有機EL装置、有機EL装置の製造方法、電子機器
【課題】優れた放熱性を有する有機EL装置、有機EL装置の製造方法、電子機器を提供すること。
【解決手段】有機EL装置100は、有機EL素子を有する有機ELパネル10と、放熱部材50と、電気泳動パネル110と、少なくとも一方が透明な一対のフィルムシート8と、を備え、有機ELパネル10と放熱部材50と電気泳動パネル110とがこの順に重ね合わされていると共に、放熱部材50の一部52aを外部に露出させた状態で、一対のフィルムシート8により挟まれて封着されている。
【解決手段】有機EL装置100は、有機EL素子を有する有機ELパネル10と、放熱部材50と、電気泳動パネル110と、少なくとも一方が透明な一対のフィルムシート8と、を備え、有機ELパネル10と放熱部材50と電気泳動パネル110とがこの順に重ね合わされていると共に、放熱部材50の一部52aを外部に露出させた状態で、一対のフィルムシート8により挟まれて封着されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子を備えた有機EL装置、有機EL装置の製造方法、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL装置は薄型、軽量な自発光素子として、携帯電話機やパーソナルコンピューター、車載用モニター等への応用が期待されている。最近では、高耐熱性のガラス基板を50μm〜100μm程度まで薄型化し、周辺駆動回路を内蔵したフレキシブルで高機能な有機EL装置の開発も進められている(特許文献1)。
【0003】
このような薄型のガラス基板を用いた有機EL装置は、機械的な衝撃に弱く、厚みも薄いため取り扱い性が難しいという問題があった。特許文献2では、類似の構造を有する液晶装置において、薄型ガラス基板を用いた液晶パネルを0.3mmの厚い偏光板で補強し、これらをラミネートフィルムで挟んで一体化した構造が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−58489号公報
【特許文献2】特許第4131639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ラミネートフィルムで覆われた有機ELパネルは発光時の熱がこもり易く、長時間使用すると、熱の影響により発光特性が変化してしまうという問題があった。特許文献2では、有機ELパネルの発光時の放熱の問題は考慮されておらず、適当な放熱手段も開示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例の有機EL装置は、有機EL素子を有する有機ELパネルと、放熱部材と、少なくとも一方が透明な一対のフィルムシートと、を備え、前記有機ELパネルと前記放熱部材とは、互いに重ね合わされると共に前記放熱部材の一部を外部に露出させた状態で、前記一対のフィルムシートにより挟まれて封着されていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、有機ELパネルと放熱部材とを一対のフィルムシートで一体化し、有機ELパネルを駆動したときに有機EL素子からの発熱を放熱部材に伝えると共に、一対のフィルムシートの外部に露出した放熱部材の一部から放熱することができる。したがって、有機EL素子の発熱により有機ELパネルの発光特性が変化し難い有機EL装置を提供することができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例の有機EL装置において、前記放熱部材は、層厚方向よりも面内方向に高い熱伝導性を有する放熱シートと金属製の放熱板との積層体であり、前記放熱シートに対して前記有機ELパネルが重ね合わされており、前記放熱板の一部が前記一対のフィルムシートの外部に露出していることを特徴とする。
この構成によれば、局所的に有機EL素子が発熱したとしても、その発熱を放熱シートを介して放熱板全体に亘って分散させ速やかに放熱することができる。そのため、有機ELパネルの内部が高温に加熱されることがなく、発光特性を概ね一定に維持することができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例の有機EL装置において、前記放熱部材の前記有機ELパネルが重ね合わされた側に対して反対側に、電気泳動層を有する電気泳動パネルが配置されており、前記有機ELパネルと前記放熱部材と前記電気泳動パネルとが前記一対のフィルムシートにより挟まれて封着されていることを特徴とする。
この構成によれば、電気泳動パネルは受光型のディスプレイであって、電気泳動パネル自体が放熱機能を有しており、放熱部材の放熱効果をさらに高めることができる。また、電気泳動パネルは有機ELパネルからの放熱を受けて、例えば外気が室温よりも低い状態であっても安定した表示特性を実現することができる。すなわち、自発光型の有機ELパネルと受光型の電気泳動パネルとを備え、互いに安定した表示品質が得られる有機EL装置を提供できる。
【0011】
[適用例4]上記適用例の有機EL装置において、前記電気泳動パネルは、前記放熱部材に対して層厚方向よりも面内方向に高い熱伝導性を有する放熱シートを介して重ね合わされていることが好ましい。
この構成によれば、有機ELパネルからの発熱を放熱部材と放熱シートとを介して電気泳動パネル全体に亘って伝えることができる。すなわち、放熱効果がさらに向上する。
【0012】
[適用例5]上記適用例の有機EL装置において、少なくとも前記一対のフィルムシートと前記有機ELパネルの外周端面との間に形成された隙間に封止樹脂が充填され、前記一対のフィルムシートにより前記有機ELパネルが封着されていることが好ましい。
この構成によれば、一対のフィルムシートの間において有機ELパネルが気密な状態で封着される。したがって、一対のフィルムシートの外部から酸素や水蒸気などの気体が有機ELパネルに侵入して、有機EL素子の発光寿命が短くなるという不具合が防止される。すなわち、長い発光寿命を有する有機EL装置を実現できる。
【0013】
[適用例6]上記適用例の有機EL装置において、前記有機ELパネルは、ガラス基板からなる基材と、前記基材上に設けられた前記有機EL素子と、を有し、前記基材の厚みが20μm以上50μm以下であることを特徴とする。
この構成によれば、有機ELパネルが可撓性を有することになり、一対のフィルムシートによって封着されていても、曲げることが可能な有機EL装置を提供することができる。
また、耐熱性の高いガラス基板を用いているため、例えば、低温ポリシリコン技術等により基材上に走査線駆動回路等の周辺駆動回路を形成することができ、これにより、有機EL装置の高性能化に寄与することができる。
さらに外部応力によってガラス基板が破損しても、一対のフィルムシートにより封着されているので、破片がむやみに飛散することを防止できる。
【0014】
ここで、基材の厚みが20μmよりも薄くなると、ディンプルやピットと呼ばれる欠陥が多くなり、発光欠陥が顕著になる。また、50μmよりも厚くなると、十分な可撓性を付与できなくなると共に、基材上に形成された種々の樹脂層、例えば有機EL素子を覆う平坦化樹脂層等が、発光時の熱によって膨張し、有機EL素子を駆動する駆動素子を圧迫する惧れがある。しかし、20μm以上50μm以下の厚みでは、発光欠陥が1個以下となり、殆ど欠陥のない優れた発光特性が得られており、また上記厚みにおいては、有機ELパネルを一対のフィルムシートに挟み込む際の圧力によって殆ど割れが発生せず、高い歩留まりで製造可能な有機EL装置が提供できた。
【0015】
[適用例7]上記適用例の有機EL装置において、前記放熱シートがグラファイトシートを含むことが好ましい。
この構成によれば、グラファイトシートは層厚方向よりも面内方向に高い熱伝導性を有するので、面内における放熱性を改善できる。また、屈曲等に対しても高い耐久性を実現できる。
【0016】
[適用例8]本適用例の有機EL装置の製造方法は、少なくとも一方が透明性を有する一対のフィルムシートにより有機EL素子を有する有機ELパネルが挟まれて封着された有機EL装置の製造方法であって、放熱部材の一部が前記一対のフィルムシートの外部に露出するように前記一対のフィルムシートの間に前記有機ELパネルと前記放熱部材とを重ねて配置する配置工程と、少なくとも前記一対のフィルムシートと前記有機ELパネルの外周端面との間に形成された隙間に封止樹脂を配置する封止樹脂配置工程と、前記有機ELパネルと前記放熱部材と前記封止樹脂とが挟まれた前記一対のフィルムシートを一対の加圧手段により加圧し、前記一対のフィルムシートを前記有機ELパネルの周縁部で封着するラミネート工程とを備えたことを特徴とする。
【0017】
この方法によれば、有機ELパネルを駆動したときに有機EL素子からの発熱を放熱部材に伝えると共に、一対のフィルムシートの外部に露出した放熱部材の一部から放熱することができる。したがって、有機EL素子の発熱により有機ELパネルの発光特性が変化し難い有機EL装置を製造することができる。
また、一対のフィルムシートとの上記隙間が封止樹脂で充填されるので、ラミネート工程において上記隙間に熱伝導を阻害する気泡が残存することを低減して、熱がむらなく伝わる有機EL装置を製造することができる。
【0018】
[適用例9]上記適用例の有機EL装置の製造方法において、前記放熱部材は、層厚方向よりも面内方向に高い熱伝導性を有する放熱シートと金属製の放熱板との積層体であり、前記配置工程は、前記有機ELパネルに対して前記放熱シートを重ね合わせると共に、前記放熱板の一部が前記一対のフィルムシートの外部に露出するように前記放熱部材を配置することを特徴とする。
この方法によれば、局所的に有機EL素子が発熱したとしても、その発熱を放熱シートを介して放熱板全体に亘って分散させ且つ放熱することができる。ゆえに、該発熱に伴う有機ELパネルの輝度むらを低減可能な有機EL装置を製造することができる。
【0019】
[適用例10]上記適用例の有機EL装置の製造方法において、前記一対のフィルムシートは、前記有機ELパネルと前記放熱部材とに面する側に熱可塑性の接着剤または粘着剤からなる接着層を有し、前記ラミネート工程では、前記一対の加圧手段により加圧すると共に加熱して、前記一対のフィルムシートを前記有機ELパネルの周縁部で接着することが好ましい。
この方法によれば、一対のフィルムシートの間に、少なくとも有機ELパネルをより気密な状態で封着することができる。
【0020】
[適用例11]上記適用例の有機EL装置の製造方法において、前記配置工程は、前記放熱部材の前記有機ELパネルが重ね合わされた側に対して反対側に、電気泳動層を有する電気泳動パネルをさらに重ねて配置し、前記ラミネート工程は、前記一対のフィルムシートを前記有機ELパネルと前記放熱部材および前記電気泳動パネルの周縁部で封着するとしてもよい。
この方法によれば、有機ELパネルからの発熱は放熱部材と放熱シートとを介して電気泳動パネルに放熱される。電気泳動パネルは受光型の表示パネルであって、伝わった熱を放熱することができる。また、電気泳動パネルは有機ELパネルからの放熱を受けて、例えば外気が室温よりも低い状態であっても安定した表示特性を実現することができる。すなわち、自発光型の有機ELパネルと受光型の電気泳動パネルとを備え、互いに安定した表示品質が得られる有機EL装置を製造することができる。
【0021】
[適用例12]上記適用例の有機EL装置の製造方法において、前記配置工程は、前記放熱部材に対して層厚方向よりも面内方向に高い熱伝導性を有する放熱シートを介して前記電気泳動パネルを重ね合わせることが好ましい。
この方法によれば、有機ELパネルからの発熱を放熱部材と放熱シートとを介して電気泳動パネル全体に亘って伝えることができる。すなわち、放熱効果がさらに向上した有機EL装置を製造することができる。
【0022】
[適用例13]本適用例の電子機器は、上記適用例の有機EL装置を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、有機EL素子の発光にともなう発熱の影響を受け難く、安定した発光特性を有する有機EL装置を備えているので、見栄えのよい表示品質を有する電子機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)および(b)は有機EL装置の構成を示す概略平面図。
【図2】図1(a)のA−A’線で切った有機EL装置の構造を示す概略断面図。
【図3】放熱シートの構造を示す概略断面図。
【図4】有機ELパネルの電気的な構成を示す等価回路図。
【図5】有機ELパネルの構造を示す断面図。
【図6】電気泳動パネルの電気的な構成を示す等価回路図。
【図7】電気泳動パネルの構造を示す概略断面図。
【図8】有機EL装置の製造方法を説明する概略斜視図。
【図9】有機EL装置の製造方法を説明する概略斜視図。
【図10】有機EL装置を発光させたときの発光領域の温度の経時変化を示すグラフ。
【図11】有機EL装置の表面温度分布を示す図。
【図12】(a)は電子機器の1例としてのディスプレイを示す概略斜視図、(b)はディスプレイ本体と有機EL装置との接続構造を示す要部概略断面図。
【図13】(a)〜(c)は変形例の放熱部材を示す概略平面図。
【図14】有機EL装置における変形例の使用形態を示す概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
【0025】
(第1実施形態)
<有機EL装置>
本実施形態の有機EL装置について、図1〜図7を参照して説明する。図1(a)および(b)は有機EL装置の構成を示す概略平面図、図2は図1(a)のA−A’線で切った有機EL装置の構造を示す概略断面図、図3は放熱シートの構造を示す概略断面図である。
【0026】
図1(a)および(b)に示すように、本実施形態の有機EL装置100は、一方の表面側に設けられた有機ELパネル10と、他方の表面側に設けられた電気泳動パネル110とを備えている。有機ELパネル10と電気泳動パネル110とはシート状の放熱部材50を介して重ね合わされており、さらに一対のフィルムシート8によって挟まれて封着されている。
【0027】
シート状の放熱部材50は、少なくとも有機ELパネル10の発光領域(表示領域)9に亘って平面的に重ね合わされると共に、その一部52aが一対のフィルムシート8の外部に露出するように重ね合わされている。
【0028】
図1(a)に示すように、有機ELパネル10は、発光領域9内に配設された複数の発光画素7を有する。複数の発光画素7は、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の異なる発光色が得られるものであって、同色の発光画素7が同一方向に配列し、異なる色の発光画素7が交互に配列する所謂ストライプ方式に基づいて配置されている。各発光画素7には、後述する発光素子としての有機EL素子が設けられている。
【0029】
有機ELパネル10は、有機EL素子が設けられた素子基板1と素子基板1上の有機EL素子を封止する封止基板2とを有している。四角形の素子基板1は同じく四角形の封止基板2に対して短辺が長くなっており、封止基板2から平面的にはみ出した部分が端子部1aとなっている。端子部1aには、有機ELパネル10を駆動するための外部駆動回路との接続を図る3つの中継基板5A,5B,5Cが電気的に接続されている。ほぼ等間隔で端子部1aに配置された3つの中継基板5A,5B,5Cのうち、中央に位置する中継基板5AにはドライバーIC6が実装されている。
【0030】
一対のフィルムシート8から外部に露出した放熱部材50の一部52aは、ほぼ3つの中継基板5A,5B,5Cの先端部の位置まで延出されている。
【0031】
図1(b)に示すように、有機ELパネル10の背面側に設けられた電気泳動パネル110は、電気泳動層を備えた受光型の表示パネルであって、表示領域119内に配置された複数の画素117を有する。画素117は、電気泳動層を駆動制御することによって白色と黒色とを切り替えて表示することができる。
電気泳動層は、四角形の素子基板111と対向基板112との間に挟持されており、画素117は短辺方向と長辺方向とにマトリックス状に配置されている。
【0032】
素子基板111は同じく四角形の対向基板112に対して短辺が長くなっており、対向基板112から平面的にはみ出した部分が端子部111aとなっている。端子部111aには、電気泳動パネル110を駆動するための外部駆動回路との接続を図る3つの中継基板115A,115B,115Cが電気的に接続されている。ほぼ等間隔で端子部111aに配置された3つの中継基板115A,115B,115Cのうち、中央に位置する中継基板115AにはドライバーIC116が実装されている。
【0033】
図2に示すように、有機EL装置100は、有機ELパネル10と電気泳動パネル110とが放熱部材50を介して一対のフィルムシート8により一体化されたものである。
【0034】
フィルムシート8は、透明性を有する基材フィルム8aと基材フィルム8aの一方の面に形成された接着層8bとを有する。
基材フィルム8aは、外部からの水分やガスなどの浸入を防止する観点からガス透過性が低い透明な樹脂フィルムを用いることが好適である。
樹脂フィルムとしては、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)などのポリエステル、PES(ポリエーテルスルホン)、PC(ポリカーボネート)、PE(ポリエチレン)などの樹脂からなるフィルムが挙げられる。その厚みは、およそ50μm程度である。
【0035】
有機ELパネル10や電気泳動パネル110に接着可能な接着層8bを構成する部材としては、例えば熱可塑性のエポキシ樹脂接着剤を用いることができる。また、粘着性を有する粘着剤としてもよい。粘着剤を用いればリペア性を実現できる。言い換えれば、接着層8bは、基材フィルム8aと有機ELパネル10の封止基板2や電気泳動パネル110の対向基板112とを密着させて封着可能であれば接着剤、粘着剤のいずれも利用できる。
【0036】
有機ELパネル10と電気泳動パネル110との間に配置された放熱部材50は、例えば金属製の放熱板52の両面に放熱シート51が積層されたものである。
【0037】
放熱シート51は、層厚方向よりも面内方向に高い熱伝導性を有するものが好ましい。
図3に示すように、本実施形態では、基材として厚みがおよそ70μmのグラファイトシート51aを用い、その両面に粘着層51bを設け、一方の粘着層51bに厚みがおよそ50μmのタック性シート51cを積層したものを用いた。タック性シート51cの表面および他方の粘着層51bの表面を保護する目的で取り外しが可能なセパレーターが設けられている。
グラファイトシート51aは、図3中に円で囲んだ概略拡大図を見てもわかるようにグラファイトの層状構造が巨視的なスケールで積み重なった高配向性グラファイトを用いている。
粘着層51bは、例えば厚みがおよそ30μmの両面テープを用いた。
タック性シート51cとしては、例えば厚みがおよそ38μmのPETフィルムに粘着剤を塗布したものを用いた。
セパレーターは、PETフィルムの表面に離型処理が施されたものを用いた。
なお、このような放熱シート51としては、特開昭58−147087号公報、特開昭60−012747号公報、特開平7−109171号公報、特許第3948000号公報等に開示されたものを用いることができる。特に、パナソニック株式会社製のPGSグラファイトシート(商品名)は、熱伝導率が銅(Cu)の2〜4倍、アルミニウム(Al)の3〜6倍という高い熱伝導性を有し、紙のような柔軟性(可撓性)を備えていることから、本実施形態の放熱シート51として好適である。
【0038】
放熱板52としては、銅やアルミニウム等の金属又はその合金からなる高熱伝導率の金属板が好ましい。本実施形態では、リン青銅を用い、50μm程度まで薄くすることにより可撓性と形状復元性(バネ性)とを持たせている。
【0039】
まず、グラファイトシート51a側に設けられたセパレーターを外して有機ELパネル10と密着させる。続いて、タック性シート51c側に設けられたセパレーターを外して放熱板52と密着させる。同様にしてもう1つの放熱シート51のグラファイトシート51a側に設けられたセパレーターを外して電気泳動パネル110と密着させる。続いて、タック性シート51c側に設けられたセパレーターを外して放熱板52と密着させる。
このようにして、有機ELパネル10と電気泳動パネル110とが放熱部材50を介して重ね合わされている。
【0040】
本実施形態では、放熱部材50のうち放熱シート51が有機ELパネル10の発光領域9と少なくとも重なり合うように放熱シート51の平面積を確保している。そして、放熱板52の一部52aがフィルムシート8の外側に露出する構成とした。
なお、これに限らず、放熱シート51と放熱板52の大きさや形状を同じとして、その積層体の一部が露出する構成としてもよい。
【0041】
また、電気泳動パネル110と放熱板52との間に設けた放熱シート51は省略することもできる。少なくとも有機ELパネル10側に放熱シート51を設け、発熱を有機ELパネル10の面内に亘って分散させ放熱板52に伝えることが重要である。
【0042】
一対のフィルムシート8によりこれらの有機ELパネル10、放熱部材50、電気泳動パネル110を挟んで封着する場合、フィルムシート8との間に隙間が生ずる。例えば、図2に示すように、有機ELパネル10および放熱部材50並びに電気泳動パネル110の外周端部(端面がそろった部分)、素子基板1の端子部1aにおける中継基板5Aと封止基板2との間、同じく素子基板111の端子部111aにおける中継基板115Aと対向基板112との間、放熱板52の一部52aと中継基板5Aおよび中継基板115Aとの間が挙げられる。
【0043】
本実施形態では、これらの隙間に封止樹脂61を充填し、重ねられた有機ELパネル10、放熱部材50、電気泳動パネル110を一対のフィルムシート8により挟んで封着する(ラミネートする)。それぞれの外周端部においてはみ出たフィルムシート8の基材フィルム8a同士は接着層8bにより接着される。
【0044】
また、フィルムシート8によりラミネートしたときに、有機ELパネル10の端子部1aの端部で中継基板5Aが折り曲がって絶縁部や導体部にクラックが生じないように放熱板52との隙間を埋めるスペーサーSP1が配置されている。同様に、電気泳動パネル110の端子部111aの端部で中継基板115Aが折り曲がって絶縁部や導体部にクラックが生じないように放熱板52との隙間を埋めるスペーサーSP2が配置されている。
【0045】
封止樹脂61の充填方法やラミネート方法については、後述する有機EL装置100の製造方法において説明する。
【0046】
次に、有機ELパネル10について、図4および図5を参照して説明する。図4は有機ELパネルの電気的な構成を示す等価回路図、図5は有機ELパネルの構造を示す断面図である。
【0047】
図4に示すように、有機ELパネル10は、薄膜トランジスター(Thin Film Transistor、以下、TFTと呼ぶ)を用いたアクティブマトリックス型の有機ELパネルである。有機ELパネル10は、互いに絶縁された状態で交差する複数の走査線3aおよび複数のデータ線4aと、走査線3aに沿って延在する電源線3bとを備えている。
【0048】
これら走査線3aとデータ線4aとに囲まれた領域に発光画素7が配置されている。発光画素7は、走査線3aの延在方向とデータ線4aの延在方向とに沿ってマトリックス状に配置されている。
【0049】
各発光画素7には、陽極としての画素電極14、有機機能層15、陰極としての共通電極16によって構成された有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)17が設けられている。また、有機EL素子17を駆動制御する回路部としてのスイッチング用のTFT11と、駆動用のTFT12と、保持容量13とが設けられている。
有機機能層15は、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層が順に積層されたものであり、画素電極14から注入された正孔と共通電極16から注入された電子とが発光層において再結合し、励起して発光する。
有機機能層15の構成は、これに限定されず、より効率的に発光を促すための中間層や電子注入層を含んでいてもよく、公知の構成を採用することができる。
【0050】
走査線3aは、シフトレジスターおよびレベルシフターを備えた走査線駆動回路3に接続されている。また、データ線4aは、シフトレジスター、レベルシフター、ビデオライン、およびアナログスイッチを備えたデータ線駆動回路4に接続されている。
【0051】
走査線駆動回路3から走査線3aを経由してスイッチング用のTFT11に走査信号が送出されオン状態になると、データ線駆動回路4からデータ線4aを介して供給される画像信号が保持容量13に保持され、保持容量13の状態に応じて駆動用のTFT12のオン・オフ状態が決まる。そして、画素電極14が駆動用のTFT12を介して電源線3bに電気的に接続したとき(すなわちオン状態となったとき)、電源線3bから画素電極14に駆動電流が流れ、さらに有機機能層15を通じて共通電極16に電流が流れる。有機機能層15の発光層は、画素電極14と共通電極16との間に流れる電流量に応じた輝度で発光する。
【0052】
前述した有機ELパネル10を駆動するドライバーIC6は、上記走査線駆動回路3および上記データ線駆動回路4のうち少なくとも一方と、電源線3bへ電力を供給できる構成とを有するものである。例えば、走査線駆動回路3は、有機ELパネル10の発光領域9の短辺に沿った周辺領域に回路部の一部として形成することも可能である。その場合には、ドライバーIC6は、上記データ線駆動回路4の構成を含むものとすればよい。また、上記走査線駆動回路3および上記データ線駆動回路4を有機ELパネル10の内部に造り込めば、ドライバーIC6を不要とすることもできる。
【0053】
図5に示すように、有機ELパネル10は、素子基板1と封止基板2とが対向して配置され、シール材80を介して接着され一体化されたものである。
【0054】
素子基板1上には複数の有機EL素子17が形成されている。有機EL素子17は、前述したように画素電極14と共通電極16とにより、例えば白色の光を発生する有機機能層15を挟持した構成を有する。複数の有機EL素子17を覆うように薄膜封止層74が形成されている。
【0055】
封止基板2は、透明なガラス基板やプラスチック基板を用いることができる。そして、有機EL素子17に対向する部分には、カラーフィルター層21が形成されている。カラーフィルター層21は、各色の発光画素7にそれぞれ対応して、赤色の着色層22R、緑色の着色層22G、青色の着色層22Bがマトリックス状に規則的(ストライプ方式)に配列された構成を有する。
また、カラーフィルター層21は、各着色層22R,22G,22Bを囲む領域に遮光層23を備えている。遮光層23は所謂ブラックマトリックス(BM)と呼ばれるものであって、実質的に発光画素7を区画するように封止基板2側に設けられている。遮光層23の材料としては、例えばCr(クロム)等を用いることができる。
また、カラーフィルター層21は、着色層22R,22G,22Bおよび遮光層23上を覆うオーバーコート層24と、オーバーコート層24上を覆う無機ガスバリア層25とを備えている。
【0056】
着色層22R,22G,22Bは、画素電極14上に形成された白色の有機機能層15に対向して平面的に重なるように配置されている。
着色層22R,22G,22Bの形成方法としては色材を含む感光性樹脂材料を塗布して、露光・現像することにより形成するフォトリソグラフィ法や、隔壁によって区画された膜形成領域に色材を含む液状体を塗布して乾燥させることにより形成する液状体塗布法などが挙げられる。
【0057】
オーバーコート層24は、例えばアクリルやポリイミド等の樹脂材料を用いて形成されており、発光領域9の内側から非発光領域の周辺のシール材80の形成領域近傍まで延設されている。
無機ガスバリア層25は、無機材料、例えば、酸化窒化シリコン(SiON)等の珪素化合物により形成されている。
【0058】
素子基板1の有機EL素子17から発せられた光は、それぞれに対応する着色層22R,22G,22Bを透過し、赤色光、緑色光、青色光の各色光として観察されるようになっている。
すなわち、有機ELパネル10は封止基板2側から発光が取り出されるトップエミッション構造となっている。
【0059】
有機EL素子17は、素子基板1上ではマトリックス状に規則的に配列され発光領域9を構成している。発光領域9の外側の領域は非発光領域である。なお、有機EL素子17は、R(赤)、G(緑)、B(青)の発光が得られる3種類の有機材料を使い分けて3種類の有機EL素子、例えば赤色光を発生する有機EL素子、緑色光を発生する有機EL素子、青色光を発生する有機EL素子としても良い。
【0060】
素子基板1は、透明なガラス基板やプラスチック基板、あるいは不透明なステンレス板やアルミ板、シリコン基板等の導電性基板を用いることができる。素子基板1は厚みを薄くすることにより可撓性を付与されている。
【0061】
本実施形態では、低温ポリシリコン技術を用いて周辺駆動回路内蔵型の有機ELパネル10を製造するので、素子基板1として耐熱性の高いガラス基板を用いている。
素子基板1の厚みは10μm以上100μm以下、好ましくは20μm以上50μm以下、より好ましくは20μm以上40μm以下である。
【0062】
例えば、素子基板1の厚みが20μmよりも薄くなると、ディンプルやピットと呼ばれる欠陥が多くなり、発光欠陥が顕著になる。
【0063】
また、50μmよりも厚くなると、素子基板1に十分な可撓性を付与できなくなると共に、素子基板1上に形成された種々の樹脂層、例えば有機EL素子17を覆う有機緩衝層76や、封止基板2との間に充填される封止樹脂81等が、発光時の熱によって膨張し、有機EL素子17を駆動制御するTFT12(TFT11)を圧迫する惧れがある。
【0064】
50μmよりも薄いガラス基板を用いた場合には、TFT12(TFT11)に加わる圧力をガラス基板が撓むことで緩和することができるが、ガラス基板の可撓性が低くなると、このような効果が得られにくくなり、駆動素子が破壊されたり、駆動素子の電気的特性が劣化してしまう惧れがある。特に、フィルムシート8で覆われた有機ELパネル10は発光時の熱がこもり易いので、通常の有機ELパネルに比べて、特別の配慮が必要となる。
【0065】
発明者は、このような一対のフィルムシート8を用いて封着する場合の特殊性に鑑み、ガラス基板の厚みと発光欠陥の発生数との関係を検討した。そして、ガラス基板の厚みが20μm以上50μm以下である場合に、特に良好な機械的強度と電気的特性が得られることが明らかになった。
【0066】
すなわち、ガラス基板の厚みが20μmよりも薄い場合には、ディンプル等の影響による発光欠陥が多くなり、50μmよりも厚くなると、TFT12(TFT11)の破損や電気的特性の劣化が生じ、20μm以上50μm以下の厚みでは、発光欠陥が1個以下となり、殆ど欠陥のない優れた発光特性が得られた。また、上記の厚みにおいては、少なくとも有機ELパネル10を一対のフィルムシート8に挟み込む際の圧力によって殆ど割れが発生せず、高い歩留まりで製造可能な有機EL装置100を実現できた。
【0067】
以上のように、20μm以上50μm以下の厚みのガラス基板を用いることで、一対のフィルムシート8で封着しても、良好な機械的強度と優れた電気的特性が得られるようになる。
【0068】
素子基板1上には、無機絶縁層71と樹脂平坦化層72とからなる回路層70が形成されている。無機絶縁層71は、例えば酸化珪素(SiO2)や窒化珪素(SiN)等の珪素化合物により形成されている。無機絶縁層71上には、有機EL素子17を駆動するためのTFT11,12、保持容量13、これらに繋がる走査線3a、電源線3b、データ線4aなどの回路部(図4参照)が形成されている。また、有機EL素子17の共通電極16に接続される配線19が形成されている。
【0069】
無機絶縁層71上には、Al(アルミニウム)合金等からなる金属反射層18が内装された樹脂平坦化層72が形成されている。樹脂平坦化層72は、絶縁性の樹脂材料、例えば感光性のアクリル樹脂や環状オレフィン樹脂等により形成されている。
【0070】
樹脂平坦化層72上の金属反射層18と平面的に重なる領域には、有機EL素子17の画素電極14が形成されている。画素電極14は、正孔注入性の高いITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)等の金属酸化物により形成されている。画素電極14は、樹脂平坦化層72および無機絶縁層71を貫通するコンタクトホール(図示省略)を介して、素子基板1上のTFT12に接続されている。
【0071】
樹脂平坦化層72上(回路層70上)には、有機EL素子17を区画するために、例えばアクリル樹脂等からなる絶縁性の隔壁層73が形成されている。隔壁層73は、画素電極14の上部を露出させる複数の開口部を有している。
【0072】
開口部と隔壁層73による凹凸形状に沿って、隔壁層73および画素電極14の上面を覆うように有機機能層15が形成されている。
【0073】
有機機能層15は、電界により注入された正孔と電子との再結合により励起して発光する発光層を含むものである。有機機能層15は、発光層以外の層をも含む多層構造とすることも可能である。発光層以外の層としては、正孔を注入し易くするための正孔注入層、注入された正孔を発光層へ輸送し易くするための正孔輸送層、電子を注入し易くするための電子注入層、注入された電子を発光層へ輸送し易くするための電子輸送層等、上記の再結合に寄与する層が挙げられる。
【0074】
有機機能層15の発光層としては、低分子系有機EL材料あるいは高分子系有機EL材料が挙げられる。
【0075】
低分子系有機EL材料は、正孔と電子との再結合により励起して発光する有機化合物のうち、分子量が比較的に低いものである。また、高分子系有機EL材料は、正孔と電子との再結合により励起して発光する有機化合物のうち、分子量が比較的に高いものである。
【0076】
これら低分子系有機EL材料あるいは高分子系有機EL材料は、有機EL素子17の発する色の光(白色光)に応じた物質となっている。発光層における再結合に寄与する層の材料は、この層に接する層の材料に応じた物質となっている。
【0077】
有機機能層15上には、有機機能層15をその凹凸形状に沿って覆うように、陰極としての共通電極16が形成されている。共通電極16は、例えば有機機能層15へ電子を注入し易くするための電子注入バッファー層と、電子注入バッファー層上に形成された電気抵抗の小さい導電層とを有する。
【0078】
電子注入バッファー層は、例えば、LiF(フッ化リチウム)やCa(カルシウム)、MgAg(マグネシウム‐銀合金)により形成されている。また、導電層は、例えばITOやAl等の金属により形成された電気抵抗の小さい導電層である。導電層は発光領域9の全面に形成されたものでなくても良く、例えば、MgとAgの合金からなる透明度の高い第1導電層を発光領域9の全面に形成し、Al等からなる低抵抗で透明度の低い第2導電層を補助電極として隔壁層73と重なる部分にストライプ状に形成しても良い。
【0079】
共通電極16は、発光領域9の全面を覆うと共に、発光領域9の周縁部(非表示領域)に形成されたAl等の無機導電膜からなる配線19と接続されている。配線19は、矩形に形成された発光領域9の3辺(図1に示した端子部1aが形成されていない辺)に沿って連続的に形成されている。
【0080】
また、共通電極16は、隔壁層73のうち、特に最外周を形成する部分、すなわち有機機能層15の最外周位置のものの外側部を覆った状態でこれを囲む部分(以下、囲み部材ともいう)の回路層70上で露出する部位全体を覆って形成されており、これにより、共通電極16が、上記囲み部材と共に、発光領域9に設けられた複数の有機EL素子17の外側を封止している。特に、有機EL素子17は、無機絶縁層71上に形成され、共通電極16の外周部は無機絶縁層71と接触しているため、複数の有機EL素子17の底面、上面、側面の全てが無機膜で覆われることになり、高い封止性能が実現される。
【0081】
共通電極16上には、無機絶縁層71、樹脂平坦化層72および有機EL素子17の共通電極16を覆う薄膜封止層74が形成されている。薄膜封止層74は、共通電極16の回路層70上で露出する部位全体を覆って無機絶縁層71と接する電極保護層75と、電極保護層75の少なくとも発光領域9に形成された部分を覆う有機緩衝層(平坦化樹脂層)76と、有機緩衝層76の回路層70上で露出する部位全体を覆って、電極保護層75または無機絶縁層71と接する無機ガスバリア層77とを備えている。
【0082】
電極保護層75は、無機材料、例えば、酸化窒化シリコン(SiON)等の珪素化合物により構成されている。
【0083】
有機緩衝層76は、隔壁層73とその開口部による凹凸形状を埋めるように形成され、回路層70上の凹凸を平坦化している。また、無機ガスバリア層77に密着し、かつ機械的衝撃に対して緩衝機能を有する。有機緩衝層76を構成する材料としては、例えばエポキシ化合物等の透明性が高く、透湿性の低い樹脂を用いることができる。
【0084】
無機ガスバリア層77は、無機材料、特に、透光性、ガスバリア性、耐水性を考慮して、例えばSiON等により形成されている。
【0085】
薄膜封止層74は、共通電極16と共に、外部から有機EL素子17へ水分や酸素が浸入しないようにするための封止部材として機能する。薄膜封止層74のうち無機ガスバリア層77は、有機緩衝層76によって平坦化された面に形成されており、電極保護層75に比べて段差被覆性がよく、高い封止機能が得られる。特に、有機緩衝層76で機械的衝撃が緩和されるため、クラック等も生じにくく、長期にわたって優れた封止性能を維持することが可能である。
【0086】
また、無機ガスバリア層77は、直接又は無機膜である電極保護層75を介して無機絶縁層71と接しているため、無機ガスバリア層77と無機絶縁層71との界面から水分や酸素が浸入する惧れは少ない。そのため、同じく無機絶縁層71と接して形成される共通電極16と協働して極めて高い封止性能を実現することができる。
【0087】
素子基板1の薄膜封止層74が形成された面には、封止基板2が対向して配置されている。封止基板2は、シール材80を介して素子基板1上の薄膜封止層74と接着されている。
【0088】
本実施形態では、封止基板2による封止性能を良好にするために、プラスチック基板に比べて透湿性の低いガラス基板を用い、これを薄くすることにより、可撓性を付与している。この場合、封止基板2の厚みは10μm以上100μm以下、好ましくは20μm以上50μm以下である。
【0089】
素子基板1と封止基板2とがシール材80によって接着されたことにより生じた空間には、隙間なく封止樹脂81が充填されている。
【0090】
封止樹脂81は、素子基板1と封止基板2との間に設けられて薄膜封止層74の少なくとも発光領域9に対応する部位を覆うものである。封止樹脂81の材料としては、例えばウレタン系樹脂やアクリル系樹脂に硬化剤としてイソシアネートを添加した低弾性樹脂を用いることができる。
【0091】
シール材80は、素子基板1と封止基板2との間に、封止樹脂81を囲むように非表示領域に設けられたものである。シール材80の材料としては、水分透過率が低い材料、例えばエポキシ系樹脂に硬化剤として酸無水物を添加し、促進剤としてシランカップリング剤を添加した高接着性の接着剤を用いることができる。
【0092】
このような可撓性を有する有機ELパネル10の製造方法、とりわけ素子基板1と封止基板2とをそれぞれの厚みが20μm以上50μm以下とする方法としては、当該厚みを有するガラス基板を用いてもよいが、ガラス基板の取り扱い上あるいはガラス基板上に各構成を形成する際に破損などのおそれがあるためあまり好ましくない。
そこで、例えば500μm程度の厚みのガラス基板を用い、素子基板1と封止基板2とを接合した後に、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いて所望の厚みまで研磨する方法やフッ酸などのエッチング溶液に浸漬してケミカルエッチングする方法を用いることが好ましい。
【0093】
次に、電気泳動パネル110について図6および図7を参照して説明する。図6は電気泳動パネルの電気的な構成を示す等価回路図、図7は電気泳動パネルの構造を示す概略断面図である。
【0094】
図6に示すように、電気泳動パネル110は、互いに絶縁され交差する複数の走査線113aと複数のデータ線114aとを有する。走査線113aとデータ線114aとの交差部に対応して画素117が形成され、各々の画素117に走査線113aとデータ線114aとが接続されている。画素117は、走査線113aの延在方向と、データ線114aの延在方向とにマトリックス状に配列されている。
画素117は、画素スイッチング素子としての薄膜トランジスター(TFT)121と、保持容量122と、一対の電極としての画素電極124および共通電極125と、該一対の電極間に挟持された電気泳動層126とを有する。
【0095】
TFT121は、N型MOS(Metal Oxide Semiconductor)TFTで構成されている。TFT121のゲート端には走査線113a、ソース端にはデータ線114a、ドレイン端には保持容量122の一方の電極と画素電極124とがそれぞれ接続されている。
保持容量122は、後述する素子基板上に形成され、誘電体膜を介して対向配置された一対の電極からなる。保持容量122の一方の電極はTFT121に接続され、他方の電極は走査線113aと並行して配置された容量線118に接続されている。保持容量122によってTFT121を介して書き込まれた画像信号を一定期間だけ維持することができる。
【0096】
走査線113aは走査線駆動回路113と接続されている。走査線駆動回路113は、コントローラー(図示省略)から供給されるタイミング信号に基づいて、走査線113aのそれぞれに選択信号をパルス状に順次供給し、走査線113aの一本一本を排他的に順次選択状態にする。選択状態とは、走査線113aに接続されるTFT121がオンしている状態を指す。
【0097】
データ線114aはデータ線駆動回路114と接続されている。データ線駆動回路114は、コントローラー(図示省略)から供給されるタイミング信号に基づいて、データ線114aのそれぞれに画像信号を供給する。本実施形態では説明を容易にするため、画像信号はハイレベルの電位VH(例えば15V)又はローレベルの電位VL(例えば0V)の2値的な電位をとるものとする。なお、電気泳動層126は画素電極124と共通電極125との間に与えられた電位によって、白表示と黒表示とを切り替えて表示可能であり、白色が表示されるべき画素117に対してローレベルの画像信号(電位VL)が供給され、黒色が表示されるべき画素117に対してハイレベルの画像信号(電位VH)が供給される構成となっている。
【0098】
共通電極125には、共通電極駆動回路(図示省略)から共通電極電位Vcomが供給される。共通電極駆動回路は、例えばDAC(波形生成回路)と、オペアンプ(電流増幅回路)とを備えて構成される。DACは、入力された設定信号Vsetから電位波形を生成するD/Aコンバーターである。DACから出力された電位波形は、オペアンプで電流増幅され、共通電極125に供給される。共通電極駆動回路では、DACにより任意の電位波形を生成できるため、共通電極電位Vcomを、画素117に書き込む階調に応じて変化させることもできる。
なお、本実施形態では、共通電極電位Vcomはローレベルの電位VL(例えば0V)、又はハイレベルの電位VH(例えば15V)の2値的な電位をとるものとしている。
【0099】
容量線118には、容量線駆動回路(図示省略)から容量線電位Vssが供給される。容量線駆動回路は、例えば、排他的に動作する2つのスイッチング素子を備えたスイッチ回路として構成される。一方のスイッチング素子は、ハイレベル(VH)の電源から供給される電位を出力端子に対してスイッチングする。他方のスイッチング素子はローレベル(VL)の電源から供給される電位を出力端子に対してスイッチングする。2つのスイッチング素子の制御端子には、選択信号および反転選択信号がそれぞれ入力され、2つのスイッチング素子が互いに排他的に動作する。
なお、本実施形態では、共通電極電位Vcomがローレベルの電位VL(例えば0V)、又はハイレベルの電位VH(例えば15V)を容量線電位Vssとして出力するとしているが、スイッチング素子に接続する電源の電位を変更することで、任意の容量線電位Vssを出力することが可能である。
【0100】
図7に示すように、電気泳動パネル110は、素子基板111と対向基板112との間に電気泳動層126が挟持された構成を備えている。なお、本実施形態では、対向基板112側に画像を表示することを前提として説明する。
【0101】
素子基板111は、例えばガラスやプラスチック等からなる基板を用いることができる。素子基板111上には、上述したTFT121、保持容量122、走査線113a、データ線114a、容量線118などが作り込まれた積層構造が形成されている。この積層構造の上層側に複数の画素電極124がマトリックス状に形成されている。
対向基板112は、例えばガラスやプラスチック等からなる透明な基板を用いることができる。対向基板112における素子基板111側には、共通電極125が複数の画素電極124と対向し、少なくとも表示領域119に亘って形成されている。共通電極125は、例えばマグネシウム銀(MgAg)、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物等の透明導電材料により形成されている。
【0102】
電気泳動層126は、電気泳動粒子をそれぞれ含んでなる複数のマイクロカプセル150から構成されている。複数のマイクロカプセル150は、例えば樹脂等からなるバインダー130および接着層131によって素子基板111および対向基板112間で固定されている。なお、電気泳動層126が予め対向基板112側にバインダー130によって固定されてなる電気泳動シートと、当該電気泳動シートとは別途製造され、画素電極124等が形成された素子基板111とを、例えば熱硬化型または紫外線硬化型のエポキシ系接着剤からなる接着層140により接着することで製造されている。
マイクロカプセル150は、画素電極124および共通電極125間に挟持され、1つの画素117内に(言い換えれば1つの画素電極124に対して)1つ又は複数配置されている。
【0103】
図7中に示した拡大図は、マイクロカプセル150の内部構造を示す断面図である。マイクロカプセル150は、被膜151の内部に分散媒152と、複数の白色粒子153と、複数の黒色粒子154とが封入された構成を備える。マイクロカプセル150は、例えば、30μm程度の粒径を有する球状に形成されている。
被膜151は、マイクロカプセル150の外殻として機能し、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル等のアクリル樹脂、ユリア樹脂、アラビアガム、ゼラチン等の透光性を有する高分子樹脂から形成されている。
分散媒152は、白色粒子153および黒色粒子154をマイクロカプセル150内(言い換えれば被膜151内)に分散させてなる媒質である。分散媒152としては、水、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール、メチルセルソルブなど)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、脂肪族炭化水素(ぺンタン、ヘキサン、オクタンなど)、脂環式炭化水素(シクロへキサン、メチルシクロへキサンなど)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、長鎖アルキル基を有するベンゼン類(キシレン、ヘキシルベンゼン、ヘブチルベンゼン、オクチルベンゼン、ノニルベンゼン、デシルベンゼン、ウンデシルベンゼン、ドデシルベンゼン、トリデシルベンゼン、テトラデシルベンゼンなど))、ハロゲン化炭化水素(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンなど)、カルボン酸塩などを例示することができ、その他の油類であってもよい。これらの物質は単独又は混合物として用いることができ、さらに界面活性剤などを配合してもよい。
【0104】
白色粒子153は、例えば、二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモン等の白色顔料からなる粒子(高分子あるいはコロイド)であり、例えば負に帯電されて用いられる。黒色粒子154は、例えば、アニリンブラック、カーボンブラック等の黒色顔料からなる粒子(高分子あるいはコロイド)であり、例えば正に帯電されて用いられる。
これらの顔料には、必要に応じ、電解質、界面活性剤、金属石鹸、樹脂、ゴム、油、ワニス、コンパウンドなどの粒子からなる荷電制御剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、シラン系カップリング剤等の分散剤、潤滑剤、安定化剤などを添加することができる。
【0105】
白色粒子153および黒色粒子154は、画素電極124と共通電極125との間に発生する電場(電位差)によって分散媒152中を移動するため、共通電極125側に集まった粒子の色調によって、画素117の表示色が左右されることになる。すなわち、該電位差によって白表示と黒表示とのいずれかを行うことができる。
さらには、該電位差を保持させれば、白または黒の表示状態を維持することができる。すなわち、電気泳動パネル110は表示のために常に電力を必要とする自発光型の有機ELパネル10に比べて省電力な表示パネルである。
【0106】
また、白色粒子153または黒色粒子154に代えて、例えば赤色、緑色、青色などの顔料を用いてもよい。かかる構成によれば、画素117において赤色、緑色、青色などを表示することができる。さらには、各表示色の色再現性を高めるために、対向基板112と共通電極125との間に、赤色、緑色、青色に対応する着色層(所謂カラーフィルター層)を設けてもよい。
【0107】
本実施形態では、有機ELパネル10と同様に、電気泳動パネル110における素子基板111と対向基板112は、それぞれガラス基板を用いている。また、有機ELパネル10と同様に、薄型化して可撓性を付与するために、ガラス基板の厚みを20μm以上50μm以下としている。ガラス基板を薄型化する方法は、前述した有機ELパネル10の場合と同様に、例えば500μm程度のガラス基板を用い、素子基板111と対向基板112とを電気泳動層126を挟んで接着した後に、CMP法やケミカルエッチング法を用いて所望の厚みとなるように薄型化することが好ましい。
【0108】
<有機EL装置の製造方法>
次に、本実施形態の有機EL装置100の製造方法、とりわけ一対のフィルムシート8を用いたラミネート方法について、図8および図9を参照して説明する。図8および図9は有機EL装置の製造方法を説明する概略斜視図である。
【0109】
本実施形態の有機EL装置100の製造方法は、シート状の放熱部材50の一部52aが一対のフィルムシート8の外部に露出するように一対のフィルムシート8の間に有機ELパネル10と放熱部材50と電気泳動パネル110とを重ねて配置する配置工程を備えている。また、一対のフィルムシート8と有機ELパネル10、放熱部材50、電気泳動パネル110の外周端面との間に形成された隙間に封止樹脂61を配置する封止樹脂配置工程を備えている。さらに、有機ELパネル10、放熱部材50、電気泳動パネル110、封止樹脂61が挟まれた一対のフィルムシート8を一対の加圧手段により加圧し、一対のフィルムシート8を有機ELパネル10並びに放熱部材50、電気泳動パネル110の周縁部で封着するラミネート工程とを備えている。
【0110】
まず配置工程では、図8に示すように、各構成部材を平面的かつ立体的な所定の位置に配置する。具体的には、放熱部材50に対して有機ELパネル10と電気泳動パネル110とを重ね合わせておく。放熱部材50は前述したように粘着層51bを有する放熱シート51と放熱板52とにより構成されているので、放熱シート51のグラファイトシート51a側のセパレーターを外して有機ELパネル10と重ね合わせる。同様にして放熱板52の反対側に設けられたもう一方の放熱シート51におけるグラファイトシート51a側のセパレーターを外して電気泳動パネル110と重ね合わせる(図3参照)。また、放熱板52と各中継基板5A,5B,5C,115A,115B,115Cとの間にスペーサーSP1,SP2を配置する(図2参照)。これにより有機ELパネル10と電気泳動パネル110とで放熱部材50を挟んだ構造の表示部積層体ができあがる。
【0111】
一方のフィルムシート8を接着層8bが上方に向くように配置し、上記表示部積層体のうち電気泳動パネル110が下方を向くように配置する。また、放熱板52の一部52aが平面的にフィルムシート8からはみ出るように配置する。このとき、フィルムシート8の接着層8b側において表示部積層体の外周に相当する領域および電気泳動パネル110の端子部111aに相当する領域に封止樹脂61を予め塗布しておく。また、有機ELパネル10の端子部1a上にも封止樹脂61を塗布しておく。つまり、一対のフィルムシート8によりラミネートするにあたって隙間となる部分に封止樹脂61を予め塗布しておく。そして、表示部積層体を覆うように他方のフィルムシート8を重ねて配置する。つまり、封止樹脂配置工程は、配置工程と同時に進行する。
【0112】
ここでは、上記のようにしてすべての構成部材が重ね合わされた状態を被ラミネート部材と呼ぶことにする。
【0113】
ラミネート工程では、図8に示すように、ラミネート装置200を用いる。ラミネート装置200は、一対の加圧手段として周面に熱電導性を有するエラストマーなどの弾性部材が設けられた一対のローラー201,202を有している。ラミネート装置200は、一対のローラー201,202を回転軸が互いに平行となるように保持すると共に、互いに加圧および加熱可能な構成を備えている。ローラー201,202はおよそ80℃〜120℃に加熱される。
そして、図9に示すように、放熱部材50の一部52aがはみ出た側つまり中継基板5A,5B,5C,115A,115B,115Cがはみ出た側に対して反対側の辺部が一対のローラー201,202と平行となるようにして、被ラミネート部材をラミネート装置200に投入する。このような投入の仕方によれば、気泡を押し出すようにラミネートしてゆくので、被ラミネート部材における段差、例えば放熱部材50と有機ELパネル10や電気泳動パネル110との間の段差によって、被ラミネート部材の表面や端部に気泡が残存するおそれが少ない。そのため、表示品質や封止性能に優れた有機EL装置100が提供できると共に、フィルムシート8の表面からの放熱が残存した気泡によって阻害されない。
【0114】
また、前述したようにラミネート後に空間が発生し易い被ラミネート部材の少なくとも3辺に沿った部分および端子部1a,111aには、封止樹脂61が予め塗布されている。したがって、上記空間を埋めた後の余分な封止樹脂61もフィルムシート8の端部へと押し出されて額縁状に盛り上がった部分62となる(図1および図2参照)。そして、被ラミネート部材の周縁部において一対のフィルムシート8同士が熱圧着され封着される。ラミネートされた被ラミネート部材はローラー201,202間から押し出されてラミネート工程が終了する。
このようなラミネート工程は、通常環境下で行ってもよいが、封着性を考慮して減圧環境下で行う。図8および図9では、ローラー201,202のみを図示しているが、ラミネート装置200は、内部環境を所望の気圧環境に設定可能なチャンバー(図示省略)を有している。
【0115】
ラミネートされた有機EL装置100における残留応力を取り除くためにアニーリング処理を行うことが望ましい。アニーリング処理は、引き続き減圧環境で行っても良いし、通常環境下で行っても良い。特に、本実施形態では、基材フィルム8aに接着層8bが設けられたフィルムシート8を用いたが、フィルムシート8として架橋成分を含んだ熱溶着タイプの樹脂フィルムを用いる場合には、約100℃でアニーリング処理し、架橋を完全なものとすることが好ましい。
ラミネートに用いられるラミネート装置200は、一対のローラー201,202を備えたロールラミネート方式に限定されるものではない。例えば、1枚の板状加熱板(ホットプレート)上に準備体をセットし、変形するゴムシートを気圧差により当該準備体に押し当てて、加熱および加圧するダイアフラム方式による真空ラミネート装置を用いてもよい。
【0116】
次に、本実施形態の有機EL装置100の放熱効果について、図10および図11を参照して説明する。図10は有機EL装置を発光させたときの発光領域の温度の経時変化を示すグラフである。図10において、横軸は時間、縦軸は発光領域の全面(全画素)を発光させたときの温度(フィルムシート8の表面の温度)を示している。
【0117】
測定は室温環境下(23℃)で行い、非点灯の状態から始めて100分間連続して発光させ、その間の表面温度を計測した。本実施形態の有機EL装置100は、OLED(有機ELパネル10)+放熱部材+EPD(電気泳動パネル110);実施例1として表示している。比較対象として、電気泳動パネル110を備えていない有機ELパネル10と放熱部材とをフィルムシート8によってラミネートされたものを片面発光:放熱部材;実施例2として表示している。さらに、有機ELパネル10だけを一対のフィルムシート8によりラミネートしたものを片面発光;放熱対策無;比較例として表示している。
【0118】
図10に示すように、放熱対策が施されていない比較例では、表面温度が通電後10分程度で55℃に達し、その後はほぼ一定の温度となっている。しかしながら、実用上、直接フィルムシート8に触れて取り扱うことは難しい。
実施例2では、表面温度が通電後同じく10分程度でおよそ35℃まで上昇するが、その後はほぼ一定の温度を保っている。したがって、有機EL装置100内で有機EL素子17からの発熱が籠らずに、放熱部材50を通じて外部に効率よく放熱されていることが分かる。
さらに、実施例1では、表面温度が通電後同じく10分程度でおよそ30℃まで上昇するが、その後はほぼ一定の温度を保っている。したがって、実施例2に比べて放熱性が改善されていることが分かる。つまり、放熱部材50にさらに受光型の表示パネルである電気泳動パネル110を重ねることにより、熱容量が大きくなり放熱効果を高めている。
【0119】
図11は有機EL装置の表面温度分布を示す図である。詳しくは、有機EL装置100において、発光領域9を互いに離間した縦横3つずつ合計9つの発光領域に分けて発光させる。そして、発光状態の有機EL装置100を赤外線カメラで撮像し、その表面温度分布をサーモグラフィーとして表したものである。
【0120】
図11に示すように、選択的に発光させた9つの発光領域は、それぞれ30℃程度となっているが、その周辺の非発光領域もほぼ30℃となっており、発光領域9の全体に亘って発熱が効率よく分散されていることが分かる。
【0121】
なお、有機EL装置100の周辺温度はほぼ23℃であり、図中の中央上部で島状に表面温度が高くなっている部分(およそ40℃)は、中継基板5A上に実装されたドライバーIC6である。また、有機EL装置100の中央に向かって延びた4本の紐状の部分は、表面温度を直接計測しているプローブの接続コードである。
【0122】
以上に述べた前記第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0123】
(1)有機EL装置100は、有機ELパネル10、放熱部材50、電気泳動パネル110がこの順に積み重ねられた可撓性を有する表示部積層体を一対のフィルムシート8によってラミネートされた構造となっている。また、放熱部材50の一部52aがフィルムシート8の外側にはみ出すようにラミネートされ露出しているので、有機ELパネル10における発熱を効率的に放熱することができる。したがって、発熱によって有機ELパネル10の輝度が変動することなく、安定した発光特性が得られる。また、受光型の表示パネルである電気泳動パネル110は、放熱性を高めるだけでなく、有機ELパネル10からの発熱を利用できるので、例えば0℃以下の低温状態でも安定した表示特性を発揮することができる。
(2)放熱部材50は、熱伝導性がよくバネ性を有する厚みが50μmのリン青銅からなる放熱板52に、層内よりも面内の熱伝導性が高いグラファイトシート51aを含む放熱シート51が積層されたものである。そして、グラファイトシート51a側が有機ELパネル10に粘着層51bを介して重ねられているので、有機ELパネル10を局所的に発光させても、その発熱を有機ELパネル10の発光領域9に亘って分散させることができる。すなわち、発熱による輝度むらなどが起こり難い。
また、中継基板5A,5B,5C,115A,115B,115Cが取り出された方向と同じ方向に露出しているので、有機EL装置100の曲げにおける中継基板部分の曲げ強度を補強できる。
(3)有機EL装置100は、有機ELパネル10をはじめとする表示部積層体の各構成部材が薄型化されているため可撓性を有する。また、ガラス基板を用いて有機ELパネル10を構成し、且つガス透過性が低いフィルムシート8を用いて気密状態に封着しているので、外部からの水分や気体の浸入を防止し、有機ELパネル10を単独に用いる場合に比べて、長い発光寿命を実現している。
【0124】
(第2実施形態)
次に、本実施形態の電子機器について、図12を参照して説明する。図12(a)は電子機器の1例としてのディスプレイを示す概略斜視図、同図(b)はディスプレイ本体と有機EL装置との接続構造を示す要部概略断面図である。
【0125】
図12(a)および(b)に示すように、本実施形態の電子機器としてのディスプレイ1000は、一辺が長い直方体のディスプレイ本体1001と、ディスプレイ本体1001に接続される表示部としての有機EL装置100とを備えている。
【0126】
ディスプレイ本体1001の1面には、有機EL装置100を接続するための開口を有している。開口の内部には、図12(b)に示すように、有機EL装置100のフィルムシート8から外部に露出した中継基板5A,115A並びに放熱部材50の一部52aを保持して電気的に駆動回路部1003との接続を図るコネクター部1002が設けられている。他の中継基板5B,5C,115B,115Cの接続も同様である。
【0127】
このようなディスプレイ1000によれば、携帯に都合がよい薄型、軽量であることに加えて表示部が可撓性を有しているので、まるで紙のページをめくるように表示を確認することができる。
さらには、有機ELパネル10側にはカラー画像を表示させ、電気泳動パネル110側に白黒画像を表示させることができるので、表示させたい画像情報に合わせて使い分けできる。例えば、文字情報を主体とする場合には、電気泳動パネル110側に表示させ、高い視認性が得られる一方で、低消費電力をも実現できる。
【0128】
また、本実施形態では、ディスプレイ本体1001に1つの有機EL装置100を接続可能としているが、これに限らない。複数のコネクター部1002を内蔵させ、複数の有機EL装置100、または一対のフィルムシート8で有機ELパネル10と放熱部材50とをラミネートした前述の実施例2や、あるいは電気泳動パネル110だけをラミネートしたものを接続可能とすることもできる。
【0129】
なお、有機EL装置100を搭載可能な電子機器は、ディスプレイ1000に限らず、種々の電子機器に搭載することができる。例えば、パーソナルコンピューター、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、DVDビューワー、カーナビゲーション装置などの車載用ディスプレイ、電子手帳、POS端末、デジタルサイネージと呼ばれる電子広告媒体等が挙げられる。
【0130】
上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0131】
(変形例1)上記第1実施形態の有機EL装置100において、放熱部材50がフィルムシート8から外部に露出する方向は、一方向だけに限定されない。例えば、長辺側と短辺側とに露出させてもよい。さらに露出面積を拡大でき放熱性が改善できる。また、中継基板も同様な方向に接続部が露出するように配置すれば、接続部における曲げ強度も補強できる。
【0132】
(変形例2)上記第1実施形態の有機EL装置100において、放熱部材50の構成は、これに限定されない。放熱板52だけの構成として少なくとも有機ELパネル10と重ね合わせてもよい。
また、放熱部材50の形状は、シート状に限定されない。図13(a)〜(c)は、変形例の放熱部材を示す概略平面図である。例えば、図13(a)に示すように、変形例の放熱部材50Aは、有機ELパネル10の発光領域9における周辺領域に重なるように外形が額縁状となっている。これによれば、有機EL装置100の外周側へ効果的に放熱できる。また、図13(b)に示すように、変形例の放熱部材50Bは、発光領域9のほぼ中央領域と重なる外形となっている。これによれば、熱がこもり易い中央領域側の発熱を効率的に放熱できると共に放熱材料を有効活用できる。また、図11に示したように、駆動回路の少なくとも一部であるドライバーIC6も発熱する。したがって、有機ELパネル10において、ドライバーIC6が端子部1aに表面実装されているような場合には、図13(c)に示すように、変形例の放熱部材50Cは、上記放熱部材50Aに対してドライバーIC6と重なる部分が拡張されている。これにより、ドライバーIC6の発熱をも効率的に放熱できる。すなわち、放熱部材50は、有機ELパネル10の発熱部分(例えば発光領域9や端子部)に対して少なくとも一部が重なる形状とし、その発熱を一対のフィルムシート8の外部に放熱させる経路を有すればよい。
【0133】
(変形例3)上記第1実施形態の有機EL装置100において、電気泳動パネル110を必ず備える構成としなくてもよい。少なくとも有機ELパネル10と放熱部材50とを重ねる構成とすれば、相応の作用・効果が得られる。その場合には、放熱部材50は、放熱シート51と放熱板52とが積層された構成を採用できる。さらには、一対のフィルムシート8でラミネートしたときに一方の面が表示面となるので、表示面と反対側を覆うフィルムシート8は透明でなくてもよい。
【0134】
(変形例4)上記第1実施形態の有機EL装置100において、有機ELパネル10はトップエミッション型に限定されない。ボトムエミッション型の有機ELパネルとしてもよい。また、スイッチング素子としてのTFT11,12を備えたアクティブ駆動型に限らず、パッシブ駆動型であっても本発明を適用することができる。
さらには、有機ELパネル10は異なる発光色が得られカラー表示が可能な構成としたが、これに限定されず、単色発光としてもよい。例えば、図14に示すように、白色発光させて、照明装置として使用することも可能である。
【0135】
(変形例5)上記第1実施形態の有機EL装置100において、電気泳動パネル110は、マイクロカプセル方式の電気泳動層126を有するものに限定されない。例えば、帯電性を有する電子粉流体を画素117内に入れ、プラス・マイナス(極性)を切り替えることで表示のON−OFFを制御する電子粉流体方式の電気泳動パネルであってもよい。または、コレステリック液晶を用いた電気泳動パネルであっても良い。
【0136】
(変形例6)上記第1実施形態の有機EL装置100において、有機ELパネル10と放熱部材50を介して積層される受光型の表示パネルは、電気泳動パネル110に限定されない。例えば、反射型の液晶パネルとしても同様な放熱効果、表示効果を期待できる。
【符号の説明】
【0137】
1…素子基板、2…封止基板、8…フィルムシート、10…有機ELパネル、17…有機EL素子、50…放熱部材、51…放熱シート、51a…グラファイトシート、52…放熱板、52a…放熱部材の一部、61…封止樹脂、100…有機EL装置、110…電気泳動パネル、126…電気泳動層、201,202…一対の加圧手段としてのローラー、1000…電子機器としてのディスプレイ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子を備えた有機EL装置、有機EL装置の製造方法、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL装置は薄型、軽量な自発光素子として、携帯電話機やパーソナルコンピューター、車載用モニター等への応用が期待されている。最近では、高耐熱性のガラス基板を50μm〜100μm程度まで薄型化し、周辺駆動回路を内蔵したフレキシブルで高機能な有機EL装置の開発も進められている(特許文献1)。
【0003】
このような薄型のガラス基板を用いた有機EL装置は、機械的な衝撃に弱く、厚みも薄いため取り扱い性が難しいという問題があった。特許文献2では、類似の構造を有する液晶装置において、薄型ガラス基板を用いた液晶パネルを0.3mmの厚い偏光板で補強し、これらをラミネートフィルムで挟んで一体化した構造が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−58489号公報
【特許文献2】特許第4131639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ラミネートフィルムで覆われた有機ELパネルは発光時の熱がこもり易く、長時間使用すると、熱の影響により発光特性が変化してしまうという問題があった。特許文献2では、有機ELパネルの発光時の放熱の問題は考慮されておらず、適当な放熱手段も開示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例の有機EL装置は、有機EL素子を有する有機ELパネルと、放熱部材と、少なくとも一方が透明な一対のフィルムシートと、を備え、前記有機ELパネルと前記放熱部材とは、互いに重ね合わされると共に前記放熱部材の一部を外部に露出させた状態で、前記一対のフィルムシートにより挟まれて封着されていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、有機ELパネルと放熱部材とを一対のフィルムシートで一体化し、有機ELパネルを駆動したときに有機EL素子からの発熱を放熱部材に伝えると共に、一対のフィルムシートの外部に露出した放熱部材の一部から放熱することができる。したがって、有機EL素子の発熱により有機ELパネルの発光特性が変化し難い有機EL装置を提供することができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例の有機EL装置において、前記放熱部材は、層厚方向よりも面内方向に高い熱伝導性を有する放熱シートと金属製の放熱板との積層体であり、前記放熱シートに対して前記有機ELパネルが重ね合わされており、前記放熱板の一部が前記一対のフィルムシートの外部に露出していることを特徴とする。
この構成によれば、局所的に有機EL素子が発熱したとしても、その発熱を放熱シートを介して放熱板全体に亘って分散させ速やかに放熱することができる。そのため、有機ELパネルの内部が高温に加熱されることがなく、発光特性を概ね一定に維持することができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例の有機EL装置において、前記放熱部材の前記有機ELパネルが重ね合わされた側に対して反対側に、電気泳動層を有する電気泳動パネルが配置されており、前記有機ELパネルと前記放熱部材と前記電気泳動パネルとが前記一対のフィルムシートにより挟まれて封着されていることを特徴とする。
この構成によれば、電気泳動パネルは受光型のディスプレイであって、電気泳動パネル自体が放熱機能を有しており、放熱部材の放熱効果をさらに高めることができる。また、電気泳動パネルは有機ELパネルからの放熱を受けて、例えば外気が室温よりも低い状態であっても安定した表示特性を実現することができる。すなわち、自発光型の有機ELパネルと受光型の電気泳動パネルとを備え、互いに安定した表示品質が得られる有機EL装置を提供できる。
【0011】
[適用例4]上記適用例の有機EL装置において、前記電気泳動パネルは、前記放熱部材に対して層厚方向よりも面内方向に高い熱伝導性を有する放熱シートを介して重ね合わされていることが好ましい。
この構成によれば、有機ELパネルからの発熱を放熱部材と放熱シートとを介して電気泳動パネル全体に亘って伝えることができる。すなわち、放熱効果がさらに向上する。
【0012】
[適用例5]上記適用例の有機EL装置において、少なくとも前記一対のフィルムシートと前記有機ELパネルの外周端面との間に形成された隙間に封止樹脂が充填され、前記一対のフィルムシートにより前記有機ELパネルが封着されていることが好ましい。
この構成によれば、一対のフィルムシートの間において有機ELパネルが気密な状態で封着される。したがって、一対のフィルムシートの外部から酸素や水蒸気などの気体が有機ELパネルに侵入して、有機EL素子の発光寿命が短くなるという不具合が防止される。すなわち、長い発光寿命を有する有機EL装置を実現できる。
【0013】
[適用例6]上記適用例の有機EL装置において、前記有機ELパネルは、ガラス基板からなる基材と、前記基材上に設けられた前記有機EL素子と、を有し、前記基材の厚みが20μm以上50μm以下であることを特徴とする。
この構成によれば、有機ELパネルが可撓性を有することになり、一対のフィルムシートによって封着されていても、曲げることが可能な有機EL装置を提供することができる。
また、耐熱性の高いガラス基板を用いているため、例えば、低温ポリシリコン技術等により基材上に走査線駆動回路等の周辺駆動回路を形成することができ、これにより、有機EL装置の高性能化に寄与することができる。
さらに外部応力によってガラス基板が破損しても、一対のフィルムシートにより封着されているので、破片がむやみに飛散することを防止できる。
【0014】
ここで、基材の厚みが20μmよりも薄くなると、ディンプルやピットと呼ばれる欠陥が多くなり、発光欠陥が顕著になる。また、50μmよりも厚くなると、十分な可撓性を付与できなくなると共に、基材上に形成された種々の樹脂層、例えば有機EL素子を覆う平坦化樹脂層等が、発光時の熱によって膨張し、有機EL素子を駆動する駆動素子を圧迫する惧れがある。しかし、20μm以上50μm以下の厚みでは、発光欠陥が1個以下となり、殆ど欠陥のない優れた発光特性が得られており、また上記厚みにおいては、有機ELパネルを一対のフィルムシートに挟み込む際の圧力によって殆ど割れが発生せず、高い歩留まりで製造可能な有機EL装置が提供できた。
【0015】
[適用例7]上記適用例の有機EL装置において、前記放熱シートがグラファイトシートを含むことが好ましい。
この構成によれば、グラファイトシートは層厚方向よりも面内方向に高い熱伝導性を有するので、面内における放熱性を改善できる。また、屈曲等に対しても高い耐久性を実現できる。
【0016】
[適用例8]本適用例の有機EL装置の製造方法は、少なくとも一方が透明性を有する一対のフィルムシートにより有機EL素子を有する有機ELパネルが挟まれて封着された有機EL装置の製造方法であって、放熱部材の一部が前記一対のフィルムシートの外部に露出するように前記一対のフィルムシートの間に前記有機ELパネルと前記放熱部材とを重ねて配置する配置工程と、少なくとも前記一対のフィルムシートと前記有機ELパネルの外周端面との間に形成された隙間に封止樹脂を配置する封止樹脂配置工程と、前記有機ELパネルと前記放熱部材と前記封止樹脂とが挟まれた前記一対のフィルムシートを一対の加圧手段により加圧し、前記一対のフィルムシートを前記有機ELパネルの周縁部で封着するラミネート工程とを備えたことを特徴とする。
【0017】
この方法によれば、有機ELパネルを駆動したときに有機EL素子からの発熱を放熱部材に伝えると共に、一対のフィルムシートの外部に露出した放熱部材の一部から放熱することができる。したがって、有機EL素子の発熱により有機ELパネルの発光特性が変化し難い有機EL装置を製造することができる。
また、一対のフィルムシートとの上記隙間が封止樹脂で充填されるので、ラミネート工程において上記隙間に熱伝導を阻害する気泡が残存することを低減して、熱がむらなく伝わる有機EL装置を製造することができる。
【0018】
[適用例9]上記適用例の有機EL装置の製造方法において、前記放熱部材は、層厚方向よりも面内方向に高い熱伝導性を有する放熱シートと金属製の放熱板との積層体であり、前記配置工程は、前記有機ELパネルに対して前記放熱シートを重ね合わせると共に、前記放熱板の一部が前記一対のフィルムシートの外部に露出するように前記放熱部材を配置することを特徴とする。
この方法によれば、局所的に有機EL素子が発熱したとしても、その発熱を放熱シートを介して放熱板全体に亘って分散させ且つ放熱することができる。ゆえに、該発熱に伴う有機ELパネルの輝度むらを低減可能な有機EL装置を製造することができる。
【0019】
[適用例10]上記適用例の有機EL装置の製造方法において、前記一対のフィルムシートは、前記有機ELパネルと前記放熱部材とに面する側に熱可塑性の接着剤または粘着剤からなる接着層を有し、前記ラミネート工程では、前記一対の加圧手段により加圧すると共に加熱して、前記一対のフィルムシートを前記有機ELパネルの周縁部で接着することが好ましい。
この方法によれば、一対のフィルムシートの間に、少なくとも有機ELパネルをより気密な状態で封着することができる。
【0020】
[適用例11]上記適用例の有機EL装置の製造方法において、前記配置工程は、前記放熱部材の前記有機ELパネルが重ね合わされた側に対して反対側に、電気泳動層を有する電気泳動パネルをさらに重ねて配置し、前記ラミネート工程は、前記一対のフィルムシートを前記有機ELパネルと前記放熱部材および前記電気泳動パネルの周縁部で封着するとしてもよい。
この方法によれば、有機ELパネルからの発熱は放熱部材と放熱シートとを介して電気泳動パネルに放熱される。電気泳動パネルは受光型の表示パネルであって、伝わった熱を放熱することができる。また、電気泳動パネルは有機ELパネルからの放熱を受けて、例えば外気が室温よりも低い状態であっても安定した表示特性を実現することができる。すなわち、自発光型の有機ELパネルと受光型の電気泳動パネルとを備え、互いに安定した表示品質が得られる有機EL装置を製造することができる。
【0021】
[適用例12]上記適用例の有機EL装置の製造方法において、前記配置工程は、前記放熱部材に対して層厚方向よりも面内方向に高い熱伝導性を有する放熱シートを介して前記電気泳動パネルを重ね合わせることが好ましい。
この方法によれば、有機ELパネルからの発熱を放熱部材と放熱シートとを介して電気泳動パネル全体に亘って伝えることができる。すなわち、放熱効果がさらに向上した有機EL装置を製造することができる。
【0022】
[適用例13]本適用例の電子機器は、上記適用例の有機EL装置を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、有機EL素子の発光にともなう発熱の影響を受け難く、安定した発光特性を有する有機EL装置を備えているので、見栄えのよい表示品質を有する電子機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)および(b)は有機EL装置の構成を示す概略平面図。
【図2】図1(a)のA−A’線で切った有機EL装置の構造を示す概略断面図。
【図3】放熱シートの構造を示す概略断面図。
【図4】有機ELパネルの電気的な構成を示す等価回路図。
【図5】有機ELパネルの構造を示す断面図。
【図6】電気泳動パネルの電気的な構成を示す等価回路図。
【図7】電気泳動パネルの構造を示す概略断面図。
【図8】有機EL装置の製造方法を説明する概略斜視図。
【図9】有機EL装置の製造方法を説明する概略斜視図。
【図10】有機EL装置を発光させたときの発光領域の温度の経時変化を示すグラフ。
【図11】有機EL装置の表面温度分布を示す図。
【図12】(a)は電子機器の1例としてのディスプレイを示す概略斜視図、(b)はディスプレイ本体と有機EL装置との接続構造を示す要部概略断面図。
【図13】(a)〜(c)は変形例の放熱部材を示す概略平面図。
【図14】有機EL装置における変形例の使用形態を示す概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
【0025】
(第1実施形態)
<有機EL装置>
本実施形態の有機EL装置について、図1〜図7を参照して説明する。図1(a)および(b)は有機EL装置の構成を示す概略平面図、図2は図1(a)のA−A’線で切った有機EL装置の構造を示す概略断面図、図3は放熱シートの構造を示す概略断面図である。
【0026】
図1(a)および(b)に示すように、本実施形態の有機EL装置100は、一方の表面側に設けられた有機ELパネル10と、他方の表面側に設けられた電気泳動パネル110とを備えている。有機ELパネル10と電気泳動パネル110とはシート状の放熱部材50を介して重ね合わされており、さらに一対のフィルムシート8によって挟まれて封着されている。
【0027】
シート状の放熱部材50は、少なくとも有機ELパネル10の発光領域(表示領域)9に亘って平面的に重ね合わされると共に、その一部52aが一対のフィルムシート8の外部に露出するように重ね合わされている。
【0028】
図1(a)に示すように、有機ELパネル10は、発光領域9内に配設された複数の発光画素7を有する。複数の発光画素7は、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の異なる発光色が得られるものであって、同色の発光画素7が同一方向に配列し、異なる色の発光画素7が交互に配列する所謂ストライプ方式に基づいて配置されている。各発光画素7には、後述する発光素子としての有機EL素子が設けられている。
【0029】
有機ELパネル10は、有機EL素子が設けられた素子基板1と素子基板1上の有機EL素子を封止する封止基板2とを有している。四角形の素子基板1は同じく四角形の封止基板2に対して短辺が長くなっており、封止基板2から平面的にはみ出した部分が端子部1aとなっている。端子部1aには、有機ELパネル10を駆動するための外部駆動回路との接続を図る3つの中継基板5A,5B,5Cが電気的に接続されている。ほぼ等間隔で端子部1aに配置された3つの中継基板5A,5B,5Cのうち、中央に位置する中継基板5AにはドライバーIC6が実装されている。
【0030】
一対のフィルムシート8から外部に露出した放熱部材50の一部52aは、ほぼ3つの中継基板5A,5B,5Cの先端部の位置まで延出されている。
【0031】
図1(b)に示すように、有機ELパネル10の背面側に設けられた電気泳動パネル110は、電気泳動層を備えた受光型の表示パネルであって、表示領域119内に配置された複数の画素117を有する。画素117は、電気泳動層を駆動制御することによって白色と黒色とを切り替えて表示することができる。
電気泳動層は、四角形の素子基板111と対向基板112との間に挟持されており、画素117は短辺方向と長辺方向とにマトリックス状に配置されている。
【0032】
素子基板111は同じく四角形の対向基板112に対して短辺が長くなっており、対向基板112から平面的にはみ出した部分が端子部111aとなっている。端子部111aには、電気泳動パネル110を駆動するための外部駆動回路との接続を図る3つの中継基板115A,115B,115Cが電気的に接続されている。ほぼ等間隔で端子部111aに配置された3つの中継基板115A,115B,115Cのうち、中央に位置する中継基板115AにはドライバーIC116が実装されている。
【0033】
図2に示すように、有機EL装置100は、有機ELパネル10と電気泳動パネル110とが放熱部材50を介して一対のフィルムシート8により一体化されたものである。
【0034】
フィルムシート8は、透明性を有する基材フィルム8aと基材フィルム8aの一方の面に形成された接着層8bとを有する。
基材フィルム8aは、外部からの水分やガスなどの浸入を防止する観点からガス透過性が低い透明な樹脂フィルムを用いることが好適である。
樹脂フィルムとしては、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)などのポリエステル、PES(ポリエーテルスルホン)、PC(ポリカーボネート)、PE(ポリエチレン)などの樹脂からなるフィルムが挙げられる。その厚みは、およそ50μm程度である。
【0035】
有機ELパネル10や電気泳動パネル110に接着可能な接着層8bを構成する部材としては、例えば熱可塑性のエポキシ樹脂接着剤を用いることができる。また、粘着性を有する粘着剤としてもよい。粘着剤を用いればリペア性を実現できる。言い換えれば、接着層8bは、基材フィルム8aと有機ELパネル10の封止基板2や電気泳動パネル110の対向基板112とを密着させて封着可能であれば接着剤、粘着剤のいずれも利用できる。
【0036】
有機ELパネル10と電気泳動パネル110との間に配置された放熱部材50は、例えば金属製の放熱板52の両面に放熱シート51が積層されたものである。
【0037】
放熱シート51は、層厚方向よりも面内方向に高い熱伝導性を有するものが好ましい。
図3に示すように、本実施形態では、基材として厚みがおよそ70μmのグラファイトシート51aを用い、その両面に粘着層51bを設け、一方の粘着層51bに厚みがおよそ50μmのタック性シート51cを積層したものを用いた。タック性シート51cの表面および他方の粘着層51bの表面を保護する目的で取り外しが可能なセパレーターが設けられている。
グラファイトシート51aは、図3中に円で囲んだ概略拡大図を見てもわかるようにグラファイトの層状構造が巨視的なスケールで積み重なった高配向性グラファイトを用いている。
粘着層51bは、例えば厚みがおよそ30μmの両面テープを用いた。
タック性シート51cとしては、例えば厚みがおよそ38μmのPETフィルムに粘着剤を塗布したものを用いた。
セパレーターは、PETフィルムの表面に離型処理が施されたものを用いた。
なお、このような放熱シート51としては、特開昭58−147087号公報、特開昭60−012747号公報、特開平7−109171号公報、特許第3948000号公報等に開示されたものを用いることができる。特に、パナソニック株式会社製のPGSグラファイトシート(商品名)は、熱伝導率が銅(Cu)の2〜4倍、アルミニウム(Al)の3〜6倍という高い熱伝導性を有し、紙のような柔軟性(可撓性)を備えていることから、本実施形態の放熱シート51として好適である。
【0038】
放熱板52としては、銅やアルミニウム等の金属又はその合金からなる高熱伝導率の金属板が好ましい。本実施形態では、リン青銅を用い、50μm程度まで薄くすることにより可撓性と形状復元性(バネ性)とを持たせている。
【0039】
まず、グラファイトシート51a側に設けられたセパレーターを外して有機ELパネル10と密着させる。続いて、タック性シート51c側に設けられたセパレーターを外して放熱板52と密着させる。同様にしてもう1つの放熱シート51のグラファイトシート51a側に設けられたセパレーターを外して電気泳動パネル110と密着させる。続いて、タック性シート51c側に設けられたセパレーターを外して放熱板52と密着させる。
このようにして、有機ELパネル10と電気泳動パネル110とが放熱部材50を介して重ね合わされている。
【0040】
本実施形態では、放熱部材50のうち放熱シート51が有機ELパネル10の発光領域9と少なくとも重なり合うように放熱シート51の平面積を確保している。そして、放熱板52の一部52aがフィルムシート8の外側に露出する構成とした。
なお、これに限らず、放熱シート51と放熱板52の大きさや形状を同じとして、その積層体の一部が露出する構成としてもよい。
【0041】
また、電気泳動パネル110と放熱板52との間に設けた放熱シート51は省略することもできる。少なくとも有機ELパネル10側に放熱シート51を設け、発熱を有機ELパネル10の面内に亘って分散させ放熱板52に伝えることが重要である。
【0042】
一対のフィルムシート8によりこれらの有機ELパネル10、放熱部材50、電気泳動パネル110を挟んで封着する場合、フィルムシート8との間に隙間が生ずる。例えば、図2に示すように、有機ELパネル10および放熱部材50並びに電気泳動パネル110の外周端部(端面がそろった部分)、素子基板1の端子部1aにおける中継基板5Aと封止基板2との間、同じく素子基板111の端子部111aにおける中継基板115Aと対向基板112との間、放熱板52の一部52aと中継基板5Aおよび中継基板115Aとの間が挙げられる。
【0043】
本実施形態では、これらの隙間に封止樹脂61を充填し、重ねられた有機ELパネル10、放熱部材50、電気泳動パネル110を一対のフィルムシート8により挟んで封着する(ラミネートする)。それぞれの外周端部においてはみ出たフィルムシート8の基材フィルム8a同士は接着層8bにより接着される。
【0044】
また、フィルムシート8によりラミネートしたときに、有機ELパネル10の端子部1aの端部で中継基板5Aが折り曲がって絶縁部や導体部にクラックが生じないように放熱板52との隙間を埋めるスペーサーSP1が配置されている。同様に、電気泳動パネル110の端子部111aの端部で中継基板115Aが折り曲がって絶縁部や導体部にクラックが生じないように放熱板52との隙間を埋めるスペーサーSP2が配置されている。
【0045】
封止樹脂61の充填方法やラミネート方法については、後述する有機EL装置100の製造方法において説明する。
【0046】
次に、有機ELパネル10について、図4および図5を参照して説明する。図4は有機ELパネルの電気的な構成を示す等価回路図、図5は有機ELパネルの構造を示す断面図である。
【0047】
図4に示すように、有機ELパネル10は、薄膜トランジスター(Thin Film Transistor、以下、TFTと呼ぶ)を用いたアクティブマトリックス型の有機ELパネルである。有機ELパネル10は、互いに絶縁された状態で交差する複数の走査線3aおよび複数のデータ線4aと、走査線3aに沿って延在する電源線3bとを備えている。
【0048】
これら走査線3aとデータ線4aとに囲まれた領域に発光画素7が配置されている。発光画素7は、走査線3aの延在方向とデータ線4aの延在方向とに沿ってマトリックス状に配置されている。
【0049】
各発光画素7には、陽極としての画素電極14、有機機能層15、陰極としての共通電極16によって構成された有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)17が設けられている。また、有機EL素子17を駆動制御する回路部としてのスイッチング用のTFT11と、駆動用のTFT12と、保持容量13とが設けられている。
有機機能層15は、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層が順に積層されたものであり、画素電極14から注入された正孔と共通電極16から注入された電子とが発光層において再結合し、励起して発光する。
有機機能層15の構成は、これに限定されず、より効率的に発光を促すための中間層や電子注入層を含んでいてもよく、公知の構成を採用することができる。
【0050】
走査線3aは、シフトレジスターおよびレベルシフターを備えた走査線駆動回路3に接続されている。また、データ線4aは、シフトレジスター、レベルシフター、ビデオライン、およびアナログスイッチを備えたデータ線駆動回路4に接続されている。
【0051】
走査線駆動回路3から走査線3aを経由してスイッチング用のTFT11に走査信号が送出されオン状態になると、データ線駆動回路4からデータ線4aを介して供給される画像信号が保持容量13に保持され、保持容量13の状態に応じて駆動用のTFT12のオン・オフ状態が決まる。そして、画素電極14が駆動用のTFT12を介して電源線3bに電気的に接続したとき(すなわちオン状態となったとき)、電源線3bから画素電極14に駆動電流が流れ、さらに有機機能層15を通じて共通電極16に電流が流れる。有機機能層15の発光層は、画素電極14と共通電極16との間に流れる電流量に応じた輝度で発光する。
【0052】
前述した有機ELパネル10を駆動するドライバーIC6は、上記走査線駆動回路3および上記データ線駆動回路4のうち少なくとも一方と、電源線3bへ電力を供給できる構成とを有するものである。例えば、走査線駆動回路3は、有機ELパネル10の発光領域9の短辺に沿った周辺領域に回路部の一部として形成することも可能である。その場合には、ドライバーIC6は、上記データ線駆動回路4の構成を含むものとすればよい。また、上記走査線駆動回路3および上記データ線駆動回路4を有機ELパネル10の内部に造り込めば、ドライバーIC6を不要とすることもできる。
【0053】
図5に示すように、有機ELパネル10は、素子基板1と封止基板2とが対向して配置され、シール材80を介して接着され一体化されたものである。
【0054】
素子基板1上には複数の有機EL素子17が形成されている。有機EL素子17は、前述したように画素電極14と共通電極16とにより、例えば白色の光を発生する有機機能層15を挟持した構成を有する。複数の有機EL素子17を覆うように薄膜封止層74が形成されている。
【0055】
封止基板2は、透明なガラス基板やプラスチック基板を用いることができる。そして、有機EL素子17に対向する部分には、カラーフィルター層21が形成されている。カラーフィルター層21は、各色の発光画素7にそれぞれ対応して、赤色の着色層22R、緑色の着色層22G、青色の着色層22Bがマトリックス状に規則的(ストライプ方式)に配列された構成を有する。
また、カラーフィルター層21は、各着色層22R,22G,22Bを囲む領域に遮光層23を備えている。遮光層23は所謂ブラックマトリックス(BM)と呼ばれるものであって、実質的に発光画素7を区画するように封止基板2側に設けられている。遮光層23の材料としては、例えばCr(クロム)等を用いることができる。
また、カラーフィルター層21は、着色層22R,22G,22Bおよび遮光層23上を覆うオーバーコート層24と、オーバーコート層24上を覆う無機ガスバリア層25とを備えている。
【0056】
着色層22R,22G,22Bは、画素電極14上に形成された白色の有機機能層15に対向して平面的に重なるように配置されている。
着色層22R,22G,22Bの形成方法としては色材を含む感光性樹脂材料を塗布して、露光・現像することにより形成するフォトリソグラフィ法や、隔壁によって区画された膜形成領域に色材を含む液状体を塗布して乾燥させることにより形成する液状体塗布法などが挙げられる。
【0057】
オーバーコート層24は、例えばアクリルやポリイミド等の樹脂材料を用いて形成されており、発光領域9の内側から非発光領域の周辺のシール材80の形成領域近傍まで延設されている。
無機ガスバリア層25は、無機材料、例えば、酸化窒化シリコン(SiON)等の珪素化合物により形成されている。
【0058】
素子基板1の有機EL素子17から発せられた光は、それぞれに対応する着色層22R,22G,22Bを透過し、赤色光、緑色光、青色光の各色光として観察されるようになっている。
すなわち、有機ELパネル10は封止基板2側から発光が取り出されるトップエミッション構造となっている。
【0059】
有機EL素子17は、素子基板1上ではマトリックス状に規則的に配列され発光領域9を構成している。発光領域9の外側の領域は非発光領域である。なお、有機EL素子17は、R(赤)、G(緑)、B(青)の発光が得られる3種類の有機材料を使い分けて3種類の有機EL素子、例えば赤色光を発生する有機EL素子、緑色光を発生する有機EL素子、青色光を発生する有機EL素子としても良い。
【0060】
素子基板1は、透明なガラス基板やプラスチック基板、あるいは不透明なステンレス板やアルミ板、シリコン基板等の導電性基板を用いることができる。素子基板1は厚みを薄くすることにより可撓性を付与されている。
【0061】
本実施形態では、低温ポリシリコン技術を用いて周辺駆動回路内蔵型の有機ELパネル10を製造するので、素子基板1として耐熱性の高いガラス基板を用いている。
素子基板1の厚みは10μm以上100μm以下、好ましくは20μm以上50μm以下、より好ましくは20μm以上40μm以下である。
【0062】
例えば、素子基板1の厚みが20μmよりも薄くなると、ディンプルやピットと呼ばれる欠陥が多くなり、発光欠陥が顕著になる。
【0063】
また、50μmよりも厚くなると、素子基板1に十分な可撓性を付与できなくなると共に、素子基板1上に形成された種々の樹脂層、例えば有機EL素子17を覆う有機緩衝層76や、封止基板2との間に充填される封止樹脂81等が、発光時の熱によって膨張し、有機EL素子17を駆動制御するTFT12(TFT11)を圧迫する惧れがある。
【0064】
50μmよりも薄いガラス基板を用いた場合には、TFT12(TFT11)に加わる圧力をガラス基板が撓むことで緩和することができるが、ガラス基板の可撓性が低くなると、このような効果が得られにくくなり、駆動素子が破壊されたり、駆動素子の電気的特性が劣化してしまう惧れがある。特に、フィルムシート8で覆われた有機ELパネル10は発光時の熱がこもり易いので、通常の有機ELパネルに比べて、特別の配慮が必要となる。
【0065】
発明者は、このような一対のフィルムシート8を用いて封着する場合の特殊性に鑑み、ガラス基板の厚みと発光欠陥の発生数との関係を検討した。そして、ガラス基板の厚みが20μm以上50μm以下である場合に、特に良好な機械的強度と電気的特性が得られることが明らかになった。
【0066】
すなわち、ガラス基板の厚みが20μmよりも薄い場合には、ディンプル等の影響による発光欠陥が多くなり、50μmよりも厚くなると、TFT12(TFT11)の破損や電気的特性の劣化が生じ、20μm以上50μm以下の厚みでは、発光欠陥が1個以下となり、殆ど欠陥のない優れた発光特性が得られた。また、上記の厚みにおいては、少なくとも有機ELパネル10を一対のフィルムシート8に挟み込む際の圧力によって殆ど割れが発生せず、高い歩留まりで製造可能な有機EL装置100を実現できた。
【0067】
以上のように、20μm以上50μm以下の厚みのガラス基板を用いることで、一対のフィルムシート8で封着しても、良好な機械的強度と優れた電気的特性が得られるようになる。
【0068】
素子基板1上には、無機絶縁層71と樹脂平坦化層72とからなる回路層70が形成されている。無機絶縁層71は、例えば酸化珪素(SiO2)や窒化珪素(SiN)等の珪素化合物により形成されている。無機絶縁層71上には、有機EL素子17を駆動するためのTFT11,12、保持容量13、これらに繋がる走査線3a、電源線3b、データ線4aなどの回路部(図4参照)が形成されている。また、有機EL素子17の共通電極16に接続される配線19が形成されている。
【0069】
無機絶縁層71上には、Al(アルミニウム)合金等からなる金属反射層18が内装された樹脂平坦化層72が形成されている。樹脂平坦化層72は、絶縁性の樹脂材料、例えば感光性のアクリル樹脂や環状オレフィン樹脂等により形成されている。
【0070】
樹脂平坦化層72上の金属反射層18と平面的に重なる領域には、有機EL素子17の画素電極14が形成されている。画素電極14は、正孔注入性の高いITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)等の金属酸化物により形成されている。画素電極14は、樹脂平坦化層72および無機絶縁層71を貫通するコンタクトホール(図示省略)を介して、素子基板1上のTFT12に接続されている。
【0071】
樹脂平坦化層72上(回路層70上)には、有機EL素子17を区画するために、例えばアクリル樹脂等からなる絶縁性の隔壁層73が形成されている。隔壁層73は、画素電極14の上部を露出させる複数の開口部を有している。
【0072】
開口部と隔壁層73による凹凸形状に沿って、隔壁層73および画素電極14の上面を覆うように有機機能層15が形成されている。
【0073】
有機機能層15は、電界により注入された正孔と電子との再結合により励起して発光する発光層を含むものである。有機機能層15は、発光層以外の層をも含む多層構造とすることも可能である。発光層以外の層としては、正孔を注入し易くするための正孔注入層、注入された正孔を発光層へ輸送し易くするための正孔輸送層、電子を注入し易くするための電子注入層、注入された電子を発光層へ輸送し易くするための電子輸送層等、上記の再結合に寄与する層が挙げられる。
【0074】
有機機能層15の発光層としては、低分子系有機EL材料あるいは高分子系有機EL材料が挙げられる。
【0075】
低分子系有機EL材料は、正孔と電子との再結合により励起して発光する有機化合物のうち、分子量が比較的に低いものである。また、高分子系有機EL材料は、正孔と電子との再結合により励起して発光する有機化合物のうち、分子量が比較的に高いものである。
【0076】
これら低分子系有機EL材料あるいは高分子系有機EL材料は、有機EL素子17の発する色の光(白色光)に応じた物質となっている。発光層における再結合に寄与する層の材料は、この層に接する層の材料に応じた物質となっている。
【0077】
有機機能層15上には、有機機能層15をその凹凸形状に沿って覆うように、陰極としての共通電極16が形成されている。共通電極16は、例えば有機機能層15へ電子を注入し易くするための電子注入バッファー層と、電子注入バッファー層上に形成された電気抵抗の小さい導電層とを有する。
【0078】
電子注入バッファー層は、例えば、LiF(フッ化リチウム)やCa(カルシウム)、MgAg(マグネシウム‐銀合金)により形成されている。また、導電層は、例えばITOやAl等の金属により形成された電気抵抗の小さい導電層である。導電層は発光領域9の全面に形成されたものでなくても良く、例えば、MgとAgの合金からなる透明度の高い第1導電層を発光領域9の全面に形成し、Al等からなる低抵抗で透明度の低い第2導電層を補助電極として隔壁層73と重なる部分にストライプ状に形成しても良い。
【0079】
共通電極16は、発光領域9の全面を覆うと共に、発光領域9の周縁部(非表示領域)に形成されたAl等の無機導電膜からなる配線19と接続されている。配線19は、矩形に形成された発光領域9の3辺(図1に示した端子部1aが形成されていない辺)に沿って連続的に形成されている。
【0080】
また、共通電極16は、隔壁層73のうち、特に最外周を形成する部分、すなわち有機機能層15の最外周位置のものの外側部を覆った状態でこれを囲む部分(以下、囲み部材ともいう)の回路層70上で露出する部位全体を覆って形成されており、これにより、共通電極16が、上記囲み部材と共に、発光領域9に設けられた複数の有機EL素子17の外側を封止している。特に、有機EL素子17は、無機絶縁層71上に形成され、共通電極16の外周部は無機絶縁層71と接触しているため、複数の有機EL素子17の底面、上面、側面の全てが無機膜で覆われることになり、高い封止性能が実現される。
【0081】
共通電極16上には、無機絶縁層71、樹脂平坦化層72および有機EL素子17の共通電極16を覆う薄膜封止層74が形成されている。薄膜封止層74は、共通電極16の回路層70上で露出する部位全体を覆って無機絶縁層71と接する電極保護層75と、電極保護層75の少なくとも発光領域9に形成された部分を覆う有機緩衝層(平坦化樹脂層)76と、有機緩衝層76の回路層70上で露出する部位全体を覆って、電極保護層75または無機絶縁層71と接する無機ガスバリア層77とを備えている。
【0082】
電極保護層75は、無機材料、例えば、酸化窒化シリコン(SiON)等の珪素化合物により構成されている。
【0083】
有機緩衝層76は、隔壁層73とその開口部による凹凸形状を埋めるように形成され、回路層70上の凹凸を平坦化している。また、無機ガスバリア層77に密着し、かつ機械的衝撃に対して緩衝機能を有する。有機緩衝層76を構成する材料としては、例えばエポキシ化合物等の透明性が高く、透湿性の低い樹脂を用いることができる。
【0084】
無機ガスバリア層77は、無機材料、特に、透光性、ガスバリア性、耐水性を考慮して、例えばSiON等により形成されている。
【0085】
薄膜封止層74は、共通電極16と共に、外部から有機EL素子17へ水分や酸素が浸入しないようにするための封止部材として機能する。薄膜封止層74のうち無機ガスバリア層77は、有機緩衝層76によって平坦化された面に形成されており、電極保護層75に比べて段差被覆性がよく、高い封止機能が得られる。特に、有機緩衝層76で機械的衝撃が緩和されるため、クラック等も生じにくく、長期にわたって優れた封止性能を維持することが可能である。
【0086】
また、無機ガスバリア層77は、直接又は無機膜である電極保護層75を介して無機絶縁層71と接しているため、無機ガスバリア層77と無機絶縁層71との界面から水分や酸素が浸入する惧れは少ない。そのため、同じく無機絶縁層71と接して形成される共通電極16と協働して極めて高い封止性能を実現することができる。
【0087】
素子基板1の薄膜封止層74が形成された面には、封止基板2が対向して配置されている。封止基板2は、シール材80を介して素子基板1上の薄膜封止層74と接着されている。
【0088】
本実施形態では、封止基板2による封止性能を良好にするために、プラスチック基板に比べて透湿性の低いガラス基板を用い、これを薄くすることにより、可撓性を付与している。この場合、封止基板2の厚みは10μm以上100μm以下、好ましくは20μm以上50μm以下である。
【0089】
素子基板1と封止基板2とがシール材80によって接着されたことにより生じた空間には、隙間なく封止樹脂81が充填されている。
【0090】
封止樹脂81は、素子基板1と封止基板2との間に設けられて薄膜封止層74の少なくとも発光領域9に対応する部位を覆うものである。封止樹脂81の材料としては、例えばウレタン系樹脂やアクリル系樹脂に硬化剤としてイソシアネートを添加した低弾性樹脂を用いることができる。
【0091】
シール材80は、素子基板1と封止基板2との間に、封止樹脂81を囲むように非表示領域に設けられたものである。シール材80の材料としては、水分透過率が低い材料、例えばエポキシ系樹脂に硬化剤として酸無水物を添加し、促進剤としてシランカップリング剤を添加した高接着性の接着剤を用いることができる。
【0092】
このような可撓性を有する有機ELパネル10の製造方法、とりわけ素子基板1と封止基板2とをそれぞれの厚みが20μm以上50μm以下とする方法としては、当該厚みを有するガラス基板を用いてもよいが、ガラス基板の取り扱い上あるいはガラス基板上に各構成を形成する際に破損などのおそれがあるためあまり好ましくない。
そこで、例えば500μm程度の厚みのガラス基板を用い、素子基板1と封止基板2とを接合した後に、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いて所望の厚みまで研磨する方法やフッ酸などのエッチング溶液に浸漬してケミカルエッチングする方法を用いることが好ましい。
【0093】
次に、電気泳動パネル110について図6および図7を参照して説明する。図6は電気泳動パネルの電気的な構成を示す等価回路図、図7は電気泳動パネルの構造を示す概略断面図である。
【0094】
図6に示すように、電気泳動パネル110は、互いに絶縁され交差する複数の走査線113aと複数のデータ線114aとを有する。走査線113aとデータ線114aとの交差部に対応して画素117が形成され、各々の画素117に走査線113aとデータ線114aとが接続されている。画素117は、走査線113aの延在方向と、データ線114aの延在方向とにマトリックス状に配列されている。
画素117は、画素スイッチング素子としての薄膜トランジスター(TFT)121と、保持容量122と、一対の電極としての画素電極124および共通電極125と、該一対の電極間に挟持された電気泳動層126とを有する。
【0095】
TFT121は、N型MOS(Metal Oxide Semiconductor)TFTで構成されている。TFT121のゲート端には走査線113a、ソース端にはデータ線114a、ドレイン端には保持容量122の一方の電極と画素電極124とがそれぞれ接続されている。
保持容量122は、後述する素子基板上に形成され、誘電体膜を介して対向配置された一対の電極からなる。保持容量122の一方の電極はTFT121に接続され、他方の電極は走査線113aと並行して配置された容量線118に接続されている。保持容量122によってTFT121を介して書き込まれた画像信号を一定期間だけ維持することができる。
【0096】
走査線113aは走査線駆動回路113と接続されている。走査線駆動回路113は、コントローラー(図示省略)から供給されるタイミング信号に基づいて、走査線113aのそれぞれに選択信号をパルス状に順次供給し、走査線113aの一本一本を排他的に順次選択状態にする。選択状態とは、走査線113aに接続されるTFT121がオンしている状態を指す。
【0097】
データ線114aはデータ線駆動回路114と接続されている。データ線駆動回路114は、コントローラー(図示省略)から供給されるタイミング信号に基づいて、データ線114aのそれぞれに画像信号を供給する。本実施形態では説明を容易にするため、画像信号はハイレベルの電位VH(例えば15V)又はローレベルの電位VL(例えば0V)の2値的な電位をとるものとする。なお、電気泳動層126は画素電極124と共通電極125との間に与えられた電位によって、白表示と黒表示とを切り替えて表示可能であり、白色が表示されるべき画素117に対してローレベルの画像信号(電位VL)が供給され、黒色が表示されるべき画素117に対してハイレベルの画像信号(電位VH)が供給される構成となっている。
【0098】
共通電極125には、共通電極駆動回路(図示省略)から共通電極電位Vcomが供給される。共通電極駆動回路は、例えばDAC(波形生成回路)と、オペアンプ(電流増幅回路)とを備えて構成される。DACは、入力された設定信号Vsetから電位波形を生成するD/Aコンバーターである。DACから出力された電位波形は、オペアンプで電流増幅され、共通電極125に供給される。共通電極駆動回路では、DACにより任意の電位波形を生成できるため、共通電極電位Vcomを、画素117に書き込む階調に応じて変化させることもできる。
なお、本実施形態では、共通電極電位Vcomはローレベルの電位VL(例えば0V)、又はハイレベルの電位VH(例えば15V)の2値的な電位をとるものとしている。
【0099】
容量線118には、容量線駆動回路(図示省略)から容量線電位Vssが供給される。容量線駆動回路は、例えば、排他的に動作する2つのスイッチング素子を備えたスイッチ回路として構成される。一方のスイッチング素子は、ハイレベル(VH)の電源から供給される電位を出力端子に対してスイッチングする。他方のスイッチング素子はローレベル(VL)の電源から供給される電位を出力端子に対してスイッチングする。2つのスイッチング素子の制御端子には、選択信号および反転選択信号がそれぞれ入力され、2つのスイッチング素子が互いに排他的に動作する。
なお、本実施形態では、共通電極電位Vcomがローレベルの電位VL(例えば0V)、又はハイレベルの電位VH(例えば15V)を容量線電位Vssとして出力するとしているが、スイッチング素子に接続する電源の電位を変更することで、任意の容量線電位Vssを出力することが可能である。
【0100】
図7に示すように、電気泳動パネル110は、素子基板111と対向基板112との間に電気泳動層126が挟持された構成を備えている。なお、本実施形態では、対向基板112側に画像を表示することを前提として説明する。
【0101】
素子基板111は、例えばガラスやプラスチック等からなる基板を用いることができる。素子基板111上には、上述したTFT121、保持容量122、走査線113a、データ線114a、容量線118などが作り込まれた積層構造が形成されている。この積層構造の上層側に複数の画素電極124がマトリックス状に形成されている。
対向基板112は、例えばガラスやプラスチック等からなる透明な基板を用いることができる。対向基板112における素子基板111側には、共通電極125が複数の画素電極124と対向し、少なくとも表示領域119に亘って形成されている。共通電極125は、例えばマグネシウム銀(MgAg)、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物等の透明導電材料により形成されている。
【0102】
電気泳動層126は、電気泳動粒子をそれぞれ含んでなる複数のマイクロカプセル150から構成されている。複数のマイクロカプセル150は、例えば樹脂等からなるバインダー130および接着層131によって素子基板111および対向基板112間で固定されている。なお、電気泳動層126が予め対向基板112側にバインダー130によって固定されてなる電気泳動シートと、当該電気泳動シートとは別途製造され、画素電極124等が形成された素子基板111とを、例えば熱硬化型または紫外線硬化型のエポキシ系接着剤からなる接着層140により接着することで製造されている。
マイクロカプセル150は、画素電極124および共通電極125間に挟持され、1つの画素117内に(言い換えれば1つの画素電極124に対して)1つ又は複数配置されている。
【0103】
図7中に示した拡大図は、マイクロカプセル150の内部構造を示す断面図である。マイクロカプセル150は、被膜151の内部に分散媒152と、複数の白色粒子153と、複数の黒色粒子154とが封入された構成を備える。マイクロカプセル150は、例えば、30μm程度の粒径を有する球状に形成されている。
被膜151は、マイクロカプセル150の外殻として機能し、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル等のアクリル樹脂、ユリア樹脂、アラビアガム、ゼラチン等の透光性を有する高分子樹脂から形成されている。
分散媒152は、白色粒子153および黒色粒子154をマイクロカプセル150内(言い換えれば被膜151内)に分散させてなる媒質である。分散媒152としては、水、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール、メチルセルソルブなど)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、脂肪族炭化水素(ぺンタン、ヘキサン、オクタンなど)、脂環式炭化水素(シクロへキサン、メチルシクロへキサンなど)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、長鎖アルキル基を有するベンゼン類(キシレン、ヘキシルベンゼン、ヘブチルベンゼン、オクチルベンゼン、ノニルベンゼン、デシルベンゼン、ウンデシルベンゼン、ドデシルベンゼン、トリデシルベンゼン、テトラデシルベンゼンなど))、ハロゲン化炭化水素(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンなど)、カルボン酸塩などを例示することができ、その他の油類であってもよい。これらの物質は単独又は混合物として用いることができ、さらに界面活性剤などを配合してもよい。
【0104】
白色粒子153は、例えば、二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモン等の白色顔料からなる粒子(高分子あるいはコロイド)であり、例えば負に帯電されて用いられる。黒色粒子154は、例えば、アニリンブラック、カーボンブラック等の黒色顔料からなる粒子(高分子あるいはコロイド)であり、例えば正に帯電されて用いられる。
これらの顔料には、必要に応じ、電解質、界面活性剤、金属石鹸、樹脂、ゴム、油、ワニス、コンパウンドなどの粒子からなる荷電制御剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、シラン系カップリング剤等の分散剤、潤滑剤、安定化剤などを添加することができる。
【0105】
白色粒子153および黒色粒子154は、画素電極124と共通電極125との間に発生する電場(電位差)によって分散媒152中を移動するため、共通電極125側に集まった粒子の色調によって、画素117の表示色が左右されることになる。すなわち、該電位差によって白表示と黒表示とのいずれかを行うことができる。
さらには、該電位差を保持させれば、白または黒の表示状態を維持することができる。すなわち、電気泳動パネル110は表示のために常に電力を必要とする自発光型の有機ELパネル10に比べて省電力な表示パネルである。
【0106】
また、白色粒子153または黒色粒子154に代えて、例えば赤色、緑色、青色などの顔料を用いてもよい。かかる構成によれば、画素117において赤色、緑色、青色などを表示することができる。さらには、各表示色の色再現性を高めるために、対向基板112と共通電極125との間に、赤色、緑色、青色に対応する着色層(所謂カラーフィルター層)を設けてもよい。
【0107】
本実施形態では、有機ELパネル10と同様に、電気泳動パネル110における素子基板111と対向基板112は、それぞれガラス基板を用いている。また、有機ELパネル10と同様に、薄型化して可撓性を付与するために、ガラス基板の厚みを20μm以上50μm以下としている。ガラス基板を薄型化する方法は、前述した有機ELパネル10の場合と同様に、例えば500μm程度のガラス基板を用い、素子基板111と対向基板112とを電気泳動層126を挟んで接着した後に、CMP法やケミカルエッチング法を用いて所望の厚みとなるように薄型化することが好ましい。
【0108】
<有機EL装置の製造方法>
次に、本実施形態の有機EL装置100の製造方法、とりわけ一対のフィルムシート8を用いたラミネート方法について、図8および図9を参照して説明する。図8および図9は有機EL装置の製造方法を説明する概略斜視図である。
【0109】
本実施形態の有機EL装置100の製造方法は、シート状の放熱部材50の一部52aが一対のフィルムシート8の外部に露出するように一対のフィルムシート8の間に有機ELパネル10と放熱部材50と電気泳動パネル110とを重ねて配置する配置工程を備えている。また、一対のフィルムシート8と有機ELパネル10、放熱部材50、電気泳動パネル110の外周端面との間に形成された隙間に封止樹脂61を配置する封止樹脂配置工程を備えている。さらに、有機ELパネル10、放熱部材50、電気泳動パネル110、封止樹脂61が挟まれた一対のフィルムシート8を一対の加圧手段により加圧し、一対のフィルムシート8を有機ELパネル10並びに放熱部材50、電気泳動パネル110の周縁部で封着するラミネート工程とを備えている。
【0110】
まず配置工程では、図8に示すように、各構成部材を平面的かつ立体的な所定の位置に配置する。具体的には、放熱部材50に対して有機ELパネル10と電気泳動パネル110とを重ね合わせておく。放熱部材50は前述したように粘着層51bを有する放熱シート51と放熱板52とにより構成されているので、放熱シート51のグラファイトシート51a側のセパレーターを外して有機ELパネル10と重ね合わせる。同様にして放熱板52の反対側に設けられたもう一方の放熱シート51におけるグラファイトシート51a側のセパレーターを外して電気泳動パネル110と重ね合わせる(図3参照)。また、放熱板52と各中継基板5A,5B,5C,115A,115B,115Cとの間にスペーサーSP1,SP2を配置する(図2参照)。これにより有機ELパネル10と電気泳動パネル110とで放熱部材50を挟んだ構造の表示部積層体ができあがる。
【0111】
一方のフィルムシート8を接着層8bが上方に向くように配置し、上記表示部積層体のうち電気泳動パネル110が下方を向くように配置する。また、放熱板52の一部52aが平面的にフィルムシート8からはみ出るように配置する。このとき、フィルムシート8の接着層8b側において表示部積層体の外周に相当する領域および電気泳動パネル110の端子部111aに相当する領域に封止樹脂61を予め塗布しておく。また、有機ELパネル10の端子部1a上にも封止樹脂61を塗布しておく。つまり、一対のフィルムシート8によりラミネートするにあたって隙間となる部分に封止樹脂61を予め塗布しておく。そして、表示部積層体を覆うように他方のフィルムシート8を重ねて配置する。つまり、封止樹脂配置工程は、配置工程と同時に進行する。
【0112】
ここでは、上記のようにしてすべての構成部材が重ね合わされた状態を被ラミネート部材と呼ぶことにする。
【0113】
ラミネート工程では、図8に示すように、ラミネート装置200を用いる。ラミネート装置200は、一対の加圧手段として周面に熱電導性を有するエラストマーなどの弾性部材が設けられた一対のローラー201,202を有している。ラミネート装置200は、一対のローラー201,202を回転軸が互いに平行となるように保持すると共に、互いに加圧および加熱可能な構成を備えている。ローラー201,202はおよそ80℃〜120℃に加熱される。
そして、図9に示すように、放熱部材50の一部52aがはみ出た側つまり中継基板5A,5B,5C,115A,115B,115Cがはみ出た側に対して反対側の辺部が一対のローラー201,202と平行となるようにして、被ラミネート部材をラミネート装置200に投入する。このような投入の仕方によれば、気泡を押し出すようにラミネートしてゆくので、被ラミネート部材における段差、例えば放熱部材50と有機ELパネル10や電気泳動パネル110との間の段差によって、被ラミネート部材の表面や端部に気泡が残存するおそれが少ない。そのため、表示品質や封止性能に優れた有機EL装置100が提供できると共に、フィルムシート8の表面からの放熱が残存した気泡によって阻害されない。
【0114】
また、前述したようにラミネート後に空間が発生し易い被ラミネート部材の少なくとも3辺に沿った部分および端子部1a,111aには、封止樹脂61が予め塗布されている。したがって、上記空間を埋めた後の余分な封止樹脂61もフィルムシート8の端部へと押し出されて額縁状に盛り上がった部分62となる(図1および図2参照)。そして、被ラミネート部材の周縁部において一対のフィルムシート8同士が熱圧着され封着される。ラミネートされた被ラミネート部材はローラー201,202間から押し出されてラミネート工程が終了する。
このようなラミネート工程は、通常環境下で行ってもよいが、封着性を考慮して減圧環境下で行う。図8および図9では、ローラー201,202のみを図示しているが、ラミネート装置200は、内部環境を所望の気圧環境に設定可能なチャンバー(図示省略)を有している。
【0115】
ラミネートされた有機EL装置100における残留応力を取り除くためにアニーリング処理を行うことが望ましい。アニーリング処理は、引き続き減圧環境で行っても良いし、通常環境下で行っても良い。特に、本実施形態では、基材フィルム8aに接着層8bが設けられたフィルムシート8を用いたが、フィルムシート8として架橋成分を含んだ熱溶着タイプの樹脂フィルムを用いる場合には、約100℃でアニーリング処理し、架橋を完全なものとすることが好ましい。
ラミネートに用いられるラミネート装置200は、一対のローラー201,202を備えたロールラミネート方式に限定されるものではない。例えば、1枚の板状加熱板(ホットプレート)上に準備体をセットし、変形するゴムシートを気圧差により当該準備体に押し当てて、加熱および加圧するダイアフラム方式による真空ラミネート装置を用いてもよい。
【0116】
次に、本実施形態の有機EL装置100の放熱効果について、図10および図11を参照して説明する。図10は有機EL装置を発光させたときの発光領域の温度の経時変化を示すグラフである。図10において、横軸は時間、縦軸は発光領域の全面(全画素)を発光させたときの温度(フィルムシート8の表面の温度)を示している。
【0117】
測定は室温環境下(23℃)で行い、非点灯の状態から始めて100分間連続して発光させ、その間の表面温度を計測した。本実施形態の有機EL装置100は、OLED(有機ELパネル10)+放熱部材+EPD(電気泳動パネル110);実施例1として表示している。比較対象として、電気泳動パネル110を備えていない有機ELパネル10と放熱部材とをフィルムシート8によってラミネートされたものを片面発光:放熱部材;実施例2として表示している。さらに、有機ELパネル10だけを一対のフィルムシート8によりラミネートしたものを片面発光;放熱対策無;比較例として表示している。
【0118】
図10に示すように、放熱対策が施されていない比較例では、表面温度が通電後10分程度で55℃に達し、その後はほぼ一定の温度となっている。しかしながら、実用上、直接フィルムシート8に触れて取り扱うことは難しい。
実施例2では、表面温度が通電後同じく10分程度でおよそ35℃まで上昇するが、その後はほぼ一定の温度を保っている。したがって、有機EL装置100内で有機EL素子17からの発熱が籠らずに、放熱部材50を通じて外部に効率よく放熱されていることが分かる。
さらに、実施例1では、表面温度が通電後同じく10分程度でおよそ30℃まで上昇するが、その後はほぼ一定の温度を保っている。したがって、実施例2に比べて放熱性が改善されていることが分かる。つまり、放熱部材50にさらに受光型の表示パネルである電気泳動パネル110を重ねることにより、熱容量が大きくなり放熱効果を高めている。
【0119】
図11は有機EL装置の表面温度分布を示す図である。詳しくは、有機EL装置100において、発光領域9を互いに離間した縦横3つずつ合計9つの発光領域に分けて発光させる。そして、発光状態の有機EL装置100を赤外線カメラで撮像し、その表面温度分布をサーモグラフィーとして表したものである。
【0120】
図11に示すように、選択的に発光させた9つの発光領域は、それぞれ30℃程度となっているが、その周辺の非発光領域もほぼ30℃となっており、発光領域9の全体に亘って発熱が効率よく分散されていることが分かる。
【0121】
なお、有機EL装置100の周辺温度はほぼ23℃であり、図中の中央上部で島状に表面温度が高くなっている部分(およそ40℃)は、中継基板5A上に実装されたドライバーIC6である。また、有機EL装置100の中央に向かって延びた4本の紐状の部分は、表面温度を直接計測しているプローブの接続コードである。
【0122】
以上に述べた前記第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0123】
(1)有機EL装置100は、有機ELパネル10、放熱部材50、電気泳動パネル110がこの順に積み重ねられた可撓性を有する表示部積層体を一対のフィルムシート8によってラミネートされた構造となっている。また、放熱部材50の一部52aがフィルムシート8の外側にはみ出すようにラミネートされ露出しているので、有機ELパネル10における発熱を効率的に放熱することができる。したがって、発熱によって有機ELパネル10の輝度が変動することなく、安定した発光特性が得られる。また、受光型の表示パネルである電気泳動パネル110は、放熱性を高めるだけでなく、有機ELパネル10からの発熱を利用できるので、例えば0℃以下の低温状態でも安定した表示特性を発揮することができる。
(2)放熱部材50は、熱伝導性がよくバネ性を有する厚みが50μmのリン青銅からなる放熱板52に、層内よりも面内の熱伝導性が高いグラファイトシート51aを含む放熱シート51が積層されたものである。そして、グラファイトシート51a側が有機ELパネル10に粘着層51bを介して重ねられているので、有機ELパネル10を局所的に発光させても、その発熱を有機ELパネル10の発光領域9に亘って分散させることができる。すなわち、発熱による輝度むらなどが起こり難い。
また、中継基板5A,5B,5C,115A,115B,115Cが取り出された方向と同じ方向に露出しているので、有機EL装置100の曲げにおける中継基板部分の曲げ強度を補強できる。
(3)有機EL装置100は、有機ELパネル10をはじめとする表示部積層体の各構成部材が薄型化されているため可撓性を有する。また、ガラス基板を用いて有機ELパネル10を構成し、且つガス透過性が低いフィルムシート8を用いて気密状態に封着しているので、外部からの水分や気体の浸入を防止し、有機ELパネル10を単独に用いる場合に比べて、長い発光寿命を実現している。
【0124】
(第2実施形態)
次に、本実施形態の電子機器について、図12を参照して説明する。図12(a)は電子機器の1例としてのディスプレイを示す概略斜視図、同図(b)はディスプレイ本体と有機EL装置との接続構造を示す要部概略断面図である。
【0125】
図12(a)および(b)に示すように、本実施形態の電子機器としてのディスプレイ1000は、一辺が長い直方体のディスプレイ本体1001と、ディスプレイ本体1001に接続される表示部としての有機EL装置100とを備えている。
【0126】
ディスプレイ本体1001の1面には、有機EL装置100を接続するための開口を有している。開口の内部には、図12(b)に示すように、有機EL装置100のフィルムシート8から外部に露出した中継基板5A,115A並びに放熱部材50の一部52aを保持して電気的に駆動回路部1003との接続を図るコネクター部1002が設けられている。他の中継基板5B,5C,115B,115Cの接続も同様である。
【0127】
このようなディスプレイ1000によれば、携帯に都合がよい薄型、軽量であることに加えて表示部が可撓性を有しているので、まるで紙のページをめくるように表示を確認することができる。
さらには、有機ELパネル10側にはカラー画像を表示させ、電気泳動パネル110側に白黒画像を表示させることができるので、表示させたい画像情報に合わせて使い分けできる。例えば、文字情報を主体とする場合には、電気泳動パネル110側に表示させ、高い視認性が得られる一方で、低消費電力をも実現できる。
【0128】
また、本実施形態では、ディスプレイ本体1001に1つの有機EL装置100を接続可能としているが、これに限らない。複数のコネクター部1002を内蔵させ、複数の有機EL装置100、または一対のフィルムシート8で有機ELパネル10と放熱部材50とをラミネートした前述の実施例2や、あるいは電気泳動パネル110だけをラミネートしたものを接続可能とすることもできる。
【0129】
なお、有機EL装置100を搭載可能な電子機器は、ディスプレイ1000に限らず、種々の電子機器に搭載することができる。例えば、パーソナルコンピューター、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、DVDビューワー、カーナビゲーション装置などの車載用ディスプレイ、電子手帳、POS端末、デジタルサイネージと呼ばれる電子広告媒体等が挙げられる。
【0130】
上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0131】
(変形例1)上記第1実施形態の有機EL装置100において、放熱部材50がフィルムシート8から外部に露出する方向は、一方向だけに限定されない。例えば、長辺側と短辺側とに露出させてもよい。さらに露出面積を拡大でき放熱性が改善できる。また、中継基板も同様な方向に接続部が露出するように配置すれば、接続部における曲げ強度も補強できる。
【0132】
(変形例2)上記第1実施形態の有機EL装置100において、放熱部材50の構成は、これに限定されない。放熱板52だけの構成として少なくとも有機ELパネル10と重ね合わせてもよい。
また、放熱部材50の形状は、シート状に限定されない。図13(a)〜(c)は、変形例の放熱部材を示す概略平面図である。例えば、図13(a)に示すように、変形例の放熱部材50Aは、有機ELパネル10の発光領域9における周辺領域に重なるように外形が額縁状となっている。これによれば、有機EL装置100の外周側へ効果的に放熱できる。また、図13(b)に示すように、変形例の放熱部材50Bは、発光領域9のほぼ中央領域と重なる外形となっている。これによれば、熱がこもり易い中央領域側の発熱を効率的に放熱できると共に放熱材料を有効活用できる。また、図11に示したように、駆動回路の少なくとも一部であるドライバーIC6も発熱する。したがって、有機ELパネル10において、ドライバーIC6が端子部1aに表面実装されているような場合には、図13(c)に示すように、変形例の放熱部材50Cは、上記放熱部材50Aに対してドライバーIC6と重なる部分が拡張されている。これにより、ドライバーIC6の発熱をも効率的に放熱できる。すなわち、放熱部材50は、有機ELパネル10の発熱部分(例えば発光領域9や端子部)に対して少なくとも一部が重なる形状とし、その発熱を一対のフィルムシート8の外部に放熱させる経路を有すればよい。
【0133】
(変形例3)上記第1実施形態の有機EL装置100において、電気泳動パネル110を必ず備える構成としなくてもよい。少なくとも有機ELパネル10と放熱部材50とを重ねる構成とすれば、相応の作用・効果が得られる。その場合には、放熱部材50は、放熱シート51と放熱板52とが積層された構成を採用できる。さらには、一対のフィルムシート8でラミネートしたときに一方の面が表示面となるので、表示面と反対側を覆うフィルムシート8は透明でなくてもよい。
【0134】
(変形例4)上記第1実施形態の有機EL装置100において、有機ELパネル10はトップエミッション型に限定されない。ボトムエミッション型の有機ELパネルとしてもよい。また、スイッチング素子としてのTFT11,12を備えたアクティブ駆動型に限らず、パッシブ駆動型であっても本発明を適用することができる。
さらには、有機ELパネル10は異なる発光色が得られカラー表示が可能な構成としたが、これに限定されず、単色発光としてもよい。例えば、図14に示すように、白色発光させて、照明装置として使用することも可能である。
【0135】
(変形例5)上記第1実施形態の有機EL装置100において、電気泳動パネル110は、マイクロカプセル方式の電気泳動層126を有するものに限定されない。例えば、帯電性を有する電子粉流体を画素117内に入れ、プラス・マイナス(極性)を切り替えることで表示のON−OFFを制御する電子粉流体方式の電気泳動パネルであってもよい。または、コレステリック液晶を用いた電気泳動パネルであっても良い。
【0136】
(変形例6)上記第1実施形態の有機EL装置100において、有機ELパネル10と放熱部材50を介して積層される受光型の表示パネルは、電気泳動パネル110に限定されない。例えば、反射型の液晶パネルとしても同様な放熱効果、表示効果を期待できる。
【符号の説明】
【0137】
1…素子基板、2…封止基板、8…フィルムシート、10…有機ELパネル、17…有機EL素子、50…放熱部材、51…放熱シート、51a…グラファイトシート、52…放熱板、52a…放熱部材の一部、61…封止樹脂、100…有機EL装置、110…電気泳動パネル、126…電気泳動層、201,202…一対の加圧手段としてのローラー、1000…電子機器としてのディスプレイ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機EL素子を有する有機ELパネルと、
放熱部材と、
少なくとも一方が透明な一対のフィルムシートと、を備え、
前記有機ELパネルと前記放熱部材とは、互いに重ね合わされると共に前記放熱部材の一部を外部に露出させた状態で、前記一対のフィルムシートにより挟まれて封着されていることを特徴とする有機EL装置。
【請求項2】
前記放熱部材は、層厚方向よりも面内方向に高い熱伝導性を有する放熱シートと金属製の放熱板との積層体であり、
前記放熱シートに対して前記有機ELパネルが重ね合わされており、
前記放熱板の一部が前記一対のフィルムシートの外部に露出していることを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項3】
前記放熱部材の前記有機ELパネルが重ね合わされた側に対して反対側に、電気泳動層を有する電気泳動パネルが配置されており、
前記有機ELパネルと前記放熱部材と前記電気泳動パネルとが前記一対のフィルムシートにより挟まれて封着されていることを特徴とする請求項1または2に記載の有機EL装置。
【請求項4】
前記電気泳動パネルは、前記放熱部材に対して層厚方向よりも面内方向に高い熱伝導性を有する放熱シートを介して重ね合わされていることを特徴とする請求項3に記載の有機EL装置。
【請求項5】
少なくとも前記一対のフィルムシートと前記有機ELパネルの外周端面との間に形成された隙間に封止樹脂が充填され、前記一対のフィルムシートにより前記有機ELパネルが封着されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の有機EL装置。
【請求項6】
前記有機ELパネルは、ガラス基板からなる基材と、前記基材上に設けられた前記有機EL素子と、を有し、
前記基材の厚みが20μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項5に記載の有機EL装置。
【請求項7】
前記放熱シートがグラファイトシートを含むことを特徴とする請求項2乃至6のいずれか一項に記載の有機EL装置。
【請求項8】
少なくとも一方が透明性を有する一対のフィルムシートにより有機EL素子を有する有機ELパネルが挟まれて封着された有機EL装置の製造方法であって、
放熱部材の一部が前記一対のフィルムシートの外部に露出するように前記一対のフィルムシートの間に前記有機ELパネルと前記放熱部材とを重ねて配置する配置工程と、
少なくとも前記一対のフィルムシートと前記有機ELパネルの外周端面との間に形成された隙間に封止樹脂を配置する封止樹脂配置工程と、
前記有機ELパネルと前記放熱部材と前記封止樹脂とが挟まれた前記一対のフィルムシートを一対の加圧手段により加圧し、前記一対のフィルムシートを前記有機ELパネルの周縁部で封着するラミネート工程とを備えたことを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項9】
前記放熱部材は、層厚方向よりも面内方向に高い熱伝導性を有する放熱シートと金属製の放熱板との積層体であり、
前記配置工程は、前記有機ELパネルに対して前記放熱シートを重ね合わせると共に、前記放熱板の一部が前記一対のフィルムシートの外部に露出するように前記放熱部材を配置することを特徴とする請求項8に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項10】
前記一対のフィルムシートは、前記有機ELパネルと前記放熱部材とに面する側に熱可塑性の接着剤または粘着剤からなる接着層を有し、
前記ラミネート工程では、前記一対の加圧手段により加圧すると共に加熱して、前記一対のフィルムシートを前記有機ELパネルの周縁部で接着することを特徴とする請求項8または9に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項11】
前記配置工程は、前記放熱部材の前記有機ELパネルが重ね合わされた側に対して反対側に、電気泳動層を有する電気泳動パネルをさらに重ねて配置し、
前記ラミネート工程は、前記一対のフィルムシートを前記有機ELパネルと前記放熱部材および前記電気泳動パネルの周縁部で封着することを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項12】
前記配置工程は、前記放熱部材に対して層厚方向よりも面内方向に高い熱伝導性を有する放熱シートを介して前記電気泳動パネルを重ね合わせることを特徴とする請求項11に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項13】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の有機EL装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
有機EL素子を有する有機ELパネルと、
放熱部材と、
少なくとも一方が透明な一対のフィルムシートと、を備え、
前記有機ELパネルと前記放熱部材とは、互いに重ね合わされると共に前記放熱部材の一部を外部に露出させた状態で、前記一対のフィルムシートにより挟まれて封着されていることを特徴とする有機EL装置。
【請求項2】
前記放熱部材は、層厚方向よりも面内方向に高い熱伝導性を有する放熱シートと金属製の放熱板との積層体であり、
前記放熱シートに対して前記有機ELパネルが重ね合わされており、
前記放熱板の一部が前記一対のフィルムシートの外部に露出していることを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項3】
前記放熱部材の前記有機ELパネルが重ね合わされた側に対して反対側に、電気泳動層を有する電気泳動パネルが配置されており、
前記有機ELパネルと前記放熱部材と前記電気泳動パネルとが前記一対のフィルムシートにより挟まれて封着されていることを特徴とする請求項1または2に記載の有機EL装置。
【請求項4】
前記電気泳動パネルは、前記放熱部材に対して層厚方向よりも面内方向に高い熱伝導性を有する放熱シートを介して重ね合わされていることを特徴とする請求項3に記載の有機EL装置。
【請求項5】
少なくとも前記一対のフィルムシートと前記有機ELパネルの外周端面との間に形成された隙間に封止樹脂が充填され、前記一対のフィルムシートにより前記有機ELパネルが封着されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の有機EL装置。
【請求項6】
前記有機ELパネルは、ガラス基板からなる基材と、前記基材上に設けられた前記有機EL素子と、を有し、
前記基材の厚みが20μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項5に記載の有機EL装置。
【請求項7】
前記放熱シートがグラファイトシートを含むことを特徴とする請求項2乃至6のいずれか一項に記載の有機EL装置。
【請求項8】
少なくとも一方が透明性を有する一対のフィルムシートにより有機EL素子を有する有機ELパネルが挟まれて封着された有機EL装置の製造方法であって、
放熱部材の一部が前記一対のフィルムシートの外部に露出するように前記一対のフィルムシートの間に前記有機ELパネルと前記放熱部材とを重ねて配置する配置工程と、
少なくとも前記一対のフィルムシートと前記有機ELパネルの外周端面との間に形成された隙間に封止樹脂を配置する封止樹脂配置工程と、
前記有機ELパネルと前記放熱部材と前記封止樹脂とが挟まれた前記一対のフィルムシートを一対の加圧手段により加圧し、前記一対のフィルムシートを前記有機ELパネルの周縁部で封着するラミネート工程とを備えたことを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項9】
前記放熱部材は、層厚方向よりも面内方向に高い熱伝導性を有する放熱シートと金属製の放熱板との積層体であり、
前記配置工程は、前記有機ELパネルに対して前記放熱シートを重ね合わせると共に、前記放熱板の一部が前記一対のフィルムシートの外部に露出するように前記放熱部材を配置することを特徴とする請求項8に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項10】
前記一対のフィルムシートは、前記有機ELパネルと前記放熱部材とに面する側に熱可塑性の接着剤または粘着剤からなる接着層を有し、
前記ラミネート工程では、前記一対の加圧手段により加圧すると共に加熱して、前記一対のフィルムシートを前記有機ELパネルの周縁部で接着することを特徴とする請求項8または9に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項11】
前記配置工程は、前記放熱部材の前記有機ELパネルが重ね合わされた側に対して反対側に、電気泳動層を有する電気泳動パネルをさらに重ねて配置し、
前記ラミネート工程は、前記一対のフィルムシートを前記有機ELパネルと前記放熱部材および前記電気泳動パネルの周縁部で封着することを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項12】
前記配置工程は、前記放熱部材に対して層厚方向よりも面内方向に高い熱伝導性を有する放熱シートを介して前記電気泳動パネルを重ね合わせることを特徴とする請求項11に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項13】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の有機EL装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図11】
【公開番号】特開2011−113704(P2011−113704A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267189(P2009−267189)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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