説明

材料自動供給装置

【課題】三次元造形装置内部における低融点材料の偏析や固化を防止することができるとともに、製造コストの低減を図ることを可能にする。
【解決手段】液化した際に所定の体積となる固化した低融点材料を収容する容器と、当該容器内の低融点材料を加熱する加熱手段とを有し、当該容器内の固化した低融点材料が当該加熱手段により加熱されて液化した時点で、ホースを用いることなく当該容器から直接に液化した低融点材料をディスペンサーへ供給するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料自動供給装置に関し、さらに詳細には、基板あるいは部品に接着剤やホットメルトを塗布する機械や、補助材料により形成される補助材層と造形材料により形成される造形材層とを交互に積層するとともにそれらを切削しながら三次元造形物を作成する三次元造形装置などに搭載される材料自動供給装置に関する。
【0002】
なお、上記した三次元造形装置においては、補助材料としては、例えば、低融点金属やワックスなどの熱可塑性樹脂のような低融点樹脂などの各種の低融点材料が用いられ、また、造形材料としては、例えば、紫外線硬化樹脂などの各種の樹脂材料が用いられる。
【背景技術】
【0003】
従来より、材料自動供給装置を用いた装置として、例えば、三次元造形装置があり、補助材料により形成される補助材層と造形材料により形成される造形材層とを交互に積層するとともに、エンドミルなどの切削ツールなどで補助材層と造形材層とを切削することにより、所望の形状を備えた三次元造形物を形成する三次元造形装置が知られている(例えば、特許文献1として提示する特開2005−319634号公報を参照する。)。
【0004】

ここで、図1には、上記したような従来の技術による三次元造形装置の要部拡大概略構成説明図が示されている。
【0005】
即ち、従来の三次元造形装置10は、その上に三次元造形物を形成するためのテーブル11に対してXYZ方向(図1におけるXYZ直交座標系を示す参考図を参照する。)に相対的に移動自在に配設されたキャリッジ16を備えており、このキャリッジには、補助材料である低融点金属を吐出するためのディスペンサー24と、造形材料である紫外線硬化樹脂を吐出するためのディスペンサー26と、エンドミル30を支持したスピンドル28とが取り付けられている。
【0006】
そして、ディスペンサー24はホース24bを介してタンク24aに接続されており、一方、ディスペンサー26はホース26bを介してタンク26aに接続されている。
【0007】
ここで、タンク24aには補助材料である低融点金属が貯留され、この低融点金属はホース24bを介してディスペンサー24へ供給されるものであるが、この低融点金属を加熱して液化状態を維持するために、ディスペンサー24の外周およびタンク24aの外周には、シート状のヒーター24c、24aaがそれぞれ配設されている。
【0008】
また、タンク26aには造形材料である液体状の紫外線硬化樹脂が貯留され、この紫外線硬化樹脂はホース26bを介してディスペンサー26へ供給される。
【0009】

以上の構成において、三次元造形装置10により三次元造形物を形成するには、ディスペンサー24から補助材料である低融点金属を吐出させて補助材層を形成し、また、ディスペンサー26から造形材料である紫外線硬化樹脂を吐出させて造形材層を形成するものであり、これら補助材層と造形材層とを交互に積層しながら、かつ、補助材層と造形材層とをスピンドル28により支持されたエンドミル30により切削する。
【0010】
なお、ディスペンサー24から吐出された低融点金属は、ヒーター24cにより加熱されているディスペンサー24から外部へ出るため、当該外部温度に応じた温度低下により固化して補助材層を形成する。また、ディスペンサー26から吐出された紫外線硬化樹脂は、紫外線照射装置(図示せず。)により紫外線を照射されて固化して造形材層を形成する。
【0011】
上記した補助材層ならびに造形材層の積層と切削とを繰り返すことにより、所望の形状の三次元造形物が得られるものであり、こうして得られた三次元造形物を温水などに漬けて補助材層を液化して取り除くと、造形材のみより形成された三次元造形物が得られる。
【0012】

ところで、従来の三次元造形装置などに用いる材料自動供給装置において、低融点金属を貯留するタンクと低融点金属を吐出するディスペンサーとには、それぞれ加熱手段としてヒーターが配設されている。
【0013】

このため、三次元造形装置の設置場所の温度が低い場合などでは、低融点金属を貯留するタンクとディスペンサーとを連結する際に低融点金属が固化する恐れがあるという問題点があった。
【0014】
なお、こうした問題点を解消するためには、低融点金属を貯留するタンクとディスペンサーとを連結するホースの外周にヒーターを配設すればよいが、こうしたヒーターの配設は製造コストを上昇させ、また熱を不要時にも供給し続けるため資源の無駄遣いになるという新たな問題点を招来する。
【0015】
また、補助材料として用いている低融点金属は溶融合金であるため、低融点金属を貯留するタンク内で凝固が起こった場合には、偏析により金属の成分が偏るおそれがある。こうした偏析は、タンク内の低融点金属を常に攪拌することで防止することができるものであるが、タンク内の低融点金属を常に攪拌するためには、タンク内の低融点金属を全て溶融させなければ攪拌することができないものであった。
【0016】
しかしながら、タンク内の低融点金属を全て溶融させるためには、出力の大きなヒーターが必要になるので製造コスト上昇の要因の一つになり、また、タンク内の低融点金属の攪拌を自動化するにはそのための手段を設ける必要があり、こうした手段の設置も製造コストの上昇につながるものであるという問題点があった。
【0017】
なお、上記した低融点金属の偏析は、低融点金属を貯留するタンクに連結されたホース24内でも生じる恐れがある。
【0018】
しかしながら、ホース内に存在する低融点金属を攪拌することは不可能であり、ホース内で低融点金属が偏析した場合には、低融点金属がホースを閉塞させてしまう恐れがあるという問題点があった。
【0019】
一方、タンクからホースへ低融点金属を送出するにはポンプ(図示せず。)が用いられているが、低融点金属をタンクからホースへ送出するには出力の大きなポンプが必要となり、このこともまた製造コストを上昇させる要因となるという問題点があった。
【0020】
さらに、ディスペンサー内に補助材料である低融点金属を充填可能な最大量まで充填した状態において当該ディスペンサーを駆動する場合には、ディスペンサー全体の重量が嵩むため、ディスペンサーを駆動するモーターにかかる負荷が大きくなる。従って、出力の大きなモーターを搭載する必要があり、こうしたモーターの搭載もまた製造コストを上昇させる要因となるという問題点があった。

【特許文献1】特開2005−319634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、従来の技術の有する上記したような種々の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、三次元造形装置の材料供給タンク内部における材料の偏析や固化を防止することができるとともに、ヒーターによる熱源を不要時にはカットし、製造コストの低減を図ることを可能にした材料自動供給装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するために、本発明による材料自動供給装置は、固化した材料を収容する容器と、当該容器内の材料を加熱する加熱手段(例えば、容器の外周部位に配設され、容器を介して容器内の固体状態の材料を加熱して液化する電磁誘導加熱(Induction Heating:IH)ヒーターである。)とを有し、当該容器内の固化した材料が当該加熱手段により加熱されて液化した時点で、ホースを用いることなく当該容器から直接に液化した材料をディスペンサーへ供給するようにしたものである。
【0023】

即ち、本発明のうち請求項1に記載の発明は、ディスペンサーに材料を供給する材料自動供給装置において、下方部位に下部開口部を備えるとともに補助材料として固体状態の材料を収容可能な容器と、上記容器内の上記固体状態の材料を加熱して液化する加熱手段と、上方部位に上部開口部を備えるとともに下方部位に吐出開口部を備え、上記上方部位から供給された液体状態の材料を上記吐出開口部から吐出可能なディスペンサーと、上記容器と上記ディスペンサーとを相対的に移動して、上記容器の上記下部開口部と上記ディスペンサーの上記上部開口部とを接続または分離する移動手段とを有し、上記移動手段により上記容器の上記下部開口部と上記ディスペンサーの上記上部開口部とが接続された状態において、上記加熱手段により上記固体状態の材料を加熱して液化し、該液化により液体状態となった上記容器内の材料を上記下部開口部から上記上部開口部を介して上記ディスペンサー内へ供給するようにしたものである。
【0024】
また、本発明のうち請求項2に記載の発明は、本発明のうち請求項1に記載の発明において、上記加熱手段は、上記容器の外周部位に配設され、上記容器内の上記固体状態の材料を加熱して液化する電磁誘導加熱ヒーターであるようにしたものである。
【0025】
また、本発明のうち請求項3に記載の発明は、本発明のうち請求項1または2に記載の発明において、上記ディスペンサーは、上記容器から供給された液体状態の材料を加熱する加熱手段を有するようにしたものである。
【0026】
また、本発明のうち請求項4に記載の発明は、本発明のうち請求項1、2または3に記載の発明において、上記ディスペンサーは、上記ディスペンサー内の気圧を調節する気圧調整手段を有するようにしたものである。
【0027】
また、本発明のうち請求項5に記載の発明は、本発明のうち請求項1、2、3または4に記載の発明において、上記材料を低融点金属としたものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、以上説明したように構成されているので、三次元造形装置内部における低融点材料の偏析や固化を防止することができるようになるとともに、製造コストの低減を図ることが可能になるという優れた効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による材料自動供給装置の実施の形態の一例を詳細に説明するものとする。なお、以下の説明においては、材料として低融点金属を用いるものとする。
【0030】

図2には、本発明の実施の形態の一例による材料自動供給装置を備えた三次元造形装置の概略正面斜視構成説明図が示されている。
【0031】
この三次元造形装置100は、Z方向に延長した略四角柱状の一対の支持部12L、12Rと当該支持部12L、12Rを連結する底部12Bとにより構成されたU字型状の門型アーム部12を備えている。
【0032】
こうした門型アーム部12を構成する一対の支持部12L、12Rのそれぞれの上端部には、レール部14が支持されており、このレール部14にはX軸方向(図2のXYZ直交座標系を示す参考図を参照する。)に所定範囲内で移動自在にキャリッジ16が配設されている。
【0033】
また、キャリッジ16に隣接し、キャリッジ16に対してZ軸方向に所定範囲内で移動自在に設けられたヘッド15上に、スピンドル28が固定されている。さらにスピンドル28上にはZ軸方向に所定範囲内で移動自在なスライダ(図2斜線部)が配設され、前記スライダには補助材料として低融点金属を吐出するディスペンサー102と、造形材料として紫外線硬化樹脂を吐出するディスペンサー114とが併設されている。
【0034】

また、レール部14には、三次元造形装置100の設置面と平行な面を持つホルダー120が取り付けられている。このホルダー120には、貫通孔が二ヶ所穿設されており、該貫通孔には、補助材料の供給手段であるシリンジ106が取り付け可能となされている。
【0035】
なお、ホルダー120は、キャリッジ16の移動を妨げることがない位置に配置されているとともに、ホルダー120に穿設されている貫通孔は、その中心がキャリッジ16に取り付けられているディスペンサー102の中心とZ軸方向に同一平面上に位置するように配置されている。
【0036】

また、門型アーム部12の底部12BのY軸方向に延長された略長方形のフレーム部18上には、Y軸方向に所定範囲内で移動自在なテーブル22が配設されている。
【0037】
このテーブル22の外周側には、テーブル22を囲むようにして切削粉等を回収する略箱形状の回収槽20が配設されており、当該回収槽20は図示しない排水管を介して図示しない回収タンクに接続されている。
【0038】
また、テーブル22の上面22aは水平な平面上に形成されており、この上面22aにおいて、補助材料により形成される補助材層と造形材料により形成される造形材層とが積層されて三次元造形物が形作られるものである。
【0039】

ここで、三次元造形装置100は、全体の動作をマイクロコンピュータにより制御されている。即ち、マイクロコンピュータによって所定の分解能に応じて、キャリッジ16はX軸方向に移動され、ディスペンサー102、ディスペンサー114ならびにスピンドル28はZ軸方向に移動され、テーブル22は回収槽20とともにY軸方向に移動される。
【0040】
従って、ディスペンサー102、ディスペンサー114ならびにスピンドル28に支持されたエンドミル30と、テーブル22の上面22aにおいて形作られる三次元造形物との相対的な位置関係は、XYZ方向(図2におけるXYZ直交座標系を示す参考図を参照する。)に任意に移動可能となる。
【0041】

次に、ディスペンサー102は、シリンジ106に収容された低融点金属が供給されるように設計されており、ディスペンサー102において低融点金属を貯留する貯留部102h(図3を参照する。)および低融点金属吐出部102i(図3を参照する。)の外周面には、そのほぼ全長にわたってヒーター102bが配設されている。このヒーター102bによって貯留部102hおよび低融点金属吐出部102iを加熱することにより、ディスペンサー102の内部に貯留された低融点金属を所定の温度に加熱して液状に維持することができる。
【0042】
なお、後述するように、ヒーター102bによって所定の温度まで加熱されて液状に維持された低融点金属は、ディスペンサー102の下端部102aから下方へ吐出され、所定の位置に所定量塗布されるように制御されている。
【0043】
また、ディスペンサー114は、図示しないタンクに収容された紫外線硬化樹脂が供給されるように設計されており、図示しないタンクから供給された造形材料を貯留するシリンジ114bと連結されたディスペンサー114の先端に位置する吐出口114aから、造形材料が1滴1滴吐出される。こうしてディスペンサー114の吐出口114aから吐出される造形材料は、飛滴となって所定の位置に所定量塗布されるように制御されている。
【0044】

次に、図3(a)(b)にはディスペンサー102の一部断面概略構成説明図が示されているが(図3(a)はディスペンサー102のA矢視図(上面図)であり、図3(b)は正面図である。)、ディスペンサー102は、略円筒形状の内筒102cと外筒102dとを有する二重構造を備えている。
【0045】
ここで、内筒102cの下方部位には貯留部102hが形成されており、その上端部102eには蓋102fが配設されている。
【0046】
上記した蓋102fは、上端部102eに架橋されたロッド102gに回動自在に軸支されている。このロッド102gにはコイルバネ102jが巻回されており、コイルバネ102jの一方の端部はロッド102gに係止され、その他方の端部は蓋102fに係止されていて、コイルバネ102jは、蓋102fが内筒の102cの上部開口部102kを閉塞するように付勢している。
【0047】
従って、蓋102fに対してコイルバネ102jの付勢力よりも大きな下方への力が作用すると、蓋102fはロッド102gを回転軸として下方に回転して上部開口部102kが開放されるが、蓋102fに対してコイルバネ102jの付勢力よりも大きな下方への力が作用しない限りは、上部開口部102kは蓋102fにより閉鎖された状態が維持される。
【0048】
一方、外筒102dにおける内筒102cの下方領域には、低融点金属吐出部102iが設けられており、低融点金属吐出部102iには開閉自在な弁機構108が配設されている。
【0049】
この弁機構108は貯留部102hと連結されており、弁機構108により貯留部102hに貯留された低融点金属の吐出が制御される。
【0050】
なお、低融点金属吐出部102iには、弁機構108の下流側に、弁機構108から排出された低融点金属の流路となる管110b、管110bに連結されたノズル押し当て部材110ならびに低融点金属を回転させながら吐出するためのノズル112が配設されている。
【0051】

弁機構108は、中央部側面に凸部108gを有し、凸部108gより上方の側面に、コイルバネ108aが巻回されている。このコイルバネ108aは拡開方向への付勢力を有し、貯留部102hから流れてきた低融点金属をせき止める弁機構108の末端部である開閉部108cが閉塞した状態を維持できるように、一方の端部は貯留部102hの下端部に係止され、その他方の端部は凸部108gに係止されている。
【0052】
また、低融点金属の流路である管110bの外周面には、コイルバネ110aが巻回されており、コイルバネ110aの一方の端部は流路内側凸部110cに係止され、他方の端部はノズル押し当て部材110の上端部に係止されている。コイルバネ110aは、ノズル押し当て部材110とノズル112とが密着するように、ノズル押し当て部材110を下方へ付勢している(図3および図5を参照する。)。
【0053】
そして、弁機構108の末端部である開閉部108cの側面には、管108bを流れてきた低融点金属が通る流路108dが存在し、その末端部である108eは、開閉部108cが開放状態の時のみ通じる流路108fに通じており、流路108fは管110bへと連結されている。
【0054】

次に、ディスペンサー102外面には、蓋102fと貯留部102h上端部との間の側面と、弁機構108が有する開閉部108c付近の側面との二ヶ所に、気圧調整手段103および弁開閉手段104からのガスを供給するための貫通孔が穿設されている。
【0055】
気圧調整手段103および弁開閉手段104は、三次元造形装置100の設置面に対して平行であるようにディスペンサー102の側面に配置されていて、気圧を制御するためのポンプ(図示せず。)と連通した略円筒形状を備えている。気圧調整手段103はディスペンサー102上部に気体を供給するための貫通孔へ接続されており、また、弁開閉手段104はディスペンサー102の下部に気体を供給するための貫通孔へ接続された連結管104bを有する。
【0056】

続いて、図4を参照しながら、ディスペンサー102へ材料の供給を行うシリンジ106の構造について詳細に説明する。
【0057】
シリンジ106は、略円筒形状を備えていて、その上端および下端は開放されている。シリンジ106の中央部外周には、IHヒーター106aが配設されており、このため、中央部の外周は上部および下部に比べると径が大きくなっている。また、中央部の底部には、ホルダー120に穿設されている貫通孔の直径と同じ長さでその貫通孔に嵌合可能であるような凸部106cが設けられている。
【0058】
シリンジ106内部は、中央部下端付近で内径が変わり、上部よりも下部は径が小さくなっている。上部と下部の径の違いにより生じた部分が受け皿となるため、図4(b)の形状に成形された固体状態の低融点金属を、上部より充填しシリンジ106内部にとどめておくことが可能になっている(図4(c)を参照する。)。
【0059】
このような、その内部に低融点金属を有するシリンジ106が、ホルダー120の貫通孔に二つ嵌入して配置されている。
【0060】

なお、この三次元造形装置においては、シリンジ106と、IHヒーター106aと、ディスペンサー102と、ヘッド15とにより材料自動供給装置が構成されている。
【0061】

以上の構成において、上記した三次元造形装置100の動作について説明するが、こうした三次元造形装置による造形材料の吐出ならびに造形材層および補助材層の切削の動作の制御については、例えば、特開2005−319634号公報に開示されているように公知の技術であるので、その詳細な説明は省略することとする。以下においては、本発明の実施に関連する三次元造形装置100による補助材料である低融点金属を吐出する際の動作について、図5乃至図8を参照しながら説明する。
【0062】
はじめに、シリンジ106からディスペンサー102へと補助材料である低融点金属を供給する際の動作について説明するが、シリンジ106からディスペンサー102へと補助材料である低融点金属を供給するには、それぞれ独立して存在しているディスペンサー102とシリンジ106とを接続する必要がある。
【0063】
そのため、まず、ディスペンサー102の蓋102fの中心が、シリンジ106の下端部106bの中心の真下に位置するように、キャリッジ16をX軸方向へ移動させて、ディスペンサー102の位置を調節する。
【0064】
次に、シリンジ106の下端部106bがディスペンサー102に挿入されるように、Z軸方向へヘッド15を動かす。ディスペンサー102の蓋102fがシリンジ106の下端部106bに押し下げられ、シリンジ106の中央部の底部がディスペンサー102の上端にぶつかるまでディスペンサー102を上昇させる。
【0065】
こうした動作によりディスペンサー102とシリンジ106とが接続され、ディスペンサー102はシリンジ106から補助材料である低融点金属を受け入れ可能な状態になる(図5を参照する。)。
【0066】
次に、低融点金属をディスペンサー102へ移動させるため、固体状態の低融点金属を加熱により液体状態に変化させるため、シリンジ106に配設されたIHヒーター106aの電源を入れる。
【0067】
IHヒーター106aにより加熱された低融点金属は、例えば、約2分間ですべてが融解し液体状態となり、シリンジ106からディスペンサー102の貯留部102hへ移動する。一つのシリンジから貯留部102hには、例えば、約50mlの低融点金属が供給される。
【0068】
この状態で、ディスペンサー102の貯留部102hに低融点金属が貯留され、補助材料吐出可能な状態となる。なお、この際に、低融点金属の固化を防ぐために、ディスペンサー102の外周に配設されたシート状のヒーター102bの電源を入れておく。
【0069】
ディスペンサー102への低融点金属の供給完了後、ディスペンサー102はX軸方向およびZ軸方向へ移動可能なように、シリンジ106と分離しておく必要がある。
【0070】
このため、シリンジ106をディスペンサー102へ挿入した場合と逆の手順で、ヘッド15を下方へ移動させシリンジ106の下端部106bをディスペンサー102の開放部102kから引き抜く。
【0071】
ディスペンサー102とシリンジ106が分離されると、ディスペンサー102の蓋102fはコイルバネ102jの付勢力により自動的に閉鎖され、この状態でディスペンサー102は、貯留部102hに補助材料である低融点金属を内蔵するとともに、X軸方向およびZ軸方向へ移動自在な状態となる(図6を参照する。)。
【0072】
次に、貯留部102hに貯留された低融点金属を下方へ移動させるため、気圧調整手段103を稼働させ、図6に示したA矢印方向へ空気を送り、ディスペンサー102の内部において図6に示したB矢印方向に圧力をかける。
【0073】
B方向への圧力により、低融点金属は下方へ押され、貯留部102hから弁機構108内部へ移動し、弁機構108の端部である開閉部108c付近へ移動する。開閉部108c付近まで移動した低融点金属は、開閉部108cの側面に有する流路108dへ流れ、その端部108eで止まる(図7(a)を参照する。)。
【0074】
低融点金属を吐出するには、弁機構108を作動させて開閉部108cを開放し、流路108dの端部108eと開閉部108cの先に存在する流路108fを接続する必要がある。
【0075】
ここで、開閉部108cを開放して弁機構108を開放状態にするため、弁開閉手段104よりの連結管104bへ加圧した空気を送り、図7に示したC矢印方向へ風圧をかけるようになされている。
【0076】
C方向への風圧は弁機構108が有する凸部108gに作用するように位置設定されており、従って、C方向への風圧が弁機構108を閉塞状態にしているコイルバネ108aのもつ付勢力以上の大きさであるならば、弁機構108全体が上方へ移動することになる。
【0077】
この状態で、弁機構108の開閉部108cは開放され、流路108dと流路108fとが連通し、端部108eにとどまっていた低融点金属は流路108fを流れ、下方向への圧力に促されることによりさらに下方に接続されている管110bへと到達する(図7(b)を参照する。)。
【0078】
管110bへと流れてきた低融点金属は、その下方に存在するノズル押し当て部材110を通過し、ノズル112の上端部に到達する。低融点金属はノズル112の溝112aへ外側端部112aaより入り、外側端部112aaから中心部の窪みに向かい、溝112aに沿って回転して進む(図8を参照する。)。
【0079】
そして、ディスペンサー102内にかかる図6に示したB矢印方向への圧力および溝112aを通ることで得た回転力とを有する低融点金属は、吐出口112bより噴霧される。
【0080】
以上の動作により、シリンジ106に収容されていた低融点金属はディスペンサー102より吐出される。
【0081】
なお、ディスペンサー102の貯留部102hに貯留されていたすべての低融点金属を吐出した場合には、ホルダー120に載置されているシリンジ106’から、上記と同様の操作を行うことにより低融点金属を供給することができる。
【0082】

上記したようにして、本発明による材料自動供給装置の実施の形態の一例を備えた三次元造形装置100においては、ディスペンサー102へ低融点金属を供給を希望する場合のみ、低融点金属を備えたシリンジ106と接続するように構成されている。
【0083】
このため、必要量以上の液体状態の低融点金属をディスペンサーに貯留する必要がなく、シート状ヒーターの加熱で液体状態を維持できる量のみをディスペンサーに貯留できるので、低融点金属が偏析する恐れがない。
【0084】
また、シリンジ106からディスペンサー102へ低融点金属を移動させる時のみ、シリンジ106に配設されたIHヒーター106aの電源を入れておけばよく、必要時以外はIHヒーター106aの電源を切っておくことができるので、コストを削減することができる。
【0085】
さらに、シリンジ106に固体状態の低融点金属を充填する場合に成形された低融点金属は、IHヒーター106aの熱により外周部分から徐々に融解していくが、底部が凹形状であるため、遅れて融解する中央部分が塊の状態のまま下方に落ちていくことはないので、シリンジ106内やディスペンサー102内で、低融点金属により閉塞する恐れがない。
【0086】
さらにまた、ディスペンサー102の上端部は、蓋102fを閉じた状態に維持し外部と遮断されているため、ディスペンサー102の上部開口部102kからディスペンサー102内の空気が漏れることがなく、内部の気圧を一定に保つことが可能である。
【0087】
そのため、図6に示したB矢印方向への力が弱まらずに、安定した速度で吐出を続けることが可能である。
【0088】

なお、上記した実施の形態は、以下の(1)乃至(3)に示すように変形することができるものである。
【0089】
(1)上記した実施の形態においては、ホルダー120に穿設された貫通孔は二つであったが、これに限られるものではないことは勿論であり、一つまたは複数の貫通孔を設けて、一つまたは複数のシリンジを載置するようにしてもよい。
【0090】
(2)上記した実施の形態においては、補助材料として低融点金属を用い、造形材料として紫外線硬化樹脂を用いるようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、各種材料を補助材料あるいは造形材料として用いるようにしてもよい。
【0091】
例えば、補助材料としては、ワックスなどの熱可塑性樹脂のような低融点樹脂などの低融点材料を用いるようにしてもよいし、造形材料としては、紫外線とは異なる放射線の可視光や電子線あるいはその他の光によって硬化する水に不溶の光硬化樹脂を用いるようにしてもよい。
【0092】
(3)上記した実施の形態ならびに上記した(1)乃至(2)に示す変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、試作や量産での部品製作やデザインモデルを製作する際などに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】図1は、従来の三次元造形装置の一部を示した説明図である。
【図2】図2は、本発明による材料自動供給装置を備えた三次元造形装置の実施の形態の一例を示す概略構成説明図である。
【図3】図3は、図2に示す三次元造形装置の一部を拡大して示した概略構成説明図であり、(a)は補助材料のディスペンサー上部の端面図であり、(b)は補助材料のディスペンサーの部分断面説明図である。
【図4】図4は、図2に示す三次元造形装置のシリンジを説明する概念構成説明図であり、(a)はシリンジの斜視説明図であり、(b)は低融点金属の形状を示した概念図であり、(c)はシリンジの断面説明図である。
【図5】図5は、図2に示す三次元造形装置の実施の形態の一例の一部を拡大して示した部分断面説明図であり、補助材料のディスペンサーとシリンジとを接続した状態を示しているものである。
【図6】図6は、図2に示す三次元造形装置の実施の形態の一例の一部を拡大して示した部分断面説明図であり、補助材料のディスペンサー内に低融点金属が供給された状態を示しているものである。
【図7】図7(a)および(b)は、図2に示す三次元造形装置の補助材料のディスペンサーの一部を拡大して示した断面説明図である。
【図8】図8(a)は、図2に示す三次元造形装置の補助材料のディスペンサーが有するノズル下部の端面図であり、図8(b)は、図8(a)のI−I線断面図である。
【符号の説明】
【0095】
10、100 三次元造形装置
11 テーブル
12 アーム部
12B 底部
12R、12L 支持部
14 レール部
15 ヘッド
16 キャリッジ
18 フレーム部
20 回収槽
22 テーブル
22a 上面
24、26、102、114 ディスペンサー
28 スピンドル
30 エンドミル
102a 下端部
102b ヒーター
102c 内筒
102d 外筒
102e 上端部
102f 蓋
102g ロッド
102h 貯留部
102i 低融点金属吐出部
102j コイルバネ
102k 上部開口部
103 気圧調整手段
104 弁開閉手段
104a 支持部
104b 連結管
106、106’ シリンジ
106a IHヒーター
106b 下端部
106c 凸部
108 弁
108a コイルバネ
108b 管
108c 開閉部
108d 流路
108e 末端部
108f 流路
108g 凸部
110 ノズル押し当て部材
110a コイルバネ
110b 管
110c 流路内側凸部
112 ノズル
112a 溝
112aa 外側端部
112b 吐出口
114a 吐出口
114b シリンジ
120 ホルダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスペンサーに材料を供給する装置において、
下方部位に下部開口部を備えるとともに補助材料として固体状態の材料を収容可能な容器と、
前記容器内の前記固体状態の材料を加熱して液化する加熱手段と、
上方部位に上部開口部を備えるとともに下方部位に吐出開口部を備え、前記上方部位から供給された液体状態の材料を前記吐出開口部から吐出可能なディスペンサーと、
前記容器と前記ディスペンサーとを相対的に移動して、前記容器の前記下部開口部と前記ディスペンサーの前記上部開口部とを接続または分離する移動手段と
を有し、
前記移動手段により前記容器の前記下部開口部と前記ディスペンサーの前記上部開口部とが接続された状態において、前記加熱手段により前記固体状態の材料を加熱して液化し、該液化により液体状態となった前記容器内の材料を前記下部開口部から前記上部開口部を介して前記ディスペンサー内へ供給する
ことを特徴とする材料自動供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の材料自動供給装置において、
前記加熱手段は、前記容器の外周部位に配設され、前記容器内の前記固体状態の材料を加熱して液化する電磁誘導加熱ヒーターである
ことを特徴とする材料自動供給装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の材料自動供給装置において、
前記ディスペンサーは、前記容器から供給された液体状態の材料を加熱する加熱手段を有する
ことを特徴とする材料自動供給装置。
【請求項4】
請求項1、2または3に記載の材料自動供給装置において、
前記ディスペンサーは、前記ディスペンサー内の気圧を調節する気圧調整手段を有する
ことを特徴とする材料自動供給装置。
【請求項5】
請求項1、2、3または4に記載の材料自動供給装置において、
前記材料は、低融点金属である
ことを特徴とする材料自動供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−253069(P2007−253069A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−81017(P2006−81017)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000116057)ローランドディー.ジー.株式会社 (163)
【Fターム(参考)】