説明

椅子昇降用油圧装置

【課題】足で踏み込み昇降用シリンダに油を供給する椅子にあっては、1回毎の踏み込みにおいて昇降用シリンダへの油の供給が停止するために、油の停止毎に座部が停止することとなり、被施術者に不快感を与える。
【解決手段】スプリング22のバネ力によって上昇位置に移動し、操作レバーを踏み込むと下降するピストン24がシリンダ23内に収容され、ピストンには中空の制御管28が取付けられると共に制御管と連通して連通孔24aが形成され、シリンダにはピストンが最下降位置に移動した時に連通孔と一致する油排出孔23aが形成されている足踏みポンプと、油の流出を阻止する逆止弁7と、足踏みポンプより逆止弁を介して流出する油を貯留する保圧シリンダ3と、足踏みポンプより逆止弁を介して流出する油によって座部を上昇させる昇降用シリンダ4とから構成した椅子昇降用油圧装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、理美容用椅子や歯科用椅子、特に、理容用椅子において、施術を行う際に座部の上昇を足踏み用の操作レバーを施術者が踏み込むことで行う椅子であって、前記操作レバーを踏み込むことで椅子の上昇、下降を制御する椅子昇降用油圧装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における椅子、例えば、理美容用椅子には電動式のポンプを利用して油圧シリンダに油を供給するものと、前記した操作レバーを足で踏み込み油圧シリンダに油を供給するものとがある。そして、電動式のポンプを利用した椅子の昇降装置として、例えば、実開平4−52634号公報に記載の考案がある。このような電動式ポンプによって椅子を上昇させるものにあっては、ポンプによって連続して油が油圧シリンダに供給されることから連続的に座部が所望の位置まで上昇することとなるので、上昇途中で着座していきる被施術者にショックを与えることはない。
【0003】
一方、操作レバーを足で踏んで油圧シリンダに油タンクから油を供給する簡易な椅子(美容用に多く採用されている)、例えば、本出願人会社のホームページにおけるURL( http://www.takarabelmont.co.jp/ribiyou/index.html)で紹介している椅子の場合には、1回踏むことで油圧シリンダに1回分の油が供給されるものであることから、着座している被施術者の身長が低い場合には複数回操作レバーを踏むものである。
【特許文献1】実開平4−52634号公報
【非特許文献1】http://www.takarabelmont.co.jp/ribiyou/index.html
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記した操作レバーを足で踏み込み油圧シリンダに油を供給するものにあっては、1回毎の操作レバーの踏み込みにおいて油圧シリンダへの油の供給が停止するために、油圧シリンダへの油の停止毎に座部が停止することとなり、被施術者に対してショックを与え不快感を与えるという問題があった。
【0005】
本発明は前記した問題点を解決せんとするもので、その目的とするところは、操作レバーの踏み込みと踏み込みとの間に保圧シリンダに貯留されている油を昇降用シリンダに供給することで、昇降用シリンダが停止することなく連続して上昇するので被施術者に対してショックを与え不快感を与えることがなく、また、操作レバーを最下部まで踏み込むことで足踏みポンプの制御管が逆止弁を開放し、保圧シリンダおよび昇降用シリンダよりの油を制御管、連通孔および油排出孔を介してタンク内に戻すことができるので、構造が簡単となりコストの低下を図ることができる椅子昇降用油圧装置を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の椅子昇降用油圧装置は前記した目的を達成せんとするもので、請求項1の手段は、スプリングのバネ力によって上昇位置に移動し、前記スプリングのバネ力に抗して操作レバーを踏み込むと下降するピストンがシリンダ内に収容され、前記ピストンには先端が下部に突出する中空の制御管が取付けられると共に該制御管と連通して連通孔が形成され、また、前記シリンダには前記ピストンが最下降位置に移動した時に前記連通孔と一致する油排出孔が形成されている足踏みポンプと、該足踏みポンプの下端に一体的に取付けられ前記ピストンを下降させない状態においては油の流出を阻止するスプリングとボールとからなる逆止弁と、前記足踏みポンプより前記逆止弁を介して流出する油を貯留する保圧シリンダと、前記足踏みポンプより前記逆止弁を介して流出する油によって座部を上昇させる昇降用シリンダとから構成し、前記操作レバーを踏み込んで前記逆止弁を介して前記保圧シリンダと前記昇降用シリンダに油を供給して昇降用シリンダによって座部を上昇させ、操作レバーによる昇降用シリンダへの油の供給を停止した状態においては保圧シリンダよりの油が昇降用シリンダに供給されることで昇降用シリンダは休止することなく座部を連続して上昇させ、また、操作レバーを最下降位置まで踏み込むと前記制御管が逆止弁のボールを押し下げて昇降用シリンダと保圧シリンダよりの油を通過させ前記油排出孔を介してタンク内に戻すことを特徴とする。
【0007】
請求項2の手段は、前記した請求項1において、前記保圧シリンダと昇降用シリンダとは、該昇降用シリンダが前記逆止弁に対して下流側となるように油路により接続され、かつ、保圧シリンダよりも下流側の油路にオリフィスを形成し、昇降用シリンダへの油量を保圧シリンダへの油量よりも少なくしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は前記したように、操作レバーの踏み込みと踏み込みとの間に保圧シリンダに貯留されている油を昇降用シリンダに供給することで、昇降用シリンダが停止することなく連続して上昇して被施術者に対してショックを与え不快感を与えることがなく、また、操作レバーを最下降位置まで踏み込むと前記制御管が逆止弁のボールを押し下げて昇降用シリンダと保圧シリンダよりの油を通過させ前記油排出孔を介してタンク内に戻すことができるので、構造が簡単となりコストの低下を図ることができ、かつ、小型化を図ることができる。
【0009】
また、保圧シリンダと昇降用シリンダとは、該昇降用シリンダが前記逆止弁に対して下流側となるように油路により接続され、かつ、保圧シリンダよりも下流側の油路にオリフィスを形成し、昇降用シリンダへの油量を保圧シリンダへの湯量よりも少なくしたので、保圧シリンダ内には昇降用シリンダへの油の供給が停止した時に昇降用シリンダに対して十分な油を供給することができるので、昇降用シリンダのピストンは上昇し、従って、椅子の上昇を休止させることなく連続して上昇させることができる等の効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、操作レバーの踏み込みの休止中に保圧シリンダに貯留されている油を昇降用シリンダに供給し、また、昇降用シリンダおよび保圧シリンダ内の油の排出は、足踏みポンプに形成されている制御管を介してタンク内に戻されるものである。
【実施例1】
【0011】
次に、本発明に係る椅子昇降用油圧装置の一実施例を図1、図2と共に説明する。
1は後述する足踏みポンプ2、保圧シリンダ3および椅子を昇降するための昇降用シリンダ4の下部が取付けられるブロック、5は該ブロック1に密閉状態で覆うカバーにして、該カバー5内には油が充填されている。また、前記ブロック1には後に詳述する油路が形成されている。6は施術者が椅子を上昇させるために操作レバーを足によって踏み込むと下降する押圧杆である。
【0012】
2は前記押圧杆6の下部がピストンロッド21の上端に当接している足踏みポンプにして、該押圧杆6をピストンロッド21の外周に配置されているスプリング22のバネ力に抗して押下することでシリンダ23内のピストン24が下降する。
【0013】
そして、施術者が操作レバーから足を離しスプリング22のバネ力によってピストン24が上昇するとシリンダ23内が負圧状態となることで、油路13に連通する吸入口13aを塞いでいる弁26が上昇して吸入口13aを開放する。従って、先端が前記ケース5の油内に位置する給油パイプ12から給路13および吸入口13aを介して油がシリンダ23内に吸引される。また、前記ピストン24が上昇することで前記押圧杆6も押し上げられる。なお、前記給油パイプ12の油中に位置する先端にはフィルター12aが取付けられている。
【0014】
保圧シリンダ3はシリンダ内にスプリング31とピストン32が収容されていおり、該ピストン32の下部貯留部33は後述する逆止弁7と油路14,15を介して接続されている。
【0015】
昇降用シリンダ4は一般的な油圧シリンダにして、シリンダ41内を上下動するピストン42の上端には理美容椅子等の座部が取付けられてている。また、シリンダ41の下部は前記油路14,15との分岐部分に油量を絞るためのオリフィス14aを有する油路14を介して接続されている。なお、43はピストン42が最下降位置になった時にピストン42の下端と当接したときのショックを緩和するためのクッション材である。
【0016】
逆止弁7は前記足踏みポンプ2の油出入口である開口部72を塞ぐボール71と、該ボール71を開口部72側に押圧するスプリング73とより構成され、該スプリング73が収容されている空間が前記油路15と接続されている。また、前記足踏みポンプ2のピストン24には前記ボール71をスプリング73のバネ力に抗して下降させる中空の制御管28の先端がピストン24の下面から突出した状態で内蔵されている。さらに、ピストン24には前記制御菅28の孔と連通して円周方向に先端が開口された連通孔24aが開口され、また、シリンダ23にはピストン24最下降位置に達した時に前記連通孔24aと油タンクであるカバー5内において一致する油排出口23aが形成されている。
【0017】
次に、前記した構成に基づいて本発明の椅子昇降用油圧装置の動作を説明する。
先ず、昇降用シリンダ4におけるピストン42が下降位置で椅子が初期状態にある時は、保圧シリンダ3におけるピストン32もスプリング31のバネ力によってシリンダの最下部まで下降し、また、足踏みポンプ2のピストン24は最上部までスプリング22のバネ力によって上方位置に戻っており、ピストン24の下部にはピストン24の上昇時に吸引された油がシリンダ23内に貯留されている。
【0018】
この状態において、施術者が操作レバーを踏み込み押圧杆6を足踏みポンプ2のスプリング22のバネ力に抗して下降させると、シリンダ23内の油によって逆止弁7のボール25がスプリング73のバネ力に抗して下降する。従って、シリンダ23内の油は逆止弁7を介して油路15,16から保圧シリンダ3の貯留部33内に供給されるので、ピストン32はスプリング31のバネ力に抗して上昇し、足踏みポンプ2よりの油は貯留部33内に貯留される。
【0019】
また、油路15から供給される油の一部は油路14に流れオリフィス14aによって油量が減少されて昇降用シリンダ4内にも流れ込みピストン42を上昇させる。ここで、昇降用シリンダ4内に流れ込む油の量は、オリフィス14aによって絞られるため保圧シリンダ3の貯留部31に貯留される油の量が多くなり昇降用シリンダ4に流れる量が少ないので、昇降シリンダ4のピストン42の上昇速度は遅いが保圧シリンダ3への油の貯留が多くなる。
【0020】
そして、操作レバーの踏み込みを最下部まで達しない状態で停止すると、足踏みポンプ2はスプリング22のバネ力で上昇するので、シリンダ23内は負圧状態となる。この状態において、弁26が上昇するので、カバー5内に貯留している油が吸引パイプ12および油路13を介してシリンダ23内に流れ込む。
【0021】
一方、保圧シリンダ3のピストン32はスプリング31のバネ力によって押下されるので、保圧シリンダ3内の油は逆止弁7のボール71がスプリング73と保圧シリンダ3内の油圧によって開口部72を塞いでいる(図1参照)。これにより、オリフィス14aを通って油路14を介して昇降用シリンダ41内に流れる。従って、ピストン42は停止することなく上昇し、椅子を連続して上昇させるので着座している被施術者にショックを与えることなく不快感を与えることがない。
【0022】
以下、同様に操作レバーを踏み込むと足踏みポンプ2より油が昇降用シリンダ4に供給され、次いで、足を操作レバーから離すと保圧シリンダ6から供給されるので、座部を所望の高さ位置に達するまで繰り返し行われる。
【0023】
そして、椅子を下降させるには、操作レバーを踏み込んで足踏みポンプ2のピストン24を最下降位置まで下降させると、制御菅28の下端がボール71をスプリング73のバネ力に抗して押し下げるので、開口部72が開口されて保圧シリンダ3および昇降用シリンダ4内の油は油路14,16,15から逆止弁7を介して制御菅28内に流れ込む。
【0024】
この時、連通孔24aと排出孔23aとが連通しているので、逆止弁7よりの油は制御菅28、連通孔24aおよび排出孔23aを介してケース5内に流れるので、保圧シリンダ3および昇降用シリンダ4内の油はケース5内に戻され、従って、昇降用シリンダ4のピストン42はクッション材43に当接して停止し、椅子も最下降位置で停止することになる(図2参照)。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る椅子昇降用油圧装置の一実施例を示す足踏みポンプを途中まで踏み込んだ状態を示す断面図である。
【図2】同上のポンプを最下降位置まで踏み込んで油の排油状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ブロック
2 足踏みポンプ
22 スプリング
23 シリンダ
23a 油排出孔
24 ピストン
24a 連通孔
28 制御管
3 保圧シリンダ
4 昇降用シリンダ
7 逆止弁
71 ボール
73 スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプリングのバネ力によって上昇位置に移動し、前記スプリングのバネ力に抗して操作レバーを踏み込むと下降するピストンがシリンダ内に収容され、前記ピストンには先端が下部に突出する中空の制御管が取付けられると共に該制御管と連通して連通孔が形成され、また、前記シリンダには前記ピストンが最下降位置に移動した時に前記連通孔と一致する油排出孔が形成されている足踏みポンプと、
該足踏みポンプの下端に一体的に取付けられ前記ピストンを下降させない状態においては油の流出を阻止するスプリングとボールとからなる逆止弁と、
前記足踏みポンプより前記逆止弁を介して流出する油を貯留する保圧シリンダと、
前記足踏みポンプより前記逆止弁を介して流出する油によって座部を上昇させる昇降用シリンダとから構成し、
前記操作レバーを踏み込んで前記逆止弁を介して前記保圧シリンダと前記昇降用シリンダに油を供給して昇降用シリンダによって座部を上昇させ、操作レバーによる昇降用シリンダへの油の供給を停止した状態においては保圧シリンダよりの油が昇降用シリンダに供給されることで昇降用シリンダは休止することなく座部を連続して上昇させ、また、操作レバーを最下降位置まで踏み込むと前記制御管が逆止弁のボールを押し下げて昇降用シリンダと保圧シリンダよりの油を通過させ前記油排出孔を介してタンク内に戻すことを特徴とする椅子昇降用油圧装置。
【請求項2】
前記保圧シリンダと昇降用シリンダとは、該昇降用シリンダが前記逆止弁に対して下流側となるように油路により接続され、かつ、保圧シリンダよりも下流側の油路にオリフィスを形成し、昇降用シリンダへの油量を保圧シリンダへの油量よりも少なくしたことを特徴とする請求項1記載の椅子昇降用油圧装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−255415(P2006−255415A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−67035(P2006−67035)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【分割の表示】特願2005−76447(P2005−76447)の分割
【原出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000108672)タカラベルモント株式会社 (113)
【Fターム(参考)】