説明

木質部材の連結構造

【課題】 工具類の有無にかかわらず何時何処でも短時間で確実に連結できる。
【解決手段】 天板2、底板4と側板12とを連結部材20を介して連結する木質部材の連結構造であって、天板2、底板4および側板12は、それぞれの連結面に開口する溝8、8、16を有し、かつ各溝8、8、16の開口側は括れた形状に形成され、連結部材20は、その断面における一端側部分26および他端側部分27がそれぞれ天板2、底板4および側板12の溝に適合するように形成されるとともに、それぞれ開断面形状に形成され、天板2、底板4の溝8、8に連結部材の一端側部分26を、側板12の溝16に連結部材の他端側部分27をそれぞれ挿入することにより天板2、底板4と側板12とが連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つの木質部材を互いに連結する木質部材の連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木質部材同士を互いに連結する木質部材の連結構造としては、たとえば、側板と棚板の連結構造であって、側板に形成された孔に挿し込まれるとともに頭部が突出するビスと、棚板の上面に形成された取付円孔に回動自由に着座される締付円盤とからなり、この締付円盤は、その下面側にビスの頭部が挿入される切欠きと、ビスの頭部が係合するカム溝とを備え、締付円盤にビスの頭部が切欠きを介してカム溝に挿入、係合され、締付円盤が回動されると、側板と棚板とがビスと締付円盤からなる締付具により連結固定されるものが知られている(下記特許文献1参照)。
【特許文献1】実公昭59−32343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記木質部材の連結構造は、組立後に何らかの理由により締付具が緩んだ場合には木質部材同士の連結が不十分になり、連結構造として利用する場合には使用箇所の制約が生じる。さらに、組立時にはドライバーなどの工具が必要になるので、何時何処ででも組立ができるとは限らなかった。
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、工具類の有無にかかわらず何時何処でも短時間で確実に連結できることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明は、第1の木質部材と第2の木質部材とを連結部材を介して連結する木質部材の連結構造であって、前記第1の木質部材および前記第2の木質部材は、それぞれの連結面に開口する溝を有し、かつ各溝の開口側は括れた形状に形成され、前記連結部材は、その断面における一端側部分および他端側部分がそれぞれ前記第1の木質部材、第2の木質部材の溝に適合するように形成されるとともに、それぞれ開断面形状に形成され、前記第1の木質部材の溝に前記連結部材の一端側部分を、前記第2の木質部材の溝に前記連結部材の他端側部分をそれぞれ挿入することにより前記第1の木質部材と第2の木質部材とが連結されてなることを特徴とする。
【0006】
このようにすると、連結部材の一端側部分および他端側部分の開口側の幅を縮小させて、それぞれ第1の木質部材の溝、第2の木質部材の溝に挿入できるので、挿入が容易になるとともに、挿入後一端側部分および他端側部分がその幅寸法の戻りによるバネ効果(付勢作用)により確実に嵌合し、第1の木質部材と第2の木質部材とは連結される。
【0007】
次に本発明を構成する各要件についてさらに詳しく説明する。第1の木質部材および第2の木質部材の材質は、たとえば無垢木材、集成材、合板あるいは繊維板などである。第1、第2の木質部材の形状は、その連結面に開口する溝を有し、かつ各溝の開口側が括れていれば特に限定されず、たとえば板状部材、棒状部材、ブロック状部材など任意部材の組み合わせを含む。第1の木質部材と第2の木質部材とは互いに直交するように直角状に連結されても良いし、突合せ状または平行状に連結されても良い。また、第1の木質部材と第2の木質部材とは直接当接状態で連結されても良いし、互いに離れた状態で連結されても良い。
【0008】
第1の木質部材と第2の木質部材の連結面に開口する溝は、先に記したように、その開口側が括れた形状に形成されれば、特に形状の限定はないが、できれば左右対称であることが好ましい。こうすると溝の形成が容易であるとともに使用勝手が良い。
【0009】
連結部材は、その断面における一端側部分、他端側部分がそれぞれ第1の木質部材の溝、第2の木質部材の溝の形状に適合し、溝の開口部に対応する一端側部分の基部、他端側部分の基部が括れた形状である。連結部材の中央部の幅は、溝の対応する箇所の幅に等しいか若干小さくすると良い。連結部材の一端側部分と他端側部分の断面は、開断面形状に形成され、かつ一端側部分と他端側部分の先端幅が、溝の対応する箇所の幅に等しいか若干大きく形成され、その程度は連結部材の材質にもよるが、0.1から数ミリ程度である。
【0010】
連結部材の一端側部分と他端側部分の形状を開断面形状とし、かつ幅寸法を上記のように設定することにより、一端側部分と他端側部分の幅を縮小させた状態で第1の木質部材と第2の木質部材の溝に挿入し、一端側部分自体および他端側部分自体の幅寸法の戻りによる付勢により連結部材の一端側部分と他端側部分を溝に確実に嵌合させることができる。また、連結部材の一端側部分および他端側部分をそれぞれ溝に挿入後、連結部材の開断面内に別の心材を挿入することによりまたはビスをねじ込むことにより、連結部材の一端側部分と他端側部分を拡大付勢させて確実に嵌合させても良い。連結部材の具体的な断面形状は、鼓形(リボン形)、アレー形またはI字形、異形アレー形、異形I字形その他の形状である。
【0011】
さらに、連結部材の断面における一端側部分と他端側部分は隣接した状態で設けられても良いし、互いに離れた状態で設けられても良い。一端側部分と他端側部分が隣接した状態で設けられる場合は、第1の木質部材と第2の木質部材は当接して連結される。一端側部分と他端側部分が互いに離れた状態で設けられる場合は、第1の木質部材と第2の木質部材は離れた状態で連結される。
【0012】
また、木質部材の溝に挿入した連結部材の正面側端面に化粧用キャップを嵌めても良い。また、木質部材の溝形成において、その溝長さを背面側から正面側まで貫通して形成させずに、正面側(表側)の表面から適宜の厚さ、たとえば数ミリの厚みが残るように、裏面側(裏面)から正面側に向かって溝を形成することにより、表面に溝が現れないので、キャップを使用するまでもなく意匠上好ましくすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の木質部材の連結構造によれば、工具類の有無にかかわらず何時何処でも短時間で確実に連結することができ、かつ木質部材の状態で輸送できるので輸送効率も良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る木質部材の連結構造の実施形態を図面に基いて詳細に説明する。なお、図1〜7において、同一または同等部分には同一符号を付けて示す。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明に係る木質部材の連結構造の一実施形態を示す斜視図である。本木質部材の連結構造は、天板(第1の木質部材)2と側板(第2の木質部材)12、底板(第1の木質部材)4と側板(第2の木質部材)12とを連結部材20を介して連結する構造である。天板2、底板4および側板12は互いに直角に連結され枠体1を形成する。天板2、底板4および側板12の材質は、たとえば集成材やMDFなどである。
【0016】
天板2、底板4および側板12の各木質部材は、その連結面6、14において枠体の奥行き方向(背面と正面を結ぶ方向)19に設けられる溝8、16を有するとともに、これら溝8、16の開口側は括れた形状に形成される。枠体1の上部は、天板2と側板12とが互いに直交するように直角状に連結され、かつ天板2の下面が側板12の上側木口を覆うように天板2勝ちに連結される。枠体1の下部は、底板4と側板12とが互いに直交するように直角状に連結され、底板4の左右側木口が側板12の内面で覆われるように側板12勝ちに形成される。
【0017】
図2は、図1における連結部材20の断面図である。連結部材20は、断面が略鼓形(またはリボン形)の棒状部材で、その断面形状は上下、左右線対称である。連結部材20の長さは、天板2、底板4または側板12の奥行き寸法に略一致する。さらに、上下方向中央部分28が括れた形状に形成される。連結部材の材質は、硬質塩化ビニールなどの合成樹脂、アルミニウムなどの金属などで形成され、これらの材料を使用した押出形材が好ましい。
【0018】
さらに、一端側部分26および他端側部分27の断面は、開断面状であり、それぞれの端が一部開口する。これにより、一端側部分26と他端側部分27の開口側20a、20bは弾性的に縮小可能である。中央部分28の幅Wは一定で、溝の開口端の幅寸法に略等しいが、若干小さく形成しても良い。開口側20a、20bは弾性的に縮小可能で幅Wは小さくなり得る。幅Wは自由状態で溝の対応する箇所の幅寸法に等しいか若干大きく形成され、その程度は連結部材の材質にもよるが、0.1から数ミリ程度とする。また、一端側部分26の形状と大きさおよび他端側部分27の形状と大きさは、それぞれ図1に示す天板の溝8、底板の溝8および側板の溝16に適合するように形成される。
【0019】
図3は、図1に示す木質部材の連結構造の組立方法を示し、(a)は天板の溝の開口部と側板の溝の開口部とを対向させた状態の斜視図、(b)は天板の溝と側板の溝とに連結部材を挿入する状態の斜視図である。先に記したように、天板2および側板12は、それぞれの連結面6、14に開口する溝8、16を有し、かつ各溝の開口側10、18は括れた形状に形成される。これに対して、連結部材20の一端側部分26と他端側部分27は、先に記したように、それぞれ天板の溝8、側板の溝16に適合するように形成される。
【0020】
天板2と側板12とを連結するときには、まず天板の溝8の開口部と側板の溝16の開口部とを、その長手方向を一致させて対向させる。次に、天板の溝8と側板の溝16にそれぞれ連結部材20の一端側部分26、他端側部分27を挿入する。この際、連結部材の一端側部分26と他端側部分27は開断面状であるので、溝8、16に挿入するときには連結部材の一端側部分26と他端側部分27の開口側20a、20bの幅を弾性縮小させて溝8、16に押し込むようにする。
【0021】
これにより連結部材の一端側部分26と他端側部分27はそれぞれ溝8、16の内壁を付勢するので、連結部材20と溝8、16は確実に嵌合し、天板2と側板12とは連結部材20を介して連結される。なお、底板4と側板12との連結構造についても、底板の溝8に連結部材の一端側部分26を、側板の溝16に連結部材の他端側部分27をそれぞれ挿入することにより連結され、天板2と側板12との連結構造に準じて連結される。
【0022】
また、連結部材20を溝8、16に挿入後、連結部材の開断面内25(図2)に別の心材を挿入することにより、またはビスをねじ込むことにより、連結部材の一端側部分26と他端側部分27を拡大させて連結部材20と溝8、16とを確実に固定しても良い。
【0023】
図4は、図1〜3の木質部材の連結構造において、連結部材を挿入した後、その端面を覆うためのキャップを示し、(a)は裏面図、(b)は(a)の側面図である。キャップ29には二つの突起30が形成され、図1に示す連結部材20の端面に突起30部分を嵌めて覆いとする。この場合、連結部材20の長さは天板2の正面木口や側板12の正面木口の面から少なくとも突起30の突出分だけ短くなるように形成される。
【0024】
図5は、本発明の別の連結部材を示し、(a)は開断面アレー形、(b)は開断面異形アレー形、(c)は開断面鋏形の各断面図である。これらの連結部材21〜23はいずれも開断面で、一端側部分26および他端側部分27の幅Wが縮小可能であるので、一端側部分26および他端側部分27を縮小させた状態で天板の溝8や側板の溝16に挿入し、一端側部分26自体および他端側部分27自体の幅戻りの付勢により連結部材21〜23を溝8、16に確実に嵌合させることができる。あるいは、連結部材21〜23を溝8、16に挿入後、連結部材の開断面内25に別の心材を挿入することにより、またはビスをねじ込むことにより、連結部材の一端側部分26と他端側部分27を拡大させて固定しても良い。
【実施例2】
【0025】
図6は、本発明に係る木質部材の連結構造の別の実施形態を示す断面図である。連結部材24は、その断面において中央部分28が中空のブロックに形成される。このため連結部材の一端側部分26と他端側部分27は、互いに距離Dだけ離れた状態に設けられる。この連結部材24を使用して天板2と側板12とを連結したときは、天板2と側板12とは連結部材の中央部分28の厚み分(距離Dに同じ)だけ離れた状態で連結される。図6におけるその他の構造と作用は、図1〜5に示した実施形態の場合と同じであるので、その説明を省略する。
【0026】
図7は、本発明のさらに別の連結部材を示し、(a)はスリット状開断面鼓形、(b)は異形楕円状開断面鼓形の各断面図である。これらの連結部材32、35はいずれも開断面で、かつ開断面の肉厚が異なる形状である。連結部材32は一端側部分26および他端側部分27にそれぞれスリット状の溝33が形成された開断面である。連結部材35は一端側部分26および他端側部分27にそれぞれ異形楕円状の溝36が形成された開断面である。
【0027】
いずれの連結部材も、一端側部分26および他端側部分27の幅Wが縮小可能であるので、一端側部分26および他端側部分27を縮小させた状態で天板の溝8や側板の溝16に挿入し、一端側部分26自体および他端側部分27自体の幅戻りの付勢により連結部材32、35を溝8、16に確実に嵌合させることができる。連結部材32,35は、肉厚を厚くすることができるので、連結部材と溝との嵌合強度を高めることができる。また、連結部材32、35を溝8、16に挿入後、連結部材の開断面内38に別の心材を挿入することにより、またはビスをねじ込むことにより、連結部材の一端側部分26と他端側部分27を拡大させて固定しても良い。
【0028】
以上この発明を図示の実施例について詳しく説明したが、それを以ってこの発明をそれらの実施例のみに限定するものではない。要するに、この発明の精神を逸脱せずして種々改変を加えて多種多様の変形をなし得ることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の木質部材の連結構造は、特に住宅のクローゼット、玄関収納ユニット、洗面化粧台あるいは家具、什器などの木質部材同士の連結に好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る木質部材の連結構造の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1における連結部材の断面図である。
【図3】図1に示す木質部材の連結構造の組立方法を示し、(a)は天板の溝の開口部と側板の溝の開口部とを対向させた状態の斜視図、(b)は天板の溝と側板の溝とに連結部材を挿入する状態の斜視図である。
【図4】図1〜3の木質部材の連結構造において、連結部材を挿入した後、その端面を覆うためのキャップを示し、(a)は裏面図、(b)は(a)の側面図である。
【図5】本発明の別の連結部材を示し、(a)は開断面アレー形、(b)は開断面異形アレー形、(c)は開断面鋏形の各断面図である。
【図6】本発明に係る木質部材の連結構造の別の実施形態を示す断面図である。
【図7】本発明のさらに別の連結部材を示し、(a)はスリット状開断面鼓形、(b)は異形楕円状開断面鼓形の各断面図である。
【符号の説明】
【0031】
2 天板(第1の木質部材)
4 底板(第1の木質部材)
6 連結面
8 溝
10 開口側
12 側板(第2の木質部材)
14 連結面
16 溝
18 開口側
20〜24 連結部材
26 一端側部分
27 他端側部分
28 中央部分
29 キャップ
32、35 連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の木質部材と第2の木質部材とを連結部材を介して連結する木質部材の連結構造であって、前記第1の木質部材および前記第2の木質部材は、それぞれの連結面に開口する溝を有し、かつ各溝の開口側は括れた形状に形成され、前記連結部材は、その断面における一端側部分および他端側部分がそれぞれ前記第1の木質部材、第2の木質部材の溝に適合するように形成されるとともに、それぞれ開断面形状に形成され、前記第1の木質部材の溝に前記連結部材の一端側部分を、前記第2の木質部材の溝に前記連結部材の他端側部分をそれぞれ挿入することにより前記第1の木質部材と第2の木質部材とが連結されてなる木質部材の連結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−40494(P2007−40494A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−227558(P2005−227558)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(390030340)株式会社ノダ (146)
【Fターム(参考)】