説明

板状部材移載設備

【課題】 ラックの基板収容部にエンドエフェクトを挿入せずに、収納ピッチが密で、且つ間隔をあけた2つの板状部材の間に板状部材を搬入し、並んだ複数の板状部材の中から何れの板状部材でも搬出可能な板状部材移載設備を提供する。
【解決手段】 ストッカ設備1は、ガラス板2が立てた状態で前後方向に並べて収納されるラック21と、ガラス板2を左右に移動させてラック21との間で受け取りするストッカ4を備えている。ストッカ4は、基台5と、フリップ8と、スライド部材16と、駆動部材18とを有する。フリップ8は、フリップ駆動機構10により基台5に対して軸線L1回りに回動し、回動することでそこに載せられたガラス板2を立てたり倒したりするように構成されている。駆動部材18は、スライド部材16に回動可能に設けられ、回動することでガラス板2をラック21内に送れるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の板状部材を立てた状態で並べて収納可能なラックと、前記ラックに板状部材を挿入したり、前記ラックから板状部材を取り出したりする板状部材移載機構とを備える板状部材移載設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板を搬送する様々な搬送装置が知られている。それら様々な搬送装置のうちの1つとして、特許文献1に開示されるような、基板をラック(又はカセット等)に収納したり、ラックに収納された基板を取り出したりするロボットがある。特許文献1に記載のロボットは、ロボットアームを備えている。ロボットアームは、3つのリンクを有しており、これら3つのリンクは、鉛直方向に延びる垂直軸線回りに回動可能に連結されている。ロボットアームの先端部には、エンドエフェクタが取付けられている。このエンドエフェクタは、その先端側部分に基板を載置可能に構成されており、その先端部分が水平方向に延びる水平軸線回りに回動可能に構成されている。
【0003】
このように構成されるロボットは、3つのリンクを回動させながらエンドエフェクトを動かし、そこに載置されている基板をラックに挿入したり、ラックから基板を取り出したりする。また、ロボットは、エンドエフェクトの先端部を水平軸線回りに回動させることで、エンドエフェクトに載置された基板を起こしたり倒したりできる。それ故、エンドエフェクトを様々な方向からラックに挿入することができ、ラックの向きに係わらず、基板を挿入したり、そこから基板を取り出したりすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2002−522238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のロボットは、基板51〜53をラック54に挿入したり、基板51〜53から取り出したりする際、ラックの基板を収容する基板収容部の中にエンドエフェクタを挿入するようになっている。他方、複数の基板51〜53は、図30及び31に示すように互いが接触しないように配列方向に並べてラック54に収容されている。従って、複数の基板51〜53を一番前側の基板51から順に搬出する場合、搬出する各基板51〜53の前にエンドエフェクト55を挿入できるオープンスペースが形成されるため、上述するエンドエフェクト55を用いても搬出に何ら問題を生じない。
【0006】
しかし、ラック54に収容された複数の基板51〜53は、必ずしも前の基板51から順番に搬出されるとは限らず、2つの基板51,53の間に収容された基板52を先に取り出すことがしばしばある。この場合、エンドエフェクト55を2つの基板51,52(又は、基板52,53)の間に挿入してなければならない。
【0007】
一般的に、隣接する基板の収容間隔は、ラック54の設置面積に対する収容可能な基板の枚数を密にするべくできるだけ短くなっている。これに対して、エンドエフェクトは、基板を挟持する機能をもたせたり、剛性を確保しなければならなかったりするため厚くなっている。そのため、2つの基板51,52(又は、基板52,53)の間に挿入しようとしても挿入できず、挿入できたとしても基板51〜53等に当たってそれらを破損させる虞がある。そのため、ラック54における基板の収容間隔を大幅に広げなければならず、そうすると、ラック54の設置面積が大きくなってしまう。
【0008】
このような問題は、基板51〜53を搬出する場合だけでなく、基板51〜53を搬入する場合にも同様の問題が生じる。つまり、基板51〜53を配列方向に順番に搬入する場合についても何ら問題がないが、2つの基板51,53が先にラック54に搬入され、その後から基板52を搬入する場合に搬出時と同様の問題が生じる。この問題を解消するためには、やはりラック54における基板の収容間隔を大幅に広げなければならず、ラック54の設置面積が大きくなってしまう。
【0009】
そこで本発明は、ラックの基板収容部にエンドエフェクトを挿入することなしに、板状部材の収納ピッチが密であっても間隔をあけた2つの板状部材の間に新たな板状部材を搬入し、また並んだ複数の板状部材の中から何れの板状部材でも搬出することができる板状部材移載設備を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の板状部材移載設備は、支持部で支持されて搬送方向に延在するように立てられた複数の板状部材を前記搬送方向に交差する配列方向に並べて収納し、且つ前記複数の板状部材を前記搬送方向において夫々搬入及び搬出可能に構成されたラックと、前記板状部材を前記搬送方向において前記ラックに搬入し、また前記ラックから搬出する板状部材移載機構と、を備え、前記板状部材移載機構は、前記板状部材を支持し、前記搬送方向に平行な回動軸線回りに回動可能なフリップを有し、前記フリップを回動させて前記板状部材を立て又は倒すフリップ回動機構と、前記搬送方向に延在し、立った状態の前記板状部材を前記搬送方向に送る送り部が形成された搬送体を有する搬送機構と、前記フリップ回動機構及び前記搬送機構を配列方向に移動させる移送機構と、を備えており、前記搬送機構は、前記送り部により前記ラックと前記フリップとの間で前記板状部材を立った状態で受け渡しするように構成されているものである。
【0011】
本発明に従えば、板状部材移載機構は、フリップ回動機構によりフリップを回動させてフリップに支持されている板状部材を立てることができる。更に、このフリップ回動機構と搬送機構とをラックの配列方向の任意の位置に移動させ、立てた状態の板状部材を送り機構により搬送方向へと移動させることで板状部材をラックに搬入して収納することができる。このように板状部材移載機構は、水平状態の板状部材を立ててラックに挿入し、収納することができる。なお、本発明において、「水平状態」とは、真に水平な姿勢になっている状態だけでなく、水平な姿勢から多少傾いた状態のものも含む。
【0012】
また、本発明は、ラックの任意の位置までフリップ回動機構及び搬送機構を移動させて送り部を駆動することで、ラックに収納された板状部材を搬送方向に移動させてフリップ上に戻すことができる。板状部材がエンドエフェクトとしてのフリップに載り移った後、フリップ回動機構によりフリップを回動させて倒すことで板状部材を水平状態にすることができる。このように板状部材移載機構は、ラックに立てた状態で収納された板状部材を取り出して水平状態にすることができる。
【0013】
このように、本発明では、送り部により板状部材を搬送方向に移動させて受け渡しするので、板状部材を搬入及び搬出する際に搬送体やフリップをラックの基板収容部分に内に直に挿入する必要がない。これにより、設備の設置面積を低減すべく板状部材同士の間隔を狭くして板状部材の配列方向の収納ピッチを密にしても、従来技術のように収納された板状部材とエンドエフェクトとが接触して損傷させるような事態を生じることなく、2つの板状部材の間に新たな板状部材を搬入し、並んだ複数の板状部材の中から何れの位置の板状部材でも搬出することができる。それ故、確実にかつ迅速にラックに対する板状部材の搬入及び搬出を行なうことができる。
【0014】
上記発明において、前記搬送機構は、前記搬送体を前記フリップ側から搬送方向に移動させて前記ラック内まで延在させることができるように構成されていることが好ましい。
【0015】
上記構成に従えば、前記搬送体をラック内まで延在させることで、前記送り部により板状部材をラック内の奥の方まで移動させることができる。これにより、ラック内に搬送機構を設ける必要が無くなり、部品点数を削減することができる。これにより、製造コストを低減することができる。
【0016】
上記発明において、前記搬送機構は、前記搬送体を前記上下方向に移動可能に構成されていることが好ましい。
【0017】
上記構成に従えば、ラックの位置に合わせて搬送体を上下方向に移動させることで、板状部材を受け渡しする際の搬送体とラックとの間の段差をなくすことができる。これにより、板状部材がラック内で段差から落ちて損傷することを防ぐことができる。
【0018】
上記発明において、前記ラックは、複数の前記支持部が前記搬送方向に間隔をあけて配置され、前記搬送体の送り部は、該搬送体の前記搬送方向に点在するように配設された前記板状部材を前記搬送方向に送る複数の駆動部材を有し、前記搬送体には、前記複数の支持部に対応させて複数の凹部が形成され、隣接する該凹部の間に形成された凸部に少なくとも1つの前記駆動部材が設けられていることが好ましい。
【0019】
上記構成に従えば、搬送体をラック内に延在させた時に、搬送体の凹部に支持部を入れることで隣接する支持部の間から凸部に取付けられた駆動部材を表出させることができる。支持部の間から駆動部材を表出させることで、駆動部材によってラック内における板状部材の移動をスムーズに行うことができる。
【0020】
上記発明において、前記搬送機構は、前記搬送体が前記ラックの搬送方向手前側にある前記基準位置において前記凸部の上端が前記ラックの支持部より低く位置するように前記搬送体を位置させ、前記基準位置から前記搬送方向に前記搬送体を移動させて前記凹部が前記ラックの支持部の下方に位置させ、そこから前記搬送位置を上昇させて前記搬送体を前記駆動部材の上端が前記ラックの支持部より高く位置させるように構成されていることが好ましい。
【0021】
上記構成に従えば、搬送体の凹部に支持部を入れ、凸部に設けられている駆動部材を支持部から表出させることができる。
【0022】
上記発明において、前記フリップには、前記フリップを立てたときに前記板状部材を支持する支持部が設けられ、前記搬送機構は、前記搬送体が上昇すると、前記フリップの支持部に支持されている前記板状部材が前記駆動部材に載るように構成されていることが好ましい。
【0023】
上記構成に従えば、搬送体を上昇させると、板状部材が駆動部材に載せられる。このようにフリップを立てて搬送体を上昇させることで板状部材を駆動部材に載せることができるので、フリップと駆動部材との間の板状部材の受け渡しが容易である。
【0024】
上記発明において、前記フリップは、転動可能な複数の球面ローラを有し、前記複数の球面ローラにより前記板状部材の背面を支持するように構成されていることが好ましい。
【0025】
上記構成に従えば、板状部材が転動する球面ローラにより支持されているので、送り機構が板状部材を移動させる際に板状部材をフリップに立て掛けたままスライド移動させても滑らかに動かすことができる。これにより、ラックとフリップとの間で板状部材を受け渡しする際に、板状部材をフリップに沿ってスライド移動させることができフリップが倒れることを防ぐことができる。
【0026】
上記発明において、前記フリップ回動機構は、移動する際、前記フリップを回動させて該フリップに支持された前記板状部材を倒すように構成されていることが好ましい。
【0027】
上記構成に従えば、板状部材を倒した状態でフリップ回動機構を動かすので、板状部材が動くことで発生する風の風量を抑えることができる。移動時に生じる風は、ラックに並べて収納された板状部材をバタつかせ、また損傷させるおそれがあるが、本発明では風を抑えることができるので、このような板状部材のバタつきを抑え、板状部材の損傷を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ラックの基板収容部にエンドエフェクトを挿入することなしに、板状部材の収納ピッチが密であっても間隔をあけた2つの板状部材の間に新たな板状部材を搬入し、また並んだ複数の板状部材の中から何れの板状部材でも搬出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係るストッカ設備を示す斜視図である。
【図2】図1に示すストッカ設備が備えるストッカを拡大して示す拡大斜視図である。
【図3】図2に示すストッカのフリップの動きを示す斜視図である。
【図4】図3に示すストッカのスライド部材の動きを示す斜視図である。
【図5】図1に示すストッカ設備が備えるラックを拡大して示す拡大斜視図である。
【図6】図5に示すラックの下端側支持体の一部を更に拡大して示す拡大斜視図である。
【図7】図5に示すラックの上端側支持体の一部を更に拡大して示す拡大斜視図である。
【図8】図1に示すストッカ設備において、ホイールコンベアにより搬送されてきたガラス板を下流側ストッパでとめた状態を示す斜視図である。
【図9】図8の状態からスライド装置により板状部材を前方へと送った後の状態を示す斜視図である。
【図10】図9の状態からフリップを立てたときの状態を示す正面図である。
【図11】図10の状態からラックの収納位置の前までストッカを移動させたときの状態を拡大して示す拡大斜視図である。
【図12】図11の状態におけるストッカ設備を正面から見た正面図である。
【図13】図11の状態から左側のラックの下にスライド部材の一部を潜り込ませたときの状態を拡大して示す拡大斜視図である。
【図14】図13の状態におけるストッカ設備を正面から見た正面図である。
【図15】図13の状態からスライド部材を上昇させてラックとフリップとの間にスライド部材を渡した後の状態を右側から見た拡大斜視図である。
【図16】図15の状態から支持部を下げてガラス板を駆動部材に載せた後の状態を右側から見た拡大斜視図である。
【図17】図16の状態から駆動部材を回動させてガラス板をスライドさせたときの状態を拡大して示す拡大斜視図である。
【図18】図17の状態におけるストッカ設備を正面から見た正面図である。
【図19】図17の状態におけるストッカ設備を右側から見た拡大斜視図である。
【図20】図17の状態から更にガラス板をスライド移動させてラックに収納し、スライド部材を下降させたときの状態を右側から見た拡大斜視図である。
【図21】図20の状態からスライド部材を移動させて左側のラックの下にスライド部材の一部をもぐりこませた状態を正面から見た正面図である。
【図22】図21の状態から左側のラックに収納されたガラス板をフリップへと移動させているときの状態を拡大して示す拡大正面図である。
【図23】図22の状態におけるストッカ設備を正面から見た正面図である。
【図24】図23の状態から更にガラス板をスライド移動させてフリップの前まで移動させたときの状態を正面から見た正面図である。
【図25】図24の状態から支持部を上昇させて支持部にガラス板を載せた状態を示す拡大斜視図である。
【図26】図25の状態からフリップを回動させて倒した状態を正面から見た正面図である。
【図27】図26の状態からストッカを後方に移動させてガラス板をホイールコンベアまで移動させたときの状態を示す斜視図である。
【図28】図27の状態からスライド装置によりガラス板を後方にスライド移動させた後の状態を示す斜視図である。
【図29】図28の状態から下流側ストッパを下げてガラス板を下流側へ移動する時の状態を示す斜視図である。
【図30】複数の基板を収納する可能なラックを正面から見た正面図である。
【図31】図30に示すラック及びエンドエフェクタを上方か見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、前述する図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るストッカ設備1について説明する。なお、実施形態における上下、左右、及び前後等の方向の概念は、説明の便宜上使用するものであって、ストッカ設備1に関して、それらの構成の配置及び向き等をその方向に限定することを示唆するものではない。また、以下に説明するストッカ設備1は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明は実施の形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0031】
[ストッカ設備]
図1に示すように、ストッカ設備1は、1つの処理装置から別の処理装置に板状部材2を搬送する搬送路の途中に設けられ、搬送されてくる板状部材2を一時的に蓄えておくための設備である。板状部材2は、例えば太陽光パネルや液晶パネル等で使用される大型のガラス板であり、以下では、ガラス板2として説明する。但し、板状部材2は、大型のガラス板に限定されず、鋼板や樹脂板であってもよく、板状の部材であればよい。本実施形態において、ストッカ設備1は、1つの処理装置から別の処理装置にガラス板2を搬送するホイールコンベア3に設けられている。
【0032】
ホイールコンベア3は、回動可能な複数のホイール軸3aを有している。ホイール軸3aは、前後方向に延在し、図示しない駆動装置により回動されており、ホイールコンベア3は、複数のホイール軸3aを回動させることによってその上に載置されたガラス板2を一方向(本実施形態では、左方向)に移動させるように構成されている。また、ホイールコンベア3は、下流側ストッパ部材3bを有している。下流側ストッパ部材3bは、隣接する2つのホイール軸3aの間に前後方向に一列に並べられ、出没可能に設けられている。ホイールコンベア3は、下流側ストッパ部材3bをホイール軸3aの間から突出させることでホイールコンベア3上を移動するガラス板2を停止位置にて止め、下流側ストッパ部材3bをホイール軸3aの間に没入させることでガラス板2を停止位置から下流側へと移動することを許容するように構成されている。
【0033】
更に、ホイールコンベア3は、スライド装置3cと複数の位置合わせ部材3dとを有し、これらによりガラス板2の位置合わせを行う場合がある。スライド装置3cは、停止位置にあるガラス板2を前後方向にスライド移動させるように構成されている。複数の位置合わせ部材3dは、ホイールコンベア3の前側において左右方向に一列に並んでおり、隣接するホイール軸3aの間に1つずつ配設されている。位置合わせ部材3dは、出没可能に構成されており、ホイール軸3aの間から位置合わせ部材3dを突出させることで、スライド装置3cによりスライド移動させられるガラス板2を止めるように構成されている。
【0034】
ストッカ設備1は、停止位置にて止められたガラス板2をラック21に収納するように構成されている。ストッカ設備1は、図1に示すようにストッカ4及びラック21を備えている。
【0035】
<ストッカ>
ストッカ4は、図2に示すように基台5を備えている。基台5は、基台駆動機構6上に取付けられ、基台駆動機構6により前後方向にスライド可能に構成されている。基台駆動機構6は、ケーシング6aと駆動機構(図示せず)とを有している。ケーシング6aは、前後方向に延在し、その中には、ボールねじ機構及びサーボモータ等により構成されている駆動機構が収納されている。このような構成を有する基台駆動機構6は、ホイールコンベア3付近から前方に延在しており、設置場所の床等に取付けられている。基台駆動機構6には、前述の通り、基台5がスライド移動可能に取付けられている(図2の矢符A参照)。基台5は、大略的に直方体状に形成されている。基台5には、ヒンジ昇降機構7が設けられている。ヒンジ昇降機構7は、例えばピストン機構によって構成されている。ヒンジ昇降機構7には、ヒンジ9が取付けられており、ヒンジ9を上下方向に昇降させるように構成されている。基台5の後部には、いわゆるハンド又はエンドエフェクタの役目をするフリップ8がヒンジ9を介して取付けられている。
【0036】
フリップ8は、大略的に三叉状に形成され、その上に載置されるガラス板2を支持可能に構成されている。フリップ8は、基台5の後部にヒンジ9を介して取付けられ、ヒンジ9により回動軸線L1回りに回動可能に構成されている。ヒンジ9には、フリップ駆動機構10が設けられている。フリップ駆動機構10は、例えばサーボモータであり、フリップ8を回動軸線L1回りに回動させるように構成されている(図2の矢符B参照)。以下では、図2に示すようにフリップ8の姿勢が略水平になっている状態に基づいてフリップ8の構成について詳述する。
【0037】
フリップ8は、基端側(前側)に基部11を有する。基部11は、左右に延びる板状の部材であり、ヒンジ9を介して基台5に取付けられている。基部11の上面11aには、3つの支持板12が取り付けられている。支持板12は、前後方向に延在する短冊状の板部材であり、その基端側が左右に略等間隔をあけて基部11に固定されている。支持板12の間隔は、ホイールコンベア3のホイール軸3aの間隔に合わせられており、各支持板12が隣接するホイール軸3aの間に入れるようになっている。また、基部11は、ストッパ11bを有している。ストッパ11bは、基部11の下面11cに下方に延在するよう形成され、基台駆動機構6のケーシング6aに当たっている。ストッパ11bは、ケーシング6aに当たることで基部11の下側への回動を規制し、支持板12の先端側が下を向かないようにする機能を有している。
【0038】
支持板12の上面12a側には、複数の球面ローラ13(本実施形態では、5つの球面ローラ13)が取付けられている。複数の球面ローラ13は、転動可能に支持板12に取付けられ、前後方向に間隔をあけて配置されている。球面ローラ13は、その一部分が支持板12の上面12aから上方に突出して表出している。また、支持板12の上面12a側には、支持部14が取付けられている。支持部14は、球面ローラ13より支持板12の基端側に配置されており、上面12aから上方に突出している。支持部14には、図示しないシリンダ機構が設けられており、シリンダ機構により前後方向に移動可能に構成されている。
【0039】
また、基台5の前部には、搬送機構15が取付けられている。搬送機構15は、スライド部材16を有している。搬送体であるスライド部材16は、左右横長の板状部材である。スライド部材16は、スライド昇降機構17を介して基台5の後部に取付けられている。スライド昇降機構17は、例えばボールねじ機構及び空気圧シリンダから成り、スライド部材16を左右方向(搬送方向)にスライド移動すると共にスライド部材16を上下に昇降可能に構成されている(図2の矢符C及びD参照)。スライド部材16の上部には、複数の凸部16a(本実施形態では、6つの凸部16a)が形成されている。凸部16aは、左右方向に略等間隔をあけて配置されている。隣接する凸部16aの間には、スライド部材16を前後方向に貫通する凹所16bが形成されている。凹所16bは、その中に後述するラック21の支持部材26を入れられるように形成されている。
【0040】
スライド部材16の後部には、複数の駆動部材18が点在させて取付けられている。駆動部材18は、例えばローラ又はベルトによって構成されている。本実施形態では、駆動部材18がローラである場合について説明する。12個の駆動部材18がスライド部材16に取付けられている。駆動部材18は、前後方向に平行な回動軸線回りに回動可能に構成され、各凸部16aに2つずつ取付けられている。また、スライド部材16には、回動連動機構19が設けられている。回動連動機構19は、例えばタイミングベルト等により構成される伝達機構とサーボモータから成り、スライド部材16内に設けられている。回動連動機構19は、複数の駆動部材18を同一方向に連動して回動させ、駆動部材18に載せられたガラス板2を左又は右方向に送るように構成されている(図2の矢符E参照)。
【0041】
また、ストッカ4は、各構成の動作を制御すべく制御装置20を有している。制御装置20は、基台駆動機構6、ヒンジ昇降機構7、フリップ駆動機構10、スライド昇降機構17、及び回動連動機構19に信号配線を介して接続されている。制御装置20は、予め記憶されたプログラムや図示しない入力手段により入力された指令に基づいて前記各機構6,7,10,15,19に信号を送ってそれらの動作を制御する機能を有している。制御装置20はこれら7つの機構6,7,10,15,19の動作を制御することで、ストッカ4に以下のような機能を達成させる。以下では、ストッカ4の機能について図2乃至4を参照しながら説明する。
【0042】
ストッカ4は、図2に示すようにフリップ8を水平な状態に倒し、倒れたフリップ8をヒンジ昇降機構7により上昇させてフリップ8上にガラス板2を載せる機能を有する。また、ストッカ4は、ヒンジ9によりフリップ8を回動させる(図3参照)ことでフリップ8上のガラス板2を立てたり、水平な姿勢な状態(水平状態)に倒したりすることができる。なお、水平な状態とは、真に水平な状態だけでなく、真に水平な状態から多少傾いている状態も含む。更に、ストッカ4は、基台駆動機構6により基台5を動かすことでフリップ8に載っているガラス板2を前後方向に移動させる機能を有している。
【0043】
ストッカ4は、図4に示すようにスライド昇降機構17によりスライド部材16を左又は右方向にスライド移動させてスライド部材16を上昇させる機能を有している。フリップ8を回動させて立てられたガラス板2の下端は、支持部14により支持されており、ストッカ4は、支持部14をシリンダ(図示せず)により下降させることで、そこに支持されたガラス板2をスライド部材16の駆動部材18上に載置する機能を有している。そして、ストッカ4は、回動連動機構19により複数の駆動部材18を回動させることでガラス板2を左又は右方向に送ることができるように構成されている。
【0044】
このように左及び右方向にガラス板2を送ることができるストッカ4の左右両側には、複数のラック21(本実施形態では、3つのラック21)が並べられている。ラック21は、左右両側において、前後方向に一列に並べられており、本実施形態では、左右両側に夫々3つのラック21が並べられている。各ラック21の構成は、配置位置や向きを除いて全て同一である。以下では、1つのラック21についてだけ説明し、その他のラック21については、同一の符合を付してその説明を省略する。
【0045】
<ラック>
ラック21は、図5に示すように直方体状に枠組みされた枠体22を有している。この枠体22の下端側には、下端側支持体23が固定され、上端側には、上端側支持体24が取付けられている。下端側支持体23は、平面視で枠体22と同じ矩形状に枠組みされた外枠25を有している。外枠25には、複数の支持部材26(本実施形態では3つの支持部材26)が固定されている。支持部材26は、前後方向に延在しており、外枠25の前後にある部材に渡されている。複数の支持部材26は、外枠25において左右方向に互いに間隔をあけて位置しており、それらの間隔は、収納されるガラス板2の幅に応じて設定されている。また、支持部材26は、上面に図6に示すような複数のセパレータ26aを有している。複数のセパレータ26aは、前後方向において略等間隔で配置されており、隣接する2つのセパレータ26aの間隔は、ガラス板2の厚みより少しだけ広くなっている。
【0046】
上端側支持体24は、平面視で枠体22と同じ矩形状に枠組みされた天枠27を有している。天枠27には、複数の梁部材28(本実施形態では4つの梁部材28)が固定されている。梁部材28は、前後方向に延在しており、天枠27の前後にある部材に渡されている。複数の梁部材28は、左右方向に互いに間隔をあけて位置しており、それらの間隔は、収納されるガラス板2の幅に応じて設定されている。梁部材28の下面には、図7に示すような複数の案内ローラ28aが取付けられている。複数の案内ローラ28aは、セパレータ26aに対応させて配置され、前後方向に略等間隔で位置している。このように構成される案内ローラ28aは、上下方向に延在する回動軸線回りに回動可能に梁部材28に取付けられている。
【0047】
ラック21では、隣接する2つのセパレータ26aの間にガラス板2の下端側が通され、隣接する2つの案内ローラ28aの間にガラス板2の上端側が通された状態で、ガラス板2が収納されている。これにより、ガラス板2が下端側支持体23と上端側支持体24との間に立てた状態で収納され、セパレータ26aと案内ローラ28aにより倒れないように支持されている。このように収納されているガラス板2の上端側は、その下端側が通されている2つのセパレータ26aの真上よりも若干後側に位置している2つの案内ローラ28aに通されており、ガラス板2は、後側に若干傾けた状態でラック21に収納されている。また、ガラス板2は、2つのセパレータ26aの間及び案内ローラ28aの間に一枚一枚通されており、隣接するガラス板2同士がセパレータ26a及び案内ローラ28aにより仕切られている。このように仕切ることで、ガラス板2が互いに接触することなく離し、前後方向(配列方向)に並べてラック21に収容されている。
【0048】
このように複数のガラス板2を収納可能なラック21では、上端側支持体24が枠体22に固定されておらず、上端側支持体24の高さを調整できるように構成されている。上端側支持体24の位置を調整する調整機構としては、図示しないボールねじ機構等の昇降機構が用いられる。なお、上端側支持体24は、昇降機構を用いず手動で調整できるように構成されていてもよい。ラック21では、収納したいガラス板2の高さに応じて上端側支持体24の高さを調整機構により調整することで、ラック21毎に収納可能なガラス板2の高さを変えることができる。
【0049】
本実施形態では、収納されるガラス板2の高さに応じて上端側支持体24の高さが予め調整されている。各列において最も前側に位置するラック21に収納するガラス板2は、他のラック21に収納されるガラス板2よりも背が低くなっている(図5の2点鎖線で示す上端側支持体24参照)。それ故、前側に位置するラック21の上端側支持体24は、他のラック21の上端側支持体24より低い位置に配置されている。このように、ラック21では、収納するガラス板2の高さに応じて上端側支持体24の高さを調整することができる。
【0050】
このように構成されるラック21は、左右両側の何れか一方側にガラス板2が挿入される挿入口21aを有している。具体的には、ストッカ4の左側に配置されるラック21の場合、挿入口21aは、ラック21の右側に形成されており、ストッカ4の右側に配置されるラック21の場合、挿入口21aは、ラック21の左側に形成されている。つまり、挿入口21aは、ストッカ4に向いて開口している。ストッカ4は、このように構成される挿入口21aからガラス板2をラック21に受け渡すように構成されている。以下では、ホイールコンベア3上を移動するガラス板2をラック21に収容するストッカ4の動作について、図1、図2及び図8乃至図20を参照しながら説明する。なお、図8以降の図面では、ホイール軸3aの記載について省略している。
【0051】
<ガラス板の収納動作>
制御装置20は、ホイールコンベア3上を移動するガラス板2を受け取る前に、まず基台駆動機構6の動作を制御し、ストッカ4の基台5をホイールコンベア3付近まで移動させる。移動させた後、制御装置20は、フリップ駆動機構10の動作を制御してフリップ8を後側へと倒す。フリップ8を倒してフリップ8の姿勢を水平にした後、制御装置20は、ヒンジ昇降機構7の動作を制御してフリップ8を下降させ、フリップ8の3つの支持板12をホイール軸3aの間に夫々入れる。この際、フリップ8は、球面ローラ13がホイール軸のローラと面一又はそれよりも下側に位置するところまで下げられる。また、ホイールコンベア3は、移動してくるガラス板2をフリップ8上の所定の位置で止めるべく下流側ストッパ部材3bを上方に突出させている。そして、ストッカ4は、ホイールコンベア3上を移動してくるガラス板2が所定の位置に来るのを待つ。
【0052】
ホイールコンベア3は、ホイールコンベア3上を移動してきたガラス板2を下流側ストッパ部材3bによりフリップ8上で止める(図8参照)る。この際、所定の位置に対してガラス板2の位置が後方にずれている場合、ホイールコンベア3では選択的にスライド部材3cや位置合わせ部材3dを使用することがある。即ち、位置合わせ部材3dを突出させ、その後にホイールコンベア3は、スライド装置3cによりガラス板2を位置合わせ部材3dの方、つまり前側に移動させる(図9)。これにより、ガラス板2を所定の位置に確実に位置させることができる。
【0053】
このようにガラス板2が所定の位置まで来ると、制御装置20は、ヒンジ昇降機構7によりフリップ8を上昇させ、フリップ8上にガラス板2を載せる。ガラス板2をフリップ8に載せた後、制御装置20は、シリンダにより支持部14を後側へと動かして支持部14をガラス板2に当てる。支持部14をガラス板2に当てた後、制御装置20は、フリップ駆動機構10によりフリップ8を角度α(図1参照)だけ回動させる。これにより、水平状態にあったフリップ8が角度αだけ起こされて支持部14に載り、フリップ8から滑り落ちることが阻止される。なお、角度αは、フリップ8が少なくともホイールコンベア3から離れる(上方に位置する)程度の傾き角度に設定されている。
【0054】
制御装置20は、フリップ8を起こすと、その状態維持しつつ基台駆動機構6により基台5を前側にスライド移動させる(図1及び図10参照)。なお、図10以降の図面(図10、12、14、18乃至21、23,24及び26)では、ストッカ4とラック21との間におけるガラス板2の受け渡しを分かりやすくするために、ラック21に収納されている他のガラス板2について省略して記載している場合がある。フリップ8の傾きを角度αに維持しながらスライド移動させることで、移動する際にフリップ8が引き起こす風の風量を少なくすることができる。これにより、ラック21に収納されているガラス板2に作用する風量を低減し、基台5の移動時におけるガラス板2のバタつきが抑制できる。
【0055】
制御装置20は、ガラス板2を収納すべきラック21の収納位置の前までガラス板2を搬送すると、基台5を停止させる。なお、ガラス板2に、QRコードや非接触型IC等のガラス板2の識別情報を示す識別子が取付けられている場合があり、その場合は、この識別子から識別情報を読み取ることで収納位置が決定されるようになっている。基台5を停止させた後、制御装置20は、フリップ駆動機構10によりフリップ8を略垂直になる角度βまで回動させて、ガラス板2を立てる(図11及び図12参照)。なお、角度βは、85度以上90度未満の範囲で設定される。但し、この角度βは、前記角度範囲に限定されない。
【0056】
フリップ8によりガラス板2を立てると、制御装置20は、スライド昇降機構17によりスライド部材16を下降させ、複数の駆動部材18をラック21の下端側支持体23よりも下側に位置させる。その後、制御装置20は、スライド昇降機構17によりスライド部材16を収納すべきラック21、つまり左側のラック21の方へとスライド移動させる。制御装置20は、スライド部材16の左端側を下端側支持体23の下側へと潜らせ、スライド部材16の左端がガラス板2の左端を支持させる支持部材26(本実施形態では、右から2番目の支持部材26)まで到達すると、スライド昇降機構17の動作を制御してスライド部材16を停止させる(図13及び図14参照)。この際、制御装置20は、下端側支持体23に潜らせた部分にある凹所16bが支持部材26に平面視で重なるようにスライド昇降機構17の動作を制御する。
【0057】
スライド部材16を止めると、制御装置20は、スライド昇降機構17によりスライド部材16を上昇させ、右側にある2つの支持部材26の間にスライド部材16の凸部16aを挿入する。更に上昇させていくと、前記2つの支持部材26の間から駆動部材18が突出して表出する。やがて駆動部材18がセパレータ26aの上面と面一となる位置よりも少しだけ高い位置まで上昇すると、制御装置20は、スライド昇降機構17の動作を制御してスライド部材16の上昇を止める(図15参照)。このようにスライド部材16をスライド移動させて上昇させることで、スライド部材16の左端部がラック21内に位置し、右端部側にフリップ8が位置するようになり、ラック21とフリップ8との間にスライド部材16が渡される。つまり、スライド部材16がラック21内に延在する。
【0058】
渡された直後では、支持部14が駆動部材18よりも高い位置にあり、支持部14に支持されるガラス板2と駆動部材18とが上下方向に離れている。そのため、制御装置20は、スライド部材16の上昇させた後、シリンダにより支持部14をゆっくりと下降させる。下降させていくと、やがて駆動部材18の上にガラス板2が載せられる。その後も、制御装置20は、支持部14を下降させていき、支持部14をガラス板2から離す(図16参照)。
【0059】
支持部14からガラス板2が離れると、制御装置20は、回動連動機構19により駆動部材18を反時計回りに回動させる。駆動部材18が反時計回りに回動すると、その上に載せられたガラス板2が左側へと移動していく。この際、ガラス板2はフリップ8の方へと寄り掛かっているが、ガラス板2の背面が球面ローラ13により支持されているので、ガラス板2は、後側や前側に倒れることなく滑らかに移動することができる。
【0060】
ガラス板2を左側へと移動させていくと、ガラス板2は、やがてラック21の挿入口21aに挿入される(つまり、ラック21に搬入される)。更に、移動させていくと、ガラス板2の上端部が挿入口21aに1番近い梁部材28にある案内ローラ28a(図19において、手前側の案内ローラ28a)によって案内され、この案内ローラ28aと隣接する案内ローラ28aとの間に嵌挿される。このようにガラス板2の上端部が2つの案内ローラ28aの間に嵌挿されることで、ガラス板2は、案内ローラ28aによって倒れないように支持される。
【0061】
嵌挿された後も、制御装置20は、回動連動機構19により駆動部材18を反時計回りに回動させ、ガラス板2を左側へとスライド移動させる。ガラス板2が更に真直ぐ左側に進んでいくことで、更に左奥にある他の梁部材28の案内ローラ28aの間にガラス板2の上端部が次々と嵌挿されていく(図17乃至図19参照)。その後も、制御装置20は、回動連動機構19により駆動部材18を反時計回りに回動させる。ガラス板2が収納位置まで達すると、制御装置20は、回動連動機構19を制御して駆動部材18の回動を止める。
【0062】
このようにガラス板2を収納位置まで移動させると、ガラス板2が2つの支持部材26上に跨るように位置している。ここまで移動させると、制御装置20は、スライド昇降機構17によりスライド部材16を下降させ、各支持部材にある隣接する2つのセパレータ26aの間にガラス板2の下端部をゆっくりと落とし込み、そしてガラス板2の下端部を支持部材26に支持させる(図20参照)。このように、ガラス板2は、その下端部が支持部材26により下から支持され、また上端部が案内ローラ28aによって倒れないように支持されることで、ラック21に収納される。ガラス板2をラックに収納した後も、制御装置20は、スライド昇降機構17によりスライド部材16を下降させる。全ての駆動部材18が下端側支持体23の下側に抜けると、制御装置20は、スライド部材16の下降動作を止める。そして、制御装置20は、スライド昇降機構17によりスライド部材16を右側にスライド移動させてスライド部材16を中央まで戻す。
【0063】
<ガラス板の取出し動作>
次に、反対側のラック21(つまり右側のラック21)からガラス板2を取り出す(つまり、ラック21からガラス板2を搬出する)場合のストッカ4の動作について、図1、図2、及び図21乃至図29を参照しながら説明する。制御装置20は、スライド部材16を中央まで戻した後もそのまま右側にスライド移動させ右側のラック21の下側に潜らせる。ガラス板2の右端を支持している支持部材26(本実施形態では、左から2番目の支持部材26)までスライド部材16の右端が到達すると、制御装置20は、スライド昇降機構17の動作を制御してスライド部材16のスライド移動を止める(図21参照)。この際、制御装置20は、下端側支持体23に潜らせた部分にある凹所16bが支持部材26に平面視で重なるようにスライド昇降機構17の動作を制御する。
【0064】
その後、制御装置20は、スライド昇降機構17によりスライド部材16を上昇させ、左側にある2つの支持部材26の間にスライド部材16の凸部16aを挿入させる。そのまま上昇させて前記2つの支持部材26の間から駆動部材18を突出させて表出させると、ラック21に収納されたガラス板2が駆動部材18の上に載る。制御装置20は、その後もスライド部材16を上昇させ、駆動部材18をセパレータ26aの上面と面一となる位置よりも少しだけ高い位置まで上昇させると、スライド昇降機構17の動作を制御してスライド部材16の上昇を止める。これにより、ガラス板2が載せられたスライド部材16がラック21とフリップ8との間に渡される。つまり、スライド部材16がラック21内に延在する。このようにスライド部材16をラック21内に延在させると、ガラス板2をラック21内の奥の方まで移動させることができるようになり、ラック21内に搬送機構を設ける必要が無くなる。これにより、ストッカ設備1の部品点数を削減することができ、ストッカ設備の製造コストを低減することができる。
【0065】
スライド部材16の上昇を止めた後、制御装置20は、回動連動機構19により駆動部材18を反時計回りに回動させ、その上に載せられたガラス板2を左側へと移動させる(図22及び図23参照)。この際、ガラス板2は、その上端が案内ローラ28aによって支持されながら左側に移動していく。やがて、ガラス板2の左端側がフリップ8に達すると、左端側が球面ローラ13上に寄り掛かり、球面ローラ13によって支持される。ガラス板2の右端側もラック21から抜けると、ガラス板2は、球面ローラ13だけで支持されるようになり、そのままフリップ8上の所定の位置まで移動させられる(図24参照)。ガラス板2が所定の位置まで移動すると、制御装置20は、回動連動機構19の動作を制御して駆動部材18の回動を止める。
【0066】
駆動部材18を止めた後、制御装置20は、シリンダにより支持部14を上昇させ、支持部14にガラス板2を載せる。制御装置20は、そのまま支持部14を上昇させ続けてガラス板2を駆動部材18から離し、離れるとシリンダの動作を制御して支持部14の上昇を止める(図25参照)。その後、制御装置20は、フリップ駆動機構10によりフリップ8を角度αまで倒してから基台駆動機構6により基台5を後側にスライド移動させる(図26参照)。基台5がホイールコンベア3まで到達すると、制御装置20は、基台駆動機構6の動作を制御して基台5のスライド移動を止め、更にフリップ駆動機構10の動作を制御してフリップ8を水平な状態になるまで倒す。
【0067】
フリップ8の姿勢が水平な状態になると、制御装置20は、球面ローラ13がホイール軸のローラと面一又はそれよりも下側に位置するところまでヒンジ昇降機構7によりフリップ8を下降させ、ガラス板2をホイールコンベア3上に載せる(図27参照)。その後、ホイールコンベア3は、スライド装置3cによりガラス板2を後側に移動させて幅方向中央に戻す(図28参照)。戻した後、ホイールコンベア3は、ガラス板2を下流側へと移動させる(図29参照)。
【0068】
このようにストッカ設備1は、フリップ8とラック21との間に渡されたスライド部材16によりガラス板2をスライド移動させてラック21の挿入口21aに挿入することで、ガラス板2をラック21に収納することができる。この際、フリップ8により支持されているので、ガラス板2を倒すことなく立てた状態でラック21に収納することができる。また、ラック21に立てた状態で収納されるガラス板2を、フリップ8とラック21との間に渡されたスライド部材16によりスライド移動させてラック21から取り出すことができる。
【0069】
このようにスライド部材16によりガラス板2を左右方向に移動させて受け渡しするので、ガラス板2を搬入及び搬出する際に、スライド部材16やフリップ8をラック21の挿入口21aに直に挿入する必要がない。これにより、ストッカ設備1の設置面積を低減すべくガラス板2同士の間隔を狭くしてガラス板2の収納ピッチを密にしても、従来技術のような収納されたガラス板2とエンドエフェクトとが接触して損傷させるような事態を生じることなく、2つのガラス板2の間に新たなガラス板2を搬入し、また並んでいる複数のガラス板2の中から何れのガラス板2でも搬出することができる。それ故、確実にかつ迅速にラック21に対するガラス板2の搬入及び搬出を行なうことができる。
【0070】
また、本実施形態のストッカ設備1では、ホイールコンベア3上を移動するガラス板2をストッカ4が下から掬って立て、そしてその状態でガラス板2を動かすようになっているので、フリップ8がガラス板2の上面(又は前面)に触れることがない。太陽光パネルや液晶パネルの場合、様々な構成がガラス板2の一表面に集められているので、ガラス板2の裏側だけに触れることができる。ストッカ設備1では、一表面を上にしてホイールコンベア3上を移動してくるガラス板2を下から掬って立てて、その状態のままガラス板2を動かす。それ故、ストッカ設備1では、ガラス板2をその一表面を上(又は前)にしてホイールコンベア3とラック21との間を移動させることができ、ガラス板2上の構成を損傷させることなくガラス板2を移動させることができる。
【0071】
また、本実施形態のストッカ設備1では、スライド昇降機構17によりスライド部材16を昇降させることで、ガラス板2とラック21の下端側支持体23との上下方向に位置を調整することができる。このように調整することができるので、制御装置20は、ラック21にガラス板2を受け渡しする際、スライド昇降機構17によりスライド部材16の駆動部材18をセパレータ26aと面一となる位置よりも若干高くしてガラス板2をスライド移動させ、収納位置に達したところでガラス板2をゆっくりと下降させている。このようにガラス板2を下降させることにより、スライド部材16とセパレータ26aとの間の段差をなくすことができ、ガラス板2が落下することを防ぐことができる。また、ガラス板2をセパレータ26aより高くすることで、受け渡しする際にガラス板2がラック21上を摺りながら移動することを防ぐことができ。それ故、収納中にガラス板2が損傷したり、粉塵が発生したりすることを抑えられる。
【0072】
更に、本実施形態のストッカ設備1では、ストッカ4とラック21との間でガラス板2の受け渡しをする際、間隔をあけて配置される2つの支持部材26の間に凸部16aを入れている。それ故、駆動部材18が支持部材26の間から表出させることができる。これにより、ラック21内でもガラス板2を左右方向にスムーズに移動させることができ、ラック21とフリップ8との間のガラス板2の受け渡しをスムーズに行うことができる。
【0073】
なお、必ずしも、本実施形態のようにスライド部材16の一部をラック21に潜らせて重ねるような構成でなくても、収納位置までガラス板2を送ることができる。例えば、スライド部材16の端部をラック21の手前までスライド移動させてスライド部材16をラック21とフリップ8との間に渡すような構成であってもよい。この際、スライド部材16とラック21との間に隙間があっても、ラック21とスライド部材16との間でガラス板2を受け渡しできるような隙間であればよい。
【0074】
本実施形態のストッカ設備1では、フリップ8が複数の球面ローラ13によりガラス板2を支持している。それ故、駆動部材18によりガラス板2をスライド移動させる際、ガラス板2をフリップ8に立て掛けたままスライド移動させても滑らかに動かすことができ、これによりラック21とフリップ8との間でガラス板2を受け渡しする際、ガラス板2が倒れることを防ぐことができる。また、フリップ8の支持板12上を摺動させるとガラス板2が損傷したり、粉塵が発生したりするが、そのようなことも防ぐことができる。
【0075】
[その他の実施形態]
本実施形態において、基台5を動かす際、ガラス板2が支持板12に支持されているだけであるが、支持板12に吸着機構を設けてガラス板2を吸着するようにしてもよい。また、吸着機構でなくチャック等を設けて、基台5を動かすときだけガラス板2をフリップ8に把持させるような構成であってもよい。
【0076】
また、本実施形態では、基台5を動かす際のフリップ8の傾きを角度αにしているが、必ずしもそのような角度に摺る必要はない。フリップ8の傾きを角度βにしてもよい。この際、制御装置20が基台駆動機構6の動作を制御し、基台5の移動速度を遅くすることによってガラス板2が引き起こす風の風量を抑えることができる。
【0077】
また、前述するように駆動部材18は、ローラに限らず、ベルト機構であってもよく、ガラス板2を左方向又は右方向にスライド移動させることができる構成であればよい。また、本実施形態では、フリップ8を角度αまで起こしたり倒したりしてから基台5をスライド移動させているが、基台5をスライド移動する際、必ずしもそのような動作をする必要はない。フリップ8を倒したまま基台5をスライド移動させて収納位置の前に到着した後に角度βまで起こしてもよい。また、収納されたガラス板2を受け取った後、フリップ8を角度βにしたまま基台5をスライド移動させてもよい。
【0078】
また、ラック21には、案内ローラ28aが設けられているが、必ずしもローラである必要ない。例えば、セパレータ26aのような構成であってもよく、隣接して収納される2つのガラス板2を離しておくことができるような構成であればよい。またラック21も上述するような形状でなくてもよい。
【0079】
本実施形態では、搬送機構15が2つのラック21の間に設けられているが、必ずしもその位置に限定されず、例えば、ラック21の下に設けられてもよい。この場合、各ラック21の下に基台5と同じ構成を有する別の移送装置が設けられ、搬送機構15は、この移送装置により前後方向に移動可能に構成されている。この場合、基台5と移送装置により移送機構が構成されている。このように構成されるストッカ設備では、搬送機構15のスライド部材16がラック21の下からフリップ8の方へとスライド移動し、スライド部材16によってラック21とフリップ8との間の受け渡しすることができる。
【0080】
また、本実施形態では、スライド昇降17は、スライド部材16を搬送方向にスライド移動するスライド機能を有しているが、必ずしもスライド機能を有していなくてもよい。この場合、ラック21の下にもガラス板2を左右方向に送ることができる駆動部材を有する構造体を設ける。これにより、スライド部材16の駆動部材18によってラック21に送られてくるガラス板12を、ラック21に設けられた駆動部材によってラック21内でスライドさせることができる。更に、前述する移送機構を設けて構造体を前後方向に移動可能に構成し、スライド部材16に対応させて前後方向に移動させることで、ガラス板2の収納位置毎に駆動部材を設ける必要がなくなり、部品点数を少なくすると共にガラス板2をより密に収納することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、板状部材を並べて収納可能なラックと、前記ラックに板状部材を挿入するストッカとを備えるストッカ設備に適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 ストッカ設備
2 ガラス板
4 ストッカ
5 基台
6 基台駆動機構
7 ヒンジ昇降機構
8 フリップ
10 フリップ駆動機構
13 球面ローラ
14 支持部
15 搬送機構
16 スライド部材
16a 凸部
16b 凹所
17 スライド昇降機構
18 駆動部材
19 回動連動機構
20 制御装置
21 ラック
26 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部で支持されて搬送方向に延在するように立てられた複数の板状部材を前記搬送方向に交差する配列方向に並べて収納し、且つ前記複数の板状部材を前記搬送方向に夫々搬入及び搬出可能に構成されたラックと、
前記板状部材を前記搬送方向に前記ラックに搬入し又は前記ラックから搬出する板状部材移載機構とを備える板状部材移載設備であって、
前記板状部材移載機構は、
前記板状部材を支持し、前記搬送方向に平行な回動軸線回りに回動可能なフリップを有し、前記フリップを回動させて前記板状部材を立て又は倒すフリップ回動機構と、
前記搬送方向に延在し、立った状態の前記板状部材を前記搬送方向に送る送り部が形成された搬送体を有する搬送機構と、
前記フリップ回動機構及び前記搬送機構を前記配列方向に移動させる移送機構と、を備えており、
前記搬送機構は、前記送り部により前記ラックと前記フリップとの間で前記板状部材を立った状態で受け渡しするように構成されている、板状部材移載設備。
【請求項2】
前記搬送機構は、前記搬送体を前記フリップ側から搬送方向に移動させて前記ラック内まで延在させることができるように構成されている、請求項1に記載の板状部材移載設備。
【請求項3】
前記搬送機構は、前記搬送体を前記上下方向に移動可能に構成されている、請求項1又は2に記載の板状部材移載設備。
【請求項4】
前記ラックは、複数の前記支持部が前記搬送方向に間隔をあけて配置され、
前記搬送体の送り部は、該搬送体の前記搬送方向に点在するように配設された前記板状部材を前記搬送方向に送る複数の駆動部材を有し、
前記搬送体には、前記複数の支持部に対応させて複数の凹部が形成され、隣接する該凹部の間に形成された凸部に少なくとも1つの前記駆動部材が設けられている、請求項3に記載の板状部材移載設備。
【請求項5】
前記搬送機構は、前記搬送体が前記ラックの搬送方向手前側にある基準位置において前記凸部の上端が前記ラックの支持部より低く位置するように前記搬送体を位置させ、前記基準位置から前記搬送方向に前記搬送体を移動させて前記凹部を前記ラックの支持部の下方に位置させ、そこから前記搬送位置を上昇させて前記駆動部材の上端が前記ラックの支持部より高く位置せるように構成されている、請求項4に記載の板状部材移載設備。
【請求項6】
前記フリップには、前記フリップを立てたときに前記板状部材を支持する支持部が設けられ、
前記搬送機構は、前記搬送体が上昇すると、前記支持部に支持されている前記板状部材が前記駆動部材に載るように構成されている、請求項5に記載の板状部材移載設備。
【請求項7】
前記フリップは、転動可能な複数の球面ローラを有し、前記複数の球面ローラにより前記板状部材の背面を支持するように構成されている、請求項1乃至6の何れか1つに記載の板状部材移載設備。
【請求項8】
前記フリップ回動機構は、移動する際に前記フリップを回動させて該フリップに支持された前記板状部材を倒すように構成されている、請求項1乃至7の何れか1つに記載の板状部材移載設備。

【図1】
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【図8】
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【図9】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2012−17203(P2012−17203A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157070(P2010−157070)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】