説明

板状多結晶粒子

【課題】結晶の配向度を高めると共に、粒径やアスペクト比を容易に調整する。
【解決手段】板状多結晶粒子10は、一般式がABO3であり、a×Pb(M1/3,Nb2/3)O3+b×PbTiO3+c×PbZrO3+z×MO(a+b+c=1、MはMg,Ni,Znより選ばれる1以上)により表される酸化物を主成分とし0.002≦z≦0.42となる無機粒子を配合し、この無機粒子を自立したシート状の成形体に成形したのち焼成し、焼成後の成形体を解砕及び分級する工程によって作製されている。この板状多結晶粒子10では、MO(MはMg,Ni,Znより選ばれる1以上)が板状多結晶粒子を作製した後に過剰となる所定の過剰量含まれ、粒界14が凹凸のうねりを有する曲線により構成されたうねり構造を有する結晶粒子12を複数含んでいる。この板状多結晶粒子10では、粒界14で解砕しやすいし、配向性が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状多結晶粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、結晶配向セラミックスとしては、結晶に含まれる特定の結晶面の配向度を高めることにより圧電特性を向上させるものが提案されている(特許文献1、2参照)。また、結晶配向セラミックスの製造方法としては、例えば、形状異方性を有するホスト材料Aとホスト材料Aの少なくとも一つの結晶面と結晶整合性を有し且つ結晶異方性の小さいゲスト材料Bとを混合する混合工程と、ホスト材料Aの結晶面を配向させる配向工程と、配向したものを加熱してゲスト材料Bの結晶面を配向させる焼成工程とを含むことにより、結晶異方性の小さなゲスト材料Bを用いても配向性を高めたセラミックスを得るものが提案されている(例えば、特許文献2、3参照)。更に、水熱合成によってホスト材料自体の配向性を高めるものなどが提案されている(特許文献4)。
【特許文献1】特開平11−60333号公報
【特許文献2】特開2003−12373号公報
【特許文献3】特開平10−330184号公報
【特許文献4】特開2007−22857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この特許文献1〜3に記載された製造方法では、ホスト材料が単結晶であることから、ホスト材料の粒径やアスペクト比などを容易に変更することができなかった。また、この結晶配向セラミックスの製造において、成形時の配向を有利とするためホスト材料のアスペクト比を大きくしようとすると、一次粒子径も大きくなり、これを用いた場合、例えば焼結性が低下したり、結晶配向セラミックスの密度が低下したり、粒径が大きくなってしまう場合などがあり、機械的強度や絶縁性などの低下が起きる問題があった。また、特許文献2では、層状ペロブスカイト構造を有する組成において板状結晶を得たあと、この組成の一部を置換させることにより、望ましい元素から成るホスト材料を合成するものであるが、この置換反応が十分に進まないことがあり、最終的に得られる材料に望ましくない元素が残留することがあった。また、処理が煩雑であった。更に、特許文献4に記載されたホスト材料は、原料を含む水溶液を高温・高圧にして合成する水熱合成によって作製されるため、合成する処理に手間がかかった。
【0004】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、結晶の配向度を高めると共に、粒径やアスペクト比を容易に調整することができる板状多結晶粒子を提供することを目的の一つとする。また、組成がより均質な板状多結晶粒子を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、一般式ABO3で表される酸化物を主成分とし、AサイトがPbであり、BサイトにはM(MはMg,Ni,Znより選ばれる1以上)が所定の過剰量含まれる工程を経て作製され、結晶粒子粒界が凹凸のうねり構造を有していると、含まれる複数の結晶粒子が特定の結晶面を揃えた状態で配向しており、圧電/電歪特性をより高めることができ、粒径やアスペクト比を容易に調整することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明の板状多結晶粒子は、
断面視したときに粒界が凹凸のうねりを有する曲線により構成され、隣接する結晶粒子の凸部の曲線が該凹部に入り込み、隣接する結晶粒子の凹部の曲線が該凸部に入り込むうねり構造を有する結晶粒子を複数含むものである。
【発明の効果】
【0007】
この板状多結晶粒子では、結晶の配向度を高めると共に、粒径やアスペクト比を容易に調整することができる。この理由は明らかではないが、以下のように推察される。例えば、主組成に対し所定の過剰量となる量のMO成分(MはMg,Ni,Znより選ばれる1以上)が含まれた状態でシート状の成形体として焼成されると、この過剰成分が主成分を置換し、欠陥などが生じそれを介して元素の拡散が促進され、粒界の界面エネルギーが低下するなどして、粒界が凹凸のうねり構造を有する結晶体に粒成長し、結晶体の結晶面が容易に所定方向に配向するものと考えられる。また、板状多結晶粒子は、粒界部で結晶粒子同士が結合された構造であり、この粒界部で解砕しやすいため、粒径やアスペクト比などを容易に調整することができる。また、MO成分は、主成分に含まれる成分であるため、望まない元素を含む添加剤などを添加した組成を経由する必要がなく、より組成が均質なものを得ることができる。なお、「添加剤などを加える必要がない」とは、本発明に添加剤を加えて配向度を更に高めることを排除する趣旨ではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の板状多結晶粒子を図面を用いて説明する。図1は、本実施形態の板状多結晶粒子10の一例を表す説明図であり、図2は、本実施形態の板状多結晶粒子10の平面図である。本発明の板状多結晶粒子10は、特定の結晶面11を有する結晶粒子12を複数含み、結晶面11に平行な面で断面視したときに粒界14が凹凸のうねりを有する曲線により構成され、隣接する結晶粒子の凸部の曲線がこの凹部に入り込み、隣接する結晶粒子の凹部の曲線がこの凸部に入り込むうねり構造を有する結晶粒子12を複数含んでいる。例えば、図2において、結晶粒子12aでは、隣接する結晶粒子12bの粒界14である凹部15の曲線がこの結晶粒子12aの粒界14である凸部16の曲線に入り込み、結晶粒子12bでは、隣接する結晶粒子12aの粒界14である凸部16の曲線にこの結晶粒子12bの粒界14である凹部15の曲線が入り込む構造を有している。なお、「断面視したときに」とは、実際に断面視しなければならないことを意味するものではなく、例えば、電子顕微鏡(SEM)写真で板状多結晶粒子10を3次元的に観察すると、上面が球面状になっている結晶が重なってみえるような場合に、曲線(曲面)が連なっているように観察されるときがあるがこれとは異なる趣旨であり、複数の結晶粒子12同士の粒界14が曲線により構成されていることが確認できればよい趣旨である。
【0009】
この板状多結晶粒子10のうねり構造は、隣接する粒界の3重点を結ぶ第1直線の距離と、該第1直線からの前記粒界までの垂線の距離とにより計算される湾曲度が0.1以上であることが好ましく、0.9以下であることが好ましく、0.3以上0.8以下であることがより好ましい。湾曲度が0.1以上の範囲では、配向度の高い多結晶体を得ることができる。ここで、湾曲度の計算方法を図2を用いて説明する。まず、結晶粒子が20〜40個含まれる視野を電子顕微鏡(SEM)で観察しその写真を撮影し、平均粒径を求める。この平均粒径は、粒子全体が視野に含まれている(視野で切れていない)すべての結晶粒子について、その結晶面の最長の長さを求めてそれを粒径とし、この平均値を計算して求めるものとする。次に、平均粒径よりも大きな粒子を任意に5個選択する。次に、選択した粒子において、隣接する粒界の3重点を任意に選択し(図2のA,B点参照)、これらを直線で結びこの結んだ直線に平行な直線を引き(図2の点線参照)粒界と接する点(図2のC点参照)から、先の直線までの垂線の長さを求める。3重点の距離と垂線の距離とを用い、(垂線の距離)/(3重点の距離)を計算する。この計算をすべての3重点及び粒界について行い、そのうちの最大値をこの結晶粒子の湾曲度とする。任意に選択した5個の結晶粒子の湾曲度の平均値を求め、これをこの板状多結晶粒子10の湾曲度とする。
【0010】
この板状多結晶粒子10は、実質的に厚さ方向の結晶粒子12が1個でありこの複数の結晶粒子12がこの特定の結晶面11を揃えた状態で粒界14で結合されている形状を有している。即ち、板状多結晶粒子10は、特定の結晶面11を揃えた複数の結晶粒子12が略2次元的に連なった形状を有している。この「特定の結晶面11を揃えた状態」とは、複数の結晶粒子12の結晶面11が同一面上にある場合や、同一面上ではないが結晶面11の向いている方向が同じ場合、結晶面11の向いている方向が異なるものがあってもおおよそ複数の結晶粒子12の結晶面11が同一面上にあるか、同一面上ではないが結晶面11の向いている方向が同じ場合などの状態をいうものとする。この板状多結晶粒子10は、無機粒子をシート状の成形体に成形し、この成形体を焼成して粒成長させた焼成成形体を解砕して得られるものである。なお、ここでは、説明の便宜のため、未焼成のシート状の成形体を「成形体」と称し、焼成後のシート状の成形体を「焼成成形体」と称し、焼成成形体を所定の粒径に解砕・分級したものを「板状多結晶粒子」と称するものとする。
【0011】
この板状多結晶粒子10は、実質的に厚さ方向の結晶粒子が1個である。この「実質的に厚さ方向の結晶粒子が1個」とは、一部で結晶粒子12が重なり合う部分があっても、他の大部分では結晶粒子12が重なり合わずに、厚さ方向に結晶粒子12を1個だけ含むことをいう。また、中心部分など板状多結晶粒子10の大部分が2個以上の結晶粒子12が結合した状態であり、端部のみ厚さ方向に1個であるようなものは含まない趣旨である。この板状多結晶粒子10は、厚さ方向に存在する材料が限られているため、焼成などにより粒成長すると、厚さ方向に結晶粒子12を1個有する状態となり、厚さ方向よりも面方向に粒成長が促される。このため、面方向に扁平な結晶粒子12が配列すると共に、特定の結晶面11が配向するのである。この板状多結晶粒子10は、粒成長時に、結晶粒子12の粒成長がシート状の成形体の厚さまで達しないものや、結晶面11の向く方向が異なるものが存在することがあるため、結晶粒子12が重なり合う部分や結晶面11の向いている方向が異なるものなどが局所的に存在するが、概して結晶面11の方向が同じ複数の結晶粒子12が粒界14で結合された形状を有している。この板状多結晶粒子10は、結晶粒子12を1個だけ含む部分が、板状多結晶粒子10の面積割合で70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが最も好ましい。この面積割合は、できる限り板状多結晶粒子10を分散した状態で電子顕微鏡観察(SEM観察)を行い、得られたSEM写真に含まれる面積の割合として求めるものとする。なお、厚さ方向に結晶粒子12を1個だけ含む部分の面積は、面方向の長さが厚さ以上である結晶粒子の総面積から予測することも可能である。この板状多結晶粒子10は、結晶粒子12が重なるような部分は全体の一部分(例えば面積割合で30%以下など)であり、結晶粒子12同士が結合する粒界14で比較的簡単に解砕することができる。
【0012】
本発明の板状多結晶粒子10において、板状多結晶粒子10の長手方向の長さYは(図1参照)、1.0mm以下や、50μm以下、20μm以下とすることができる。この長さYは、目的の板状多結晶粒子10のサイズに合わせて適宜変更することが可能である。また、板状多結晶粒子10の厚さWに対する板状多結晶粒子10の長手方向の長さYの比である板状多結晶粒子10のアスペクト比(Y/W)は、2以上100以下であることが好ましい。例えば、板状多結晶粒子10を結晶配向セラミックスの結晶配向用の原料として用いる場合には、板状多結晶粒子10のアスペクト比が2以上では、成形時における配向が容易となり、結晶配向性を高めることができるし、100以下では、例えば後述する解砕工程において、結晶粒子自体が粉砕されにくく、アスペクト比を維持することができるため、板状多結晶粒子10が配向した成形体を容易に得ることができる。ここで、板状多結晶粒子10の厚さWは、板状多結晶粒子10の厚さのうち最も厚い部分の長さとする。板状多結晶粒子10は、厚さWが15μm以下に形成されているのが好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下が更に好ましく、2μm以下であるのが最も好ましい。また、この厚さWは、0.1μm以上に形成されていることが好ましい。厚さWが0.1μm以上であれば、平板状の板状多結晶粒子10を作成しやすいし、15μm以下であればより配向度を高めることができる。なお、板状多結晶粒子10の厚さWは、通常、結晶粒子12の厚さZと略同じ長さとなる。この板状多結晶粒子10のアスペクト比は、以下のようにして求めるものとする。まず、走査型電子顕微鏡を用いてSEM観察を行い、撮影したSEM写真などから板状多結晶粒子10の厚さWを求める。次に、アルコールなどの溶媒に1〜10重量%となるように板状多結晶粒子10を入れ、例えば30分間の超音波などを用いて分散させ、この分散液を1000〜4000rpmの条件でスピンコートしガラス基板にコートすることにより、できるだけ重ならないように、且つ板状多結晶粒子10に含まれる結晶面11が基板面に対して平行になるように板状多結晶粒子10を薄層に分散させ、この状態でSEM観察を行い、板状多結晶粒子10が5〜30個程度含まれる視野において、板状多結晶粒子10の結晶面を観察し、撮影したSEM写真から板状多結晶粒子10の最長長さYを求める。このとき、重なっている板状多結晶粒子10については無視して構わない。次に、求めた最長長さYを板状多結晶粒子10の粒径と仮定しこの粒径を板状多結晶粒子10の厚さWで除算して各板状多結晶粒子10のアスペクト比を算出し、これを平均した値を板状多結晶粒子10のアスペクト比とする。
【0013】
本発明の板状多結晶粒子10において、結晶粒子12は、厚さZが15μm以下に形成されているのが好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下が更に好ましく、2μm以下であるのが最も好ましい。また、この厚さZは、0.1μm以上に形成されていることが好ましい。厚さZが0.1μm以上であれば、平板状の板状多結晶粒子10を作成しやすいし、15μm以下であればより配向度を高めることができる。厚さZが15μm以下であれば、厚さ方向への粒成長が限られており、板状多結晶粒子10の面方向に結晶粒子12の粒成長がより促されるため、特定の結晶面が板状多結晶粒子10の面内に成長することにより、アスペクト比が大きく配向度の高いものとなる。
【0014】
本発明の板状多結晶粒子10において、結晶粒子12の厚さZに対する結晶粒子12の結晶面11の方向の長さX(図1参照)の比である結晶粒子12のアスペクト比(X/Z)は、1以上であることが好ましく、2以上であるのがより好ましく、4以上であることが更に好ましい。アスペクト比が2以上では、結晶粒子12を配向させやすいため、板状多結晶粒子の配向度も高くなる。このアスペクト比は50以下であることが好ましい。アスペクト比が50以下では、板状多結晶粒子10の大きさを調整しやすい。この結晶粒子12のアスペクト比は、以下のようにして求めるものとする。まず、走査型電子顕微鏡を用いてSEM観察を行い、撮影したSEM写真などから結晶粒子12の厚さZを求める。次に、上述した板状多結晶粒子10のアスペクト比と同様に、できるだけ重ならないように板状多結晶粒子10を薄層に分散させた状態でSEM観察を行い、結晶粒子12が20〜40個程度含まれる視野において、板状多結晶粒子10の結晶面を観察し、撮影したSEM写真から結晶粒子12の結晶面11の最長長さXを求める。このとき、重なっている板状多結晶粒子10については無視して構わない。次に、求めた結晶面11の最長長さXを結晶粒子12の粒径と仮定しこの粒径を結晶粒子12の厚さZで除算して各結晶粒子12のアスペクト比を算出し、これを平均した値を板状多結晶粒子10に含まれる結晶粒子12のアスペクト比とする。
【0015】
本発明の板状多結晶粒子10において、結晶粒子12の結晶面11の方向の長さXは、50μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることが最も好ましい。この長さXが50μm以下であれば、板状多結晶粒子10の大きさを調整しやすい。また、結晶粒子12の結晶面方向の長さXと板状多結晶粒子10の長手方向の長さYとの比であるY/Xは、3以上100以下であることが好ましい。例えば、板状多結晶粒子10を結晶配向セラミックスの結晶配向用の原料として用いる場合には、Y/Xが3以上では、板状多結晶粒子10のアスペクト比が大きくできるため、結晶配向性を高めることができるし、100以下では、例えば結晶配向セラミックスに含まれる板状多結晶粒子10の粒指数が少なくなるため、配向しやすく、結晶配向セラミックスの成形が容易である。
【0016】
この板状多結晶粒子10は、一般式がABO3であり次式(1)により表される酸化物を主成分とし0.002≦z≦0.42となる無機粒子を配合する原料調製工程と、無機粒子を自立したシート状の成形体に成形する成形工程と、成形体をこの成形体と実質的に反応しない不活性層に隣接させ又は、この成形体のまま焼成する焼成工程と、所定サイズの開口部を通過させることにより焼成後の成形体を解砕及び分級する粉砕工程と、を含む工程によって作製されている。即ち、この板状多結晶粒子10は、焼成後の成形体に含まれるM成分が所定の過剰量となるように無機粒子を配合して作製されている。この組成は、0.002≦z≦0.42であることが好ましいが、0.06≦z≦0.1であることがより好ましい。0.06≦z≦0.1の範囲であれば、より高い配向性を得ることができる。この一般式ABO3で表される酸化物は、ペロブスカイト構造を有することが好ましい。ここで、「主成分」とは、式(1)の一般式ABO3で表される三成分固溶系組成物の含有割合が、70重量%以上であることをいい、好ましくは90重量%以上であることをいう。
【0017】
【数1】

【0018】
本発明の板状多結晶粒子10において、特定の結晶面11の配向度は、ロットゲーリング法で15%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、60%以上であることが最も好ましい。配向度が15%以上であると、例えばこの板状多結晶粒子10を更に2次配向させて成形し結晶配向セラミックスを得るのに十分な配向度であるといえる。この配向度が60%以上であると、より高い特性を得ることができる。この特定の結晶面11は、焼成成形体の面内にある擬立方(100)面としてもよい。この擬立方(100)とは、等方性ペロブスカイト型の酸化物は正方晶、斜方晶及び三方晶など、立方晶からわずかに歪んだ構造をとるがその歪みがわずかであるため立方晶とみなしてミラー指数により表示することを意味する。ここで、ロットゲーリング法による配向度は、板状多結晶粒子10に含まれる結晶面11をできるだけ均一な方向にして板状多結晶粒子10をサンプルホルダとしての基板上に載置してXRD回折パターンを測定し、次式(2)により求めるものとした。この、XRD回折パターンの測定は、上述したアスペクト比を求める際のSEM観察のサンプル調整と同様の工程を行うことにより、できるだけ重ならないように、且つ板状多結晶粒子10に含まれる結晶面11がガラスなどの基板面に対して平行になるように板状多結晶粒子10を薄層に分散させ、この状態で測定するものとする。なお、板状多結晶粒子10の大部分が分散しているかどうかをSEM観察などで確認することが好ましい。この数式(2)において、ΣI(hkl)が板状多結晶粒子で測定されたすべての結晶面(hkl)のX線回折強度の総和であり、ΣI0(hkl)が板状多結晶粒子と同一組成であり無配向のものについて測定されたすべての結晶面(hkl)のX線回折強度の総和であり、Σ’I(HKL)が板状多結晶粒子で測定された結晶学的に等価な特定の結晶面(例えば(100)面)のX線回折強度の総和であり、Σ’I0(HKL)が板状多結晶粒子と同一組成であり無配向のものについて測定された特定の結晶面のX線回折強度の総和である。
【数2】

【0019】
次に、板状多結晶粒子10の製造方法について説明する。本発明の板状多結晶粒子の製造方法は、(1)板状多結晶粒子の原料である無機粒子の調製工程、(2)無機粒子からシート状の成形体への成形工程、(3)成形した成形体の焼成工程、(4)焼成した焼成成形体のメッシュ粉砕工程を含み、これら各工程の順に説明する。
【0020】
(1)無機粒子の調製工程
板状多結晶粒子10に用いる無機粒子としては、ペロブスカイト構造を有する酸化物となるものが好ましく、一般式ABO3で表される酸化物のAサイトとしてPbを含むものとし、Bサイトとして、Zr、Ti、Nb、Mg、Ni及びZnから選ばれる1種以上を含むものとするのが好ましい。また、一般式ABO3で表される酸化物が上記式(1)の組成であり、且つ、M成分の過剰量としてのzが0.002≦z≦0.42であるものとしてもよい。また、このM成分を過剰量とするに際して、配合するM成分は、Mg,Ni,Znから選ばれる1以上とするのが好ましく、例えばMgO,NiO,ZnOなどの酸化物として配合することがより好ましい。こうすれば、M成分が過剰量含まれている際に発現する効果を奏しやすい。ここで、一般式ABO3で表される酸化物のAサイトにPbを含み、BサイトにZr,Ti,Nb,Mg,Ni及びZnより選ばれる2種以上を含むペロブスカイト構造の酸化物では、例えば、その配合比を調整し、極薄のシート状の成形体として粒成長させると、粒界が曲線で構成されるうねり構造を有する粒子に成長することがある。このとき、成形体内に(100)面が成長することにより成形体の垂直方向に結晶面(100)が配向しやすくなることがある。即ち、このような酸化物では、成形体に平行な表面を持った粒子は、その2面を除く他の面が成長面として成形体内の全方位に含まれるからシート内で粒成長し、板状多結晶粒子の表面に存在する残りの2面が無理なく拡がるため、アスペクト比の大きな粒子が得られやすい。
【0021】
原料調製工程では、無機粒子の原料を粉砕混合し、混合した粉体を仮焼し、得られた無機粒子を更に粉砕することが好ましい。無機粒子の原料としては、目的の成分の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩及び酒石酸塩などを用いることができるが、主として酸化物、炭酸塩を用いることが好ましい。また、無機粒子の粉砕では、成形体の厚さに応じた粒径とすることが好ましく、無機粒子のメディアン径(D50)を成形体の厚さの2%以上60%以下とすることが好ましい。メディアン径が成形体厚さの2%以上であれば、粉砕処理が容易であるし、60%以下であれば成形体内の粒子がより均質に分布するため成形体の厚さを調整しやすい。また、結晶粒子12の大きさをより大きくしようとすると、より無機粒子のメディアン径(D50)を小さくすることが粒成長を促す点からみて好ましい。この粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて分散媒(有機溶剤や水など)に分散させて測定した値を用いるものとする。無機粒子の粉砕は、湿式粉砕することが好ましく、例えばボールミルやビーズミル、トロンメル、アトライターなどを用いてもよい。
【0022】
(2)成形体の成形工程
無機粒子を成形体の厚さが15μm以下の自立したシート状の成形体に成形する。ここで、「自立した成形体」とは、それ単体でシート状の成形体の形状を保つことができるものや、それ単体ではシート状の成形体の形状を保つことができないものであってもなんらかの基板に貼り付けたり成膜したりして、焼成前、又は焼成後に、この基板から剥離したものをも含む。成形体の成形方法としては、例えば、無機粒子を含むスラリーを用いたドクターブレード法や、無機粒子を含む坏土を用いた押出成形法などによって行うことができる。ドクターブレード法を用いる場合、可撓性を有する板(例えばPETフィルムなどの有機ポリマー板など)にスラリーを塗布し、塗布したスラリーを乾燥固化して成形体とし、この成形体と板とを剥がすことにより板状多結晶粒子の焼成前の成形体を作製してもよい。成形前にスラリーや坏土を調製するときには、無機粒子を適当な分散媒に分散させ、バインダーや可塑剤などを適宜加えてもよい。また、スラリーは、粘度が50000〜500000cPとなるように調製するのが好ましく、減圧化で脱泡するのが好ましい。成形体の厚さとしては、15μm以下とするが、10μm以下に形成することがより好ましく、5μm以下に形成することが更に好ましく、2μm以下とすることが最も好ましい。15μm以下では高い結晶粒子12の配向度を得ることができ、10μm以下であればより一層高い結晶粒子12の配向度を得ることができる。また、成形体の厚さは、0.1μm以上とするのが好ましい。厚さが0.1μm以上であれば、自立したシート状の成形体を作成しやすい。結晶粒子12の大きさを比較的大きくするには、成形体の厚さを5〜10μm程度とするのが好ましい。このシート状の成形体の厚さは、略そのまま板状多結晶粒子10の厚さとなり、ひいては結晶粒子12の粒径にも関係するから、板状多結晶粒子10の用途に合わせて、適宜設定するものとする。なお、その他の成形方法としては、エアロゾルデポジション法などの、粒子の高速吹き付け法や、スパッタ、CVD、PVDなどの気相法などにより、樹脂、ガラス、セラミックス及び金属などの基板へ膜付けし、基板から剥離することで板状多結晶粒子の焼成前の成形体を作製してもよい。この場合、焼成前の成形体の密度を高くすることができるため、低温での粒成長、構成元素の揮発防止、得られる板状多結晶粒子が高い密度である、などの利点がある。
【0023】
(3)成形体の焼成工程
成形工程で得られた成形体をこの成形体と実質的に反応しない不活性層(例えば、焼成済みのセラミック板やPt板、カーボン板、黒鉛板、モリブデン板、タングステン板など)に隣接させた状態で焼成するか、又は、この成形体のままの状態で焼成する。例えば、アルミナ、ジルコニア、スピネル、カーボン、黒鉛、モリブデン、タングステン、白金など、成形体の焼成温度では不活性な層の上に成形体を配置して焼成するものとしてもよい。あるいは、成形体と不活性シートとを重ねた状態でロール状に巻いて焼成してもよい。あるいは、不活性層の上にシート状に成形体を形成し、焼成後にこの不活性層から剥離させるものとしてもよい。あるいは、不活性層に成形体を成膜し、焼成後に不活性層を除去するものとしてもよい。例えば、不活性層に黒鉛を用いる場合などでは、非酸化性雰囲気(例えば窒素中)で焼成し、不活性層の存在下で所望の焼成成形体を得たあと、その温度以下の酸化雰囲気(例えば大気中)で再び熱処理し、黒鉛を燃焼させることで除去するものとしてもよい。ここでは、成形体の厚さが15μm以下と成形体の厚さ方向への粒成長が限られており、成形体の面の方向に粒成長がより促されるため、特定の結晶面が成形体の面内に成長することにより、アスペクト比が大きく配向度の高いものとなる。こうして、成形体の厚さ方向には略1個だけ結晶粒子12が存在するようになるのである。この結晶粒子のアスペクト比は、2以上とすることが好ましく、3以上とすることがより好ましい。アスペクト比が2以上では、結晶粒子を配向させやすい。また、この結晶粒子は、板状多結晶粒子の面方向の結晶粒子の長さが結晶粒子の厚さ方向の長さ以上であることが好ましい。この結晶粒子のアスペクト比は、上述したように、走査型電子顕微鏡を用いてSEM観察を行い板状多結晶粒子の厚さWを求め、板状多結晶粒子の面を観察し、結晶粒子が20〜40個程度含まれる視野において、板状多結晶粒子10の最長長さYを求め、求めた最長長さYを板状多結晶粒子10の粒径と仮定しこの粒径を板状多結晶粒子の厚さWで除算して各板状多結晶粒子のアスペクト比を算出し、これを平均した値を板状多結晶粒子10のアスペクト比とするものとする。
【0024】
この焼成工程の焼成条件について、焼成により平衡形の結晶が得られる焼成温度、例えばバルクを焼成することにより緻密化、粒成長する焼成温度に比べて1割以上高い温度で、この成形体を焼成することが好ましい。1割以上高い温度では、極薄の成形体に含まれる結晶の粒成長を十分進めることができる。なお、成形体の材料が分解しない程度に高い温度で焼成することが好ましい。特に、シートの厚さがより薄くなると、粒成長がしにくくなるため、焼成温度をより高くする傾向とすることが好ましい。例えば、無機粒子として、主成分がPb(Zr1-xTix)O3のBサイトにMg,Nbなどを添加したものの焼成工程では、成形体の焼成温度を900℃以上1400℃以下とすることが好ましく、1000℃以上1350℃以下とすることがより好ましい。焼成温度が900℃以上では、粒子の結晶の成長が促されるため好ましく、1400℃以下では、含まれる成分などの揮発を少なく抑えることができ、材料が分解してしまうのを抑制することができる。こうして、含まれる無機粒子が特定の結晶面の配向した結晶粒子に粒成長したものを得ることができる。なお、バインダーなどを含む成形体の場合は、焼成を行う前に脱脂を主目的とする熱処理を行ってもよい。このとき、脱脂の温度は、少なくともバインダーなどの有機物を熱分解させるに十分な温度(例えば400〜600℃)とする。また、脱脂を行ったあと、焼成を行う前に静水圧処理(CIP)を行うのが好ましい。脱脂後の成形体に対して更に静水圧処理を行うと、脱脂に伴う配向度の低下、あるいは、成形体の体積膨張に起因する焼結体密度の低下などを抑制することができる。
【0025】
また、この焼成工程では、この成形体よりも揮発成分の揮発が進む組成であり且つ所定の揮発量を超えない範囲の揮発程度を有する共存材料と共に焼成する所定の難揮発状態でこの成形体を焼成するのが好ましい。難揮発状態とは、成形体に比して揮発成分が多く含まれる組成で且つ配向した結晶粒子の成長を阻害しないような揮発程度を有する組成の材料(例えば無機粒子)を共存させて焼成する状態が含まれる。特に、共存させる無機粒子として、成形体の組成よりも揮発成分(鉛など)が揮発しやすい組成を用いると、配向度が向上し好ましい。この共存材料は、成形体よりもPb(Mx,Nby)O3の配合量が小さく且つPbZrO3の配合量が大きいものとすることが好ましい。また、この共存材料は、成形体よりもPbTiO3の配合量が大きいものとしてもよい。また、成形体よりも過剰なMO量が少ないものとしてもよい。このとき、共存させる無機粒子の量や組成、鞘内部での設置場所、鞘の容積、成形体の設置方法、数量など、焼成時の条件を適切な状態に経験的に設定することが重要である。特に、共存させる無機粒子の組成については、揮発性が高すぎると、配向した結晶粒子の成長を阻害するとともに、板状多結晶粒子10の中に過剰な鉛成分が吸収され、特性を下げる点で好ましくなく、また、揮発性が低すぎると、板状多結晶粒子の配向度が下がるため好ましくない。なお、面内の粒成長を促進する観点から、ホットプレスなど加重焼成してもよい。このようにして、シート状の成形体を成形するのである。
【0026】
(4)焼成成形体のメッシュ粉砕工程
次に、得られた焼成成形体を解砕、分級する。ここでは、目的とする粒子サイズに合わせた開口部を有するメッシュ(ふるい)を用いるものとし、1.0mm以下のメッシュを用いることが好ましい。図3は、メッシュ粉砕工程の一例の説明図である。このメッシュ粉砕工程では、例えば、開口径が45μm、25μm、20μmなどのメッシュを用いることができる。成形体を焼成した焼成成形体32は比較的解砕しやすいため、メッシュ34上に載置したあと、例えばへら状などの押圧部材36などにより軽く焼成成形体32を押圧しながらメッシュ34を篩うことによりメッシュ粉砕工程を行うことができる。こうすれば、焼成成形体32の解砕と、解砕した板状多結晶粒子10(図1参照)の分級とを同時並行で行うことができる。また、より大きな粒径及びより大きなアスペクト比の板状多結晶粒子10を得ようとすれば、メッシュの開口部を大きくすればよいし、より小さな粒径及びより小さなアスペクト比の板状多結晶粒子10を得ようとすれば、メッシュの開口部を小さくすればよいため、メッシュの開口部の大きさを変えるという簡単な処理で板状多結晶粒子10の特性を変化させることができる。このようにして、図1に示した板状多結晶粒子10を得ることができる。
【0027】
得られた板状多結晶粒子10は、結晶配向セラミックスの原料としてもよい。続いて、板状多結晶粒子10を原料とする結晶配向セラミックスの製造方法について説明する。この結晶配向セラミックスは、例えば厚み方向が15μmを超えるような任意の形状とすることができる。即ち、板状多結晶粒子10は、結晶配向セラミックスの中間生成物として作製されるものとしてもよい。図4は、結晶配向セラミックスの製造方法の一例を表す説明図である。結晶配向セラミックスは、板状多結晶粒子10と、その他の原料粉体(例えば配向していない無機粒子など)と、適宜バインダーや可塑剤などを混合する混合工程を経て、板状多結晶粒子10が一定方向を向くような配向成形(2次配向)を行うことにより所定形状の2次成形体40に成形する2次成形工程を行うものとしてもよい(図4上段)。配向成形は、上述したドクターブレード法や押出成型法などにより行うことができる。そして、板状多結晶粒子10が配向している方向に他の原料粉体も配向させるようこの2次成形体を焼成する2次焼成工程を行い配向結晶52を含む結晶配向セラミックス50を得るのである(図4下段)。この2次焼成工程での焼成温度は、上述した所定焼成条件における成長形の結晶が得られる焼成温度としてもよいし、この温度よりも1割以上高い温度としてもよい。このように、板状多結晶粒子10を一方向へ配向させた後に焼成すると、その他の原料粉体がこの配向した板状多結晶粒子10の結晶方位に倣って粒成長したり、配向した板状多結晶粒子10が、その他の原料粉体を取り込みながら粒成長したりするため、一方向へ配向した配向結晶52を多数含む結晶配向セラミックス50を得ることができる。
【0028】
以上詳述した本実施形態の板状多結晶粒子10によれば、無機粒子を厚さ15μm以下の自立したシート状の成形体に成形しこれを焼成し、所定サイズの開口部を通過させることにより焼成後の成形体を解砕及び分級すればよいため、より簡単な処理でアスペクト比及び結晶の配向度を高めることができる。また、板状多結晶粒子10は、粒界14で結晶粒子12同士が結合された構造であり、この粒界14で解砕しやすいため、粒径やアスペクト比などを容易に調整することができる。このため、単結晶の粒子を用いて結晶配向セラミックスを作製するものに比して、結晶配向セラミックス50の配向度や配向結晶52のサイズなどの調整も容易な処理で行いやすい。また、含まれる所定の成分を過剰とし、所定の難揮発状態で焼成するため、例えば、主成分をPb(Zr1-xTix)O3とする材料であっても、粒界が曲線で構成されるうねり構造に成長する結晶粒子に粒成長させ、結晶の配向性を高めることができる。更に、配向性を高めるために何らかの他の成分を添加する必要がないから、組成がより均質な板状多結晶粒子を得ることができる。このため、結晶配向セラミックス50の作製に板状多結晶粒子10を用いると、均質な組成で且つ配向性の高い結晶配向セラミックス50を得ることができる。また、この板状多結晶粒子は、粒界が凹凸に入組んでおり、穴が少なく緻密である。このため、効果的にテンプレートとして作用し、配向度が高く、緻密な結晶配向セラミックスを作製することができる。
【0029】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0030】
例えば、上述した実施形態では、板状多結晶粒子10を結晶配向セラミックス50の原料として用いるものとしたが、これ以外の用途(例えばフィラーなど)に利用するものとしてもよい。本発明の板状多結晶粒子10は、誘電体材料、焦電体材料、圧電体材料、強誘電体材料、磁性材料、イオン伝導材料、電子伝導性材料、熱伝導材料、熱電材料、超伝導材料、耐摩耗性材料等の機能や特性が結晶方位依存性を有する物質よりなる多結晶材料へ用いることができる。具体的には、加速度センサ、焦電センサ、超音波センサ、電界センサ、温度センサ、ガスセンサ、ノッキングセンサ、ヨーレートセンサ、エアバックセンサ、圧電ジャイロセンサ等の各種センサ、圧電トランス等のエネルギー変換素子、圧電アクチュエータ、超音波モータ、レゾネータ等の低損失アクチュエータ又は低損失レゾネータ、キャパシタ、バイモルフ圧電素子、振動ピックアップ、圧電マイクロホン、圧電点火素子、ソナー、圧電ブザー、圧電スピーカ、発振子、フィルタ、誘電素子、マイクロ波誘電素子、熱電変換素子、焦電素子、磁気抵抗素子、磁性素子、超伝導素子、抵抗素子、電子伝導素子、イオン伝導素子、PTC素子、NTC素子等に応用すれば、高い性能を有する各種素子を得ることができる。このとき、結晶粒子12のアスペクト比や板状多結晶粒子10のアスペクト比は、用途に合わせた値を適宜設定するものとする。なお、板状多結晶粒子10のアスペクト比や粒子サイズは、メッシュ粉砕工程での開口径の大きさを設定するだけで容易に変更することができる。
【0031】
また、上述した実施形態では、板状多結晶粒子10は特定の結晶面11がシート面上に現れて揃っているものとしたが(図1参照)、結晶粒子12が粒界部で二次元的に結合したものであればよく、結晶面11がシート面上に現れていないものとしてもよい。
【実施例】
【0032】
以下には、板状多結晶粒子10を具体的に製造した例を、実験例として説明する。
【0033】
[実験例1]
(原料調製工程)
板状多結晶粒子の組成が0.2Pb(Mg0.33Nb0.67)O3+0.35PbTiO3+0.45PbZrO3(基本組成1とも称する)に0.002molのMgOを添加した組成比となる合成粉末とジルコニアボールと分散媒としてイオン交換水とをポリポットに入れ、ボールミルで16h、湿式混合を行った。得られたスラリーを乾燥機で乾燥したあと、800℃、2hの条件下で仮焼した。この仮焼粉末と、ジルコニアボールと分散媒としてイオン交換水とを入れ、ボールミルで16h湿式粉砕し、乾燥機によって乾燥し、無機粒子の粉体を得た。この粉体をHORIBA製レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−750を用い、水を分散媒として平均粒径を測定したところ、メディアン径(D50)は、0.4μmであった。
【0034】
(成形・焼成・解砕工程)
得られた第1無機粒子と、分散媒としてのトルエン、イソプロパノールを等量混合したものに、バインダーとしてポリビニルブチラール(BM−2、積水化学製)、可塑剤(DOP、黒金化成製)と、分散剤(SP−O30、花王製)とを混合し、スラリー状の成形原料を作製した。各原料の使用量は、無機粒子100重量部に対して、分散媒100重量部、バインダー10重量部、可塑剤4重量部及び分散剤2重量部とした。次に、得られたスラリーを、ドクターブレード法によってPETフィルムの上にシート状に乾燥後の厚さが2μmとなるよう成形した。PETフィルムから剥がした成形体をカッターで50mm角に切り出し、ジルコニアからなるセッター(寸法60mm角、高さ5mm)の中央に載置した。この成形体をマグネシアからなる鞘(寸法90mm角、高さ50mm)に0.12Pb(Mg0.33Nb0.67)O3+0.38PbTiO3+0.50PbZrO3に0.02molのNiOを添加した組成粉末(共存材料)を20g共存させた難揮発状態(焼成雰囲気Aとも称する)で600℃、2h脱脂後、1280℃で2h焼成を行った。ロットゲーリング法による配向度は20%であった。なお、配向度の算出方法は後述する。得られた焼成成形体を300メッシュ(開口径45μm)のふるいに載せ、軽く焼成成形体をへらで押し付けながら解砕・分級した。得られた粒子を実験例1の板状多結晶粒子とした。なお、一般式がABO3であり次式a×Pb(Mx,Nby)O3+b×PbZrO3+c×PbTiO3}+zMO(a+b+c=1、x+y=1,MはMg,Ni,Znより選ばれる1以上)のうち添加組成(zMO)を除いた部分の基本組成と、焼成時に共存させる共存材料の組成とをまとめて表1に示した。なお、この表1では、後述する実験例2〜27の基本組成及び共存材料組成についても示した。
【0035】
【表1】

【0036】
[実験例2〜10]
実験例1では板状多結晶粒子の組成が0.2Pb(Mg0.33Nb0.67)O3+0.35PbTiO3+0.45PbZrO3にMgOを0.002mol添加した組成比としたこの添加組成比を、NiOを0.020mol添加した組成比とした以外は実験例1と同様の処理を行い作製した板状多結晶粒子を実験例2とした。また、この添加組成比を、MgOが0.01mol、NiOが0.02mol、全体で0.030mol添加した組成比とした以外は実験例1と同様の処理を行い作製した板状多結晶粒子を実験例3とした。また、この添加組成比を、MgOが0.04mol、NiOが0.02mol、全体で0.060mol添加した組成比とした以外は実験例1と同様の処理を行い作製した板状多結晶粒子を実験例4とした。また、この添加組成比を、MgOが0.08mol、NiOが0.02mol、全体で0.100mol添加した組成比とした以外は実験例1と同様の処理を行い作製した板状多結晶粒子を実験例5とした。また、この添加組成比を、MgOが0.4mol、NiOが0.02mol、全体で0.420mol添加した組成比とした以外は実験例1と同様の処理を行い作製した板状多結晶粒子を実験例6とした。また、この添加組成比を、MgOが1mol、NiOが0.02mol、全体で1.020mol添加した組成比とした以外は実験例1と同様の処理を行い作製した板状多結晶粒子を実験例7とした。また、この添加組成比を、MgOが0mol、NiOが0.06mol、全体で0.060mol添加した組成比とした以外は実験例1と同様の処理を行い作製した板状多結晶粒子を実験例8とした。また、この添加組成比を、MgOが0mol、NiOが0.02mol、ZnOが0.04mol、全体で0.060mol添加した組成比とした以外は実験例1と同様の処理を行い作製した板状多結晶粒子を実験例9とした。また、この添加組成比を、MgOが0.08mol、NiOが0.02mol、全体で0.100mol添加した組成比とし、0.2Pb(Mg0.33Nb0.67)O3−0.35PbTiO3−0.45PbZrO3となる組成粉末を5g共存させた状態(焼成雰囲気Bとも称する)で焼成した以外は実験例1と同様の処理を行い作製した板状多結晶粒子を実験例10とした。
【0037】
[実験例11〜12]
原料調製工程で0.2Pb(Mg0.33Nb0.67)O3+0.35PbTiO3+0.45PbZrO3(基本組成1)に0.02molのNiOを添加した組成比となるよう原料を配合した。また、焼成工程で0.2Pb(Mg0.33Nb0.67)O3+0.35PbTiO3+0.45PbZrO3に0.02molのNiOを添加した組成粉末を20g共存させた状態(焼成雰囲気Cとも称する)で焼成した。これ以外は実験例1と同様の処理を行い作製した板状多結晶粒子を実験例11とした。また、原料調製工程で0.2Pb(Mg0.33Nb0.67)O3+0.35PbTiO3+0.45PbZrO3(基本組成1)に0.08molのMgO及び0.02molのNiOを添加した組成比となるよう原料を配合した。また、焼成工程で0.2Pb(Mg0.33Nb0.67)O3+0.35PbTiO3+0.45PbZrO3に0.02molのNiO及び0.08molのMgOを添加した組成粉末を20g共存させた状態(焼成雰囲気D)で焼成した。これ以外は実験例1と同様の処理を行い作製した板状多結晶粒子を実験例12とした。
【0038】
[実験例13〜22]
原料調製工程で0.2Pb(Mg0.33Nb0.67)O3+0.43PbTiO3+0.37PbZrO3(基本組成2)に0.002molのNiOを添加した組成比となるよう原料を配合した。また、焼成工程で0.12Pb(Mg0.33Nb0.67)O3+0.43PbTiO3+0.45PbZrO3に0.02molのNiOを添加した組成粉末を20g共存させた状態(焼成雰囲気E)で焼成した。これ以外は実験例1と同様の処理を行い作製した板状多結晶粒子を実験例13とした。また、この添加組成比を、NiOが0.02mol(全体で0.02mol)添加した組成比とした以外は実験例13と同様の処理を行い作製した板状多結晶粒子を実験例14とした。また、この添加組成比を、MgOが0.01mol、NiOが0.02mol、全体で0.030mol添加した組成比とした以外は実験例13と同様の処理を行い作製した板状多結晶粒子を実験例15とした。また、この添加組成比を、MgOが0.04mol、NiOが0.02mol、全体で0.060mol添加した組成比とした以外は実験例13と同様の処理を行い作製した板状多結晶粒子を実験例16とした。また、この添加組成比を、MgOが0.08mol、NiOが0.02mol、全体で0.100mol添加した組成比とした以外は実験例13と同様の処理を行い作製した板状多結晶粒子を実験例17とした。また、この添加組成比を、MgOが0.4mol、NiOが0.02mol、全体で0.42mol添加した組成比とした以外は実験例13と同様の処理を行い作製した板状多結晶粒子を実験例18とした。また、この添加組成比を、MgOが1mol、NiOが0.02mol、全体で1.020mol添加した組成比とした以外は実験例13と同様の処理を行い作製した板状多結晶粒子を実験例19とした。また、この添加組成比を、MgOが0mol、NiOが0.06mol、全体で0.060mol添加した組成比とした以外は実験例13と同様の処理を行い作製した板状多結晶粒子を実験例20とした。また、この添加組成比を、MgOが0mol、NiOが0.02mol、ZnOが0.04mol、全体で0.060mol添加した組成比とした以外は実験例13と同様の処理を行い作製した板状多結晶粒子を実験例21とした。また、この添加組成比を、MgOが0.08mol、NiOが0.02mol、全体で0.100mol添加した組成比とし、0.2Pb(Mg0.33Nb0.67)O3−0.43PbTiO3−0.37PbZrO3となる組成粉末を5g共存させた状態(焼成雰囲気Fとも称する)で焼成した以外は実験例13と同様の処理を行い作製した板状多結晶粒子を実験例22とした。
【0039】
[実験例23〜24]
原料調製工程で0.2Pb(Mg0.33Nb0.67)O3+0.43PbTiO3+0.37PbZrO3(基本組成2)に0.02molのNiOを添加した組成比となるよう原料を配合し、焼成工程で0.2Pb(Mg0.33Nb0.67)O3+0.43PbTiO3+0.37PbZrO3に0.02molのNiOを添加した組成粉末を20g共存させた状態(焼成雰囲気G)で焼成した以外は実験例1と同様の処理を行い、作製した板状多結晶粒子を実験例23とした。また、原料調製工程で0.2Pb(Mg0.33Nb0.67)O3+0.43PbTiO3+0.37PbZrO3(基本組成2)に0.08molのMgO及び0.02molのNiOを添加した組成比となるよう原料を配合し、焼成工程で0.2Pb(Mg0.33Nb0.67)O3+0.43PbTiO3+0.37PbZrO3に0.08molのMgO及び0.02molのNiOを添加した組成粉末を20g共存させた状態(焼成雰囲気H)で焼成した以外は実験例1と同様の処理を行い、作製した板状多結晶粒子を実験例24とした。
【0040】
[実験例25〜27]
原料調製工程で0.2Pb(Mg0.33Nb0.67)O3+0.43PbTiO3+0.37PbZrO3(基本組成2)に0.08molのMgOを添加した組成比となるよう原料を配合し、焼成工程で0.12Pb(Mg0.33Nb0.67)O3+0.43PbTiO3+0.45PbZrO3に0.02molのNiOを添加した組成粉末を20g共存させた状態(焼成雰囲気E)で焼成した以外は実験例1と同様の処理を行い、作製した板状多結晶粒子を実験例25とした。また、原料調製工程で0.25Pb(Ni0.33Nb0.67)O3+0.40PbTiO3+0.35PbZrO3(基本組成3)に0.06molのNiOを添加した組成比となるよう原料を配合し、焼成工程で0.18Pb(Ni0.33Nb0.67)O3+0.40PbTiO3+0.42PbZrO3の組成粉末を20g共存させた状態(焼成雰囲気I)で焼成した以外は実験例1と同様の処理を行い、作製した板状多結晶粒子を実験例26とした。また、原料調製工程で0.15Pb(Zn0.33Nb0.67)O3+0.425PbTiO3+0.425PbZrO3(基本組成4)に0.04molのZnOを添加した組成比となるよう原料を配合し、焼成工程で0.12Pb(Zn0.33Nb0.67)O3+0.38PbTiO3+0.50PbZrO3の組成粉末を20g共存させた状態(焼成雰囲気J)で焼成した以外は実験例1と同様の処理を行い、作製した板状多結晶粒子を実験例27とした。なお、実験例2〜27の原料調製工程での無機粒子の平均粒径を測定したところ、メディアン径(D50)が、おおよそ0.4μmであった。
【0041】
[X線回折測定、配向度の算出]
実験例1〜27について、XRD回折装置(リガク社製RINT TTRIII)を用い、焼成成形体(板状多結晶粒子)の結晶面に対してX線を照射したときのXRD回折パターンを測定した。この測定結果を用い、ロットゲーリング法によって擬立方(100)面の配向度を、擬立方(100),(110),(111)のピークを使用して上述の式(2)を用いて計算した。
【0042】
[電子顕微鏡写真撮影、湾曲度の計算]
実験例1〜27について、走査型電子顕微鏡(日本電子製JSM−6390)を用いてSEM写真を撮影した。図5は、実験例5の焼成成形体のSEM写真であり、図6は、実験例8の焼成成形体のSEM写真であり、図7は、実験例11の焼成成形体のSEM写真であり、図8は、実験例22の解砕処理前の焼成成形体及び解砕処理後の板状多結晶粒子のSEM写真である。また、実験例1〜27について、電子顕微鏡写真を用いて、湾曲度を計算した。この湾曲度は、まず、粒子が20〜40個含まれる視野を電子顕微鏡(SEM)で観察しその写真を撮影し、粒子全体が視野に含まれている(視野で切れていない)すべての結晶粒子について、その結晶面の最長の長さを求めてそれを粒径とし、この平均値を計算して平均粒径を求めた。次に、平均粒径よりも大きな粒子を任意に5個選択し、選択した粒子において、隣接する粒界の3重点を任意に選択し、これらを直線で結びこの結んだ直線に平行な直線を引き、粒界と接する点から先の直線までの垂線の長さを求めた。3重点の距離と垂線の距離とを用い、(垂線の距離)/(3重点の距離)を計算し、この計算をすべての粒界について行い、そのうちの最大値をこの結晶粒子の湾曲度とした。任意に選択した5個の結晶粒子の湾曲度の平均値を求め、これをこの板状多結晶粒子の湾曲度とした。
【0043】
[測定結果]
測定結果として、各試料の基本組成、式(1)におけるM成分の添加種及び添加量、焼成雰囲気、湾曲度、ロットゲーリング法による配向度をまとめて表2に示す。なお、焼成雰囲気A,B,E,F,I,Jは、成形体と異なる組成の共存材料を共存させて焼成する雰囲気(所定の難揮発状態)であり、焼成雰囲気C,D,G,Hは、成形体と同じ組成の共存材料を共存させて焼成する雰囲気である。図5〜8に示すように、実験例5及び8は、結晶粒子が、断面視したときに粒界が凹凸のうねりを有する曲線により構成され、隣接する結晶体の凸部の曲線がこの凹部に入り込み、隣接する結晶体の凹部の曲線がこの凸部に入り込むうねり構造を有する結晶体を複数含んでおり、アスペクト比の高い平板状に粒成長していた。実験例5では、板状多結晶粒子のロットゲーリング法による配向度が73%であり、実験例8では、同配向度が55%であり、結晶の配向性が高かった。これに対して、実験例11,12,23,24のように、M成分(Mg.Ni及びZn)を過剰に入れ、成形体と同様の組成の材料を共存させて焼成しても、うねり構造は生成しないし、配向もしないことがわかった。また、共存材料を、成形体よりもPb(Mx,Nby)O3の配合量が小さく且つPbZrO3の配合量が大きいものを用いて焼成した実験例1〜6,8〜10や、実験例13〜18,20〜22では、湾曲度が比較的高く、配向度が高く良好な結果であった。この結果より、M成分の添加量zが0.002以上1.020未満で、成形体よりも揮発成分の揮発が進む組成であり且つ適切な揮発量を有する共存材料と共に焼成するとうねり構造が生じ、良好な配向性が得られるものと推察された。また、実験例25〜27に示すように、M成分を変更しても、同様の結果が得られることがわかった。また、結晶を配向させるに際して、板状多結晶粒子の成分を過剰に添加すれば結晶が配向することから、板状多結晶粒子以外の成分を添加して配向度を高めるものに比して、配向度を高める有効な方法であることが明らかとなった。更に、図8に示すように、板状多結晶粒子は、断面視したときに粒界が凹凸のうねりを有する曲線により構成され、隣接する結晶粒子の凸部の曲線がこの凹部に入り込み、隣接する結晶粒子の凹部の曲線がこの凸部に入り込むうねり構造を有する結晶粒子を複数含み、厚さ方向で結晶粒子が1個である部分が広範囲を占めていることが観察された。このため、板状多結晶粒子は、結晶粒子同士が結合した粒界部で比較的簡単に解砕することができることがわかった。即ち、実験例1〜6,8〜10や、実験例13〜18,20〜22では、メッシュ開口径を変化させることにより板状多結晶粒子のアスペクト比や大きさを容易に変化させられることがわかった。
【0044】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、圧電体・電歪体の技術分野に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】板状多結晶粒子10の一例を表す説明図である。
【図2】板状多結晶粒子10の平面図である。
【図3】メッシュ粉砕工程の一例の説明図である。
【図4】結晶配向セラミックス50の製造方法の一例を表す説明図である。
【図5】実験例5のSEM写真である。
【図6】実験例8のSEM写真である。
【図7】実験例11のSEM写真である。
【図8】実験例22の解砕処理前の焼成成形体及び解砕処理後の板状多結晶粒子のSEM写真である。
【符号の説明】
【0047】
10 板状多結晶粒子、11 結晶面、12,12a,12b 結晶粒子、14 粒界、15 凹部、16 凸部、30 成形体、32 焼成成形体、34 メッシュ、36 押圧部材、40 2次成形体、50 結晶配向セラミックス、52 配向結晶。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面視したときに粒界が凹凸のうねりを有する曲線により構成され、隣接する結晶粒子の凸部の曲線が該凹部に入り込み、隣接する結晶粒子の凹部の曲線が該凸部に入り込むうねり構造を有する結晶粒子を複数含む、
板状多結晶粒子。
【請求項2】
前記結晶粒子は、隣接する粒界の3重点を結ぶ第1直線の距離と、該第1直線からの前記粒界までの垂線の距離とにより計算される湾曲度が0.1以上である、請求項1に記載の板状多結晶粒子。
【請求項3】
前記結晶粒子は、一般式ABO3で表される酸化物を主成分とし、AサイトがPbを含み、BサイトがMg,Zn,Nb,Ni,Ti及びZrから選ばれる1種以上を含む粒子である、請求項1又は2に記載の板状多結晶粒子。
【請求項4】
一般式がABO3であり次式(1)により表される酸化物を主成分とし0.002≦z≦0.42となる無機粒子を配合し該無機粒子を自立したシート状の成形体に成形する成形工程と、前記成形体を該成形体と実質的に反応しない不活性層に隣接させ又は、該成形体のまま焼成する焼成工程と、所定サイズの開口部を通過させることにより前記焼成後の成形体を解砕及び分級する粉砕工程と、を含む工程によって作製されている、請求項3に記載の板状多結晶粒子。
a×Pb(M1/3,Nb2/3)O3+b×PbTiO3+c×PbZrO3+z×MO(a+b+c=1、MはMg,Ni,Znより選ばれる1以上) …式(1)
【請求項5】
前記板状多結晶粒子は、厚さ方向の前記結晶粒子が実質的に1個である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の板状多結晶粒子。
【請求項6】
前記板状多結晶粒子は、アスペクト比が2以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の板状多結晶粒子。
【請求項7】
前記板状多結晶粒子は、15μm以下の厚さで形成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の板状多結晶粒子。
【請求項8】
前記結晶粒子は、板状多結晶粒子の面方向の該結晶粒子の長さが該結晶粒子の厚さ方向の長さ以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の板状多結晶粒子。
【請求項9】
前記板状多結晶粒子は、配向度がロットゲーリング法で15%以上である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の板状多結晶粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−18511(P2010−18511A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303235(P2008−303235)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】