説明

木質系板材及びそれを用いたユニット床材

【課題】反りなどの形状変化が発生し難く、かつ、耐候劣化による色調変化が生じ難い木質系板材およびユニット床材を提供する。
【解決手段】セルロース系材料と合成樹脂を主原料として成形された合成木材であり、該合成木材の断面形状が基層材の外周を基層材と成分の異なる表層材で被覆した構造であることを特徴とする。そして、合成樹脂製架台4および木質系板材5の少なくとも一方に、上記接合部材6を用いて合成樹脂製架台4と木質系板材5とを接合した際に生じる掘削屑9を逃がすための凹部を設けることが好ましい。すなわち、木質系板材5を合成樹脂製架台4に載置したときの合成樹脂製架台4と木質系板材5の接触面に凹部を形成することが好ましく、この凹部は合成樹脂製架台4に設けても木質系板材5に設けても、もしくは両方に設けてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベランダ、バルコニー、テラス等に敷設される木質系板材及びユニット床材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅等のバルコニー、ベランダ、テラス等に、美観の向上等を目的とし、木質系板材が好適に用いられ、これら木質系板材は産業廃棄物の有効利用という点から廃材より得られる木粉と合成樹脂を原料とし成形されたものが知られている。しかし、これら木質系板材は、単層構造を採用しているため意匠性に乏しく、また、木粉を主原料に使用していることから、使用環境における降雨、乾燥の繰り返しにより反りなどの形状変化が発生したり、耐候劣化により色調が変化したりするという問題があった。
【0003】
そこで、意匠性に優れた単層構造品を成形するため、顔料を用いて意匠性を出すことが考えられる。しかしながら、この場合は比較的高価な顔料を大量に使用してしまうことになるため、木質系板材として高価なものとなってしまい現実的でない。
【0004】
また、基層材の表面に基層材と成分の異なる意匠性に富んだ表層材を積層した2層構造の木質系板材も提案されている(特許文献1参照)。しかし、この木質系板材では、意匠性の向上は図れるものの、基層材と表層材とで異なった材料を使用しているため、膨張・収縮率差により、反りなどの形状変化が発生するという問題が解決されない。さらに、この木質系板材は、
耐候劣化により色調が変化し易いセルロース系微粉粒を表層部に多く含んでいるため、木質系板材としても色調変化が大きいものとなってしまう。
【特許文献1】実用新案登録第3085677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はかかる従来技術の欠点を解消し、意匠性を高めることができるとともに、降雨、乾燥の繰り返しによっても反りなどの形状変化が発生し難く、かつ、耐候劣化による色調変化が生じ難い木質系板材及びユニット床材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、次の構成を特徴とするものである。
(1)セルロース系材料を主原料とする基層材の周囲を、合成樹脂を主原料とする表層材で被覆したことを特徴とする木質系板材。
(2)上記(1)に記載の木質系板材を合成樹脂製架台に配置してなるユニット床材。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、セルロース系材料を主原料とする基層材の周囲を、合成樹脂を主原料とする表層材で被覆したので、降雨、乾燥の繰り返しによっても反りなどの形状変化が発生し難く、かつ、耐候劣化による色調変化が生じ難い、意匠性の高い木質系板材とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の木質系板材は、図1に示すように、セルロース系材料を主原料とする基層材1の周囲を、合成樹脂を主原料とする表層材2で被覆してなるものである。つまり、木質系板材の大部分を占める基層材1の主原料として木粉などのセルロース系材料を採用することで産業廃棄物の有効利用ができるし、また、合成樹脂を主原料とする表層材2で、セルロース系材料の周囲を覆うので、反りなどの形状変化を抑制し、耐候劣化による色調変化を抑制することもできる。ここで、本発明における主原料とは50重量%以上の使用比率を言う。また、本発明は、基層材1と表層材2の2層構造とすることにより、意匠性向上を目的に比較的高価な顔料を添加する場合であっても外周部の表層材2のみに使用すればよく、そのため最低限のコストアップで意匠性を向上させ、かつ、反りの発生などの形状変化を抑制することができる。
【0009】
ここで、セルロース系材料としては、木材を微粉化した木粉を採用することが木の質感を再現する上で好ましい。さらに、産業廃棄物の有効利用という点から、建築廃材などから得られる木粉を採用することがより好ましい。
【0010】
合成樹脂としては例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、これらの共重合体、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、ABS(アクリロニトリルブチレンスチレン共重合体)、ASA(アクリル酸エステル共重合体)等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。熱可塑性樹脂を主原料とすることにより、カビなどの発生し難い木質系板材を得ることが出来る。また、合成樹脂としては、熱可塑性樹脂の他、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂を使用することも可能である。しかしながら、押し出し成形により本発明に係る木質系板材を成形する場合には、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。なお、熱可塑性樹脂を主原料として、熱硬化性樹脂を副原料として併用してもよい。
【0011】
また、木質系板材の内部には、長手方向に延びる空洞3を形成することも好ましい。空洞3を設けることは、原料の使用を抑え、木質系板材の軽量化を図る上で好ましい。
【0012】
さらに、表層材2の意匠性を向上させるため、主原料と異なる種類の合成樹脂や無機質粉体を前記合成樹脂に添加したり、表面に凹凸模様を施すことも好ましいことである。
【0013】
上述の本発明の木質系板材は、図2及び図3に示すように、合成樹脂製架台4上に載置され、使用時における裏面側から金属ビスなどの接合部材6を打ち込んで固定される。ここで、該合成樹脂製架台の形状としては、互いに隣接する2辺に連結用の凸部7を有し、残りの2辺に連結用の凹部8を有する略矩形状であることが好ましい。また、接合部材6としては、金属ネジ、釘、ステープルなど、上記木質系板材に打ち込む事が可能なものであれば特に限定されない。
そして、合成樹脂製架台4および木質系板材5の少なくとも一方に、上記接合部材6を用いて合成樹脂製架台4と木質系板材5とを接合した際に生じる掘削屑9を逃がすための凹部を設けることが好ましい。すなわち、木質系板材5を合成樹脂製架台4に載置したときの合成樹脂製架台4と木質系板材5の接触面に凹部を形成することが好ましく、この凹部は合成樹脂製架台4に設けても木質系板材5に設けても、もしくは両方に設けてもよい。
【0014】
接触面が凹部に形成されていない合成樹脂製架台及び木質系板材を上記接合部材を用いて接合した場合には、図4に示すように、木質系板材5の掘削屑9が合成樹脂製架台4と木質系板材5との間に挟まり、木質系板材5と合成樹脂製架台4との間に隙間10が生じてしまう。
【0015】
それに対し、上述したように合成樹脂製架台4および木質系板材5の少なくとも一方に掘削屑9を逃がすための凹部を設けていると、掘削の際に生じた掘削屑9が凹部に逃げる形となり、合成樹脂製架台4と木質系板材5の間に隙間が生じるのを防ぐことができる。
【実施例】
【0016】
以下に本発明の実施例をさらに具体的に説明するが、実施例中に示す特性値の測定方法は次のとおりである。
A.反り促進試験
20℃雰囲気(湿度60%、大気圧)で24時間放置した後に反りを測定し基準値とする。次に50℃の恒温水槽中に16hr浸積した後、80℃乾燥機中で8hr乾燥する。この操作を3サイクル繰り返し、再び20℃雰囲気(湿度60%、大気圧)で24時間放置し、測定した反りの値を試験値とする。
【0017】
次に(試験値)−(基準値)より反り量を算出する。なお、4隅の反り量のうち最大値をその試験体の反り量とする。
B.反りの測定方法
水平床面に試験片を載置し、床面からの4隅を浮き上がりをスケール尺を用い測定する。
<実施例1>
表層材の主原料として、廃木粉(セルロース系材料)10重量%、ASA(熱可塑性樹脂)90重量%を混合し、さらに、副原料として顔料、耐候剤を主原料100に対してそれぞれ5重量%、1重量%添加し、表層材の原料とした。また、基層材の原料として、廃木粉(セルロース系材料)60重量%、ABS(熱可塑性樹脂)40重量%を混合した
次に上述の表層材原料及び基層材原料を用い、厚み約13.5mmの基層材周囲を厚み約1mmの表層材で被覆するように押出成形し、木質系板材を3枚得た。(サイズ:約71.5×303×15.5mm)。
【0018】
これら3枚の木質形板材について、反り促進試験を行い、反り量を測定した。
【0019】
結果を表1に示す。
<比較例1>
表層材の主原料として、廃木粉(セルロース系材料)10重量%、ASA(熱可塑性樹脂)90重量%を混合し、さらに、副原料として顔料、耐候剤を主原料100に対してそれぞれ5重量%、1重量%添加し、表層材の原料とした。また、基層材の原料として、廃木粉(セルロース系材料)60重量%、ABS(熱可塑性樹脂)40重量%を混合した。
【0020】
次に上述の表層材原料及び基層材原料を用い、厚み約14.5mmの基層材の表面に厚み約1mmの表層材を積層した2層構造となるように押出成形し、木質系板材を3枚得た。(サイズ:約71.5×303×15.5mm)。
【0021】
これら3枚の木質形板材について、反り促進試験を行い、反り量を測定した。
【0022】
結果を表1に示す。
<比較例2>
主原料として、廃木粉(セルロース系材料)60重量%、ABS(熱可塑性樹脂)40重量%を混合し、さらに、副原料として顔料、耐候剤を主原料100に対してそれぞれ5重量%、1重量%添加し、押出成形用の原料を得た。
【0023】
次に上述の原料を用い、厚み約15.5mmの単層品となるよう押し出し成形し、木質系板材を得た(サイズ:約71.5×303×厚さ15.5mm)。
【0024】
これら3枚の木質形板材について、反り促進試験を行い、反り量を測定した。
【0025】
結果を表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
<実施例2>
実施例1で得られた木質系板材の裏面に凹部を形成した試験体と凹部を形成しなかった試験体を作製し、図2に示す合成樹脂製架台にそれぞれ金属ネジを用いて接合し、そのときの接合状態を確認した。その結果、裏面に凹部を形成した木質系板材と合成樹脂製架台との接合面には隙間が生じなかったが、裏面に凹部を形成しなかった木質系板材と合成樹脂製架台との間には約1〜2mmの隙間が生じた。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態を示す木質系板材の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態を示すユニット床材の平面図及び側面図である。
【図3】本発明の一実施形態を示すユニット床材の要部断面図である。
【図4】従来のユニット床材の使用状況を示す要部断面図である。
【図5】本発明のユニット床材の使用状況を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 基層材
2 表層材
3 空洞
4 合成樹脂製架台
5 木質系板材
6 接合部材
7 凸部
8 凹部
9 掘削屑
10 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース系材料を主原料とする基層材の周囲を、合成樹脂を主原料とする表層材で被覆したことを特徴とする木質系板材。
【請求項2】
請求項1に記載の木質系板材を合成樹脂製架台に配置してなるユニット床材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−8107(P2007−8107A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−194661(P2005−194661)
【出願日】平成17年7月4日(2005.7.4)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】