説明

架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シート及び粘着テープ

【課題】 本発明は、優れた柔軟性及び耐熱性を保持しつつ厚みを薄くすることができる架橋ポリオレフィン系樹脂押出発泡シートを提供する。
【解決手段】 本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートは、ポリオレフィン系樹脂及び熱分解型発泡剤を押出機に供給して溶融混練し、押出機からシート状に押出すことによって形成された発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを発泡させて得られた架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、該架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの架橋度が5〜60重量%で且つ気泡のアスペクト比(MDの平均気泡径/CDの平均気泡径)が0.25〜1であり、上記ポリオレフィン系樹脂は、重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂を40重量%以上含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた柔軟性、耐熱性を有する架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シート及び上記架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートを用いた粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からポリオレフィン系樹脂発泡シートは広範囲な用途に用いられており、この用途としては、例えば、粘着テープの基材、貼付剤の基材の他に、電子機器用のシール材などが挙げられる。そして、これら用途において、ポリオレフィン系樹脂発泡シートは、その厚みを薄くすることと、柔軟性が求められている。
【0003】
このようなポリオレフィン系樹脂発泡シートとしては、特許文献1に、ポリオレフィン系樹脂に無機充填材を添加した上でシート化し、このシートを延伸して多孔化することによって柔軟性及び機械的強度を向上させてなる多孔性シートが提案されている。
【0004】
しかしながら、上記多孔性シートは、その高発泡倍率化が困難であることから、充分な柔軟性を有するものではなく、更に、上記多孔性シートには架橋処理が施されていないことから、多孔性シートを構成しているポリオレフィン系樹脂の融点以上での延伸処理ができないことから、延伸処理中に多孔性シートに歪みが発生し、多孔性シートが使用中に収縮してしまうといった問題点があった。
【0005】
又、ポリオレフィン系樹脂発泡シートとしては、特許文献2に、所定密度を有する超密度ポリエチレン樹脂と発泡剤からなり、1Mrad以下の電子線を照射したシート状物を発泡させて得られた架橋エチレン系樹脂発泡体が提案されている。
【0006】
しかしながら、上記架橋エチレン系樹脂発泡体も充分な柔軟性及び耐熱性を有するものではなく、そこで、発泡倍率を高くして柔軟性を向上させることも考えられるが、発泡倍率を高くすると厚い発泡体しか得ることができないといった問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平7−64942号公報
【特許文献2】特公平6−76505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、優れた柔軟性及び耐熱性を保持しつつ厚みを薄くすることができる架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シート及び上記架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートを用いた粘着テープを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートは、ポリオレフィン系樹脂及び熱分解型発泡剤を押出機に供給して溶融混練し、押出機からシート状に押出すことによって形成された長尺状の発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを発泡させて得られた長尺状の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、該長尺状の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの架橋度が5〜60重量%で且つ気泡のアスペクト比が所定範囲内にあり、上記ポリオレフィン系樹脂は、重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂を40重量%以上含有することを特徴とする。
【0010】
上記架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートを構成するポリオレフィン系樹脂は、重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂を40重量%以上含有するものであれば、特には限定されず、重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂のみからなるもの、又は、重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂と他のポリオレフィン系樹脂とからなるものの何れであってもよい。
【0011】
そして、ポリオレフィン系樹脂中における、重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂の含有量は、40重量%以上に限定され、50重量%以上が好ましく、60重量%以上がより好ましく、100重量%が特に好ましい。なお、上記メタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂の含有量が100重量%とは、ポリオレフィン系樹脂として、上記メタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂のみを用いた場合を意味する。
【0012】
ポリオレフィン系樹脂中における、上記メタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂の含有量が40重量%以上に限定される理由を説明する。第一の理由は下記の通りである。
【0013】
架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートは、後述するように、発泡シートを発泡させつつ或いは加熱下にて所定方向に延伸することによって製造される。この発泡シートの延伸時においては、発泡シートの気泡は延伸方向に延ばされて気泡壁同士が近接した状態となるので、ポリオレフィン系樹脂に粘着性を有する樹脂(例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体)を用いると、気泡壁同士が互いに密着一体化してしまい、所望範囲の気泡のアスペクト比を得ることができない。一方、本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートには柔軟性が求められている。
【0014】
そこで、ポリオレフィン系樹脂として、上記メタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂を40重量%以上含有するものを用いることによって、ポリオレフィン系樹脂に粘着性を増加させることなく柔軟性を付与し、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの気泡のアスペクト比を所定範囲内として機械的強度を向上させていると共に柔軟性を優れたものとしている。
【0015】
第二の理由は下記の通りである。上記メタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂は、その分子量分布が狭く、共重合体の場合、どの分子量成分にも共重合体成分がほぼ等しい割合で導入されている。従って、発泡シートを均一に架橋させることができる。そして、発泡シートを均一に架橋させていることから発泡シートを均一に延伸させることができ、得られる架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの厚みを全体的に均一なものとすることができるからである。
【0016】
上記重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂としては、重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて、エチレンと少量のα−オレフィンとを共重合することにより得られる直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。
【0017】
なお、上記α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンなどが挙げられる。
【0018】
又、メタロセン化合物とは、一般に、遷移金属をπ電子系の不飽和化合物で挟んだ構造の化合物をいい、ビス(シクロペンタジエニル)金属錯体が代表的なものである。
【0019】
そして、本発明における四価の遷移金属を含むメタロセン化合物としては、具体的には、チタン、ジルコニウム、ニッケル、パラジウム、ハフニウム、白金などの四価の遷移金属に、1又は2以上のシクロペンタジエニル環又はその類縁体がリガンド(配位子)として存在する化合物が挙げられる。
【0020】
上記リガンドとしては、例えば、シクロペンタジエニル環;炭化水素基、置換炭化水素基又は炭化水素−置換メタロイド基により置換されたシクロペンタジエニル環;シクロペンタジエニルオリゴマー環;インデニル環;炭化水素基、置換炭化水素基又は炭化水素−置換メタロイド基により置換されたインデニル環などが挙げられる。これらのπ電子系の不飽和化合物以外にも、リガンドとして、塩素や臭素などの一価のアニオンリガンド又は二価のアニオンキレートリガンド、炭化水素、アルコキシド、アリールアミド、アリールオキシド、アミド、アリールアミド、ホスフィド、アリールホスフィドなどが遷移金属原子に配位結合していてもよい。
【0021】
更に、シクロペンタジエニル環に置換する炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、セチル基、フェニル基などが挙げられる。
【0022】
このような四価の遷移金属を含むメタロセン化合物としては、例えば、シクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、メチルシクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−t−ブチルアミドジルコニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−t−ブチルアミドハフニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−p−n−ブチルフェニルアミドジルコニウムクロリド、メチルフェニルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−t−ブチルアミドハフニウムジクロリド、インデニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、インデニルチタニウムトリス(ジエチルアミド)、インデニルチタニウムトリス(ジ−n−プロピルアミド)、インデニルチタニウムビス(ジ−n−ブチルアミド)(ジ−n−プロピルアミド)などが挙げられる。
【0023】
上記メタロセン化合物は、金属の種類や配位子の構造を変え、特定の共触媒(助触媒)と組み合わせることにより、各種オレフィンの重合の際、触媒としての作用を発揮する。具体的には、重合は、通常、これらメタロセン化合物に共触媒としてメチルアルミノキサン(MAO)、ホウ素系化合物などを加えた触媒系で行われる。なお、メタロセン化合物に対する共触媒の使用割合は、10〜1,000,000モル倍が好ましく、50〜5,000モル倍がより好ましい。
【0024】
そして、ポリエチレン系樹脂の重合方法としては、特に限定されず、例えば、不活性媒体を用いる溶液重合法、実質的に不活性媒体の存在しない塊状重合法、気相重合法などが挙げられる。なお、重合温度は、通常、−100℃〜300℃で行なわれ、重合圧力は、通常、常圧〜100kg/cm2で行なわれる。
【0025】
メタロセン化合物は、活性点の性質が均一であり各活性点が同じ活性度を備えているため、合成するポリマーの分子量、分子量分布、組成、組成分布などの均一性が高まる。従って、これらメタロセン化合物を重合触媒として用いて重合されたポリオレフィン系樹脂は、分子量分布が狭く、共重合体の場合、どの分子量成分にも共重合体成分がほぼ等しい割合で導入されているという特徴を有する。
【0026】
更に、重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂以外のポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などが挙げられる。
【0027】
上記ポリエチレン系樹脂としては、重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂以外であれば、特には限定されず、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンを50重量%以上含有するエチレン−α−オレフィン共重合体、エチレンを50重量%以上含有するエチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられ、これらは単独で使用されても二種以上が併用されてもよい。エチレン−α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンなどが挙げられる。
【0028】
又、上記ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、プロピレンを50重量%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体などが挙げられ、これらは単独で使用されても二種以上が併用されてもよい。プロピレン−α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンなどが挙げられる。
【0029】
そして、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの架橋度は、小さいと、発泡シートを延伸する際に発泡シートの表面近傍部の気泡が破泡して表面荒れを生じ、得られる架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの外観性が低下する一方、大きいと、発泡性ポリオレフィン系樹脂組成物の溶融粘度が大きくなり過ぎて、発泡性ポリオレフィン系樹脂組成物を加熱発泡する際に発泡性ポリオレフィン系樹脂組成物が発泡に追従し難くなって所望の発泡倍率を有する架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートが得られないので、5〜60重量%に限定され、10〜40重量%が好ましい。
【0030】
なお、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの架橋度は下記の要領で測定されたものをいう。架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートから約100mgの試験片を採取し、試験片の重量A(mg)を精秤する。次に、この試験片を120℃のキシレン30cm3中に浸漬して24時間放置した後、200メッシュの金網で濾過して金網上の不溶解分を採取、真空乾燥し、不溶解分の重量B(mg)を精秤する。得られた値から、下記式により架橋度(重量%)を算出する。
架橋度(重量%)=100×(B/A)
【0031】
更に、上記架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートは、その気泡のアスペクト比(MDの平均気泡径/CDの平均気泡径)が0.25〜1であるか、或いは、気泡のアスペクト比(CDの平均気泡径/VDの平均気泡径)が2〜18であることが必要であり、気泡のアスペクト比(MDの平均気泡径/CDの平均気泡径)が0.25〜1であり且つ気泡のアスペクト比(CDの平均気泡径/VDの平均気泡径)が2〜18であることが好ましい。
【0032】
詳細には、上記架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートにおけるMDの平均気泡径とCDの平均気泡径との比、即ち、気泡のアスペクト比(MDの平均気泡径/CDの平均気泡径)は、小さいと、発泡倍率が低下して柔軟性が低下したり或いは架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの厚み、柔軟性及び引張強度にばらつきが発生することがある一方、大きいと、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの柔軟性が低下するので、0.25〜1が好ましく、0.25〜0.60がより好ましい。
【0033】
又、上記架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートにおけるCDの平均気泡径とVDの平均気泡径との比、即ち、気泡のアスペクト比(CDの平均気泡径/VDの平均気泡径)は、小さいと、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの柔軟性が低下する一方、大きいと、発泡倍率が低下して柔軟性が低下したり或いは架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの厚み、柔軟性及び引張強度にばらつきが発生することがあるので、2〜18が好ましく、2.5〜15がより好ましい。
【0034】
ここで、図1に示したように、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シート1のMD〔machine direction〕とは押出方向をいい、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シート1のCD〔crossing direction〕とは、MD(machine direction)に直交し且つ架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シート1の表面に沿った方向をいい、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シート1のVD〔vertical(thickness) direction)とは、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シート1の表面に対して直交する方向をいう。
【0035】
次に、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートのMDの平均気泡径は下記の要領で測定されたものをいう。即ち、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートをそのCDにおける略中央部においてVDに平行な面で全長に亘って切断する。
【0036】
しかる後、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて60倍に拡大し、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートのVDの全長が収まるように写真撮影する。
【0037】
得られた写真における、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートのVDの中央部に対応する部分に、写真上での長さが15cm(拡大前の実際の長さ2500μm)の直線を、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シート表面と平行になるように描く。
【0038】
次に、上記直線上に位置する気泡数を目視により数え、下記式に基づいて気泡のMDの平均気泡径を算出する。
MDの平均気泡径(μm)=2500(μm)/気泡数(個)
【0039】
又、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートのVDの平均気泡径は下記の要領で測定されたものをいう。即ち、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートのMDの平均気泡径を算出する際の要領と同様の要領で写真撮影を行なう。
【0040】
得られた写真において、写真撮影された架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの切断面をMDに四分割する三本の直線を、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの表面に対して直交する方向(VD)に発泡シートの全長に亘って描く。
【0041】
しかる後、各直線の長さを測定すると共に各直線上に位置する気泡数を目視により数え、下記式に基づいて各直線毎に気泡のVDの平均気泡径を算出し、これらの相加平均を気泡のVDの平均気泡径とする。
VDの平均気泡径(μm)=写真上における直線の長さ(μm)
/(60×気泡数(個))
【0042】
次に、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートのCDの平均気泡径は下記の要領で測定されたものをいう。即ち、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートをそのCDに平行で且つ架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの表面に対して直交する方向(VD)に平行な面で厚み方向の全長に亘って切断する。
【0043】
しかる後、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて60倍に拡大し、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの厚み方向の全長が収まるように写真撮影する。
【0044】
そして、得られた写真に基づいて、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートのMDの平均気泡径を測定した時と同様の要領で、CDの平均気泡径を算出する。
【0045】
なお、上述の平均気泡径を測定する要領において、直線上に位置する気泡数を数えるにあたっては、写真上に表れた気泡断面のみに基づいて気泡径を判断する。
【0046】
即ち、気泡同士は、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの切断面においては気泡壁によって互いに完全に分離しているように見えても、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの切断面以外の部分において互いに連通しているような場合もあるが、本発明においては、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの切断面以外の部分において互いに連通しているか否かについて考慮せず、写真上に表れた気泡膜断面のみに基づいて気泡形態を判断し、写真上に表れた気泡膜断面により完全に囲まれた一個の空隙部分を一個の気泡として判断する。
【0047】
そして、直線上に位置するとは、直線が気泡を該気泡の任意の部分において完全に貫通している場合をいい、又、直線の両端部においては、直線が気泡を完全に貫通することなく直線の端部が気泡内に位置した状態となっているような場合には、この気泡を0.5個として数えた。
【0048】
なお、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの切断面を写真撮影する際、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの切断面を着色すると気泡の判別が容易になると共に、2500μmの目盛りを一緒に拡大して写真撮影しておくと、写真上における直線長さを特定し易くなる。
【0049】
又、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートのJIS K6767に準拠した25%圧縮強度は、大きいと、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの感触が低下したり或いは衝撃吸収性が低下することがあるので、4.9×104Pa以下が好ましく、小さ過ぎると、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートを巻き取る際に厚み方向に押し潰されてしまって厚みが減少することがあるので、2×104〜4×104Paがより好ましい。
【0050】
更に、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートにおけるMD又はCDの少なくとも一方向における23℃での引張強度は、小さいと、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートを粘着テープの基材として用いた場合、使用中に架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートが切断する虞れがあるので、1.96×106Pa以上が好ましく、大き過ぎると、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートを粘着テープの基材として用いた場合に、粘着テープを手で切断し難くなって取り扱い性が低下することがあるので、2.2×106〜8.0×106Paがより好ましい。
【0051】
なお、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートのMD又はCDにおける23℃での引張強度は、JIS K6767に準拠して測定されたものをいう。
【0052】
又、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの90℃におけるMDの加熱寸法変化率は、小さいと、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートを粘着テープの基材として用いた場合、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの耐熱性が低下して熱が加わった時に粘着テープが収縮して粘着テープが貼着位置からずれてしまう虞れがあるので、−10%以上が好ましく、大き過ぎると、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートを粘着テープの基材として用いた場合、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートに熱が加わった時に粘着テープが膨張して貼着位置からずれてしまう虞れがあるので、−10〜5%がより好ましく、−2.0〜2.0%が特に好ましい。
【0053】
なお、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの90℃におけるMDの加熱寸法変化率は、測定温度を90℃とした以外はJIS K6767に準拠して測定されたものをいう。
【0054】
次に、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法について説明する。上記架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法としては、特に限定されず、例えば、(1) 重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂を40重量%以上含有するポリオレフィン系樹脂及び熱分解型発泡剤を押出機に供給して溶融混練し、押出機からシート状に押出すことによって発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを製造する工程と、この発泡性ポリオレフィン系樹脂シートに電離性放射線を照射して発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを5〜60重量%の架橋度に架橋させる工程と、架橋させた発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを加熱、発泡させ、得られた発泡シートを発泡時の溶融状態を維持したままMD或いはCDの何れか一方又は双方の方向に向かって延伸させて発泡シートの気泡を延伸し、気泡のアスペクト比(MDの平均気泡径/CDの平均気泡径)が0.25〜1又は気泡のアスペクト比(CDの平均気泡径/VDの平均気泡径)が2〜18である架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートを製造する工程とを含有することを特徴とする架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法、(2) 重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂を40重量%以上含有するポリオレフィン系樹脂、熱分解型発泡剤及び有機過酸化物を押出機に供給して溶融混練し、押出機からシート状に押出すことによって発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを製造する工程と、この発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを加熱して有機過酸化物を分解させ、発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを5〜60重量%の架橋度に架橋させつつ発泡させる工程と、得られた発泡シートを発泡時の溶融状態を維持したままMD或いはCDの何れか一方又は双方の方向に向かって延伸させて発泡シートの気泡を延伸し、気泡のアスペクト比(MDの平均気泡径/CDの平均気泡径)が0.25〜1又は気泡のアスペクト比(CDの平均気泡径/VDの平均気泡径)が2〜18である架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートを製造する工程とを含有することを特徴とする架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法、(3) 重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂を40重量%以上含有するポリオレフィン系樹脂及び熱分解型発泡剤を押出機に供給して溶融混練し、押出機からシート状に押出すことによって発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを製造する工程と、この発泡性ポリオレフィン系樹脂シートに電離性放射線を照射して、発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを5〜60重量%の架橋度に架橋させる工程と、架橋させた発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを加熱、発泡させた後に冷却して発泡シートを製造する工程と、この発泡シートを再度、加熱して溶融又は軟化状態とする工程と、上記発泡シートをMD或いはCDの何れか一方又は双方の方向に向かって延伸させて発泡シートの気泡を延伸し、気泡のアスペクト比(MDの平均気泡径/CDの平均気泡径)が0.25〜1又は気泡のアスペクト比(CDの平均気泡径/VDの平均気泡径)が2〜18である架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートを製造する工程とを含有することを特徴とする架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法、(4) 重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂を40重量%以上含有するポリオレフィン系樹脂、熱分解型発泡剤及び有機過酸化物を押出機に供給して溶融混練し、押出機からシート状に押出すことによって発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを製造する工程と、この発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを加熱して有機過酸化物を分解させ、発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを5〜60重量%の架橋度に架橋させつつ発泡させた後に冷却して発泡シートを製造する工程と、この発泡シートを再度、加熱して溶融又は軟化状態とする工程と、上記発泡シートをMD或いはCDの何れか一方又は双方の方向に向かって延伸させて発泡シートの気泡を延伸し、気泡のアスペクト比(MDの平均気泡径/CDの平均気泡径)が0.25〜1又は気泡のアスペクト比(CDの平均気泡径/VDの平均気泡径)が2〜18である架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートを製造する工程とを含有することを特徴とする架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法などが挙げられる。
【0055】
上記熱分解型発泡剤としては、従来から発泡体の製造に用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、アゾジカルボンアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p−トルエンスルホニルセミカルバジドなどが挙げられ、アゾジカルボンアミドが好ましい。なお、熱分解型発泡剤は単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0056】
そして、発泡性ポリオレフィン系樹脂組成物中における熱分解型発泡剤の添加量は、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの発泡倍率に応じて適宜決定してよいが、少ないと、発泡性ポリオレフィン系樹脂シートの発泡性が低下し、所望発泡倍率を有する架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートを得ることができないことがある一方、多いと、得られる架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの引張強度及び圧縮回復性が低下することがあるので、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して1〜40重量部が好ましく、1〜30重量部がより好ましい。
【0057】
なお、発泡性ポリオレフィン系樹脂組成物には、必要に応じて、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールなどの酸化防止剤、酸化亜鉛などの発泡助剤、気泡核調整材、熱安定剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、充填材などが、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの物性を損なわない範囲で添加されていてもよい。
【0058】
そして、発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを架橋する方法としては、例えば、発泡性ポリオレフィン系樹脂シートに電子線、α線、β線、γ線などの電離性放射線を照射する方法、発泡性ポリオレフィン系樹脂組成物に予め有機過酸化物を配合しておき、得られた発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを加熱して有機過酸化物を分解させる方法などが挙げられ、これらの方法は併用されてもよい。
【0059】
上記有機過酸化物としては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ベンゾイルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネートなどが挙げられ、これらは単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0060】
そして、有機過酸化物の添加量は、少ないと、発泡性ポリオレフィン系樹脂シートの架橋が不充分となることがある一方、多いと、得られる架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シート中に有機過酸化物の分解残渣が残留することがあるので、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、0.01〜5重量部が好ましく、0.1〜3重量部がより好ましい。
【0061】
又、発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを発泡させる方法としては、特には限定されず、例えば、熱風により加熱する方法、赤外線により加熱する方法、塩浴による方法、オイルバスによる方法などが挙げられ、これらは併用してもよい。
【0062】
そして、上記発泡シートの延伸は、発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを発泡させて発泡シートを得た後に行ってもよいし、或いは、発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを発泡させつつ行ってもよい。なお、発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを発泡させて発泡シートを得た後、発泡シートを延伸する場合には、発泡シートを冷却することなく発泡時の溶融状態を維持したまま続けて発泡シートを延伸しても、或いは、発泡シートを冷却した後、再度、発泡シートを加熱して溶融又は軟化状態とした上で発泡シートを延伸してもよい。
【0063】
ここで、発泡シートの溶融状態とは、発泡シートをその両面温度が、発泡シートを構成しているポリオレフィン系樹脂の融点以上に加熱した状態をいう。なお、ポリオレフィン系樹脂の融点(℃)とは、示差走査熱量分析(DSC)で熱量分析を行った際に得られる、結晶の融解に伴う吸熱ピークのうち最大ピークの温度をいう。
【0064】
又、発泡シートの軟化状態とは、発泡シートをその両面温度T(℃)が下記式を満たす温度に加熱した状態をいう。なお、ポリオレフィン系樹脂の軟化点(℃)とは、ASTM D1525に基づいて測定されたビカット軟化点(vicat softing point)をいう。
ポリオレフィン系樹脂の軟化点−10℃≦T≦ポリオレフィン系樹脂の軟化点+10℃
【0065】
上記発泡シートを延伸することによって、発泡シートの気泡を所定方向に延伸し変形させて、気泡のアスペクト比が所定範囲内となった架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートを製造することができる。
【0066】
更に、発泡シートの延伸方向にあたっては、長尺状の発泡性ポリオレフィン系樹脂シートのMD若しくはCDに向かって、又は、MD及びCDに向かって延伸させる。なお、発泡性ポリオレフィン系樹脂シートをMD及びCDに向かって延伸させる場合、発泡シートをMD及びCDに向かって同時に延伸してもよいし、一方向づつ別々に延伸してもよい。
【0067】
上記発泡シートをMDに延伸する方法としては、例えば、長尺状の発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを発泡工程に供給する速度(供給速度)よりも、発泡後に長尺状の発泡シートを冷却しながら巻き取る速度(巻取速度)を速くすることによって発泡シートをMDに延伸する方法、得られた発泡シートを延伸工程に供給する速度(供給速度)よりも、発泡シートを巻き取る速度(巻取速度)を速くすることによって発泡シートをMDに延伸する方法などが挙げられる。
【0068】
なお、前者の方法において、発泡性ポリオレフィン系樹脂シートは、それ自身の発泡によってMDに膨張するので、発泡シートをMDに延伸する場合には、発泡性ポリオレフィン系樹脂シートの発泡によるMDへの膨張分を考慮した上で、その膨張分以上に発泡シートがMDに延伸されるように、シートの供給速度と巻取り速度とを調整する必要がある。
【0069】
又、上記発泡シートをCDに延伸する方法としては、発泡シートのCDの両端部を一対の把持部材によって把持し、この一対の把持部材を互いに離間する方向に徐々に移動させることによって発泡シートをCDに延伸する方法が好ましい。なお、発泡性ポリオレフィン系樹脂シートは、それ自身の発泡によってCDに膨張するので、発泡シートをCDに延伸する場合には、発泡性ポリオレフィン系樹脂シートの発泡によるCDへの膨張分を考慮した上で、その膨張分以上に発泡シートがCDに延伸されるように調整する必要がある。
【0070】
ここで、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートのMDにおける延伸倍率は、小さいと、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの柔軟性及び引張強度が低下することがある一方、大きいと、発泡シートが延伸中に切断したり或いは発泡中の発泡シートから発泡ガスが抜けてしまって、得られる架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの発泡倍率が著しく低下し、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの柔軟性及び引張強度が低下したり品質が不均一となったりすることがあるので、1.1〜2.0倍が好ましく、1.2〜1.5倍がより好ましい。
【0071】
なお、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートのMDにおける延伸倍率は下記要領で算出される。即ち、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの発泡倍率の三乗根Fを求める一方、巻取速度と供給速度の比(巻取速度/供給速度)Vを求め、下記式に基づいて架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートのMDにおける延伸倍率を算出することができる。但し、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの発泡倍率は、発泡性ポリオレフィン系樹脂シートの比重を架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの比重で除したものをいう。
発泡シートのMDにおける延伸倍率(倍)=V/F
【0072】
又、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートのCDにおける延伸倍率は、小さいと、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの柔軟性及び引張強度が低下することがある一方、大きいと、発泡シートが延伸中に切断したり或いは発泡中の発泡シートから発泡ガスが抜けてしまって、得られる架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの発泡倍率が著しく低下し、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの柔軟性及び引張強度が低下したり品質が不均一となったりすることがあるので、1.2〜4.5倍が好ましく、1.5〜3.5倍がより好ましい。
【0073】
なお、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートにおけるCDの延伸倍率は、発泡性ポリオレフィン系樹脂シートをそのMD及びCDに延伸させずに加熱、発泡させて得られた架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートのCDの長さをW1とする一方、CDに延伸させた架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートのCDの長さをW2とし、下記式に基づいて算出することができる。
発泡シートのCDにおける延伸倍率(倍)=W2/W1
【0074】
このようにして得られた架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの用途としては、特に限定されず、例えば、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの少なくとも一面に粘着剤層を積層一体化して粘着テープとして用いられたり、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの一面に薬剤を塗布して医療用貼付材として用いられる。
【0075】
詳細には、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートを基材として形成された粘着テープは、凹凸面の凹凸を吸収するための粘着テープとして用いられたり、或いは、携帯電話やビデオカメラなどの電子機器本体内に内装される電子部品に衝撃が加わるのを防止し且つ電子機器本体内に埃などが進入するのを防止するための電子機器用シール材として用いられ、特に、上記架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートは、優れた柔軟性及び耐熱性を保持しつつ厚みを薄くすることができるので、小型化の著しい電子機器用途に好適に用いることができる。
【0076】
そして、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートを粘着テープの基材として用いる場合には、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの厚みは、薄いと、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの柔軟性や引張強さなどが低下して、得られる粘着テープの風合いや機械的強度などが低下する一方、厚くしても、粘着テープの性能の向上を見込めず、経済性が低下するので、0.05〜2mmが好ましく、0.1〜8mmがより好ましい。
【0077】
又、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの一面又は両面に積層一体化される粘着剤層を構成する粘着剤としては、従来から粘着テープに使用されるものであれば、特には限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤などが挙げられる。
【0078】
更に、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの少なくとも一面に粘着剤を塗布して粘着剤層を積層一体化させる方法としては、例えば、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの少なくとも一面にコーターなどの塗工機を用いて粘着剤を塗布する方法、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの少なくとも一面にスプレーを用いて粘着剤を噴霧、塗布する方法、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの少なくとも一面に刷毛を用いて粘着剤を塗布する方法などが挙げられる。
【発明の効果】
【0079】
本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートは、ポリオレフィン系樹脂及び熱分解型発泡剤を押出機に供給して溶融混練し、押出機からシート状に押出すことによって形成された発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを発泡させて得られた架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、該架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの架橋度が5〜60重量%で且つ気泡のアスペクト比が所定範囲内にあり、上記ポリオレフィン系樹脂は、重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂を40重量%以上含有することを特徴とするので、優れた柔軟性及び耐熱性を保持しつつ厚みを薄くすることができる。
【0080】
又、上記架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートにおいて、JIS K6767に準拠した25%圧縮強度が4.9×104Pa以下で且つMD又はCDの少なくとも一方向における23℃での引張強度が1.96×106Pa以上であると共に、90℃におけるMDの加熱寸法変化率が−10%以上である場合には、感触性、衝撃吸収性及び耐熱性に更に優れている。
【0081】
更に、厚みが0.05〜2mmである上記架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの一面に粘着剤層を積層一体化してなる粘着テープは、凹凸面の凹凸の吸収性に優れていると共に、優れた柔軟性及び耐衝撃性を保持しつつ厚みを薄くすることができるので小型電子機器の部品を保護するためのシール材としても好適に用いることができる。
【0082】
そして、本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートを構成するポリオレフィン系樹脂は、重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂を40重量%以上含有する。
【0083】
上記メタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂は柔軟であるが、粘着性を殆ど有せず、よって、このポリエチレン系樹脂を40重量%以上含有しているポリオレフィン系樹脂は、その溶融状態において、粘着性を殆ど示さない。
【0084】
従って、上記重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂を40重量%以上含有するポリオレフィン系樹脂を発泡させて得られる発泡シートを延伸して架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートを製造する際に、発泡シートの気泡壁同士が近接した状態になっても気泡壁同士が密着一体化するような事態を概ね防止することができ、よって、気泡のアスペクト比が所望範囲内にある架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートを簡単に得ることができる。
【0085】
又、上記メタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂は、その分子量分布が狭く、共重合体の場合、どの分子量成分にも共重合体成分がほぼ等しい割合で導入されており、発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを略均一に架橋させることができる。
【0086】
従って、発泡シートを延伸させて架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートを製造する場合、発泡シートを全体的に均一に延伸させることができ、得られる架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートは、その厚みが略均一であると共に、気泡のアスペクト比が全体的に均一であって機械的強度及び柔軟性などの品質が全体的に均一である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】図1は、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートのMD、CD及びVDを示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0088】
(実施例1〜4、比較例4)
重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られた直鎖状低密度ポリエチレン(エクソン・ケミカル社製、商品名「EXACT3027」、密度:0.900g/cm3、重量平均分子量:2.0、融点:98℃、軟化点:85℃)100重量部、アゾジカルボンアミド5重量部、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.3重量部及び酸化亜鉛1重量部からなる発泡性ポリオレフィン系樹脂組成物を押出機に供給して130℃で溶融混練し、幅が200mmで且つ厚さが0.8mmの長尺状の発泡性ポリオレフィン系樹脂シートに押出した。
【0089】
次に、上記長尺状の発泡性ポリオレフィン系樹脂シートの両面に加速電圧800kVの電子線を5Mrad照射して発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを架橋した後、この発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを熱風及び赤外線ヒーターにより250℃に保持された発泡炉内に連続的に送り込んで加熱、発泡させた。
【0090】
しかる後、得られた発泡シートを発泡炉から連続的に送り出した後、この発泡シートをその両面の温度が200〜250℃となるように維持した状態で、発泡シートをそのCDに延伸させると共に、発泡性ポリオレフィン系樹脂シートの発泡炉への送り込み速度(供給速度)よりも速い巻取速度でもって発泡シートを巻き取ることによって発泡シートをMDに延伸させて、発泡シートの気泡をCD及びMDに延伸して変形させ、表1に示した幅、厚み、架橋度及び発泡倍率を有する架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートを得た。なお、上記発泡シートの巻取速度は、発泡性ポリオレフィン系樹脂シート自身の発泡によるMDへの膨張分を考慮しつつ調整した。又、発泡シートの巻取速度と供給速度との比(巻取速度/供給速度)、並びに、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートのMD及びCDの延伸倍率を表1に示した。
【0091】
なお、比較例4では、発泡シートのMD及びCDの延伸倍率が大き過ぎたために発泡ガスが抜けてしまい、得られた架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの発泡倍率が5.2倍と低くなっていた。
【0092】
(実施例5)
アゾジカルボンアミドの添加量を5重量部の代りに3重量部としたこと、発泡性ポリオレフィン系樹脂シートの厚みが0.32mmとなるように押出したこと、発泡シートの供給速度と巻取速度の比(供給速度/巻取速度)、並びに、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートのCDの幅が1050mmとなるようにしたこと以外は実施例1と同様にして架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートを得た。
【0093】
(実施例6)
重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られた直鎖状低密度ポリエチレン(エクソン・ケミカル社製、商品名「EXACT3027」、密度:0.900g/cm3、重量平均分子量:2.0、融点:98℃、軟化点:85℃)100重量部、アゾジカルボンアミド5重量部、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.3重量部及び酸化亜鉛1重量部からなる発泡性ポリオレフィン系樹脂組成物を押出機に供給して130℃で溶融混練し、幅が200mmで且つ厚さが0.8mmの長尺状の発泡性ポリオレフィン系樹脂シートに押出した。
【0094】
次に、上記長尺状の発泡性ポリオレフィン系樹脂シートの両面に加速電圧800kVの電子線を5Mrad照射して発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを架橋した後、この発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを熱風及び赤外線ヒーターにより250℃に保持された発泡炉内に連続的に送り込んで加熱、発泡させた後に冷却して長尺状の発泡シートを製造し、コイル状に巻き取った。
【0095】
得られた発泡シートを順次、延伸工程に供給して、発泡シートをその両面の温度が110℃となるまで加熱した後、発泡シートをそのCDに延伸させると共に、発泡シートの供給速度よりも速い巻取速度でもって発泡シートを巻き取ることによって発泡シートをMDに延伸させて、発泡シートの気泡をCD及びMDに延伸して変形させ、表1に示した幅、厚み、架橋度及び発泡倍率を有する架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートを得た。なお、発泡シートの巻取速度と供給速度との比(巻取速度/供給速度)、並びに、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートのMD及びCDの延伸倍率を表1に示した。
【0096】
(比較例1)
発泡シートをCDに延伸しなかったこと以外は実施例1と同様にして架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートを得た。
【0097】
(比較例2)
発泡シートのCDの幅が2000mmとなるようにしたこと以外は実施例1と同様にして架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートを製造しようとしたが、発泡シートがCDに切断してしまい、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートを得ることはできなかった。
【0098】
(比較例3)
重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られた直鎖状低密度ポリエチレン(エクソン・ケミカル社製、商品名「EXACT3027」、密度:0.900g/cm3、重量平均分子量:2.0)100重量部の代わりに、重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られた直鎖状低密度ポリエチレン(エクソン・ケミカル社製、商品名「EXACT3027」、密度:0.900g/cm3、重量平均分子量:2.0)20重量部及びポリエチレン樹脂(密度:0.923g/cm3)80重量部からなるポリオレフィン系樹脂を用いたこと以外は実施例2と同様にして架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートを製造しようとしたが、発泡シートの延伸工程で発泡シートがCDに切断してしまい、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートを得ることはできなかった。
【0099】
(比較例5)
重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られた直鎖状低密度ポリエチレン(エクソン・ケミカル社製、商品名「EXACT3027」、密度:0.900g/cm3、重量平均分子量:2.0)100重量部の代わりに、重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られた直鎖状低密度ポリエチレン(エクソン・ケミカル社製、商品名「EXACT3027」、密度:0.900g/cm3、重量平均分子量:2.0)20重量部及びエチレン−酢酸ビニル共重合体(エチレン含有量:18重量%)80重量部からなるポリオレフィン系樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様にして架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートを製造した。
【0100】
得られた架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートにおけるMD、CD及びVDの平均気泡径、気泡のアスペクト比(MDの平均気泡径/CDの平均気泡径)(表1では「MD/CD」と表記した)及び気泡のアスペクト比(CDの平均気泡径/VDの平均気泡径)(表1では「CD/VD」と表記した)、JIS K6767に準拠した25%圧縮強度、MD及びCDにおける23℃での引張強度、並びに、90℃におけるMDの加熱寸法変化率を表1に示した。
【0101】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートは、該架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの少なくとも一面に粘着剤層を積層一体化して粘着テープとして用いたり、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの一面に薬剤を塗布して医療用貼付材として用いるのに適している。
【符号の説明】
【0103】
1 架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂及び熱分解型発泡剤を押出機に供給して溶融混練し、押出機からシート状に押出すことによって形成された長尺状の発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを発泡させて得られた長尺状の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、該長尺状の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの架橋度が5〜60重量%で且つ気泡のアスペクト比(MDの平均気泡径/CDの平均気泡径)が0.25〜1であり、上記ポリオレフィン系樹脂は、重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂を40重量%以上含有することを特徴とする架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【請求項2】
気泡のアスペクト比(CDの平均気泡径/VDの平均気泡径)が2〜18であることを特徴とする請求項1に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【請求項3】
ポリオレフィン系樹脂及び熱分解型発泡剤を押出機に供給して溶融混練し、押出機からシート状に押出すことによって形成された長尺状の発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを発泡させて得られた長尺状の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、該長尺状の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの架橋度が5〜60重量%で且つ気泡のアスペクト比(CDの平均気泡径/VDの平均気泡径)が2〜18であり、上記ポリオレフィン系樹脂は、重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂を40重量%以上含有することを特徴とする架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【請求項4】
JIS K6767に準拠した25%圧縮強度が4.9×104Pa以下で、且つ、MD又はCDの少なくとも一方向における23℃での引張強度が1.96×106Pa以上であると共に、90℃におけるMDの加熱寸法変化率が−10%以上であることを特徴とする請求項1に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【請求項5】
JIS K6767に準拠した25%圧縮強度が4.9×104Pa以下で、且つ、MD又はCDの少なくとも一方向における23℃での引張強度が1.96×106Pa以上であると共に、90℃におけるMDの加熱寸法変化率が−10%以上であることを特徴とする請求項3に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【請求項6】
厚みが0.05〜2mmである長尺状の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートと、この長尺状の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの少なくとも一面に積層一体化された粘着剤層とからなる粘着テープであって、上記長尺状の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートは、ポリオレフィン系樹脂及び熱分解型発泡剤を押出機に供給して溶融混練し、押出機からシート状に押出すことによって形成された長尺状の発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを発泡させて得られたものであり、上記長尺状の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの架橋度が5〜60重量%で且つ気泡のアスペクト比(MDの平均気泡径/CDの平均気泡径)が0.25〜1であり、上記ポリオレフィン系樹脂は、重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂を40重量%以上含有することを特徴とする粘着テープ。
【請求項7】
厚みが0.05〜2mmである長尺状の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートと、この長尺状の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの少なくとも一面に積層一体化された粘着剤層とからなる粘着テープであって、上記長尺状の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートは、ポリオレフィン系樹脂及び熱分解型発泡剤を押出機に供給して溶融混練し、押出機からシート状に押出すことによって形成された長尺状の発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを発泡させて得られたものであり、上記長尺状の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの架橋度が5〜60重量%で且つ気泡のアスペクト比(CDの平均気泡径/VDの平均気泡径)が2〜18であり、上記ポリオレフィン系樹脂は、重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂を40重量%以上含有することを特徴とする粘着テープ。

【図1】
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【公開番号】特開2009−242811(P2009−242811A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175207(P2009−175207)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【分割の表示】特願2005−511866(P2005−511866)の分割
【原出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】