栽培装置
【課題】栽培槽を軽量化できるとともに栽培槽内の植物の取替え及び配置変更を容易にできる栽培装置を提供する。
【解決手段】 植物を水耕栽培するための培地に対して非分解性の特性を有する材料で形成されるとともに植物と培地とが収容される複数のポットが互いに隣り合うように載置される収容室と、植物を培養するための培養液が供給される供給口と、複数のポットを流れた後の余剰の培養液が排出される排水口と、を有する栽培槽と、栽培槽の上部に配設され、供給口からの培養液を複数のポット内の培地に夫々灌水するための複数の灌水口を有する灌水管とを備えた栽培装置。
【解決手段】 植物を水耕栽培するための培地に対して非分解性の特性を有する材料で形成されるとともに植物と培地とが収容される複数のポットが互いに隣り合うように載置される収容室と、植物を培養するための培養液が供給される供給口と、複数のポットを流れた後の余剰の培養液が排出される排水口と、を有する栽培槽と、栽培槽の上部に配設され、供給口からの培養液を複数のポット内の培地に夫々灌水するための複数の灌水口を有する灌水管とを備えた栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
植物の生育に必要な栄養を含んだ培養液によって、植物を水耕栽培する栽培装置が知られている。この栽培装置では、例えば栽培槽内に敷設された培地に植物が植え込まれ、この培地に対して培養液が供給される(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−183280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した栽培装置では、栽培槽内に培地を敷設するため、多量の培地が必要となる。このため、培地の重量によって栽培槽自体の重量が重くなるという問題があった。
【0005】
また、前述した栽培装置では、例えば複数の植物が栽培槽内の培地に直接植え込まれている。このため、枯死した植物を取替える作業や、栽培槽内の植物の配置や植栽密度を変更する作業を行う場合、培地を掘り起こす必要があり、これらの作業を行うことが困難であるという問題があった。
【0006】
特に、建物の屋根や壁面等を緑化する緑化システムに前述した栽培装置が備えられる場合、栽培槽は一般に屋根の上等に設置されるため、栽培槽の重量が重くなることはより好ましくない。また、屋根の上等において、培地を掘り起こし、枯死した植物を取替える作業や、植物の配置及び植栽密度を変更する作業を行うことは、より一層困難である。
【0007】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、栽培槽を軽量化できるとともに栽培槽内の植物の取替え及び配置変更を容易にできる栽培装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための発明は、植物を水耕栽培するための培地に対して非分解性の特性を有する材料で形成されるとともに前記植物と前記培地とが収容される複数のポットが互いに隣り合うように載置される収容室と、前記植物を培養するための培養液が供給される供給口と、前記複数のポットを流れた後の余剰の培養液が排出される排水口と、を有する栽培槽と、前記栽培槽の上部に配設され、前記供給口からの培養液を前記複数のポット内の培地に夫々灌水するための複数の灌水口を有する灌水管と、を備えた栽培装置である。
【0009】
本発明の他の特徴については、添付図面及び本明細書の記載により明らかとなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、栽培槽を軽量化できるとともに栽培槽内の植物の取替え及び配置変更を容易にできる栽培装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態にかかる栽培装置を備える緑化システムが工場の屋根に設置された場合の外観を示す斜視図である。
【図2】本実施形態にかかる栽培装置を栽培槽の長手方向に沿って切断した場合の部分断面図である。
【図3】本実施形態に係る栽培装置を栽培槽の長手方向と直交する方向に沿って切断した場合の部分断面図である。
【図4】本実施形態に係る栽培装置の栽培槽の一部を上面側から見た平面図である。
【図5】本実施形態に係る栽培装置の栽培槽の一部を上面側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0013】
===緑化システムの全体構成===
本実施形態にかかる栽培装置は、例えば緑化システムに用いられる。そこで、先ず、図1を参照しつつ、緑化システムの全体構成について説明する。尚、図1は、栽培装置1を備える緑化システムが工場の屋根100に設置された場合の外観を示す斜視図である。
【0014】
緑化システムは、例えば、工場等の屋根100の表面を緑化する目的で設置されるものであり、栽培装置1と、培養液循環ユニット2と、網材3とを備えている。
【0015】
栽培装置1は、例えばつる性植物8を水耕栽培するためのものであり、屋根100の頂上部に設けられている。この栽培装置1で栽培されるつる性植物8としては、多年生のものが用いられる。耐寒性及び耐暑性に優れ、また垂下性を有するという観点からウコギ科のつる性植物が好適に用いられる。ウコギ科のつる性植物としては、ヘデラ・ヘリックス、ヘデラ・アルジェニシス、ヘデラ・コルシカ、ヘデラ・ハイバニカ等が挙げられる。つる性植物8のつるは、栽培装置1に設けられた開口61から栽培装置1の外部へ伸びて行き、網材3を介して屋根100を覆うように垂下していく。栽培装置1の詳細については、後述する。
【0016】
培養液循環ユニット2は、栽培装置1との間でつる性植物8を培養するための培養液を循環させるものであり、培養液タンク4と、供給管5と、回収管6と、培養液ポンプ7とを有する。培養液タンク4には、栽培装置1に供給される培養液(液肥)が貯留される。供給管5は、培養液タンク4内の培養液を栽培装置1へと導くための管状部材であり、培養液タンク4と栽培装置1との間に設けられる。回収管6は、栽培装置1から排出された培養液を培養液タンク4へと導くための管状部材であり、栽培装置1と培養液タンク4との間に設けられる。尚、これらの培養液タンク4、供給管5、回収管6は夫々、日光の照射により内部にアオコ等が発生することを防止するため、例えばポリ塩化ビニル等の遮光性を有する材料から形成されている。
【0017】
網材3は、栽培装置1の開口61から伸長するつる性植物8のつるを支持するための部材であり、屋根100の表面に沿って配置されている。これによって、日光の照射によって高温になった屋根100の表面につる性植物8が直接触れてしまうことを防ぎ、つる性植物8をより確実に生育できる。
【0018】
===栽培装置の構成===
本実施形態にかかる栽培装置1の構成について、図2乃至図5を参照しつつ説明する。栽培装置1は、栽培槽10と、灌水管20と、載置台30と、調整弁40と、区画板50と、蓋60とを備えている。
【0019】
尚、図2は、栽培装置1を栽培槽10の長手方向に沿って切断した場合の部分断面図である。また、図3は、栽培装置1を栽培槽10の長手方向と直交する方向に沿って切断した場合の部分断面図である。図4は、栽培槽10を上面側から見た平面図である。この図4では、説明の便宜上灌水管20、載置台30、調整弁40を省略している。図5は、栽培槽10を上面側から見た平面図である。この図5では、説明の便宜上つる性植物8、培地、載置台30を省略している。
【0020】
栽培槽10は、例えばポリ塩化ビニル等の遮光性を有する材料から形成され、上面が開放された直方体状の栽培槽本体11を有している。この栽培槽本体11の内部には、収容室12が形成されている。また、栽培槽本体11を構成する短辺側の側板の一方に供給口13が形成され、他方に排水口14が形成されている。栽培槽本体11は、この供給口13が形成されている側板(上流側板11a)側から排水口14が形成されている側板(下流側板11b)側に向かって僅かに下り傾斜するように、屋根100に設置されている。
【0021】
収容室12は、例えば栽培槽本体11の長辺側の側板11c、11dと平行に配置される区画板50によって、略等しい容積の2つ収容室12a、12bに区画されている。区画板50は、例えば、栽培槽本体11の底面から上面に向かう高さ方向に沿って上流側板11a及び下流側板11bに夫々設けられた溝(不図示)に対してスライド式に嵌合することで、着脱可能に固定されている。
【0022】
収容室12a、12bは、栽培槽本体11の底面側において互いに連通している。また、収容室12a、12bの底には夫々載置台30が設置され、載置台30の上に複数のポット9が互いに隣り合うように載置されている。
【0023】
ポット9は、例えば培地や空気、微生物等に対して非分解性であり変形可能な特性を有するビニール等の樹脂から形成され、排出孔90を有する底面を備えた中空の円筒形状を呈している。このポット9の内部には、培地が収容され、つる性植物8が植え込まれる。また、ポット9の底面に形成された排出孔90は、後述するように培地に培養液が供給された場合に、つる性植物8に吸収されずにポット9の底面側まで流下した余剰の培養液をポット9の外部に排出するためのものである。
【0024】
図4に示すように、収容室12a、12bにおいて、側板11c、11d夫々と区画板50との距離dは、ポット9の直径より僅かに短くなっている。これによって、ポット9は収容室12a、12bの内部に変形した状態で収容されるため、前述したようにつる性植物8が開口61から栽培装置1の外部へ伸びても傾くことがないようにポット9を収容室12a、12b内に安定した状態で固定しておくことができる。尚、本実施形態に係る栽培装置1は、区画板50を異なる厚みを有する区画板に取替えることで、用いるポット9の直径に応じて距離dを調整できる。これによって、種々の直径を有するポットに対して適応可能である。
【0025】
供給口13は、上流側板11aにおいて、側板11cと側板11dの略中間となる位置に形成され、灌水管20の外径と略等しい長さの直径を有する円形状の開口である。また、供給口13は、収容室12内に配置された区画板50よりも上方に配置されている。この供給口13から収容室12の内部に挿通される灌水管20によって、ポット9に収容された培地に植え込まれたつる性植物8に培養液が供給される。
【0026】
灌水管20は、例えばポリ塩化ビニル等の遮光性を有する材料からなり、培養液循環ユニット2の供給管5と一体に形成され、培養液タンク4から供給管5を介して培養液が送られる。また、灌水管20は、収容室12内において、収容室12の長手方向に沿って延在するように、区画板50の上に配設されている。例えば、区画板50の灌水管20と接触する上面には、灌水管20に合わせた形状の凹部(不図示)が設けられている。この凹部内に灌水管20が載置されることで、灌水管20はポット9内の培地の上方に安定した状態で固定されている。尚、区画板50の上に灌水管20を配設する方法はこれに限られず、例えば、凹部を設けない区画板50の上面に対してワイヤ等を用いて灌水管20を固定してもよい。
【0027】
灌水管20における収容室12a、12b側の側面には夫々、培養液を排出してポット9内の培地に夫々灌水するための灌水口21が長手方向に沿って複数形成されている。
【0028】
灌水口21は例えば灌水管20から分岐する管状の流路22を介して培養液を排出する。この流路22には夫々流路22を開閉して灌水口21からポット9内の培地に灌水する培養液の量を調整するための調整弁40が取り付けられている。図5に示すように、例えば、複数の灌水口21のうち、収容室12a、12bに収容されたポット9に対応する位置に設けられている灌水口21aは、調整弁40によって開かれ、ポット9に対応していない位置に設けられている灌水口21bは、調整弁40によって閉じられる。これによって、収容室12内のポット9が配置されている箇所に選択的に灌水することができる。このように灌水口21からポット9内の培地の表面に灌水された培養液は、ポット9の底面に向かって浸透し、つる性植物8の根に供給される。
【0029】
尚、調整弁40は、例えばグローブバルブ、ニードルバルブ、バタフライバルブ等、流路22の開閉量を調整でき、ポット9に灌水される培養液の流量を調整可能な弁であることが好ましい。これによって、ポット9内のつる性植物8の生育状態等に応じて、灌水する培養液の量を個々に調整することができるため、つる性植物8をより確実に生育できる。また、調整弁40は、例えばゲートバルブやボールバルブ等、流路22を開閉することで、ポット9への培養液の灌水を許可又は禁止するものであってもよい。
【0030】
載置台30は、例えばポット9の直径よりも小さい網目状の落下孔を有しポット9が載置される載置部31と、載置部31と栽培槽本体11の底面との間に空間を形成する脚32とを備えている。ポット9の排出孔90から排出された余剰の培養液は、載置台30の落下孔を通って栽培槽本体11の底面まで落下する。そして、栽培槽本体11は前述したように下り傾斜するように屋根100に設置されているため、栽培槽本体11の底面に落下した余剰の培養液は、載置部31と栽培槽本体11の底面との間の空間を通って排水口14に向かって流れる。尚、載置台30にポット9が載置されることで、栽培槽本体11の底に余剰の培養液が溜まった場合であっても、ポット9が培養液中に浸された状態となることを防止できる。これによって、ポット9内の培地に含水される培養液の量を適正に保つことができ、つる性植物8をより確実に生育できる。
【0031】
排水口14は、下流側板11bにおいて、側板11cと側板11dの略中間であり栽培槽本体11の底面側となる位置に形成され、培養液循環ユニット2の回収管6の外径と略等しい長さの直径を有する円形状の開口である。この排水口14には回収管6が挿通されており、栽培槽本体11の底面を通って流れてきた余剰の培養液は、排水口14から回収管6を介して栽培槽本体11の外部に排出され、培養液タンク4に戻される。
【0032】
蓋60は、例えばポリ塩化ビニル等の遮光性を有する材料からなり、栽培槽本体11の上面を覆うように、栽培槽本体11に着脱可能に取り付けられ、栽培槽10を清掃するとき等に栽培槽本体11から取り外される。この蓋60は、栽培槽本体11と対向する面が開放された直方体状を呈し、長辺側の側板には、前述したようにつる性植物8のつるを栽培槽10の外へと導くための開口61が形成されている。
【0033】
以上より、本実施形態に係る栽培装置1では、つる性植物8が植え込まれた培地を収容する複数のポット9が栽培槽10内の収容室12に載置され、ポット9に収容された培地に対して夫々灌水管20から培養液を灌水することで、つる性植物8を生育できる。このため、栽培槽本体11内に培地を敷設する必要がない分、栽培槽10を軽量化することができる。
【0034】
また、栽培装置1では、自由に収容室12からポット9を取り出すこと及び収容室12にポット9を収容することができる。これによって、例えば枯死してしまったつる生植物8が植え込まれたポット9のみを取り出すことや、取り出したポット9のかわりにつる性植物8が植え込まれた新たなポット9を収容することができる。このため、収容室12内のつる性植物8を容易に取替えることができる。
【0035】
また、収容室12内のポット9の個数を減らしたり増やしたりすることで、収容室12内のつる性植物8の植栽密度を容易に変更することができる。更に、収容室12内において、灌水管20に複数設けられた灌水口21の位置に応じた範囲で、ポット9の配置を自由に変更することができる。このため、収容室12内のつる性植物8の配置を容易に変更することができる。
【0036】
また、栽培装置1では、灌水管20が遮光性を有する材料から形成されているため、栽培槽10の内部に日光が入り込んだ場合であっても、灌水管20内にアオコ等が発生することを抑制でき、つる性植物8をより確実に生育できる。
【0037】
また、栽培装置1では、収容室12内において載置台30の上にポット9が載置されるため、例えばポット9の底部が余剰の培養液に浸かったままの状態となることを防止できる。これによって、培地に含水される培養液の量をつる性植物8を生育するために適正な量に保つことができ、つる性植物8をより確実に生育できる。
【0038】
また、栽培装置1では、灌水管20に複数設けられた灌水口21からポット9内の培地に灌水する培養液の量を調整弁40によって調整することができる。このため、収容室12内において、ポット9に対応する位置にある調整弁40を開き、ポット9に対応していない位置にある調整弁40を閉じることで、収容室12内の必要な場所にだけ培養液を灌水することができる。また、つる性植物8の状態に応じて、複数のポット9内の培地ごとに灌水する培養液の量を調整することができるため、つる性植物8をより確実に生育できる。
【0039】
また、栽培装置1では、ポット9は、変形可能な特性を有する樹脂から形成され、収容室12に夫々変形した状態で収容される。これによって、収容室12に対してポット9を容易に固定すること及び取り出すことができる。また、つる性植物8が開口61から栽培装置1の外部へ伸びても、ポット9を収容室12内に固定しておくことができる。また、区画板50によって収容室12を区画することで、収容室12内の空間を効率よく利用することができる。さらに、例えば区画板50の厚みを調整することで、側板11c、11dと区画板50との距離dを調整することが可能となる。これによって、より確実にポット9を収容室12内に固定することができるうえ、種々の直径を有するポット9を用いることが可能となり、栽培装置1の汎用性を高めることができる。
【0040】
また、栽培装置1では、栽培槽本体11に蓋60が取り付けられるため、栽培槽本体11内のつる性植物8や培地等を強風や強雨から保護できる。また、栽培槽本体11内に、アオコ等の発生原因となる日光や、培養液を希釈する雨水や、雑草の種子及び病原菌等が侵入することを防ぐことができる。更に、培地に供給された培養液が大気中に蒸発してしまうことを抑制できる。よって、つる性植物8をより確実に生育できる。
【0041】
===その他の実施形態===
前述した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更、改良されると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【0042】
前述した栽培装置1では、灌水口21は例えば灌水管20から分岐する流路22を介して培養液を排出し、流路22には調整弁40が取り付けられていることとした。しかし特にこれに限定されるものではない。例えば、灌水口21は、灌水管20の内部から外部へ培養液が噴出するように、灌水管20の側面に形成された貫通孔であり、調整弁40を備えていなくてもよい。
【0043】
また、前述した栽培装置1では、収容室12は、栽培槽本体11の長辺側の側板11c、11dと平行に配置される区画板50によって、略等しい容積の2つ収容室12a、12bに区画されることとした。しかし特にこれに限定されるものではなく、区画板50は、収容室12内にポット9が安定した状態で固定される空間が形成されるように、収容室12を区画するものであればよい。また、例えば、栽培槽本体11は、区画板50を備えず、側板11cと側板11dとの距離をポット9の直径よりも僅かに短くすることで、収容室12内にポット9が安定した状態で固定されてもよい。尚、区画板50を備えない場合、例えば、栽培槽本体11の底面に一端が固定され、栽培槽本体11の上面に向かって延在する複数の支柱によって、ポット9内の培地の上方に灌水管20を配置することができる。
【0044】
また、前述した栽培装置1では、蓋60の長辺側の側板に、つる性植物8のつるを栽培槽10の外へと導くための開口61が形成されていることとした。しかし特にこれに限定されるものではなく、例えば、栽培槽本体11の長辺側の側板11c、11dに、つる性植物8のつるを栽培槽10の外へと導くための開口が形成されていてもよい。
【0045】
また、前述した栽培装置1では、ウコギ科のつる性植物8をポット9内の培地に植え込み、緑化システムに用いられることとした。しかし、特にこれに限定されるものではなく、栽培装置1は、植物を水耕栽培する必要があるものに好適に用いられる。また、ポット9内の培地に植え込まれる植物は、例えば、ミツバ、レタス、イチゴ等の食用植物や、シクラメン、ラン等の観賞用植物等、水耕栽培が可能な植物であればよい。
【0046】
尚、栽培装置1において、つる性植物8のようにつるが栽培槽10の外部まで伸び、栽培中にポット9が傾く虞のある植物を栽培する場合、収容室12を区画板50で区画すること等によって、収容室12内にポット9を安定した状態で固定することが望ましい。しかし、栽培装置1において、ポット9が傾く虞のない植物を栽培する場合、区画板50を備えず、例えば栽培槽本体11の上面側から見てポット9が千鳥状となるように、収容室12内にバランスよくポット9が配置されればよい。このようにポット9を配置した場合であっても、ポット9に対応する位置の灌水口21の調整弁40を開き、ポット9に対応しない位置の灌水口21の調整弁40を閉じておくことで、収容室12内のポット9が配置されている箇所に選択的に培養液を灌水することができる。
【符号の説明】
【0047】
1…栽培装置,2…培養液循環ユニット,3…網材,4…培養液タンク,5…供給管,6…回収管,7…培養液ポンプ,8…つる性植物,9…ポット,10…栽培槽,11…栽培槽本体,11a…上流側板,11b…下流側板,11c、11d…側板,12、12a、12b…収容室,13…供給口,14…排水口,20…灌水管,21、21a、21b…灌水口,22…流路,30…載置台,31…載置部,32…脚,40…調整弁,50…区画板,60…蓋、61…開口,90…排出孔,100…屋根
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
植物の生育に必要な栄養を含んだ培養液によって、植物を水耕栽培する栽培装置が知られている。この栽培装置では、例えば栽培槽内に敷設された培地に植物が植え込まれ、この培地に対して培養液が供給される(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−183280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した栽培装置では、栽培槽内に培地を敷設するため、多量の培地が必要となる。このため、培地の重量によって栽培槽自体の重量が重くなるという問題があった。
【0005】
また、前述した栽培装置では、例えば複数の植物が栽培槽内の培地に直接植え込まれている。このため、枯死した植物を取替える作業や、栽培槽内の植物の配置や植栽密度を変更する作業を行う場合、培地を掘り起こす必要があり、これらの作業を行うことが困難であるという問題があった。
【0006】
特に、建物の屋根や壁面等を緑化する緑化システムに前述した栽培装置が備えられる場合、栽培槽は一般に屋根の上等に設置されるため、栽培槽の重量が重くなることはより好ましくない。また、屋根の上等において、培地を掘り起こし、枯死した植物を取替える作業や、植物の配置及び植栽密度を変更する作業を行うことは、より一層困難である。
【0007】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、栽培槽を軽量化できるとともに栽培槽内の植物の取替え及び配置変更を容易にできる栽培装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための発明は、植物を水耕栽培するための培地に対して非分解性の特性を有する材料で形成されるとともに前記植物と前記培地とが収容される複数のポットが互いに隣り合うように載置される収容室と、前記植物を培養するための培養液が供給される供給口と、前記複数のポットを流れた後の余剰の培養液が排出される排水口と、を有する栽培槽と、前記栽培槽の上部に配設され、前記供給口からの培養液を前記複数のポット内の培地に夫々灌水するための複数の灌水口を有する灌水管と、を備えた栽培装置である。
【0009】
本発明の他の特徴については、添付図面及び本明細書の記載により明らかとなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、栽培槽を軽量化できるとともに栽培槽内の植物の取替え及び配置変更を容易にできる栽培装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態にかかる栽培装置を備える緑化システムが工場の屋根に設置された場合の外観を示す斜視図である。
【図2】本実施形態にかかる栽培装置を栽培槽の長手方向に沿って切断した場合の部分断面図である。
【図3】本実施形態に係る栽培装置を栽培槽の長手方向と直交する方向に沿って切断した場合の部分断面図である。
【図4】本実施形態に係る栽培装置の栽培槽の一部を上面側から見た平面図である。
【図5】本実施形態に係る栽培装置の栽培槽の一部を上面側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0013】
===緑化システムの全体構成===
本実施形態にかかる栽培装置は、例えば緑化システムに用いられる。そこで、先ず、図1を参照しつつ、緑化システムの全体構成について説明する。尚、図1は、栽培装置1を備える緑化システムが工場の屋根100に設置された場合の外観を示す斜視図である。
【0014】
緑化システムは、例えば、工場等の屋根100の表面を緑化する目的で設置されるものであり、栽培装置1と、培養液循環ユニット2と、網材3とを備えている。
【0015】
栽培装置1は、例えばつる性植物8を水耕栽培するためのものであり、屋根100の頂上部に設けられている。この栽培装置1で栽培されるつる性植物8としては、多年生のものが用いられる。耐寒性及び耐暑性に優れ、また垂下性を有するという観点からウコギ科のつる性植物が好適に用いられる。ウコギ科のつる性植物としては、ヘデラ・ヘリックス、ヘデラ・アルジェニシス、ヘデラ・コルシカ、ヘデラ・ハイバニカ等が挙げられる。つる性植物8のつるは、栽培装置1に設けられた開口61から栽培装置1の外部へ伸びて行き、網材3を介して屋根100を覆うように垂下していく。栽培装置1の詳細については、後述する。
【0016】
培養液循環ユニット2は、栽培装置1との間でつる性植物8を培養するための培養液を循環させるものであり、培養液タンク4と、供給管5と、回収管6と、培養液ポンプ7とを有する。培養液タンク4には、栽培装置1に供給される培養液(液肥)が貯留される。供給管5は、培養液タンク4内の培養液を栽培装置1へと導くための管状部材であり、培養液タンク4と栽培装置1との間に設けられる。回収管6は、栽培装置1から排出された培養液を培養液タンク4へと導くための管状部材であり、栽培装置1と培養液タンク4との間に設けられる。尚、これらの培養液タンク4、供給管5、回収管6は夫々、日光の照射により内部にアオコ等が発生することを防止するため、例えばポリ塩化ビニル等の遮光性を有する材料から形成されている。
【0017】
網材3は、栽培装置1の開口61から伸長するつる性植物8のつるを支持するための部材であり、屋根100の表面に沿って配置されている。これによって、日光の照射によって高温になった屋根100の表面につる性植物8が直接触れてしまうことを防ぎ、つる性植物8をより確実に生育できる。
【0018】
===栽培装置の構成===
本実施形態にかかる栽培装置1の構成について、図2乃至図5を参照しつつ説明する。栽培装置1は、栽培槽10と、灌水管20と、載置台30と、調整弁40と、区画板50と、蓋60とを備えている。
【0019】
尚、図2は、栽培装置1を栽培槽10の長手方向に沿って切断した場合の部分断面図である。また、図3は、栽培装置1を栽培槽10の長手方向と直交する方向に沿って切断した場合の部分断面図である。図4は、栽培槽10を上面側から見た平面図である。この図4では、説明の便宜上灌水管20、載置台30、調整弁40を省略している。図5は、栽培槽10を上面側から見た平面図である。この図5では、説明の便宜上つる性植物8、培地、載置台30を省略している。
【0020】
栽培槽10は、例えばポリ塩化ビニル等の遮光性を有する材料から形成され、上面が開放された直方体状の栽培槽本体11を有している。この栽培槽本体11の内部には、収容室12が形成されている。また、栽培槽本体11を構成する短辺側の側板の一方に供給口13が形成され、他方に排水口14が形成されている。栽培槽本体11は、この供給口13が形成されている側板(上流側板11a)側から排水口14が形成されている側板(下流側板11b)側に向かって僅かに下り傾斜するように、屋根100に設置されている。
【0021】
収容室12は、例えば栽培槽本体11の長辺側の側板11c、11dと平行に配置される区画板50によって、略等しい容積の2つ収容室12a、12bに区画されている。区画板50は、例えば、栽培槽本体11の底面から上面に向かう高さ方向に沿って上流側板11a及び下流側板11bに夫々設けられた溝(不図示)に対してスライド式に嵌合することで、着脱可能に固定されている。
【0022】
収容室12a、12bは、栽培槽本体11の底面側において互いに連通している。また、収容室12a、12bの底には夫々載置台30が設置され、載置台30の上に複数のポット9が互いに隣り合うように載置されている。
【0023】
ポット9は、例えば培地や空気、微生物等に対して非分解性であり変形可能な特性を有するビニール等の樹脂から形成され、排出孔90を有する底面を備えた中空の円筒形状を呈している。このポット9の内部には、培地が収容され、つる性植物8が植え込まれる。また、ポット9の底面に形成された排出孔90は、後述するように培地に培養液が供給された場合に、つる性植物8に吸収されずにポット9の底面側まで流下した余剰の培養液をポット9の外部に排出するためのものである。
【0024】
図4に示すように、収容室12a、12bにおいて、側板11c、11d夫々と区画板50との距離dは、ポット9の直径より僅かに短くなっている。これによって、ポット9は収容室12a、12bの内部に変形した状態で収容されるため、前述したようにつる性植物8が開口61から栽培装置1の外部へ伸びても傾くことがないようにポット9を収容室12a、12b内に安定した状態で固定しておくことができる。尚、本実施形態に係る栽培装置1は、区画板50を異なる厚みを有する区画板に取替えることで、用いるポット9の直径に応じて距離dを調整できる。これによって、種々の直径を有するポットに対して適応可能である。
【0025】
供給口13は、上流側板11aにおいて、側板11cと側板11dの略中間となる位置に形成され、灌水管20の外径と略等しい長さの直径を有する円形状の開口である。また、供給口13は、収容室12内に配置された区画板50よりも上方に配置されている。この供給口13から収容室12の内部に挿通される灌水管20によって、ポット9に収容された培地に植え込まれたつる性植物8に培養液が供給される。
【0026】
灌水管20は、例えばポリ塩化ビニル等の遮光性を有する材料からなり、培養液循環ユニット2の供給管5と一体に形成され、培養液タンク4から供給管5を介して培養液が送られる。また、灌水管20は、収容室12内において、収容室12の長手方向に沿って延在するように、区画板50の上に配設されている。例えば、区画板50の灌水管20と接触する上面には、灌水管20に合わせた形状の凹部(不図示)が設けられている。この凹部内に灌水管20が載置されることで、灌水管20はポット9内の培地の上方に安定した状態で固定されている。尚、区画板50の上に灌水管20を配設する方法はこれに限られず、例えば、凹部を設けない区画板50の上面に対してワイヤ等を用いて灌水管20を固定してもよい。
【0027】
灌水管20における収容室12a、12b側の側面には夫々、培養液を排出してポット9内の培地に夫々灌水するための灌水口21が長手方向に沿って複数形成されている。
【0028】
灌水口21は例えば灌水管20から分岐する管状の流路22を介して培養液を排出する。この流路22には夫々流路22を開閉して灌水口21からポット9内の培地に灌水する培養液の量を調整するための調整弁40が取り付けられている。図5に示すように、例えば、複数の灌水口21のうち、収容室12a、12bに収容されたポット9に対応する位置に設けられている灌水口21aは、調整弁40によって開かれ、ポット9に対応していない位置に設けられている灌水口21bは、調整弁40によって閉じられる。これによって、収容室12内のポット9が配置されている箇所に選択的に灌水することができる。このように灌水口21からポット9内の培地の表面に灌水された培養液は、ポット9の底面に向かって浸透し、つる性植物8の根に供給される。
【0029】
尚、調整弁40は、例えばグローブバルブ、ニードルバルブ、バタフライバルブ等、流路22の開閉量を調整でき、ポット9に灌水される培養液の流量を調整可能な弁であることが好ましい。これによって、ポット9内のつる性植物8の生育状態等に応じて、灌水する培養液の量を個々に調整することができるため、つる性植物8をより確実に生育できる。また、調整弁40は、例えばゲートバルブやボールバルブ等、流路22を開閉することで、ポット9への培養液の灌水を許可又は禁止するものであってもよい。
【0030】
載置台30は、例えばポット9の直径よりも小さい網目状の落下孔を有しポット9が載置される載置部31と、載置部31と栽培槽本体11の底面との間に空間を形成する脚32とを備えている。ポット9の排出孔90から排出された余剰の培養液は、載置台30の落下孔を通って栽培槽本体11の底面まで落下する。そして、栽培槽本体11は前述したように下り傾斜するように屋根100に設置されているため、栽培槽本体11の底面に落下した余剰の培養液は、載置部31と栽培槽本体11の底面との間の空間を通って排水口14に向かって流れる。尚、載置台30にポット9が載置されることで、栽培槽本体11の底に余剰の培養液が溜まった場合であっても、ポット9が培養液中に浸された状態となることを防止できる。これによって、ポット9内の培地に含水される培養液の量を適正に保つことができ、つる性植物8をより確実に生育できる。
【0031】
排水口14は、下流側板11bにおいて、側板11cと側板11dの略中間であり栽培槽本体11の底面側となる位置に形成され、培養液循環ユニット2の回収管6の外径と略等しい長さの直径を有する円形状の開口である。この排水口14には回収管6が挿通されており、栽培槽本体11の底面を通って流れてきた余剰の培養液は、排水口14から回収管6を介して栽培槽本体11の外部に排出され、培養液タンク4に戻される。
【0032】
蓋60は、例えばポリ塩化ビニル等の遮光性を有する材料からなり、栽培槽本体11の上面を覆うように、栽培槽本体11に着脱可能に取り付けられ、栽培槽10を清掃するとき等に栽培槽本体11から取り外される。この蓋60は、栽培槽本体11と対向する面が開放された直方体状を呈し、長辺側の側板には、前述したようにつる性植物8のつるを栽培槽10の外へと導くための開口61が形成されている。
【0033】
以上より、本実施形態に係る栽培装置1では、つる性植物8が植え込まれた培地を収容する複数のポット9が栽培槽10内の収容室12に載置され、ポット9に収容された培地に対して夫々灌水管20から培養液を灌水することで、つる性植物8を生育できる。このため、栽培槽本体11内に培地を敷設する必要がない分、栽培槽10を軽量化することができる。
【0034】
また、栽培装置1では、自由に収容室12からポット9を取り出すこと及び収容室12にポット9を収容することができる。これによって、例えば枯死してしまったつる生植物8が植え込まれたポット9のみを取り出すことや、取り出したポット9のかわりにつる性植物8が植え込まれた新たなポット9を収容することができる。このため、収容室12内のつる性植物8を容易に取替えることができる。
【0035】
また、収容室12内のポット9の個数を減らしたり増やしたりすることで、収容室12内のつる性植物8の植栽密度を容易に変更することができる。更に、収容室12内において、灌水管20に複数設けられた灌水口21の位置に応じた範囲で、ポット9の配置を自由に変更することができる。このため、収容室12内のつる性植物8の配置を容易に変更することができる。
【0036】
また、栽培装置1では、灌水管20が遮光性を有する材料から形成されているため、栽培槽10の内部に日光が入り込んだ場合であっても、灌水管20内にアオコ等が発生することを抑制でき、つる性植物8をより確実に生育できる。
【0037】
また、栽培装置1では、収容室12内において載置台30の上にポット9が載置されるため、例えばポット9の底部が余剰の培養液に浸かったままの状態となることを防止できる。これによって、培地に含水される培養液の量をつる性植物8を生育するために適正な量に保つことができ、つる性植物8をより確実に生育できる。
【0038】
また、栽培装置1では、灌水管20に複数設けられた灌水口21からポット9内の培地に灌水する培養液の量を調整弁40によって調整することができる。このため、収容室12内において、ポット9に対応する位置にある調整弁40を開き、ポット9に対応していない位置にある調整弁40を閉じることで、収容室12内の必要な場所にだけ培養液を灌水することができる。また、つる性植物8の状態に応じて、複数のポット9内の培地ごとに灌水する培養液の量を調整することができるため、つる性植物8をより確実に生育できる。
【0039】
また、栽培装置1では、ポット9は、変形可能な特性を有する樹脂から形成され、収容室12に夫々変形した状態で収容される。これによって、収容室12に対してポット9を容易に固定すること及び取り出すことができる。また、つる性植物8が開口61から栽培装置1の外部へ伸びても、ポット9を収容室12内に固定しておくことができる。また、区画板50によって収容室12を区画することで、収容室12内の空間を効率よく利用することができる。さらに、例えば区画板50の厚みを調整することで、側板11c、11dと区画板50との距離dを調整することが可能となる。これによって、より確実にポット9を収容室12内に固定することができるうえ、種々の直径を有するポット9を用いることが可能となり、栽培装置1の汎用性を高めることができる。
【0040】
また、栽培装置1では、栽培槽本体11に蓋60が取り付けられるため、栽培槽本体11内のつる性植物8や培地等を強風や強雨から保護できる。また、栽培槽本体11内に、アオコ等の発生原因となる日光や、培養液を希釈する雨水や、雑草の種子及び病原菌等が侵入することを防ぐことができる。更に、培地に供給された培養液が大気中に蒸発してしまうことを抑制できる。よって、つる性植物8をより確実に生育できる。
【0041】
===その他の実施形態===
前述した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更、改良されると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【0042】
前述した栽培装置1では、灌水口21は例えば灌水管20から分岐する流路22を介して培養液を排出し、流路22には調整弁40が取り付けられていることとした。しかし特にこれに限定されるものではない。例えば、灌水口21は、灌水管20の内部から外部へ培養液が噴出するように、灌水管20の側面に形成された貫通孔であり、調整弁40を備えていなくてもよい。
【0043】
また、前述した栽培装置1では、収容室12は、栽培槽本体11の長辺側の側板11c、11dと平行に配置される区画板50によって、略等しい容積の2つ収容室12a、12bに区画されることとした。しかし特にこれに限定されるものではなく、区画板50は、収容室12内にポット9が安定した状態で固定される空間が形成されるように、収容室12を区画するものであればよい。また、例えば、栽培槽本体11は、区画板50を備えず、側板11cと側板11dとの距離をポット9の直径よりも僅かに短くすることで、収容室12内にポット9が安定した状態で固定されてもよい。尚、区画板50を備えない場合、例えば、栽培槽本体11の底面に一端が固定され、栽培槽本体11の上面に向かって延在する複数の支柱によって、ポット9内の培地の上方に灌水管20を配置することができる。
【0044】
また、前述した栽培装置1では、蓋60の長辺側の側板に、つる性植物8のつるを栽培槽10の外へと導くための開口61が形成されていることとした。しかし特にこれに限定されるものではなく、例えば、栽培槽本体11の長辺側の側板11c、11dに、つる性植物8のつるを栽培槽10の外へと導くための開口が形成されていてもよい。
【0045】
また、前述した栽培装置1では、ウコギ科のつる性植物8をポット9内の培地に植え込み、緑化システムに用いられることとした。しかし、特にこれに限定されるものではなく、栽培装置1は、植物を水耕栽培する必要があるものに好適に用いられる。また、ポット9内の培地に植え込まれる植物は、例えば、ミツバ、レタス、イチゴ等の食用植物や、シクラメン、ラン等の観賞用植物等、水耕栽培が可能な植物であればよい。
【0046】
尚、栽培装置1において、つる性植物8のようにつるが栽培槽10の外部まで伸び、栽培中にポット9が傾く虞のある植物を栽培する場合、収容室12を区画板50で区画すること等によって、収容室12内にポット9を安定した状態で固定することが望ましい。しかし、栽培装置1において、ポット9が傾く虞のない植物を栽培する場合、区画板50を備えず、例えば栽培槽本体11の上面側から見てポット9が千鳥状となるように、収容室12内にバランスよくポット9が配置されればよい。このようにポット9を配置した場合であっても、ポット9に対応する位置の灌水口21の調整弁40を開き、ポット9に対応しない位置の灌水口21の調整弁40を閉じておくことで、収容室12内のポット9が配置されている箇所に選択的に培養液を灌水することができる。
【符号の説明】
【0047】
1…栽培装置,2…培養液循環ユニット,3…網材,4…培養液タンク,5…供給管,6…回収管,7…培養液ポンプ,8…つる性植物,9…ポット,10…栽培槽,11…栽培槽本体,11a…上流側板,11b…下流側板,11c、11d…側板,12、12a、12b…収容室,13…供給口,14…排水口,20…灌水管,21、21a、21b…灌水口,22…流路,30…載置台,31…載置部,32…脚,40…調整弁,50…区画板,60…蓋、61…開口,90…排出孔,100…屋根
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を水耕栽培するための培地に対して非分解性の特性を有する材料で形成されるとともに前記植物と前記培地とが収容される複数のポットが互いに隣り合うように載置される収容室と、前記植物を培養するための培養液が供給される供給口と、前記複数のポットを流れた後の余剰の培養液が排出される排水口と、を有する栽培槽と、
前記栽培槽の上部に配設され、前記供給口からの培養液を前記複数のポット内の培地に夫々灌水するための複数の灌水口を有する灌水管と、
を備えたことを特徴とする栽培装置。
【請求項2】
前記灌水管は、遮光性を有する材料で形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の栽培装置。
【請求項3】
前記余剰の培養液が前記排水口から排出されるように前記余剰の培養液を落下させる落下孔を有し、前記複数のポットが載置される載置台
を更に備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の栽培装置。
【請求項4】
前記複数の灌水口から灌水される培養液の量を調整する調整弁
を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の栽培装置。
【請求項5】
前記複数のポットは、変形可能な樹脂で形成される
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の栽培装置。
【請求項6】
前記収容室を複数の収容室に区画する区画板を更に備え、
前記複数のポットは、変形した状態で複数の収容室に収容され、
前記植物は、多年生つる性植物である
ことを特徴とする請求項5に記載の栽培装置。
【請求項7】
前記植物が伸び出る開口を有し、前記栽培槽を閉じる蓋
を更に備えたことを特徴とする請求項6に記載の栽培装置。
【請求項1】
植物を水耕栽培するための培地に対して非分解性の特性を有する材料で形成されるとともに前記植物と前記培地とが収容される複数のポットが互いに隣り合うように載置される収容室と、前記植物を培養するための培養液が供給される供給口と、前記複数のポットを流れた後の余剰の培養液が排出される排水口と、を有する栽培槽と、
前記栽培槽の上部に配設され、前記供給口からの培養液を前記複数のポット内の培地に夫々灌水するための複数の灌水口を有する灌水管と、
を備えたことを特徴とする栽培装置。
【請求項2】
前記灌水管は、遮光性を有する材料で形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の栽培装置。
【請求項3】
前記余剰の培養液が前記排水口から排出されるように前記余剰の培養液を落下させる落下孔を有し、前記複数のポットが載置される載置台
を更に備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の栽培装置。
【請求項4】
前記複数の灌水口から灌水される培養液の量を調整する調整弁
を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の栽培装置。
【請求項5】
前記複数のポットは、変形可能な樹脂で形成される
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の栽培装置。
【請求項6】
前記収容室を複数の収容室に区画する区画板を更に備え、
前記複数のポットは、変形した状態で複数の収容室に収容され、
前記植物は、多年生つる性植物である
ことを特徴とする請求項5に記載の栽培装置。
【請求項7】
前記植物が伸び出る開口を有し、前記栽培槽を閉じる蓋
を更に備えたことを特徴とする請求項6に記載の栽培装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2012−125172(P2012−125172A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278462(P2010−278462)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
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