説明

校正用の標準セット

本発明は、次のような校正用の標準セットに関する。すなわちこの標準セットは、少なくとも3つの校正標準を含み、これらの校正標準は、元素Cd、Cr、Pb、HgおよびBrを含む熱可塑性ポリマーからなる成形体から構成される。この場合、これら3つの校正標準のいずれにおいても、CrとPbとHgとBrとCdの比が異なる。本発明は、これら校正標準を製造する方法と、X線蛍光分析のためにこれら校正標準を使用することにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次のような校正用の標準セットに関する。すなわちこの標準セットは、少なくとも3つの校正標準を含み、これらの校正標準は、元素Cd、Cr、Pb、HgおよびBrを含む熱可塑性ポリマーからなる成形体から構成される。この場合、上記3つの校正標準のいずれにおいても、CrとPbとHgとBrとCdの重量比が異なる。本発明はまた、これら校正標準を製造する方法と、X線蛍光分析、レーザーアブレーションICP(誘起結合プラズマ)およびレーザー誘起プラズマ分光分析(LIPS)のためにこれら校正標準を使用することにも関する。
【背景技術】
【0002】
電気・電子機器が、環境や健康上問題のある有害物質を含むのはまれなことではなく、これら有害物質は、適切な形にして再利用または廃棄しなければならない。この理由から、電気・電子機器による環境・健康に対する負荷を軽減するための法的規制が行われる。
【0003】
したがって電気・電子機器の製造者、廃棄者にとっては、有害物質の含有量をできるだけ好都合な方法で点検できることが重要である。また製造者と廃棄者は、プラスチック中の特定の指標元素、すなわち生成物同定のため添加される指標元素を分析するという方法に頼らざるを得ない。したがって、資料準備に求められる要件ができるだけ少ない、迅速かつ安価な多元素分析法を必要とする。
【0004】
従来の技術が提案する分析方法は、これらの要件への適性に限度がある。したがって例えばプラスチックの元素含有量を、ICP−MS(“誘起結合プラズマ質量分析法(Indutively Coupled Plasma‐Mass Spectroscopy)”)、またはICP−AES(“誘起結合プラズマ原子発光分析法(Indutively Coupled Plasma‐Atomic Emission Spectrometry)”)、またはAAS(“原子吸光分析法(Atom Absorption Spectrometry)”)で検査できるのは、まず手間のかかる酸による溶解を行ってからのことである。
【0005】
従来の技術では、規制されている元素クロム(VI)および臭素を分析する際の困難も指摘されている。したがってポリ臭化ビフェニレンやポリ臭化ジフェニレンの分析のためには、FT−IR分光分析(フーリエ変換赤外線分光法)、またはGC−MS(ガスクロマトグラフィー/質量分析法)が、分析技術として提案されている。Cr(VI)の定量測定のためには、UV−VIS分光分析(紫外線および可視光線による分光分析測定)が推奨されている。
【0006】
FT−IR分光分析による臭化物の難燃剤の同定も、従来の技術で公知である。臭化物の難燃剤がプラスチック中に存在する場合、それが5%以上という高濃度であれば、1000〜1500cm−1という指紋領域の帯域を用いるFT−IR分光分析で特定できる。定量分析はこの方法ではもちろん不可能である。
【0007】
ポリマーハウジング中の臭化物の難燃剤の定量および定性測定のため、従来の技術で公知であるもう1つの方法は、難燃剤をイソプロピレンにより超音波浴で抽出し、つづいてHPLC−UV(紫外線高速液体クロマトグラフィー)によって測定する。
【0008】
イオンクロマトグラフィーによるCr(VI)の測定も公知である。この場合特に、分析のためには正しいpH値を遵守しなければならないことが、指摘されている。
【0009】
上記すべての技術に共通することとして、これらの技術を実行できるのは特別な訓練を受けた人たちだけである。さらにはラボ周辺条件として非常にさまざまな分析機器を備えなければならず、このことはコストをいちじるしく上昇させて、製品のコストに直接影響する。
【0010】
したがって手間のかかる溶解法を用いなくても、求められる限界に従って材料の特性を迅速に記述できることが望ましい。
【0011】
規制物質を測定するためのX線蛍光分析法(RFA法とも略称する)の開発は、上記の各方法と比較して、次のような利点をもたらすこととなろう。すなわち、手間のかかる試料調製を省くことができ、迅速で安価な分析が可能となろう。たしかにこの方法は、元素の含有量についていうだけであって、Cr(III)とCr(VI)の区別や、さまざまに異なる臭化物の難燃剤の特性記述はできない。しかし実際の現場においては、元素名とその総含有量をいうだけで十分なことがしばしばである。
【0012】
すべての種類のX線蛍光分析機器に共通する問題は、RFAが比較法であるということである。外部の標準による事前の校正―この校正には、調査される試料と同じマトリックスおよび試料の幾何学的形状を利用できなければならない―は、信頼性ある定量的表明のためには避けて通れない。
【0013】
電気・電子機器とその構成部品との分析にRFAを利用できるためには、校正に対応する標準材料の開発が非常に重要である。
【0014】
ナカノほかはこの理由から、液体のポリエステル混合物またはポリウレタン混合物に有機金属有害物質を加えることによって生成された校正材料を提案する(参照:ナカノほか、“Preparation of calibrating standards fo x‐ray fluorescence spectrometry of trace metals in plastics”,X‐Ray Spectrom.2003,32,452−457(非特許文献1))。しかしこの校正材料は、電気・電子機器中の有害物質を測定する際に校正用の標準材料として用いるには適さない。なぜならば、1つには提案された有害物質の量が、もう1つには提案されたポリマーマトリックスが、不適切だからである。
【0015】
またLambertyほかは、粉末状有害物質をポリエチレンと混合することによって生成される校正材料を記述する(参照:Lambertyほか、“Collaborative study to improve the quality control of trace element determination”,Fresenius J.Anal.Chem.,2001,370,811−818(非特許文献2))。しかしこの校正材料は、電気・電子機器中の有害物質を測定する際に校正用の標準材料として用いるには適さない。なぜならば、提案された有害物質の量と、提案されたポリマーマトリックスとが不適切だからである。また有害物質の分布があまり均一でなく、校正材料として用いられる顆粒の取扱性があまり好都合ではない。さらには標準がいわゆるマスターバッチから希釈によって生成され、予想される試料の幾何学的形状に対応しない。
【0016】
したがって従来公知の校正材料は、有害物質特に電気・電子機器中の有害物質を測定する際、校正用の有利な標準材料として工業規模で用いるに適さない。
【非特許文献1】X‐Ray Spectrom.2003,32,452−457
【非特許文献2】Fresenius J.Anal.Chem.,2001,370,811−818
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって本発明の課題は、校正用の次のような標準材料を提供することである。すなわち、例えばX線蛍光分析(RFA)を用いて、ポリマー中の有害物質、特に電気・電子機器中の有害物質を測定するため、好都合に使用できる標準材料である。さらには測定される電気・電子製品が、さまざまに異なるプラスチックを含むため、“種類が純粋な”プラスチック製でない場合でも、校正を可能とするものでありたい。
【0018】
本発明のさらなる課題は、校正用の標準材料として、適切な分析機器、例えばX線蛍光分析機器を校正する際、取扱性の有利なものを提供することである。
【0019】
またさらなる本発明の課題は、校正用の標準材料として、できるだけ均一に分布する有害物質を含み、有利な精度で校正が可能なものを提供することである。
【0020】
さらに加えて本発明の課題は、校正用の次のような標準材料を提供することである。すなわち、RFAおよびレーザーアブレーションICP(試料を装填するシステムとしてのレーザーアブレーションユニットと組み合わせて、誘起結合プラズマをイオン源または励起源として用いることによる分光分析法)を用いて、ポリマー中の有害物質の測定を可能とする標準材料である。かつこのポリマーは、通常の充填剤、例えば難燃剤または顔料をさらに含むものとする。さらには、レーザー誘起プラズマ分光分析(LIPS)を用いての測定も可能としたい。
【0021】
本発明の課題はそのほか、校正用標準材料として、RFAを用いたポリマー中の有害物質の測定を可能とする材料を、製造する方法を提供することである。
【0022】
本発明の課題はさらにそのほか、校正用標準材料として、レーザーアブレーションICPによるポリマー中の有害物質測定を可能とする材料を、製造する方法を提供することである。
【0023】
またさらに本発明の課題は、校正用標準材料として、LIPSを用いたポリマー中の有害物質の測定を可能とする材料を、製造する方法を提供することである。
【0024】
ここで特に本発明の課題は、生成の際に周囲を汚染したり、そして/または健康上の負荷を生じたりすることなく、有害物質を有利に取り扱える方法を提供することである。
【0025】
本発明の課題として最後に挙げるのは、経済性ある生成方法により、有害物質を均一に扱える点で有利な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
特許請求の範囲に記載する校正用標準セットと、これら標準セットを製造する方法によって、本発明の上記の課題を解決することができた。
【0027】
したがって本発明の対象は、少なくとも3つの次のような校正標準を含む校正用標準セットである。すなわちこれらの校正標準は、元素Cd、Cr、Pb、HgおよびBrを含む熱可塑性ポリマーの成形体から構成され、この場合、上記3つの校正標準のいずれにおいても、CrとPbとHgとBrとCdの重量比が異なっている。
【0028】
本発明の対象はさらに、X線蛍光分析機器の校正に本発明の標準セットを使用することである。レーザーアブレーションICP−MS、レーザーアブレーションICP−OES(発光分光分析)用の機器、またはLIPS用の機器の校正に、本発明の標準セットを使用することも、本発明の対象である。
【0029】
本発明の対象として最後に挙げるのは、元素Cd、Cr、Pb、HgおよびBrを含む熱可塑性ポリマーの成形体から構成される校正標準を生成する方法として、下記のステップを含むものである。
【0030】
1)元素Cd、Cr、Pb、Hgを含む粉末、および元素Brを含む液体または粉末を、分散剤と混合する。
【0031】
2)ステップ1から得られた分散系を、粒子状の熱可塑性ポリマーと混合する。
【0032】
3)ステップ2から得たポリマーを押し出し加工して、好ましくは顆粒とする。
【0033】
本発明では、物質または元素をしばしば化学記号で略記する。それらの化学記号の意味は次の通り。
【0034】
Al アルミニウム
As 砒素
Ba バリウム
Br 臭素
Ca カルシウム
Cd カドミウム
Co コバルト
Cr クロム
Cu 銅
Fe 鉄
Hg 水銀
K カリウム
Mg マグネシウム
Na ナトリウム
Ni ニッケル
Pb 鉛
S 硫黄
Sb アンチモン
Se セレン
Si ケイ素
Sn 錫
“校正用の標準セット”とは、本発明の場合、校正標準が3つ以上あるものをいう。
【0035】
1つの校正標準は、1つの熱可塑性ポリマーからなる1つの成形体を含む。この成形体中に、規定された量の有害物質が含まれる。
【0036】
重要な有害物質は、元素Cd、Cr、Hg、PbおよびBrである。場合によってはAs、Se、NiまたはCoも、そのほかの有害物質として、1つの校正標準に含むことができる。
【0037】
この実施形態の場合、Asの量は通常1ppm〜1重量%、好ましくは10〜5000ppm、さらに好ましくは50〜500ppmとする。セレンの量は通常0.1〜3000ppm、好ましくは1〜1000ppm、さらに好ましくは10〜500ppmとする。NiとCoの量は通常0.1〜5000ppm、好ましくは1〜2000ppm、さらに好ましくは10〜500ppmとする。
【0038】
1つの好ましい実施形態において、校正標準は上記に挙げた有害物質のみ、特にCd、Cr、Hg、PbおよびBrのみを含む。
【0039】
熱可塑性ポリマーとは、その材料を処理するのに典型的な温度領域で繰り返し加熱し冷却しても、熱可塑性を維持するポリマーをいう。熱可塑性とはこの場合特に、60〜400℃、好ましくは60〜300℃の温度領域で繰り返し、加熱すると軟化し、冷却すると硬化する、このようなポリマーの特性をいう。またこの熱可塑性ポリマーは、軟化状態で繰り返し流動させることによって、成形品、押し出し成形品または再成形品として、成形体に成形可能である。
【0040】
適切な熱可塑性ポリマーの例は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、スチレン・アクリロニトリル(SAN)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ(2,6−ジメチル−1−4−オキシフェニレン)(PPE)、塩化ポリエチレン、ポリメチルスチレン−アクリロニトリル共重合体(MeSAN)、または熱可塑性ポリウレタン(TPU)である。そのほかの例は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、アクリロニトリル・スチレン・アクリル酸エステル(ASA)である。
【0041】
熱可塑性ポリマーとして用いるのに好ましいのは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、スチレン・アクリロニトリル(SAN)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、またはポリ塩化ビニル(PVC)である。ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリオキシメチレン(POM)も、熱可塑性ポリマーとして用いるのに好ましい。
【0042】
特に好ましくはABSおよび/またはPCを熱可塑性ポリマーとして用いる。
【0043】
基本的に“熱可塑性ポリマー”という概念は、本発明の場合、上記ポリマーのうち2つ以上からなる任意の混合物(下記では“ブレンド”という)を含む。本発明におけるブレンドとは、分子として分布する、または顕微鏡的に分散されたプラスチックアロイをいう。
【0044】
好ましいブレンドを下記に挙げる。
【0045】
ASAとPC。この場合ASAの割合は、通常10〜90重量%、好ましくは15〜60重量%とする。
【0046】
ABSとPC。この場合ABSの割合は、通常5〜90重量%、好ましくは55〜85重量%、特に好ましくは80重量%とする。
【0047】
ABSとPA。この場合ABSの割合は、通常5〜90重量%、好ましくは20〜80重量%とする。
【0048】
PBTとASA。この場合ABSの割合は、通常2〜95重量%、好ましくは10〜80重量%とする。
【0049】
PVCとABS。この場合PVCの割合は、通常5〜95重量%、好ましくは10〜85重量%とする。
【0050】
PSとPPE。この場合PSの割合は、通常5〜70重量%、好ましくは10〜60重量%とする。
【0051】
PVCとMeSAN。この場合PVCの割合は、通常5〜90重量%、好ましくは10〜80重量%とする。
【0052】
PVCとPE(場合によって塩化PE)。この場合PVCの割合は、通常5〜90重量%、好ましくは10〜80重量%とする。
【0053】
ABSとPUR。この場合ABSの割合は、通常5〜90重量%、好ましくは20〜85重量%、特に好ましくは70重量%とする。
【0054】
本発明による校正用標準セットは、第1、第2および第3の校正標準からなる。
【0055】
第1の校正標準は、CrとPbとHgとBrとCdを、ある特定の重量比で含む。第2および第3の校正標準もやはり、CrとPbとHgとBrとCdを、ある特定の重量比で含む。3つの校正標準のいずれにおいても、この場合、CrとPbとHgとBrとCdの重量比が異なる。
【0056】
“重量比”という表現はこの場合、クロム原子、鉛原子、水銀原子、臭素原子およびカドミウム原子の重量の比に関するものである。
【0057】
好ましくはこの場合、CrとPbとHgとBrとCdの全体的な比が異なるだけでなく、これらの校正標準における個別同士の比も異なるものとする。
【0058】
したがって好ましくは校正標準のいずれも、CrとPbの重量比が異なるものとする。また好ましくは校正標準のいずれも、CrとHgの重量比が異なるものとする。また好ましくは校正標準のいずれも、CrとBrの重量比が異なるものとする。また好ましくは校正標準のいずれも、CrとCdの重量比が異なるものとする。
【0059】
また好ましくは校正標準のいずれも、PbとHgの重量比が異なるものとする。また好ましくは校正標準のいずれも、PbとBrの重量比が異なるものとする。また好ましくは校正標準のいずれも、PbとCdの重量比が異なるものとする。
【0060】
また好ましくは校正標準のいずれも、HgとBrの重量比が異なるものとする。また好ましくは校正標準のいずれも、HgとCdの重量比が異なるものとする。
【0061】
1つの好ましい実施形態においては、いずれの校正標準も、ポリマーの総重量を基準として、元素Cr、Pb、HgおよびBrの少なくとも1つを0.1〜500ppm、そして元素Cr、Pb、HgおよびBrの少なくとも1つを500〜5000ppm、好ましくは500〜2000ppm含む。またこの好ましい実施形態において、少なくとも1つの校正標準は、ポリマーの総重量を基準として、Cdを0.1〜50ppm、そして少なくとも1つの校正標準は、Cdを50〜1000ppm、好ましくは50〜200ppm含む。
【0062】
有害物質のppm数値はこの場合、ポリマーマトリックスにおける当該元素の重量割合に関する。しかしこれらの数値は、有害物質のそこに存在する状態(例えば酸化物、硫酸塩など)としての重量に関するものではない。すなわち500ppmと書いてあれば、Cr原子がそのポリマーマトリックスに500ppm含まれることを意味し、例えば500ppmの酸化クロムを意味しない。
【0063】
本発明による校正用標準セットは、上記の第1、第2、第3の校正標準だけでなく、そのほかにも校正標準を含むことができる。
【0064】
1つの好ましい実施形態において、校正用標準セットは少なくとも2n+2個の校正標準を含み、このnとは校正されるべき元素の個数である。
【0065】
校正用標準セットに属するすべての校正標準が、それぞれ異なる量の有害物質を含むのが、この場合有利である。
【0066】
さらには、CrとPbとHgとBrとCdの比は、個々の校正標準によって異なるのが、特に有利である。すなわち個々の校正標準は、いわゆる“マスターバッチ”の“希釈”ではない方法によって生成されるのが、一般に有利である。
【0067】
本発明による校正用標準セットは、これまで説明した校正標準だけでなく、いわゆる“ブランク校正標準”をも含む。この“ブランク校正標準”とは、有害物質を含まない熱可塑性ポリマーの成形体である。
【0068】
下記の表1は、4つの校正標準からなる1つの好ましい校正用標準セットの有害物質の量と、必要ある場合のためブランク校正標準を記載する。
【0069】
【表1】

下記の表2は、8つの校正標準からなる1つの好ましい校正用標準セットの有害物質の量と、必要ある場合のためブランク校正標準を記載する。
【0070】
【表2】

1つの好ましい実施形態において、本発明の標準セット、特に表1および/または表2に記載の標準セットは、さらに2つの校正標準を含むことができる。第1の付加的な校正標準は、この場合好ましくは、第2の付加的な校正標準と同量の有害物質を含むが、第2の付加的な校正標準は、さらに充填剤を付加的に含むものとする。
【0071】
これら付加的な校正標準の好ましい実施形態を、表3に示す。
【0072】
【表3】

校正標準は成形体として存在する。一般には、分析機器、好ましくはX線蛍光分析機器、またはレーザーアブレーションICP機器、またはLIPS機器による測定に適する成形体であればすべて適する。
【0073】
成形体は、コンパクトな成形体が好ましい。このコンパクトな成形体は、好ましくは円筒形、線条、円板、球形、バルク材の形状で存在するものとする。
【0074】
成形体の1つの好ましい実施形態は、重量が0.1〜100g(グラム)、特に好ましくは1〜30gである。この成形体はさらに、表面積が1〜10000mm、特に好ましくは100〜4000mmである。表面はできるだけ平面状としたい。
【0075】
1つの特に好ましい実施形態において、この成形体は円筒形であって、その直径を6〜60mm、厚さを2〜50mm(ミリメートル)とする。成形体はこの場合、円筒形の形状であって、少なくとも一方の側面を平面とする。
【0076】
この成形体は顆粒状態で存在することもできる。この場合成形体は、好ましくは本発明の方法で生成し、その際ステップ3bを省略する。
【0077】
校正標準は有害物質のほか、充填剤を含むこともできる。充填剤とはこの場合、電気・電子機器に通常用いられるポリマーに含まれる可能性がある物質をいう。充填剤の例としては、難燃剤、強化剤、顔料、防炎剤、安定剤、光安定剤、酸化防止剤、重合防止剤、触媒、またはマーカーがある。そのほかの例は帯電防止剤または軟化剤である。
【0078】
添加充填剤は、元素Ba、Al、Ca、Ti、Fe、Cu、Snおよび/またはSiを含むのが好ましい。充填剤はそのほか、場合によってK、Naおよび/またはSを含む。
【0079】
充填剤として用いられる物質の例に、二酸化チタン、二酸化ケイ素、ステアリン酸、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモンがある。そのほかの例は、硫酸バリウム、ケイ酸アルミニウム、硫酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム−アルミニウム、酸化カルシウムおよび/またはカーボンブラックがある。
【0080】
校正標準が充填剤を含む場合、ポリマーマトリックスの総重量を基準として、この充填剤は通常1〜70%、好ましくは4〜30%含まれる。
【0081】
例えば1つの好ましい実施形態で、下記の物質は、たがいに依存せずに下記の量が、ポリマーマトリックス中に含まれる。
【0082】
BaCO。通常は40%以下、好ましくは0.01〜1%。
【0083】
Al。通常は2〜45%、好ましくは5〜20%。
【0084】
SiO。好ましくは10〜30%。
【0085】
CaCO。通常は2〜50、好ましくは5〜20%。
【0086】
TiO。通常は40%以下、好ましくは0.01〜1%。
【0087】
Fe。好ましくは0.01〜2%。
【0088】
CuO。通常は1〜15%、好ましくは1〜5%。
【0089】
SnO。好ましくは0.01〜2%。
【0090】
Sb。好ましくは0.01〜2%。
【0091】
BaSO。好ましくは1〜50%。
【0092】
“%”という記載は、この場合ポリマーマトリックス総重量を基準として、記載された物質の重量%に関するものである(例えばBaCOと記載する場合その化合物の重量%であるが、Feと記載する場合は原子の重量%)。
【0093】
校正標準を含む本発明の標準セットは、X線蛍光分析機器の校正に用いるのが好ましい。同様に、本発明の標準セットは、レーザーアブレーションICPやレーザー誘起結合プラズマ分光分析に用いる機器の校正に用いることもできる。
【0094】
X線蛍光分析の場合、原子またはイオンをX線で照射し、つづいて原子の内殻から電子を弾き出す。これにより生じる空位を外殻の電子で埋め、その際、いずれの元素についても特徴的な波長のX線が放出される。この特徴的な放射線を、各試料の元素構成を求めるために用いることができる。
【0095】
試料がある特定の波長で放射する放射線の強度は、このX線放射と同時に励起された原子の量に依存する。したがってこの強度を介して、試料中の各元素の濃度を推定することができる。このX線蛍光分析は比較法なので、定量分析を行うためには校正を行わなければならない。
【0096】
X線は一般に、約10−4〜10nmの波長領域にある短波長の電磁放射線と定義されている。
【0097】
本発明による校正標準と、その校正標準を含む標準セットとは、好ましくは下記に説明する本発明の方法によって得られるものとする。
【0098】
本発明は、次のような校正標準を生成する方法を提供する。すなわちこの校正標準は熱可塑性ポリマーの成形体から校正され、この熱可塑性ポリマーは、Cd、Cr、Pb、HgおよびBr(および必要あればそのほかの上記の元素)を含むものである。
【0099】
1つの好ましい実施形態において、有害物質Cd、Cr、PbおよびHgは、酸化物または硫酸塩として、特に酸化物として存在する。そのほかの形状については、下記に本発明の方法におけるものを説明する。
【0100】
本発明による方法は下記のステップを含む。
【0101】
1)元素Br、Cd、Cr、Pb、Hgを含む液体または粉末を分散剤と混合する。
【0102】
2)ステップ1から得られた分散系を、粒子状の熱可塑性ポリマーと混合する。
【0103】
3)ステップ2から得たポリマーを押し出し加工する。この押し出し加工によって、好ましくは顆粒を、特に分散系からなる有害物質を均一に含む顆粒を生じるものとする。
【0104】
有害物質は一般に液体または粉末として存在する。1つの好ましい実施形態でこの有害物質は、元素Cd、Cr、Pb、Hgを含む粉末、および元素Brを含む液体または粉末の形状で存在する。
【0105】
これらの元素は、粉末の場合、好ましくは酸化物、硫酸塩、ステアリン酸塩、または有機ハロゲン化合物として存在するものとする。別な方法としては、これらの元素は、硝酸塩、硫化物、リン酸塩、炭酸塩、有機酸の塩、有機錯体、または有機錯体の塩としても存在し得る。特に好ましくは、有害物質Cd、Cr、Pb、Hgが酸化物または硫酸塩として、特に酸化物として存在するものとする。
【0106】
臭素化合物は、任意の有機臭素化合物または無機臭素化合物を用いることができる。
【0107】
有害物質は、特に好ましくは塩または酸化物、特に酸化物の形状で存在するものとする。
【0108】
臭素化合物は、有機臭素化合物の形状であるのが好ましく、またデカブロモジフェニルエーテルのような臭素を含む公知の難燃剤が好ましい。
【0109】
特に下記の化合物を用いる。
【0110】
CdO(酸化カドミウム)
Cr(III)酸化物またはCr(IV)酸化物
ステアリン酸鉛
HgO(酸化水銀)
本発明による方法では、臭素を通常は液体または粉末として、好ましくは粉末として用いる。特にBr化合物として、デカブロモジフェニルエーテルを用いる。
【0111】
本発明による方法のステップ1で、この有害物質を分散剤と混合する。
【0112】
分散剤として基本的に適するのは、有害物質を溶解、分散し、または有害物質と錯体を形成することができて、ポリマーに対して不活性な液体である。したがって1つの好ましい実施形態において、“分散剤”という概念はいわゆる“錯体形成剤”をも含む。
【0113】
使用される分散剤は、好ましくは280℃以下では分解しないものとする。またこの使用される分散剤の沸点は、好ましくは100℃以上、さらに好ましくは150℃以上、特に好ましくは200℃以上、さらに特に好ましくは250℃以上とする。さらにはこの分散剤は水に不溶性の物質であるのが好ましく、その粘性は、DIN53019により25℃で測定して、好ましくは100〜10000mPas、特に好ましくは100〜7000mPasとする。
【0114】
適切な分散剤の例として、ポリエチレングリコール、ワックスおよび/またはポリエーテルを挙げることができる。そのほかの例はポリイミドである。ポリエーテルを用いるのが特に好ましい。
【0115】
本発明による方法のステップ1では、有害物質(すなわち元素Cd、Cr、Pb、Hgを含む粉末、および元素Brを含む液体または粉末)の分散剤に対する重量比が、通常は0.1〜10対1、好ましくは4〜2対1である。
【0116】
生成される校正標準に充填剤を含ませたい場合、この充填剤を、好ましくはやはりステップ1で分散剤と混合し、あるいは粉末として直接添加する。
【0117】
本発明による方法のステップ1では、充填剤の分散剤に対する重量比は、通常は0.1〜10対1、好ましくは2〜4対1とする。
【0118】
本発明による方法のステップ2では、ステップ1から得られた分散剤を、粒子状の熱可塑性ポリマーと混合する。ステップ2は、押し出し加工の前または押し出し加工中に行うことができる。好ましくはステップ2を押し出し加工前に行うものとする。
【0119】
この混合は通常、ヘラまたはローラーベッドといった特別な混合装置を用いて行う。混合は、1〜120分の時間をかけて行う。
【0120】
上記と異なる実施形態では、液体状の有害物質を、押出機に直接添加する。好ましくはこのために、装入ユニットを押出機に取り付ける。したがってこの実施形態においては、本発明による方法のステップ2を、押し出し加工の前ではなく押し出し加工中に行う。
【0121】
熱可塑性ポリマーはこの場合、粒子状のものを用いる。その例はポリマー顆粒またはポリマー粉末である。好ましいのはポリマー顆粒である。
【0122】
本発明による方法のステップ3では、ステップ2で得られたポリマーを押し出し加工する。
【0123】
この方法ステップのためには、市販の押出機を用いることができる。適切な押出機の例を挙げると、単軸押出機例えばBrabender社製プラストグラフ、または二軸スクリュー押出機(メーカーは例えばCollin、Leistriz、Labtec等各社)がある。
【0124】
押し出し加工は、一般に温度60〜400℃、好ましくは60〜300℃で行う。
【0125】
1つの好ましい実施形態では、ステップ3が2つの部分ステップを含む。
【0126】
最初のステップ3aでは、ステップ2で得られたポリマーを押し出し加工する。この押し出し加工で、好ましくは顆粒を、特に好ましくは分散系から得た有害物質を均一に含む、特に均一に分布されている顆粒を生じる。
【0127】
次のステップ3bでは、ステップ3aで得た顆粒を―好ましくは射出成形機で―射出成形して成形体とする。この成形体は、好ましくは上記に説明したような寸法とする。
【0128】
一般的にいって、上記の本発明の標準セットや本発明の校正標準に好ましい実施形態は、校正標準を生成するための本発明の方法にも用いられる。
【0129】
本発明の対象として最後に挙げるのは、上記の本発明の方法によって生成された校正標準である。この校正標準は、特に有害物質が有利かつ均一に分布する点ですぐれている。
【0130】
本発明の校正標準は、分析機器の校正に用いるのが好ましい。特に好ましくは、この校正標準は、X線蛍光分析器およびレーザーアブレーションICPまたはLIPSのために用いられる。
【0131】
“レーザーアブレーション分光分析”は、専門家には知られた分析方法である。“レーザーアブレーション分光分析”とは、レーザーアブレーションと結合されたICP−MSまたはICP−OESをいう。“ICP‐MS”は、誘起結合プラズマによる質量分光分析(inductively−coupled−plasma mass−spectrometry)の短縮形である。“ICP−OES”は、誘起プラズマと組み合わされた原子発光分光分析である(下記参照)。
【0132】
直接分析(すなわち前もって溶解しないで行う固体試料材料の分析)のためには、レーザーアブレーションを用いて試料材料を蒸発させる。この場合試料にレーザー光線を当て、試料の一部を、例えば粒子、イオン、原子または分子の形で蒸発させる。この試料部分は、アシストガス流によってプラズマ中に搬送される。レーザー光の波長は、通常190〜1024nm、好ましくは193〜266nmである。
【0133】
アブレーションされた材料は、次に例えばキャリヤーガス流を用いて、ICPといった誘起モジュールに供給される。この誘起は、好ましくは熱的に、例えば誘起結合されたアルゴンプラズマ中で、温度約7000度Kで行われる。それに対する反応として、原子化とイオン化、または試料元素の励起が生じる。
【0134】
形成されたイオンの検出は、可能性ある1つの実施形態では質量分析計(MS)で、好ましくはICPからイオンを抽出した後に、1つのインタフェースを用いて行う。好ましくはこれを、四重極型質量分光分析計、または飛行時間型質量分光分析計、または二重収束型質量分光分析計を用いて行うものとする。MSによれば、各イオンについて、その質量電荷比(m/z)を分離、検出することができる。
【0135】
可能性あるもう1つの実施形態では、試料元素の検出を、元素から放出された放射線の測定によって行うことができる。専門家の間でこの分析方法は、OES(optical emission spectroscopy、すなわちAES:原子発光分光分析)の名で知られている。
【0136】
X線蛍光分析(RFA)の場合、原子またはイオンにX線が照射され、つづいて電子が原子の内殻から弾き出される。これにより生じた空位は外殻の電子によって埋められ、そのときいずれの元素についても、特徴的な波長を有するX線が放射される。この特徴的な放射線を、各試料の元素構成を求めるために用いることができる。ある特定の波長で試料から放出される放射線の強度は、このX線放射と同時に励起された原子の量に依存するので、この強度から、試料中における各元素の濃度を推定することができる。X線は一般に、波長領域が10−4〜10nmにある短波長の電磁放射線と、定義されている。
【0137】
LIPS(Laser−Induced Plasma Spectroscopy)の原理は、文献によってはLaser−Induced Breakdown Spectroscopy(LIBS)とも呼ばれている。パルスレーザーを用いて短くて強い光パルスを送出し、この光パルスを光導波システムによって分析材料に導く。そこで光パルスは、ビームの形で材料にぶつかる。これにより表面のわずかな量が“蒸発”する。強いレーザー光によって局所的に生じる温度は非常に高いので、通常の蒸気ではなく、いわゆるプラズマが生じる。このプラズマが、特定の周波数の光、すなわち個々の化学元素に特徴的な周波数―その材料のいわゆる“指紋”となる周波数―の光を放射する。この典型的なスペクトルを分光分析計で分析する。スペクトルの形状から、個々の元素の濃度、すなわちその材料の化学構成を特定することができる。こうして液体、固体、気体物質の構成について、言明することができる。
【実施例】
【0138】
下記の例によって本発明を説明する。
【0139】
例:
ABS顆粒1.5kgと、さまざまに異なる当該元素とを用いて、上記の処理プロセスを行う。
【0140】
表4に記載の通り、下記の量を秤量する。
【0141】
【表4】

秤量に続いて、木製ヘラを用い、秤量皿の中でポリエーテル・ポリオール約1.3gを分散剤として均一に混合する(ステップ1)。次にこの分散系を、秤量皿および木製ヘラとともに、乾燥したABS顆粒1.5kgと、ふた付きの丸い5Lプラスチックバケット中にまとめる(ステップ2)。顆粒を分散剤で濡らすには、ローラーベッドの使用が適する。このローラーベッドを中程度の速度にして、その上に閉じたバケットを置き、分散剤と顆粒が混合するようにする。約1時間後、秤量皿および木製ヘラを取り除くと、分散剤は均一に顆粒に分布している。
【0142】
これらの元素は顆粒に均一に付着し、ダストによる汚染を防止できるので、つづいて押し出し加工される(ステップ3a)。
【0143】
つづいて射出成形機によって、顆粒を固体の円筒形とする。この円筒形は、RFA機器の直径3.4cmの試料ホルダーに適合するものとする。
【0144】
円筒形(円盤)の射出成形体は当初、直径を35mm、厚さを25mmとする。
【0145】
円盤を生成するには、射出成形機の調整を円盤射出成形の鋳型のために最適化する。つづいて表5に記載の調整を行う。
【0146】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つの校正標準を含む校正用の標準セットであって、
すなわち当該校正標準は、元素Cd、Cr、Pb、HgおよびBrを含む熱可塑性ポリマーからなる成形体から構成され、
この場合、上記3つの校正標準のいずれにおいても、CrとPbとHgとBrとCdの重量比が異なる、上記の標準セット。
【請求項2】
前記のポリマーがABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)またはPC(ポリカーボネート)であることを特徴とする、請求項1に記載の標準セット。
【請求項3】
いずれの校正標準も、元素Cr、Pb、HgおよびBrの少なくとも1つを、0.1〜500ppm、そして元素Cr、Pb、HgおよびBrの少なくとも1つを、500〜2000ppm含み、
その際、ポリマーの総重量を基準として、少なくとも1つの校正標準はCdを0.1〜50ppm、そして少なくとも1つの校正標準はCdを50〜200ppm含む
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の標準セット。
【請求項4】
前記の成形体が円筒形であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の標準セット。
【請求項5】
当該標準セットが少なくとも2n+2個の校正標準を含み、
この場合nは、校正される元素の個数である
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の標準セット。
【請求項6】
少なくとも1つの校正標準が1つまたは複数の充填剤を含み、
この場合充填剤とは、元素Ba、Al、Li、Ca、Ti、Fe、Cu、Sn、Sbおよび/またはSiを含む化合物をいう
ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の標準セット。
【請求項7】
前記充填剤の量は、校正標準の総重量を基準としてその1〜70重量%であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の標準セット。
【請求項8】
前記の校正標準が請求項10〜17のいずれかに記載の方法によって得られることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の標準セット。
【請求項9】
分析機器、好ましくはX線蛍光分析またはレーザーアブレーションICP(誘起結合プラズマ)またはLIPS(レーザー誘起プラズマ分光分析)のための機器を校正するための、請求項1〜8のいずれかに記載の標準セットの使用。
【請求項10】
元素Cd、Cr、Pb、HgおよびBrを含む熱可塑性ポリマーの成形体で構成される校正標準を製造する方法であって、
次のステップ
1)元素Br、Cd、Cr、Pb、Hgを含む液体または粉末を分散剤と混合すること、
2)ステップ1から得られた分散系を、粒子状の熱可塑性ポリマーと混合すること、
3)ステップ2から得たポリマーを押し出し加工すること
を含む、方法。
【請求項11】
前記の分散剤は非水溶性物質であって、好ましくは、DIN53019に従い25℃で測定して、粘性200〜7000mPasを有することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記の分散剤の沸点が150℃以上であることを特徴とする、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
ステップ1において、元素Cd、Cr、Pb、Hgを含む粉末および元素Brを含む液体または粉末の、分散剤に対する重量比が、0.1〜10対1、好ましくは4〜2対1であることを特徴とする、請求項10〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
ステップ1において、元素Cd、Cr、Pb、HgおよびBrが、酸化カドミウム、酸化クロム、酸化鉛、酸化水銀およびポリ臭化ジフェニルエーテルの形状であることを特徴とする、請求項10〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
ステップ1においてさらに、元素Ba、Al、Li、Ca、Ti、Fe、Cu、Sn、Sbおよび/またはSiを含む充填剤を、分散剤と混合することを特徴とする、請求項10〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
ステップ1において、充填剤の分散剤に対する重量比が、0.1〜10対1、好ましくは2〜4対1であることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項10〜16のいずれかに記載の方法によって得られる校正標準。
【請求項18】
分析機器、好ましくはX線蛍光分析のための機器、またはレーザーアブレーションICPまたはLIPSのための機器を校正するための、請求項17に記載の校正標準の使用。

【公表番号】特表2009−516180(P2009−516180A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540446(P2008−540446)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【国際出願番号】PCT/DE2006/001970
【国際公開番号】WO2007/056977
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(508145355)
【Fターム(参考)】