架橋性高分子材料およびそれらの用途
本発明は、歯科、整形外科および薬物送達を目的とする新規な組成物に関する。具体的には本発明は、吸収性代用骨と架橋性プレポリマーとの混合物を含む組成物に関する。本発明は、その混合物を架橋させることによって形成される組成物にも関する。
【解決手段】 二酸又は多官能性酸のモノマー又はオリゴマーと、不飽和炭化水素部分である架橋性基を含むカルボン酸分子との無水物により構成される架橋性プレポリマーにより代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物を含む組成物を構成する。
【解決手段】 二酸又は多官能性酸のモノマー又はオリゴマーと、不飽和炭化水素部分である架橋性基を含むカルボン酸分子との無水物により構成される架橋性プレポリマーにより代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物を含む組成物を構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、インプラント材料または移植材料として体の一部で使用し得る材料に関する。具体的には本発明は、骨および/またはその他の組織の形成を促進し得る架橋性高分子材料、およびそのような材料の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
治癒の技術分野においては、組織、特に骨などの硬組織を置換、修復または再構築するためのインプラント材料または移植材料が必要となることが多い。例えば硬組織のインプラント材料は、医療および獣医療において、傷害または疾患のある骨を修復するための人工骨材料として用いられてきた。硬組織のインプラント材料は、骨に固定する人工関節の構築にも使用されている。歯科の技術分野では、硬組織のインプラント材料は、外傷、疾患または歯の欠損によって生じる顎骨損傷の再構築;無歯顎堤の置換または増大;歯槽の移植による顎骨量減少の予防;および歯周骨欠損(periodontal bone void defects)の処置において用いられている。
【0003】
具体的には歯科の技術分野においては、抜歯の際に歯槽骨に大きな空洞ができる。歯槽骨は、2〜3年で40〜60%の速度で吸収され始め、死亡するまで0.25%〜0.50%/年の割合で毎年吸収され続ける(Ashman A.et al.,Prevention of Alveolar Bone Loss Post Extraction with HTR Grafting Material.Oral Surg. Oral.Med.Oral.Pathol.60(2):146−153,(1985))。残存する歯の移動、膿瘤の形成、上顎洞の拡大、義歯維持の低下、咬合口径の喪失、フェイシャルラインの形成、ブリッジと歯肉の間の不快な隙間は、そのような歯の欠損による望ましくない結果の一部である(Luc.W.J.Huys,Hard Tissue Replacement,Dentist New,(2000年2月15日))。そのような骨量減少は、抜歯した歯の代わりに歯科インプラントを設置する際にも重大な問題を生じる。過去数年で、インプラント候補のほぼ95%が、歯槽骨の高さおよび/または幅が不十分であることを理由に却下されたことが報告されている(Ashman A.Ridge,Prevention,Important Buzzwords in Dentistry,General Dentistry,May/June,(2000))。
【0004】
抜歯に関連する骨および軟組織の問題を克服するための確かな技術の一つは、抜歯部位に骨移植材料(例えば合成品、ウシまたは死体由来のもの)を充填して、新たな骨成長に十分な期間、抜歯部位をゴム組織または歯科用「包帯」(例えばBiofoil(登録商標) Protective Stripes)で覆う(例えば縫合する)ことである。新たに再生/生成する骨の骨伝導性スカフォールドとして働く骨移植材料の混合物を、空洞に充填する。インプラントの設置が望ましい場合、空洞内の骨再生(または治癒)に十分な期間を経て、円筒穴のドリルで過去の抜歯部位を整えてもよく、そして通常の方法で歯科インプラントを設置してもよい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのような技術に関わる問題は、ほとんどの骨移植材料(例えば死体由来およびウシ由来のもの)では、歯科インプラントを抜歯後即時に設置して好適な歯冠の機能を与えることができないことである。患者は、繰り返し歯科医院を訪れる必要があり、多くの場合、機能的な歯冠を設置できるまでに最大6ヶ月待たされる。近年になり、以下に詳述するBioplant(登録商標)HTR(登録商標)などの少数の骨移植材料を用いて、抜歯後即時にインプラントを設置し得ることが報告された(Ashman A.et al., Ridge Augmentation for Immediately Postextraction Implant:Eight−Year Retrospective Study,The Regeneration Report,7(2),85−95,(1995); Yukna R.A.et al., Evaluation of Hard Tissue Replacement Composite Graft Material as a Ridge Preservation/Augmentation Material in Conjunction with Immediate Hydroxyapatite−Coated Dental Implants, J.Periodontol.,pages 679−685, May 2003,;およびYukna R.A.et al., HTR Synthetic Bone Grafts and Immediate Dental Implants,Compendium of Continuing Education in Dentistry,pages 649−657, September 2003,24(9))。しかし、そのような抜歯後即時インプラントでは、歯冠による咬合の機能が即時には得られない。荷重前にインプラント周辺に骨形成させるのに、通常4〜8ヶ月の治癒期間を要する。言い換えると、例えば本発明以前なら、患者が前歯を抜歯して交換しなければならない場合、歯科医にできる最良の方法は、金属インプラント(例えばチタン)を抜歯直後に設置し、窩洞内のインプラント周囲に骨移植材料(例えばBioplant(登録商標)HTR(登録商標)または「制御膜」)を詰めて、患者を帰宅させることであった。金属インプラント設置の数ヶ月後にインプラントが荷重負荷されるようになる(即ち、オステオインテグレーションされる)まで、歯冠を金属インプラントの上部に設置することができない。その間、患者は機能をなくした状態(例えば咀嚼することができない)、または審美的に好ましい代替歯がない状態である。
【0006】
骨移植材料は、有機物(例えば死体またはウシ由来)、合成品またはそれらの混合のいずれかであってもよい。
【0007】
この10年間で、骨移植材料として、高分子材料が広く用いられてきた。これらの材料は、生体不活性で生体適合性があり、時間の経過と共に宿主組織に置き換わる暫時的スカフォールドとして働くことができ、加水分解または他の手段によって非毒性の生成物に分解することができる。
【0008】
米国特許第4,535,485号(‘485号特許)および同第4,536,158号(‘158号特許)各明細書は、概して高分子粒子で構成された骨または他の硬組織代替物として使用される、特定の高分子を基材とするインプラント可能な多孔質補ていを開示している。‘485号および‘158号各特許の多孔質補ていは、歯科および整形外科での多くの用途に適うことが立証されているが、改善の余地がある。
【0009】
米国特許第4,728,570(‘570号特許)は、硬組織の成長を誘導する多孔質インプラント材料を開示している。‘570号特許に基づくと、Bioplant Inc. (South Norwalk CT)は、Bioplant(登録商標)HTR(登録商標)という名称の、緩徐に吸収され得る製品を製造している。Bioplant(登録商標)HTR(登録商標)は、骨量減少の予防と骨生成の促進の両方に非常に有用であることが立証されている。それは、上述の抜歯即時インプラントだけでなく、審美的な組織膨化にも好適であることが見出されている。しかしそれは、本発明以前の骨移植材料全てに関わる重要な問題を含み、即ち抜歯窩または無歯空間に設置したインプラントは、即時に機能を得るわけではない。患者は、歯冠設置の数ヶ月後に歯科医院を再来するまで、インプラント周辺での骨生成(例えばオステオインテグレーション)を数ヶ月待たなければならない。
【0010】
この10年間に、PMMAおよびPHEMAよりも生分解性および/または生体吸収性の高いポリマーが、代替組織の分野に導入されてきた。
【0011】
ポリ(L−乳酸)、ポリ(グリコール酸)、および乳酸・グリコール酸共重合体などの分解性ポリエステルから製造された医療装置が、ヒトでの使用をFood and Drug Administrationに認可され、多くの医療用途、例えば縫合において用いられてきた。しかしこれらのポリマーは、均一なバルク分解を受け、それが材料の長期機械的性質に悪影響を及ぼし、分解の終了近くになると酸生成物の大規模な破壊が起るため(例えば点火のように)、荷重負荷の高い骨用途において機能を回復させるのに必要な多くの性質が欠けている。これに対して、表面侵食ポリマー(surface eroding polymers)(ポリ酸無水物など)は、分解時に機械的結着性を保持し、寸法を徐々に縮小させながら骨を内方に成長させる。しかし直鎖状ポリ酸無水物系は、機械的強度が低い。
【0012】
米国特許第5,837,752号明細書(‘752号特許)は、(1)直鎖状の疎水性生分解性ポリマーおよび直鎖状非生分解性親水性ポリマーからなる群から選択される直鎖状ポリマーと、(2)少なくとも1個のフリーラジカル重合性基を含む1種以上のモノマーまたはマクロマーであって、無水物結合とアクリレートまたはメタクリレートからなる群から選択される重合性基とを含む1種以上の架橋性モノマーまたはマクロマーと、を含む骨修復用の半相互侵入高分子網目(セミIPN)を開示している。
【0013】
米国特許第5,902,599号明細書(599号特許)は、様々な歯科および整形外科の用途に有用な生分解性高分子網目を開示している。そのような生分解性高分子網目は、不飽和部分などの架橋性基を含む無水物プレポリマーを重合することによって形成させることができる。無水物プレポリマーは、例えば感光性フリーラジカル開始剤の存在下で、プレポリマーに光を照射することによる光重合反応で架橋させることができる。
【0014】
WO01/74411は、少なくとも2個の重合性末端基を備えた架橋性多官能性プレポリマーを含む生分解性インプラントを製造するのに好適な組成物を開示している。それは、抜歯窩に即時に金属製スクリューインプラントを設置すること;骨とインプラントの間の空隙にBioplant(登録商標)HTR(登録商標)などの移植材料をしっかりと詰めること;移植材料の上部に架橋性多官能性プレポリマーの層を塗布すること;および層を硬化させて金属インプラントの周囲に硬い環を形成させることを開示している。主張によると、インプラントの首部の周りの硬化環は、主にインプラントの首部に集中するインプラントへの噛力に耐える。しかし、インプラントは、ガムラインの近辺の非常に狭い領域である首部に固定されているにすぎず、主張にあるそのような硬化環による支持および耐性は、短期または長期のいずれにも十分でない。つまり硬化環が固まったとしても、短期での適切な剛性を付与しない。長期では、硬化環は骨刺激材料を含まないため、十分な骨再生能がない。つまりそのインプラントは、安定しておらず、微小動揺が少なからず発生し、即時荷重負荷ではない。したがってWO01/74411は、即時機能のある代替歯を教示および示唆しておらず、実現できない。
【0015】
それゆえ代替および修復の技術分野においては、骨の再生工程の時間を短縮させて即時機能の歯科インプラントを可能にし、十分な機械的強度を付与し、そして/または微小動揺を最小限に抑える材料および方法が引き続き求められている。加えて、歯科、整形外科および薬物送達での用途に利用できる材料の範囲を広げる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、歯科、整形外科および薬物送達を目的とする新規な組成物に関する。具体的には本発明は、代用骨と架橋性プレポリマーとの混合物を含む組成物に関する。その上、本発明は、その混合物を架橋させることによって形成される組成物に関する。
【0017】
意外にも、前述の発明が、硬化によって即時に硬くなり荷重負荷になって、歯冠の設置を即時に支持し、人工歯の即時機能を与える硬化性混合物を付与することが発見された。
【0018】
代用骨は、アロプラスト、自家移植片、同種異系移植片、異種移植片またはそれらの混合物であってもよい。好ましくはそれは、アロプラスト、より好ましくは高分子アロプラスト(多孔質または非多孔質)、より好ましくは多孔質ミクロンサイズ粒子であり、各粒子は、第1の高分子材料を含むコア層と、コア層をほぼ取り囲み、第2の高分子材料で構成されるコーティングと、を含み、第2の高分子材料は、親水性で第1の高分子材料と組成が異なり、高分子材料は両者とも生体適合性である。
【0019】
好ましくはミクロンサイズ粒子の口径は、約250ミクロン〜約900ミクロンの範囲内である。
【0020】
好ましくは第1の高分子材料は、ポリメタクリル酸メチルで、第2の高分子材料は、高分子メタクリル酸ヒドロキシエチルであり、組成物は、代用骨のミクロンサイズ粒子の内表面および外表面に分布する若干の水酸化カルシウムを更に含む。水溶液(例えば血液)に暴露されると、水酸化カルシウムが、炭酸カルシウムアパタイト(骨)化合物に転化する。
【0021】
架橋性プレポリマーは、重合性基を含み架橋すると高分子網目を形成するモノマーおよび/またはオリゴマーを含む。
【0022】
架橋性プレポリマーには3例の実施形態があり、特にポリ酸無水物を使用する場合には、最初の2例が最も好ましい。硬化させると、ポリ酸無水物および架橋構造の疎水性によってポリマー内部から水が排出されて、表面のみが加水分解される。つまりそのポリマーは、外側から内側に向かってしか侵食されない。硬化コンポジットは、構造的結着性および/または機械的結着性を維持するため、この種の分解は、歯科、整形外科および薬物送達の用途で特に有利である。比較すると、以下の第3の実施形態に開示されるポリオルトエステルおよびポリアセタールなどは、しっかりと架橋されておらずより親水性で水の浸透を受けやすいため、より均一に分解される傾向がある。それゆえ第3の実施形態における生分解性結合は、内部だけでなく外部からも破壊されて、最初の強度をより急速に失っていく。
【0023】
第1の実施形態において、架橋性プレポリマーは、i)二酸または多官能性酸のモノマーまたはオリゴマーと、ii)不飽和炭化水素部分である架橋性基を含むカルボン酸分子と、の1種以上の無水物を含む。
【0024】
第2の実施形態において、架橋性プレポリマーは、
a)疎水性生分解性ポリマーまたは非生分解性親水性ポリマーである直鎖状ポリマーと、
b)少なくとも1個のラジカル重合性基を含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーであって、無水物結合とアクリレートまたはメタリレートである重合性基とを含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーと、を含む架橋性半IPN前駆体である。
【0025】
疎水性生分解性ポリマーは、ポリ酸無水物であることが好ましい。
【0026】
第3の実施形態において、架橋性プレポリマーは、少なくとも2個の重合性末端基を含み、0〜60℃の温度で三次元形状に変形可能且つその温度範囲内で架橋可能となるような粘性を有している。
【0027】
上記3例の実施形態全てにおいて、架橋性プレポリマーは、開始剤、好ましくは光開始剤、または光開始剤とレドックス開始剤系との混合物を更に含んでいてもよい。
【0028】
任意に組成物は、治療薬、骨形成促進剤、細孔形成剤および診断薬を更に含む。
【0029】
代用骨と、架橋性プレポリマーまたは架橋性半IPN前駆体と、を含む硬化性混合物は、硬化されて硬化コンポジットを形成する。
【0030】
硬化性混合物および硬化コンポジットは、整形外科、歯科および薬物送達の分野で有用である。それらは、一般に骨または他の組織の再生が必要となる場合に用いることができる。治療薬をそれらに配合すれば、それらは、薬物送達装置として有用になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明は、硬化性混合物、および硬化性混合物から形成された硬化コンポジットに関する。本発明は、硬化性混合物および硬化コンポジットの使用方法にも関する。
【0032】
硬化性混合物および硬化コンポジット
硬化コンポジットは、硬化性混合物を架橋させることにより形成される。代用骨と架橋性プレポリマーとを混合して、実質的に均質な混合物を形成させることによって、硬化性混合物が形成される。その混合物は、前もって形成させたものでもよく、または使用の直前に形成させてもよい。
【0033】
代用骨
代用骨は、当業者に公知の骨移植材料、好ましくは高分子物質のいずれであってもよい。それは、有機物もしくは合成品、またはそれらの混合物であってもよい。有機物代用骨としては、自家移植片、同種異系移植片、異種移植片またはそれらの混合物が挙げられる。死体由来の材料が、同種異系移植片の非限定的実施例である。ウシ由来の材料(例えば、Osterograf(登録商標)N−300、およびOsterograf(登録商標)N−700)は、異種移植片の非限定的実施例である。合成代用骨は、アロプラストとしても公知である。アロプラストの非限定的実施例としては、リン酸カルシウム系および硫酸カルシウム系セラミックス、および高分子骨移植片材料が挙げられる。好ましくは代用骨は、アロプラスト、より好ましくは高分子アロプラストを含む。
【0034】
高分子アロプラストは、好ましくは複数のミクロンサイズ粒子(好ましくは、口径が約250〜900ミクロン)であり、各粒子が、第1の高分子材料を含むコア層と、コア層をほぼ取り囲むコーティングとを含む。コーティングは、親水性で第1の高分子材料と組成が異なる第2の高分子材料を含む。高分子アロプラストの高分子材料は、両者とも生体適合性である。第1の高分子材料は、好ましくはアクリル系ポリマー、より好ましくはポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)である。PMMAは、所望なら可塑化剤を更に含んでいてもよい。第2の高分子材料は、好ましくは高分子メタクリル酸ヒドロキシエチル(PHEMA)である。好ましい高分子粒子は、‘485号特許に開示されており、その明細書は、全体が参考として本明細書に援用されている。
【0035】
より好ましい実施形態において、代用骨は、複数の種類の水酸化カルシウム処理した高分子ミクロンサイズ粒子である。若干の水酸化カルシウムを体腔に包み込むと、高分子ミクロンサイズ粒子の細孔内および表面で硬組織を成長させるのに効果的である。好ましくは水酸化カルシウムは、高分子粒子の外表面および内表面の両方でコーティングを形成する。
【0036】
代用骨のミクロンサイズ粒子は、任意に硫酸バリウムなどの非結合剤(non−bonding agent)を更に含むことで、粒子が互いに結合するのを防いでもよい。硫酸バリウムは、放射線不透過性化合物でもあり、硬化性混合物および硬化コンポジットをX線写真で視覚化できるようにするために含ませてもよい。水酸化カルシウムも、高分子粒子の相互の結合の予防を助ける。
【0037】
本発明の硬化性混合物の代用骨成分を生成させるための好ましい手順は、‘158号特許の明細書に説明されている。好ましくは、ミクロサイズ粒子を水酸化カルシウムの水溶液に浸漬させ、その後、過剰の溶液を粒子から取り除いて粒子を放置して乾燥させることによって、水酸化カルシウムを粒子の細孔に導入させる。水酸化カルシウムの好ましい溶液は、約0.05重量%〜約1.0重量%範囲の濃度の水酸化カルシウムを含む。
【0038】
最も好ましい実施形態において、代用骨は、本明細書に全体が参考として援用した‘570号特許に示されるBioplant Inc. (Norwalk, CT)から入手されるBioplant(登録商標)HTR(登録商標)である。Bioplant(登録商標)HTR(登録商標)は、PMMAとPHEMAとの石灰化(Ca(OH)2/炭酸カルシウム)共重合体の多孔質粒子であり、外側のカルシウム層が骨と相互作用して、炭酸カルシウムアパタイトを形成している。粒子の外径は約750μm、内径は約600μmで、孔径は約350μmである。Bioplant(登録商標)HTR(登録商標)は、強力で(50,000lb/inを超える力でもBioplant(登録商標)HTR(登録商標)は破壊されない)、生体適合性があり負に荷電しているため(−10mV)、細胞の引力を促し感染に抵抗する。
【0039】
架橋性プレポリマー
架橋性プレポリマーは、重合性基、好ましくはラジカル重合性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーを含み、架橋して高分子網目を形成する。適切な高分子性基としては、ビニルエーテル、アリル基、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸および不飽和トリカルボン酸などの不飽和アルケン(即ちビニル基)が挙げられる。不飽和モノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸およびクロトン酸が挙げられる。不飽和ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸またはシトラコン酸が挙げられる。好ましい重合性基は、アクリレート、ジアクリレート、オリゴアクリレート、ジメタクリレート、オリゴメタクリレートおよび他の生物学的に許容され得る重合性基である。(メタ)アクリレートが、最も好ましい活性種の重合性基である。
【0040】
これらの重合性基は、疎水性または親水性ポリマー上に存在してもよく、組成物の疎水性を調整するために用いてもよい。適切な疎水性ポリマーの非限定的例としては、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酸、ポリジオキサノン、ポリカーボネート、およびポリアミノカーボネートが挙げられる。適切な親水性ポリマーの非限定的例としては、合成ポリマー、例えばポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、部分または完全加水分解したポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(エチレンオキシド)・ポリ(プロピレンオキシド)ブロック共重合体(ポロクサマーおよびメロクサポル)、ポロキサミン、カルボキシメチルセルロース(および誘導体)、およびヒドロキシアルキル化セルロース(および誘導体)、例えばヒドロキシエチルセルロースおよびメチルヒドロキシプロピルセルロースなど、並びに天然ポリマー、例えばポリペプチド、Ficoll(登録商標)ポリスクロースなどの多糖類または炭水化物、ヒアルロン酸、デキストラン(および誘導体)、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリンまたはアルギン酸塩、および蛋白質、例えばゼラチン、コラーゲン、アルブミンもしくはオボアルブミン、またはそれらの共重合体もしくは混合物が挙げられる。
【0041】
好ましくはモノマーおよび/またはオリゴマーは、生分解性結合、例えばアミド結合、無水物結合、カーボネート結合、エステル結合またはオルトエステル結合など、より好ましくは無水物結合を含むため、そのモノマーおよび/またはオリゴマーによって形成される高分子網目は、生分解性である。
【0042】
好ましくはそれは、開始剤、より好ましくは光開始剤、または光開始剤とレドックス開始剤系との混合物を更に含む。
【0043】
架橋性プレポリマーの分子量は、好ましくは約150〜約20,000の範囲内である。好ましくはプレポリマーは、構造内に1〜約100個、より好ましくは約1〜約20個、最も好ましくは約1〜約10個の反復単位を含む。
【0044】
架橋性プレポリマーの非限定的3つの実施形態を、以下に開示する。
【0045】
架橋性プレポリマーの第1の実施形態の詳細
第1の好ましい実施形態のとおり、架橋性プレポリマーは、1個以上の無水物モノマーまたはオリゴマーである。有用なモノマーまたはオリゴマーとしては、二酸または多官能性酸と、不飽和部分などの架橋性基を含むカルボン酸分子と、の無水物が挙げられる。
【0046】
好ましくは架橋性プレポリマーは、各末端に不飽和炭化水素部分を含む直鎖状物質で、ジカルボン酸モノマーまたはオリゴマーと、不飽和部分を含むカルボン酸分子と、の二無水物を含む。より望ましくはそれは、セバシン酸および1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)アルカン、例えば1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンなどからなる群から選択される二酸のモノマーまたはオリゴマーのメタクリル酸二無水物を含む。
【0047】
例示としての二酸または多官能性酸では、セバシン酸、1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)アルカン、例えば1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン(MCPP)もしくは1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)ヘキサン(MCPH)など、ドデカン二酸、フマル酸、ビス(p−カルボキシフェノキシ)メタン、テレフタル酸、イソフタル酸、p−カルボキシフェノキシ酢酸、p−カルボキシフェノキシ吉草酸、p−カルボキシフェノキシオクタン酸またはクエン酸が挙げられる。好ましくはそれは、セバシン酸または1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)アルカンである。
【0048】
例示としてのカルボン酸では、例えばアクリル基、メタクリル基、ビニル基および/またはスチリル基を含むメタクリル酸または他の官能基化カルボン酸が挙げられる。好ましいカルボン酸は、メタクリル酸である。
【0049】
例えば二酸を、カルボン酸の活性化形態、例えば無水物などと反応させて、無水物を形成させることによって、無水物モノマーまたはオリゴマーが形成される。架橋性プレポリマーとして好適な無水物モノマーまたはオリゴマーの詳細な説明は、‘599号特許内で付与されており、その明細書は、全体が参考として援用されている。
【0050】
メタクリル化セバシン酸(MSA)およびジメタクリル酸(1,3−ビス(カルボキシフェノキシ))プロピル(CPPDM)を合成する別の経路は、Tarcha,et al.,J.Polym.Sci.Part A,Polym.Chem.(2001),39,4189に記載されている。
【0051】
好ましい実施形態において、架橋性プレポリマーは、第1の無水物と第2の無水物の混合物である。これらの無水物の比は、具体的な用途に最も適した生分解性、親水性および/または付着性が得られるように調整してもよい。
【0052】
例えば、セバシン酸から形成されたジメタクリル化無水物モノマーを架橋させることによって形成される高分子網目は通常、1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)アルカンから形成されるものよりもかなり急速に生分解される。つまり、セバシン酸から形成される無水物を、1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)アルカンから形成される無水物と様々な比で混合すると、多様な分解挙動が得られる。
【0053】
第2の無水物に対する第1の無水物の比は、非常に様々であってもよい。好ましくはそれは、約1:20〜約20:1、より好ましくは約1:5〜約5:1、より好ましくは約1:5〜約1:1の範囲内、最も好ましくは約1:1である。
【0054】
好ましくは以下に詳述するとおり架橋性プレポリマーは、光開始剤、または光開始剤とレドックス開始剤系との混合物を含む。
【0055】
架橋性プレポリマーの第2の実施形態の詳細
第2の実施形態において、架橋性プレポリマーは、架橋性半IPN前駆体である。
【0056】
架橋性半IPN前駆体は、少なくとも2成分を含んでおり、第1の成分は直鎖状ポリマーで、第2の成分は1種以上の架橋性モノマーまたはマクロマーである。架橋性半IPN前駆体は、架橋すると半相互侵入高分子網目(半IPN)を形成する。半IPNは、一方の成分が架橋性ポリマーで、他方の成分が非架橋性ポリマーの2種の独立した成分を含む組成物と定義される。架橋性半IPN前駆体と、それが形成する半IPNは、全体を参考として援用したShastri et al.,に付与された米国特許第5,837,752号明細書に詳述されている。
【0057】
架橋性半IPN前駆体の第1の成分は、直鎖状ポリマーである。好ましくは第1の成分の直鎖状ポリマーは、(i)直鎖状の疎水性生分解性ポリマー、好ましくはヒドロキシ酸および/もしく無水物結合を含む単独重合体もしくは共重合体、または(ii)直鎖状の非生分解性親水性ポリマー、好ましくはポリエチレンオキシドもしくはポリエチレングリコールである。
【0058】
好ましくは少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーが、分解性結合、好ましくは無水物結合を含む。直鎖状ポリマーは、好ましくは架橋性半IPN前駆体組成物の10〜90重量%、より好ましくは架橋性半IPN前駆体組成物の30〜70重量%を構成している。
【0059】
直鎖状ポリマーは、架橋されていない単独重合体またはブロック共重合体である。疎水性ポリマーは、当業者に周知である。好適な生分解性ポリマーの例としては、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酸、ポリジオキサノン、ポリカーボネート、およびポリアミノカーボネートが挙げられる。好ましいポリマーは、ポリヒドロキシ酸およびポリ酸無水物である。ポリ酸無水物が、最も好ましいポリマーである。
【0060】
直鎖状親水性ポリマーは、当業者に周知である。好適な親水性非生分解性ポリマーの例としては、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、部分または完全加水分解したポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキシド)・ポリ(プロピレンオキシド)ブロック共重合体(ポロクサマーおよびメロクサポル)、およびポロキサミンが挙げられる。好ましい親水性非生分解性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)、ポロキサミン、ポロクサマーおよびメロクサポルである。ポリ(エチレングリコール)が、最も好ましい親水性非生分解性ポリマーである。
【0061】
架橋性半IPN前駆体の第2の成分は、1種以上の架橋性モノマーまたはマクロマーである。好ましくは少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーは、無水物結合を含む。用い得る他のモノマーまたはマクロマーとしては、少なくとも1個のラジカル重合性基を含む生体適合性モノマーおよびマクロマーが挙げられる。例えば、開示を参考として本明細書に援用したBoard of Regents, University of Texas SystemによるWO93/17669に開示されたとおり、架橋させることが可能なアルケン結合を含むポリマーを用いてもよい。
【0062】
好適な重合性基としては、ビニルエーテル、アリル基、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸および不飽和トリカルボン酸などの不飽和アルケン(即ちビニル基)が挙げられる。不飽和モノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸およびクロトン酸が挙げられる。不飽和ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸またはシトラコン酸が挙げられる。好ましい重合性基は、アクリレート、ジアクリレート、オリゴアクリレート、ジメタクリレート、オリゴメタクリレートおよび他の生物学的に許容され得る重合性基である。(メタ)アクリレートが、最も好ましい活性種の重合性基である。
【0063】
これらの官能基は、疎水性または親水性ポリマー上に存在してもよく、組成物の疎水性を調整するために用いてもよい。適切な疎水性ポリマーとしては、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酸、ポリジオキサノン、ポリカーボネート、およびポリアミノカーボネートが挙げられる。適切な親水性ポリマーとしては、合成ポリマー、例えばポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、部分または完全加水分解したポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレンオキサゾリン)、ポリ(エチレンオキシド)・ポリ(プロピレンオキシド)ブロック共重合体(ポロクサマーおよびメロクサポル)、ポロキサミン、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシアルキル化セルロース、例えばヒドロキシエチルセルロースおよびメチルヒドロキシプロピルセルロースなど、並びに天然ポリマー、例えばポリペプチド、Ficoll(登録商標)ポリスクロースなどの多糖類または炭水化物、ヒアルロン酸、デキストラン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリンまたはアルギン酸塩、および蛋白質、例えばゼラチン、コラーゲン、アルブミンもしくはオボアルブミン、またはそれらの共重合体もしくは混合物が挙げられる。
【0064】
ポリマーは、生分解性であってもよいが、好ましくは生分解性が低く(溶解の予測性のため)、排泄されるのに十分、分子量が低いものである。ヒト(または使用が予定される他の種)が排泄ができる最大分子量は、ポリマー種によって様々であるが、多くの場合、約20,000ダルトン以下であろう。
【0065】
ポリマーは、他の基に結合した2種以上の水溶性ブロックを含んでいてもよい。そのような結合基は、生分解性結合、重合性結合、またはその両方を含んでいてもよい。例えばマレイン酸、フマル酸またはアコニット酸などの不飽和ジカルボン酸は、ポリエチレングリコールなどヒドロキシ基を含む親水性ポリマーでエステル化されているか、またはポロキサミンなどアミン基を含む親水性ポリマーでアミド化されていてもよい。
【0066】
これらのポリマーの合成方法は、当業者に周知である。例えば、Concise Encyclopedia of Polymer Science and Polymeric Amines and Ammonium Salts,E.Goethals,editor(Pergamen Press,Elmsford,N.Y.1980)を参照されたい。ポリ(アクリル酸)などの多くのポリマーは、市販されている。当該技術分野で入手でき、例えばWiley−Interscience Publication,New Yorkから出版された、Marchによる「Advanced Organic Chemistry」4th Edition,1992に記載された化学反応を利用して、天然および合成ポリマーを変性させてもよい。
【0067】
好ましくはラジカル重合性基を含むモノマーおよび/またはマクロマーは、分子あたり平均で1個をわずかに超える架橋性基、より好ましくは分子あたり平均で2個以上の重合性基または架橋性基を含む。各重合性基は、鎖内に重合するため、ポリマーあたり1個をほんのわずかに超える反応性基(即ち、平均で約1.02個の重合性基)を用いれば、架橋性材料を生成させることができる。
【0068】
架橋性プレポリマーの第3の実施形態の詳細
架橋性プレポリマーの第3の実施形態は、WO01/74411(米国での呼称)に開示されており、その特許の明細書は、全体が参考として本明細書に援用されている。具体的にはそれは、少なくとも2個の重合性末端基を含み、0〜60℃の温度で三次元形状に変形可能であり、その温度範囲内で架橋可能となるような粘性を有する架橋性多官能性プレポリマーである。好ましくは架橋性プレポリマーは、親水性領域と、少なくとも1個の生分解性領域と、少なくとも1個の重合性領域とを含み、1〜約100個、より好ましくは1〜20個、最も好ましくは1〜10個の反復単位を有している。親水性領域は、好ましくはポリエチレングリコール、またはエチレンオキシドとアルキレンオキシドとの共重合体であり、重合度は、2〜500の範囲内である。
【0069】
架橋性プレポリマーは、ポリアセタール配列;ラクトンコモノマーのどれもが、得られたポリエステル配列にモル率で75%を超える量で存在しないようなラクトンの混合物を共重合させて得られるポリエステル配列;ポリオルトエステル配列;またはポリエステル配列とポリオルトエステル配列との混合物を含んでいてもよい。架橋性プレポリマーの重合性領域は、アルケン、アルキンまたはその両方を含む。
【0070】
架橋性プレポリマーに対する代用骨の比
硬化性混合物中の架橋性プレポリマーに対する代用骨の比は、広範囲の値であってもよい。好ましくはその比は、1:20〜20:1、より好ましくは1:2〜2:1、最も好ましくは約1:1である。
【0071】
任意の成分
本発明の硬化性混合物および/または硬化コンポジットは、次の任意成分を含んでいてもよい。
【0072】
開始剤
好ましい実施形態において、硬化性混合物は、光開始剤、熱活性化剤、レドックス開始剤系、イオン性開始剤、またはその混合物などのフリーラジカル開始剤を含む。いずれのフリーラジカル開始剤または開始剤混合物を用いてもよい。第1の好ましい実施形態においては、1種以上の光開始剤が用いられる。第2の好ましい実施形態においては、1種以上のレドックス開始剤系が用いられる。第3の好ましい実施形態においては、1種以上の熱開始剤が用いられる。第4の好ましい実施形態においては、1種以上の光開始剤が、1種以上のレドックス開始剤系と併用される。第5の好ましい実施形態においては、1種以上の熱開始剤が、1種以上のレドックス開始剤系と併用される。第6の実施形態においては、1種以上の光開始剤が、1種以上の熱開始剤と併用される。第7の好ましい実施形態においては、1種以上の光開始剤および1種以上の熱開始剤が、1種以上のレドックス開始剤系と併用される。
【0073】
用いられる開始剤の濃度は、多数の因子に依存する。そのような因子の非限定的例としては、開始剤の種類、開始剤が単独で用いられるか、または他の開始剤と併用されるか、所望の硬化速度、および材料を適用する方法が挙げられる。好ましい実施形態において、開始剤の濃度は、架橋性プレポリマーの約0.05重量%〜約5重量%である。光開始剤またはレドックス開始剤系の場合、開始剤の濃度は、好ましくは架橋性プレポリマーの1重量%未満、より好ましくは0.05〜0.1重量%である。熱開始剤の場合、好ましい範囲は、架橋性プレポリマーの約1重量%〜約2重量%である。
【0074】
光開始剤
光開始剤は、放射線によって活性化される開始剤である。そのような放射線は、紫外光(例えば長波長紫外光)、可視範囲の光、集光レーザー光、赤外光および近赤外光、X線、またはγ線であってもよい。好ましい放射線は、可視領域および/または近赤外領域内の光である。
【0075】
光開始剤の非限定的例としては、生分解性光開始剤、例えばβカロテン、リボフラボン、Irgacure651(登録商標)(2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン)、フェニルグリシンなど、染料、例えばエオジン染料など、並びに開始剤、例えば2,2−ジメチル−2−フェニルアセトフェノン、2−メトキシ−2−フェニルアセトフェノン、およびカンファーキノンなどが挙げられる。
【0076】
染料および共触媒、例えばアミンなどを光に暴露すると、活性種が生成する。染料が光を吸収すると、染料は三重項状態をとり、三重項状態は、次にアミンと反応して活性種を形成し、重合を開始する。光重合のために、多数の染料を用いることができる。適切な染料は、当業者に周知である。好ましい染料としては、エリストシン、フロキシム、ローズベンガル、トニン(thonine)、カンファーキノン、エチルエオジン、エオジン、メチレンブルー、リボフラビン、2,2−ジメチル−2−フェニルアセトフェノン、2−メトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、および他のアセトフェノン誘導体が挙げられる。好適な共触媒としては、アミン、例えばN−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、ジベンジルアミン、N−ベンジルエタノールアミン、N−イソプロピルベンジルアミンなどが挙げられる。トリエタノールアミンが、好ましい共触媒である。
【0077】
光開始剤を含む組成物は、好ましくは不透明容器内で保存される。
【0078】
レドックス開始剤系
レドックス開始剤系としては、酸化剤(酸化成分とも呼ぶ)(過酸化物など)および還元剤(還元成分とも呼ぶ)(芳香族または脂肪族アミンなど)が挙げられる。レドックスカップルの混合物によって、硬化させることが可能な開始剤(フリーラジカルまたはカチオンなど)が生成する。好ましくは本発明のレドックスカップルは、約40℃未満の温度、例えば室温または生理学的温度37℃で活性化される。一般にレドックスカップルは、使用前に別個の反応組成物に分別しておき、その後続いて使用時に混合して、所望の開始剤を生成させる。レドックスカップルの選択は、複数の基準に左右される。例えば、所望の酸化剤は、還元剤を酸化するのに十分な酸化の性質を持つが、保存時に混合され得る他の成分と早期に反応するほど、過剰には酸化しないものである。同様に所望の還元剤は、好ましい酸化剤と容易に反応するのに十分な還元の性質があるが、保存時に混合され得る他の成分を還元するほど、過度な還元性がないものである。樹脂を不適切な還元剤または酸化剤でそれぞれ酸化または還元すると、それぞれ早期に重合して、その後の保存期限が短くなる不安定な系になる可能性がある。つまり好適なレドックスカップルは、個々に良好な保存期限(例えば、5〜20℃の環境で、少なくとも2ヶ月、好ましくは少なくとも4ヶ月、より好ましくは少なくとも6ヶ月)を付与し、そのため互いに混合すると、硬化性混合物を硬化、または部分硬化させるための所望の開始剤を生成する。
【0079】
適切な酸化剤としては、過酸化水素などの過酸化物化合物(即ちペルオキシ化合物)、並びに無機および有機過酸化物化合物(例えば「過」化合物またはペルオキソアニオンでの塩)が挙げられる。適切な酸化剤の例としては、非限定的に、過酸化物、例えば過酸化ベンゾイル、過酸化フタロイル、置換された過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化カプロイル、過酸化ラウロイル、過酸化シンナモイル、過酸化アセチルベンゾイル、過酸化メチルエチルケトン、過酸化ナトリウム、過酸化水素、過酸化ジ−tert−ブチル、過酸化テトラリン、過酸化尿素および過酸化クメンなど;ヒドロペルオキシド、例えばp−メタンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、メチルエチルケトンヒドロペルオキシド、および1−ヒドロキシシクロヘキシルヒドロペルオキシド−1など、過硫酸アンモニウム、過ホウ素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、過硫酸カリウムなど;オゾン、オゾニドなどが挙げられる。これらの酸化剤を、単独で、または互いに混合して用いてもよい。過酸化ベンゾイルが、好ましい酸化剤である。1種以上の酸化剤が、硬化工程を開始させるのに十分な量で存在してもよい。好ましくはこれは、歯科材料の全成分の総重量に基づいて、約0.01重量%〜約4.0重量%、より好ましくは約0.05重量%〜約1.0重量%含まれる。
【0080】
還元剤は、酸化剤を活性化させるために1個以上の官能基を含む。好ましくはそのような官能基は、アミン、メルカプタン、またはその混合物から選択される。1種を超える官能基が存在する場合、それらは、同一化合物の一部であっても、または異なる化合物によって付与されてもよい。好ましい還元剤は、第3級芳香族アミン(例えば、N,N−ジメチル−p−トルイジン(DMPT)またはN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン(DHEPT))である。そのような第3級アミンの例は、当該技術分野で周知であり、例えばWO97/35916および米国特許第6,624,211号明細書に見出すことができる。別の好ましい還元剤は、メルカプタンであり、芳香族基および/または脂肪族基と、任意に重合性基を含んでいてもよい。好ましいメルカプタンは、約200を超える分子量を有していて、臭気が強くない。他の還元剤、例えばスルフィン酸、ギ酸、アスコルビン酸、ヒドラジンおよびその塩などを本明細書に用いて、フリーラジカル重合を開始させてもよい。
【0081】
2種以上の還元剤を用いる場合、それらは好ましくは、少なくとも1種が他種よりも活性化速度が速くなるように選択する。即ち、1種の硬化性混合物を硬化させる開始速度を、他種よりも高くする。
【0082】
還元剤の電気化学的酸化電位および酸化剤の電気化学的還元電位は、好適なレドックスカップルの有効性を予測するための有用なツールである。例えばオキシダント(即ち酸化剤)である過酸化ベンゾイルの還元電位は、飽和カロメル電極(SCE)に対して約−0.16ボルトである。同様に、一連のアミンの酸化電位(SCEに対する)は、次のように予め確定されている:ジヒドロキシエチル−p−トルイジン((DHEPT)、0.76ボルト)、4−tert−ブチルジメチルアニリン((t−BDMA)、0.77ボルト)、4−ジメチルアミノフェンエタノール((DMAPE)、0.78ボルト)、トリエチルアミン4((TEA)、0.88ボルト)、3−ジメチルアミノ安息香酸((3−DMAB)、0.93ボルト)、4−ジメチルアミノ安息香酸((4−DMAB)、1.07ボルト)、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル((EDMAB)、1.07ボルト)、p−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル((EHDMAB)、1.09ボルト)、および4−ジメチルアミノ安息香酸エステル((DMABA)、1.15ボルト)。酸化規模が低下するほど、酸化の容易さ(および後の反応性)が高められる。過酸化ベンゾイルと併用する好適なアミン還元剤としては、一般に還元電位がSCEに対して約1.00ボルト未満の芳香族アミンが挙げられる。過酸化ラウロイル(還元電位=−0.60ボルト)など、過酸化ベンゾイルよりも効率の低いオキシダントは、弱い酸化剤であり、後に芳香族アミン還元剤とより緩除に反応する。過酸化ラウロイルにとって好適な芳香族アミンとしては、一般にSCEに対して約0.80ボルト未満のものが挙げられる。
【0083】
熱開始剤
熱開始剤の非限定的例としては、ペルオキシジカーボネート、過硫酸塩(例えば過硫酸カリウムまたは過硫酸アンモニウム)、アゾ開始剤、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)および様々な過酸化物(過酸化ベンゾイル)が挙げられる。単独または他の開始剤と併用される熱活性化開始剤が、光が到達できない部分(例えば硬化性混合物内の深部)では最も有用である。
【0084】
賦形剤
1種以上の賦形剤を、本発明の組成物に配合してもよい。そのような賦形剤の非限定的例としては、Ca(OH)2、脱灰骨粉末または粒子、ヒドロキシアパタイト粉末または粒子、さんご粉、吸収性および非吸収性ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウム粒子、α−リン酸三カルシウム、リン酸八カルシウム、炭酸カルシウムおよび硫酸カルシウムが挙げられる。好ましくはそのような賦形剤は、生分解性ポリマーの分解時に発生する酸を中和して、骨の形成に好適な生理学的pH値を維持することができる。好ましくはそのような賦形剤は、アルカリ性であるため、生分解過程で発生する酸を中和して生理学的pH値の保持を助けることができる。
【0085】
骨形成促進剤
骨形成を促進および/または誘導する1種以上の物質を、本発明の組成物に配合してもよい。
【0086】
そのような骨形成促進材料の非限定的例としては、成長因子、例えば骨形態形成蛋白質(BMP)(Sulzer Orthopedics)、BMP−2(Genetics Institute/Sofamor Danek)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)(Orquest Anika Therapeutics)、Epogen(Amgen)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)(Amgen)、インターロイキン増量因子(Interleukin growth factor)(IGF)−1(Celtrix Pharmaceuticals)、骨形成蛋白質(OP)−1(Creative BioMolecules/Stryker Biotec)、血小板由来成長因子(PDGF)(Chiron)、幹細胞増殖因子(SCPF)(University of Florida/Advanced Tissue Science)、組換えヒトインターロイキン(rhIL)(Genetic Institute)、トランスフォーミング成長因子β(TGRβ)(Collagen Corporation/Zimmer Integra Life Sciences)、およびTGFβ−3(OSI Pharmaceuticals)などが挙げられる。骨形成は、数ヶ月〜数週間で低下してもよい。整形外科および歯科での用途において、骨再生分子、播種細胞、および/または組織を、組成物中に配合してもよい。例えば開示を参考として本明細書に援用した米国特許第5,011,691号明細書に記載されたものなどの骨形態形成蛋白質を、これらの用途に使用してもよい。
【0087】
細孔形成剤
細孔形成を促進する1種以上の物質を、本明細書の組成物、好ましくは硬化性コンポジットに配合してもよい。
【0088】
そのような物質の非限定的例としては、NaCl、CaCl2などの無機塩の粒子、多孔質ゼラチン、炭水化物(例えば単糖)、オリゴ糖(例えばラクトース)、多糖(例えばデキストランなどのポリグルコシド)、重合性側基を含むゼラチン誘導体、多孔質高分子粒子、パラフィン、ビーズワックスおよびカルナバワックスなどのワックス、低融点または高融点低密度ポリエチレン(LDPE)などのワックス様物質、並びに石油ゼリーが挙げられる。他の材料としては、PEGなどの親水性材料、アルギン酸塩、骨ロウ(脂肪酸ダイマー)、モノ−、ジ−およびトリ−グリセリドなどの脂肪酸エステル、コレステロール、コレステロールエステルおよびナフタレンが挙げられる。加えて、蛋白質などの合成または生物学的な高分子材料を、用いることができる。
【0089】
本発明に用いられる多孔質形成剤粒子の粒度または粒度分布は、具体的な要望に応じて様々であってもよい。好ましくは粒度は、約5000μm未満、より好ましくは約500〜約5000μm、より好ましくは約25〜約500μm、最も好ましくは約100〜250μmである。
【0090】
治療薬
非限定的に:
1)非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)、例えばインドメタシン、アスピリン、ジクロフェナクナトリウム、ケトプロフェン、イブプロフェン、メフェナム酸、アズレン、フェナセチン、イソプロピルアンチピリン、アセトアミノフェン、塩酸ベンジダミン、フェニルブタゾン、フルフェナム酸、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸コリン、サザピリン、クロフェゾン、またはエトドラクなど;およびステロイド剤、例えばデキサメタゾン、デキサメタゾン硫酸ナトリウム、ヒドロコルチゾン、プレドニソロンをはじめとする解熱鎮痛抗炎症剤(以下の別の実施例によってより詳細に議論する);
2)抗菌および抗真菌剤、例えばペニシリン、アンピシリン、アモキシシリン、セファレキシン、エリスロマイシンエチルコハク酸、塩酸バカンピシリン、塩酸ミノサイクリン、クロラモフェニコール、テトラサイクリン、エリスロマイシン、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、テルビナフィン、nlidixic acid、ピロミジン酸、ピペミジン酸三水和物、エノキサシン、シノキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン、塩酸シプロフロキサシン、またはスルファメトキサゾール・トリメトプリムなど;
3)抗ウイルス剤、例えばホスホノギ酸三ナトリウム、ジダノシン、ジデオキシシチジン、アジド・デオキシチミジン、ジデヒドロ・デオキシチミジン、アデフォビルジピボキシル、アバカビル、アムプレナビル、デラビルジン、エファビレンツ、インジナビル、ラミブジン、ネルフィナビル、ネビラピン、リトナビル、サキナビルまたはサタブジンなど;
4)強力鎮痛剤、例えばコデイン、ジヒドロコデイン、ヒドロコドン、モルフィネ、ジランジッド(dilandid)、デモラル、フェンタニル、ペンタゾシン、オキシコドンまたはプロポキシフェンなど;および
5)心疾患の処置用に、または抗炎症剤として用いられ得るサリチル酸塩、をはじめとする1種以上の予防用または治療用活性化剤、およびその塩またはエステルを、本発明の組成物に配合してもよい。
【0091】
薬剤を直接組成物に配合してもよいが、または微粒中に配合して、その後、組成物に配合してもよい。微粒子への薬剤の配合は、その薬剤が組成物の1種以上の成分と反応性がある場合に有利となり得る。
【0092】
診断薬
1種以上の診断薬を、本発明の組成物に配合してもよい。組成物を患者に移植した後、骨修復をモニタリングするために、診断/造影剤を用いてもよい。好適な薬剤としては、陽電子放射断層(PET)、コンピュータ断層撮影(CAT)、シングルフォトンエミッションCT、X線、蛍光透視法および核磁気共鳴画像法(MRI)で用いられる市販の薬剤が挙げられる。
【0093】
MRIに有用で好適な薬剤の例としては、現在入手できるガドリニウムキレート剤、例えばジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)およびガドペンテト酸ジメグルミンに加え、鉄、マグネシウム、マンガン、銅およびクロムなどが挙げられる。
【0094】
CATおよびX線に有用で好適な薬剤の例としては、ヨウ素を基剤とする材料、例えばジアトリゾ酸塩およびイオタラム酸を代表とするイオン性モノマー、イオパミドール、イソヘキソールおよびイオベルソールなどの非イオン性モノマー、イオトロール(iotrol)およびイオジキサノールなどの非イオン性ダイマー、並びにイオキサグレートなどのイオン性ダイマーが挙げられる。
【0095】
これらの薬剤は、当該技術分野で利用できる標準的技術および市販の器具を用いて検出することができる。
【0096】
硬化性コンポジットを形成するための硬化性混合物の架橋
架橋性混合物を架橋させて、硬化コンポジットを形成する。
【0097】
一つの実施形態において、光開始剤を(単独か、または他種の開始剤と併用して)用いる場合、硬化性混合物を電磁放射線にあてる。
【0098】
本明細書で用いる「電磁放射線」は、非限定的にX線波、紫外波、可視波、赤外波、遠赤外波、マイクロ波、高周波、音波および超音波電磁をはじめとする電磁スペクトルのエネルギー波を指す。
【0099】
本明細書で用いる「X線」は、波長が1×10−9〜1×10−6cmのエネルギー波を指す。
【0100】
本明細書で用いる「紫外光」は、波長が少なくとも1×10−6cmで4.0×10−5cm未満のエネルギー波を指す。
【0101】
本明細書で用いる「可視光」は、波長が少なくとも約4.0×10−5〜約7.0×10−5cmのエネルギー波を指す。
【0102】
本明細書で用いる「青色光」は、波長が少なくとも約4.2×10−5であり4.9×10−5cm未満のエネルギー波を指す。
【0103】
本明細書で用いる「赤色光」は、波長が少なくとも約6.5×10−5であり7.0×10−5cm未満のエネルギー波を指す。
【0104】
本明細書で用いる「赤外線」は、波長が少なくとも約7.0×10−5cmのエネルギー波を指す。
【0105】
可聴音波は、周波数の範囲が20〜20,000Hzである。
【0106】
可聴下音波は、周波数の範囲が20Hz未満である。
【0107】
超音波波長は、周波数の範囲が20,000Hzを超えるものである。
【0108】
本明細書で用いる「放射線源」は、電磁放射線の線源を指す。例としては、非限定的にランプ、太陽、青色ランプ、および紫外線ランプが挙げられる。
【0109】
硬化性混合物は、硬化性混合物を硬化させて硬化コンポジットを形成させるのに十分な期間、放射線源から電磁放射線をあてる。好ましくは硬化性混合物を、1〜10mm、より好ましくは約3〜5mmの層として塗布し、約30〜300秒、好ましくは約50〜100秒、より好ましくは約60秒の間、電磁放射線にあてる。
【0110】
通常、重合を誘導するのに、最低で0.01mW/cm2の強度が必要となる。最大の光強度は、放射線の波長に応じて、1〜1000mW/cm2の範囲内であってもよい。高い光強度、例えば高波長の可視光に組織を暴露してもよく、そうすれば短波長のUV光よりも組織/細胞への損傷が少なくなる。歯科での用途においては、青色光(470〜490nm)を、100〜400mW/cm2の強度で臨床的に用いる。紫外光を処置部位(in situ)で用いる場合、光強度を20mW/cm2未満に保持することが好ましい。
【0111】
別の実施形態において、熱活性化開始剤を(単独か、または他種の開始剤と併用して)用いる場合、硬化性混合物を、熱活性化剤を活性化するのに好適な温度、好ましくは約20〜80℃、より好ましくは約30〜60℃の温度におく。熱活性化剤を活性化するのに必要な熱は、非限定的に赤外線、水浴、油浴、マイクロ波、超音波または機械的手法をはじめとする様々な公知の手法で発生させることができる。例えば、高温の水浴で加熱したるつぼに、硬化性混合物を入れてもよい。
【0112】
更に別の実施形態において、レドックス開始剤系を(単独か、または他種の開始剤と併用して)用いる場合、硬化過程の直前まで、レドックス開始剤系の酸化剤をレドックス開始剤系の還元剤と分離しておく。例えば酸化剤を、ある容器内で複数の硬化性混合物と混合して、還元剤も、別の容器内で複数の硬化性混合物と混合する。2個の容器の内容物を、実質的な硬化が開始した時点で互いに混合する。
【0113】
硬化は、処置部位、体外、または体内で実行してもよい。
【0114】
最も好ましい実施形態において、放射線暴露の持続時間を短縮するため、そして/または各放射線硬化層の厚さを増加させるために、レドックス開始剤系を、光開始剤および/または熱開始剤と併用する。例えばレドックス開始剤系を最初に活性化させて、硬化性混合物を部分硬化させる。そのように部分硬化させた混合物を、その後、放射線にあてて、光開始剤および/または熱開始剤を活性化させて、部分硬化させた混合物を更に硬化させる。
【0115】
硬化性混合物および硬化コンポジットの性質
粘性
硬化性混合物の粘性は、非常に様々であってもよい。それは、多数の因子、例えば硬化性混合物中の成分の分子量、および硬化性混合物の温度などに依存する。通常、温度が低い場合、硬化性混合物はより粘性になり、成分の平均分子量が高い場合、より粘性になる。硬化性混合物の用途が異なると、必要となる粘性も異なってくる。例えば注射可能にするためには、混合物は、易流動性液でなければならず、他の用途においては、成形可能なペースト状パテでなければならない。
【0116】
架橋性プレポリマーに、好適な量の1種以上の生体適合性不飽和官能性モノマー、例えば参考として本明細書に援用したWO01/74411(米国での呼称)に記載されたものなどを配合することによって、硬化性混合物の粘性を調整してもよい。
【0117】
強度
硬化コンポジットの強度が約5〜300N/m2、より好ましくは約20〜200N/m2、最も望ましくは約50〜200N/m2であることが好ましい。硬化コンポジットの強度は、多数の因子、例えば代用骨と架橋性プレポリマーとの比、および硬化コンポジットの架橋密度などに依存する。
【0118】
疎水性/親水性
硬化性混合物および硬化コンポジットの疎水性/親水性は、注意深く制御しなければならない。好ましくは硬化性混合物および硬化コンポジットは、細胞がそれらに良好に付着するのに十分、親水性である。疎水性/親水性は、多数の因子、例えば代用骨および/または架橋性プレポリマーの疎水性/親水性に依存する。例えば代用骨が、PMMA/PHEMAを基剤とする高分子粒子である場合、PMMA(親水性が低い)とPHEMA(親水性が高い)との比が、疎水性/親水性に影響を及ぼす。別の実施例として、架橋性プレポリマーが、ポリエチレングリコールの代わりにポリ酸無水物である場合、硬化性混合物および硬化コンポジットは、より疎水性になる。
【0119】
生分解/生体吸収時間
硬化性混合物および/または硬化コンポジットの生分解/生体吸収に必要な時間は、日〜年、好ましくは週〜月の範囲で非常に様々であってもよい。好適な生分解/生体吸収時間は、多数の因子、例えばオステオインテグレーションの速度、組成物が機能性および/または荷重負荷であるか、および/または薬物放出の所望の速度に依存する。例えば高齢女性のオステオインテグレーションは通常、20歳男性よりもかなり緩やかである。オステオインテグレーションが遅い場合、生分解/生体吸収時間の長い組成物を用いるべきである。即時機能の歯科インプラントは、荷重負荷であり、オステオインテグレーションの間に強度を保たなければならず、そのため生分解/生体吸収時間の長い組成物が、そのような歯科インプラントに関する用途ではより好適である。治療薬を長時間かけて放出させたい場合、生分解/生体吸収時間の長い組成物がより好適である。
【0120】
具体的用途に応じて、必要な時間を、多数の因子、例えば代用骨と架橋性プレポリマーとの比などに基づいて操作することができる。架橋性プレポリマーが、1種を超えるモノマーを含む場合、モノマーの比が、生分解/吸収時間に重大な役割を担う。例えば架橋性プレポリマーが、セバシン酸のジメタクリル化無水物と1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンとの混合物を含む場合、セバシン酸のジメタクリル化無水物の割合を高めると、分解/吸収時間が短縮する。更に、代用骨がPMMA/PHEMAに基づくもの(非常に緩除に分解されることで知られる)である場合、代用骨の割合を高めると、分解速度が延長する。
【0121】
分解時間は、pHの関数である。例えば無水物は通常、酸性条件よりもアルカリ性条件で分解を受け易い。
【0122】
分解時間は、成分の疎水性/親水性の関数である。例えば1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)ヘキサン(より疎水性)を、1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン(疎水性が低い)に置き換えると、分解時間が短縮する。
【0123】
分解時間は、幾何学的形状、厚さなどの関数でもある。急速な分解が要求される場合、硬化コンポジットの少なくとも約15重量%、好ましくは約50重量%が、約5〜10週間、好ましくは約6〜8週間で分解または吸収される。
【0124】
その一方で、緩除に分解する場合、硬化コンポジットの少なくとも約15重量%、好ましくは約50重量%を、約6〜12ヶ月、好ましくは約9ヶ月で分解または吸収させる。
【0125】
硬化性混合物および硬化コンポジットの用途
歯科
本発明の硬化性混合物および硬化コンポジットを、抜歯窩を充填するため;抜歯による骨欠損を予防または修復するため;顎骨骨折を修復するため;疾患および外傷による骨空隙部を充填するため;抜歯窩に設置したインプラントおよび無歯顎骨に設置したインプラントを安定化させて、即時機能(例えば咀嚼)を付与するため;歯槽堤(骨)増大を行うため;歯周の骨病変を修復するため;そして審美的な歯肉再整形および膨化のために用いることができる。硬化性混合物および/または硬化コンポジットが歯科インプラント用途に用いられる場合、好ましくは歯科インプラントを、次の2種の方法の一方により硬化コンポジットに部分的または完全に埋入する:
方法(1):(a)歯科インプラントを骨および/または骨空隙部に植立する;
(b)歯科インプラントの周囲に硬化性混合物を塗布することによって、歯科インプラントを少なくとも一部埋入する;
(c)硬化性混合物を硬化させて硬化コンポジットを形成させる;そして
(d)必要に応じてステップ(b)および(c)を反復する。
方法(2):(a)硬化性混合物を塗布することによって、骨空隙部を少なくとも一部充填する;
(b)硬化性混合物を硬化させて硬化コンポジットを形成させる;
(c)必要に応じてステップ(a)および(b)を反復する;そして
(d)歯科インプラントを硬化コンポジットに少なくとも一部埋入することによって、歯科インプラントを骨に植立する。
【0126】
電磁放射線および/もしくは熱に暴露することによって硬化性混合物を架橋させ、標準的な歯科もしくは外科技術を利用して塗布してもよい。硬化性混合物を骨成長が望ましい部位に塗布し、硬化させて硬化コンポジットを形成させてもよい。硬化性混合物を、所望の形状および寸法(例えば棒、ピン、ねじおよび平板状)に予め注型し、硬化させて硬化コンポジットを形成させてもよい。
【0127】
整形外科
本発明の硬化性混合物および硬化コンポジットを、骨折を修復するため、大きな骨欠損(例えば疾患によるもの)を修復するため、即時機能を付与して、荷重負荷される骨を支持するため;そして審美性(例えば顎、頬など)の一助として用いてもよい。標準的な整形外科または外科的技術を用いて、硬化性混合物を塗布してもよく、例えば骨の生成が望ましい部位にそれを塗布し、そして硬化させて硬化コンポジットを形成させてもよい。硬化性混合物を、所望の形状および寸法(例えば棒、ピン、ねじ、平板状および整形外科用装置、例えば頭蓋用、顎用および頬用のもの)に予め注型し、硬化させて硬化コンポジットを形成してもよい。
【0128】
薬物送達
本発明の硬化性混合物および硬化コンポジットを用いて、治療薬または診断薬を体内で送達してもよい。そのような組成物中に配合し得る薬物または薬剤の例としては、蛋白質、炭水化物、核酸、および無機および有機物の生物学的活性分子が挙げられる。具体的な例としては、酵素、抗生物質、抗新生物剤、局部麻酔、ホルモン、血管新生剤、抗血管新生剤、抗体、神経伝達物質、精神活性剤、生殖器官に影響を及ぼす薬物、およびオリゴヌクレオチド、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチドなどが挙げられる。
【0129】
実施例
以下の実施例は、本発明の実施形態をより具体的に例示すためのものである。本明細書に記載した発明は、具体的実施形態であるが、その説明および実施例は、例示を意図するものであり、本明細書の範囲を限定するものではないことは理解されよう。本発明の範囲内での他の態様、利益および改良は、本明細書に適合する技術分野の当業者には明白であろう。
【0130】
実施例1
この実施例は、架橋性プレポリマーの第1の実施形態によって本発明を例示するものである。
【0131】
2種の架橋性プレポリマー:(1)セバシン酸のジメタクリル化無水物、および(2)1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンのジメタクリル化無水物を、以下のとおり代用骨(Bioplant(登録商標)HTR(登録商標))と混合することによって、硬化性混合物を形成させる。
【表1】
【0132】
加熱還流によりセバシン酸をメタクリル酸無水物と反応させて、セバシン酸のジメタクリル化無水物を形成させ、加熱還流により1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンをメタクリル酸無水物と反応させることにより、1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンのジメタクリル化無水物を形成させる。DL−カンファーキノンを、光開始剤として用いる。この材料は、硬化させると、約6〜9週以内でかなりの量が吸収されるように設計されている。
【表2】
【0133】
この材料は、約9ヶ月以内でかなりの量が吸収されるように設計されている。
【0134】
実施例2
この実施例は、架橋性プレポリマーの第2の実施形態によって本発明を例示するものである。
【表3】
【0135】
ポリ(1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン:セバシン酸)(80:20)(ポリ(CPP:SA)(80:20))は、1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンとセバシン酸との80:20(モル比)の直鎖状共重合体である。Rosen et al. Biomaterials, 4, 131, (1983); Domb and Langer, J.Polym. Sci., 23, 3375,(1987)に記載された手順によって、それを合成した。
【0136】
実施例3
この実施例は、架橋性プレポリマーの第3の実施形態によって本発明を例示するものである。配合物は、(1)少なくとも2個の重合性末端基および親水性領域を含む架橋性プレポリマーを、(2)代用骨と混合することによって形成させた硬化性混合物の実施例である。
【表4】
【0137】
ポリビスメタクリル酸エステルは、WO01/74411の実施例1に記載された方法によって製造する。
【表5】
【0138】
D,L−ラクチド50・ε−カプロラクトン共重合体−ヘキサンジオール20/1−メタクリル酸エステルは、WO01/74411に記載された方法によって製造する。
【0139】
実施例4
以下の実験は、大臼歯を抜歯し、インプラントを即時固定して、本発明の硬化性混合物を入れた後の骨の内方成長を試験するために実施した。実施例3の配合物Dを用いた。
【0140】
3〜5歳、つまり歯列が成熟した雌ヒツジ7匹を、実験に用いた。抜歯の2週間前に、ヒツジの一般的健康状態および歯列を検査した。必要に応じて、駆虫(devermification)のために薬剤を用いた。抜歯の2日前に抜歯される歯の側方および斜位の術前X線写真を撮影した。抜歯の1日前に、絶食し、予防的AB(Excenel(登録商標)RTU)およびNSAID(Finadyne(登録商標))を投与した。翌日(0日目)に、P3およびP4大臼歯を、ヒツジの左および右両方の下顎から抜歯した。AB(Excenel(登録商標)RTU)およびメチルプレドニソロン(0.5mg/kg、IM)の術前薬を投与した。実施例3、配合物Dの硬化性混合物を塗布して、層状に硬化させた。各層の最大の厚さは、約5mmである。光源は、可視光範囲の標準的な歯科用3Mライトであった。各層に、ライトを80秒間あてた。
【0141】
左の下顎においては、2本のチタン製インプラント(Ankylos(登録商標))、通常の1本、および首部を四角く改良した1本を、抜歯窩に設置した。他の歯槽には、インプラントを設置しなかった。Bioplant(登録商標)HTR(登録商標)を多血小板血漿(PRP)と混合して、第1の歯槽のインプラントの周りと、インプラントのない歯槽にも入れた。その後、Bioplant(登録商標)HTR(登録商標)を光硬化性ポリマーと混和して、第1の歯槽のインプラントの首部の周りと、インプラントのない第2の歯槽の咬合部分に入れた。混合物の強度は、約30〜約40N/m2であった。
【0142】
右の下顎においては、2本のチタン製インプラント(Ankylos(登録商標))、通常の1本、および首部を四角く改良した1本を、1箇所の抜歯窩に植立した。他の歯槽には、インプラントを設置しなかった。Bioplant(登録商標)HTR(登録商標)を骨髄血と混合して、インプラントの周りと、インプラントのない歯槽にも入れた。その後、Bioplant(登録商標)HTR(登録商標)を光硬化性ポリマーと混和して、インプラントの首部の周りと、インプラントのない歯槽の咬合部分に入れた。
【0143】
1〜3日目に、AB(Excenel(登録商標)RTU)(1mg/kg)を投与した。30日目、90日目および180日目に、従来のX線写真および口内X線写真を撮影した。180日目に、ヒツジを安楽死させ、組織学的検査のために生検を実施した。
【0144】
実施例5
患者Aの下顎前切歯は、進行した歯肉および骨疾患のために抜け落ちていた。術前X線写真(図1)によって、歯の周囲にはほとんど骨がない(98%の喪失、微生物感染による骨吸収)ことが明らかとなった。膿瘍および感染が、観察された。歯は、約99%動揺し、指で支えなければならなかった。通常の根尖切除術を実施すると、その歯は残存しない(即ち抜け落ちる)はずであった。
【0145】
歯の周囲部分の壊死組織を切除した後、硬化性混合物の配合物Dを歯の下部の周囲に、層状に塗布した(図2)。各層は、約5mm厚であった。各層を塗布した後、層の材料を、歯科用青色ライト(光源:3M(登録商標)Light)によって、処置部位で約80秒間硬化させた(図3)。前の層が固まった直後に、次の層を塗布した。所望の安定性および厚さに達すると、審美的形状または歯肉が得られ、外科的皮弁を整復し、縫合した(図4)。歯は即時に安定して機能し、手術後には著しい微小動揺はなかった。図5は、手術の20日後に撮影したX線写真である。図6は、手術の3ヵ月後に撮影したX線写真である。
【0146】
実施例6
患者Bの上顎左中切歯は、抜歯により98%の骨空隙部となり、Algipore(登録商標)(General Medical,UK)移植材料を用いた窩部の移植手術は不首尾に終わった。感染および移植の失敗により、Algipore(登録商標)移植片の一部を失っただけでなく、口縁板全体と隣接する骨も破損した(図7)。機能していないAlgipore(登録商標)を、感染した軟組織が取り囲んでいた。
【0147】
最初、失敗したAlgipore(登録商標)を、外科的に除去した。その部分の壊死組織を切除した後、大きな骨空隙部が明らかとなった(図8)。金属製インプラントを、歯科用器具を用いて骨空隙部に植立した(図9)。図10は、骨空隙部に設置した金属製インプラントが、欠損部の尖の骨によって安定化されている写真を示している。尖には、わずか2mmの安定化骨があった。図11は、金属製インプラントと広大な骨空隙部の咬合部分の図を示す。次に、実施例3の配合物Dにより製造した硬化性混合物を、インプラントの周囲に約5mm以下の層に塗布して、標準の歯科用ライトで約80秒間、硬化させた(図12)。最初の層が固まった後、次の層を添加して硬化させた(図13)。安定性および審美性のための所望の厚さに達するまで、更に層を添加して硬化させた。図14は、本発明の硬化材料(配合物D)による完全移植片が、金属製インプラントを支持している写真を示している。次に、インプラントの周囲の軟組織を縫合した。術後即時に暫時的な人口歯冠を施し、機能(例えば咀嚼のための接触)を付与した(図15)。図16は、術後即時のX線写真である。インプラントは、即時機能および安定性があり著しい微小動揺はなかった。図17は、手術およびインプラント植立の28日後に撮影したX線写真である。金属製インプラントの周囲に、骨の成長が観察された。感染は認められなかった。
【0148】
実施例7
実施例1に記載した合成方法に加えて、Tarcha et al.J.Polym. Sci,Part A,Polym.Chem.(2001),39,4189に記載された手順によって、メタクリル化セバシン酸(MSA)およびジメタクリル酸(1,3−ビス(カルボキシフェノキシ))プロピル(CPPDM)を製造した。トリエチルアミンおよびジクロロメタンの存在下、0℃で塩化セバシルとメタクリル酸とを反応させることによって、MSAを合成した。トリエチルアミンおよびジクロロメタンの存在下、0℃でメタクリロシル(methacrylocyl)と1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン(CPP)とを反応させることによって、CPPDMを製造した。
【0149】
実施例8
調製した試料
9種の試料を、以下のとおり調製した:
(1)50重量%:50重量% LC:HTR(LCは100重量%MSA);
(2)45重量%:45重量%:10重量% LC:HTR:スクロース(LCは100重量%MSA);
(3)50重量%:50重量% LC:HTR(LCは50重量%MSAおよび50重量%CPPDM);
(4)75重量%:25重量% LC:HTR(LCは100重量%MSA);
(5)75重量%:25重量% LC:HTR(LCは90重量%CPPDMおよび10重量%MSA);
(6)90重量%:10重量% LC:スクロース(LCは90重量%CPPDMおよび10重量%MSA);
(7)90重量%:10重量% LC:HTR(LCは90重量%CPPDMおよび10重量%MSA);
(8)90重量%:5重量%:5重量% LC:HTR:スクロース(LCは90重量%CPPDMおよび10重量%MSA);および
(9)100重量%LC(LCは90重量%CPPDMおよび10重量%MSA)
【0150】
HTRは、Bioplant Inc.(Norwalk, CT)から入手できるBioplant(登録商標)HTR(登録商標)の略語である。
【0151】
LCは、光硬化性材料の略語である。これらの9種の試料においてLCは、MSA、CPPDMまたはそれらの混合物である。
【0152】
MSAは、Tarcha et al.J.Polym.Sci,Part A,Polym.Chem.(2001),39,4189に記載された手順によって合成されたメタクリル化セバシン酸:
【化1】
の略語である。
【0153】
CPPDMは、Tarcha et al.J.Polym.Sci,Part A, Polym.Chem.(2001),39,4189に記載された手順によって合成されたジメタクリル酸(1,3−ビス(カルボキシフェノキシ))プロピル:
【化2】
の略語である。
【0154】
実施例9
光重合
実施例8の試料を光重合するために、4−ジメチルアミノ安息香酸エチルを含む開始系を、同量のカンファーキノンと併用した。4−ジメチルアミノ安息香酸エチルおよびカンファーキノンをエタノールに溶解し、全固形分(LC/HTR/スクロースの混合物)に対して0.5重量%で、実施例8の9種の試料それぞれに添加した。
【0155】
混合物を5mmの穴のあるテフロン(登録商標)型に詰め、2枚のガラススライドの間に置き、450nm可視光源に暴露して、インビトロ分解実験(以下の実施例10)用の1mm厚円板、またはインビトロ機械的強度テスト(以下の実施例11)用の10mm厚円筒を生成させた。そのようなインビトロテストによって、材料が整形外科または歯科的用途に有用か否かの良好な初期評価が得られる。例えば(1)圧縮降伏強度が高ければ、歯科インプラントが即時の咬合力および/または咀嚼力に耐え得るため、材料が即時歯科インプラントの目的に適していることが示され、(2)特定時間内の質量減少のパーセント値は、材料がインビボで吸収される速度を示し、骨/組織成長の状態が得られる。
【0156】
実施例10
分解実験
実施例9で製造した円板(口径5mm×厚さ1mm)を、別個の試験管に入れた。試験管にリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4に調整)約1.5mlを充填し、試験管を37℃にサーモスタット制御した振とうインキュベータに入れ、緩衝液を1〜2日ごとに除去して交換した。試料を定期的に取り出し、湿重量を計測し、その後乾燥させて再度、重量を計測した。これによって、平衡膨潤指数と経時的な質量減少を計算することができた。データは、三重測定で回収した。
【0157】
実施例11
機械的強度テスト
実施例9で製造した円筒(口径5mm×高さ10mm)を、機械的強度テストに用いた。無拘束一軸圧縮テスト(unconstrained uniaxial compression test)を利用して、室温での円筒の機械的性質を評価した。標準法を利用して、テスト前の500Nロードセルを較正した。各試料の5個の標本を、較正したロードセルを含む分析機に搭載した。目立つ傷(例えばウォーターポケットまたはエアポケットの形成)のところで破壊された標本は、廃棄した。クロスヘッド変位から、歪みを計算した。荷重および断面積から、応力を計算した。
【0158】
試料が互いに平行になっていることを確認するために、試料の端をチェックした。テスト日の直前に一晩、スクロースを含む試料(即ち、試料2、6および8)を、脱イオン水に浸漬した。標本全てを、24℃および周囲湿度でテストした。
【0159】
長さに沿った複数の点が0.01mmで並ぶキャリパーによって、各試料の口径を測定した。最小断面積を計算した。各標本の長さを、0.01mmの正確さで測定した。同心半円の型を作製して、標本を底のアンビルの中央に正確に載せた。各標本は、圧縮ツールのアンビル表面の間においた半円型に接するように載せた。テスト機械が圧縮ツールのプランジャーの上部に丁度接触するまで、テスト機械のクロスヘッドを調節した。テストの速度は、1.3±0.3mm/分に設定した。適切な応力の間隔で、荷重および対応する圧縮応力を記録して、完全な荷重−変形曲線を得た。テスト時の(破断する瞬間の)各標本が加えた最大荷重も記録した。標本が比較的延性ならば、降伏点に達した後に、速度を6mm/分に上昇させ、標本が破壊するまで機械をこの速度で運転した。テストの終了点は、標本が圧砕して破壊された時とした。
【0160】
以下の特性を計算した:(1)圧縮降伏歪:降伏点での歪;(2)圧縮降伏強度:降伏点での応力;および(3)圧砕荷重:テストの条件下で標本に加えられて、指定した破損度を生じるための最大圧縮力。
【0161】
実施例12
結果および考察
分解実験(実施例10)および機械的強度テストの結果を、以下に要約している。
【表6】
【0162】
これらの結果は、本発明の材料が、様々な用途に好適であることを示している。例えば試料(1)〜(2)は、非常に短期間の用途、およびHTRを暫時的に適所に保持する送達方法に好適であり、試料(3)は、短期間の用途、およびHTRを暫時的に適所に保持させる送達方法に好適であり、試料(4)は、短期間の用途に好適である。高膨潤性であるため、インテグレーションを良好にして細胞内浸透も良好にすることができ、試料(5)は、より多くのMSAを含む配合物よりも質量減少が有意に緩やかであるため、治癒およびインテグレーションのために安定性が求められる長期の用途に好適であり、試料(6)は、他の配合物よりも膨潤性が有意に高く、組織のインテグレーションを高めるのに有用となり得るため、治癒およびインテグレーションのために安定性が求められる長期の用途に好適であり、試料(7)は、膨潤性がなく、HTR含量がより高い配合物に比較して緩やかな速度で分解するため、安定性を保持しながら骨成長を促進する長期配合物に好適であり、試料(8)は、スクロースの存在が組織のインテグレーションの改善を補助し得るため、スクロースを添加して細胞浸透させる長期の需要に好適であり、試料(9)は、成功のために安定性が極めて重要な系に好適である。
【0163】
実施例13
多段階硬化
以下の配合物Fによって、硬化性混合物を生成する。
【表7】
【0164】
配合物Fにより生成した硬化性混合物を、同量の部AおよびBに分割する。過酸化ベンゾイル5mg(レドックス開始剤系の酸化成分)を、A部に混合する。得られたA部を、多筒式注射筒の一つの筒に入れる。N,N−ジメチル−p−トルイジン(DMPT)(レドックス開始剤系の還元成分)5mgを、B部に混合する。得られたB部を、多筒式注射筒の別の筒に入れる。
【0165】
注射筒の2筒の内容物を完全に混合して、得られた混合物を部分硬化させる。その後、部分硬化させた混合物を、組織部位に塗布し、放射線に暴露することによって更に硬化させる。筒の形態は、同軸の筒2本を1本につないだものか、または二重にしたもののいずれかでよく、この場合、光透過を減少させるために、筒の一方または両方が被覆されている。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】患者Aの術前X線写真を表す。
【図2】歯の下部の周囲に硬化性混合物を約5mm以下の層として塗布したことを表す。
【図3】歯科用ライトを用いて、処置部位で硬化性混合物を架橋/硬化したことを表す。
【図4】所望の厚さになった後に外科用の皮弁を縫合したことを表す。
【図5】手術20日後に撮影したX線写真を表す。
【図6】手術3ヶ月後に撮影したX線写真を表す。
【図7】感染および移植不全による口縁板全体および隣接の骨の破壊を表す。
【図8】その領域の壊死組織切除の後、明らかとなった大きな骨空隙部を表す。
【図9】金属製インプラントを歯科用器具を用いて骨空隙部に植立したことを表す。
【図10】骨空隙部に完全に植立された金属性インプラントを表す。
【図11】金属製インプラントと骨空隙部との咬合の様子を表す。
【図12】硬化性混合物をインプラントの周囲に5mm以下の層として塗布し、その層を標準の歯科用ライトで硬化させたことを表す。
【図13】前の層が固まった後、次の層を添加して硬化させたことを表す。
【図14】金属製インプラントを支持する本発明の硬化コンポジットを表す。
【図15】手術後即時に施された暫時的な人工歯冠を表す。
【図16】術後即時のX線写真を表す。
【図17】手術およびインプラント埋入の28日後に撮影したX線写真を表す。
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、インプラント材料または移植材料として体の一部で使用し得る材料に関する。具体的には本発明は、骨および/またはその他の組織の形成を促進し得る架橋性高分子材料、およびそのような材料の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
治癒の技術分野においては、組織、特に骨などの硬組織を置換、修復または再構築するためのインプラント材料または移植材料が必要となることが多い。例えば硬組織のインプラント材料は、医療および獣医療において、傷害または疾患のある骨を修復するための人工骨材料として用いられてきた。硬組織のインプラント材料は、骨に固定する人工関節の構築にも使用されている。歯科の技術分野では、硬組織のインプラント材料は、外傷、疾患または歯の欠損によって生じる顎骨損傷の再構築;無歯顎堤の置換または増大;歯槽の移植による顎骨量減少の予防;および歯周骨欠損(periodontal bone void defects)の処置において用いられている。
【0003】
具体的には歯科の技術分野においては、抜歯の際に歯槽骨に大きな空洞ができる。歯槽骨は、2〜3年で40〜60%の速度で吸収され始め、死亡するまで0.25%〜0.50%/年の割合で毎年吸収され続ける(Ashman A.et al.,Prevention of Alveolar Bone Loss Post Extraction with HTR Grafting Material.Oral Surg. Oral.Med.Oral.Pathol.60(2):146−153,(1985))。残存する歯の移動、膿瘤の形成、上顎洞の拡大、義歯維持の低下、咬合口径の喪失、フェイシャルラインの形成、ブリッジと歯肉の間の不快な隙間は、そのような歯の欠損による望ましくない結果の一部である(Luc.W.J.Huys,Hard Tissue Replacement,Dentist New,(2000年2月15日))。そのような骨量減少は、抜歯した歯の代わりに歯科インプラントを設置する際にも重大な問題を生じる。過去数年で、インプラント候補のほぼ95%が、歯槽骨の高さおよび/または幅が不十分であることを理由に却下されたことが報告されている(Ashman A.Ridge,Prevention,Important Buzzwords in Dentistry,General Dentistry,May/June,(2000))。
【0004】
抜歯に関連する骨および軟組織の問題を克服するための確かな技術の一つは、抜歯部位に骨移植材料(例えば合成品、ウシまたは死体由来のもの)を充填して、新たな骨成長に十分な期間、抜歯部位をゴム組織または歯科用「包帯」(例えばBiofoil(登録商標) Protective Stripes)で覆う(例えば縫合する)ことである。新たに再生/生成する骨の骨伝導性スカフォールドとして働く骨移植材料の混合物を、空洞に充填する。インプラントの設置が望ましい場合、空洞内の骨再生(または治癒)に十分な期間を経て、円筒穴のドリルで過去の抜歯部位を整えてもよく、そして通常の方法で歯科インプラントを設置してもよい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのような技術に関わる問題は、ほとんどの骨移植材料(例えば死体由来およびウシ由来のもの)では、歯科インプラントを抜歯後即時に設置して好適な歯冠の機能を与えることができないことである。患者は、繰り返し歯科医院を訪れる必要があり、多くの場合、機能的な歯冠を設置できるまでに最大6ヶ月待たされる。近年になり、以下に詳述するBioplant(登録商標)HTR(登録商標)などの少数の骨移植材料を用いて、抜歯後即時にインプラントを設置し得ることが報告された(Ashman A.et al., Ridge Augmentation for Immediately Postextraction Implant:Eight−Year Retrospective Study,The Regeneration Report,7(2),85−95,(1995); Yukna R.A.et al., Evaluation of Hard Tissue Replacement Composite Graft Material as a Ridge Preservation/Augmentation Material in Conjunction with Immediate Hydroxyapatite−Coated Dental Implants, J.Periodontol.,pages 679−685, May 2003,;およびYukna R.A.et al., HTR Synthetic Bone Grafts and Immediate Dental Implants,Compendium of Continuing Education in Dentistry,pages 649−657, September 2003,24(9))。しかし、そのような抜歯後即時インプラントでは、歯冠による咬合の機能が即時には得られない。荷重前にインプラント周辺に骨形成させるのに、通常4〜8ヶ月の治癒期間を要する。言い換えると、例えば本発明以前なら、患者が前歯を抜歯して交換しなければならない場合、歯科医にできる最良の方法は、金属インプラント(例えばチタン)を抜歯直後に設置し、窩洞内のインプラント周囲に骨移植材料(例えばBioplant(登録商標)HTR(登録商標)または「制御膜」)を詰めて、患者を帰宅させることであった。金属インプラント設置の数ヶ月後にインプラントが荷重負荷されるようになる(即ち、オステオインテグレーションされる)まで、歯冠を金属インプラントの上部に設置することができない。その間、患者は機能をなくした状態(例えば咀嚼することができない)、または審美的に好ましい代替歯がない状態である。
【0006】
骨移植材料は、有機物(例えば死体またはウシ由来)、合成品またはそれらの混合のいずれかであってもよい。
【0007】
この10年間で、骨移植材料として、高分子材料が広く用いられてきた。これらの材料は、生体不活性で生体適合性があり、時間の経過と共に宿主組織に置き換わる暫時的スカフォールドとして働くことができ、加水分解または他の手段によって非毒性の生成物に分解することができる。
【0008】
米国特許第4,535,485号(‘485号特許)および同第4,536,158号(‘158号特許)各明細書は、概して高分子粒子で構成された骨または他の硬組織代替物として使用される、特定の高分子を基材とするインプラント可能な多孔質補ていを開示している。‘485号および‘158号各特許の多孔質補ていは、歯科および整形外科での多くの用途に適うことが立証されているが、改善の余地がある。
【0009】
米国特許第4,728,570(‘570号特許)は、硬組織の成長を誘導する多孔質インプラント材料を開示している。‘570号特許に基づくと、Bioplant Inc. (South Norwalk CT)は、Bioplant(登録商標)HTR(登録商標)という名称の、緩徐に吸収され得る製品を製造している。Bioplant(登録商標)HTR(登録商標)は、骨量減少の予防と骨生成の促進の両方に非常に有用であることが立証されている。それは、上述の抜歯即時インプラントだけでなく、審美的な組織膨化にも好適であることが見出されている。しかしそれは、本発明以前の骨移植材料全てに関わる重要な問題を含み、即ち抜歯窩または無歯空間に設置したインプラントは、即時に機能を得るわけではない。患者は、歯冠設置の数ヶ月後に歯科医院を再来するまで、インプラント周辺での骨生成(例えばオステオインテグレーション)を数ヶ月待たなければならない。
【0010】
この10年間に、PMMAおよびPHEMAよりも生分解性および/または生体吸収性の高いポリマーが、代替組織の分野に導入されてきた。
【0011】
ポリ(L−乳酸)、ポリ(グリコール酸)、および乳酸・グリコール酸共重合体などの分解性ポリエステルから製造された医療装置が、ヒトでの使用をFood and Drug Administrationに認可され、多くの医療用途、例えば縫合において用いられてきた。しかしこれらのポリマーは、均一なバルク分解を受け、それが材料の長期機械的性質に悪影響を及ぼし、分解の終了近くになると酸生成物の大規模な破壊が起るため(例えば点火のように)、荷重負荷の高い骨用途において機能を回復させるのに必要な多くの性質が欠けている。これに対して、表面侵食ポリマー(surface eroding polymers)(ポリ酸無水物など)は、分解時に機械的結着性を保持し、寸法を徐々に縮小させながら骨を内方に成長させる。しかし直鎖状ポリ酸無水物系は、機械的強度が低い。
【0012】
米国特許第5,837,752号明細書(‘752号特許)は、(1)直鎖状の疎水性生分解性ポリマーおよび直鎖状非生分解性親水性ポリマーからなる群から選択される直鎖状ポリマーと、(2)少なくとも1個のフリーラジカル重合性基を含む1種以上のモノマーまたはマクロマーであって、無水物結合とアクリレートまたはメタクリレートからなる群から選択される重合性基とを含む1種以上の架橋性モノマーまたはマクロマーと、を含む骨修復用の半相互侵入高分子網目(セミIPN)を開示している。
【0013】
米国特許第5,902,599号明細書(599号特許)は、様々な歯科および整形外科の用途に有用な生分解性高分子網目を開示している。そのような生分解性高分子網目は、不飽和部分などの架橋性基を含む無水物プレポリマーを重合することによって形成させることができる。無水物プレポリマーは、例えば感光性フリーラジカル開始剤の存在下で、プレポリマーに光を照射することによる光重合反応で架橋させることができる。
【0014】
WO01/74411は、少なくとも2個の重合性末端基を備えた架橋性多官能性プレポリマーを含む生分解性インプラントを製造するのに好適な組成物を開示している。それは、抜歯窩に即時に金属製スクリューインプラントを設置すること;骨とインプラントの間の空隙にBioplant(登録商標)HTR(登録商標)などの移植材料をしっかりと詰めること;移植材料の上部に架橋性多官能性プレポリマーの層を塗布すること;および層を硬化させて金属インプラントの周囲に硬い環を形成させることを開示している。主張によると、インプラントの首部の周りの硬化環は、主にインプラントの首部に集中するインプラントへの噛力に耐える。しかし、インプラントは、ガムラインの近辺の非常に狭い領域である首部に固定されているにすぎず、主張にあるそのような硬化環による支持および耐性は、短期または長期のいずれにも十分でない。つまり硬化環が固まったとしても、短期での適切な剛性を付与しない。長期では、硬化環は骨刺激材料を含まないため、十分な骨再生能がない。つまりそのインプラントは、安定しておらず、微小動揺が少なからず発生し、即時荷重負荷ではない。したがってWO01/74411は、即時機能のある代替歯を教示および示唆しておらず、実現できない。
【0015】
それゆえ代替および修復の技術分野においては、骨の再生工程の時間を短縮させて即時機能の歯科インプラントを可能にし、十分な機械的強度を付与し、そして/または微小動揺を最小限に抑える材料および方法が引き続き求められている。加えて、歯科、整形外科および薬物送達での用途に利用できる材料の範囲を広げる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、歯科、整形外科および薬物送達を目的とする新規な組成物に関する。具体的には本発明は、代用骨と架橋性プレポリマーとの混合物を含む組成物に関する。その上、本発明は、その混合物を架橋させることによって形成される組成物に関する。
【0017】
意外にも、前述の発明が、硬化によって即時に硬くなり荷重負荷になって、歯冠の設置を即時に支持し、人工歯の即時機能を与える硬化性混合物を付与することが発見された。
【0018】
代用骨は、アロプラスト、自家移植片、同種異系移植片、異種移植片またはそれらの混合物であってもよい。好ましくはそれは、アロプラスト、より好ましくは高分子アロプラスト(多孔質または非多孔質)、より好ましくは多孔質ミクロンサイズ粒子であり、各粒子は、第1の高分子材料を含むコア層と、コア層をほぼ取り囲み、第2の高分子材料で構成されるコーティングと、を含み、第2の高分子材料は、親水性で第1の高分子材料と組成が異なり、高分子材料は両者とも生体適合性である。
【0019】
好ましくはミクロンサイズ粒子の口径は、約250ミクロン〜約900ミクロンの範囲内である。
【0020】
好ましくは第1の高分子材料は、ポリメタクリル酸メチルで、第2の高分子材料は、高分子メタクリル酸ヒドロキシエチルであり、組成物は、代用骨のミクロンサイズ粒子の内表面および外表面に分布する若干の水酸化カルシウムを更に含む。水溶液(例えば血液)に暴露されると、水酸化カルシウムが、炭酸カルシウムアパタイト(骨)化合物に転化する。
【0021】
架橋性プレポリマーは、重合性基を含み架橋すると高分子網目を形成するモノマーおよび/またはオリゴマーを含む。
【0022】
架橋性プレポリマーには3例の実施形態があり、特にポリ酸無水物を使用する場合には、最初の2例が最も好ましい。硬化させると、ポリ酸無水物および架橋構造の疎水性によってポリマー内部から水が排出されて、表面のみが加水分解される。つまりそのポリマーは、外側から内側に向かってしか侵食されない。硬化コンポジットは、構造的結着性および/または機械的結着性を維持するため、この種の分解は、歯科、整形外科および薬物送達の用途で特に有利である。比較すると、以下の第3の実施形態に開示されるポリオルトエステルおよびポリアセタールなどは、しっかりと架橋されておらずより親水性で水の浸透を受けやすいため、より均一に分解される傾向がある。それゆえ第3の実施形態における生分解性結合は、内部だけでなく外部からも破壊されて、最初の強度をより急速に失っていく。
【0023】
第1の実施形態において、架橋性プレポリマーは、i)二酸または多官能性酸のモノマーまたはオリゴマーと、ii)不飽和炭化水素部分である架橋性基を含むカルボン酸分子と、の1種以上の無水物を含む。
【0024】
第2の実施形態において、架橋性プレポリマーは、
a)疎水性生分解性ポリマーまたは非生分解性親水性ポリマーである直鎖状ポリマーと、
b)少なくとも1個のラジカル重合性基を含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーであって、無水物結合とアクリレートまたはメタリレートである重合性基とを含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーと、を含む架橋性半IPN前駆体である。
【0025】
疎水性生分解性ポリマーは、ポリ酸無水物であることが好ましい。
【0026】
第3の実施形態において、架橋性プレポリマーは、少なくとも2個の重合性末端基を含み、0〜60℃の温度で三次元形状に変形可能且つその温度範囲内で架橋可能となるような粘性を有している。
【0027】
上記3例の実施形態全てにおいて、架橋性プレポリマーは、開始剤、好ましくは光開始剤、または光開始剤とレドックス開始剤系との混合物を更に含んでいてもよい。
【0028】
任意に組成物は、治療薬、骨形成促進剤、細孔形成剤および診断薬を更に含む。
【0029】
代用骨と、架橋性プレポリマーまたは架橋性半IPN前駆体と、を含む硬化性混合物は、硬化されて硬化コンポジットを形成する。
【0030】
硬化性混合物および硬化コンポジットは、整形外科、歯科および薬物送達の分野で有用である。それらは、一般に骨または他の組織の再生が必要となる場合に用いることができる。治療薬をそれらに配合すれば、それらは、薬物送達装置として有用になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明は、硬化性混合物、および硬化性混合物から形成された硬化コンポジットに関する。本発明は、硬化性混合物および硬化コンポジットの使用方法にも関する。
【0032】
硬化性混合物および硬化コンポジット
硬化コンポジットは、硬化性混合物を架橋させることにより形成される。代用骨と架橋性プレポリマーとを混合して、実質的に均質な混合物を形成させることによって、硬化性混合物が形成される。その混合物は、前もって形成させたものでもよく、または使用の直前に形成させてもよい。
【0033】
代用骨
代用骨は、当業者に公知の骨移植材料、好ましくは高分子物質のいずれであってもよい。それは、有機物もしくは合成品、またはそれらの混合物であってもよい。有機物代用骨としては、自家移植片、同種異系移植片、異種移植片またはそれらの混合物が挙げられる。死体由来の材料が、同種異系移植片の非限定的実施例である。ウシ由来の材料(例えば、Osterograf(登録商標)N−300、およびOsterograf(登録商標)N−700)は、異種移植片の非限定的実施例である。合成代用骨は、アロプラストとしても公知である。アロプラストの非限定的実施例としては、リン酸カルシウム系および硫酸カルシウム系セラミックス、および高分子骨移植片材料が挙げられる。好ましくは代用骨は、アロプラスト、より好ましくは高分子アロプラストを含む。
【0034】
高分子アロプラストは、好ましくは複数のミクロンサイズ粒子(好ましくは、口径が約250〜900ミクロン)であり、各粒子が、第1の高分子材料を含むコア層と、コア層をほぼ取り囲むコーティングとを含む。コーティングは、親水性で第1の高分子材料と組成が異なる第2の高分子材料を含む。高分子アロプラストの高分子材料は、両者とも生体適合性である。第1の高分子材料は、好ましくはアクリル系ポリマー、より好ましくはポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)である。PMMAは、所望なら可塑化剤を更に含んでいてもよい。第2の高分子材料は、好ましくは高分子メタクリル酸ヒドロキシエチル(PHEMA)である。好ましい高分子粒子は、‘485号特許に開示されており、その明細書は、全体が参考として本明細書に援用されている。
【0035】
より好ましい実施形態において、代用骨は、複数の種類の水酸化カルシウム処理した高分子ミクロンサイズ粒子である。若干の水酸化カルシウムを体腔に包み込むと、高分子ミクロンサイズ粒子の細孔内および表面で硬組織を成長させるのに効果的である。好ましくは水酸化カルシウムは、高分子粒子の外表面および内表面の両方でコーティングを形成する。
【0036】
代用骨のミクロンサイズ粒子は、任意に硫酸バリウムなどの非結合剤(non−bonding agent)を更に含むことで、粒子が互いに結合するのを防いでもよい。硫酸バリウムは、放射線不透過性化合物でもあり、硬化性混合物および硬化コンポジットをX線写真で視覚化できるようにするために含ませてもよい。水酸化カルシウムも、高分子粒子の相互の結合の予防を助ける。
【0037】
本発明の硬化性混合物の代用骨成分を生成させるための好ましい手順は、‘158号特許の明細書に説明されている。好ましくは、ミクロサイズ粒子を水酸化カルシウムの水溶液に浸漬させ、その後、過剰の溶液を粒子から取り除いて粒子を放置して乾燥させることによって、水酸化カルシウムを粒子の細孔に導入させる。水酸化カルシウムの好ましい溶液は、約0.05重量%〜約1.0重量%範囲の濃度の水酸化カルシウムを含む。
【0038】
最も好ましい実施形態において、代用骨は、本明細書に全体が参考として援用した‘570号特許に示されるBioplant Inc. (Norwalk, CT)から入手されるBioplant(登録商標)HTR(登録商標)である。Bioplant(登録商標)HTR(登録商標)は、PMMAとPHEMAとの石灰化(Ca(OH)2/炭酸カルシウム)共重合体の多孔質粒子であり、外側のカルシウム層が骨と相互作用して、炭酸カルシウムアパタイトを形成している。粒子の外径は約750μm、内径は約600μmで、孔径は約350μmである。Bioplant(登録商標)HTR(登録商標)は、強力で(50,000lb/inを超える力でもBioplant(登録商標)HTR(登録商標)は破壊されない)、生体適合性があり負に荷電しているため(−10mV)、細胞の引力を促し感染に抵抗する。
【0039】
架橋性プレポリマー
架橋性プレポリマーは、重合性基、好ましくはラジカル重合性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーを含み、架橋して高分子網目を形成する。適切な高分子性基としては、ビニルエーテル、アリル基、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸および不飽和トリカルボン酸などの不飽和アルケン(即ちビニル基)が挙げられる。不飽和モノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸およびクロトン酸が挙げられる。不飽和ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸またはシトラコン酸が挙げられる。好ましい重合性基は、アクリレート、ジアクリレート、オリゴアクリレート、ジメタクリレート、オリゴメタクリレートおよび他の生物学的に許容され得る重合性基である。(メタ)アクリレートが、最も好ましい活性種の重合性基である。
【0040】
これらの重合性基は、疎水性または親水性ポリマー上に存在してもよく、組成物の疎水性を調整するために用いてもよい。適切な疎水性ポリマーの非限定的例としては、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酸、ポリジオキサノン、ポリカーボネート、およびポリアミノカーボネートが挙げられる。適切な親水性ポリマーの非限定的例としては、合成ポリマー、例えばポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、部分または完全加水分解したポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(エチレンオキシド)・ポリ(プロピレンオキシド)ブロック共重合体(ポロクサマーおよびメロクサポル)、ポロキサミン、カルボキシメチルセルロース(および誘導体)、およびヒドロキシアルキル化セルロース(および誘導体)、例えばヒドロキシエチルセルロースおよびメチルヒドロキシプロピルセルロースなど、並びに天然ポリマー、例えばポリペプチド、Ficoll(登録商標)ポリスクロースなどの多糖類または炭水化物、ヒアルロン酸、デキストラン(および誘導体)、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリンまたはアルギン酸塩、および蛋白質、例えばゼラチン、コラーゲン、アルブミンもしくはオボアルブミン、またはそれらの共重合体もしくは混合物が挙げられる。
【0041】
好ましくはモノマーおよび/またはオリゴマーは、生分解性結合、例えばアミド結合、無水物結合、カーボネート結合、エステル結合またはオルトエステル結合など、より好ましくは無水物結合を含むため、そのモノマーおよび/またはオリゴマーによって形成される高分子網目は、生分解性である。
【0042】
好ましくはそれは、開始剤、より好ましくは光開始剤、または光開始剤とレドックス開始剤系との混合物を更に含む。
【0043】
架橋性プレポリマーの分子量は、好ましくは約150〜約20,000の範囲内である。好ましくはプレポリマーは、構造内に1〜約100個、より好ましくは約1〜約20個、最も好ましくは約1〜約10個の反復単位を含む。
【0044】
架橋性プレポリマーの非限定的3つの実施形態を、以下に開示する。
【0045】
架橋性プレポリマーの第1の実施形態の詳細
第1の好ましい実施形態のとおり、架橋性プレポリマーは、1個以上の無水物モノマーまたはオリゴマーである。有用なモノマーまたはオリゴマーとしては、二酸または多官能性酸と、不飽和部分などの架橋性基を含むカルボン酸分子と、の無水物が挙げられる。
【0046】
好ましくは架橋性プレポリマーは、各末端に不飽和炭化水素部分を含む直鎖状物質で、ジカルボン酸モノマーまたはオリゴマーと、不飽和部分を含むカルボン酸分子と、の二無水物を含む。より望ましくはそれは、セバシン酸および1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)アルカン、例えば1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンなどからなる群から選択される二酸のモノマーまたはオリゴマーのメタクリル酸二無水物を含む。
【0047】
例示としての二酸または多官能性酸では、セバシン酸、1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)アルカン、例えば1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン(MCPP)もしくは1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)ヘキサン(MCPH)など、ドデカン二酸、フマル酸、ビス(p−カルボキシフェノキシ)メタン、テレフタル酸、イソフタル酸、p−カルボキシフェノキシ酢酸、p−カルボキシフェノキシ吉草酸、p−カルボキシフェノキシオクタン酸またはクエン酸が挙げられる。好ましくはそれは、セバシン酸または1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)アルカンである。
【0048】
例示としてのカルボン酸では、例えばアクリル基、メタクリル基、ビニル基および/またはスチリル基を含むメタクリル酸または他の官能基化カルボン酸が挙げられる。好ましいカルボン酸は、メタクリル酸である。
【0049】
例えば二酸を、カルボン酸の活性化形態、例えば無水物などと反応させて、無水物を形成させることによって、無水物モノマーまたはオリゴマーが形成される。架橋性プレポリマーとして好適な無水物モノマーまたはオリゴマーの詳細な説明は、‘599号特許内で付与されており、その明細書は、全体が参考として援用されている。
【0050】
メタクリル化セバシン酸(MSA)およびジメタクリル酸(1,3−ビス(カルボキシフェノキシ))プロピル(CPPDM)を合成する別の経路は、Tarcha,et al.,J.Polym.Sci.Part A,Polym.Chem.(2001),39,4189に記載されている。
【0051】
好ましい実施形態において、架橋性プレポリマーは、第1の無水物と第2の無水物の混合物である。これらの無水物の比は、具体的な用途に最も適した生分解性、親水性および/または付着性が得られるように調整してもよい。
【0052】
例えば、セバシン酸から形成されたジメタクリル化無水物モノマーを架橋させることによって形成される高分子網目は通常、1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)アルカンから形成されるものよりもかなり急速に生分解される。つまり、セバシン酸から形成される無水物を、1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)アルカンから形成される無水物と様々な比で混合すると、多様な分解挙動が得られる。
【0053】
第2の無水物に対する第1の無水物の比は、非常に様々であってもよい。好ましくはそれは、約1:20〜約20:1、より好ましくは約1:5〜約5:1、より好ましくは約1:5〜約1:1の範囲内、最も好ましくは約1:1である。
【0054】
好ましくは以下に詳述するとおり架橋性プレポリマーは、光開始剤、または光開始剤とレドックス開始剤系との混合物を含む。
【0055】
架橋性プレポリマーの第2の実施形態の詳細
第2の実施形態において、架橋性プレポリマーは、架橋性半IPN前駆体である。
【0056】
架橋性半IPN前駆体は、少なくとも2成分を含んでおり、第1の成分は直鎖状ポリマーで、第2の成分は1種以上の架橋性モノマーまたはマクロマーである。架橋性半IPN前駆体は、架橋すると半相互侵入高分子網目(半IPN)を形成する。半IPNは、一方の成分が架橋性ポリマーで、他方の成分が非架橋性ポリマーの2種の独立した成分を含む組成物と定義される。架橋性半IPN前駆体と、それが形成する半IPNは、全体を参考として援用したShastri et al.,に付与された米国特許第5,837,752号明細書に詳述されている。
【0057】
架橋性半IPN前駆体の第1の成分は、直鎖状ポリマーである。好ましくは第1の成分の直鎖状ポリマーは、(i)直鎖状の疎水性生分解性ポリマー、好ましくはヒドロキシ酸および/もしく無水物結合を含む単独重合体もしくは共重合体、または(ii)直鎖状の非生分解性親水性ポリマー、好ましくはポリエチレンオキシドもしくはポリエチレングリコールである。
【0058】
好ましくは少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーが、分解性結合、好ましくは無水物結合を含む。直鎖状ポリマーは、好ましくは架橋性半IPN前駆体組成物の10〜90重量%、より好ましくは架橋性半IPN前駆体組成物の30〜70重量%を構成している。
【0059】
直鎖状ポリマーは、架橋されていない単独重合体またはブロック共重合体である。疎水性ポリマーは、当業者に周知である。好適な生分解性ポリマーの例としては、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酸、ポリジオキサノン、ポリカーボネート、およびポリアミノカーボネートが挙げられる。好ましいポリマーは、ポリヒドロキシ酸およびポリ酸無水物である。ポリ酸無水物が、最も好ましいポリマーである。
【0060】
直鎖状親水性ポリマーは、当業者に周知である。好適な親水性非生分解性ポリマーの例としては、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、部分または完全加水分解したポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキシド)・ポリ(プロピレンオキシド)ブロック共重合体(ポロクサマーおよびメロクサポル)、およびポロキサミンが挙げられる。好ましい親水性非生分解性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)、ポロキサミン、ポロクサマーおよびメロクサポルである。ポリ(エチレングリコール)が、最も好ましい親水性非生分解性ポリマーである。
【0061】
架橋性半IPN前駆体の第2の成分は、1種以上の架橋性モノマーまたはマクロマーである。好ましくは少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーは、無水物結合を含む。用い得る他のモノマーまたはマクロマーとしては、少なくとも1個のラジカル重合性基を含む生体適合性モノマーおよびマクロマーが挙げられる。例えば、開示を参考として本明細書に援用したBoard of Regents, University of Texas SystemによるWO93/17669に開示されたとおり、架橋させることが可能なアルケン結合を含むポリマーを用いてもよい。
【0062】
好適な重合性基としては、ビニルエーテル、アリル基、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸および不飽和トリカルボン酸などの不飽和アルケン(即ちビニル基)が挙げられる。不飽和モノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸およびクロトン酸が挙げられる。不飽和ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸またはシトラコン酸が挙げられる。好ましい重合性基は、アクリレート、ジアクリレート、オリゴアクリレート、ジメタクリレート、オリゴメタクリレートおよび他の生物学的に許容され得る重合性基である。(メタ)アクリレートが、最も好ましい活性種の重合性基である。
【0063】
これらの官能基は、疎水性または親水性ポリマー上に存在してもよく、組成物の疎水性を調整するために用いてもよい。適切な疎水性ポリマーとしては、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酸、ポリジオキサノン、ポリカーボネート、およびポリアミノカーボネートが挙げられる。適切な親水性ポリマーとしては、合成ポリマー、例えばポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、部分または完全加水分解したポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレンオキサゾリン)、ポリ(エチレンオキシド)・ポリ(プロピレンオキシド)ブロック共重合体(ポロクサマーおよびメロクサポル)、ポロキサミン、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシアルキル化セルロース、例えばヒドロキシエチルセルロースおよびメチルヒドロキシプロピルセルロースなど、並びに天然ポリマー、例えばポリペプチド、Ficoll(登録商標)ポリスクロースなどの多糖類または炭水化物、ヒアルロン酸、デキストラン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリンまたはアルギン酸塩、および蛋白質、例えばゼラチン、コラーゲン、アルブミンもしくはオボアルブミン、またはそれらの共重合体もしくは混合物が挙げられる。
【0064】
ポリマーは、生分解性であってもよいが、好ましくは生分解性が低く(溶解の予測性のため)、排泄されるのに十分、分子量が低いものである。ヒト(または使用が予定される他の種)が排泄ができる最大分子量は、ポリマー種によって様々であるが、多くの場合、約20,000ダルトン以下であろう。
【0065】
ポリマーは、他の基に結合した2種以上の水溶性ブロックを含んでいてもよい。そのような結合基は、生分解性結合、重合性結合、またはその両方を含んでいてもよい。例えばマレイン酸、フマル酸またはアコニット酸などの不飽和ジカルボン酸は、ポリエチレングリコールなどヒドロキシ基を含む親水性ポリマーでエステル化されているか、またはポロキサミンなどアミン基を含む親水性ポリマーでアミド化されていてもよい。
【0066】
これらのポリマーの合成方法は、当業者に周知である。例えば、Concise Encyclopedia of Polymer Science and Polymeric Amines and Ammonium Salts,E.Goethals,editor(Pergamen Press,Elmsford,N.Y.1980)を参照されたい。ポリ(アクリル酸)などの多くのポリマーは、市販されている。当該技術分野で入手でき、例えばWiley−Interscience Publication,New Yorkから出版された、Marchによる「Advanced Organic Chemistry」4th Edition,1992に記載された化学反応を利用して、天然および合成ポリマーを変性させてもよい。
【0067】
好ましくはラジカル重合性基を含むモノマーおよび/またはマクロマーは、分子あたり平均で1個をわずかに超える架橋性基、より好ましくは分子あたり平均で2個以上の重合性基または架橋性基を含む。各重合性基は、鎖内に重合するため、ポリマーあたり1個をほんのわずかに超える反応性基(即ち、平均で約1.02個の重合性基)を用いれば、架橋性材料を生成させることができる。
【0068】
架橋性プレポリマーの第3の実施形態の詳細
架橋性プレポリマーの第3の実施形態は、WO01/74411(米国での呼称)に開示されており、その特許の明細書は、全体が参考として本明細書に援用されている。具体的にはそれは、少なくとも2個の重合性末端基を含み、0〜60℃の温度で三次元形状に変形可能であり、その温度範囲内で架橋可能となるような粘性を有する架橋性多官能性プレポリマーである。好ましくは架橋性プレポリマーは、親水性領域と、少なくとも1個の生分解性領域と、少なくとも1個の重合性領域とを含み、1〜約100個、より好ましくは1〜20個、最も好ましくは1〜10個の反復単位を有している。親水性領域は、好ましくはポリエチレングリコール、またはエチレンオキシドとアルキレンオキシドとの共重合体であり、重合度は、2〜500の範囲内である。
【0069】
架橋性プレポリマーは、ポリアセタール配列;ラクトンコモノマーのどれもが、得られたポリエステル配列にモル率で75%を超える量で存在しないようなラクトンの混合物を共重合させて得られるポリエステル配列;ポリオルトエステル配列;またはポリエステル配列とポリオルトエステル配列との混合物を含んでいてもよい。架橋性プレポリマーの重合性領域は、アルケン、アルキンまたはその両方を含む。
【0070】
架橋性プレポリマーに対する代用骨の比
硬化性混合物中の架橋性プレポリマーに対する代用骨の比は、広範囲の値であってもよい。好ましくはその比は、1:20〜20:1、より好ましくは1:2〜2:1、最も好ましくは約1:1である。
【0071】
任意の成分
本発明の硬化性混合物および/または硬化コンポジットは、次の任意成分を含んでいてもよい。
【0072】
開始剤
好ましい実施形態において、硬化性混合物は、光開始剤、熱活性化剤、レドックス開始剤系、イオン性開始剤、またはその混合物などのフリーラジカル開始剤を含む。いずれのフリーラジカル開始剤または開始剤混合物を用いてもよい。第1の好ましい実施形態においては、1種以上の光開始剤が用いられる。第2の好ましい実施形態においては、1種以上のレドックス開始剤系が用いられる。第3の好ましい実施形態においては、1種以上の熱開始剤が用いられる。第4の好ましい実施形態においては、1種以上の光開始剤が、1種以上のレドックス開始剤系と併用される。第5の好ましい実施形態においては、1種以上の熱開始剤が、1種以上のレドックス開始剤系と併用される。第6の実施形態においては、1種以上の光開始剤が、1種以上の熱開始剤と併用される。第7の好ましい実施形態においては、1種以上の光開始剤および1種以上の熱開始剤が、1種以上のレドックス開始剤系と併用される。
【0073】
用いられる開始剤の濃度は、多数の因子に依存する。そのような因子の非限定的例としては、開始剤の種類、開始剤が単独で用いられるか、または他の開始剤と併用されるか、所望の硬化速度、および材料を適用する方法が挙げられる。好ましい実施形態において、開始剤の濃度は、架橋性プレポリマーの約0.05重量%〜約5重量%である。光開始剤またはレドックス開始剤系の場合、開始剤の濃度は、好ましくは架橋性プレポリマーの1重量%未満、より好ましくは0.05〜0.1重量%である。熱開始剤の場合、好ましい範囲は、架橋性プレポリマーの約1重量%〜約2重量%である。
【0074】
光開始剤
光開始剤は、放射線によって活性化される開始剤である。そのような放射線は、紫外光(例えば長波長紫外光)、可視範囲の光、集光レーザー光、赤外光および近赤外光、X線、またはγ線であってもよい。好ましい放射線は、可視領域および/または近赤外領域内の光である。
【0075】
光開始剤の非限定的例としては、生分解性光開始剤、例えばβカロテン、リボフラボン、Irgacure651(登録商標)(2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン)、フェニルグリシンなど、染料、例えばエオジン染料など、並びに開始剤、例えば2,2−ジメチル−2−フェニルアセトフェノン、2−メトキシ−2−フェニルアセトフェノン、およびカンファーキノンなどが挙げられる。
【0076】
染料および共触媒、例えばアミンなどを光に暴露すると、活性種が生成する。染料が光を吸収すると、染料は三重項状態をとり、三重項状態は、次にアミンと反応して活性種を形成し、重合を開始する。光重合のために、多数の染料を用いることができる。適切な染料は、当業者に周知である。好ましい染料としては、エリストシン、フロキシム、ローズベンガル、トニン(thonine)、カンファーキノン、エチルエオジン、エオジン、メチレンブルー、リボフラビン、2,2−ジメチル−2−フェニルアセトフェノン、2−メトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、および他のアセトフェノン誘導体が挙げられる。好適な共触媒としては、アミン、例えばN−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、ジベンジルアミン、N−ベンジルエタノールアミン、N−イソプロピルベンジルアミンなどが挙げられる。トリエタノールアミンが、好ましい共触媒である。
【0077】
光開始剤を含む組成物は、好ましくは不透明容器内で保存される。
【0078】
レドックス開始剤系
レドックス開始剤系としては、酸化剤(酸化成分とも呼ぶ)(過酸化物など)および還元剤(還元成分とも呼ぶ)(芳香族または脂肪族アミンなど)が挙げられる。レドックスカップルの混合物によって、硬化させることが可能な開始剤(フリーラジカルまたはカチオンなど)が生成する。好ましくは本発明のレドックスカップルは、約40℃未満の温度、例えば室温または生理学的温度37℃で活性化される。一般にレドックスカップルは、使用前に別個の反応組成物に分別しておき、その後続いて使用時に混合して、所望の開始剤を生成させる。レドックスカップルの選択は、複数の基準に左右される。例えば、所望の酸化剤は、還元剤を酸化するのに十分な酸化の性質を持つが、保存時に混合され得る他の成分と早期に反応するほど、過剰には酸化しないものである。同様に所望の還元剤は、好ましい酸化剤と容易に反応するのに十分な還元の性質があるが、保存時に混合され得る他の成分を還元するほど、過度な還元性がないものである。樹脂を不適切な還元剤または酸化剤でそれぞれ酸化または還元すると、それぞれ早期に重合して、その後の保存期限が短くなる不安定な系になる可能性がある。つまり好適なレドックスカップルは、個々に良好な保存期限(例えば、5〜20℃の環境で、少なくとも2ヶ月、好ましくは少なくとも4ヶ月、より好ましくは少なくとも6ヶ月)を付与し、そのため互いに混合すると、硬化性混合物を硬化、または部分硬化させるための所望の開始剤を生成する。
【0079】
適切な酸化剤としては、過酸化水素などの過酸化物化合物(即ちペルオキシ化合物)、並びに無機および有機過酸化物化合物(例えば「過」化合物またはペルオキソアニオンでの塩)が挙げられる。適切な酸化剤の例としては、非限定的に、過酸化物、例えば過酸化ベンゾイル、過酸化フタロイル、置換された過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化カプロイル、過酸化ラウロイル、過酸化シンナモイル、過酸化アセチルベンゾイル、過酸化メチルエチルケトン、過酸化ナトリウム、過酸化水素、過酸化ジ−tert−ブチル、過酸化テトラリン、過酸化尿素および過酸化クメンなど;ヒドロペルオキシド、例えばp−メタンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、メチルエチルケトンヒドロペルオキシド、および1−ヒドロキシシクロヘキシルヒドロペルオキシド−1など、過硫酸アンモニウム、過ホウ素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、過硫酸カリウムなど;オゾン、オゾニドなどが挙げられる。これらの酸化剤を、単独で、または互いに混合して用いてもよい。過酸化ベンゾイルが、好ましい酸化剤である。1種以上の酸化剤が、硬化工程を開始させるのに十分な量で存在してもよい。好ましくはこれは、歯科材料の全成分の総重量に基づいて、約0.01重量%〜約4.0重量%、より好ましくは約0.05重量%〜約1.0重量%含まれる。
【0080】
還元剤は、酸化剤を活性化させるために1個以上の官能基を含む。好ましくはそのような官能基は、アミン、メルカプタン、またはその混合物から選択される。1種を超える官能基が存在する場合、それらは、同一化合物の一部であっても、または異なる化合物によって付与されてもよい。好ましい還元剤は、第3級芳香族アミン(例えば、N,N−ジメチル−p−トルイジン(DMPT)またはN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン(DHEPT))である。そのような第3級アミンの例は、当該技術分野で周知であり、例えばWO97/35916および米国特許第6,624,211号明細書に見出すことができる。別の好ましい還元剤は、メルカプタンであり、芳香族基および/または脂肪族基と、任意に重合性基を含んでいてもよい。好ましいメルカプタンは、約200を超える分子量を有していて、臭気が強くない。他の還元剤、例えばスルフィン酸、ギ酸、アスコルビン酸、ヒドラジンおよびその塩などを本明細書に用いて、フリーラジカル重合を開始させてもよい。
【0081】
2種以上の還元剤を用いる場合、それらは好ましくは、少なくとも1種が他種よりも活性化速度が速くなるように選択する。即ち、1種の硬化性混合物を硬化させる開始速度を、他種よりも高くする。
【0082】
還元剤の電気化学的酸化電位および酸化剤の電気化学的還元電位は、好適なレドックスカップルの有効性を予測するための有用なツールである。例えばオキシダント(即ち酸化剤)である過酸化ベンゾイルの還元電位は、飽和カロメル電極(SCE)に対して約−0.16ボルトである。同様に、一連のアミンの酸化電位(SCEに対する)は、次のように予め確定されている:ジヒドロキシエチル−p−トルイジン((DHEPT)、0.76ボルト)、4−tert−ブチルジメチルアニリン((t−BDMA)、0.77ボルト)、4−ジメチルアミノフェンエタノール((DMAPE)、0.78ボルト)、トリエチルアミン4((TEA)、0.88ボルト)、3−ジメチルアミノ安息香酸((3−DMAB)、0.93ボルト)、4−ジメチルアミノ安息香酸((4−DMAB)、1.07ボルト)、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル((EDMAB)、1.07ボルト)、p−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル((EHDMAB)、1.09ボルト)、および4−ジメチルアミノ安息香酸エステル((DMABA)、1.15ボルト)。酸化規模が低下するほど、酸化の容易さ(および後の反応性)が高められる。過酸化ベンゾイルと併用する好適なアミン還元剤としては、一般に還元電位がSCEに対して約1.00ボルト未満の芳香族アミンが挙げられる。過酸化ラウロイル(還元電位=−0.60ボルト)など、過酸化ベンゾイルよりも効率の低いオキシダントは、弱い酸化剤であり、後に芳香族アミン還元剤とより緩除に反応する。過酸化ラウロイルにとって好適な芳香族アミンとしては、一般にSCEに対して約0.80ボルト未満のものが挙げられる。
【0083】
熱開始剤
熱開始剤の非限定的例としては、ペルオキシジカーボネート、過硫酸塩(例えば過硫酸カリウムまたは過硫酸アンモニウム)、アゾ開始剤、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)および様々な過酸化物(過酸化ベンゾイル)が挙げられる。単独または他の開始剤と併用される熱活性化開始剤が、光が到達できない部分(例えば硬化性混合物内の深部)では最も有用である。
【0084】
賦形剤
1種以上の賦形剤を、本発明の組成物に配合してもよい。そのような賦形剤の非限定的例としては、Ca(OH)2、脱灰骨粉末または粒子、ヒドロキシアパタイト粉末または粒子、さんご粉、吸収性および非吸収性ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウム粒子、α−リン酸三カルシウム、リン酸八カルシウム、炭酸カルシウムおよび硫酸カルシウムが挙げられる。好ましくはそのような賦形剤は、生分解性ポリマーの分解時に発生する酸を中和して、骨の形成に好適な生理学的pH値を維持することができる。好ましくはそのような賦形剤は、アルカリ性であるため、生分解過程で発生する酸を中和して生理学的pH値の保持を助けることができる。
【0085】
骨形成促進剤
骨形成を促進および/または誘導する1種以上の物質を、本発明の組成物に配合してもよい。
【0086】
そのような骨形成促進材料の非限定的例としては、成長因子、例えば骨形態形成蛋白質(BMP)(Sulzer Orthopedics)、BMP−2(Genetics Institute/Sofamor Danek)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)(Orquest Anika Therapeutics)、Epogen(Amgen)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)(Amgen)、インターロイキン増量因子(Interleukin growth factor)(IGF)−1(Celtrix Pharmaceuticals)、骨形成蛋白質(OP)−1(Creative BioMolecules/Stryker Biotec)、血小板由来成長因子(PDGF)(Chiron)、幹細胞増殖因子(SCPF)(University of Florida/Advanced Tissue Science)、組換えヒトインターロイキン(rhIL)(Genetic Institute)、トランスフォーミング成長因子β(TGRβ)(Collagen Corporation/Zimmer Integra Life Sciences)、およびTGFβ−3(OSI Pharmaceuticals)などが挙げられる。骨形成は、数ヶ月〜数週間で低下してもよい。整形外科および歯科での用途において、骨再生分子、播種細胞、および/または組織を、組成物中に配合してもよい。例えば開示を参考として本明細書に援用した米国特許第5,011,691号明細書に記載されたものなどの骨形態形成蛋白質を、これらの用途に使用してもよい。
【0087】
細孔形成剤
細孔形成を促進する1種以上の物質を、本明細書の組成物、好ましくは硬化性コンポジットに配合してもよい。
【0088】
そのような物質の非限定的例としては、NaCl、CaCl2などの無機塩の粒子、多孔質ゼラチン、炭水化物(例えば単糖)、オリゴ糖(例えばラクトース)、多糖(例えばデキストランなどのポリグルコシド)、重合性側基を含むゼラチン誘導体、多孔質高分子粒子、パラフィン、ビーズワックスおよびカルナバワックスなどのワックス、低融点または高融点低密度ポリエチレン(LDPE)などのワックス様物質、並びに石油ゼリーが挙げられる。他の材料としては、PEGなどの親水性材料、アルギン酸塩、骨ロウ(脂肪酸ダイマー)、モノ−、ジ−およびトリ−グリセリドなどの脂肪酸エステル、コレステロール、コレステロールエステルおよびナフタレンが挙げられる。加えて、蛋白質などの合成または生物学的な高分子材料を、用いることができる。
【0089】
本発明に用いられる多孔質形成剤粒子の粒度または粒度分布は、具体的な要望に応じて様々であってもよい。好ましくは粒度は、約5000μm未満、より好ましくは約500〜約5000μm、より好ましくは約25〜約500μm、最も好ましくは約100〜250μmである。
【0090】
治療薬
非限定的に:
1)非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)、例えばインドメタシン、アスピリン、ジクロフェナクナトリウム、ケトプロフェン、イブプロフェン、メフェナム酸、アズレン、フェナセチン、イソプロピルアンチピリン、アセトアミノフェン、塩酸ベンジダミン、フェニルブタゾン、フルフェナム酸、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸コリン、サザピリン、クロフェゾン、またはエトドラクなど;およびステロイド剤、例えばデキサメタゾン、デキサメタゾン硫酸ナトリウム、ヒドロコルチゾン、プレドニソロンをはじめとする解熱鎮痛抗炎症剤(以下の別の実施例によってより詳細に議論する);
2)抗菌および抗真菌剤、例えばペニシリン、アンピシリン、アモキシシリン、セファレキシン、エリスロマイシンエチルコハク酸、塩酸バカンピシリン、塩酸ミノサイクリン、クロラモフェニコール、テトラサイクリン、エリスロマイシン、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、テルビナフィン、nlidixic acid、ピロミジン酸、ピペミジン酸三水和物、エノキサシン、シノキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン、塩酸シプロフロキサシン、またはスルファメトキサゾール・トリメトプリムなど;
3)抗ウイルス剤、例えばホスホノギ酸三ナトリウム、ジダノシン、ジデオキシシチジン、アジド・デオキシチミジン、ジデヒドロ・デオキシチミジン、アデフォビルジピボキシル、アバカビル、アムプレナビル、デラビルジン、エファビレンツ、インジナビル、ラミブジン、ネルフィナビル、ネビラピン、リトナビル、サキナビルまたはサタブジンなど;
4)強力鎮痛剤、例えばコデイン、ジヒドロコデイン、ヒドロコドン、モルフィネ、ジランジッド(dilandid)、デモラル、フェンタニル、ペンタゾシン、オキシコドンまたはプロポキシフェンなど;および
5)心疾患の処置用に、または抗炎症剤として用いられ得るサリチル酸塩、をはじめとする1種以上の予防用または治療用活性化剤、およびその塩またはエステルを、本発明の組成物に配合してもよい。
【0091】
薬剤を直接組成物に配合してもよいが、または微粒中に配合して、その後、組成物に配合してもよい。微粒子への薬剤の配合は、その薬剤が組成物の1種以上の成分と反応性がある場合に有利となり得る。
【0092】
診断薬
1種以上の診断薬を、本発明の組成物に配合してもよい。組成物を患者に移植した後、骨修復をモニタリングするために、診断/造影剤を用いてもよい。好適な薬剤としては、陽電子放射断層(PET)、コンピュータ断層撮影(CAT)、シングルフォトンエミッションCT、X線、蛍光透視法および核磁気共鳴画像法(MRI)で用いられる市販の薬剤が挙げられる。
【0093】
MRIに有用で好適な薬剤の例としては、現在入手できるガドリニウムキレート剤、例えばジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)およびガドペンテト酸ジメグルミンに加え、鉄、マグネシウム、マンガン、銅およびクロムなどが挙げられる。
【0094】
CATおよびX線に有用で好適な薬剤の例としては、ヨウ素を基剤とする材料、例えばジアトリゾ酸塩およびイオタラム酸を代表とするイオン性モノマー、イオパミドール、イソヘキソールおよびイオベルソールなどの非イオン性モノマー、イオトロール(iotrol)およびイオジキサノールなどの非イオン性ダイマー、並びにイオキサグレートなどのイオン性ダイマーが挙げられる。
【0095】
これらの薬剤は、当該技術分野で利用できる標準的技術および市販の器具を用いて検出することができる。
【0096】
硬化性コンポジットを形成するための硬化性混合物の架橋
架橋性混合物を架橋させて、硬化コンポジットを形成する。
【0097】
一つの実施形態において、光開始剤を(単独か、または他種の開始剤と併用して)用いる場合、硬化性混合物を電磁放射線にあてる。
【0098】
本明細書で用いる「電磁放射線」は、非限定的にX線波、紫外波、可視波、赤外波、遠赤外波、マイクロ波、高周波、音波および超音波電磁をはじめとする電磁スペクトルのエネルギー波を指す。
【0099】
本明細書で用いる「X線」は、波長が1×10−9〜1×10−6cmのエネルギー波を指す。
【0100】
本明細書で用いる「紫外光」は、波長が少なくとも1×10−6cmで4.0×10−5cm未満のエネルギー波を指す。
【0101】
本明細書で用いる「可視光」は、波長が少なくとも約4.0×10−5〜約7.0×10−5cmのエネルギー波を指す。
【0102】
本明細書で用いる「青色光」は、波長が少なくとも約4.2×10−5であり4.9×10−5cm未満のエネルギー波を指す。
【0103】
本明細書で用いる「赤色光」は、波長が少なくとも約6.5×10−5であり7.0×10−5cm未満のエネルギー波を指す。
【0104】
本明細書で用いる「赤外線」は、波長が少なくとも約7.0×10−5cmのエネルギー波を指す。
【0105】
可聴音波は、周波数の範囲が20〜20,000Hzである。
【0106】
可聴下音波は、周波数の範囲が20Hz未満である。
【0107】
超音波波長は、周波数の範囲が20,000Hzを超えるものである。
【0108】
本明細書で用いる「放射線源」は、電磁放射線の線源を指す。例としては、非限定的にランプ、太陽、青色ランプ、および紫外線ランプが挙げられる。
【0109】
硬化性混合物は、硬化性混合物を硬化させて硬化コンポジットを形成させるのに十分な期間、放射線源から電磁放射線をあてる。好ましくは硬化性混合物を、1〜10mm、より好ましくは約3〜5mmの層として塗布し、約30〜300秒、好ましくは約50〜100秒、より好ましくは約60秒の間、電磁放射線にあてる。
【0110】
通常、重合を誘導するのに、最低で0.01mW/cm2の強度が必要となる。最大の光強度は、放射線の波長に応じて、1〜1000mW/cm2の範囲内であってもよい。高い光強度、例えば高波長の可視光に組織を暴露してもよく、そうすれば短波長のUV光よりも組織/細胞への損傷が少なくなる。歯科での用途においては、青色光(470〜490nm)を、100〜400mW/cm2の強度で臨床的に用いる。紫外光を処置部位(in situ)で用いる場合、光強度を20mW/cm2未満に保持することが好ましい。
【0111】
別の実施形態において、熱活性化開始剤を(単独か、または他種の開始剤と併用して)用いる場合、硬化性混合物を、熱活性化剤を活性化するのに好適な温度、好ましくは約20〜80℃、より好ましくは約30〜60℃の温度におく。熱活性化剤を活性化するのに必要な熱は、非限定的に赤外線、水浴、油浴、マイクロ波、超音波または機械的手法をはじめとする様々な公知の手法で発生させることができる。例えば、高温の水浴で加熱したるつぼに、硬化性混合物を入れてもよい。
【0112】
更に別の実施形態において、レドックス開始剤系を(単独か、または他種の開始剤と併用して)用いる場合、硬化過程の直前まで、レドックス開始剤系の酸化剤をレドックス開始剤系の還元剤と分離しておく。例えば酸化剤を、ある容器内で複数の硬化性混合物と混合して、還元剤も、別の容器内で複数の硬化性混合物と混合する。2個の容器の内容物を、実質的な硬化が開始した時点で互いに混合する。
【0113】
硬化は、処置部位、体外、または体内で実行してもよい。
【0114】
最も好ましい実施形態において、放射線暴露の持続時間を短縮するため、そして/または各放射線硬化層の厚さを増加させるために、レドックス開始剤系を、光開始剤および/または熱開始剤と併用する。例えばレドックス開始剤系を最初に活性化させて、硬化性混合物を部分硬化させる。そのように部分硬化させた混合物を、その後、放射線にあてて、光開始剤および/または熱開始剤を活性化させて、部分硬化させた混合物を更に硬化させる。
【0115】
硬化性混合物および硬化コンポジットの性質
粘性
硬化性混合物の粘性は、非常に様々であってもよい。それは、多数の因子、例えば硬化性混合物中の成分の分子量、および硬化性混合物の温度などに依存する。通常、温度が低い場合、硬化性混合物はより粘性になり、成分の平均分子量が高い場合、より粘性になる。硬化性混合物の用途が異なると、必要となる粘性も異なってくる。例えば注射可能にするためには、混合物は、易流動性液でなければならず、他の用途においては、成形可能なペースト状パテでなければならない。
【0116】
架橋性プレポリマーに、好適な量の1種以上の生体適合性不飽和官能性モノマー、例えば参考として本明細書に援用したWO01/74411(米国での呼称)に記載されたものなどを配合することによって、硬化性混合物の粘性を調整してもよい。
【0117】
強度
硬化コンポジットの強度が約5〜300N/m2、より好ましくは約20〜200N/m2、最も望ましくは約50〜200N/m2であることが好ましい。硬化コンポジットの強度は、多数の因子、例えば代用骨と架橋性プレポリマーとの比、および硬化コンポジットの架橋密度などに依存する。
【0118】
疎水性/親水性
硬化性混合物および硬化コンポジットの疎水性/親水性は、注意深く制御しなければならない。好ましくは硬化性混合物および硬化コンポジットは、細胞がそれらに良好に付着するのに十分、親水性である。疎水性/親水性は、多数の因子、例えば代用骨および/または架橋性プレポリマーの疎水性/親水性に依存する。例えば代用骨が、PMMA/PHEMAを基剤とする高分子粒子である場合、PMMA(親水性が低い)とPHEMA(親水性が高い)との比が、疎水性/親水性に影響を及ぼす。別の実施例として、架橋性プレポリマーが、ポリエチレングリコールの代わりにポリ酸無水物である場合、硬化性混合物および硬化コンポジットは、より疎水性になる。
【0119】
生分解/生体吸収時間
硬化性混合物および/または硬化コンポジットの生分解/生体吸収に必要な時間は、日〜年、好ましくは週〜月の範囲で非常に様々であってもよい。好適な生分解/生体吸収時間は、多数の因子、例えばオステオインテグレーションの速度、組成物が機能性および/または荷重負荷であるか、および/または薬物放出の所望の速度に依存する。例えば高齢女性のオステオインテグレーションは通常、20歳男性よりもかなり緩やかである。オステオインテグレーションが遅い場合、生分解/生体吸収時間の長い組成物を用いるべきである。即時機能の歯科インプラントは、荷重負荷であり、オステオインテグレーションの間に強度を保たなければならず、そのため生分解/生体吸収時間の長い組成物が、そのような歯科インプラントに関する用途ではより好適である。治療薬を長時間かけて放出させたい場合、生分解/生体吸収時間の長い組成物がより好適である。
【0120】
具体的用途に応じて、必要な時間を、多数の因子、例えば代用骨と架橋性プレポリマーとの比などに基づいて操作することができる。架橋性プレポリマーが、1種を超えるモノマーを含む場合、モノマーの比が、生分解/吸収時間に重大な役割を担う。例えば架橋性プレポリマーが、セバシン酸のジメタクリル化無水物と1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンとの混合物を含む場合、セバシン酸のジメタクリル化無水物の割合を高めると、分解/吸収時間が短縮する。更に、代用骨がPMMA/PHEMAに基づくもの(非常に緩除に分解されることで知られる)である場合、代用骨の割合を高めると、分解速度が延長する。
【0121】
分解時間は、pHの関数である。例えば無水物は通常、酸性条件よりもアルカリ性条件で分解を受け易い。
【0122】
分解時間は、成分の疎水性/親水性の関数である。例えば1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)ヘキサン(より疎水性)を、1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン(疎水性が低い)に置き換えると、分解時間が短縮する。
【0123】
分解時間は、幾何学的形状、厚さなどの関数でもある。急速な分解が要求される場合、硬化コンポジットの少なくとも約15重量%、好ましくは約50重量%が、約5〜10週間、好ましくは約6〜8週間で分解または吸収される。
【0124】
その一方で、緩除に分解する場合、硬化コンポジットの少なくとも約15重量%、好ましくは約50重量%を、約6〜12ヶ月、好ましくは約9ヶ月で分解または吸収させる。
【0125】
硬化性混合物および硬化コンポジットの用途
歯科
本発明の硬化性混合物および硬化コンポジットを、抜歯窩を充填するため;抜歯による骨欠損を予防または修復するため;顎骨骨折を修復するため;疾患および外傷による骨空隙部を充填するため;抜歯窩に設置したインプラントおよび無歯顎骨に設置したインプラントを安定化させて、即時機能(例えば咀嚼)を付与するため;歯槽堤(骨)増大を行うため;歯周の骨病変を修復するため;そして審美的な歯肉再整形および膨化のために用いることができる。硬化性混合物および/または硬化コンポジットが歯科インプラント用途に用いられる場合、好ましくは歯科インプラントを、次の2種の方法の一方により硬化コンポジットに部分的または完全に埋入する:
方法(1):(a)歯科インプラントを骨および/または骨空隙部に植立する;
(b)歯科インプラントの周囲に硬化性混合物を塗布することによって、歯科インプラントを少なくとも一部埋入する;
(c)硬化性混合物を硬化させて硬化コンポジットを形成させる;そして
(d)必要に応じてステップ(b)および(c)を反復する。
方法(2):(a)硬化性混合物を塗布することによって、骨空隙部を少なくとも一部充填する;
(b)硬化性混合物を硬化させて硬化コンポジットを形成させる;
(c)必要に応じてステップ(a)および(b)を反復する;そして
(d)歯科インプラントを硬化コンポジットに少なくとも一部埋入することによって、歯科インプラントを骨に植立する。
【0126】
電磁放射線および/もしくは熱に暴露することによって硬化性混合物を架橋させ、標準的な歯科もしくは外科技術を利用して塗布してもよい。硬化性混合物を骨成長が望ましい部位に塗布し、硬化させて硬化コンポジットを形成させてもよい。硬化性混合物を、所望の形状および寸法(例えば棒、ピン、ねじおよび平板状)に予め注型し、硬化させて硬化コンポジットを形成させてもよい。
【0127】
整形外科
本発明の硬化性混合物および硬化コンポジットを、骨折を修復するため、大きな骨欠損(例えば疾患によるもの)を修復するため、即時機能を付与して、荷重負荷される骨を支持するため;そして審美性(例えば顎、頬など)の一助として用いてもよい。標準的な整形外科または外科的技術を用いて、硬化性混合物を塗布してもよく、例えば骨の生成が望ましい部位にそれを塗布し、そして硬化させて硬化コンポジットを形成させてもよい。硬化性混合物を、所望の形状および寸法(例えば棒、ピン、ねじ、平板状および整形外科用装置、例えば頭蓋用、顎用および頬用のもの)に予め注型し、硬化させて硬化コンポジットを形成してもよい。
【0128】
薬物送達
本発明の硬化性混合物および硬化コンポジットを用いて、治療薬または診断薬を体内で送達してもよい。そのような組成物中に配合し得る薬物または薬剤の例としては、蛋白質、炭水化物、核酸、および無機および有機物の生物学的活性分子が挙げられる。具体的な例としては、酵素、抗生物質、抗新生物剤、局部麻酔、ホルモン、血管新生剤、抗血管新生剤、抗体、神経伝達物質、精神活性剤、生殖器官に影響を及ぼす薬物、およびオリゴヌクレオチド、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチドなどが挙げられる。
【0129】
実施例
以下の実施例は、本発明の実施形態をより具体的に例示すためのものである。本明細書に記載した発明は、具体的実施形態であるが、その説明および実施例は、例示を意図するものであり、本明細書の範囲を限定するものではないことは理解されよう。本発明の範囲内での他の態様、利益および改良は、本明細書に適合する技術分野の当業者には明白であろう。
【0130】
実施例1
この実施例は、架橋性プレポリマーの第1の実施形態によって本発明を例示するものである。
【0131】
2種の架橋性プレポリマー:(1)セバシン酸のジメタクリル化無水物、および(2)1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンのジメタクリル化無水物を、以下のとおり代用骨(Bioplant(登録商標)HTR(登録商標))と混合することによって、硬化性混合物を形成させる。
【表1】
【0132】
加熱還流によりセバシン酸をメタクリル酸無水物と反応させて、セバシン酸のジメタクリル化無水物を形成させ、加熱還流により1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンをメタクリル酸無水物と反応させることにより、1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンのジメタクリル化無水物を形成させる。DL−カンファーキノンを、光開始剤として用いる。この材料は、硬化させると、約6〜9週以内でかなりの量が吸収されるように設計されている。
【表2】
【0133】
この材料は、約9ヶ月以内でかなりの量が吸収されるように設計されている。
【0134】
実施例2
この実施例は、架橋性プレポリマーの第2の実施形態によって本発明を例示するものである。
【表3】
【0135】
ポリ(1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン:セバシン酸)(80:20)(ポリ(CPP:SA)(80:20))は、1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンとセバシン酸との80:20(モル比)の直鎖状共重合体である。Rosen et al. Biomaterials, 4, 131, (1983); Domb and Langer, J.Polym. Sci., 23, 3375,(1987)に記載された手順によって、それを合成した。
【0136】
実施例3
この実施例は、架橋性プレポリマーの第3の実施形態によって本発明を例示するものである。配合物は、(1)少なくとも2個の重合性末端基および親水性領域を含む架橋性プレポリマーを、(2)代用骨と混合することによって形成させた硬化性混合物の実施例である。
【表4】
【0137】
ポリビスメタクリル酸エステルは、WO01/74411の実施例1に記載された方法によって製造する。
【表5】
【0138】
D,L−ラクチド50・ε−カプロラクトン共重合体−ヘキサンジオール20/1−メタクリル酸エステルは、WO01/74411に記載された方法によって製造する。
【0139】
実施例4
以下の実験は、大臼歯を抜歯し、インプラントを即時固定して、本発明の硬化性混合物を入れた後の骨の内方成長を試験するために実施した。実施例3の配合物Dを用いた。
【0140】
3〜5歳、つまり歯列が成熟した雌ヒツジ7匹を、実験に用いた。抜歯の2週間前に、ヒツジの一般的健康状態および歯列を検査した。必要に応じて、駆虫(devermification)のために薬剤を用いた。抜歯の2日前に抜歯される歯の側方および斜位の術前X線写真を撮影した。抜歯の1日前に、絶食し、予防的AB(Excenel(登録商標)RTU)およびNSAID(Finadyne(登録商標))を投与した。翌日(0日目)に、P3およびP4大臼歯を、ヒツジの左および右両方の下顎から抜歯した。AB(Excenel(登録商標)RTU)およびメチルプレドニソロン(0.5mg/kg、IM)の術前薬を投与した。実施例3、配合物Dの硬化性混合物を塗布して、層状に硬化させた。各層の最大の厚さは、約5mmである。光源は、可視光範囲の標準的な歯科用3Mライトであった。各層に、ライトを80秒間あてた。
【0141】
左の下顎においては、2本のチタン製インプラント(Ankylos(登録商標))、通常の1本、および首部を四角く改良した1本を、抜歯窩に設置した。他の歯槽には、インプラントを設置しなかった。Bioplant(登録商標)HTR(登録商標)を多血小板血漿(PRP)と混合して、第1の歯槽のインプラントの周りと、インプラントのない歯槽にも入れた。その後、Bioplant(登録商標)HTR(登録商標)を光硬化性ポリマーと混和して、第1の歯槽のインプラントの首部の周りと、インプラントのない第2の歯槽の咬合部分に入れた。混合物の強度は、約30〜約40N/m2であった。
【0142】
右の下顎においては、2本のチタン製インプラント(Ankylos(登録商標))、通常の1本、および首部を四角く改良した1本を、1箇所の抜歯窩に植立した。他の歯槽には、インプラントを設置しなかった。Bioplant(登録商標)HTR(登録商標)を骨髄血と混合して、インプラントの周りと、インプラントのない歯槽にも入れた。その後、Bioplant(登録商標)HTR(登録商標)を光硬化性ポリマーと混和して、インプラントの首部の周りと、インプラントのない歯槽の咬合部分に入れた。
【0143】
1〜3日目に、AB(Excenel(登録商標)RTU)(1mg/kg)を投与した。30日目、90日目および180日目に、従来のX線写真および口内X線写真を撮影した。180日目に、ヒツジを安楽死させ、組織学的検査のために生検を実施した。
【0144】
実施例5
患者Aの下顎前切歯は、進行した歯肉および骨疾患のために抜け落ちていた。術前X線写真(図1)によって、歯の周囲にはほとんど骨がない(98%の喪失、微生物感染による骨吸収)ことが明らかとなった。膿瘍および感染が、観察された。歯は、約99%動揺し、指で支えなければならなかった。通常の根尖切除術を実施すると、その歯は残存しない(即ち抜け落ちる)はずであった。
【0145】
歯の周囲部分の壊死組織を切除した後、硬化性混合物の配合物Dを歯の下部の周囲に、層状に塗布した(図2)。各層は、約5mm厚であった。各層を塗布した後、層の材料を、歯科用青色ライト(光源:3M(登録商標)Light)によって、処置部位で約80秒間硬化させた(図3)。前の層が固まった直後に、次の層を塗布した。所望の安定性および厚さに達すると、審美的形状または歯肉が得られ、外科的皮弁を整復し、縫合した(図4)。歯は即時に安定して機能し、手術後には著しい微小動揺はなかった。図5は、手術の20日後に撮影したX線写真である。図6は、手術の3ヵ月後に撮影したX線写真である。
【0146】
実施例6
患者Bの上顎左中切歯は、抜歯により98%の骨空隙部となり、Algipore(登録商標)(General Medical,UK)移植材料を用いた窩部の移植手術は不首尾に終わった。感染および移植の失敗により、Algipore(登録商標)移植片の一部を失っただけでなく、口縁板全体と隣接する骨も破損した(図7)。機能していないAlgipore(登録商標)を、感染した軟組織が取り囲んでいた。
【0147】
最初、失敗したAlgipore(登録商標)を、外科的に除去した。その部分の壊死組織を切除した後、大きな骨空隙部が明らかとなった(図8)。金属製インプラントを、歯科用器具を用いて骨空隙部に植立した(図9)。図10は、骨空隙部に設置した金属製インプラントが、欠損部の尖の骨によって安定化されている写真を示している。尖には、わずか2mmの安定化骨があった。図11は、金属製インプラントと広大な骨空隙部の咬合部分の図を示す。次に、実施例3の配合物Dにより製造した硬化性混合物を、インプラントの周囲に約5mm以下の層に塗布して、標準の歯科用ライトで約80秒間、硬化させた(図12)。最初の層が固まった後、次の層を添加して硬化させた(図13)。安定性および審美性のための所望の厚さに達するまで、更に層を添加して硬化させた。図14は、本発明の硬化材料(配合物D)による完全移植片が、金属製インプラントを支持している写真を示している。次に、インプラントの周囲の軟組織を縫合した。術後即時に暫時的な人口歯冠を施し、機能(例えば咀嚼のための接触)を付与した(図15)。図16は、術後即時のX線写真である。インプラントは、即時機能および安定性があり著しい微小動揺はなかった。図17は、手術およびインプラント植立の28日後に撮影したX線写真である。金属製インプラントの周囲に、骨の成長が観察された。感染は認められなかった。
【0148】
実施例7
実施例1に記載した合成方法に加えて、Tarcha et al.J.Polym. Sci,Part A,Polym.Chem.(2001),39,4189に記載された手順によって、メタクリル化セバシン酸(MSA)およびジメタクリル酸(1,3−ビス(カルボキシフェノキシ))プロピル(CPPDM)を製造した。トリエチルアミンおよびジクロロメタンの存在下、0℃で塩化セバシルとメタクリル酸とを反応させることによって、MSAを合成した。トリエチルアミンおよびジクロロメタンの存在下、0℃でメタクリロシル(methacrylocyl)と1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン(CPP)とを反応させることによって、CPPDMを製造した。
【0149】
実施例8
調製した試料
9種の試料を、以下のとおり調製した:
(1)50重量%:50重量% LC:HTR(LCは100重量%MSA);
(2)45重量%:45重量%:10重量% LC:HTR:スクロース(LCは100重量%MSA);
(3)50重量%:50重量% LC:HTR(LCは50重量%MSAおよび50重量%CPPDM);
(4)75重量%:25重量% LC:HTR(LCは100重量%MSA);
(5)75重量%:25重量% LC:HTR(LCは90重量%CPPDMおよび10重量%MSA);
(6)90重量%:10重量% LC:スクロース(LCは90重量%CPPDMおよび10重量%MSA);
(7)90重量%:10重量% LC:HTR(LCは90重量%CPPDMおよび10重量%MSA);
(8)90重量%:5重量%:5重量% LC:HTR:スクロース(LCは90重量%CPPDMおよび10重量%MSA);および
(9)100重量%LC(LCは90重量%CPPDMおよび10重量%MSA)
【0150】
HTRは、Bioplant Inc.(Norwalk, CT)から入手できるBioplant(登録商標)HTR(登録商標)の略語である。
【0151】
LCは、光硬化性材料の略語である。これらの9種の試料においてLCは、MSA、CPPDMまたはそれらの混合物である。
【0152】
MSAは、Tarcha et al.J.Polym.Sci,Part A,Polym.Chem.(2001),39,4189に記載された手順によって合成されたメタクリル化セバシン酸:
【化1】
の略語である。
【0153】
CPPDMは、Tarcha et al.J.Polym.Sci,Part A, Polym.Chem.(2001),39,4189に記載された手順によって合成されたジメタクリル酸(1,3−ビス(カルボキシフェノキシ))プロピル:
【化2】
の略語である。
【0154】
実施例9
光重合
実施例8の試料を光重合するために、4−ジメチルアミノ安息香酸エチルを含む開始系を、同量のカンファーキノンと併用した。4−ジメチルアミノ安息香酸エチルおよびカンファーキノンをエタノールに溶解し、全固形分(LC/HTR/スクロースの混合物)に対して0.5重量%で、実施例8の9種の試料それぞれに添加した。
【0155】
混合物を5mmの穴のあるテフロン(登録商標)型に詰め、2枚のガラススライドの間に置き、450nm可視光源に暴露して、インビトロ分解実験(以下の実施例10)用の1mm厚円板、またはインビトロ機械的強度テスト(以下の実施例11)用の10mm厚円筒を生成させた。そのようなインビトロテストによって、材料が整形外科または歯科的用途に有用か否かの良好な初期評価が得られる。例えば(1)圧縮降伏強度が高ければ、歯科インプラントが即時の咬合力および/または咀嚼力に耐え得るため、材料が即時歯科インプラントの目的に適していることが示され、(2)特定時間内の質量減少のパーセント値は、材料がインビボで吸収される速度を示し、骨/組織成長の状態が得られる。
【0156】
実施例10
分解実験
実施例9で製造した円板(口径5mm×厚さ1mm)を、別個の試験管に入れた。試験管にリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4に調整)約1.5mlを充填し、試験管を37℃にサーモスタット制御した振とうインキュベータに入れ、緩衝液を1〜2日ごとに除去して交換した。試料を定期的に取り出し、湿重量を計測し、その後乾燥させて再度、重量を計測した。これによって、平衡膨潤指数と経時的な質量減少を計算することができた。データは、三重測定で回収した。
【0157】
実施例11
機械的強度テスト
実施例9で製造した円筒(口径5mm×高さ10mm)を、機械的強度テストに用いた。無拘束一軸圧縮テスト(unconstrained uniaxial compression test)を利用して、室温での円筒の機械的性質を評価した。標準法を利用して、テスト前の500Nロードセルを較正した。各試料の5個の標本を、較正したロードセルを含む分析機に搭載した。目立つ傷(例えばウォーターポケットまたはエアポケットの形成)のところで破壊された標本は、廃棄した。クロスヘッド変位から、歪みを計算した。荷重および断面積から、応力を計算した。
【0158】
試料が互いに平行になっていることを確認するために、試料の端をチェックした。テスト日の直前に一晩、スクロースを含む試料(即ち、試料2、6および8)を、脱イオン水に浸漬した。標本全てを、24℃および周囲湿度でテストした。
【0159】
長さに沿った複数の点が0.01mmで並ぶキャリパーによって、各試料の口径を測定した。最小断面積を計算した。各標本の長さを、0.01mmの正確さで測定した。同心半円の型を作製して、標本を底のアンビルの中央に正確に載せた。各標本は、圧縮ツールのアンビル表面の間においた半円型に接するように載せた。テスト機械が圧縮ツールのプランジャーの上部に丁度接触するまで、テスト機械のクロスヘッドを調節した。テストの速度は、1.3±0.3mm/分に設定した。適切な応力の間隔で、荷重および対応する圧縮応力を記録して、完全な荷重−変形曲線を得た。テスト時の(破断する瞬間の)各標本が加えた最大荷重も記録した。標本が比較的延性ならば、降伏点に達した後に、速度を6mm/分に上昇させ、標本が破壊するまで機械をこの速度で運転した。テストの終了点は、標本が圧砕して破壊された時とした。
【0160】
以下の特性を計算した:(1)圧縮降伏歪:降伏点での歪;(2)圧縮降伏強度:降伏点での応力;および(3)圧砕荷重:テストの条件下で標本に加えられて、指定した破損度を生じるための最大圧縮力。
【0161】
実施例12
結果および考察
分解実験(実施例10)および機械的強度テストの結果を、以下に要約している。
【表6】
【0162】
これらの結果は、本発明の材料が、様々な用途に好適であることを示している。例えば試料(1)〜(2)は、非常に短期間の用途、およびHTRを暫時的に適所に保持する送達方法に好適であり、試料(3)は、短期間の用途、およびHTRを暫時的に適所に保持させる送達方法に好適であり、試料(4)は、短期間の用途に好適である。高膨潤性であるため、インテグレーションを良好にして細胞内浸透も良好にすることができ、試料(5)は、より多くのMSAを含む配合物よりも質量減少が有意に緩やかであるため、治癒およびインテグレーションのために安定性が求められる長期の用途に好適であり、試料(6)は、他の配合物よりも膨潤性が有意に高く、組織のインテグレーションを高めるのに有用となり得るため、治癒およびインテグレーションのために安定性が求められる長期の用途に好適であり、試料(7)は、膨潤性がなく、HTR含量がより高い配合物に比較して緩やかな速度で分解するため、安定性を保持しながら骨成長を促進する長期配合物に好適であり、試料(8)は、スクロースの存在が組織のインテグレーションの改善を補助し得るため、スクロースを添加して細胞浸透させる長期の需要に好適であり、試料(9)は、成功のために安定性が極めて重要な系に好適である。
【0163】
実施例13
多段階硬化
以下の配合物Fによって、硬化性混合物を生成する。
【表7】
【0164】
配合物Fにより生成した硬化性混合物を、同量の部AおよびBに分割する。過酸化ベンゾイル5mg(レドックス開始剤系の酸化成分)を、A部に混合する。得られたA部を、多筒式注射筒の一つの筒に入れる。N,N−ジメチル−p−トルイジン(DMPT)(レドックス開始剤系の還元成分)5mgを、B部に混合する。得られたB部を、多筒式注射筒の別の筒に入れる。
【0165】
注射筒の2筒の内容物を完全に混合して、得られた混合物を部分硬化させる。その後、部分硬化させた混合物を、組織部位に塗布し、放射線に暴露することによって更に硬化させる。筒の形態は、同軸の筒2本を1本につないだものか、または二重にしたもののいずれかでよく、この場合、光透過を減少させるために、筒の一方または両方が被覆されている。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】患者Aの術前X線写真を表す。
【図2】歯の下部の周囲に硬化性混合物を約5mm以下の層として塗布したことを表す。
【図3】歯科用ライトを用いて、処置部位で硬化性混合物を架橋/硬化したことを表す。
【図4】所望の厚さになった後に外科用の皮弁を縫合したことを表す。
【図5】手術20日後に撮影したX線写真を表す。
【図6】手術3ヶ月後に撮影したX線写真を表す。
【図7】感染および移植不全による口縁板全体および隣接の骨の破壊を表す。
【図8】その領域の壊死組織切除の後、明らかとなった大きな骨空隙部を表す。
【図9】金属製インプラントを歯科用器具を用いて骨空隙部に植立したことを表す。
【図10】骨空隙部に完全に植立された金属性インプラントを表す。
【図11】金属製インプラントと骨空隙部との咬合の様子を表す。
【図12】硬化性混合物をインプラントの周囲に5mm以下の層として塗布し、その層を標準の歯科用ライトで硬化させたことを表す。
【図13】前の層が固まった後、次の層を添加して硬化させたことを表す。
【図14】金属製インプラントを支持する本発明の硬化コンポジットを表す。
【図15】手術後即時に施された暫時的な人工歯冠を表す。
【図16】術後即時のX線写真を表す。
【図17】手術およびインプラント埋入の28日後に撮影したX線写真を表す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物を含む組成物であって、前記架橋性プレポリマーが、
i)二酸または多官能性酸のモノマーまたはオリゴマーと、
ii)不飽和炭化水素部分である架橋性基を含むカルボン酸分子との無水物である、組成物。
【請求項2】
開始剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記開始剤が光開始剤である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記架橋性プレポリマーが、各末端に不飽和炭化水素部分を含む直鎖状のものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記架橋性プレポリマーが、ジカルボン酸モノマーまたはオリゴマーと、不飽和部分を含むカルボン酸分子との二無水物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記架橋性プレポリマーが、セバシン酸および1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)アルカンからなる群から選択される二酸のモノマーまたはオリゴマーのメタクリル酸二無水物を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)アルカンが、1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記架橋性プレポリマーが、
i)二酸または多官能性酸のモノマーまたはオリゴマーと、
ii)不飽和炭化水素部分である架橋性基を含むカルボン酸分子との第2の無水物を更に含み、前記第2の無水物が前記第1の無水物と異なる、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記第1の無水物が、セバシン酸のモノマーまたはオリゴマーのメタクリル酸二無水物であり、前記第2の無水物が、1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)アルカンのモノマーまたはオリゴマーのメタクリル酸二無水物である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記第2の無水物に対する前記第1の無水物の比が、約1:20〜約20:1である、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記第2の無水物に対する前記第1の無水物の比が、約1:5〜約5:1である、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記第2の無水物に対する前記第1の無水物の比が、約1:5〜約1:1である、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
前記第2の無水物に対する前記第1の無水物の比が、約1:1〜約1:5である、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
前記代用骨が、自家移植片、同種異系移植片、異種移植片もしくはアロプラスト、またはそれらの混合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記アロプラストが高分子物質である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記代用骨が、多孔質ミクロンサイズ粒子を含み、各粒子が、第1の生体適合性高分子材料のコア層と、前記コア層を取り囲む第2の生体適合性高分子材料のコーティングとを有し、前記第2の高分子材料が、親水性で前記第1の高分子材料と組成が異なる、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記ミクロンサイズ粒子の口径が、約250ミクロン〜約900ミクロンである、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記第1の高分子材料が、ポリ(メタクリル酸メチル)である、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
前記第2の高分子材料が、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)である、請求項16に記載の組成物。
【請求項20】
水酸化カルシウムが、前記ミクロンサイズ粒子の外表面および内側に分布する、請求項16に記載の組成物。
【請求項21】
前記架橋性プレポリマーに対する前記代用骨の比が、約1:20〜20:1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
前記架橋性プレポリマーに対する前記代用骨の比が、約1:2〜2:1である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
治療薬を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
代用骨および架橋性プレポリマーを含む硬化組成物であって、架橋前の前記架橋性プレポリマーが、
i)二酸または多官能性酸のモノマーまたはオリゴマーと、
ii)不飽和炭化水素部分である架橋性基を含むカルボン酸分子との1種以上の無水物である、硬化組成物。
【請求項25】
前記硬化組成物の少なくとも20重量%が、約6〜10週間で生分解される、請求項24に記載の硬化組成物。
【請求項26】
前記硬化組成物の少なくとも50重量%が、約6〜10週間で生分解される、請求項25に記載の硬化組成物。
【請求項27】
前記硬化組成物の少なくとも20重量%が、約6〜12ヶ月間で生分解される、請求項24に記載の硬化組成物。
【請求項28】
前記硬化組成物の少なくとも50重量%が、約6〜12ヶ月間で生分解される、請求項27に記載の硬化組成物。
【請求項29】
(A)代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物を含む組成物を、骨生成の促進を必要とする領域に塗布するステップであって、前記架橋性プレポリマーが、
i)二酸または多官能性酸のモノマーまたはオリゴマーと、
ii)不飽和炭化水素部分である架橋性基を含むカルボン酸分子との無水物を含むステップと、
(B)前記組成物を硬化させるステップと、を含む骨生成を促進する方法。
【請求項30】
代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物を硬化させることによって得られる硬化性組成物に、歯科インプラントを少なくとも一部埋入するステップを含む、歯科インプラントを安定化させる方法であって、前記架橋性プレポリマーが、
i)二酸または多官能性酸のモノマーまたはオリゴマーと、
ii)不飽和炭化水素部分である架橋性基を含むカルボン酸分子との無水物を含む、方法。
【請求項31】
(1)骨および/または骨空隙部に歯科インプラントを植立するステップと、
(2)硬化性混合物を歯科インプラントの周囲に塗布することによって歯科インプラントを少なくとも一部埋入するステップと、
(3)前記硬化性混合物を硬化させて硬化コンポジットを形成させるステップと、によって歯科インプラントを硬化組成物に少なくとも一部埋入する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
(1)硬化性混合物を塗布することによって骨空隙部を少なくとも一部充填するステップと、
(2)前記硬化性混合物を硬化させて硬化コンポジットを形成させるステップと、
(3)歯科インプラントを硬化コンポジットに少なくとも一部埋入することによって、歯科インプラントを骨に植立するステップと、によって歯科インプラントを硬化組成物に少なくとも一部埋入する、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物を型内で硬化させるステップを含む、所望の形状および寸法の目的物の製造方法であって、前記架橋性プレポリマーが、
i)二酸または多官能性酸のモノマーまたはオリゴマーと、
ii)不飽和炭化水素部分である架橋性基を含むカルボン酸分子との無水物を含む、製造方法。
【請求項34】
(A)代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物および治療薬を含む組成物を、薬物送達を必要とする領域に塗布するステップであって、前記架橋性プレポリマーが、
i)二酸または多官能性酸のモノマーまたはオリゴマーと、
ii)不飽和炭化水素部分である架橋性基を含むカルボン酸分子と、の無水物を含むステップと、
(B)前記組成物を硬化させるステップと、を含む薬物送達方法。
【請求項35】
高分子代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物を含む組成物であって、前記架橋性プレポリマーが、
A)直鎖状の疎水性生分解性ポリマー、および直鎖状の非分解性親水性ポリマーからなる群から選択される直鎖状ポリマーと、
B)少なくとも1個のフリーラジカル重合性基を含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーであって、無水物結合とアクリレートまたはメタクリレートからなる群から選択される重合性基とを含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーと、を含む組成物。
【請求項36】
開始剤を更に含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記開始剤が、光開始剤である、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
前記モノマーまたはマクロマーが、1〜100個の反復単位を含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項39】
前記直鎖状の疎水性生分解性ポリマーが、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酸、ポリジオキサノン、ポリカーボネートおよびポリアミノカーボネートからなる群から選択される1個以上の単位から形成される、請求項35に記載の組成物。
【請求項40】
前記直鎖状非分解性親水性ポリマーが、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、部分または完全加水分解したポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキシド)・ポリ(プロピレンオキシド)ブロック共重合体(ポロクサマーおよびメロクサポル(meroxapols))、およびポロキサミンからなる群から選択される1種以上の単位から形成される、請求項35に記載の組成物。
【請求項41】
前記高分子代用骨が、多孔質ミクロンサイズ粒子を含み、各粒子が、第1の生体適合性高分子材料のコア層と、前記コア層を取り囲む第2の生体適合性高分子材料のコーティングと、を有し、前記第2の高分子材料が、親水性で第1の高分子材料と組成が異なる、請求項35に記載の組成物。
【請求項42】
前記ミクロンサイズ粒子の口径が、約250ミクロン〜約900ミクロンである、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
前記高分子代用骨が、ミクロンサイズ粒子の外表面および内側に分布する若干の水酸化カルシウムを更に含む、請求項41に記載の組成物。
【請求項44】
前記第1の高分子材料が、ポリ(メタクリル酸メチル)である、請求項41に記載の組成物。
【請求項45】
前記第2の高分子材料が、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)である、請求項41に記載の組成物。
【請求項46】
前記架橋性プレポリマーに対する前記高分子代用骨の比が、約1:20〜20:1である、請求項41に記載の組成物。
【請求項47】
前記架橋性プレポリマーに対する前記高分子代用骨の比が、約1:2〜2:1である、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
治療薬を更に含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項49】
高分子代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物を含む組成物を硬化させることによって形成される硬化組成物であって、前記架橋性プレポリマーが、
A)直鎖状の疎水性生分解性ポリマー、および直鎖状の非分解性親水性ポリマーからなる群から選択される直鎖状ポリマーと、
B)少なくとも1個のフリーラジカル重合性基を含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーであって、無水物結合とアクリレートまたはメタクリレートからなる群から選択される重合性基とを含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーと、を含む硬化組成物。
【請求項50】
前記高分子代用骨が、多孔質ミクロンサイズ粒子を含み、各粒子が、第1の生体適合性高分子材料のコア層と、前記コア層を取り囲む第2の生体適合性高分子材料のコーティングと、を有し、前記第2の高分子材料が、親水性で第1の高分子材料と組成が異なる、請求項49に記載の硬化組成物。
【請求項51】
前記硬化組成物の少なくとも20重量%が、約6〜10週間で生分解される、請求項49に記載の硬化組成物。
【請求項52】
前記硬化組成物の少なくとも50重量%が、約6〜10週間で生分解される、請求項51に記載の硬化組成物。
【請求項53】
前記硬化組成物の少なくとも20重量%が、約6〜12ヶ月間で生分解される、請求項49に記載の硬化組成物。
【請求項54】
前記硬化組成物の少なくとも50重量%が、約6〜12ヶ月間で生分解される、請求項53に記載の硬化組成物。
【請求項55】
(A)高分子代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物を含む組成物を、骨生成の促進を必要とする領域に塗布するステップであって、前記架橋性プレポリマーが、
i)直鎖状の疎水性生分解性ポリマー、および直鎖状の非分解性親水性ポリマーからなる群から選択される直鎖状ポリマーと、
ii)少なくとも1個のフリーラジカル重合性基を含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーであって、無水物結合とアクリレートまたはメタクリレートからなる群から選択される重合性基とを含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーと、を含むステップと、
(B)前記組成物を硬化させるステップと、を含む骨生成を促進する方法。
【請求項56】
代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物を硬化させることによって得られる硬化組成物に、歯科インプラントを少なくとも一部埋入するステップを含む、歯科インプラントを安定化させる方法であって、前記架橋性プレポリマーが、
i)直鎖状の疎水性生分解性ポリマー、および直鎖状の非分解性親水性ポリマーからなる群から選択される直鎖状ポリマーと、
ii)少なくとも1個のフリーラジカル重合性基を含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーであって、無水物結合とアクリレートまたはメタクリレートからなる群から選択される重合性基とを含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーと、を含む方法。
【請求項57】
(1)骨および/または骨空隙部に歯科インプラントを植立するステップと、
(2)硬化性混合物を歯科インプラントの周囲に塗布することによって歯科インプラントを少なくとも一部埋入するステップと、
(3)前記硬化性混合物を硬化させて硬化コンポジットを形成させるステップと、によって歯科インプラントを硬化組成物に少なくとも一部埋入する、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
(1)硬化性混合物を塗布することによって骨空隙部を少なくとも一部充填するステップと、
(2)前記硬化性混合物を硬化させて硬化コンポジットを形成させるステップと、
(3)歯科インプラントを硬化コンポジットに少なくとも一部埋入することによって、歯科インプラントを骨に植立するステップと、によって歯科インプラントを硬化組成物に少なくとも一部埋入する、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物を型内で硬化させるステップを含む所望の形状および寸法の目的物の製造方法であって、前記架橋性プレポリマーが、
i)直鎖状の疎水性生分解性ポリマー、および直鎖状の非分解性親水性ポリマーからなる群から選択される直鎖状ポリマーと、
ii)少なくとも1個のフリーラジカル重合性基を含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーであって、無水物結合とアクリレートまたはメタクリレートからなる群から選択される重合性基とを含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーと、を含む製造方法。
【請求項60】
(A)代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物および治療薬を含む組成物を、薬物送達を必要とする領域に塗布するステップであって、前記架橋性プレポリマーが、
i)直鎖状の疎水性生分解性ポリマー、および直鎖状の非分解性親水性ポリマーからなる群から選択される直鎖状ポリマーと、
ii)少なくとも1個のフリーラジカル重合性基を含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーであって、無水物結合とアクリレートまたはメタクリレートからなる群から選択される重合性基とを含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーと、を含む塗布するステップと、
(B)前記組成物を硬化させるステップと、を含む薬物送達の方法。
【請求項61】
高分子代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物を含む組成物であって、
架橋性プレポリマーが、少なくとも2個の重合性末端基を含み、0〜60℃の温度で三次元形状に変形可能且つ架橋可能となるような粘性を有する組成物。
【請求項62】
前記高分子代用骨が、多孔質ミクロンサイズ粒子を含み、各粒子が、第1の生体適合性高分子材料のコア層と、前記コア層を取り囲む第2の生体適合性高分子材料のコーティングと、を有し、前記第2の高分子材料が、親水性で第1の高分子材料と組成が異なる、請求項61に記載の組成物。
【請求項63】
開始剤を更に含む、請求項62に記載の組成物。
【請求項64】
前記開始剤が、光開始剤である、請求項63に記載の組成物。
【請求項65】
前記架橋性プレポリマーが、親水性領域を含む、請求項62に記載の組成物。
【請求項66】
前記架橋性プレポリマーが、1〜100個の反復単位を含む、請求項62に記載の組成物。
【請求項67】
前記架橋性プレポリマーが、少なくとも1箇所の生分解性領域と、少なくとも1箇所の重合領域とを含む、請求項62に記載の組成物。
【請求項68】
前記架橋性プレポリマーの親水性領域が、ポリエチレングリコール、またはエチレンオキシドとアルキレンオキシドとの共重合体であり、重合度が、2〜500である、請求項65に記載の組成物。
【請求項69】
前記架橋性プレポリマーが、ポリアセタール配列を含む、請求項62に記載の組成物。
【請求項70】
前記架橋性プレポリマーが、
(A)ポリエステル配列内のラクトンコモノマーのどの一つも、75モル%を超える量で存在しないようなラクトンコモノマーの混合物を共重合することによって形成されるポリエステル配列;
(B)ポリオルトエステル配列;または
(C)ポリエステル配列とポリオルトエステル配列との混合、である請求項62に記載の組成物。
【請求項71】
前記重合性領域が、エチレン性不飽和、アセチレン性不飽和、またはその両方を含む、請求項67に記載の組成物。
【請求項72】
ミクロンサイズ粒子の口径が、約250ミクロン〜900ミクロンである、請求項62に記載の組成物。
【請求項73】
前記高分子代用骨が、ミクロンサイズ粒子の外表面および内側に分布する若干の水酸化カルシウムを更に含む、請求項62に記載の組成物。
【請求項74】
前記第1の高分子材料が、ポリ(メタクリル酸メチル)である、請求項62に記載の組成物。
【請求項75】
前記第2の高分子材料が、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)である、請求項62に記載の組成物。
【請求項76】
前記架橋性プレポリマーに対する前記高分子代用骨の比が、約1:20〜20:1である、請求項62に記載の組成物。
【請求項77】
前記架橋性プレポリマーに対する前記高分子代用骨の比が、約1:2〜2:1である、請求項70に記載の組成物。
【請求項78】
治療薬を更に含む、請求項62に記載の組成物。
【請求項79】
高分子代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物を含む組成物を硬化させることによって形成される硬化組成物であって、
前記架橋性プレポリマーが、少なくとも2個の重合性末端基を含み、0〜60℃の温度で三次元形状に変形可能且つ架橋可能となるような粘性を有する硬化組成物。
【請求項80】
前記高分子代用骨が、多孔質ミクロンサイズ粒子を含み、各粒子が、第1の生体適合性高分子材料のコア層と、前記コア層を取り囲む第2の生体適合性高分子材料のコーティングと、を有し、前記第2の高分子材料が、親水性で第1の高分子材料と組成が異なる、請求項79に記載の組成物。
【請求項81】
前記硬化組成物の少なくとも20重量%が、約6〜10週間で生分解される、請求項79に記載の硬化組成物。
【請求項82】
前記硬化組成物の少なくとも50重量%が、約6〜10週間で生分解される、請求項81に記載の硬化組成物。
【請求項83】
前記硬化組成物の少なくとも20重量%が、約6〜12ヶ月間で生分解される、請求項79に記載の硬化組成物。
【請求項84】
前記硬化組成物の少なくとも50重量%が、約6〜12ヶ月間で生分解される、請求項83に記載の硬化組成物。
【請求項85】
(A)高分子代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物を含む組成物を、骨生成の促進を必要とする領域に塗布するステップであって、
前記架橋性プレポリマーが、少なくとも2個の重合性末端基を含み、前記架橋性プレポリマーが0〜60℃の温度で三次元形状に変形可能且つ架橋可能となるような粘性を有するステップと、
(B)前記組成物を硬化させるステップと、を含む骨生成を促進する方法。
【請求項86】
代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物を硬化させることによって得られる硬化性組成物に、歯科インプラントを少なくとも一部埋入するステップを含む歯科インプラントを安定化させる方法であって、前記架橋性プレポリマーが、少なくとも2個の重合性末端基を含み、0〜60℃の温度で三次元形状に変形可能且つ架橋可能となるような粘性を有する方法。
【請求項87】
(1)骨および/または骨空隙部に歯科インプラントを植立するステップと、
(2)硬化性混合物を歯科インプラントの周囲に塗布することによって歯科インプラントを少なくとも一部埋入するステップと、
(3)前記硬化性混合物を硬化させて硬化コンポジットを形成させるステップと、によって歯科インプラントを硬化組成物に少なくとも一部埋入する、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
(1)硬化性混合物を塗布することによって骨空隙部を少なくとも一部充填するステップと、
(2)前記硬化性混合物を硬化させて硬化コンポジットを形成させるステップと、
(3)歯科インプラントを硬化コンポジットに少なくとも一部埋入することによって、歯科インプラントを骨に植立するステップと、によって歯科インプラントを硬化組成物に少なくとも一部埋入する、請求項86に記載の方法。
【請求項89】
代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物を型内で硬化させるステップを含む、所望の形状および寸法の目的物の製造方法であって、前記架橋性プレポリマーが、少なくとも2個の重合性末端基を含み、0〜60℃の温度で三次元形状に変形可能となるような粘性を有する製造方法。
【請求項90】
(A)代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物および治療薬を含む組成物を、薬物送達を必要とする領域に塗布するステップであって、前記架橋性プレポリマーが、少なくとも2個の重合性末端基を含み、0〜60℃の温度で三次元形状に変形可能且つ架橋可能となるような粘性を有するステップと、
(B)前記組成物を硬化させるステップと、を含む薬物送達の方法。
【請求項91】
レドックス開始剤系の酸化成分または還元成分のいずれかを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項92】
レドックス開始剤系の酸化成分または還元成分のいずれかを更に含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項93】
レドックス開始剤系の酸化成分または還元成分のいずれかを更に含む、請求項61に記載の組成物。
【請求項94】
(A)高分子代用骨と;
(B)i)二酸または多官能性酸のモノマーまたはオリゴマーと、
ii)不飽和炭化水素部分を有する架橋性基を含むカルボン酸分子と、の無水物を含む架橋性プレポリマーと;
(C)光開始剤と;
(D)酸化成分および還元成分を含むレドックス系の一方または両方の部分と、の硬化性混合物を含む組成物。
【請求項95】
(A)(i)高分子代用骨と;
(ii)二酸または多官能性酸のモノマーまたはオリゴマーと、不飽和炭化水素部分を有する架橋性基を含むカルボン酸分子と、の無水物を含む架橋性プレポリマーと;
(iii)光開始剤と;
(iv)酸化成分および還元成分を含むレドックス系と、の硬化性混合物を形成させること、
(B)前記レドックス系の2成分の反応によって前記混合物を部分硬化させること、および
(C)部分硬化させた硬化性混合物を、光重合させるのに十分な放射線に暴露すること、を含む硬化組成物を形成させる方法。
【請求項96】
(A)高分子代用骨と;
(B)(i)直鎖状の疎水性生分解性ポリマー、および直鎖状の非分解性親水性ポリマーからなる群から選択される直鎖状ポリマーと、
(ii)少なくとも1個のフリーラジカル重合性基を含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーであって、無水物結合とアクリレートまたはメタクリレートからなる群から選択される重合性基とを含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーと、
を含む架橋性プレポリマーと;
(C)光開始剤と;
(D)酸化成分および還元成分を含むレドックス系の一方または両方の部分と、の硬化性混合物を含む組成物。
【請求項97】
(A)(i)高分子代用骨と;
(ii)(a)直鎖状の疎水性生分解性ポリマー、および直鎖状の非分解性親水性ポリマーからなる群から選択される直鎖状ポリマーと、
(b)少なくとも1個のフリーラジカル重合性基を含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーであって、無水物結合とアクリレートまたはメタクリレートからなる群から選択される重合性基とを含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーと、
を含む架橋性プレポリマーと;
(iii)光開始剤と;
(iv)酸化成分および還元成分を含むレドックス系と、の硬化性混合物を形成させること、
(B)前記レドックス系の2成分の反応によって前記混合物を部分硬化させること、および
(C)部分硬化させた硬化性混合物を、光重合させるのに十分な放射線に暴露すること、を含む硬化組成物を形成させる方法。
【請求項98】
(A)高分子代用骨と;
(B)少なくとも2個の重合性末端基を含み、架橋性プレポリマーが0〜60℃の温度で三次元形状に変形可能且つ架橋可能となるような粘性を有する架橋性プレポリマーと;
i)二酸または多官能性酸のモノマーまたはオリゴマーと、
ii)不飽和炭化水素部分を有する架橋性基を含むカルボン酸分子と、
(C)光開始剤と;
(D)酸化成分および還元成分を含むレドックス系の一方または両方の部分と、の硬化性混合物を含む組成物。
【請求項99】
(A)(i)高分子代用骨と;
(ii)少なくとも2個の重合性末端基を含み、0〜60℃の温度で三次元形状に変形可能且つ架橋可能となるような粘性を有する架橋性プレポリマーと;
(iii)光開始剤と;
(iv)酸化成分および還元成分を含むレドックス系と、の硬化性混合物を形成させること、
(B)前記レドックス系の2成分の反応によって前記混合物を部分硬化させること、および
(C)部分硬化させた硬化性混合物を、光重合させるのに十分な放射線に暴露すること、を含む硬化組成物を形成させる方法。
【請求項1】
代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物を含む組成物であって、前記架橋性プレポリマーが、
i)二酸または多官能性酸のモノマーまたはオリゴマーと、
ii)不飽和炭化水素部分である架橋性基を含むカルボン酸分子との無水物である、組成物。
【請求項2】
開始剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記開始剤が光開始剤である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記架橋性プレポリマーが、各末端に不飽和炭化水素部分を含む直鎖状のものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記架橋性プレポリマーが、ジカルボン酸モノマーまたはオリゴマーと、不飽和部分を含むカルボン酸分子との二無水物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記架橋性プレポリマーが、セバシン酸および1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)アルカンからなる群から選択される二酸のモノマーまたはオリゴマーのメタクリル酸二無水物を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)アルカンが、1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記架橋性プレポリマーが、
i)二酸または多官能性酸のモノマーまたはオリゴマーと、
ii)不飽和炭化水素部分である架橋性基を含むカルボン酸分子との第2の無水物を更に含み、前記第2の無水物が前記第1の無水物と異なる、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記第1の無水物が、セバシン酸のモノマーまたはオリゴマーのメタクリル酸二無水物であり、前記第2の無水物が、1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)アルカンのモノマーまたはオリゴマーのメタクリル酸二無水物である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記第2の無水物に対する前記第1の無水物の比が、約1:20〜約20:1である、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記第2の無水物に対する前記第1の無水物の比が、約1:5〜約5:1である、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記第2の無水物に対する前記第1の無水物の比が、約1:5〜約1:1である、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
前記第2の無水物に対する前記第1の無水物の比が、約1:1〜約1:5である、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
前記代用骨が、自家移植片、同種異系移植片、異種移植片もしくはアロプラスト、またはそれらの混合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記アロプラストが高分子物質である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記代用骨が、多孔質ミクロンサイズ粒子を含み、各粒子が、第1の生体適合性高分子材料のコア層と、前記コア層を取り囲む第2の生体適合性高分子材料のコーティングとを有し、前記第2の高分子材料が、親水性で前記第1の高分子材料と組成が異なる、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記ミクロンサイズ粒子の口径が、約250ミクロン〜約900ミクロンである、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記第1の高分子材料が、ポリ(メタクリル酸メチル)である、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
前記第2の高分子材料が、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)である、請求項16に記載の組成物。
【請求項20】
水酸化カルシウムが、前記ミクロンサイズ粒子の外表面および内側に分布する、請求項16に記載の組成物。
【請求項21】
前記架橋性プレポリマーに対する前記代用骨の比が、約1:20〜20:1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
前記架橋性プレポリマーに対する前記代用骨の比が、約1:2〜2:1である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
治療薬を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
代用骨および架橋性プレポリマーを含む硬化組成物であって、架橋前の前記架橋性プレポリマーが、
i)二酸または多官能性酸のモノマーまたはオリゴマーと、
ii)不飽和炭化水素部分である架橋性基を含むカルボン酸分子との1種以上の無水物である、硬化組成物。
【請求項25】
前記硬化組成物の少なくとも20重量%が、約6〜10週間で生分解される、請求項24に記載の硬化組成物。
【請求項26】
前記硬化組成物の少なくとも50重量%が、約6〜10週間で生分解される、請求項25に記載の硬化組成物。
【請求項27】
前記硬化組成物の少なくとも20重量%が、約6〜12ヶ月間で生分解される、請求項24に記載の硬化組成物。
【請求項28】
前記硬化組成物の少なくとも50重量%が、約6〜12ヶ月間で生分解される、請求項27に記載の硬化組成物。
【請求項29】
(A)代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物を含む組成物を、骨生成の促進を必要とする領域に塗布するステップであって、前記架橋性プレポリマーが、
i)二酸または多官能性酸のモノマーまたはオリゴマーと、
ii)不飽和炭化水素部分である架橋性基を含むカルボン酸分子との無水物を含むステップと、
(B)前記組成物を硬化させるステップと、を含む骨生成を促進する方法。
【請求項30】
代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物を硬化させることによって得られる硬化性組成物に、歯科インプラントを少なくとも一部埋入するステップを含む、歯科インプラントを安定化させる方法であって、前記架橋性プレポリマーが、
i)二酸または多官能性酸のモノマーまたはオリゴマーと、
ii)不飽和炭化水素部分である架橋性基を含むカルボン酸分子との無水物を含む、方法。
【請求項31】
(1)骨および/または骨空隙部に歯科インプラントを植立するステップと、
(2)硬化性混合物を歯科インプラントの周囲に塗布することによって歯科インプラントを少なくとも一部埋入するステップと、
(3)前記硬化性混合物を硬化させて硬化コンポジットを形成させるステップと、によって歯科インプラントを硬化組成物に少なくとも一部埋入する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
(1)硬化性混合物を塗布することによって骨空隙部を少なくとも一部充填するステップと、
(2)前記硬化性混合物を硬化させて硬化コンポジットを形成させるステップと、
(3)歯科インプラントを硬化コンポジットに少なくとも一部埋入することによって、歯科インプラントを骨に植立するステップと、によって歯科インプラントを硬化組成物に少なくとも一部埋入する、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物を型内で硬化させるステップを含む、所望の形状および寸法の目的物の製造方法であって、前記架橋性プレポリマーが、
i)二酸または多官能性酸のモノマーまたはオリゴマーと、
ii)不飽和炭化水素部分である架橋性基を含むカルボン酸分子との無水物を含む、製造方法。
【請求項34】
(A)代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物および治療薬を含む組成物を、薬物送達を必要とする領域に塗布するステップであって、前記架橋性プレポリマーが、
i)二酸または多官能性酸のモノマーまたはオリゴマーと、
ii)不飽和炭化水素部分である架橋性基を含むカルボン酸分子と、の無水物を含むステップと、
(B)前記組成物を硬化させるステップと、を含む薬物送達方法。
【請求項35】
高分子代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物を含む組成物であって、前記架橋性プレポリマーが、
A)直鎖状の疎水性生分解性ポリマー、および直鎖状の非分解性親水性ポリマーからなる群から選択される直鎖状ポリマーと、
B)少なくとも1個のフリーラジカル重合性基を含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーであって、無水物結合とアクリレートまたはメタクリレートからなる群から選択される重合性基とを含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーと、を含む組成物。
【請求項36】
開始剤を更に含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記開始剤が、光開始剤である、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
前記モノマーまたはマクロマーが、1〜100個の反復単位を含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項39】
前記直鎖状の疎水性生分解性ポリマーが、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酸、ポリジオキサノン、ポリカーボネートおよびポリアミノカーボネートからなる群から選択される1個以上の単位から形成される、請求項35に記載の組成物。
【請求項40】
前記直鎖状非分解性親水性ポリマーが、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、部分または完全加水分解したポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキシド)・ポリ(プロピレンオキシド)ブロック共重合体(ポロクサマーおよびメロクサポル(meroxapols))、およびポロキサミンからなる群から選択される1種以上の単位から形成される、請求項35に記載の組成物。
【請求項41】
前記高分子代用骨が、多孔質ミクロンサイズ粒子を含み、各粒子が、第1の生体適合性高分子材料のコア層と、前記コア層を取り囲む第2の生体適合性高分子材料のコーティングと、を有し、前記第2の高分子材料が、親水性で第1の高分子材料と組成が異なる、請求項35に記載の組成物。
【請求項42】
前記ミクロンサイズ粒子の口径が、約250ミクロン〜約900ミクロンである、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
前記高分子代用骨が、ミクロンサイズ粒子の外表面および内側に分布する若干の水酸化カルシウムを更に含む、請求項41に記載の組成物。
【請求項44】
前記第1の高分子材料が、ポリ(メタクリル酸メチル)である、請求項41に記載の組成物。
【請求項45】
前記第2の高分子材料が、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)である、請求項41に記載の組成物。
【請求項46】
前記架橋性プレポリマーに対する前記高分子代用骨の比が、約1:20〜20:1である、請求項41に記載の組成物。
【請求項47】
前記架橋性プレポリマーに対する前記高分子代用骨の比が、約1:2〜2:1である、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
治療薬を更に含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項49】
高分子代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物を含む組成物を硬化させることによって形成される硬化組成物であって、前記架橋性プレポリマーが、
A)直鎖状の疎水性生分解性ポリマー、および直鎖状の非分解性親水性ポリマーからなる群から選択される直鎖状ポリマーと、
B)少なくとも1個のフリーラジカル重合性基を含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーであって、無水物結合とアクリレートまたはメタクリレートからなる群から選択される重合性基とを含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーと、を含む硬化組成物。
【請求項50】
前記高分子代用骨が、多孔質ミクロンサイズ粒子を含み、各粒子が、第1の生体適合性高分子材料のコア層と、前記コア層を取り囲む第2の生体適合性高分子材料のコーティングと、を有し、前記第2の高分子材料が、親水性で第1の高分子材料と組成が異なる、請求項49に記載の硬化組成物。
【請求項51】
前記硬化組成物の少なくとも20重量%が、約6〜10週間で生分解される、請求項49に記載の硬化組成物。
【請求項52】
前記硬化組成物の少なくとも50重量%が、約6〜10週間で生分解される、請求項51に記載の硬化組成物。
【請求項53】
前記硬化組成物の少なくとも20重量%が、約6〜12ヶ月間で生分解される、請求項49に記載の硬化組成物。
【請求項54】
前記硬化組成物の少なくとも50重量%が、約6〜12ヶ月間で生分解される、請求項53に記載の硬化組成物。
【請求項55】
(A)高分子代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物を含む組成物を、骨生成の促進を必要とする領域に塗布するステップであって、前記架橋性プレポリマーが、
i)直鎖状の疎水性生分解性ポリマー、および直鎖状の非分解性親水性ポリマーからなる群から選択される直鎖状ポリマーと、
ii)少なくとも1個のフリーラジカル重合性基を含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーであって、無水物結合とアクリレートまたはメタクリレートからなる群から選択される重合性基とを含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーと、を含むステップと、
(B)前記組成物を硬化させるステップと、を含む骨生成を促進する方法。
【請求項56】
代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物を硬化させることによって得られる硬化組成物に、歯科インプラントを少なくとも一部埋入するステップを含む、歯科インプラントを安定化させる方法であって、前記架橋性プレポリマーが、
i)直鎖状の疎水性生分解性ポリマー、および直鎖状の非分解性親水性ポリマーからなる群から選択される直鎖状ポリマーと、
ii)少なくとも1個のフリーラジカル重合性基を含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーであって、無水物結合とアクリレートまたはメタクリレートからなる群から選択される重合性基とを含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーと、を含む方法。
【請求項57】
(1)骨および/または骨空隙部に歯科インプラントを植立するステップと、
(2)硬化性混合物を歯科インプラントの周囲に塗布することによって歯科インプラントを少なくとも一部埋入するステップと、
(3)前記硬化性混合物を硬化させて硬化コンポジットを形成させるステップと、によって歯科インプラントを硬化組成物に少なくとも一部埋入する、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
(1)硬化性混合物を塗布することによって骨空隙部を少なくとも一部充填するステップと、
(2)前記硬化性混合物を硬化させて硬化コンポジットを形成させるステップと、
(3)歯科インプラントを硬化コンポジットに少なくとも一部埋入することによって、歯科インプラントを骨に植立するステップと、によって歯科インプラントを硬化組成物に少なくとも一部埋入する、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物を型内で硬化させるステップを含む所望の形状および寸法の目的物の製造方法であって、前記架橋性プレポリマーが、
i)直鎖状の疎水性生分解性ポリマー、および直鎖状の非分解性親水性ポリマーからなる群から選択される直鎖状ポリマーと、
ii)少なくとも1個のフリーラジカル重合性基を含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーであって、無水物結合とアクリレートまたはメタクリレートからなる群から選択される重合性基とを含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーと、を含む製造方法。
【請求項60】
(A)代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物および治療薬を含む組成物を、薬物送達を必要とする領域に塗布するステップであって、前記架橋性プレポリマーが、
i)直鎖状の疎水性生分解性ポリマー、および直鎖状の非分解性親水性ポリマーからなる群から選択される直鎖状ポリマーと、
ii)少なくとも1個のフリーラジカル重合性基を含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーであって、無水物結合とアクリレートまたはメタクリレートからなる群から選択される重合性基とを含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーと、を含む塗布するステップと、
(B)前記組成物を硬化させるステップと、を含む薬物送達の方法。
【請求項61】
高分子代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物を含む組成物であって、
架橋性プレポリマーが、少なくとも2個の重合性末端基を含み、0〜60℃の温度で三次元形状に変形可能且つ架橋可能となるような粘性を有する組成物。
【請求項62】
前記高分子代用骨が、多孔質ミクロンサイズ粒子を含み、各粒子が、第1の生体適合性高分子材料のコア層と、前記コア層を取り囲む第2の生体適合性高分子材料のコーティングと、を有し、前記第2の高分子材料が、親水性で第1の高分子材料と組成が異なる、請求項61に記載の組成物。
【請求項63】
開始剤を更に含む、請求項62に記載の組成物。
【請求項64】
前記開始剤が、光開始剤である、請求項63に記載の組成物。
【請求項65】
前記架橋性プレポリマーが、親水性領域を含む、請求項62に記載の組成物。
【請求項66】
前記架橋性プレポリマーが、1〜100個の反復単位を含む、請求項62に記載の組成物。
【請求項67】
前記架橋性プレポリマーが、少なくとも1箇所の生分解性領域と、少なくとも1箇所の重合領域とを含む、請求項62に記載の組成物。
【請求項68】
前記架橋性プレポリマーの親水性領域が、ポリエチレングリコール、またはエチレンオキシドとアルキレンオキシドとの共重合体であり、重合度が、2〜500である、請求項65に記載の組成物。
【請求項69】
前記架橋性プレポリマーが、ポリアセタール配列を含む、請求項62に記載の組成物。
【請求項70】
前記架橋性プレポリマーが、
(A)ポリエステル配列内のラクトンコモノマーのどの一つも、75モル%を超える量で存在しないようなラクトンコモノマーの混合物を共重合することによって形成されるポリエステル配列;
(B)ポリオルトエステル配列;または
(C)ポリエステル配列とポリオルトエステル配列との混合、である請求項62に記載の組成物。
【請求項71】
前記重合性領域が、エチレン性不飽和、アセチレン性不飽和、またはその両方を含む、請求項67に記載の組成物。
【請求項72】
ミクロンサイズ粒子の口径が、約250ミクロン〜900ミクロンである、請求項62に記載の組成物。
【請求項73】
前記高分子代用骨が、ミクロンサイズ粒子の外表面および内側に分布する若干の水酸化カルシウムを更に含む、請求項62に記載の組成物。
【請求項74】
前記第1の高分子材料が、ポリ(メタクリル酸メチル)である、請求項62に記載の組成物。
【請求項75】
前記第2の高分子材料が、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)である、請求項62に記載の組成物。
【請求項76】
前記架橋性プレポリマーに対する前記高分子代用骨の比が、約1:20〜20:1である、請求項62に記載の組成物。
【請求項77】
前記架橋性プレポリマーに対する前記高分子代用骨の比が、約1:2〜2:1である、請求項70に記載の組成物。
【請求項78】
治療薬を更に含む、請求項62に記載の組成物。
【請求項79】
高分子代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物を含む組成物を硬化させることによって形成される硬化組成物であって、
前記架橋性プレポリマーが、少なくとも2個の重合性末端基を含み、0〜60℃の温度で三次元形状に変形可能且つ架橋可能となるような粘性を有する硬化組成物。
【請求項80】
前記高分子代用骨が、多孔質ミクロンサイズ粒子を含み、各粒子が、第1の生体適合性高分子材料のコア層と、前記コア層を取り囲む第2の生体適合性高分子材料のコーティングと、を有し、前記第2の高分子材料が、親水性で第1の高分子材料と組成が異なる、請求項79に記載の組成物。
【請求項81】
前記硬化組成物の少なくとも20重量%が、約6〜10週間で生分解される、請求項79に記載の硬化組成物。
【請求項82】
前記硬化組成物の少なくとも50重量%が、約6〜10週間で生分解される、請求項81に記載の硬化組成物。
【請求項83】
前記硬化組成物の少なくとも20重量%が、約6〜12ヶ月間で生分解される、請求項79に記載の硬化組成物。
【請求項84】
前記硬化組成物の少なくとも50重量%が、約6〜12ヶ月間で生分解される、請求項83に記載の硬化組成物。
【請求項85】
(A)高分子代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物を含む組成物を、骨生成の促進を必要とする領域に塗布するステップであって、
前記架橋性プレポリマーが、少なくとも2個の重合性末端基を含み、前記架橋性プレポリマーが0〜60℃の温度で三次元形状に変形可能且つ架橋可能となるような粘性を有するステップと、
(B)前記組成物を硬化させるステップと、を含む骨生成を促進する方法。
【請求項86】
代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物を硬化させることによって得られる硬化性組成物に、歯科インプラントを少なくとも一部埋入するステップを含む歯科インプラントを安定化させる方法であって、前記架橋性プレポリマーが、少なくとも2個の重合性末端基を含み、0〜60℃の温度で三次元形状に変形可能且つ架橋可能となるような粘性を有する方法。
【請求項87】
(1)骨および/または骨空隙部に歯科インプラントを植立するステップと、
(2)硬化性混合物を歯科インプラントの周囲に塗布することによって歯科インプラントを少なくとも一部埋入するステップと、
(3)前記硬化性混合物を硬化させて硬化コンポジットを形成させるステップと、によって歯科インプラントを硬化組成物に少なくとも一部埋入する、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
(1)硬化性混合物を塗布することによって骨空隙部を少なくとも一部充填するステップと、
(2)前記硬化性混合物を硬化させて硬化コンポジットを形成させるステップと、
(3)歯科インプラントを硬化コンポジットに少なくとも一部埋入することによって、歯科インプラントを骨に植立するステップと、によって歯科インプラントを硬化組成物に少なくとも一部埋入する、請求項86に記載の方法。
【請求項89】
代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物を型内で硬化させるステップを含む、所望の形状および寸法の目的物の製造方法であって、前記架橋性プレポリマーが、少なくとも2個の重合性末端基を含み、0〜60℃の温度で三次元形状に変形可能となるような粘性を有する製造方法。
【請求項90】
(A)代用骨と架橋性プレポリマーとの硬化性混合物および治療薬を含む組成物を、薬物送達を必要とする領域に塗布するステップであって、前記架橋性プレポリマーが、少なくとも2個の重合性末端基を含み、0〜60℃の温度で三次元形状に変形可能且つ架橋可能となるような粘性を有するステップと、
(B)前記組成物を硬化させるステップと、を含む薬物送達の方法。
【請求項91】
レドックス開始剤系の酸化成分または還元成分のいずれかを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項92】
レドックス開始剤系の酸化成分または還元成分のいずれかを更に含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項93】
レドックス開始剤系の酸化成分または還元成分のいずれかを更に含む、請求項61に記載の組成物。
【請求項94】
(A)高分子代用骨と;
(B)i)二酸または多官能性酸のモノマーまたはオリゴマーと、
ii)不飽和炭化水素部分を有する架橋性基を含むカルボン酸分子と、の無水物を含む架橋性プレポリマーと;
(C)光開始剤と;
(D)酸化成分および還元成分を含むレドックス系の一方または両方の部分と、の硬化性混合物を含む組成物。
【請求項95】
(A)(i)高分子代用骨と;
(ii)二酸または多官能性酸のモノマーまたはオリゴマーと、不飽和炭化水素部分を有する架橋性基を含むカルボン酸分子と、の無水物を含む架橋性プレポリマーと;
(iii)光開始剤と;
(iv)酸化成分および還元成分を含むレドックス系と、の硬化性混合物を形成させること、
(B)前記レドックス系の2成分の反応によって前記混合物を部分硬化させること、および
(C)部分硬化させた硬化性混合物を、光重合させるのに十分な放射線に暴露すること、を含む硬化組成物を形成させる方法。
【請求項96】
(A)高分子代用骨と;
(B)(i)直鎖状の疎水性生分解性ポリマー、および直鎖状の非分解性親水性ポリマーからなる群から選択される直鎖状ポリマーと、
(ii)少なくとも1個のフリーラジカル重合性基を含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーであって、無水物結合とアクリレートまたはメタクリレートからなる群から選択される重合性基とを含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーと、
を含む架橋性プレポリマーと;
(C)光開始剤と;
(D)酸化成分および還元成分を含むレドックス系の一方または両方の部分と、の硬化性混合物を含む組成物。
【請求項97】
(A)(i)高分子代用骨と;
(ii)(a)直鎖状の疎水性生分解性ポリマー、および直鎖状の非分解性親水性ポリマーからなる群から選択される直鎖状ポリマーと、
(b)少なくとも1個のフリーラジカル重合性基を含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーであって、無水物結合とアクリレートまたはメタクリレートからなる群から選択される重合性基とを含む少なくとも1種のモノマーまたはマクロマーと、
を含む架橋性プレポリマーと;
(iii)光開始剤と;
(iv)酸化成分および還元成分を含むレドックス系と、の硬化性混合物を形成させること、
(B)前記レドックス系の2成分の反応によって前記混合物を部分硬化させること、および
(C)部分硬化させた硬化性混合物を、光重合させるのに十分な放射線に暴露すること、を含む硬化組成物を形成させる方法。
【請求項98】
(A)高分子代用骨と;
(B)少なくとも2個の重合性末端基を含み、架橋性プレポリマーが0〜60℃の温度で三次元形状に変形可能且つ架橋可能となるような粘性を有する架橋性プレポリマーと;
i)二酸または多官能性酸のモノマーまたはオリゴマーと、
ii)不飽和炭化水素部分を有する架橋性基を含むカルボン酸分子と、
(C)光開始剤と;
(D)酸化成分および還元成分を含むレドックス系の一方または両方の部分と、の硬化性混合物を含む組成物。
【請求項99】
(A)(i)高分子代用骨と;
(ii)少なくとも2個の重合性末端基を含み、0〜60℃の温度で三次元形状に変形可能且つ架橋可能となるような粘性を有する架橋性プレポリマーと;
(iii)光開始剤と;
(iv)酸化成分および還元成分を含むレドックス系と、の硬化性混合物を形成させること、
(B)前記レドックス系の2成分の反応によって前記混合物を部分硬化させること、および
(C)部分硬化させた硬化性混合物を、光重合させるのに十分な放射線に暴露すること、を含む硬化組成物を形成させる方法。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図1】
【図7】
【図17】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図1】
【図7】
【図17】
【公表番号】特表2006−519295(P2006−519295A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503906(P2006−503906)
【出願日】平成16年2月27日(2004.2.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/005959
【国際公開番号】WO2004/075862
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(505318879)エイ エンタープライジイズ インク (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年2月27日(2004.2.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/005959
【国際公開番号】WO2004/075862
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(505318879)エイ エンタープライジイズ インク (1)
【Fターム(参考)】
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