説明

板材の搬送システム

【課題】ロードポートとコンベアの間で効率的に板材を交換できること。
【解決手段】処理装置側のロードポート4と搬送システム側の上下2段のコンベヤ22a,22bとの間で、ワーク14a,14bを交換する。一方のアーム26aでロードポート4からワーク14aをすくい上げ、アーム26aを後退させると共に上下2段の他のアーム26bを上昇させて、コンベヤ26bからワーク14bをすくい上げてアーム26bを前進させる。アーム26a,bを下降させて、ワーク14aをコンベヤ22aに下ろし、ワーク14bをロードポート4に荷下ろしする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は板材の搬送システムに関し、特に板材の移載に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は、液晶パネルやELパネル、半導体ウェハーなどの板状のワークの搬送について検討している。出願人は特許文献1で、ワークを載置して搬送でき、且つワークの出し入れが容易なトレイの構造と、トレイにワークを出し入れするためのコンベヤとを提案した。また特許文献2で、ワークを積層保管し、且つ保管中の任意のワークを切り出し、あるいは受け入れたワークをワークの積層体の任意の位置に挿入できる段ばらし/段積み兼用の装置を提案した。
【特許文献1】特開2005−93585号公報
【特許文献2】特開2005−89048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明の課題は、ロードポートとコンベヤとの間で効率的に板材を交換できるようにすることにある。
請求項2の発明での追加の課題は、板材の交換をより高速で行えるようにすることにある。
請求項3の発明での追加の課題は、板材をトレイで搬送する際に、トレイからの板材の取り出しと、ロードポートとの間での板材の交換、空のトレイへの板材のセットを効率的に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、板材を所定の搬送方向に搬送するコンベヤと、ロードポートと、該ロードポートとコンベヤとの間で板材を受け渡しするアームとを備えた板材の搬送システムであって、前記コンベヤと前記ロードポートはアームが上下に通過自在で、前記アームは上下に2組設けられて互いに独立して運動し、かつ各アームはコンベヤの搬送方向と水平面内で直角な方向に延びて、昇降と前記直角な方向への進退の2方向の運動が自在であるように設けられていることを特徴とする。
【0005】
好ましくは、前記コンベヤを上下に2組設けて、第1のコンベヤを第1のアームが上下に通過自在にし、第2のコンベヤを第2のアームが上下に通過自在にする。上下のアームは互いに独立に昇降と進退とができる。なお第1及び第2の用語は、上下の順序や移載での動作の順序を限定するものではない。
さらに好ましくは上下のコンベヤを昇降自在にする。
【0006】
また好ましくは、前記コンベヤの上流側にトレイから板材を取り出すための取り出し装置を、下流側にトレイに板材をセットするためのセット装置とを設け、前記コンベヤと並列に、例えば板材搬送用のコンベヤの下側に、取り出し装置からセット装置へ空のトレイを搬送するためのコンベヤを設ける。
【発明の効果】
【0007】
この発明では、ロードポートへの板材の受け入れとコンベヤから移載装置への板材の受け入れやロードポートや移載装置からの板材の払い出しを並行して行えるので、効率的に板材をロードポートとの間で受け渡しできる。
【0008】
請求項2の発明では、ロードポートの板材を一方のアームで一方のコンベヤに荷下ろしし、他方のコンベヤの板材を他方のアームでロードポートへ荷下ろしするので、受渡をより効率的に行える。
【0009】
請求項3の発明では、板材のロードポートとの移載と並行して板材を取り出した空のトレイを搬送し、空のトレイにロードポートからの板材をセットできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0011】
図1〜図7に、実施例の板材の搬送システム2を示す。搬送システム2は例えばクリーンルームに設けられ、搬送する板材(ワーク)は液晶表示パネルやELパネルなどの基板や、半導体ウェハーなどである。4はロードポートで、図示しない処理装置との間で板材(ワーク)14を出し入れするステーションである。6,7は上下のトレイコンベヤで、トレイコンベヤ7は例えばトレイコンベヤ6と平行に下側の位置に設けられ、8,9は転換台で、トレイ10からワーク14を出し入れすると共にトレイ10をコンベヤ6,7間で昇降させる。トレイ10の底部には開口12が複数設けられ、転換台8,9では開口12から上側に突き出すように昇降自在なコロコンベヤなどを備えて、トレイ10上とワークコンベヤ16上との間で、ワーク14の受け渡しを行う。
【0012】
ワークコンベヤ16は同様にコロコンベヤなどから成り、20は移載装置で、ロードポート4との間でワーク14の移載を行う。移載装置20には例えば上下2段にコロコンベヤなどから成るワークコンベヤ22を設け、上下のワークコンベヤ22毎にハンド24に取り付けたアーム26を設けて、アーム26がワークコンベヤ22を上下方向に通過自在にする。27は制御部で、搬送システム2を制御し、特に移載装置20と転換台8,9を制御する。
【0013】
図2などに示すように、転換台8,9は、トレイコンベヤ6の搬送面と、トレイコンベヤ7の搬送面の間でトレイ10を昇降させる。また移載装置20には上下2組のユニット28,30を設け、上側のユニット28にはワークコンベヤ22a並びにアーム26a,ハンド24aを設ける。同様に下側のユニット30にはワークコンベヤ22b,ハンド24b,アーム26bを設ける。アーム26a,26bはコンベヤ22a,22bの搬送方向と水平面内で直角な方向に延び、ワークコンベヤ22a,22bのコロとコロの隙間を上下に通過自在で、コンベヤ22a,22bの搬送方向に水平面内で直角な方向への進退と昇降とが自在である。さらにアーム26a,26bは互いに独立して昇降及び進退する。
【0014】
各ユニット28,30にはそれぞれリニアガイド34などのガイドを設け、ハンド24a,24bがコンベヤ22a,22bの搬送方向と直角な方向に水平面内で進退できるようにする。またリニアガイド34を例えば左右一対のシリンダ36で支持して、リニアガイド34とハンド24a,24b並びにアーム26a,26bを昇降自在にする。なおシリンダ36に代えて、ボールネジなどの任意の昇降部材を用いることができる。アーム26a,26bは互いに干渉せずに独立して昇降と進退ができるようにする。ユニットフレーム38はユニット28,30を支持し、これらが全体のフレーム40上に設けられている。そして固定フレーム41に対して、フレーム40はボールネジ42などの昇降部材により昇降自在である。
【0015】
図4の下側にワークコンベヤ22のコロ44とその軸46とを示す。複数のコロ44が軸46で連結され、軸の回転により所定の搬送方向にワークを搬送する。また図5にロードポート4の要部を平面視で示すと、複数のフリーコンベヤ48が設けられ、フリーコンベヤ48,48間の隙間をアーム26a,26bが上下に通過自在である。
【0016】
図6に実施例の動作を示す。ロードポート4上にワーク14aを図示しない処理装置から受け入れる。例えば下側のコンベヤ22b上にワーク14bを受け入れ、ユニット28がロードポート4との移載に適した高さとなるようにユニット28,30を上昇させる。なお最初にコンベヤ22a上にワーク14bを受け入れて、コンベヤ22bを空にしておいてもよい。次いでアーム26aをリニアガイドに沿って前進させ、ロードポート4のフリーコンベヤの間を通過するように上昇させて、ワーク14aをすくい上げ、コンベヤ22a上へと復帰させる。
【0017】
アーム26aを下降させて、ワーク14aをコンベヤ22a上に荷下ろしし、これと例えば同時にユニット28,30を共に上昇させ、さらにアーム26bをコンベヤ22bを横切るように上昇させて、ワーク14bをすくい上げる。ユニット30がロードポート4との移載高さまで上昇すると上昇を停止し、アーム26bをロードポート4側に前進させた後に下降させ、ワーク14bをロードポート4に荷下ろしする。次いでアーム26bをコンベヤ22b側へと復帰させる。
【0018】
この後ユニット28,30を下降させて、ワーク14aを図2などのワークコンベヤ16へと払い出す。この間にロードポート4では図示しない移載装置などにより、フリーコンベヤの隙間などを利用して、ワーク14bをすくい上げて処理装置内へ移載する。次いでユニット28,30を上昇させ、コンベヤ22bの搬送面とコンベヤ16の搬送面を一致させる。
【0019】
図6では、ワーク14a,14bの交換の各ステップを別々の時間に処理するように示したが、実際にはアーム26aの運動とアーム26bの運動を同時に行える区間がある。また実施例ではロードポート4がワークコンベヤ16の搬送面より高い位置にあるとしたので、最初にユニット28,30の上昇が必要であるが、ロードポート4の搬送面とコンベヤ16の搬送面の高さを一致させても良い。
【0020】
図7に実施例1)とその変形例2)、並びに比較例3)のタイムチャートを示す。1)は実施例に従って、2つのコンベヤ22a,22bと2つのアーム26a,26bを設けたものである。2)の変形例は、コンベヤ22a,22bを共通の1つのコンベヤで代替し、2つのアームが共にこのコンベヤを上下に通過自在で、水平方向に進退自在としてある。この場合、下側のコンベヤが上側のコンベヤよりも低い位置にあるとの条件で、上下2つのコンベヤは互いに独立して干渉せずに昇降と進退とができる。3)の比較例では、1つのコンベヤと1つのアームのみを設ける。図7においてCVはコンベヤを意味し、LPはロードポートの略である。
【0021】
実施例ではコンベヤとロードポートとがそれぞれワークを受け入れ、ロードポート上のワークを第1のコンベヤに移載し、次いで第2のコンベヤ上のワークをロードポートに受け渡しする。この後コンベヤとロードポートからワークを払い出すと、1回の移載サイクルが終了する。
【0022】
2)の変形例では、ロードポート上のワークを第1のコンベヤでピックアップした後、コンベヤに荷下ろしする前に、第2のアームでコンベヤ上のワークをロードポートへ荷下ろしする。この後、第1のアームを下降させてワークをコンベヤに荷下ろしするので、アームの運動が複雑になり、移載がやや遅くなる。
【0023】
3)の比較例では、ロードポートがワークを受け入れた後、ロードポートからコンベヤへワークを移載する。次いでコンベヤからのワークの払い出しと次のワークのコンベヤへの受け入れを行い、コンベヤからロードポートへワークを移載し、ロードポートからワークを払い出す。このため移載の所要時間は長くなる。
【0024】
移載装置20でのワークの移載は、コンベヤ6,16でのワークやトレイの搬送に比べて遅いので、移載速度により搬送システムの効率が決定される。そこで実施例や変形例のように移載時間を短縮すると、板材の搬送システム2を極めて効率化できる。

【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例の板材搬送システムの要部レイアウトを示す平面図
【図2】実施例でのトレイとワークの搬送経路と搬送高さとを示す模式図
【図3】実施例の移載装置とロードポートとを示す要部側面図
【図4】実施例の移載装置とロードポートの要部平面図
【図5】ロードポートの要部平面図
【図6】実施例でのワークの移載過程を模式的に示す図
【図7】移載装置とロードポートの動作を示すタイムチャートで、1)は実施例の動作を、2)は1コンベヤ2アームの変形例の動作を、3)は1コンベヤ1アームの比較例の動作を示す。
【符号の説明】
【0026】
2 板材の搬送システム
4 ロードポート
6,7 トレイコンベヤ
8,9 転換台
10 トレイ
12 開口
14 ワーク
16 ワークコンベヤ
20 移載装置
22 ワークコンベヤ
24 ハンド
26 アーム
27 制御部
28,30 ユニット
34 リニアガイド
36 シリンダ
38 ユニットフレーム
40 フレーム
41 固定フレーム
42 ボールネジ
44 コロ
46 軸
48 フリーコンベヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材を所定の搬送方向に搬送するコンベヤと、ロードポートと、該ロードポートとコンベヤとの間で板材を受け渡しするアームとを備えたシステムであって、
前記コンベヤと前記ロードポートはアームが上下に通過自在で、
前記アームは上下に2組設けられて互いに独立して運動し、かつ各アームはコンベヤの搬送方向と水平面内で直角な方向に延びて、昇降と前記直角な方向への進退の2方向の運動が自在であるように設けられていることを特徴とする、板材の搬送システム。
【請求項2】
前記コンベヤを上下に2組設けて、第1のコンベヤを第1のアームが上下に通過自在にし、第2のコンベヤを第2のアームが上下に通過自在にすることを特徴とする、請求項1の板材の搬送システム。
【請求項3】
前記コンベヤの上流側にトレイから板材を取り出すための取り出し装置を、下流側にトレイに板材をセットするためのセット装置とを設け、
前記コンベヤと並列に取り出し装置からセット装置へ空のトレイを搬送するためのコンベヤを設けたことを特徴とする、請求項1または2の板材の搬送システム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−186321(P2007−186321A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−7409(P2006−7409)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】