説明

有機EL表示装置

【課題】有機EL素子を形成した基板の該有機EL素子を単独で点灯検査可能として製造歩留まりを向上させる。
【解決手段】封止基板側に表示部有機EL素子18と検査部有機EL素子19を形成し、検査時には点灯検査電源端子7と共通電極10間に点灯検査電源を接続する。TFT基板と貼り合わせた後には、電源配線24に印加される駆動電源からの電流は検査部有機EL素子19のダイオード作用で他の画素への流入が阻止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子を用いた有機EL表示装置に係り、特に有機EL素子の良否検査を封止前に可能として歩留まりを向上させた有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電流制御型の発光素子を用いた表示装置(以下、ディスプレイとも称する)として、エレクトロルミネッセンス(EL)や注入型発光ダイオードを用いた構造が知られている。その中でも、有機材料を発光層とした電流制御型EL(電荷注入型EL、以下有機発光素子または有機ELとも称する)表示装置は、高輝度で大面積、製造コストが安価、且つフルカラー表示を実現可能なディスプレイデバイスとして注目されつつある。
【0003】
有機発光素子を用いた有機EL表示装置は、ガラスなどの絶縁性の支持基板(ここではガラス基板)が用いられ、画素を選択するスイッチング素子として一般的に用いられる薄膜トランジスタ(TFT)が形成される基板であることから、以下では、支持基板をTFT基板とも称する。このTFT基板の内面にはマトリクス配置した複数の第1電極(通常、画素電極)を備え、この画素電極上に有機材料の複数薄膜からなる有機発光層を積層し、さらに全画素を覆う共通電極を積層し、有機発光層を画素電極と共通電極とで挟持して構成される。ここでは、TFT基板の上方(有機発光素子形成面:主面側)に表示光を取り出す方式をトップエミッション型と称する。なお、TFT基板の下方に表示光を取り出す方式をボトムエミッション型と称する
【0004】
何れの形式の有機EL表示装置も、通例、支持基板(TFT基板)側に有機EL素子を作り込む。そして、TFT基板と封止基板を貼り合わせた後に点灯検査を行う。このため、TFTや有機EL素子の何れかに機能不全があると、有機EL表示装置そのものが不良となる。また、従来は、TFT基板にTFTを形成工程後に有機EL素子の形成を行うので、TFT基板の製造に要する時間が長く、また有機EL素子の形成工程がTFTに影響を与えて機能劣化をもたらす場合がある。
【0005】
このような解決課題を対策する手段として、特許文献1にはTFT基板側に有機EL素子を形成する従来の方式を採用しないで、TFT基板とは独立した封止基板の主面に有機EL素子を形成して有機EL素子基板とし、これら両基板を導電性ビーズを介して貼り合わせ、有機EL表示装置を構成したものが開示されている。なお、導電性ビーズはTFT基板側のTFTの出力電極と有機EL素子基板の有機EL素子の電極との電気的導通をとる機能を有する。
【特許文献1】特開2002−244589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の有機EL表示装置でも、TFT基板と封止基板(有機EL素子基板とも称する)を貼り合わせた後にのみ点灯検査を行うものである。このため、TFT基板と有機EL素子基板の何れか一方のみに機能不全があった場合にも、有機EL表示装置そのものが不良となり、製造歩留まりの向上を阻害する原因の一つとなっている。また、引用文献1では、TFT基板側の電極と有機EL素子基板側の電極の電気的導通が導電性ビーズを介在させて、両基板を互いに押し付けることでとっているので、有機EL素子基板側の電極間に短絡が生じて表示不良をもたらす場合もあるので、製造時には厳密な加圧制御を伴う封止作業を要する。
【0007】
また、TFT基板側に有機EL素子を形成した従来の一般的な有機EL表示装置では、封止基板を貼り合わせ、駆動回路チップを実装して表示モジュールとした後でないと点灯検査を行うことができない。データ信号や走査信号を各画素に供給する必要があるからである。そのため、検査で非点灯が発生した場合には、表示モジュール全体が不良品となる。
【0008】
本発明の目的は、有機EL素子を形成した基板の該有機EL素子を単独で点灯検査可能として、製造歩留まりを向上させた有機EL表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、有機EL素子に表示時に用いる電源線とは異なる配線をダイオード接続した構造とするものである。具体的には、封止基板側に有機EL素子を形成して封止基板を有機EL素子基板とするものでは、TFT基板に有機EL素子基板を貼り合わせる前に有機EL素子基板に有する有機EL素子を単独で点灯検査可能とし、TFT基板に有機EL素子を形成して封止基板を貼り合わせるものでは、封止基板の貼り合わせ前にTFT基板の有機EL素子を単独で点灯検査可能として製造歩留まりを向上させる。
【0010】
なお、本発明は、特許請求の範囲に記載の構成、後述する実施の形態に記載される構成に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱することなく、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【発明の効果】
【0011】
有機EL素子を形成した側の基板の点灯検査を、他方の基板とは独立して可能とすることにより、該他方の基板まで不良品とすることがなく、また、点灯検査で不良品とされた基板を再生することができる。なお、封止基板側から発光を取り出すトップエミッション型とした場合は、TFT基板側での回路設計の自由度が高い。また、封止基板側に有機EL素子を形成するものでは、封止基板の設ける共通電極として抵抗値の大きい透明導電膜の抵抗値を補償する補助配線を形成する場合の設計裕度も大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、実施例の図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明による有機EL表示装置の実施例1を説明する要部断面図である。図1では、図の左側が緑(G)の画素(副画素:サブピクセル)で右側が赤(R)の画素(副画素)となる。なお、赤(R)と緑(G)および図示しない青(B)の副画素でカラー1画素(ピクセル)を構成するものであることは改めて説明するまでもない。またここでは、特に必要がある場合を除いて、副画素も単に画素と表現して説明する。
【0014】
図2は、図1に示した封止基板をTFT基板側から見た要部斜視図である。図1と図2において、この有機EL表示装置は、薄膜トランジスタTFT等の画素駆動回路部を形成したガラス板を好適とする絶縁基板(TFT基板)1と表示部有機EL素子18と検査部有機EL素子19を形成した有機EL素子基板(封止基板)15を貼り合わせて構成される。封止基板15もガラス板でよい。TFT基板1の主面には、薄膜トランジスタ(TFT)12を有する。なお、後述する図5に示した他の薄膜トランジスタ(後述する信号書き込みTFT28)やデータ保持容量30などは図示を省略した。ここでは、表示部有機EL素子18が緑(G)画素とし、図の右側に赤(R)画素が隣接しているものとする。
【0015】
薄膜トランジスタ12は、ゲート電極31、シリコン半導体膜32、ドレイン・ソース電極33、ソース・ドレイン電極34で構成されている。なお、符号13はゲート絶縁膜、14は層間絶縁膜、11はパス膜(保護膜)である。パス膜11の表面には、当該パス膜11に開けたコンタクトホールを通してソース・ドレイン電極34に接続した表示信号出力電極16が形成されている。表示信号出力電極16は導電材8を介して表示用有機EL素子に駆動信号を印加する端子である。
【0016】
一方、封止基板15の主面には、その表示部有機EL素子18の構成領域に透光性の第1電極である共通電極としてのITO等の透明導電10、表示部有機発光層4、光反射生の金属電極からなる第2電極である画素電極2がこの順で積層して成膜されている。隣接する画素(表示用有機EL素子)18の間には、各画素を区画するための絶縁層からなるバンク3が形成されている。このバンク3の上には画素電極である第2画素電極2が延在し、隣接の赤(R)画素と絶縁した状態となって検査部有機EL素子19の一方の電極を構成する。このバンク3の上の第2画素電極2の上に検査部有機発光層5が、その上に配線電極6が積層されている。配線電極6は点灯検査配線で、検査部有機EL素子19の他方の電極である。そして、この配線電極6は、共通のゲート配線(図示せず)に接続する画素を接続して表示領域の外に引き出される。
【0017】
有機EL素子の駆動TFT12の出力は、ソース・ドレイン電極34からPAS膜11に開けたスルーホールを通して表示部出力電極16に印加される。表示部出力電極16と第2電極である画素電極2の間に介在する導電材8を通して電気的接続がなされる。ここでは、導電材8に導電ビーズを用いたが、異方性導電膜、半田バンプなどを用いることができる。この電気的接続を確実にするために、TFT基板1と封止基板15の間に押圧力が加えられる。このとき、画素電極2が共通電極10に短絡するのを避けるため、符号Aで示した部分の導電材8の直下の共通電極10を欠如しておくのが望ましい。表示領域の外に引き出された配線電極6を並列に接続し、共通電極10との間に点灯検査電源を接続して点灯検査を行う。
【0018】
図3は、本発明による有機EL表示装置の実施例1における表示用有機EL素子と検査用有機EL素子の接続例を説明する等価回路図である。表示部有機EL素子18のアノードは電源供給配線に接続し、第1電極(共通電極)10であるカソードは共通電極端子17を通して接地電位または他の適当な電位部に接続している。検査部有機EL素子19のカソードは表示部有機EL素子18のアノード(表示部有機EL素子18の第2電極2)に接続している。ここでは、共通するゲート配線で選択される複数画素に対応する有機EL素子の検査部有機EL素子19のアノードは表示領域の外で点灯検査電源単位7に並列に接続している。
【0019】
封止基板15の検査時には、点灯検査電源端子7と共通電極端子17の間に検査電源をつなぎ、全面点灯状態とする。このとき、表示用有機EL素子18と検査用有機EL素子19は直列に接続されるため、共に点灯状態となる。表示用有機EL素子18または検査用有機EL素子19もしくは双方に電極間ショートや有機EL層の成膜の不具合等があれば、があれば、その画素部分は非点灯や周囲画素との輝度差が観察される。非点灯や周囲画素との輝度差が観察されなければ、当該封止基板は良品とされ、別途製作されたTFT基板と組み合わされる。また、非点灯や周囲画素との輝度差が観察された封止基板は再生工程に回される。
【0020】
図4は、図1、図2で説明した本発明による有機EL表示装置の実施例1の具体的構成例を説明する封止基板の要部平面図である。図4には、カラー1画素を構成する赤(R)、緑(G)、青(B)の副画素のみを示す。封止基板とTFT基板との接続は、図1に示した画素電極2とTFT基板の表示信号出力電極16の間に導電材(導電ビーズ、半田バンプ等)8を介在させて行う。このとき、前記したように、導電材8の設置位置Aに対応する共通電極10を一部欠如させておくことで、電極間ショートによる不具合の発生を回避できる。
【0021】
副画素の周囲には画素枠20が設けられている。画素枠20は上層金属21と下層金属22の積層構造で、隣接する部分には図5で後述する絶縁膜が充填される開口が形成されている。また、隣接する副画素の間には、検査電源を表示部有機EL素子に印加するために絶縁膜を欠如した絶縁膜開放部26が形成されている。
【0022】
図5は、図4のA−A’線に沿った封止基板の断面図である。図5において、図1、図2と同じ符号は同じ機能部分を示す。絶縁基板15の主面に共通電極10が成膜され、その上に所定の発光特性をもつ有機発光層4がそれぞれの副画素の表示部に形成されている。副画素の間には絶縁材料で形成した堤状のバンク3が配置されている。バンク3は隣接する副画素の間を区画する。このバンク3の上に前記の画素枠20が設けられている。画素枠20の下層金属22の側縁は上層金属21から突出し、この側縁に表示部有機発光層4を覆って成膜される画素電極2が重畳して電気的に接続している。
【0023】
画素枠20には、図4でも説明した開口が形成されている。この開口に充填して当該上層金属21の上に絶縁膜25が形成されている。また、この絶縁膜25は図5の右側に位置する副画素の側で欠如されて絶縁膜開放部26を形成している。絶縁膜25の上には検査部有機発光層5が形成され、さらにその上に点灯検査配線(配線電極、他方の電極)6が成膜されている。この構成で、上層金属21が検査部有機EL素子の一方の電極を構成する。上層金属21は下層金属22を通して表示部有機EL素子18の第2電極(画素電極)に電気的に接続している。実施例1では、画素枠20の左側の上方に検査部有機EL素子19が形成され、該画素枠20の左方に表示部有機EL素子18が形成される。
【0024】
実施例1により、有機EL素子を形成した側の基板の点灯検査を、他方の基板とは独立して可能とすることにより、該他方の基板まで不良品とすることがなく、また、点灯検査で不良品とされた基板を再生することができる。
【実施例2】
【0025】
図6は、本発明の有機EL表示装置の実施例2を説明する等価回路である。また、図7は、本実施例の有機EL表示装置の1画素の回路配置例を図6と対応させて説明する平面図である。実施例2は、本発明をTFT基板側で実現するものである。すなわち、実施例2の有機EL表示装置では、TFT基板に従来と同様に有機発光層を設けたものである。図6と図7において、1つの副画素はゲート配線27と信号配線23の交差部に配置される。有機EL素子は、基本的には、信号書込TFT28、信号保持容量30、駆動TFT12、表示部有機EL素子18、および電源配線24で構成される。
【0026】
実施例2では、上記の基本構成に加えて、スイッチ29と配線電極(点灯検査配線)6を設けたものである。スイッチ29はダイオード接続したTFTを用いた。ゲートとドレインを接続してダイオードとしたTFTのゲート電極には接続点CH5で配線電極6が接続し、ソースを表示部有機EL素子18と電源配線24との接続点CH4に接続してある。ダイオード接続したTFTで構成したスイッチ29は電源配線24に対しては逆方向接続であり、駆動TFT12を通して電源配線24から流入する表示部有機EL素子18への電流が配線電極6に逆流するのを阻止する。なお、図中の接続点CH1〜5はコンタクトホールである。
【0027】
実施例2により、有機EL素子を形成した一方の基板であるTFT基板の点灯検査を、他方の基板である封止基板を貼り合わせる前に、独立して可能とすることができる。また、点灯検査で不良品とされたTFT基板は、その有機発光層を洗い流して再使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による有機EL表示装置の実施例1を説明する要部断面図である。
【図2】図1に示した封止基板をTFT基板側から見た要部斜視図である。
【図3】本発明による有機EL表示装置の実施例1における表示用有機EL素子と検査用有機EL素子の接続例を説明する等価回路図である。
【図4】図1、図2で説明した本発明による有機EL表示装置の実施例1の具体的構成例を説明する封止基板の要部平面図である。
【図5】図4のA−A’線に沿った封止基板の断面図である。
【図6】本発明の有機EL表示装置の実施例2を説明する等価回路である。
【図7】本の有機EL表示装置の実施例2の有機EL表示装置の1画素の回路配置例を図6と対応させて説明する平面図である。
【符号の説明】
【0029】
1・・・TFT基板、2・・・画素電極(第2電極)、3・・・バンク、4・・・表示部有機発光層、5・・・検査部有機発光層、6・・・配線電極(他方の電極、点灯検査配線)、7・・・点灯検査電源端子、8・・・導電材、10・・・共通電極(第1電極)、11・・・保護膜(PAS膜)、12・・・駆動TFT、15・・・封止基板、16・・・表示信号出力電極、17・・・共通電極端子、18・・・表示部有機EL素子、19・・・検査部有機EL素子、20・・・画像枠、21・・・上層金属、22・・・下層金属、23・・・電源配線、25・・・絶縁膜、26・・・絶縁膜開放部、28・・・信号書込TFT、29・・・スイッチ、30・・・信号保持容量、31・・・ゲート電極、32・・シリコン半導体層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板上に複数の有機EL素子を配列した表示領域を有し、前記有機EL素子の各々に接続する電源供給電極に並列に接続されて前記表示領域の外に伸びる配線電極を有し、
前記有機EL素子は前記絶縁基板側に成膜された第1電極と、該第1電極の上に積層された有機EL発光層と、該有機EL層の上層に成膜された第2電極を有し、
前記配線電極は、前記表示領域内ではダイオードを介して前記有機EL素子の前記第2電極に接続していることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ダイオードは一方の電極と他方の電極の間に有機EL発光層を挟持して構成され、前記一方の電極は前記有機EL素子の前記第2電極であり、前記配線電極は前記他方の電極であることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記配線電極は、複数の画素を構成する前記第1電極との間に検査用電源を接続する点灯検査配線であることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記絶縁基板は封止基板であることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記第2電極は、導電材を通して画像信号を印加する画素電極であり、当該第1電極の前記導電材の設置部分が欠如されていることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記絶縁基板は、表示時に前記有機EL素子で駆動する薄膜トランジスタを形成したアクティブ基板であることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記ダイオードは、前記薄膜トランジスタのドレインとゲートを接続した素子であることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項8】
請求項6において、
前記配線電極は、複数の前記有機EL素子に検査用電源を接続する点灯検査配線であることを特徴とする有機EL表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−26606(P2009−26606A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188556(P2007−188556)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】