説明

木材樹脂を含むエマルジョン前濃縮物及びミセル組成物

本発明は、i)1種以上の作用物質及びii)場合によりアラビアゴムと組み合わされた木材樹脂及びiii)場合により更なる助剤を含有するミセル及びエマルジョン前濃縮物、このミセル又はエマルジョン前濃縮物を含有する生成物、ミセル、エマルジョン前濃縮物及び生成物の製法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年5月9日に提出されたスイス国特許出願757/2007の優先権を請求するものであり、その全体の開示をここで引用する。
【0002】
本発明は、i)1種以上の作用物質及びii)場合によりアラビアゴムと組み合わされた木材樹脂及びiii)場合により助剤を含有するミセル及びエマルジョン前濃縮物、このミセル又はエマルジョン前濃縮物を含有する生成物、ミセル、エマルジョン前濃縮物及び生成物の製法に関する。
【0003】
作用物質の使用において典型的な問題は、その不十分な生物利用能である。生物利用能とは、ヒト/動物/植物の循環系において変化なく利用される作用物質の割合のことである。これは、作用物質が如何に速やかにかつ如何なる範囲で再吸収されて、作用部位で利用されるかを示す。静脈内("i.V.")投与される作用物質では、生物利用能は定義により100%である。絶対的生物利用能は、任意の方法で投与される(例えば、経口)物質の、静脈内投与に比較した生物利用能を示す。経口投与後に認められる生物利用能を、経口的生物利用能と称する。殊に、作用物質の経口投与は他の投与形よりも優先されるべきであるので、経口的生物利用能の改善は重要である。
【0004】
助剤の添加によって、作用物質の生物利用能は改善され得ることは公知である。1種以上の作用物質及び1種以上の助剤を含有するそのような組成物は、しばしば"組成物"又は"作用物質組成物"として表示される。更に、木材樹脂(E445、公知の自然物質/自然物質混合物)が食品中に及び薬剤の配合で使用されることが公知である。公知の組成物は、種類に応じて、作用物質の溶解化、ミセル化及び/又は分散化に作用し得る。しかし多くの場合、その結果は不満足であるか、又は部分的にしか満足しない。
【0005】
その作用が公知である多数の作用物質では、それらの溶解化及び安定化が困難であるので、投与は困難である。作用物質の例として、補酵素Q10が挙げられる。ミセル中でこの又は類似特性の脂溶性作用物質を、同じ又は同様に高められた負荷容量で溶解化させ、かつ同時に安定化させる可能性は、予知し得なかった展望を開かせる。即ち、このように処理された作用物質は、そのままでカプセルとして経口投与されるだけでなく、作用物質を飲料、例えば、スポーツマン用飲料に混合させることができる。飲料において合目的な従来は脂溶性の作用物質を利用可能にしたことは、それらの作用物質が飲料中で可溶性であり、更に安定したままであるという事実により、使用者に大きな利点を開いた。薬効的な作用物質の他に、従来は溶解化され得ない、分散化され得ない又は安定化され得ない又は十分にはそうされ得ない一連の更なる作用物質がある。
【0006】
不十分な生物利用能(又は一般に溶解性)のほかに、不十分な安定性("保存期間")、不利な視覚特性(例えば、混濁及び/又は変色)、不利な生理学的特性(例えば、助剤の副作用、臭気、味覚)及び/又は組成物又はそれを含む生成物の困難な製造可能性を挙げることができる。
【0007】
従って、ここに挙げた1種以上の欠点を解明する、作用物質の組成及びその製造を得るという要求がある。殊に、溶解化、ミセル化及び分散化を解明し、容認し、補助し又は容易にする助剤への要求がある。そのような助剤が容認されている場合(即ち、既に薬剤リスト又は飼料リスト又は比較可能な索引中に含まれている)(それというのも、それらが懸念なく分類されているので)及び保健衛生庁、消費者組織又は他の重要な共同体側から懸念又は留保が予想され得ない場合が理想である。しかし、作用物質の純粋な溶解化及び分散化だけでなく、(場合により溶解化された及び/又はミセル化された)作用物質の安定化も、できるだけ長いかつ完全な作用又は再吸収を展開する/改善するために重要である。
【0008】
ところで、本発明は、作用物質を溶解化させるために、分散化させるために、ミセル化させるために、及び場合により安定化させるために、及びそれによって前記の問題の1つ以上を解明する生成物を得るために、改善された方法に関する。これらの作用物質とは、例えば、親水性媒体中の親油性作用物質、同様に親油性及び親水性媒体、殊に水性媒体中の親水性物質が重要である。ここで説明されたような作用物質の溶解化、分散化及びミセル化と共に、親水性媒体中のその安定化も達成される。結局、本発明は、この種類の物質及び作用物質の使用も包含する。更に本発明は、ミセル中に含まれている作用物質、そのようなミセルを含有するエマルジョン前濃縮物及びミセル又はエマルジョン前濃縮物を含む生成物に関する。
【0009】
前記の概略された課題は、独立した特許請求によって解明される。従属特許請求は、有利な実施態様である。本発明と関連して示した一般的な、有利な及び特に有利な実施態様及び範囲を任意に互いに組合わすことができる。同様に個々の定義及び実施態様は省略されていてよく又は重要ではない。次に、本発明の様々な観点を詳細に説明する。
【0010】
第一の観点で、本発明は、i)1種以上の作用物質、ii)木材樹脂、iii)場合により1種以上の助剤を含有する、直径2〜300nmのミセルに関する。驚異的にも、そのようなミセル中に埋床されている作用物質は、明らかに改善された生物利用能を有することが判明した。
【0011】
本発明は、有利な1実施態様で、i)1種以上の作用物質、ii)木材樹脂及びアラビアゴム、iii)場合により1種以上の助剤を含有する、直径2〜300nmのミセルに関する。
【0012】
次に、本発明を詳説し、この際、殊に個々の成分を詳説する。
【0013】
成分i) "作用物質"とは、本発明と関連して、ヒト、動物又は植物中/に生理学的な作用を及ぼす、自然、自然同一又は合成化合物が解される。作用物質を、それらの機能により、食品添加物、製薬学的作用物質(ヒト又は動物用の)、化粧品用作用物質、植物作用物質の群に細分することができ、この際、個々の作用物質を、場合により幾つかの群に配属させることができる。本発明と関連して、他の方法で組成が困難である及び/又は不十分な生物利用能を有するような作用物質が有利に使用される。そのような作用物質は、典型的には、10g/l以下(20℃;中性媒体)又は100g/l以下(20℃;生理学的媒体(例えば、合成体液))の水溶性を有する。そのような作用物質のモル質量は、広い範囲で変動し、モル質量約50g/モルから、約50000g/モルの高分子までの"小分子"を包含する。
【0014】
"食品添加物"という概念は、人間の飲食に容認されていて、かつ食品に添加され得る化合物を包含する。食品添加物は当業者に公知であり、例えば、2005年11月23日付の食品で容認された添加物についてのEDI指令(添加物指令、ZuV)で確認することができる。本発明の範囲では、殊に、ビタミン(例えば、ビタミンA、E)、脂肪酸(例えば、不飽和脂肪酸、例えば、オメガ‐3‐脂肪酸、オメガ‐6‐脂肪酸)、酵素(例えば、フラビノイド群から)、補酵素(例えば、補酵素Q10)及び色素(例えば、カロチノイド、例えば、ベータカロチン、リコペン及びルテイン)の群が参照される。
【0015】
"製薬学的作用物質"という概念は、ヒト又は動物の病気の予防及び治療に容認されている化合物を包含する。製薬学的作用物質は当業者に公知であり、例えば、"オレンジブック(Orange Book)"又は"レッドリスト(Roten Liste)"で確認することができる。
【0016】
"化粧品用作用物質"という概念は、化粧品中で使用され、生理学的作用(例えば、皮膚/毛髪/爪に)又は視覚的作用(例えば、着色)に応じられ得る化合物を包含する。化粧品用作用物質は当業者に公知であり、例えば、INCIにより確認することができる。本発明の範囲では、殊に、化粧品の群が参照される。
【0017】
"植物作用物質"という概念は、農業及び林業及び造園の範囲で使用される化合物を包含する。植物作用物質は当業者に公知であり、例えば、"農薬手引書(Pesticide Manual)"で確認することができる。本発明の範囲では、除草剤、殺菌剤、殺虫剤及び生長調整剤の群が参照される。
【0018】
作用物質は、前記の数種のカテゴリーに属し得ることが参照される;要するに、例えば、食品添加物及び薬剤(例えば、製薬学的作用は未知であり、又は論争されているからである)。本発明の範囲では、当業者が、例えば、前記定義の作用物質を少なくともこの群の1つに配属させることができる場合が有利である。
【0019】
成分ii)群ii)の化合物は、"ミセルを形成する物質"という概念で総括され得る。前記のように、本発明によるミセルは成分ii)として、木材樹脂か、又は木材樹脂及びアラビアゴムを含む混合物を含有し得る。木材樹脂の使用は、一般に安定した及び迅速なミセル形成を確実にする。しかし、決められた使用については、ミセル形成がアラビアゴムの付加的な添加によって促進される又は支持される場合が有利であると実証することができる。
【0020】
"木材樹脂"とは、針葉樹根茎の抽出物として得られる公知の自然生成物のグリセリンエステルが解される。殊に、"木材樹脂"は、商業的に得られる化合物E445示す。その自然由来に基づき、木材樹脂の組成は変動することがあり、その際、様々な混合物が異なった純度で含まれている。("自然木材樹脂")。更に、"木材樹脂"という概念は、合成又は半合成法で得られる樹脂酸のグリセリンエステルも包含する。("合成木材樹脂")。"樹脂酸"は当業者に公知であり、殊に、実験式C2030の不飽和カルボン酸がこの概念によって包含される。
【0021】
"アラビアゴム"とは、E414又はCAS9000‐01‐05として登録されている公知の商業的に得られる自然物質が解される。その自然由来の基づき、組成は変動することがあり、その際、様々な混合物が異なった純度で含まれている。("自然アラビアゴム")。更に、その概念は、ポリアラビン酸及びその誘導体、殊に、合成又は半合成法で得られる酸性アルカリ土類金属塩及びアルカリ金属塩を包含する。("合成アラビアゴム")。
【0022】
成分iii)"助剤"とは、ミセル、エマルジョン前濃縮物及び/又は完成した生成物に肯定的な作用を有する化合物が解される。助剤の群は、木材樹脂の融点を下げる又は木材樹脂と均一相をその融点以下で生成させる溶解助剤である。典型的な例は、ポリオール、例えば、グリセリン、プロピレン‐グリコール、ポリエチレン‐グリコール400等の群を含む化合物である。そのような助剤は、処理すべき作用物質が木材樹脂の融点で熱的に不安定である場合に添加されることが有利である(例えば、タンパク質)。
【0023】
"ミセル"という概念は当業者に公知である。これは、不規則な楕円体又は球形と記載される、一定の大きさ及び形の1つの"コア"及び1つの"シェル"を有する成形体を示す。典型的には、ミセルは直径500nm以下を有し、その製造に基づき一定の大きさ分布を示す。大きさ及び大きさ分布は視覚的方法で決定され得る(例えば、顕微鏡)。本発明の範囲で、ミセルは、有利に直径2〜300nm、特に有利に10〜100nmを有する。典型的には、ミセルの少なくとも66%、有利に75%、最も有利に80%が前記の範囲内である。ミセルのコアは、実際には、1種以上の作用物質を含有し、シェルは、実際には、木材樹脂又は木材樹脂及びアラビアゴムを含有する。ミセルは動的成形体であるので、コア/シェル及びシェル/周囲の間の転移は、多かれ少なかれ明確に限定されている又は流動的である。場合により存在する他の助剤は、その分配係数に依存して、主にミセルのコア中に、又は主にシェル中に存在する。更に、前記のミセルのコアは粒子形では存在しない、即ち、固体としては存在しないことは公知である。
【0024】
次に、更なる有利な実施態様を詳説する:
本発明は、有利な1実施態様で、食品添加物、製薬学的作用物質、化粧品用作用物質、植物作用物質の群から選択される、溶解度1g/l以下を有する1種以上の作用物質を含有する前記のようなミセルに関する。
【0025】
本発明は、もう1つの有利な実施態様で、作用物質が補酵素Q10である前記のようなミセルに関する。
【0026】
本発明は、もう1つの有利な実施態様で、作用物質が、i)1種以上のオメガ‐3‐及び/又はオメガ‐6‐脂肪酸、ii)有利にフラボノイド、殊にクルクルミン又はカテキンの群からの1種以上のポリフェノール、iii)1種以上のカロチノイド、殊にルテイン及び/又はベータカロチン、iv)1種以上のE群のビタミン(トコフェロール及びトコトリエノール)、殊にアルファトコフェロール、v)1種以上のB群のビタミン、殊にビオチン及び/又はコリンを包含する群から選択される前記のようなミセルに関する。
【0027】
本発明は、もう1つの有利な実施態様で、ポリオールの群から選択される1種以上の助剤を含有する前記のようなミセルに関する。
【0028】
本発明は、もう1つの有利な実施態様で、群i)(1種以上の作用物質)の化合物対群ii)(木材樹脂又は木材樹脂+アラビアゴム)の化合物の比率が、20:1〜1:10質量%、有利に10:1〜1:1である、前記のようなミセルに関する。一般に、群ii)の化合物、殊に木材樹脂の量を減少させ、かつ作用物質の量を最高にすることが所望される。他方で、目標とされる使用を考慮して、十分な安定性及び生物利用能が与えられるべきである。1種以上の作用物質対群ii)の化合物の最適比率は、簡単な連続試験により決定され得る。作用物質の特性、殊にその溶解性は、前記の比率への影響を有する。公知の作用物質組成物に比較して、後記の方法を用いて、一方では、1種以上の作用物質対群ii)の化合物(殊に、木材樹脂)の比率に有利に影響することができ、かつ他方で、ミセルの狭い大きさ分布を達成することができる。従って、本発明によるミセルは、安定していて、高い生物利用能及び作用物質の有利な放出プロフィールを可能にする。前記のように、木材樹脂は木材樹脂及びアラビアゴムとの組み合わせに代えられ得る。それによって、1種以上の次の効果を達成することができる:a)木材樹脂含量の減少、b)作用物質負荷の増加、c)最終生成物の改善された視覚特性(例えば、透明)。木材樹脂及びアラビアゴムの組み合わせを使用する場合には、木材樹脂の一部をアラビアゴムによって置換することができる。木材樹脂対アラビアゴムの比率を1:10〜10:1、例えば1:1に調整することが有利である。
【0029】
第二の観点で、本発明は、i)前記のようなミセルを含有する親油相及びii)水相を含有するエマルジョン前濃縮物に関する。典型的には、ミセル"それ自体"は、不安定性であるが、もう1つの相中に分散している。そのようなエマルジョン前濃縮物は、しばしば製造の際に直ちに生成する。そのようなエマルジョン前濃縮物は、市販製品として更なる処理工業に提出され("生成物"の製造のために、後記参照)、又は直ちに更に処理され得る。従って、次のように定義される生成物の製造のためのエマルジョン前濃縮物の使用が包含される。
【0030】
エマルジョン前濃縮物は、エマルジョンの型、ミセル濃度、ミセルの大きさ、ミセルの大きさ分布によって特徴付けられ得る。型:エマルジョン前濃縮物は、水中油(O/W;均一相は水性である)又は油中水(W/O;分散相は水性である)として特徴付けられ得る。O/Wエマルジョンが有利である。濃度:典型的には、ミセル濃度は、エマルジョン前濃縮物中のほうが生成物中よりも高い。本発明について、親油相対水相の比率は、1:10〜1:0.5の範囲で有利であると実証された。ミセルの大きさ及び大きさ分布は、既にミセルの説明と関連して説明してあり、これを参照する。
【0031】
従って、本発明は、有利な1実施態様で、親油相対水相の比率が1:10〜1:1の範囲にある、前記のようなエマルジョン前濃縮物に関する。
【0032】
エマルジョン前濃縮物の"親油相"は、実際に、有利に排他的に、前記のようなミセルを含む。
【0033】
1実施態様で、"水相"は水(だけ)を含む。熱力学に基づき、水相は、常に木材樹脂及び作用物質及び場合によりミセル中に存在する他の助剤を一定割合まで含有する;しかし、簡単なので、"純粋な"水相を参照する。使用される水は、意図される更なる使用に依り、様々な純度(例えば、精製された、脱イオン化の、静脈内(i.V.)投与用…)を有することができる。この純度は本発明によって包含されている。
【0034】
もう1つの実施態様で、水相は更なる成分を含有する。そのような成分は、ph値の影響のために(酸、塩基、緩衝液)、イオン強度の影響のために(緩衝液、塩)又は流動性の影響のために(粘稠剤)用いることができる。1種以上の成分が添加されていてよい。そのような成分は、当業者に公知であり、例えば、フィードラー著、製薬学、化粧法及び関連分野のための助剤の辞書(Fiedler, Lexikon der Hilfsstoffe fuer Pharmazie, Kosmetk und angrenzende Gebiete)(1989)で確認することができる。
【0035】
本発明は、もう1つの実施態様で、少なくとも1種の木材樹脂をベースとする透明ゲル及びその中に溶解化されかつミセル化された作用物質を含むエマルジョン前濃縮物に関し、その粘稠度は半固体("アスピック様")〜液体の間にある。
【0036】
第三の観点で、本発明は前記のようなミセル又は前記のような1種以上のエマルジョン前濃縮物を含有する、食品、化粧品、薬剤及び植物保護剤の群を含む生成物に関する。
【0037】
そのような生成物は、様々な形態を有することができる。説明のために、次の生成物を挙げる。i)液体:食品範囲での飲料として;製薬学的範囲での溶液、ドロップ、シロップ、化粧品範囲でのスプレー又は溶液として、農業範囲での噴霧溶液として。ii)ゲル又はゼリー:パン用スプレッドとして、身体上への塗布のために(薬学、化粧学)iii)クリーム又はペースト:焼き物中に、パン用スプレッドとして、スナック中で;クリームとして(製薬学、化粧学)。iV)カプセル剤又は糖衣錠:製薬学範囲又は食品範囲のための有効な無水組成物として。V)被覆された固体:食品範囲でのスナック製品、シリアル、穀物調理品の改善された組成物として。前記の列挙から明らかなように、生成物は完成した市販製品であってよく(例えば、液体で)又は市販製品の部分であってよい(例えば、焼き物中のクリーム)。
【0038】
前記のような生成物に、エマルジョン前濃縮物を様々な量で添加することができる。その量は、特に、所望の生成物/添加される作用物質の必要量に依存している。この量は、簡単な連続試験で調べることができる。エマルジョン前濃縮物は改善された生物利用能を保証するので、一般に少量のエマルジョン前濃縮物で処理することができる;このことは著しい利点として見なされる。その特性に基づき、エマルジョン前濃縮物を、実際に全ての生成物に、生成物の特性に否定的に影響することなく添加することができることも判明した。従って、液体は、実際に澄明で長時間に渡り安定したままであり、このことは食品マーケティングの視点から重要な利点として見なされる。
【0039】
本発明は、有利な1実施態様で、補酵素Q10を含有する食品群、殊に飲料を含む生成物に関する。
【0040】
本発明は、もう1つの有利な実施態様で、トコチエノール、ベータカロチン、ルテイン、カテキン(1種以上の)を含有する食品群、殊に飲料を含む生成物に関する。
【0041】
本発明は、もう1つの実施態様で、木材樹脂及びその中に溶解化された、分散化された及び/又は安定化されたミセル化の作用物質を含有する生成物に関し、この際、生成物の粘稠度は、半固体及び液状の間である。
【0042】
本発明は、もう1つの実施態様で、i)木材樹脂及びii)水、グリセリン、プロピレン‐グリコール、ポリエチレン‐グリコール400、エタノール、マクロゴール400、イソプロパノールの群を含む1種以上の溶剤及びその中に溶解化された、分散化された及び安定化された1種以上の親油性又は親水性の作用物質を含有する透明ゲルを含む生成物に関する。
【0043】
生成物の粘稠度は、広い範囲で変動し得る。即ち、固体(切断堅い、破砕易い)、半固体(例えば、アスピック様)及び液状(水又はシロップ状の希溶液状)の生成物が包含されている。生成物は、均一である必要はなく(例えば、クリーム、フォーム中)又はカプセルに包入されてよい(例えば、糖衣錠中)。
【0044】
第四の観点で、本発明は、前記のようなエマルジョン前濃縮物の製法に関する。
【0045】
本発明は、変法Aで、段階i)30〜110℃、有利に40〜60℃で木材樹脂の融解による、又は0〜100℃、有利に0〜60℃で1種以上の助剤中で木材樹脂の溶解による均一相の製造、ii)場合により水相中に分散されている作用物質の、攪拌均一相への配量添加、iii)生成した攪拌反応混合物への場合により更なる水相の添加を包含し、この際、少なくとも1つの反応段階で、水相を添加させ、かつこの際、場合により水中に分散されている作用物質の温度は、均一相の+/−10℃である。
【0046】
本発明は、変法Bで、段階i)30〜130℃、有利に40〜60℃で木材樹脂及びアラビアゴムの融解による、又は0〜100℃、有利に0〜60℃で1種以上の助剤中で木材樹脂及びアラビアゴムの溶解による均一相の製造、ii)場合により水相中に分散されている作用物質の、攪拌均一相への配量添加、iii)生成した攪拌反応混合物への場合により更なる水相の添加を包含し、この際、少なくとも1つの反応段階で、水相を添加させ、かつこの際、場合により水中に分散されている作用物質の温度は、均一相の+/−10℃である。
【0047】
本発明は、変法Cで、段階i)30〜130℃、有利に40〜60℃で木材樹脂及び場合によりアラビアゴムの融解による均一相の製造、ii)攪拌均一相への作用物質の配量添加、iii)生成した攪拌反応混合物への水相の更なる添加を包含し、この際、水相の温度は均一相の+/−10℃である。
【0048】
従って、本発明は、作用物質の溶解化、分散化、ミセル化及び安定化のための方法、この方法によって溶解化された、分散化された、ミセル化された及び安定化されたエマルジョン前濃縮物及び生成物及びそのようなエマルジョン前濃縮物及び生成物の使用に関する。
【0049】
本発明に関連して、"溶解化"という概念は、親油物質から親水物質への転移が解される。
【0050】
本発明に関連して、"分散化"という概念は、他種/異種物質の剪断力下での混合が解される。
【0051】
本発明に関連して、"ミセル化"という概念は、作用物質のミセルへの転移が解される。
【0052】
本発明に関連して、"安定化"という概念は、作用物質がその中で長期間に渡って(殊に、1日間〜1年間、有利に5〜200日間)変化しないままである系を生じさせる方法が解される。
【0053】
本明細書に挙げた方法は、木材樹脂による製造にも、木材樹脂及びアラビアゴムによる製造にも関連することが解される。より簡単な可読性のために、様々な箇所で、木材樹脂だけを参照する。
【0054】
従って、前記の方法は、ミセル中1種以上の作用物質の溶解化、分散化及び安定に好適であり、この方法は、i)木材樹脂又は木材樹脂/アラビアゴム及び作用物質を入念に分散させ、ii)生成した均一相にその後に同一温度の水を被覆させ、かつiii)それによって自発的に発生するゲルを均一にすることを特徴とする。
【0055】
有利な1実施態様で、水相の温度は均一相の+/−10℃である。
【0056】
本発明は、殊に、水相は水を含むことを特徴とする、前記のような方法に関する。
【0057】
本発明は、殊に、助剤はポリオールの群から選択されることを特徴とする、前記のような方法に関する。
【0058】
本発明は、もう1つの実施態様で、作用物質の溶解化、分散化、ミセル化及び安定化のための方法に関し、その際、木材樹脂を使用し、かつ処理すべき作用物質を懸濁液中に、懸濁液が持続するまで入念に分散させ、この際、それにその後、同一温度の水を被覆させ、それによって自発的に生成するゲルを均一化させる。
【0059】
本発明は、もう1つの実施態様で、前記のような作用物質の溶解化、分散化、ミセル化及び安定化のための方法に関し、この方法は、木材樹脂を融解させ、処理すべき作用物質をこの懸濁液中に入念に分散させることを特徴とし、この際、処理すべき作用物質を分散物中に入れた後に、これに水を被覆させ、かつ全体を単一として再び均一化させる。
【0060】
本発明は、もう1つの実施態様で、前記のような作用物質の溶解化、分散化、ミセル化及び安定化のための方法に関し、この方法は、木材樹脂を室温で助剤中に溶解させ、分散物の温度を保持し、作用物質を一緒に分散させ、溶融物に同一温度の水を被覆させ、溶融物を均一にさせ、それによってやや混濁〜透明のゲルが生成することを特徴とする。
【0061】
本発明は、もう1つの実施態様で、前記のような作用物質の溶解化、分散化、ミセル化及び安定化のための方法に関し、この方法は、木材樹脂を室温で溶解させ、物質の混合物を同一温度で、水、グリセリンを包含する群を含む1種以上の助剤の添加によって低下させ、次いで溶解すべき、場合により熱不安定な作用物質を、取得した溶融物中に分散させ、溶融物に同一温度の水を被覆させ、溶融物を均一化させ、それによって透明ゲルが生成することを特徴とする。
【0062】
前記の実施から明らかなように、正確な温度管理が方法を有利にさせる。"同一温度"及び"一定温度"という表現では、実際に同一の温度が解される。これは、他の方法パラメーター、装置管理及び使用物質に依存して変動し得る。典型的には、+/−10℃の温度範囲が有利であり、+/−5℃の温度範囲が特に有利である。室温は、相応して22℃+/−10℃、有利に+/−5℃を示す。
【0063】
更なる重要な方法段階として、木材樹脂溶融物に、その中に溶解した作用物質と共に、直ちに、十分に深い層のほぼ同一温度の水を被覆させることが明らかである。この手段によって、水の下に、自発的に直ちに透明ゲルが生成する。そのような同一温度の水を被覆しなければ、溶融物は硬化し、その形では使用できない又は殆ど使用することはできない。従って溶融物は、未だ液状の状態でほぼ同一温度の水を注ぎかけられ又は被覆されるべきである。冷水では、ゲル生成は同様に機能するが、その場合に特に作用物質の分散化が生じる。水を同一温度で加えかつ溶融物の被覆が生成された(つまり、水が溶融物上に浮かぶ)後に、ゲル生成が起こり、かつゲルは水を吸収して速やかに塊で水の表面に向かって上へ膨張する。この外部から観察可能なゲル生成は、例えば、合目的な攪拌による水及び溶融物の速やかな混合によって支持される。ゲルはミセル構造を成し、かつ極めて澄明な溶液の粘稠性を有する。従って、40nmよりも少ない小滴径を有するゲルが得られ、そこでは光は屈折せず、従って、ゲルは明らかに透明である。これは、例えば、脂溶性作用物質10%及び木材樹脂約10〜20%が含有されているだけに、一層驚異的である。この最小の脂肪小滴は熱安定性を保ち、従って、ゲルを煮沸する場合ですら、脂肪小滴は合一せず、かつ水の添加によってもミセル構造は変化しない。粘稠性はシロップ状又は希薄である。ゲルは攪拌によって均一化され、水又は水‐溶剤混合物の添加によって好適な粘度に希釈される。しかし、大きな剪断力で均一にする場合には、それはゲル生成に不利益である。その場合には、生成するゲルは透明ではなくなり、これは、溶解化と共に、分散化も起きることを意味する。しかし、通常の剪断刃、例えば、容器底部から垂直に突出して、それに垂直に配置された、攪拌塊を常に剪断する鋭利な刃を備えた回転軸を有するステファン攪拌器で、又は溶解攪拌機で攪拌する場合には、極めて迅速に視覚的に澄明な、美しいかつ透明なゲルが生じる。その中では、菌汚染は液体中よりも実際にゆっくりと進行する。
【0064】
次に、作用物質の溶解化及び安定化を更にもっと詳しく説明する:i)木材樹脂だけを水相中に加え、次いで作用物質をそれに混合させる(混合物の均一化によって、それを保護しかつ安定化させることを所望して)か、又はii)木材樹脂及び作用物質の結合を合目的な方法で行うかどうかで差異が生じることを示す。1つの理論に拘束されずに、木材樹脂及び処理すべき作用物質が分子ベース上で結合することが特に重要として認められる。i)による簡単な混合で、添加される作用物質のほんの数%で溶解化、分散化及び安定化の効果が持続する。木材樹脂が溶剤で汚染されていない場合には、それは室温で液状である。親油性及び親水性の作用物質の大多数が木材樹脂と均一相を形成することが明らかである。1つの理論に拘束されずに、この型の溶解化(この際、木材樹脂を、分子又は準分子ベース上で、溶解化すべき1種以上の作用物質と結合させる)は、木材樹脂対作用物質の比率を改善するための重要な要素として認められる。結果的に、多くの作用物質がはるかに少ない木材樹脂で包被され得る。従って、助剤の副作用も抑制され、それというのも、助剤はしばしば大過剰量〜極めて大過剰量で、本来の作用物質に添加されるからである。
【0065】
第五の観点で、本発明は前記のような生成物の製法に関し、この方法は、前記のようなエマルジョン前濃縮物を生成物の他の成分と混合させることを特徴とする。エマルジョン前濃縮物の添加は、生成物を製造する際の様々な段階で行なわれ得る。生成物へのエマルジョン前濃縮物の加入及び分配は、公知方法によりかつ手許にある器具により行なわれ得る。この柔軟性は有利であると見なされる。飲料の製造では、これは、例えば、最終製造段階であってよい。一般に、製造技術的考察は、生成物のための好適な製法の選択において、上位の役割を果たす。本発明によるミセル及びエマルジョン前濃縮物は温度安定性ではあるが、エマルジョン前濃縮物は長時間に渡り高温に曝されないことが有利であると実証された。
【0066】
次に示す例につき、本発明を更に説明するが、これに限定されるものではない。
【0067】
例1:E445 100g、E414 150g、補酵素Q10 50g及びビタミンE16.65gを前以て装入させ、1時間105℃に加熱する。95℃の超純水186.35gを10分間以内で添加する。反応混合物を5分間92℃で混合させ、この温度で脱ガスさせ、濾過する。澄明な安定した液体500gを得る。濁度:5FTU(ホルマジン濁度単位(Formazine Turbidity Unit)。
【0068】
例2:例1と同様に方法を行い、使用される成分量及び得られるミセル溶液の特性は、次の表から引用される;ビタミンEは省略される。
【0069】
【表1】

【0070】
特性のための尺度として、負荷及びFTU度を引用する;製造可能性のための尺度として、直視的溶解速度を引用する。木材樹脂(E445)がミセル化剤として既に良好な結果をもたらすことを示す:5%の溶液は、特性的に高価値でもあるし、容易に製造可能でもある。従って、そのような溶液は、ミセル化剤として、アラビアゴム(E414)とのそれを凌駕し、それというのも、これはほんの2%の負荷までで、特性的に高価値でもあり、容易に製造可能でもあるからである。ところで、ミセル化剤として、アラビアゴム及び木材樹脂の組み合わせによって、意外にも次のことが判明した;特に高い負荷、低いFTU度及び容易な製造可能性を達成することができる:アラビアゴムに比べて、他は同一の特性で、負荷を10倍にすることが可能である;木材樹脂に比べて、負荷を4倍にすること(製造可能性に対して)又は負荷を二倍にすること(生成物特性に対して)が可能である。
【0071】
例3:例1と同様に方法を行い、使用成分の量及び得られるミセル溶液の特性は、次の表から引用される。
【0072】
【表2】

【0073】
最初は構造的に様々な作用物質の大きな帯域幅が組成され得ることが明らかである。
【0074】
本発明の更なる実施態様、利点及び使用は、従属請求から及びここで図による次の説明から明らかである。この際、次のことが示される:

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)1種以上の作用物質、ii)木材樹脂、iii)場合により1種以上の助剤を含む、直径2〜300nmのミセル形の組成物。
【請求項2】
成分ii)として、有利に1:10〜10:1質量%の比率で、木材樹脂及びアラビアゴムを含む混合物を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
食品添加物、製薬学的作用物質、化粧品用作用物質、植物作用物質の群から選択される、各々1g/lよりも少ない水溶性を有する1種以上の作用物質を含有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
ポリオールの群から選択される1種以上の助剤を含有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
作用物質は補酵素Q10である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
作用物質は、i)1種以上のオメガ‐3‐脂肪酸及び/又はオメガ‐6‐脂肪酸、ii)有利にフラボノイドの群、殊にクルクミンを含む1種以上のポリフェノール、iii)1種以上のカロチノイド、殊にルテイン及び/又はベータ‐カロチン、iv)1種以上のE群のビタミン、殊にアルファ‐トコフェロール及び/又はトコトリエノール及び/又はv)1種以上のB群のビタミン、殊にビオチン及び/又はコリンを含む群から選択されている、請求項1から4までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
1種以上の作用物質対群ii)の化合物の比率は、20:1〜1:10質量%の範囲にある、請求項1から6までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
a)請求項1から7までのいずれか1項に記載の組成物を含有する親油相及びb)水相を含有するエマルジョン前濃縮物。
【請求項9】
親油相対水相の比率は、1:10〜1:0.5の範囲にある、請求項8に記載のエマルジョン前濃縮物。
【請求項10】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の組成物又は請求項8又は9に記載のエマルジョン前濃縮物を含有する、食品、化粧品、薬剤及び植物保護剤の群を含む生成物。
【請求項11】
補酵素Q10、トコトリエノール、ベータ‐カロチン、1種以上のカテキンを含有する食品の群を含む、請求項10に記載の生成物。
【請求項12】
次の段階を包含する請求項8又は9に記載のエマルジョン前濃縮物の製法において、
変法A、成分ii)として、木材樹脂だけを使用する場合:
i)40〜110℃(有利に40〜60℃)で木材樹脂の溶融による、又は0〜100℃(有利に0〜60℃)で1種以上の助剤中で木材樹脂の溶解による均一相の製造、
ii)場合により水相中に分散されている作用物質の、攪拌均一相への配量添加、
iii)生成する攪拌反応混合物への、場合により更なる水相の添加、
この際、反応段階の少なくとも1段階で、水相を添加させ、かつこの際、場合により水中に分散されている作用物質の温度は、均一相の+/−10℃である;又は
変法B、成分ii)として、木材樹脂及びアラビアゴムの組み合わせを使用する場合:
i)40〜110℃で木材樹脂及びアラビアゴムの溶融による、又は0〜100℃で1種以上の助剤中で木材樹脂及びアラビアゴムの溶解による均一相の製造、
ii)場合により水相中に分散されている作用物質の、攪拌均一相への配量添加、
iii)生成する攪拌反応混合物への、場合により更なる水相の添加、
この際、反応段階の少なくとも1段階で、水相を添加させ、かつこの際、場合により水中に分散されている作用物質及び水相の温度は、均一相の+/−10℃である、方法。
【請求項13】
水相は水を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
助剤はポリオールの群から選択される、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
請求項8又は9に記載のエマルジョン前濃縮物を、生成物の他の成分と混合させる、請求項10又は11に記載の生成物の製法。

【公表番号】特表2010−526109(P2010−526109A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506788(P2010−506788)
【出願日】平成20年5月6日(2008.5.6)
【国際出願番号】PCT/CH2008/000207
【国際公開番号】WO2008/138155
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(509081403)ミヴィタル アクチエンゲゼルシャフト (2)
【氏名又は名称原語表記】miVital AG
【住所又は居所原語表記】Katharinengasse 10, CH−9000 St. Gallen, Switzerland
【Fターム(参考)】