説明

柔軟性生分解性ポリマー

【課題】本発明は、ポリ乳酸の問題点である硬くて脆いという性質を改良して、生体軟組織に適合可能な柔軟性を有する生分解性ポリマー、及びその製造方法を提供する。また、本発明は、該生分解性ポリマーを用いた軟組織用の組織再生用足場材料などの医療用材料を提供する。
【解決手段】ヒドロキシ酸ユニット及びアスパラギン酸ユニットを含む生分解性共重合体を主鎖とし、該主鎖にメソゲン基を含む側鎖を有してなる柔軟性生分解性ポリマー、並びにその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体適合性に優れ、高い弾性を示す柔軟性生分解性ポリマー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療技術の革新や多様化に伴って、医療分野における生分解性高分子の重要性はますます高まってきており、分解制御型のドラッグデリバリーデバイスや縫合糸、骨固定材、体内での止血・接着剤、癒着防止膜など、役割を果たした後に生体内で無毒な成分に分解し、代謝・吸収される生体内分解吸収性高分子が望まれる用途が増加している。中でも、近年特に注目を集めているのが組織工学(再生医学)用の材料である。組織工学の一手法であるGTR(guided tissue regeneration)法では、生分解性材料を足場として細胞を培養し、細胞の増殖・組織形成に伴い、足場を提供していた分解性高分子が消失し、正常組織へと置換されることを目指している。(非特許文献1)
【0003】
このように、一口に医療用生分解性高分子材料といってもその用途は多岐にわたっており、それぞれの用途において要求される物性(生分解速度、力学的特性、生体接着性など)は異なっている。例えば、骨などの硬組織の一時的代替品では、骨組織と同等の力学的特性(硬さや粘り強さ)が要求されるのに対し、臓器などの軟組織と接触して使用される材料では、応力を受けたときに臓器を傷つけない柔軟性が要求される。また、癒着防止膜と組織接着剤とでは、細胞接着性における要求はまったく正反対である。さらに、組織工学用材料では対象とする組織によって異なる細胞増殖速度に見合った分解プロファイルを示すことが要求される。
【0004】
さらに、特異的な相互作用による細胞の側からの認識を可能にするためには、細胞親和性リガンドの固定化などの化学修飾が可能であることも重要な要求のひとつである。つまり、生体適合性や安全性に優れるだけでなく、生分解速度や力学的・生化学的特性および化学反応性において、種々異なる要求を満足させる生分解性材料のバリエーションが供給できることが望まれている。
【0005】
一方、これまでに医療用材料としてコラーゲンやゼラチン、フィブリンなど、生体由来の物質が多く使用されてきたが、近年ウシ海綿状脳症(BSE)やクロイツフェルトヤコブ病、エイズや肝炎などの感染症の問題が発生し、天然由来物が必ずしも安全ではないことが明らかとなってきている。医療用材料を提供するメーカーでは、原料によるばらつきがなく品質の管理が容易で、生体由来の危険因子を含まない材料として、合成高分子が理想的であるとする声も高い。これまで医療用材料として最も頻繁に研究・使用されてきた生分解性合成高分子は、ポリ−L−乳酸(PLLA)、ポリ−D−乳酸(PDLA)、ポリ−DL−乳酸(PDLLA)とその共重合体であるポリ乳酸系高分子である。
【0006】
ポリ乳酸は、その構成成分である乳酸が体内代謝物質であり、安全性に優れ、生体適合性も比較的高く、高結晶性で力学的強度を高く設定できることから、早くから生分解性医用材料としての利用が検討されてきた。最も一般的なポリ乳酸であるPLLAは、L−ラクチドの開環重合あるいはL−乳酸の直接縮合によって合成され、結晶性が高く高強度が得られることから、骨支持プレートや骨固定ねじとして実用化されている。(非特許文献2)しかし、PLLAは高い結晶性を有するがゆえに、使用目的によっては分解速度が遅すぎることや、固く柔軟性に欠けるため軟組織に対する適合性に乏しいといった難点も有している。
【0007】
そこで、例えば、特許文献1には、約20〜35wt%のε−カプロラクトンと約65〜80 wt%のグリコリドに基づくシーケンスからなり且つ少なくとも30,000 psiの引張強度と350,000 psi未満のヤング率を有するポリマー成型体からなる滅菌した手術用製品、及び該ポリマーの製造方法が開示されている。該特許文献1に開示されたグリコリド−カプロラクトン共重合体及び該共重合体から成型された手術用製品は、優れた柔軟性と機械的強度を有するため、モノフィラメントの形態で手術用縫合糸として利用できる利点がある。しかし、それらは加水分解速度が早過ぎ、生体内において速やかに分解する。そのため、治癒期間が長い患部の手術用縫合糸又はその資材としては満足し得るものではない。
【0008】
また、ラクチド−カプロラクトン共重合体として、例えば、特許文献2には、乳酸単位を95〜65 mol%、カプロラクトン単位を5〜35 mol%含有する共重合体から形成される生体分解性の医療用成形物及びその製造法が開示されている。特許文献2に開示された共重合体及び医療用成形物は、柔軟性を有するため、モノフィラメントの形態で手術用縫合糸として利用できる利点がある。しかし、機械的強度が低い上に、生体内における分解速度が遅すぎるため、必要以上に生体内に長く存在するので好ましくない。生体内に長く残る材料は、炎症、発ガンなど多くの2次的な疾患を引き起こすことが既にわかっている。
【0009】
さらに、今までに開発されてきた材料は、引っ張りや圧縮などの変形を回復する能力が全くないと言ってよいほど伸縮性が低く、この性質を改質することが今日的課題となっている。特に、医療分野では、生体内の組織や臓器と同様の力学的な特性を有する材料の開発が期待されている。生体内の臓器と全く異なる力学的な特性を有する人工材料を埋植すると、生体内で伸縮に対する追従性の違いに起因する生体反応が起こることがわかっている。例えば、人工血管の場合、生体内の血管は血圧によって、血管が伸縮するが、従来の人工血管では、伸縮性が無い材料では、人工血管と血管との間の吻合部で生ずるひずみが2次的な反応を惹起することがわかっており、生分解性材料を用いた血管再生用足場においても血管と同様の伸縮性を有する材料の開発が切望されている。その他の臓器でも同様な現象が起こるために、伸縮性のある性質を有する生分解性の材料の開発が期待されている。
【0010】
ところで、PLLAなどのポリ乳酸系高分子の優れた特性を維持あるいは向上させながら、化学修飾による用途の拡張と物性の制御を行う試みがなされている。例えば、非特許文献3〜6には、官能基を有する環状コモノマーとのランダムおよびブロック共重合や、ヒドロキシル基を有する機能分子を開始種として用いた重合反応、グラフト重合といった高分子合成の手法を活用して、様々な分子形態(ランダム、ブロック、グラフト、分岐構造)および化学的性質(反応性官能基、親疎水性)を有する乳酸共重合体の合成がなされている。
【0011】
具体的には、1)側鎖に反応性官能基を有するデプシペプチド−乳酸・ランダム共重合体(非特許文献7〜10)、2)側鎖に反応性官能基を有するデプシペプチド−乳酸・ブロック共重合体(非特許文献11〜12)、3)櫛型ポリ乳酸(非特許文献13〜14)、4)ハイパーブランチポリ乳酸(非特許文献15)、5)ポリ乳酸グラフト化多糖(非特許文献16〜17)などが合成されている。
【0012】
このように、様々な様態のポリ乳酸系高分子が開発されてきているが、生体適合性を有し、化学修飾が容易で必要に応じた生分解挙動の制御が可能であり、しかも軟組織に適合できる程度の柔軟性や伸縮性を有する材料はいまだ得られていないのが現状である。
【特許文献1】特開昭59-82865号公報
【特許文献2】特開昭64−56055号公報
【非特許文献1】Langer R,et al:Tissue engineering.Science 1993,260:920−926、Freed LE,et al:J Biomed Mater Res 1993,27:11−23
【非特許文献2】辻 秀人ら:ポリ乳酸−医療・製剤・環境のために.京都,高分子刊行会,1997,149−160、生分解性フプラスチック研究会編:生分解性プラスチックハンドブック.東京,エヌ.ティー・エス,1995,279−291,666−730.
【非特許文献3】大矢裕一:生分解性高分子の現状と新展開.人工臓器 1999,28:582−589
【非特許文献4】大矢裕一,大内辰郎:生分解性バイオマテリアルとしての新しいポリ乳酸系高分子.高分子加工 1999,48:530
【非特許文献5】大矢裕一:ポリ乳酸をベースとした新規な生分解性高分子の合成とバイオマテリアルとしての応用.高分子論文集 2002,59:484−498
【非特許文献6】大内辰郎,大矢裕一:新規なポリ乳酸系医用材料.未来材料 2002,2:30−35.
【非特許文献7】Ouchi T,et al:Macromol Chem Rapid Commun 1993,14:825−831
【非特許文献8】Ouchi T,et al:Macromol Chem Phys 1996,197:1823−1833
【非特許文献9】Ouchi T,et al:J Polym Sci Part A:Polym Chem 1997,35:377−383
【非特許文献10】Ouchi T,et al:J Polym Sci Part A:Polym Chem 1998,36:1283−1290.
【非特許文献11】Ouchi T,et al:Designed Monom Polym 2000,3:279−287
【非特許文献12】Ouchi T,et al:J Polym Sci Part A:Polym Chem 2002,40:1218−1225.
【非特許文献13】Tasaka F,et al:Macromolecules 1999,32:6386−6389
【非特許文献14】Tasaka F,et al:Macromolecules 2001,34:5494−5500.
【非特許文献15】Tasaka F,et al:Macromol Rapid Commun 2001,22:820−824.
【非特許文献16】Ohya Y,et al:Macromolecules 1998,31:4662−4665
【非特許文献17】Ohya Y,et al:Macromol Chem Phys 1998,199:2017−2022.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、ポリ乳酸の問題点である硬くて脆いという性質を改良して、生体軟組織に適合可能な柔軟性を有する生分解性ポリマー、及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、該生分解性ポリマーを用いた軟組織用の組織再生用足場材料などの医療用材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記の課題を解決するため鋭意検討を行った結果、ヒドロキシ酸ユニット(例えば、乳酸ユニット、グリコール酸ユニット等)及びアスパラギン酸ユニットを含む生分解性共重合体を主鎖とし、該主鎖にメソゲン基(例えば、コレステロールからなる基)を含む側鎖を有してなる生分解性ポリマーが、生体軟組織に適合可能な柔軟性等を有することを見出した。かかる知見に基づきさらにこれを発展させて本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明は以下の柔軟性生分解性ポリマー及びその製造方法を提供する。
【0016】
項1. ヒドロキシ酸ユニット及びアスパラギン酸ユニットを含む生分解性共重合体を主鎖とし、該主鎖にメソゲン基を含む側鎖を有してなる柔軟性生分解性ポリマー。
【0017】
項2. 前記メソゲン基がコレステロール誘導体からなる基である項1に記載の柔軟性生分解性ポリマー。
【0018】
項3. 一般式(A):
【0019】
【化1】

【0020】
(式中、R及びRは独立して水素原子又はメチル基を示し、Lはスペーサーを示し、Rはメソゲン基を示し、xは20〜1000を示し、yは0〜100を示し、zは2〜1000を示し、z/(x+y+z)が0.002〜0.5であり、x、y及びzの各ユニットの配列は上記配列の順に限定されない。)で表される項1に記載の柔軟性生分解性ポリマー。
【0021】
項4. 前記一般式(A)におけるLで示されるスペーサーが、一般式(B):
【0022】
【化2】

【0023】
(式中、Wは−NH−又は−O−を示し、nは2〜10の整数を示す。)
で表される2価の基である項3に記載の柔軟性生分解性ポリマー。
【0024】
項5. 前記一般式(A)におけるRで示されるメソゲン基が、式(C):
【0025】
【化3】

【0026】
で表される基である項3又は4に記載の柔軟性生分解性ポリマー。
【0027】
項6. 前記一般式(A)において、xが50〜200を示し、yが0〜20を示し、zが5〜100を示し、x/(x+y+z)が0.6〜0.95であり、z/(x+y+z)が0.05〜0.4である項3、4又は5に記載の柔軟性生分解性ポリマー。
【0028】
項7. 数平均分子量(Mn)が3,000〜500,000である項1〜6のいずれかに記載の柔軟性生分解性ポリマー。
【0029】
項8. 数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)が1.0〜5.0である項1〜7のいずれかに記載の柔軟性生分解性ポリマー。
【0030】
項9. ガラス転移温度が10〜40℃である項1〜8のいずれかに記載の柔軟性生分解性ポリマー。
【0031】
項10. 生分解挙動が、pH=7.4のリン酸緩衝生理食塩水中(37℃)に浸漬した場合に、50日で数平均分子量が30〜70%減少する項1〜9のいずれかに記載の柔軟性生分解性ポリマー。
【0032】
項11. 前記柔軟性生分解性ポリマーを厚さ約100μm、幅7.5mm短冊状のフィルムとし、これを引っ張り試験したときの破断強度が0.1〜2MPa、ヤング率が0.1〜2MPa、破断時ひずみが500〜1000%である項1〜10のいずれかに記載の柔軟性生分解性ポリマー。
【0033】
項12. 一般式(A):
【0034】
【化4】

【0035】
(式中、R及びRは独立して水素原子又はメチル基を示し、Lはスペーサーを示し、Rはメソゲン基を示し、xは20〜1000を示し、yは0〜100を示し、zは2〜1000を示し、z/(x+y+z)が0.002〜0.5であり、x、y及びzの各ユニットの配列は上記配列の順に限定されない。)で表される柔軟性生分解性ポリマーの製造方法であって、一般式(F):
【0036】
【化5】

【0037】
(式中、R、R、x、y及びzは前記に同じ。)
で表されるカルボン酸化合物と、一般式(G):
HO−L−R (G)
(式中、L及びRは前記に同じ。)
で表されるアルコールとを縮合反応させることを特徴とする製造方法。
【0038】
項13. 項1〜11のいずれかに記載の柔軟性生分解性ポリマーを含む医療用材料。
【発明の効果】
【0039】
本発明の柔軟性生分解性ポリマーは、ヒドロキシ酸ユニット及びアスパラギン酸ユニットを含む生分解性共重合体を主鎖とし、該主鎖にメソゲン基を含む側鎖を有しているため、自己組織化(自己会合)が可能なメソゲン基同士が物理的に架橋することにより該ポリマーに高い柔軟性が付与される(例えば、図1の模式図を参照)。これによりポリ乳酸の硬くて脆いという性質を大幅に改善することができる。また、成型加工性に優れるという特徴も有している。さらに、上記した柔軟性を生かして、組織再生用足場材料などの医療用素材として用いることもできる。
【0040】
また、本発明の柔軟性生分解性ポリマーの製造方法は簡便にかつ収率良く実施でき、該ポリマーにバリエーションのある化学修飾が可能であるという特徴を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
1.柔軟性生分解性ポリマー
本発明の柔軟性生分解性ポリマーは、ヒドロキシ酸ユニット及びアスパラギン酸ユニットを含む生分解性共重合体を主鎖とし、該主鎖にメソゲン基を含む側鎖を有してなる。
【0042】
主鎖を構成するヒドロキシ酸としては、例えば、乳酸、グリコール酸、酒石酸、リンゴ酸、メバロン酸等が挙げられるが、好ましくは乳酸、グリコール酸等のα−ヒドロキシ酸である。ヒドロキシ酸は、1種又は2種以上を含んでいても良い。
【0043】
側鎖は、主鎖を構成するアスパラギン酸ユニットの側鎖カルボン酸を足がかりにして形成される。該側鎖には、メソゲン基、即ち、配向性を示し、液晶性発現に本質的役割を果たす原子団(基)を意味し、例えば、コレステロール誘導体(コレステロール、コール酸、シトステロール,カンペステロール,スチグマステロール等)を含む基、ビフェニル骨格を含む基、アゾベンゼン骨格を含む基などが例示される。これらに限定されるものではない。
【0044】
本発明の柔軟性生分解性ポリマーの具体例としては、一般式(A):
【0045】
【化6】

【0046】
(式中、R及びRは独立して水素原子又はメチル基を示し、Lはスペーサーを示し、Rはメソゲン基を示し、xは20〜1000を示し、yは0〜100を示し、zは2〜1000を示し、z/(x+y+z)が0.002〜0.5であり、x、y及びzの各ユニットの配列は上記配列の順に限定されない。)で表される化合物が挙げられる。即ち、ラクチド(乳酸二量体)ユニット又はグリコリド(グリコール酸二量体)ユニット、乳酸ユニット又はグリコール酸ユニット、及びアスパラギン酸ユニットを含む主鎖と、アスパラギン酸の側鎖カルボン酸から誘導されたメソゲン基を含む側鎖とからなる。
【0047】
及びRは、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を示すが、好ましくはRがメチル基、Rが水素原子である。なお、R及びRがメチル基の場合、メチル基が結合する炭素原子は不斉炭素となり得る。本発明の共重合体においては、該不斉炭素の立体配置は(R)体、(S)体或いはそれらの混合物のいずれであってもよい。
【0048】
ここで、x、y及びzは、ポリマー中の各ユニットの平均個数を表し、HNMR及びGPCから求められる。
【0049】
また、上記したように、x、y及びzの各ユニットの配列はランダムでもブロックでもよい。
【0050】
本発明のポリマーにおけるxは20〜1000であり、好ましくは50〜200であり、より好ましくは100〜200である。ラクチドユニット及びグリコリドユニットはそれぞれ乳酸の二量体及びグリコール酸の二量体からなり、それぞれ通常原料であるラクチド(乳酸の環状二量体)及びグリコリド(グリコール酸の環状二量体)に由来する。好ましくはラクチドユニットである。ラクチドユニットはL−乳酸及び/又はD−乳酸のいずれから構成されていてもよいが、主鎖が非晶性となるようなD−乳酸とL−乳酸の混合物、特に両者の等量混合物から構成されるものが好ましい。
【0051】
yは0〜100であり、好ましくは0〜20であり、より好ましくは0〜10である。
【0052】
zは2〜1000であり、好ましくは5〜100であり、より好ましくは10〜20である。
【0053】
x/(x+y+z)は0.5〜0.99、好ましくは0.6〜0.95、より好ましくは0.8〜0.9である。xがこの範囲にあることにより、本発明のポリマーに好適な生分解性及び組織適合性が付与される。
【0054】
z/(x+y+z)は0.002〜0.5、好ましくは0.05〜0.4、より好ましくは0.06〜0.2である。zがこの範囲にあることにより、メソゲン基同士の物理的相互作用が発揮されて本発明のポリマーに柔軟性が付与される。
【0055】
Lで示されるスペーサーとは、本発明のポリマー主鎖を構成するアスパラギン酸の側鎖カルボン酸と、Rで示されるメソゲン基とを結合する2価の基であり、メソゲン基同士が有効に相互作用できる距離を保持できる基であれば特に限定はない。
【0056】
具体的には、例えば、一般式(B):
【0057】
【化7】

【0058】
(式中、Wは−NH−又は−O−を示し、nは2〜10の整数を示す。)で表される2価の基が挙げられる。このうち、Wは−NH−が好ましく、nは2〜8の整数が好ましく、特に4〜6の整数がより好ましい。
【0059】
Rで示されるメソゲン基は、配向性(液晶性)を示し自己組織化(自己会合性)発現に本質的な役割を果たす原子団(基)であれば特に限定はない。具体例として、コレステロール誘導体、ビフェニル誘導体、アゾベンゼン誘導体等の液晶性の化学構造を有する基が挙げられる。この基が導入されることにより、側鎖が多分子間で組織化した配向性ドメインを形成し、それらが架橋点として作用することで主鎖が物理的に架橋されることになり、これらの配向性ドメインが可塑剤的に作用することで柔軟性が付与され、結果として柔軟性と粘り強さを兼ね備えた生分解性材料が得られる。
【0060】
具体的には、例えば、式(C):
【0061】
【化8】

【0062】
で表される基、式(D):
【0063】
【化9】

【0064】
で表される骨格を含む基、式(E):
【0065】
【化10】

【0066】
で表される骨格を含む基等が挙げられる。特に、配向性を示す温度範囲が室温〜180℃と広く、安全性の点から、式(C)で表されるコレステロールからなる基が好ましい。
【0067】
コレステロールは胆汁酸、性ホルモンなどともにステロイドの仲間であり、胆石の成分としてだけでなく、ヒトの血液中にも存在し、種々の動物組織の構成成分として存在する。コレステロールの吸収のメカニズムとしては、いくつかの連続したステップから成り立っている。すなわち、1)コレステロールエステルの加水分解 2)遊離コレステロールの混合ミセルへの溶解、3)拡散によるunstirred water layerの通過と吸収細胞への取り込み、4)粘膜細胞内でのコレステロールのエステル化、5)カイロミクロンや超低密度リポタンパク質(VLDL)としてのリンパへの放出、これら全てのステップでコレステロール吸収は制御されている。このように、コレステロールは生体内に存在する物質であるため、安全性の面からも好適である。
【0068】
なお、コレステロールの排泄は、主に胆,胆嚢,腸管において行われている。肝においては、コレステロールはコール酸やケノコール酸となり、一次胆汁として排泄され、95%が腸肝循環を行う。また腸管では腸内細菌によりコール酸はデオキシコール酸、ケノコール酸はトリコール酸に還元され、二次胆汁酸となる。この胆汁酸の腸肝循環は25〜30g/日である。
【0069】
本発明のポリマーの数平均分子量(Mn)は3,000〜500,000、好ましくは10,000〜100,000、より好ましくは30,000〜50,000であり、重量平均分子量(Mw)は3,000〜500,000、好ましくは10,000〜100,000、より好ましくは30,000〜50,000である。また、分子量分布の指標である数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)が1.0〜5.0、好ましくは、1.0〜4.0、より好ましくは1.0〜3.5である。数平均分子量及び重量平均分子量は、例えばGPC(溶媒:ジメチルホルムアミド)等の公知の方法を用いて測定できる。
【0070】
また、ガラス転移温度は10〜40℃、好ましくは10〜30℃である。また、融点を示さないことが望ましい。
【0071】
本発明のポリマー生分解挙動として、pH=7.4のリン酸緩衝生理食塩水中(37℃)に浸漬した場合に、50日浸漬後における数平均分子量の減少割合が30〜70%、好ましくは40〜60%である。なお、数平均分子量の測定はGPCを用いる。
【0072】
本発明のポリマーを厚さ約100μm、幅7.5mm短冊状のフィルムとし、これを引っ張り試験に供したとき、破断強度は0.1〜2MPa、好ましくは0.5〜2MPaであり、ヤング率は0.1〜2MPa、好ましくは0.1〜1.0MPaであり、破断時ひずみは500〜1000%、好ましくは500〜700%である。
【0073】
2.ポリマーの製造方法
本発明の柔軟性生分解性ポリマーは、例えば、次のようにして製造することができる。
【0074】
【化11】

【0075】
(式中、Bzlはベンジル基を示し、R、R、L、R、x、y及びzは前記に同じ。)
上記(1)で表される化合物は、例えば、T. Ouchi, et. al., Macromol. Chem. Phys. 197, 1823-1833 (1996) 等に準じて製造することができ、また上記(2)で表される化合物は市販されている。
【0076】
続いて、上記(1)及び(2)で表される化合物を触媒(スズ 2-エチルヘキサノエート等)を用いて開環重合させて上記(3)で表される化合物とし、これを酸触媒(トリフルオロメタンスルホン酸:TFMSA等)又は水素還元(H2、Pd/C等)により、側鎖のベンジルエステルを遊離のカルボン酸に変換して上記(F)で表されるカルボン酸化合物を得る。本反応は慣用の方法を用いて実施することができる。
【0077】
さらに上記(F)で表されるカルボン酸化合物を、縮合剤(ジシクロヘキシルカルボジイミド及び1−ヒドロキシベンゾトリアゾール:DCC/HOBt、4−ジメチルアミノピリジン:DMAP等)の存在下、一般式(G)で表されるアルコール化合物と反応させることにより、上記(A)で表される共重合体を得る。
【0078】
本反応では、一般式(G)で表されるアルコール化合物は、上記(F)で表されるカルボン酸化合物に対し、通常1.1〜2当量用いることができる。反応溶媒は、例えば、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドを用いることができ、反応温度は0〜40℃程度である。縮合剤は、上記(F)で表されるカルボン酸化合物に対し、通常1.1〜2当量用いることができる。例えば、上記(F)で表されるカルボン酸化合物に対し、DCCは1.1〜2当量程度、HOBtは1.1〜2当量程度、DMAPは触媒量である。
【0079】
また、一般式(G)で表されるアルコール化合物が一般式(G1)で表される化合物の場合、例えば次のようにして製造できる。
【0080】
【化12】

【0081】
(式中、W及びnは前記に同じ。)
一般式(4)で表される化合物とコレステロール(5)とを、カルボニルジイミダゾール(CDI)(6)及び触媒量のDMAP存在下にて反応させることにより、一般式(G1)で示される化合物を得る。一般式(4)で表される化合物は、コレステロール(5)に対し1〜1.5当量程度、CDIは1〜1.5当量程度である。反応溶媒は、例えば、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドを用いることができる。反応温度は0〜40℃程度であり通常室温下であればよい。
【0082】
本発明によって、柔軟性を有する生分解性素材が得られる。この素材は、フィルム状、糸状、スポンジ状に成型加工でき、柔軟性を有する生分解性材料の開発が可能となる。これらは例えば、医療材料および医療製品、電化製品、家具に代表される一般的な造形物、プラスチックボトル、惣菜用容器に代表される一般的な飲食業界に関わる容器などとして応用できる。
【0083】
本発明の素材は、医療用素材(材料)として好適に用いることができる。例えば、軟組織や、血管や筋肉(心筋、骨格筋、平滑筋等)などの柔軟性が要求される組織に対して高い力学的適合性を示すため、このような組織の再生に用いる生体内留置物として有用である。例えば、生分解性埋込材料、組織再生用足場材料、再生医療における可動部位への利用等が挙げられる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0085】
なお、以下、本発明のポリマーを「ポリ乳酸−コレステロール・コンジュゲイト(PDLLA-cholesterol)」とも表記する。
[実施例1]
ポリ乳酸−コレステロール・コンジュゲイトの合成
(1)重合管に425mg(1.62 mmol)のcyclo[Glc-Asp(OBzl)]と2,103 mg(14.6mmol)のDL-ラクチドを入れ、そこに開始剤として20μlの脱水 THFに溶解した6.57mg(16.2μmol)の2-エチルヘキサン酸スズを加え、スリ付き二方コックをかぶせた。その後、重合管をグローブボックスより取り出し、冷却用の液体窒素でTHFを固化した。続いて重合管をバキュームラインにつなぎ、脱気及びアルゴン置換を3回繰り返し固化したTHFを融解した。この操作を計3回行い、脱水THFを完全に除去後、重合管の封管を行った。その重合管をcyclo[Glc-Asp(OBzl)]の融点より高い 160℃でモノマーを全て溶融させ均一系にした後、135℃で24時間共重合反応を行った。所定時間経過後、少量のクロロホルムに溶解させ、大量のジエチルエーテル中に沈殿させた。得られた沈殿物を回収し、真空ポンプを用いて24時間減圧乾燥することで、660mgのpoly{[Glc-Asp(OBzl)]-random-LA}を得た。
(2)上記(1)で得られた635mg(190μmol)の化合物を15mlのトリフルオロ酢酸に溶解し,氷冷下で1.7ml(1.67mmol)の1M-TFMSAを加えて1時間攪拌した。その後、反応混合液を大量の冷ジエチルエーテル中に沈殿させた。得られた沈殿物を回収し、真空ポンプを用いて24時間減圧乾燥することで、430 mgのpoly[(Glc-Asp)-random-LA]を得た。
【0086】
1H NMR (CDCl3)、δ(ppm); 1.5 (3H, CHCH3)、4.6 (2H, OCH2CO)、4.9 (2H, CH2COOH)、5.1 (1H, CHCH3)。
【0087】
【化13】

【0088】
(3)ナスフラスコに1,000mg(2.59mmol)のコレステロールを入れ、5 mlの塩化メチレンに溶解した後に、504mg(3.10mmol)のカルボニルジイミダゾール(CDI)を加え6 時間攪拌した。その後320mg(3.10mmol)の5-アミノ-1-ペンタノールと78mg(0.64mmol)の4-ジメチルアミノピリジン(DMAP) を加え、室温で12時間攪拌した。攪拌後に塩化メチレンをエバポレータで除去し、ガラスフィルター上で超純水を用いて洗浄した。回収した白色粉末を50mlのクロロホルムに溶解し、50mlの飽和食塩水で4回洗浄した後、抽出した有機層に10 gの無水硫酸マグネシウムを加えて2時間攪拌した。不溶物を濾過した後に、エバポレータを用いてクロロホルムを除去し、970mgのアルキル鎖(スペーサー)を有するコレステロール誘導体を得た。
【0089】
TLC [CHCl3/CH3OH (6/4)]、detect:ヨウ素、Rf値=0.72。融点: 150〜151℃。1H NMR (CDCl3)、δ(ppm); 0.68 (3H, cholesterol C-18 H)、1.2-1.7 (2H, (CH2)3)、2.19-2.42 (2H, cholesterol C-4 H)、3.18 (2H, CH2NH)、3.64 (2H, CH2OH)、5.37 (1H, cholesterol C-6 H)。
【0090】
【化14】

【0091】
(4)上記(2)で得られた500mg(0.30mmol)の化合物を10mlの塩化メチレンに溶解した後、74mg(0.36mmol)のジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を固体で加え、氷零下で2時間攪拌した。その後1mlの塩化メチレンに溶解した(3)で得た180mg(0.36mmol)の化合物と12mg(0.10mmol)のDMAPを加え、室温で12時間攪拌した。生じたDCUreをろ過により除去した後に回収したろ液をn-ヘキサン/エタノール(7/3)に滴下し、沈殿を生成させた。回収した沈殿物を24時間減圧乾燥し、491 mgのポリ乳酸-コレステロール・コンジュゲイトを得た。
【0092】
1H NMR (CDCl3)、δ (ppm); 0.68 (3H, C-18 H of cholesterol)、1.2-1.7 (H2, (CH2)3)、1.56 (3H, CHCH3 )、2.19-2.42 (2H, C-4 H of cholesterol)、2.82-3.08 (2H, CHCH2CO)、3.18 (2H, CH2NH)、3.64 (2H, CH2OH)、4.67 (2H, OCH2CO )、4.97 (2H, NHCH2CO )、5.37 (1H, C-6 H of cholesterol)。
【0093】
【化15】

【0094】
得られた共重合体の数平均分子量(Mn)と分子量分布(Mw/Mn)をゲルろ過クロマトグラフィー(東ソー製α-5000カラム)で測定したところ、Mn=36,000、Mw/Mn=3.2であった。
【0095】
【表1】

【0096】
また、得られた共重合体中のx、y及びzは、1H NMRより、それぞれ187、3及び13であった。図2を参照。
【0097】
また、得られた共重合体の示差走査熱量(DSC)測定(島津製作所製DSC-60)を行ったところ、ガラス転移温度は20℃であった。
【0098】
また、図3より、上記(F)で表されるカルボン酸化合物(PDLLA-COOH)のDSCチャートには目立った吸熱ピークが観測されなかったのに対して、上記(4)で得られた化合物ポリ乳酸-コレステロール・コンジュゲイト(PDLLA-cholesterol)には110℃から140℃の範囲に,数個の新たな吸熱ピークが検出されたことより、ポリマーにおいてコレステロール基がスタッキングしていることが分かった。
【0099】
得られた共重合体の引張試験を厚さ約100μm幅7.5mm短冊状のフィルムを用いて試験したところ、破断強度が1.5MPa、ヤング率が0.86MPa、破断時ひずみが620%であった。
【0100】
[比較例1]
実施例1(2)で得られる、主鎖中に側鎖としてカルボキシル基を有するポリ乳酸(以下、「PDLLA-COOH」とも表記する)の引張試験を厚さ約100μm幅7.5mm短冊状のフィルムを用いて試験したところ、破断強度が2.9MPa、ヤング率が360MPa、破断時ひずみが410%であった。
【0101】
[試験例1]
ポリ乳酸−コレステロール・コンジュゲイトフィルムの偏光顕微鏡観察
6mlのクロロホルムに溶解した360mgのPDLLA-cholesterol又は360 mgのPDLLA-COOH(ポリマー濃度4wt%) をテフロン(登録商標)シャーレ(Φ=50)にキャストし、室温・常圧下で12時間そして室温・減圧下で24時間乾燥を行ない、PDLLA-cholesterolフィルムおよびPDLLA-COOHフィルムを得た。得られたPDLLA-cholesterolの厚さは約100μmで、黄色透明であった。コレステロール基の自己組織化挙動を解析するために、調製したPDLLA-cholesterolフィルムの偏光顕微鏡観察を行なった(図4)。
【0102】
その結果、偏光子がクロスニコルの状態において、PDLLA-COOHフィルムでは暗視野しか観測されなかったが、PDLLA-cholesterolフィルムでは複屈折パターンが観察されたことから、配向性ドメインであることが示された(例えば、図5の模式図を参照)。またそのドメインサイズは50μm程度であることが示された。
【0103】
[試験例2]
ポリ乳酸−コレステロール・コンジュゲイトフィルムの引っ張り試験
コレステロール基の物理架橋ドメイン形成に伴う、フィルムの力学特性変化を解析するため、調製したPDLLA-cholesterolフィルムとPDLLA-COOHフィルムを7.5mm´25mmに切り抜き、1mm/minで引っ張り試験を行った(図6)。
【0104】
その結果、PDLLA-COOHフィルムと比較して、PDLLA-cholesterolフィルムの最大応力は半分以下となり、破断伸びは約1.3倍に増大した。このことからポリ乳酸の側鎖に自己会合特性を有するコレステロール基を導入することで、柔軟性と粘り強さを兼ね備えたポリ乳酸系材料の開発が可能となることが示された。
【0105】
図6の右上のグラフ(ヤング率)から、PDLLA-COOHフィルムのヤング率が360MPaであったのに対して、PDLLA-cholesterolフィルムは0.86MPaであった。このことからPDLLA-cholesterolフィルムは、より弱い応力に対しても追従が可能であることが示された。
【0106】
[試験例3]
ポリ乳酸−コレステロール・コンジュゲイトフィルムの生分解性試験
コレステロール基の導入に伴う、フィルムの生体内分解挙動を解析するため、調製したPDLLA-cholesterolフィルムとPDLLA-COOHフィルムを7.0mm´7.0mmに切り抜き、pH=7.4のリン酸緩衝生理食塩水中(37℃)に浸漬した。所定時間後(1、2、4、7、14、28、50日後)に取り出したフィルムを超純水で塩を洗い流し、凍結乾燥を行った後、フィルムの重量測定およびGPC測定を行い、フィルムの重量、数平均分子量の減少割合を求めた。PDLLA-COOHフィルムは1日目でフィルムのすべてがリン酸緩衝生理食塩水中に溶解したが、そのリン酸緩衝生理食塩水の上澄みを凍結乾燥して、水を除去して得た残渣をGPC測定することで数平均分子量を得た。
【0107】
図7に、37℃(in vitro)でのPBS (pH=7.4)におけるPDLLA-COOHフィルムと、PDLLA-cholesterolフィルムの生分解性挙動を示す。(A)は時間−重量減少割合の関係を、(B)は時間−分子量減少割合の関係を示す。なお、t(日)後の重量減少割合は下記式から導かれる。
【0108】
重量減少割合(wt%)=[(W−W)/W0]×100
は初期重量(g)、Wはt(日)後の重量(g)を示す。
【0109】
その結果、PDLLA-COOHフィルムと比較して、PDLLA-cholesterolフィルムの重量減少率は著しく減少した。これはポリマー主鎖中の親水性官能基の減少に加えて、コレステロール基の自己組織化に伴い非晶性PDLLAのネットワークが形成されたことに起因すると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の柔軟性生分解性ポリマーの模式図である。
【図2】実施例1で得られたポリ乳酸−コレステロール・コンジュゲイトの1H NMRのチャート及び代表的なプロトンの帰属を示す。
【図3】実施例1で得られたポリ乳酸−コレステロール・コンジュゲイトの示差走査熱量(DSC)測定結果を示す。
【図4】実施例1のポリ乳酸−コレステロール・コンジュゲイト(PDLLA-cholesterol)フィルムと、比較例1のポリ乳酸(PDLLA-COOH)フィルムの偏光顕微鏡写真である。
【図5】実施例1のポリ乳酸−コレステロール・コンジュゲイト(PDLLA-cholesterol)フィルムの液晶ドメインの模式図である。
【図6】実施例1のポリ乳酸−コレステロール・コンジュゲイト(PDLLA-cholesterol)フィルムと、比較例1のポリ乳酸(PDLLA-COOH)フィルムの引っ張り試験の結果を示す。
【図7】37℃(in vitro)でのPBS (pH=7.4)における、実施例1のポリ乳酸−コレステロール・コンジュゲイト(PDLLA-cholesterol)フィルム(▲)と、比較例1のポリ乳酸(PDLLA-COOH)フィルム(■)の生分解性挙動を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシ酸ユニット及びアスパラギン酸ユニットを含む生分解性共重合体を主鎖とし、該主鎖にメソゲン基を含む側鎖を有してなる柔軟性生分解性ポリマー。
【請求項2】
前記メソゲン基がコレステロール誘導体からなる基である請求項1に記載の柔軟性生分解性ポリマー。
【請求項3】
一般式(A):
【化1】

(式中、R及びRは独立して水素原子又はメチル基を示し、Lはスペーサーを示し、Rはメソゲン基を示し、xは20〜1000を示し、yは0〜100を示し、zは2〜1000を示し、z/(x+y+z)が0.002〜0.5であり、x、y及びzの各ユニットの配列は上記配列の順に限定されない。)で表される請求項1に記載の柔軟性生分解性ポリマー。
【請求項4】
前記一般式(A)におけるLで示されるスペーサーが、一般式(B):
【化2】

(式中、Wは−NH−又は−O−を示し、nは2〜10の整数を示す。)
で表される2価の基である請求項3に記載の柔軟性生分解性ポリマー。
【請求項5】
前記一般式(A)におけるRで示されるメソゲン基が、式(C):
【化3】

で表される基である請求項3又は4に記載の柔軟性生分解性ポリマー。
【請求項6】
前記一般式(A)において、xが50〜200を示し、yが0〜20を示し、zが5〜100を示し、x/(x+y+z)が0.6〜0.95であり、z/(x+y+z)が0.05〜0.4である請求項3、4又は5に記載の柔軟性生分解性ポリマー。
【請求項7】
数平均分子量(Mn)が3,000〜500,000である請求項1〜6のいずれかに記載の柔軟性生分解性ポリマー。
【請求項8】
数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)が1.0〜5.0である請求項1〜7のいずれかに記載の柔軟性生分解性ポリマー。
【請求項9】
ガラス転移温度が10〜40℃である請求項1〜8のいずれかに記載の柔軟性生分解性ポリマー。
【請求項10】
生分解挙動が、pH=7.4のリン酸緩衝生理食塩水中(37℃)に浸漬した場合に、50日で数平均分子量が30〜70%減少する請求項1〜9のいずれかに記載の柔軟性生分解性ポリマー。
【請求項11】
前記柔軟性生分解性ポリマーを厚さ約100μm、幅7.5mm短冊状のフィルムとし、これを引っ張り試験したときの破断強度が0.1〜2MPa、ヤング率が0.1〜2MPa、破断時ひずみが500〜1000%である請求項1〜10のいずれかに記載の柔軟性生分解性ポリマー。
【請求項12】
一般式(A):
【化4】

(式中、R及びRは独立して水素原子又はメチル基を示し、Lはスペーサーを示し、Rはメソゲン基を示し、xは20〜1000を示し、yは0〜100を示し、zは2〜1000を示し、z/(x+y+z)が0.002〜0.5であり、x、y及びzの各ユニットの配列は上記配列の順に限定されない。)で表される柔軟性生分解性ポリマーの製造方法であって、一般式(F):
【化5】

(式中、R、R、x、y及びzは前記に同じ。)
で表されるカルボン酸化合物と、一般式(G):
HO−L−R (G)
(式中、L及びRは前記に同じ。)
で表されるアルコールとを縮合反応させることを特徴とする製造方法。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかに記載の柔軟性生分解性ポリマーを含む医療用材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−120887(P2008−120887A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304556(P2006−304556)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年5月10日 社団法人 高分子学会発行の「高分子学会年次大会予稿集 55巻1号 2006」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年11月1日 社団法人 高分子学会発行の「第15回ポリマー材料フォーラム予稿集」に発表
【出願人】(399030060)学校法人 関西大学 (208)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】