説明

栄養組成物およびそれを用いて平滑筋細胞収縮を阻害する方法

本発明は、平滑筋細胞を阻害し、そして高血圧を低下させるために栄養組成物を使用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その開示が引用することにより本明細書に完全に組み込まれる2003年5月30日に出願された米国特許出願番号第10/449,828号の一部継続出願である。
【0002】
本発明は、栄養組成物および平滑筋細胞の収縮を阻害する方法に関し、従って高血圧患者における血圧を低下させることができる。
【背景技術】
【0003】
高血圧の病態生理学的および臨床的影響が数多く報告されている。これらの影響には、不健康および職務遂行能力の低下をもたらす短期的な影響、ならびに心筋梗塞、脳卒中、心停止、腎臓病、腎不全およびその他をもたらす長期的な影響が含まれる。さらに、高血圧の影響は糖尿病のような他の疾患と結合して悪化する。近年、米国における心血管疾患に関する死の50%以上が、高血圧に関連または高血圧に起因していると推定されている。高血圧は依然として、ある程度の入院を必要とする心不全またはその他の疾病状態の最も一般的な原因となっている。
【0004】
高血圧の治療に関しては、重要なかつ広範囲にわたる研究が行われている。しかし、前記疾患に対する現在の治療は、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACE阻害剤)の投与のような治療である。これらの治療は長期的な有効性に関して重大な欠点、最も顕著なものとしてこの治療に伴う費用および重大な副作用を有する。
【0005】
高血圧の発病のメカニズムに関しても、膨大な数の刊行物が存在する。アンジオテンシンIIの広範な生成および活性が、高血圧の進行における主要な原因の1つとしてよく認められており、それは過剰なアンジオテンシンIIが、動脈の異常な激しい収縮を引き起こし、動脈の弛緩作用を損なわせ、従って血圧を上昇させるためである。従って、アンジオテンシンIIの形成を減少させるか(すなわち動脈壁細胞でのアンジオテンシンIのアンジオテンシンIIへの変換を遮断するACE阻害剤)またはアンジオテンシンIIの生物学的活性を遮断する(すなわちアンジオテンシン受容体のアゴニスト)ことができる医薬化合物を開発するために多大な努力がなされている。両方の種類の化合物が、実験動物から単離した動脈またはコラーゲンゲルに包埋した培養平滑筋細胞のモデルのいずれかを用いて、アンジオテンシン依存の動脈壁の収縮を遮断する能力について実験条件において試験されている。前記実験モデルにおいてアンジオテンシンIIの収縮活性を遮断する試験化合物の能力は、この化合物が生体内(in vivo)条件でアンジオテンシンII活性を遮断し、アンジオテンシンによる高血圧を減少させることを明確に意味する。
【0006】
Carini et alは、ヒトの動脈の弛緩を増強するブドウの種由来のプロシアニジンについて記載している(非特許文献1)。Shen et alは、緑茶カテキンがラット大動脈における相動性収縮を引き起こすことを記載しており、Chen et alは収縮における精製した緑茶エピカテキンについて記載している。Sanae et alはラット胸大動脈での血管緊張における内皮でのカテキンの効果について記載している。Huang et alは、フラボノイドおよびエピカテキンに対する血管応答における、内皮/一酸化窒素の役割について記載している(非特許文献2)。これらの引用文献は、血管緊張の制御において緑茶抽出物が役割を果たす可能性については示唆しているが、平滑筋細胞に対する直接の効果については明らかにされていない。その他の成分が、平滑筋細胞収縮における緑茶抽出物の効果を増強することができるかどうかについてはほとんどわかっていない。
【非特許文献1】Life Sci. 2003 Oct. 17; 73(22):2883-98
【非特許文献2】Acta Pharmacol. Sin. 2000 Dec; 21(12): 1119-24
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のことより、直接的に平滑筋細胞収縮を阻害し、根本的に高血圧疾患を治療するための栄養組成物および方法が必要である。動脈における平滑筋細胞の適度な収縮および弛緩を可能にする、刺激に対する動脈の感受性を回復および維持するために前記栄養組成物を使用する方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、緑茶抽出物、アスコルビン酸、リジン、プロリン、アルギニン、マグネシウム、N-アセチルシステイン、セレニウム、銅およびマンガンを含む栄養組成物を用いて平滑筋細胞を処理する段階を含む、平滑筋細胞収縮を阻害する方法を提供する。
【0009】
好ましくは、前記緑茶抽出物は、エピカテキン、エピカテキン-3-ガレート(epicatechin-3-gallate)、エピガロカテキンおよびエピガロカテキン-3-ガレートからなる群から選択される少なくとも1つの化合物である。さらに好ましくは、前記緑茶抽出物はエピガロカテキン-3-ガレートである。
【0010】
好ましくは、前記アスコルビン酸は、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸マグネシウムまたはパルミチン酸アスコルビルである。
【0011】
前記処理する段階は、好ましくはヒトを対象に投与する段階である。好ましくは、前記投与される栄養組成物は、緑茶抽出物 1,000 mg、アスコルビン酸 710 mg、リジン 1,000 mg、プロリン 750 mg、アルギニン 500 mg、マグネシウム 1 mg、N-アセチルシステイン 30 mg、セレニウム 30 μg、銅 2 mgおよびマンガン 1 mgを含む。
【0012】
好ましくは前記栄養組成物はさらに、レスベラトロールおよびゲニステインからなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む。
【0013】
本発明の目的は、血圧を低下させるのに有用な栄養組成物の投与方法を提供することにある。
【0014】
本発明のもう1つの目的は、安全である天然源由来の栄養組成物を使用する方法にある。
【0015】
本発明のもう1つの目的は、平滑筋細胞の収縮を引き起こし、次に血圧を増加させ、結果として高血圧を生じさせる刺激の有害作用を抑制する方法を提供することにある。
【0016】
本発明のさらにもう1つの目的は、栄養組成物が表1に記載される1日あたりの量で投与される、栄養組成物の投与方法を提供することにある。
【0017】
本明細書において使用される場合に、「EF」という語句は、緑茶抽出物 1,000 mg、アスコルビン酸 710 mg、リジン 1,000 mg、プロリン 750 mg、アルギニン 500 mg、マグネシウム 1 mg、N-アセチルシステイン 30 mg、セレニウム 30 μg、銅 2 mgおよび マンガン 1 mgを含む栄養組成物を示し;リジンは、L-リジンおよびその誘導体を含み、プロリンはL-プロリンおよびその誘導体を含み、アルギニンはL-アルギニンおよびその誘導体を含み;SMCは平滑筋細胞を示し、EGCGは (-)-エピガロカテキン-3-ガレートを示し、ECは (-)-エピカテキンを示すエピカテキンを示し、ECGは(-)-エピカテキン-3-ガレートを示すエピカテキン-3-ガレートを示し、EGCは(-)-エピガロカテキンを示すエピガロカテキンを示す。植物由来のバイオフラボノイドはカテキン(EGCG、EG、ECGおよびECを含む)を含み、動脈壁の構造健全性の維持に関与し、そして種々のプロ-アテローム硬化性刺激(pro-atherosclerotic stimuli)を妨げる。
【0018】
本発明で用いられる高血圧は、米国心臓病協会(AHA)の高血圧および前高血圧状態のためのガイドラインを用いて定義される。AHAは、120〜139 mmHgの最大血圧および 80〜89 mmHgの最小血圧として前高血圧状態を定義している。AHAは、140 mmHg以上の最大血圧および 90 mmHg以上の最小血圧として高血圧状態を定義している。
【0019】
本発明の栄養組成物には、少なくとも1つのフラボノイド成分が含まれる。前記フラボノイド成分には、緑茶抽出物が含まれる。前記緑茶抽出物はU.S. Pharma Lab社(Somerset, NJ)から市販されているもの(製品名:GreenHerb --- 緑茶粉末抽出物)を利用することができる。前記緑茶抽出物は全体で約80重量%のポリフェノールを含む。ポリフェノールの中には、カテキンが約60重量%の量で存在する。カテキンの中には、EGCGが約35重量%の量で存在する。カフェインは緑茶抽出物中に存在する(約1.0重量%)。
【0020】
本発明の栄養組成物は、緑茶抽出物、アスコルビン酸、リジン、プロリン、アルギニン、マグネシウム、N-アセチルシステイン、セレニウム、銅およびマンガンを含む。
【0021】
好ましくは、本発明の栄養組成物は、緑茶抽出物 500 mg〜2,000 mg、アスコルビン酸 400 mg〜1,500 mg、リジン 400 mg〜1,500 mg、プロリン 500 mg〜1,500 mg、アルギニン 200 mg〜1,000 mg、マグネシウム 0.5 mg〜2 mg、N-アセチルシステイン 10 mg〜60 mg、セレニウム 10 μg〜60 μg、銅 0.5 mg〜5 mgおよびマンガン 0.5 mg〜2 mgを含む。
【0022】
さらに好ましくは、本発明の栄養組成物は、緑茶抽出物 1,000 mg、アスコルビン酸 710 mg、リジン 1,000 mg、プロリン 750 mg、アルギニン 500 mg、マグネシウム 1 mg、N-アセチルシステイン 30 mg、セレニウム 30 μg、銅 2 mgおよびマンガン 1 mgを含む。
【0023】
好ましくは、前記栄養組成物はさらにレスベラトロールまたはゲニステインを含む。レスベラトロールおよびゲニステインの好ましい用量は、10〜50 μMであり;さらに好ましい用量は10μM〜30μMである。
【0024】
本発明の栄養組成物は、当業者に公知の適当な投与形態での、哺乳類、特にヒトへの投与が意図される。当業者に公知の適当な投与形態には、非経口、経腸および特には経口が含まれる。経口用の固体および液体剤形は特に好ましい。経口用固体剤形は当業者に公知であって、錠剤、カプセル剤および食材料を含む。経口用固体剤形は、1つまたは2つ以上の薬学的に許容される賦形剤とともに製造することができる。薬学的に許容される賦形剤は、生物活性物質に関する剤形の形成を助けまたは可能にし、希釈剤、結合剤、潤滑剤、流動促進剤、崩壊剤、着色剤および香味剤(flavorants)を含む。その所望の機能を発揮するのに加えて、それが非毒性であり、摂取において許容され、そして生物活性成分の吸収を妨げない場合に、賦形剤は薬学的に許容される。もう1つの実施態様において、これらの成分は錠剤形態で製造される。錠剤は、湿式、乾式または流動層造粒法を用いる公知の圧縮技術により製造することができる。効率的な割合のそれぞれの特定成分(すなわちEF組成物の中の)が、所望の量の薬学的に許容される賦形剤(例えば、ラクトース、でんぷん、デキストリン、エチルセルロースおよび同類のもの)と組み合わされる。前記成分は混合機において混合される。有用な混合機には、ツインシェル型、プラネタリーミキサー型および高速高せん断型が含まれ、これらはすべて当業者に公知である。錠剤は、当業者に公知のようにコーティングされてもコーティングされなくてもよい。ドライフィル型のカプセル剤(dry filled capsules)としても知られるカプセル剤は、経口用の固体剤形であり、組成物が適当なサイズの、典型的にはゼラチンで作られる、飲み込むことができる容器に含まれる。本発明の栄養組成物を含む空の硬カプセルは市販のものを利用することができる。カプセル充填の方法は、当業者に公知である (Edward Rudnic and Joseph B. Schwartz, Oral Solid Dosage Forms, in Volume II, Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Chapter 92, 1615, 1642-1647 (Alfonso R. Getman:), Ed., 19th Ed., 1995)。
【実施例】
【0025】
<実験プロトコール>
以下の出発物質および装置を使用した。
【0026】
1. ヒト大動脈から単離した培養血管平滑筋細胞(SMC)。細胞は、4〜8継代したものを使用した。
【0027】
2. ヒトコラーゲンタイプ I。
【0028】
3. アンジオテンシン II。
【0029】
4. トロンビン。
【0030】
5. 組成物EF(リジン、プロリン、アルギニン、ビタミンC (アスコルビン酸、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸マグネシウムまたはパルミチン酸アスコルビルとして)、マグネシウム、N-アセチルシステイン、セレニウム、銅およびマンガン)。1,000 mgのリジン、750 mgのプロリン、500 mgのL-アルギニン、710 mgのビタミンC、50 mgのマグネシウム、1000 mgの規格化緑茶抽出物 (80%ポリフェノール- 800 mg (脱カフェイン)) 、30 mgのN-アセチルシステイン、30 μgのセレニウム、2 mgの銅、1 mgのマンガンを含む組成物EFのカプセル剤6個(全ての成分が市販のものを使用可能)。
【0031】
6. エピガロカテキンガレート (EGCG) 。
【0032】
7. レスベラトロール。
【0033】
8. 細胞培養用培地(DMEM)。
【0034】
9. 2 mg/mlのウシ血清アルブミンでプレインキュベートしたプラスチック製24ウェル細胞培養プレート。
【0035】
10. デジタルカメラ。
【0036】
11. デジタル画像解析ソフトウェア(Scion Corporation社製)。
【0037】
表1. 組成物1 (「組成物EF」)
【0038】
【表1】

【0039】
方法:
平滑筋細胞の収縮活性の阻害における緑茶抽出物(すなわちバイオフラボノイド)および種々の成分の能力について試験を行った。培養ヒト大動脈平滑筋細胞(SMC)(Clonetics社から市販のものを利用可能)を使用し、三次元のタイプ I コラーゲン(1 mg/mL)マトリックスに包埋した。コラーゲンはシグマ社から入手し、マトリックスの調製については以下に記載した。血清を含まない培地に1μモーラーのアンジオテンシンII(Ang II)を添加することによりゲル収縮を刺激し、24時間後にデジタル画像解析によりゲル面積について評価した。
【0040】
<平滑筋細胞の培養>
コンフルエントな培養SMCをトリプシン処理により培養フラスコからはがし、血清含有培地よりリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄した。懸濁液における細胞濃度を、血清を含まないDMEM中で500,000 細胞/mLに合わせた。その後細胞懸濁液を、リン酸緩衝溶液(PBS)における2 mg/mlの氷冷コラーゲンタイプ I 溶液と1:1で混合した。コラーゲンタイプ Iの最終濃度は1 mg/mLであり、最終細胞濃度は250,000/mLであった。
【0041】
コラーゲン-SMC懸濁液を、ウェルの底表面全体を覆うように24ウェルプレートに300 μlずつ分注した。その後プレートを37℃で1時間インキュベートして、ゲルを重合させた。いずれの添加剤も含まない0.5 mlの実験用血清なし培地(コントロール)、または試験化合物を伴うもしくは伴わない1マイクロモル/ LのアンジオテンシンIIを重合したゲルに添加した。その後、プラスチック製ウェルの底からゲルを引き離すために側面を軽くたたき、そして37℃で5%CO2を含む大気が制御されたインキュベーターに置いた。24時間のインキュベーションの後、プレートをインキュベーターから取り出し、デジタルカメラを用いて浮遊ゲルを伴うプレート画像を撮った。ゲルの平坦な表面積をScion Corporation社製のデジタル画像解析ソフトウェアで測定した。実験は3回行い、結果は、平均値+/-SDとして表した。
【0042】
平滑筋細胞収縮の阻害に関して、組成物EFにおける種々の成分の効果を測定し、そしてもしあるならば、組成物FFにおける成分の相乗効果を測定するために研究を行った。これらの研究は高血圧の治療および/または予防に光明を投じることができる。
【0043】
エピガロカテキンガレート(EGCG)を含む種々の成分を研究した。エピガロカテキンガレートおよびその他の成分を、エピガロカテキンガレートおよびそれぞれの成分の単独の効果を評価することにより最初に研究した。次に、エピガロカテキンガレートとその他の成分との間の相乗効果について研究した。
【0044】
<結果>
アンジオテンシン II およびトロンビン(アゴニストとして使用)は両者とも、SMCゲルにおける平滑筋細胞の収縮を引き起こした。これらのアゴニストはさらに、ゲル全体の収縮を引き起こした。アンジオテンシン II またはトロンビンの添加は、ゲル表面積を減少させた。収縮剤を含まないSMCゲルの注入24時間後のゲル表面積と収縮剤を含むSMCゲルの注入24時間後のゲル表面積との間の差は、収縮剤の効果によるものと考えられる。
【0045】
このSMCゲル収縮アッセイを用いて、種々の化合物の平滑筋細胞収縮の阻害能に関して評価を行った。緑茶抽出物における成分の中では、エピガロカテキンガレートが試験された最も活性なゲル収縮阻害剤であった。30 μモル/Lの濃度で添加した場合、このアッセイにおいてアスコルビン酸はいずれの活性も有さなかったので、バイオフラボノイド(EGCGを含む)によるゲル収縮の阻害は、抗酸化活性に依存しなかった。
【0046】
<実施例1>
図1は、組成物EFにおける、トロンビンによって誘導されるような平滑筋細胞収縮の阻害能を示している。この研究においては、収縮剤なしのSMCゲル(コントロール)および収縮剤(0.1 IU/ml のトロンビン)ありのゲルを、0.1 IU/mlのトロンビンを含み100 μg/mlの組成物EFで処理したゲルと比較した。収縮剤および処理剤なしのコントロールSMCゲルで、いくらかの収縮が見られた。従って、平滑筋細胞は、収縮剤の存在なしにおいてさえも収縮傾向を有する。
【0047】
収縮剤トロンビンを含むSMCゲルは、SMCゲルの大きな収縮を示した。しかし、SMCゲルを0.1 IU/mlのトロンビンおよび組成物EFで処理した場合には、SMCゲルは収縮剤ありまたはなしのSMCゲル単独のものほど収縮しなかった。従って、組成物EFはSMCゲルの収縮阻害および抗高血圧としての作用において十分な効果を示した。
【0048】
<実施例2>
図2は、組成物EFにおける、アンジオテンシン II(収縮剤として)によって誘導されるような平滑筋細胞収縮の阻害能を示している。収縮剤アンジオテンシン II なしのSMCゲルおよび1.0 μMの収縮剤アンジオテンシン II を含むゲルを、1.0 μMのアンジオテンシンIIを含み100 μg/mlの組成物EFで処理したゲルと比較した。
【0049】
収縮剤アンジオテンシン II を含むSMCゲルは、SMCゲルの大きな収縮を示した。SMCゲルを1.0 μMのアンジオテンシンII および組成物EFで処理した場合には、SMCゲルは収縮剤ありまたはなしのSMCゲル単独のものほど収縮しなかった。これらの両実験により少なくとも、組成物EFが抗高血圧剤として有効であるという仮定について試験された。従ってこれらのデータ(図1および2)により、組成物EFが平滑筋細胞の収縮阻害に有効であり、従って抗高血圧の用途において有用であるということが明確に示される。
【0050】
<実施例3>
図3は、アンジオテンシンII により誘導されるような平滑筋細胞収縮の阻害における、組成物EFの用量依存的効果を示す。1.0 μMのアンジオテンシンII を含むSMCゲルを、11、33および100 μg/mlと濃度を増加させた組成物EFで処理し、組成物EFを含まないアンジオテンシン II のコントロールと比較した。これにより、組成物EFの濃度増加に伴って収縮の減少(SMCゲル表面積消失の大きな減少)を示す用量反応曲線が得られた。
【0051】
<実施例4>
次に、平滑筋細胞収縮阻害における組成物EFのそれぞれの成分について試験を行った。組成物EFの種々の成分が相乗的な方法で作用しているかどうかについても試験を行った。このために、組成物EFの種々の成分を単独でまたは他の成分と組み合わせて、平滑筋細胞収縮の阻害能に関して試験を行った。
【0052】
図4は、アスコルビン酸、EGCGおよびアスコルビン酸 + EGCGの平滑筋細胞収縮の阻害能における効果を示す。SMCゲルにアンジオテンシンII(1.0 μM)により収縮を誘導した。コントロールSMCゲルはアンジオテンシンII のみを含む。100 μg/mlの組成物EFは、平滑筋細胞収縮を強力に阻害する。100 μMのアスコルビン酸単独では、アンジオテンシンII 誘導平滑筋細胞収縮に影響を及ぼさなかった。15 μMのEGCG単独では、検出可能な阻害効果を有さなかった。アスコルビン酸およびEGCGの併用でも、いずれの検出可能な阻害効果も有さなかった。これらのデータより、平滑筋細胞収縮を阻害する組成物EFの種々の成分の間で相乗効果があることが示される。アスコルビン酸およびEGCGは、組成物EFにおける濃度と当量濃度で使用されている。
【0053】
<実施例6>
図5は、平滑筋細胞収縮阻害におけるアルギニン単独の効果を示す。アルギニン (0.50 mMおよび1.0 mM) を、1.0 μMのアンジオテンシンII および0.5 mMのアスコルビン酸を含むSMCゲルに加えた。当量濃度のアルギニンを、1.0 μMのアンジオテンシンII を含むがアスコルビン酸を含まないSMCゲルに加えた。
【0054】
100 μg/mlの組成物EFにおけるアルギニンの濃度は50 μMである。従って、SMCゲルに単独で加えられるアルギニンの濃度は、組成物EFにおけるアルギニンの濃度よりそれぞれ10倍および20倍大きなものであった。アスコルビン酸を含むSMCゲルにおけるアスコルビン酸の濃度は0.5 mMであり、それは組成物EFにおけるアスコルビン酸の濃度より5倍大きい。これらのような高濃度にもかかわらず、アスコルビン酸およびアルギニンは、単独でもまたは組み合わせても、平滑筋細胞収縮阻害において検出可能な効果を示さなかった。
【0055】
<実施例7>
図7は、平滑筋細胞収縮阻害におけるカルシウムおよびマグネシウム(塩化カルシウムおよび塩化マグネシウムの形態で)の単独および併用の効果を示す。100 μg/mlの組成物EFにおけるカルシウムの濃度は12 μMである。組成物EFにおけるマグネシウムの濃度は50 μMである。このSMCゲル収縮に関する研究において使用したカルシウムおよびマグネシウムの濃度は2.0 mMであった。従って、SMCゲルに加えられたカルシウムおよびマグネシウムの濃度は、組成物EFにおけるカルシウムおよびマグネシウムの濃度よりそれぞれ約160倍および40倍大きなものであった。アンジオテンシンII 1 μMをすべてのSMCゲルに対して収縮剤として添加した。これらのような高濃度にもかかわらず、塩化カルシウムおよび塩化マグネシウムは、単独でもまたは組み合わせても、アンジオテンシンIIにより誘導される平滑筋細胞収縮の阻害において検出可能な効果を示さなかった。
【0056】
組成物EFはレスベラトロールまたはゲニステインのいずれも含まないが、それらの組成物EFとの併用効果について試験を行った。図8は、平滑筋細胞収縮阻害におけるゲニステインおよびレスベラトロールの個々でのおよび併用の効果を示す。レスベラトロールをSMCゲルに加えて、レスベラトロールを含まないSMCゲルと比較した。SMCゲルに加えたレスベラトロールの濃度は、15 μMおよび30 μMであった。もしあるならば、ゲニステイン単独での効果を試験するために、1つのSMCゲルにゲニステインを30 μMの濃度で添加した。SMCゲルに加えたレスベラトロールの濃度は、15 μMおよび30 μMであった。ゲニステインおよびレスベラトロールを一緒に、両者とも15 μMでSMCゲルに加えた。アンジオテンシンII 1 μMをすべてのSMCゲルに対して収縮剤として添加した。2つの群の実験を実施し、一方は組成物EFなしのSMCゲル、他方は組成物EFを100 μMで含むSMCゲルであった。
【0057】
レスベラトロール、ゲニステインおよびそれらの併用は、いくらかの阻害効果を示したが、この効果は組成物EFが存在する場合により顕著であった。レスベラトロールのみ、ゲニステインのみまたは両者を含むかどうかに関係なく、すべてのSMCゲルにおいて明確に検出可能な付加的な抗高血圧効果が見られた。組成物EFありまたはなしの群における、15 μMおよび30 μMのレスベラトロールを含む群において、用量反応曲線がはっきりと得られるが、組成物EFを含むレスベラトロール群における用量反応曲線はより顕著なものであった。
【0058】
<実施例8>
図9は、平滑筋細胞収縮阻害に関するN-アセチルシステインの有効性を示す。100 μg/mlの組成物EFにおけるN-アセチルシステインの濃度は20 μMである。SMCゲルに加えたN-アセチルシステインの濃度は、それぞれ2.2、6.7、20および60 μMである。アンジオテンシンII 1 μMをすべてのSMCゲルに対して収縮剤として添加した。これらのような高濃度にもかかわらず、N-アセチルシステインは検出可能な抗収縮効果を示さなかった。
【0059】
<実施例9>
図10は、平滑筋細胞収縮阻害のためのリジンおよびプロリン、単独でまたは併用での効果を示す。100 μg/mlの組成物EFにおけるリジンの濃度は110 μMである。SMCゲルに加えたリジンの濃度は、それぞれ0.25、0.50および1 mMであった。従って、SMCゲルに加えられた濃度は、組成物EFにおけるリジンの濃度よりそれぞれ約2倍、4.5倍および9倍大きなものであった。100 μg/mlの組成物EFにおけるプロリンの濃度は100 μMであった。SMCゲルに加えたプロリンの濃度は、それぞれ0.25、0.50および1 mMであった。従って、SMCゲルに加えられた濃度は、組成物EFにおけるプロリンの濃度よりそれぞれ約2.5倍、5倍および10倍大きなものであった。SMCゲルにリジンおよびプロリンが併用として0.50 mMの濃度で添加された。アンジオテンシン II 1 μMをすべてのSMCゲルに対して収縮剤として添加した。これらのような高濃度にもかかわらず、プロリンおよびリジンは単独でも併用でも検出可能な抗収縮効果を示さなかった。
【0060】
総合して、その結果は緑茶抽出物 (バイオフラボノイドとしてのECGCを含む)、アスコルビン酸、リジン、プロリン、アルギニン、マグネシウム、N-アセチルシステイン、セレニウム、銅およびマンガンを含んでなる栄養組成物が、SMCを介した収縮の制御において相乗効果を有することを示す。前記栄養組成物は、トロンビンおよびアンジオテンシンII のようなアゴニストの病態生理学的効果を打ち消す大きな可能性を有する。特定のメカニズムにより決定付けられはしないが、組成物EFで見られる相乗効果は、細胞外マトリックスの保全に関連するかもしれない。
【0061】
<実施例10>
アンジオテンシンII 刺激によるヒト大動脈平滑筋細胞の収縮におけるカテキン独自の効果について研究を行った。カテキン (30 μM)、エピカテキン (30 μM)、エピカテキンガレート (30 μM)およびエピガロカテキンガレート (30 μM) を使用し、アンジオテンシンII を平滑筋細胞収縮のための刺激剤として使用した。ゲル収縮を24時間を超えるインキュベーション時間での、ゲル表面積における減少の百分率として表した。アンジオテンシンII(1 μM)は85.26 ± 1.18 %(平均値±SD)の減少を引き起こした。アンジオテンシンII(1 μM)+カテキン(30 μM)は76.83 ± 1.63 %の減少を引き起こした。アンジオテンシンII(1 μM)+エピカテキン(30 μM)は78.59 ± 7.03 %の減少を引き起こした。アンジオテンシンII(1 μM)+エピカテキンガレート(30 μM)は65.70 ± 6.56 %の減少を引き起こした。アンジオテンシンII(1 μM)+エピガロカテキンガレート(30 μM)は61.23 ± 9.14 %の減少を引き起こした。
【0062】
従って、本発明は栄養組成物に可能な治療を提供する。前記栄養組成物における成分は、平滑筋細胞収縮阻害において相乗効果的に作用し、従って高血圧を引き起こす動脈の感受性の欠失を後退させ、そして最小化する。さらに本発明は、平滑筋細胞の収縮を引き起こし、血圧を増加させ、結果として慢性の高血圧を生じさせる刺激の有害作用を防ぐことができる栄養組成物に関する強力な治療を提供する。本発明は、経済的な費用について有利なことはいうまでもなく、薬学的化合物の不都合な副作用がない、より有効な化合物および抽出物を天然から選択する方法に関する。
【0063】
本発明は、開示された好ましい実施例に限定されず、むしろ本発明の趣旨および範囲内に収まるすべての変更態様および代替の構成を包含する。本発明における全ての刊行物およびその他の引用文献は、引用することにより全体として組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、組成物1(「組成物EF」)を含むSMCゲルおよび組成物EFなしのコントロールにおける、平滑筋細胞での0.1 IU/mlトロンビンの効果を表す。コントロールSMCゲルはトロンビンは加えていない。
【図2】図2は、組成物1(「組成物EF」)を含むSMCゲルおよび組成物EFなしのコントロールにおける、平滑筋細胞での1.0 μM アンジオテンシンIIの効果を表す。コントロールSMCゲルはアンジオテンシンIIを加えていない。
【図3】図3は、1 μM アンジオテンシンII、および組成物EFの濃度増加におけるSMCゲルの収縮を表す。
【図4】図4は、110 nM、330 nMおよび 1,000 nM と濃度を増加させたアンジオテンシンIIおよび100 μg/mlの組成物EFの存在下におけるSMCゲルの収縮を表す。
【図5】図5は、組成物EF、アスコルビン酸、EGCGおよびアスコルビン酸-EGCGの組み合わせの存在下における、アンジオテンシンIIによるSMCゲルの収縮を表す。
【図6】図6は、種々の濃度のアルギニンの存在下における、アンジオテンシンIIによるSMCゲルの収縮を表す。
【図7】図7は、塩化カルシウム、塩化マグネシウムおよび塩化カルシウム-塩化マグネシウムの組み合わせの存在下における、アンジオテンシンIIによるSMCゲルの収縮を表す。
【図8】図8は、100 μg/mlの組成物EFの存在下における、アンジオテンシンIIによるSMCゲルの収縮、およびレスベラトロールおよびゲニステインの効果を表す。
【図9】図9は、種々の濃度のN-アセチルシステインの存在下における、アンジオテンシンIIによるSMCゲルの収縮を表す。
【図10】図10は、種々の濃度のリジンおよびプロリンの存在下における、1 μMアンジオテンシンIIによるSMCゲルの収縮を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑茶抽出物、アスコルビン酸、リジン、プロリン、アルギニン、マグネシウム、N-アセチルシステイン、セレニウム、銅およびマンガンを含んでなる栄養組成物を投与する段階を含む、ヒトにおける平滑筋細胞収縮を阻害する方法。
【請求項2】
前記緑茶抽出物が、エピカテキン、エピカテキン-3-ガレート、エピガロカテキンおよびエピガロカテキン-3-ガレートからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記緑茶抽出物がエピガロカテキン-3-ガレートである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記アスコルビン酸が、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸マグネシウムまたはパルミチン酸アスコルビルである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記栄養組成物が、緑茶抽出物 500 mg〜2,000 mg、アスコルビン酸 400 mg〜1,500 mg、リジン 400 mg〜1,500 mg、プロリン 500 mg〜1,500 mg、アルギニン 200 mg〜1,000 mg、マグネシウム 0.5 mg〜2 mg、N-アセチルシステイン 10 mg〜60 mg、セレニウム 10 μg〜60 μg、銅 0.5 mg〜5 mgおよびマンガン 0.5 mg〜2 mgを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記栄養組成物が、緑茶抽出物 1,000 mg、アスコルビン酸 710 mg、リジン1,000 mg、プロリン 750 mg、アルギニン 500 mg、マグネシウム 1 mg、N-アセチルシステイン 30 mg、セレニウム 30 μg、銅 2 mgおよび マンガン 1 mgを含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記栄養組成物が、レスベラトロールおよびゲニステインからなる群から選択される少なくとも1つの成分をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記栄養組成物が、経口用液体剤形、経口用固体剤形、錠剤およびカプセル剤からなる群から選択される剤形である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記栄養組成物が血圧を低下させるのに有用である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記栄養組成物がヒトを対象に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記栄養組成物が表1に示されるような1日あたりの量で投与される、請求項10記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−520449(P2007−520449A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533488(P2006−533488)
【出願日】平成16年5月26日(2004.5.26)
【国際出願番号】PCT/US2004/016902
【国際公開番号】WO2004/108127
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(501021184)
【Fターム(参考)】