を覆うように配されている。バンク905で規定された画素900の領域には、陽極905上に有機機能層907が積層形成されている。有機機能層907は、湿式の塗布型層であって、少なくとも有機発光層を含む。有機機能層907上およびバンク906上には、陰極908が形成されており、さらに陰極908を覆うように封止層909が積層形成されている。
【0005】
ところで、図16に示す従来技術に係る有機EL表示装置では、バンク906が陽極905の端部を覆っているため、当該部分に電流が流れ難くなり、発光領域の減少が問題となる。また、図17(a)や図17(b)に示すように、各画素920,930における有機機能層927,937の両端部分(矢印Iおよび矢印Jで指し示す部分)において、塗布ムラに起因する厚みの不均一を生じることがある。このような現象は、発光輝度ムラの原因となり、画質の向上という観点から改善が求められる。
【0006】
これに対し、特許文献3では、バンクの幅を狭くすることにより陽極との間隔をあけ、これによって上記のような課題を解決しようとする提案がされている。即ち、バンクの幅を狭くすることで陽極の端部をバンクで覆わない構成とし、当該構成により発光領域を広くするとともに、陽極上の有機機能層の厚みを均一にできるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−54286号公報
【特許文献2】特開2004−192890号公報
【特許文献3】特開2005−93421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3で提案されている技術では、バンクと陽極との間に間隔をあけたことに起因して、陽極の端部において有機機能層が段切れを生じて陽極と陰極とがショートしてしまったり、段切れを生じないまでも有機機能層の膜厚が極端に薄くなることで電界集中を生じたりするなどの問題を生じ得る。即ち、図18に示すように、陽極955の端部P91とバンク906の端部P92との間に間隔d9をあける構成の場合、陽極955の端部(矢印Kで示す部分)で陽極955と陰極908とがショートしたりすることが生じ得る。
【0009】
図18に示すように、陽極955は、アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層などの金属層9551とITO(酸化インジウムスズ)層9552との積層構造を有するが、この内、金属層9551は図示を省略しているバスバーと同一行程で形成されるため、膜厚t92をバスバーに合わせて厚膜に形成しているのが現状である。これより、従来においては、陽極955の膜厚t91が厚くなっており、それよりも膜厚t93が薄い有機機能層957aを形成するとき、矢印Kで示す部分で有機機能層が段切れを生じる。即ち、矢印Kで示す部分を境にして、有機機能層957aと有機機能層957bとの間が不連続な状態となる。この場合、段切れ部分で陽極955と陰極908とがショートするという問題が生じる。
【0010】
なお、上記のような段切れの発生を防止するという目的で、有機機能層の膜厚を厚くするということも考えられるが、このような構成を採用する場合には、陽極955と陰極908との間での電気抵抗が増大してしまう。よって、所望の輝度を得るためには、より高い電圧を印加することが必要となり、有機機能層における有機発光層の劣化が促進され、寿命の低下という問題を生じることが考えられる。
【0011】
本発明は、上記問題を解決しようとなされたものであって、発光領域が広く、且つ、発光領域内での有機機能層の膜厚が均一に維持され、且つ、有機機能層の段切れのないことから、優れた発光特性を有しながら、長寿命な有機EL表示パネルとその製造方法、および有機EL表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルは、基板と、基板の上方に配置された絶縁層と、絶縁層の上方に形成され、所定の画素の領域に対応する開口部を規定するバンクと、絶縁層の表面上に配置され、アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層を含み、当該アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層の表面部を所定の反射率を有する反射部とした第1電極と、第1電極の上面に形成され、有機発光層を少なくとも含む有機機能層と、有機機能層の上方に配置され、有機機能層から上方へ照射された光と、有機機能層から下方に照射された光であって第1電極の反射部で反射された光と、を透過する第2電極と、を含む。そして、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、第1電極は、バンクの開口部内において、その端部が開口部を臨むバンクの端部から離間して配置され、第1電極に含まれるアルミニウム層若しくはアルミニウム合金層の膜厚は、40[nm]以上200[nm]以下の所定の膜厚であり、有機機能層は、第1電極の所定の膜厚以上の膜厚であり、第1電極の上面から端部の側面にわたって形成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、第1電極におけるアルミニウム層若しくはアルミニウム合金層(以下、「金属層」と記載する。)の膜厚を40[nm]以上200[nm]以下の所定の膜厚とし、これにより、第1電極の金属層の表面部分が、有機機能層における有機発光層から照射された光に対して所定の反射率を有する反射部となる。即ち、第1電極における金属層の膜厚を40[nm]未満とする場合には、有機機能層における有機発光層から下方に照射された光の第2電極へ反射する光量が減少し、発光効率の低下を招くが、第1電極における金属層の膜厚を40[nm]以上とすることにより、高い発光効率を得ることができる。
【0014】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、有機機能層の膜厚を、第1電極の所定膜厚以上の膜厚とし、且つ、第1電極の上面から端部の側面にわたって有機機能層が形成されている構成を採用する。このため、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、第1電極に対する有機機能層の膜厚および第1電極に対する有機機能層の形成形態を採用することにより、有機機能層の膜厚を必要以上に厚くする必要はなく、第1電極と第2電極との間での電気抵抗の増大による寿命低下という問題を生じることはなく、また、第1電極の端部における有機機能層の段切れや極端な薄膜化を招くことがない。
【0015】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、第1電極の端部と、開口部を臨むバンクの端部とを相互に離間させているので、発光領域を広くできるとともに、上記特許文献3で提案されている技術と同様に、第1電極上の有機機能層の厚みを均一化することができる。よって、発光特性が優れる。
【0016】
以上より、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、発光領域が広く、且つ、発光領域内での有機機能層の膜厚が均一に維持され、且つ、有機機能層の段切れの発生がない。従って、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルは、優れた発光特性を有しながら、長寿命である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態1に係る有機EL表示装置1の構成を示す模式ブロック構成図である。
【図2】有機EL表示パネル10の一部構成を示す模式断面端面図である。
【図3】有機EL表示パネル10の一部構成を示す模式断面端面図である。
【図4】有機EL表示パネル10の一部構成を抜き出して示す模式平面図である。
【図5】有機EL表示パネル10における陽極105の端部付近を示す模式断面端面図である。
【図6】(a)は、実施の形態1に係る有機EL表示パネル10における陽極105と有機機能層107との相互の配置関係を示す模式断面端面図であり、(b)は、比較例に係る有機EL表示パネルにおける陽極955と有機機能層957との相互の配置関係を示す模式断面端面図である。
【図7】金属層1051の膜厚毎の光の波長と反射率との関係を示す特性図である。
【図8】発光色毎の金属層1051の膜厚と反射率との関係を示す特性図である。
【図9】(a)は、有機機能層107が2層構造である場合の膜厚t3を定義するために用いる模式断面図であり、(b)は、有機機能層117が3層構造である場合の膜厚t13を定義するために用いる模式断面図であり、(c)は、有機機能層127に含まれる電荷注入層1271の膜厚t232を定義するために用いる模式断面図である。
【図10】(a)〜(d)は、有機EL表示パネル10の製造工程の一部を示す模式工程図である。
【図11】(a)〜(c)は、有機EL表示パネル10の製造工程の一部を示す模式工程図である。
【図12】(a),(b)は、有機EL表示パネル10の製造工程の一部を示す模式工程図である。
【図13】実施の形態2に係る有機EL表示パネル30の一部構成を示す模式断面端面図である。
【図14】実施の形態3に係る有機EL表示パネル40の一部構成を抜き出して示す模式平面図である。
【図15】有機EL表示パネル40の一部構成を示す模式断面端面図である。
【図16】従来技術に係る有機EL表示パネルの一部構成を示す模式断面端面図である。
【図17】(a),(b)は、従来技術で問題となる有機機能層927,937の端部断面形状を示す模式断面端面図である。
【図18】改良に係る従来技術で問題となる陽極955の端部付近での有機機能層957の端部断面形状を示す模式断面端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[本発明の態様]
本発明の一態様に係る有機EL表示パネルは、基板と、基板の上方に配置された絶縁層と、絶縁層の上方に形成され、所定の画素の領域に対応する開口部を規定するバンクと、絶縁層の表面上に配置され、アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層を含み、当該アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層の表面部を所定の反射率を有する反射部とした第1電極と、第1電極の上面に形成され、有機発光層を少なくとも含む有機機能層と、有機機能層の上方に配置され、有機機能層から上方へ照射された光と、有機機能層から下方に照射された光であって第1電極の反射部で反射された光と、を透過する第2電極と、を含む。そして、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、第1電極は、バンクの開口部内において、その端部が開口部を臨むバンクの端部から離間して配置され、第1電極に含まれるアルミニウム層若しくはアルミニウム合金層の膜厚は、40[nm]以上200[nm]以下の所定の膜厚であり、有機機能層は、第1電極の所定の膜厚以上の膜厚であり、第1電極の上面から端部の側面にわたって形成されている。
【0019】
なお、本明細書では、第1電極における周囲の縁部を「端部」と呼称している。
本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、第1電極におけるアルミニウム層若しくはアルミニウム合金層(以下、「金属層」と記載する。)の膜厚を40[nm]以上200[nm]以下の所定の膜厚とし、これにより、第1電極の金属層の表面部分が、有機機能層における有機発光層から下方に照射された光に対して所定の反射率を有する反射部となる。即ち、第1電極における金属層の膜厚を40[nm]未満とする場合には、有機機能層における有機発光層から照射された光の第2電極へ反射する光量が減少し、発光効率の低下を招くが、第1電極における金属層の膜厚を40[nm]以上とすることにより、高い発光効率を得ることができる。
【0020】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、有機機能層の膜厚を、第1電極の所定膜厚以上の膜厚とし、且つ、第1電極の上面から端部の側面にわたって有機機能層が形成されている構成を採用する。このため、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、第1電極に対する有機機能層の膜厚および第1電極に対する有機機能層の形成形態を採用することにより、有機機能層の膜厚を必要以上に厚くする必要はなく、第1電極と第2電極との間での電気抵抗の増大による寿命低下という問題を生じることはなく、また、第1電極の端部における有機機能層の段切れや極端な薄膜化を招くことがない。
【0021】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、第1電極の端部と、開口部を臨むバンクの端部とを相互に離間させているので、発光領域を広くできるとともに、第1電極上の有機機能層の厚みを均一化することができる。よって、発光特性が優れる。
【0022】
以上より、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、発光領域が広く、且つ、発光領域内での有機機能層の膜厚が均一に維持され、且つ、有機機能層の段切れの発生がない。従って、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルは、優れた発光特性を有しながら、長寿命である。
【0023】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、上記構成において、第1電極が、金属層(アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層)の上面に設けられた透明導電層を有する、という構成を採用することもできる。これにより、製造工程中などで金属層の表面部の反射率が低下するのを防止することができ、また、キャビティ設計における自由度を高くすることができる。
【0024】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、上記構成において、第1電極に含まれる金属層(アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層)の膜厚が43[nm]以上200[nm]以下の所定の膜厚である、という構成を採用することもできる。このように、金属層の膜厚を43[nm]以上とすることにより、有機機能層の段切れの発生を防止しながら、金属層の表面部における反射率を高く維持することができる。具体的には、金属層の表面部における反射率を89[%]以上の安定した値とすることができる。よって、この構成を採用する場合には、光学特性に更に優れたものとすることができる。
【0025】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、上記構成において、第1電極に含まれる金属層(アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層)の膜厚が40[nm]以上120[nm]以下の所定の膜厚である、という構成を採用することもできる。先ず、金属層の膜厚の上限を120[nm]と規定することにより、金属層の表面部における反射率を低下させることなく、第1電極全体での膜厚を更に薄くすることができ、端部における有機機能層の段切れの発生を更に効果的に防止することができる。よって、上記構成を採用する場合には、第1電極と第2電極とのショートをより確実に防止することができる。
【0026】
なお、金属層を含む第1電極の膜厚を厚くし、これに連動して有機機能層の膜厚も厚くした場合には、上記のように、第1電極と第2電極との間での電気抵抗が増大し、この間に流れる電流量が低下する。このため、このような構成を採用すると、有機発光層における発光量が第1電極と第2電極との間隔の増大に反して、低下する。特に、第1電極における金属層の膜厚を120[nm]よりも厚くし、第1電極の膜厚もこれに伴い厚くする場合には、有機発光層における発光量の低下が、有機発光デバイスとして使用できない程度まで大きくなる。
【0027】
これに対して、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、第1電極の金属層の膜厚を120[nm]以下としているので、有機機能層の膜厚もこれに伴い薄くすることができ、第1電極と第2電極との間に印加する電圧を低減することができ、その結果、有機発光デバイスとしての消費電力を抑えることができる。そして、このように印加電圧を低減する場合にも、大きな電流が流れるので、有機発光デバイスとして優れた発光性能を有する。よって、優れた発光特性を有しながら、長寿命であるという効果を得ることができる。
【0028】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、上記構成において、第1電極に含まれる金属層(アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層)の膜厚が43[nm]以上120[nm]以下の所定の膜厚である、という構成を採用することもできる。上記構成を採用する場合には、第1電極における金属層の表面部での反射率を89[%]以上の高い値で安定させることができる。その結果、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、優れた光学特性を有する。また、金属層の膜厚を上記範囲とすることに伴い、第1電極の膜厚もこれに伴って更に薄くすることでき、有機機能層の段切れの発生を防止しながら、第1電極と第2電極との間に印加する電圧を低減することができる。
【0029】
よって、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、優れた光学特性を有し、更に長寿命である。
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、上記構成において、第1電極に含まれる金属層(アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層)の膜厚が50[nm]以上100[nm]以下の所定の膜厚である、という構成を採用することもできる。この構成を採用する場合には、第1電極の膜厚を金属層の膜厚に伴って極力薄くすることができ、且つ、金属層の膜厚が100[nm]を超える第1電極を採用する場合と同等の反射率を確保することができる。よって、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、優れた光学特性を有し、且つ、有機機能層の膜厚を更に薄くすることができるので、第1電極と第2電極との間に印加する電圧を低減することができる。
【0030】
以上より、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、優れた光学特性を有し、更に長寿命であるという効果を有する。
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、上記構成において、有機機能層が、第1電極上に形成された電荷注入層あるいは電荷輸送層の少なくとも一方を含み、第1電極上に形成された電荷注入層あるいは電荷輸送層の少なくとも一方の膜厚が第1電極の所定の膜厚以上の膜厚であり、第1電極の上面から端部の側面にわたって形成されている、という構成を採用することもできる。このように、有機機能層に電荷注入層あるいは電荷輸送層の少なくとも一方を含む構成を採用する場合には、電荷注入性に優れ、優れた発光特性を有することができる。そして、電荷注入層あるいは電荷輸送層が第1電極の上面から端部の側面にわたって形成されているので、第1電極の端部での有機機能層の段切れが確実に防止でき、第1電極と第2電極とのショートを防止することができる。
【0031】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、上記構成において、有機機能層が、第1電極上に形成された電荷注入層あるいは電荷輸送層の少なくとも一方の層の上方に有機発光層を設けた層である、という構成を採用することもできる。
【0032】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、上記構成において、有機機能層が、電荷注入層、電荷輸送層および有機発光層を含む層であり、電荷注入層が第1電極上に形成され、電荷注入層の膜厚が第1電極の所定の膜厚以上の膜厚であり、第1電極の上面から端部の側面にわたって形成されている、という構成を採用することもできる。
【0033】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、上記構成において、第1電極の端部の側面と基板とがなす内角が90[°]以下である、という構成を採用することもできる。この構成を採用する場合には、第1電極の上方に配置された有機機能層が、第1電極の端部で段切れを発生するのを、より確実に防止することができるようになり、第1電極と第2電極との間でのショートの発生を確実に防止することができる。
【0034】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、第1電極の端部を開口部を臨むバンクの端部から離間させて配置しているので、バンク近傍での有機膜の塗布状態が不安定になることが考えられるが、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、当該領域の下方には第1電極が存在しないため、発光しない領域(非発光領域)となる。よって、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、発光領域において、塗布形状のバラツキが少なく、膜厚を含む膜状態が均一な有機機能層を有し、画素内での輝度ムラが少なく、長寿命であるという効果を得ることができる。
【0035】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、上記所定の画素の領域が、画素毎の領域であり、バンクが、上記開口部を画素毎に規定する、という構成を採用することができる。即ち、所謂、ピクセルバンク構成を一例として採用することができる。
【0036】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、上記所定の画素の領域が、複数の画素がライン状に配列された領域であり、バンクが、上記開口部をライン状に配列された複数の画素毎に規定する、という構成を採用することもできる。即ち、所謂、ラインバンク構成を一例として採用することもできる。
【0037】
本発明の一態様に係る有機EL表示装置は、上記のいずれかの有機EL表示パネルを具備したことを特徴とする。よって、本発明の一態様に係る有機EL表示装置においても、上記同様の理由より、優れた発光特性を有しながら、長寿命である。
【0038】
本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法では、次の工程を含む。
(第1工程)基板を準備する。
(第2工程)基板の上方に絶縁膜を配置する。
【0039】
(第3工程)金属層(アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層)を含み、当該金属層(アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層)の表面部を所定の反射率を有する反射部とした第1電極を、絶縁層の表面上に配置する。
【0040】
(第4工程)絶縁膜の上方に、所定の画素の領域に対応する開口部を規定するバンクを形成する。
(第5工程)有機発光層を少なくとも含む有機機能層を、第1電極の上面から端部の側面にわたって、第1電極の所定の膜厚以上の膜厚に形成する。
【0041】
(第6工程)有機発光層から上方へ照射された光と、有機発光層から下方に照射された光であって第1電極の反射部で反射された光とを、透過する第2電極を前記有機発光層の上方に配置する。
【0042】
本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法では、上記において、第1電極は、バンクの開口部内において、その端部が開口部を臨むバンクの端部から離間して配置し、第1電極に含まれる金属層(アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層)の膜厚が40[nm]以上200[nm]以下の所定の膜厚である、という構成を採用することを特徴とする。
【0043】
本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法では、金属層(アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層)の膜厚を40[nm]以上200[nm]以下の所定の膜厚とし、これにより、その表面部分が、有機機能層における有機発光層から照射された光に対して所定の反射率を有する反射部となる第1電極を形成する。金属層の膜厚を40[nm]以上とすることにより、表面部における反射部が高い発光効率を有する第1電極を形成することができる。
【0044】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法では、有機機能層の膜厚を、第1電極の所定膜厚以上の膜厚とし、且つ、第1電極の上面から端部の側面にわたって有機機能層を形成することとしている。このため、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法を用いる場合、製造された有機EL表示パネルは、第1電極に対する有機機能層の膜厚および第1電極に対する有機機能層の形成形態を採用することにより、有機機能層の膜厚を必要以上に厚くする必要はなく、第1電極と第2電極との間での電気抵抗の増大による寿命低下という問題を生じることはなく、また、第1電極の端部における有機機能層の段切れや極端な薄膜化を招くことがない。
【0045】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法では、第1電極の端部と、開口部を臨むバンクの端部とが相互に離間するようにしているので、発光領域を広くすることができ、第1電極上の有機機能層の厚みが均一な有機EL表示パネルを製造することができる。よって、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法を用い製造された有機EL表示パネルは、発光特性が優れる。
【0046】
以上より、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法では、発光領域が広く、且つ、発光領域内での有機機能層の膜厚が均一に維持され、且つ、有機機能層の段切れの発生がなく、製造された有機EL表示パネルは、優れた発光特性を有しながら、長寿命である。
【0047】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法では、上記第3工程において、第1電極が、金属層(アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層)の上面に透明導電層を設けて形成される、という構成を採用することができる。これにより、製造工程中などで金属層の表面部の反射率が低下するのを防止することができ、また、キャビティ設計における自由度を高くすることができる。
【0048】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法では、上記第3工程において、ウェットエッチングにより、所定の形状にパターニングされた第1電極を形成することにより、第1電極の端部の側面と基板とがなす内角を90[°]以下にする、という構成を採用することもできる。ウェットエッチングは、等方性エッチングであるため、ウェットエッチングにより第1電極をパターニングする場合には、第1電極の端部の側面と基板とがなす内角を90[°]以下とすることに好適である。
【0049】
上記のようにウェットエッチングにより第1電極のパターニングを行う場合には、第1電極の端部の側面と基板とがなす内角を90[°]以下とすることにより、第1電極の上方に配置された有機機能層が、第1電極の端部で段切れを発生するのを、より確実に防止することができるようになる。よって、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法では、第1電極と第2電極との間でのショートの発生が確実に防止された有機EL表示パネルを製造することができる。
【0050】
なお、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法では、上記ウェットエッチング以外にも、ドライエッチングを用いることができることはいうまでもない。
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法では、上記構成において、有機機能層を、インクジェット法、ダイコート法、スピンコート法のいずれかの湿式塗布方法で形成する、という構成を採用することもできる。インクジェット法、ダイコート法、スピンコート法などの湿式塗布方法は、連続した有機機能層を大面積に形成することができる方法である。このため、これら方法の何れかを用い有機機能層を形成する場合には、第1電極の端部での段切れを防止しながら、第1電極上での膜厚が均一な有機機能層を形成するのに好適である。
【0051】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法では、上記構成において、有機機能層が、第1電極上に形成された電荷注入層あるいは電荷輸送層の少なくとも一方を含み、第1電極上に形成された電荷注入層あるいは電荷輸送層の少なくとも一方の膜厚が第1電極の所定の膜厚以上の膜厚であり、第1電極の上面から端部の側面にわたって形成されている、という構成を採用することもできる。このように、有機機能層に電荷注入層あるいは電荷輸送層の少なくとも一方を含む構成を採用する場合には、電荷注入性に優れ、優れた発光特性を有することができる。そして、電荷注入層あるいは電荷輸送層が第1電極の上面から端部の側面にわたって形成されているので、第1電極の端部での有機機能層の段切れが確実に防止でき、第1電極と第2電極とのショートを防止することができる。
【0052】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法では、上記構成において、有機機能層が、電荷注入層あるいは電荷輸送層の少なくとも一方の層の上方に有機発光層を設けた層である、という構成を採用することもできる。
【0053】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法では、上記構成において、有機機能層が、電荷注入層、電荷輸送層及び有機発光層を含む層であり、電荷注入層が第1電極上に形成され、電荷注入層の膜厚が第1電極の所定の膜厚以上の膜厚であり、電荷注入層が第1電極の上面から端部の側面にわたって形成されている、という構成を採用することもできる。
【0054】
以下では、本発明を実施するための形態について、数例を用い説明する。
なお、以下の説明で用いる実施の形態は、本発明の構成および作用・効果を分かりやすく説明するために用いる例示であって、本発明は、その本質的部分以外に何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0055】
[実施の形態1]
1.有機EL表示装置1の全体構成
以下では、発光装置の一例としての有機EL表示装置1で説明する。
【0056】
本実施の形態に係る有機EL表示装置1の全体構成について、図1を用い説明する。
図1に示すように、有機EL表示装置1は、有機EL表示パネル10と、これに接続された駆動制御部20とを有し構成されている。有機EL表示パネル10は、有機材料の電界発光現象を利用したパネルであり、複数の有機EL素子が、例えば、マトリクス状に配列され構成されている。駆動制御部20は、4つの駆動回路21〜24と制御回路25とから構成されている。
【0057】
なお、実際の有機EL表示装置1では、表示パネル10に対する駆動制御部20の配置については、これに限られない。
2.有機EL表示パネル10の構成
有機EL表示パネル10の構成について、図2、図3および図4を用い説明する。図2は、有機EL表示パネル10の構成の一部を、図1におけるY軸方向に切断した断面端面図であって、図4におけるC−C‘断面の端面を示す。一方、図3は、有機EL表示パネル10の構成の一部を、図1におけるX軸方向に切断した断面端面図であって、図4におけるD−D’断面の端面を示す。
【0058】
なお、図4では、陽極105とバンク106との関係を分かりやすくするため、他の構成要素の図示を省略している。
先ず、図2に示すように、有機EL表示パネル10は、基板101をベースとして形成されている。そして、基板101上には、TFT(薄膜トランジスタ)層102、パッシベーション膜103および平坦化膜104が順に積層形成されている。なお、図2では、TFT層102について、その構成の一部であるソースあるいはドレイン(SD電極)のみを図示している。
【0059】
絶縁層である平坦化膜104上には、画素に対応する開口部を規定するバンク106が形成されている。また、平坦化膜104上におけるバンク106で規定された画素領域には、陽極105が形成されている。陽極105は、平坦化膜104の側から順に、金属層1051および透明導電層1052が積層され構成されている。陽極105は、平坦化膜104に開けられたコンタクトホール104a内にも連続して形成され、TFT層102のSD電極と接続されている。
【0060】
陽極105における金属層1051は、アルミニウム(Al)若しくはアルミニウム合金(Al合金)からなる層であり、透明導電層1052は、ITO(酸化インジウムスズ)若しくはIZO(酸化インジウム亜鉛)からなる層である。
【0061】
有機EL表示パネル10におけるバンク106と陽極105との配置関係を、図4を用い説明する。
図4に示すように、有機EL表示パネル10におけるバンク106は、所謂、ピクセルバンクと呼称されるものであって、X軸方向に延伸する要素106aとY軸方向に延伸する要素106bとが一体に形成されている。バンク106で規定される各開口部が一画素に該当し、陽極105が各開口部内に配されている。なお、各画素における陽極105は、コンタクトホール104aを介してTFT層102のSD電極に接続されている。
【0062】
図2に戻って、陽極105上には、有機機能層107が積層形成されている。有機機能層107は、少なくとも有機発光層を含む層であって、その他に電荷注入層、電荷輸送層あるいは電荷注入輸送層などを含むものであってもよい。
【0063】
図2の矢印A部分に示すように、本実施の形態に係る有機EL表示パネル10では、陽極105の端部が、開口部を臨むバンク106の端部から離間した状態となっており、当該離間部分では、平坦化膜104の表面に接する状態で有機機能層107が形成されている。
【0064】
有機機能層107上には、陰極108が形成されている。陰極108は、有機EL表示パネル10における全ての画素にわたり共通に設けられており、バンク106上にも形成されている。陰極108の上には、封止層109が形成されている。
【0065】
図3に示すように、有機EL表示パネル10では、図4のD−D‘断面についても、コンタクトホール104aがないことを除いて、図2に示すC−C’断面と基本的に同一の構成を有する。そして、図3の矢印B部分に示すように、D−D‘断面においても、陽極105の端部が、開口部を臨むバンク106の端部から離間した状態となっている。そして、図2および図3に示すように、各画素における陽極105が形成された領域が発光領域100であり、バンク106が形成された領域を含むその他の領域が非発光領域150である。
【0066】
有機EL表示パネル10では、陽極105からホールが供給され、陰極108から電子が注入され、これらが有機機能層107へと送り込まれ、有機発光層で再結合することで光が出射される。有機機能層107の有機発光層から出射された光には、陰極108の側へと向かう成分と、陽極105の側へと向かう成分とが含まれる。陽極105の側へと向かった光成分は、陽極105における金属層1051におけるZ軸上側の表面および表層部分で反射されて陰極108の側へと向かうことになる。このように、陽極105における金属層1051の表面部は、所定の反射率を有する反射部としての役割も果たす。
【0067】
3.有機EL表示パネル10を構成する主要材料
a)基板101
基板101は、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラス、石英、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、シリコーン系樹脂、又はアルミナ等の絶縁性材料をベースとして形成されている。
【0068】
b)平坦化膜104
平坦化膜104は、例えば、ポリイミド、ポリアミド、アクリル系樹脂材料などの有機化合物を用い形成されている。
【0069】
c)陽極105における金属層1051
陽極105における金属層1051は、上記のように、アルミニウム(Al)またはアルミニウム(Al)合金を用い形成されている。そして、トップエミッション型の本実施の形態に係る有機EL表示パネル10の場合には、その表面部が高い反射性を有することが好ましい。
【0070】
d)陽極105における透明導電層1052
陽極105における透明導電層1052は、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)やIZO(酸化インジウム亜鉛)などの透明導電材料を用い形成されている。
【0071】
e)バンク106
バンク106は、樹脂等の有機材料を用い形成されており絶縁性を有する。バンク106の形成に用いる有機材料の例としては、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等があげられる。バンク106は、有機溶剤耐性を有することが好ましい。さらに、バンク106は、製造工程中において、エッチング処理、ベーク処理など施されることがあるので、それらの処理に対して過度に変形、変質などをしないような耐性の高い材料で形成されることが好ましい。また、撥水性をもたせるために、表面をフッ素処理することもできる。
【0072】
なお、バンク106を親液性の材料を用い形成した場合には、バンク106の表面と有機機能層107の表面との親液性/撥液性の差異が小さくなり、有機機能層107中の有機発光層を形成するために有機物質を含んだインクを、バンク106が規定する開口部内に選択的に保持させることが困難となってしまうためである。
【0073】
さらに、バンク106の構造については、図2および図3に示すような一層構造だけでなく、二層以上の多層構造を採用することもできる。この場合には、層毎に上記材料を組み合わせることもできるし、層毎に無機材料と有機材料とを用いることもできる。
【0074】
f)有機機能層107
有機機能層107中に含まれる有機発光層は、上述のように、ホールと電子とが注入され再結合されることにより励起状態が生成され発光する機能を有する。有機発光層の形成に用いる材料は、湿式印刷法を用い製膜できる発光性の有機材料を用いることが必要である。
【0075】
具体的には、例えば、特許公開公報(日本国・特開平5−163488号公報)に記載のオキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、アンスラセン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体などの蛍光物質で形成されることが好ましい。
【0076】
なお、有機機能層107には、有機発光層よりも陽極105側に介挿された電荷注入層が含まれることもある。この場合、電荷注入層の構成材料としては、例えば、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの導電性ポリマー材料を採用することができる。
【0077】
g)陰極108
陰極108は、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)若しくはIZO(酸化インジウム亜鉛)などを用い形成される。本実施の形態のように、トップエミッション型の有機EL表示パネル10の場合においては、光透過性の材料で形成されることが好ましい。光透過性については、透過率が80[%]以上とすることが好ましい。
【0078】
陰極108の形成に用いる材料としては、上記の他に、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらのハロゲン化物を含む層の構造、あるいは、前記いずれかの層に銀を含む層とをこの順で積層した構造を用いることもできる。上記において、銀を含む層は、銀単独で形成されていてもよいし、銀合金で形成されていてもよい。また、光取出し効率の向上を図るためには、当該銀を含む層の上から透明度の高い屈折率調整層を設けることもできる。
【0079】
h)封止層109
封止層109は、有機機能層107中の有機発光層などが水分に晒されたり、空気に晒されたりすることを抑制する機能を有し、例えば、SiN(窒化シリコン)、SiON(酸窒化シリコン)などの材料を用い形成される。
【0080】
また、SiN(窒化シリコン)、SiON(酸窒化シリコン)などの材料を用い形成された層の上に、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などの樹脂材料からなる封止樹脂層を設けてもよい。
【0081】
封止層109は、トップエミッション型である本実施の形態に係る有機EL表示パネル10の場合においては、光透過性の材料で形成されることが好ましい。
4.陽極105とバンク106および有機機能層107との関係
陽極105とバンク106および有機機能層107との関係について、図5および図6を用い説明する。
【0082】
図5に示すように、本実施の形態に係る有機EL表示パネル10では、陽極105の端部P1が、開口部を臨むバンク106の端部P2から間隔d1だけ離間した状態で配されている。この状態は、バンク106の幅を狭くすることにより実現されている。そのため、有機EL表示パネル10では、図16に示す従来技術に係る有機EL表示パネルに比べて開口部を広くすることができ、優れた発光特性を有する。これは、間隔d1の部分では有機機能層107の直下に陽極105は形成されていないものの、有機機能層107には、陽極105の端部と陰極108の間(図5における二点鎖線で囲んで示す部分)に生じた電界により、光が出射するためである。
【0083】
また、間隔d1だけ離間した部分では、有機機能層107が平坦化膜104上に形成されることになり、このため、図17(a)および図17(b)に示すような、陽極105上における有機機能層107の膜厚不均一という問題を生じない。
【0084】
陽極105における金属層1051の膜厚t2は、有機機能層107における有機発光層から照射された光を陰極108の側へと反射するための反射率が所定値以上となるように設定されている。具体的な膜厚t2は、40[nm]以上200[nm]以下の範囲内であり、望ましくは、下限値が43[nm]であり、上限値が120[nm]であり、さらに望ましくは、下限値が50[nm]であり、上限値が100[nm]である。例えば、膜厚t2の所定範囲の下限値を43[nm]とする場合には、後述する図8に例示するように、89[%]以上の安定した反射率を得ることができる。
【0085】
また、本実施の形態では、有機機能層107の膜厚t3が、陽極105の膜厚t1以上の膜厚に設定されており、陽極105の上面105aから端部側面105bにわたって形成されている。前記のような膜厚t1,t3の関係を採用することにより、矢印E部分に示すように、有機機能層107が、陽極105の端部で段切れや極端に薄肉となることがない。
【0086】
有機機能層107の段切れ防止について、図6(a)および図6(b)を用い説明する。図6(a)は、本実施の形態に係る陽極105と有機機能層107とを模式的に図示したものであり、図6(b)は、比較例に係る陽極955と有機機能層957とを模式的に図示したものである。
【0087】
先ず、図6(a)に示すように、本実施の形態のように、有機機能層107の膜厚t3が、陽極105の膜厚t1以上の膜厚に設定されている場合には、陽極105の上面105aから端部側面105bにわたって有機機能層107が形成されることになる。なお、上記のように、陽極105の金属層1051の膜厚t2が、反射率との関係で上記数値範囲内とすることが必要であるので、有機機能層107の膜厚t3は、金属層1051の膜厚t2を含む陽極105の膜厚t1との相対的な関係で規定される。
【0088】
また、図6(a)に示すように、陽極105における端部側面105bと基板101および平坦化膜104の上面とがなす内角θは、90[°]以下になっている。これによっても、矢印F部分において、有機機能層107に段切れなどを生じない。
【0089】
以上より、図6(a)の矢印F部分に示すように、有機機能層107が陽極105の端部で段切れなどを生じることがない。
次に、図6(b)に示すように、比較例においては、陽極955上における有機機能層957の膜厚t93は、陽極955の膜厚t91よりも薄い関係となっている。従来技術では、陽極955が、金属層9551を含めて、図示を省略しているバスバーと同一の工程で形成することに起因して、金属層9551の膜厚t92および陽極955の膜厚t91が厚くなっている。よって、図6(b)に示すように、有機機能層957は、矢印G部分(陽極955の端部)で段切れを発生することがある。そして、有機機能層957が段切れを生じ、陽極955の上面955a上の有機機能層957aと、陽極955の端部側面955bを覆う有機機能層957bとが連続せず、陽極955の透明導電層9552が、矢印G部分で陰極(図6(b)では、図示を省略。)とがショートすることになる。
【0090】
5.有機EL表示パネル10およびこれを備える有機EL表示装置1が有する主な効果
本実施の形態に係る有機EL表示パネル10では、第1電極である陽極105の金属層1051(アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層)の膜厚t2(図5などを参照。)を、40[nm]以上の所定の膜厚とし、これにより、陽極105の金属層1051の表面部分が、有機機能層107における有機発光層から照射された光に対して所定の反射率を有する反射部となる。即ち、陽極105における金属層1051の膜厚t2を40[nm]未満とする場合には、有機機能層107における有機発光層から照射された光の陰極108側へ反射する光量が減少し、発光効率の低下を招くが、本実施の形態のように、陽極105における金属層1051の膜厚t2を40[nm]以上とすることにより、高い発光効率を得ることができる。
【0091】
また、本実施の形態に係る有機EL表示パネル10では、有機機能層107の膜厚t3を、陽極105の膜厚t1以上とし(図5などを参照。)、且つ、陽極105の上面105aから端部側面105bにわたって有機機能層107が形成されている構成を採用する(図6(a)を参照)。このため、有機EL表示パネル10では、陽極105に対する有機機能層107の膜厚t3および陽極105に対する有機機能層107の上記のような形成形態を採用することにより、有機機能層107の膜厚t3を必要以上に厚くする必要はなく、陽極105と陰極108との間での電気抵抗の増大による寿命低下という問題を生じることはなく、また、陽極105の端部における有機機能層107の段切れや極端な薄膜化を招くことがない(図5および図6(a)を参照)。なお、陽極105における金属層1051の膜厚t2を、上記段切れ防止のための陽極105の膜厚t1の低減に伴って低減することができ、具体的には、200[nm]以下、望ましくは120[nm]以下、更に望ましくは100[nm]以下とすることができる。
【0092】
また、図2、図3および図5などに示すように、有機EL表示パネル10では、陽極105の端部P1と、開口部を臨むバンク106の端部P2とを相互に離間させているので、発光領域を広くできるとともに、陽極105上の有機機能層107の厚みを均一化することができる。よって、発光特性が優れる。
【0093】
以上より、本実施の形態に係る有機EL表示パネル10およびこれを備える有機EL表示装置1では、発光領域が広く、且つ、発光領域内での有機機能層107の膜厚t3が均一に維持され、且つ、有機機能層107の段切れの発生がない。従って、有機EL表示パネル10およびこれを備える有機EL表示装置1は、優れた発光特性を有しながら、長寿命である。
【0094】
6.陽極105における金属層1051の膜厚t2の最適範囲
陽極105における金属層1051の膜厚t2の最適範囲について、図7および図8を用い検討結果を説明する。図7は、横軸が金属層1051の反射率を測定する際に用いた分光光度計の測定光の波長であり、縦軸が金属層1051の反射率である。図8は、図7の測定データについて、測定した金属層1051の膜厚と、各膜厚での反射率との関係を示す図である。図8の横軸が金属層1051の膜厚であり、縦軸が金属層1051の反射率である。
【0095】
図7に示すように、金属層の膜厚が、43[nm]〜98[nm]の各サンプルでは、450[nm]〜600[nm]の波長域において、反射率が略89[%]以上となっている。
一方、金属層の膜厚が、33[nm]、35[nm]のサンプルでは、450[nm]〜600[nm]の波長域において、反射率が85[%]程度となっている。
【0096】
次に、図8に示すように、金属層の膜厚が40[nm]以上の範囲では、赤(R:λ=600[nm])、緑(G:λ=530[nm])、青(B:λ=460[nm])の全ての波長域において、反射率が88[%]以上となった。そして、金属層の膜厚が43[nm]以上の範囲では、反射率は89[%]以上となり、膜厚が50[nm]以上の範囲では、反射率は略90[%]前後となった。
【0097】
また、図8に示すように、赤(R:λ=600[nm])、緑(G:λ=530[nm])、青(B:λ=460[nm])の全ての波長域において、金属層の膜厚については、50[nm]以上の範囲であれば、反射率が略90[%]で一定の値となっている。
【0098】
なお、陽極105の金属層1051の膜厚t2に関し、その上限値は、上述のように、反射率という観点からは特に規定する必要はないが、上記のように有機機能層107の段切れ防止という観点から陽極105の膜厚t2を薄くしようとすることを考慮すると、200[nm]以下、望ましくは120[nm]以下、更に望ましくは100[nm]以下である。
【0099】
以上より、陽極105における金属層1051の膜厚t2の範囲は、40[nm]以上200[nm]以下、望ましくは、43[nm]以上200[nm]以下、あるいは40[nm]以上120[nm]以下、更に望ましくは、43[nm]以上120[nm]以下、あるいは50[nm]以上100[nm]以下の範囲である。
【0100】
7.有機機能層についての規定
上記では、有機機能層107について、少なくとも有機発光層を含むものとしているが、バリエーションを含めた規定について、図9を用い説明する。
【0101】
(1) 先ず、図9(a)に示すように、有機機能層107が電荷注入層1071と有機発光層1072との積層構造体とすることができる。この場合、陽極105における透明導電層1052に対し、電荷注入層1071が積層され、その上に有機発光層1072が積層されることになる。
【0102】
なお、この構成を採用する場合には、「有機機能層107の膜厚t3」とは、電荷注入層1071の膜厚t32と有機発光層1072の膜厚t31とを足し合わせた厚みとなる。
【0103】
(2) 次に、図9(b)に示すように、有機機能層117が電荷注入層1171、有機発光層1172および電子輸送層1173の3層構造の積層構造体とすることもできる。この場合、陽極105の膜厚t1との比較における「有機機能層117の膜厚t13」とは、電荷注入層1171の膜厚t132と有機発光層1172の膜厚t131とを足し合わせた厚みとなり、陽極105の膜厚t1との比較においては、電子輸送層1173の膜厚t133を含めないものとする。
【0104】
(3) 次に、図9(c)に示すように、有機機能層127が電荷注入層1271、電荷輸送層1274および有機発光層1272の3層構造の積層構造体とすることもできる。この場合、陽極105の膜厚t1との比較における「有機機能層127の膜厚t23」とは、電荷注入層1271の膜厚t232と電荷輸送層1274の膜厚t234と有機発光層1172の膜厚t231とを足し合わせた厚みとなる。
【0105】
なお、図9(c)における有機発光層1272に上に電子輸送層などが介挿される場合には、上記同様に、陽極105の膜厚t1との比較においては、電子輸送層の膜厚を含めないものとする。
【0106】
8.有機EL表示パネル10の製造方法
有機EL表示パネル10の製造方法について、図10から図12を用い説明する。図10から図12は、主な工程での断面端面図である。
【0107】
図10(a)に示すように、基板101を準備する。
次に、基板101の主面101a上に対し、TFT層102およびパッシベーション膜103を形成する(図10(b)を参照)。なお、図10(b)においても、上記同様に、TFT層102についてSD電極だけを図示している。
【0108】
次に、基板101の上方であるパッシベーション膜103の主面103a上に、絶縁層である平坦化膜104を形成する。なお、図10(c)に示すように、平坦化膜104に対しては、TFT層102のSD電極に相当する部分にコンタクトホール104aをあけ、当該部分のパッシベーション膜103についても住居することにより、底部にTFT層102のSD電極の表面が露出するようにする。
【0109】
次に、平坦化膜104の主面104bに対して、金属層1051形成のための膜と、透明導電層1052形成のための膜とを順に積層する。両膜は、コンタクトホール104aを囲む側壁にも形成される。そして、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、これをパターニングし、金属層1051と透明導電層1052との積層構造体である陽極105を形成する(図10(d)を参照)。ここで、パターニングには、ドライエッチングおよびウェットエッチングの何れを採用することもできるが、特にウェットエッチングを採用する場合には、ウェットエッチングが等方性エッチングであることに起因して、陽極105の端部の内角を90[°]以下にすることができるので、好適である。
【0110】
次に、陽極105が形成されずに露出した平坦化膜104の主面に対し、バンク106形成のための膜をスパッタリング法により形成する。そして、フォトリソグラフィおよびウェットエッチングにより、画素領域に対応する開口部を規定するバンク106を形成する(図11(a)を参照)。図11(a)に示すように、開口部を臨むバンク106の端部は、陽極105の端部に対し、間隔d1をあけて形成される。
【0111】
次に、陽極105の主面105aを含む、バンク106で規定された開口部内に対し、有機機能層107形成のためのインク1070を塗布する(図11(b)を参照)。このとき、バンク106の表面の撥液性に起因して、隣接する開口部間では、インク1070が連続することはない。
【0112】
次に、インク1070を乾燥することにより、バンク106で規定される開口部内に有機機能層107が形成される(図11(c)を参照)。なお、有機機能層107が、図9(a)から図9(c)に示すように、2層構造あるいは3層以上の構造を採用する場合には、各層形成のためのインク塗布と乾燥とを繰り返し実行することになる。
【0113】
次に、有機機能層107の主面107aおよびバンク106の表面を含む全体領域に対し、陰極108を形成する(図12(a)を参照)。ここで、陰極108の形成には、スパッタリング法などを用いることができる。
【0114】
次に、陰極108の表面108a上に、封止層109を積層形成する(図12(b)を参照)。
[実施の形態2]
実施の形態2に係る有機EL表示パネル30の構成について、上記実施の形態1との差異部分を中心に、図13を用い説明する。図13は、上記実施の形態1における図2で示す断面端面図に対応するものである。
【0115】
図13に示すように、本実施の形態に係る有機EL表示パネル30では、陽極305が金属層の一層構造である点で上記実施の形態1に係る有機EL表示パネル10と相違する。有機EL表示パネル30でも、陽極305の端部が、開口部を臨むバンク106の端部から離間した状態となっており、陽極305が形成された領域が発光領域300であり、他の領域が非発光領域350である。
【0116】
本実施の形態に係る有機EL表示パネル30でも、陽極305の膜厚は40[nm]以上200[nm]以下の範囲内に設定され、また、有機機能層107の膜厚が陽極305の膜厚よりも厚くなっている。そして、有機機能層107は、陽極305の上面から端部側面にわたって形成されている。
【0117】
以上より、本実施の形態に係る有機EL表示パネル30およびこれを備える有機EL表示装置でも、上記有機EL表示パネル10および有機EL表示装置1と同様の効果を有する。
【0118】
[実施の形態3]
実施の形態3に係る有機EL表示パネル40の構成について、上記実施の形態1との差異部分を中心に、図14および図15を用い説明する。図14は、上記実施の形態1における図4に示す平面図に対応するものであり、図15は、図2で示す断面端面図に対応するものである。
【0119】
図14に示すように、本実施の形態に係る有機EL表示パネル40は、バンク406が、所謂、ラインバンク構造を有する点に特徴がある。即ち、図14に示すように、バンク406は、Y軸方向に延伸する複数条の要素により構成されている。複数条の要素は、端部において互いに連続していてもよいし、逆に、各々が分離した状態となっていてもよい。
【0120】
図15は、図14における有機EL表示パネル40の一部をH−H‘断面の端面を示す模式断面端面図である。図15に示すように、有機EL表示パネル40では、ラインバンク構造のバンク406(図14を参照。)を採用するため、Y軸方向における隣接画素間には、バンク406が介挿されない。
【0121】
図15に示すように、本実施の形態においても、陽極105の上面から端部側面にわたって有機機能層407が形成されており、その上に陰極408および封止層409が順に積層形成されている。よって、有機EL表示パネル40においても、陽極105が形成された領域が発光領域400であり、その他の領域が非発光領域450である。
【0122】
なお、有機EL表示パネル40について、図14のX軸方向の断面構造については、図示を省略しているが、当該構造は、上記実施の形態1と同様である。即ち、X軸方向においては、陽極105の端部が、開口部を臨むバンク406の端部に対して離間した状態となっている。また、本実施の形態においても、陽極105における金属層1051の膜厚は、40[nm]以上200[nm]以下の範囲内で設定されており、有機機能層407の膜厚が陽極105の膜厚よりも厚くなっている。
【0123】
以上より、本実施の形態に係る有機EL表示パネル40およびこれを備える有機EL表示装置でも、上記実施の形態1と同様の効果を有する。
[その他の事項]
上記実施の形態1,2,3では、有機機能層107,117,127,407に対して、Z軸方向の下方、即ち、基板101の側に陽極105,305を配置し、Z軸方向の上方に陰極108,408を配置することとしたが、陽極と陰極との配置関係を上下逆にすることもできる。この場合には、有機機能層において、有機発光層に対し基板101側となる領域に電子注入層や電子輸送層が配置されることになり、この場合も「有機機能層の膜厚」は、基板101の側から積算し、有機発光層を含むレベルまでの膜厚が規定される。
【0124】
また、上記実施の形態1,2,3の説明の際に用いた図1から図15については、各部のサイズについて厳密な相対値を以って示しているわけではなく、実際の構造への適用に際して適宜の変更が可能である。この場合においても、陽極における金属層の膜厚を上記範囲内で規定し、且つ、有機機能層の膜厚を陽極の膜厚よりも厚くすることは必要である。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、優れた発光特性を有しながら、長寿命な有機EL表示パネルおよび有機EL表示装置を実現するのに有用である。
【符号の説明】
【0126】
1.有機EL表示装置
10,30,40.有機EL表示パネル
20.駆動制御部
21〜24.駆動回路
25.制御回路
100,300,400.発光領域
101.基板
102.TFT層
103.パッシベーション膜
104.平坦化膜
105,305.陽極
106,406.バンク
107,117,127,407.有機機能層
108,408.陰極
109,409.封止層
150,350,450.非発光領域
1051.金属層
1052.透明導電層
1070.インク
1071,1171,1271.電荷注入層
1072,1172,1272.有機発光層
1173.電子輸送層
1274.電荷輸送層
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示パネルとその製造方法、および有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置の研究・開発がなされている。有機EL表示装置に含まれる有機EL表示パネルは、画素単位で有機EL素子が設けられた構成を有し、有機EL素子毎に固体蛍光性物質の電界発光現象を利用して自発光する。従来技術の一例として、特許文献1,2で開示されている有機EL表示パネルの構成について、図16を用い説明する。
【0003】
図16に示すように、従来技術に係る有機EL表示パネルでは、基板901上にTFT(Thin Film Transistor)層902が形成され(図16では、一部であるソースのみを図示している)、その上にパッシベーション膜903および平坦化膜904が順に積層形成されている。平坦化膜904上には、各画素900に対応する状態で、陽極905が形成されている。陽極905は、平坦化膜904の側から順に積層形成された金属層9051と透明導電層9052とから構成されている。陽極905は、平坦化膜904に開けられたコンタクトホール904a中にも埋め込まれており、これによりTFT層902との接続が図られている。
【0004】
平坦化膜904上には、画素900と隣接する画素900との間を区画するように、バンク906が形成されている。バンク906は、陽極905の端部の一部上を覆うように配されている。バンク905で規定された画素900の領域には、陽極905上に有機機能層907が積層形成されている。有機機能層907は、湿式の塗布型層であって、少なくとも有機発光層を含む。有機機能層907上およびバンク906上には、陰極908が形成されており、さらに陰極908を覆うように封止層909が積層形成されている。
【0005】
ところで、図16に示す従来技術に係る有機EL表示装置では、バンク906が陽極905の端部を覆っているため、当該部分に電流が流れ難くなり、発光領域の減少が問題となる。また、図17(a)や図17(b)に示すように、各画素920,930における有機機能層927,937の両端部分(矢印Iおよび矢印Jで指し示す部分)において、塗布ムラに起因する厚みの不均一を生じることがある。このような現象は、発光輝度ムラの原因となり、画質の向上という観点から改善が求められる。
【0006】
これに対し、特許文献3では、バンクの幅を狭くすることにより陽極との間隔をあけ、これによって上記のような課題を解決しようとする提案がされている。即ち、バンクの幅を狭くすることで陽極の端部をバンクで覆わない構成とし、当該構成により発光領域を広くするとともに、陽極上の有機機能層の厚みを均一にできるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−54286号公報
【特許文献2】特開2004−192890号公報
【特許文献3】特開2005−93421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3で提案されている技術では、バンクと陽極との間に間隔をあけたことに起因して、陽極の端部において有機機能層が段切れを生じて陽極と陰極とがショートしてしまったり、段切れを生じないまでも有機機能層の膜厚が極端に薄くなることで電界集中を生じたりするなどの問題を生じ得る。即ち、図18に示すように、陽極955の端部P91とバンク906の端部P92との間に間隔d9をあける構成の場合、陽極955の端部(矢印Kで示す部分)で陽極955と陰極908とがショートしたりすることが生じ得る。
【0009】
図18に示すように、陽極955は、アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層などの金属層9551とITO(酸化インジウムスズ)層9552との積層構造を有するが、この内、金属層9551は図示を省略しているバスバーと同一行程で形成されるため、膜厚t92をバスバーに合わせて厚膜に形成しているのが現状である。これより、従来においては、陽極955の膜厚t91が厚くなっており、それよりも膜厚t93が薄い有機機能層957aを形成するとき、矢印Kで示す部分で有機機能層が段切れを生じる。即ち、矢印Kで示す部分を境にして、有機機能層957aと有機機能層957bとの間が不連続な状態となる。この場合、段切れ部分で陽極955と陰極908とがショートするという問題が生じる。
【0010】
なお、上記のような段切れの発生を防止するという目的で、有機機能層の膜厚を厚くするということも考えられるが、このような構成を採用する場合には、陽極955と陰極908との間での電気抵抗が増大してしまう。よって、所望の輝度を得るためには、より高い電圧を印加することが必要となり、有機機能層における有機発光層の劣化が促進され、寿命の低下という問題を生じることが考えられる。
【0011】
本発明は、上記問題を解決しようとなされたものであって、発光領域が広く、且つ、発光領域内での有機機能層の膜厚が均一に維持され、且つ、有機機能層の段切れのないことから、優れた発光特性を有しながら、長寿命な有機EL表示パネルとその製造方法、および有機EL表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルは、基板と、基板の上方に配置された絶縁層と、絶縁層の上方に形成され、所定の画素の領域に対応する開口部を規定するバンクと、絶縁層の表面上に配置され、アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層を含み、当該アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層の表面部を所定の反射率を有する反射部とした第1電極と、第1電極の上面に形成され、有機発光層を少なくとも含む有機機能層と、有機機能層の上方に配置され、有機機能層から上方へ照射された光と、有機機能層から下方に照射された光であって第1電極の反射部で反射された光と、を透過する第2電極と、を含む。そして、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、第1電極は、バンクの開口部内において、その端部が開口部を臨むバンクの端部から離間して配置され、第1電極に含まれるアルミニウム層若しくはアルミニウム合金層の膜厚は、40[nm]以上200[nm]以下の所定の膜厚であり、有機機能層は、第1電極の所定の膜厚以上の膜厚であり、第1電極の上面から端部の側面にわたって形成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、第1電極におけるアルミニウム層若しくはアルミニウム合金層(以下、「金属層」と記載する。)の膜厚を40[nm]以上200[nm]以下の所定の膜厚とし、これにより、第1電極の金属層の表面部分が、有機機能層における有機発光層から照射された光に対して所定の反射率を有する反射部となる。即ち、第1電極における金属層の膜厚を40[nm]未満とする場合には、有機機能層における有機発光層から下方に照射された光の第2電極へ反射する光量が減少し、発光効率の低下を招くが、第1電極における金属層の膜厚を40[nm]以上とすることにより、高い発光効率を得ることができる。
【0014】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、有機機能層の膜厚を、第1電極の所定膜厚以上の膜厚とし、且つ、第1電極の上面から端部の側面にわたって有機機能層が形成されている構成を採用する。このため、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、第1電極に対する有機機能層の膜厚および第1電極に対する有機機能層の形成形態を採用することにより、有機機能層の膜厚を必要以上に厚くする必要はなく、第1電極と第2電極との間での電気抵抗の増大による寿命低下という問題を生じることはなく、また、第1電極の端部における有機機能層の段切れや極端な薄膜化を招くことがない。
【0015】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、第1電極の端部と、開口部を臨むバンクの端部とを相互に離間させているので、発光領域を広くできるとともに、上記特許文献3で提案されている技術と同様に、第1電極上の有機機能層の厚みを均一化することができる。よって、発光特性が優れる。
【0016】
以上より、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、発光領域が広く、且つ、発光領域内での有機機能層の膜厚が均一に維持され、且つ、有機機能層の段切れの発生がない。従って、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルは、優れた発光特性を有しながら、長寿命である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態1に係る有機EL表示装置1の構成を示す模式ブロック構成図である。
【図2】有機EL表示パネル10の一部構成を示す模式断面端面図である。
【図3】有機EL表示パネル10の一部構成を示す模式断面端面図である。
【図4】有機EL表示パネル10の一部構成を抜き出して示す模式平面図である。
【図5】有機EL表示パネル10における陽極105の端部付近を示す模式断面端面図である。
【図6】(a)は、実施の形態1に係る有機EL表示パネル10における陽極105と有機機能層107との相互の配置関係を示す模式断面端面図であり、(b)は、比較例に係る有機EL表示パネルにおける陽極955と有機機能層957との相互の配置関係を示す模式断面端面図である。
【図7】金属層1051の膜厚毎の光の波長と反射率との関係を示す特性図である。
【図8】発光色毎の金属層1051の膜厚と反射率との関係を示す特性図である。
【図9】(a)は、有機機能層107が2層構造である場合の膜厚t3を定義するために用いる模式断面図であり、(b)は、有機機能層117が3層構造である場合の膜厚t13を定義するために用いる模式断面図であり、(c)は、有機機能層127に含まれる電荷注入層1271の膜厚t232を定義するために用いる模式断面図である。
【図10】(a)〜(d)は、有機EL表示パネル10の製造工程の一部を示す模式工程図である。
【図11】(a)〜(c)は、有機EL表示パネル10の製造工程の一部を示す模式工程図である。
【図12】(a),(b)は、有機EL表示パネル10の製造工程の一部を示す模式工程図である。
【図13】実施の形態2に係る有機EL表示パネル30の一部構成を示す模式断面端面図である。
【図14】実施の形態3に係る有機EL表示パネル40の一部構成を抜き出して示す模式平面図である。
【図15】有機EL表示パネル40の一部構成を示す模式断面端面図である。
【図16】従来技術に係る有機EL表示パネルの一部構成を示す模式断面端面図である。
【図17】(a),(b)は、従来技術で問題となる有機機能層927,937の端部断面形状を示す模式断面端面図である。
【図18】改良に係る従来技術で問題となる陽極955の端部付近での有機機能層957の端部断面形状を示す模式断面端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[本発明の態様]
本発明の一態様に係る有機EL表示パネルは、基板と、基板の上方に配置された絶縁層と、絶縁層の上方に形成され、所定の画素の領域に対応する開口部を規定するバンクと、絶縁層の表面上に配置され、アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層を含み、当該アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層の表面部を所定の反射率を有する反射部とした第1電極と、第1電極の上面に形成され、有機発光層を少なくとも含む有機機能層と、有機機能層の上方に配置され、有機機能層から上方へ照射された光と、有機機能層から下方に照射された光であって第1電極の反射部で反射された光と、を透過する第2電極と、を含む。そして、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、第1電極は、バンクの開口部内において、その端部が開口部を臨むバンクの端部から離間して配置され、第1電極に含まれるアルミニウム層若しくはアルミニウム合金層の膜厚は、40[nm]以上200[nm]以下の所定の膜厚であり、有機機能層は、第1電極の所定の膜厚以上の膜厚であり、第1電極の上面から端部の側面にわたって形成されている。
【0019】
なお、本明細書では、第1電極における周囲の縁部を「端部」と呼称している。
本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、第1電極におけるアルミニウム層若しくはアルミニウム合金層(以下、「金属層」と記載する。)の膜厚を40[nm]以上200[nm]以下の所定の膜厚とし、これにより、第1電極の金属層の表面部分が、有機機能層における有機発光層から下方に照射された光に対して所定の反射率を有する反射部となる。即ち、第1電極における金属層の膜厚を40[nm]未満とする場合には、有機機能層における有機発光層から照射された光の第2電極へ反射する光量が減少し、発光効率の低下を招くが、第1電極における金属層の膜厚を40[nm]以上とすることにより、高い発光効率を得ることができる。
【0020】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、有機機能層の膜厚を、第1電極の所定膜厚以上の膜厚とし、且つ、第1電極の上面から端部の側面にわたって有機機能層が形成されている構成を採用する。このため、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、第1電極に対する有機機能層の膜厚および第1電極に対する有機機能層の形成形態を採用することにより、有機機能層の膜厚を必要以上に厚くする必要はなく、第1電極と第2電極との間での電気抵抗の増大による寿命低下という問題を生じることはなく、また、第1電極の端部における有機機能層の段切れや極端な薄膜化を招くことがない。
【0021】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、第1電極の端部と、開口部を臨むバンクの端部とを相互に離間させているので、発光領域を広くできるとともに、第1電極上の有機機能層の厚みを均一化することができる。よって、発光特性が優れる。
【0022】
以上より、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、発光領域が広く、且つ、発光領域内での有機機能層の膜厚が均一に維持され、且つ、有機機能層の段切れの発生がない。従って、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルは、優れた発光特性を有しながら、長寿命である。
【0023】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、上記構成において、第1電極が、金属層(アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層)の上面に設けられた透明導電層を有する、という構成を採用することもできる。これにより、製造工程中などで金属層の表面部の反射率が低下するのを防止することができ、また、キャビティ設計における自由度を高くすることができる。
【0024】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、上記構成において、第1電極に含まれる金属層(アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層)の膜厚が43[nm]以上200[nm]以下の所定の膜厚である、という構成を採用することもできる。このように、金属層の膜厚を43[nm]以上とすることにより、有機機能層の段切れの発生を防止しながら、金属層の表面部における反射率を高く維持することができる。具体的には、金属層の表面部における反射率を89[%]以上の安定した値とすることができる。よって、この構成を採用する場合には、光学特性に更に優れたものとすることができる。
【0025】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、上記構成において、第1電極に含まれる金属層(アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層)の膜厚が40[nm]以上120[nm]以下の所定の膜厚である、という構成を採用することもできる。先ず、金属層の膜厚の上限を120[nm]と規定することにより、金属層の表面部における反射率を低下させることなく、第1電極全体での膜厚を更に薄くすることができ、端部における有機機能層の段切れの発生を更に効果的に防止することができる。よって、上記構成を採用する場合には、第1電極と第2電極とのショートをより確実に防止することができる。
【0026】
なお、金属層を含む第1電極の膜厚を厚くし、これに連動して有機機能層の膜厚も厚くした場合には、上記のように、第1電極と第2電極との間での電気抵抗が増大し、この間に流れる電流量が低下する。このため、このような構成を採用すると、有機発光層における発光量が第1電極と第2電極との間隔の増大に反して、低下する。特に、第1電極における金属層の膜厚を120[nm]よりも厚くし、第1電極の膜厚もこれに伴い厚くする場合には、有機発光層における発光量の低下が、有機発光デバイスとして使用できない程度まで大きくなる。
【0027】
これに対して、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、第1電極の金属層の膜厚を120[nm]以下としているので、有機機能層の膜厚もこれに伴い薄くすることができ、第1電極と第2電極との間に印加する電圧を低減することができ、その結果、有機発光デバイスとしての消費電力を抑えることができる。そして、このように印加電圧を低減する場合にも、大きな電流が流れるので、有機発光デバイスとして優れた発光性能を有する。よって、優れた発光特性を有しながら、長寿命であるという効果を得ることができる。
【0028】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、上記構成において、第1電極に含まれる金属層(アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層)の膜厚が43[nm]以上120[nm]以下の所定の膜厚である、という構成を採用することもできる。上記構成を採用する場合には、第1電極における金属層の表面部での反射率を89[%]以上の高い値で安定させることができる。その結果、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、優れた光学特性を有する。また、金属層の膜厚を上記範囲とすることに伴い、第1電極の膜厚もこれに伴って更に薄くすることでき、有機機能層の段切れの発生を防止しながら、第1電極と第2電極との間に印加する電圧を低減することができる。
【0029】
よって、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、優れた光学特性を有し、更に長寿命である。
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、上記構成において、第1電極に含まれる金属層(アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層)の膜厚が50[nm]以上100[nm]以下の所定の膜厚である、という構成を採用することもできる。この構成を採用する場合には、第1電極の膜厚を金属層の膜厚に伴って極力薄くすることができ、且つ、金属層の膜厚が100[nm]を超える第1電極を採用する場合と同等の反射率を確保することができる。よって、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、優れた光学特性を有し、且つ、有機機能層の膜厚を更に薄くすることができるので、第1電極と第2電極との間に印加する電圧を低減することができる。
【0030】
以上より、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、優れた光学特性を有し、更に長寿命であるという効果を有する。
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、上記構成において、有機機能層が、第1電極上に形成された電荷注入層あるいは電荷輸送層の少なくとも一方を含み、第1電極上に形成された電荷注入層あるいは電荷輸送層の少なくとも一方の膜厚が第1電極の所定の膜厚以上の膜厚であり、第1電極の上面から端部の側面にわたって形成されている、という構成を採用することもできる。このように、有機機能層に電荷注入層あるいは電荷輸送層の少なくとも一方を含む構成を採用する場合には、電荷注入性に優れ、優れた発光特性を有することができる。そして、電荷注入層あるいは電荷輸送層が第1電極の上面から端部の側面にわたって形成されているので、第1電極の端部での有機機能層の段切れが確実に防止でき、第1電極と第2電極とのショートを防止することができる。
【0031】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、上記構成において、有機機能層が、第1電極上に形成された電荷注入層あるいは電荷輸送層の少なくとも一方の層の上方に有機発光層を設けた層である、という構成を採用することもできる。
【0032】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、上記構成において、有機機能層が、電荷注入層、電荷輸送層および有機発光層を含む層であり、電荷注入層が第1電極上に形成され、電荷注入層の膜厚が第1電極の所定の膜厚以上の膜厚であり、第1電極の上面から端部の側面にわたって形成されている、という構成を採用することもできる。
【0033】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、上記構成において、第1電極の端部の側面と基板とがなす内角が90[°]以下である、という構成を採用することもできる。この構成を採用する場合には、第1電極の上方に配置された有機機能層が、第1電極の端部で段切れを発生するのを、より確実に防止することができるようになり、第1電極と第2電極との間でのショートの発生を確実に防止することができる。
【0034】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、第1電極の端部を開口部を臨むバンクの端部から離間させて配置しているので、バンク近傍での有機膜の塗布状態が不安定になることが考えられるが、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、当該領域の下方には第1電極が存在しないため、発光しない領域(非発光領域)となる。よって、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、発光領域において、塗布形状のバラツキが少なく、膜厚を含む膜状態が均一な有機機能層を有し、画素内での輝度ムラが少なく、長寿命であるという効果を得ることができる。
【0035】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、上記所定の画素の領域が、画素毎の領域であり、バンクが、上記開口部を画素毎に規定する、という構成を採用することができる。即ち、所謂、ピクセルバンク構成を一例として採用することができる。
【0036】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、上記所定の画素の領域が、複数の画素がライン状に配列された領域であり、バンクが、上記開口部をライン状に配列された複数の画素毎に規定する、という構成を採用することもできる。即ち、所謂、ラインバンク構成を一例として採用することもできる。
【0037】
本発明の一態様に係る有機EL表示装置は、上記のいずれかの有機EL表示パネルを具備したことを特徴とする。よって、本発明の一態様に係る有機EL表示装置においても、上記同様の理由より、優れた発光特性を有しながら、長寿命である。
【0038】
本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法では、次の工程を含む。
(第1工程)基板を準備する。
(第2工程)基板の上方に絶縁膜を配置する。
【0039】
(第3工程)金属層(アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層)を含み、当該金属層(アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層)の表面部を所定の反射率を有する反射部とした第1電極を、絶縁層の表面上に配置する。
【0040】
(第4工程)絶縁膜の上方に、所定の画素の領域に対応する開口部を規定するバンクを形成する。
(第5工程)有機発光層を少なくとも含む有機機能層を、第1電極の上面から端部の側面にわたって、第1電極の所定の膜厚以上の膜厚に形成する。
【0041】
(第6工程)有機発光層から上方へ照射された光と、有機発光層から下方に照射された光であって第1電極の反射部で反射された光とを、透過する第2電極を前記有機発光層の上方に配置する。
【0042】
本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法では、上記において、第1電極は、バンクの開口部内において、その端部が開口部を臨むバンクの端部から離間して配置し、第1電極に含まれる金属層(アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層)の膜厚が40[nm]以上200[nm]以下の所定の膜厚である、という構成を採用することを特徴とする。
【0043】
本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法では、金属層(アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層)の膜厚を40[nm]以上200[nm]以下の所定の膜厚とし、これにより、その表面部分が、有機機能層における有機発光層から照射された光に対して所定の反射率を有する反射部となる第1電極を形成する。金属層の膜厚を40[nm]以上とすることにより、表面部における反射部が高い発光効率を有する第1電極を形成することができる。
【0044】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法では、有機機能層の膜厚を、第1電極の所定膜厚以上の膜厚とし、且つ、第1電極の上面から端部の側面にわたって有機機能層を形成することとしている。このため、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法を用いる場合、製造された有機EL表示パネルは、第1電極に対する有機機能層の膜厚および第1電極に対する有機機能層の形成形態を採用することにより、有機機能層の膜厚を必要以上に厚くする必要はなく、第1電極と第2電極との間での電気抵抗の増大による寿命低下という問題を生じることはなく、また、第1電極の端部における有機機能層の段切れや極端な薄膜化を招くことがない。
【0045】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法では、第1電極の端部と、開口部を臨むバンクの端部とが相互に離間するようにしているので、発光領域を広くすることができ、第1電極上の有機機能層の厚みが均一な有機EL表示パネルを製造することができる。よって、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法を用い製造された有機EL表示パネルは、発光特性が優れる。
【0046】
以上より、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法では、発光領域が広く、且つ、発光領域内での有機機能層の膜厚が均一に維持され、且つ、有機機能層の段切れの発生がなく、製造された有機EL表示パネルは、優れた発光特性を有しながら、長寿命である。
【0047】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法では、上記第3工程において、第1電極が、金属層(アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層)の上面に透明導電層を設けて形成される、という構成を採用することができる。これにより、製造工程中などで金属層の表面部の反射率が低下するのを防止することができ、また、キャビティ設計における自由度を高くすることができる。
【0048】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法では、上記第3工程において、ウェットエッチングにより、所定の形状にパターニングされた第1電極を形成することにより、第1電極の端部の側面と基板とがなす内角を90[°]以下にする、という構成を採用することもできる。ウェットエッチングは、等方性エッチングであるため、ウェットエッチングにより第1電極をパターニングする場合には、第1電極の端部の側面と基板とがなす内角を90[°]以下とすることに好適である。
【0049】
上記のようにウェットエッチングにより第1電極のパターニングを行う場合には、第1電極の端部の側面と基板とがなす内角を90[°]以下とすることにより、第1電極の上方に配置された有機機能層が、第1電極の端部で段切れを発生するのを、より確実に防止することができるようになる。よって、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法では、第1電極と第2電極との間でのショートの発生が確実に防止された有機EL表示パネルを製造することができる。
【0050】
なお、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法では、上記ウェットエッチング以外にも、ドライエッチングを用いることができることはいうまでもない。
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法では、上記構成において、有機機能層を、インクジェット法、ダイコート法、スピンコート法のいずれかの湿式塗布方法で形成する、という構成を採用することもできる。インクジェット法、ダイコート法、スピンコート法などの湿式塗布方法は、連続した有機機能層を大面積に形成することができる方法である。このため、これら方法の何れかを用い有機機能層を形成する場合には、第1電極の端部での段切れを防止しながら、第1電極上での膜厚が均一な有機機能層を形成するのに好適である。
【0051】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法では、上記構成において、有機機能層が、第1電極上に形成された電荷注入層あるいは電荷輸送層の少なくとも一方を含み、第1電極上に形成された電荷注入層あるいは電荷輸送層の少なくとも一方の膜厚が第1電極の所定の膜厚以上の膜厚であり、第1電極の上面から端部の側面にわたって形成されている、という構成を採用することもできる。このように、有機機能層に電荷注入層あるいは電荷輸送層の少なくとも一方を含む構成を採用する場合には、電荷注入性に優れ、優れた発光特性を有することができる。そして、電荷注入層あるいは電荷輸送層が第1電極の上面から端部の側面にわたって形成されているので、第1電極の端部での有機機能層の段切れが確実に防止でき、第1電極と第2電極とのショートを防止することができる。
【0052】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法では、上記構成において、有機機能層が、電荷注入層あるいは電荷輸送層の少なくとも一方の層の上方に有機発光層を設けた層である、という構成を採用することもできる。
【0053】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法では、上記構成において、有機機能層が、電荷注入層、電荷輸送層及び有機発光層を含む層であり、電荷注入層が第1電極上に形成され、電荷注入層の膜厚が第1電極の所定の膜厚以上の膜厚であり、電荷注入層が第1電極の上面から端部の側面にわたって形成されている、という構成を採用することもできる。
【0054】
以下では、本発明を実施するための形態について、数例を用い説明する。
なお、以下の説明で用いる実施の形態は、本発明の構成および作用・効果を分かりやすく説明するために用いる例示であって、本発明は、その本質的部分以外に何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0055】
[実施の形態1]
1.有機EL表示装置1の全体構成
以下では、発光装置の一例としての有機EL表示装置1で説明する。
【0056】
本実施の形態に係る有機EL表示装置1の全体構成について、図1を用い説明する。
図1に示すように、有機EL表示装置1は、有機EL表示パネル10と、これに接続された駆動制御部20とを有し構成されている。有機EL表示パネル10は、有機材料の電界発光現象を利用したパネルであり、複数の有機EL素子が、例えば、マトリクス状に配列され構成されている。駆動制御部20は、4つの駆動回路21〜24と制御回路25とから構成されている。
【0057】
なお、実際の有機EL表示装置1では、表示パネル10に対する駆動制御部20の配置については、これに限られない。
2.有機EL表示パネル10の構成
有機EL表示パネル10の構成について、図2、図3および図4を用い説明する。図2は、有機EL表示パネル10の構成の一部を、図1におけるY軸方向に切断した断面端面図であって、図4におけるC−C‘断面の端面を示す。一方、図3は、有機EL表示パネル10の構成の一部を、図1におけるX軸方向に切断した断面端面図であって、図4におけるD−D’断面の端面を示す。
【0058】
なお、図4では、陽極105とバンク106との関係を分かりやすくするため、他の構成要素の図示を省略している。
先ず、図2に示すように、有機EL表示パネル10は、基板101をベースとして形成されている。そして、基板101上には、TFT(薄膜トランジスタ)層102、パッシベーション膜103および平坦化膜104が順に積層形成されている。なお、図2では、TFT層102について、その構成の一部であるソースあるいはドレイン(SD電極)のみを図示している。
【0059】
絶縁層である平坦化膜104上には、画素に対応する開口部を規定するバンク106が形成されている。また、平坦化膜104上におけるバンク106で規定された画素領域には、陽極105が形成されている。陽極105は、平坦化膜104の側から順に、金属層1051および透明導電層1052が積層され構成されている。陽極105は、平坦化膜104に開けられたコンタクトホール104a内にも連続して形成され、TFT層102のSD電極と接続されている。
【0060】
陽極105における金属層1051は、アルミニウム(Al)若しくはアルミニウム合金(Al合金)からなる層であり、透明導電層1052は、ITO(酸化インジウムスズ)若しくはIZO(酸化インジウム亜鉛)からなる層である。
【0061】
有機EL表示パネル10におけるバンク106と陽極105との配置関係を、図4を用い説明する。
図4に示すように、有機EL表示パネル10におけるバンク106は、所謂、ピクセルバンクと呼称されるものであって、X軸方向に延伸する要素106aとY軸方向に延伸する要素106bとが一体に形成されている。バンク106で規定される各開口部が一画素に該当し、陽極105が各開口部内に配されている。なお、各画素における陽極105は、コンタクトホール104aを介してTFT層102のSD電極に接続されている。
【0062】
図2に戻って、陽極105上には、有機機能層107が積層形成されている。有機機能層107は、少なくとも有機発光層を含む層であって、その他に電荷注入層、電荷輸送層あるいは電荷注入輸送層などを含むものであってもよい。
【0063】
図2の矢印A部分に示すように、本実施の形態に係る有機EL表示パネル10では、陽極105の端部が、開口部を臨むバンク106の端部から離間した状態となっており、当該離間部分では、平坦化膜104の表面に接する状態で有機機能層107が形成されている。
【0064】
有機機能層107上には、陰極108が形成されている。陰極108は、有機EL表示パネル10における全ての画素にわたり共通に設けられており、バンク106上にも形成されている。陰極108の上には、封止層109が形成されている。
【0065】
図3に示すように、有機EL表示パネル10では、図4のD−D‘断面についても、コンタクトホール104aがないことを除いて、図2に示すC−C’断面と基本的に同一の構成を有する。そして、図3の矢印B部分に示すように、D−D‘断面においても、陽極105の端部が、開口部を臨むバンク106の端部から離間した状態となっている。そして、図2および図3に示すように、各画素における陽極105が形成された領域が発光領域100であり、バンク106が形成された領域を含むその他の領域が非発光領域150である。
【0066】
有機EL表示パネル10では、陽極105からホールが供給され、陰極108から電子が注入され、これらが有機機能層107へと送り込まれ、有機発光層で再結合することで光が出射される。有機機能層107の有機発光層から出射された光には、陰極108の側へと向かう成分と、陽極105の側へと向かう成分とが含まれる。陽極105の側へと向かった光成分は、陽極105における金属層1051におけるZ軸上側の表面および表層部分で反射されて陰極108の側へと向かうことになる。このように、陽極105における金属層1051の表面部は、所定の反射率を有する反射部としての役割も果たす。
【0067】
3.有機EL表示パネル10を構成する主要材料
a)基板101
基板101は、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラス、石英、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、シリコーン系樹脂、又はアルミナ等の絶縁性材料をベースとして形成されている。
【0068】
b)平坦化膜104
平坦化膜104は、例えば、ポリイミド、ポリアミド、アクリル系樹脂材料などの有機化合物を用い形成されている。
【0069】
c)陽極105における金属層1051
陽極105における金属層1051は、上記のように、アルミニウム(Al)またはアルミニウム(Al)合金を用い形成されている。そして、トップエミッション型の本実施の形態に係る有機EL表示パネル10の場合には、その表面部が高い反射性を有することが好ましい。
【0070】
d)陽極105における透明導電層1052
陽極105における透明導電層1052は、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)やIZO(酸化インジウム亜鉛)などの透明導電材料を用い形成されている。
【0071】
e)バンク106
バンク106は、樹脂等の有機材料を用い形成されており絶縁性を有する。バンク106の形成に用いる有機材料の例としては、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等があげられる。バンク106は、有機溶剤耐性を有することが好ましい。さらに、バンク106は、製造工程中において、エッチング処理、ベーク処理など施されることがあるので、それらの処理に対して過度に変形、変質などをしないような耐性の高い材料で形成されることが好ましい。また、撥水性をもたせるために、表面をフッ素処理することもできる。
【0072】
なお、バンク106を親液性の材料を用い形成した場合には、バンク106の表面と有機機能層107の表面との親液性/撥液性の差異が小さくなり、有機機能層107中の有機発光層を形成するために有機物質を含んだインクを、バンク106が規定する開口部内に選択的に保持させることが困難となってしまうためである。
【0073】
さらに、バンク106の構造については、図2および図3に示すような一層構造だけでなく、二層以上の多層構造を採用することもできる。この場合には、層毎に上記材料を組み合わせることもできるし、層毎に無機材料と有機材料とを用いることもできる。
【0074】
f)有機機能層107
有機機能層107中に含まれる有機発光層は、上述のように、ホールと電子とが注入され再結合されることにより励起状態が生成され発光する機能を有する。有機発光層の形成に用いる材料は、湿式印刷法を用い製膜できる発光性の有機材料を用いることが必要である。
【0075】
具体的には、例えば、特許公開公報(日本国・特開平5−163488号公報)に記載のオキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、アンスラセン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体などの蛍光物質で形成されることが好ましい。
【0076】
なお、有機機能層107には、有機発光層よりも陽極105側に介挿された電荷注入層が含まれることもある。この場合、電荷注入層の構成材料としては、例えば、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの導電性ポリマー材料を採用することができる。
【0077】
g)陰極108
陰極108は、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)若しくはIZO(酸化インジウム亜鉛)などを用い形成される。本実施の形態のように、トップエミッション型の有機EL表示パネル10の場合においては、光透過性の材料で形成されることが好ましい。光透過性については、透過率が80[%]以上とすることが好ましい。
【0078】
陰極108の形成に用いる材料としては、上記の他に、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらのハロゲン化物を含む層の構造、あるいは、前記いずれかの層に銀を含む層とをこの順で積層した構造を用いることもできる。上記において、銀を含む層は、銀単独で形成されていてもよいし、銀合金で形成されていてもよい。また、光取出し効率の向上を図るためには、当該銀を含む層の上から透明度の高い屈折率調整層を設けることもできる。
【0079】
h)封止層109
封止層109は、有機機能層107中の有機発光層などが水分に晒されたり、空気に晒されたりすることを抑制する機能を有し、例えば、SiN(窒化シリコン)、SiON(酸窒化シリコン)などの材料を用い形成される。
【0080】
また、SiN(窒化シリコン)、SiON(酸窒化シリコン)などの材料を用い形成された層の上に、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などの樹脂材料からなる封止樹脂層を設けてもよい。
【0081】
封止層109は、トップエミッション型である本実施の形態に係る有機EL表示パネル10の場合においては、光透過性の材料で形成されることが好ましい。
4.陽極105とバンク106および有機機能層107との関係
陽極105とバンク106および有機機能層107との関係について、図5および図6を用い説明する。
【0082】
図5に示すように、本実施の形態に係る有機EL表示パネル10では、陽極105の端部P1が、開口部を臨むバンク106の端部P2から間隔d1だけ離間した状態で配されている。この状態は、バンク106の幅を狭くすることにより実現されている。そのため、有機EL表示パネル10では、図16に示す従来技術に係る有機EL表示パネルに比べて開口部を広くすることができ、優れた発光特性を有する。これは、間隔d1の部分では有機機能層107の直下に陽極105は形成されていないものの、有機機能層107には、陽極105の端部と陰極108の間(図5における二点鎖線で囲んで示す部分)に生じた電界により、光が出射するためである。
【0083】
また、間隔d1だけ離間した部分では、有機機能層107が平坦化膜104上に形成されることになり、このため、図17(a)および図17(b)に示すような、陽極105上における有機機能層107の膜厚不均一という問題を生じない。
【0084】
陽極105における金属層1051の膜厚t2は、有機機能層107における有機発光層から照射された光を陰極108の側へと反射するための反射率が所定値以上となるように設定されている。具体的な膜厚t2は、40[nm]以上200[nm]以下の範囲内であり、望ましくは、下限値が43[nm]であり、上限値が120[nm]であり、さらに望ましくは、下限値が50[nm]であり、上限値が100[nm]である。例えば、膜厚t2の所定範囲の下限値を43[nm]とする場合には、後述する図8に例示するように、89[%]以上の安定した反射率を得ることができる。
【0085】
また、本実施の形態では、有機機能層107の膜厚t3が、陽極105の膜厚t1以上の膜厚に設定されており、陽極105の上面105aから端部側面105bにわたって形成されている。前記のような膜厚t1,t3の関係を採用することにより、矢印E部分に示すように、有機機能層107が、陽極105の端部で段切れや極端に薄肉となることがない。
【0086】
有機機能層107の段切れ防止について、図6(a)および図6(b)を用い説明する。図6(a)は、本実施の形態に係る陽極105と有機機能層107とを模式的に図示したものであり、図6(b)は、比較例に係る陽極955と有機機能層957とを模式的に図示したものである。
【0087】
先ず、図6(a)に示すように、本実施の形態のように、有機機能層107の膜厚t3が、陽極105の膜厚t1以上の膜厚に設定されている場合には、陽極105の上面105aから端部側面105bにわたって有機機能層107が形成されることになる。なお、上記のように、陽極105の金属層1051の膜厚t2が、反射率との関係で上記数値範囲内とすることが必要であるので、有機機能層107の膜厚t3は、金属層1051の膜厚t2を含む陽極105の膜厚t1との相対的な関係で規定される。
【0088】
また、図6(a)に示すように、陽極105における端部側面105bと基板101および平坦化膜104の上面とがなす内角θは、90[°]以下になっている。これによっても、矢印F部分において、有機機能層107に段切れなどを生じない。
【0089】
以上より、図6(a)の矢印F部分に示すように、有機機能層107が陽極105の端部で段切れなどを生じることがない。
次に、図6(b)に示すように、比較例においては、陽極955上における有機機能層957の膜厚t93は、陽極955の膜厚t91よりも薄い関係となっている。従来技術では、陽極955が、金属層9551を含めて、図示を省略しているバスバーと同一の工程で形成することに起因して、金属層9551の膜厚t92および陽極955の膜厚t91が厚くなっている。よって、図6(b)に示すように、有機機能層957は、矢印G部分(陽極955の端部)で段切れを発生することがある。そして、有機機能層957が段切れを生じ、陽極955の上面955a上の有機機能層957aと、陽極955の端部側面955bを覆う有機機能層957bとが連続せず、陽極955の透明導電層9552が、矢印G部分で陰極(図6(b)では、図示を省略。)とがショートすることになる。
【0090】
5.有機EL表示パネル10およびこれを備える有機EL表示装置1が有する主な効果
本実施の形態に係る有機EL表示パネル10では、第1電極である陽極105の金属層1051(アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層)の膜厚t2(図5などを参照。)を、40[nm]以上の所定の膜厚とし、これにより、陽極105の金属層1051の表面部分が、有機機能層107における有機発光層から照射された光に対して所定の反射率を有する反射部となる。即ち、陽極105における金属層1051の膜厚t2を40[nm]未満とする場合には、有機機能層107における有機発光層から照射された光の陰極108側へ反射する光量が減少し、発光効率の低下を招くが、本実施の形態のように、陽極105における金属層1051の膜厚t2を40[nm]以上とすることにより、高い発光効率を得ることができる。
【0091】
また、本実施の形態に係る有機EL表示パネル10では、有機機能層107の膜厚t3を、陽極105の膜厚t1以上とし(図5などを参照。)、且つ、陽極105の上面105aから端部側面105bにわたって有機機能層107が形成されている構成を採用する(図6(a)を参照)。このため、有機EL表示パネル10では、陽極105に対する有機機能層107の膜厚t3および陽極105に対する有機機能層107の上記のような形成形態を採用することにより、有機機能層107の膜厚t3を必要以上に厚くする必要はなく、陽極105と陰極108との間での電気抵抗の増大による寿命低下という問題を生じることはなく、また、陽極105の端部における有機機能層107の段切れや極端な薄膜化を招くことがない(図5および図6(a)を参照)。なお、陽極105における金属層1051の膜厚t2を、上記段切れ防止のための陽極105の膜厚t1の低減に伴って低減することができ、具体的には、200[nm]以下、望ましくは120[nm]以下、更に望ましくは100[nm]以下とすることができる。
【0092】
また、図2、図3および図5などに示すように、有機EL表示パネル10では、陽極105の端部P1と、開口部を臨むバンク106の端部P2とを相互に離間させているので、発光領域を広くできるとともに、陽極105上の有機機能層107の厚みを均一化することができる。よって、発光特性が優れる。
【0093】
以上より、本実施の形態に係る有機EL表示パネル10およびこれを備える有機EL表示装置1では、発光領域が広く、且つ、発光領域内での有機機能層107の膜厚t3が均一に維持され、且つ、有機機能層107の段切れの発生がない。従って、有機EL表示パネル10およびこれを備える有機EL表示装置1は、優れた発光特性を有しながら、長寿命である。
【0094】
6.陽極105における金属層1051の膜厚t2の最適範囲
陽極105における金属層1051の膜厚t2の最適範囲について、図7および図8を用い検討結果を説明する。図7は、横軸が金属層1051の反射率を測定する際に用いた分光光度計の測定光の波長であり、縦軸が金属層1051の反射率である。図8は、図7の測定データについて、測定した金属層1051の膜厚と、各膜厚での反射率との関係を示す図である。図8の横軸が金属層1051の膜厚であり、縦軸が金属層1051の反射率である。
【0095】
図7に示すように、金属層の膜厚が、43[nm]〜98[nm]の各サンプルでは、450[nm]〜600[nm]の波長域において、反射率が略89[%]以上となっている。
一方、金属層の膜厚が、33[nm]、35[nm]のサンプルでは、450[nm]〜600[nm]の波長域において、反射率が85[%]程度となっている。
【0096】
次に、図8に示すように、金属層の膜厚が40[nm]以上の範囲では、赤(R:λ=600[nm])、緑(G:λ=530[nm])、青(B:λ=460[nm])の全ての波長域において、反射率が88[%]以上となった。そして、金属層の膜厚が43[nm]以上の範囲では、反射率は89[%]以上となり、膜厚が50[nm]以上の範囲では、反射率は略90[%]前後となった。
【0097】
また、図8に示すように、赤(R:λ=600[nm])、緑(G:λ=530[nm])、青(B:λ=460[nm])の全ての波長域において、金属層の膜厚については、50[nm]以上の範囲であれば、反射率が略90[%]で一定の値となっている。
【0098】
なお、陽極105の金属層1051の膜厚t2に関し、その上限値は、上述のように、反射率という観点からは特に規定する必要はないが、上記のように有機機能層107の段切れ防止という観点から陽極105の膜厚t2を薄くしようとすることを考慮すると、200[nm]以下、望ましくは120[nm]以下、更に望ましくは100[nm]以下である。
【0099】
以上より、陽極105における金属層1051の膜厚t2の範囲は、40[nm]以上200[nm]以下、望ましくは、43[nm]以上200[nm]以下、あるいは40[nm]以上120[nm]以下、更に望ましくは、43[nm]以上120[nm]以下、あるいは50[nm]以上100[nm]以下の範囲である。
【0100】
7.有機機能層についての規定
上記では、有機機能層107について、少なくとも有機発光層を含むものとしているが、バリエーションを含めた規定について、図9を用い説明する。
【0101】
(1) 先ず、図9(a)に示すように、有機機能層107が電荷注入層1071と有機発光層1072との積層構造体とすることができる。この場合、陽極105における透明導電層1052に対し、電荷注入層1071が積層され、その上に有機発光層1072が積層されることになる。
【0102】
なお、この構成を採用する場合には、「有機機能層107の膜厚t3」とは、電荷注入層1071の膜厚t32と有機発光層1072の膜厚t31とを足し合わせた厚みとなる。
【0103】
(2) 次に、図9(b)に示すように、有機機能層117が電荷注入層1171、有機発光層1172および電子輸送層1173の3層構造の積層構造体とすることもできる。この場合、陽極105の膜厚t1との比較における「有機機能層117の膜厚t13」とは、電荷注入層1171の膜厚t132と有機発光層1172の膜厚t131とを足し合わせた厚みとなり、陽極105の膜厚t1との比較においては、電子輸送層1173の膜厚t133を含めないものとする。
【0104】
(3) 次に、図9(c)に示すように、有機機能層127が電荷注入層1271、電荷輸送層1274および有機発光層1272の3層構造の積層構造体とすることもできる。この場合、陽極105の膜厚t1との比較における「有機機能層127の膜厚t23」とは、電荷注入層1271の膜厚t232と電荷輸送層1274の膜厚t234と有機発光層1172の膜厚t231とを足し合わせた厚みとなる。
【0105】
なお、図9(c)における有機発光層1272に上に電子輸送層などが介挿される場合には、上記同様に、陽極105の膜厚t1との比較においては、電子輸送層の膜厚を含めないものとする。
【0106】
8.有機EL表示パネル10の製造方法
有機EL表示パネル10の製造方法について、図10から図12を用い説明する。図10から図12は、主な工程での断面端面図である。
【0107】
図10(a)に示すように、基板101を準備する。
次に、基板101の主面101a上に対し、TFT層102およびパッシベーション膜103を形成する(図10(b)を参照)。なお、図10(b)においても、上記同様に、TFT層102についてSD電極だけを図示している。
【0108】
次に、基板101の上方であるパッシベーション膜103の主面103a上に、絶縁層である平坦化膜104を形成する。なお、図10(c)に示すように、平坦化膜104に対しては、TFT層102のSD電極に相当する部分にコンタクトホール104aをあけ、当該部分のパッシベーション膜103についても住居することにより、底部にTFT層102のSD電極の表面が露出するようにする。
【0109】
次に、平坦化膜104の主面104bに対して、金属層1051形成のための膜と、透明導電層1052形成のための膜とを順に積層する。両膜は、コンタクトホール104aを囲む側壁にも形成される。そして、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、これをパターニングし、金属層1051と透明導電層1052との積層構造体である陽極105を形成する(図10(d)を参照)。ここで、パターニングには、ドライエッチングおよびウェットエッチングの何れを採用することもできるが、特にウェットエッチングを採用する場合には、ウェットエッチングが等方性エッチングであることに起因して、陽極105の端部の内角を90[°]以下にすることができるので、好適である。
【0110】
次に、陽極105が形成されずに露出した平坦化膜104の主面に対し、バンク106形成のための膜をスパッタリング法により形成する。そして、フォトリソグラフィおよびウェットエッチングにより、画素領域に対応する開口部を規定するバンク106を形成する(図11(a)を参照)。図11(a)に示すように、開口部を臨むバンク106の端部は、陽極105の端部に対し、間隔d1をあけて形成される。
【0111】
次に、陽極105の主面105aを含む、バンク106で規定された開口部内に対し、有機機能層107形成のためのインク1070を塗布する(図11(b)を参照)。このとき、バンク106の表面の撥液性に起因して、隣接する開口部間では、インク1070が連続することはない。
【0112】
次に、インク1070を乾燥することにより、バンク106で規定される開口部内に有機機能層107が形成される(図11(c)を参照)。なお、有機機能層107が、図9(a)から図9(c)に示すように、2層構造あるいは3層以上の構造を採用する場合には、各層形成のためのインク塗布と乾燥とを繰り返し実行することになる。
【0113】
次に、有機機能層107の主面107aおよびバンク106の表面を含む全体領域に対し、陰極108を形成する(図12(a)を参照)。ここで、陰極108の形成には、スパッタリング法などを用いることができる。
【0114】
次に、陰極108の表面108a上に、封止層109を積層形成する(図12(b)を参照)。
[実施の形態2]
実施の形態2に係る有機EL表示パネル30の構成について、上記実施の形態1との差異部分を中心に、図13を用い説明する。図13は、上記実施の形態1における図2で示す断面端面図に対応するものである。
【0115】
図13に示すように、本実施の形態に係る有機EL表示パネル30では、陽極305が金属層の一層構造である点で上記実施の形態1に係る有機EL表示パネル10と相違する。有機EL表示パネル30でも、陽極305の端部が、開口部を臨むバンク106の端部から離間した状態となっており、陽極305が形成された領域が発光領域300であり、他の領域が非発光領域350である。
【0116】
本実施の形態に係る有機EL表示パネル30でも、陽極305の膜厚は40[nm]以上200[nm]以下の範囲内に設定され、また、有機機能層107の膜厚が陽極305の膜厚よりも厚くなっている。そして、有機機能層107は、陽極305の上面から端部側面にわたって形成されている。
【0117】
以上より、本実施の形態に係る有機EL表示パネル30およびこれを備える有機EL表示装置でも、上記有機EL表示パネル10および有機EL表示装置1と同様の効果を有する。
【0118】
[実施の形態3]
実施の形態3に係る有機EL表示パネル40の構成について、上記実施の形態1との差異部分を中心に、図14および図15を用い説明する。図14は、上記実施の形態1における図4に示す平面図に対応するものであり、図15は、図2で示す断面端面図に対応するものである。
【0119】
図14に示すように、本実施の形態に係る有機EL表示パネル40は、バンク406が、所謂、ラインバンク構造を有する点に特徴がある。即ち、図14に示すように、バンク406は、Y軸方向に延伸する複数条の要素により構成されている。複数条の要素は、端部において互いに連続していてもよいし、逆に、各々が分離した状態となっていてもよい。
【0120】
図15は、図14における有機EL表示パネル40の一部をH−H‘断面の端面を示す模式断面端面図である。図15に示すように、有機EL表示パネル40では、ラインバンク構造のバンク406(図14を参照。)を採用するため、Y軸方向における隣接画素間には、バンク406が介挿されない。
【0121】
図15に示すように、本実施の形態においても、陽極105の上面から端部側面にわたって有機機能層407が形成されており、その上に陰極408および封止層409が順に積層形成されている。よって、有機EL表示パネル40においても、陽極105が形成された領域が発光領域400であり、その他の領域が非発光領域450である。
【0122】
なお、有機EL表示パネル40について、図14のX軸方向の断面構造については、図示を省略しているが、当該構造は、上記実施の形態1と同様である。即ち、X軸方向においては、陽極105の端部が、開口部を臨むバンク406の端部に対して離間した状態となっている。また、本実施の形態においても、陽極105における金属層1051の膜厚は、40[nm]以上200[nm]以下の範囲内で設定されており、有機機能層407の膜厚が陽極105の膜厚よりも厚くなっている。
【0123】
以上より、本実施の形態に係る有機EL表示パネル40およびこれを備える有機EL表示装置でも、上記実施の形態1と同様の効果を有する。
[その他の事項]
上記実施の形態1,2,3では、有機機能層107,117,127,407に対して、Z軸方向の下方、即ち、基板101の側に陽極105,305を配置し、Z軸方向の上方に陰極108,408を配置することとしたが、陽極と陰極との配置関係を上下逆にすることもできる。この場合には、有機機能層において、有機発光層に対し基板101側となる領域に電子注入層や電子輸送層が配置されることになり、この場合も「有機機能層の膜厚」は、基板101の側から積算し、有機発光層を含むレベルまでの膜厚が規定される。
【0124】
また、上記実施の形態1,2,3の説明の際に用いた図1から図15については、各部のサイズについて厳密な相対値を以って示しているわけではなく、実際の構造への適用に際して適宜の変更が可能である。この場合においても、陽極における金属層の膜厚を上記範囲内で規定し、且つ、有機機能層の膜厚を陽極の膜厚よりも厚くすることは必要である。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、優れた発光特性を有しながら、長寿命な有機EL表示パネルおよび有機EL表示装置を実現するのに有用である。
【符号の説明】
【0126】
1.有機EL表示装置
10,30,40.有機EL表示パネル
20.駆動制御部
21〜24.駆動回路
25.制御回路
100,300,400.発光領域
101.基板
102.TFT層
103.パッシベーション膜
104.平坦化膜
105,305.陽極
106,406.バンク
107,117,127,407.有機機能層
108,408.陰極
109,409.封止層
150,350,450.非発光領域
1051.金属層
1052.透明導電層
1070.インク
1071,1171,1271.電荷注入層
1072,1172,1272.有機発光層
1173.電子輸送層
1274.電荷輸送層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上方に配置された絶縁層と、
前記絶縁層の上方に形成され、所定の画素の領域に対応する開口部を規定するバンクと、
前記絶縁層の表面上に配置され、アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層を含み、当該アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層の表面部を所定の反射率を有する反射部とした第1電極と、
前記第1電極の上面に形成され、有機発光層を少なくとも含む有機機能層と、
前記有機機能層の上方に配置され、前記有機機能層から上方へ照射された光と、前記有機機能層から下方に照射された光であって前記第1電極の反射部で反射された光と、を透過する第2電極と、
を含み、
前記第1電極は、前記バンクの開口部内において、その端部が前記開口部を臨む前記バンクの端部から離間して配置され、
前記第1電極に含まれるアルミニウム層若しくはアルミニウム合金層の膜厚は、40nm以上200nm以下の所定の膜厚であり、
前記有機機能層は、前記第1電極の所定の膜厚以上の膜厚であり、前記第1電極の上面から前記端部の側面にわたって形成されている、
有機EL表示パネル。
【請求項2】
前記第1電極は、前記アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層の上面に設けられた透明導電層を有する、
請求項1に記載の有機EL表示パネル。
【請求項3】
前記第1電極に含まれるアルミニウム層若しくはアルミニウム合金層の膜厚が43nm以上200nm以下の所定の膜厚である、
請求項1ないし請求項2のいずれか1項に記載の有機EL表示パネル。
【請求項4】
前記第1電極に含まれるアルミニウム層若しくはアルミニウム合金層の膜厚が40nm以上120nm以下の所定の膜厚である、
請求項1ないし請求項2のいずれか1項に記載の有機EL表示パネル。
【請求項5】
前記第1電極に含まれるアルミニウム層若しくはアルミニウム合金層の膜厚が43nm以上120nm以下の所定の膜厚である、
請求項1ないし請求項2のいずれか1項に記載の有機EL表示パネル。
【請求項6】
前記第1電極に含まれるアルミニウム層若しくはアルミニウム合金層の膜厚が50nm以上100nm以下の所定の膜厚である、
請求項1ないし請求項2のいずれか1項に記載の有機EL表示パネル。
【請求項7】
前記有機機能層は、前記第1電極上に形成された電荷注入層あるいは電荷輸送層の少なくとも一方を含み、
前記第1電極上に形成された前記電荷注入層あるいは電荷輸送層の少なくとも一方は、その膜厚が前記第1電極の所定の膜厚以上の膜厚であり、前記第1電極の上面から前記端部の側面にわたって形成されている、
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の有機EL表示パネル。
【請求項8】
前記有機機能層は、前記第1電極上に形成された前記電荷注入層あるいは電荷輸送層の少なくとも一方の層の上方に前記有機発光層を設けた層である、
請求項7に記載の有機EL表示パネル。
【請求項9】
前記有機機能層は、電荷注入層、電荷輸送層および前記有機発光層を含む層であり、
前記電荷注入層は、前記第1電極上に形成され、
前記電荷注入層は、その膜厚が前記第1電極の所定の膜厚以上の膜厚であり、前記第1電極の上面から前記端部の側面にわたって形成されている、
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の有機EL表示パネル。
【請求項10】
前記第1電極の前記端部の側面と前記基板とがなす内角が90度以下である、
請求項1ないし請求項9の何れか1項に記載の有機EL表示パネル。
【請求項11】
前記所定の画素の領域は、画素毎の領域であり、
前記バンクは、前記開口部を前記画素毎に規定する、
請求項1ないし請求項10の何れか1項に記載の有機EL表示パネル。
【請求項12】
前記所定の画素の領域は、複数の画素がライン状に配列された領域であり、
前記バンクは、前記開口部を前記ライン状に配列された複数の画素毎に規定する、
請求項1ないし請求項10の何れか1項に記載の有機EL表示パネル。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の有機EL表示パネルを具備した
有機EL表示装置。
【請求項14】
基板を準備する第1工程と、
前記基板の上方に絶縁膜を配置する第2工程と、
アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層を含み、当該アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層の表面部を所定の反射率を有する反射部とした第1電極を、前記絶縁層の表面上に配置する第3工程と、
前記絶縁膜の上方に、所定の画素の領域に対応する開口部を規定するバンクを形成する第4工程と、
有機発光層を少なくとも含む有機機能層を、前記第1電極の上面から端部の側面にわたって、前記第1電極の所定の膜厚以上の膜厚に形成する第5工程と、
前記有機発光層から上方へ照射された光と、前記有機発光層から下方に照射された光であって前記第1電極の反射部で反射された光とを、透過する第2電極を前記有機発光層の上方に配置する第6工程と、
を含み、
前記第1電極は、前記バンクの開口部内において、その端部が前記開口部を臨む前記バンクの端部から離間して配置し、前記第1電極に含まれるアルミニウム層若しくはアルミニウム合金層の膜厚が40nm以上200nm以下の所定の膜厚である、
有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項15】
前記第3工程において、前記第1電極は、前記アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層の上面に透明導電層を設けて形成される、
請求項14に記載の有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項16】
前記第3工程において、ウェットエッチングにより、所定の形状にパターニングされた前記第1電極を形成することにより、
前記第1電極の前記端部の側面と前記基板とがなす内角を90度以下にする、
請求項14ないし請求項15のいずれか1項に記載の有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項17】
前記有機機能層は、インクジェット法、ダイコート法、スピンコート法のいずれかの湿式塗布方法で形成する、
請求項14ないし請求項16のいずれか1項に記載の有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項18】
前記有機機能層は、前記第1電極上に形成された電荷注入層あるいは電荷輸送層の少なくとも一方を含み、
前記第1電極上に形成された前記電荷注入層あるいは電荷輸送層の少なくとも一方は、その膜厚が前記第1電極の所定の膜厚以上の膜厚であり、前記第1電極の上面から前記端部の側面にわたって形成されている、
請求項14ないし請求項17のいずれか1項に記載の有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項19】
前記有機機能層は、前記電荷注入層あるいは電荷輸送層の少なくとも一方の層の上方に前記有機発光層を設けた層である、
請求項18に記載の有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項20】
前記有機機能層は、電荷注入層、電荷輸送層及び前記有機発光層を含む層であり、
前記電荷注入層は、前記第1電極上に形成され、
前記電荷注入層は、その膜厚が前記第1電極の所定の膜厚以上の膜厚であり、前記第1電極の上面から前記端部の側面にわたって形成されている、
請求項14ないし請求項17のいずれか1項に記載の有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項1】
基板と、
前記基板の上方に配置された絶縁層と、
前記絶縁層の上方に形成され、所定の画素の領域に対応する開口部を規定するバンクと、
前記絶縁層の表面上に配置され、アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層を含み、当該アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層の表面部を所定の反射率を有する反射部とした第1電極と、
前記第1電極の上面に形成され、有機発光層を少なくとも含む有機機能層と、
前記有機機能層の上方に配置され、前記有機機能層から上方へ照射された光と、前記有機機能層から下方に照射された光であって前記第1電極の反射部で反射された光と、を透過する第2電極と、
を含み、
前記第1電極は、前記バンクの開口部内において、その端部が前記開口部を臨む前記バンクの端部から離間して配置され、
前記第1電極に含まれるアルミニウム層若しくはアルミニウム合金層の膜厚は、40nm以上200nm以下の所定の膜厚であり、
前記有機機能層は、前記第1電極の所定の膜厚以上の膜厚であり、前記第1電極の上面から前記端部の側面にわたって形成されている、
有機EL表示パネル。
【請求項2】
前記第1電極は、前記アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層の上面に設けられた透明導電層を有する、
請求項1に記載の有機EL表示パネル。
【請求項3】
前記第1電極に含まれるアルミニウム層若しくはアルミニウム合金層の膜厚が43nm以上200nm以下の所定の膜厚である、
請求項1ないし請求項2のいずれか1項に記載の有機EL表示パネル。
【請求項4】
前記第1電極に含まれるアルミニウム層若しくはアルミニウム合金層の膜厚が40nm以上120nm以下の所定の膜厚である、
請求項1ないし請求項2のいずれか1項に記載の有機EL表示パネル。
【請求項5】
前記第1電極に含まれるアルミニウム層若しくはアルミニウム合金層の膜厚が43nm以上120nm以下の所定の膜厚である、
請求項1ないし請求項2のいずれか1項に記載の有機EL表示パネル。
【請求項6】
前記第1電極に含まれるアルミニウム層若しくはアルミニウム合金層の膜厚が50nm以上100nm以下の所定の膜厚である、
請求項1ないし請求項2のいずれか1項に記載の有機EL表示パネル。
【請求項7】
前記有機機能層は、前記第1電極上に形成された電荷注入層あるいは電荷輸送層の少なくとも一方を含み、
前記第1電極上に形成された前記電荷注入層あるいは電荷輸送層の少なくとも一方は、その膜厚が前記第1電極の所定の膜厚以上の膜厚であり、前記第1電極の上面から前記端部の側面にわたって形成されている、
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の有機EL表示パネル。
【請求項8】
前記有機機能層は、前記第1電極上に形成された前記電荷注入層あるいは電荷輸送層の少なくとも一方の層の上方に前記有機発光層を設けた層である、
請求項7に記載の有機EL表示パネル。
【請求項9】
前記有機機能層は、電荷注入層、電荷輸送層および前記有機発光層を含む層であり、
前記電荷注入層は、前記第1電極上に形成され、
前記電荷注入層は、その膜厚が前記第1電極の所定の膜厚以上の膜厚であり、前記第1電極の上面から前記端部の側面にわたって形成されている、
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の有機EL表示パネル。
【請求項10】
前記第1電極の前記端部の側面と前記基板とがなす内角が90度以下である、
請求項1ないし請求項9の何れか1項に記載の有機EL表示パネル。
【請求項11】
前記所定の画素の領域は、画素毎の領域であり、
前記バンクは、前記開口部を前記画素毎に規定する、
請求項1ないし請求項10の何れか1項に記載の有機EL表示パネル。
【請求項12】
前記所定の画素の領域は、複数の画素がライン状に配列された領域であり、
前記バンクは、前記開口部を前記ライン状に配列された複数の画素毎に規定する、
請求項1ないし請求項10の何れか1項に記載の有機EL表示パネル。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の有機EL表示パネルを具備した
有機EL表示装置。
【請求項14】
基板を準備する第1工程と、
前記基板の上方に絶縁膜を配置する第2工程と、
アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層を含み、当該アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層の表面部を所定の反射率を有する反射部とした第1電極を、前記絶縁層の表面上に配置する第3工程と、
前記絶縁膜の上方に、所定の画素の領域に対応する開口部を規定するバンクを形成する第4工程と、
有機発光層を少なくとも含む有機機能層を、前記第1電極の上面から端部の側面にわたって、前記第1電極の所定の膜厚以上の膜厚に形成する第5工程と、
前記有機発光層から上方へ照射された光と、前記有機発光層から下方に照射された光であって前記第1電極の反射部で反射された光とを、透過する第2電極を前記有機発光層の上方に配置する第6工程と、
を含み、
前記第1電極は、前記バンクの開口部内において、その端部が前記開口部を臨む前記バンクの端部から離間して配置し、前記第1電極に含まれるアルミニウム層若しくはアルミニウム合金層の膜厚が40nm以上200nm以下の所定の膜厚である、
有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項15】
前記第3工程において、前記第1電極は、前記アルミニウム層若しくはアルミニウム合金層の上面に透明導電層を設けて形成される、
請求項14に記載の有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項16】
前記第3工程において、ウェットエッチングにより、所定の形状にパターニングされた前記第1電極を形成することにより、
前記第1電極の前記端部の側面と前記基板とがなす内角を90度以下にする、
請求項14ないし請求項15のいずれか1項に記載の有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項17】
前記有機機能層は、インクジェット法、ダイコート法、スピンコート法のいずれかの湿式塗布方法で形成する、
請求項14ないし請求項16のいずれか1項に記載の有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項18】
前記有機機能層は、前記第1電極上に形成された電荷注入層あるいは電荷輸送層の少なくとも一方を含み、
前記第1電極上に形成された前記電荷注入層あるいは電荷輸送層の少なくとも一方は、その膜厚が前記第1電極の所定の膜厚以上の膜厚であり、前記第1電極の上面から前記端部の側面にわたって形成されている、
請求項14ないし請求項17のいずれか1項に記載の有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項19】
前記有機機能層は、前記電荷注入層あるいは電荷輸送層の少なくとも一方の層の上方に前記有機発光層を設けた層である、
請求項18に記載の有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項20】
前記有機機能層は、電荷注入層、電荷輸送層及び前記有機発光層を含む層であり、
前記電荷注入層は、前記第1電極上に形成され、
前記電荷注入層は、その膜厚が前記第1電極の所定の膜厚以上の膜厚であり、前記第1電極の上面から前記端部の側面にわたって形成されている、
請求項14ないし請求項17のいずれか1項に記載の有機EL表示パネルの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−249089(P2011−249089A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119751(P2010−119751)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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